(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003415
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】板状屋根材又は板状壁材
(51)【国際特許分類】
E04D 1/18 20060101AFI20241226BHJP
E04D 3/36 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
E04D1/18 F
E04D3/36 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024100339
(22)【出願日】2024-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2023102843
(32)【優先日】2023-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】512251253
【氏名又は名称】甍エンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小栗 和彦
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108AA02
2E108AS02
2E108BB01
2E108BN03
2E108DF03
2E108EE01
2E108FF01
2E108GG15
(57)【要約】
【課題】屋根材又は壁材の施工で規定の働き長さ寸法を現場で測定し施工する施工方法は非常に手間が掛かってしまうという課題があった。
【解決手段】本発明の板状屋根材又は板状壁材は、下葺き防水シート上に板状屋根材又は板状壁材を直接敷設し、板状屋根材又は板状壁材は板状本体とジョイント板と緊結部材とからなり、緊結部材には板状本体の流れ方向の規定の重なり寸法分を尻側当接面から水平方向に延出した尻側固定面と尻側固定面から垂直方向に立ち上げた頭見つけ当接面を設け、下段の板状本体の尻側に上段の板状本体の頭側を重ねて配置し、板状本体の尻側面と緊結部材の尻側当接面を当接させた位置で緊結部材を固定し、緊結部材の頭見つけ当接面に上段の板状本体の頭見つけ面を当接することで、下段の板状本体の尻側上面と尻側面と上段の頭見つけ面を緊結部材で同時に固定し、板状本体を規定の重なり寸法で施工する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
勾配を有する建物の屋根又は前記建物の壁に下葺き防水シートを敷設した下地板を設け、前記下葺き防水シート上に板状屋根材又は板状壁材を直接敷設し、前記下地板へ固定する前記板状屋根材又は前記板状壁材において、
前記板状屋根材又は前記板状壁材は、板状本体とジョイント板と緊結部材とからなり、
前記板状本体は、上面、下面、頭見つけ面、側端部、尻側面を有した矩形の板状形状とし、
前記板状本体には緊結穴を設けず、
前記ジョイント板は薄板の成形品とし、
前記緊結部材には前記下地板と接する下地接地部を設け、
前記下地接地部には前記緊結穴を設け、
前記下地接地部の一方の端部から前記板状本体の厚さ分を垂直方向に立ち上げた尻側当接面を設け、
前記尻側当接面の上方端部から前記下地接地部と反対側の水平方向に前記板状本体の流れ方向の規定の重なり寸法分を延出した尻側固定面を設け、
前記尻側固定面の他方の端部から前記板状本体の厚さに所定の隙間寸法を足した寸法で垂直方向に立ち上げた頭見つけ当接面を設け、
前記頭見つけ当接面の上方端部から前記尻側固定面側に延出した頭側固定面を設け、
前記板状屋根材又は前記板状壁材を敷設の際には、
桁方向では前記板状本体の前記側端部を当接するように配置し、
流れ方向では下段の前記板状本体の尻側に上段の前記板状本体の頭側を重ねて配置し、
前記ジョイント板は下段の前記板状本体の前記尻側の前記上面と上段の前記板状本体の前記側端部の前記下面側に配置し、
前記緊結部材は前記板状本体の前記尻側面と前記緊結部材の前記尻側当接面を当接させた位置で前記緊結部材の前記緊結穴から釘又はビスで前記下地板に固定し、
前記流れ方向では下段の前記板状本体の前記尻側に固定した前記緊結部材の前記頭見つけ当接面に上段の前記板状本体の頭見つけ面を当接することで、
下段の前記板状本体の前記尻側の前記上面と前記尻側面と上段の前記板状本体の前記頭見つけ面を前記緊結部材で同時に固定し、
前記板状本体を前記規定の重なり寸法で施工することを特徴とする板状屋根材又は板状壁材
【請求項2】
前記板状本体の前記下面に対する前記頭見つけ面の角度と前記緊結部材の前記尻側固定面に対する頭見つけ当接面の立ち上げ角度を90°より鋭角としたことを特徴とする請求項1記載の板状屋根材又は板状壁材
【請求項3】
前記板状本体の前記上面の前記尻側に前記緊結部材を前記桁方向で位置決めする緊結部材位置決め目印を設け、
前記板状本体の前記下面の前記頭側に緊結部材収納空間を前記緊結部材位置決め目印に対応した位置に設け、
前記緊結部材収納空間は、
前記緊結部材の前記尻側固定面の幅以上で、
前記緊結部材の厚み以上で、
前記頭見つけ面まで貫通した凹部空間であり、
前記板状本体と前記緊結部材を敷設の際に、
前記下地板に固定した下段の前記緊結部材が上段の前記板状本体の前記緊結部材収納空間内に収納され、
下段の前記緊結部材と上段の前記板状本体が干渉しないことを特徴とする請求項1記載の板状屋根材又は板状壁材
【請求項4】
前記板状屋根材又は前記板状壁材を複数段敷設の際に、下段の前記板状本体に対し上段の前記板状本体は働き幅寸法の半分ずれた位置に配置される千鳥葺きとし、
前記緊結部材位置決め目印を前記桁方向で前記板状本体の前記働き幅寸法の1/4と3/4の位置に設け、
前記緊結部材収納空間を前記桁方向で前記板状本体の前記働き幅寸法の1/4と1/2と3/4の位置に設けたことを特徴とする請求項3記載の板状屋根材又は板状壁材
【請求項5】
前記ジョイント板は、尻側端部に鈍角で上方に突出した水返し突片を設け、
前記頭側の幅端部に下方垂直方向へ突出したジョイント板固定突片を設け、
前記水返し突片の立ち上り箇所から前記ジョイント板固定突片までの長さを前記板状本体の働き長さ寸法とし、
前記板状本体の前記尻側の前記上面にジョイント板位置決め目印を設け、
前記板状屋根材又は板状壁材を敷設の際に、
前記桁方向では前記ジョイント板位置決め目印に前記ジョイント板を合わせ、
前記流れ方向では前記板状本体の前記尻側面に前記ジョイント板の前記ジョイント板固定突片を当接することを特徴とする請求項1記載の板状屋根材又は板状壁材
【請求項6】
前記緊結部材の前記下地接地部には前記下葺き防水シート上面と接地する接地止水面と前記上面側に突出した下地接地凸面を設け、
前記下地接地凸面には前記緊結穴を設け、
前記下葺き防水シート上面と前記下地接地凸面の間にビス穴止水空間を設け、
前記ビス穴止水空間の水上側と前記桁方向の三方向には前記接地止水面を設け、
前記ビス穴止水空間の水下側には排水空間を設け、
前記下地接地部を前記緊結穴から前記ビスを用いて前記下地板に固定することを特徴とする請求項1記載の板状屋根材又は板状壁材
【請求項7】
前記板状屋根材又は前記板状壁材を敷設の際に、前記緊結部材の前記下地接地部の前記水上側に、前記水下側へ傾斜する分水部を設けたことを特徴とする請求項1記載の板状屋根材又は板状壁材
【請求項8】
前記緊結部材の前記尻側固定面と前記尻側当接面との屈曲部がR形状であり、
前記板状本体の前記尻側面と前記上面の接合部に前記R形状の半径以上の段差及び/又は面取りを設けることを特徴とする請求項1記載の板状屋根材又は板状壁材
【請求項9】
前記勾配を有する前記建物の前記屋根において、前記板状本体の前記働き幅寸法は前記建物の設計単位寸法と整数比の関係であり、
前記板状本体の働き長さの水平投影寸法は前記建物の設計単位寸法と整数比の関係であり、
前記勾配毎に前記勾配毎の前記延出寸法を有した前記尻側固定面を有する前記緊結部材を前記勾配毎に用意し、
前記勾配に合わせた前記緊結部材を用いることで、
全ての屋根端部に規格化形状屋根材を配置することを特徴とする請求項1記載の板状屋根材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、勾配を有する建物の屋根又は前記建物の壁に下葺き防水シートを敷設した下地板を設け、前記下葺き防水シート上に板状屋根材又は板状壁材を直接敷設し、前記下地板へ固定する前記板状屋根材又は前記板状壁材において、前記板状屋根材又は前記板状壁材は、板状本体とジョイント板と緊結部材とからなり、前記板状本体は、上面、下面、頭見つけ面、側端部、尻側面を有した矩形の板状形状とし、前記板状本体には緊結穴を設けず、前記ジョイント板は薄板の成形品とし、前記緊結部材には前記下地板と接する下地接地部を設け、前記下地接地部には前記緊結穴を設け、前記下地接地部の一方の端部から前記板状本体の厚さ分を垂直方向に立ち上げた尻側当接面を設け、前記尻側当接面の上方端部から前記下地接地部と反対側の水平方向に前記板状本体の流れ方向の規定の重なり寸法分を延出した尻側固定面を設け、前記尻側固定面の他方の端部から前記板状本体の厚さに所定の隙間寸法を足した寸法で垂直方向に立ち上げた頭見つけ当接面を設け、前記頭見つけ当接面の上方端部から前記尻側固定面側に延出した頭側固定面を設け、前記板状屋根材又は前記板状壁材を敷設の際には、桁方向では前記板状本体の前記側端部を当接するように配置し、流れ方向では下段の前記板状本体の尻側に上段の前記板状本体の頭側を重ねて配置し、前記ジョイント板は下段の前記板状本体の前記尻側の前記上面と上段の前記板状本体の前記側端部の前記下面側に配置し、前記緊結部材は前記板状本体の前記尻側面と前記緊結部材の前記尻側当接面を当接させた位置で前記緊結部材の前記緊結穴から釘又はビスで前記下地板に固定し、前記流れ方向では下段の前記板状本体の前記尻側に固定した前記緊結部材の前記頭見つけ当接面に上段の前記板状本体の頭見つけ面を当接することで、下段の前記板状本体の前記尻側の前記上面と前記尻側面と上段の前記板状本体の前記頭見つけ面を前記緊結部材で同時に固定し、前記板状本体を前記規定の重なり寸法で施工することを特徴としたものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術の特許文献1には、特開2006-328887号の太陽電池モジュール取付金具、設置構造、及び設置方法がある。この特許文献は、太陽電池モジュールを設置するための太陽電池モジュール取付金具、該太陽電池モジュール取付金具を用いた設置構造、及び設置方法に関するものであるが、太陽電池モジュールを瓦の代わりの屋根材又は壁材として捉えた発明として読み替えることが出来る。
従来技術の特許文献1では、太陽電池モジュール又は屋根材を確実に支持でき、下地板材側への浸水を防止し、且つ、美感に優れた屋根を形成できる取付金具、設置構造、及び設置方法を提供する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では太陽電池モジュールは、勾配下流端部が下段に固定された取付金具の係止片により係止され、勾配上流端部が上段に固定された取付金具の押え片により下地板材側に押圧して固定されるので、太陽電池モジュールを確実に支持できる。また、この取付金具は、太陽電池モジュール設置後の屋根の外観においては、係止片が見える程度であり、取付金具が目立たず、美感に優れた屋根を形成できる効果を発揮する。
【0005】
特許文献1の文献は、所定勾配の下地板材に下葺き防水シート材が敷設され、該下葺き防水シート材上に桟木が勾配方向と直交する方向に延びて所定間隔で固定された屋根に太陽電池モジュールを取り付ける取付金具である。
施工の際には、桟木を所定間隔で固定することにより、規定の働き長さ寸法で施工することが出来る取付金具、設置構造、設置方法となっている。
係止片は該L字形状の入隅側に弾性部材が配設する構成となっており、係止片で正確な働き長さを確保できる構造ではなく、桟木を所定間隔で固定する工程が必ず必要となってしまう。
施工時の取り付け作業においては、先ず屋根上で桟木の取り付けピッチを測定し、取り付けピッチを墨打ちによりマーキングし、桟木を取り付けるという工程が必要となる。
そのため、太陽電池モジュールの取り付けには非常に手間が掛かってしまうという課題があった。
【0006】
本発明は、勾配を有する建物の屋根又は前記建物の壁に下葺き防水シートを敷設した下地板を設け、前記下葺き防水シート上に板状屋根材又は板状壁材を直接敷設し、前記下地板へ固定する前記板状屋根材又は前記板状壁材において、前記板状屋根材又は前記板状壁材は、板状本体とジョイント板と緊結部材とからなり、前記板状本体は、上面、下面、頭見つけ面、側端部、尻側面を有した矩形の板状形状とし、前記板状本体には緊結穴を設けず、前記ジョイント板は薄板の成形品とし、前記緊結部材には前記下地板と接する下地接地部を設け、前記下地接地部には前記緊結穴を設け、前記下地接地部の一方の端部から前記板状本体の厚さ分を垂直方向に立ち上げた尻側当接面を設け、前記尻側当接面の上方端部から前記下地接地部と反対側の水平方向に前記板状本体の流れ方向の規定の重なり寸法分を延出した尻側固定面を設け、前記尻側固定面の他方の端部から前記板状本体の厚さに所定の隙間寸法を足した寸法で垂直方向に立ち上げた頭見つけ当接面を設け、前記頭見つけ当接面の上方端部から前記尻側固定面側に延出した頭側固定面を設け、前記板状屋根材又は前記板状壁材を敷設の際には、桁方向では前記板状本体の前記側端部を当接するように配置し、流れ方向では下段の前記板状本体の尻側に上段の前記板状本体の頭側を重ねて配置し、前記ジョイント板は下段の前記板状本体の前記尻側の前記上面と上段の前記板状本体の前記側端部の前記下面側に配置し、前記緊結部材は前記板状本体の前記尻側面と前記緊結部材の前記尻側当接面を当接させた位置で前記緊結部材の前記緊結穴から釘又はビスで前記下地板に固定し、前記流れ方向では下段の前記板状本体の前記尻側に固定した前記緊結部材の前記頭見つけ当接面に上段の前記板状本体の頭見つけ面を当接することで、下段の前記板状本体の前記尻側の前記上面と前記尻側面と上段の前記板状本体の前記頭見つけ面を前記緊結部材で同時に固定し、前記板状本体を前記規定の重なり寸法で施工することで、桟木を用いることなく板状屋根材又は板状壁材を規定の重なり寸法で正確に下葺き防水シート上に直接へ敷設し、下地板へ固定することが出来る。
敷設の際に、屋根材又は壁材の取り付けピッチの測定作業や取り付けピッチの墨打ちによるマーキング作業を屋根又は壁で行う必要が無くなり、精度良くかつ施工性が高い板状屋根材又は板状壁材を提供する。また桟木を用いなくても良いため、部材の削減も実現出来る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の本発明の板状屋根材又は板状壁材は、勾配を有する建物の屋根又は前記建物の壁に下葺き防水シートを敷設した下地板を設け、前記下葺き防水シート上に板状屋根材又は板状壁材を直接敷設し、前記下地板へ固定する前記板状屋根材又は前記板状壁材において、前記板状屋根材又は前記板状壁材は、板状本体とジョイント板と緊結部材とからなり、前記板状本体は、上面、下面、頭見つけ面、側端部、尻側面を有した矩形の板状形状とし、前記板状本体には緊結穴を設けず、前記ジョイント板は薄板の成形品とし、前記緊結部材には前記下地板と接する下地接地部を設け、前記下地接地部には前記緊結穴を設け、前記下地接地部の一方の端部から前記板状本体の厚さ分を垂直方向に立ち上げた尻側当接面を設け、前記尻側当接面の上方端部から前記下地接地部と反対側の水平方向に前記板状本体の流れ方向の規定の重なり寸法分を延出した尻側固定面を設け、前記尻側固定面の他方の端部から前記板状本体の厚さに所定の隙間寸法を足した寸法で垂直方向に立ち上げた頭見つけ当接面を設け、前記頭見つけ当接面の上方端部から前記尻側固定面側に延出した頭側固定面を設け、前記板状屋根材又は前記板状壁材を敷設の際には、桁方向では前記板状本体の前記側端部を当接するように配置し、流れ方向では下段の前記板状本体の尻側に上段の前記板状本体の頭側を重ねて配置し、前記ジョイント板は下段の前記板状本体の前記尻側の前記上面と上段の前記板状本体の前記側端部の前記下面側に配置し、前記緊結部材は前記板状本体の前記尻側面と前記緊結部材の前記尻側当接面を当接させた位置で前記緊結部材の前記緊結穴から釘又はビスで前記下地板に固定し、前記流れ方向では下段の前記板状本体の前記尻側に固定した前記緊結部材の前記頭見つけ当接面に上段の前記板状本体の頭見つけ面を当接することで、下段の前記板状本体の前記尻側の前記上面と前記尻側面と上段の前記板状本体の前記頭見つけ面を前記緊結部材で同時に固定し、前記板状本体を前記規定の重なり寸法で施工することを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の板状屋根材又は板状壁材において、前記板状本体の前記下面に対する前記頭見つけ面の角度と前記緊結部材の前記尻側固定面に対する頭見つけ当接面の立ち上げ角度を90°より鋭角としたことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の本発明は、請求項1に記載の板状屋根材又は板状壁材において、前記板状本体の前記上面の前記尻側に前記緊結部材を前記桁方向で位置決めする緊結部材位置決め目印を設け、前記板状本体の前記下面の前記頭側に緊結部材収納空間を前記緊結部材位置決め目印に対応した位置に設け、前記緊結部材収納空間は、前記緊結部材の前記尻側固定面の幅以上で、前記緊結部材の厚み以上で、前記頭見つけ面まで貫通した凹部空間であり、前記板状本体と前記緊結部材を敷設の際に、前記下地板に固定した下段の前記緊結部材が上段の前記板状本体の前記緊結部材収納空間内に収納され、下段の前記緊結部材と上段の前記板状本体が干渉しないことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の本発明は、請求項3に記載の板状屋根材又は板状壁材において、前記板状屋根材又は前記板状壁材を複数段敷設の際に、下段の前記板状本体に対し上段の前記板状本体は働き幅寸法の半分ずれた位置に配置される千鳥葺きとし、前記緊結部材位置決め目印を前記桁方向で前記板状本体の前記働き幅寸法の1/4と3/4の位置に設け、前記緊結部材収納空間を前記桁方向で前記板状本体の前記働き幅寸法の1/4と1/2と3/4の位置に設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の本発明は、請求項1に記載の板状屋根材又は板状壁材において、前記ジョイント板は、尻側端部に鈍角で上方に突出した水返し突片を設け、前記頭側の幅端部に下方垂直方向へ突出したジョイント板固定突片を設け、前記水返し突片の立ち上り箇所から前記ジョイント板固定突片までの長さを前記板状本体の働き長さ寸法とし、前記板状本体の前記尻側の前記上面にジョイント板位置決め目印を設け、前記板状屋根材又は板状壁材を敷設の際に、前記桁方向では前記ジョイント板位置決め目印に前記ジョイント板を合わせ、前記流れ方向では前記板状本体の前記尻側面に前記ジョイント板の前記ジョイント板固定突片を当接することを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の本発明は、請求項1に記載の板状屋根材又は板状壁材において、前記緊結部材の前記下地接地部には前記下葺き防水シート上面と接地する接地止水面と前記上面側に突出した下地接地凸面を設け、前記下地接地凸面には前記緊結穴を設け、前記下葺き防水シート上面と前記下地接地凸面の間にビス穴止水空間を設け、前記ビス穴止水空間の水上側と前記桁方向の三方向には前記接地止水面を設け、前記ビス穴止水空間の水下側には排水空間を設け、前記下地接地部を前記緊結穴から前記ビスを用いて前記下地板に固定することを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の本発明は、請求項1に記載の板状屋根材又は板状壁材において、前記板状屋根材又は前記板状壁材を敷設の際に、前記緊結部材の前記下地接地部の前記水上側に、前記水下側へ傾斜する分水部を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の本発明は、請求項1に記載の板状屋根材又は板状壁材において、前記緊結部材の前記尻側固定面と前記尻側当接面との屈曲部がR形状であり、前記板状本体の前記尻側面と前記上面の接合部に前記R形状の半径以上の段差及び/又は面取りを設けることを特徴とする。
【0015】
請求項9記載の本発明は、請求項1に記載の板状屋根材において、前記勾配を有する前記建物の前記屋根において、前記板状本体の前記働き幅寸法は前記建物の設計単位寸法と整数比の関係であり、前記板状本体の働き長さの水平投影寸法は前記建物の設計単位寸法と整数比の関係であり、前記勾配毎に前記勾配毎の前記延出寸法を有した前記尻側固定面を有する前記緊結部材を前記勾配毎に用意し、前記勾配に合わせた前記緊結部材を用いることで、全ての屋根端部に規格化形状屋根材を配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、勾配を有する建物の屋根又は前記建物の壁に下葺き防水シートを敷設した下地板を設け、前記下葺き防水シート上に板状屋根材又は板状壁材を直接敷設し、前記下地板へ固定する前記板状屋根材又は前記板状壁材において、前記板状屋根材又は前記板状壁材は、板状本体とジョイント板と緊結部材とからなり、前記板状本体は、上面、下面、頭見つけ面、側端部、尻側面を有した矩形の板状形状とし、前記板状本体には緊結穴を設けず、前記ジョイント板は薄板の成形品とし、前記緊結部材には前記下地板と接する下地接地部を設け、前記下地接地部には前記緊結穴を設け、前記下地接地部の一方の端部から前記板状本体の厚さ分を垂直方向に立ち上げた尻側当接面を設け、前記尻側当接面の上方端部から前記下地接地部と反対側の水平方向に前記板状本体の流れ方向の規定の重なり寸法分を延出した尻側固定面を設け、前記尻側固定面の他方の端部から前記板状本体の厚さに所定の隙間寸法を足した寸法で垂直方向に立ち上げた頭見つけ当接面を設け、前記頭見つけ当接面の上方端部から前記尻側固定面側に延出した頭側固定面を設け、前記板状屋根材又は前記板状壁材を敷設の際には、桁方向では前記板状本体の前記側端部を当接するように配置し、流れ方向では下段の前記板状本体の尻側に上段の前記板状本体の頭側を重ねて配置し、前記ジョイント板は下段の前記板状本体の前記尻側の前記上面と上段の前記板状本体の前記側端部の前記下面側に配置し、前記緊結部材は前記板状本体の前記尻側面と前記緊結部材の前記尻側当接面を当接させた位置で前記緊結部材の前記緊結穴から釘又はビスで前記下地板に固定し、前記流れ方向では下段の前記板状本体の前記尻側に固定した前記緊結部材の前記頭見つけ当接面に上段の前記板状本体の頭見つけ面を当接することで、下段の前記板状本体の前記尻側の前記上面と前記尻側面と上段の前記板状本体の前記頭見つけ面を前記緊結部材で同時に固定し、前記板状本体を前記規定の重なり寸法で施工することで、桟木を用いることなく板状屋根材又は板状壁材を規定の重なり寸法で正確に下葺き防水シート上に直接へ敷設し、下地板へ固定することが出来る。
桟木を用いなくても良いため、取り付け手間及び部材の削減が出来、コスト削減に繋がる。
本発明では緊結部材の尻側固定面の延出長さが定規となり、板状本体の尻側面と頭見つけ面を当て止めすることで流れ方向における屋根材又は壁材の取り付けピッチの測定作業や取り付けピッチの墨打ちによるマーキング作業を屋根又は壁で行う必要が無くなり、精度良く規定の働き長さ寸法で、かつ施工性の高い敷設作業が行える。
板状本体の敷設では、緊結部材の頭見つけ当接面に板状本体の頭見つけ面を当て止めする構造のため、頭見つけ面方向に掛かる重力を利用し、板状本体の位置決めがしやすく、かつ、取り付け時に板状本体を手で押さえていなくても板状本体は屋根又は壁から落下することが無く、施工性だけでなく安全性にも優れている。
これらの施工性の向上は、建築現場での生産性向上に繋がり、現在建築業界で問題になっている職人不足問題を解決することができる。
本発明では、板状本体に緊結穴を開けずに緊結部材の下地接地部に設けた緊結穴から釘又はビスを用いて下地板へ固定できる構造であり、緊結穴までの流れ方向の重なり寸法を多く取れるため、緊結穴からの漏水リスクが低減でき、防水性能が向上する。
暴風雨の際に釘留めで固定する瓦などの屋根材の場合、釘穴と釘には隙間があるため負圧により前記隙間分だけ上下に屋根材が動き、旗がバタバタとはためく様なフラッタリングという現象が起きる。
フラッタリング現象で屋根材の頭側が浮き上がった隙間に強風が入り込み、屋根材の飛散や雨水の浸入に繋がってしまう。
本発明では板状本体の頭見つけ面と尻側面を隙間なく緊結部材で挟み、かつ尻側上面を緊結部材で押さえているため、負圧が発生しても板状本体が動くことは無く、フラッタリングの発生が無い。その結果、暴風の際でも屋根材の飛散や雨水の浸入を防ぐ高い耐風性能と防水性能を発揮することが出来る。
また、緊結部材の挟み込み力以上の負圧が発生した場合でも、緊結部材の頭側固定面で板状本体の頭側上面を押さえることが出来るので暴風雨の際でも飛散することは無い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】本発明の実施例による板状本体の製品図面の断面図
【
図3】本発明の実施例によるジョイント板の製品図面
【
図5】本発明の実施例による板状屋根材の屋根伏せ図
【
図6】本発明の実施例による板状屋根材の施工断面図
【
図7】本発明の実施例による板状屋根材の施工断面図における敷設ステップ
【
図8】本発明の実施例による板状屋根材における緊結部材の施工図と施工断面図
【
図9】本発明の実施例による切妻寄棟屋根での板状屋根材の屋根伏せ図
【
図11】本発明の実施例による板状壁材の施工断面図
【
図12】本発明の実施例による板状壁材における緊結部材の施工図と施工断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1の実施の形態における板状屋根材又は板状壁材は、勾配を有する建物の屋根又は前記建物の壁に下葺き防水シートを敷設した下地板を設け、前記下葺き防水シート上に板状屋根材又は板状壁材を直接敷設し、前記下地板へ固定する前記板状屋根材又は前記板状壁材において、前記板状屋根材又は前記板状壁材は、板状本体とジョイント板と緊結部材とからなり、前記板状本体は、上面、下面、頭見つけ面、側端部、尻側面を有した矩形の板状形状とし、前記板状本体には緊結穴を設けず、前記ジョイント板は薄板の成形品とし、前記緊結部材には前記下地板と接する下地接地部を設け、前記下地接地部には前記緊結穴を設け、前記下地接地部の一方の端部から前記板状本体の厚さ分を垂直方向に立ち上げた尻側当接面を設け、前記尻側当接面の上方端部から前記下地接地部と反対側の水平方向に前記板状本体の流れ方向の規定の重なり寸法分を延出した尻側固定面を設け、前記尻側固定面の他方の端部から前記板状本体の厚さに所定の隙間寸法を足した寸法で垂直方向に立ち上げた頭見つけ当接面を設け、前記頭見つけ当接面の上方端部から前記尻側固定面側に延出した頭側固定面を設け、前記板状屋根材又は前記板状壁材を敷設の際には、桁方向では前記板状本体の前記側端部を当接するように配置し、流れ方向では下段の前記板状本体の尻側に上段の前記板状本体の頭側を重ねて配置し、前記ジョイント板は下段の前記板状本体の前記尻側の前記上面と上段の前記板状本体の前記側端部の前記下面側に配置し、前記緊結部材は前記板状本体の前記尻側面と前記緊結部材の前記尻側当接面を当接させた位置で前記緊結部材の前記緊結穴から釘又はビスで前記下地板に固定し、前記流れ方向では下段の前記板状本体の前記尻側に固定した前記緊結部材の前記頭見つけ当接面に上段の前記板状本体の頭見つけ面を当接することで、下段の前記板状本体の前記尻側の前記上面と前記尻側面と上段の前記板状本体の前記頭見つけ面を前記緊結部材で同時に固定し、前記板状本体を前記規定の重なり寸法で施工するものである。
本実施の形態によれば、本発明の板状屋根材又は板状壁材は、施工現場で働き長さを測定することなく、また桟木などを用いることなく板状屋根材又は板状壁材を規定の重なり寸法で正確に下葺き防水シート上に直接へ敷設し、下地板へ固定することが出来る。
桟木などを用いなくても良いため、取り付け手間及び部材の削減が出来、コスト削減に繋がる。
本発明では緊結部材の尻側固定面の延出長さが定規となり、板状本体の尻側面と頭見つけ面を当て止めすることで流れ方向における屋根材又は壁材の取り付けピッチの測定作業や取り付けピッチの墨打ちによるマーキング作業を屋根又は壁で行う必要が無くなり、精度良く規定の働き長さ寸法で、かつ施工性の高い敷設作業が行える。
板状本体の敷設では、緊結部材の頭見つけ当接面に板状本体の頭見つけ面を当て止めする構造のため、頭見つけ面側に掛かる重力を利用し、板状本体の位置決めがしやすく、かつ、取り付け時に板状本体を手で押さえていなくても板状本体は屋根又は壁から落下することが無く、施工性だけでなく安全性にも優れている。
これらの施工性の向上は、建築現場での生産性向上に繋がり、現在建築業界で問題になっている職人不足問題を解決することができる。
本発明では、板状本体に緊結穴を開けずに緊結部材の下地接地部に設けた緊結穴から釘又はビスを用いて下地板へ固定できる構造であり、緊結穴までの流れ方向の重なり寸法を多く取れるため、緊結穴からの漏水リスクが低減でき、防水性能が向上する。
暴風雨の際に釘留めで固定する瓦などの屋根材の場合、釘穴と釘には隙間があるため負圧により前記隙間分だけ上下に屋根材が動き、旗がバタバタとはためく様なフラッタリングという現象が起きる。
フラッタリング現象で屋根材の頭側が浮き上がった隙間に強風が入り込み、屋根材の飛散や雨水の浸入に繋がってしまう。
本発明では板状本体の頭見つけ面と尻側面を隙間なく緊結部材で挟み、かつ尻側上面を緊結部材で押さえているため、負圧が発生しても板状本体が動くことは無く、フラッタリングの発生が無い。その結果、暴風の際でも屋根材の飛散や雨水の浸入を防ぐ高い耐風性能と防水性能を発揮することが出来る。
また、緊結部材の挟み込み力以上の負圧が発生した場合でも、緊結部材の頭側固定面で板状本体の頭側上面を押さえることが出来るので暴風雨の際でも飛散することは無い。
【0019】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による板状屋根材又は板状壁材において、前記板状本体の前記下面に対する前記頭見つけ面の角度と前記緊結部材の前記尻側固定面に対する頭見つけ当接面の立ち上げ角度を90°より鋭角としたものである。
本実施の形態によれば、敷設後に台風などの強風時に板状屋根材又は板状壁材の上面側に発生する負圧に対し前記板状本体の前記下面に対する前記頭見つけ面の角度と前記緊結部材の前記尻側固定面に対する頭見つけ当接面の立ち上げ角度を90°より鋭角になることで頭見つけ面の持ち上りを押さえることでフラッタリングを防止することが出来る。
板状屋根材又は板状壁材の強風時の挙動としては、緊結部材の尻側固定面で板状本体の尻側上面を押さえているため、板状本体の下葺き防水シート上面と接地している尻側下面端部を支点として頭見つけ面が持ち上がり回転するような動きとなる。
頭見つけ当接面の立上角度を90°より鋭角にすることで頭見つけ面が回転しながら持ち上がる力を立上角度が鋭角面になった頭見つけ当接面が回転力を押さえる。
頭見つけ当接面の立上角度を90°より鋭角にした構成で、頭見つけ面と頭見つけ当接面の立上角度を同じとすると面同士で頭見つけ面の回転力を押さえることが出来るのでフラッタリングの防止効果が更に向上する。
【0020】
本発明の第3の実施の形態は、第1の実施の形態による板状屋根材又は板状壁材において、前記板状本体の前記上面の前記尻側に前記緊結部材を前記桁方向で位置決めする緊結部材位置決め目印を設け、前記板状本体の前記下面の前記頭側に緊結部材収納空間を前記緊結部材位置決め目印に対応した位置に設け、前記緊結部材収納空間は、前記緊結部材の前記尻側固定面の幅以上で、前記緊結部材の厚み以上で、前記頭見つけ面まで貫通した凹部空間であり、前記板状本体と前記緊結部材を敷設の際に、前記下地板に固定した下段の前記緊結部材が上段の前記板状本体の前記緊結部材収納空間内に収納され、下段の前記緊結部材と上段の前記板状本体が干渉しないというものである。
本実施の形態によれば、板状本体の上面に緊結部材の位置決め目印を設けることで敷設時に緊結部材を設計通りの箇所に取り付けることが出来、その結果、上段に配置する板状本体と下段の前記緊結部材との桁方向での位置関係が明確になる。
敷設時に配置される緊結部材の位置へ上段に配置する板状本体の下面に緊結部材収納空間を設ける構成とすることで、敷設時に緊結部材の上面と板状本体の下面が干渉することなく敷設することが出来る。
緊結部材収納空間を緊結部材の尻側固定面の幅以上で、緊結部材の厚み以上で、頭見つけ面まで貫通した凹部空間とすることで、敷設時に流れ方向で下段の板状本体の尻側上面と上段の板状本体頭側下面とが隙間なく規定の重なり寸法分だけ面で重なる状態となる。
流れ方向の重なり部が隙間なく面で重なることで、強風を伴った雨水においても高い防水性能を発揮することが出来る。
【0021】
本発明の第4の実施の形態は、第3の実施の形態による板状屋根材又は板状壁材において、前記板状屋根材又は板状壁材を複数段敷設の際に、下段の前記板状本体に対し上段の前記板状本体は働き幅寸法の半分ずれた位置に配置される千鳥葺きとし、前記緊結部材位置決め目印を前記桁方向で前記板状本体の前記働き幅寸法の1/4と3/4の位置に設け、前記緊結部材収納空間を前記桁方向で前記板状本体の前記働き幅寸法の1/4と1/2と3/4の位置に設けたものである。
本実施の形態によれば、敷設時に板状本体に対して均等な位置に緊結部材を取り付けることが出来るので、板状本体を均等な力で下地板に固定することが出来る。
本実施例では板状本体は千鳥葺きするので、板状本体の桁方向の接合部分に緊結部材を施工する場合は接合部が目印になるため板状本体に位置決め目印を設ける必要がない。
屋根では、台風などの強風時による風の影響が屋根の部位ごとに異なることが分かっている。国土交通省告示第1458号では屋根の部分毎に異なる屋根面の負のピーク外圧係数が設定されており、屋根の中央部の平部と屋根の周辺部では平部に対して周辺部は1.5倍から2倍程度、ピーク外圧係数が高い値となっている。
本実施の形態のように緊結部材収納空間を桁方向で板状本体の働き幅寸法の1/4と1/2と3/4に設けることで平部と周辺部で緊結部材の取り付け個数を選択的に設定することが出来る。
具体的には、平部では板状本体の働き幅寸法の1/4と3/4の位置に緊結部材を設け、周辺部においては板状本体の働き幅寸法の1/4と1/2と3/4の位置に緊結部材を設けることで、オーバースペックにすることなく緊結部材を設定することが出来る。
【0022】
本発明の第5の実施の形態は、第1の実施の形態において、前記ジョイント板は、尻側端部に鈍角で上方に突出した水返し突片を設け、前記頭側の幅端部に下方垂直方向へ突出したジョイント板固定突片を設け、前記水返し突片の立ち上り箇所から前記ジョイント板固定突片までの長さを前記板状本体の働き長さ寸法とし、前記板状本体の前記尻側の前記上面にジョイント板位置決め目印を設け、前記板状屋根材又は板状壁材を敷設の際に、前記桁方向では前記ジョイント板位置決め目印に前記ジョイント板を合わせ、前記流れ方向では前記板状本体の前記尻側面に前記ジョイント板の前記ジョイント板固定突片を当接するものである。
本実施の形態によれば、板状屋根材又は板状壁材を敷設する際に簡単にジョイント板と板状本体を敷設することが出来る。
板状本体の尻側の上面にジョイント板位置決め目印を設け、ジョイント板には頭側の幅端部に下方垂直方向へ突出したジョイント板固定突片を設けることで、板状本体のジョイント板位置決め目印に合わせて尻側面にジョイント板固定突片を当接することで簡単に適正な位置にジョイント板を配置することが出来る。
ジョイント板の上に板状本体を敷設する工程としては、板状本体の頭見つけ面を緊結部材の頭見つけ当接面に当て止めし、その後板状本体の尻側を下葺き防水シート上及びジョイント板上に置くように敷設する。
板状本体の敷設の動きは、緊結部材の頭見つけ当接面を支点として回転するようにジョイント板上に置く動きとなる。
板状本体をジョイント板上に置く際にジョイント板の尻側端部に設ける水返し突片が鈍角で上方に突出し、かつ水返し突片の立ち上り箇所からジョイント板固定突片までの長さを板状本体の働き長さ寸法とする為、製品の生産上のばらつきや施工のばらつきがあったとしても板状本体をジョイント板上に回転しながら置く際に、板状本体の尻側下面がジョイント板の水返し突片の上面と当たりながらジョイント板が適切な位置に移動し、板状本体を設置することが出来る。
【0023】
本発明の第6の実施の形態は、第1の実施の形態において、前記緊結部材の前記下地接地部には前記下葺き防水シート上面と接地する接地止水面と前記上面側に突出した下地接地凸面を設け、前記下地接地凸面には前記緊結穴を設け、前記下葺き防水シート上面と前記下地接地凸面の間にビス穴止水空間を設け、前記ビス穴止水空間の水上側と前記桁方向の三方向には前記接地止水面を設け、前記ビス穴止水空間の水下側には排水空間を設け、前記下地接地部を前記緊結穴から前記ビスを用いて前記下地板に固定するものである。
本実施例のように、緊結部材をビスで固定する場合は、ビスは釘と比べてビスのネジ部分で下葺き防水シートを大きく切ってしまうため、ビスを用いたときには下葺き防水シートの性能だけでビス穴を完全に止水することが出来ないという課題がある。
本実施の形態によれば、板状屋根材又は板状壁材を下地板へ固定する際にビスを用いても、ビス穴から漏水することがなく高い防水性能を発揮することが出来る。
暴風雨などの強風を伴う雨に対しては、屋根材又は壁材だけでは雨水の浸入を防ぎきることが出来ないため、屋根材又は壁材から下葺き防水シート上まで雨水が吹き込んだ場合でも、下葺き防水シート上の雨水をビス穴から下地板内部に浸入させることなく水下側に円滑に流し出すことが防水性能として必要になる。
本実施例では、緊結部材の固定はビスを用いることを前提とし、緊結部材の下地接地部には下葺き防水シート上面と接地する接地止水面と上面側に突出した下地接地凸面を設け、下地接地凸面には緊結穴を設け、下葺き防水シート上面と下地接地凸面の間にビス穴止水空間を設け、ビス穴止水空間の水上側と桁方向の三方向には接地止水面を設け、ビス穴止水空間の水下側には排水空間を設ける構成としている。
本実施の形態とすることで、ビス穴とビス穴止水空間に対して水上側と桁方向の三方向全てが接地止水面で下葺き防水シート上面と密着し、下葺き防水シート上面に浸入した雨水を止水することが出来る。
また、ビス穴止水空間の水下側に排水空間を設ける構成とすることで、毛細管現象で接地止水面の内側まで雨水が伝わったとしてもビス穴に伝わることなく水下側に排水することが出来る。
板状屋根材又は板状壁材をビス穴で下地板に固定する作用効果は、次のような大きな作用効果が有る。
下地板の上に設けた下葺き防水シートの上に直接敷設した板状屋根材又は板状壁材を損傷なく容易に取り外すことが出来、屋根材又は壁材の再利用性を発揮することが出来る。
この再利用性により、工数を掛けなくても板状屋根材又は板状壁材を容易に取り外せるようになる。
その結果、安価に板状屋根材又は板状壁材を再利用することが出来るようになり、従来は葺き替えが必要だった建て替えや下葺き防水シート材の交換の場合でも、板状屋根材又は板状壁材を廃棄せず敷設されている板状屋根材又は板状壁材を繰り返し再利用することが出来るようになる。
板状屋根材又は板状壁材の素材を耐久性が非常に高い素材にした場合、この再利用性の効果はさらに効果的に発揮される。
例えば板状屋根材又は板状壁材の素材を陶磁器素材にした場合、200年、300年と繰り返し使うことが出来るので、温室効果ガスの排出抑制、資源消費の最小化、廃棄物の抑制による環境保護といった人類共通の課題において、多くの貢献が出来、屋根材又は壁材における「循環経済」への移行を実現することが出来る。
【0024】
本発明の第7の実施の形態は、第1の実施の形態において、前記板状屋根材又は前記板状壁材を敷設の際に、前記緊結部材の前記下地接地部の前記水上側に、水下側へ傾斜する分水部を設けたものである。
暴風雨などの強風を伴う雨に対しては、屋根材又は壁材だけでは雨水の浸入を防ぎきることが出来ないため、屋根材又は壁材から下葺き防水シート上まで雨水が吹き込んだ場合でも、下葺き防水シート上の雨水を下地板内部に浸入させることなく水下側に円滑に流し出すことが必要になる。
本実施の形態によれば、雨水が屋根材又は壁材から下葺き防水シート上まで吹き込み、水下側へ流れる中で緊結部材の下地接地部の水上側に雨水が流れてきた際に、下地接地部の水上側に水下側へ傾斜する分水部を設けることで下地接地部の水上側で雨水を滞留させることなく円滑に水下側へ雨水を流し出すことが出来る。
【0025】
本発明の第8の実施の形態は、第1の実施の形態において、前記緊結部材の前記尻側固定面と前記尻側当接面との屈曲部がR形状であり、前記板状本体の前記尻側面と前記上面の接合部に前記R形状の半径以上の段差及び/又は面取りを設けるものである。
本実施の形態によれば、緊結部材の尻側固定面と尻側当接面との屈曲部のR形状部が板状本体の尻側面と上面の接合部に干渉せず、緊結部材の尻側当接面と板状本体の尻側面が面で当接することにより、板状本体を敷設する際に規定の重なり寸法を設計通りに正確に敷設することが出来る。
【0026】
本発明の第9の実施の形態は、第1の実施の形態での板状屋根材において、前記勾配を有する前記建物の前記屋根において、前記板状本体の前記働き幅寸法は前記建物の設計単位寸法と整数比の関係であり、前記板状本体の働き長さの水平投影寸法は前記建物の設計単位寸法と整数比の関係であり、前記勾配毎に前記勾配毎の前記延出寸法を有した前記尻側固定面を有する前記緊結部材を前記勾配毎に用意し、前記勾配に合わせた前記緊結部材を用いることで、全ての屋根端部に規格化形状屋根材を配置するものである。
本実施の形態によれば、勾配毎に勾配毎の延出寸法を有した尻側固定面を有する緊結部材を勾配毎に用意することで、勾配が変わっても働き長さの水平投影寸法は同一となり、常に板状本体の働き長さの水平投影寸法を建物の設計単位寸法と整数比の関係とすることが出来る。
本実施の構成を取ることにより、全ての屋根端部に配置する屋根材形状をルール化することが出来る。
その結果、現場で屋根材を加工せずに、あらかじめ準備した規格化形状屋根材を陸棟部、隅棟部、ケラバ部、三又部、谷部、棟違い部などの全ての屋根端部に配置することが出来る。
現場で屋根材の加工が無くなることで、施工が簡単になり、熟練した職人の技能が不要となり、施工現場における生産性が大幅に向上する。
また、全ての屋根端部には規格化した形状の規格化形状屋根材が配置されるので、板状屋根材を再利用する場合、どこの端部にどの規格化形状部材を配置していいたのかを記録する必要が無くなり、板状屋根材の再利用が非常にやりやすくなる。
勿論、全ての端部に敷設されている規格化形状屋根材においても再利用が容易に行えるので、葺き替えの際に本発明の板状屋根材を再利用した方が、現状の屋根材を廃棄し新たな屋根材を用いて施工するよりもコスト的に安くなり、再利用によるメリットが多くなる。
繰り返し使うことが出来るので、温室効果ガスの排出抑制、資源消費の最小化、廃棄物の抑制による環境保護といった人類共通の課題により多くの貢献が出来、屋根材における「循環経済」への移行を実現することが出来る。
【実施例0027】
以下本発明の実施例による板状屋根材1又は板状壁材59について説明する。
図1は実施例による板状屋根材1又は板状壁材59の板状本体3の製品図面である。
図1は板状本体3の製品図面で投影法による6面図である。
図1の平面図では製品の上面9をあらわしており、板状本体3を屋根2に敷設する際の伏せ図、又は板状本体3を壁60に敷設する際の正面図で用いる図である。
平面図には断面図のA-A、B-B、C-Cの断面箇所を記載し、指示している。
板状本体3は、上面9、下面8、頭見つけ面10、側端部7、尻側面11を有した矩形の板状形状である。
桁方向19は図面位置での左右方向、流れ方向20は図面位置での上下方向となり、図面位置の下側が板状本体3の頭側6、上側が尻側5、左右方向が側端部7となる。
頭側6の端部が頭見つけ面10、尻側5の端部が尻側面11となる。
実施例では、建物の設計単位寸法Pは尺モジュールであり1Pが910mmなので、板状本体3の働き幅寸法Wは455mmであり、尺モジュールの0.5Pにあたる寸法としている。
全長さ寸法LAについては300mmであり、働き幅寸法Wとの寸法比は次の通りとなる。
全長さ寸法LA:働き幅寸法W=1:約1.5
屋根2での働き長さ寸法Lについては、屋根2の勾配17ごとに勾配伸び率に応じて設定を変えている。
実施例では、働き長さの水平投影寸法Lhを建物の設計単位寸法Pの1/4にあたる227.5mmとし、働き長さの水平投影寸法Lhに勾配伸び率を掛けて働き長さ寸法Lを求めることになる。
板状本体3の上面9の尻側5に緊結部材14を桁方向19で位置決めする緊結部材位置決め目印30を設ける。
本実施例では、尻側5の尻側面11に接した働き幅寸法Wの1/2Wの位置にジョイント板位置決め目印29を設け、尻側5の尻側面11に接した働き幅寸法Wの1/4Wの位置で左右2箇所に緊結部材位置決め目印30を設けている。
ジョイント板位置決め目印29の幅は83.5mmであり、ジョイント板位置決め目印29の中心が働き幅寸法Wの1/2Wの位置となる。ジョイント板位置決め目印29の長さは40mmであり、尻側面11を貫通している。
緊結部材位置決め目印30の幅は31mmであり、緊結部材位置決め目印30の中心が働き幅寸法Wの1/4Wの位置となる。緊結部材位置決め目印30の長さは40mmであり、尻側面11を貫通している。
板状本体3には緊結穴13は設けていない。
側面図では、側端部7、上面9、下面8、尻側5に尻側面11、頭側6に頭見つけ面10を表している。
実施例では、板状本体3の厚みTは9.4mmとしている。
下面8には凹面が設けて有り、凹面の深さは1.4mmとしている。
板状本体3の下面8に対する頭見つけ面10の角度を90°より鋭角としている。
実施例では頭見つけ面10の頭見つけ面傾斜角度A1が7°なので下面8に対する頭見つけ面10の角度は83°となり90°より鋭角となる。
正面図は、板状本体3の頭見つけ面10を表す図である。
実施例では、板状本体3の厚みTは9.4mmとしている。
側端部7側の下面8には凹面が設けて有り、凹面の深さは1.4mmとしている。
下面8の3箇所に頭見つけ面10まで貫通した緊結部材収納空間18を設けている。
緊結部材収納空間18の凹面の深さは1.2mmとしている。
背面図は、板状本体3の尻側面11を表す図である。
実施例では、板状本体3の厚みTは9.4mmとしている。
側端部7側の下面8には凹面が設けて有り、凹面の深さは1.4mmとしている。
板状本体3の上面9に設けているジョイント板位置決め目印29と緊結部材位置決め目印30は上面9より凹んだ凹面となっていて、凹部の深さは0.5mmとなっている。
底面図は、板状本体3の下面8を表す図である。
板状本体3の下面8には矩形の凹面を一定間隔で複数個設け、格子状としている。
また、下面8の外周にも凹面を設けている。
矩形の凹面には薄リブ37があり成形時の型離れを良くするのと同時に緊結部材収納空間18のような大きな凹面においてもリブ構造で支えることにより、焼成時に形状を保持することが出来る。
本発明の板状本体3は、下面8に矩形の凹面を一定間隔で複数個設けた格子状とすることで、屋根材として必要な耐曲げ破壊荷重を維持しながら屋根材の軽量化を図ることが出来る。
更に下面8に矩形の凹面を一定間隔で複数個設けた格子状とすることで、板状本体3の下面8と下葺き防水シート12上面との空間容量が増え、板状本体3から下地板16への断熱性能が向上する。
板状本体3には緊結穴13を設けていないので施工した際に板状本体3の流れ方向20の重なり部に雨水が侵入しても緊結穴13から雨水が下葺き防水シート12上へ到達することが無いため、防水性能は向上する。
また、板状本体3に緊結穴13が無いことは、緊結部の強度が向上し、強風による吹き上げ荷重がかかった際にも板状本体3が破損することなく高い耐風強度を発揮することが出来る。
板状本体3の下面8の頭側6には矩形で凹面の緊結部材収納空間18を3個設けている。
板状本体3の下面8の頭側6に設ける緊結部材収納空間18の位置は、緊結部材位置決め目印30に対応した位置に設ける。
本実施例では、緊結部材位置決め目印30を尻側5の尻側面11に接した働き幅寸法Wの1/4Wの位置で左右2箇所に設けているので、緊結部材収納空間18の位置は緊結部材位置決め目印30の位置に対応して設ける。
本実施例の場合、板状本体3は上下段で桁方向19に板状本体3の働き幅寸法Wの半分ずれる千鳥葺きである。
板状本体3と緊結部材14を敷設の際に、下地板16に固定した下段の緊結部材14が上段の板状本体3の緊結部材収納空間18内に収納され、下段の緊結部材14と上段の板状本体3が干渉しない位置に緊結部材収納空間18を設ける。
具体的に緊結部材収納空間18は、頭側6の頭見つけ面10まで貫通した位置で、桁方向19にて働き幅寸法Wの1/4Wと3/4の位置で左右2箇所に設ける。
さらに、強風地域に対応出来るよう緊結部材収納空間18を頭側6の頭見つけ面10まで貫通した位置で、桁方向19にて働き幅寸法Wの1/2Wの位置に1箇所設け、板状本体1枚に対して緊結部材収納空間18を3箇所設ける。
前記緊結部材収納空間18は、幅寸法は緊結部材14の尻側固定面幅KW以上で、凹部の深さは緊結部材14の緊結部材厚さKT以上で、頭見つけ面10まで貫通した凹部空間とする。
実施例での緊結部材収納空間18の具体的な寸法は、幅寸法は34mm、凹部深さは正面図に記載されている1.2mm、長さ寸法は78.7mmである。
緊結部材収納空間18の長さは板状本体3の重なり寸法OLに緊結部材14の緊結部材厚さKTを足した寸法となる。
屋根2の場合、勾配17毎の勾配伸び率により重なり寸法OLが変わるため、緊結部材収納空間18の長さは、最も重なり寸法OLが長い勾配17を基準として設定する。重なり寸法OLが最も長い勾配17は板状屋根材1において適用される勾配17の最小の勾配17である。
底面図には、D-D断面図の位置を記載している。
【0028】
図2は実施例による板状本体3の製品図面の断面図である。
図2(a)は、
図1の平面図に図示されたA-A断面箇所における断面図である。
板状本体3の下面8には凹面が頭側6-尻側5で連続して配置されている。
板状本体3の厚みTは9.4mmであり、凹部にはリブ部と薄リブ37があり、凹面からのリブ部の高さが1.4mm、凹面からの薄リブ37の高さが0.2mmとなっている。
下面8の外周部に設けられている凹面は全周同じレベルで1.4mmである。
上面9では凹凸が無くフラット形状になっている。
図2(b)は、
図1の平面図に図示されたB-B断面箇所における断面図である。
本断面図は、板状本体3の下面8の頭側6には緊結部材収納空間18があり、板状本体3の上面9の尻側5にはジョイント板位置決め目印29がある箇所の断面形状をあらわしている。
上面9の尻側5にあるジョイント板位置決め目印29は、深さが0.5mmの目印であり、ジョイント板4の厚みが0.4mmなので、ジョイント板4をジョイント板位置決め目印29に合わせて敷設した場合、ジョイント板4の上面は板状本体3の上面9より、やや低いレベルとなる。
板状本体3の厚みTは9.4mmであり、下面8の頭側6に設けた緊結部材収納空間18にはリブ部と薄リブ37があり、緊結部材14が収納される緊結部材収納空間18の空間高さは、薄リブ37からリブ部の下面8までの高さとなり、本実施例では緊結部材収納空間18の高さは1.2mmとなる。
図2(c)は、
図1の平面図に図示されたC-C断面箇所における断面図である。
本断面図は、板状本体3の下面8の頭側6には緊結部材収納空間18があり、板状本体3の上面9の尻側5には緊結部材位置決め目印30がある箇所の断面形状をあらわしている。
上面9の尻側5にある緊結部材位置決め目印30は、深さが0.5mmの目印である。
板状本体3の厚みTは9.4mmであり、本断面図の下面8には緊結部材収納空間18とリブ部があらわされている。
C-C断面図は、外周の下面8に設けられた凹面部とリブ部の断面と緊結部材収納空間18にある薄リブ37の断面とで構成されている。
緊結部材14が収納される緊結部材収納空間18の空間高さは、薄リブ37からリブ部の下面8までの高さとなり、本実施例では緊結部材収納空間18の高さは1.2mmとなる。
図2(d)は、
図1の底面図に図示されたD-D断面箇所における桁方向19の断面図である。
板状本体3の下面8には凹面が側端部7からもう一方の側端部7まで連続して配置されている。
板状本体3の厚みTは9.4mmであり、凹部にはリブ部と薄リブ37があり、凹面からのリブ部の高さが1.4mm、凹面からの薄リブ37の高さが0.2mmとなっている。
下面8の外周部に設けられている凹面は全周同じレベルである。
上面9では凹凸が無くフラット形状になっている。
【0029】
図3は実施例によるジョイント板4の製品図面であり、投影法による3面図である。
ジョイント板4は、板状屋根材1又は板状壁材59を構成する主たる部品の一つである。
単純な形状のため、平面図、正面図、右側面図のみとし、背面図、底面図、左側面図は省略した。
図3の平面図では製品の上面9をあらわしており、ジョイント板4を屋根2に敷設する際の伏せ図で用いる図である。
ジョイント板4は薄板の成形品であり、板厚は0.3から0.6mmの範囲で、メッキなどの防錆処理を施した薄い鋼板が望ましい。
実施例では、板厚0.35mmの塗装溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板を用いている。
ジョイント板4は、尻側5の端部に鈍角で上方に突出した水返し突片31を設けている。
実施例では水返し突片31の角度は垂直に対し15°鈍角にした105°としている。
頭側6の幅端部には下方垂直方向へ突出したジョイント板固定突片32を設けている。
実施例では、頭側6の幅端部の両端にジョイント板固定突片32を2箇所設けている。
ジョイント板固定突片32を両端に2箇所設けることで、ジョイント板4の敷設を行う際に、2箇所のジョイント板固定突片32を板状本体3の尻側面11に当接することで、簡単にジョイント板4を板状本体3に対して垂直に配置することが出来る。
水返し突片31の立ち上り箇所からジョイント板固定突片32までの長さを板状本体3の働き長さ寸法Lとする。
実施例では、5寸勾配用のジョイント板4であり、働き長さ寸法Lは254.3mmとしている。
この働き長さ寸法Lは、板状本体3の働き長さの水平投影寸法Lhが建物の設計単位寸法Pの1/4Pになるように設定し、働き長さの水平投影寸法Lhに勾配17毎の勾配伸び率を掛けることにより求める。
実施例では尺モジュールを用いているので1P=910mmの1/4は227.5mmとなり、働き長さの水平投影寸法Lhは227.5mmとなる。227.5mmに5寸勾配の勾配伸び率である1.118を掛けることで254.3mmとなる。
板状本体3の尻側5の上面9に凹面として設けられたジョイント板位置決め目印29にジョイント板4の頭側6の外周を合わせ、桁方向19の位置決めをする。
次に板状本体3の尻側面11にジョイント板4のジョイント板固定突片32を当接させることで流れ方向20の位置決めが出来、凹面となっているジョイント板位置決め目印29にジョイント板4をはめることで位置が決まり敷設後のずれ防止にもなる。
実施例では、ジョイント板4の幅は82mm、ジョイント板位置決め目印29の幅は83.5mmとし、1.5mmのクリアランスを考慮した形状となっている。
この構成とすることで、板状屋根材1を敷設する際に、現場で測定をすることなく、簡単で適正な位置にジョイント板4と板状本体3を敷設することが出来る。
ジョイント板4の水返し突片31は鈍角とすることで敷設の際に製品の生産上のばらつきや施工のばらつきを吸収することが出来る。
【0030】
図4は実施例による緊結部材14の製品図面である。
緊結部材14は、板状屋根材1又は板状壁材59を構成する主たる部品の一つである。
図4(a)は緊結部材14の製品図面の投影法による図面である。
中央に記載の側面図は左右で同形状なので右側面図だけに省略しているので5面図になっている。
図4(b)は
図4(a)に記載のE-E断面箇所における緊結部材14の製品断面図である。
本実施例の緊結部材14は板状の素材を曲げ加工により成形している。
材質は耐久性と強度が必要とされるので、ステンレス材が望ましく、強度と葺き合わせの関係上、緊結部材厚さKTは0.8mmから2mmの範囲が望ましい。
本実施例では、緊結部材厚さKTは1mmとしている。
図4(a)上段に記載の平面図では緊結部材14の上面9をあらわしており、緊結部材14を屋根2に敷設する際の伏せ図又は壁60に敷設する際の正面図で用いる図である。
平面図には断面図のE-Eの断面箇所を記載し、指示している。
緊結部材14には下地板16と接する下地接地部21を設け、下地接地部21には緊結穴13を設ける。
下地接地部21の一方の端部から板状本体3の厚さT分を垂直方向に立ち上げた尻側当接面22を設ける。
下地接地部21からの尻側当接面22の立上角度は、90°から板状本体3の戻り勾配分を引き、板状本体3の尻側面11の角度を考慮して決定する。
戻り勾配は下記式により求めることが出来る。
戻り勾配=arcsin(厚さT÷働き長さ寸法L)
本実施例の戻り勾配は、板状本体3の厚さTが9.4mm、働き長さ寸法Lが254.3mmなので、前記式で算出すると戻り勾配は2.1°となる。
板状本体3の尻側面11の角度が上面9に対して91°となっているため、尻側当接面22の立上角度は91°から戻り勾配分の2.1°を引いて88.9°となる。
尻側当接面22の上方端部から下地接地部21と反対側の水平方向に板状本体3の流れ方向20の規定の重なり寸法OL分を延出した尻側固定面23を設ける。
本実施例では、屋根2の勾配17は5寸であり、板状本体3の働き長さ寸法Lは254.3mmである。
板状本体3の全長さ寸法LAは300mmから5寸勾配の際の規定の重なり寸法OLは45.7mmとなる。
尻側固定面23の他方の端部から板状本体3の厚さTに所定の隙間寸法Gを足した寸法で垂直方向に立ち上げた頭見つけ当接面24を設ける。
緊結部材14の尻側固定面23に対する頭見つけ当接面24の立ち上げ角度を90°より鋭角とする。
本実施例では、頭見つけ当接面傾斜角度A2が7°なので尻側固定面23に対する頭見つけ当接面24の立ち上げ角度は90°-7°=83°となる。
本実施例では、板状本体3の厚さTが9.4mm、隙間寸法Gが0.6mmとしているため、頭見つけ当接面24の立ち上げ寸法は、尻側固定面23の下面から頭側固定面の下面までが10mmとなる。
頭見つけ当接面24の上方端部から尻側固定面23側に尻側固定面23と平行に延出した頭側固定面25を設けた構成とする。
緊結部材14の下地接地部21には下葺き防水シート12上面と接地する接地止水面26と上面側に突出した下地接地凸面27を設け、下地接地凸面27には緊結穴13を設け、下葺き防水シート12上面と下地接地凸面27の間にビス穴止水空間33を設けた構成としている。
ビス穴止水空間33の流れ方向20における水上側と桁方向19における左右方向の三方向には接地止水面26を設け、ビス穴止水空間33の流れ方向20における水下側には排水空間34を設ける。
本実施例では緊結部材14を敷設の際に、下地接地部21には、流れ方向20の水上側に、水下側へ傾斜する分水部35を設ける。
本実施例では、尻側固定面幅KWが30mmに対し分水部35が半径12mmのR形状となっている。
水上側の中央に6mm程度の直線部が残るので少量の雨水の場合、中央の直線部に滞留することもあるが、基本的には分水部を伝って水下側に排水される。
緊結部材14の下地接地部31と尻側当接面32に絞り加工により上面側に張り出した下地接地凸面27部を設ける。
緊結部材14で板状本体3を下地板16に固定するが、この下地接地凸面27を設けることでリブ効果が発揮され、緊結部材14の強度を上がり、結果的に板状本体3の下地板16への固定強度を上げることが出来る。
緊結部材14の尻側固定面23と尻側当接面22との屈曲部36がR形状であり、板状本体3の尻側面11と上面9の接合部に屈曲部36のR形状の半径よりも大きな段差・面取り38を設ける。
本実施例では、屈曲部36のR形状部のR寸法Rは0.5mmなので、板状本体3の尻側面11と上面9の接合部の段差・面取り38は0.5mmで屈曲部36のR形状部のR寸法R以上となる。
その結果、緊結部材14の尻側固定面23と尻側当接面22との屈曲部36のR形状部が板状本体3の尻側面11と上面9の接合部に干渉せず、緊結部材14の尻側当接面22と板状本体3の尻側面11が面で当接することにより、板状本体3を規定の重なり寸法OLで簡単に敷設することが出来る。
【0031】
図5は実施例による板状本体3の屋根伏せ図である
本実施例の伏せ図は建物の屋根2における、切妻屋根もしくは片流れ屋根形状での伏せ図となる。
実施例の屋根2は、日本の建築で多く使われている尺モジュールであり、設計単位寸法は3尺が1Pの910mmとなる。
桁方向19で一段毎に板状本体3を半分ずらして敷設する千鳥葺きである。
実施例の板状本体3は、働き幅寸法Wが設計単位寸法Pの1/2であり、1Pが910mmの尺モジュールなので2枚の働き幅寸法Wで1Pの910mmの長さとなる。
働き長さの水平投影寸法Lhは設計単位寸法Pの1/4の227.5mmだが、働き長さ寸法Lは勾配17毎に変化する。
屋根2の勾配17は5寸勾配としているので、勾配伸び率は1.118となる。
よって、本図における板状本体3の働き長さ寸法Lは、働き長さの水平投影寸法Lhの227.5mmに勾配伸び率の1.118を掛けて254.3mmとなる。
板状本体3の全長さ寸法LAは300mmなので、屋根材の重なり寸法は45.7mmとなる。
ジョイント板4は板状本体3の尻側5の桁方向19の中心の上面9に設けたジョイント板位置決め目印29に合わせて配置する。
ジョイント板位置決め目印29は上面9より0.5mm凹んでおり、ジョイント板4よりもやや大きい凹面となっている。
ジョイント板4をジョイント板位置決め目印29に嵌めることで桁方向19の位置決めが出来る。
板状本体3の尻側面11とジョイント板4の両端に設けたジョイント板固定突片32を当接させることで流れ方向20における位置決めが簡易に行える。
板状本体3は、ジョイント板4の中央ラインと板状本体3の側端部7を合わせることで容易に桁方向19の位置決めが出来、簡単に精度よく千鳥葺きを行うことが出来る。
緊結部材14の尻側当接面22と板状本体3の尻側5の尻側面11を当接させ、板状本体3の上面9に設けた緊結部材位置決め目印30に緊結部材14を合わせて配置し、下地板16に釘又はビス28で緊結部材14を固定する。
緊結部材14を下地板16に固定することにより、緊結部材14の尻側当接面22で板状本体3の尻側面11を固定し、尻側固定面23で尻側5の上面9を固定し、上段で千鳥葺きにした板状本体3の頭見つけ面10を緊結部材14の頭見つけ当接面24で固定する。
頭側固定面25と板状本体3の上面9の間には隙間寸法Gがあり、緊結部材14の尻側固定面23と頭側固定面25の間に板状本体3の頭側6を挿入出来るようになっている。
緊結部材14の頭側固定面25は、通常の敷設状態では隙間寸法Gがあるため板状本体3の頭側6を固定していないが、台風などの強風による負圧で板状本体3の頭側6が上方に持ち上がった際に、頭側固定面25で板状本体3の頭側6の上面9を押さえ、固定することで台風による飛散を防ぎ、強固に下地板16に固定することが出来る。
板状本体3は千鳥葺きなので、板状本体3の桁方向19の接合部分については、側端部7の接合部が目印になり、接合部と緊結穴13を合わせて配置することで上段の板状本体3の下面8に設けた緊結部材収納空間18で下段の緊結部材14を収納し干渉することなく敷設することが出来る。
屋根2では、台風などの強風時による風の影響が屋根2の部位ごとに異なることが分かっている。国土交通省告示第1458号では屋根2の部位毎に異なる屋根面の負のピーク外圧係数が設定されており、屋根2の中央部の平部と屋根2の周辺部では風の影響が異なり、平部に対して周辺部は1.5倍から2倍程度、ピーク外圧係数が高い値となっている。
本実施例では、強風地域での板状本体3の施工仕様をあらわしている。
平部と周辺部を図中で分けるために周辺部に該当する範囲にはハッチを掛けている。
周辺部の設定としては、桁方向19は、板状本体3の2列分、流れ方向20は板状本体3の3段分とする。
周辺部の寸法設定としては、桁方向19が910mm、流れ方向20が763mmとなる。
板状本体3の下面8に設けた緊結部材収納空間18を桁方向19で板状本体3の働き幅寸法Wの1/4と1/2と3/4に設けることで緊結部材14の取り付け個数を選択的に設定する。
ピーク外圧係数が低く風圧力が低い平部には1枚の板状本体3に対して緊結部材14を2個取り付ける設定とする。
ピーク外圧係数が高く、風圧力が高い周辺部には1枚の板状本体3に対して緊結部材14を3個取り付ける設定とする。
周辺部と平部の取り付け個数設定を変えることで、周辺部の耐風性能は1.5倍に設定することが出来る。
周辺部における緊結部材14の設置位置は、頭側6で働き幅寸法Wの1/4と1/2と3/4の箇所となる。
具体的には1/4Wの位置が側端部7より113.8mmの位置となり、1/2Wの位置は側端部7より227.5mmの位置となる。
板状本体3の下地板16への留め付けの手順としては、水下側から流れ方向20で屋根2の上側へ上るように敷設する。
実施例では、板状本体3の働き幅寸法Wが建物の設計単位寸法PとW:P=1:2の整数比の関係であり、板状本体3の働き長さの水平投影寸法Lhは建物の設計単位寸法PとLh:P=1:4の整数比の関係であり、勾配17毎に勾配17毎の延出寸法を有した尻側固定面23を有する緊結部材14を勾配17毎に用意し、勾配17に合わせた緊結部材14を用いる屋根2である。
そのため、全ての屋根端部39に規格化形状屋根材40を配置し、施工現場で屋根材の加工が不要となり、施工現場の生産性向上、職人不足対策、現場での廃材の削減だけでなく、板状本体3の再利用においても効果を発揮する。
屋根2の左側の屋根端部39はケラバ部45であり、規格化形状屋根材40として板状本体3と半瓦58を1段毎で交互に配置する。
図には記載していないが、屋根2の右側のケラバ部45においても同様に板状本体3と半瓦58が1段毎で交互に配置される。
屋根伏せ図には流れ方向20の断面図の箇所としてF-F断面図とG-G断面図を指示している。
【0032】
図6は実施例による板状屋根材1の施工断面図である。
図6(a)は、
図5の屋根伏せ図に図示されたF-F断面箇所における断面図であり、流れ方向20での断面図である。
屋根2の勾配17は5寸勾配で、勾配伸び率は1.118となる。
下地板16の上に下葺き防水シート12を施工し、その下葺き防水シート12上に板状本体3を直接敷設し、緊結部材14にて下地板16に固定する構造である。
実施例では、緊結部材14を下地板16に固定するためにより固定力が高いビス15を用いている。
働き長さの水平投影寸法Lhは設計単位寸法の1/4の227.5mmであり、働き長さ寸法Lは、働き長さの水平投影寸法Lhの227.5mmに勾配伸び率の1.118を掛けて254.3mmとなる。
板状本体3の全長さ寸法LAは300mmであり働き長さ寸法Lが254.3mmなので、5寸勾配の際の規定の重なり寸法OLは45.7mmとなる。
緊結部材14は5寸勾配用の緊結部材14を用いる。
5寸勾配用の緊結部材14は、尻側当接面22の上方端部から下地接地部21と反対側の水平方向に板状本体3の流れ方向20の規定の重なり寸法OL分の45.7mmを延出した尻側固定面23を設けることで、屋根2上で施工者が寸法などを測定することなく簡易で正確に適切な働き長さ寸法Lで施工がすることが出来る。
図6(a)には、
図6(b)の拡大図の拡大エリアを四角の枠で表示している。
図6(b)は、施工断面図の拡大図である。
緊結部材14を下地板16に固定することにより、緊結部材14の尻側当接面22で板状本体3の尻側面11を固定し、尻側固定面23で尻側5の上面9を固定し、上段で千鳥葺きにした板状本体3の頭見つけ面10を緊結部材14の頭見つけ当接面24で固定する。
頭側固定面25と板状本体3の上面9の間には隙間寸法Gがあり実施例では隙間寸法Gは0.7mmとしている。
隙間寸法Gがあることで、敷設時に緊結部材14の尻側固定面23と頭側固定面25の間へ板状本体3の頭側6をスムーズに挿入出来るようになっている。
板状本体3の頭側6の下面8には緊結部材収納空間18を設けることで敷設時に下段の緊結部材14と上段の板状本体3は干渉することが無い。
板状本体3の下面8に対する頭見つけ面10の角度と緊結部材14の尻側固定面23に対する頭見つけ当接面24の立ち上げ角度を90°より鋭角としたものである。
頭見つけ面10の頭見つけ面傾斜角度A1と頭見つけ当接面24の頭見つけ当接面傾斜角度A2がそれぞれ7°なので、下面8に対する頭見つけ面10の角度と尻側固定面23に対する頭見つけ当接面24の立ち上げ角度は同一角度の83°となる。
本実施例の形状では、敷設後に台風などの強風時に板状本体3の上面9に発生する負圧に対し板状本体3の下面8に対する頭見つけ面10の角度と緊結部材14の尻側固定面23に対する頭見つけ当接面24の立ち上げ角度を83°と90°より鋭角にすることで頭見つけ面10の持ち上りを押さえる効果が有りフラッタリングを防止することが出来る。
板状屋根材1の強風時の挙動としては、緊結部材14の尻側固定面23で板状本体3の尻側5上面9を押さえているため、板状本体3の下葺き防水シート12上面と接地している尻側下面端部を支点として頭見つけ面10が持ち上がり回転するような動きとなる。
頭見つけ当接面24の立上角度を90°より鋭角にすることで頭見つけ面10が回転しながら持ち上がる力を立上角度が鋭角面になった頭見つけ当接面24が回転力を押さえる。
頭見つけ当接面24の立上角度を90°より鋭角にした構成で、頭見つけ面10と頭見つけ当接面24の立上角度を同じとすると面同士で頭見つけ面10の回転力を押さえることが出来るのでフラッタリングの防止効果が更に向上する。
敷設時における緊結部材14の下地接地部21には、流れ方向20の水上側に下葺き防水シート12上面と接地する接地止水面26と上面側に突出した下地接地凸面27を設け、下地接地凸面27には緊結穴13を設け、緊結穴13からビス15を用いて下地板16に固定する。
本構成により、ビス15の水上側にある接地止水面26で水上側からの水の浸入を防ぐことが出来る。
その結果、ビス15部が下葺き防水シート12で十分に防水が出来なかったとしてもビス15部から漏水することは無く、高い防水性能を発揮することが出来る。
【0033】
図7は実施例による板状屋根材1の施工断面図における敷設ステップである。
図5の屋根伏せ図に図示されたG-G断面箇所における断面図であり、1段ごとに板状本体3の側端部7が当接し、板状本体3の下にジョイント板4が配置される箇所における流れ方向20での断面図である。
ジョイント板4の奥に見える緊結部材14に板状本体3を差し込みジョイント板4の上に配置する敷設ステップを3段階に分けて図示している。
図7は下地板16の上に下葺き防水シート12を施工し、その下葺き防水シート12上に板状本体3を直接敷設し、緊結部材14にて下地板16に固定する構造である。
実施例では、緊結部材14を下地板16に固定するためにより固定力が高いビス15を用いている。
図7(a)は板状本体3の敷設する際のステップ1の状態であり、図の3段目に7ジョイント板4を配置した図である。
板状本体3の尻側面11にジョイント板4のジョイント板固定突片32を当て止めして位置決めを行い下葺き防水シート12上に配置している。
図7(b)は板状本体3の敷設する際のステップ2の状態であり、図の3段目に板状本体3をジョイント板4の上に配置するプロセスを表した図である。
ジョイント板4の上に板状本体3を敷設するプロセスとしては、緊結部材14の尻側固定面23と頭側固定面25の間の空間に板状本体3の頭側6を挿入し、頭見つけ面10を緊結部材14の頭見つけ当接面24に当て止めしてから回転させジョイント板4の上へ配置する。
板状本体3の尻側5を下葺き防水シート12上及びジョイント板4上に回転させて敷設するが、その際の板状本体3の動きは、緊結部材14の頭見つけ当接面24を支点として上から下に円弧を描くように回転する動きとなる。
回転させながら板状本体3をジョイント板4上に置く際に、ジョイント板4の尻側端部に設けた水返し突片31は鈍角で上方に突出している。
また、水返し突片31の立ち上り箇所からジョイント板固定突片32までの長さを板状本体3の働き長さ寸法Lとしている。
ジョイント板4の水返し突片31を鈍角で上方に突出させた構成により、板状屋根材1の生産上のばらつきや施工のばらつきがあったとしても、板状本体3をジョイント板4上に回転しながら敷設する際に、板状本体3の尻側5下面8がジョイント板4の水返し突片31の上面と当たりながらジョイント板4が適切な位置に移動し、板状本体3を設置することが出来る。
図7(c)は、板状本体3の敷設する際のステップ3の状態であり、図の3段目に板状本体3を敷設した後、緊結部材を下地板16へ固定した状態の図である。
緊結部材14の下地接地部21を下葺き防水シート12上に配置し、尻側当接面21を板状本体3の尻側面11に当接させた位置で下地接地部21に設けた緊結穴13から下地板16にビス15で固定する。
図7は板状屋根材1の屋根2における敷設ステップだが、板状壁材59の壁60における敷設ステップも同様である。壁60では、屋根2での勾配17が90度の状況と同じであり、敷設ステップにおいても変わりはない。
【0034】
図8は実施例による板状屋根材1における緊結部材14の屋根伏せ図と施工断面図である。
図8(a)は板状屋根材1における緊結部材14の屋根伏せ図である。
板状本体3の尻側5の上面9に設けた緊結部材位置決め目印29に合わせて緊結部材14を配置し、板状本体3の尻側面11に緊結部材14の尻側当接面22を当接させて下地板16へビス15固定する。
緊結部材14の下地接地部21には下葺き防水シート12上面と接地する接地止水面26と上面側に突出した下地接地凸面27を設け、下地接地凸面27には緊結穴13を設け、ビス15を緊結穴13に挿入し下地板16へ固定する。
下地接地部21の流れ方向20での水上側と桁方向19における左右両側の三方向の外周には接地止水面26を設け、接地止水面26の流れ方向20の水上側に、流れ方向20の水下側へ傾斜する分水部35を設ける。
本実施例では、分水部35を左右両端に線対称のR形状で二つ設けた構成となっている。
なお、分水部35は下地接地部21の水上側に設けた構成であれば、2箇所設ける必要は無く、1箇所で片側のみに分水する分水部35でも良いし、水上部全てが1箇所の円弧形状の分水部35でも良い。
暴風雨などの強風を伴う雨に対しては、板状屋根材1だけでは雨水の浸入を防ぎきることが出来ないため、板状屋根材1の奥の下葺き防水シート12上まで雨水が吹き込んだ場合でも、下葺き防水シート12上の雨水をビス15から下地板16内部に浸入させることなく水下側に円滑に流し出すことが防水性能として必要になる。
下地接地部21の水上側に設けた分水部35により下葺き防水シート12上に浸入した雨水が緊結部材14の水上側に滞留することなく分水部35を伝って図中に記載した水の流れのように水下側へ排水される。
また、下地接地部21の外周を伝う雨水も接地止水面26が下葺き防水シート12上面と密着することで、ビス15を下地板12に固定している箇所へ雨水を到達させること無く、ビス15の穴から下地板16へ雨水が浸入することを防止する。
図8(b)は、
図8(a)に図示されたH-H断面における施工断面図である。
緊結部材14の下地接地部21には下葺き防水シート12上面と接地する接地止水面26と上面側に突出した下地接地凸面27を設け、下地接地凸面27には緊結穴13を設け、下葺き防水シート12上面と下地接地凸面27の間にビス穴止水空間33を設けた構成としている。
ビス穴止水空間33の流れ方向20における水上側には接地止水面26を設け接地止水面26で下葺き防水シート12上面と密着することで水上側からの雨水の浸入を防ぐ。
ビス穴止水空間33の流れ方向20における水下側には排水空間34を設ける。
下地接地部21を緊結穴13からビス15を用いて下葺き防水シート12をねじ切りながら下地板16に固定する。
緊結部材14をビス15で固定する場合は、ビス15は釘と比べてビス15のネジ部分で下葺き防水シート12を大きく切ってしまうため、ビス15を用いたときには下葺き防水シート12の性能だけでビス15の穴を完全に止水することが出来ないという課題があったが、本実施例では、緊結部材14を下地板16へ固定する際にビス15を用いても、ビス15から漏水することがなく高い防水性能を発揮することが出来る。
ビス穴止水空間33には流れ方向20の水下側に排水空間34を設ける構成とすることで、毛細管現象で接地止水面26の内側まで雨水が浸入したとしてもビス15に伝わることなく水下側へ排水することが出来る。
緊結部材14の下地接地部31と尻側当接面32に絞り加工により上面側に張り出した下地接地凸面27部を設ける。
緊結部材14で板状本体3を下地板16に固定するが、この下地接地凸面27を下地接地部31と尻側当接面32に設けることで風による負の荷重が板状本体3に掛ったとしてもリブ効果が発揮され、緊結部材14の曲げ強度が向上し、強い耐風性能が発揮できる。
緊結部材14の尻側固定面23と尻側当接面22との屈曲部36がR形状であり、板状本体3の尻側面11と上面9の接合部に屈曲部36のR形状の半径よりも大きな段差・面取り38を設ける構成となっている。
本実施例では、屈曲部36のR形状部のR寸法Rは0.5mmであり、板状本体3の尻側面11と上面9の接合部の段差・面取り38は0.5mmであり、屈曲部36のR形状部のR寸法R以上となる。
その結果、緊結部材14の尻側固定面23と尻側当接面22との屈曲部36のR形状部が板状本体3の尻側面11と上面9の接合部に干渉せず、緊結部材14の尻側当接面22と板状本体3の尻側面11が面で当接することにより、板状本体3を規定の重なり寸法OLで簡単に敷設することが出来る。
【0035】
図9は実施例による切妻寄棟屋根での板状屋根材1の屋根伏せ図板である。
屋根形状は寄棟切妻混合屋根で、屋根端部39に陸棟部43、隅棟部44、ケラバ部45、三又部46、谷部47、棟違い部48を有している。
屋根2は5つの屋根面を有する屋根2で、寄棟屋根に一部が切妻屋根になっている棟違い屋根であり、水平投影図で表したL字型の屋根形状である。
本実施例の伏せ図の板状屋根材1及び屋根2は、板状本体3の働き幅寸法Wが建物の設計単位寸法Pと整数比でW:P=1:2の関係であり、働き幅寸法Wが455mm、建物の設計単位寸法Pが尺モジュールの910mmである。
また、板状本体3の働き長さの水平投影寸法Lhが建物の設計単位寸法Pと整数比でLh:P=1:4の関係であり、働き長さの水平投影寸法Lhは227.5mmである。
板状屋根材1の敷設方法としては、1段ごとに働き幅寸法Wの半分をずらした千鳥葺きとする。
軒の出41、破風の出42はそれぞれ1/2Pの455mmである。
これらの寸法条件、施工方法により、全ての屋根端部39に配置する屋根材形状をルール化することが出来るので、そのルールに基づいて全ての屋根端部39に規格化形状屋根材40を配置している。
その結果、施工現場で屋根材を加工する必要が無くなり、あらかじめ準備した規格化形状屋根材40を陸棟部43、隅棟部44、ケラバ部45、三又部46、谷部47、棟違い部48などの全ての屋根端部39に配置することが出来る。
屋根2には多くの屋根端部39を有しており、2本の陸棟部43、4本の隅棟部44、左右のケラバ部45、1本の谷部47といった屋根端部39を有している。
また、陸棟部43と2本の隅棟部44が交差する屋根端部39の三又部46、陸棟部43と隅棟部44と谷部47が交差する屋根端部39の棟違い部48を有している。
棟違い部48は切妻屋根と寄棟屋根で異なった形状の規格化形状屋根材40を有する。
本実施例での寄棟屋根での棟違い部48である。
陸棟部43に配置される規格化形状屋根材40は陸棟規格化形状屋根材51であり、板状本体3の尻側5の重なり寸法OL部分が切断された形状である。
全ての陸棟部43には同一形状の陸棟規格化形状屋根材51が用いられる。
隅棟部44に配置される規格化形状屋根材40は隅棟右規格化形状屋根材49と隅棟左規格化形状屋根材50であり、左右の隅棟部44の角度に合わせて板状本体3を切断した形状である。
右側の隅棟部44には同一形状の隅棟右規格化形状屋根材49が用いられ、左側の隅棟部44には同一形状の隅棟左規格化形状屋根材50が用いられる。
ケラバ部45に配置される規格化形状屋根材40は板状本体3の働き幅寸法Wを半分に切断した半瓦58である。
実施例では、板状本体3を千鳥葺きしているのでケラバ部45では規格化形状屋根材40として板状本体3と半瓦58を1段ごとに交互に用いている。
全てのケラバ部45には同一形状の半瓦58と板状本体3が用いられる。
三又部46に配置される規格化形状屋根材40は三角形形状の屋根面に用いる三又規格化形状屋根材52と陸棟部43を有する屋根面に用いる陸隅右規格化形状屋根材46と陸隅左規格化形状屋根材47である。
陸隅右規格化形状屋根材46と陸隅左規格化形状屋根材47は、隅棟右規格化形状屋根材49と隅棟左規格化形状屋根材50の尻側5の重なり寸法OL部分が切断された形状である。
三又規格化形状屋根材52は、陸隅右規格化形状屋根材46と陸隅左規格化形状屋根材47の斜め切断部を合わせた二等辺三角形形状である。
全ての三又部46には同一形状の三又規格化形状屋根材52と陸隅右規格化形状屋根材46と陸隅左規格化形状屋根材47が用いられる。
谷部47に配置される規格化形状屋根材40は谷右規格化形状屋根材53と谷左規格化形状屋根材54であり、谷部47の角度に合わせて板状本体3を左右面で切断した形状である。
軒側から見て谷部47の左側に位置する方に谷右規格化形状屋根材53が用いられ、右側に位置する方に谷左規格化形状屋根材54が用いられる。
全ての谷部47には同一形状の谷右規格化形状屋根材53と谷左規格化形状屋根材54が用いられる。
棟違い部48に配置される規格化形状屋根材40は軒側から見て右方向に隅棟部44がある実施例においては寄棟棟違右規格化形状屋根材55である。
寄棟棟違右規格化形状屋根材55の形状は、板状本体3を隅棟部44の角度に合わせて切断し、陸棟部43に面している部分は板状本体3の尻側5の重なり寸法OL部分が切断された形状である。
見え掛かり部は、板状本体3や陸棟規格化形状屋根材51と同様に見えるが、実際の形状は隅棟部44に面している部分は縦重なり部分があり他の規格化形状屋根材40とは異なる形状である。
実施例のように右側に隅棟部44がある全ての棟違い部48には同一形状の寄棟棟違右規格化形状屋根材55が用いられる。
本発明の構成とすることにより、本実施例のように全ての屋根端部39には規格化した形状の規格化形状屋根材40が配置される。
その結果、従来技術のようにどこの屋根端部39にどの屋根材を配置していたのかを記録する必要が無くなる。
また、屋根端部39に敷設する規格化形状屋根材40の緊結部材14を固定する緊結材をビス15とすることで、屋根端部39の規格化形状屋根材40の取り外しが容易となり、板状屋根材1の再利用を簡単に行うことが出来る。
現場で屋根材の加工が無くなることで、施工が簡単になり、熟練した職人の技能が不要となり、施工現場における生産性が大幅に向上する。
また、全ての屋根端部39には規格化した形状の規格化形状屋根材40が配置されるので、板状屋根材1を再利用する場合、どこの屋根端部39にどの規格化形状屋根材40を配置していいたのかを記録する必要が無くなり、板状本体3及び規格化形状屋根材40の再利用が非常にやりやすくなる。
再利用が非常にやりやすくなることによって、屋根材よりも製品寿命が短い下葺き防水シート12を交換する際に、現在施工されている板状屋根材1を再利用した方が、現状の板状屋根材1を廃棄し新たな板状屋根材1を施工するよりもコストが安くなり、再利用によるメリットが多くなる。
繰り返し使うことが出来るので、新たに製品を生産する必要が無く、温室効果ガスの排出抑制、資源消費の最小化、廃棄物の抑制による環境保護といった人類共通の課題により多くの貢献が出来、屋根材における「循環経済」への移行を実現することが出来る。
【0036】
図10は実施例による板状壁材59の施工図である。板状本体3及びジョイント板4及び緊結部材14を壁60に施工した際の正面図である
本実施例の施工図は建物の壁60に板状本体3及びジョイント板4及び緊結部材14を施工した際の正面図となる。
実施例の壁60は、日本の建築で多く使われている尺モジュールであり、設計単位寸法は3尺が1Pの910mmとなる。
桁方向19で一段毎に板状本体3を半分ずらして敷設する千鳥葺きである。
実施例の板状本体3は、働き幅寸法Wが設計単位寸法Pの1/2であり、1Pが910mmの尺モジュールなので2枚の働き幅寸法Wで1Pの910mmの長さとなる。
本図においては、働き長さ寸法Lは屋根2の勾配17が5寸勾配の時の緊結部材14を使用した想定であり、板状本体3の働き長さ寸法Lは254.3mmである。
板状本体3の全長さ寸法LAは300mmなので、板状本体3の重なり寸法は45.7mmとなる。
ジョイント板4は板状本体3の尻側5の桁方向19の中心の上面9に設けたジョイント板位置決め目印29に合わせて配置する。
ジョイント板位置決め目印29は上面9より0.5mm凹んでおり、ジョイント板4よりもやや大きい凹面となっている。
ジョイント板4をジョイント板位置決め目印29に嵌めることで桁方向19の位置決めが出来る。
板状本体3の尻側面11とジョイント板4の両端に設けたジョイント板固定突片32を当接させることで流れ方向20における位置決めが簡易に行える。
板状本体3は、ジョイント板4の中央ラインと板状本体3の側端部7を合わせることで容易に桁方向19の位置決めが出来、簡単に精度よく千鳥葺きを行うことが出来る。
緊結部材14の尻側当接面22と板状本体3の尻側5の尻側面11を当接させ、板状本体3の上面9に設けた緊結部材位置決め目印30に緊結部材14を合わせて配置し、下地板16に釘又はビス28で緊結部材14を固定する。
緊結部材14を下地板16に固定することにより、緊結部材14の尻側当接面22で板状本体3の尻側面11を固定し、尻側固定面23で尻側5の上面9を固定し、上段で千鳥葺きにした板状本体3の頭見つけ面10を緊結部材14の頭見つけ当接面24で固定する。
頭側固定面25と板状本体3の上面9の間には隙間寸法Gがあり、緊結部材14の尻側固定面23と頭側固定面25の間に板状本体3の頭側6を挿入出来るようになっている。
緊結部材14の頭側固定面25は、通常の敷設状態では隙間寸法Gがあるため板状本体3の頭側6を固定していないが、台風などの強風による負圧や地震での横揺れで板状本体3の頭側6が上面9側に持ち上がった際に、頭側固定面25で板状本体3の頭側6の上面9を押さえ、固定することで台風による飛散や地震によるズレを防ぎ、強固に下地板16に固定することが出来る。
板状本体3は千鳥葺きなので、板状本体3の桁方向19の接合部分については、側端部7の接合部が目印になり、接合部と緊結穴13を合わせて配置することで上段の板状本体3の下面8に設けた緊結部材収納空間18で下段の緊結部材14を収納し干渉することなく敷設することが出来る。
板状本体3の下地板16への留め付けの手順としては、水下側から流れ方向20で水上側側へ上るように敷設する。
実施例では、板状本体3の働き幅寸法Wが建物の設計単位寸法PとW:P=1:2の整数比の関係である。
壁端部61には規格化形状壁材62を配置することで、施工現場で板状本体3の加工が不要となり、施工現場の生産性向上、職人不足対策、現場での廃材の削減だけでなく、板状本体3の再利用においても効果を発揮する。
壁60の左側の壁端部61は規格化形状壁材62として板状本体3と半瓦58を1段毎で交互に配置する。
図には記載していないが、壁60の右側の壁端部61においても同様に板状本体3と半瓦58が1段毎で交互に配置される。
図10には流れ方向20の断面図の箇所としてI-I断面図を指示している。
【0037】
図11は実施例による板状壁材59の施工断面図である。
図11(a)は、
図10に図示されたI-I断面箇所における施工断面図であり、流れ方向20での施工断面図である。
下地板16の上に下葺き防水シート12を施工し、その下葺き防水シート12上に板状本体3を直接敷設し、緊結部材14にて下地板16に固定する構造である。
実施例では、緊結部材14を下地板16に固定するためにより固定力が高いビス15を用いている。
本図においては、働き長さ寸法Lは屋根2の勾配17が5寸勾配の時の緊結部材14を使用した想定の図であり、よって板状本体3の働き長さ寸法Lは254.3mmである。
板状本体3の全長さ寸法LAは300mmであり働き長さ寸法Lが254.3mmなので、本図における規定の重なり寸法OLは45.7mmとなる。
5寸勾配用の緊結部材14は、尻側当接面22の上方端部から下地接地部21と反対側の水平方向に板状本体3の流れ方向20の規定の重なり寸法OL分の45.7mmを延出した尻側固定面23を設けることで、壁60で施工者が寸法などを測定することなく簡易で正確に適切な働き長さ寸法Lで施工がすることが出来る。
図11(a)には、
図11(b)の拡大図の拡大エリアを四角の枠で表示している。
図11(b)は、施工断面図の拡大図である。
緊結部材14を下地板16に固定することにより、緊結部材14の尻側当接面22で板状本体3の尻側面11を固定し、尻側固定面23で尻側5の上面9を固定し、上段で千鳥葺きにした板状本体3の頭見つけ面10を緊結部材14の頭見つけ当接面24で固定する。
頭側固定面25と板状本体3の上面9の間には隙間寸法Gがあり実施例では隙間寸法Gは0.7mmとしている。
隙間寸法Gがあることで、敷設時に緊結部材14の尻側固定面23と頭側固定面25の間へ板状本体3の頭側6をスムーズに挿入出来るようになっている。
板状本体3の頭側6の下面8には緊結部材収納空間18を設けることで敷設時に下段の緊結部材14と上段の板状本体3は干渉することが無い。
板状本体3の下面8に対する頭見つけ面10の角度と緊結部材14の尻側固定面23に対する頭見つけ当接面24の立ち上げ角度を90°より鋭角としたものである。
頭見つけ面10の頭見つけ面傾斜角度A1と頭見つけ当接面24の頭見つけ当接面傾斜角度A2がそれぞれ7°なので、下面8に対する頭見つけ面10の角度と尻側固定面23に対する頭見つけ当接面24の立ち上げ角度は同一角度の83°となる。
本実施例の形状では、敷設後に台風などの強風時に板状本体3の上面9に発生する負圧や地震などの横揺れに対し板状本体3の下面8に対する頭見つけ面10の角度と緊結部材14の尻側固定面23に対する頭見つけ当接面24の立ち上げ角度を83°と90°より鋭角にすることで頭見つけ面10の持ち上りを押さえる効果が有りフラッタリングを防止することが出来る。
板状壁材59の強風時又は地震での横揺れ時の挙動としては、緊結部材14の尻側固定面23で板状本体3の尻側5上面9を押さえているため、板状本体3の下葺き防水シート12上面と接地している尻側下面端部を支点として頭見つけ面10が持ち上がり回転するような動きとなる。
頭見つけ当接面24の立上角度を90°より鋭角にすることで頭見つけ面10が回転しながら持ち上がる力を立上角度が鋭角面になった頭見つけ当接面24が回転力を押さえる。
頭見つけ当接面24の立上角度を90°より鋭角にした構成で、頭見つけ面10と頭見つけ当接面24の立上角度を同じとすると面同士で頭見つけ面10の回転力を押さえることが出来るのでフラッタリングの防止効果が更に向上する。
敷設時における緊結部材14の下地接地部21には、流れ方向20の水上側に下葺き防水シート12上面と接地する接地止水面26と上面側に突出した下地接地凸面27を設け、下地接地凸面27には緊結穴13を設け、緊結穴13からビス15を用いて下地板16に固定する。
本構成により、ビス15の水上側にある接地止水面26で水上側からの水の浸入を防ぐことが出来る。
その結果、ビス15部が下葺き防水シート12で十分に防水が出来なかったとしてもビス15部から漏水することは無く、高い防水性能を発揮することが出来る。
【0038】
図12は実施例による板状壁材59における板状本体3と緊結部材14の施工正面図と施工断面図である。
図12(a)は板状壁材59における緊結部材14の施工正面図である。
板状本体3の尻側5の上面9に設けた緊結部材位置決め目印29に合わせて緊結部材14を配置し、板状本体3の尻側面11に緊結部材14の尻側当接面22を当接させて下地板16へビス15固定する。
緊結部材14の下地接地部21には下葺き防水シート12上面と接地する接地止水面26と上面側に突出した下地接地凸面27を設け、下地接地凸面27には緊結穴13を設け、ビス15を緊結穴13に挿入し下地板16へ固定する。
下地接地部21の流れ方向20での水上側と桁方向19における左右両側の三方向の外周には接地止水面26を設け、接地止水面26の流れ方向20の水上側に、流れ方向20の水下側へ傾斜する分水部35を設ける。
本実施例では、分水部35を左右両端に線対称のR形状で二つ設けた構成となっている。
なお、分水部35は下地接地部21の水上側に設けた構成であれば、2箇所設ける必要は無く、1箇所で片側のみに分水する分水部35でも良いし、水上部全てが1箇所の円弧形状の分水部35でも良い。
暴風雨などの強風を伴う雨に対しては、板状壁材59だけでは雨水の浸入を防ぎきることが出来ないため、板状壁材59から下葺き防水シート12上まで雨水が吹き込んだ場合でも、下葺き防水シート12上の雨水をビス15から下地板16内部に浸入させることなく水下側に円滑に流し出すことが防水性能として必要になる。
下地接地部21の水上側に設けた分水部35により下葺き防水シート12上に浸入した雨水が緊結部材14の水上側に滞留することなく分水部35を伝って図中に記載した水の流れのように水下側へ排水される。
また、下地接地部21の外周を伝う雨水も接地止水面26が下葺き防水シート12上面と密着することで、ビス15を下地板12に固定している箇所へ雨水を到達させること無く、ビス15の穴から下地板16へ雨水が浸入することを防止する。
図12(b)は、
図12(a)に図示されたJ-J断面における施工断面図である。
緊結部材14の下地接地部21には下葺き防水シート12上面と接地する接地止水面26と上面側に突出した下地接地凸面27を設け、下地接地凸面27には緊結穴13を設け、下葺き防水シート12上面と下地接地凸面27の間にビス穴止水空間33を設けた構成としている。
ビス穴止水空間33の流れ方向20における水上側には接地止水面26を設け接地止水面26で下葺き防水シート12上面と密着することで水上側からの雨水の浸入を防ぐ。
ビス穴止水空間33の流れ方向20における水下側には排水空間34を設ける。
下地接地部21を緊結穴13からビス15を用いて下葺き防水シート12をねじ切りながら下地板16に固定する。
緊結部材14をビス15で固定する場合は、ビス15は釘と比べてビス15のネジ部分で下葺き防水シート12を大きく切ってしまうため、ビス15を用いたときには下葺き防水シート12の性能だけでビス15の穴を完全に止水することが出来ないという課題があったが、本実施例では、緊結部材14を下地板16へ固定する際にビス15を用いても、ビス15から漏水することがなく高い防水性能を発揮することが出来る。
ビス穴止水空間33には流れ方向20の水下側に排水空間34を設ける構成とすることで、毛細管現象で接地止水面26の内側まで雨水が浸入したとしてもビス15に伝わることなく水下側へ排水することが出来る。
緊結部材14の下地接地部31と尻側当接面32に絞り加工により上面側に張り出した下地接地凸面27部を設ける。
緊結部材14で板状本体3を下地板16に固定するが、この下地接地凸面27を下地接地部31と尻側当接面32に設けることで風による負の荷重が板状本体3に掛ったとしてもリブ効果が発揮され、緊結部材14の曲げ強度が向上し、強い耐風性能が発揮できる。
緊結部材14の尻側固定面23と尻側当接面22との屈曲部36がR形状であり、板状本体3の尻側面11と上面9の接合部に屈曲部36のR形状の半径よりも大きな段差・面取り38を設ける構成となっている。
本実施例では、屈曲部36のR形状部のR寸法Rは0.5mmであり、板状本体3の尻側面11と上面9の接合部の段差・面取り38は0.5mmであり、屈曲部36のR形状部のR寸法R以上となる。
その結果、緊結部材14の尻側固定面23と尻側当接面22との屈曲部36のR形状部が板状本体3の尻側面11と上面9の接合部に干渉せず、緊結部材14の尻側当接面22と板状本体3の尻側面11が面で当接することにより、板状本体3を規定の重なり寸法OLで簡単に敷設することが出来る。