(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025033775
(43)【公開日】2025-03-13
(54)【発明の名称】漏液検知装置
(51)【国際特許分類】
G08B 21/18 20060101AFI20250306BHJP
G01F 23/00 20220101ALI20250306BHJP
【FI】
G08B21/18
G01F23/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023139737
(22)【出願日】2023-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 嘉人
【テーマコード(参考)】
2F014
5C086
【Fターム(参考)】
2F014DA02
5C086AA42
5C086BA01
5C086CA04
5C086CB08
5C086CB27
5C086CB32
5C086DA08
(57)【要約】
【課題】センサと容器内に収容された無線通信機とを接続する配線を通すための配線孔から容器内部への液体の浸入を防止することができる漏液検知装置を提供する。
【解決手段】漏液検知装置(100)は、センサ(60)と、無線通信機(70)と、配線(80)と、容器(30)と、支持部材とを備える。センサ(60)は、液体が接触している状態で液体の漏れを検知して検知信号を出力する。無線通信機(70)は、センサ(60)から検知信号を受信し、検知信号を装置外部に送信する。配線(80)は、センサ(60)と無線通信機(70)とを接続する。容器(30)は、無線通信機(70)を気密に収容する内部空間を有する。容器(30)には、配線(80)を挿通するための配線孔(32)が形成されている。漏液検知装置(100)が液面に浮上している状態において、鉛直方向における配線孔(32)の高さは、液面の高さよりも高い。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
漏液検知装置であって、
液体が接触している状態で前記液体の漏れを検知して検知信号を出力するセンサと、
前記センサから前記検知信号を受信し、前記検知信号を装置外部に送信する無線通信機と、
前記センサと前記無線通信機とを接続する配線と、
前記無線通信機を気密に収容する内部空間を有する容器と、
前記漏液検知装置が設置される設置面の鉛直方向上方に位置するように、前記設置面に対して前記センサおよび前記容器を支持する支持部材とを備え、
前記容器には、前記配線を挿通するための配線孔が形成されており、
前記漏液検知装置が液面に浮上している状態において、前記鉛直方向における前記配線孔の高さは、前記液面の高さよりも高い、漏液検知装置。
【請求項2】
前記支持部材は、前記容器が前記センサに対して前記鉛直方向上方に位置するように、前記センサおよび前記容器を支持する、請求項1に記載の漏液検知装置。
【請求項3】
前記容器は、直方体状または円柱状の形状であり、逆円錐状または逆四角錐状の底部を有する、請求項1に記載の漏液検知装置。
【請求項4】
前記容器は、前記底部に取り付けられた重りをさらに有する、請求項3に記載の漏液検知装置。
【請求項5】
前記容器および前記センサの上面および側面を覆うように形成された囲い部をさらに備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の漏液検知装置。
【請求項6】
前記無線通信機は、前記検知信号を管理サーバに送信する、請求項1に記載の漏液検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、漏液検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2004-362384号公報(特許文献1)には、集合住宅の台所や洗面所などの水を使用する箇所付近の床下に設置される漏水検知装置が開示されている。この漏水検知装置は、装置本体、電源部、警報部および制御部をケーシング内に収容するとともに、センサー部をケーシングの表面に位置せしめている。センサー部は、2本の電極から構成されており、水漏れが発生すると電極間が短絡するように構成されている。電極間が短絡すると、電源部からの電力により警報部が警報を発生する。ケーシングは浮き構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
センサー部は水が接触することで漏水を検知するように構成されているため、ケーシングの表面にセンサー部を配置する必要がある。このセンサー部とケーシング内の警報部とを配線で繋ぐことによって、センサー部からの信号を警報部が受信することができる。
【0005】
しかしながら、センサー部からケーシング内に配線を引き込むための開口(配線孔)をケーシングに設けることで、この配線孔を通じてケーシング内に水が浸入することが懸念される。特許文献1ではケーシングを密閉型とするものの、上記のような問題については特に検討されていない。
【0006】
本開示は、かかる問題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、センサと容器内に収容された無線通信機とを接続する配線を通すための配線孔から容器内部への液体の浸入を防止することができる漏液検知装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る漏液検知装置は、センサと、無線通信機と、配線と、容器と、支持部材とを備える。センサは、液体が接触している状態で液体の漏れを検知して検知信号を出力する。無線通信機は、センサから検知信号を受信し、検知信号を装置外部に送信する。配線は、センサと無線通信機とを接続する。容器は、無線通信機を気密に収容する内部空間を有する。支持部材は、漏液検知装置が設置される設置面の鉛直方向上方に位置するように、設置面に対してセンサおよび容器を支持する。容器には、配線を挿通するための配線孔が形成されている。漏液検知装置が液面に浮上している状態において、鉛直方向における配線孔の高さは、液面の高さよりも高い。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、センサと容器内に収容された無線通信機とを接続する配線を通すための配線孔から容器内部への液体の浸入を防止することができる漏液検知装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態に従う漏液検知装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示した本体部の構成を示す斜視図である。
【
図4】
図1に示されるIV-IV線における断面図である。
【
図5】本実施の形態に従う漏液検知装置の動作を説明する図である。
【
図6】本実施の形態に従う漏液検知装置の動作を説明する図である。
【
図7】配線孔の位置と液体Wの液位との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0011】
<漏液検知装置の構成>
図1は、本開示の実施の形態に従う漏液検知装置の外観を示す斜視図である。
図1に示すように、本実施の形態に従う漏液検知装置100は、検知対象となる建物などの床面に設置され、当該床面における液体の漏れを検知するための装置である。ある局面では、漏液検知装置100は、建物の屋上に設置され、屋上に雨水が溜まることを検知するために用いられる。別の局面では、漏液検知装置100は、地下室に設置され、地下室に水が溜まることを検知するために用いられる。
【0012】
図1に示すように、漏液検知装置100は、囲い部10と、本体部20とを備える。
【0013】
本体部20は、漏液検知装置100が設置される面(設置面)300上に設置される。本体部20は、例えば直方体形状の外形を有する。本体部20は、漏液を検知するためのセンサを含む。センサは、液体が接触している状態において液体の漏れを検知することが可能に構成されている。
【0014】
囲い部10は、本体部20の上面に取り付けられる。囲い部10は、本体部20の上面および側面を覆うように形成されている。囲い部10は、例えば、鉛直方向下方に向けて開口する略箱形形状を有している。囲い部10は、漏液検知装置100が屋外に設置される場合において、本体部20に設けられたセンサに雨水がかかることによる誤検知を防止するために設けられている。
【0015】
図2は、
図1に示した本体部20の構成を示す斜視図である。
図2に示すように、本体部20は、容器30と、複数の脚部材40A~40Dと、台座部50と、センサ60と、配線80とを含んで構成される。
【0016】
容器30は、例えば、直方体形状を有している。容器30は、無線通信機を気密に収容する内部空間を有している(
図3参照)。容器30および囲い部10(
図1)は、無線通信機が発信する信号(電波)を透過する材料(例えば、プラスチックなど)で形成されている。容器30の形状は直方体に限定されるものではなく、上面および底面が円形である円柱状であってもよい。
【0017】
複数の脚部材40A~40Dは、設置面300に対して容器30を支持する。複数の脚部材40A~40Dは、鉛直方向に延在し、容器30の底面の四隅にそれぞれ取り付けられている。複数の脚部材40A~40Dに支持されることにより、容器30は設置面300の鉛直上方に位置する。脚部材40A~40Dは、
図2のように容器30の底面の四隅に配置されていなくても、容器30を支持することができればどのような配置であってもよく、その本数も4本に限られるものではない。
【0018】
台座部50は、複数の脚部材40A~40Dに取り付けられる。台座部50は、矩形形状の薄板から形成されている。台座部50は、容器30と設置面300との間に位置する。
【0019】
センサ60は、台座部50に載置される。複数の脚部材40A~40Dおよび台座部50は、設置面300の鉛直方向上方に位置するように、設置面300に対してセンサ60および容器30を支持する「支持部材」の一実施例に対応する。
【0020】
センサ60は、例えば、漏液センサまたは液位センサである。ある局面では、漏液センサは、漏液検知帯を含んで構成される。漏液検知帯は2本の電極を有している。漏液検知帯に液体が接触すると、液体を介してこの2本の電極間に電流が流れるため、電極間の電気抵抗値が変化する。漏液センサは、この電気抵抗値の変化に基づいて液体の漏れを検知し、検知信号を出力するように構成されている。
【0021】
液位センサは、例えば、液体に触れた状態で液位を計測する接触式の液位センサである。接触式の液位センサの一例である圧力式水位センサは、液体の圧力を検知することで液体の液位を計測するように構成されている。液位センサは、液位の計測値を示す検知信号を出力する。
【0022】
配線80は、センサ60と容器30内に収容された無線通信機とを接続する。配線80は、センサ60から出力される検知信号を無線通信機に伝送する。配線80には防水処理が施されている。
【0023】
図3は、容器30の内部を示す斜視図である。
図3では、容器30の内部が透視した状態で描かれている。
【0024】
図3に示すように、容器30の内部空間には、無線通信機70が収容されている。無線通信機70は、配線80によってセンサ60と通信可能に接続されている。無線通信機70は、配線80を介してセンサ60からの検知信号を受信する。
【0025】
無線通信機70は、例えば、LPWA(Low Power Wide Area)等の無線通信規格に従う通信方式を用いて、センサ60から受信した検知信号を管理サーバ200へ送信する。管理サーバ200は、例えば、建物を管理する管理会社に設置されている。LPWAは、低消費電力で遠距離のデータ通信を可能とする無線通信技術である。LPWAは、低速な狭帯域を利用するため、10kmを超える長距離のデータ通信が可能である。これにより、管理サーバ200は、建物の屋上や地下室における漏液を遠隔で監視することが可能となる。
【0026】
容器30の1つの側面には、配線80を挿通するための配線孔32が形成されている。配線80は配線孔32を通って容器30内の無線通信機70に接続される。無線通信機70に液体がかかると、無線通信機70を構成する電気部品が故障する可能性がある。そのため、容器30の内部に液体が浸入することを防ぐことが必要となる。
【0027】
本実施の形態では、漏液検知装置100が液面に浮上している状態において、鉛直方向における配線孔32の高さは、液面の高さよりも高くなるように、配線孔32が形成されている。これによると、漏液が発生している場合においても、液体が配線孔32に触れることがないため、配線孔32を通じて液体が容器30内に浸入することを未然に防ぐことができる。配線孔32の配置については、後ほど詳しく説明する。
【0028】
図4は、
図1に示されるIV-IV線における断面図である。
図4に示すように、囲い部10は、鉛直方向下方に向けて開口しており、本体部20の上面および側面を覆っている。囲い部10は、鉛直方向上方から降りかかる液体(例えば、雨水など)が少なくともセンサ60にかかることを防止する。
図4の例では、囲い部10の下端の鉛直方向における高さを、センサ60の鉛直方向における高さよりも低くすることで、センサ60に液体がかかることを防止している。
【0029】
容器30の底部34の外形形状は、鉛直方向下方に向かって徐々に幅寸法が小さくなる逆四角錐の形状となっている。図示は省略するが、容器30の底面が円形であれば、底部34の外形形状は逆円錐の形状とすることができる。
【0030】
底部34には、重り36が取り付けられている。これにより、漏液検知装置100の重心の位置を低くしている。重心の位置を低くすることで、漏液検知装置100が液面に浮上している状態において、傾いた漏液検知装置100を元の状態に戻そうとする力(復原力)を生じさせることができる。復原力は、傾いた船舶を元に戻そうとする力であり、重心の作用線が浮力の作用線の外側にくることによって生じる。復原力を生じさせることで、漏液検知装置100が転覆することを防ぐことができる。なお、底部34に重り36を取り付ける構成に代えて、底部34および重り36を一体として底部34が重りの機能を有する構成としてもよい。
【0031】
<漏液検知装置の動作>
次に、
図5および
図6を参照して、本実施の形態に従う漏液検知装置100の動作について説明する。
図5および
図6には、漏液検知装置100の断面図が示されている。
【0032】
図5(A)は、設置面300に液体Wが溜まり始めている状態を示している。この状態では、液体Wの液位が、センサ60の鉛直方向における高さよりも低いため、センサ60には液体が接触していない。そのため、無線通信機70は、センサ60から検知信号を受信しておらず、その結果検知信号を発信していない。
【0033】
液体Wの液位が徐々に上昇し、
図5(B)に示すように、センサ60に液体Wが接触すると、センサ60は、液体Wの漏れを検知して検知信号を出力する。検知信号は、配線80を経由して無線通信機70へ伝送される。無線通信機70は、センサ60から検知信号を受信すると、受信した検知信号を管理サーバ200へ送信する。
【0034】
図6(A)は、液体Wの液位と無線通信機70の鉛直方向における高さとが略同じとなっている状態を示している。この状態においても、無線通信機70は、容器30の内部に気密に収容されているため、無線通信機70に液体Wがかかることがない。したがって、無線通信機70は、センサ60からの検知信号を管理サーバ200へ送信することができる。
【0035】
液体Wの液位が上昇するに伴い、
図6(B)に示すように、漏液検知装置100が液面に浮上した状態となる。上述したように、容器30の底部34には重り36が取り付けられて漏液検知装置100の重心を低くしたことにより、漏液検知装置100の転覆を防ぐことができる。
【0036】
このように漏液検知装置100が液面に浮上している状態において、容器30の配線孔32の鉛直方向における高さは、液体Wの液位よりも高い。そのため、液体Wが配線孔32に触れることがない。
【0037】
図7は、配線孔32の位置と液体Wの液位との関係を示す図である。
図7に示すように、漏液検知装置100が液面に浮上している状態では、重心と浮心とは同じ鉛直線上に位置している。重心の位置に働く重力と、浮心の位置に働く浮力とは釣り合っている。
【0038】
なお、漏液検知装置100が傾いた場合には、重心の位置はそのままであるのに対し、浮心の位置が変化するため、重力と浮力とが同じ鉛直線上に位置しない状態となる。この2つの力を受けて漏液検知装置100には元にもどろうとする力(復原力)が働く。
【0039】
図7に示すように、容器30に形成された配線孔32は、液体Wの液位よりも鉛直方向上方に位置しているため、液体Wが配線孔32に触れることがない。その結果、配線孔32を通じて液体Wが容器30内に浸入することを防ぐことができる。
【0040】
すなわち、漏液検知装置100が浮上しているときの液体Wの液位よりも配線孔32の鉛直方向における高さが高くなるように、配線孔32の位置を決めることによって、無線通信機70に液体がかかることを未然に防ぐことができる。このような配線孔32の位置は、漏液検知装置100の重心、浮心、重力および浮力などに基づいて実験またはシミュレーションによって導出することができる。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態に係る漏液検知装置100によれば、漏液検知装置100が液面に浮上している状態において、液体が配線孔32に触れることがないため、配線孔32を通じて液体が容器30内に浸入することを未然に防ぐことができる。したがって、容器30内に収容された無線通信機70は、センサ60からの検知信号を管理サーバ200へ送信し続けることができる。
【0042】
[付記]
上述した実施形態は、以下の付記の具体例である。
【0043】
(付記1)
漏液検知装置であって、
液体が接触している状態で前記液体の漏れを検知して検知信号を出力するセンサと、
前記センサから前記検知信号を受信し、前記検知信号を装置外部に送信する無線通信機と、
前記センサと前記無線通信機とを接続する配線と、
前記無線通信機を気密に収容する内部空間を有する容器と、
前記漏液検知装置が設置される設置面の鉛直方向上方に位置するように、前記設置面に対して前記センサおよび前記容器を支持する支持部材とを備え、
前記容器には、前記配線を挿通するための配線孔が形成されており、
前記漏液検知器が液面に浮上している状態において、前記鉛直方向における前記配線孔の高さは、前記液面の高さよりも高い、漏液検知装置。
【0044】
(付記2)
前記支持部材は、前記容器が前記センサに対して前記鉛直方向上方に位置するように、前記センサおよび前記容器を支持する、付記1に記載の漏液検知装置。
【0045】
(付記3)
前記容器は、直方体状または円柱状の形状であり、逆円錐状または逆四角錐状の底部を有する、付記1または付記2に記載の漏液検知装置。
【0046】
(付記4)
前記容器は、前記底部に取り付けられた重りをさらに有する、付記3に記載の漏液検知装置。
【0047】
(付記5)
前記容器および前記センサの上面および側面を覆うように形成された囲い部をさらに備える、付記1から付記4のいずれかに記載の漏液検知装置。
【0048】
(付記6)
前記無線通信機は、前記検知信号を管理サーバに送信する、付記1から付記5のいずれかに記載の漏液検知装置。
【0049】
本開示の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0050】
10 囲い部、20 本体部、30 容器、32 配線孔、34 底部、36 重り、40A~40D 脚部材、50 台座部、60 センサ、70 無線通信機、80 配線、100 漏液検知装置、200 管理サーバ、300 設置面、W 液体。