特開 2025-3422 注射器に装着される注射器用安全装置及び安全装置付き注射器

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2025003422

(43)【公開日】2025-01-09

(54)【発明の名称】注射器に装着される注射器用安全装置及び安全装置付き注射器

(51)【国際特許分類】

   A61M 5/32 20060101AFI20241226BHJP

【ＦＩ】

A61M5/32 510K

【審査請求】未請求

【請求項の数】10

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2024100767

(22)【出願日】2024-06-21

(31)【優先権主張番号】P 2023103796

(32)【優先日】2023-06-23

(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP

(71)【出願人】

【識別番号】390029676

【氏名又は名称】株式会社トップ

(74)【代理人】

【識別番号】100159628

【弁理士】

【氏名又は名称】吉田 雅比呂

(72)【発明者】

【氏名】河内 一成

【テーマコード（参考）】

4C066

【Ｆターム（参考）】

4C066BB01

4C066CC01

4C066DD08

4C066EE14

4C066FF05

4C066LL21

4C066NN20

(57)【要約】      （修正有）

【課題】係止手段の係止を確実に解除でき、かつ、太さを抑えて小型化することができる構成を備えた注射器用安全装置及びこの注射器用安全装置が装着された安全装置付き注射器を提供する。
【解決手段】安全装置付き注射器１では、シリンジ１０に内筒２０と、外筒３０と、エジェクタ４０と、ばね部材５０とを装着することで、注射打ち終了後、プランジャフランジ部１４でエジェクタ４０を押すことで、内筒２０の１対の内筒揺動片２１を内側へ撓ませ、内筒２０と外筒３０との固定を解除することができる。
【選択図】図２

【特許請求の範囲】

【請求項1】

前端部に穿刺針及び後端部にバレルフランジ部を有し、薬液が収容されるバレルと、その前端が前記バレルの後端側から摺動可能に挿入され、その後端にプランジャフランジ部を有するプランジャと、を備える注射器に装着される注射器用安全装置であって、 前記穿刺針の軸線に沿う方向を前後方向、前後方向に直交する第１の方向を上下方向、及び、前後方向と上下方向とに直交する第２の方向を左右方向とした場合に、前記注射器用安全装置は、 前記バレルに外側に嵌合される筒状であって前記バレルフランジ部に固定される内筒と、 前記バレル及び前記内筒の外側に嵌合されることで前記穿刺針を収納可能な筒状であって、前記バレルの外周面に沿って摺動可能な外筒と、 前記外筒に内蔵され、前記内筒を前記外筒に対し後方に向かって付勢するばね部材と、 前記内筒を前記穿刺針が前記外筒の前端から突出する使用位置にばね部材の付勢力に抗して係止させる係止手段と、 前記外筒の内側に嵌合される筒状であって前記係止手段による係止を解除させるエジェクタと、を備え、 前記内筒は、その後端部に設けられ、前記バレルフランジ部の外側に嵌合される内筒固定部と、を有し、 前記内筒固定部は、該内筒固定部の前端から後端までを軸線に近づく方向に凹ませたエジェクタ通過用溝部を有し、 前記エジェクタは、 その前端の上下方向の端部から前方に向かって延設され、前記エジェクタ通過用溝部を通過可能な解除突片を有し、 前記係止手段は、 前記プランジャが前方に向かって変位される際に、前記プランジャの前記プランジャフランジ部を介して前方に向かって押し込まれる前記エジェクタの解除突片の前端部により解除可能に構成されていることを特徴とする注射器用安全装置。

【請求項2】

前端部に穿刺針及び後端部にバレルフランジ部を有し、薬液が収容されるバレルと、その前端が前記バレルの後端側から摺動可能に挿入され、その後端にプランジャフランジ部を有するプランジャと、を備える注射器に装着される注射器用安全装置であって、 前記穿刺針の軸線に沿う方向を前後方向、前後方向に直交する第１の方向を上下方向、及び、前後方向と上下方向とに直交する第２の方向を左右方向とした場合に、前記注射器用安全装置は、 前記バレルに外側に嵌合される筒状であって前記バレルフランジ部に固定される内筒と、 前記バレル及び前記内筒の外側に嵌合されることで前記穿刺針を収納可能な筒状であって、前記バレルの外周面に沿って摺動可能な外筒と、 前記外筒に内蔵され、前記内筒を前記外筒に対し後方に向かって付勢するばね部材と、 前記内筒を前記穿刺針が前記外筒の前端から突出する使用位置にばね部材の付勢力に抗して係止させる係止手段と、 前記外筒の内側に嵌合される筒状であって前記係止手段による係止を解除させるエジェクタと、を備え、 前記内筒は、筒状の内筒本体部と、該内筒本体部の後端に内筒段差部を介して連設され、該内筒本体部より外径が大きい筒状であって、前記バレルフランジ部の外側に嵌合される内筒固定部と、を有し、 前記内筒本体部は、前記内筒段差部に隣接し、上下方向に沿ってみたときに前後方向に沿って延びて前側が開いたＵ字状の第１内筒溝部と、前記第１内筒溝部によって囲まれて上下方向に揺動可能な内筒揺動片と、前記内筒揺動片の後端部に設けられた内筒解除部と、前記内筒揺動片の前記内筒解除部の前側に隙間を開けつつ隣接して設けられ、上下方向に沿って前記軸線から離れる方向に膨らむ内筒係止部と、を有し、 前記内筒固定部は、前記内筒揺動片に隣接する位置に設けられ、該内筒固定部の前端から後端までを軸線に近づく方向に凹ませたエジェクタ通過用溝部を有し、 前記エジェクタは、 その前端の上下方向の端部から前方に向かって延設され、前記エジェクタ通過用溝部より幅狭かつ薄板状である解除突片と、 前記解除突片の前端部に設けられたエジェクタ解除部と、を有し、 前記外筒は、その内周面の上下方向の端部から前記軸線に近づく方向に延び、前記使用位置において前記内筒係止部及び前記内筒解除部の隙間に配置される外筒係止部を有し、 前記係止手段は、 前記内筒の前記エジェクタ通過用溝部に後側から前記エジェクタの前記解除突片を差し込んで前記エジェクタ解除部を前記内筒解除部の後側に配置させた状態で、前記内筒の前側から前記外筒を外側に嵌合させて前記外筒係止部の前端に前記内筒係止部の後端が係合されることで前記使用位置に係止可能に構成され、 前記プランジャが前方に向かって変位される際に、前記プランジャの前記プランジャフランジ部を介して前方に向かって押し込まれる前記エジェクタの前記エジェクタ解除部が前記内筒解除部を前記軸線に向かって変位させることで、前記内筒揺動片が揺動されるとともに該内筒揺動片に設けられた前記内筒係止部が前記外筒係止部から離間されることで係止が解除可能に構成されていることを特徴とする注射器用安全装置。

【請求項3】

請求項２記載の注射器用安全装置において、 前記解除突片は、上下方向に揺動可能に構成され、 前記エジェクタ解除部は、上下方向に沿って前記軸線に近づく方向に膨らんで前側に斜面を有する凸状に形成され、前記内筒の前記エジェクタ通過用溝部に前記エジェクタの前記解除突片を差し込む際に、前記解除突片を上下方向に揺動させることで前記エジェクタ通過用溝部を乗り越えて前記内筒解除部の後側に配置されるとともに、前記プランジャが前方に向かって変位される際に、その前側の斜面が前方に向かって押し込まれて前記内筒解除部を前記軸線に向かって滑らせながら押し下げることを特徴とする注射器用安全装置。

【請求項4】

請求項２記載の注射器用安全装置において、 前記内筒は、前記内筒固定部の前側の左右方向の端部から前方に向かって漸次前記軸線から離れる方向に前記外筒の後端の内径を超える位置まで延設され、左右方向に弾性変形可能な戻り防止片と、 前記戻り防止片の前端に設けられ、前記外筒の後端と係合される戻り防止端面と、を有し、 前記戻り防止片は、前記軸線に近づく方向に押し下げながら前記外筒を外側に嵌合させることで前記使用位置において前記外筒に収納されるとともに、前記係止が解除された際に、前記ばね部材の付勢力により前記外筒に対し後方に向かって前記外筒の後端より後側まで変位されることを特徴とする注射器用安全装置。

【請求項5】

請求項４記載の注射器用安全装置において、 前記戻り防止端面は、上下方向に沿ってみたときに後方に向かって凹状に形成され、 前記外筒の後端は、前記戻り防止端面と係合する位置が上下方向に沿ってみたときに後方に向かって凸状に形成され、前記戻り防止端面と嵌合可能であることを特徴とする注射器用安全装置。

【請求項6】

請求項４または５に記載の注射器用安全装置において、 前記戻り防止片は、前記内筒固定部の前端面から前方に向かって薄板状に延設されることで左右方向に揺動可能に構成され、 前記内筒は、左右方向に沿ってみたときに前記戻り防止片と重なる筒状の部分を切り欠くことで設けられ、前記軸線に近づく方向に揺動した前記戻り防止片を収納する収納穴部を有することを特徴とする注射器用安全装置。

【請求項7】

請求項４または５に記載の注射器用安全装置において、 前記戻り防止片は、 前端に前記戻り防止端面を有し前記内筒の外周面と離間する本体部と、 前記内筒の外周面の左右方向の端部から左右方向に沿って軸線から離れる方向に延びて前記本体部と接続され、前記本体部を前後方向に揺動させる揺動接続片と、 前記本体部の後端に設けられ、前記内筒固定部の前端に接して該本体部が後方に向かって揺動することを防止する支持部と、を有することを特徴とする注射器用安全装置。

【請求項8】

請求項７記載の注射器用安全装置において、 前記本体部は、前後方向、上下方向及び左右方向に沿って延びる直方体形状であることを特徴とする注射器用安全装置。

【請求項9】

請求項８記載の注射器用安全装置において、 前記本体部は、前後方向の中間部であって、上下方向の一部かつ左右方向の一部のみを切り欠く肉抜部を有することを特徴とする注射器用安全装置。

【請求項10】

前記注射器と、該注射器に装着される請求項９記載の注射器用安全装置と、を備えることを特徴とする安全装置付き注射器。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、予め薬液が充填され、使用後、穿刺針をカバーする外筒を使用位置から保護位置に移動させることができる注射器用安全装置及びこの注射器用安全装置が装着された安全装置付き注射器に関する。

【背景技術】

【0002】

従来から、一度使用した注射器の再使用を防ぐと共に、使用後の穿刺針に誤って接触することを防ぐために注射器に装着される注射器用安全装置が知られている（特許文献１参照）。

【0003】

この従来の注射器用安全装置は、注射器のバレルに外嵌される円筒形状であって小径部の後端に段差部を介して大径部が連設された外筒と、バレルと外筒との隙間に挿入され穿刺針を収納可能な円筒形状であってバレルの外周面に沿って摺動可能な内筒と、内筒に内蔵され内筒を外筒に対し前方に向かって付勢するばね部材と、内筒を穿刺針がその先端から突出する使用位置にばね部材の付勢力に抗して外筒に係止させる係止手段と、注射器のプランジャフランジ部に固定され、外筒に挿入可能な円筒形状であって係止手段による係止を解除させるエジェクタと、を備える。

【0004】

この係止手段は、内筒の基端部に設けられ軸線から離れる方向に膨らむ係止部が、外筒の段差部の後端面に係止されることで構成されている。

【0005】

また、この従来の注射器用安全装置において、外筒の大径部の内側には、周方向おいて等間隔に並んだ４か所から後方に向かって延びてバレルフランジ部をスナップフィットする外筒固定部と、周方向において外筒固定部の隙間に配置された一対の弾力タブとが設けられている。この外筒固定部は、大径部の内周面から穿刺針の軸線に近づいてから後方に向かって屈曲する略ｌ字形状であって、弾力タブは、大径部の内周面から後方に向かうにつれて漸次軸線に近づく傾斜形状である。

【0006】

この構成を備える従来の注射器用安全装置では、薬液を排出するためにプランジャを前方に向かって押し込んだ際に、円筒形状のエジェクタの先端周縁が、一対の弾力タブを互いの先端が接近する方向に押し倒す。そして、この弾力タブが、内筒の係止部を軸線に近づく方向に押し込んで外筒の段差部の後端面から離間させるので、係止手段による係止を解除される。これにより、内筒は、ばね部材の付勢力により穿刺針をその先端まで収納する保護位置まで前方に押し出される。

【0007】

以上説明したように、従来の注射器用安全装置では、薬液を排出すると同時に、内筒によって穿刺針がカバーされるため、使用後の穿刺針に誤って接触することを防ぐことができる。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0008】

【特許文献1】特表２００７－５０８８８３号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0009】

しかしながら、従来の注射器用安全装置は、エジェクタが前進することで弾力タブを揺動させ、揺動した弾力タブが内筒の係止部を軸線に近づくように押し込む構成となっているためエジェクタによる係止の解除が間接的であり、特に、プランジャがバレルに対して少しでも傾いている場合などに係止の解除がスムーズに作動しないおそれがあった。

【0010】

また、従来の注射器用安全装置のエジェクタは、円筒形状であり、注射器のバレルフランジ部及びこれを固定する外筒固定部を超えて前進する必要があるので、外筒固定部より大径に設計する必要がある。その結果、このような円筒形状のエジェクタを外嵌する外筒の大径部は、より大径に設計する必要がある。

【0011】

同様に、この円筒形状のエジェクタは、弾力タブの先端部付近を前方に向かって押し倒すものであるから、弾力タブの基端を支持する外筒の大径部は、この点からもエジェクタよりも大径に設計する必要がある。

【0012】

そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、係止手段の係止を確実に解除でき、かつ、太さを抑えて小型化することができる構成を備えた注射器用安全装置及びこの注射器用安全装置が装着された安全装置付き注射器を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0013】

本発明の注射器用安全装置は、前端部に穿刺針及び後端部にバレルフランジ部を有し、薬液が収容されるバレルと、その前端が前記バレルの後端側から摺動可能に挿入され、その後端にプランジャフランジ部を有するプランジャと、を備える注射器に装着される注射器用安全装置であって、前記穿刺針の軸線に沿う方向を前後方向、前後方向に直交する第１の方向を上下方向、及び、前後方向と上下方向とに直交する第２の方向を左右方向とした場合に、前記注射器用安全装置は、前記バレルに外側に嵌合される筒状であって前記バレルフランジ部に固定される内筒と、前記バレル及び前記内筒の外側に嵌合されることで前記穿刺針を収納可能な筒状であって、前記バレルの外周面に沿って摺動可能な外筒と、前記外筒に内蔵され、前記内筒を前記外筒に対し後方に向かって付勢するばね部材と、前記内筒を前記穿刺針が前記外筒の前端から突出する使用位置にばね部材の付勢力に抗して係止させる係止手段と、前記外筒の内側に嵌合される筒状であって前記係止手段による係止を解除させるエジェクタと、を備え、前記内筒は、その後端部に設けられ、前記バレルフランジ部の外側に嵌合される内筒固定部と、を有し、前記内筒固定部は、該内筒固定部の前端から後端までを軸線に近づく方向に凹ませたエジェクタ通過用溝部を有し、前記エジェクタは、その前端の上下方向の端部から前方に向かって延設され、前記エジェクタ通過用溝部を通過可能な解除突片を有し、前記係止手段は、前記プランジャが前方に向かって変位される際に、前記プランジャの前記プランジャフランジ部を介して前方に向かって押し込まれる前記エジェクタの解除突片の前端部により解除可能に構成されていることを特徴とする（以下、「第１の本発明の注射器用安全装置」という。） 第１の本発明の注射器用安全装置において、エジェクタは、前方に向かって解除突片を有し、この解除突片は、内筒固定部に設けられたエジェクタ通過用溝部を通過でき、係止手段の後側に配置される。

【0014】

そのため、プランジャを介してエジェクタを前方に向かって変位させると、エジェクタの解除突片の前端部により、係止手段を解除することができる。

【0015】

よって、第１の本発明の注射器用安全装置によれば、エジェクタによって係止の解除が直接的に行われるため、係止手段の係止を確実に解除することができる。

【0016】

また、第１の本発明の注射器用安全装置において、内筒固定部は、前後方向に沿って凹ませることでエジェクタ通過用溝部が設けてあり、かつ、解除突片はこのエジェクタ通過用溝部を通過できるため、第１の本発明の安全装置付き注射器では、エジェクタを内筒固定部よりも大径に設計する必要性はないため、このエジェクタを外嵌する外筒も大径に設計する必要性はない。

【0017】

よって、第１の本発明の注射器用安全装置によれば、太さを抑えて小型化することができる。なお、本発明は、太さを抑えることが可能な構成を創作したものであって、実際に装置の径をどの程度の太さにするかは適宜設計事項である。よって、本発明の構成を採用した注射器用安全装置は、実際の径が太い場合であっても本発明の技術的範囲に属する。

【0018】

本発明の注射器用安全装置は、前端部に穿刺針及び後端部にバレルフランジ部を有し、薬液が収容されるバレルと、その前端が前記バレルの後端側から摺動可能に挿入され、その後端にプランジャフランジ部を有するプランジャと、を備える注射器に装着される注射器用安全装置であって、前記穿刺針の軸線に沿う方向を前後方向、前後方向に直交する第１の方向を上下方向、及び、前後方向と上下方向とに直交する第２の方向を左右方向とした場合に、前記注射器用安全装置は、前記バレルに外側に嵌合される筒状であって前記バレルフランジ部に固定される内筒と、前記バレル及び前記内筒の外側に嵌合されることで前記穿刺針を収納可能な筒状であって、前記バレルの外周面に沿って摺動可能な外筒と、前記外筒に内蔵され、前記内筒を前記外筒に対し後方に向かって付勢するばね部材と、前記内筒を前記穿刺針が前記外筒の前端から突出する使用位置にばね部材の付勢力に抗して係止させる係止手段と、前記外筒の内側に嵌合される筒状であって前記係止手段による係止を解除させるエジェクタと、を備え、前記内筒は、筒状の内筒本体部と、該内筒本体部の後端に内筒段差部を介して連設され、該内筒本体部より外径が大きい筒状であって、前記バレルフランジ部の外側に嵌合される内筒固定部と、を有し、前記内筒本体部は、前記内筒段差部に隣接し、上下方向に沿ってみたときに前後方向に沿って延びて前側が開いたＵ字状の第１内筒溝部と、前記第１内筒溝部によって囲まれて上下方向に揺動可能な内筒揺動片と、前記内筒揺動片の後端部に設けられた内筒解除部と、前記内筒揺動片の前記内筒解除部の前側に隙間を開けつつ隣接して設けられ、上下方向に沿って前記軸線から離れる方向に膨らむ内筒係止部と、を有し、前記内筒固定部は、前記内筒揺動片に隣接する位置に設けられ、該内筒固定部の前端から後端までを軸線に近づく方向に凹ませたエジェクタ通過用溝部を有し、前記エジェクタは、その前端の上下方向の端部から前方に向かって延設され、前記エジェクタ通過用溝部より幅狭かつ薄板状である解除突片と、前記解除突片の前端部に設けられたエジェクタ解除部と、を有し、前記外筒は、その内周面の上下方向の端部から前記軸線に近づく方向に延び、前記使用位置において前記内筒係止部及び前記内筒解除部の隙間に配置される外筒係止部を有し、前記係止手段は、前記内筒の前記エジェクタ通過用溝部に後側から前記エジェクタの前記解除突片を差し込んで前記エジェクタ解除部を前記内筒解除部の後側に配置させた状態で、前記内筒の前側から前記外筒を外側に嵌合させて前記外筒係止部の前端に前記内筒係止部の後端が係合されることで前記使用位置に係止可能に構成され、前記プランジャが前方に向かって変位される際に、前記プランジャの前記プランジャフランジ部を介して前方に向かって押し込まれる前記エジェクタの前記エジェクタ解除部が前記内筒解除部を前記軸線に向かって変位させることで、前記内筒揺動片が揺動されるとともに該内筒揺動片に設けられた前記内筒係止部が前記外筒係止部から離間されることで係止が解除可能に構成されていることを特徴とする（以下、「第２の本発明の注射器用安全装置」という。）。

【0019】

第２の本発明の注射器用安全装置において、係止手段は、外筒の外筒係止部に内筒の内筒揺動片に設けられた内筒係止部が係合されることで、穿刺針を使用位置に係止するものである。これに対し、第２の本発明の安全装置付き注射器のエジェクタは、前方に向かって延設された薄板状である解除突片を有し、この解除突片は、内筒の後端で拡径する内筒固定部に設けられたエジェクタ通過用溝部を通過でき、内筒解除部の後側に配置される。

【0020】

そのため、プランジャを介してエジェクタを前方に向かって変位させると、エジェクタの解除突片の前端（エジェクタ解除部）により、内筒解除部を軸線に向かって変位させることができる。この内筒解除部は上下方向に揺動可能な内筒揺動片に設けられているため、内筒解除部を軸線に向かって変位させる際には、これが設けられている内筒揺動片ごと軸線に向かって変位させることになる。そして、この内筒揺動片には、上述した内筒係止部も設けられているため、内筒解除部及び内筒揺動片とともに内筒係止部もエジェクタにより軸線に向かって変位されることになる。これにより、内筒係止部は上述した外筒係止部から離間され、係止手段による係止は解除される。

【0021】

よって、第２の本発明の注射器用安全装置によれば、エジェクタによって係止の解除が直接的に行われるため、係止手段の係止を確実に解除することができる。

【0022】

また、第２の本発明の注射器用安全装置において、内筒の後端で拡径する内筒固定部は、前後方向に沿って凹ませることでエジェクタ通過用溝部が設
けてあり、かつ、エジェクタに設けられた解除突片は、薄板状であり、このエジェクタ通過用溝部をすり抜けるように構成されている。そのため、第２の本発明の安全装置付き注射器では、エジェクタを内筒固定部よりも大径に設計する必要性はないため、このエジェクタを外嵌する外筒も大径に設計する必要性はない。

【0023】

よって、第２の本発明の注射器用安全装置によれば、太さを抑えて小型化することができる。なお、本発明は、太さを抑えることが可能な構成を創作したものであって、実際に装置の径をどの程度の太さにするかは適宜設計事項である。よって、本発明の構成を採用した注射器用安全装置は、実際の径が太い場合であっても本発明の技術的範囲に属する。

【0024】

第２の本発明の注射器用安全装置において、前記解除突片は、上下方向に揺動可能に構成され、前記エジェクタ解除部は、上下方向に沿って前記軸線に近づく方向に膨らんで前側に斜面を有する凸状に形成され、前記内筒の前記エジェクタ通過用溝部に前記エジェクタの前記解除突片を差し込む際に、前記解除突片を上下方向に揺動させることで前記エジェクタ通過用溝部を乗り越えて前記内筒解除部の後側に配置されるとともに、前記プランジャが前方に向かって変位される際に、その前側の斜面が前方に向かって押し込まれて前記内筒解除部を前記軸線に向かって滑らせながら押し下げることが好ましい（以下、「第３の本発明の注射器用安全装置」という。）。

【0025】

第３の本発明の注射器用安全装置では、解除突片の前端に設けられたエジェクタ解除部が、軸線に近づく方向に膨らんで前側に斜面を有する凸状に形成されているため、エジェクタを前方に向かって変位させた際に、この斜面により内筒解除部を軸線に向かって滑らせながら押し下げることができる。これにより、内筒解除部が設けられた内筒揺動片を、これに設けられた内筒係止部とともに押し下げて外筒係止部から離間させ、係止手段による係止を解除することができる。

【0026】

よって、第３の本発明の注射器用安全装置によれば、係止手段の係止をより確実に解除することができる。

【0027】

また、第３の本発明の注射器用安全装置では、解除突片の前端に設けられたエジェクタ解除部が軸線に近づく方向に膨らんでいる。しかしながら、この解除突片は上下方向に揺動可能に構成されているため、内筒のエジェクタ通過用溝部に差し込む際に上下方向に揺動することにより、エジェクタ解除部を内筒のエジェクタ通過用溝部を乗り越えさせて内筒解除部の後側に配置することができる。そのため、第２の本発明の注射器用安全装置では、エジェクタ解除部が軸線に近づく方向に膨らんでいたとしても、エジェクタを内筒固定部より大径に設計する必要性はないため、このエジェクタを外嵌する外筒も大径に設計する必要性はない。

【0028】

よって、第３の本発明の注射器用安全装置によれば、太さを抑えて小型化することができる。

【0029】

第３の本発明の注射器用安全装置において、前記内筒は、前記内筒固定部の前側の左右方向の端部から前方に向かって漸次前記軸線から離れる方向に前記外筒の後端の内径を超える位置まで延設され、左右方向に弾性変形可能な戻り防止片と、前記戻り防止片の前端に設けられ、前記外筒の後端と係合される戻り防止端面と、を有し、前記戻り防止片は、前記軸線に近づく方向に押し下げながら前記外筒を外側に嵌合させることで前記使用位置において前記外筒に収納されるとともに、前記係止が解除された際に、前記ばね部材の付勢力により前記外筒に対し後方に向かって前記外筒の後端より後側まで変位されることが好ましい（以下、「第４の本発明の注射器用安全装置」という。）。

【0030】

第４の本発明の注射器用安全装置では、内筒に左右方向に弾性変形可能な戻り防止片が設けられている。この戻り防止片は、軸線に近づく方向に押し下げながら外筒を外嵌させることで使用位置において外筒に収納されているが、係止が解除されてばね部材の付勢力により外筒に対し後方に向かって外筒の後端より後側まで変位されると、弾性変形して外筒の後端の内径を超える位置まで左右方向に広がる。

【0031】

そして、この戻り防止片の前端には、外筒の後端と係合される戻り防止端面が形成されているため、穿刺針を再度使用位置に戻そうとして内筒を外筒に対して前進（前方に向かって変位）させても、外筒の後端に内筒の戻り防止端面が係合されるため、それ以上の前進が阻害される。

【0032】

よって、第４の本発明の注射器用安全装置によれば、一度使用した注射器の再使用をさらに防ぐと共に、使用後の穿刺針に誤って接触することを防ぐことができる。

【0033】

また、第４の本発明の注射器用安全装置において、戻り防止片は、使用位置においては、弾性変形させて軸線に近づく方向に押し下げることで外筒に収納することができるので、外筒を太くする必要性は生じない。よって、第４の本発明の注射器用安全装置によれば、太さを抑えて小型化することができる。

【0034】

第４の本発明の注射器用安全装置において、前記戻り防止端面は、上下方向に沿ってみたときに後方に向かって凹状に形成され、前記外筒の後端は、前記戻り防止端面と係合する位置が上下方向に沿ってみたときに後方に向かって凸状に形成され、前記戻り防止端面と嵌合可能であることが好ましい（以下、「第５の本発明の注射器用安全装置」という。）。

【0035】

第５の本発明の注射器用安全装置では、穿刺針を再度使用位置に戻すために内筒を外筒に対して前進させようとした際に衝突する内筒の戻り防止端面及び外筒の後端を、それぞれ凹状及び凸状に形成して嵌合可能としているので、それ以上の前進がより確実に阻害される。

【0036】

よって、第５の本発明の注射器用安全装置によれば、一度使用した注射器の再使用をさらに防ぐと共に、使用後の穿刺針に誤って接触することを防ぐことができる。

【0037】

また、第５の本発明の注射器用安全装置では、内筒の戻り防止端面を後方に向かって凹状、外筒の後端を後方に向かって凸状に、いずれも前後方向への形状変更に留めているため、内筒及び外筒の径を太くする必要性が生じない。よって、第４の本発明の注射器用安全装置によれば、太さを抑えて小型化することができる。

【0038】

また、第４、第５の本発明の注射器用安全装置において、前記戻り防止片は、前記内筒固定部の前端面から前方に向かって薄板状に延設されることで左右方向に揺動可能に構成され、前記内筒は、左右方向に沿ってみたときに前記戻り防止片と重なる筒状の部分を切り欠くことで設けられ、前記軸線に近づく方向に揺動した前記戻り防止片を収納する収納穴部を有することが好ましい（以下、「第６の本発明の注射器用安全装置」という。）。

【0039】

第６の本発明の注射器用安全装置では、戻り防止片は、内筒固定部の前端面から前方に向かって薄板状に延設されているため、内筒の径は太くする必要性がない。その一方で、内筒には、筒状の部分のうち戻り防止片と重なるところを切り欠くことで戻り防止片を収納する収納穴部が設けられているため、戻り防止片を軸線から離れる方向に向かって大きく延ばすことなく揺動するためのクリアランスを確保することができる。

【0040】

よって、第６の本発明の注射器用安全装置によれば、太さを抑えて小型化することができる。

【0041】

あるいは、第４、第５の本発明の注射器用安全装置において、前記戻り防止片は、前端に前記戻り防止端面を有し前記内筒の外周面と離間する本体部と、前記内筒の外周面の左右方向の端部から左右方向に沿って軸線から離れる方向に延びて前記本体部と接続され、前記本体部を前後方向に揺動させる揺動接続片と、前記本体部の後端に設けられ、前記内筒固定部の前端に接して該本体部が後方に向かって揺動することを防止する支持部と、を有することが好ましい（以下、「第７の本発明の注射器用安全装置」という。）。

【0042】

第７の本発明の注射器用安全装置では、戻り防止片は、基本的に、揺動接続片により前後方向に揺動されるものである。

【0043】

ただし、戻り防止片の本体部の後端に設けられた支持部が内筒固定部の前端に接することで後方に向かって揺動することは防止されるため、使用後に内筒を外筒に対して前進さようとしても、外筒の後端に衝突した本体部によりそれ以上の前進が阻害される。よって、第６の本発明の注射器用安全装置によれば、一度使用した注射器の再使用をさらに防ぐと共に、使用後の穿刺針に誤って接触することを防ぐことができる。

【0044】

一方、戻り防止片は、揺動接続片により前方には揺動可能であるとともに、この揺動接続片は軸線から離れる方向に延びているため、本体部は前方に揺動する際に、弧を描くように揺動した結果として軸線に近づく方向にも変位される。

【0045】

そのため、第７の本発明の注射器用安全装置において、戻り防止片は、使用位置においては、前方に押すことで軸線に近づく方向に押し下げて外筒に収納することができるので、外筒を太くする必要性は生じない。よって、第７の本発明の注射器用安全装置によれば、太さを抑えて小型化することができる。

【0046】

また、第７の本発明の注射器用安全装置において、前記本体部は、前後方向の中間部であって、上下方向の一部かつ左右方向の一部のみを切り欠く肉抜部を有することが好ましい（以下、「第８の本発明の注射器用安全装置」という。）。

【0047】

第８の本発明の注射器用安全装置では、使用後に内筒を外筒に対して前進させようとした際に、外筒の後端と内筒固定部の前端と間に挟まれて前後方向に潰す荷重がかかっても、本体部が強度の高い直方体形状に形成されているため、意図しない変形が生じにくい。よって、第７の本発明の注射器用安全装置によれば、一度使用した注射器の再使用をさらに防ぐと共に、使用後の穿刺針に誤って接触することを防ぐことができる。

【0048】

また、第８の本発明の注射器用安全装置において、前記本体部は、前後方向の中間部であって、上下方向の一部かつ左右方向の一部のみを切り欠く肉抜部を有することが好ましい（以下、「第９の本発明の注射器用安全装置」という。）。

【0049】

第９の本発明の注射器用安全装置では、前記本体部が直方体形状から肉抜きされているため、ヒケやボイドの発生を防止することができる。

【0050】

その一方で、本体部は、前後方向の中間部であって、上下方向の一部かつ左右方向の一部のみが切り欠かれているので、前側に戻り防止端面を含んで上下方向及び左右方向に広がる板状部及び後側に支持部を含んで上下方向及び左右方向に広がる板状部が残り、さらに、両者をつなぐ２つの板状部として、前後方向及び上下方向に広がる板状部並びに前後方向及び左右方向に広がる板状部が交わって延びるように残るため、強度の低下は最低限に抑えられる。

【0051】

よって、第９の本発明の注射器用安全装置では、使用後に内筒を外筒に対して前進させようとした際に、外筒の後端と内筒固定部の前端と間に挟まれて前後方向に潰す荷重がかかっても、本体部に意図しない変形が生じにくい。よって、第９の本発明の注射器用安全装置によれば、一度使用した注射器の再使用をさらに防ぐと共に、使用後の穿刺針に誤って接触することを防ぐことができる。

【0052】

本発明の安全装置付き注射器は、前記注射器と、該注射器に装着される第９の本発明の注射器用安全装置と、を備えることを特徴とする（以下、「第１０の本発明の安全装置付き注射器」）。

【0053】

第１０の本発明の安全装置付き注射器によれば、エジェクタによって係止の解除が直接的に行われるため、係止手段の係止を確実に解除することができる。また、第１０の本発明の安全装置付き注射器によれば、太さを抑えて小型化することができる。

【図面の簡単な説明】

【0054】

【図1A】本発明の第１の実施形態の安全装置付き注射器を示す斜視図であって、使用前の状態を示す斜視図。

【図1B】本発明の第１の実施形態の安全装置付き注射器を示す斜視図であって、使用後の状態を示す斜視図。

【図2】第１の実施形態の安全装置付き注射器の構成を概略的に示す分解斜視図。

【図3A】第１の実施形態の安全装置付き注射器の構成を概略的に示す使用前の縦断面図。

【図3B】第１の実施形態の安全装置付き注射器の構成を概略的に示す使用前の横断面図。

【図4A】第１の実施形態の安全装置付き注射器の構成を概略的に示す使用後の縦断面図。

【図4B】第１の実施形態の安全装置付き注射器の構成を概略的に示す使用後の横断面図。

【図5A】第１の実施形態の安全装置付き注射器の組み立て工程を示す第１の斜視図であって、内筒へばね部材を装入の組立て状態を説明する斜視図。

【図5B】第１の実施形態の安全装置付き注射器の組み立て工程を示す第２の斜視図であって、内筒、エジェクタ及びばね部材を外筒へ装入の組立て状態を説明する斜視図。

【図5C】第１の実施形態の安全装置付き注射器の組み立て工程を示す第３の斜視図であって、バレルを装着する状態を説明する斜視図。

【図5D】第１の実施形態の安全装置付き注射器の組み立て工程を示す第４の斜視図であって、プランジャロッドを装着する状態を説明する斜視図。

【図6】第１の実施形態の安全装置付き注射器の操作を示す断面図であって、プランジャフランジ部を押し、エジェクタを作動させ、内筒のスナップフィットの突起が外れる状態を説明する断面図。

【図7】第１の実施形態の安全装置付き注射器の操作を示す断面斜視図であって、内筒及びシリンジが後方へ移動した際のロック状態を説明する断面斜視図。

【図8】本発明の第２の実施形態の安全装置付き注射器の変形例を示す分解斜視図。

【図9A】第２の実施形態の安全装置付き注射器の構成を概略的に示す使用前の縦断面図。

【図9B】第２の実施形態の安全装置付き注射器の構成を概略的に示す使用前の横断面図。

【図10A】第２の実施形態の安全装置付き注射器の構成を概略的に示す使用後の縦断面図。

【図10B】第２の実施形態の安全装置付き注射器の構成を概略的に示す使用後の横断面図。

【図11】第２の実施形態の安全装置付き注射器の戻り防止片が収納位置にある状態を説明する局部拡大断面図。

【図12】第２の実施形態の安全装置付き注射器の戻り防止片が戻り防止位置にある状態を説明する局部拡大断面図。

【図13】本発明の安全装置付き注射器に使用されるフィンガーグリップの構成を示す正面図。

【図14】本発明の安全装置付き注射器フィンガーグリップの構成を示す平面図。

【図15】本発明の安全装置付き注射器図１１のＣ－Ｃ断面矢視図。

【図16】本発明の安全装置付き注射器にフィンガーグリップを装着する様子を示す正面図。

【図17】本発明の安全装置付き注射器にフィンガーグリップが装着された状態を示す後方視斜視図。

【発明を実施するための形態】

【0055】

以下、図１Ａ～図７を参照しながら、本発明の第１の実施形態に係る安全装置付き注射器１及び注射器に装着される注射器用安全装置２について説明する。本発明の安全装置付き注射器１は、使用後（注射打ち終了状態）、穿刺針を保護することができる安全装置を備えた注射器に予め薬液が入っており、即注射可能なプレフィルド注射器（ｐｒｅｆｉｌｌｅｄ ｓｙｒｉｎｇｅｓ）である。

【0056】

図１ａは本発明の第１の実施形態の安全装置付き注射器１の使用前の状態を示しており、図１ｂは本発明の第１の実施形態の安全装置付き注射器１の使用後の状態を示している。図２は安全装置付き注射器１の構成を概略的に示す分解斜視図である。図３Ａは安全装置付き注射器１の使用前の状態における上下方向の縦断面を示しており、図３Ｂは安全装置付き注射器１の使用前の状態における左右方向の横断面を示している。図４Ａは安全装置付き注射器１の使用後の状態における上下方向の縦断面を示しており、図４Ｂは安全装置付き注射器１の使用後の状態における左右方向の横断面を示している。ここで、図３Ａ及び図４Ａは軸に沿った平面（上下方向平面）による縦断面であり、図３Ｂ及び図４Ｂは軸に沿った平面（左右方向平面）による横断面である。本明細書において、「使用前の状態」とは、注射を行う前の状態であり、「使用後の状態」とは、注射が完了した状態である。また、「先端側（本発明の前端側に相当する。）」とは、穿刺針のある側であり、「後端側」とは、プランジャフランジ部のある側である。

【0057】

安全装置付き注射器１は、図１Ａ～図４Ｂで示すように、シリンジ１０と、内筒２０と、外筒３０と、エジェクタ４０と、ばね部材５０と、キャップ６０とを備えている。本実施形態において、注射器用安全装置２は、内筒２０と、外筒３０と、エジェクタ４０と、ばね部材５０とから構成されている。このうち、内筒２０と、外筒３０と、エジェクタ４０と、ばね部材５０とが本発明における注射器用安全装置２に相当する（以下、単に、「安全装置２」という。）。

【0058】

注射器１０は、バレル１１と、このバレル１１内をスライドして収納されている薬液を排出することのできるガスケット１２と、プランジャロッド１３と、プランジャロッド１３の後端側に設けられたプランジャフランジ部１４と、バレル１１の先端に装着される穿刺針１５とを備えている。バレル１１の後端部には、バレルフランジ部１１ａを有している。ガスケット１２はバレル１１とプランジャロッド１３との間を気密に封止するブチルゴム、または熱可塑性エラストマーなどのパッキンで構成される。このガスケット１２の後端側にプランジャロッド１３の先端の雄ネジ１３ａが螺合するためのネジ穴が設けられている。プランジャフランジ部１４は、外径が外筒３０の後端部の内径よりも小さく形成されており、かつ、エジェクタ４０の後端に当節可能に形成されている。使用前の状態において、穿刺針１５はキャップ６０によって保護されている。

【0059】

内筒２０は、例えば、樹脂材料から中空円筒状に形成され、先端側の内筒本体部２０ａと、後端側の内筒固定部２０ｂとからなる。先端側の内筒本体部２０ａは外筒３０の中径部３２の中に挿入可能に形成され、後端側の内筒固定部２０ｂは外筒３０の大径部３１の中に挿入可能に形成されている。

【0060】

この内筒２０の内筒本体部２０ａの後端側に近い位置に１対の内筒揺動片２１が設けられている。この１対の内筒揺動片２１は、内筒２０の側壁にＣ字型のスリットｓ（本実施形態では、「第１内筒溝部」に相当する。）を設けて形成されたものである。また、１対の内筒揺動片２１の各々は、先端にエジェクタ４０と当接する傾斜面２１ａを有する内筒解除部２１ｂが設けられ、外周面に外筒３０の内筒揺動片嵌合溝３２ｂに嵌合するための内筒係止部２１ｃが設けられている。内筒２０の１対の内筒揺動片２１は、内筒２０と外筒３０の固定を解除する機能を果たすために、内筒係止部２１ｃが係合位置と離脱位置との間で変位するように弾性変形可能に形成されている。

【0061】

また、内筒２０の後端側には、１対の内筒揺動片２１に対して９０度回転した位置に１対の戻り防止片２２が設けられている。この１対の戻り防止片２２の本体部２２ａは、内筒２０の内筒固定部２０ｂに連設されており、戻り防止端面２２ｆを有する先端部２２ｂは本体部２２ａより径方向に幅広く形成されている。先端部２２ｂの外周部は、外筒３０の開口部３１ｂに嵌入可能に形成されている。１対の戻り防止片２２は、外筒３０内に収納される収納位置と、外筒３０から出って広がった戻り防止位置との間に変位するように弾性変形可能である。即ち、この１対の戻り防止片２２は、内筒２０の後端部が外筒３０から出ると、内筒２０の表面から広がり、外筒３０の大径部３１の後端に当接することで、内筒２０が先端側へ戻ることを防止するように構成されている。内筒２０は、戻り防止片２２と重なる筒状の部分に切り欠きが設けられ、この切り欠きは戻り防止片２２が軸線に近づく方向に揺動した際に収納する収納穴部２７となる。なお、先端部２２ｂの戻り防止端面は、上下方向に沿ってみたときに後方に向かって凹状に形成されてもよい。

【0062】

また、内筒２０の先端側（即ち、戻り防止片２２と軸線方向同一直線上の位置に）に１対の抜け防止片２３が設けられており、この１対の抜け防止片２３の先端側の外周面に抜け防止突起２３ａが設けられている。この１対の抜け防止片２３は、内筒２０の後端部が外筒３０から出ると、抜け防止突起２３ａが外筒３０の１対のスリット３２ａに沿ってスライドし、外筒３０の大径部３１と中径部３２との間にある外筒係止部３４ａに掛り止め、内筒２０が外筒３０から抜けることを防止するように構成されている。

【0063】

また、内筒２０の後端側の内筒固定部２０ｂにバレル１１のバレルフランジ部１１ａを嵌合するための嵌合部２４と、エジェクタ４０の１対の解除突片４１を通過させるエジェクタ通過用溝部２５とが設けられている。さらに、内筒２０の内周面の後端側にばね部材５０の後端を規制する複数のばね当接リブ２６が設けられている。嵌合部２４によりバレル１１が内筒２０に固定されている。これにより、１対の内筒揺動片２１の係合が解除されると、バレル１１が内筒２０と一緒に移動するようになる。

【0064】

外筒３０は、例えば、樹脂材料から大径部３１と中径部３２と小径部３３とが一体に３段中空筒状に形成されている。外筒３０において、大径部３１は略楕円形筒状に形成され、この大径部３１の内側に内筒２０の後端及びエジェクタ４０が格納可能である。また、大径部３１の内周面の対向する位置に軸方向に延びる１対の溝３１ａが形成されている。さらに、大径部３１の先端側、かつ１対の溝３１ａに対して９０度回転した位置に１対の開口部３１ｂが設けられている。

【0065】

外筒３０において、中径部３２及び小径部３３は円形筒状に形成されている。中径部３２の内側に内筒２０の先端側の内筒本体部２０ａを挿入することができるように形成され、この中径部３２の側壁に対向する位置において軸方向に延びる１対のスリット３２ａが設けられている。この１対のスリット３２ａの先端が小径部３３に一部に延伸されている。また、中径部３２の後端側壁において、１対のスリット３２ａに対して９０度回転した位置に内筒２０の１対の内筒揺動片２１の内筒係止部２１ｃが嵌合するための１対の内筒揺動片嵌合溝３２ｂが設けられている。

【0066】

さらに、大径部３１と中径部３２との間に、使用者が掴むことができるようにフランジ部３４が設けられている。フランジ部３４は、使用者がプランジャフランジ部１４を親指で押圧操作する際に、例えば人差し指及び中指がかけられる部分である。

【0067】

このフランジ部３４は、概ね楕円形の円板状に形成された板状体の短径側、すなわち前記抜け防止片２３が形成されている側が直線状に切欠かれたように形成された平坦部３４ｄを有する長円形の外形をなしている。このように直線状の平坦部３４ｄを有することで、横置きされたエジェクタ４０が意図せずに転動することを防止することができる。

【0068】

なお、外筒３０は、例えば、光が透過可能な透明または半透明の材料から構成するようにしても良い。この場合、シリンジ１０内の薬液を外部から観察することが可能となっている。すなわち、本実施形態の安全装置付き注射器１は、使用時にシリンジ１０内の薬液の量及びガスケット１２の動作状態を使用者が目視可能となっている。

【0069】

エジェクタ４０は、例えば、樹脂材料から略楕円形短筒状に形成されている。このエジェクタ４０先端側に１対の解除突片４１が設けられている。この１対の解除突片４１は、先端にエジェクタ解除部４１ａを有し、注射打実施終了後、プランジャフランジ部１４によりエジェクタ４０が押されて、内筒２０の１対の内筒揺動片２１を押して撓ませるように構成されている。また、１対の解除突片４１の外周面にそれぞれ軸方向に延びるリブ４２が形成されている。このリブ４２は、外筒３０の大径部３１の内周面に形成された軸方向に延びる溝３１ａ（図６参照）に嵌合可能に形成され、エジェクタ４０の円周方向の位置を規定すると共に、エジェクタ４０の前後方向の摺動をガイドする。

【0070】

ばね部材５０は、例えば、ステンレス鋼等の適宜の金属からなる圧縮コイルばねである。このばね部材５０は、一端（先端）が外筒３０の中径部３２の先端部に当接し、他端（後端）が内筒２０の内周面の複数のばね当接リブ２６の先端に当接し、内筒２０を後方へ付勢すると共に、外筒３０を先端側に向けて付勢するように配置されている。また、ばね部材５０の内側にシリンジ１０が挿通されている。ばね部材５０は、初期状態において、外筒３０の中径部３２の先端部と内筒２０の内周面に形成され、基端側から先端側に延在し、中心軸方向に突出した複数の縦リブ（中心軸方向に平行）との間で圧縮されている。即ち、使用前の状態において、ばね部材５０がシリンジ１０の後端側に位置する。

【0071】

キャップ６０は、例えばポリプロピレン等の適宜の樹脂から構成され、使用前に穿刺針を保護する着脱可能な略円錐台状のキャップである。使用時、例えば、一方の手で外筒３０を保持しながら、他方の手を用いて引き抜くだけで、使用者によって注射前に取り外される。この安全装置付き注射器１の使用前は、図１に示されるように、キャップ６０がシリンジ１０に取り付けられている。使用時、キャップ６０を取り外す。

【0072】

以下、第１の実施形態の安全装置付き注射器１を組み立てる工程を、図５Ａ～図５Ｄを参照して説明する。

【0073】

安全装置付き注射器１を組み立てる工程では、まず、図５Ａに示すように、エジェクタ４０を内筒２０の後端から装着される。この場合、エジェクタ４０の１対の解除突片４１が、内筒２０のエジェクタ通過用溝部２５に挿通されて、１対の解除突片４１の内筒解除部２１ｂが内筒２０に係止するようになっている。次いでばね部材５０を内筒２０の先端側から内筒２０内に挿入する。次いで、図５Ｂに示すように、ばね部材５０が挿入された内筒２０を外筒３０の大径部３１側から中径部３２まで挿入すると共に、ばね部材５０を圧縮させ、１対の内筒揺動片２１の内筒解除部２１ｂを外筒３０の内筒揺動片嵌合溝３２ｂに嵌合し、内筒２０を外筒３０に固定する。この工程において、内筒２０を外筒３０の大径部３１に挿入する際に、１対の戻り防止片２２を中心側へ押さえながら大径部３１に挿入する。

【0074】

次いで、図５Ｃに示すように、薬液を充填したシリンジ１０を内筒２０の後端側から挿入し、バレル１１のバレルフランジ部１１ａを内筒２０後端の内筒係止部２１ｃに嵌合させる。この場合、穿刺針１５（キャップ６０）の先端部が外筒３０の小径部３３の先端から露出するようになっている。シリンジ１０中の薬液はガスケット１２により封止されている。この構造により安全装置の組立後に薬液を充填したシリンジを安全装置へ組み込むことができる。

【0075】

最
後に、図５Ｄに示すように、プランジャロッド１３をバレル１１の後端から挿入し、ガスケット１２に螺合させる。これにより、安全装置付き注射器１が組み立てられ、図１ａに示す状態になる。このように、安全装置付き注射器１を容易に組み立てることができる。

【0076】

次いで、第１の実施形態の安全装置付き注射器１の使用時の操作状態を、図６～図７を参照して説明する。

【0077】

図６は第１の実施形態の安全装置付き注射器１の操作において、プランジャフランジ部１４を押し、エジェクタ４０を作動させ、内筒の内筒揺動片２１の内筒解除部２１ｂが外れる状態を示す断面図であり、図７は第１の実施形態の安全装置付き注射器１の操作において、内筒２０及びシリンジ１０が後方へ移動した際のロック状態を示す断面斜視図である。ここで、図６は軸に沿った平面による縦断面であり、図７は軸に沿った平面による横断面である。

【0078】

第１の実施形態の安全装置付き注射器１の使用（注射）時、まず、キャップ６０を取り外す。次いで、使用者が所定の注射部位に穿刺した後、プランジャロッド１３の後端側に設けられたプランジャフランジ部１４を押すことで、シリンジ１０内の薬液が注入され注射が実施される。

【0079】

注射が完了する際に、図６に示すように、プランジャフランジ部１４がエジェクタ４０の後端に当接する状態になる。この状態でさらにプランジャフランジ部１４を押すと、エジェクタ４０が押されて、エジェクタ４０先端側の１対の解除突片４１が内筒２０の傾斜面２１ａを押すことにより、１対の内筒揺動片２１を内側に向かって半径方向に変形させ、即ち撓ませるようにすることで、１対の内筒揺動片２１の内筒解除部２１ｂが係合位置から離脱位置になる。

【0080】

これにより、内筒２０と外筒３０との固定が解除され、一体に装着されたシリンジ１０、内筒２０及びエジェクタ４０が、ばね部材５０の付勢力により外筒３０に対して後方へ移動することで、穿刺針１５が外筒３０の小径部３３内部に退避する状態になる（図１ｂ、図４Ａ及び図４Ｂを参照）。この場合、内筒２０の１対の戻り防止片２２は、外筒３０の大径部３１の内部に収納された状態（図３Ｂ参照）から外筒３０の後端から出て先端部が広がるようになり（図４ｂ参照）、内筒２０が先端側へ戻ろうとする場合、図７に示すように、内筒２０の１対の戻り防止片２２は、外筒３０の大径部３１の後端に当接し、内筒２０が先端側へ戻ることを防止するようになっている。同時に、内筒２０の１対の抜け防止片２３が外筒３０の大径部３１と中径部３２との間にある外筒係止部３４ａに掛り止め、内筒２０が外筒３０から抜けることを防止するようになっている。これにより、使用後の穿刺針１５による刺傷及び注射器１の再使用を確実に防止することが可能となる。

【0081】

次いで、第１の実施形態に係る安全装置付き注射器１及び注射器に装着される注射器用安全装置２の作用効果について説明する。

【0082】

第１の実施形態の安全装置付き注射器１では、注射打ち終了後、プランジャフランジ部１４でエジェクタ４０を押すことで、内筒２０の１対の内筒揺動片２１を内側へ撓ませ、内筒２０と外筒３０との固定を解除することができる。これにより、注射器１の使用後には穿刺針１５を充分に引込めることができ、穿刺針１５による刺傷及び注射器１の再使用を効果的に防止することができる。また、この安全装置２は、既成のシリンジ１０（注射器）において、安全装置を簡単に装着できる。また、安全装置２は内部構造を工夫することで一般的なものより全長が短くなり、廃棄量削減に繋がる。

【0083】

より具体的には、第１の実施形態において、プランジャを介してエジェクタ４０を前に押すと、エジェクタ４０の解除突片４１の先端（エジェクタ解除部４１ａ）により、内筒解除部２１ｂを軸線に向かって押し下げることができる。特に、エジェクタ解除部４１ａは、軸線に近づく方向に膨らんで前側に斜面を有する直角三角形状に形成され、内筒解除部２１ｂは、軸線から離れる方向に膨らんで後側に斜面を有する直角三角形状に形成されているため、エジェクタ４０を前方に向かって変位させた際に、この斜面同士により内筒解除部２１ｂを軸線に向かって滑らせながら押し下げることができる。

【0084】

ところで、内筒解除部２１ｂは上下方向に揺動可能な内筒揺動片２１に設けられているため、内筒解除部２１ｂを押し下げる際には、これが設けられている内筒揺動片２１ごと押し下げることになる。そして、この内筒揺動片２１には内筒係止部２１ｃも設けられているため、要するに、内筒解除部２１ｂを押し下げるということは、内筒揺動片２１（内筒解除部２１ｂ及び内筒係止部２１ｃ付き）をまとめて一体的に押し下げることになる。この結果、内筒係止部２１ｃは上述した外筒係止部３４ａから離間されるので、係止手段による係止が解除される。

【0085】

よって、第１の実施形態の安全装置付き注射器１によれば、エジェクタ４０によって係止の解除が直接的に行われるため、係止手段の係止をより確実に解除することができる。

【0086】

また、第１の実施形態において、内筒２０の後端で拡径する内筒固定部は、前後方向に沿って凹ませることでエジェクタ通過用溝部２５が設けてあり、かつ、エジェクタ４０に設けられた解除突片４１は、薄板状であり、このエジェクタ通過用溝部２５をすり抜けるように構成されている。

【0087】

また、解除突片４１の先端に設けられたエジェクタ解除部４１ａは、軸線に近づく方向に膨らんでいるが、この解除突片４１は上下方向に揺動可能に構成されているため、内筒２０のエジェクタ通過用溝部２５に差し込む際に上下方向に揺動することにより、エジェクタ解除部４１ａを内筒２０のエジェクタ通過用溝部２５を乗り越えさせて内筒解除部２１ｂの後側に配置することができる。

【0088】

よって、第１の実施形態の安全装置付き注射器１では、エジェクタ４０を内筒固定部２０ｂより大径に設計する必要性はないため、このエジェクタ４０を外嵌する外筒３０も大径に設計する必要性はないため、太さを抑えて小型化することができる。

【0089】

また、第１の実施形態において、内筒２０と外筒３０との固定が解除され、内筒２０の後端部が外筒３０から出ると、内筒２０の戻り防止片２２が広がり、内筒２０が先端側へ戻ることを防止することができ、注射器１の再使用を確実に防止することができる。特に、戻り防止片２２には、外筒３０の後端と係合される戻り防止端面２２ｆが形成されているため、穿刺針１５を再度使用位置に戻すために内筒２０を外筒３０に対して前進させようとしても、外筒３０の後端に内筒２０の戻り防止端面２２ｆが係合されるため、内筒２０が先端側へ戻ることを防止することができ、注射器１の再使用を確実に防止することができる。

【0090】

また、第１の実施形態において、戻り防止片２２は、使用位置においては、弾性変形させて軸線に近づく方向に押し下げることで外筒３０に収納することができる。具体的には、戻り防止片２２は、内筒固定部２０ｂの先端面から前方に向かって薄板状に延設されているため、内筒２０の径は太くする必要性がそもそもないうえに、内筒２０には、筒状の部分のうち戻り防止片２２と重なるところを切り欠くことで戻り防止片２２を収納する収納穴部２７が設けられており、戻り防止片２２を軸線から離れる方向に向かって大きく延ばすことなく揺動するためのクリアランスを確保されている。

【0091】

よって、第１の実施形態の安全装置付き注射器１では、左右方向に広がる戻り防止片２２を設けているが、外筒３０を太くする必要性は生じないため、太さを抑えて小型化することができる。

【0092】

また、第１の実施形態において、使用後（注射打ち終了状態）、内筒２０と外筒３０との固定が解除され、内筒２０が外筒３０に対して後方へ移動した際に、内筒２０の抜け防止片２３が外筒３０に引っかかり、内筒２０が外筒３０から抜け出ることを防止することができる。保護形状を確実に維持できる。

【0093】

第１の実施形態において、プランジャフランジ部１４でエジェクタ４０を押すことで、内筒２０と外筒３０との固定を解除するため、プランジャフランジ部１４の形状への制限が少なく、比較的に自由に設計することができる。即ち、プランジャフランジ部１４の外径は、エジェクタ４０の内径以上外径未満の部分を含めば足りる。なお、第１の実施形態では、プランジャフランジ部１４の先端側の外径は、エジェクタ４０の内径とほぼ同じかそれより少し小さい寸法あり、プランジャフランジ部１４の後端側の外径は、エジェクタ４０の内径以上外径未満の寸法であるため、注射器１の使用後に、プランジャフランジ部１４はエジェクタ４０に嵌合し一体化される。

【0094】

また、透明または半透明の材料から構成する場合、使用前の状態において、ばね部材５０がシリンジ１０の後端側に位置するため、シリンジ１０を外筒３０に組み込んだ後でも外筒３０の外側から薬液を確認することができる。

【0095】

さらに、第１の実施形態において、キャップ６０の基端側は外筒３０の先端に入り込み装着されているため、使用（注射）時、キャップ６０を外す際に、外筒３０の先端がガイド部として機能するため、キャップ６０を真直ぐに引き抜くことができ、穿刺針１５が曲がるリスクを減らすことができる。

【0096】

よって、第１の実施形態の安全装置付き注射器１によれば、安全装置付き注射器１は、注射器１の使用後には穿刺針１５を充分に引込めることができ、穿刺針１５による刺傷及び注射器１の再使用を確実に防止することができる。また、既成のシリンジ１０に安全装置を簡単に装着できる。

【0097】

以下、本発明の第２の実施形態に係る安全装置付き注射器１Ａ及び注射器に装着される注射器用安全装置２Ａについて説明する。

【0098】

上述した第１の実施形態に係る安全装置付き注射器１において、１対の戻り防止片２２は、本体部２２ａが内筒２０の内筒固定部２０ｂに連設されており、先端部２２ｂが本体部２２ａより径方向に幅広く形成されている例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、１対の戻り防止片２２を下記の第２の実施形態に示すような構成にしてもよい。

【0099】

図８から図１２は本発明の第２の実施形態の安全装置付き注射器１Ａの構成を示している。図８は安全装置付き注射器１Ａの構成を概略的に示す分解斜視図である。図９Ａは安全装置付き注射器１Ａの使用前の状態における上下方向の縦断面を示しており、図９Ａは安全装置付き注射器１Ａの使用前の状態における左右方向の横断面を示している。図１０Ａは安全装置付き注射器１Ａの使用後の状態における上下方向の縦断面を示しており、図１０Ｂは安全装置付き注射器１Ａの使用後の状態における左右方向の横断面を示している。図１１は安全装置付き注射器１Ａの戻り防止片２２Ａが収納位置にある状態を示す局部拡大断面図であり、図１２は安全装置付き注射器１Ａの戻り防止片２２Ａが戻り防止位置にある状態を示す局部拡大断面図である。ここで、図９Ａ及び図１０Ａは軸に沿った平面（上下方向平面）による縦断面であり、図９Ａ、図１０Ａ、図１１及び図１２は軸に沿った平面（左右方向平面）による横断面である。

【0100】

安全装置付き注射器１Ａは、図８～図１２に示すように、シリンジ１０と、内筒２０Ａと、外筒３０Ａと、エジェクタ４０Ａと、ばね部材５０と、キャップ６０とを備えている。この安全装置付き注射器１Ａにおいて、１対の戻り防止片２２Ａ及び外筒３０Ａとエジェクタ４０Ａとの嵌合部が異なる以外は、上述した実施形態に係る安全装置付き注射器１とほぼ同様な構成を有しているため、その詳細な説明を省略する。本実施形態において、注射器用安全装置２Ａは、内筒２０Ａと、外筒３０Ａと、エジェクタ４０Ａと、ばね部材５０とから構成されている。

【0101】

内筒２０Ａは、例えば、樹脂材料から中空円筒状に形成され、先端側の内筒本体部２０ａと、後端側の内筒固定部２０ｂとからなる。先端側の内筒本体部２０ａは外筒３０Ａの中径部３２Ａ
の中に挿入可能に形成され、後端側の内筒固定部２０ｂは外筒３０Ａの大径部３１Ａの中に挿入可能に形成されている。

【0102】

この内筒２０Ａの内筒本体部２０ａの後端側に近い位置に１対の内筒揺動片２１Ａが設けられている。この１対の内筒揺動片２１Ａは、内筒２０Ａの側壁にＣ字状のスリットｓ（本実施形態では、「第１内筒溝部」に相当する。）を設けて形成されたものである。また、１対の内筒揺動片２１Ａの各々は、先端にエジェクタ４０Ａと当接する傾斜面２１ａを有する内筒解除部２１ｂが設けられ、外周面に外筒３０Ａの内筒揺動片嵌合溝３２ｂに嵌合するための内筒係止部２１ｃが設けられている。また、根元の外周面に動作する際に撓み変形するための薄肉部２１ｄが設けられている。内筒２０Ａの１対の内筒揺動片２１Ａは、内筒２０Ａと外筒３０Ａの固定を解除する機能を果たすために、内筒係止部２１ｃが係合位置と離脱位置との間で変位するように弾性変形可能に形成されている。なお、内筒解除部２１ｂの中央部には、樹脂成形品ヒケ防止用の肉抜部２１ｅが設けられている。

【0103】

また、内筒２０Ａの内筒本体部２０ａの後端側には、１対の内筒揺動片２１Ａに対して９０度回転した位置に１対の戻り防止片２２Ａが設けられている。この１対の戻り防止片２２Ａの本体部２２Ｂは、支持部２２ｃが内筒２０Ａの後端側壁の外周面に形成された揺動接続片２２ｄの上部に連設され、先端部２２ｅは支持部２２ｃより径方向に幅広く形成されている。揺動接続片２２ｄと内筒２０Ａの内筒固定部２０ｂとの間に隙間ｇが設けられているため、揺動接続片２２ｄが先端側へ撓み変形でき、１対の戻り防止片２２Ａの先端部２２ｅが径方向に変位可能となり、外筒３０Ａ内に収納できる。また、支持部２２ｃは、内筒２０Ａの内筒固定部２０ｂに当接するように形成されている。先端部２２ｅの先端面に外筒３０Ａの大径部３１Ａの後端に嵌合する戻り防止端面２２ｆが形成されている。この戻り防止端面２２ｆを設けることで、外筒３０Ａの縁が戻り防止片２２Ａの戻り防止端面２２ｆに誘い込まれ、外筒３０Ａの縁を捉えやすくなり、容易に係止することができる。また、１対の戻り防止片２２Ａの先端部２２ｅの外周部が外筒３０Ａの開口部３１ｂに嵌入可能に形成されている。１対の戻り防止片２２Ａは、径方向の撓みにより、外筒３０Ａ内に収納される収納位置と、外筒３０Ａから出って広がった戻り防止位置との間に変位するように弾性変形可能である。即ち、この１対の戻り防止片２２Ａは、収納位置において、外周面２２ｇが外筒３０Ａの大径部３１Ａにあたらないようになっており、内筒２０Ａの支持部２２ｃが外筒３０Ａから出ると、収納状態から径方向に広がり、戻り防止端面２２ｆが外筒３０Ａの大径部３１Ａの後端に当接し、嵌合することで、内筒２０Ａが先端側へ戻ることを防止するように構成されている。内筒２０Ａは、戻り防止片２２Ａと重なる筒状の部分に切り欠きが設けられ、この切り欠きは戻り防止片２２Ａが軸線に近づく方向に揺動した際に収納する収納穴部２７Ａとなる。なお、戻り防止片２２Ａの本体部２２Ｂの両側面には、樹脂成形品ヒケ防止用の肉抜部２２ｈが設けられている。

【0104】

また、内筒２０Ａの先端側（即ち、戻り防止片２２Ａから軸線方向に離れた位置に）に１対の抜け防止片２３Ａが設けられており、この１対の抜け防止片２３Ａの先端側の外周面に抜け防止突起２３ａが設けられている。この１対の抜け防止片２３Ａは、内筒２０Ａの支持部２２ｃが外筒３０Ａから出ると、抜け防止突起２３ａが外筒３０Ａの１対のスリット３２ａに沿ってスライドし、外筒３０Ａの大径部３１Ａと中径部３２Ａとの間にある外筒係止部３４ａに掛り止め、内筒２０Ａが外筒３０Ａから抜けることを防止するように構成されている。

【0105】

また、内筒２０Ａの後端側にバレル１１のバレルフランジ部１１Ａを嵌合するための嵌合部２４Ａと、エジェクタ４０Ａの１対の解除突片４１Ａを通過させるエジェクタ通過用溝部２５Ａとが設けられている。さらに、内筒２０Ａの内周面の後端側にばね部材５０の後端を規制する複数のリブ２６Ａが設けられている。嵌合部２４Ａによりバレル１１が内筒２０Ａに固定されている。これにより、１対の内筒揺動片２１Ａの係合が解除されると、バレル１１が内筒２０Ａと一緒に移動するようになる。

【0106】

外筒３０Ａは、例えば、樹脂材料から大径部３１Ａと中径部３２Ａと小径部３３Ａとが一体に３段中空筒状に形成されている。外筒３０Ａにおいて、大径部３１Ａは略楕円形筒状に形成され、この大径部３１Ａの内側に内筒２０Ａの後端及びエジェクタ４０Ａが格納可能である。大径部３１Ａの後端面に斜面３１ｃが形成されている。また、大径部３１Ａの内周面の対向する位置に軸方向に延びる１対のリブ３１ｄが形成されている。さらに、大径部３１Ａの先端側、かつ１対のリブ３１ｄに対して９０度回転した位置に１対の開口部３１ｂが設けられている。

【0107】

外筒３０Ａにおいて、中径部３２Ａ及び小径部３３Ａはそれぞれ円筒状に形成されている。中径部３２Ａの内側に内筒２０Ａの先端側の内筒本体部２０ａを挿入することができるように形成され、この中径部３２Ａの側壁に対向する位置において軸方向に延びる１対のスリット３２ａが設けられている。この１対のスリット３２ａの先端が小径部３３Ａに一部に延伸されている。また、中径部３２Ａの後端側壁において、１対のスリット３２ａに対して９０度回転した位置に内筒２０Ａの１対の内筒揺動片２１Ａの内筒解除部２１ｂが嵌合するための１対の内筒揺動片嵌合溝３２ｂが設けられている。さらに、大径部３１Ａと中径部３２Ａとの間に、使用者が掴むことができるようにフランジ部３４Ａが設けられている。フランジ部３４Ａは、使用者がプランジャフランジ部１４を親指で押圧操作する際に、例えば人差し指及び中指がかけられる部分である。なお、外筒３０Ａの中径部３２Ａと小径部３３Ａとの連結部の内側に、小径部３３Ａと同様の内径を有する略リング状の突起３２ｃが設けられている。これにより、ばね部材５０の位置ずれがなく安定して軸中央に保持される。

【0108】

エジェクタ４０Ａは、例えば、樹脂材料から略楕円形短筒状に形成されている。このエジェクタ４０Ａの先端側に１対の解除突片４１Ａが設けられている。この１対の解除突片４１Ａは、注射実施終了後、プランジャフランジ部１４によりエジェクタ４０Ａが押されて、内筒２０Ａの１対の内筒揺動片２１Ａを押して撓ませるように構成されている。また、１対の解除突片４１Ａの外周面にそれぞれ軸方向に延びる溝４２Ａが形成されている。この１対の溝４２Ａは、外筒３０Ａの大径部３１Ａの内周面に形成された軸方向に延びる１対のリブ３１ｄに嵌合可能に形成され、エジェクタ４０Ａの円周方向の位置を規定すると共に、エジェクタ４０Ａの摺動をガイドする。なお、エジェクタ４０Ａの後端縁部には、１対の切り欠き部４３Ａが設けられている。

【0109】

第２の実施形態の安全装置付き注射器１Ａを組み立てる工程は、上述した第１の実施形態の安全装置付き注射器１と同様な手順を有しているため、その詳細な説明を省略する。

【0110】

次いで、第２の実施形態の安全装置付き注射器１Ａの使用時の操作状態を、図９Ａ～図１２を参照して説明する。

【0111】

安全装置付き注射器１Ａの使用（注射）時、まず、キャップ６０を取り外す。次いで、上述した第１の実施形態と同様に、使用者が所定の注射部位に穿刺した後、プランジャロッド１３の後端側に設けられたプランジャフランジ部１４を押すことで、シリンジ１０内の薬液が注入され注射が実施される。注射が完了する際にプランジャフランジ部１４がエジェクタ４０Ａの後端に当接する状態になる。

【0112】

この状態でさらにプランジャフランジ部１４を押すと、エジェクタ４０Ａが押されて、エジェクタ４０Ａ先端側の１対の解除突片４１Ａが内筒２０Ａの１対の内筒揺動片２１Ａを押して撓ませるようになり、１対の内筒揺動片２１Ａが係合位置と離脱位置になる（上述した第１の実施形態と同様、図６参照）。

【0113】

これにより、内筒２０Ａと外筒３０Ａとの固定が解除され、一体に固定されたシリンジ１０、内筒２０Ａ及びエジェクタ４０Ａが、外筒３０Ａに対して後方へ移動し、穿刺針１５が外筒３０Ａの小径部３３Ａ内部に退避する状態になる（図１０Ａ及び図１０Ｂ参照）。

【0114】

この場合、内筒２０Ａの１対の戻り防止片２２Ａは、外筒３０Ａの大径部３１Ａの内部に収納された状態（図１１参照）から外筒３０Ａの後端から出て広がるようになる（図１０Ｂ参照）、同時に、内筒２０Ａの１対の抜け防止片２３Ａ外筒３０Ａの大径部３１Ａと中径部３２Ａとの間にある外筒係止部３４ａに掛り止め、内筒２０Ａが外筒３０Ａから抜けることを防止するようになっている。

【0115】

また、内筒２０Ａが先端側へ戻ろうとする場合、図１２に示すように、１対の戻り防止片２２Ａの戻り防止端面２２ｆが外筒３０Ａの大径部３１Ａの後端面の斜面３１ｃに当接し、内筒２０Ａが先端側へ戻ることを防止するようになる。これにより、穿刺針１５による刺傷及び注射器１Ａの再使用を確実に防止することができる。

【0116】

この第２の実施形態の安全装置付き注射器１Ａ及び注射器用安全装置２Ａは、上述した第１の実施形態の安全装置付き注射器１及び注射器用安全装置２と同様な作用効果を得ることができる。

【0117】

また、第２の実施形態では、内筒２０Ａに先端面に後方に向かって凹状な戻り防止端面２２ｆを有する１対の戻り防止片２２Ａを設けることで、容易に係止することができ、内筒２０Ａが先端側へ戻ることを確実に防止することができる。なお、この凹凸の設計変更は、前後方向に向かって行ったものであるため、内筒２０Ａ及び外筒３０Ａの径を太くする必要性は生じない。

【0118】

また、第２の実施形態では、１対の戻り防止片２２Ａは、揺動接続片２２ｄの上部に本体部２２Ｂが連設され、かつ支持部２２ｃが内筒２０Ａの内筒固定部２０ｂに当接するように形成されている。よって、使用後に内筒２０Ａを外筒３０Ａに対して前進さようとしても、外筒３０Ａの後端に衝突した本体部２２Ｂは後方に変位しないため、それ以上の前進が阻害される。

【0119】

同様に、第２の実施形態では、本体部２２Ｂが強度の高い直方体形状に形成されているため、外筒３０Ａの後端と内筒固定部２０ｂの先端と間に挟まれて前後方向に潰す荷重がかかっても、意図しない変形が生じにくい。

【0120】

よって、第２の実施形態の安全装置付き注射器１Ａによれば、一度使用した注射器１Ａの再使用をさらに防ぐと共に、使用後の穿刺針１５に誤って接触することを防ぐことができる。

【0121】

より具体的には、第２の実施形態では、本体部２２Ｂは、直方体形状から肉抜きされているため、ヒケやボイドの発生を防止することができ、かつ、前側に戻り防止端面２２ｆを含んで上下方向及び左右方向に広がる板状部及び後側に支持部を含んで上下方向及び左右方向に広がる板状部が残り、さらに、両者をつなぐ２つの板状部として、前後方向及び上下方向に広がる板状部並びに前後方向及び左右方向に広がる板状部が交わって延びるように残るように切り欠かれているため、強度の低下は最低限に抑えられている。

【0122】

さらに、安全装置付き注射器１Ａにおいて、１対の戻り防止片２２Ａは、収納位置において、外周面２２ｇが外筒３０Ａの大径部３１Ａの壁に当たらないように構成されているため、収納状態での経年変化による不具合を防止することができる。

【0123】

以下、本発明の第３の実施形態に係る安全装置付き注射器１、注射器に装着される注射器用安全装置２、安全装置付き注射器１Ａ及び注射器に装着される注射器用安全装置２Ａ（以下、これらを代表して安全装置付き注射器１のみ表記する）に装着されるフィンガークリップ７０ついて説明する。

【0124】

図１３から図１７は本実施形態のフィンガークリップ７０の構成を示している。図１３はフィンガークリップ７０の構成を示す正面図、図１４はフィンガークリップ７０構成を示す平
面図、図１５は図１４のＣ－Ｃ断面矢視図、図１６は安全装置付き注射器１にフィンガークリップ７０を装着する様子を示す正面図、図１７はフィンガークリップ７０が装着された状態の安全装置付き注射器１を示した後方視斜視図である。

【0125】

本実施形態の説明において、図１３における上下方向をフィンガークリップ７０の上方下方と規定する。上方側は、プランジャロッド１３およびプランジャフランジ部１４が配置される側である近位端側であり、下方側は、穿刺針１５、キャップ６０が配置される側である遠位端側である。

【0126】

図１３，図１４に示されるように、本実施形態のフィンガークリップ７０は、正面視弓型、平面視楕円に近似される外形をなし、中央に安全装置付き注射器１が挿通される貫通孔が形成されている。

【0127】

フィンガークリップ７０は、平面視楕円の長径側の両端に翼状に張り出した指フランジと、貫通孔を有する中央の胴部から形成されている。指フランジと胴部にはそれぞれ、底面を形成する指フランジ底部７４と胴底部７６が形成されている。指フランジ底部７４と胴底部７６により形成される外側底面には、フィンガークリップ７０使用時に使用者の指、例えば人差し指及び中指がかけられる部位となる。

【0128】

一対の指フランジ底部７４には複数、例えば３つの横リブ７４ａがフィンガークリップ７０の短手方向にそれぞれ形成され、使用時に力を加えても指が滑り難いようになっている。

【0129】

胴部貫通孔周囲には装着円筒部７２が胴底部７６下面から下方に延在するように形成されている。装着円筒部７２の内周面７２１は安全装置付き注射器１に装着した際、その外筒３０の中径部３２外周面と接する部位となる。図１４、図１５に示されるように装着円筒部７２の内周面７２１には抜け防止突起２３ａとの干渉を避けるための、一対の逃げ凹部７２２が形成されている。

【0130】

胴部には胴底部７６から上方に延在するように胴部補強リブ７５が立設されている。胴部補強リブ７５は胴部側面を形成する直線状の壁リブ７５ｂと装着円筒部７２の外周を囲むように立設された環状リブ７５ａとから構成されている。これら壁リブ７５ｂおよび環状リブ７５ａにより形成された胴部内部空間７７には、安全装置付き注射器１のフランジ部３４が収納・装着される。

【0131】

このため、壁リブ７５ｂおよび環状リブ７５ａの内周面で縁取られる長円の大きさはフランジ部３４の外周に則しているが、環状リブ７５ａの内周面は僅かに大きく、壁リブ７５ｂは後述するガイドリブ７５２の大きさ（高さ）分フランジ部３４から離間した位置にある。

【0132】

胴底部７６には、環状リブ７５ａから貫通孔周囲の装着円筒部７２に渡って平面視Ｌ字状の底部補強リブ７３ｃが形成されている。底部補強リブ７３ｃの一端は壁リブ７５ｂと環状リブ７５ａの接合部に接続し、他端は環状リブ７５ａの中央より一端が接続している壁リブ７５ｂ側にずれて接続している。

【0133】

環状リブ７５ａ内周面には、収納した安全装置付き注射器１のフランジ部３４の基端側面に接して固定するためのリブ嵌合凸部７５１が、左右環状リブ７５ａに各１対上下に分かれて形成されている。壁リブ７５ｂにはフランジ部３４の平坦部３４ｄをガイドする、ガイドリブ７５２が、各壁リブ７５ｂに各1対上下方向に形成されている。

【0134】

胴部内部空間７７には、安全装置付き注射器１のフランジ部３４が収納・装着されるが、フランジ部３４の下面（先端側面）は底部補強リブ７３ｃに当接し、上面（基端側面）の外周部は嵌合凸部７５１の下部に位置する。つまり、フランジ部３４は底部補強リブ７３ｃと嵌合凸部７５１の間に挟持される。

【0135】

環状リブ７５ａの底部補強リブ７３ｃが接合している箇所から左右端方向に向けて各一対のフランジ補強リブ７３ｂが指フランジの外形に沿って間隔を狭めながら端部に向けて延在している。

【0136】

指フランジの外周には、指フランジリブ７３ａが形成され、壁リブ７５ｂと接続している。フランジ補強リブ７３ｂの中間位置からは僅かに間隔を空けてＶ字状にフランジ補強リブ７３ｂが指フランジリブ７３ａまで延在し、接続している。

【0137】

フィンガークリップ７０の上部、基端側は上記各リブにより構成されているため、肉厚による生じる引けが予防される。

【0138】

次に、本実施形態のフィンガークリップ７０を安全装置付き注射器１に装着する方法について説明する。

【0139】

先ず、図１５に示すように、安全装置付き注射器１の先端側にフィンガークリップ７０の上方基端側が対向するように配置する。

【0140】

次に、フィンガークリップ７０を安全装置付き注射器１の基端側に向けて外筒３０上を摺動させるように移動する。このとき、外筒３０は胴部内部空間７７を介して胴部貫通孔内に侵入して行く。

【0141】

さらに、フィンガークリップ７０を基端側に移動させると、胴部内部空間７７にフランジ３４が侵入し、嵌合凸部７５１を乗り越えて底部補強リブ７３ｃに当接する。

【0142】

これにより、フィンガークリップ７０が安全装置付き注射器１に固定され、図１６に示す状態になる。

【0143】

次に、本実施形態のフィンガークリップ７０の変形例について説明する。

【0144】

上記実施形態では、嵌合凸部７５１を４つ均等に配置した例を示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、２つ以上であれば任意の複数個形成してもよく、環状に連続していてもよい。

【0145】

上記実施形態では、ガイドリブ７５２を４か所形成した例を示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、２箇所以上であれば任意の複数個形成してもよい。

【0146】

なお、上述した実施形態において、外筒３０及び３０Ａにおいて、大径部３１及び３１Ａは略楕円形筒状に形成されている例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、円筒状に形成されてもよい。

【0147】

本発明は、上記の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態を技術的範囲に含むものである。

【符号の説明】

【0148】

１、１Ａ 安全装置付き注射器２、２Ａ 注射器用安全装置１０ シリンジ１１ バレル１２ ガスケット１３ プランジャロッド１４ プランジャフランジ部１５ 穿刺針２０、２０Ａ 内筒２０ａ 内筒本体部２０ｂ 内筒固定部２１、２１Ａ 内筒揺動片２１ａ 傾斜面２１ｂ 内筒解除部２１ｃ 内筒係止部２１ｄ 薄肉部２１ｅ、２２ｈ 肉抜部２２、２２Ａ 戻り防止片２２Ｂ 本体部２２ａ 本体部２２ｂ 先端部２２ｃ 支持部２２ｄ 揺動接続片２２ｅ 先端部２２ｆ 戻り防止端面２２ｇ 外周面２３、２３Ａ 抜け防止片２３ａ 抜け防止突起２４、２４Ａ 嵌合部２５、２５Ａ エジェクタ通過用溝部２６、２６Ａ ばね当接リブ２７、２７Ａ 収納穴部３０、３０Ａ 外筒３１、３１Ａ 大径部３１ａ 溝３１ｂ 開口部３１ｃ 斜面３１ｄ リブ３２、３２Ａ 中径部３２ａ スリット３２ｂ 内筒揺動片嵌合溝３２ｃ 突起３３、３３Ａ 小径部３４、３４Ａ フランジ部３４ａ 外筒係止部３４ｂ 段差部４０、４０Ａ エジェクタ４１、４１Ａ 解除突片４１ａ エジェクタ解除部４２ リブ４２ａ 溝４３ａ 切り欠き部５０ ばね部材６０ キャップ７０ フィンガークリップｇ 隙間ｓ スリット

【図1A】

【図1B】

【図2】

【図3A】

【図3B】

【図4A】

【図4B】

【図5A】

【図5B】

【図5C】

【図5D】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9A】

【図9B】

【図10A】

【図10B】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】