(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025033711
(43)【公開日】2025-03-13
(54)【発明の名称】濃度計測装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/27 20060101AFI20250306BHJP
【FI】
G01N21/27 Z
G01N21/27 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023139629
(22)【出願日】2023-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀和
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑弥
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB04
2G059EE01
2G059EE10
2G059EE12
2G059GG02
2G059HH01
2G059MM12
(57)【要約】
【課題】発光ダイオードを光源として光吸収を利用した濃度計測装置で、周囲温度が変化しても正確に濃度測定ができるようにする。
【解決手段】電圧検出回路104が、光源111を構成しているLEDに印加された順方向電圧を検出し、補正回路105が、第1記憶回路102に記憶されている相関における電圧検出回路104が検出した順方向電圧と基準順方向電圧との関係より、光学計測器101で測定した溶液の透過光強度を補正する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃度の測定対象となる溶液の溶質に対応する測定波長を含む光を出射する発光ダイオードを光源として前記測定波長における前記溶液の透過光強度を測定する光学計測器と、
前記発光ダイオードに印加される順方向電圧と前記発光ダイオードの発光強度との相関を記憶するように構成された第1記憶回路と、
前記溶液における前記溶質の濃度測定の基準となる基準液の透過光強度を前記光学計測器で測定して得られた基準透過光強度、および前記基準透過光強度に対応して前記発光ダイオードに印加される基準順方向電圧を記憶するように構成された第2記憶回路と、
前記光学計測器で前記溶液の透過光強度の測定時の前記発光ダイオードに印加された順方向電圧を検出するように構成された電圧検出回路と、
前記相関における前記電圧検出回路が検出した順方向電圧と前記基準順方向電圧との関係より、前記光学計測器で測定した前記溶液の透過光強度を補正する補正回路と、
前記補正回路が補正した前記溶液の透過光強度と前記基準透過光強度とから前記測定波長における前記溶液の吸光度を求めるように構成された吸光度算出回路と、
前記溶液の吸光度から前記溶液における前記溶質の濃度を求めるように構成された濃度算出回路と
を備える濃度計測装置。
【請求項2】
請求項1記載の濃度計測装置において、
前記濃度算出回路は、前記測定波長における吸光度より前記溶液における前記溶質の濃度を求める回帰式を用いて、前記溶液の吸光度から前記溶質の濃度を求める濃度計測装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の濃度計測装置において、
前記第1記憶回路は、設定されている複数の波長に対応して前記相関を記憶し、
前記第2記憶回路は、設定されている複数の波長に対応して前記基準透過光強度および前記基準順方向電圧を記憶する濃度計測装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の濃度計測装置において、
前記第1記憶回路は、設定されている任意の前記基準順方向電圧に対応する前記相関を記憶し、
前記第2記憶回路は、前記基準順方向電圧となるように前記発光ダイオードを温度制御した状態で測定した前記基準透過光強度を記憶する濃度計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃度計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光吸収を利用して半導体洗浄液などの薬液濃度を計測する技術が知られている(特許文献1)。この測定技術は、室温付近の純水の透過光強度(スペクトル)を基準として、計測対象薬液のスペクトルの基準からの光強度変化量(吸光度)により薬液濃度を計測する。また、この種の計測装置では、光源として寿命の長い発光ダイオード(LED)が用いられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したような濃度計測装置が環境は温度変化が大きいが、光源として用いているLEDの発光スペクトルが、周囲温度依存性が高いために正確な測定ができない場合が発生する。
【0005】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、発光ダイオードを光源として光吸収を利用した濃度計測装置で、周囲温度が変化しても正確に濃度測定ができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る濃度計測装置は、濃度の測定対象となる溶液の溶質に対応する測定波長を含む光を出射する発光ダイオードを光源として測定波長における溶液の透過光強度を測定する光学計測器と、発光ダイオードに印加される順方向電圧と発光ダイオードの発光強度との相関を記憶するように構成された第1記憶回路と、溶液における溶質の濃度測定の基準となる基準液の透過光強度を光学計測器で測定して得られた基準透過光強度、および基準透過光強度に対応して発光ダイオードに印加される基準順方向電圧を記憶するように構成された第2記憶回路と、光学計測器で溶液の透過光強度の測定時の発光ダイオードに印加された順方向電圧を検出するように構成された電圧検出回路と、相関における電圧検出回路が検出した順方向電圧と基準順方向電圧との関係より、光学計測器で測定した溶液の透過光強度を補正する補正回路と、補正回路が補正した溶液の透過光強度と基準透過光強度とから測定波長における溶液の吸光度を求めるように構成された吸光度算出回路と、溶液の吸光度から溶液における溶質の濃度を求めるように構成された濃度算出回路とを備える。
【0007】
上記濃度計測装置の一構成例において、濃度算出回路は、測定波長における吸光度より溶液における溶質の濃度を求める回帰式を用いて、溶液の吸光度から溶質の濃度を求める。
【0008】
上記濃度計測装置の一構成例において、第1記憶回路は、設定されている複数の波長に対応して相関を記憶し、第2記憶回路は、設定されている複数の波長に対応して基準透過光強度および基準順方向電圧を記憶する。
【0009】
上記濃度計測装置の一構成例において、第1記憶回路は、設定されている任意の基準順方向電圧に対応する相関を記憶し、第2記憶回路は、基準順方向電圧となるように発光ダイオードを温度制御した状態で測定した基準透過光強度を記憶する。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、発光ダイオードに印加される順方向電圧と発光ダイオードの発光強度との相関を用いて光学計測器で測定した溶液の透過光強度を補正するので、発光ダイオードを光源として光吸収を利用した濃度計測装置で、周囲温度が変化しても正確に濃度測定ができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る濃度計測装置の構成を示す構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態に係る濃度計測装置の一部構成を示す構成図である。
【
図3】
図3は、測定基準順方向電圧Vf
m0に近いデータセットから抽出した基準順方向電圧Vf
0に対するデータセットにおける各順方向電圧Vfの変化量ΔVfと、データセットから抽出した基準順方向電圧Vf
0に対応する発光強度I
ad0(λ)を基準としたデータセットにおける発光強度I
ad(λ)の変化率Δ
ad(λ)との関係を示す特性図である。ここでλは波長を表し、
図3の特性図は波長毎に存在する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係る濃度計測装置について
図1を参照して説明する。この濃度計測装置は、光学計測器101、第1記憶回路102、第2記憶回路103、電圧検出回路104、補正回路105、吸光度算出回路106、濃度算出回路107を備える。
【0013】
光学計測器101は、濃度の測定対象となる溶液の溶質に対応する測定波長を含む光を出射する発光ダイオードを光源として測定波長における溶液の透過光強度(スペクトル)を測定する。光学計測器101は、光源111、分光器112、光源制御回路113、分光制御回路114、受光制御回路115、およびコントローラ116を備える。
【0014】
光源111は、濃度の測定対象となる溶液の成分(溶質)に対応する測定波長を含む光を出射する発光ダイオード(LED)から構成されている。分光器112は、受光した光を分光する。分光器112は、例えば、ファブリペロー型とすることができる。光源111を出射した光は、成分濃度の測定対象となる溶液を透過して分光器112で受光される。
【0015】
光源制御回路113は、コントローラ116からの制御に従って光源111の点灯を制御する。例えば、光源制御回路113は、光源111を制御し、所定の波長帯の光を所定の強度で出射させる。
【0016】
分光制御回路114は、コントローラ116からの制御に従って分光器112を制御する。例えば、分光制御回路114は、ファブリペロー型の分光器112が有する2つのミラーの間に印加する電圧を制御することで、受光素子が受光する光の波長を適宜制御する。
【0017】
受光制御回路115は、コントローラ116からの制御に従って分光された光の強度を測定する。例えば、受光制御回路115は、分光器112が測定した光の強度を示す電気信号を受け付けると、受け付けた電気信号を光の強度を示す数値に変換し、変換後の数値を出力する。
【0018】
コントローラ116は、CPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)、主記憶装置、外部記憶装置などを備えたコンピュータ機器である。主記憶装置に展開されたプログラムによりCPUが動作する(プログラムを実行する)ことで、上述した各機能が実現される。上記プログラムは、上述した各制御機能をコンピュータが実行するためのプログラムである。また、コントローラ116は、FPGA(field-programmable gate array)などのプログラマブルロジックデバイス(PLD:Programmable Logic Device)により構成することも可能である。
【0019】
コントローラ116は、光源111および分光器112を制御し、分光器112が測定対象の溶液を介して分光した測定波長の光の強度を取得する。
【0020】
例えばコントローラ116は、測定対象の溶液を介した光から、測定対象成分と対応する測定波長の光強度(透過光強度)を取得する。例えば、コントローラ116は、測定対象成分がアンモニアおよび過酸化水素の場合、アンモニアと対応する測定波長と、過酸化水素と対応する測定波長を選択し、光源制御回路113を制御して光源111を点灯させることで、測定波長を含む波長帯の光を出射させる。
【0021】
また、コントローラ116は、分光制御回路114を制御し、測定対象の溶液を介して分光器112が受光した光から測定波長の光を分光させる。また、コントローラ116は、受光制御回路115を介して、分光器112が測定した測定波長の光の強度を取得する。例えば、コントローラ116は、アンモニアに対応する測定波長の光強度を測定させた後、過酸化水素に対応する測定波長の光強度を測定させる。また、コントローラ116は、測定された各測定波長の光強度を取得する。
【0022】
第1記憶回路102は、LEDに印加される順方向電圧とLEDの発光強度との相関を記憶する。第1記憶回路102は、設定されている複数の波長に対応して相関を記憶する。例えば、LEDに印加する順方向電圧を可変させ、この可変により変化するLEDの発光強度を測定する。この測定を、濃度計測に用いる波長毎に実施する。各々の測定結果より得られた順方向電圧の変化に対するLED発光強度の変化を相関として用意する。また、第1記憶回路102は、設定されている任意の基準順方向電圧(後述)に対応する相関を記憶することができる。
【0023】
第2記憶回路103は、測定対象の溶液における溶質の濃度測定の基準となる基準液の透過光強度を光学計測器で測定して得られた基準透過光強度を記憶する。また、第2記憶回路103は、基準透過光強度に対応して発光ダイオードに印加される基準順方向電圧を記憶する。基準順方向電圧は、LEDの発光強度が基準透過光強度のときのLEDの順方向電圧とすることができる。第2記憶回路103は、設定されている複数の波長に対応して基準透過光強度および基準順方向電圧を記憶する。また、第2記憶回路103は、基準順方向電圧となるように発光ダイオードを温度制御した状態で測定した基準透過光強度を記憶することができる。
【0024】
例えば、濃度の測定対象が水溶液の場合、濃度測定の基準となる基準液は、媒質である水(純水)とすることができる。この場合、純水の透過光強度を光学計測器101により予め測定して、基準透過光強度とする。また、例えば、純水の透過光強度を測定した時点におけるLEDに印加されていた順方向電圧を測定して基準順方向電圧とすることができる。また、例えば、濃度既知の溶液を基準液とすることができる。この場合、濃度既知の溶液の透過光強度を光学計測器101により予め測定して、基準透過光強度とすることができる。
【0025】
電圧検出回路104は、光源111を構成しているLEDに印加された順方向電圧を検出する。電圧検出回路104は、光学計測器101による溶液の透過光強度の測定時に,LEDに印加された順方向電圧を検出する。補正回路105は、第1記憶回路102に記憶されている相関における電圧検出回路104が検出した順方向電圧と基準順方向電圧との関係より、光学計測器101で測定した溶液の透過光強度を補正する。
【0026】
吸光度算出回路106は、補正回路105が補正した溶液の透過光強度と基準透過光強度とから測定波長における溶液の吸光度を求める。濃度算出回路107は、溶液の吸光度から溶液における溶質の濃度を求める。濃度算出回路107は、測定波長における吸光度より溶液における溶質の濃度を求める回帰式を用いて、溶液の吸光度から溶質の濃度を求めることができる。
【0027】
上述した各回路は、CPU、主記憶装置、外部記憶装置などを備えたコンピュータ機器とすることができる。主記憶装置に展開されたプログラムによりCPUが動作する(プログラムを実行する)ことで、上述した各機能が実現される。上記プログラムは、上述した各制御機能をコンピュータが実行するためのプログラムである。また、上述した各回路は、FPGA(field-programmable gate array)などのプログラマブルロジックデバイス(PLD:Programmable Logic Device)により構成することも可能である。
【0028】
以上に説明したように、実施の形態によれば、光源111を構成するLEDに印加される順方向電圧とLEDの発光強度との相関をもとに光学計測器101で測定した溶液の透過光強度を補正する。この結果、LEDを光源として光吸収を利用した濃度計測装置で、周囲温度が変化しても正確に濃度測定ができるようになる。
【0029】
以下、より詳細に説明する。LEDの順方向電圧Vfを変化させて、変化させたVfと対応するLEDの発光強度Iad(λ)の測定値群(データセット)を事前に取得して保持しておく(表1参照)。ここでλは波長を表す。Vfの測定分解能は0.1mV以下が望ましい。
【0030】
【0031】
また、基準透過光強度(基準スペクトル)I0(λ)を測定する。さらに、この測定時のLEDの測定基準順方向電圧Vfm0を測定する。
【0032】
次に、測定基準順方向電圧Vfm0に最も近い順方向電圧Vfをデータセットから抽出して基準順方向電圧Vf0とし、また、これに対応する発光強度Iad0(λ)をデータセットから抽出する。例えば、測定基準順方向電圧Vfm0=1000.1mVであった場合、基準順方向電圧Vf0=1000.0mVとし、この値に対応するIad0(λ)=11000,20000,・・・,15000をデータセットから抽出する。なお表1に例示する各測定データの行の間を線形補間して、基準順方向電圧Vf0=1000.1mVとして、これに対応するIad0(λ)=11333,20333,・・・,15333とすることができる。決定した基準順方向電圧Vf0は、第2記憶回路103に記憶しておくことができる。
【0033】
次に、基準順方向電圧Vf
0、I
ad0(λ)およびデータセット(表1)を使って、ΔVf=Vf-Vf
0およびΔI
ad(λ)=I
ad(λ)/I
ad0(λ)を計算し、
図3に示すΔVfとΔI
ad(λ)との関係を示す特性(
図3)から、ΔVfとΔI
ad(λ)との関係式を求める。ΔVfは、測定基準順方向電圧Vf
m0に近いデータセットから抽出した基準順方向電圧Vf
0に対するデータセットにおける各順方向電圧Vfの変化量(=Vf-Vf
0)である。ΔI
ad(λ)は、データセットから抽出した基準順方向電圧Vf
0に対応する発光強度I
ad0(λ)を基準としたデータセットにおける各発光強度I
ad(λ)の変化率(=I
ad(λ)/I
ad0(λ))である。ΔI
ad(λ)は、(Vf
0,I
ad0(λ))が(Vf,I
ad(λ))に変化した時のLED光強度の変化率とすることもできる。関係式は、定数a,bを用いた「ΔI
ad(λ)=a×ΔVf
2+b×ΔVf+1・・・(1)」などの2次式とすることができる。なお定数a,bは波長毎に存在する。この関係式は、2次以上の関係式とすることができる。
【0034】
求めた関係式を、LEDに印加される順方向電圧とLEDの発光強度との相関として第1記憶回路102に記憶する。
【0035】
以上のようにLEDに印加される順方向電圧とLEDの発光強度との相関が得られている状態で、測定対象の溶液の濃度計測が実施される。測定対象の溶液の濃度測定では、透過光強度Ic(λ)を測定し(光学計測器101)、また、LEDに印加された順方向電圧Vfcを検出する(電圧検出回路104)。
【0036】
測定によりIc(λ)とVfcが得られたら、基準透過光強度(基準スペクトル)I0(λ)の測定時と、対象の溶液の透過光強度Ic(λ)の測定時とで、LEDの光強度の温度特性が光強度変化に与える影響を統一するため、Vfcが基準順方向電圧Vf0の時のLED光強度Ic0(λ)(=Ic(λ)/ΔIc(λ))を計算する。ここでΔIc(λ)は、(Vf0,Ic0(λ))が(Vfc,Ic(λ))に変化した時のLED光強度の変化率であり、「ΔIc(λ)=a×ΔVf2+b×ΔVf+1・・・(2)」により計算する。なお、ΔVf=Vfc-Vf0であり、定数a,bは、式(1)と同じ値とする(補正回路105)。
【0037】
次に、(Vf0,I0(λ))と(Vf0,Ic0(λ))のI0(λ)とIc0(λ)を使って、「A(λ)=-log10(Ic0(λ)/I0(λ))・・・(3)」により波長の吸光度A(λ)を求める(吸光度算出回路106)。
【0038】
次に、求めた吸光度A(λ)を使って、回帰式「C=b1・A(λ1)+b2・A(λ2)+b3・A(λ3)+b0」を用いて濃度Cを求める(濃度算出回路107)。なお、この式は、3つの波長λ1、λ2、λ3が用いられる場合を例示したものであり、回帰式の係数b0,b1、b2、b3は、多変量解析などにより事前に求めておく。測定に用いる波長は、3つに限るものでは無い。
【0039】
また、次に示すようにすることもできる。上述した表1の測定値群について、各VfをVf0としたときの、Vf0とこのVf0に対応するLED発光強度Iad0(λ)、および表1の測定値群から、温特補正式(ΔVfとΔIad(λ)との関係式)を事前に求め、この補正式の係数(a,b)の組(係数データセット)を予め求めて記憶しておく(表2)。
【0040】
【0041】
以上のように係数データセットを用意したら、基準スペクトルI0(λ)を測定する。さらに、この測定時のLEDの測定基準順方向電圧Vfm0を測定する。次に、測定基準順方向電圧Vfm0に最も近い基準順方向電圧Vf0と対応する発光強度Iad0(λ)、および表1の測定値群から事前に求めた温特補正式(ΔVfとΔIad(λ)との関係式)の係数a、bを係数データセットから抽出し、「ΔIad(λ)=a×ΔVf2+b×ΔVf+1・・・(1)」をLED発光強度Iad(λ)の温特補正式とする。また、得られた関係式は、LEDに印加される順方向電圧とLEDの発光強度との相関として第1記憶回路102に記憶する。
【0042】
上のようにLEDに印加される順方向電圧とLEDの発光強度との相関が得られている状態で、測定対象の溶液の濃度計測を実施すれば、前述同様に、吸光度A(λ)を求め、濃度Cを求めることができる。
【0043】
また、次に示すようにすることもできる。上述した表1の測定値群について、事前に任意の基準順方向電圧Vf0を設定し、設定した任意の基準順方向電圧Vf0に対応するLED発光強度Iad(λ)の温特補正式(ΔVfとΔIad(λ)との関係式)を事前に求める。関係式の求め方は、前述同様である。求めた関係式は、第1記憶回路102に記憶する。
【0044】
次に、基準スペクトルI0(λ)の測定においては、このスペクトルの測定において測定される順方向電圧(測定基準順方向電圧Vfm0)が、事前に設定した任意の基準順方向電圧Vf0と一致する様に、ヒータなどを用いてLEDを温調する。この状態で、基準スペクトルI0(λ)の測定を実施すれば、事前に求めておいた関係式(ΔVfとΔIad(λ)との関係式)が、測定対象の溶液の濃度計測に適用可能となる。なお、基準スペクトルI0(λ)の測定時だけ、LEDの温度を、順方向電圧が事前に決めた基準順方向電圧Vf0となるように制御すればよく、運転中常時、温調する必要は無い。
【0045】
以上に説明したように、本発明によれば、発光ダイオードに印加される順方向電圧と発光ダイオードの発光強度との相関を用いて光学計測器で測定した溶液の透過光強度を補正するので、発光ダイオードを光源として光吸収を利用した濃度計測装置で、周囲温度が変化しても正確に濃度測定ができるようになる。
【0046】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0047】
101…光学計測器、102…第1記憶回路、103…第2記憶回路、104…電圧検出回路、105…補正回路、106…吸光度算出回路、107…濃度算出回路。