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  • 特開-粘着テープ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003401
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20241226BHJP
   C09J 7/24 20180101ALI20241226BHJP
   C09J 7/25 20180101ALI20241226BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/24
C09J7/25
C09J201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024099825
(22)【出願日】2024-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2023103565
(32)【優先日】2023-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390003562
【氏名又は名称】株式会社ニトムズ
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100174159
【弁理士】
【氏名又は名称】梅原 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】阪下 貞二
(72)【発明者】
【氏名】手塚 洋登
(72)【発明者】
【氏名】杉田 悟
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004CA04
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC03
4J004FA04
4J040DF001
4J040JA09
4J040JB09
4J040MA06
4J040MA10
4J040MB09
4J040NA15
(57)【要約】
【課題】粗面に貼り付けられてその上から強い応力が度々加わるような態様においても、改善された使用寿命を示す粘着テープを提供する。
【解決手段】提供される粘着テープは、第1面および第2面を有する基材と、該基材の上記第1面上に配置された粘着剤層と、を含む。上記基材は、樹脂組成物(a)により構成された層であって上記第1面を構成するA層と、樹脂組成物(b)により構成された層であって上記A層よりも上記第2面側に配置されたB層と、を少なくとも含む。上記樹脂組成物(a)は、50重量%以上のフィラーを含む。上記A層は、25℃における押し込み硬さが6.0MPa以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面および第2面を有する基材と、該基材の前記第1面上に配置された粘着剤層と、を含む粘着テープであって、
前記基材は、樹脂組成物(a)により構成された層であって前記第1面を構成するA層と、樹脂組成物(b)により構成された層であって前記A層よりも前記第2面側に配置されたB層と、を少なくとも含み、
前記樹脂組成物(a)は、50重量%以上のフィラーを含み、
前記A層は、25℃における押し込み硬さが6.0MPa以下である、粘着テープ。
【請求項2】
前記樹脂組成物(a)は、ベース樹脂としてエラストマーを含む、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記樹脂組成物(a)は、ベース樹脂としてエチレン-酢酸ビニル共重合体を含み、
前記エチレン-酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含量は35重量%以上である、請求項1または2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記樹脂組成物(b)は、ベース樹脂としてポリオレフィン系樹脂を含む、請求項1または2に記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記ポリオレフィン系樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレンを60重量%より多く含有する、請求項4に記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記樹脂組成物(b)は、ベース樹脂としてポリエステル系樹脂を含む、請求項1または2に記載の粘着テープ。
【請求項7】
前記B層の厚さT[μm]に対する前記A層の厚さT[μm]の比(T/T)が0.5以上25以下である、請求項1または2に記載の粘着テープ。
【請求項8】
前記粘着テープの厚さが2000μm以下である、請求項1または2に記載の粘着テープ。
【請求項9】
前記粘着剤層の厚さT[μm]と前記A層の厚さT[μm]との合計厚さ(T+T)が150μm以上である、請求項1または2に記載の粘着テープ。
【請求項10】
前記粘着剤層はアクリル系粘着剤層である、請求項1または2に記載の粘着テープ。
【請求項11】
第1面および第2面を有する基材と、該基材の前記第1面上に配置された粘着剤層と、を含む粘着テープであって、
前記基材は、樹脂組成物(a)により構成された層であって前記第1面を構成するA層と、樹脂組成物(b)により構成された層であって前記A層よりも前記第2面側に配置されたB層と、を少なくとも含み、
前記樹脂組成物(a)は、50重量%以上のフィラーを含み、
前記A層は、25℃における押し込み弾性率が150MPa以下である、粘着テープ。
【請求項12】
屋外の舗装面に貼り付けて用いられる、請求項1または2に記載の粘着テープ。
【請求項13】
請求項1または2に記載の粘着テープからなる、標示用粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に粘着剤(感圧接着剤ともいう。以下同じ。)は、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する。かかる性質を活かして、粘着剤は、様々な分野において、典型的には基材上に粘着剤層を有する粘着テープの形態で、接合や固定、表面保護、マスキング、標示等の目的で広く利用されている。一般に、標示用粘着テープは、例えば工場や体育館等の床面に区画、目印、情報等を標示するラインテープや、工事現場等において注意を喚起するためのトラ模様(黄色と黒の縞模様)を形成するためのテープ等として用いられる。標示用粘着テープに関する技術文献として特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-279202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の標示用粘着テープは、粗面に貼り付けられて該粘着テープの背面から強い応力が度々加わるような使用態様(具体的には、例えば屋外の舗装面に貼り付けられてその上を車両が度々通過するような過酷な使用態様)では、粘着テープの剥がれや該粘着テープ自体の損傷(破れ、欠けなど)が生じやすかった。上記粘着テープがその機能を適切に発揮することのできる期間(使用寿命)を改善することができれば、粘着テープが貼り付けられた箇所の外観をより長く良好に保ち、また新しい粘着テープへの貼り替え頻度を減らして作業負担の軽減や資源節約等を図る観点から有益である。
【0005】
そこで本発明は、粗面に貼り付けられてその上から強い応力が度々加わるような態様においても、改善された使用寿命を示す粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書により提供される粘着テープは、第1面および第2面を有する基材と、該基材の上記第1面上に配置された粘着剤層と、を含む。上記基材は、樹脂組成物(a)により構成された層であって上記第1面を構成するA層と、樹脂組成物(b)により構成された層であって上記A層よりも上記第2面側に配置されたB層と、を少なくとも含む。ここで、上記樹脂組成物(a)は、50重量%以上のフィラーを含む。また、上記A層は、25℃における押し込み硬さが6.0MPa以下である。
【0007】
上記構成の粘着テープにおいて、上記基材のうちA層(すなわち、粘着剤層側に配置される層)を構成する樹脂組成物(a)が50重量%以上のフィラーを含むことは、被着体表面に存在し得る凹凸(例えば、舗装面などの粗面の凹凸)に沿う形状への塑性変形性を高める観点から有利である。また、上記A層は、25℃における押し込み硬さが6.0MPa以下となる程度の柔らかさを有するため、上記A層の塑性変形性を利用して粘着テープ全体を被着体表面の凹凸に良好になじませる効果がさらに適切に発揮される。被着体表面の凹凸へのなじみ性(密着性)のよい粘着テープは、該被着体からの浮きや剥がれを抑制しやすいので好ましい。そして、上記粘着テープの基材は、塑性変形性および柔軟性を有するA層の外側(すなわち、粘着剤層とは反対側)にB層が配置されるため、基材の強度不足、引いては粘着テープの強度不足に起因する破れや欠けの発生が抑制されやすい。したがって、上記構成の粘着テープによると、例えば粗面に貼り付けられてその上から強い応力が度々加わるような態様においても、上記粗面からの粘着テープの浮きや剥がれ、あるいは該粘着テープ自体の損傷を抑制することができ、上記粘着テープの使用寿命を改善することができる。
【0008】
基材のA層を構成する樹脂組成物(a)は、ベース樹脂としてエラストマーを含む組成であることが好ましい。ここに開示される粘着テープは、ベース樹脂としてエラストマーを含みかつ50重量%以上のフィラーを含む樹脂組成物(a)により構成されたA層を有する基材を備える態様で、好適に実施することができる。
【0009】
いくつかの好ましい態様において、基材のA層を構成する樹脂組成物(a)は、ベース樹脂としてエチレン-酢酸ビニル共重合体を含む。エチレン-酢酸ビニル共重合体を用いると、柔軟性に優れたA層が実現しやすい傾向にある。いくつかの態様において、上記エチレン-酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含量は35重量%以上であることが好ましい。酢酸ビニル含有量が上記範囲であるエチレン-酢酸ビニル共重合体を用いると、ここに開示される発明の効果がより好適に発揮されやすい。
【0010】
いくつかの好ましい態様において、基材のB層を構成する樹脂組成物(b)は、ベース樹脂としてポリオレフィン系樹脂を含む組成であり得る。例えば、基材の第2面が上記B層により構成され、該第2面が粘着テープの背面を兼ねる態様の粘着テープでは、樹脂組成物(b)がベース樹脂としてポリオレフィン系樹脂を含む組成であることは、粘着テープ背面の防汚性の観点から有利となり得る。いくつかの態様において、上記ポリオレフィン系樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレンを60重量%より多く含有する。上記樹脂組成物(b)がベースポリマーとして直鎖状低密度ポリエチレンを所定量よりも多く含む構成によると、B層の強度が向上しやすく、粘着テープの強度不足に起因する破れや欠けの発生が抑制されやすい。
【0011】
他のいくつかの好ましい態様において、基材のB層を構成する樹脂組成物(b)は、ベース樹脂としてポリエステル系樹脂を含むものであり得る。かかる態様の粘着テープによると、ハンドリング性が向上する傾向にある。
【0012】
いくつかの態様において、上記基材は、上記B層の厚さT[μm]に対する上記A層の厚さT[μm]の比(T/T)が0.5以上25以下であることが好ましい。比(T/T)が上記範囲にある基材によると、粗面(例えば舗装面)へのなじみ性と、粘着テープの背面からの応力(例えば、車両の通過に伴う応力)に対する耐久性とを好適に両立する粘着テープを実現しやすい。
【0013】
いくつかの好ましい態様では、粘着テープの総厚が2000μm以下である。粘着テープの総厚が大きすぎないことは、該粘着テープの貼付けによって被着体(例えば舗装面)に生じる段差を小さくする観点から有利である。
【0014】
ここに開示される粘着テープのいくつかの態様では、上記粘着剤層の厚さT[μm]と上記A層の厚さT[μm]との合計厚さ(T+T)が150μm以上である。粘着剤層とA層との合計厚さ(T+T)が150μm以上である粘着テープは、被着体が舗装面等の粗面であっても、上記粘着剤層の易変形性および上記A層の塑性変形性および柔軟性を利用して該粗面に粘着テープを良好になじませやすいので好ましい。
【0015】
ここに開示される粘着テープのいくつかの態様において、該粘着テープの粘着剤層としては、アクリル系粘着剤層を好ましく採用し得る。屋外での使用(例えば、屋外の舗装面に貼り付けられる態様での使用)が想定される用途向けの粘着テープでは、耐候性や耐熱性などの観点から、粘着剤層がアクリル系粘着剤層であることが特に好ましい。
【0016】
いくつかの好ましい態様において、上記粘着テープは、第1面および第2面を有する基材と、該基材の上記第1面上に配置された粘着剤層と、を含む。上記基材は、樹脂組成物(a)により構成された層であって上記第1面を構成するA層と、樹脂組成物(b)により構成された層であって上記A層よりも上記第2面側に配置されたB層と、を少なくとも含む。ここで、上記樹脂組成物(a)は、50重量%以上のフィラーを含む。ここで、上記A層は、25℃における押し込み弾性率が150MPa以下である。
【0017】
上記構成の粘着テープにおいて、上記基材のうちA層(すなわち、粘着剤層側に配置される層)を構成する樹脂組成物(a)が50重量%以上のフィラーを含むことは、被着体表面に存在し得る凹凸(例えば、舗装面などの粗面の凹凸)に沿う形状への塑性変形性を高める観点から有利である。また、上記A層は、25℃における押し込み弾性率が150MPa以下となる程度の柔らかさを有するため、上記A層の塑性変形性を利用して粘着テープ全体を被着体表面の凹凸に良好になじませる効果がさらに適切に発揮される。被着体表面の凹凸へのなじみ性(密着性)のよい粘着テープは、該被着体からの浮きや剥がれを抑制しやすいので好ましい。そして、上記粘着テープの基材は、塑性変形性および柔軟性を有するA層の外側(すなわち、粘着剤層とは反対側)にB層が配置されるため、基材の強度不足、引いては粘着テープの強度不足に起因する破れや欠けの発生が抑制されやすい。したがって、上記構成の粘着テープによると、例えば粗面に貼り付けられてその上から強い応力が度々加わるような態様においても、上記粗面からの粘着テープの浮きや剥がれ、あるいは該粘着テープ自体の損傷を抑制することができ、上記粘着テープの使用寿命を改善することができる。
【0018】
ここに開示される粘着テープは、粗面へのなじみ性と、背面からの応力に対する耐久性とをバランスよく両立し得ることから、屋外の舗装面に貼り付けて用いられる粘着テープとして好適である。なかでも、屋外の舗装面に貼り付けられてその上を車両が度々通過するような使用態様において、ここに開示される技術の適用効果は好ましく発揮され得る。
【0019】
ここに開示される粘着テープは、例えば、標示用粘着テープとして好ましく用いられ得る。したがって、この明細書によると、ここに開示されるいずれかの粘着テープからなる標示用粘着テープが提供される。
【0020】
なお、本明細書に記載された各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施形態に係る粘着テープを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、実際に提供される製品のサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
【0023】
<粘着テープの構造例>
ここに開示される粘着テープは、基材と、該基材の第1面上に配置された粘着剤層とを含む。この明細書における「粘着テープ」の概念には、「粘着シート」と称されるものが包含され得る。ここに開示される粘着テープは、典型的には、幅方向の寸法に比べて長手方向の寸法が大きい形状であり、好適には、幅方向の寸法に比べて長手方向の寸法が大きい帯状の形状に構成されている。樹脂フィルムを含む構成の基材を備えた粘着テープでは、一般的に、上記樹脂フィルムの流れ方向(MD;machine direction)が上記粘着テープの長手方向に相当する。
【0024】
一実施形態に係る粘着テープの構成例を図1に模式的に示す。この粘着テープ1は、第1面10Aおよび第2面10Bを有するシート状の基材10と、その第1面10A上に配置された粘着剤層20とを備える。基材10は、互いに組成の異なるA層およびB層を少なくとも含む積層構造(2層構造、または3層構造の多層構造。この実施形態では2層構造)を有している。上記A層は、基材10の第1面10Aを構成する層であって、50重量%以上のフィラーを含む樹脂組成物(a)により構成されている。上記B層は、上記A層よりも基材10の第2面10B側に配置された層であって、上記樹脂組成物(a)とは組成の異なる樹脂組成物(b)により構成されている。図1に示す例では、基材10は、第1面10Aを構成するA層12と、第2面10Bを構成するB層14とが直接接して積層された、2層構造の樹脂フィルムである。基材10の第2面10Bは、粘着テープ1の背面(粘着面20Aとは反対側の表面)を兼ねている。基材10は、任意の構成要素として、図示しない補助層をさらに含んでいてもよい。A層12は、ベース樹脂としてエラストマーを含み、かつ50重量%以上のフィラーを含む樹脂層であり得る。B層14は、ベース樹脂としてポリオレフィン系樹脂および/またはエチレン-酢酸ビニル共重合体を含む樹脂層であり得る。B層14は、フィラーを含んでいてもよく、フィラーを含んでいなくてもよい。
【0025】
使用前(すなわち、被着体への貼付け前)の粘着テープ1は、例えば、長手方向に巻回されることにより基材の第2面10B(粘着テープの背面を兼ねていてもよい。)に粘着剤層20が当接してその表面(粘着面)20Aが保護された粘着テープロールの形態であり得る。あるいは、使用前の粘着テープは、粘着剤層の表面が、粘着テープとは別体であって少なくとも粘着剤層に対向する側が剥離面となっている剥離ライナーによって保護された形態であってもよい。剥離ライナーとしては、公知ないし慣用のものを特に限定なく使用することができる。例えば、プラスチックフィルムや紙等の基材の表面に剥離処理層を有する剥離ライナーや、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)の低接着性材料からなる剥離ライナー等を用いることができる。
【0026】
<基材>
ここに開示される粘着テープの基材は、粘着剤層が配置される側の表面である第1面と、上記第1面とは反対側の面である第2面と、を有する。上記基材は、上記第1面を構成するA層と、上記A層よりも上記第2面側に配置されたB層と、を少なくとも含む。以下、被着体に貼り付けられた状態における相対的な位置関係に基づいて、上記A層を「内層」ということがあり、上記B層を「外層」ということがある。
【0027】
(A層(内層))
基材のA層は、フィラーを50重量%以上含む樹脂組成物(a)により構成された層である。上記フィラーとしては、有機フィラー、無機フィラー、有機無機複合フィラーのいずれも使用可能である。フィラーには、公知ないし慣用の表面処理が施されていてもよい。コストや入手性の観点から、無機フィラーが好ましく用いられる。
【0028】
無機フィラーの例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化モリブデン、ハイドロタルサイト、スメクタイト、ゼオライト、硼酸亜鉛、無水硼酸亜鉛、メタ硼酸亜鉛、メタ硼酸バリウム、酸化アンチモン、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、赤燐、タルク、アルミナ、シリカ、ベーマイト、ベントナイト、珪酸ソーダ、珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、カーボンブラック等が挙げられる。なかでも、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、タルク、アルミナ、シリカ、珪酸カルシウム、硫酸カルシウムが好ましく、炭酸カルシウムがより好ましい。
【0029】
フィラーの平均粒子径は特に限定されず、例えば0.1μm~100μm程度であり得る。いくつかの態様において、フィラーの平均粒子径は、取扱い性や分散性等の観点から、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上でもよく、3μm以上でもよい。また、いくつかの態様において、フィラーの平均粒子径は、A層に適切な塑性変形性を付与しやすくする観点から、70μm以下であることが適当であり、50μm以下であることが好ましく、30μm以下でもよく、20μm以下でもよく、15μm以下でもよく、10μm以下(例えば7μm以下)でもよい。
なお、本明細書中における「平均粒子径」とは、特記しない限り、レーザ回折散乱法に基づく粒度分布測定装置に基づいて測定した粒度分布における積算値50%での粒径(50%体積平均粒子径)を意味するものとする。
【0030】
樹脂組成物(a)におけるフィラーの含有量(通常、A層のフィラー含有量と一致する。)は、特に限定されず、50重量%以上100重量%未満の範囲で適宜設定することができる。いくつかの態様において、A層のフィラーの含有量は、該A層の成形容易性や基材の製造容易性の観点から、例えば95重量%以下であってよく、90重量%以下であってもよく、90重量%未満でもよく、88重量%以下でもよく、85重量%以下でもよく、80重量%以下でもよく、75重量%以下でもよい。また、A層のフィラーの含有量は、該A層に適度な脆さ(塑性変形性、または靭性の低さとしても把握され得る。)を付与しやすくする観点から、例えば50重量%超であってよく、52重量%以上であってもよく、55重量%以上でもよく、60重量%以上でもよく、65重量%以上でもよい。
【0031】
樹脂組成物(a)のベース樹脂は、粘着テープの基材に用いられ得る各種の樹脂から適宜選択することができる。いくつかの好ましい態様では、上記ベース樹脂としてエラストマーを使用する。上記エラストマーの非限定的な例としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンプロピレンゴム、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPO)、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)、ポリ塩化ビニル、(メタ)アクリル酸エステル-ブタジエン-スチレン共重合体(例えば、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(NBR)、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、その他の合成ゴム(イソプレンゴム、ブタジエンゴム等)、等が挙げられる。これらは、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0032】
なかでも好ましいベース樹脂として、EVAが挙げられる。例えば、酢酸ビニル含量が5~50重量%程度(好ましくは10~47重量%程度、例えば15~45重量%程度)のEVAを用いることができる。A層に適度な柔軟性を付与する観点からは、ベース樹脂としてEVAを用いるいくつかの態様において、該EVAの酢酸ビニル含量は25重量%以上であることが好ましく、より好ましくは30重量%以上であり、さらに好ましくは35重量%以上である。ベース樹脂としてEVAを用いるいくつかの態様において、該EVAの酢酸ビニル含量の上限値は特に限定されない。EVAの酢酸ビニル含量は50重量%以下であることが好ましく、47重量%以下であってもよく、45重量%以下であってもよい。なお、樹脂組成物(a)のベース樹脂として酢酸ビニル含量の異なる2種以上のEVAを組み合わせて用いる態様における該EVAの酢酸ビニル含量とは、当該2種以上の総EVAにおける酢酸ビニル総含量として把握され得る。EVAの市販品としては、東ソー製の商品名ウルトラセンシリーズ、三井・ダウ ポリケミカル製の商品名エバフレックスシリーズ、等が挙げられる。
なお、A層のベース樹脂とは、A層を構成する樹脂成分のことをいう。後述するB層のベース樹脂についても同様である。
【0033】
樹脂組成物(a)は、上記ベース樹脂に加えて着色剤(染料、顔料等)を含んでもよい。特に、標示機能が求められる粘着テープでは、視認性や遮蔽性の観点から、基材は着色剤によって着色されていることが好ましく、基材のうちA層が着色されていると、B層の材料選択の幅が広がる点で有利である。着色剤としては、目的とする色に応じた公知の顔料や染料を適宜選択することができる。特に限定するものではないが、白色顔料の例としては、二酸化チタン、亜鉛華、鉛白等が挙げられる。黒色顔料の例としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、松煙、黒鉛等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
いくつかの態様において、着色剤は、樹脂に当該着色剤が高濃度で練り込まれて構成されたカラーマスターバッチの形態で用いられる。カラーマスターバッチに含まれる樹脂の種類は、特に限定されないが、例えばポリオレフィン系樹脂を含むカラーマスターバッチが用いられ得る。
【0035】
樹脂組成物(a)における着色剤の含有量(通常、A層の着色剤含有量と一致する。)は、特に限定されない。例えば、着色剤として白色顔料(例えば酸化チタン)を用いる場合においては、着色性、隠蔽性等の観点より、樹脂組成物(a)における白色顔料(例えば酸化チタン)の含有量は、0.05重量%以上でもよく、0.1重量%以上でもよく、0.5重量%以上でもよい。また、樹脂組成物(a)におけるベース樹脂の含有量を高めて粘着テープの塑性変形性や柔軟性を高める観点より、樹脂組成物(a)における白色顔料(例えば酸化チタン)の含有量は、5重量%以下であることが適切であり、3重量%以下でもよく、1重量%以下でもよい。
【0036】
なお、本明細書において、カラーマスターバッチの形態の着色剤を用いる場合における「着色剤の含有量」とは、カラーマスターバッチの含有量のことではなく、カラーマスターバッチに含まれる着色剤成分(有効成分)の含有量のことを指す。
【0037】
A層の厚さ(T)は、被着体表面に存在し得る凹凸(例えば、舗装面などの粗面の凹凸)への密着性の観点から、概ね50μm以上であることが適当であり、100μm以上であることが有利であり、150μm以上であることが好ましく、200μm以上であることがより好ましく、300μm以上でもよく、400μm以上でもよく、500μm以上でもよく、600μm以上でもよく、700μm以上でもよい。また、粘着テープを貼り付けることで被着体上に生じる段差の高さを抑える観点から、A層の厚さは、概ね1800μm以下であることが適当であり、1600μm以下であることが好ましく、1400μm以下でもよく、1200μm以下でもよく、1000μm以下でもよく、900μm以下でもよい。
【0038】
ここに開示されるA層は、路面の凹凸に対してよく密着させる観点から、塑性変形性を有しつつ、ある程度軟らかい性質を有することが好ましい。粘着テープの基材のような、厚さが極めて小さく制限されている微小領域の硬度や弾性定数などの機械的特性を評価するための方法のひとつとして、超微小硬度計を用いた押し込み試験法が挙げられる。押し込み試験法では、鋭く尖った圧子で試料を押し込んだ時の荷重と変位を同時測定し、荷重変位曲線を得ることにより、試料の押し込み硬さ、マルテンス硬さ、弾性率(以下、押し込み弾性率ともいう。)等の各種硬さを測定することができる。
【0039】
(押し込み硬さ)
いくつかの好ましい態様において、ここに開示されるA層の25℃における押し込み硬さ(以下、「A層の25℃における押し込み硬さ」のことを、「押し込み硬さH」ともいう。)は、6.0MPa以下である。フィラーを50重量%以上含む樹脂組成物(a)により構成されかつ押し込み硬さHが上記上限値以下であるA層を含む構成とすると、A層の塑性変形性および柔軟性を利用して粘着テープ全体を被着体表面の凹凸に良好になじませる効果が適切に発揮されやすい。路面なじみ性の観点から、押し込み硬さHは、より好ましくは5.5MPa以下(例えば5.0MPa以下)であり、さらに好ましく4.5MPa以下(例えば4.0MPa以下)であり、3.8MPa以下でもよく、3.7MPa以下でもよく、3.6MPa以下でもよい。いくつかの他の態様において、路面なじみ性の観点から、押し込み硬さHは、3.3MPa以下でもよく、3.0MPa以下でもよく、2.8MPa以下でもよく、2.6MPa以下でもよい。
【0040】
押し込み硬さHの下限値は、特に限定されない。粘着テープの耐久性の観点からは、押し込み硬さHは、通常、1.5MPa以上であることが適切であり、好ましくは2.0MPa以上、より好ましくは2.5MPa以上であり、3.0MPa以上でもよく、3.3MPa以上でもよく、3.4MPa以上でもよい。押し込み硬さHは、A層の含有成分の種類および含有量の選択や、A層の製法(成形方法や加熱条件等)によって調節することができる。
【0041】
(マルテンス硬さ)
特に限定されるものではないが、いくつかの好ましい態様において、ここに開示されるA層の25℃におけるマルテンス硬さ(以下、「A層の25℃におけるマルテンス硬さ」のことを、単に「マルテンス硬さM」ともいう。)は、5.0MPa以下である。フィラーを50重量%以上含む樹脂組成物(a)により構成されかつマルテンス硬さMが上記上限値以下であるA層を含む構成とすると、A層の塑性変形性および柔軟性を利用して粘着テープ全体を被着体表面の凹凸に良好になじませる効果が適切に発揮されやすい。路面なじみ性の観点から、マルテンス硬さMは、より好ましくは4.5MPa以下(例えば4.0MPa以下)であり、さらに好ましくは3.5MPa以下(例えば3.0MPa以下)であり、2.5MPa以下でもよく、2.3MPa以下でもよく、2.2MPa以下でもよい。いくつかの他の態様において、路面なじみ性の観点から、マルテンス硬さMは、2.0MPa以下でもよく、1.8MPa以下でもよく、1.6MPa以下でもよい。
【0042】
マルテンス硬さMの下限値は、特に限定されない。粘着テープの耐久性の観点からは、マルテンス硬さMは、通常、1.0MPa以上であることが適切であり、好ましくは1.2MPa以上、より好ましくは1.5MPa以上であり、1.8MPa以上でもよく、2.0MPa以上でもよく、2.1MPa以上でもよい。マルテンス硬さMは、A層の含有成分の種類および含有量の選択や、A層の製法(成形方法や加熱条件等)によって調節することができる。
【0043】
(押し込み弾性率)
特に限定されるものではないが、いくつかの好ましい態様において、ここに開示されるA層の25℃における押し込み弾性率(以下、「A層の25℃における押し込み弾性率」のことを、単に「押し込み弾性率E」ともいう。)は、150MPa以下である。フィラーを50重量%以上含む樹脂組成物(a)により構成されかつ押し込み弾性率Eが上記上限値以下であるA層を含む構成とすると、A層の塑性変形性および柔軟性を利用して粘着テープ全体を被着体表面の凹凸に良好になじませる効果が適切に発揮されやすい。路面なじみ性の観点から、押し込み弾性率Eは、より好ましくは120MPa以下(例えば100MPa以下)であり、さらに好ましく80MPa以下(例えば70MPa以下)であり、60MPa以下でもよく、55MPa以下でもよく、50MPa以下でもよく、45MPa以下でもよい。いくつかの他の態様において、路面なじみ性の観点から、押し込み弾性率Eは、40MPa以下でもよく、35MPa以下でもよく、30MPa以下でもよい。
【0044】
押し込み弾性率Eの下限値は、特に限定されない。粘着テープの耐久性の観点からは、押し込み弾性率Eは、通常、20MPa以上であることが適切であり、好ましくは25MPa以上であり、30MPa以上であってもよく、33MPa以上でもよく、35MPa以上でもよく、38MPa以上でもよい。押し込み弾性率Eは、A層の含有成分の種類および含有量の選択によって調節することができる。
【0045】
ここで、本明細書における押し込み硬さ、マルテンス硬さおよび押し込み弾性率は、超微小硬度計を用いてISO14577-1に基づいて行われる押し込み試験により測定される。具体的には、測定は25℃、50%RHの環境下において、下記の測定条件によって実施される。後述の実施例においても同様の測定方法が採用される。
【0046】
(測定条件)
装置:島津製作所製DUH-211S 超微小硬度計
使用圧子:バーコビッチ圧子(三角錐圧子:稜間角115°)
押し込み深さ:10μm
【0047】
押し込み硬さは、上記押し込み試験で得られる最大荷重Pmaxを、接触投影面積Apで除することによって算出される。マルテンス硬さは、上記押し込み試験で得られる最大荷重Pmaxを、圧子と測定試料との表面積Asで除することによって算出される。押し込み弾性率Eは、上記押し込み試験で得られる接線剛性S(S=dP/dh)と、接触投影面積Apとを用いて、下記一般式(1)により算出される。
【0048】
【数1】
【0049】
なお、押し込み試験に用いられる測定試料としては、上記の測定条件で行われる押し込み試験が遂行可能な程度のサイズ(例えば評価対象箇所の表面サイズおよび厚さ)を有するA層を少なくとも表面に備える試料であれば、特に限定されずに用いることができる。例えば、押し込み試験に用いられる測定試料として、評価対象の粘着テープから粘着剤層を除去して基材のA層(内層)を表面に露出させたものを用いることができる。また、評価対象の粘着テープから粘着剤層が除去できない場合などは、評価対象の粘着テープを切り出して断面を露出させたものを測定試料とし、当該露出した断面におけるA層部分を対象として測定することができる。あるいは、基材のA層を構成する樹脂組成物(a)を用いて、A層からなる単層の樹脂フィルムを用意し、これを測定試料とすることができる。
【0050】
A層の硬さを表す指標としては、上述する押し込み試験法により測定される各種の硬さの他にアスカーC硬度や、引張試験により測定される降伏点強度等が挙げられる。
【0051】
(アスカーC硬度)
特に限定されるものではないが、ここに開示されるA層のアスカーC硬度は、通常、85以下であることが適切であり、好ましくは80以下、より好ましくは76以下、さらに好ましくは74以下である。粘着テープの路面なじみ性をより改善させる観点からは、A層のアスカーC硬度は、73以下でもよく、72以下でもよく、71以下でもよい。A層のアスカーC硬度の下限値は特に限定されないが、粘着テープの耐久性の観点から、通常55以上であることが適切であり、好ましくは60以上、より好ましくは65以上であり、66以上でもよく、67以上でもよく、68以上でもよく、69以上でもよい。
【0052】
上記アスカーC硬度は、JIS K7312:1996の付属書2「スプリング硬さ試験タイプC試験方法」に記載の硬度の測定方法に基づいて測定される。A層のアスカー硬度は、以下のようにして測定される。すなわち、基材のA層からなる単層の樹脂フィルムを用意する。例えば、基材のA層を構成する樹脂組成物(a)を用いて、該基材におけるA層と同じ厚さの単層の樹脂フィルムを作製する。この樹脂フィルムを評価対象として、A層のアスカー硬度を測定することができる。後述の実施例においても同様の測定方法が採用される。
【0053】
(降伏点強度)
特に限定されるものではないが、ここに開示されるA層は、引張試験により測定される降伏点強度が6.0N/mm以下であることが適切であり、好ましくは5.0N/mm以下であり、より好ましくは4.5N/mm以下であり、さらに好ましくは4.2N/mm以下である。路面なじみ性をより向上させる観点からは、A層の降伏点強度は、4.0N/mm以下であることがより好ましく、3.8N/mm以下でもよく、3.5N/mm以下でもよい。A層の降伏点強度の下限値は特に限定されないが、耐久性の観点から、通常2.0N/mm以上であることが適切であり、好ましくは2.5N/mm以上、より好ましくは3.0N/mm以上であり、3.2N/mm以上でもよく、3.3N/mm以上でもよい。
【0054】
A層の降伏点強度は、JIS K 7127:1999に基づいて行われる引張試験によって測定される。具体的には、降伏点強度[N/mm]は、23℃、50%RHの環境下において、幅15mmのA層からなる試験片を、引張試験機を用いてチャック間距離10mm、引張速度300mm/分の条件で延伸したときに、当該試験片が降伏(塑性)し始めるときの応力[N]と試験開始時の試験片断面積(幅15mm×厚さ)から算出される。上記試験片は、例えば、基材のA層を構成する樹脂組成物(a)を用いて、該基材におけるA層と同じ厚さの単層の樹脂フィルムを作製することにより用意することができる。試験片は、降伏点強度の測定時において該試験片を延伸する方向が、A層の長手方向(典型的には流れ方向(MD))となるように調製することが望ましい。引張試験機としては、島津製作所社製の製品名「オートグラフ AGS-J」を用いることができる。試験片の長さは、チャック間距離10mmで引張試験機にセットできる長さであればよく、例えば50mm程度とすることが適当である。後述の実施例においても同様の測定方法が採用される。
【0055】
(B層(外層))
基材のB層は、樹脂組成物(b)により構成された層である。樹脂組成物(b)のベース樹脂は、粘着テープの基材を構成する樹脂材料として用いられ得る各種の樹脂から適宜選択して用いることができる。耐久性と、路面等の粗面へのなじみ性とを両立する粘着テープを形成し得るベース樹脂の好適例として、ポリオレフィン系樹脂およびエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)が挙げられる。樹脂組成物(b)のベース樹脂として好ましく用いられ得る材料の他の例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂が挙げられる。樹脂組成物(b)のベース樹脂として用いられ得る材料のその他の例としては、樹脂組成物(a)に用いられ得るベース樹脂として例示した材料が挙げられる。樹脂組成物(b)のベース樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。なかでもポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂が好ましい。樹脂組成物(b)のベース樹脂としてポリオレフィン系樹脂を用いることは、粘着テープの防汚性等の観点から有利となり得る。このことは、例えばB層が基材の他方の表面を構成しており、該他方の表面が粘着テープの背面を兼ねる構成において、特に有意義である。また、樹脂組成物(b)のベース樹脂としてポリエステル系樹脂を用いることは、粘着テープのハンドリング性等の観点から有利となり得る。
【0056】
ポリオレフィン系樹脂としては、1種のポリオレフィンを単独で、または2種以上のポリオレフィンを組み合わせて用いることができる。該ポリオレフィンは、例えばα-オレフィンのホモポリマー、二種以上のα-オレフィンの共重合体、1種または2種以上のα-オレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体等であり得る。具体例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、エチレンプロピレンゴム(EPR)等のエチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体等が挙げられる。PEとしては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等が挙げられる。PEの好適例として、LLDPEおよびLDPEが挙げられる。なかでもLLDPEが好ましい。
【0057】
いくつかの態様において、樹脂組成物(b)のベース樹脂としては、PEとα-オレフィン共重合体とを組み合わせて含むポリオレフィン系樹脂を採用してもよい。具体例としては、LLDPEとα-オレフィン共重合体とを含むポリオレフィン系樹脂、LDPEとα-オレフィン共重合体とを含むポリオレフィン系樹脂、LLDPEとLDPEとα-オレフィン共重合体とを含むポリオレフィン系樹脂、等が挙げられる。PEとα-オレフィン共重合体との使用量比は、重量基準で、例えば5/95~95/5であってよく、好ましくは10/90~95/5であり、より好ましくは25/75~90/10であり、30/70~90/10であってもよく、30/70~85/20であってもよく、40/60~80/20でもよく、40/60~60/40でもよい。ここに開示される樹脂組成物(b)のベース樹脂は、強度向上の観点から、α-オレフィン共重合体の含有量が50重量%未満であることが好ましく、30重量%以下でもよく、15重量%以下でもよく、5重量%以下でもよく、1重量%以下でもよい。また、ここに開示される樹脂組成物(b)のベース樹脂は、強度向上の観点から、PE(例えばLLDPE)の含有量が50重量%超であることが好ましく、60重量%超でもよく、85重量%以上でもよく、95重量%以上でもよく、99重量%以上でもよい。樹脂組成物(b)のベース樹脂として、PE(例えばLLDPE)のみを含む構成であってもよい。
【0058】
樹脂組成物(b)は、上記ベース樹脂に加えてフィラーを含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。フィラーの例としては、樹脂組成物(a)に用いられ得るフィラーとして上記で説明した材料と同様のものが挙げられる。樹脂組成物(b)に用いられるフィラーの平均粒子径は、樹脂組成物(a)に用いられるフィラーの平均粒子径と同様の範囲から適宜選択し得る。
【0059】
なお、本発明における「フィラー」には、着色剤(例えば樹脂に顔料が練り込まれて構成されたマスターバッチに含まれる顔料)や、帯電防止剤は含まれない。
【0060】
樹脂組成物(b)におけるフィラーの含有量を適切に設定することにより、後述するB層の引張強さおよび引裂き強さ、粘着テープの引張強さおよび引裂き強さ等を調整することができる。B層の強度や耐久性の観点から、B層のフィラー含有量は、通常60重量%以下であることが適切であり、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは30重量%以下であり、20重量%以下でもよく、15重量%以下でもよく、10重量%以下でもよく、5重量%以下でもよく、1重量%以下でもよく、0重量%であってもよい。例えば、樹脂組成物(b)のベース樹脂がポリオレフィン系樹脂、EVA、またはこれらの混合物である態様において、上述したフィラーの含有量を好ましく採用し得る。
【0061】
樹脂組成物(b)は、上記ベース樹脂に加えて帯電防止剤を含んでもよい。上記帯電防止剤としては、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1、第2、第3アミノ基などのカチオン性官能基を有するカチオン型帯電防止剤、スルホン酸塩や硫酸エステル塩、ホスホン酸塩、リン酸エステル塩などのアニオン性官能基を有するアニオン型帯電防止剤、アルキルベタインおよびその誘導体、イミダゾリンおよびその誘導体、アラニンおよびその誘導体などの両性型帯電防止剤、アミノアルコールおよびその誘導体、グリセリンおよびその誘導体、ポリエチレングリコールおよびその誘導体などのノニオン型帯電防止剤、さらには、上記カチオン型、アニオン型、両性イオン型のイオン導電性基を有する単量体を重合もしくは共重合して得られたイオン導電性重合体(高分子型帯電防止剤)があげられる。これらの化合物は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、高分子型帯電防止剤が好ましい。
【0062】
カチオン型帯電防止剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アシロイルアミドプロピルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、アルキルベンジルメチルアンモニウム塩、アシル塩化コリン、ポリジメチルアミノエチルメタクリレートなどの4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレート共重合体、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム基を有するスチレン共重合体、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム基を有するジアリルアミン共重合体などが挙げられる。
【0063】
アニオン型帯電防止剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエトキシ硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、スルホン酸基含有スチレン共重合体が挙げられる。
【0064】
両性イオン型帯電防止剤としては、例えば、アルキルベタイン、アルキルイミダゾリウムベタイン、カルボベタイングラフト共重合が挙げられる。
【0065】
ノニオン型帯電防止剤としては、例えば、脂肪酸アルキロールアミド、ジ(2-ヒドロキシエチル)アルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、脂肪酸グリセリンエステル、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンジアミン、ポリエーテルエステルアミド、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なかでも、ポリエーテルエステルアミドが好ましい。
【0066】
高分子型帯電防止剤の他の例としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどが挙げられる。
【0067】
また、上記帯電防止剤として、導電性物質を挙げることができる。導電性物質としては、例えば、酸化錫、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化チタン、酸化亜鉛、インジウム、錫、アンチモン、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、鉄、コバルト、ヨウ化銅、およびそれらの合金または混合物が挙げられる。
【0068】
樹脂組成物(b)における帯電防止剤の含有量(通常、B層の帯電防止剤含有量と一致する。)は、特に限定されない。例えば、防汚性の観点から、樹脂組成物(b)における帯電防止剤の含有量は、1重量%以上でもよく、4重量%以上でもよく、7重量%以上でもよい。また、ベース樹脂の含有量を高めて粘着テープの強度や耐久性を高める観点より、樹脂組成物(b)における帯電防止剤の含有量は、30重量%以下であることが適切であり、15重量%以下でもよく、10重量%以下でもよい。
【0069】
樹脂組成物(b)は、上記ベース樹脂に加えて着色剤(染料、顔料等)を含んでもよい。特に、標示機能が求められる粘着テープでは、視認性や遮蔽性の観点から、基材のB層(外層)は着色剤によって着色されていることが好ましい。着色剤としては、目的とする色に応じた公知の顔料や染料を適宜選択することができる。特に限定するものではないが、白色顔料の例としては、二酸化チタン、亜鉛華、鉛白等が挙げられる。黒色顔料の例としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、松煙、黒鉛等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
いくつかの態様において、着色剤は、樹脂に当該着色剤が高濃度で練り込まれて構成されたカラーマスターバッチの形態で用いられる。カラーマスターバッチに含まれる樹脂の種類は、特に限定されないが、例えばポリオレフィン系樹脂を含むカラーマスターバッチが用いられ得る。
【0071】
樹脂組成物(b)における着色剤の含有量(通常、B層の着色剤含有量と一致する。)は、特に限定されない。例えば、着色剤として白色顔料(例えば酸化チタン)を用いる場合においては、着色性、隠蔽性等の観点より、樹脂組成物(b)における白色顔料(例えば酸化チタン)の含有量は、0.1重量%以上でもよく、1重量%以上でもよく、2重量%以上でもよい。また、樹脂組成物(b)におけるベース樹脂の含有量を高めて粘着テープの強度や耐久性を高める観点より、樹脂組成物(b)における白色顔料(例えば酸化チタン)の含有量は、10重量%以下であることが適切であり、8重量%以下でもよく、5重量%以下でもよい。
【0072】
なお、本明細書において、カラーマスターバッチの形態の着色剤を用いる場合における「着色剤の含有量」とは、カラーマスターバッチの含有量のことではなく、カラーマスターバッチに含まれる着色剤成分(有効成分)の含有量のことを指す。
【0073】
いくつかの好ましい態様において、B層はベース樹脂としてポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂を含む樹脂フィルムである。なかでも、ハンドリング性、加工性の観点から、B層としてPETフィルムが好ましく用いられ得る。
【0074】
いくつかの好ましい態様において、樹脂組成物(b)は、ベース樹脂(例えばポリエステル系樹脂)の他に紫外線吸収剤を含み得る。粘着テープの外側(粘着剤層とは反対側)に配置されるB層に紫外線吸収剤を含ませることにより、太陽光に曝されるような屋外での使用においても、粘着テープの強度低下が抑制される傾向にある。B層が紫外線吸収剤を含む場合における紫外線吸収剤の含有量は特に限定されないが、凡そ0.1重量%~2重量%であることが適切である。
【0075】
B層の厚さ(T)は、B層の引張強さおよび引裂き強さ、粘着テープの引張強さおよび引裂き強さ等の1または2以上を適切な範囲としやすくする観点から、20μm以上であることが適当であり、30μm以上であることが有利であり、50μm以上でもよく、75μm以上でもよく、100μm以上でもよく、150μm以上でもよい。また、粘着テープを貼り付けることで被着体上に生じる段差の高さを抑える観点から、B層の厚さは、概ね1600μm以下であることが適当であり、1400μm以下であることが好ましく、より好ましくは1000μm以下であり、さらに好ましくは500μm以下であり、400μm以下でもよく、300μm以下でもよく、250μm以下でもよく、180μm以下でもよい。
【0076】
いくつかの好ましい他の態様において、B層の厚さ(T)は、100μm以下であってもよく、80μm以下でもよく、70μm以下でもよく、60μm以下でもよく、55μm以下でもよい。これらの態様において、B層の厚さ(T)は、20μm以上であることが好ましく、30μm以上でもよく、40μm以上でもよく、45μm以上でもよい。
【0077】
A層およびB層を含む基材全体の厚さは、特に限定されず、粘着テープの使用目的や使用態様等に応じて選択し得る。基材の厚さは、例えば凡そ70μm~凡そ1900μmの範囲から選択し得る。粘着テープの使用寿命を長くしやすくする観点から、いくつかの態様において、基材総厚は、100μm以上であることが適当であり、200μm以上であることが好ましく、250μm以上であることがより好ましく、例えば400μm以上であってよく、600μm以上でもよく、800μm以上でもよく、1000μm以上でもよく、1100μm以上でもよい。また、粘着テープを貼り付けることで被着体上に生じる段差の高さを抑える観点から、いくつかの態様において、基材の厚さは、例えば1980μm以下であってよく、1950μm以下であることが適当であり、1900μm以下であることが好ましく、1800μm以下でもよく、1600μm以下でもよく、1400μm以下でもよく、1200μm以下でもよく、1100μm以下でもよく、1000μm以下でもよく、900μm以下でもよく、800μm以下でもよく、700μm以下でもよい。
【0078】
いくつかの態様において、B層の厚さT[μm]に対するA層の厚さT[μm]の厚さの比(T/T)は、例えば0.2~50程度であってよく、0.5~25程度であることが好ましい。被着体表面の凹凸への良好ななじみ性を発揮しやすくする観点から、いくつかの態様において、上記比(T/T)は、0.7以上であることが適当であり、1.0以上または1.0超であることが有利であり、1.5以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましく、2.5以上であることがさらに好ましく、3.0以上でもよく、3.5以上でもよい。また、粘着テープの総厚が過度に大きくなることを避けつつ良好な耐久性を得やすくする観点から、上記比(T/T)は、8.0以下であることが適当であり、7.0以下であることが有利であり、6.0以下であることが好ましく、5.0以下でもよく、4.5以下でもよい。
【0079】
また、他のいくつかの好ましい態様において、B層の厚さT[μm]に対するA層の厚さT[μm]の厚さの比(T/T)は、5.0以上であり、より好ましくは8.0以上であり、さらに好ましくは10超であり、12以上であってもよく、14以上でもよく、15以上でもよい。これらの態様において、上記比(T/T)は、50以下であってよく、30以下でもよく、23以下でもよく、20以下でもよい。
【0080】
ここに開示される粘着テープの基材は、耐久性の観点から、少なくとも上記A層および上記B層がいずれも非多孔質の樹脂層である態様で好ましく実施することができる。ここで、非多孔質の樹脂層とは、典型的には実質的に気泡を含まない(ボイドレスの、例えば基材の見かけ体積のうち気泡の割合が3体積%未満、好ましくは1体積%未満の)樹脂層を意味する。基材の全体が非多孔質であることが好ましい。
【0081】
基材の各層を構成する樹脂材料には、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、光安定剤、酸化防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤等の公知の添加剤を、必要に応じて配合することができる。添加剤の配合量は特に限定されず、適切な使用効果が発揮されるように適宜設定することができる。
【0082】
基材の製造方法は特に限定されず、例えば、各層を構成する樹脂材料の共押出成形や、各樹脂材料から個別に形成された樹脂フィルムの熱ラミネートや接着剤による積層、ある層を構成する樹脂フィルム上への他の樹脂材料の押出ラミネート、これらの組合せや繰り返し、等の公知の方法により製造することができる。上記樹脂フィルムは、例えば押出成形、インフレーション成形、Tダイキャスト成形、カレンダーロール成形、カレンダー加工等の、従来公知の一般的な樹脂フィルム成形方法により作製することができる。
【0083】
ここに開示される粘着テープの基材は、少なくともA層およびB層を含む構成であればよく、A層およびB層からなる2層構造の基材であってもよく、A層およびB層とは異なる層(以下、任意層ともいう。)を1層または2層以上、さらに含む構造の基材であってもよい。任意層を含む構造の基材を用いるいくつかの態様では、A層およびB層を含むことによる効果を好適に発揮しやすくする観点から、A層とB層の合計厚さが基材の総厚の80%以上であることが好ましく、90%以上または95%以上(例えば98%以上)であることがより好ましい。
【0084】
上記任意層は、例えば、光学特性調整層(例えば着色層、反射防止層)、基材に所望の外観を付与するための印刷層やラミネート層、帯電防止層、基材の耐久性(耐傷つき性、耐摩耗性、防汚性等)向上等の目的で設けられるハードコート層、粘着テープの背面(粘着面とは反対側の表面)に剥離性を付与するための剥離層、粘着剤層の基材への投錨性向上や基材とハードコート層との密着性向上等の目的で設けられる下塗り層(プライマー層)、等であり得る。
上記ハードコート層を形成するためのハードコート剤としては、例えばアクリル系、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、シリコーン系等の、公知の材料を適宜使用することができる。ハードコート層の厚さは特に限定されず、目的に応じて適切に設定することができる。いくつかの態様において、ハードコート層の厚さは、例えば0.1μm~100μm程度であってよく、1μm~50μm程度であってもよい。
上記剥離層を形成するための剥離処理剤としては、例えばシリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等、公知の材料を適宜使用することができる。剥離層の厚さは特に限定されず、目的に応じて適切に設定することができる。いくつかの態様において、剥離層の厚さは、例えば0.01μm~5μm程度であってよく、0.05μm~3μm程度であってもよい。
上記下塗り層の形成に用いるプライマーの組成は特に限定されず、公知のものから適宜選択することができる。下塗り層の厚さは特に制限されず、目的に応じて適切に設定することができる。いくつかの態様において、下塗り層の厚さは、例えば0.01μm~1μm程度であってよく、0.1μm~1μm程度であってもよい。
【0085】
上記任意層は、A層の表面(A層と粘着剤層との間)に配置されていてもよく、基材の第二面(粘着テープの背面側の表面)を構成していてもよく、A層とB層の間に配置されていてもよい。また、上記任意層は、基材の全範囲にわたって設けられてもよく、部分的に設けられていてもよい。
【0086】
基材の第一面には、必要に応じて、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理等の、従来公知の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、粘着剤層の基材への投錨性を向上させるための処理であり得る。上記表面処理は、単独でまたは組み合わせて適用することができる。
【0087】
<粘着剤層>
ここに開示される粘着テープの粘着剤層は、各種の粘着剤から適切に選択される1種または2種以上を用いて構成することができる。そのような粘着剤の例には、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、フッ素系粘着剤等が含まれるが、これらに限定されない。ここで、アクリル系粘着剤とは、アクリル系ポリマーをベースポリマーとする粘着剤をいう。同様に、ポリエステル系粘着剤とは、ポリエステルをベースポリマーとする粘着剤をいう。ゴム系粘着剤その他の粘着剤についても同様の意味である。また、粘着剤のベースポリマーとは、該粘着剤に含まれるゴム状のポリマー(室温付近の温度域においてゴム弾性を示すポリマーをいう。)のうちの主成分を指し、典型的にはポリマー成分の50重量%超(例えば70重量%以上であり得、90重量%以上であってもよい。)を占める成分をいう。ここに開示される粘着テープは、例えば、アクリル系粘着剤を用いて形成された粘着剤層(アクリル系粘着剤層)を有する態様で好ましく実施され得る。
【0088】
なお、この明細書において「アクリル系ポリマー」とは、(メタ)アクリル系モノマーに由来するモノマー単位をポリマー構造中に含む重合物をいい、典型的には(メタ)アクリル系モノマーに由来するモノマー単位を50重量%を超える割合で含む重合物をいう。また、(メタ)アクリル系モノマーとは、一分子中に少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーをいう。ここで、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基およびメタクリロイル基を包括的に指す意味である。したがって、ここでいう(メタ)アクリル系モノマーの概念には、アクリロイル基を有するモノマー(アクリル系モノマー)とメタクリロイル基を有するモノマー(メタクリル系モノマー)との両方が包含され得る。同様に、この明細書において「(メタ)アクリル酸」とはアクリル酸およびメタクリル酸を、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートおよびメタクリレートを、それぞれ包括的に指す意味である。
【0089】
(アクリル系ポリマー)
アクリル系粘着剤のベースポリマーであるアクリル系ポリマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含み、該主モノマーと共重合性を有する副モノマーをさらに含み得るモノマー原料の重合物が好ましい。ここで主モノマーとは、上記モノマー原料における全モノマー成分の50重量%超を占める成分をいう。
【0090】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば下記式(2)で表される化合物を好適に用いることができる。
CH=C(R)COOR (2)
ここで、上記式(2)中のRは水素原子またはメチル基である。また、Rは炭素原子数1~20の鎖状アルキル基(以下、このような炭素原子数の範囲を「C1-20」と表すことがある。)である。粘着剤の貯蔵弾性率等の観点から、RがC1-14(例えばC2-10、典型的にはC4-9)の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、Rが水素原子でRがC4-9の鎖状アルキル基であるアルキルアクリレートがより好ましい。
【0091】
がC1-20の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらアルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。特に好ましいアルキル(メタ)アクリレートとして、n-ブチルアクリレート(BA)および2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が例示される。BAおよび2EHAは、いずれか一方を単独で、または両者を組み合わせて使用され得る。
【0092】
全モノマー成分中における主モノマーの配合割合は、凡そ70重量%以上(例えば凡そ85重量%以上、典型的には凡そ90重量%以上)であることが好ましく、また、通常は凡そ99.5重量%以下(例えば凡そ99重量%以下)とすることが好ましい。モノマー成分としてC4-9アルキルアクリレートを使用する場合、該モノマー成分中に含まれるアルキル(メタ)アクリレートのうちC4-9アルキルアクリレートの割合は、凡そ70重量%以上であることが好ましく、凡そ90重量%以上であることがより好ましく、凡そ95重量%以上(典型的には凡そ99重量%以上凡そ100重量%以下)であることがさらに好ましい。好ましい一態様では、上記モノマー成分がBAおよび2EHAの少なくとも一方を含む。ここに開示される技術は、例えば、BAおよび2EHAの合計量が全モノマー成分の凡そ50重量%以上(典型的には凡そ70重量%以上、例えば凡そ90重量%以上)を占める態様で好ましく実施され得る。
【0093】
主モノマーであるアルキル(メタ)アクリレートと共重合性を有する副モノマーは、アクリル系ポリマーに架橋点を導入したり、アクリル系ポリマーの凝集力を高めたりするために役立ち得る。副モノマーとしては、例えばカルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、ケト基含有モノマー、窒素原子含有環を有するモノマー、アルコキシシリル基含有モノマー、イミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等の官能基含有モノマーの1種または2種以上を使用することができる。凝集力向上等の観点から、副モノマーとしてカルボキシ基含有モノマーおよび/または水酸基含有モノマーが共重合されたアクリル系ポリマーが好ましい。カルボキシ基含有モノマーの好適例としては、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。水酸基含有モノマーの好適例としては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0094】
副モノマーの量は、所望の凝集力が実現されるように適宜選択すればよく、特に限定されない。通常は、接着力と凝集力とをバランス良く両立させる観点から、副モノマーの量は、アクリル系ポリマーの全モノマー成分中の凡そ0.5重量%以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ1重量%以上である。また、副モノマーの量は、通常、全モノマー成分中の凡そ30重量%以下とすることが適当であり、凡そ15重量%以下(例えば凡そ10重量%以下)とすることが好ましい。
【0095】
アクリル系ポリマーには、上記以外のモノマー(その他モノマー)が共重合されていてもよい。上記その他モノマーは、例えば、アクリル系ポリマーのガラス転移温度の調整、粘着性能(例えば剥離性)の調整等の目的で使用することができる。例えば、粘着剤の凝集力を向上させ得るモノマーとして、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル等)、芳香族ビニル化合物等が挙げられる。上記その他モノマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。上記その他モノマーの含有量は、全モノマー成分中、凡そ30重量%以下(例えば凡そ10重量%以下)とすることが好ましく、また、例えば凡そ0.01重量%以上(典型的には凡そ0.1重量%以上)とすることができる。
【0096】
アクリル系ポリマーを得る方法は特に限定されず、溶液重合法、エマルション重合法、塊状重合法、懸濁重合法等の、アクリル系ポリマーの合成手法として一般的に用いられる各種の重合方法を適用して該ポリマーを得ることができる。また、上記アクリル系ポリマーは、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体、グラフト共重合体等であってもよい。生産性等の観点から、通常はランダム共重合体が好ましい。
【0097】
(架橋剤)
粘着剤層(例えば、アクリル系粘着剤層)には、必要に応じて架橋剤が用いられ得る。 架橋剤としては、粘着剤の分野において公知の架橋剤を使用することができる。例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、シリコーン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、シラン系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等を挙げられるが、これらに限定されない。架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。いくつかの態様では、架橋剤としてエポキシ系架橋剤を好ましく採用し得る。エポキシ系架橋剤と他の架橋剤とを組み合わせて用いてもよい。
【0098】
架橋剤を使用する場合における使用量は特に限定されず、該架橋剤が配合される粘着剤(例えばアクリル系粘着剤)の固形分100重量部に対して0重量部を超える量であって、かつその使用効果が適切に発揮される量とすることができる。例えば、架橋剤の使用量は、固形分(不揮発分)基準で、粘着剤100重量部に対して凡そ0.005~15重量部(好ましくは1~5重量部)の範囲で適宜設定することができる。いくつかの態様において、架橋剤の使用量は、固形分(不揮発分)基準で、粘着剤100重量部に対して、例えば0.005重量部以上とすることができ、0.010重量部以上(例えば0.015重量部以上)とすることが好ましく、0.1重量部以上でもよく、0.5重量部超でもよく、0.7重量部以上でもよく、1.0重量部超でもよく、1.2重量部超でもよく、1.5重量部超でもよく、2.0重量部超でもよい。また、いくつかの態様において、架橋剤の使用量は、固形分(不揮発分)基準で、粘着剤100重量部に対して、例えば15重量部以下とすることが適当であり、10重量部以下としてもよく、5重量部以下としてもよく、3重量部以下、1重量部以下または0.5重量部以下でもよく、0.1重量部以下(例えば0.05重量部以下)でもよい。架橋剤の使用量が多過ぎないことは、例えば、粘着テープの被着体への密着性(表面に凹凸を有する被着体では、該凹凸への食い込み性としても把握され得る。)の観点から有利となり得る。
【0099】
(粘着付与剤)
粘着剤層は、必要に応じて粘着付与剤を含有していてもよい。粘着付与剤の使用により、被着体に対する接着性を向上させ得る。好ましく使用し得る粘着付与剤の例として、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂、フェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロンインデン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、それらの水素添加物等の粘着付与樹脂が挙げられる。粘着付与剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。粘着付与剤を使用する場合における使用量は、所望の使用効果が得られるように設定することができ、特に限定されない。粘着付与剤の使用量は、例えば、粘着剤層全体の重量の5重量%以上、10重量%以上または15重量%以上とすることができる。また、粘着付与剤の使用量は、例えば、粘着剤層全体の重量の60重量%以下、40重量%以下または30重量%以下とすることができる。ここに開示される粘着テープは、粘着付与剤を実質的に使用しない態様でも好ましく実施され得る。
【0100】
粘着剤層には、当該粘着剤層への含有が許容される適宜の成分(添加剤)を必要に応じて配合することができる。かかる添加剤の例として、帯電防止剤、着色剤(顔料、染料等を包含する意味である。)、充填材、酸化防止剤、光安定剤(ラジカル捕捉剤、紫外線吸収剤等を包含する意味である。)等が挙げられる。このような添加剤は、それぞれ、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。各添加剤の配合量は、粘着テープの分野における通常の配合量と同程度とすることができる。
【0101】
(粘着剤層の形成)
ここに開示される技術における粘着剤層の形成に使用する粘着剤組成物の形態は特に限定されない。上記粘着剤層は、例えば、水分散型粘着剤組成物、溶剤型粘着剤組成物、ホットメルト型粘着剤組成物または活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物から形成された粘着剤層であり得る。粘着剤層の形成は、公知の粘着テープにおける粘着剤層形成方法に準じて行うことができる。例えば、粘着剤組成物を基材に直接付与(典型的には塗布)して乾燥させる方法(直接法)や、粘着剤組成物を剥離性のよい表面(例えば、剥離ライナーの表面、離型処理された基材背面等)に付与して乾燥させることにより該表面上に粘着剤層を形成し、その粘着剤層を基材に転写する方法(転写法)を採用することができる。
【0102】
粘着剤層の厚さは特に限定されず、粘着テープの使用目的や使用態様等に応じて選択し得る。粘着剤層の厚さは、例えば10μm~800μmの範囲で適宜設定し得る。表面に凹凸を有する被着体(例えば舗装面)に貼り付けられることが想定される粘着テープでは、被着体への密着性(凹凸への食い込み性)の観点から、粘着剤層の厚さは、20μm以上であることが適当であり、30μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、70μm以上でもよく、80μm以上でもよく、90μm以上でもよい。また、粘着テープの生産性や、該粘着テープの端面(特に、長手方向に沿う端面)におけるブロッキング抑制の観点から、いくつかの態様において、粘着剤層の厚さは、500μm以下であることが適当であり、400μm以下であることが好ましく、300μm以下でもよく、200μm以下でもよく、150μm以下でもよい。
【0103】
<粘着テープ>
ここに開示される粘着テープの厚さは特に限定されず、粘着テープの使用目的や使用態様等に応じて選択し得る。路面等の粗面へのなじみ性と耐久性とを好適に両立しやすくする観点から、いくつかの態様において、粘着テープの厚さは、例えば80μm以上であってよく、120μm以上であることが適当であり、150μm以上であることが好ましく、250μm以上でもよく、450μm以上でもよく、650μm以上でもよく、850μm以上でもよく、1000μm以上でもよく、1100μm以上でもよい。粘着テープの厚さは、例えば2500μm以下であり得る。粘着テープを貼り付けることで被着体上に生じる段差の高さを抑える観点から、いくつかの態様において、粘着テープの厚さは、2000μm以下であることが適当であり、1800μm以下であることが好ましく、1600μm以下でもよく、1400μm以下でもよく、1200μm以下でもよい。上記段差の高さを抑えることは、被着体に貼り付けられた状態において粘着テープの端が欠けることを防ぐ観点からも有利である。例えば、粗面(舗装面等)に貼り付けられた粘着テープの上を横切って車両が通過する使用態様では、上記段差の高さを所定以下に抑えることで粘着テープの欠けを防止することが有益である。いくつかの好ましい態様において、粘着テープの厚さは1000μm以下であり、900μm以下でもよい。
【0104】
ここに開示される粘着テープのいくつかの態様において、粘着剤層の厚さT[μm]とA層の厚さT[μm]との合計厚さ(T+T)は、例えば60μm以上であってよく、100μm以上であることが有利であり、150μm以上であることが好ましく、300μm以上であることがより好ましく、500μm以上でもよく、700μm以上でもよく、800μm以上でもよい。上記合計厚さ(T+T)の増大により、被着体が舗装面等の粗面であっても、上記粘着剤層の易変形性および上記A層の塑性変形性および柔軟性を利用して該粗面に粘着テープを良好になじませやすくなる傾向にある。また、粘着テープを貼り付けることで被着体上に生じる段差の高さを抑える観点から、いくつかの態様において、上記合計厚さ(T+T)は、1800μm以下であることが適当であり、1500μm以下であることが好ましく、1300μm以下でもよく、1100μm以下でもよく、1000μm以下でもよい。粘着テープのブロッキングを抑制しつつ粗面への良好ななじみ性を発揮する観点から、いくつかの態様において、粘着剤層の厚さT[μm]に対するA層の厚さT[μm]の比(T/T)は、1以上であることが好ましく、3以上であることが好ましく、5以上でもよく、6以上でもよく、7以上でもよい。また、粘着テープの剥離強度を高める観点から、上記比(T/T)は、30以下であることが適当であり、20以下であることが好ましく、15以下でもよく、12以下でもよく、10以下でもよい。
【0105】
(引張強さF
粘着テープの引張強さFは、JIS K 7127:1999に基づいて測定される。具体的には、粘着テープの引張強さFは、23℃、50%RHの環境下において、幅5mmまたは幅15mmの試験片を、引張試験機を用いてチャック間距離10mm、引張速度300mm/分の条件で破断するまで延伸し、そのときの最大引張荷重(単位は試験片の幅に応じて、[N/5mm]または[N/15mm])として測定される。上記試験片は、例えば、評価対象の粘着テープを適宜カットすることにより調製することができる。試験片は、引張強さFの測定時において該試験片を延伸する方向が、粘着テープの長手方向(典型的には流れ方向(MD))となるように調製することが望ましい。引張試験機としては、島津製作所社製の製品名「オートグラフ AGS-J」を用いることができる。試験片の長さは、チャック間距離10mmで引張試験機にセットできる長さであればよく、例えば50mm程度とすることが適当である。後述の実施例においても同様の測定方法が採用される。
【0106】
特に限定するものではないが、ここに開示される粘着テープにおいて、該粘着テープの幅5mmの試験片を用いて測定される引張強さFは、10N/5mm以上(有利には、15N/5mm以上)であり得る。粘着テープの耐久性(例えば、舗装面に貼り付けられた粘着テープを横切って車両が行き来するような過酷な使用態様における耐久性)をより高める観点から、いくつかの態様において、引張強さFは、20N/5mm以上であることが好ましく、25N/5mm以上であることがより好ましく、30N/5mm以上であってもよく、35N/5mm以上であってもよく、40N/5mm以上であってもよく、45N/5mm以上でもよく、50N/5mm以上でもよい。また、いくつかの態様において、引張強さFは、120N/5mm以下であってよく、なじみ性等の観点から100N/5mm以下であることが適当であり、90N/5mm以下であることが有利であり、80N/5mm以下であることが好ましく、70N/5mm以下であることがより好ましく、65N/5mm以下または65N/5mm未満であってもよく、60N/5mm以下であってもよく、55N/5mm以下であってもよい。引張強さFが高すぎないことは、A層の塑性変形性および柔軟性を効果的に利用して粘着テープ全体としての粗面(例えば舗装面)へのなじみ性を高める観点から有利となり得る。引張強さFは、基材の構造や各層の組成、基材の製造方法等の選択によって調節することができる。
【0107】
(引張強さF
ここに開示される粘着テープのいくつかの態様では、該粘着テープの基材を構成するB層の幅15mmの試験片を用いて測定される引張強さFが15N/15mm以上であることが適当であり、30N/15mm以上であることが好ましく、40N/15mm以上であることがより好ましく、さらに好ましくは50N/15mm以上である。このような引張強さFを示すB層によると、耐久性の高い粘着テープを好適に実現しやすい。粘着テープの耐久性をさらに向上させる観点からは、B層の引張強さFは、60N/15mm以上であることが好ましく、65N/15mm以上でもよく、70N/15mm以上でもよく、75N/15mm以上でもよい。このような引張強さFを示すB層によると、耐久性の高い粘着テープを好適に実現しやすい。また、B層の引張強さFは、例えば150N/15mm以下であってよく、A層の塑性変形性が損なわれることを避ける観点から125N/15mm以下または125N/15mm未満であることが適当であり、100N/15mm以下でもよく、95N/15mm以下でもよい。引張強さFは、B層の組成や厚さ、形成方法等の選択によって調節することができる。
【0108】
B層の引張強さFは、以下のようにして測定される。すなわち、基材のB層からなる単層の樹脂フィルムを用意する。例えば、基材のB層を構成する樹脂組成物(b)を用いて、該基材におけるB層と同じ厚さの単層の樹脂フィルムを作製する。この樹脂フィルムを評価対象とする他は粘着テープの引張強さFと同様にして、B層の引張強さFを測定することができる。後述の実施例においても同様の測定方法が採用される。
【0109】
特に限定するものではないが、ここに開示される粘着テープのいくつかの態様において、該粘着テープは以下の不等式(3):
(F/T)>(F/T) (3);
を満たすことが好ましい。上記不等式(3)において、TはB層の厚さ[μm]であり、Tは基材の厚さ[μm]であり、FはB層の幅15mmの試験片を用いて測定される引張強さ[N/15mm]であり、Fは粘着テープの幅15mmの試験片を用いて測定される引張強さ[N/15mm]である。すなわち、B層の引張強さF[N/15mm]をB層の厚さT[μm]で除した値が、粘着テープの引張強さF[N/15mm]を基材の厚さT[μm]で除した値よりも大きいことが好ましい。ここで、上記不等式(1)中のTは、B層の厚さをμmの単位で表したときの数値部分であって、T自体は単位を持たない無次元数である。上記不等式(3)中のF、T、Tも同様である。また、上記不等式(3)の右辺の分母を粘着テープの厚さではなく基材の厚さとするのは、一般に粘着剤層の引張強さは基材の引張強さに比べて著しく小さいため、粘着テープの引張強さを基材の引張強さの近似値として把握し得るためである。すなわち、上記不等式(3)は、基材の引張強さ(粘着テープの引張強さに近似)およびB層の引張強さをそれぞれ厚さ当たりの値に換算した場合に、B層の存在によって基材全体の引張強さが高められていることを示している。
【0110】
(引裂き強さS
特に限定するものではないが、ここに開示される粘着テープは、該粘着テープの長手方向(典型的には流れ方向(MD))への引裂き強さSが、15N以上であり得る。粘着テープの耐久性向上の観点から、粘着テープの引裂き強さSは、20N以上であることが好ましく、より好ましくは25N以上、さらに好ましくは30N以上であり、35N以上でもよく、40N以上でもよい。粘着テープの引裂き強さSの上限は特に限定されないが、路面へのなじみ性向上の観点から、通常、120N以下であることが適切であり、好ましくは100N以下、より好ましくは90N以下であり、85N以下でもよく、80N以下でもよい。
【0111】
また、ここに開示される粘着テープは、該粘着テープの長手方向と直交する方向(典型的には、粘着テープの幅方向(TD))への引裂き強さSは、特に限定されない。粘着テープの耐久性向上の観点より、粘着テープの引裂き強さSは、通常、15N以上であることが適切であり、好ましくは20N以上、より好ましくは25N以上、さらに好ましくは30N以上であり、35N以上でもよく、40N以上でもよい。粘着テープの引裂き強さSの上限は特に限定されないが、路面へのなじみ性向上の観点から、通常、120N以下であることが適切であり、好ましくは100N以下、より好ましくは90N以下であり、85N以下でもよく、82N以下でもよい。
【0112】
粘着テープの長手方向(典型的には流れ方向(MD))への引裂き強さS、および、粘着テープの長手方向と直交する方向(典型的には、粘着テープの幅方向(TD))への引裂き強さSは、いずれもJIS K6772に準拠して測定される。粘着テープの引裂き強さSは、具体的には、以下の方法で測定される。粘着テープの長手方向(典型的には流れ方向(MD))に沿って、幅50mmの試験片(以下、「MD試験片」ともいう。)を切り出す。次に、上記MD試験片の幅方向の中央端部から長さ方向に平行に内部へ長さ15mmの切込を入れる。次いで、上記MD試験片の上記切込を入れた辺を、該切込の両側が表裏となるように引張試験機にセットし、23℃、50%RHの環境下において、300mm/分の速度で引っ張ることにより上記切込の方向に試験片を引き裂き、そのときの最大荷重[N]を粘着テープの引裂き強さSとする。引張試験機としては、島津製作所社製の製品名「オートグラフ AGS-J」を用いることができる。試験片の長さは特に限定されないが、15mmの切込を入れて測定する観点から、50mm程度とすることが適当である。後述の実施例においても同様の測定方法が採用される。
【0113】
粘着テープの引裂き強さSは、具体的には、以下の方法で測定される。粘着テープの長手方向と直交する方向(典型的には、粘着テープの幅方向(TD))に沿って、幅50mmの試験片(以下、「TD試験片」ともいう。)を切り出す。上記MD試験片のかわりに上記TD試験片を用いること以外は、上記引裂き強さSの測定と同じ方法で粘着テープの引裂き強さSが測定される。試験片の長さは特に限定されないが、15mmの切込を入れて測定する観点から、50mm程度とすることが適当である。後述の実施例においても同様の測定方法が採用される。
【0114】
(引裂き強さS
特に限定されるものではないが、ここに開示される粘着テープのいくつかの態様では、該粘着テープの基材を構成するB層の長手方向(典型的には流れ方向(MD))への引裂き強さSが、8N以上である。粘着テープの耐久性向上の観点から、B層の引裂き強さSは、10N以上であることが好ましく、より好ましくは15N以上、さらに好ましくは18N以上であり、20N以上でもよく、22N以上でもよく、25N以上でもよい。B層の引裂き強さSの上限は特に限定されないが、路面へのなじみ性向上の観点から、通常、50N以下であることが適切であり、好ましくは40N以下、より好ましくは35N以下、さらに好ましくは32N以下であり、30N以下でもよく、28N以下でもよい。
【0115】
ここに開示される粘着テープのいくつかの態様では、該粘着テープの基材を構成するB層の、長手方向と直交する方向(典型的には幅方向(TD))への引裂き強さSは8N以上である。粘着テープの耐久性向上の観点から、B層の幅方向(TD)への引裂き強さSは、10N以上であることが好ましく、より好ましくは15N以上、さらに好ましくは18N以上であり、20N以上でもよく、22N以上でもよく、25N以上でもよい。B層の引裂き強さSの上限は特に限定されないが、路面へのなじみ性向上の観点から、通常、50N以下であることが適切であり、好ましくは40N以下、より好ましくは35N以下、さらに好ましくは32N以下であり、30N以下でもよく、28N以下でもよい。
【0116】
B層の引裂き強さSは、以下のようにして測定される。すなわち、基材のB層からなる単層の樹脂フィルムを用意する。例えば、基材のB層を構成する樹脂組成物(b)を用いて、該基材におけるB層と同じ厚さの単層の樹脂フィルムを作製する。この樹脂フィルムを評価対象とする他は粘着テープの引裂き強さSと同様にして、B層の引裂き強さSを測定することができる。また、B層の引裂き強さSは、上記樹脂フィルムを評価対象とする他は粘着テープの引裂き強さSと同様にして測定することができる。後述の実施例においても同様の測定方法が採用される。
【0117】
(180度剥離強度)
ここに開示される粘着テープのいくつかの態様において、該粘着テープは、ステンレス鋼板に対する180度剥離強度(以下、単に「180度剥離強度」ともいう。)が6.0N/25mm以上であることが適当であり、9.0N/25mm以上であることが有利であり、12.5N/25mm以上であることが好ましい。耐剥がれ性向上の観点から、いくつかの態様において、粘着テープの180度剥離強度は、16.5N/25mm以上でもよく、18.5N/25mm以上でもよく、22.0N/25mm以上でもよい。180度剥離強度の上限は特に限定されず、例えば100N/25mm以下であり得る。いくつかの態様では、被着体に貼り付けられている粘着テープを該被着体から剥がして新しい粘着テープに貼り替える際の剥離作業性の観点から、上記180度剥離強度は、例えば70N/25mm以下であってよく、60N/25mm以下でもよく、50N/25mm以下でもよい。
【0118】
粘着テープの180度剥離強度は、次のようにして測定される。すなわち、23℃、50%RHの環境下において、幅25mmの短冊状にカットした測定サンプルを粒度360番の研磨紙で磨いたステンレス鋼(SUS)板に貼り合わせ、該試験片上で2kgのローラを1往復させて圧着する。これを同環境下に30分間放置した後、引張試験機を使用して、JIS Z 0237:2000に準じて、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で剥離強度(N/25mm)を測定する。引張試験機としては、例えば島津製作所社製の製品名「オートグラフAGS-J」を用いることができる。後述の実施例においても同様の方法で測定される。
【0119】
<用途>
ここに開示される粘着テープは、粗面に貼り付けられてその上から強い応力が度々加わるような態様においても使用寿命を改善し得るという特長を活かして、舗装面(特に、屋外の舗装面)等の粗面に貼り付けられる態様で好ましく用いられ得る。上記舗装面は、例えばアスファルト舗装、コンクリート舗装、コンクリートブロック舗装などによる舗装面であり得る。上記舗装面に貼り付けられた粘着テープを横切って車両(例えば、乗用車、トラック、フォークリフト、リーチスタッカーなど)が行き来する使用態様において、ここに開示される技術の適用効果が好適に発揮され得る。
また、ここに開示される粘着テープは、上記の特長を活かして、例えば標示用粘着テープとして好ましく用いられ得る。例えば、工場の敷地内や道路などに貼り付けられて、立ち入り禁止区画やパレット置き場の区画を示す用途、車両の停止位置や駐車場の枠線などの目印を標示する用途、行き先表示などの情報を標示する用途、工事現場や駅構内等において注意を喚起するためのトラ模様を形成する用途などに好適である。
また、ここに開示される粘着テープは、舗装面に貼り付けられる用途に限らず、例えば屋内または屋外のモルタル塗装面、ブロック塀、レンガ塀、石垣、石畳路などに貼り付けられる用途にも有用である。
【0120】
この明細書により開示される事項には、以下のものが含まれる。
〔1〕 第1面および第2面を有する基材と、該基材の前記第1面上に配置された粘着剤層と、を含む粘着テープであって、
前記基材は、樹脂組成物(a)により構成された層であって前記第1面を構成するA層と、樹脂組成物(b)により構成された層であって前記A層よりも前記第2面側に配置されたB層と、を少なくとも含み、
前記樹脂組成物(a)は、50重量%以上のフィラーを含み、
前記A層は、25℃における押し込み硬さが6.0MPa以下である、粘着テープ。
〔2〕 第1面および第2面を有する基材と、該基材の前記第1面上に配置された粘着剤層と、を含む粘着テープであって、
前記基材は、樹脂組成物(a)により構成された層であって前記第1面を構成するA層と、樹脂組成物(b)により構成された層であって前記A層よりも前記第2面側に配置されたB層と、を少なくとも含み、
前記樹脂組成物(a)は、50重量%以上のフィラーを含み、
前記A層は、25℃における押し込み弾性率が150MPa以下である、粘着テープ。
〔3〕 前記樹脂組成物(a)は、ベース樹脂としてエラストマーを含む、上記〔1〕または〔2〕に記載の粘着テープ。
〔4〕 前記樹脂組成物(a)は、ベース樹脂としてエチレン-酢酸ビニル共重合体を含み、
前記エチレン-酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含量は35重量%以上である、上記〔1〕から〔3〕のいずれかに記載の粘着テープ。
〔5〕 前記樹脂組成物(b)は、ベース樹脂としてポリオレフィン系樹脂を含む、上記〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の粘着テープ。
〔6〕 前記ポリオレフィン系樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレンを60重量%より多く含有する、上記〔5〕に記載の粘着テープ。
〔7〕 前記樹脂組成物(b)は、ベース樹脂としてポリエステル系樹脂を含む、上記〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の粘着テープ。
〔8〕 前記B層の厚さT[μm]に対する前記A層の厚さT[μm]の比(T/T)が0.5以上25以下である、上記〔1〕から〔7〕のいずれかに記載の粘着テープ。
〔9〕 前記粘着テープの厚さが2000μm以下である、上記〔1〕から〔8〕のいずれかに記載の粘着テープ。
〔10〕 前記粘着剤層の厚さT[μm]と前記A層の厚さT[μm]との合計厚さ(T+T)が150μm以上である、上記〔1〕から〔9〕のいずれかに記載の粘着テープ。
〔11〕 前記粘着剤層はアクリル系粘着剤層である、上記〔1〕から〔10〕のいずれかに記載の粘着テープ。
〔12〕 屋外の舗装面に貼り付けて用いられる、上記〔1〕から〔11〕のいずれかに記載の粘着テープ。
〔13〕 上記〔1〕から〔12〕のいずれかに記載の粘着テープからなる、標示用粘着テープ。
【実施例0121】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明中、使用量や含有量を表す「部」および「%」は、特に断りがない限り、重量基準である。
【0122】
<使用材料>
以下の実験において粘着テープの作製に使用した材料は、次のとおりである。
EVA-VA19%:東ソー製、酢酸ビニル含量19%のエチレン-酢酸ビニル共重合体、製品名「ウルトラセン636」。
EVA-VA41%:三井・ダウ ポリケミカル製、酢酸ビニル含量41%のエチレン-酢酸ビニル共重合体、製品名「エバフレックス EV40LX」。
炭酸カルシウム:丸尾カルシウム製の重質炭酸カルシウム、製品名「スノーライトSSS」、平均粒子径3.4μm。
帯電防止剤:三洋化成工業社製、ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体、製品名「ペレスタット300」。
白色マスターバッチ(白色MB):住化カラー社製の白色顔料、製品名「SPEM-7A2575AL」、二酸化チタン含量50~60%、ステアリン酸亜鉛含量1~10%、ポリエチレン含量30~40%。
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE):東ソー社製の直鎖状低密度ポリエチレン、商品名「ニポロン-L F21」。
α-オレフィン共重合体:三井化学製のエチレン・α-オレフィンコポリマー、商品名「タフマーA 4070S」。
粘着剤組成物:トーヨーケム製の2液硬化型アクリル系溶剤型粘着剤。使用直前に、有機溶剤中にアクリル酸エステル系共重合体を40~50%および粘着付与樹脂5~15%を含む主剤100部に対して、硬化剤としてのエポキシ系架橋剤を0.23部配合(いずれも不揮発分基準)。
【0123】
<試験例1>
(A層単層シート)
<参考例A1>
200部のEVA-VA41%と、350部の炭酸カルシウムとを混合し、本例のA層用原料を調製した。上記A層用原料を用い、二軸押出成膜機(テクノベル製、型番「KZW-15」)を用いて、厚さ200μmの単層構造の樹脂フィルムを作製し、これを本例に係るA層単層シートとした。
次に、厚さ38μmのPETフィルムの片面がシリコーン系剥離剤による剥離面となっている剥離ライナーを用意した。この剥離ライナーの剥離面に上記粘着剤組成物を塗布し、110℃で2分間乾燥させて厚さ100μmの粘着剤層を形成した。この粘着剤層を上記樹脂フィルムの片面に貼り合わせて、本例に係る粘着剤層付きA層単層シートを得た。
【0124】
<参考例A2>
50部のEVA-VA19%と、150部のEVA-VA41%と、350部の炭酸カルシウムとを混合して調製したA層用原料を用いたことの他は、参考例A1と同様にして、本例に係るA層単層シートおよび粘着剤層付きA層単層シートを得た。
【0125】
<参考例A3>
100部のEVA-VA19%と、100部のEVA-VA41%と、350部の炭酸カルシウムとを混合して調製したA層用原料を用いたことの他は、参考例A1と同様にして、本例に係るA層単層シートおよび粘着剤層付きA層単層シートを得た。
【0126】
<測定および評価>
得られた各例のA層単層シートについて、上述の方法により、アスカーC硬度および降伏点強度[N/mm]を測定した。また、各例の粘着剤層付きA層単層シートについて、下記の方法により、路面なじみ性を評価した。結果を表1に示した。
【0127】
(路面なじみ性試験)
屋外のアスファルト舗装された路面(道路の表面)に、該路面が乾燥している状況で、各例に係る粘着剤層付きA層単層シートを幅50mm、長さ3mのサイズで貼り付けた。具体的には、上記粘着剤層付きA層単層シートを粘着剤層が路面に接触するように路面上に配置して手で軽く圧着した後、その上から(すなわち、粘着剤層付きA層単層シートの背面から)ハンマーで叩き、さらに車両を走行(トヨタL&F社製、電動フォークリフト、型番8FBR15を、約2km/hで1往復)させて圧着させた。その後、路面の凹凸への粘着剤層付きA層単層シートの食い込み(なじみ)の程度を観察し、以下の3水準で路面なじみ性を評価した。
AA:粘着テープが路面の凹凸(起伏)になじんでいることが、粘着テープの背面からの目視でわかる(なじみ性に優れる)。
A:粘着テープの背面を手で撫でると路面の凹凸が感じられる(なじみ性良好)。
B:粘着テープの背面を手で撫でても路面の凹凸が感じられない(なじみ性不良)。
【0128】
【表1】
【0129】
表1に示されるように、ベース樹脂としてエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)を用いた参考例A1~A3のA層単層シートにおいて、酢酸ビニル含量を増加させたEVAを用いると、A層単層シートのアスカーC硬度および降伏点強度がいずれも低くなり、軟らかくなる傾向にあることが確かめられた。また、アスカーC硬度および降伏点強度が低いA層単体シートによると、路面なじみ性が改善する傾向にあることが確かめられた。
【0130】
<試験例2>
(B層単層シート)
<参考例B1>
直鎖状低密度ポリエチレン100部と、帯電防止剤10部と、白色マスターバッチ5部とを混合し、本例のB層用原料を調製した。上記B層用原料を用い、二軸押出成膜機(テクノベル製、型番「KZW-15」)を用いて、厚さ200μmの単層構造の樹脂フィルムを作製し、これを本例のB層単層シートとした。
次に、厚さ38μmのPETフィルムの片面がシリコーン系剥離剤による剥離面となっている剥離ライナーを用意した。この剥離ライナーの剥離面に上記粘着剤組成物を塗布し、110℃で2分間乾燥させて厚さ100μmの粘着剤層を形成した。この粘着剤層を本例のB層単層シートの片面に貼り合わせて、本例に係る粘着剤層付きB層単層シートを得た。
【0131】
<参考例B2>
直鎖状低密度ポリエチレン100部と、白色マスターバッチ5部とを混合して調製したB層用原料を用いたことの他は、参考例B1と同様にして、本例に係るB層単層シートおよび粘着剤層付きB層単層シートを得た。
【0132】
<参考例B3>
直鎖状低密度ポリエチレンとα-オレフィン共重合体を1:1の重量比で使用して調製したポリエチレン系樹脂100部と、炭酸カルシウム50部とを混合して調製したB層用原料を用いたことの他は、参考例B1と同様にして、本例に係るB層単層シートおよび粘着剤層付きB層単層シートを得た。
【0133】
<測定および評価>
得られた各例のB層単層シートについて、上述の方法により、引張強さF[N/15mm]、MD方向への引裂き強さS[N]およびTD方向への引裂き強さS[N]を測定した。結果を表2に示した。また、得られた各例の粘着剤層付きB層単層シートについて、下記の方法により、防汚性を評価した。
【0134】
(防汚性)
上述した路面なじみ性試験と同様にして、屋外のアスファルト舗装された路面に、各例に係る粘着剤層付きB層単層シートを幅50mm、長さ3mのサイズで貼り付けた。この粘着剤層付きB層単層シートを横切って約20台/日のトラックが通過する環境で1か月放置した後、上記粘着剤層付きB層単層シートの表面汚れの度合いを目視で観察し、各例間の防汚性の相対的な優劣を評価した。
その結果、参考例B1の粘着剤層付きB層単層シートの表面汚れの度合いが最も少なく(防汚性:特優(AA))、次いで参考例B2の粘着剤層付きB層単層シートの表面汚れの度合いが少なく(防汚性:優秀(A))、参考例B3の粘着剤層付きB層単層シートの表面汚れの度合いが最も多い(防汚性:良(B))ことが確かめられた。
【0135】
【表2】
【0136】
表2に示されるように、LLDPEとα-オレフィン共重合体を1:1の重量比で使用して調製したポリオレフィン系樹脂を用い、かつ、炭酸カルシウムを用いた参考例B3のB層単層シートに比べて、ポリオレフィン系樹脂としてLLDPEを単独で使用し、かつ、炭酸カルシウムを不使用とした参考例B1およびB2のB層単層シートは、引張強さおよび引裂き強さがいずれも高く、防汚性にも優れる傾向にあることが確かめられた。また参考例B1と参考例B2の結果の比較から、帯電防止剤を用いるとさらに防汚性が改善することが確かめられた。
【0137】
<試験例3>
(粘着テープ)
(実施例1)
200部のEVA-VA41%と350部の炭酸カルシウムとを混合して本例のA層用原料を調製した。また、直鎖状低密度ポリエチレン100部と、帯電防止剤10部と、白色マスターバッチ5部とを混合し、本例のB層用原料を調製した。上記A層用原料と、上記B層用原料を用いて、多層成膜機(日本製鋼所製)を用いて厚さ800μmのA層および厚さ200μmのB層からなる2層構造の樹脂フィルム(基材)を作製した。本例の2層構造の樹脂フィルムの成形は190℃で行った。
次いで、厚さ38μmのPETフィルムの片面がシリコーン系剥離剤による剥離面となっている剥離ライナーを用意した。この剥離ライナーの剥離面に上記粘着剤組成物を塗布し、110℃で2分間乾燥させて厚さ100μmの粘着剤層を形成した。この粘着剤層を上記樹脂フィルム(基材)の第1面(A層側の表面)に貼り合わせて、本例に係る粘着テープを得た。
【0138】
(実施例2)
実施例1のA層用原料およびB層用原料を用いて、多層成膜機(日本製鋼所製)を用いて厚さ520μmのA層および厚さ130μmのB層からなる2層構造の樹脂フィルム(基材)を作製した。本例の2層構造の樹脂フィルムの成形は190℃で行った。上記の樹脂フィルム(基材)を用いたことの他は、実施例1と同様にして、本例に係る粘着テープを得た。
【0139】
(実施例3)
200部のEVA-VA41%と350部の炭酸カルシウムと11部の白色マスターバッチとを混合して調製した本例のA層用原料を溶融混錬し、130℃でカレンダー成形することにより厚さ800μmのA層を得た。このA層を、B層としての厚さ50μmのPETフィルム(東洋紡社製、商品名「HB3U0」)の片面に接着剤を介して積層し、2層構造の樹脂フィルム(基材)を作製した。本例で用いたB層としてのPETフィルムは、添加剤としての紫外線吸収剤を含む紫外線吸収剤含有PETフィルムであり、当該紫外線吸収剤PETフィルムにおける添加剤含有量は2%未満であり、PET含有量は98%超であった。また本例のA層とB層の積層において接着剤としてはエステル系接着剤を凡そ3g/mの量で用いた。上記の樹脂フィルム(基材)を用いたことの他は、実施例1と同様にして、本例に係る粘着テープを得た。
【0140】
(比較例1)
100部のEVA-VA19%と、100部のEVA-VA41%と、350部の炭酸カルシウムとを混合して本例のA層用原料を調製した。また、直鎖状低密度ポリエチレンとα-オレフィン共重合体を1:1の重量比で使用して調製したポリエチレン系樹脂100部と、炭酸カルシウム50部とを混合し、本例のB層用原料を調製した。上記A層用原料と、上記B層用原料を用いて、多層成膜機(日本製鋼所製)を用いて厚さ800μmのA層および厚さ200μmのB層からなる2層構造の樹脂フィルム(基材)を作製した。
上記の樹脂フィルム(基材)を用いたことの他は、実施例1と同様にして、本例に係る粘着テープを得た。
【0141】
<測定および評価>
得られた粘着テープについて、上述の方法により、粘着テープの引張強さF[N/5mm]、MD方向への引裂き強さS[N]、TD方向への引裂き強さS[N]および180度剥離強度[N/25mm]を測定した。また、得られたA層の押し込み硬さH[MPa]、A層のマルテンス硬さM[MPa]およびA層の押し込み弾性率E[MPa]を下記の方法で測定した。結果を表3に示した。
【0142】
(押し込み硬さH、マルテンス硬さMおよび押し込み弾性率Eの測定方法)
超微小硬度計を用いた押し込み試験による、各例の粘着テープにおけるA層(内層)の押し込み硬さ、マルテンス硬さおよび押し込み弾性率を、ISO14577―1に準拠して測定した。具体的には、まず各例の粘着テープから粘着剤層を剥離除去することにより、粘着剤層がない基材を用意した。当該粘着剤層を除去した粘着テープ(すなわち、基材)を、サンプリング用はさみを用いて厚さ方向に裁断し、凡そ2cm×2cmのサイズに切り出した。上記基材片を、接着剤を用いて、当該基材片のB層(外層)側の表面がスライドガラスに接するような向きでスライドガラスに固定し、測定試料とした。上記測定試料を超微小硬度計の試料台上に固定し、測定試料のA層側の表面から、以下の条件で押し込み試験を行い、荷重変位曲線を取得した。得られた荷重変位曲線から、上述した方法により押し込み硬さ、マルテンス硬さおよび押し込み弾性率を算出した。押し込み硬さH、マルテンス硬さMおよび押し込み弾性率Eは、各例につき少なくとも8枚の測定試料を用いて押し込み試験を行い、その結果の平均値(n≧8)を取ることにより求めた。
【0143】
(測定条件)
装置:超微小硬度計、島津製作所製の型番「DUH-211S」
使用圧子:バーコビッチ圧子(三角錐圧子:稜間角115°)
押し込み深さ設定:10μm
測定環境:25℃、50%RH
試験モード:押し込み深さ設定負荷-除荷
負荷/除荷速度定数(速度):1.0(1.4632mN/秒)
保持時間:0秒
試験レンジ:19.61mN
【0144】
(路面耐久性)
上記路面なじみ性試験と同様にして、屋外のアスファルト舗装された路面に、各例に係る粘着テープを幅50mm、長さ3mのサイズで貼り付けた。この粘着テープを横切って約20台/日のトラックが通過する環境で1か月放置した後、上記粘着テープの損傷の程度を観察し、以下の3水準で耐久性を評価した。結果を表3に示した。
AA:粘着テープの明らかな破れや欠けは認められない(耐久性に優れる)。
A:粘着テープの側端に部分的な欠けが認められるが、十分な標示機能が維持されている(耐久性良好)。
B:粘着テープが破れ、標示機能が明らかに低下している(耐久性に乏しい)。
【0145】
(対路面粘着力)
上記路面なじみ性試験と同様にして、屋外のアスファルト舗装された路面に、各例に係る粘着テープを幅50mm、長さ3mのサイズで貼り付け、ハンドローラーで圧着、または、2kgのローラを5往復させて圧着した。30分間放置した後に、プッシュプルゲージを使用して、引張速度1m/分、剥離角度90度の条件で剥離強度[N/50mm]を測定した。結果を表3に示した。
【0146】
【表3】
【0147】
表3に示されるように、実施例1、2および3の粘着テープは、いずれも良好な耐久性および対路面粘着力を示した。なかでも実施例1および3は特に優れた路面耐久性を示すことが確かめられた。また、B層のベース樹脂としてポリオレフィン系樹脂を用い、帯電防止剤および白色MBを添加した実施例1および2の粘着テープは、上記耐久性試験後の目視観察において、防汚性が良好であった。一方、実施例1、2および3に比べてA層の硬度が高い傾向にある比較例1の粘着テープでは、対路面粘着力が低い傾向にあった。また、実施例1、2と比較例1との対比において、A層として塑性変形性がありかつ比較的軟らかい組成が選択され、かつB層としてLLDPE含有率を高めて引張強さなどの物理的強度を向上させた組成が選択された実施例1および2の粘着テープによると、対路面粘着力が高く、かつ路面耐久性も高い傾向にあることが確認された。また、A層を単層成形し、当該A層をB層としてのPETフィルムに貼り合わせて作製された基材を用いた実施例3の粘着テープによると、比較例1の粘着テープに比べて、対路面粘着力が良好であり、かつ路面耐久性が高い傾向にあることが確認された。
【0148】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0149】
1 粘着テープ
10 基材
10A 第1面
10B 第2面(背面)
12 A層
14 B層
20 粘着剤層
20A 表面(粘着面)
図1