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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003374
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】鳥獣忌避システム
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/10 20110101AFI20241226BHJP
   A01M 29/18 20110101ALI20241226BHJP
   F41H 13/00 20060101ALN20241226BHJP
   F41G 1/46 20060101ALN20241226BHJP
【FI】
A01M29/10
A01M29/18
F41H13/00
F41G1/46
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024097872
(22)【出願日】2024-06-18
(31)【優先権主張番号】P 2023103375
(32)【優先日】2023-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】523235183
【氏名又は名称】有限会社アジル
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185317
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 琢哉
(72)【発明者】
【氏名】山田 英輝
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA07
2B121DA37
2B121DA38
2B121DA58
2B121DA59
2B121EA21
2B121FA13
2B121FA14
(57)【要約】
【課題】鳥獣を自動的に追尾し、レーザ光を照射することにより、確実に鳥獣を追い払うシステムを提供する。
【解決手段】鳥獣忌避システムは、監視エリアを監視するカメラにより撮影された画像から、害を及ぼす鳥獣を識別し、識別された鳥獣を自動的に追尾しながら、鳥獣に対しレーザ光を照射する。鳥獣忌避システムは、対象とする鳥獣を自動追尾するため、追尾する鳥獣に対する照射モードを変更することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像部と、
レーザ照射部と、
前記撮像部により撮影された画像から忌避対象とする鳥獣を判定する判定部と、
前記鳥獣を追尾する追尾制御部と、
前記鳥獣を追尾しながらレーザ光を照射するモードを変化させるレーザ制御部と、
を備える鳥獣忌避システム。
【請求項2】
前記レーザ制御部は、前記鳥獣を識別してから予め定めた時間が経過するまでは、前記鳥獣の足元又は足元の周囲に前記レーザ光を照射するよう制御する、請求項1に記載の鳥獣忌避システム。
【請求項3】
前記レーザ制御部は、前記鳥獣を識別した時刻を基準とした予め定めた時間帯において、前記鳥獣の全身を対象に前記レーザ光を点滅照射するよう制御する、
請求項1に記載の鳥獣忌避システム。
【請求項4】
前記レーザ制御部は、前記鳥獣を識別した時刻を基準とした予め定めた時間帯において、前記鳥獣の頭部を対象に前記レーザ光を照射するよう制御する、
請求項1に記載の鳥獣忌避システム。
【請求項5】
さらに、スピーカ、超音波発生装置、LED照射装置のいずれかの従属装置を備え、
前記撮像部により撮影された画像から忌避対象とする鳥獣の種類を判定する判定部と、
従属装置制御部は、前記鳥獣の種類に応じ、前記従属装置を制御する、
請求項1に記載の鳥獣忌避システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鳥獣忌避システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電線や鉄塔などの鳥による糞害やゴミ置き場などにおけるカラスがゴミ袋を散乱させる被害が問題となっている。従来の鳥獣忌避技術として、レーザ光を照射して鳥獣を追い払う鳥獣忌避装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、複数個のレーザ光源装置を備え、追い払いたい鳥獣に2方向からレーザ光を照射することを特徴とする鳥獣忌避装置が記載されている。本鳥獣忌避装置は、昼間に鳥獣に太陽等が当たっている状況又は他の眩しい光が当たっている状況においても、鳥獣を確実、且つ容易に追い払うことを目的としている。
【0004】
特許文献2には、鉄塔の高所に営巣のために飛来してくるカラスを確実に追い払う鳥類忌避装置が記載されている。その鳥類忌避装置は、鉄塔に固着した取付台座の上に筐体を載置し、ソーラーパネルを筐体の上に突出状に取着すると共に、バッテリを筐体内に設けてソーラーパネルからの電気を蓄え、かつ、筐体にスピーカとカメラを設けており、さらに、忌避光を発生するレーザビーム照射器を備えている。
【0005】
特許文献1及び特許文献2の鳥類などの忌避装置はどちらも、対象物である鳥類等に対しレーザ光を照射する発明であるが、対象物は絶えず動いており、目標とする点への照射が難しいという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-100396号公報
【特許文献2】特開2022-66717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、鳥獣を自動的に追尾し、レーザ光を照射することにより、確実に鳥獣を追い払うシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載された発明は、撮像部と、レーザ照射部と、前記撮像部により撮影された画像から忌避対象とする鳥獣を判定する判定部と、前記鳥獣を追尾する追尾制御部と、前記鳥獣を追尾しながらレーザ光を照射するモードを変化させるレーザ制御部と、を備える鳥獣忌避システム。
請求項2に記載された発明は、前記レーザ制御部は、前記鳥獣を識別してから予め定めた時間が経過するまでは、前記鳥獣の足元又は足元の周囲に前記レーザ光を照射するよう制御する、請求項1に記載の鳥獣忌避システムである。
請求項3に記載された発明は、前記レーザ制御部は、前記鳥獣を識別した時刻を基準とした予め定めた時間帯において、前記鳥獣の全身を対象に前記レーザ光を点滅照射するよう制御する、請求項1に記載の鳥獣忌避システムである。
請求項4に記載された発明は、前記レーザ制御部は、前記鳥獣を識別した時刻を基準とした予め定めた時間帯において、前記鳥獣の頭部を対象に前記レーザ光を照射するよう制御する、請求項1に記載の鳥獣忌避システムである。
請求項5に記載された発明は、さらに、スピーカ、超音波発生装置、LED照射装置のいずれかの従属装置を備え、前記撮像部により撮影された画像から忌避対象とする鳥獣の種類を判定する判定部と、従属装置制御部は、前記鳥獣の種類に応じ、前記従属装置を制御する、請求項1に記載の鳥獣忌避システムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、鳥獣を自動的に追尾し、レーザ光を照射することにより、確実に鳥獣を追い払う鳥獣忌避システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態が適用される鳥獣忌避システムの全体構成例を示す図である。
図2】本実施の形態が適用される鳥獣忌避システムの構成を示すブロック図である。
図3】鳥獣忌避装置の機能構成を示す図である。
図4】(A)は第1モードによるレーザ照射を示す図であり、(B)は、第2モードによるレーザ照射を示す図であり、(C)は、第3モードによるレーザ照射を示す図である。
図5】鳥獣忌避システムの処理フローを示す図である。
図6】本実施の別の形態が適用される鳥獣忌避システムの全体構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る鳥獣忌避システムについて、図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
(第一の実施形態)
図1は、本実施の形態が適用される鳥獣忌避システムの全体構成例を示す図である。本実施の形態における鳥獣忌避システム1は、支柱などに設置された制御装置2、太陽光パネル3、アンテナ4、カメラ5、レーザ発振器6からなる鳥獣忌避装置10と、ネットワーク50に繋がれた鳥獣忌避装置10を監視する管理サーバ30を有する管理ステーションとから構成される。鳥獣忌避装置10は、図1には1つしか図示されていないが、複数の場所にそれぞれ設置されていてもよい。太陽光パネル3により発電された電力は適宜バッテリに保存された後、カメラ5やレーザ発振器6の制御のための電力として使用される。本鳥獣忌避システム1を実施する態様としては、例えば、害をもたらす鳥獣が監視エリアに侵入してきた場合に、自動で鳥獣を忌避させるシステムとしての態様がある。
【0013】
図2は、本実施の形態が適用される鳥獣忌避システムの構成を示すブロック図である。鳥獣忌避装置10と鳥獣の忌避状況を監視する管理サーバ30と、がネットワーク50を介して繋がったシステムである。ネットワーク50は、例えば、インターネットなどのネットワークであり、管理ステーションに設置された管理サーバ30により、鳥獣忌避装置10の鳥獣忌避の状況を、インターネットを介して、遠隔監視することができる。
【0014】
鳥獣忌避装置10は、装置全体を制御するプロセッサ(CPU(Central Processing Unit))である制御部11と、演算に際して作業エリアとして用いられるRAM(Random Access Memory)などのメモリ12と、プログラムや各種設定データなどの記憶に用いられるHDD(Hard Disk Drive)や半導体メモリ等の記憶装置である記憶部13と、を有している。
また、鳥獣忌避装置10は、ネットワーク50を介して音声や画像データの送受信等を行う通信部14を有している。更に、鳥獣忌避装置10側のメンテナンス者からの入力操作を受け付けるタッチパネル、キーボード、ポインティングデバイスなどの操作部15と、画像やテキスト情報などを表示する液晶ディスプレイなどからなる表示部16と、表示部16を制御する表示制御部17とを有している。さらに、鳥獣忌避装置10は、鳥獣を撮影する撮像部18と、レーザを発振するレーザ発振部19を有している。
【0015】
管理サーバ30は、例えばワークステーション、デスクトップPC、ノートPCなどであるコンピュータ装置で構成される。管理サーバ30は、装置全体を制御するプロセッサ(CPU(Central Processing Unit))である制御部31と、演算に際して作業エリアとして用いられるRAM(Random Access Memory)などのメモリ32と、プログラムや各種設定データなどの記憶に用いられるHDD(Hard Disk Drive)や半導体メモリ等の記憶装置である記憶部33と、を有している。また、ネットワーク50を介してデータの送受信を行う通信部34を有している。更に、管理サーバ30側の管理者からの入力操作を受け付けるキーボード、ポインティングデバイス、タッチパネルなどの操作部35と、サーバ利用者に対して画像やテキスト情報などを表示する液晶ディスプレイなどからなる表示部36と、表示部36を制御する表示制御部37とを有している。
記憶部33には、鳥獣忌避装置10で記録された過去の画像、レーザ光の照射記録、スピーカからの威嚇音の使用履歴、超音波音の発生履歴、LED照射履歴、学習済みの鳥獣識別モデルのパラメータ、忌避対象の鳥獣の種類、どのタイミング(例えばモード)で去ったか等のデータが格納されている。
【0016】
本実施形態において、鳥獣とは、電線や鉄塔に巣を作ることで通信インフラのメンテナンスに支障をもたらすカラスやムクドリ、ゴミ収集場所に飛来して、ゴミ袋を散乱させるカラス、駅の構内等の糞害をもたらす鳩、畑を荒らすイノシシやタヌキ、人に危害を加えるおそれのある熊などの動物を含める。
【0017】
図2に示す鳥獣忌避装置10や管理サーバ30の各種構成は、必ずしも筐体を同じくする必要はなく、システムとして把握される態様がある。本体装置と筐体が異なる場合には、有線または無線で接続される。
【0018】
図3は、鳥獣忌避装置10の機能構成を示す図である。鳥獣忌避装置10は、メンテナンス管理者の入力を受け付ける受付部20と、入力された情報や撮影された画像などを記憶する記憶部13と、音声や画像などのデータの送受信を行う通信部14と、画像を表示する表示部16と、鳥獣を撮像する撮像部18と、レーザ光を照射するレーザ発振部19と、撮像画像から鳥獣等の対象物を検知する検知部22と、検知対象を追尾対象として特定する判定部23と、追尾対象を追尾する追尾制御部24と、追尾対象にレーザを照射するように制御するレーザ制御部25と、記憶された情報をデータや音声にて出力する出力部21と、を有している。
【0019】
撮像部18は、例えば、動画像を撮影するカメラである。可視画像だけでなく、夜間の鳥獣を監視するために、赤外画像カメラを用いても良い。レーザ発振部19は、例えば、緑色(波長532nm±10)のレーザ光をJIS C6802規格のクラス2で射出する。
検知部22は、撮影された画像中から移動する対象物を検知する。検知部22は、動画像データを構成するフレームに写っている鳥獣などの被写体を、深層ニューラルネットワークを用いた物体検出のアルゴリズムを用いて検出し、フレーム内の被写体の位置の特定も行う。フレーム内の鳥獣の位置は、バウンディングボックス(Bounding box)と呼ばれる長方形で囲まれた領域で特定される。
判定部23は、検知した対象物が、追尾すべき忌避対象であるか否かを判定する。判定部23を構成する判定モデルは、予め忌避対象である鳥獣の画像データを用いて学習させた学習済みの鳥獣識別モデルを用いることができる。判定部23は、バウンディングボックス内の被写体である対象Aを忌避対象である鳥獣であるか否かを識別する。判定部23は、被写体である対象Aを忌避対象である鳥獣であるか否かだけでなく、鳥獣の種類も判定してもよい。判定部23により判定された鳥獣の種類により、制御部11は、威嚇に使用するレーザ、威嚇音、超音波の周波数、LEDフラッシュ等を効果的な強度及び範囲に設定することができる。上記説明では、フレーム内の鳥獣の位置は、バウンディングボックスで特定することを示したが、本発明は、バウンディングボックスに限定されることはなく、対象とする被写体と他とを区別して表示できる態様の特定方法を含む。例えば、赤などの目立つ色など、色を変えて表示することや、影で示すなどが挙げられる。
追尾制御部24は、忌避対象として判定された鳥獣に対して自動的に追尾する機能を有する。追尾制御部24は、監視エリア内で検知された対象Aが忌避すべき鳥獣であると判定部23が識別した場合、対象Aを自動的に追尾するように制御する。フレーム間における同一対象を同定して関連付けることにより、同一対象を特定する処理を行う。上述の検知部22及び判定部23の処理は、フレーム毎に独立した処理を行うが、前後フレームの被写体を同一対象と認識することが出来ない。しかし、追尾制御部24の処理により、同一対象を時間方向に追跡することが可能になる。この追跡処理は、前後1フレームの短い時間では対象物は大きく移動できないことを前提として、連続する2フレームにおいて、近い座標を持つ姿勢推定結果を同一対象によるものとしてグルーピングする。これを全フレームに渡って行うことで、同一対象のデータのグループとしてカテゴライズされる。なお、追跡処理は、上記処理以外の手法で同一対象を特定しても構わない。
【0020】
レーザ制御部25は、追尾を開始した対象動物に対して、レーザ発振部19がレーザ光を照射するように制御する。レーザ制御部25は、追尾対象である対象動物に対して、一定時間経過後に照射モードを変化させて、レーザ光を照射する。例えば、最初は、対象動物に直接照射せず、対象動物の足元又は足元を中心とする周囲30cm程度のところに照射する第1モードで照射する。次に、対象動物の全身に照射する第2モード、更には、対象動物の頭部、特に目を狙ってレーザ光を照射する第3モードへと威嚇のレベルを上げていく。本実施形態においては、対象動物を同一対象として追尾しているため、追尾している対象に対し、照射モードを変化させることができる。変化させる照射モードは、必ずしも弱いレベルから強いレベルだけでなく、周期的な照射モードの変化であってもよい。モードの違いは、対象動物に照射する位置だけでなく、常時照射や点滅照射のような照射の仕方の違い、焦点直径の範囲を変える、照射強度を変えるといったことで特徴づけられてもよい。例えば、最初は大きな焦点直径で照射することにより、対象動物に光源位置を認知させ、その後に直径を小さくするなどの変化をさせる照射モードの変更であってもよい。
【0021】
本実施形態において、レーザを照射するモード(照射モードともいう)とは、レーザ光を照射する位置、照射の仕方(点滅照射、焦点半径)、照射時間、照射強度などで規定される照射のタイプをいうものとする。レーザを照射するモードの変更(照射モードの変更)とは、照射モードを規定する、レーザ光の照射位置、照射の仕方(点滅照射、焦点半径)、照射時間、照射強度などのいずれかの要素が変化することである。例えば、第1モードでは照射強度を弱く、第2モードで照射強度を強くすることも可能である。また、同一モードにおいて、上記いずれかの要素が常に固定である必要はなく、例えば焦点半径が周期的に変化するモードや点滅する照射のモードが存在してもよい。
【0022】
図4(A)は、第1モードによるレーザ照射を示す図であり、(B)は、第2モードによるレーザ照射を示す図であり、(C)は、第3モードによるレーザ照射を示す図である。これらの画像は、ネットワーク50を介して管理サーバ30に送信され、管理サーバ30の表示部36で表示される。判定部23がカラスを忌避対象の鳥獣であると識別した場合、追尾制御部24は、カラスを自動追尾すると同時に、画像にカラスの全身を囲うバウンディングボックス80とカラスの頭部を囲うバウンディングボックス81を表示させるように制御することもできる。レーザ制御部25は、レーザの照射モードを、第1モード、第2モード、第3モードへと順に、照射による威嚇のレベルを上げていく。図4(A)に示す第1モードでは、忌避対象であるカラスの周囲30cm以内の範囲にレーザ照射する。図4(A)に示すようにレーザ光の焦点82は、カラスの近傍でありながらカラスの全身以外の位置にある。このように第1モードでは、カラスの全身に直接レーザ光を照射せず、カラスの周囲30cm程度又は足元付近にレーザ光を照射する。次に、この第1モードの照射を開始してから予め定めた時間、例えば3秒経過してもカラスが逃げていかない場合には、次の第2モードによるレーザ照射を実施する。第2モードのレーザ照射では、カラスの全身の重心付近に対してレーザ光を照射する。図4(B)に示すように、レーザ光の焦点82はカラスの全身の重心付近の胸に位置している。次に、第2モードの照射を開始してから予め定めた時間、例えば3秒経過してもまだカラスが逃げない場合には、第3モードの照射を実行する。第3モードのレーザ照射では、カラスの頭部、特にカラスの目の周辺を目標にして、レーザ照射を行う。図4(C)に示すように、レーザ光の焦点82はカラスの目に位置している。カラスは動いているため、レーザ光は、追尾しつつ、レーザ光の照射を継続する。また、レーザ光の焦点82の直径は、図4(A)と(B)は、やや大きく図4(C)は、少し小さく変化させているが、特に、焦点の直径は、モードの変更とともに変化させてもよいし、変化させなくてもよい。
【0023】
〔鳥獣忌避システムの処理〕
図5は、鳥獣忌避システム1を構成する鳥獣忌避装置10の処理フローを示す図である。鳥獣忌避システム1が稼働すると、固定位置のカメラが監視エリアの監視を開始する(ステップ1)。次に、検知部22は、監視エリア内に対象Aが侵入したことを検知する(ステップ2)。判定部23は、検知された対象Aが忌避対象である鳥獣の形状等の特徴量と照合して符合したか、つまり対象Aが忌避対象であるか否かを判定する(ステップ3)。判定部23が、対象Aは忌避対象である鳥獣ではないと判定した場合はステップ2の前に戻り、忌避対象であると判定した場合は、追尾制御部24は対象Aの頭部と足を識別し、追尾を開始する(ステップ4)。そして、レーザ制御部25は、対象Aの足元の半径20cm程度にレーザ光を威嚇照射する(ステップ5)。レーザ制御部25は、予め定めた時間経過後に撮像範囲から対象Aがフレームアウトしたか否かを判定する(ステップ6)。対象Aがフレームアウトした場合は、ステップ2の前に戻り、フレームアウトしていない場合には、レーザ制御部25は、対象Aの全身(重心付近)に向けてレーザ光を点滅照射する(ステップ7)。レーザ制御部25は、予め定めた時間経過後に撮像範囲から対象Aがフレームアウトしたか否かを判定する(ステップ8)。対象Aがフレームアウトした場合は、ステップ2の前に戻り、フレームアウトしていない場合には、レーザ制御部25は、対象Aの頭部に向けてレーザ光を照射する(ステップ9)。レーザ制御部25は、予め定めた時間経過後に撮像範囲から対象Aがフレームアウトしたか否かを判定する(ステップ10)。対象Aがフレームアウトした場合は、ステップ11に進み、フレームアウトしていない場合には、レーザ制御部25は、ステップ5の前に戻る。対象Aがフレームアウトしたときの、対象Aの鳥獣の種類、レーザ光の照射履歴、モードなどは記憶部33に記憶される。次に監視を終了するか否かを判断し(ステップ11)、監視を継続する場合は、ステップ2の前に戻り、そうでない場合は、鳥獣忌避システムの稼働を終了する(END)。
【0024】
本実施形態において、照射モードは、予め定めた時間が経過すると変化するが、必ずしも照射による威嚇が増大する方向に変化する場合に限定されず、照射モードが変化するものであればよい。
【0025】
また、本実施形態においては、忌避対象とする鳥獣が単数である場合で説明を行ったが、複数の鳥獣を同時に追尾対象とすることができる。その場合、複数の鳥獣それぞれに対するレーザの照射は、複数のレーザ発振器6が照射してもよいし、1つのレーザ発振器で予め定めた時間毎に対象とする鳥獣を切り替えながら順番に照射するようにしてもよい。本発明は、複数の鳥獣を追尾することができるので、それぞれの鳥獣に対して追尾しながら照射モードを変更させることが可能である。例えば、フレームインした時刻が異なる鳥獣Aと鳥獣Bが監視エリアにいる場合に、フレームインしたばかりの鳥獣Aに対しては、第1モードで照射しつつ、フレームインが早かった別の鳥獣に対しては第3モードで同時に照射するというレーザ制御も可能である。
【0026】
また、他の複数のレーザ発振器6を備える場合に、1つのレーザ発振器6は、忌避対象の鳥獣の全身にレーザ光を照射し、別のレーザ発振器6は忌避対象の鳥獣の頭部にレーザ光を照射するように、同一対象の鳥獣に対し異なるモードで同時に照射する実施形態とすることもできる。複数のレーザ発振器6から同時にレーザ光を照射されることにより、鳥獣は単一レーザ光で照射するよりも、より驚いて逃避することになる。
【0027】
本実施形態の説明において、データを記憶する記憶部として、鳥獣忌避装置10の記憶部13と管理サーバ30の記憶部33として説明したが、どこに記憶部が存在するかについてはこれに限定されず、適宜、クラウド上のストレージを利用するなどの使用形態もあり得る。
【0028】
図6は、本実施の別の形態が適用される鳥獣忌避システムの全体構成例を示す図である。図6の鳥獣忌避システムは、図1に示された形態の構成に、さらにスピーカ7、超音波発生装置8、及びLED照射装置9などの従属装置を備えている。制御部11は、従属装置制御部(図示しない)として、スピーカ7、超音波発生装置8、及びLED照射装置9などの従属装置を制御する。上記構成により、レーザ照射を行うメイン装置と従属装置とを連動させて操作する複合威嚇攻撃が可能になる。
【0029】
制御部11は、スピーカ7から忌避対象の鳥獣に対し、威嚇音を発生させる。威嚇音は、忌避対象の鳥獣にあわせた威嚇音を発生させる。例えば、威嚇音としては、熊の嫌がると言われる100~130Hzの低い周波数の音、登山用熊鈴の音である4000Hzの高音域の音、あるいは、猛獣の唸り声であってもよい。制御部11は、撮像部18が撮像した画像から、忌避対象である鳥獣の種類を判定し、鳥獣の種類に応じた威嚇音をスピーカ7から発生させてもよい。また、図5の鳥獣忌避装置10の処理フローにおいて、レーザの照射モードとともに、音の音量を大きくしていくことで、威嚇の度合いを強めることもできる。
【0030】
制御部11は、超音波発生装置8から忌避対象の鳥獣に対し、超音波を発生させる。超音波の周波数帯は、およそ2MHz~20MHz程度であり、ヒトには聞こえない。超音波は、ヒトにとっての可聴域外であるから、ヒトに不快感を与えずに、忌避対象である鳥獣を威嚇することができる。制御部11は、撮像部18が撮像した画像から、忌避対象である鳥獣の種類を判定し、鳥獣の種類に応じて、波長の超音波を超音波発生装置8に発生させてもよい。また、図5の鳥獣忌避装置10の処理フローにおいて、レーザの照射モードとともに、超音波音の音量を大きくしていくことで、威嚇の度合いを強めることもできる。
【0031】
制御部11は、LED照射装置9に忌避対象の鳥獣に対し、LED光を照射させる。制御部11は、撮像部18が撮像した画像から、忌避対象である鳥獣の種類を判定し、鳥獣の種類に応じた照射のパターン、強度のLED光をLED照射装置9に照射させてもよい。また、図5の鳥獣忌避装置10の処理フローにおいて、レーザの照射モードとともに、LEDの光量や照射パターン(色、フラッシュの頻度等)を変化させていくことで、威嚇の度合いを強めることもできる。
【0032】
上述のレーザ照射、威嚇音、超音波、LED照射などにより、忌避対象の鳥獣が逃避したか否か、鳥獣の種類、威嚇の種類、モード等のデータは記憶部33に記憶される。記憶部33に記憶された、履歴データを教師データとして、鳥獣の種類それぞれの最適な忌避手段、モードを出力する学習モデルに機械学習させることもできる。学習モデルは、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、回帰式、決定木などであってもよい。そして、制御部11は、次に忌避対象の鳥獣が訪れた際に、機械学習済のモデルが判定する効果的な威嚇の種類、モードにより威嚇するように制御することができる。
【符号の説明】
【0033】
1…鳥獣忌避システム、2…制御装置、3…太陽光パネル、4…アンテナ、5…カメラ、6…レーザ発振器、7…スピーカ、8…超音波発生装置、9…LED照射装置、10…鳥獣忌避装置、11…制御部、12…メモリ、13…記憶部、14…通信部、15…操作部、16…表示部、17…表示制御部、18…撮像部、19…レーザ発振部、20…受付部、21…出力部、22…検知部、23…判定部、24…追尾制御部、25…レーザ制御部、30…管理サーバ、31…制御部、32…メモリ、33…記憶部、34…通信部、35…操作部、36…表示部、37…表示制御部、50…ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6