(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003400
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】ヒートパスコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/533 20060101AFI20241226BHJP
H01R 12/91 20110101ALI20241226BHJP
H01R 12/71 20110101ALI20241226BHJP
【FI】
H01R13/533 A
H01R12/91
H01R12/71
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024099797
(22)【出願日】2024-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2023103544
(32)【優先日】2023-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000105338
【氏名又は名称】ケル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(72)【発明者】
【氏名】阿部 義宏
(72)【発明者】
【氏名】恩田 耕太郎
【テーマコード(参考)】
5E087
5E223
【Fターム(参考)】
5E087EE02
5E087EE14
5E087FF03
5E087FF06
5E087GG06
5E087HH01
5E087HH02
5E087MM02
5E087RR11
5E087RR31
5E223AB26
5E223AB74
5E223AC21
5E223BA01
5E223BA07
5E223BB01
5E223BB12
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5E223CB31
5E223CB84
5E223CD01
5E223DA05
5E223DB08
5E223DB11
5E223DB25
5E223EA03
5E223EA13
5E223EB04
(57)【要約】
【課題】 放熱機能を備えたヒートパスコネクタを提供する。
【解決手段】 基板B1、B2に取り付けられて使用され、相手方コネクタと嵌合可能なコネクタ2a、2bであって、コンタクトCと、コンタクトCを保持するハウジングDと、導電性の高い材料により形成され、ハウジングDを囲んで取り付けられるシェル40、90と、を備え、シェル40、90は、コネクタ2a、2bを基板B1、B2に接合するためのマウント部Mと、放熱機能を有した放熱部Kとを有して構成され、基板B1、B2は、マウント部Mを接合するためのシェル接合部Sを有し、基板B1、B2上の発熱部Hからの熱がシェル接合部Sに伝わるようになっており、マウント部Mをシェル接合部Sに接合してシェル40、90が基板B1、B2に取り付けられたときに、シェル接合部Sに伝えられた熱をマウント部Mから放熱部Kに伝えて放熱可能であることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に取り付けられて使用され、相手方コネクタと嵌合可能なコネクタであって、
コンタクトと、
前記コンタクトを保持するハウジングと、
導電性の高い材料により形成され、前記ハウジングを囲んで取り付けられるシェルと、を備え、
前記シェルは、前記コネクタを前記基板に接合するためのマウント部と、放熱機能を有した放熱部とを有して構成され、
前記基板は、前記マウント部を接合するためのシェル接合部を有し、前記基板上の発熱部からの熱が前記シェル接合部に伝わるようになっており、
前記マウント部を前記シェル接合部に接合して前記シェルが前記基板に取り付けられたときに、前記シェル接合部に伝えられた熱を前記マウント部から前記放熱部に伝えて放熱可能であることを特徴とするヒートパスコネクタ。
【請求項2】
前記放熱部は、前記シェルの表面に、メッキ処理を施すことによって形成される凹凸部を有し、前記シェルの表面積が増えるように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のヒートパスコネクタ。
【請求項3】
前記シェルは、前記相手方コネクタと嵌合する嵌合部に、表面が平滑な平滑部を有し、前記シェルと前記相手方コネクタの前記シェルとの接触面積が大きくなるように構成されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載のヒートパスコネクタ。
【請求項4】
前記基板は、前記発熱部からの熱を前記シェル接合部に伝えるための伝熱経路を有し、前記伝熱経路は導電性の配線パターンにより形成される、ことを特徴とする請求項1に記載のヒートパスコネクタ。
【請求項5】
前記マウント部は、前記シェル接合部に接合されたままの状態で弾性変形可能な導電性の足部を有する、ことを特徴とする請求項1のヒートパスコネクタ。
【請求項6】
前記足部は、前記シェルから外側に向かってL字状に屈曲した形状を有する、ことを特徴とする請求項5に記載のヒートパスコネクタ。
【請求項7】
基板に取り付けられて使用され、相手方コネクタと嵌合可能なコネクタであって、
導電性の高い材料により形成される放熱板と、
前記基板上に取り付けた際に前記基板上において前記放熱板よりも外側に配置されるコンタクトと、
前記コンタクトと前記放熱板とを保持するハウジングとを備え、
前記放熱板は、前記基板に接合するためのマウント部と、放熱機能を有した放熱部とを有して構成され、
前記基板は、前記マウント部を接合するための放熱板接合部を有し、前記基板上の発熱部からの熱が前記放熱板接合部に伝わるようになっており、
前記マウント部を前記放熱板接合部に接合して前記放熱板が前記基板に取り付けられたときに、前記放熱板接合部に伝えられた熱を前記マウント部から前記放熱部に伝えて放熱可能であることを特徴とするヒートパスコネクタ。
【請求項8】
前記放熱部は、前記放熱板の表面に、メッキ処理を施すことによって形成される凹凸部を有し、前記放熱板の表面積が増えるように構成されている、請求項7に記載のヒートパスコネクタ。
【請求項9】
前記放熱板は、前記相手方コネクタと嵌合する嵌合部に、表面が平滑な平滑部を有し、前記放熱板と前記相手方コネクタの前記放熱板との接触面積が大きくなるように構成されている、ことを特徴とする請求項7または8に記載のヒートパスコネクタ。
【請求項10】
前記基板は、前記発熱部からの熱を前記放熱板接合部に伝えるための伝熱経路を有し、前記伝熱経路は導電性の配線パターンにより形成される、ことを特徴とする請求項7に記載のヒートパスコネクタ。
【請求項11】
前記コンタクトは、表面に放熱機能を有して構成される、ことを特徴とする請求項1または7に記載のヒートパスコネクタ。
【請求項12】
前記コンタクトは、前記表面にメッキ処理を施すことによって形成される凹凸部を有し、前記コンタクトの表面積が増えるように構成されている、ことを特徴とする請求項11に記載のヒートパスコネクタ。
【請求項13】
前記基板は、前記発熱部からの熱を前記コンタクトのうち一部の前記コンタクトにおいて前記コンタクトが前記基板に取り付けられたときに前記基板と前記コンタクトとの接合部に伝えるための伝熱経路を有し、前記伝熱経路は導電性の配線パターンにより形成される、ことを特徴とする請求項11に記載のヒートパスコネクタ。
【請求項14】
基板に取り付けられて使用され、相手方コネクタと嵌合可能なコネクタであって、
複数のコンタクトと、
前記複数のコンタクトを保持するハウジングと、を備え、
前記コンタクトは、表面に放熱機能を有して構成され、
前記基板から前記コンタクトに伝わる熱を前記放熱機能によって放熱可能であることを特徴とするヒートパスコネクタ。
【請求項15】
前記コンタクトは、前記表面にメッキ処理を施すことによって形成される凹凸部を有し、前記コンタクトの表面積が増えるように構成される、ことを特徴とする請求項14に記載のヒートパスコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的な接続に用いられるヒートパスコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高度化、小型化が進んでおり、電子機器内部のプリント基板上に設けられた電子部品等から発生する熱が問題になっている。このようなプリント基板上での接続に用いられる電気コネクタとして、従来、コネクタの一部に放熱のための穴を設けた特許文献1のようなコネクタが知られている。特許文献1のコネクタは、基板上に固定された固定ハウジングと可動ハウジングを有し、可動ハウジングが端子を収容する収容空間に、収容空間内の熱を外部空間へ放熱する放熱部を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような構成のコネクタにおいては、コネクタに伝わった熱を放熱させるものであり、基板上の熱をコネクタに伝導させて放熱させる効果的なものとは言えない。限られた体積条件下で効率よく放熱を行うためには、熱源からの熱を、放熱機能を有する部分まで伝導させ放熱させる新たな構成が必要である。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、基板上の熱をコネクタに伝導させ、その熱を放熱させる機能を備えたコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、第1の本発明に係るヒートパスコネクタは、基板に取り付けられて使用され、相手方コネクタと嵌合可能なコネクタであって、コンタクトと、前記コンタクトを保持するハウジングと、導電性の高い材料により形成され、前記ハウジングを囲んで取り付けられるシェルと、を備え、前記シェルは、前記コネクタを前記基板に接合するためのマウント部と、放熱機能を有した放熱部とを有して構成され、前記基板は、前記マウント部を接合するためのシェル接合部を有し、前記基板上の発熱部からの熱が前記シェル接合部に伝わるようになっており、前記マウント部を前記シェル接合部に接合して前記シェルが前記基板に取り付けられたときに、前記シェル接合部に伝えられた熱を前記マウント部から前記放熱部に伝えて放熱可能であることを特徴とする。
【0007】
第1の本発明に係るヒートパスコネクタにおいて、前記放熱部は、前記シェルの表面に、メッキ処理を施すことによって形成される凹凸部を有し、前記シェルの表面積が増えるように構成されていることが好ましい。
【0008】
また、第1の本発明に係るヒートパスコネクタにおいて、前記シェルは、前記相手方コネクタと嵌合する嵌合部に、表面が平滑な平滑部を有し、前記シェルと前記相手方コネクタの前記シェルとの接触面積が大きくなるように構成されていることが好ましい。
【0009】
また、第1の本発明に係るヒートパスコネクタにおいて、前記基板は、前記発熱部からの熱を前記シェル接合部に伝えるための伝熱経路を有し、前記伝熱経路は導電性の配線パターンにより形成されていることが好ましい。
【0010】
また、第1の本発明に係るヒートパスコネクタにおいて、前記マウント部は、前記シェル接合部に接合されたままの状態で弾性変形可能な導電性の足部を有することが好ましい。
【0011】
また、第1の本発明に係るヒートパスコネクタにおいて、前記足部は、前記シェルから外側に向かってL字状に屈曲した形状を有することが好ましい。
【0012】
また、上記目的を達成するため、第2の本発明に係るヒートパスコネクタは、基板に取り付けられて使用され、相手方コネクタと嵌合可能なコネクタであって、導電性の高い材料により形成される放熱板と、前記基板上に取り付けた際に前記基板上において前記放熱板よりも外側に配置されるコンタクトと、前記コンタクトと前記放熱板とを保持するハウジングとを備え、前記放熱板は、前記基板に接合するためのマウント部と、放熱機能を有した放熱部とを有して構成され、前記基板は、前記マウント部を接合するための放熱板接合部を有し、前記基板上の発熱部からの熱が前記放熱板接合部に伝わるようになっており、前記マウント部を前記放熱板接合部に接合して前記放熱板が前記基板に取り付けられたときに、前記放熱板接合部に伝えられた熱を前記マウント部から前記放熱部に伝えて放熱可能であることを特徴とする。
【0013】
第2の本発明に係るヒートパスコネクタにおいて、前記放熱部は、前記放熱板の表面に、メッキ処理を施すことによって形成される凹凸部を有し、前記放熱板の表面積が増えるように構成されていることが好ましい。
【0014】
また、第2の本発明に係るヒートパスコネクタにおいて、前記放熱板は、前記相手方コネクタと嵌合する嵌合部に、表面が平滑な平滑部を有し、前記放熱板と前記相手方コネクタの前記放熱板との接触面積が大きくなるように構成されていることが好ましい。
【0015】
また、第2の本発明に係るヒートパスコネクタにおいて、前記基板は、前記発熱部からの熱を前記放熱板接合部に伝えるための伝熱経路を有し、前記伝熱経路は導電性の配線パターンにより形成されていることが好ましい。
【0016】
また、第1または第2の本発明に係るヒートパスコネクタにおいて、前記コンタクトは、表面に放熱機能を有して構成されることが好ましい。
【0017】
また、第1または第2の本発明に係るヒートパスコネクタにおいて、前記コンタクトは、前記表面にメッキ処理を施すことによって形成される凹凸部を有し、前記コンタクトの表面積が増えるように構成されていることが好ましい。
【0018】
また、第1または第2の本発明に係るヒートパスコネクタにおいて、前記基板は、前記発熱部からの熱を前記コンタクトのうち一部の前記コンタクトにおいて前記コンタクトが前記基板に取り付けられたときに前記基板と前記コンタクトとの接合部に伝えるための伝熱経路を有し、前記伝熱経路は導電性の配線パターンにより形成されることが好ましい。
【0019】
また、上記目的を達成するため、第3の本発明に係るヒートパスコネクタは、基板に取り付けられて使用され、相手方コネクタと嵌合可能なコネクタであって、複数のコンタクトと、前記複数のコンタクトを保持するハウジングと、を備え、前記コンタクトは、表面に放熱機能を有して構成され、前記基板から前記コンタクトに伝わる熱を前記放熱機能によって放熱可能であることを特徴とする。
【0020】
また、第3の本発明に係るヒートパスコネクタにおいて、前記コンタクトは、前記表面にメッキ処理を施すことによって形成される凹凸部を有し、前記コンタクトの表面積が増えるように構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
第1の本発明に係るヒートパスコネクタによれば、基板上の発熱部からの熱をシェル接合部に伝え、導電性の高い材料で形成されたマウント部を介してシェルに伝導させて放熱部から放熱させることが可能となる。また、発熱部のある基板上に設けられたコネクタから、嵌合する相手方コネクタに熱を伝導させ、相手方コネクタのシェルが有する放熱部から放熱させることが可能となる。
【0022】
また、上記構成のヒートパスコネクタにおいて、放熱部がメッキ処理によって凹凸部を形成するように構成されることで、放熱部の表面積を増やすことができるため、放熱の効果を高めることができる。
【0023】
さらに、上記構成のヒートパスコネクタにおいて、相手方コネクタと嵌合する嵌合部に平滑部を有し、相手方のシェルとの接触面積が大きくなるように構成されるため、嵌合部における熱伝導性を高めることができるため、相手方コネクタでの放熱量を増やすことができ、コネクタ全体としての放熱の効果を一層高めることができる。
【0024】
さらに、上記構成のヒートパスコネクタにおいて、基板上に、発熱部からの熱をシェル接合部に伝えるための伝熱経路が配線パターンとして構成されることで、放熱の効果の高い放熱部への熱伝導が可能となり、放熱の効果を一層高めることができる。
【0025】
さらに、上記構成のヒートパスコネクタにおいて、マウント部は、シェル接合部に接合されたままの状態で弾性変形可能な導電性の足部を有することで、コネクタが基板に接合された状態で、コネクタと基板との接合部分に対して相対的に移動可能な部分を有するコネクタ、例えばフローティングコネクタの場合にも、マウント部が接合されたまま足部の弾性変形により相対移動に追従させることができるため、当該ヒートパスコネクタを適用することが可能となる。
【0026】
さらに、上記構成のヒートパスコネクタにおいて、足部がシェルから外側に向かってL字状に屈曲した形状を有することで、より一層、弾性変形しやすくすることができる。
【0027】
第2の本発明に係るヒートパスコネクタによれば、基板上の発熱部からの熱をコンタクトよりも内側に配置された放熱板の放熱板接合部に伝え、導電性の高い材料で形成されたマウント部を介して放熱板に伝導させて放熱部から放熱させることが可能となる。また、発熱部のある基板上に設けられたコネクタから、嵌合する相手方コネクタに熱を伝導させ、相手方コネクタの放熱板が有する放熱部から放熱させることが可能となる。
【0028】
また、上記構成のヒートパスコネクタにおいて、放熱板がメッキ処理によって形成される凹凸部を有するように構成されることで、放熱部の表面積を増やすことができ、放熱の効果を高めることができる。
【0029】
さらに、上記構成のヒートパスコネクタにおいて、相手方放熱板と嵌合する嵌合部に平滑部を有することで、相手方の放熱板との接触面積が大きくなるため、嵌合部における熱伝導性を高めることができるため、相手方コネクタでの放熱量を増やすことができ、コネクタ全体としての放熱の効果を一層高めることができる。
【0030】
さらに、上記構成のヒートパスコネクタにおいて、基板上に、発熱部からの熱を放熱板接合部に伝えるための伝熱経路が配線パターンとして構成されることで、放熱板における放熱部への熱伝導が可能となり、放熱の効果を一層高めることができる。その際、放熱板の外側にコンタクトが配置される構成とすることで、基板上における放熱板接合部への伝熱経路を確保しつつ、コンタクトへ配線パターンの領域を確保することができる。
【0031】
さらに、上記構成のヒートパスコネクタにおいて、コンタクトが表面に放熱機能を有して構成されることで、シェルや放熱板が有する放熱部での放熱に加えて、基板上からコンタクトに伝わる熱をコンタクト放熱部からも放熱させることが可能となる。これにより、コネクタが小さくシェル自体が小型にならざるを得ない場合でも、コンタクトによって放熱の効果を得ることができる。また、例えば上記のシェルを用いる場合にはコンタクトと基板との接続部の外側にシェルと基板との接続部であるシェル接合部および伝熱経路を設ける必要があり、基板上にコンタクトに繋がる配線パターンを形成するのにシェル接合部および伝熱経路をさけて配線パターンを設ける必要があるという制約が生じるなどのシェルの放熱部やマウント部の表面積を十分に確保することができない場合でも、コネクタ近傍で生じる熱の一部をコンタクトから放熱させることができる。
【0032】
さらに、上記構成のヒートパスコネクタにおいて、コンタクトが、コンタクトの表面にメッキ処理を施すことによって凹凸部を有することで、コンタクトの表面積を増やすことができるため、コンタクトでの放熱の効果を高めることができる。
【0033】
さらに、上記構成のヒートパスコネクタにおいて、コンタクトのうち一部のコンタクトに基板からの熱を伝える伝熱経路を有し、そのコンタクトを放熱専用として構成することで、コンタクトからの放熱を効率的に行うことができる。
【0034】
本発明に係るヒートパスコネクタによれば、コネクタが複数のコンタクトと、コンタクトを保持するハウジングとを備え、コンタクトの表面に放熱機能を有して構成される。これにより、基板からコネクタに伝わる熱をコンタクトから放熱させることができる。また、コンタクトに伝わった熱を、嵌合する相手方コネクタに伝導させ、相手方コネクタのコンタクトから放熱させることができる。
【0035】
さらに、上記構成のヒートパスコネクタにおいて、コンタクトが、コンタクトの表面にメッキ処理を施すことによって凹凸部を有することで、コンタクトの表面積を増やすことができるため、コンタクトでの放熱の効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明に係るヒートパスコネクタのしくみを説明する概略図である。
【
図2】本発明に係るヒートパスコネクタのしくみを説明する一部を拡大した概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るヒートパスコネクタを備えたコネクタ装置の嵌合状態における斜視図である。
【
図4】
図3における矢印V-Vに沿った断面図である。
【
図5】上記コネクタ装置のプラグコネクタの斜視図である。
【
図7】
図5における矢印VI-VIに沿った断面図である。
【
図8】上記プラグ側シェルの斜視図(a)および左右分解したうちの左面を示す斜視図(b)である。
【
図9】上記プラグコネクタの基板接合状態を示す斜視図(a)および組み立て状態を説明する斜視図(b)である。
【
図10】上記レセプタクルコネクタの斜視図である。
【
図11】上記レセプタクルコネクタの平面図である。
【
図12】
図10における矢印VII-VIIに沿った断面図である。
【
図13】上記レセプタクル側シェルの斜視図(a)および左右分解したうちの右面を示す斜視図(b)である。
【
図14】上記レセプタクルコネクタの基板接合状態を示す斜視図(a)および組み立て状態を説明する斜視図(b)である。
【
図15】本発明の一実施形態に係るヒートパスコネクタを備えたコネクタ装置の篏合前のプラグコネクタ(a)およびレセプタクルコネクタ(b)を示す斜視図である。
【
図16】本発明の一実施形態に係るコネクタ装置の篏合前のプラグ側放熱板(a)およびレセプタクル側放熱板(b)を示す斜視図である。
【
図17】
図15における一点破線VIII-VIIIに沿った本発明の一実施形態に係るヒートパスコネクタを備えたコネクタ装置の篏合時の斜視断面図である。
【
図18】本発明の一実施形態に係るヒートパスコネクタを備えたコネクタ装置の篏合時のプラグ側放熱板およびレセプタクル側放熱板の斜視図である。
【
図19】
図15における一点破線VIII-VIIIに沿った本発明の一実施形態に係るヒートパスコネクタを備えたコネクタ装置の篏合時の断面図である。
【
図20】本発明に係るヒートパスコネクタのしくみを説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(第1実施形態)
本発明に係るヒートパスコネクタは、基板上の熱を放熱する効果を高めたコネクタである。このようなヒートパスコネクタを備えた第1実施形態に係るコネクタ装置1における放熱のしくみを説明する。まずは、
図1を参照しながらコネクタ装置1の構成について説明する。具体的なコネクタ装置1については、後述の実施形態で述べる。
【0038】
コネクタ装置1は、基板上に設けられる互いに嵌合する第1基板B1上に設けられるプラグコネクタ2aと、第2基板B2上に設けられるレセプタクルコネクタ2bとから構成される。コネクタ2a、2bは、それぞれコンタクトCと、コンタクトCを収容するハウジングDと、ハウジングDを取り囲んで取り付けられるシェル40、90とから構成されている。シェル40、90は基板B1、B2上に形成されたシェル接合部Sにそれぞれ接合されている。プラグコネクタ2aのシェルをプラグ側シェル40、レセプタクルコネクタ2bのシェルをレセプタクル側シェル90と呼ぶことにする。各シェル40、90は、導電性の高い材料を用いて成形されている。また、ハウジングDは、合成樹脂等の電気絶縁性の材料を用いて成形されている。なお、コネクタ装置1のコンタクトC、ハウジングD、マウント部M、放熱部Kは、同じ機能を有するものに同じ記号を用いて説明しているが、構成や形状は異なっている。
【0039】
第2基板B2上に発熱体となる電子部品Aが設置されており、電子部品Aの近傍の基板には電子部品Aの熱により温められた発熱部Hが生じている。そして、発熱部Hと第2基板B2上に接合されたコネクタのシェル接合部Sとの間には、伝熱経路100が形成されている。また、第1基板B1上には放熱のための放熱部材Bが設置されており、第1基板B1上に接合されたコネクタのシェル接合部Sと放熱部材Bの間にも、伝熱経路100が形成されている。シェル接合部S、伝熱経路100は導電性を有した素材で形成されており、発熱部Hとコネクタ装置1もしくは放熱部材Bとコネクタ装置1の間を効果的に熱伝導を行う効果を得ることができる。シェル接合部Sとしては、例えば基板パターン(配線パターン)により形成される。
【0040】
伝熱経路100は、導電性を有した素材により基板上に設けられる。伝熱経路100は、基板上に設けられる配線パターンにより構成されてもよいし、熱伝導性の高い金属により、直接、電子部品Aなどの発熱体からコネクタ、もしくは放熱部材Bからコネクタまで接続するようにしてもよい。また、ベイパーチャンバーのような熱交換部材を用いてコネクタまで熱を誘導するようにしてもよい。
【0041】
プラグ側シェル40、レセプタクル側シェル90は、それぞれ基板に接合するためのマウント部Mと、放熱のための放熱部Kとを備えている。
【0042】
マウント部Mは、シェル40、90の下部に設けられ、基板上に形成されたシェル接合部Sに半田付けされることにより、シェル40、90と基板とを接合する。
【0043】
シェル40、90の表面には、放熱部Kとして、多数の凹凸形状が形成された凹凸部を有して構成されている。凹凸部が形成されることにより表面積が増え、放熱の効果を高めることができる。凹凸形状を形成するために、メッキ処理等の表面処理を施してもよい。このようなメッキ処理としては、エビナ電化工業株式会社のマイクロフィンメッキ「スゴヒヱ」などを用いることができる。また、凹凸部の形成のために、シェル40、90をプレスして表面にダボ出し加工を施してもよい。
【0044】
シェル40、90は、それぞれハウジングDと接触する部分を有して構成されることが好ましい。これにより、ハウジングDから、より熱伝導率の高いシェル40、90へと熱伝導させることが可能になる。このとき、ハウジングDにシェル40、90が圧入されて構成されることにより、ハウジングDとシェル40、90とが適度な圧力で互いに接触し、ハウジングDからシェル40、90へ熱伝導させることができる。また、各シェル40、90が内側の面にも凹凸形状を有することで、各シェル40、90の内側での放熱効果も高めることができる。そして、凹凸形状の凸面ではハウジングDとシェル40、90が接触し、凹面では互いに非接触となって、接触部分では熱伝導、非接触部分では対流と輻射により放熱され、これらを組み合わせた効果的な放熱を行うことができる。また、ハウジングDとシェル40、90との接触面の面積が広くなるように圧入されることで、熱伝導性を高めることができる。ハウジングDの表面にも凹凸形状を有するように構成してもよい。
図2は、例として凹凸形状を有するハウジングDに圧入され、内側に凹凸形状を有するレセプタクル側シェル90の様子を示す接触部分における断面図の一部を模式的に示している。
図2に示すように、シェル40、90とハウジングDとが、互いの凸面での接触面5aが広くなるように圧入されることで、熱伝導性を高めることができるとともに、非接触部分では対流と輻射による放熱も可能とすることができる。
【0045】
なお、コネクタ2a、2bのうち、シェル全体としてより広い表面積を有するコネクタでの放熱効果の方が高くなるため、発熱体の設置された基板に接合されるコネクタが、より広い表面積のシェルを有して構成されることが好ましい。例えば
図1では、発熱体側の基板B2に接合されたレセプタクルコネクタ2aは、プラグコネクタ2aよりも広い表面積を有するように構成されることが好ましい。
【0046】
プラグ側シェル40、レセプタクル側シェル90は、両シェル40、90が接触して嵌合する嵌合部Eを有している。嵌合部Eは、接触部分において平滑に形成された平滑部を有し、接触面の面積が広くなるように構成されている。これにより、熱伝導性を高めることができる。平滑形状を形成するために、表面を平滑にするメッキ処理等の表面処理を施してもよい。
【0047】
また、コンタクトCの表面は、メッキ処理等の表面処理が施され、多数の凹凸形状が形成された凹凸部を有して構成されることが好ましい。凹凸部が形成されることによりコンタクトCの表面積が増えて放熱の効果が高まり、上述のシェル40、90の放熱部Kでの放熱に加えて、さらに、コンタクトCでの放熱の効果を得ることができ、コネクタ装置1としての放熱の効果を高めることができる。このようなメッキ処理としては、放熱部Kと同様に、エビナ電化工業株式会社のマイクロフィンメッキ「スゴヒヱ」などを用いることができる。
【0048】
次に、本発明に係るヒートパスコネクタにおける放熱のしくみについて
図1を用いて説明する。
【0049】
図1において、プラグコネクタ2aが第1基板B1上に接合され、レセプタクルコネクタ2bが第2基板B2上に接合され、互いに嵌合部Eで嵌合している。第2基板B2上には電子部品Aが設置されており、第1基板B1上には、ファンやヒートシンクなどの放熱部材Bが設置されている。第1基板B1の放熱部材Bとプラグコネクタ2aのシェル接合部Sとの間には伝熱経路100が設けられている。また、第2基板B2の発熱部Hとレセプタクルコネクタ2bのシェル接合部Sとの間にも伝熱経路100が設けられている。第2基板B2上において、熱源となる電子部品Aによって温められた発熱部Hからの熱は、基板B2上の伝熱経路100に沿ってレセプタクルコネクタ2bのシェル接合部Sに伝わり、マウント部Mを介してシェル90に伝えられる。シェル90に伝わった熱は、レセプタクル側シェル90の放熱部Kから放熱される。また、レセプタクルコネクタ2bのシェル90以外の部分に伝わった熱は、ハウジングDとシェル90との接触部分を伝わり、放熱部Kから放熱され、非接触部分では対流や輻射により放熱される。
【0050】
レセプタクルコネクタ2bで放熱されなかった熱は、嵌合部Eから相手方のプラグ側シェル40に伝えられ、シェル40の放熱部Kから放熱される。また、プラグコネクタ2aのシェル40以外の部分に伝わった熱は、ハウジングDとシェル40との接触部分を伝わってシェル40の放熱部Kから放熱され、非接触部分では対流と輻射により放熱される。プラグコネクタ2aで放熱されなかった熱は、シェル40のマウント部Mを介してシェル接合部Sに伝わり、プラグコネクタ2a側の伝熱経路100を介して基板B1に設けられた放熱部材Bから放熱させることができる。
【0051】
また、発熱部Hからの熱の一部は、放熱機能を有して構成されたコンタクトCにも伝わり、コンタクトCの表面から放熱される。レセプタクルコネクタ2bのコンタクトCで放熱されなかった熱は、プラグコネクタ2aのコンタクトCにコネクタ2aとコネクタ2bとの接触部分を介して伝わり、プラグコネクタ2aのコンタクトCでも放熱させることができる。
【0052】
このようにして本発明に係るヒートパスコネクタを用いて基板上の熱を放熱させることができる。
【0053】
以上のような構成により、コネクタ装置1から基板上の熱を放熱させることができる。上述のような本発明に係るヒートパスコネクタを様々な種類のコネクタに採用することができる。
【0054】
以下、本発明に係るヒートパスコネクタの好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0055】
本発明の第1実施形態に係るヒートパスコネクタをフローティングコネクタ(具体的には、レセプタクルコネクタ50にフローティング構造を有する)を備えたコネクタ装置1(1)に採用した例を
図3~
図14に示しており、このうち
図3、4を参照してコネクタ装置1(1)の全体構成について説明する。
【0056】
コネクタ装置1(1)は、第1基板B1(
図4を参照)上に設けられたプラグコネクタ10と、第2基板B2(
図4を参照)上に設けられたレセプタクルコネクタ50とから構成されている。両コネクタ10、50は、各基板B1、B2の表面に対して直交する方向に嵌合させることにより、第1基板B1と第2基板B2とを電気的に接続することができる。なお、第1基板B1と第2基板B2との間には、両基板B1、B2間の距離を所定距離に保持するためのスペーサJが配置される。また、以下の説明では、便宜上、前後、左右及び上下の方向を
図3、
図5、
図10、
図13および
図14に示す状態を基準に定義しており、
図3、
図5、
図10、
図13および
図14に示す矢印の方向として、各コネクタ10、50の嵌合方向(高さ方向)を上下方向、各コネクタ10、50の長手方向(幅方向)を前後方向、各コネクタの短手方向(厚み方向)を左右方向と称して説明する。なお、
図8、
図9については基板への接続側を紙面の下に描いた図を示している。なお、コネクタ装置1で使用した記号を、コネクタ装置1(1)の同じ機能や効果を有する構成要素に対しても用いているが、同一の構成であることを意味するものではない。
【0057】
プラグコネクタ10は、プラグ側コンタクト30と、プラグ側コンタクト30を収容するプラグ側ハウジング20と、プラグ側ハウジング20を取り囲みプラグ側ハウジング20に圧入されるプラグ側シェル40とから構成されている。レセプタクルコネクタ50は、レセプタクル側コンタクト80と、レセプタクル側コンタクト80を収容する固定側ハウジング60と可動側ハウジング70と、ハウジング60、70を取り囲み固定側ハウジング60に圧入されるレセプタクル側シェル90とから構成されている。
【0058】
まず、プラグコネクタ10の構成について、
図5~
図7および
図9を追加参照して説明する。プラグコネクタ10は、第1基板B1上に固定されるプラグ側シェル40と、プラグコネクタ本体10a(
図9を参照)とから構成され、プラグコネクタ本体10aは、プラグ側ハウジング20と、プラグ側ハウジング20の長手方向(前後方向)に沿って二列の整列状態で保持される複数のプラグ側コンタクト30とを備えて構成されている。
【0059】
プラグ側ハウジング20は、合成樹脂等の電気絶縁性の材料を用いて成形されており、横長の直方体状に形成されたプラグ側ハウジング本体21と、このハウジング本体21の前後の端部に設けられた一対の固定部22とを備えて構成される。
【0060】
プラグ側ハウジング本体21は、全体として下面開放の略矩形箱状に形成されている。このハウジング本体21には、下方に向けて開放された断面矩形の受容空間25(レセプタクルコンタクト50の突起部75が受容される空間)が凹設されている。プラグ側ハウジング本体21の下面は、レセプタクルコネクタ50を嵌合可能な外形形状をなす嵌合凸部26として構成される。ハウジング本体21の表面は、後述するシェル40と同様に一部に凹凸形状を有してもよい。
【0061】
ハウジング本体21には、左右方向に二列で且つ前後方向に所定の配列ピッチでプラグ側コンタクト30を圧入保持するためのコンタクト保持溝21aが設けられており、それぞれがレセプタクルコンタクト80との接触部分の周辺以外は仕切り板で仕切られている。
【0062】
固定部22は、ハウジング本体21の端部に沿って略矩形箱状の突出部が形成されており、略矩形箱状の長手方向を上下方向に合わせて取り付けられている。また、固定部22の基板側はハウジング本体21を基板に接合した際に基板に接触する長さに形成され、嵌合側はハウジング本体21の端部よりも短く形成されている。そして、シェル40の端部に設けられた取付孔45に固定部22を外側に突出させた状態で挿入し、シェル40を基板に接合する際に、突出部によるシェル40とハウジング20との適度な圧力でハウジング20を含むコネクタ本体10aも基板に適度な圧力で固定されるとともに、ハウジング20とシェル40とが適度に圧接されるように、取付孔45の位置や幅に合わせて固定部22の上下方向の長さや太さが形成されている。
【0063】
プラグ側コンタクト30は、金属等の導電性材料の薄平板にプレス加工(打ち抜き加工及び曲げ加工)を施して所定形状に形成されている。プラグ側コンタクト30は、その表面に金(Au)などの薄膜を被覆する所要の表面処理(メッキ処理)が施されており、また、コンタクト30の表面の少なくとも一部は、メッキ処理が施されることにより凹凸形状が形成された凹凸部を有して構成されており、放熱機能を有している。この効果については後ほど詳しく述べる。
【0064】
プラグ側コンタクト30は、プラグ側ハウジング20のコンタクト保持溝21aに一部が圧入され、その下方で略板厚方向へ弾性変位する接触部32と、コンタクト保持溝21aに圧入された部分から上方でL字状に屈曲して外方に延びるリード部33とを有して構成されている。接触部32は、受容空間25側へ凸を向けた略く字状に屈曲形成されており、その受容空間25側へ最も突出した部分が相手方のレセプタクル側コンタクト80と接触する部位として構成されている。リード部33は、第1基板B1上に形成された基板パターン(配線パターンP)に半田付けされて電気接続されるようになっている。
【0065】
プラグ側シェル40について、
図8を追加参照して説明する。なお、
図8はプラグ側シェル40の基板側を紙面の下側にして示しているが、方向については
図8に示す矢印に従い、シェル40の長手方向(幅方向)を前後方向、高さ方向を上下方向、短手方向(厚み方向)左右方向と称して説明する。
【0066】
プラグ側シェル40は、導電性の高い材料で成形されており、例えば銅合金などで成形される。プラグ側シェル40は、略直方体の上下開放の形状を有しており、プラグ側ハウジング20を取り囲んでハウジング20に圧入可能に構成され、長手方向(前後方向)壁面の側壁43と、前後壁面の前後壁44とを有している。側壁43の上方(基板側)には、側壁43から外側へ伸びさらに基板に向かってL字状に屈曲して外方へ伸びたマウント部41と、前後壁44の端部が基板側からくり抜かれてプラグ側ハウジング本体21の固定部22を圧入可能に形成された1対の取付孔45と、を備え、シェル40は、この取付孔45によりハウジング20に圧入固定される。なお、プラグ側シェル40は
図8の分解線46で短手方向(左右方向)に分解可能に構成されている。
【0067】
前後壁44の基板側には、外側へ向かってL字状に屈曲した接地部44aを備えており、接地部44aは、第1基板B1上に形成された導電性のシェル40を接合するための基板パターン(シェル接合部)に半田付けされる。
【0068】
プラグ側シェル40は、表裏全体もしくは一部にメッキ処理により凹凸形状が形成された凹凸部を有しているが、側壁43のレセプタクル側シェルとの嵌合時に接触する接触面43aには、表面を平滑にするための平滑メッキ処理が施されており、レセプタクル側シェル90と広い面積で接触可能に構成されている。
【0069】
マウント部41は、マウント足部41cと、マウント足部41cの上端(基板側)にマウント接地部41bとを備えている。マウント部41は、長手方向(前後方向)に間隔を空けて設けられた複数の切り欠き部41aにより、マウント部41の上端(基板側)から側壁43から外側に向かってL字状に屈曲し始める部分まで切り欠かれており、切り欠かれた残りの部分により複数のマウント足部41cが形成されている。マウント接地部41bは、第1基板B1上に形成された導電性の基板パターン(シェル接合部)に半田付けされる。マウント接地部41bは、第1基板B1上に形成された導電性の基板パターン(シェル接合部)に半田付けされる。
【0070】
上述したプラグ側コンタクト30においてメッキ処理を施すことによって形成された凹凸部の効果について説明する。プラグ側コンタクト30は、マウント足部41cの表面積が大きくなるように形成されることで、放熱の効率を高めることができるのであるが、プラグ側コンタクト30への基板パターン(配線パターンP)への配線が困難になる等の理由により、切り欠き部41aの間隔が広く形成され、マウント足部41cの表面積を十分大きくとることができない場合でも、プラグ側コンタクト30が凹凸部を有することで、プラグ側コンタクト30での放熱を促進することができる。
【0071】
次に、プラグコネクタ10の組み立てについて、
図9を参照して説明する。なお、
図9も
図8と同様に基板側を紙面の下側にして示しているが、方向については
図9に示す矢印に従い、シェル40の長手方向(幅方向)を前後方向、高さ方向を上下方向、短手方向(厚み方向)左右方向と称して説明する。
【0072】
プラグコネクタ本体10aは、第1基板B1上にプラグ側コンタクト30と同様の配列ピッチで形成された基板上の基板パターン(配線パターンP1)に対してプラグ側コンタクト30のリード部33を半田付けすることにより固定される。また、左右分解されたプラグ側シェル40の取付孔45にプラグコネクタ本体10aの固定部22をそれぞれ挿入し固定する。そして、シェル40のマウント接地部41bを基板上の基板パターン(シェル接合部S1)に半田付けし、シェル40の接地部44aを基板上の基板パターン(シェル接合部S2)に半田付けすることにより、プラグコネクタ10を第1基板B1上に設置することができる。
【0073】
続いて、レセプタクルコネクタ50の構成について、
図10~
図12および
図14を追加参照して説明する。レセプタクルコネクタ50は、第2基板B2上に固定されるレセプタクル側シェル90と、レセプタクルコネクタ本体50a(
図14を参照)とから構成され、レセプタクルコネクタ本体50aは、固定側ハウジング60と、この固定側ハウジング60に対して相対移動可能に取り付けられた可動側ハウジング70と、両ハウジング60、70に跨って設けられて各ハウジング60、70の長手方向(前後方向)に沿って二列の整列状態で保持される複数のレセプタクル側コンタクト80とを備えて構成されている。
【0074】
固定側ハウジング60は、合成樹脂等の電気絶縁性の材料を用いて成形されており、第2基板B2と上下に対向する略矩形板状の基壁61と、基壁61の左右の端部に設けられた左右壁62と、基壁61の前後に設けられた前後壁63とを有して形成される。前後壁63には、上方からレセプタクル側シェル90の挿入部94aを挿入して固定側ハウジング60にシェル90を圧入して固定するための一対のシェル取付け溝63aを有している。左右壁62の内側には、上下方向に貫通し、レセプタクル側コンタクト80を保持可能な複数のコンタクト保持溝62aが左右方向に二列で且つ前後方向に所定の配列ピッチで形成されている。
【0075】
可動側ハウジング70は、合成樹脂等の電気絶縁性の材料を用いて成形されており、固定側ハウジング60の基壁61と上下に対向する本体壁71と、本体壁71の左右の端部に設けられて逆U字状に屈曲する保護壁72と、本体壁71の前後の端部に設けられた立壁73とを有し、その中央にこれらの壁面に囲まれて上方に開放された嵌合凹部74(プラグコネクタ10の嵌合凸部26を受容する空間)が画成されている。この嵌合凹部74内には、本体壁71から上方に突出する凸状の突起部75が形成されている。この突起部75の左右の側面には、断面凹状に形成されて上下方向に延びる複数のコンタクト保持溝75aが前後方向に所定の配列ピッチで形成されている。また、本体壁71には、上下方向に貫通する複数のコンタクト保持孔71aが前後方向に所定の配列ピッチで形成されており、これらコンタクト保持孔71aとコンタクト保持溝75aとが上下方向に整合して互いに連通する位置関係となっている。なお、保護壁72の外側表面は、一部シェル90を取り付けた際にシェル90の側壁93の内側の面と接触するように構成されている。この接触面は、後述するシェル90と同様に一部に凹凸形状を有してもよく、その場合、シェル90を取り付ける際に、前述したような半嵌合状態で取り付けられることが好ましい。
【0076】
可動側ハウジング70は、複数のレセプタクル側コンタクト80を介して固定側ハウジング60から上方に浮いた状態で設けられる。そして、可動側ハウジング70の下面側と固定側ハウジング60の上面側との間には、レセプタクル側コンタクト80の弾性変形する部分(後述の弾性部84)を収容するための弾性部収容空間76が画成されている。
【0077】
レセプタクル側コンタクト80は、金属等の導電性材料の薄平板にプレス加工(打ち抜き加工及び曲げ加工)を施して所定形状に形成されている。レセプタクル側コンタクト80は、その表面に金(Au)などの薄膜を被覆する所要の表面処理(メッキ処理)が施されており、また、プラグ側コンタクト30と同様に、コンタクト80の表面の少なくとも一部にメッキ処理が施されることにより凹凸形状が形成された凹凸部を有している。この効果はプラグ側コンタクトにおいて説明したものと同様であり、説明は省略する。
【0078】
レセプタクル側コンタクト80は、固定側ハウジング60のコンタクト保持溝62aに圧入されて上下方向に延びる保持部81と、保持部81の下端から略L字状に屈曲されて左右方向外側に向けて延びるリード部82と、コンタクト保持溝75aに圧入される接触部83と、保持部81の上端と接触部83の下端との間を繋いで上下方向、左右方向および前後方向に弾性変形可能な弾性部84とを有して構成される。
【0079】
弾性部84は、固定側ハウジング60および可動側ハウジング70のいずれにも固定されておらず、固定側ハウジング60の上面側と可動側ハウジング70下面側との間に遊挿されて、自由に弾性変形可能な部分(遊動可能な部分)である。
【0080】
レセプタクル側シェル90について、
図13を追加参照して説明する。
【0081】
レセプタクル側シェル90は、導電性の高い材料で成形されており、例えば銅合金などで成形される。レセプタクル側シェル90は、固定側ハウジング60と可動側ハウジング70を取り囲み、固定側ハウジング60に圧入されて取り付けられ、長手方向(前後方向)に略矩形形状の側壁93と、前後に一対の固定具94とを有しており、側壁93の下部(基板側)には、側壁93から外側へ伸びさらに基板に向かってL字状に屈曲して外方へ伸びたマウント部91とを備えている。なお、レセプタクル側シェル90は
図13の左右方向に分解可能に構成されている。
【0082】
固定具94は、固定側ハウジング60に対する可動側ハウジング70の前後方向への過度な相対移動(フローティング)を抑制可能な固定端壁94cと、固定端壁94cから下方に伸びて固定側ハウジング60のシェル取付け溝63aへの挿入される左右1対の挿入部94aと、固定端壁94cから基板側へ伸びて左右方向外方へ屈曲した左右1対の接地具94bとを備えて構成されている。接地具94bは、第2基板B2上に形成された導電性のシェル90を接合するための基板パターン(シェル接合部)に半田付けされる。
【0083】
側壁93の上部(嵌合側)は、L字状に内側に向かって屈曲し、さらに嵌合凹部74に向かって斜め下方に折れ曲がった誘い込み部92bと、誘い込み部92bの下端から下方に垂直に伸びプラグ側シェル40の接触面43aと接触可能に形成された接触面92aと、接触面92aから誘い込み部92bにかけて切り取られた切り取り部92cとを備えている。誘い込み部92bが斜め下方へ折れ曲がった形状を有することで、プラグコネクタ10の嵌合凸部26の嵌合凹部74への嵌合を滑らかに行うことができる。
【0084】
レセプタクル側シェル90の表裏全体もしくは一部はメッキ処理により凹凸形状が形成されているが、レセプタクル側シェル90の接触面92aには表面を平滑にするための平滑メッキ処理が施されており、プラグ側シェル40の接触面43aと嵌合時に広い面積で接触可能に構成されている。また、側壁93の内側の面は、シェル90を取り付けた際に可動側ハウジング70の保護壁72の外側の面と接触するように構成されている。
【0085】
マウント部91は、マウント足部91cと、マウント足部91cの基板側の端にマウント接地部91bとを備えている。マウント部91は、長手方向(前後方向)に間隔を空けて設けられた複数の切り欠き部91aにより、マウント部91の基板側の端から側壁93から外側に向かってL字状に屈曲し始める部分までが切り欠かれており、切り欠かれた残りの部分により複数のマウント足部91cが形成されている。なお、フローティング構造を有するコネクタに対して設けられるシェルのマウント部は、フローティング構造でないコネクタのシェルに比して切り欠き部が多く設けられることが好ましい。切り欠き部が多く設けられるほど足部の弾性変形がしやすくなり、また、L字状の屈曲した形状を備えることにより、より弾性変形がしやすくなり、シェルのフローティングへの追従性を高めることができる。また、マウント接地部91bは、第2基板B2上に形成された導電性の基板パターン(シェル接合部)に半田付けされる。
【0086】
次に、レセプタクルコネクタ50の組み立てについて、
図14を参照して説明する。
図14は
図10と同様に、基板側を下方向として高さ方向を上下方向、シェル90の長手方向(幅方向)を前後方向、シェル90の短手方向(厚み方向)を左右方向と称して説明する。
【0087】
レセプタクルコネクタ本体50aは、第2基板B2上にレセプタクル側コンタクト80と同様の配列ピッチで形成された基板上の基板パターン(配線パターンP2)に対してレセプタクル側コンタクト80のリード部82を半田付けすることにより固定される。また、左右分解されたレセプタクル側シェル90の挿入部94aをレセプタクルコネクタ本体50aのシェル取付け溝63aにそれぞれ挿入して固定する。そして、シェル90のマウント接地部91bをマウント足部91cと同様の配列ピッチで形成された基板上の基板パターン(シェル接合部S3)に半田づけし、シェル90の接地具94bを基板上の基板パターン(シェル接合部S4)に半田づけすることにより、レセプタクルコネクタ50を第2基板B2上に設置することができる。
【0088】
次に、両コネクタ10、50を嵌合させる方法について、
図3、4に戻って説明する。
【0089】
両コネクタ10、50を接続するには、プラグコネクタ10とレセプタクルコネクタ50とを上下に位置合わせする。すなわち、プラグコネクタ10の嵌合凸部26とレセプタクルコネクタ50の嵌合凹部74とを上下に位置整合させる。このとき、シェル40の誘い込み部92bに沿ってプラグコネクタ10をレセプタクルコネクタ50に嵌合させていくことで、滑らかな位置合わせが可能である。
【0090】
続いて、
図4に示すように、プラグコネクタ10の嵌合凸部26をレセプタクルコネクタとの嵌合凹部74に嵌合させていくと、レセプタクルコネクタ50の突起部75がプラグコネクタ10の受容空間25内に挿入されていく。このとき、プラグ側コンタクト30の接触部32がレセプタクル側コンタクト80の接触部83上を弾性的に押圧状態で摺動する。
【0091】
そして、プラグコネクタ10の嵌合凸部26とレセプタクルコンタクト50の嵌合凹部74との嵌合をさらに進めて所定の嵌合状態(例えば
図4に示すように、両基板間に配されるスペーサJにより両基板間が所定距離となる状態)に達すると、両コネクタ10、50間の位置が定まり、プラグ側コンタクト30とレセプタクル側コンタクト80との接触状態が保持される。プラグ側コンタクト30とレセプタクル側コンタクト80とが適度な接触力をもって弾性的に接触することで、両コネクタ10、50が電気接続され、両基板間での電源の授受および信号の伝送が可能となる。
【0092】
このような嵌合状態において、プラグ側シェル40とレセプタクル側シェル90が接触して嵌合される。両シェル40、90が広い面積で接触して嵌合することにより、熱源のある基板上に取り付けられたシェルから相手方のシェルへ熱伝導させることが可能となる。
【0093】
両コネクタ10、50の嵌合状態において、プラグコネクタ10とレセプタクルコネクタ50との嵌合位置が正規の位置に対して前後方向、左右方向、上下方向に位置ずれしたとしても、この変位に追従してレセプタクル側コンタクト80、90の弾性部84が前後方向、左右方向、上下方向に弾性変形して、可動側ハウジング70が固定側ハウジング60に対して相対的に移動することで、プラグ側コンタクト30とレセプタクル側コンタクト80との相互の接触状態を維持しながら、当該位置ずれを吸収することができる。また、ハウジング20、60および70を取り囲んで取り付けられるシェル40、90は、マウント部41、91に形成された足部41c、91cが弾性変形して追従することにより、ハウジング20、60および70とシェル40、90との接触状態を維持しながら、当該位置ずれを吸収することができる。また、可動側ハウジング60を含むコネクタ50に取り付けられたシェル90のマウント部91に多数形成された足部91cは弾性変形しやすくなっていることから追従しやすくなっており、ハウジング20、60および70とシェル40、90との接触状態を維持しながら、当該位置ずれを吸収することができる。
【0094】
続いて、本実施形態により基板上の放熱の方法について説明する。例として、第1基板B1上に発熱部Hを有する場合について説明する。
【0095】
プラグコネクタ10が第1基板B1上に接合され、レセプタクルコネクタ50が第2基板B2上に接合され、互いに嵌合凸部26と嵌合凹部74で嵌合している。発熱部Hの設置された基板B1に接合されたプラグコネクタ10は、相手方のレセプタクルコネクタ50よりも表面積が広くなるように構成されている。発熱部Hの熱は、第1基板B1上に形成された伝熱経路100に沿ってプラグコネクタ10の基板パターン(シェル接合部S1、S2)に伝わり、マウント部41を介してシェル40に伝えられる。シェル40に伝わった熱は、シェル40の表面に形成された凹凸部から放熱される。また、プラグコネクタ10のシェル40以外の部分に伝わった熱は、ハウジング20とシェル40との接触面からシェル40に伝わり、シェル40に形成された凹凸部から放熱され、非接触部分では対流や輻射により放熱される。また、発熱部Hからの熱の一部はコンタクト30にも伝わり、コンタクト30の表面に形成された凹凸部から放熱される。
【0096】
プラグコネクタ10で放熱されなかった熱は、嵌合時の接触面であるプラグ側シェル40の接触面43aからレセプタクル側シェル90の接触面92aに伝えられ、シェル90の凹凸部から放熱される。また、レセプタクルコネクタ50のシェル90以外の部分に伝わった熱は、ハウジング60、70とシェル90との接触面からシェル90に伝わり、シェル90に形成された凹凸部から放熱され、非接触部分では対流や輻射により放熱される。さらに、コンタクト30からコンタクト80との接触部分を介して伝わった熱は、コンタクト80の表面に形成された凹凸部からも放熱される。
【0097】
レセプタクルコネクタ50で放熱されなかった熱は、マウント部91を介してシェル接合部S3、S4に伝わり、レセプタクルコネクタ50側の伝熱経路100を介して基板B2に設けられた放熱部材Bから放熱される。
【0098】
上記実施形態において、プラグ側コンタクト30およびレセプタクルコンタクト80の表面にメッキ処理により形成された凹凸部から、一部の熱を放熱するとしたが、複数のコンタクト30、80のうちの少なくとも1つを放熱専用の放熱用コンタクトピンとして構成してもよい。また、複数のコンタクトを配線用のコンタクトピンと放熱用のコンタクトピンを交互に配置するようにしてもよい。交互に配置する構成にすることで、配線用コンタクト同士が近い場合に発生するクロストークを低減しつつ、放熱機能を持たせることができる。さらに、放熱用コンタクトピンと基板との接続部分にシェルでの場合と同様に基板上の発熱部からの熱を伝える伝熱経路100が接続されるように構成してもよい。
【0099】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るヒートパスコネクタについて、
図15~
図20を用いて説明する。第2実施形態に係るヒートパスコネクタとしてのコネクタ装置200は、第1実施形態におけるプラグコネクタ10のハウジング20と、レセプタクルコネクタ50のハウジング60、70の外側にそれぞれ設けられたシェル40、90に替えて、それぞれコネクタの中央付近にプラグ側放熱板400、レセプタクル側放熱板900が設けられた構成である。この構成では、基板上にプラグコネクタ201を設置した際にプラグ側放熱板400の外側にコンタクト30が配置され、ハウジング20がプラグ側放熱板400とコンタクト30を収容し、基板上にレセプタクルコネクタ202を設置した際にレセプタクル側放熱板900の外側にコンタクト80が配置され、ハウジング60、70がレセプタクル側放熱板900とコンタクト80を収容するように構成される。以下より本実施形態の詳細を説明するが、以下の説明では第1実施形態と重複する説明については、必要に応じて説明を省略している。また、以下の説明では、便宜上、前後、左右及び上下の方向を
図15~
図18に示す状態を基準に定義しており、
図15~
図18に示す矢印の方向として、各コネクタの嵌合方向(高さ方向)を上下方向、各コネクタ201、202の長手方向(幅方向)を前後方向、各コネクタの短手方向(厚み方向)を左右方向と称して説明する。
【0100】
まず、コネクタ装置200における放熱のしくみを、
図20を参照して説明する。具体的なコネクタ装置200については、後述の実施形態で述べる。
【0101】
コネクタ装置200は、基板上に設けられる互いに嵌合する第1基板B1上に設けられるプラグコネクタ201と、第2基板B2上に設けられるレセプタクルコネクタ202とから構成される。プラグコネクタ201は、プラグ側放熱板400と、プラグ側放熱板400の外側に配置されるコンタクトCと、プラグ側放熱板400とコンタクトCとを収容するハウジングDとから構成されている。レセプタクルコネクタ202は、レセプタクル側放熱板900と、レセプタクル側放熱板900の周りに配置されるコンタクトCと、レセプタクル側放熱板900とコンタクトCとを収容するハウジングDとから構成されている。放熱板400、900は基板B1、B2上に形成された放熱板接合部Tにそれぞれ接合されている。放熱板400、900は、第1実施形態におけるシェルと同様の効果を得られるものであり、導電性の高い材料を用いて成形されている。また、ハウジングDは、合成樹脂等の電気絶縁性の材料を用いて成形されている。
【0102】
また、第1実施形態と同様に、第2基板B2上に発熱体となる電子部品Aが設置されており、電子部品Aの近傍の基板には電子部品Aの熱により温められた発熱部Hが生じている。そして、発熱部Hと第2基板B2上に接合されたコネクタの放熱板接合部Tとの間には、伝熱経路100が形成されている。また、第1基板B1上には放熱のための放熱部材Bが設置されており、第1基板B1上に接合されたコネクタの放熱板接合部Tと放熱部材Bの間にも、伝熱経路100が形成されている。
【0103】
プラグ側放熱板400、レセプタクル側放熱板900は、それぞれ基板に接合可能に構成され、放熱のための放熱部(不図示)を備えている。放熱部は、第1実施形態におけるシェルと同様に、表面に多数の凹凸形状が形成された凹凸部を有して構成されている。放熱板400、900に凹凸形状を形成するために、メッキ処理等の表面処理を施してもよい。このようなメッキ処理としては、エビナ電化工業株式会社のマイクロフィンメッキ「スゴヒヱ」などを用いることができる。また、凹凸部の形成のために、放熱板400、900をプレスして表面にダボ出し加工を施してもよい。
【0104】
放熱板400、900は、第1実施形態におけるシェルと同様に、それぞれハウジングDと接触する部分を有して構成されることが好ましい。これにより、ハウジングDから、より熱伝導率の高い放熱板400、900へと熱伝導させることが可能になる。このとき、ハウジングDに放熱板400、900が圧入されて構成されることにより、ハウジングDと放熱板400、900とが適度な圧力で互いに接触し、ハウジングDから放熱板400、900へ熱伝導させることができる。
【0105】
プラグ側放熱板400、レセプタクル側放熱板900は、両放熱板400、900が接触して嵌合する嵌合部Eを有している。嵌合部Eは、接触部分において平滑に形成された平滑部を有し、接触面の面積が広くなるように構成されている。これにより、熱伝導性を高めることができる。平滑形状を形成するために、表面を平滑にするメッキ処理等の表面処理を施してもよい。
【0106】
また、コンタクトCの表面には、第1実施形態と同様に、メッキ処理等の表面処理が施され、多数の凹凸形状が形成された凹凸部を有して構成されることが好ましい。
【0107】
次に、コネクタ装置200における放熱のしくみについて説明する。
【0108】
第2基板B2上において、熱源となる電子部品Aによって温められた発熱部Hからの熱は、基板B2上の伝熱経路100に沿ってレセプタクルコネクタ202の放熱板接合部Tに伝わり、レセプタクル側放熱板900に伝えられる。レセプタクル側放熱板900に伝わった熱は、レセプタクル側放熱板900の放熱部から放熱される。また、レセプタクルコネクタ202のレセプタクル側放熱板900以外の部分に伝わった熱は、ハウジングDとレセプタクル側放熱板900との接触部分を伝わり、放熱部から放熱され、非接触部分では対流や輻射により放熱される。
【0109】
レセプタクルコネクタ202で放熱されなかった熱は、レセプタクル側放熱板900とプラグ側放熱板400との嵌合部Eから相手方のプラグ側放熱板400に伝えられ、レセプタクル側放熱板400の放熱部から放熱される。また、プラグコネクタ201のプラグ側放熱板400以外の部分に伝わった熱は、ハウジングDとプラグ側放熱板400との接触部分を伝わってプラグ側放熱板400の放熱部から放熱され、非接触部分では対流と輻射により放熱される。プラグコネクタ201で放熱されなかった熱は、プラグ側放熱板400を介して放熱板接合部Tに伝わり、プラグコネクタ201側の伝熱経路100を介して基板B1に設けられた放熱部材Bから放熱させることができる。
【0110】
また、発熱部Hからの熱の一部は、放熱機能を有して構成されたコンタクトCにも伝わり、コンタクトCの表面から放熱される。レセプタクルコネクタ202のコンタクトCで放熱されなかった熱は、プラグコネクタ201のコンタクトCとレセプタクルコネクタ202のコンタクトCとの接触部分を介して伝わり、プラグコネクタ202のコンタクトCでも放熱させることができる。
【0111】
このようにして本発明に係るヒートパスコネクタを用いて基板上の熱を放熱させることができる。
【0112】
以上のような構成により、コネクタ装置200から基板上の熱を放熱させることができる。上述のような本発明に係るヒートパスコネクタを様々な種類のコネクタに採用することができる。
【0113】
以下、本発明に係るヒートパスコネクタの好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0114】
本発明の第2実施形態に係るコネクタ装置200におけるプラグコネクタ201と、レセプタクルコネクタ202を
図15(a)および(b)に示している。まずプラグコネクタ201の構成について説明する。
【0115】
プラグコネクタ201は、プラグ側放熱板400と、基板上にプラグコネクタ201を設置した際にプラグ側放熱板400の外側に配置されるプラグ側コンタクト30と、プラグ側放熱板400とコンタクト30とを収容するプラグ側ハウジング20とから構成されている。レセプタクルコネクタ202は、レセプタクル側放熱板900と、基板上にレセプタクルコネクタ202を設置した際にレセプタクル側放熱板900の外側に配置されるレセプタクル側コンタクト80と、レセプタクル側放熱板900とコンタクト80とを収容する固定側ハウジング60と可動側ハウジング70とから構成されている。
【0116】
まず、プラグコネクタ201の構成について、
図16を追加参照して説明する。以下の説明におけるプラグ側ハウジング20や、コンタクト30については、第1実施形態と同様であり説明を省略する。プラグ側放熱板400は、コンタクト30よりも内側に、ハウジング20の長手方向に圧入される。
【0117】
プラグ側放熱板400は、プラグ側ハウジング20の内側に圧入可能となるようにハウジング20の形状に合わせて略矩形板状の形状を有している。プラグ側放熱板400は、厚み方向(左右方向)の面401の一部にハウジング20に圧入する突起状の圧入部402を備え、圧入部402をハウジング20に形成された圧入溝402aに圧入して固定する。圧入溝402aはハウジング20に形成され圧入部402を圧入可能な幅で突起が形成された構成や、圧入部402が圧入可能な幅で形成された溝状の構成であってもよい。さらにプラグ側放熱板400は、圧入時にハウジング20の長手方向(前後方向)の面403と、プラグ側放熱板400において
図16では上面でありプラグコネクタ201を基板に接着した際の基板への接着面である面404の一部にマウント部405を備えている。放熱板400の下部406がレセプタクルコネクタ202のレセプタクル側放熱板900と篏合する。この篏合状態については後ほど説明する。
【0118】
プラグ側放熱板400には、少なくとも面403を含む一部表面に放熱機能を有しており、例えばメッキ処理などの表面処理によって放熱板400に凹凸部が設けられて表面積が増加することによってマウント部405を介して伝わる熱の放出が促進される。
【0119】
マウント部405は基板との接着面となり、面404を長手方向(前後方向)に分断するように複数の切り欠き部405aが設けられることでマウント部405が形成されている。この切り欠き部405aとマウント部405を備えることにより、基板に半田などによってマウント部405およびプラグコネクタ201を接着した際に、基板の変形に対して半田付け箇所が受ける応力を分散し、半田の割れや剥離を抑制することができる。
【0120】
次に、レセプタクルコネクタ202の構成について、
図15に戻って説明する。以下の説明におけるレセプタクル側ハウジング60、70や、コンタクト80等については、第1実施形態と説明が重複するので省略する。レセプタクル側放熱板900は、コンタクト80よりも内側に、ハウジング60、70の長手方向(前後方向)に圧入される。
【0121】
レセプタクル側放熱板900は、ハウジング60の内側に圧入可能となるように形成された略矩形形状を有する主板901と、
図16(b)の上方からプラグコネクタ201を篏合させた際に、プラグ側放熱板400を左右方向から適度な圧力で挟みこむ挟み板902とを備えて構成される。
【0122】
主板901は、厚み方向(左右方向)の面にハウジング60に圧入する突起状の圧入部903を備え、圧入時にハウジング60、70の長手方向(前後方向)の面904と、レセプタクル側放熱板900の
図16における下面905の一部に、レセプタクルコネクタ202を基板に接着した際の基板への接着面であるマウント部906とを備えている。
【0123】
挟み板902は、例えば複数の挟み板902の一部を、主板901の面904に設けられた取付孔907に圧入して主板901に固定するなどの構成が考えられる。挟み板902の詳細な構成については後ほど説明する。
【0124】
レセプタクル側放熱板900には、少なくとも一部表面にメッキ処理などによって凹凸部が設けられており、マウント部906などから伝わる熱の放出が促進される。
【0125】
マウント部906は、プラグコネクタ201と同様に、基板との接着面となり、下面905を長手方向(前後方向)に分断するように複数の切り欠き部906aが設けられることでマウント部906が形成されている。
【0126】
コネクタ201と202との篏合時について、
図17~
図19を追加参照し、挟み板902の詳細な構成とともに説明する。コネクタ201とコネクタ202の篏合時において、両コネクタ201、202の篏合に伴い、プラグ側放熱板400の下部406がレセプタクル側放熱板900の挟み板902によって左右から挟み込まれて両放熱板400、900が篏合する。その際、
図16に示すように、放熱板400を左側から挟む左挟み板908と、右側から挟む右挟み板909とが、主板901上において交互に並んで設けられる構成などが考えられる。挟み板902は、主板901に一体となって構成されてもよいが、別々とする方が、製造が容易となる。別々の構成とする場合、
図16のように、主板901に設けられた取付孔907に挟み板902の一部を圧入して固定する。挟み板902は、放熱板400の下部406を受容し、放熱板400と挟み板902とができるだけ広く接触するように構成する。このような挟み板902の形状としては様々なものが考えられるが、略矩形形状を有し、挟み板902の取付孔907への圧入側からわずかに主板901の外側に曲部902aにおいて屈曲した後、曲部902bで屈曲して放熱板400に沿って上方に伸びる形状とし、この形状の左右対称な形状として、左挟み板908、右挟み板909が形成され、左挟み板908と右挟み板909とが交互に主板901の長手方向に配置されることで、プラグ側放熱板400を左右からの適度な圧力で支え、プラグ側放熱板400とレセプタクル側放熱板900との広い接触面を確保することができる。さらに挟み板902が、取付孔907の他端側の曲部902cでわずかに外側に屈曲するような形状とすることで、プラグ側放熱板400の下端を誘い込み、挿入しやすくなるとともに、プラグ側放熱板400を左右からの適度な圧力で支え、プラグ側放熱板400とレセプタクル側放熱板900との広い接触面を確保することができる。このことにより、基板から伝わる熱を互いに伝導させ、互いに設けられた凹凸部で熱の放出を行うことができる。
【0127】
以上のような構成により、コネクタ201、202を基板上に取り付けることにより、限られた体積条件下で効率よく放熱を行うヒートパスコネクタを提供することができる。上記実施形態において、第1実施形態と同様に、コンタクト30、80にメッキ処理等により凹凸部を設け、放熱を促進させる構成としてもよい。
【0128】
また、上述の実施形態において、シェル40、90および放熱板400、900を用いずに、コンタクト30、80の放熱機能によって放熱させる構成としてもよい。この場合でも、前述したように、コンタクトのうちの一部のコンタクトを放熱専用の放熱用コンタクトピンとして構成してもよい。さらに、第1実施形態で説明したのと同様に、放熱用コンタクトピンと基板との接続部分に基板上の発熱部Hからの熱を伝える伝熱経路が接続されるように構成してもよい。
【0129】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば適宜改良可能である。また、上記実施形態で説明したコネクタ本体としては、他の構成のコネクタでも構わない。フローティングコネクタとしても、上記実施形態の構成に限定されるものではない。プラグコネクタに対してフローティングコネクタを採用してもよい。
【0130】
上記実施形態では、フローティングコネクタを採用するレセプタクルコネクタ側のシェルのマウント部に多数の切り欠き部を設けてフローティング機能を持たせた例を示したが、フローティングコネクタではないコネクタのシェルのマウント部に切り欠き部を多数設けてフローティング機能を持たせても良い。
【0131】
上記実施形態では、両基板(第1基板、第2基板)を互いに平行に配置して電気接続するスタック接続式のコネクタ装置を例示して説明したが、この構成に限定されるものではなく、両基板を互いに直角に配置して電気接続する垂直接続式のコネクタ装置や、両基板を同一面内に配置して電気接続する水平接続のコネクタ装置などに適用してもよい。
【0132】
上記実施形態では、相手方コネクタとして、基板装着型のコネクタを例示して説明したが、この構成に限定されるものではなく、例えばケーブル装着型のコネクタなど各種のコネクタを適用可能である。
【符号の説明】
【0133】
1、200 コネクタ装置
10、201 プラグコネクタ
20 プラグ側ハウジング
25 受容空間
26 嵌合凸部
30 プラグ側コンタクト
40 プラグ側シェル
50、202 レセプタクルコネクタ
60 固定側ハウジング
70 可動側ハウジング
74 嵌合凹部
75 突起部
80 レセプタクル側コンタクト
90 レセプタクル側シェル
400 プラグ側放熱板
900 レセプタクル側放熱板