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特開2025-3421ロックボルト挿入装置、ロックボルト挿入装置を備えるロックボルト打設車両、ロックボルト打設方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003421
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】ロックボルト挿入装置、ロックボルト挿入装置を備えるロックボルト打設車両、ロックボルト打設方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 20/00 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
E21D20/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024100760
(22)【出願日】2024-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2023102771
(32)【優先日】2023-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】594149398
【氏名又は名称】古河ロックドリル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】本正 敬史
(72)【発明者】
【氏名】片桐 正人
(57)【要約】
【課題】ロックボルトに発生する撓みを抑制することが可能なロックボルト挿入装置と、ロックボルト挿入装置を備えるロックボルト打設車両と、ロックボルト打設方法を提供する。
【解決手段】ロックボルトマガジン50に対する位置がロックボルトBを受領する受領位置とロックボルトBをロックボルト挿入孔へ挿入する挿入位置との間で変化させることが可能なロックボルト挿入ユニット40を備え、ロックボルトBをロックボルトマガジン50から切り離す際にロックボルトBの後端に係合するガイドサポート60を挿入ドリフタ4Mに設ける。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロックボルト挿入孔にロックボルトを挿入可能なロックボルト挿入装置であって、
複数本の前記ロックボルトを収容することが可能であり、且つ前記収容された前記複数本のロックボルトが周囲に配置される回転軸の軸回りに回転することが可能なロックボルトマガジンと、
前記ロックボルトマガジンに対する相対位置を、前記ロックボルトマガジンに収容されている一本の前記ロックボルトをロックボルトマガジンから受け取る位置である受領位置と、前記受領位置で受け取った前記一本のロックボルトを前記ロックボルト挿入孔に挿入する位置である挿入位置との間で変化させることが可能な挿入ユニットと、を備え、
前記挿入ユニットは、
前記一本のロックボルトを前記受領位置と前記挿入位置で保持し続ける複数のボルトクランプと、
前記ボルトクランプが保持しているロックボルトを前記ロックボルト挿入孔に挿入する挿入ドリフタと、
前記挿入ドリフタの先端に取り付けられ、前記挿入ユニットの位置が前記受領位置から前記挿入位置の方向へと変化する際に、前記一本のロックボルトの後端に係合して前記ロックボルトマガジンから一本のロックボルトを切り離すガイドサポートと、を備えるロックボルト挿入装置。
【請求項2】
前記ロックボルトには、前記ロックボルトを挿入した前記ロックボルト挿入孔を塞ぐことが可能であり、且つ前記ロックボルトの長さ方向に沿ったロックボルトとの相対位置を変化可能なワッシャーと、前記ロックボルトの後端部に配置され、且つ前記ワッシャーを前記ロックボルト挿入孔の外側から固定するナットと、が取り付けられ、
前記ガイドサポートは、ボルト支持部とガイドロッドを備え、
前記ボルト支持部は、前記ボルトクランプと協同して前記ロックボルトの後端を保持する保持位置と、前記ワッシャーからの反力によって後退する退避位置との間で前記挿入ドリフタに対する相対位置を変化可能であり、
前記ガイドロッドは、前記ロックボルトの後端を押圧し前記ナット、前記ワッシャー及び周壁面をそれぞれ密着させる請求項1に記載したロックボルト挿入装置。
【請求項3】
前記ボルト支持部は、
前記ロックボルトマガジンの回転方向のうち内部への前記ロックボルトの移動を許容し、
前記ボルト支持部内に移動した前記ロックボルトの外部への移動を規制するシャッター機構を備える請求項2に記載したロックボルト挿入装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載したロックボルト挿入装置と、前記ロックボルト挿入装置を搭載する台車と、を備えるロックボルト打設車両。
【請求項5】
周壁面に複数の前記ロックボルトを打設するロックボルト打設方法であって、
請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載したロックボルト挿入装置を用いて複数の前記ロックボルトを打設するロックボルト打設方法。
【請求項6】
周壁面に複数の前記ロックボルトを打設するロックボルト打設方法であって、
請求項4に記載したロックボルト打設車両を用いて複数の前記ロックボルトを打設するロックボルト打設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロックボルトを打設する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ロックボルトは、例えば、特許文献1に開示されているように、トンネルの施工、鉱山における坑道の掘削、坑道を補強する土作業等の工事において、トンネル、坑道の周壁面、切土等を補強するために打設される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】US-A1-2014/0112724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている構成を含め、従来の構成では、ロックボルトマガジンに格納しているロックボルトを、ロックボルトマガジンから引き出して使用する。また、従来の構成では、ロックボルトマガジンが、ロックボルトを保持する部材により、ロックボルトを振動や姿勢で落下しないように保持している。
そして、ロックボルトをロックボルトマガジンから受け取る構成(受け取り部)も、ロックボルトを保持する部材を備えており、受け取るロックボルトを保持した後に、ロックボルトをロックボルトマガジンから離れるように移動させる。このとき、受け取り部がロックボルトを保持する力が、ロックボルトマガジンがロックボルトを保持している力を超えることで、ロックボルトをロックボルトマガジンから引き出す。
【0005】
しかしながら、従来の構成では、ロックボルトの形状が細長い円柱状であるために、ロックボルトの剛性が低く、ロックボルトに撓みが発生しやすい。このため、ロックボルトマガジンのロックボルトを保持する部材から、受け取り部のロックボルトを保持する部材が離れる際に、ロックボルトに発生する撓みにより、ロックボルトをロックボルトマガジンから円滑に引き出すことが困難であるという問題がある。
本発明は、上述した問題点を鑑み、ロックボルトをロックボルトマガジンから引き出す際に、ロックボルトに発生する撓みを抑制することが可能なロックボルト挿入装置と、ロックボルト挿入装置を備えるロックボルト打設車両と、ロックボルト打設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るロックボルト挿入装置は、ロックボルト挿入孔にロックボルトを挿入可能な装置であって、ロックボルトマガジンと、挿入ユニットを備える。ロックボルトマガジンは、複数本のロックボルトを収容することが可能であり、且つ収容された複数本のロックボルトが周囲に配置される回転軸の軸回りに回転することが可能である。挿入ユニットは、ロックボルトマガジンに対する相対位置を、ロックボルトマガジンに収容されている一本のロックボルトをロックボルトマガジンから受け取る位置である受領位置と、受領位置で受け取った一本のロックボルトをロックボルト挿入孔に挿入する位置である挿入位置との間で変化させることが可能である。また、挿入ユニットは、複数のボルトクランプと、挿入ドリフタと、ガイドサポートを備える。複数のボルトクランプは、一本のロックボルトを受領位置と挿入位置で保持し続ける。挿入ドリフタは、ボルトクランプが保持しているロックボルトをロックボルト挿入孔に挿入する。ガイドサポートは、挿入ドリフタの先端に取り付けられ、挿入ユニットの位置が受領位置から挿入位置の方向へと変化する際に、一本のロックボルトの後端に係合してロックボルトマガジンから一本のロックボルトを切り離す。
【0007】
また、本発明の一態様に係るロックボルト打設車両は、ロックボルト挿入装置と、ロックボルト挿入装置を搭載する台車を備える。
また、本発明の一態様に係るロックボルト打設方法は、周壁面に複数のロックボルトを打設する方法であり、ロックボルト挿入装置を用いて複数のロックボルトを打設する。
また、本発明の一態様に係るロックボルト打設方法は、周壁面に複数のロックボルトを打設する方法であり、ロックボルト打設車両を用いて複数のロックボルトを打設する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロックボルトをロックボルトマガジンから引き出す際に、ロックボルトに発生する撓みを抑制することが可能なロックボルト挿入装置と、ロックボルト挿入装置を備えるロックボルト打設車両と、ロックボルト打設方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ロックボルト打設車両の構成を示す図であり、図(a)はロックボルト打設車両の平面図、図(b)は図(a)のb線矢視図、図(c)は図(b)のc線矢視図である。
図2】ロックボルト打設装置の構成を示す図である。
図3】ロックボルト挿入装置の構成を示す図である。
図4図3のIV線矢視図である。
図5】ロックボルト挿入装置の構成を示す図である。
図6図5のVI線矢視図であり、図(a)は、ロックボルト打設車両の平面図、図(b)は、第一ボルトクランプと第二ボルトクランプのロックボルト供給装置に対する位置を、受領位置とした状態を示す図であり、図(b)は、第一ボルトクランプと第二ボルトクランプのロックボルト供給装置に対する位置を、挿入位置とした状態を示す図である。
図7】ガイドサポートの構成を示す図であり、図(a)は、サポートスプリングが通常の状態であるガイドサポートの状態を示す図、図(b)は図(a)のb線矢視図、図(c)は図(b)のc線矢視図である。
図8】図(a)はガイド本体部の構成を示す図であり、図(b)はボルト支持部の構成を示す図である。
図9】ロックボルト打設方法を説明する図であり、図(a)は平面図、図(b)は図(a)のb線矢視図、図(c)は図(b)のc線矢視図である。
図10】グラウト注入装置の基準軸線をロックボルト挿入孔に位置合わせした状態の、第一ロックボルト打設装置の構成を示す図である。
図11】ロックボルト打設方法を説明する図であり、図(b)は図(a)よりも後の状態を示す図、図(c)は図(b)よりも後の状態を示す図である。
図12】変形例におけるガイドサポートの構成を示す図であり、図(b)は図(a)のb線矢視図、図(c)は図(b)のc線矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚さと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なる場合があることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0011】
(実施形態)
(構成)
図1に示すように、ロックボルト挿入装置を備えるロックボルト打設車両100は、台車1と、駆動部2と、オペレータキャビン6と、前輪7と、後輪8と、アウトリガ9と、第一ロックボルト打設用ブーム装置10Lと、第二ロックボルト打設用ブーム装置10Rを備える。これに加え、ロックボルト打設車両100は、第一ケージブーム12Lと、第二ケージブーム12Rを備える。
ロックボルト打設車両100は、例えば、トンネル工事等において、ロックボルト挿入孔HにロックボルトBを挿入するために、打設作業に用いる作業車両である。なお、図1では、ロックボルト打設車両100の構成について、簡略化して図示している部分がある。
【0012】
なお、以降の説明及び図面では、ロックボルト打設車両100が前進して走行する方向を、「前方」と記載する場合がある。同様に、以降の説明及び図面では、ロックボルト打設車両100が後退して走行する方向を、「後方」と記載する場合がある。
また、以降の説明及び図面では、ロックボルト打設車両100が前進するときの左手側を「左側」と示し、ロックボルト打設車両100が前進するときの右手側を「右側」と示す。したがって、以降の説明及び図面では、ロックボルト打設車両100を左側から見た視点を「左側面視」とし、ロックボルト打設車両100を右側から見た視点を「右側面視」とする。また、以降の説明では、「左側面視」と「右側面視」とをまとめて、「側面視」と記載する場合がある。
【0013】
実施形態では、打設作業として、ロックボルト挿入孔Hを形成する削孔作業と、ロックボルト挿入孔Hへモルタル等のグラウトを注入する注入作業と、ロックボルト挿入孔HへロックボルトBを挿入する挿入作業を行う場合について説明する。
【0014】
ワッシャーWは、ロックボルトBを挿入したロックボルト挿入孔Hを塞ぐことが可能な、中心部に貫通孔を有するプレートである。また、ワッシャーWは、ロックボルトBの長さ方向に沿ったロックボルトBとの相対位置を、変化可能である。
ナットBNは、ロックボルトBの後端部に配置されており、ワッシャーWを、ロックボルト挿入孔Hの外側から固定する部材である。
【0015】
ロックボルト挿入孔Hは、トンネル工事において、削孔作業により、掘削されたトンネル又は坑内の周壁面に削孔する孔である。
ロックボルトBは、坑道を支えて保持する部材であり、ロックボルト挿入孔Hに挿入するボルトに加え、ボルトの付属品(ワッシャーW、ナットBN等)を含む場合がある。
【0016】
台車1は、走行可能な車両である。
駆動部2は、例えば、エンジンを用いて形成されており、台車1の後方において、上部に配置されている。また、駆動部2は、台車1の走行等を行う際に、駆動力を発生させる。
オペレータキャビン6は、台車1の前方において、上部に配置されている。また、オペレータキャビン6は、削孔作業と、注入作業と、挿入作業を行うための操作部(図示略)を備える。
前輪7と後輪8は、走行用の車輪である。
アウトリガ9は、前輪7よりも前方と、後輪8よりも後方に配置されており、打設作業等において、張り出して接地することで、台車1の安定を確保する。
【0017】
第一ロックボルト打設用ブーム装置10Lは、台車1の左側から前方に張り出す位置に配置されており、旋回、起伏、伸縮が可能に構成されている。
また、第一ロックボルト打設用ブーム装置10Lは、第一ブーム装置3Lを備える。
第一ブーム装置3Lは、第一ロックボルト打設用ブーム装置10Lに対して、旋回、起伏、伸縮が可能に構成されている。
また、第一ブーム装置3Lは、第一ロックボルト打設装置30Lを備える。
第一ロックボルト打設装置30Lは、第一ブーム装置3Lの先端に配置されている。なお、第一ロックボルト打設装置30Lの詳細な説明は、後述する。
【0018】
第二ロックボルト打設用ブーム装置10Rは、台車1の右側から前方に張り出す位置に配置されており、旋回、起伏、伸縮が可能に構成されている。
また、第二ロックボルト打設用ブーム装置10Rは、第二ブーム装置3Rを備える。
第二ブーム装置3Rは、第二ロックボルト打設用ブーム装置10Rに対して、旋回、起伏、伸縮が可能に構成されている。
また、第二ブーム装置3Rは、第二ロックボルト打設装置30Rを備える。
第二ロックボルト打設装置30Rは、第二ブーム装置3Rの先端に配置されている。なお、第二ロックボルト打設装置30Rの詳細な説明は、後述する。
【0019】
第一ケージブーム12Lは、台車1の上部において、左側に配置されており、旋回、起伏、伸縮が可能に構成されている。また、第一ケージブーム12Lは、第一ケージ13Lを備える。
第一ケージ13Lは、作業員等が必要に応じて乗る構成であり、第一ケージブーム12Lを駆動させることにより移動することが可能である。
【0020】
第二ケージブーム12Rは、台車1の上部において、右側に配置されており、旋回、起伏、伸縮が可能に構成されている。また、第二ケージブーム12Rは、第二ケージ13Rを備える。
第二ケージ13Rは、作業員等が必要に応じて乗る構成であり、第二ケージブーム12Rを駆動させることにより移動することが可能である。
【0021】
(第一ロックボルト打設装置の構成、第二ロックボルト打設装置の構成)
以下、第一ロックボルト打設装置30Lの構成について説明する。
なお、第二ロックボルト打設装置30Rの構成は、第一ロックボルト打設装置30Lに対して左右対称構造である点を除き、第一ロックボルト打設装置30Lの構成と同様である。このため、第二ロックボルト打設装置30Rの構成については、説明を省略する。
【0022】
第一ロックボルト打設装置30Lは、第一ブーム装置3Lの先端に配置されたマウント装置43に搭載されている。
マウント装置43は、ガイドロータリ42を介して、第一ブーム装置3Lに配置されている。また、マウント装置43の上部(図1(b)及び図1(c)において、マウント装置43の上側)には、マウントフレーム43aが設けられている。
【0023】
ガイドロータリ42は、マウント装置43を旋回させる。これにより、第一ロックボルト打設装置30Lは、トンネルの内部において、任意の位置に移動可能である。
また、第一ロックボルト打設装置30Lは、図2に示すように、削孔ユニット20と、グラウト注入装置31と、ロックボルト挿入ユニット40を備える。
【0024】
さらに、第一ロックボルト打設装置30Lは、位置切換機構(図10のPC)を備える。
位置切換機構PCは、削孔ユニット20の基準軸線と、グラウト注入装置31の基準軸線と、ロックボルト挿入ユニット40の基準軸線を、ロックボルト挿入孔の中心軸線に対して同軸となる位置に移動させることが可能な機構である。位置切換機構PCが各基準軸線を移動させる際には、後述する削孔ガイドシェル5Dと、後述するグラウト注入装置31と、後述する挿入ガイドシェル5Mとを同時に、各基準軸線と平行な一つの直線を回転中心(図10のSC)として回転させる。
なお、図1では、削孔ユニット20の基準軸線と、グラウト注入装置31の基準軸線と、ロックボルト挿入ユニット40の基準軸線を、全て、符号「BLL」を付して示している。
【0025】
<削孔ユニット>
削孔ユニット20は、ロックボルト挿入孔を削孔する装置であり、削孔ドリフタ4Dと、削孔ガイドシェル5Dと、ビット21と、削孔ロッド22と、削孔セントラライザ24と、削孔側送り機構25を備える。
削孔ドリフタ4Dは、削孔ガイドシェル5Dに取り付けられ、削孔ガイドシェル5Dに沿って移動することが可能である。
さらに、削孔ドリフタ4Dは、打撃力と回転力を発生させることが可能である。
【0026】
削孔ガイドシェル5Dは、第一ブーム装置3Lに対して傾斜及び旋回させることが可能な状態で、ガイドロータリ42及びマウント装置43を介して第一ブーム装置3Lに支持されている。
ビット21は、削孔ロッド22の先端に配置されている。
削孔ロッド22は、棒状に形成されており、削孔ドリフタ4Dが発生させた打撃力と回転力とを、ビット21に伝達する。
【0027】
削孔セントラライザ24は、削孔ガイドシェル5Dの先端側に取り付けられており、削孔ロッド22の先端部を支持している。
削孔側送り機構25は、例えば、油圧シリンダによる動滑車式の機構であり、削孔ドリフタ4Dを、削孔ガイドシェル5Dに沿って移動させることが可能な機構である。また、削孔側送り機構25は、削孔ドリフタ4Dを基準軸線BLLに沿って移動させることが可能である。
【0028】
<グラウト注入装置>
グラウト注入装置31は、注入ホース(図示略)と、注入ホースを往復移動させる移動機構(図示略)と、ポンプ(図示略)を備える。
そして、グラウト注入装置31は、移動機構によって、注入ホースをロックボルト挿通孔に沿って挿入することが可能であるとともに、ポンプの駆動により、グラウト(定着剤)を注入ホースへ供給することが可能である。
【0029】
<ロックボルト挿入ユニット>
ロックボルト挿入ユニット40は、ロックボルト挿入孔に、ロックボルトを挿入可能な装置である。
また、ロックボルト挿入ユニット40は、挿入ドリフタ4Mと、挿入ガイドシェル5Mと、挿入側送り機構45と、第一ボルトクランプ46と、第二ボルトクランプ47と、ガイドサポート60を備える。
【0030】
挿入ドリフタ4Mは、挿入ガイドシェル5Mに取り付けられ、挿入ガイドシェル5Mに沿って移動することが可能である。
挿入ガイドシェル5Mは、第一ブーム装置3Lに対して傾斜及び旋回させることが可能な状態で、ガイドロータリ42及びマウント装置43を介して第一ブーム装置3Lに支持されている。
【0031】
挿入側送り機構45は、例えば、油圧シリンダによる動滑車式の機構であり、挿入ドリフタ4Mを、挿入ガイドシェル5Mに沿って移動させることが可能な機構である。また、挿入側送り機構45は、挿入ドリフタ4Mを基準軸線BLLに沿って移動させることが可能である。
【0032】
第一ボルトクランプ46は、例えば、ウレタンゴム等、可撓性を有する材料を用いて形成されており、挿入ガイドシェル5Mに取り付けられている。
また、第一ボルトクランプ46は、第一クランプ部46aを備える。
【0033】
第一クランプ部46aは、図4に示すように、ロックボルトBの長さ方向から見て、円状の空間を有するU字状の形状に形成されており、円状の空間を間に挟んで対向する内周面が、ロックボルトBに押し付けられた状態でロックボルトBの外周面と接触する。これにより、第一クランプ部46aの内周面にロックボルトBの外周面を接触させた状態で、円状の空間に、ロックボルトBを保持する。したがって、第一クランプ部46aは、挿入ガイドシェル5Mから離れる方向に開口した開口部を有する。
これにより、第一ボルトクランプ46は、ロックボルトBを保持することが可能な形状に形成されている。
【0034】
第二ボルトクランプ47は、第一ボルトクランプ46と同様、例えば、ウレタンゴム等、可撓性を有する材料を用いて形成されており、第一ボルトクランプ46よりも挿入ドリフタ4Mに近い位置において、挿入ガイドシェル5Mに取り付けられている。具体的に、第二ボルトクランプ47は、挿入側送り機構45が備えるスライダのうち、最も前方に配置されたスライダ(フロントスライダ)に取り付けられている。なお、第二ボルトクランプ47を取り付ける位置は、挿入側送り機構45が動滑車式の機構であるため、フロントスライダの上面に限定される。
【0035】
したがって、第二ボルトクランプ47は、挿入ドリフタ4Mの挿入ガイドシェル5Mに沿った移動に伴い、挿入ガイドシェル5Mに沿って移動する。すなわち、挿入ドリフタ4Mが前進すると、挿入ドリフタ4Mが前進する速度の半分の速度で、第二ボルトクランプ47も前進する(図2及び図3における左方向へ移動する)。
また、第二ボルトクランプ47は、第一クランプ部46aと同様の構成を有する第二クランプ部47aを備える。
【0036】
これにより、第二ボルトクランプ47は、第一ボルトクランプ46と同様、ロックボルトBを保持することが可能な形状に形成されている。
すなわち、第一ボルトクランプ46と第二ボルトクランプ47は、ロックボルトBの長さ方向に沿って、互いに間隔を開けた状態で配置されている。
【0037】
また、第一ボルトクランプ46と第二ボルトクランプ47は、ロックボルトBを、ロックボルトBの長さ方向に沿って間隔を開けて配置した二箇所で保持することが可能である。
また、第一ボルトクランプ46と第二ボルトクランプ47は、位置切換機構PCによって回転させることで、後述するロックボルトマガジン50に対する相対位置を、後述する受領位置と挿入位置との間で変化させることが可能である。
【0038】
受領位置は、ロックボルトマガジン50に収容されている一本のロックボルトBを、ロックボルトマガジン50から受け取る位置である。
挿入位置は、受領位置で受け取った一本のロックボルトBを、ロックボルト挿入孔に挿入する位置である。
【0039】
挿入位置に移動させた、第一ボルトクランプ46と第二ボルトクランプ47が保持している一本のロックボルトBには、挿入ドリフタ4Mから打撃力が伝達されると共に、挿入側送り機構45によって挿入ドリフタ4Mを移動させることで、移動力を付与することが可能である。
これにより、ロックボルト挿入孔へ、ロックボルトBを、ロックボルト挿入孔の深さ方向に沿って押し込むことが可能である。
なお、図3及び図4には、第一ボルトクランプ46と第二ボルトクランプ47のロックボルトマガジン50に対する位置が、受領位置である状態を示す。
【0040】
<ロックボルトマガジン>
ロックボルトマガジン50は、マガジン回転軸53と、第一ボルト保持プレート54と、第二ボルト保持プレート55と、第三ボルト保持プレート56を備える。
マガジン回転軸53は、円柱状に形成されており、マウントフレーム43aに取り付けられている。
マガジン回転軸53の長さ方向は、挿入ガイドシェル5Mの長さ方向と平行である。
【0041】
また、マガジン回転軸53は、マガジン駆動モータ(図示略)を駆動させることで、マガジン回転軸53の中心軸を回転軸として回転することが可能である。
なお、マガジン回転軸53の回転速度、回転トルク、回転角度等は、例えば、マガジン駆動モータの駆動状態を制御するコントローラ(図示略)によって制御してもよい。
【0042】
第一ボルト保持プレート54は、例えば、ウレタンゴム等、可撓性を有する材料を用いて板状に形成されており、複数の第一ボルト保持部54aを有する。
実施形態では、一例として、第一ボルト保持プレート54の構成を、九箇所の第一ボルト保持部54aを有する構成とした場合について説明する。
第一ボルト保持プレート54の厚さ方向は、マガジン回転軸53の長さ方向と平行である。
第一ボルト保持プレート54の中心には、マガジン回転軸53が貫通した状態で固定されている。
【0043】
複数の第一ボルト保持部54aは、マガジン回転軸53の周方向に沿って配列されており、ロックボルトBを保持することが可能な形状に形成されている。
具体的に、第一ボルト保持部54aは、第一ボルト保持プレート54の厚さ方向から見て略U字状に形成されており、ロックボルトBの外周面と接触する凹部を備えている。
なお、図3及び図4では、説明のために、九箇所の第一ボルト保持部54aのうち、一箇所の第一ボルト保持部54aが備える凹部のみに、ロックボルトBが接触して保持されている状態を示す。
また、第一ボルト保持プレート54は、ロックボルトBに発生する撓みの影響を受けないように、第一ボルトクランプ46の近傍に配置されている。
【0044】
第二ボルト保持プレート55は、第一ボルト保持プレート54と同様、例えば、ウレタンゴム等、可撓性を有する材料を用いて板状に形成されており、複数の第二ボルト保持部55aを有する。実施形態では、一例として、第二ボルト保持プレート55の構成を、九箇所の第二ボルト保持部55aを有する構成とした場合について説明する。
【0045】
第二ボルト保持プレート55の厚さ方向は、マガジン回転軸53の長さ方向と平行である。
第二ボルト保持プレート55の中心には、マガジン回転軸53が貫通した状態で固定されている。
第二ボルト保持部55aは、第一ボルト保持部54aと同様、マガジン回転軸53の周方向に沿って配列されており、ロックボルトBを保持することが可能な形状に形成されている。
また、第二ボルト保持プレート55は、ロックボルトBに発生する撓みの影響を受けないように、第二ボルトクランプ47の近傍に配置されている。
【0046】
第三ボルト保持プレート56は、第一ボルト保持プレート54と同様、例えば、ウレタンゴム等、可撓性を有する材料を用いて板状に形成されており、複数の第三ボルト保持部56aを有する。実施形態では、一例として、第三ボルト保持プレート56の構成を、九箇所の第三ボルト保持部56aを有する構成とした場合について説明する。
また、第一ボルト保持プレート54と、第二ボルト保持プレート55と、第三ボルト保持プレート56は、ロックボルトBの長さ方向に沿って、互いに間隔を開けた状態で配置されている。
【0047】
第三ボルト保持プレート56の厚さ方向は、マガジン回転軸53の長さ方向と平行である。
第三ボルト保持プレート56の中心には、マガジン回転軸53が貫通した状態で固定されている。
第三ボルト保持部56aは、第一ボルト保持部54aと同様、マガジン回転軸53の周方向に沿って配列されており、ロックボルトBを保持することが可能な形状に形成されている。
また、第三ボルト保持プレート56は、ロックボルトBに発生する、自重による撓みの影響で芯が合わない(ロックボルトBの中心軸とガイドロッド61の中心軸とがずれる)のを防止するために、ロックボルトBの後端に近い位置に配置されている。
【0048】
以上により、ロックボルトマガジン50は、長さ方向を平行に向けて配列した、複数本(九本)のロックボルトBを収容することが可能である。また、ロックボルトマガジン50は、収容されたロックボルトBの長さ方向と平行であるとともに、複数本のロックボルトBが周囲に配置される回転軸(マガジン回転軸53)の軸回りに回転することが可能である。また、ロックボルトマガジン50には、複数本のロックボルトBを、環状に配列した状態で収容することが可能である。
【0049】
また、ロックボルトマガジン50は、第一ボルト保持プレート54と、第二ボルト保持プレート55と、第三ボルト保持プレート56により、ロックボルトBを、ロックボルトBの長さ方向に沿って間隔を開けて配置した三箇所で保持している。
さらに、ロックボルトマガジン50は、ロックボルトBのうち、後述するナットBNが取り付けられている後端部を含め、ロックボルトBの一部が、第三ボルト保持プレート56から挿入ドリフタ4Mに近い位置へ突出している状態で、ロックボルトBを保持している。
【0050】
なお、ロックボルトマガジン50に収容されているロックボルトBには、付属品として、ワッシャーWと、ナットBNが取り付けられている場合がある。
実施形態では、ワッシャーWの位置が、第二ボルト保持プレート55と第三ボルト保持プレート56との間である場合について説明する。
【0051】
以下、ロックボルトBを、ロックボルト挿入孔Hへ挿入するためにロックボルトマガジン50から受け取る機構・手順について説明する。
まず、図3及び図4に示すように、ロックボルト挿入ユニット40のロックボルトマガジン50に対する位置を、受領位置とした状態で、マガジン駆動モータを駆動させて、マガジン回転軸53を回転させる。マガジン回転軸53を回転させる回転方向は、第一クランプ部46aと第二クランプ部47aへ、ロックボルトBを移動させる方向である(図4では、反時計回り方向)。
【0052】
マガジン回転軸53を回転させ、図5及び図6に示すように、ロックボルトBを第一クランプ部46aと第二クランプ部47aへ移動させる、すなわち、押し込むことで、第一ボルトクランプ46及び第二ボルトクランプ47により、ロックボルトBを保持する。
【0053】
図5及び図6に示す状態では、ロックボルトBが、第一ボルト保持プレート54と、第二ボルト保持プレート55と、第三ボルト保持プレート56により保持されていると共に、第一ボルトクランプ46及び第二ボルトクランプ47により保持されている。
なお、図5及び図6では、説明のために、九箇所の第一ボルト保持部54aのうち、一箇所の第一ボルト保持部54aが備える凹部のみに、ロックボルトBが接触して保持されている状態を示す。
【0054】
次に、図6(b)に示すように、ロックボルト挿入ユニット40のロックボルトマガジン50に対する位置を、挿入位置とする。
ロックボルト挿入ユニット40の位置を、受領位置から挿入位置にするときには、第一ボルトクランプ46及び第二ボルトクランプ47によってロックボルトBを保持する力が、第一ボルト保持プレート54と、第二ボルト保持プレート55と、第三ボルト保持プレート56によってロックボルトBを保持する力を超える。これにより、ロックボルトマガジン50からロックボルトBを引き出す。
【0055】
<ガイドサポート>
ガイドサポート60は、挿入ドリフタ4Mに取り付けられており、図7に示すように、ガイドロッド61と、サポートスプリング62と、ガイド本体部63と、ボルト支持部64を備える。
ガイドロッド61は、ロッド部61aと、ロッドプレート61bを備える。ロッド部61aは、円柱状に形成されている。
【0056】
ロッド部61aの一方の端面(図8では、右側の端面)は、挿入ドリフタ4Mに装着された公知のシャンクロッドと接続されている。
ロッドプレート61bは、円板状に形成されており、厚さ方向をロッド部61aの長さ方向と平行に向けた状態で、ロッド部61aの他方の端面(図8では、左側の端面)に固定されている。
【0057】
サポートスプリング62は、例えば、コイルばねを用いて形成されており、ロッド部61aの外周面を包囲している。
ガイド本体部63は、ボルト支持部64をスライド可能に保持している。
ボルト支持部64は、角柱状に形成されており、回転方向の移動が規制されている。
また、ボルト支持部64には、支持開口部64aが形成されている。
【0058】
支持開口部64aの形状は、例えば、図5に示すように、端部(後端部)にナットBNを取り付けた状態のロックボルトBを、ロックボルトBの径方向に沿って三方向から包囲した状態で、内部に収容することが可能な形状である。
また、支持開口部64aのうち、ボルト支持部64の一つの側面を切除した部分は、常に、第一クランプ部46a及び第二クランプ部47aが有する開口部と同じ方向を向く開口部を形成する。
【0059】
また、ボルト支持部64は、受領位置において、第三ボルト保持プレート56と干渉しない程度に近接した位置に配設されている。このとき、ロックボルトBの後端の位置と、ボルト支持部64の前端の位置は、軸線方向(ロックボルトBの中心軸線に沿った方向)で重複している。
また、第一ボルトクランプ46と、第二ボルトクランプ47と、ボルト支持部64は、ロックボルトBの長さ方向に沿って、互いに間隔を開けた状態で配置されている。
【0060】
また、第一ボルトクランプ46と、第二ボルトクランプ47と、ガイドサポート60は、ロックボルトBを、ロックボルトBの長さ方向に沿って間隔を開けて配置した三箇所で保持することが可能である。すなわち、ガイドサポート60は、第一ボルトクランプ46及び第二ボルトクランプ47と共に、ロックボルトBを、ロックボルトBの長さ方向に沿って間隔を開けて配置した複数の箇所(三箇所)で保持する。
なお、図7には、サポートスプリング62が通常の状態(無負荷の状態、サポートスプリング62に収縮させる力が加わっていない状態)である、ガイドサポート60の状態を示す。
【0061】
<ロックボルト打設方法>
次に、図1から図8を参照しつつ、図9から図11を用いて、ロックボルト挿入ユニット40及びロックボルト打設車両100を用いたロックボルトBを打設する方法(ロックボルト打設方法)について説明する。
なお、第一ロックボルト打設用ブーム装置10Lを用いた作業と、第二ロックボルト打設用ブーム装置10Rを用いた作業は、同様の作業であるため、以降の説明は、第一ロックボルト打設用ブーム装置10Lを用いた作業についてのみ記載する。
【0062】
(削孔作業)
ロックボルト打設車両100の使用時には、図9に示すように、まず、トンネルTにおいて、切羽Kの付近に、ロックボルト打設車両100を設置する。そして、第一ロックボルト打設用ブーム装置10Lを駆動させて、第一ロックボルト打設用ブーム装置10Lを、周壁面Nに対して、所望の位置に配置する。
次に、位置切換機構PCによって、削孔ユニット20の基準軸線BLLを、所望するロックボルト挿入孔Hの削孔軸線に配置する。そして、削孔ユニット20を用いて削孔作業を行う。
【0063】
なお、ロックボルト挿入孔Hの削孔軸線とは、例えば、削孔するロックボルト挿入孔Hの中心軸線である。
削孔ユニット20によって、所定の深さまでロックボルト挿入孔Hの削孔を完了させる。このとき、後述する受渡し作業のうち、ロックボルトBをロックボルト挿入ユニット40とロックボルトマガジン50とが同時に保持する動作を完了している。
【0064】
(受渡し作業)
図10では、第一ロックボルト打設装置30Lの概略構成を示している。なお、図10に符号SCで示す点は、位置切換機構が各基準軸線を移動させる際の回転中心である。
一本のロックボルトBをロックボルトマガジン50から移動させる際には、マガジン駆動モータを駆動させて、マガジン回転軸53を回転させる。これにより、第一ボルト保持プレート54と、第二ボルト保持プレート55と、第三ボルト保持プレート56に保持されているロックボルトBを、さらに、第一ボルトクランプ46と、第二ボルトクランプ47により保持する。これに加え、ロックボルトBのうち、第三ボルト保持プレート56から挿入ドリフタ4Mに近い位置へ突出している部分の後端側を、ボルト支持部64により包囲する。
【0065】
この状態では、ロックボルトBが、第一ボルト保持プレート54と、第二ボルト保持プレート55と、第三ボルト保持プレート56により保持されていると共に、第一ボルトクランプ46と、第二ボルトクランプ47と、ガイドサポート60により保持されている。
このとき、ガイドサポート60に近い位置に配置されている、第三ボルト保持プレート56がロックボルトBを保持していることで、ロックボルトBとボルト支持部64との位置合わせを、確実に行うことが可能となる。
【0066】
このとき、ロックボルトBは、ロックボルトマガジン50において、第一ボルト保持プレート54と、第二ボルト保持プレート55と、第三ボルト保持プレート56により、三箇所で保持されている。また、第一ボルト保持プレート54と、第二ボルト保持プレート55と、第三ボルト保持プレート56は、ロックボルトBの長さ方向に沿って、互いに間隔を開けた状態で配置されている。
【0067】
これに加え、ロックボルトBは、第一ボルトクランプ46と、第二ボルトクランプ47と、ボルト支持部64(ガイドサポート60)により、ロックボルトBの長さ方向に沿って互いに間隔を開けた三箇所で保持されている。
すなわち、図5及び図6に示す状態において、ロックボルトBは、合計六箇所で保持されている。
【0068】
次に、ロックボルトマガジン50からロックボルトBを引き出す。ロックボルトBをロックボルトマガジン50から引き出す動作は、位置切換機構PCにより、削孔位置から注入位置または挿入位置、すなわち、挿入位置の方向へと、削孔ガイドシェル5D、グラウト注入装置31及び挿入ガイドシェル5Mを回転させる動作を利用している。
【0069】
上述したように、第一ボルト保持プレート54は、第一ボルトクランプ46の近傍に配置されており、第二ボルト保持プレート55は、第二ボルトクランプ47の近傍に配置されている。このため、第一ボルト保持プレート54と第一ボルトクランプ46との、ロックボルトBの長さ方向に沿った相対距離は、短い距離となっている。同様に、第二ボルト保持プレート55と第二ボルトクランプ47との、ロックボルトBの長さ方向に沿った相対距離は、短い距離となっている。
【0070】
これにより、第一ボルトクランプ46と、第二ボルトクランプ47と、ガイドサポート60が保持しているロックボルトBを、ロックボルトマガジン50から引き出す際に、ロックボルトBに発生する撓みを低減させることが可能となる。
また、ロックボルトマガジン50は、第一ボルト保持プレート54と、第二ボルト保持プレート55と、第三ボルト保持プレート56により、ロックボルトBを、ロックボルトBの長さ方向に沿って間隔を開けて配置した三箇所で保持している。
そして、三箇所の保持プレートと、二箇所のボルトクランプ及びガイドサポート60が近接して配設されているため、ロックボルトBに発生する撓みを低減させることが可能となる。
【0071】
また、上述したように、ロックボルトマガジン50は、ロックボルトBのうち、ナットBNが取り付けられている後端部が、第三ボルト保持プレート56から挿入ドリフタ4Mに近い位置へ突出している状態で、ロックボルトBを保持している。さらに、ロックボルトBに取り付けられているワッシャーWの位置が、第二ボルト保持プレート55と第三ボルト保持プレート56との間である。
【0072】
また、第三ボルト保持プレート56は、ロックボルトBの後端に近い位置に配置されており、ガイドサポート60は、第三ボルト保持プレート56の近傍に配置されている(例えば、図5を参照)。このため、ロックボルトBはガイドサポート60によって後端部が係合されるため、後端部に発生する撓みを低減させることが可能となり、第三ボルト保持プレート56と第二ボルトクランプ47とが離れている構成であっても、ロックボルトBの中心軸線と、ガイドサポート60の中心軸線(ガイドロッド61の中心軸線)を合わせることが容易となる。
【0073】
以上により、ガイドサポート60は、ロックボルト挿入ユニット40の位置が受領位置から挿入位置の方向へと変化する際に、一本のロックボルトBの後端に係合してロックボルトマガジン50から一本のロックボルトBを切り離す。
そして、ロックボルトマガジン50から引き出したロックボルトBは、第一ボルトクランプ46と、第二ボルトクランプ47と、ボルト支持部64によって、三箇所で保持される。さらに、ロックボルトBの後端部は、第三ボルト保持プレート56よりも挿入ドリフタ4Mに近い位置に配置されたボルト支持部64に収容されて、ロックボルトBの径方向に沿って三方向から保持される。
【0074】
したがって、実施形態の構成であれば、ロックボルトBを、ロックボルトマガジン50から引き出す際に、ロックボルトBに発生する撓みを抑制することが可能となる。
さらに、第一ボルト保持プレート54が第一ボルトクランプ46の近傍に配置されており、第二ボルト保持プレート55が第二ボルトクランプ47の近傍に配置されており、第三ボルト保持プレート56がガイドサポート60の近傍に配置されている。このため、ロックボルトBの後端側に発生する撓みを、効率的に抑制することが可能となる。
【0075】
(注入作業)
注入作業では、グラウト注入装置31の基準軸線BLLをロックボルト挿入孔Hに位置合わせした後に、グラウト注入装置31を作動させて注入ホースからグラウトを送り出し、ロックボルト挿入孔Hの内部へグラウトを充填する。
ロックボルト挿入孔Hの内部へのグラウトの充填が完了した後、位置切換機構PCを駆動させて、ロックボルト挿入ユニット40の基準軸線BLLをロックボルト挿入孔Hに位置合わせし、注入作業から挿入作業に移行する。
【0076】
(挿入作業)
次に、第一ボルトクランプ46、第二ボルトクランプ47及びガイドサポート60で保持しているロックボルトBに対し、ロックボルト挿入ユニット40に既存の機構である挿入機構を駆動させて挿入ドリフタ4Mに送り力を付与し、付与した送り力によって挿入ドリフタ4Mを前進させる。これにより、ロックボルトBをロックボルト挿入孔Hへ挿入する。すなわち、挿入ドリフタ4Mは、ボルトクランプが保持しているロックボルトBをロックボルト挿入孔Hに挿入する。
このとき、ロックボルトBの後端部は、ボルト支持部64の内部に収容されているため、重力によって発生するロックボルトBの撓みが抑制されることとなり、ロックボルト挿入孔Hの削孔軸線と、ロックボルトBの中心軸線を、容易に合わせることが可能である。
【0077】
また、挿入ドリフタ4Mの前進に伴い、第二ボルトクランプ47も前進する。そして、第二ボルトクランプ47が第一ボルトクランプ46の近傍まで移動し、挿入ドリフタ4Mが第二ボルトクランプ47に接触すると、第二ボルトクランプ47が変形し、第二クランプ部47aに保持されているロックボルトBが、第二クランプ部47aから離れる。
このとき、ロックボルトBの大部分はロックボルト挿入孔Hの内部へ移動しており、さらに、ロックボルトBの後端部はボルト支持部64の内部に収容されているため、ロックボルトBが落下することは無い。
【0078】
ロックボルトBが第二クランプ部47aから離れた後、さらに挿入ドリフタ4Mを前進させると、第一ボルトクランプ46が変形し、第一クランプ部46aに保持されているロックボルトBが、第一クランプ部46aから離れる。そして、挿入ドリフタ4Mの前進に伴い、図11(a)に示すように、ワッシャーWが周壁面Nに接触し、ボルト支持部64がワッシャーWに接触する。そして、ロッドプレート61bがロックボルトBの後端部に接触する。
【0079】
ここで、実施形態の構成とは異なり、ボルト支持部64がフレーム部63aに固定されている構成である場合、サポートスプリング62が収縮することが不可能である。このため、ロックボルトBを、ロッドプレート61bとナットBNが接触する状態とすることが不可能である。
これに対し、実施形態の構成であれば、ボルト支持部64が、フレーム部63aに対してロッド部61aの長さ方向に沿った相対移動が可能である。
【0080】
このため、ボルト支持部64がワッシャーWに接触し、ロッドプレート61bがロックボルトBの後端部に接触すると、図11(b)に示すように、サポートスプリング62が収縮し、ボルト支持部64が挿入ドリフタ4Mへ近づく方向へ移動(後退)する。
これにより、ロッドプレート61bがナットBNと接触し、挿入ドリフタ4Mが、ガイドロッド61を介してナットBNとロックボルトBを押すことが可能である。このため、ロッドプレート61bとナットBNが接触する状態となるまで、ロックボルトBをロックボルト挿入孔Hへ押し込むことが可能となる。
【0081】
したがって、ボルト支持部64は、ロックボルト挿入孔Hが削孔された周壁面NにワッシャーWが接触した後に、ワッシャーWに接触した状態で挿入ドリフタ4Mに対する相対位置を変化可能である。
ここで、挿入作業においてガイドサポート60が第一ボルトクランプ46と第二ボルトクランプ47と協働してロックボルトBの後端を保持する状態が、本発明の保持位置であり、挿入ドリフタ4MによってロックボルトBがロックボルト挿入孔Hに挿入されワッシャーWからの反力によってボルト支持部64が後退する状態が、本発明の対比位置である。
すなわち、ボルト支持部64は、ボルトクランプと協同してロックボルトBの後端を保持する保持位置と、ワッシャーWからの反力によって後退する退避位置との間で、挿入ドリフタ4Mに対する相対位置を変化可能である。
【0082】
また、ガイドロッド61は、ロックボルト挿入孔Hが削孔された周壁面NにワッシャーWが接触した状態で、挿入ドリフタ4MがロックボルトBをロックボルト挿入孔Hに挿入する力を、ロックボルトBの後端部へ伝達する。これにより、ロックボルトBに形成されている雄ねじ(図示略)と、ナットBNに形成され、ロックボルトBに形成されている雄ねじが組み合わされている雌ねじ(図示略)に加えられる応力を低減させることが可能となる。なお、図11では、説明のために、ロックボルトBの後端面と、ナットBNのロッドプレート61bと対向する面とを同一の面として図示しているが、実際には、ロックボルトBの後端面が、ナットBNのロッドプレート61bと対向する面よりも突出している。
したがって、ガイドロッド61は、ロックボルトBの後端を押圧し、ナットBN、ワッシャーW及び周壁面Nをそれぞれ密着させる。
【0083】
ロッドプレート61bとナットBNが接触する状態となるまで、ロックボルトBをロックボルト挿入孔Hへ押し込んで挿入作業を終了した後、図11(c)に示すように、挿入ドリフタ4Mを後退させると、収縮していたサポートスプリング62が復元力により伸長する。これにより、ボルト支持部64のフレーム部63aに対する位置が、サポートスプリング62が通常の状態である場合の位置へ戻る。
上述したロックボルト打設作業を、周壁面Nに対して、計画された必要な本数のロックボルトBを打設し、ロックボルト打設作業が完了する。
【0084】
以上説明したように、ロックボルト打設方法は、掘削されたトンネルT又は坑内の周壁面Nを安定化させるために、周壁面Nに複数のロックボルトBを打設する方法である。また、ロックボルト打設方法は、ロックボルト挿入ユニット40を用いて、複数のロックボルトBを打設する方法である。さらに、ロックボルト打設方法は、ロックボルト打設車両100を用いて、複数のロックボルトBを打設する方法である。
【0085】
<変形例>
(1)実施形態では、ガイドサポート60の構成を、ガイドロッド61と、サポートスプリング62と、ガイド本体部63と、ボルト支持部64を備える構成としたが、これに限定するものではない。
すなわち、例えば、図12に示すように、ガイドサポート60の構成を、ガイドロッド61と、サポートスプリング62と、ガイド本体部63と、ボルト支持部64に加え、シャッター機構65を備える構成としてもよい。
【0086】
シャッター機構65は、ロックボルトBの径方向に沿った方向への、ガイドサポート60の内部に対するロックボルトBの移動を許容する機構である。これに加え、シャッター機構65は、ガイドサポート60の内部(ボルト支持部64内)に移動したロックボルトBの、外部への移動を規制する機構である。具体的には、ボルト支持部64のうち、支持開口部64aを形成した一つの側面の一部を覆う二つ一組の弾性部材65aにより、シャッター機構65を形成する。弾性部材65aは、ゴム等の弾性を有する材料を用いて、板状に形成されており、支持開口部64aの内部に収容されたロックボルトBを、ロックボルトBの中心軸線よりも外側で覆う形状に形成する。
【0087】
ガイドサポート60の構成を、シャッター機構65を備える構成とすることで、支持開口部64aが鉛直方向で下方を向く場合において、ロックボルトマガジン50から引き出したロックボルトBが重力の影響で撓み、支持開口部64aからガイドサポート60の外部へ移動することを、抑制することが可能となる。
なお、シャッター機構65の構成は、弾性部材65aにより形成した構成に限定するものではなく、例えば、剛性を有する板材と、板材を移動させることが可能なアクチュエータを備える構成としてもよい。
【0088】
(2)実施形態では、二つのロックボルト打設用ブーム装置(第一ロックボルト打設用ブーム装置10L、第二ロックボルト打設用ブーム装置10R)を備える構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、三つ以上のロックボルト打設用ブーム装置を備える構成としてもよい。
【0089】
この場合、三つのロックボルト打設用ブーム装置を備える構成では、例えば、台車1の左右に配置した二つのロックボルト打設用ブーム装置に加え、台車1の前部中央に配置した一つのロックボルト打設用ブーム装置を備える構成とする。また、四つのロックボルト打設用ブーム装置を備える構成では、例えば、台車1の左右にそれぞれ配置した、二つのロックボルト打設用ブーム装置を備える構成とする。なお、少なくとも二つのロックボルト打設用ブーム装置を備える構成であれば、他の装置は、種々の用途に適合した装置とすることが可能である。
【0090】
(3)実施形態では、挿入ガイドシェル5Mを、削孔ガイドシェル5D及びグラウト注入装置31と共に、位置切換機構PCによって回転させることで、ロックボルト挿入ユニット40とロックボルトマガジン50との相対位置を、受領位置と挿入位置との間で変化させる構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、ロックボルトマガジン50等を第一ブーム装置3Lに対して傾斜させることで、ロックボルト挿入ユニット40のロックボルトマガジン50に対する相対位置を、受領位置と挿入位置との間で変化させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 台車
2 駆動部
3L 第一ブーム装置
3R 第二ブーム装置
4D 削孔ドリフタ
4M 挿入ドリフタ
5D 削孔ガイドシェル
5M 挿入ガイドシェル
6 オペレータキャビン
7 前輪
8 後輪
9 アウトリガ
10L 第一ロックボルト打設用ブーム装置
10R 第二ロックボルト打設用ブーム装置
12L 第一ケージブーム
12R 第二ケージブーム
13L 第一ケージ
13R 第二ケージ
20 削孔ユニット
21 ビット
22 削孔ロッド
24 削孔セントラライザ
25 削孔側送り機構
30L 第一ロックボルト打設装置
30R 第二ロックボルト打設装置
31 グラウト注入装置
40 ロックボルト挿入ユニット
42 ガイドロータリ
43 マウント装置
43a マウントフレーム
45 挿入側送り機構
46 第一ボルトクランプ
46a 第一クランプ部
47 第二ボルトクランプ
47a 第二クランプ部
50 ロックボルトマガジン
53 マガジン回転軸
54 第一ボルト保持プレート
54a 第一ボルト保持部
55 第二ボルト保持プレート
55a 第二ボルト保持部
56 第三ボルト保持プレート
56a 第三ボルト保持部
60 ガイドサポート
61 ガイドロッド
61a ロッド部
61b ロッドプレート
62 サポートスプリング
63 ガイド本体部
63a フレーム部
63b ロッド支持部
63c 溝部
63d ロッド挿入孔
64 ボルト支持部
64a 支持開口部
64b ロッド支持孔
65 シャッター機構
65a 弾性部材
100 ロックボルト打設車両
SC 回転中心
PC 位置切換機構
B ロックボルト
W ワッシャー
BN ナット
H ロックボルト挿入孔
T トンネル
K 切羽
N 周壁面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12