(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003449
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】タイヤトレッド
(51)【国際特許分類】
B60C 11/00 20060101AFI20241226BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20241226BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20241226BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
B60C11/00 D
C08K3/013
C08K3/04
C08L21/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024170843
(22)【出願日】2024-09-30
(62)【分割の表示】P 2021572284の分割
【原出願日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】62/857,779
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521529592
【氏名又は名称】ビヨンド ロータス リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】チャン ピン
(72)【発明者】
【氏名】ダヴァル プラチ エイ
(72)【発明者】
【氏名】ニコバ アニ ティー
(72)【発明者】
【氏名】ション ジンチェン
(57)【要約】
【課題】本発明は、優れた材料強度及び充分に低い転がり抵抗の両方、並びに燃費目標を満たすための低い発熱を有するタイヤを好ましくは提供する。
【解決手段】タイヤトレッド及びタイヤが提供され、より詳細には、限定されないが、弾性率比、パーセント破断伸び、及び/又は損失正接を含めた向上した複合体材料特性の範囲内でトレッド又は他のエラストマー性成分を有するタイヤであって、上記タイヤ、トレッド又は他のエラストマー性成分が、マクロ分散によって示され得る、よく分散された補強フィラーによって特徴付けられる複合体を含んでいる、上記タイヤが提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のエラストマー及び40~80phrの少なくとも1種のフィラーを含むタイヤトレッドであって、前記フィラーが、少なくとも40phrの少なくとも1種のカーボンブラックを含み、前記タイヤトレッドが:
a.弾性率比>5.60;
b.パーセント破断伸び>470、並びに
c.60℃(333.15K)における損失正接≧0.10及び<0.25
を有する、前記タイヤトレッド。
【請求項2】
前記弾性率比、前記パーセント破断伸び、及び前記損失正接の値が、50phrで前記カーボンブラックを有する前記タイヤトレッドに基づいている、請求項1に記載のタイヤトレッド。
【請求項3】
前記弾性率比が、5.60~6.30である、請求項1に記載のタイヤトレッド。
【請求項4】
前記弾性率比が、5.70~6.30である、請求項1に記載のタイヤトレッド。
【請求項5】
前記パーセント破断伸びが、475~550である、請求項1に記載のタイヤトレッド。
【請求項6】
前記パーセント破断伸びが、480~525である、請求項1に記載のタイヤトレッド。
【請求項7】
前記パーセント破断伸びが、480~500である、請求項1に記載のタイヤトレッド。
【請求項8】
前記損失正接が、0.10~0.22である、請求項1に記載のタイヤトレッド。
【請求項9】
前記損失正接が、0.12~0.20である、請求項1に記載のタイヤトレッド。
【請求項10】
前記エラストマーが、天然ゴム、官能化された天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、官能化されたスチレン-ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、官能化されたポリブタジエンゴム、及びこれらのブレンドから選択されるエラストマーのブレンドを含む、請求項1に記載のタイヤトレッド。
【請求項11】
少なくとも1種エラストマー及び20~80phrの少なくとも1種のフィラーを含むタイヤトレッドであって、前記フィラーが、40phr以下の少なくとも1種のカーボンブラックを含み、前記トレッドが:
a)弾性率比≧5.43;
b)パーセント破断伸び>400、並びに
c)60℃(333.15K)における損失正接>0.09及び<0.15
を有する、前記タイヤトレッド。
【請求項12】
前記弾性率比、前記パーセント破断伸び、及び前記損失正接の値が、40phrで前記カーボンブラックを有する前記タイヤトレッドに基づいている、請求項11に記載のタイヤトレッド。
【請求項13】
前記弾性率比が、5.43~6.25である、請求項11に記載のタイヤトレッド。
【請求項14】
前記弾性率比が、5.43~6.20である、請求項11に記載のタイヤトレッド。
【請求項15】
前記パーセント破断伸びが、405~550である、請求項11に記載のタイヤトレッド。
【請求項16】
前記パーセント破断伸びが、425~525である、請求項11に記載のタイヤトレッド。
【請求項17】
前記パーセント破断伸びが、425~500である、請求項11に記載のタイヤトレッド。
【請求項18】
前記損失正接が、0.095~0.14である、請求項11に記載のタイヤトレッド。
【請求項19】
前記損失正接が、0.10~0.12である、請求項11に記載のタイヤトレッド。
【請求項20】
前記タイヤトレッドが、式:0.01<V<0.15によって、伝送モードで光学顕微鏡によって求められる、10μm超の未分散カーボンブラック粒子の面積百分率である、マクロ分散値Vによって特徴付けられる、請求項1~19のいずれか一項に記載のタイヤトレッド。
【請求項21】
少なくとも1種エラストマー及び20~80phrの少なくとも1種のフィラーを含むタイヤトレッドであって、前記フィラーが、少なくとも1種のカーボンブラックを含み、前記トレッドが、式0.01<V<0.15によって、伝送モードで光学顕微鏡によって求められる、10μm超の未分散カーボンブラック粒子の面積百分率である、マクロ分散値Vによって特徴付けられる、前記タイヤトレッド。
【請求項22】
前記Vが、50phrで前記カーボンブラックを有する前記タイヤトレッドに基づいている、請求項21に記載のタイヤトレッド。
【請求項23】
少なくとも1種エラストマー及び20~80phrの少なくとも1種のフィラーを含むタイヤトレッドであって、前記フィラーが、40phr以下の少なくとも1種のカーボンブラックを含み、前記トレッドが、伝送モードで光学顕微鏡によって求められる、10μm超の未分散カーボンブラック粒子の面積百分率である、マクロ分散値Vが、0.01超であることによって特徴付けられ、前記トレッドが:
a)弾性率比≧5.43;又は
b)パーセント破断伸び>400、又は
c)60℃(333.15K)における損失正接<0.25
のうちの少なくとも1つを有する、前記タイヤトレッド。
【請求項24】
前記弾性率比、前記パーセント破断伸び、及び前記損失正接の値が、40phrで前記カーボンブラックを有する前記タイヤトレッドに基づいている、請求項23に記載のタイヤトレッド。
【請求項25】
前記弾性率比が、5.43~6.25である、請求項23に記載のタイヤトレッド。
【請求項26】
前記弾性率比が、5.43~6.2である、請求項23に記載のタイヤトレッド。
【請求項27】
前記パーセント破断伸びが、405~550である、請求項23に記載のタイヤトレッド。
【請求項28】
前記パーセント破断伸びが、425~525である、請求項23に記載のタイヤトレッド。
【請求項29】
前記パーセント破断伸びが、425~500である、請求項23に記載のタイヤトレッド。
【請求項30】
前記損失正接が、0.09~0.22である、請求項23に記載のタイヤトレッド。
【請求項31】
前記損失正接が、0.10~0.20である、請求項23に記載のタイヤトレッド。
【請求項32】
前記フィラーが、炭素質材料、カーボンブラック、シリカ、ナノセルロース、リグニン、クレイ、ナノクレイ、金属酸化物、金属炭酸塩、熱分解炭素、グラフェン、酸化グラフェン、還元型酸化グラフェン、カーボンナノチューブ、単層カーボンナノチューブ、複層カーボンナノチューブ、又はこれらの組み合わせ、並びにこれらのコーティング及び処理された材料から選択される少なくとも1種の材料を含む、請求項1~31のいずれか一項に記載のタイヤトレッド。
【請求項33】
前記フィラーが、カーボンブラック、シリカ、並びにこれらのコーティング及び処理された材料から選択される少なくとも1種の材料を含む、請求項1~31のいずれか一項に記載のタイヤトレッド。
【請求項34】
前記フィラーが、2.7:1超のカーボンブラック対シリカ重量比でカーボンブラック及びシリカを含む、請求項1~31のいずれか一項に記載のタイヤトレッド。
【請求項35】
前記エラストマーが、天然ゴム、官能化された天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、官能化されたスチレン-ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、官能化されたポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、エチレン-プロピレンゴム、イソブチレン系エラストマー、ポリクロロプレンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、ポリスルフィドゴム、ポリアクリレートエラストマー、フルオロエラストマー、パーフルオロエラストマー、シリコーンエラストマー、及びこれらのブレンドから選択される、請求項1~31のいずれか一項に記載のタイヤトレッド。
【請求項36】
前記エラストマーが、スチレン-ブタジエンゴム、官能化されたスチレン-ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、エチレン-プロピレンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、又はこれらのブレンドである、請求項1~31のいずれか一項に記載のタイヤトレッド。
【請求項37】
前記エラストマーが、天然ゴム若しくは官能化された天然ゴム又は両方である、請求項1~31のいずれか一項に記載のタイヤトレッド。
【請求項38】
前記フィラーが、カーボンブラック、シリカ、並びにこれらのコーティング及び処理された材料から選択される、請求項37に記載のタイヤトレッド。
【請求項39】
前記タイヤトレッドが、劣化防止剤、加工助剤及び活性化剤、酸化亜鉛、脂肪酸、脂肪酸の亜鉛塩、ワックス、促進剤、樹脂、並びに加工油から選択される1つ以上のゴム薬品をさらに含む、請求項1~38のいずれか一項に記載のタイヤトレッド。
【請求項40】
前記カーボンブラックが、STSA>140m2/gを有する、請求項1~39のいずれか一項に記載のタイヤトレッド。
【請求項41】
前記カーボンブラックが、STSA>150m2/gを有する、請求項1~39のいずれか一項に記載のタイヤトレッド。
【請求項42】
前記カーボンブラックが、120m2/g~180m2/gのSTSAを有する、請求項1~39のいずれか一項に記載のタイヤトレッド。
【請求項43】
前記カーボンブラックが、150m2/g~160m2/gのSTSAを有する、請求項1~39のいずれか一項に記載のタイヤトレッド。
【請求項44】
少なくとも1種エラストマー及び20~80phrの少なくとも1種のフィラーを含むタイヤトレッドであって、前記フィラーが、少なくとも40phrの少なくとも1種のカーボンブラックを含み、前記タイヤトレッドが:
a)弾性率比>5.60;
b)パーセント破断伸び>480、及び任意選択的に、
c)60℃(333.15K)における損失正接<0.25
を有し、前記トレッドが、伝送モードで光学顕微鏡によって求められる、10μm超の未分散カーボンブラック粒子の面積百分率である、マクロ分散値Vが、0.01超であることによって特徴付けられる、前記タイヤトレッド。
【請求項45】
前記Vが0.02超である、請求項44に記載のタイヤトレッド。
【請求項46】
前記損失正接を有し、60℃(333.15K)における前記損失正接が≦0.20である、請求項44又は45に記載のタイヤトレッド。
【請求項47】
請求項1~46のいずれか一項に記載のタイヤトレッドを備えるタイヤ。
【請求項48】
トラック、トラクタ、トレーラ、バス、乗用車、高性能車、オートバイ、道路以外で使われる車両、建設機械車両、及び航空機のタイヤから選択される、請求項47に記載のタイヤ。
【請求項49】
前記タイヤが、道路以外で使われる車両又は建設機械車両のタイヤであり、前記トレッドが、少なくとも1種の天然又は合成ポリイソプレンを含む60~100phrのエラストマー、並びに少なくとも130m2/gのBET及び115ml/g以下のCOANを有する少なくとも1種のカーボンブラックを含む少なくとも40phrのフィラーを含む、請求項47に記載のタイヤ。
【請求項50】
前記タイヤが、道路以外で使われる車両又は建設機械車両のタイヤであり、前記トレッドが、少なくとも1種のスチレンブタジエンコポリマー、若しくはブタジエンポリマー、又はこれらの組み合わせをさらに含む、請求項49に記載のタイヤ。
【請求項51】
前記タイヤが、道路以外で使われる車両又は建設機械車両のタイヤであり、前記トレッドが、少なくとも1種の天然又は合成ポリイソプレンを含む60~100phrのエラストマー、並びに、少なくとも130m2/gのBET及び115ml/g以下のCOANを有する少なくとも1種のカーボンブラック並びに5~10phrの少なくとも1種のシリカを含む少なくとも40phrのフィラーを含む、請求項47に記載のタイヤ。
【請求項52】
前記タイヤが、道路以外で使われる車両又は建設機械車両のタイヤであり、前記トレッドが、150m2/g超のBET、100ml/g未満のOAN、及び90ml/g未満のCOANを有する少なくとも1種のカーボンブラックをさらに含む、請求項49に記載のタイヤ。
【請求項53】
前記タイヤが、高性能車又はオートバイのタイヤであり、前記トレッドが、溶液スチレンブタジエンコポリマー及びブタジエンポリマー並びにこれらの組み合わせから選択される少なくとも1種ポリマーを含む100phrのエラストマー、並びに、150~220m2/gのSTSAを有する少なくとも1種のカーボンブラック及び150~200m2/gのBETを有する少なくとも1種のシリカを含む少なくとも40phrのフィラーを含む、請求項47に記載のタイヤ。
【請求項54】
前記タイヤが、トラック又はバスのタイヤであり、前記トレッドが、60~100phrの少なくとも1種の天然又は合成ポリイソプレンエラストマー、並びに、少なくとも115m2/gのSTSA及び110ml/g未満のCOANを有する少なくとも1種のカーボンブラックを含む少なくとも30phrのフィラー、並びに、1~25phrの少なくとも1種のシリカフィラーを含む、請求項47に記載のタイヤ。
【請求項55】
前記タイヤが、トラック又はバスのタイヤであり、前記トレッドが、60~100phrの少なくとも1種の天然又は合成ポリイソプレンエラストマー、並びに、少なくとも115m2/gのSTSA及び110ml/g未満のCOANを有する少なくとも1種のカーボンブラックを含む45~60phrのフィラー、並びに、1~25phrの少なくとも1種のシリカフィラーを含む、請求項54に記載のタイヤ。
【請求項56】
前記タイヤが、トラック又はバスのタイヤであり、前記トレッドが、60~100phrの少なくとも1種の天然又は合成ポリイソプレンエラストマー、並びに、150m2/g超のBET、100ml/g未満のOAN、及び90ml/g未満のCOANを有する少なくとも1種のカーボンブラックを含む少なくとも30phrのフィラー、並びに、1~25phrの少なくとも1種のシリカフィラーを含む、請求項54に記載のタイヤ。
【請求項57】
前記タイヤが、トラック又はバスのタイヤであり、前記トレッドのショルダー成分が、60~100phrの少なくとも1種の天然又は合成ポリイソプレンエラストマー、並びに、少なくとも120m2/gのBET及び110ml/g未満のCOANを有する少なくとも1種のカーボンブラックを含む少なくとも40phrのフィラー、並びに、1~20phrの少なくとも1種のシリカフィラーを含む、請求項47に記載のタイヤ。
【請求項58】
前記タイヤが、トラック又はバスのタイヤであり、前記トレッドのショルダー成分が、60~100phrの少なくとも1種の天然又は合成ポリイソプレンエラストマー、並びに、150m2/g超のBET、100ml/g未満のOAN、及び90ml/g未満のCOANを有する少なくとも1種のカーボンブラックを含む少なくとも40phrのフィラー、並びに、1~25phrの少なくとも1種のシリカフィラーを含む、請求項57に記載のタイヤ。
【請求項59】
前記トレッドの下層が、60~100phrの少なくとも1種の天然若しくは合成ポリイソプレンエラストマー、ポリブタジエンエラストマー、又はこれらの組み合わせ、並びに、100m2/g未満のBET及び110g/kg未満のI2価を有する少なくとも1種のカーボンブラックを含む少なくとも40phrのフィラーを含む、請求項47に記載のタイヤ。
【請求項60】
前記トレッドが、面修飾カーボンブラック、酸化カーボンブラック、多相凝集体カーボンブラック、及び少なくとも2000ppmの面水素含量を有するカーボンブラックから選択される少なくとも1種のカーボンブラックを含む少なくとも20phrのフィラーを含む、請求項47に記載のタイヤ。
【請求項61】
行路にフィットし、前記行路に搭載されるゴムトレッドを含む車両であって、前記トレッドが、請求項1~46のいずれか一項に記載のタイヤトレッドを備える、前記車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッド及びタイヤを対象とする。タイヤトレッド及び/又はタイヤは、向上した材料特性、例えば、限定されないが、弾性率比、パーセント破断伸び、及び/又は損失正接を好ましくは有する。タイヤトレッド及びタイヤは、エラストマー性材料及びよく分散された補強フィラーを含む。タイヤは、重量物を運び且つ持続速度で運転する車両、例えば、トラック、トラクタ、トレーラ又はバスに取り付けられることが意図される、放射状のカーカス補強材、及び、エラストマー性材料のさらなる層又はゾーンを有する空気式タイヤであり得る。代替的には、本発明のタイヤ及びタイヤトレッドは、車両、例えば、軽トラック、乗用車、高性能車、オートバイ、道路以外で使われる車両、建設機械車両、航空機、及び、行路に搭載されるゴムトレッドを有する、行路とフィットする車両を含めた他の車両にフィットし得る。
【背景技術】
【0002】
トラック及びバスに使用される頑丈なタイヤにおいて、並びに、他のタイヤタイプにおいて、タイヤトレッドを多層構造、例えば、トレッドの外面を付与するキャップゴム層及びキャップゴム層の内側に放射状に設けられているベースゴム層とすることが知られており、優れた耐摩耗性を有するゴムがキャップゴム層に使用されており、低い損失正接を有する低発熱ゴムがベースゴム層に使用されている。タイヤの他のより高い応力領域においては、例えば、トレッドのショルダー領域においては、向上した特性を有する選択されたゴムコンパウンドが使用されている。例えば、米国特許第10,399,386号明細書を参照。高レベルの耐摩耗性及び耐応力性、低い発熱(低い損失正接)並びに低い転がり抵抗を同時に達成することにより、元の交換タイヤトレッドにおけるタイヤ寿命及び耐久性の改善と一緒に燃費の改善を達成するためのタイヤトレッドを製作することが望ましい。
【0003】
多くのタイヤ及びトレッドの設計及び配合は、典型的な応力の下で許容可能なタイヤ性能及び寿命を得るように、発熱に対しての機械及び引張強度のゴム材料特性、例えば、車両重量及び速度、面の状態並びに操作温度のバランスを取るように提案されてきた。例えば、米国特許第6,247,512号明細書、米国特許第10,479,037号明細書、米国特許第10,308,073号明細書及び米国特許出願公開公報第2009/0255613号明細書を参照。いくつかは、トレッドを形成するために軸方向に異なる材料を使用することを提案している。中央の赤道面材料は、側方の平面材料とは異なっていてよく、これらの材料は、トレッドの様々な内側ゾーンにおいて使用される材料と異なっていてよい。例えば、米国特許第9,713,942号明細書を参照。多くの場合において、地面と接触する外側材料は、より良好な摩耗性能を示し、内側材料は、これらの材料がトレンドに重ね合わされるときクラウン領域において少ない発熱及びより低い操作温度を可能にするヒステリシス特性を示す。トレッドにおける空隙パターンは、軸方向に変動され得、多くの場合において、中央の赤道面においてより低い空隙比、及び、トレッドの外軸部分においてより高い溝部又はサイプ表面積を有している。エラストマー性材料のさらなる内層は、機械的強度及び熱管理に関して目標とする域について提案されており、それぞれの材料層の厚さは、タイヤ寿命及び性能を最適化するように選択されている。タイヤ性能の測定基準を向上するために、いくつかの設計及び配合は、タイヤ性能を最適化するための手段としての液体エラストマーマスターバッチプロセスによって達成された向上したフィラー分散レベルを有するエラストマー性材料を特定している。例えば、米国特許第10,308,073B2号明細書、米国特許第10,017,612号明細書、米国特許第9,834,658号明細書及び米国特許第9,713,942B2号明細書を参照。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、優れた材料強度及び充分に低い転がり抵抗の両方、並びに燃費目標を満たすための低い発熱を有するタイヤを好ましくは提供する。
【0005】
本発明の特徴は、1つ以上の有利な特性を有するタイヤトレッドを提供することである。
【0006】
本発明のさらなる特徴は、優れた材料強度及び/若しくは充分に低い転がり抵抗、並びに/又は燃費目標を満たすための低い発熱を付与するタイヤトレッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これら及び他の利点を達成するために、本発明の目的により、本明細書において具現化及び記載されているように、本発明は、少なくとも1つエラストマー及び40~80phrの少なくとも1つのフィラーを含むタイヤトレッドであって、フィラーが少なくとも40phrの少なくとも1つのカーボンブラックを含み、タイヤトレッドが:
a)弾性率比>5.60;
b)パーセント破断伸び>470、並びに
c)60℃(333.15K)における損失正接≧0.10及び<0.25
を有する、上記タイヤトレッドに関する。
【0008】
本発明は、少なくとも1つエラストマー及び20~80phrの少なくとも1つのフィラーを含むタイヤトレッドであって、フィラーが、40phr以下の少なくとも1つのカーボンブラックを含み、トレッドが:
a)弾性率比≧5.43;
b)パーセント破断伸び>400、並びに
c)60℃(333.15K)における損失正接≧0.09及び<0.15
を有する、上記タイヤトレッドにさらに関する。
【0009】
さらに、本発明は、少なくとも1つエラストマー及び20~80phrの少なくとも1つのフィラーを含むタイヤトレッドであって、フィラーが少なくとも1つのカーボンブラックを含み、上記トレッドが、式0.01<V<0.15によって、伝送モードで光学顕微鏡によって求められる、10μm超の未分散カーボンブラック粒子の面積百分率である、マクロ分散値Vによって特徴付けられる、上記タイヤトレッドに関する。
【0010】
加えて、本発明は、少なくとも1つエラストマー及び20~80phrの少なくとも1つのフィラーを含むタイヤトレッドであって、フィラーが少なくとも1つのカーボンブラックを含み、上記トレッドが、伝送モードで光学顕微鏡によって求められる、10μm超の未分散カーボンブラック粒子の面積百分率である、マクロ分散値Vが、0.01超であることによって特徴付けられ、上記トレッドが:
a)弾性率比≧5.43;又は
b)パーセント破断伸び>400、又は
c)60℃(333.15K)における損失正接<0.25
のうちの少なくとも1つを有する、上記タイヤトレッドに関する。
【0011】
さらに、本発明は、少なくとも1つエラストマー及び20~80phrの少なくとも1つのフィラーを含むタイヤトレッドであって、フィラーが少なくとも40phrの少なくとも1つのカーボンブラックを含み、タイヤトレッドが:
a)弾性率比>5.60;
b)パーセント破断伸び>400、並びに
c)60℃(333.15K)における損失正接>0.09及び<0.15,
を有し、上記トレッドが、式0.01<V<0.15によって、伝送モードで光学顕微鏡によって求められる、10μm超の未分散カーボンブラック粒子の面積百分率である、マクロ分散値Vによって特徴付けられる、上記タイヤトレッドに関する。
【0012】
本発明は、少なくとも1つエラストマー及び20~80phrの少なくとも1つのフィラーを含み得るタイヤトレッドにさらに関する。フィラーは、少なくとも40phrの少なくとも1つのカーボンブラックを含み得る。タイヤトレッドは:
a)弾性率比>5.60;
b)パーセント破断伸び>480、及び任意選択的に
c)60℃(333.15K)における損失正接<0.25
を有し得る。
タイヤトレッドは、伝送モードで光学顕微鏡によって求められる、10μm超の未分散カーボンブラック粒子の面積百分率である、マクロ分散値Vが、0.01超であることによってさらに特徴付けられる。
【0013】
本発明はまた、本発明のタイヤトレッドを含むタイヤにも関する。
【0014】
本発明のさらなる特徴及び利点は、一部は、後続する詳細な説明に記載されており、一部は、当該詳細な説明から明らかであり、又は本発明の実用によって教示され得る。本発明の目的及び他の利点は、詳細な説明及び添付の特許請求の範囲において特に指摘されている要素及び組み合わせによって実現及び達成される。
【0015】
上記の概説及び以下の詳細な説明の両方が例示的であり、説明目的のみであり、特許請求の範囲に記載されている本発明のさらなる説明を提供することが意図されていることが理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のタイヤ及びタイヤトレッドは、所望のタイヤサイズ、グレード、及び目的について選択されたゴム配合物に混和された複合体を含む。本発明の一態様において、本発明のタイヤトレッドは、予想外であるがヒステリシス(損失正接)の減少に関連して増加する弾性率比及び破断伸びによって示されるように、材料強度、低い発熱及び低い転がり抵抗の向上した組み合わせによって特徴付けられ得る。本発明のタイヤトレッドは、重量物車両用のタイヤ、例えば、道路以外で使われるタイヤ、農業用車両及びトラック並びにバスのタイヤ、より軽い車両、例えば、軽トラック、乗用車、高性能車及びオートバイ用のタイヤ、航空機のタイヤ、並びに、行路に搭載されるゴムトレッドを有する、行路とフィットする車両における他のタイヤに使用され得る。
【0017】
様々なタイヤトレッドは、本発明の部分を形成する。タイヤトレッドは、フィラーのphr量、フィラーの部分であるカーボンブラックのphr量、弾性率比値若しくは範囲、パーセント破断伸び値若しくは範囲、損失正接値若しくは範囲、及び/又はマクロ分散値若しくは範囲、並びに、本明細書にさらに記載されている、これらのパラメータのうちのいずれか2つ以上の任意の組み合わせによって特徴付けられ得る。
【0018】
例えば、本発明のタイヤトレッドは、少なくとも1つエラストマー及び40~80phrの少なくとも1つのフィラーを含み得る(タイヤトレッドA)。フィラーは、少なくとも40phrの少なくとも1つのカーボンブラックを含み得る。タイヤトレッドは:
a)弾性率比>5.60;
b)パーセント破断伸び>470、並びに
c)60℃(333.15K)における損失正接≧0.10及び<0.25
を有し得る。
【0019】
概してタイヤトレッド、及びタイヤトレッドAに関して、弾性率比、パーセント破断伸び、及び損失正接の値は、試験されるタイヤトレッドが50phrで存在するカーボンブラックを有する試験に基づくことができる。
【0020】
概してタイヤトレッド、及びタイヤトレッドAに関して、弾性率比は、例えば、5.61以上、5.62以上、5.63以上、5.64以上、5.65以上、5.65以上、5.66以上、5.67以上、5.68以上、5.69以上、5.7以上、5.71以上、5.75以上、例えば、5.61~6.3、若しくは5.62~6.3、若しくは5.63~6.3、若しくは5.67~6.3、若しくは5.7~6.3、又はこれらの範囲のうちの一範囲内の他の値であり得る。
【0021】
概してタイヤトレッド、及びタイヤトレッドAに関して、パーセント破断伸びは、471以上、472以上、473以上、474以上、475以上、480以上、485以上、490以上、495以上、500以上、例えば、475~550、若しくは480~525、若しくは480~500、又はこれらの範囲のうちの一範囲内の他の値であり得る。
【0022】
概してタイヤトレッド、及びタイヤトレッドAに関して、損失正接は、0.10~0.249、若しくは0.10~0.245、若しくは0.10~0.24、若しくは0.10~0.23、若しくは0.10~0.22、若しくは0.11~0.245、若しくは0.11~0.24、若しくは0.12~0.2、又はこれらの範囲のうちの一範囲内の他の値であり得る。
【0023】
概してタイヤトレッド、及びタイヤトレッドAに関して、エラストマーは、天然ゴム、官能化された天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、官能化されたスチレン-ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、官能化されたポリブタジエンゴム、又はこれらの任意のブレンドを含み得る。又は、エラストマーは、本明細書に記載されているように、以下のさらなる詳細において、エラストマーのいずれか若しくはこれらのブレンドであり得る。
【0024】
本発明は、少なくとも1つエラストマー及び20~80phrの少なくとも1つのフィラーを含み得るタイヤトレッド(タイヤトレッドB)にさらに関する。フィラーは、40phr以下の少なくとも1つのカーボンブラックを含み得る。タイヤトレッドは:
a)弾性率比≧5.43;
b)パーセント破断伸び>400、並びに
c)60℃(333.15K)における損失正接>0.09及び<0.15
を有し得る。
【0025】
概してタイヤトレッド、及びタイヤトレッドBに関して、弾性率比、パーセント破断伸び、及び損失正接の値は、40phrのカーボンブラック量で試験されるタイヤトレッドに基づくことができる。
【0026】
概してタイヤトレッド、及びタイヤトレッドBに関して、弾性率比は、5.43以上、5.5以上、5.6以上、5.7以上、5.8以上、5.9以上、6.0以上、例えば、5.43~6.25、若しくは5.43~6.2、又はこれらの範囲のうちの一範囲内の任意の値であり得る。
【0027】
概してタイヤトレッド、及びタイヤトレッドBに関して、パーセント破断伸びは、401以上、402以上、403以上、404以上、405以上、410以上、415以上、420以上、425以上、430以上、435以上、440以上、445以上、450以上、455以上、460以上、465以上、470以上、475以上、480以上、485以上、490以上、495以上、500以上、例えば、405~550、若しくは425~525、若しくは425~500、又はこれらの範囲のうちの一範囲内の任意の値であり得る。
【0028】
概してタイヤトレッド、及びタイヤトレッドBに関して、損失正接は、0.091~0.149、若しくは0.091~0.145、若しくは0.091~0.14、若しくは0.092~0.14、若しくは0.095~0.13、若しくは0.095~0.14、若しくは0.10~0.12、若しくは0.10~0.11、又はこれらの範囲のうちの一範囲内の任意の値であり得る。
【0029】
概してタイヤトレッド並びにタイヤトレッドA及び/又はBに関して、タイヤトレッドは、マクロ分散値Vによってさらに特徴付けられ得る。この値Vは、伝送モードで光学顕微鏡によって求められる、10μmを超える未分散カーボンブラック粒子の面積百分率である。マクロ分散値Vは、式:0.01<V<0.15によるものであってよい。マクロ分散値Vは、0.011<V<0.15、若しくは0.012<V<0.15、若しくは0.013<V<0.15、若しくは0.014<V<0.15、若しくは0.015<V<0.15、若しくは0.02<V<0.15、若しくは0.05<V<0.15、若しくは0.07<V<0.15、若しくは0.08<V<0.15、若しくは0.09<V<0.12、又はこれらの範囲のうちの一範囲内の任意の値であり得る。
【0030】
本発明は、少なくとも1つエラストマー及び20~80phrの少なくとも1つのフィラーを含み得るタイヤトレッド(タイヤトレッドC)にさらに関する。フィラーは、少なくとも1つのカーボンブラックを含み得る。タイヤトレッドは、伝送モードで光学顕微鏡によって求められる、10μm超の未分散カーボンブラック粒子の面積百分率としての、本明細書において定義されている、上記のマクロ分散値Vによって特徴付けられ得る。マクロ分散値Vは、式:0.01<V<0.15によるものであり得る。マクロ分散値Vは、0.011<V<0.15、若しくは0.012<V<0.15、若しくは0.013<V<0.15、若しくは0.014<V<0.15、若しくは0.015<V<0.15、若しくは0.016<V<0.15、若しくは0.017<V<0.15、若しくは0.018<V<0.15、若しくは0.019<V<0.15、若しくは0.02<V<0.15、若しくは0.05<V<0.15、若しくは0.07<V<0.15、若しくは0.08<V<0.15、若しくは0.09<V<0.14、若しくは0.01<V<0.13、若しくは0.01<V<0.12、若しくは0.01<V<0.11、若しくは0.01<V<0.1、又はこれらの範囲のうちの一範囲内の任意の値であり得る。
【0031】
マクロ分散値Vのいずれかについて、Vは、試験されるタイヤトレッドが50phrのカーボンブラック量を有するものである試験に基づくことができる。
【0032】
本発明は、少なくとも1つエラストマー及び20~80phrの少なくとも1つのフィラーを含み得るタイヤトレッド(タイヤトレッドD)にさらに関する。フィラーは、40phr以下の少なくとも1つのカーボンブラックを含み得る。トレッドは、先に記載されているようにマクロ分散値V(伝送モードで光学顕微鏡によって求められる、10μm超の未分散カーボンブラック粒子の面積百分率)が0.01超であることによって特徴付けられ得る。タイヤトレッドは、以下のうちの1つ以上(又は以下のうちの2つ、若しくは3つ全て):
a)弾性率比≧5.43;又は
b)パーセント破断伸び>400、又は
c)60℃(333.15K)における損失正接<0.25
を有し得る。
【0033】
概してタイヤトレッド、及びタイヤトレッドDに関して、タイヤトレッドは、試験されるタイヤトレッドが40phrの量でカーボンブラックを有するものである試験に基づいた弾性率比、パーセント破断伸び、及び損失正接の値を有し得る。
【0034】
概してタイヤトレッド、及びタイヤトレッドDに関して、マクロ分散値Vは、0.011以上、0.012以上、0.013以上、0.014超、若しくは0.015超、若しくは0.016超、若しくは0.017超、若しくは0.02超、若しくは0.03超、若しくは0.05超、若しくは0.1超、若しくは0.11超、若しくは0.12超、若しくは0.13超、若しくは0.14超、若しくは0.011<V<0.14、若しくは0.012<V<0.13、若しくは0.01<V<0.14、若しくは0.015<V<0.14、若しくは0.02<V<0.13、若しくは0.05<V<0.12、若しくは0.07<V<0.11、若しくは0.01<V<0.1、若しくは0.01<V<0.09、又はこれらの範囲のうちの一範囲内の任意の値であり得る。
【0035】
概してタイヤトレッド、及びタイヤトレッドDに関して、弾性率比は、5.43以上、5.45超、若しくは5.5超、若しくは5.6超、若しくは5.7超、若しくは5.8超、若しくは5.9超、若しくは5.9超、例えば、5.43~6.25、若しくは5.43~6.5、若しくは5.43~6.5、若しくは5.45~6.5、若しくは5.00~6.2、又はこれらの範囲のうちのいずれか1つの間における任意の値であり得る。
【0036】
概してタイヤトレッド、及びタイヤトレッドDに関して、パーセント破断伸びは、401以上、402以上、403以上、404以上、405以上、410以上、415以上、420以上、425以上、430以上、435以上、440以上、445以上、450以上、455以上、460以上、465以上、470以上、475以上、480以上、485以上、490以上、495以上、500以上、例えば、405~550、若しくは425~525、若しくは425~500、又はこれらの範囲のうちの一範囲内の任意の値であり得る。
【0037】
概してタイヤトレッド、及びタイヤトレッドDに関して、損失正接は、0.249以下、若しくは0.245以下、0.24以下、若しくは0.24未満、若しくは0.23未満、若しくは0.22未満、若しくは0.21未満、若しくは0.2未満、若しくは0.18未満、若しくは0.16未満、若しくは0.14未満、若しくは0.12未満、若しくは0.1未満、例えば、0.09~0.249、若しくは0.09~0.245、若しくは0.09~0.22、若しくは0.10~0.2、又はこれらの範囲のうちのいずれか1つの間における任意の値であり得る。
【0038】
本発明は、少なくとも1つエラストマー及び40~80phrの少なくとも1つのフィラーを含み得るタイヤトレッド(タイヤトレッドE)にさらに関する。フィラーは、少なくとも40phrの少なくとも1つのカーボンブラックを含み得る。タイヤトレッドは、弾性率比>5.60、パーセント破断伸び>470、並びに60℃(333.15K)における損失正接>0.10及び<0.25を有し得る。
【0039】
概してタイヤトレッド、及びタイヤトレッドEに関して、弾性率比は、5.61超、若しくは5.62超、若しくは5.65超、若しくは5.7超、若しくは5.8超、若しくは5.9超、若しくは6超、若しくは6.1超、若しくは6.2超、例えば、5.61~6.2、若しくは5.65~6.1、若しくは5.7~6、又はこれらの範囲のうちのいずれか1つの間における任意の値であり得る。
【0040】
概してタイヤトレッド、及びタイヤトレッドEに関して、パーセント破断伸びは、471以上、472以上、473以上、474以上、475以上、480以上、485以上、490以上、495以上、500以上、例えば、475~550、若しくは480~525、若しくは480~500、又はこれらの範囲のうちの一範囲内の他の値であり得る。
【0041】
概してタイヤトレッド、及びタイヤトレッドEに関して、60℃(333.15K)における損失正接は、0.101~0.249、若しくは0.105~0.245、0.11~0.24、0.12~0.24、0.13~0.24、若しくは0.14~0.24、若しくは0.15~0.24、若しくは0.16~0.23、若しくは0.17~0.23、若しくは0.18~0.22、又はこれらの範囲のうちの一範囲内の他の値であり得る。
【0042】
本発明は、少なくとも1つエラストマー及び20~80phrの少なくとも1つのフィラーを含み得るタイヤトレッド(タイヤトレッドF)にさらに関する。フィラーは、少なくとも40phrの少なくとも1つのカーボンブラックを含み得る。タイヤトレッドは:
a)弾性率比>5.60;
b)パーセント破断伸び>480、及び任意選択的に
c)60℃(333.15K)における損失正接<0.25
を有し得る。
タイヤトレッドFでは、損失正接パラメータは、任意選択的である。さらに、概して、タイヤトレッドFに関して、タイヤトレッドは、先に記載されているようにマクロ分散値V(伝送モードで光学顕微鏡によって求められる、10μm超の未分散カーボンブラック粒子の面積百分率)が0.01超であることによって特徴付けられ得る。
【0043】
概してタイヤトレッド、及びタイヤトレッドFに関して、タイヤトレッドは、試験されるタイヤトレッドが50phrの量でカーボンブラックを有するものである試験に基づいた弾性率比、パーセント破断伸び、及び損失正接の値を有し得る。
【0044】
概してタイヤトレッド、及びタイヤトレッドFに関して、弾性率比は、5.61以上、5.62以上、5.63以上、5.64以上、5.65以上、5.66以上、5.67以上、5.68以上、5.69以上、5.7以上、5.8超、若しくは5.9超、若しくは6.0超、若しくは6.1超、若しくは6.2超、若しくは5.65超、若しくは5.75超、例えば、5.61~6.25、若しくは5.65~6.5、若しくは5.63~6.2、又はこれらの範囲のうちのいずれか1つの間における任意の値であり得る。
【0045】
概してタイヤトレッド、及びタイヤトレッドFに関して、パーセント破断伸びは、481以上、482以上、483以上、484以上、485以上、490以上、495以上、500以上、505以上、510以上、例えば、481~550、若しくは485~525、若しくは490~500、又はこれらの範囲のうちの一範囲内の他の値であり得る。
【0046】
概してタイヤトレッド、及びタイヤトレッドFに関して、損失正接は、0.25未満、若しくは0.24未満、若しくは0.23未満、若しくは0.22未満、若しくは0.21未満、若しくは0.2未満、若しくは0.19未満、若しくは0.18未満、若しくは0.17未満、若しくは0.16未満、若しくは0.15未満、例えば、0.09~0.249、若しくは0.09~0.24、若しくは0.09~0.23、若しくは0.09~0.22、若しくは0.09超0.24未満、若しくは0.1超0.24未満、若しくは0.1~0.24、若しくは0.1~0.23、若しくは0.11~0.23、0.09~0.145、若しくは0.095~0.14、若しくは0.095~0.13、若しくは0.11~0.14、若しくは0.09~0.13、若しくは0.09~0.12、若しくは0.10~0.14、若しくは0.10~0.13、又はこれらの範囲のうちのいずれか1つの間における任意の値であり得る。
【0047】
概してタイヤトレッド、及びタイヤトレッドFに関して、マクロ分散値Vは、0.011~0.149、若しくは0.012~0.145、若しくは0.014~0.145、0.015~0.14、0.02~0.14、0.03~0.14、0.04~0.14、0.03~0.06、0.02~0.12、0.02~0.11、0.02~0.1、0.02~0.09、0.02~0.08、0.02~0.07、0.02~0.06、0.011~0.099、0.01超0.1未満、0.011~0.099、若しくは0.012~0.095、若しくは0.012~0.09、若しくは0.015~0.09、若しくは0.02~0.09、若しくは0.02~0.085、若しくは0.02~0.08、若しくは0.025~0.07、又はこれらの範囲のうちのいずれか1つの間における任意の値であり得る。
【0048】
タイヤトレッドA~Fのいずれか1つを含めた、タイヤトレッドトのいずれかについて、フィラーは、炭素質材料、カーボンブラック、シリカ、ナノセルロース、リグニン、クレイ、ナノクレイ、金属酸化物、金属炭酸塩、熱分解炭素、グラフェン、酸化グラフェン、還元型酸化グラフェン、カーボンナノチューブ、単層カーボンナノチューブ、複層カーボンナノチューブ、若しくはこれらの組み合わせ、並びにこれらのコーティング及び処理された材料、又はこれらの任意の組み合わせから選択される少なくとも1つの材料を含み得る。
【0049】
タイヤトレッドA~Fのいずれか1つを含めた、タイヤトレッドトのいずれかについて、フィラーは、2.7:1超、若しくは2.8:1超、若しくは2.9:1超、若しくは3:1超、若しくは3.5:1超、若しくは4:1超、若しくは4.5:1超、若しくは5:1超、例えば、2.75:1~10:1のカーボンブラック対シリカ重量比、又はこれらの範囲のうちの任意の一範囲内の他の重量比でカーボンブラック及びシリカを含み得る。
【0050】
タイヤトレッドA~Fのいずれか1つを含めた、タイヤトレッドトのいずれかについて、エラストマーは、天然ゴム、官能化された天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、官能化されたスチレン-ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、官能化されたポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、エチレン-プロピレンゴム、イソブチレン系エラストマー、ポリクロロプレンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、ポリスルフィドゴム、ポリアクリレートエラストマー、フルオロエラストマー、パーフルオロエラストマー、シリコーンエラストマー、又はこれらの2つ以上の任意のブレンドから選択され得る。
【0051】
タイヤトレッドA~Fのいずれか1つを含めた、タイヤトレッドトのいずれかについて、タイヤトレッドは、劣化防止剤、加工助剤及び活性化剤、酸化亜鉛、脂肪酸、脂肪酸の亜鉛塩、ワックス、促進剤、樹脂、並びに/又は加工油から選択される1つ以上のゴム薬品をさらに含み得る。これらのうちのいずれか1つ以上が存在し得る。
【0052】
タイヤトレッドA~Fのいずれか1つを含めた、タイヤトレッドトのいずれかについて、タイヤトレッドは、フィラー又はフィラーの1つとして存在するカーボンブラックを有し得る。カーボンブラックは、STSA>140m2/g、又はSTSA>150m2/g、又は110m2/g~220m2/gのSTSA、又は120m2/g~180m2/gのSTSA、又は140m2/g~180m2/gのSTSA、又は150m2/g~160m2/gのSTSAを有し得る。カーボンブラックを含むフィラーの他の詳細は、以下に提供されており、タイヤトレッド配合物のいずれかに使用され得る。
【0053】
本発明のタイヤトレッドは、以下のプロセス工程のうちの1つ以上を利用してエラストマー複合体を形成し、これを次いでタイヤトレッド配合物に混和してタイヤトレッドを製作し得ることで形成され得る。本発明は、本明細書に記載されているプロセスのいずれか1つ又はこれらの任意の組み合わせによって形成される任意のタイヤトレッド及び/又はタイヤを含む。
【0054】
プロセス工程(1)は、以下の通り、本発明のタイヤトレッドを作製するのに使用され得る:
(a)ミキサーに、1つ以上の固体エラストマー(複数可)、並びに、フィラー(複数可)及び合計湿潤フィラー(複数可)重量基準で少なくとも15重量%の液体を含む1つ以上の湿潤フィラー(複数可)を含む材料を投入すること;
(b)液体の少なくとも一部分、任意選択的には液体の少なくとも50重量%を、蒸発によって混合物から除去しながら、少なくとも1つの温度制御手段によって、任意選択的には30℃(303.15K)~150℃(423.15K)の範囲の温度Tzに設定したかかる制御手段を用いて制御されるミキサー温度で、且つ、混合の持続期間の少なくとも50%の間、少なくとも0.6m/sのミキサーロータ先端速度で、投入された材料を混合して混合物を形成すること;並びに
(c)少なくとも20phrの仕込み量でエラストマー(複数可)に分散されたフィラー(複数可)を含むエラストマー複合体を10%以下のフィラー収率損失でミキサーから吐出すること、当該複合体は、合計エラストマー複合体重量基準で10重量%以下の液体含量を有していること。
【0055】
プロセス工程(2)は、以下の通り、本発明のタイヤトレッドを作製するのに使用され得る:
(a)第1ミキサーに、1つ以上の固体エラストマー(複数可)、並びに、フィラー(複数可)及び合計湿潤フィラー(複数可)重量基準で少なくとも15重量%の液体を含む1つ以上の湿潤フィラー(複数可)を含む材料を投入すること;
(b)1つ以上の混合工程において、材料を混合して混合物を形成すること、並びに、上記混合工程の少なくとも1つにおいて、液体の少なくとも一部分、任意選択的には液体の少なくとも50重量%を、蒸発によって混合物から除去しながら、混合の持続期間の少なくとも50%の間、少なくとも0.6m/sのミキサーロータ先端速度で上記混合を行うこと;
(c)エラストマー(複数可)に分散された少なくとも20phrのフィラー(複数可)を含む混合物を第1ミキサーから吐出すること、当該混合物は、最初の液体含量未満の量に低減された液体含量を有し、且つ、当該混合物は、100℃(373.15K)~180℃(453.15K)の範囲の材料温度を有すること;
(d)第2ミキサーに(c)からの混合物を投入して混合し、エラストマー複合体を得ること、当該第2ミキサーは、以下の条件のうちの少なくとも1つで作動されること:
(i)5psi(3.448275×10-2Pa)以下のラム圧;
(ii)その最高レベルの少なくとも75%まで上昇させたラム;
(iii)浮動形態で作動されるラム;
(iv)混合物に実質的に接触しないように位置付けられているラム;
(v)ミキサーがラムなしであること;及び/又は
(vi)混合物のフィルファクターが25%~70%の範囲であること;並びに
(e)合計エラストマー複合体重量基準で3重量%未満の液体含量を有するエラストマー複合体を第2ミキサーから吐出すること。
【0056】
本発明のタイヤトレッドを作製する際に使用され又は含まれ得るプロセスのより詳細な例は、以下の通りであり得る。
【0057】
本発明のタイヤトレッドを作製する1つの方法は、以下を含み得る:
(a)湿潤混合複合体を付与すること、上記湿潤混合複合体は以下によって調製されること:
(i)1つ以上のロータを有するミキサーに、少なくとも固体エラストマー、並びに、フィラーと、湿潤フィラーの合計重量を基準にして15%~65重量%の範囲の量で存在する液体とを含む湿潤フィラーを投入すること;
(ii)1つ以上の混合工程において、少なくとも固体エラストマー及び湿潤フィラーを混合して混合物を形成すること、並びに、上記混合工程の少なくとも1つにおいて、上記混合を行うこと、ミキサーは、65℃(338.15K)以上の温度Tzに設定された少なくとも1つの温度制御手段を有していること、及び蒸発によって混合物から液体の少なくとも一部分を除去すること;並びに
(iii)少なくとも20phrの仕込み量でエラストマーに分散されたフィラーを含む湿潤混合複合体を10%以下のフィラー収率損失でミキサーから吐出すること、湿潤混合複合体は、上記複合体の合計重量を基準にして5重量%以下の液体含量を有していること;
(b)少なくとも1つの混合段階において、湿潤混合複合体をタイヤトレッド配合物に混和すること;並びに
(c)タイヤトレッド配合物からタイヤトレッドを製作すること。
【0058】
本発明のタイヤトレッドを作製する別の方法は、以下を含み得る:
(a)湿潤混合複合体を付与すること、上記湿潤混合複合体は以下によって調製されること:
(i)少なくとも50重量%の天然ゴムを含む少なくとも固体エラストマー、並びに、フィラーと、湿潤フィラーの合計重量を基準にして少なくとも15重量%の量で存在する液体とを含む湿潤フィラーを、ミキサーに投入すること、少なくとも固体エラストマー及び湿潤フィラーの乾燥重量基準でのフィルファクターが68%以下であること、
(ii)1つ以上の混合工程において、少なくとも固体エラストマー及び湿潤粒子状物フィラーを混合して混合物を形成すること、並びに、上記混合工程の少なくとも1つにおいて、少なくとも1つの温度制御手段によって制御されるミキサー温度で上記混合を行うこと、及び蒸発によって混合物から液体の少なくとも一部分を除去すること;
(iii)少なくとも20phrの仕込み量でエラストマーに分散されたフィラーを含む複合体を10%以下のフィラー収率損失でミキサーから吐出すること、複合体は、上記複合体の合計重量を基準にして10重量%以下の液体含量を有していること;
(b)少なくとも1つの混合段階において、湿潤混合複合体をタイヤトレッド配合物に混和すること;並びに
(c)タイヤトレッド配合物からタイヤトレッドを製作すること。
【0059】
本発明のタイヤトレッドを作製するさらなる方法は、以下を含み得る:
(a)湿潤混合複合体を付与すること、上記湿潤混合複合体は以下によって調製されること:
(i)少なくとも固体エラストマー、並びに、フィラーと、湿潤フィラーの合計重量を基準にして少なくとも15重量%の量で存在する液体とを含む湿潤フィラーを、ミキサーに投入すること
(ii)1つ以上の混合工程において、少なくとも固体エラストマー及び湿潤フィラーを混合して混合物を形成すること、並びに、上記混合工程の少なくとも1つにおいて、混合時間の少なくとも50%の間、少なくとも0.6m/sの先端速度で操作する1つ以上のロータによって、少なくとも1つの温度制御手段によって制御されるミキサー温度で上記混合を行い、蒸発によって混合物から液体の少なくとも一部分を除去すること;並びに
(iii)少なくとも20phrの仕込み量でエラストマーに分散されたフィラーを含む湿潤混合複合体を10%以下のフィラー収率損失でミキサーから吐出すること、湿潤混合複合体は、上記湿潤混合複合体の合計重量を基準にして10重量%以下の液体含量を有していること;
(b)少なくとも1つの混合段階において、湿潤混合複合体をタイヤトレッド配合物に混和すること;並びに
(c)タイヤトレッド配合物からタイヤトレッドを製作すること。
【0060】
本発明のタイヤトレッドを作製するなおさらなる方法は、以下を含み得る:
(a)湿潤混合複合体を付与すること、上記湿潤混合複合体は以下によって調製されること:
(i)少なくとも固体エラストマー、並びに、フィラーと、湿潤フィラーの合計重量を基準にして少なくとも15重量%の量で存在する液体とを含む湿潤フィラーを、1つ以上のロータを有する第1ミキサーに投入すること;
(ii)1つ以上の混合工程において、少なくとも固体エラストマー及び湿潤フィラーを混合して混合物を形成すること、並びに、上記混合工程の少なくとも1つにおいて、混合時間の少なくとも50%の間、少なくとも0.6m/sの先端速度で操作する1つ以上のロータによって、少なくとも1つの温度制御手段によって制御されるミキサー温度で上記混合を行い、蒸発によって混合物から液体の少なくとも一部分を除去すること、
(iii)少なくとも20phrの仕込み量でエラストマーに分散されたフィラーを含む混合物を第1ミキサーから吐出すること、上記混合物は、上記複合体の合計重量を基準にして1%~20重量%の範囲の液体含量を有しており、上記混合物は、100℃(373.15K)~180℃(453.15K)の範囲の材料温度を有していること;
(iv)第2ミキサーにおいて(iii)からの混合物を混合して複合体を得ること、第2ミキサーが、以下の条件のうちの少なくとも1つの下で作動されること:
-5psi(3.448275×10-2Pa)以下のラム圧;
-その最高レベルの少なくとも75%まで上昇させたラム;
-浮動形態で作動されるラム;
-混合物に実質的に接触しないように位置付けられているラム;
-ミキサーがラムなしであること;及び/又は
-混合物のフィルファクターが25%~70%の範囲であること;並びに
(v)上記湿潤混合複合体の合計重量を基準にして3重量%未満の液体含量を有する湿潤混合複合体を第2ミキサーから吐出すること;
(b)少なくとも1つの混合段階において、湿潤混合複合体をタイヤトレッド配合物に混和すること;並びに
(c)タイヤトレッド配合物からタイヤトレッドを製作すること。
【0061】
本発明のタイヤトレッドを作製するさらなる方法は、以下を含み得る:
(a)湿潤混合複合体を付与すること、上記湿潤混合複合体は以下によって調製されること:
(i)少なくとも固体エラストマー、並びに、フィラーと、湿潤フィラーの合計重量を基準にして少なくとも15重量%の量で存在する液体とを含む湿潤フィラーを、1つ以上のロータを有する第1ミキサーに投入すること;
(ii)1つ以上の混合工程において、少なくとも固体エラストマー及び湿潤フィラーを混合して混合物を形成すること、並びに、上記混合工程の少なくとも1つにおいて、少なくとも1つの温度制御手段によって制御されるミキサー温度で上記混合を行うこと、及び、混合時間にわたって少なくとも2.5kW/kgの平均比出力を適用すること、及び蒸発によって混合物から液体の少なくとも一部分を除去すること;
(iii)少なくとも20phrの仕込み量でエラストマーに分散されたフィラーを含む混合物を第1ミキサーから吐出すること、上記混合物は、工程(ii)の始めの液体含量未満の量に低減された液体含量を有していること、上記混合物は、100℃(373.15K)~180℃(453.15K)の範囲の材料温度を有していること;
(iv)第2ミキサーにおいて(iii)からの混合物を混合して複合体を得ること、第2ミキサーが、以下の条件のうちの少なくとも1つの下で作動されること:
-5psi(3.448275×10-2Pa)以下のラム圧;
-その最高レベルの少なくとも75%まで上昇させたラム;
-浮動形態で作動されるラム;
-混合物に実質的に接触しないように位置付けられているラム;
-ミキサーがラムなしであること;及び/又は
-混合物のフィルファクターが25%~70%の範囲であること;並びに
(v)上記複合体の合計重量を基準にして3重量%未満の液体含量を有する複合体を第2ミキサーから吐出すること;
(b)少なくとも1つの混合段階において、湿潤混合複合体をタイヤトレッド配合物に混和すること;並びに
(c)タイヤトレッド配合物からタイヤトレッドを製作すること。
【0062】
加えて、本明細書において使用されているとき、用語「湿潤混合複合体」は、プロセス工程(1)又はプロセス工程(2)又は本明細書に記載されている他のプロセスのいずれかのセットと組み合わされる任意選択的なさらなる加工工程によって固体エラストマー及び湿潤フィラーから製造されるエラストマー複合体材料を意味する。さらなる加工工程として、限定されないが、以下が挙げられる:
(a)フィラーの少なくとも50重量%、若しくは少なくとも40重量%がカーボンブラック材料含み;並びに/又はカーボンブラック材料が30~150phrの仕込み量でエラストマー(複数可)に分散されており;並びに/又はカーボンブラック材料が、60m2/g~200m2/gの範囲のSTSA及び/若しくは60mL/100g~120mL/100gの範囲のCOANを有しているフィラーの選択;
(b)エラストマー複合体混合温度において揮発性である液体の選択;並びに/又は水を含む液体を選択すること;並びに/又は酸、塩基、塩、界面活性剤及び加工助剤から選択される成分を含む液体を選択すること;
(c)少なくとも1,400KJ/Kgのエラストマー複合体を混合する総比エネルギーを得るためのミキサー条件の選択;並びに/又はエネルギーをミキサーに印加して、エラストマー複合体の乾燥重量(kg)基準で0.01~0.14kg/(分・kg)の液体の時間平均放出速度;及び/若しくはエラストマー複合体の合計重量基準で5重量%以下の、吐出されたエラストマー複合体の液体含量を得ること;
(d)バッチ、半連続及び/若しくは連続ミキサー並びに混合工程の選択;並びに/又は混合工程からの1つ以上のゴム薬品、及び、吐出されたエラストマー複合体を除外すること;並びに/又は5psi(3.448275×10-2Pa)以下のラム圧及び/又は60℃(333.15K)~110℃(383.15K)の範囲、若しくは65℃(338.15K)~100℃(373.15K)の範囲、若しくは50℃(323.15K)~100℃(373.15K)の範囲の温度Tzでの第2ミキサーの操作;並びに/又は50~70%のフィルファクターでの第1ミキサーの操作;並びに/或いは
(e)以下の条件のうちの少なくとも1つの下で作動される第2ミキサーとしてのミキサーの選択
(i)5psi(3.448275×10-2Pa)以下のラム圧;
(ii)その最高レベルの少なくとも75%まで上昇させたラム;
(iii)浮動形態で作動されるラム;
(iv)混合物に実質的に接触しないように位置付けられているラム;
(v)ミキサーがラムなしであること;及び/又は
(vi)混合物のフィルファクターが25%~70%の範囲であること。
【0063】
加えて、本明細書において使用されているとき、用語「湿潤混合複合体」は、参照により本明細書に援用される、タイトル「METHODS OF PREPARING A COMPOSITE HAVING ELASTOMER AND FILLER」の、米国特許仮特許出願第62/857,779号及びPCT出願番号、国際出願PCT/US20/36168号明細書に開示されている任意のプロセスによって固体エラストマー及び湿潤フィラーから製造される任意のエラストマー複合体材料を意味する。
【0064】
本発明の詳細な説明において、用語「ゴム」及び「エラストマー」は、別途定められていない限り、互換可能に使用される。用語「ゴム組成物」、「コンパウンド」、「混和されたゴム」、及び「ゴムコンパウンド」は、本明細書において使用されているとき、「様々な成分とブレンド又は混合されているゴム」を指すのに互換可能に使用され、用語「コンパウンド」は、別途示されない限り「ゴム組成物」を指す。かかる用語は、ゴムの混合又はゴムの混和の分野における当業者に周知である。用語「phr」は、ゴム又はエラストマーの乾燥重量基準での100部当たりのそれぞれの材料の部を指す。用語「硬化された」及び「加硫された」又は「加硫物」は、別途示されない限り、タイヤにおける架橋されたゴムコンパウンドに関して互換可能に使用される。
【0065】
本発明のタイヤトレッドは、優れたフィラー分散によって特徴付けられる。フィラー分散は、10μm超の未分散カーボンブラック粒子の面積百分率を表すマクロ分散値「V」を求めるための伝送モードにおいて光学顕微鏡を使用する技術によって、硬化された又は加硫されたゴムコンパウンドにおいて測定され得る。かかる複合体は、特有の製品特質を有する。少なくとも1つエラストマー及び20~80phrの少なくとも1つのフィラーを含むタイヤトレッドであって、フィラーが少なくとも1つのカーボンブラックを含む、本発明の上記タイヤトレッドは、以下の例において記載されている典型的な工業試験方法によって求められる、マクロ分散値V、弾性率比、パーセント破断伸び、又は60℃(333.15K)における損失正接によって特徴付けられ得る。
【0066】
固体エラストマー
湿潤フィラー複合体において有用な固体エラストマーとして、限定されないが、タイヤ構成要素又はタイヤトレッドに好適な、任意の固体形態の天然エラストマー又は合成エラストマーを挙げることができる。
【0067】
任意選択として、本発明の複合体において使用される固体エラストマーは、天然ゴム並びにこれらの処理及び官能化された誘導体の少なくとも1つであり得る。例えば、天然ゴムは、様々な非ゴム成分を化学的に若しくは酵素的に修飾若しくは低減するために処理されていてよく、又は、ゴム分子自体が、様々なモノマー若しくは他の化学基、例えば、塩素によって修飾されていてよい。任意選択として、PCT国際公開第2017/207912号パンフレットに記載されているように、エポキシ化された天然ゴムが使用され得、天然ゴムは、最大0.3重量%の窒素含量を有する。本明細書において有用な天然ゴムの技術的説明は、例えば、Lippincott and Peto,Inc.(Akron,Ohio,USA)によって公開されているRubber World Magazine’s Blue Bookにおいて広範に入手可能である。本発明の複合体において使用される固体エラストマーは、天然ゴム、官能化された天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、官能化されたスチレン-ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、官能化されたポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、エチレン-プロピレンゴム、イソブチレン系エラストマー、ポリクロロプレンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、ポリスルフィドゴム、ポリアクリレートエラストマー、フルオロエラストマー、パーフルオロエラストマー、シリコーンエラストマー、及びこれらのブレンドから選択される少なくとも1つエラストマーであり得る。
【0068】
例示的なエラストマーとして、限定されないが、1,3-ブタジエン、スチレン、イソプレン、イソブチレン、2,3-ジアルキル-1,3-ブタジエンのゴム、ポリマー(例えば、ホモポリマー、コポリマー及び/又はターポリマー)が挙げられ、アルキルは、メチル、エチル、プロピルなど、アクリロニトリル、エチレン、プロピレンなどであってよい。エラストマーは、示差走査熱量測定(DSC)によって測定される、約-120℃(153.15K)~約0℃(273.15K)の範囲のガラス転移温度(Tg)を有していてよい。例として、限定されないが、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム及びその誘導体、例えば、塩素化ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(スチレン-コ-ブタジエン)、及びこれらのいずれかの油展誘導体が挙げられる。上記のいずれかのブレンドが使用されてもよい。特に好適な合成ゴムとして:約10重量パーセント~約70重量パーセントのスチレン及び約90~約30重量パーセントのブタジエンを含む、スチレン及びブタジエンのコポリマー、例えば、19部のスチレン及び81部のブタジエン、30部のスチレン及び70部のブタジエンのコポリマー、43部のスチレン及び57部のブタジエンのコポリマー、並びに50部のスチレン及び50部のブタジエンのコポリマー;共役ジエン、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン及び同種のもののポリマー及びコポリマー、並びに、かかる共役ジエンと、これと共重合可能なエチレン性基含有モノマー、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、アクリロニトリル、2-ビニル-ピリジン、5-メチル-2-ビニルピリジン、5-エチル-2-ビニルピリジン、2-メチル-5-ビニルピリジン、アリル置換アクリレート、ビニルケトン、メチルイソプロペニルケトン、メチルビニルエーテル、アルファ-メチレンカルボン酸並びにこれらのエステル及びアミド、例えば、アクリル酸及びジアルキルアクリル酸アミドとのコポリマーが挙げられる。エチレンと、他の高級アルファオレフィン、例えば、プロピレン、1-ブテン、及び1-ペンテンとのコポリマーも本明細書における使用に好適である。他のポリマーは、開示が参照により本明細書に援用される米国特許出願公開公報第2018/0282523号明細書及び欧州特許第2423253(B1)号明細書に開示されている。他のポリマーとして、シリコーン系エラストマー又はシリコーン及び炭化水素ドメインを有するハイブリッド系が挙げられる。湿潤フィラーと共に使用及び混合される固体エラストマーに関して、固体エラストマーは、乾燥エラストマー又は実質的に乾燥したエラストマーとされ得る。固体エラストマーは、固体エラストマーの合計重量を基準にして5重量%以下、例えば、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、又は0.1重量%~5重量%、0.5重量%~5重量%、1重量%~5重量%、0.5重量%~4重量%及び同等の含水率(又は水分含量)を有する。固体エラストマーは、全体に、エラストマー(5重量%以下の開始含水率を有する)であり得、又は、1つ以上のフィラー及び/若しくは他の成分も含む固体エラストマーマスターバッチであり得る。例えば、固体エラストマーは、乾燥重量基準で、エラストマーに前分散された0.1重量%~50重量%のフィラーを有する、50重量%~99.9重量%のエラストマーであり得、前分散されたフィラーは、複合体に組み入れられる湿潤フィラーに加えて存在する。
【0069】
湿潤フィラーと共に使用及び混合される固体エラストマーマスターバッチに関して、固体エラストマーマスターバッチは、乾燥エラストマーマスターバッチ又は実質的に乾燥したエラストマーマスターバッチとされ得る。固体エラストマーマスターバッチは、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、又は0.1重量%~5重量%、0.5重量%~5重量%、1重量%~5重量%、0.5重量%~4重量%及び同等の含水率(又は水分含量)を有する。
【0070】
固体エラストマーマスターバッチ(例えば、出発固体エラストマーマスターバッチ)は、1つ以上のフィラー、及び、任意選択的に、他の成分を含むエラストマーである。例えば、固体エラストマーマスターバッチは、エラストマーに前分散された1phr~100phrのフィラー、又はエラストマーに前分散された20phr~80phrのフィラー、又はエラストマーに前分散された30phr~70phrのフィラー、又はエラストマーに前分散された40phr~60phrのフィラー、及び同種のものを含み得る。他の成分、例えば、さらなるエラストマー、酸化防止剤並びに他のゴム薬品及び添加剤は、0.1phr~50phr未満の量で固体エラストマーに存在し得る。固体エラストマーマスターバッチは、本明細書に記載及び例示されている、また、当該分野において公知である任意の量で、任意のエラストマー、任意のフィラー、任意の添加剤及びこれらの任意の組み合わせを含有し得る。仕上げのゴムコンパウンドに含有される総フィラーには、添加された湿潤フィラーに加えて、固体エラストマーマスターバッチに前分散されたフィラーが含まれる。固体エラストマーマスターバッチは、乾燥及び/若しくは湿潤混合複合体、又は乾燥マスターバッチプロセスによって作製された乾燥した混合物若しくはコンパウンドであってよい。
【0071】
第2のエラストマー性材料は、湿潤フィラーが固体エラストマー(又はマスターバッチ)と組み合わされる前、これと同時、又はこの後に固体エラストマー(又はマスターバッチ)と組み合わされてよい。第2のエラストマー性材料は、少なくとも1つの固体エラストマー;少なくとも1つのさらなる固体エラストマーマスターバッチであり得る。第2のエラストマー材料は、固体エラストマーと同じエラストマー、又は、本明細書に記載されている若しくは当該分野において公知であるエラストマーのうちの1つ以上から選択される少なくとも1つの異なるエラストマーを含み得る。第2のエラストマー材料は、本明細書に記載されている又は当該分野において公知である少なくとも1つゴム薬品を含み得る。
【0072】
フィラー
本発明のタイヤトレッドのためのゴムコンパウンドを調製する際、湿潤混合複合体が使用され得る。湿潤フィラー(例えば、フィラー及び液体を含む)を利用する湿潤混合複合体は、バッチ時間及び温度が、公知の乾燥混合プロセスにおいて達成可能なものを超えて制御されることを可能にし、他の利益、例えば、フィラー分散の向上及び/又はゴム-フィラー相互作用の容易化及び/又はゴムコンパウンド性能の改善を与える。湿潤フィラーは、固体エラストマーとの混合の前にフィラー面の実質的に一部分又は実質的に全てを湿潤させるために充分な液体が使用されるときに有効であり得る。概して、ここで記載されているように、混合プロセスは、1つ以上のミキサー又はプロセスパラメータ、例えば、ミキサー面温度及び/又はロータ速度、フィルファクター、混合サイクルの後の時間でのゴム薬品(存在する場合)の組み入れ、複合体吐出温度、及び/又は2つ以上の混合段階の適用を制御することによって管理され得る。
【0073】
湿潤混合複合体を調製するための方法は、少なくとも固体エラストマー及び湿潤フィラー、例えば、a)1つ以上の固体エラストマー及びb)1つ以上のフィラーをゴムミキサーに投入又は導入することを含み、少なくとも1つのフィラー又は少なくとも1つのフィラーの部分が、固体エラストマーとの混合の前に液体によって湿潤されている(湿潤フィラー)。固体エラストマーと湿潤フィラーとを組み合わせることで、混合工程(複数可)の際に混合物を形成する。方法は、1つ以上の混合工程において、上記混合を行うことをさらに含み、液体の少なくとも一部分は、混合の際に行われる蒸発又は蒸発プロセスによって除去される。湿潤フィラーの液体は、蒸発によって除去され得(及び少なくとも一部分が、列挙されている混合条件下で除去され得)、揮発性液体、例えば、バルク混合物温度において揮発性であり得る。例えば、液体は、1atm(101325Pa)における沸点が60℃(333.15K)~110℃(383.15K)、60℃(333.15K)~100℃(373.15K)、60℃(333.15K)~90℃(363.15K)、90℃(363.15K)~110℃(383.15K)、90℃(363.15K)~100℃(373.15K)、95℃(368.15K)~120℃(393.15K)、又は95℃(368.15K)~110℃(383.15K)であり得る。例えば、揮発性液体は、混合の少なくとも一部分の間に存在し得る油(例えば、エクステンダー油、プロセス油)とは区別され得、そのため、かかる油は、吐出される複合体に存在することが意図されており、そのため、混合時間の実質的部分の間には蒸発しない。
【0074】
湿潤フィラーに関して、一実施形態において、湿潤フィラーは、固体の稠度を有する。好ましくは、乾燥フィラーは、得られる湿潤フィラーが、粉末、粒子状物、ペレット、ケーキ、若しくはペーストの形態、又は同様の稠度を維持し、及び/或いは粉末、粒子状物、ペレット、ケーキ、又はペーストの外観を有する程度までのみ湿潤される。湿潤フィラーは、(例えば、ゼロの印加応力において)液体のようには流動しない。任意選択として、湿潤フィラーは、個々の粒子、凝集塊、ペレット、ケーキ、又はペーストであるか否かに依らず、25℃(298.15K)における形状を、かかる形状に成形されたときに維持することができる。湿潤フィラーは、液体マスターバッチプロセスによって作製される複合体ではなく、エラストマーが連続相である固体エラストマーに分散されたフィラーのいずれの他の前ブレンドされた複合体でもない。別の実施形態において、湿潤フィラーは、スラリーであり得る。なお別の実施形態において、湿潤フィラーは、フィラーのスラリーではなく、液体又はスラリーの稠度を有さない。
【0075】
フィラーは、乾燥状態では、その面上に吸着した少量の液体(例えば、水)を含有していてよい。例えば、カーボンブラックは、1~3重量%又は4重量%の水分を有し得、沈降シリカは、4~7重量%の水分含量を有し得る。かかるフィラーは、本明細書において、乾燥又は非湿潤フィラーと称される。本湿潤フィラーに関して、さらなる液体が、フィラーに添加されており、液体にアクセス可能な内面又は細孔を含めた、フィラーの面に存在する。混合の間、液体の少なくとも一部分が、湿潤フィラーが固体エラストマーに分散されるにつれて、蒸発によって除去され、フィラーの面が、固体エラストマーと相互作用するのに次いで利用可能になり得る。湿潤フィラーは、湿潤フィラーの合計重量に対して少なくとも20重量%、例えば、湿潤フィラーの合計重量に対して重量基準で少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50重量%、又は20%~80%、30%~80%、30%~70%、30%~60%、40%~80%、40%~70%、40%~60%の液体含量を有し得る。
【0076】
フィラーを湿潤するのに使用される液体は、水性液体、例えば、限定されないが、水であり得、又はこれを含み得る。液体は、少なくとも1つの他の成分、例えば、限定されないが、塩基(複数可)、酸(複数可)、塩(複数可)、溶媒(複数可)、界面活性剤(複数可)、カップリング剤(複数可)、及び/若しくは加工助剤(複数可)並びに/又はこれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0077】
任意選択として、混合物は、1つ以上の非湿潤フィラー(例えば、本明細書に記載されているように湿潤していない任意のフィラー、例えば、乾燥フィラー、例えば、10重量%以下の液体を有するフィラー)をさらに含み得る。
【0078】
湿潤フィラー複合体を作製するのに使用されるフィラーは、エラストマーと共に使用される任意の従来のフィラー、例えば、限定されないが、カーボンブラック、シリカ、カーボンブラックを含むフィラー、シリカを含むフィラー、及び/又はこれらの任意の組み合わせを含めた補強フィラーであり得る。フィラーは、粒子状又は繊維状又はプレート様であり得る。例えば、粒子状フィラーは、別個の物体でできている。かかるフィラーは、多くの場合において、3:1以下、又は2:1以下、又は1.5:1以下のアスペクト比(例えば、長さ対直径)を有し得る。繊維状フィラーは、例えば、2:1以上、3:1以上、4:1以上、又はこれを超えるアスペクト比を有し得る。典型的には、エラストマーを補強するために使用されるフィラーは、微視的(例えば、数百ミクロン以下)又はナノスケール(例えば、1ミクロン未満)である寸法を有する。カーボンブラックの場合、別個の粒子状カーボンブラック体は、一次粒子から形成され且つ一次粒子自体ではない凝集体又は凝集塊を指す。他の実施形態において、フィラーは、プレート様構造を有し得、例えば、グラフェン及び還元酸化グラフェンであり得る。
【0079】
本発明のタイヤトレッドにおいて使用されるカーボンブラックは、未処理のカーボンブラック若しくは処理されたカーボンブラック又はこれらの混合物であり得る。フィラーは、ペレット、フワフワした粉末、顆粒、及び/又は凝集塊の形態の湿潤カーボンブラックであり得、又はこれを含み得る。湿潤カーボンブラックは、例えば、ペレタイザー、流動床又は湿潤フィラーを作製するための他の装置において、ペレット、顆粒、又は凝集塊に形成され得る。
【0080】
本発明のタイヤトレッドにおいて使用されるフィラーは、化学的に処理(例えば、化学的に処理されたカーボンブラック、化学的に処理されたシリカ、ケイ素処理されたカーボンブラック)及び/又は化学的に修飾されていてよい。フィラーは、有機基(複数可)が結合したカーボンブラックであり得、又はこれを含み得る。フィラーは、フィラー(例えば、ケイ素コーティングされた材料、シリカコーティングされた材料、カーボンコーティングされた材料)に存在する1つ以上のコーティングを有し得る。フィラーは、酸化されていてよく、及び/又は、他の面処理を有し得る。フィラーは、炭素質材料、カーボンブラック、シリカ、ナノセルロース、リグニン、ナノクレイ、金属酸化物、金属炭酸塩、熱分解炭素、再生利用カーボン、回収カーボン、rCB、グラフェン、酸化グラフェン、還元型酸化グラフェン、カーボンナノチューブ、単層カーボンナノチューブ、複層カーボンナノチューブ、又はこれらの組み合わせ、又はこれらの対応するコーティングされた材料若しくは化学処理された材料から選択される少なくとも1つの材料を含み得る。シリカ、カーボンブラック、又は使用可能な他のフィラーの種類に関しては限定されない。フィラーに関するさらなる詳細は、本明細書における他のセクションに付与されている。フィラーは、任意の重量比、例えば、1:99~99:1又は25:75~75:25又は45:55~55:45の重量比範囲のカーボンブラック及びシリカのブレンドであり得、又はこれを含み得る。
【0081】
湿潤カーボンブラックは、以下のうちの1つ以上であり得る:
-乾燥していないカーボンブラックペレット;及び/又は
-例えばペレタイザーにおいて水で湿潤される乾燥したカーボンブラックペレット;及び/又は
-ペレタイザーにおいて粉砕され次いで水で再湿潤される乾燥したカーボンブラックペレット;及び/又は
-水と組み合わされた乾燥したカーボンブラックペレット;及び/又は
-水と組み合わされたフワフワした粉末、顆粒、若しくは凝集塊。
【0082】
典型的なカーボンブラックの製造において、カーボンブラックは、乾燥した、微細な粒子状の(フワフワした)材料として最初に調製される。フワフワしたカーボンブラックは、従来のペレット化プロセスによって、例えば、カーボンブラックを液体と合わせること、例えば、水を添加して混合物をピンペレタイザーに供給することによって高密度化され得る。ピンペレタイザーは、当該分野において周知であり、米国特許第3,528,785号明細書に記載されているピンペレタイザーが挙げられる。得られる湿潤ペレットは、次いで、さらなる取り扱い及び輸送の前に、制御された温度及びパラメータ下で加熱されて液体をペレットから除去する。代替のプロセスにおいて、カーボンブラックペレットは、乾燥工程を省略したプロセスによって製造され得る。かかるプロセスにおいて、ペレット化されたカーボンブラックは、湿潤カーボンブラックの合計重量を基準にして少なくとも20重量%のプロセス水を含む。これらの「乾燥していないカーボンブラック」ペレットは、ペレット化の後に、主張されているプロセスにおいて直接使用され得る。代替的には、乾燥したカーボンブラックペレット(例えば、市販のカーボンブラックペレット)は、ペレタイザーにおいて再湿潤され得る。ペレットは、例えば、ジェットミルにおいて、造粒、粉砕、分類、及び/又は破砕され得る。得られるカーボンブラックは、フワフワした形態であり、ペレタイザーにおいて再ペレット化され得、又は、他の場合には、カーボンブラックを湿潤するための水の存在下で圧縮若しくは凝集され得る。代替的には、フワフワしたカーボンブラックは、当該分野において公知である装置によって、他の形態、例えば、レンガ状の形態に圧縮され得る。別の任意選択として、フワフワしたカーボンブラックは、流動床、噴霧器、ミキサー、又は回転ドラム及び同種のものを使用することによって湿潤され得る。液体が水であるとき、乾燥していないカーボンブラック又は再湿潤されているカーボンブラックは、湿潤カーボンブラックの合計重量に対して20%~80%、30%~70重量%又は他の範囲、例えば、55%~60重量%の範囲の含水率を達成し得る。
【0083】
本発明のタイヤトレッドにおいて使用されるカーボンブラックは、補強カーボンブラック及び半補強カーボンブラックのうちのいずれのグレードであってもよい。ASTMグレードの補強グレードの例は、N110、N121、N134、N220、N231、N234、N299、N326、N330、N339、N347、N351、N358、及びN375カーボンブラックである。ASTMグレードの半補強グレードの例は、N539、N550、N650、N660、N683、N762、N765、N774、N787、N990カーボンブラック及び/又はN990グレードのサーマルブラックである。
【0084】
カーボンブラックは、例えば、20m2/g~250m2/g以上、例えば、少なくとも60m2/g、例えば、60m2/g~150m2/g、又は70m2/g~250m2/g、又は80m2/g~200m2/g、又は90m2/g~200m2/g、又は100m2/g~180m2/g、110m2/g~150m2/g、120m2/g~150m2/gなど、140m2/g~180m2/g、150m2/g~180m2/g、140m2/g~170m2/g、150m2/g~170m2/g、140m2/g~160m2/g、又は150m2/g~160m2/gの範囲のいずれの統計的厚さ比表面積(STSA)を有していてもよい。STSA(統計的厚さ比表面積)は、ASTM試験手順D-6556(窒素吸着によって測定される)に基づいて求められる。
【0085】
カーボンブラックは、約30mL/100g~約150mL/100g、例えば、約30mL/100g~約125mL/100g、約30mL/100g~約115mL/100g、約50mL/100g~約150mL/100g、約50mL/100g~約125mL/100g、約50mL/100g~約115mL/100g、約70mL/100g~約150mL/100g、約70mL/100g~約125mL/100g、約70mL/100g~約115mL/100g、約80mL/100g~約150mL/100g、約80mL/100g~約125mL/100g、約80mL/100g~約115mL/100g、又は約80mL/100g~約100mL/100gの範囲の圧縮吸油値(COAN)を有し得る。圧縮吸油値(COAN)は、ASTM D3493によって求められる。任意選択として、カーボンブラックは、70mL/100g~115mL/100gのCOANで、60m2/g~1555m2/gの範囲のSTSAを有し得る。
【0086】
記述されているように、カーボンブラックは、ゴムブラック、特に、カーボンブラックの補強グレード又はカーボンブラックの半補強グレードであり得る。Cabot Corporationから入手可能な商標Regal(登録商標)、Black Pearls(登録商標)、Spheron(登録商標)、Sterling(登録商標)、Propel(登録商標)、Endure(登録商標)、及びVulcan(登録商標)、Birla Carbonから入手可能(以前はColumbian Chemicalsから入手可能)な商標Raven(登録商標)、Statex(登録商標)、Furnex(登録商標)、及びNeotex(登録商標)、並びにCD及びHV系列、並びに、Orion Engineered Carbons(以前はEvonik and Degussa Industries)から入手可能な商標Corax(登録商標)、Durax(登録商標)、Ecorax(登録商標)、及びPurex(登録商標)、並びにCK系列で販売されているカーボンブラック、並びに、ゴム又はタイヤ適用における使用に好適な他のフィラーもまた、様々な実施による使用のために活用されてよい。好適な化学的に官能化されたカーボンブラックとして、国際公開第96/18688号パンフレット及び米国特許出願公開公報第2013/0165560号明細書に開示されているものが挙げられ、これらの開示は、参照により本明細書に援用される。これらのカーボンブラックのいずれかの混合物が用いられてよい。ASTMグレード及びゴムとの混合のために選択される典型的な値を超える表面積及び構造を有するカーボンブラック、例えば、その開示が参照により本明細書に援用される米国特許出願公開公報第2018/0282523号明細書に記載されているものが、本発明のタイヤトレッドに使用されてよい。
【0087】
カーボンブラックは、酸化カーボンブラック、例えば、酸化剤を使用して面処理されているカーボンブラックであり得る。酸化剤として、限定されないが、空気、酸素ガス、オゾン、NO2(NO2及び空気の混合物を含む)、過酸化物、例えば、過酸化水素、過硫酸ナトリウム、カリウム、又はアンモニウムを含めた過硫酸塩、次亜ハロゲン酸塩、例えば、次亜塩素酸、亜ハロゲン酸、ハロゲン酸、又は過ハロゲン酸ナトリウム(例えば、亜塩素酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、又は過塩素酸ナトリウム)、酸化性酸、例えば硝酸、及び、遷移金属含有酸化剤、例えば、過マンガン酸塩、四酸化オスミウム、酸化クロム、又は硝酸セリウムアンモニウムが挙げられる。酸化剤の混合物、特に、ガス状酸化剤、例えば、酸素及びオゾンの混合物が使用されてよい。加えて、イオン性又はイオン化可能な基を顔料面に導入するための他の面修飾方法、例えば、塩素化及びスルホン化を使用して調製されるカーボンブラックが使用されてもよい。酸化カーボンブラックを生じるために用いられ得るプロセスは当該分野において公知であり、いくつかの種類の酸化カーボンブラックが市販されている。
【0088】
カーボンブラックは、ファーネスブラック、ガスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、プラズマブラック、又は再生利用ブラック(若しくはrCB)、或いはケイ素含有種、及び/又は金属含有種、及び/又は同種のものを含有する炭素生成物であり得る。カーボンブラックは、本発明の目的で、少なくとも1つの炭素相及び少なくとも1つの金属含有種相又はケイ素含有種相を含む多相凝集体、すなわち、ケイ素処理されたカーボンブラックであり得る。ケイ素処理されたカーボンブラックにおいて、ケイ素含有種、例えば、ケイ素の酸化物又は炭化物は、カーボンブラックの本質的部分としてのカーボンブラック凝集体の少なくとも一部分を通して分布される。ケイ素処理されたカーボンブラックは、コーティングされた又は他の場合には修飾されたカーボンブラック凝集体ではないが、実際には、二相凝集粒子を表す。1相が、黒鉛晶子及び/又はアモルファスカーボンとして依然存在する炭素である一方で、第2相は、シリカであり、恐らくは他のケイ素含有種である)。そのため、ケイ素処理されたカーボンブラックのケイ素含有種相は、凝集体の少なくとも一部分全体を通して分布されている、凝集体の本質的部分である。ECOBLACK(商標)ケイ素処理されたカーボンブラックは、Cabot Corporationから入手可能である。これらのケイ素処理されたカーボンブラックの製造及び特性は、米国特許第6,028,137号明細書に記載されており、その開示は、参照により本明細書に援用される。
【0089】
ケイ素処理されたカーボンブラックは、主にカーボンブラックの凝集体面でケイ素含有区域を含み得るが、依然としてカーボンブラックの部分であり、及び/又は、ケイ素処理されたカーボンブラックは、カーボンブラック凝集体全体を通して分布されているケイ素含有区域を含み得る。ケイ素処理されたカーボンブラックは、酸化され得る。ケイ素処理されたカーボンブラックは、ケイ素処理されたカーボンブラックの重量を基準にして、重量で約0.1%~約50%のケイ素を含有し得る。これらの量は、全て、ケイ素処理されたカーボンブラックの重量を基準にして、約0.5重量%~約25重量%、約1重量%~約15重量%のケイ素、約2重量%~約10重量%、約3重量%~約8重量%、約4重量%~約5重量%又は~約6重量%であり得る。
【0090】
当業者は、ケイ素処理されたカーボンブラックのケイ素含量とは別に、粒子の面もまた、シリカ及びカーボンブラックの量が変動し得ることを認識する。例えば、ケイ素処理されたカーボンブラックの面領域は、約5%~約95%のシリカ、例えば、約10%~約90%、約15%~約80%、約20%~約70%、約25%~約60%、約30%~約50%、又は約35%~約40%、例えば、最大約20%又は最大約30%のシリカを含んでいてよい。面におけるシリカの量は、ヨウ素価(ASTM D-1510)及び窒素吸着(すなわち、BET、ASTM D6556)によって測定されるように、粒子の表面積間の差によって求められ得る。
【0091】
別の任意選択として、フィラー、例えば、カーボンブラックは、化学的に処理され得る。例えば、カーボンブラックは、結合した少なくとも1つの有機基を有し得る。結合は、開示が参照により本明細書に援用される、例えば、米国特許第5,554,739号明細書;米国特許第5,630,868号明細書;米国特許第5,672,198号明細書;米国特許第5,707,432号明細書;米国特許第5,851,280号明細書;米国特許第5,885,335号明細書;米国特許第5,895,522号明細書;米国特許第5,900,029号明細書;5,922,118号明細書に詳述されているように、少なくとも1つの有機基がジアゾニウム塩置換基を有するジアゾニウム反応を介して生じ得る。
【0092】
本発明のタイヤトレッドでは、本発明の複合体又は当該複合体を含むコンパウンドにおいて、1を超えるフィラーの組み合わせが使用され得る。組み合わせは、ゴム補強カーボンブラック(複数可)及びシリカ、例えば、沈降シリカを含み得、組み合わせは、少なくとも2.7~1.0のカーボンブラック対シリカ重量比を含んでいてよい。
【0093】
フィラーに関して、1つ以上の種類のシリカ、又はシリカ(複数可)の任意の組み合わせが、本発明の任意の実施形態において使用され得る。シリカは、沈降シリカ、ヒュームドシリカ、シリカゲル、及び/又はコロイダルシリカを含み得、又はこれであり得る。シリカは、未処理のシリカ及び/又は化学処理されたシリカであり得、又はこれを含み得る。シリカは、エラストマー複合体を補強するのに好適で有り得、約20m2/g~約450m2/g;約30m2/g~約450m2/g;約30m2/g~約400m2/g;又は約60m2/g~約250m2/g、約60m2/g~約250m2/g、約80m2/g~約200m2/gのブルナウアーエメットテラー表面積(BET)によって特徴付けられ得る。高分散性沈降シリカが、本方法におけるフィラーとして使用され得る。高分散性沈降シリカ(「HDS」)は、エラストマー性マトリクスにおいて解離及び分散する実質的能力を有する任意のシリカを意味することが理解される。かかる分散の決定は、エラストマー複合体の薄片において電子又は光学顕微鏡によって公知の方法で観察され得る。HDSの市販グレードの例として、WR Grace & CoからのPerkasil(登録商標)GT3000GRANシリカ、Evonik IndustriesからのUltrasil(登録商標)7000シリカ、Solvay S.A.からのZeosil(登録商標)1165MP、1115MP、Premium及び1200MPシリカ、PPG Industries,Inc.からのHi-Sil(登録商標)EZ160Gシリカ、並びに、Evonik IndustriesからのZeopol(登録商標)8741又は8745シリカが挙げられる。従来の非HDS沈降シリカも使用されてよい。従来の沈降シリカの市販グレードの例として、WR Grace & CoからのPerkasil(登録商標)KS408シリカ、Solvay S.A.からのZeosil(登録商標)175GRシリカ、Evonik IndustriesからのUltrasil(登録商標)VN3シリカ、及びPPG Industries,Inc.からのHi-Sil(登録商標)243シリカが挙げられる。シランカップリング剤が付着した面を有する沈降シリカが使用されてもよい。化学処理された沈降シリカの市販グレードの例として、PPG Industries,Inc.からのAgilon(登録商標)400、454、又は458シリカ、及び、Evonik IndustriesからのCoupsilシリカ、例えばCoupsil(登録商標)6109シリカが挙げられる。
【0094】
上記に記載されているフィラー中の液体量がシリカに等しく適用され得るが、より具体的な例として、シリカが湿潤フィラーの部分又は全体で湿潤フィラーとして使用されるとき、シリカは、全湿潤フィラーの重量を基準にして又は存在する湿潤シリカのみの重量を基準にして、約25重量%~約75重量%、例えば、重量基準で約30%~約75%、約40%~約75%、約45%~約75%、約50%~約75%、約30%~約70%、約40%~約70%、約45%~約70%、約50%~約70%、約30%~約65%、約40%~約65%、約45%~約65%、約50%~約65%、約30%~約60%、重量基準で、約40%~約60%、約45%~約60%、又は約50%~約60%の量で存在する液体を有し得る。
【0095】
典型的には、シリカ(例えば、シリカ粒子)は、全て粒子の合計重量を基準にして、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、又はほぼ100重量%若しくは100重量%、又は約20重量%~約100重量%のシリカ含量を有する。シリカ(複数可)のいずれかは、例えば、結合又は吸着した化学基、例えば、結合又は吸着した有機基を有するように化学的に官能化され得る。シリカ(複数可)の任意の組み合わせが使用され得る。シリカは、部分的に又は全体に、疎水性であるシリカ、又は、処理(例えば、化学処理)によってシリカの面を疎水性にすることによって疎水性になるシリカであるシリカであり得る、疎水性面を有するシリカであり得る。疎水性面は、イオン性基を有さないシラン、例えば、ビス-トリエトキシシリルプロピルテトラスルフィドを疎水性化することによりシリカ粒子を化学的に修飾することによって得てよい。本明細書における使用に好適な疎水性面-処理されたシリカ粒子は、市販の供給源、例えば、PPG IndustriesからのAgilon(登録商標)454シリカ及びAgilon(登録商標)400シリカから得てよい。面シラノール密度が低いシリカ、例えば、例えば焼成プロセスを介して150℃(423.15K)超の温度で脱ヒドロキシル化を通して得られるシリカが、本明細書において使用されてよい。乾燥することなくケーキ又はペースト形態で沈殿プロセスから得られる中間形態のシリカ(乾燥していないシリカ)は、湿潤フィラーとしてミキサーに直接添加されるため、複雑な乾燥工程、及び、沈降シリカの従来の製造において使用されている他の下流の加工工程を排除し得る。
【0096】
任意の実施形態において及び任意の工程において、カップリング剤は、カップリング剤が複合体に分散されることになる機会を有する限り、工程のいずれかにおいて(又は多数の工程若しくは箇所において)導入され得る。カップリング剤は、1つ以上のシランカップリング剤、1つ以上のジルコネートカップリング剤、1つ以上のチタネートカップリング剤、1つ以上のニトロカップリング剤、若しくはこれらの任意の組み合わせであり得、又はこれを含み得る。カップリング剤は、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン(例えば、Evonik IndustriesからのSi69、Struktol CompanyからのStruktol SCA98)、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルファン(例えば、Evonik IndustriesからのSi75及びSi266、Struktol CompanyからのStruktol SCA985)、3-チオシアナトプロピル-トリエトキシシラン(例えば、Evonik IndustriesからのSi264)、ガンマ-メルカプトプロピル-トリメトキシシラン(例えば、Evonik IndustriesからのVP Si163、Struktol CompanyからのStruktol SCA989)、ガンマ-メルカプトプロピル-トリエトキシシラン(例えば、Evonik IndustriesからのVP Si263)、ジルコニウムジネオアルカノラトジ(3-メルカプト)プロピオナト-O、N,N’-ビス(2-メチル-2-ニトロプロピル)-1,6-ジアミノヘキサン、S-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)オクタンチオエート(例えば、Momentive,Friendly,WVからのNXTカップリング剤)、及び/又は化学的に同様である若しくは同じ化学基のうちの1つ以上を有するカップリング剤であり得、又はこれを含み得る。商業的名称によるカップリング剤のさらなる具体例として、限定されないが、MomentiveからのNXT Z及びNXT Z-50、Evonik IndustriesからのVP Si363が挙げられる。本明細書に記載されているカップリング剤は、シリカの疎水性面修飾(前カップリング又は前処理されたシリカ)を付与するのに使用され得る。エラストマー、添加剤、及びさらなる複合体の任意の組み合わせが、例えば混和器において、エラストマー複合体に添加されてよいことが認識されるべきである。
【0097】
形成されるエラストマー複合体に存在するシリカ(100のゴム当たりの部、又はphrでの)シリカの量は、約0phr~約200phr、約1phr~約200phr、又は1phr~10phr、又は1phr~20phr、又は1phr~25phr、又は5~190phr、又は10~180phr、又は約15phr~約180phr、約55phr~約150phr、約10phr~約100phr、約20phr~約150phr、約30phr~約100phr、約25phr~約100phr、約25phr~約80phr、約35phr~約115phr、約35phr~約100phr、約40phr~約110phr、約40phr~約100phr、約40phr~約90phr、約40phr~約80phr、及び同等のものであり得る。
【0098】
他のフィラーは、米国特許出願公開公報第2018/0282523号明細書及び欧州特許第2423253(B1)号明細書に開示されており、これらの開示は、参照により本明細書に援用される。
【0099】
湿潤フィラー複合体及びトレッドゴムコンパウンドに仕込まれるフィラー(例えば、湿潤フィラー単独又は他のフィラーを有する湿潤フィラー)の量は、30phr~150phr、例えば、約5phr~100phr、10phr~100phr、20phr~100phr、30phr~100phr、40phr~100phr、50phr~100phr、若しくは5phr~70phr、10phr~70phr、20phr~70phr、30phr~70phr、35phr~70phr、40phr~70phr、5phr~65phr、10phr~65phr、20phr~65phr、30phr~65phr、35phr~65phr、40phr~65phr、5phr~60phr、10phr~60phr、20phr~60phr、30phr~60phr、35phr~60phr、40phr~60phr、5phr~50phrの範囲にあり得、又はこれらの範囲のうちの1つ以上の範囲内若しくは外の他の量であり得る。他の範囲には、約15phr~約180phr、約20phr~約150phr、約25phr~約80phr、約30phr~約150phr、約35phr~約115phr、約35phr~約100phr、約40phr~約100phr、約40phr~約90phr、約40phr~約80phr、約29phr~約175phr、約40phr~約110phr、約50phr~約175phr、約60phr~約175phr、及び同等の範囲が含まれる。フィラーは、単独であろうと、1つ以上の他のフィラーを有していようと、本明細書に開示されているいずれのフィラー、例えば、カーボンブラック、シリカ、又はケイ素処理されたカーボンブラックであってもよい。
【0100】
例として、カーボンブラックは、30phr~70phr、又は40phr~65phr、又は40phr~60phrの範囲の仕込み量でエラストマーに分散され得る。より具体的な例として、エラストマーが天然ゴム単独又は1つ以上の他のエラストマーを含むものであって、フィラーがカーボンブラック単独又は1つ以上の他のフィラー(例えば、シリカ又はケイ素処理されたカーボンブラック)を含むものであり、カーボンブラックは、30phr~70phr、又は40phr~65phr、又は40phr~60phrの範囲の仕込み量で天然ゴムに分散され得る。
【0101】
本発明のタイヤ及びトレッドは、ある特定の湿潤混合複合体を硬化することによって調製されるコンパウンドを用いて作製され得る。かかる複合体は、ミキサーに固体エラストマー及び湿潤フィラーを1又は多数の工程又は添加で投入することによって作製され得る。固体エラストマーは、湿潤フィラーをミキサーに投入する前に、マスチック化されて、約90℃(363.15K)又は100℃(373.15K)以上の温度にされ得る。代替的には、固体エラストマーは、フィラーの任意の実際の分散の開始前に、湿潤フィラーの少なくとも一部分によって約90℃(363.15K)又は100℃(373.15K)以上の温度にマスチック化され得る。
【0102】
混合に関して、混合は、1つ以上の混合工程で実施され得る。混合は、少なくとも固体エラストマー及び湿潤フィラーがミキサーに投入されてエネルギーがミキサーの1つ以上のロータを駆動する混合系に印加されたときに開始する。1つ以上の混合工程は、投入工程が完了した後に行われ得、又は任意の長時間にわたって投入工程と重複し得る。本発明の目的で、投入工程は、混合工程が完了する前に完了する。
【0103】
混合の際、導入される混合物及び/又は湿潤フィラーに存在する少なくともいくらかの液体は、蒸発によって少なくとも部分的に除去される。任意選択として、混合物からの任意の液体の(重量%で)大部分の除去が蒸発によって行われる。例えば、混合の際に除去される液体の合計重量を基準にして、少なくとも50重量%の液体が除去される。除去される液体の合計重量は、湿潤フィラーの液体分と、ミキサーから吐出されるときに複合体に残存する任意の液体及び複合体がミキサーから吐出されるときにミキサーに存在する又はミキサーから吐出される任意の液体との間の差から求められ得る。例えば、複合体が吐出されるとき、さらなる液体(例えば、蒸発していない液体)が、複合体と共に若しくは複合体内にのいずれかで、又はミキサーに設けられた出口を通して吐出されてもよい。蒸発による液体除去は、ミキサーに投入される湿潤フィラーに含まれる全液体の少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、又は51重量%~100重量%、又は51重量%~95重量%を表し得る。任意選択として、1つ以上の混合工程又は段階により、圧搾、圧縮、及び/若しくは絞り出し、又はこれらの任意の組み合わせによって混合物から液体の一部分をさらに除去することができる。
【0104】
複合体を調製するのに使用され得るミキサーに関して、フィラーを固体エラストマーと合わせる(例えば、一緒に混合する又は一緒に混和する)ことが可能である任意の好適なミキサーが利用されてよい。ミキサー(複数可)は、バッチミキサー又は半連続若しくは連続ミキサーであり得る。ミキサー及びプロセスの組み合わせが利用されてよく、ミキサーは、縦列順序で使用されてよく、及び/又は、他の加工装置と一体化されていてよい。ミキサーは、内部若しくは閉鎖ミキサー又はオープンミキサー、或いは押出機若しくは連続混和器若しくは混練ミキサー又はこれらの組み合わせであり得る。ミキサーは、フィラーを固体エラストマーに組み入れることが可能であり得、並びに/又はフィラーをエラストマーに分散させること及び/若しくはフィラーをエラストマーに分布させることが可能であり得る。ゴムコンパウンドを作製するための市販のミキサーのいずれか1つ又は組み合わせが本方法に使用され得る。
【0105】
典型的なバッチ混合チャンバの頂部は、「浮動錘」又は「ラム」と一般的に称される空気又は油圧ピストンによって上昇又は低下され得る。ラムは、材料(例えば、少なくとも固体エラストマー及び湿潤フィラー)を供給するために上昇され、圧力を混合物に印加して混合チャンバ内に混合物を留めるために低下される。典型的には、バッチのフィルファクター、及びラム圧が選択されることにより、ラムがその最も低い位置に達してラムとロータとの間の隙間を最小にすることができ、これにより良好なフィラー分散を可能にする。その最小の位置を超えたラムの垂直距離は、「ラムのたわみ」として知られている。
【0106】
ミキサーは、1つ以上のロータ(少なくとも1つのロータ)を有し得る。例えば、各ロータは、その自身の円筒状チャンバ内で回転することができ、このチャンバは、他のロータ(複数可)のチャンバ(複数可)に接続され得る。軸は、エネルギー(電気エネルギー)が印加される混合系によって制御される。ロータは、エネルギーを混合物に与えるデバイス及び/又は混合物を形成する構成要素であるとされ得る。ロータは、内部回路或いは蒸気若しくは水又は冷却及び/若しくは加熱のための他の流体のチャネルを有して設計され得る。少なくとも1つのロータ又は1つ以上のロータが、スクリュー式ロータ、交差反転式ロータ、接線ロータ、混練ロータ(複数可)、押出機に使用されるロータ、有意な総比エネルギーを与えるロールミル、又はクリーパーミル(creper mill)であり得る。
【0107】
1つ以上の混合工程は、単一の混合工程、例えば、1段階又は単一段階の混合工程又はプロセスであり得、混合は、以下の条件のうちの1つ以上で実施される:ミキサー温度の少なくとも1つが、混合時間の少なくとも50%で少なくとも0.6m/sの先端速度にて作動する1つ以上のロータを有する温度制御された手段、若しくは65℃(338.15K)以上の温度Tzに設定された少なくとも1つの温度制御手段によって制御され、又は混合が、ミキサーが示された温度に達する前に1つ以上のゴム薬品の実質的非存在下で実施される。ある特定の場合において、単一段階又は単一混合工程において、複合体は、10重量%以下の液体含量で吐出され得る。他の実施形態において、混合工程のうちの1つが上記の記述されている条件のうちの1つ以上の下で実施される限り、2つ以上の混合工程又は混合段階が実施され得る。
【0108】
多段階混合では、任意選択として、第2又は任意の数の後の混合段階により、第1段階の材料混合のみによって混合された複合体と比較してコンパウンド(又は複合体)特性を改善することができる。換言すると、単一段階混合から形成される複合体は、さらなる段階の混合プロセスから形成される、例えば、第2段階に供された複合体に匹敵し得る。かかる多段階混合が利用されるとき、複合体特性(例えば、損失正接及び/又は弾性率比)のうちの1つ以上が改善され得る。改善は、単一段階混合のみからの複合体と比較して1つ以上の特性の5%、10%、又は15%以上の改善であり得る。この改善は、使用されるフィラーの種類とは無関係に且つエラストマーフィラーの種類とは無関係に得られ得る。
【0109】
ある特定の実施形態において、方法は、例えば、少なくとも1つの温度制御手段の使用を介して、制御されたミキサー温度で混合を行うことを含む。ミキサー温度を制御することは、ミキサーの少なくとも1つの面の温度を制御することを指す。任意選択として、ミキサー温度は、投入、及び混合工程の少なくとも1つの両方の間、制御され得る。温度制御手段は、ミキサー上及び/若しくは内の温度制御デバイスであり得、又は、他の場合には、ミキサーの少なくとも1つの面及び/若しくは1つ以上の部を加熱若しくは冷却するミキサーに付随し得る(例えば、ミキサーに接続されている)。
【0110】
温度制御手段は、限定されないが、ミキサーの1つ以上の部におけるチャネルを通しての熱伝導流体の流動又は循環であり得る。例えば、熱伝導流体は、水又は熱伝導油であり得る。例えば、熱伝導流体は、ロータ、混合チャンバ壁、ラム、及びドロップドアを通って流動し得る。
【0111】
少なくとも1つの温度制御手段の温度は、例として、1つ以上の温度制御単位(「TCU」)によって設定及び維持され得る。この設定温度、又はTCU温度はまた、本明細書において「Tz」とも称される。熱伝導流体を組み入れる温度制御手段の場合、Tzは、流体自体の温度の指標である。温度制御手段によって付与される加熱又は冷却は、Tzに応じて、ミキサーの少なくとも1つの面又はミキサーの1つ以上の部に伝導され;熱は、少なくとも1つの面に又はこれから、次いで、ミキサーにおける材料に又はこれから伝導されて、混合物又はその一部分の温度、例えば、混合物の局所温度に影響する。
【0112】
ミキサーは、ミキサー部(複数可)又は混合物の温度のより正確な測定を付与するためにミキサーの異なる部に位置する熱電対を有し得る。
【0113】
最適なTz値は、フィラーの種類に基づいて選択され得る。例えば、カーボンブラック及びケイ素処理されたカーボンブラックを含むフィラーでは(例えば、フィラーの少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、又は全て若しくは実質的に全てがカーボンブラックである)、Tzは、本明細書に記載されている値、例えば、65℃(338.15K)以上又は65℃(338.15K)~100℃(373.15K)を有し得る。フィラーがシリカであるとき、Tz値は、40℃(313.15K)~100℃(373.15K)、例えば、40℃(313.15K)~90℃(363.15K)、40℃(313.15K)~80°、40℃(313.15K)~75℃(348.15K)、50℃(323.15K)~100℃(373.15K)、50℃(323.15K)~90℃(363.15K)、50℃(323.15K)~80°、又は50℃(323.15K)~75℃(348.15K)の範囲であり得る。
【0114】
混合工程の間に混合物に印加されるエネルギーは、ミキサーの設定及びプロセス制御を通して制御され得る。例えば、バッチミキサーにおいて、総比エネルギーは、固体エラストマー及び/又は湿潤フィラーの投入と、乾燥重量基準での複合体のkg当たりの吐出との間にロータ(複数可)に印加されるエネルギーを考慮するものである。連続ミキサーでは、総比エネルギーは、定常状態条件における乾燥重量基準での出力のkg当たりの入力である。多段階混合を有するプロセスでは、総比エネルギーは、各混合プロセスからの比エネルギーの総和である。総比エネルギーの決定は、吐出された複合体を成型又は形成するのに使用されるエネルギー量を好ましくは含まない(例えば、複合体のロールミリングのエネルギーを除外する)。得られる「総比エネルギー」は、本明細書において定義されているように、乾燥重量基準で、複合体の質量当たりの、1つ以上のロータを駆動する混合系に印加されるエネルギーER(例えば、電気エネルギー)である。この総比エネルギーはまた、E合計とも表記され得る。本明細書に記載されているように、現プロセスは、より長い混合時間と、妥当な時間量での水の蒸発又は除去とのバランスを取る選択された操作条件下で総比エネルギーを付与する。
【0115】
任意選択として、プロセスは、混合工程の少なくとも1つにおいて、得られる総比エネルギーが、複合体のkg当たり少なくとも1,400kJ又は少なくとも1,500kJ、例えば、少なくとも1,600kJ/kg、少なくとも1,700kJ/kg、少なくとも1,800kJ/kg、少なくとも1,900kJ/kg、少なくとも2,000kJ/kg、少なくとも2,500kJ/kg、又は少なくとも3,000kJ/kgとなるように混合を行うことを含む。任意選択として、総比エネルギーは、約1,400kJ/複合体kg又は約1,500kJ/複合体kg(若しくは、ミキサーに存在する混合物のkg当たり)~約10,000kJ/複合体kg(若しくは、ミキサーに存在する混合物のkg当たり)、例えば、2,000kJ/kg~約5,000kJ又は1,500kJ/kg~8,000kJ/kg、1,500kJ/kg~7,000kJ/kg、1,500kJ/kg~6,000kJ/kg、1,500kJ/kg~5,000kJ/kg、1,500kJ/kg~3,000kJ/kg、1,600kJ/kg~8,000kJ/kg、1,600kJ/kg~7,000kJ/kg、1,600kJ/kg~6,000kJ/kg、1,600kJ/kg~5,000kJ/kg、1,600kJ/kg~4,000kJ/kg、1,600kJ/kg~3,000kJ/kg、或いはこれらの範囲のいずれかにおける他の値の範囲であり得る。
【0116】
任意選択として、プロセスは、混合工程の少なくとも1つにおいて、1つ以上のロータが、少なくとも0.5m/sの先端速度で混合時間の少なくとも50%の間又は少なくとも0.6m/sの先端速度で混合時間の少なくとも50%の間にわたって作動するような混合を行うことを含む。混合系に入力されるエネルギーは、少なくとも部分的に、少なくとも1つのロータの速度及びロータの種類の関数である。ロータの直径及びロータの速度を考慮した先端速度は、以下の式によって算出され得る:
先端速度m/s=π×(ロータ直径,m)×(回転速度,rpm)/60。
【0117】
先端速度が混合の過程にわたって変動し得るため、任意選択として、少なくとも0.5m/s又は少なくとも0.6m/sの先端速度が、混合時間の少なくとも50%、例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の間、又は混合時間の実質的に全ての間、達成される。先端速度は、混合時間の少なくとも50%の間、又は上記で列挙されている混合の他の部分の間、少なくとも0.6m/s、少なくとも0.7m/s、少なくとも0.8m/s、少なくとも0.9m/s、少なくとも1.0m/s、少なくとも1.1m/s、少なくとも1.2m/s、少なくとも1.5m/s、又は少なくとも2m/sであり得る。先端速度は、混合時間を最小にするように、又は0.6m/s~10m/s、0.6m/s~8m/s、0.6~6m/s、0.6m/s~4m/s、0.6m/s~3m/s、0.6m/s~2m/s、0.7m/s~4m/s、0.7m/s~3m/s、0.7m/s~2m/s、0.7m/s~10m/s(例えば、混合時間の少なくとも50%の間又は本明細書に記載されている他の混合時間の間に)となるように選択され得る。代替において又は加えて、先端速度は、全体を通して最大になるように選択され得る。
【0118】
湿潤混合複合体は、10%以下のフィラー収率損失、全複合体の10重量%以下の液体含量で、少なくとも20phrの仕込み量でエラストマーに分散されたフィラーと共にミキサーから吐出され得る。吐出(バッチ混合における「ダンピング」)は、ゴム劣化を最小にするように選択される時間又は温度又は比エネルギー若しくは出力パラメータに基づいて行われ得る。一実施形態において、混合時間は、投入が完了する期間から吐出の時間までで決定され得る。バッチ内部ミキサーでは、混合時間は、ラムダウンタイム、ラムが最低位置で作動して完全に閉鎖される時間から求められ得る。他の実施形態において、ラムの最低位置(すなわち、その完全に据え付けられた位置)は、ある特定の量のラムのたわみを可能にし得る。混合時間は、さらなる成分を投入するとき、例えば、エラストマー及び/又はフィラーの1つ以上のさらなる部分を投入するときの期間を包含しない。任意選択として、連続ミキサーでは、名目の混合時間(又は滞留時間)は、ミキサーチャンバ体積及び体積生産速度から算出され得る。
【0119】
任意選択として、吐出は、規定の混合時間に基づいて行われる。混合の開始と吐出との間の混合時間は、約1分以上、例えば、約1分~40分、約1分~30分、約1分~20分、若しくは1分~15分、若しくは5分~30分、若しくは5分~20分、若しくは5分~15分、若しくは1分~12分、若しくは1分~10分、若しくは3分~30分、又は他の時間であり得る。代替的には、バッチ内部ミキサーについて、ラムダウンタイムは、バッチ混合時間に関する時間をモニタリングするパラメータとして使用され得る。例えば、ラムダウンタイムは、3分~30分、3分~20分、3分~10分、5分~30分、5分~20分、5分~10分の範囲であり得る。
【0120】
任意選択として、吐出は、ダンピング又は吐出温度に基づいて行われる。例えば、ミキサーは、120℃(393.15K)~180℃(453.15K)、120℃(393.15K)~190℃(463.15K)、130℃(403.15K)~180℃(453.15K)、例えば、140℃(413.15K)~180℃(453.15K)、150℃(423.15K)~180℃(453.15K)、130℃(403.15K)~170℃(443.15K)、140℃(413.15K)~170℃(443.15K)、150℃(423.15K)~170℃(443.15K)の範囲のダンピング温度、又はこれらの範囲内若しくは外の他の温度を有し得る。
【0121】
吐出された複合体は、以下の式で概説される、複合体の合計重量を基準にして10重量%以下の液体含量を有し得る:
複合体の液体含量(%)=100*[液体の質量]/[液体の質量+乾燥複合体の質量]
【0122】
吐出された湿潤混合複合体は、複合体の合計重量を基準にして10重量%以下、例えば、複合体の合計重量を基準にして9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、2重量%以下、又は1重量%以下の液体含量を有し得る。この量は、プロセスの終わりにミキサーから吐出された複合体の合計重量を基準にして約0.1重量%~10重量%、又は約0.5重量%~9重量%、又は約0.5重量%~約7重量%の範囲であり得る。液体含量(又は「水分含量」)は、複合体の合計重量を基準にした、複合体に存在する液体の測定重量%であり得る。吐出される複合体に保持されていない、ミキサーに存在するさらなる液体が任意選択的に存在していてよい。この過剰な液体は、複合体から算出されるいずれの液体含量の部でもない。
【0123】
フィラー収率損失は、エラストマー中のフィラーの理論最大phr(ミキサーに投入される全てのフィラーが複合体に組み入れられていると仮定する)から、吐出された複合体中のフィラーの測定phrを引くことに基づいて求められる。エラストマーへのフィラーの不充分な組み入れに起因して複合体の面にはがれて存在するフィラーは、フィラー収率損失に含まれる。この測定量は、熱重量分析(TGA)から得られ得る。そのため、フィラー収率損失(%)は、以下のように算出される:
[((フィラーの理論phr)-(フィラーの測定phr))/((フィラーの理論phr))]×100
【0124】
任意選択として、湿潤フィラー、及び天然ゴムを含む固体エラストマーの(乾燥重量基準での)フィルファクターは、70%以下、又は68%以下、例えば、60%~70%、60%~68%、又は65%~68%の範囲であり得る。かかる条件は、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の天然ゴムを含む固体エラストマー、例えば、天然ゴム並びに少なくとも1つのさらなるエラストマー、例えば、ポリブタジエン及び/若しくはスチレン-ブタジエンゴム、又は本明細書に開示されている他のエラストマーのブレンドに使用され得る。
【0125】
任意選択として、必ずしも限定されないが、混合の間の複合体からの液体の蒸発速度を含めた、液体放出速度は、複合体のkg当たりの液体の時間平均放出速度として測定され得、この速度は、0.01~0.14kg/(分・kg)若しくは0.01~0.07kg/(分・kg)又はこの範囲未満若しくはこれを超える他の速度であり得る。この放出速度は、混合の間の任意の手段による液体除去の全体の放出速度であり得、又は、蒸発のみによる放出速度であり得る。水性液体の場合において、蒸発速度は、蒸気放出又は蒸気発生速度とされ得る。0.01kg/(分・kg)未満の放出速度は、例えば、65℃(338.15K)未満のTz及び/若しくは1,500kJ/kg未満の比エネルギーレベル、並びに/又は0.5m/s未満若しくは0.6m/s未満の先端速度で液体を除去するために、より長い時間を概して示し得る。0.15kg/(分・kg)超の放出速度は、より短い混合時間を示し得る。時間平均放出速度が最適化されていないと、不充分な分散及びゴム特性を結果として生じ得る。
【0126】
任意選択として、最大圧力が制御され得る。ミキサーがラムを有するバッチミキサーであるとき、ミキサーチャンバ内の圧力は、ラムシリンダに印加される圧力を制御することによる影響を受け得る。
【0127】
任意選択として、多段階混合プロセスは、少なくとも2つの混合工程又は段階を有して、湿潤混合複合体を作製するのに使用され得る。これらの2つの(又はそれを超える)混合工程は、第1混合工程又は段階及び少なくとも第2混合工程又は段階を有する多工程又は多段階混合とされ得る。多段階混合プロセスのうちの1つ以上が、バッチ、連続、半連続、及びこれらの組み合わせであってよい。
【0128】
多段階プロセスに関して、複合体を調製する方法は、第1ミキサーに、少なくともa)1つ以上の固体エラストマー及びb)1つ以上のフィラーを投入又は導入する工程を含み、少なくとも1つのフィラー又は少なくとも1つのフィラーの一部分が、本明細書に記載されている方法のいずれかによる、本明細書に記載されている湿潤フィラー(例えば、フィラーと、湿潤フィラーの合計重量を基準にして少なくとも15重量%の量で存在する液体とを含む湿潤フィラー)である。固体エラストマーを湿潤フィラーと組み合わせることで、第1混合工程又は段階とみなされ得るこの混合工程(複数可)の間に混合物又は複合体を形成する。方法は、液体の少なくとも一部分が、混合の際に行われる蒸発又は蒸発プロセスによって除去される程度まで、この第1混合工程において混合物を混合することをさらに含む。この第1混合工程(1つ以上の混合工程において)又は段階は、第1混合の完了後に、第1混合工程後にミキサーから吐出された混合物(例えば、吐出された混合物)が10重量%以下の液体含量を有することを必要としないという理解で、複合体を形成する先に記載されているプロセスのうちの1つ以上を使用して行われる。すなわち、多段階プロセス(複数可)により、第1ミキサー(又は第1混合工程)から第1混合の完了により得られる混合物は、10重量%を超える液体含量を有し得るが、第1混合工程の開始時の合わされた固体エラストマー及び湿潤フィラーの液体含量と比較して(重量%で)低減された液体含量、例えば、任意の後の混合工程の初めの液体含量より少ない量まで低減された液体含量、例えば、少なくとも50重量%だけ低減された液体含量を有さない。
【0129】
方法は、次いで、同じミキサー(すなわち、第1ミキサー)を使用して及び/又は第1ミキサーと異なる第2ミキサー(複数可)を利用して少なくとも第2混合工程又は段階において混合物を混合又はさらに混合することを含む。
【0130】
第1混合の後、多段階混合のために行われるさらなる混合工程(複数可)は、本明細書に記載されている第1混合工程において利用される混合手順又はパラメータ又は工程のうちのいずれか1つ以上を利用することができる。そのため、さらなる混合工程又は段階を行う際、第1ミキサーと同じ若しくは異なるミキサー設計及び/又は同じ若しくは異なる操作パラメータが、さらなる混合段階において使用され得る。第1混合工程に関して先に記載されているミキサー及びこれらの任意選択並びに/又は混合工程に関して先に記載されている操作パラメータは、さらなる又は第2混合工程において任意選択的に使用され得る(例えば、時間の少なくとも50%で少なくとも0.5m/sの先端速度若しくは時間の少なくとも50%で少なくとも0.6m/s、及び/又は50℃(323.15K)以上、60℃(333.15K)以上、若しくは65℃(338.15K)以上のTzを含む、本明細書に記載されている混合工程。そのため、多段階混合で複合体を調製する方法は、以下のパラメータのうちの1つ以上が、混合工程の少なくとも1つ、混合工程の少なくとも2つ、又は混合工程の全てにおいて利用され得る:
少なくとも1つの温度制御手段が、上記混合の間、65℃(338.15K)以上の温度Tzに設定されている;並びに/又は
上記混合の間、1つ以上のロータが、少なくとも0.5m/sの先端速度で、少なくとも50%の混合時間の間作動して、得られる総比エネルギーが少なくとも1500kJ/kgの複合体となるように混合を行う;並びに/又は
上記投入(a)若しくは上記混合(b)の間に、劣化防止剤及びカップリング剤から選択される少なくとも1つの添加剤を任意選択的に添加し、且つ、ミキサーが120℃(393.15K)以上の温度に達した後、1つ以上のゴム薬品を任意選択的に添加する;並びに/又は
上記投入(a)及び上記混合(b)は、ミキサーが、示した温度に達する前に、1つ以上のゴム薬品の実質的に非存在下で実施される;並びに/又は
ミキサーは、フィルファクターを有し、フィルファクターは、少なくとも固体エラストマー及び湿潤フィラーの乾燥重量基準で、72%以下である。
【0131】
第2ミキサーにおける混合の間、ラム圧は、例えば、以下の条件のうちの1つ以上の下で軽減され得る:
(i)ラムは据え付けられ得るが、ラムに圧力(例えば、5psi(3.448275×10-2Pa)以下の圧力)が本質的に印加されていない。
(ii)ラムは、その最高レベルの少なくとも75%まで上昇される。いくつかのミキサーは、ラムをある特定の高さに位置付けさせることができる。完全に据え付けられた位置におけるラムは、材料がミキサーに投入されたときのラムの典型的な位置である、その最高レベル又は完全に開放された位置まで上昇されることとは対照的に、その最高レベルの0%にある。その最高レベルの少なくとも75%の高さに位置付けられているラムは、その最高レベル(100%)に対して、例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は完全に上昇されて、確実に、ラムと、ミキサーに投入されたエラストマーとの間の接触が最小となるようにする。
(iii)圧力が混合チャンバに印加されないとき、ある特定のラムが、浮動錘、例えば、浮動形態として作動し得る。ラムがエラストマーと接触する場合があるが、印加される圧力は最小である。
(iv)ラムは、混合物と実質的に接触しないように位置付けられる。含量が、例えば、25%と低いフィルファクターを有するとき、ラム高さをその最高レベルの少なくとも75%まで位置付けることは必要ではない場合がある。ラムは、混合物と実質的に接触しない、例えば、ラムの面の(面積で)10%以下が混合物と接触する、例えば、ラムの面の5%以下、又はラムの面の0%が混合物と接触しないような高さに位置付けられ得る。
(v)ラムを装備しないミキサーを選択する。
(vi)混合物のフィルファクターは、乾燥重量基準で、25%~70%、例えば、25%~60%、25%~55%、25%~50%、25%~45%、25%~40%、30%~70%、30%~60%、30%~55%、30%~50%、30%~45%、30%~40%、35%~70%、35%~60%、35%~55%、35%~50%、35%~45%、又は35%~40%の範囲である。フィルファクターを制御することによって、ラム操作又は位置を操る必要がない場合がある。
【0132】
任意選択として、複合体が第2ミキサーから吐出された後、複合体は、例えば、第1若しくは第2のいずれかのミキサー、又は第3ミキサーにおける混合によって、さらなるマスチック化に供され得る。
【0133】
タイヤ、トレッド及びコンパウンド
トレッド及びタイヤは、当業者に容易に明らかである様々な方法によって、混和され、組み立てられ、成型され、成形され及び硬化され得る。
【0134】
本発明のタイヤトレッドは、1つ以上の重ね合わされたエラストマー性層、例えば、タイヤカーカス、又はベルトと、路面に接触する外層又はキャップとの間の内層又は下層内に押出される1つ以上ゴムコンパウンドを含み得る。キャップ又は内層内で重ね合わされた1つ以上のさらなる層又はゾーン状の層が用いられてよい。代替的には、本発明のタイヤトレッドは、マルチゾーン状エラストマー性層を含み得る。例えば、タイヤトレッドを横断する軸方向ゾーンは、赤道面における1つのゴムコンパウンドと、側方の外側平面における1つ以上の異なるゴムコンパウンド(複数可)とによって製作されてよい。1つ以上のトレッド内層において同様のゾーン状の構成が用いられてよい。空隙(溝部又はサイプ)の体積は、マルチゾーン構成を横断して、かかるゾーンにおける異なるゴムコンパウンドの選択によらずに又はよらずに変動し得る。エラストマー性層の厚さは変動され得る。本発明の複合体は、トレッドの外層用、及び、マルチゾーントレッドの赤道面ゾーン用のゴムコンパウンドにおいて使用されて、過剰な発熱を生ずることなくタイヤの動作の際に最大応力の領域において耐摩耗性及びゴム性能を改善し得る。
【0135】
加えて、本発明のタイヤ及びタイヤトレッドは、特にトラック及び重量車における、機械的応力が高い傾向にある内側トレッド及びカーカス構成のショルダー領域において、複合体によって作製されたゴムコンパウンドを含んでいてよい。かかるゴムコンパウンドのゾーン又はビードは、例えば、非常に低い損失正接の、トレッドの内層のより低い機械応力部分における優れた低発熱ゴムコンパウンドと一緒に、マルチゾーン内層設計で使用され得る。かかるショルダー領域における本発明の使用もまた、再トレッド化を容易にするため、トラック及び他の重量車のタイヤに有用なタイヤ寿命を延長する。
【0136】
本発明によるトレッド及びタイヤのゴムコンパウンドは、本発明の複合体に加えて、例えば、加工油及び樹脂を含めた可塑化剤、顔料、酸化防止剤、抗オゾンワックス、硫黄及び/又は過酸化物及び/又はビスマレイミドのいずれかをベースとする架橋系、一酸化亜鉛及びステアリン酸を含む架橋活性化剤、エキステンダー油、シリカを被覆するための1つ以上の剤、例えば、アルコキシシラン、ポリオール又はアミンを含み得る。
【0137】
ゴム組成物(例えば、本発明の複合体から作製されるもの)は、ゴム混和分野において概して公知の方法、例えば、硫黄加硫性構成ゴムを、様々な一般的に使用されているゴム添加剤、例えば、架橋助剤、例えば、硫黄、活性化剤、遅延剤及び促進剤、加工添加剤、例えば、ゴム加工油、粘着付与樹脂を含めた樹脂、シリカ、及び可塑化剤、フィラー、顔料、脂肪酸、酸化亜鉛、ワックス、酸化防止剤及びオゾン劣化防止剤、素練り促進剤及び補強材、例えば、補強粒子、繊維、顆粒及びプレートレット、例えば、カーボンブラック及びシリカ並びにこれらの組み合わせと共に混合することによって混和され得ることが、関連技術における当業者によって容易に理解される。当業者に知られているように、硫黄加硫性材料(ゴム)及び硫黄加硫材料(ゴム)の意図される使用に応じて、上記で言及されている添加剤は、選択されて有効量で一般的に使用され、最適化された混合プロセス段階でコンパウンドに組み入れられる。
【0138】
ゴムコンパウンドは、0~50phrの間のエキステンダー油の量で、パラフィン、芳香又はナフテン油を使用して展開され得る。本発明の複合体によって可能となる任意選択として、エキステンダー油及び樹脂は、ゴムコンパウンド及びタイヤトレッドにおいてより良好な機械的特性及び耐摩耗性を得るために並びに非常に低い油又は樹脂レベルを有するコンパウンドの加工性を改善するために、より少量、例えば、5phr以下、又は2phr以下で使用されてよい。
【0139】
コンパウンドにおいて使用されるとき、脂肪酸、例えば、ステアリン酸は、約0.5~約3phrの量で添加され得る。酸化亜鉛の典型的な量は、約1~約5phrであり得る。ワックスの典型的な量は、約1~約5phrであり得る。微結晶ワックスを使用することができる。解膠剤の典型的な量は、約0.1~約1phrであり得る。典型的な解膠剤は、例えば、ペンタクロロチオフェノール及びジベンズアミドジフェニルジスルフィドであり得る。
【0140】
加硫は、硫黄加硫剤の存在下で行われる。好適な硫黄加硫剤の例として、元素硫黄(遊離硫黄)又は硫黄供与加硫剤、例えば、アミンジスルフィド、ポリマー性ポリスルフィド又は硫黄オレフィン付加物が挙げられる。好ましくは、硫黄加硫剤は、元素硫黄である。当業者に知られているように、硫黄加硫剤は、約0.5~約4phrの範囲、又はさらには、いくつかの状況において、最大約8phr、約1.5~約2.5phr、時折、好ましくは、約2~約2.5phrの範囲の量で使用される。
【0141】
促進剤は、加硫に必要とされる時間及び/又は温度を制御するために、並びに加硫物の特性を改善するために使用される。一実施形態において、単一の促進剤系、すなわち、一次促進剤が使用されてよい。一次促進剤(複数可)は、約0.5~約4phr、好ましくは約0.8~約2.5phrの範囲の合計量で使用され得る。別の実施形態において、一次及び二次促進剤の組み合わせは、加硫物の特性を活性化及び改善するために、第2促進剤が、より少量(約0.05~約3phr)で使用されて、使用され得る。これらの促進剤の組み合わせは、最終的な特性に対して相乗効果を生じることが期待されており、促進剤単独のいずれかの使用によって生ずるよりもいくぶん良好であり得る。加えて、通常の処理温度によっては影響されないが通常の加硫温度で充分な効果を生じる遅延作用促進剤が使用され得る。加硫遅延剤も使用され得る。
【0142】
使用され得る好適な種類の促進剤は、アミン、ジスルフィド、グアニジン、チオ尿素、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、ジチオカルバメート及びキサンテートである。好ましくは、一次促進剤は、スルフェンアミドである。第2の促進剤が使用されるときには、二次促進剤は、好ましくはグアニジン、ジチオカルバメート又はチウラムコンパウンドである。
【0143】
実際には、トレッドゴム組成物は、例えば、内部ゴムミキサーにおける少なくとも1つの非生産性混合工程において、多くの場合において、逐次的な一連の少なくとも1つ、通常2つの、別々且つ個々の予備の内部ゴム混合工程、又は段階において調製され得、複合体が、まず、任意のさらなるフィラー若しくはエラストマー又は他の添加剤(「小部分」)と混合され、続いて、内部ゴムミキサーにおける、又は任意選択的にオープンミルミキサーにおける、仕上げの混合工程(「生産性」混合工程)において、硬化剤(硫黄及び硫黄加硫促進剤)が、より低い温度で、実質的により短い期間、ブレンドされる。
【0144】
典型的には、各内部ゴム混合工程後、ゴム混合物(組成物)は、ゴムミキサーから除去され、40℃(313.15K)未満の温度、例えば、約20℃(293.15K)~約40℃(313.15K)の範囲の温度まで冷却されて、次いで、次の逐次的な混合工程、又は段階のための内部ゴムミキサーに戻されて添加される。非生産性混合段階、続いての生産性混合段階における、かかる温度選択及び取り扱い技術は、当業者に周知されている。
【0145】
仕上げのゴム組成物の混合は、かかる逐次的な混合プロセスによって達成され得る。成分は、少なくとも2つの段階、すなわち、少なくとも1つの「非生産性」又は予備段階、続いての生産性混合段階において混合され得る。仕上げの硬化剤は、混合が、典型的には、先行する非生産性混合工程(複数可)の混合温度(複数可)より低い温度(最大又は最高の温度)で起こる、生産性又は仕上げの混合段階において典型的には混合される。
【0146】
タイヤトレッド又は他の構成要素の形成は、従来の手段、例えば、例えば、ゴム組成物の押出又はカレンダリング又は成形によって完了されて、成型された、未加硫のゴム物品若しくは構成要素、例えば、タイヤトレッド層、又はアセンブリの準備ができている完全なトレッドを付与する。かかる形成及び製作操作は、当業者に周知である。
【0147】
製造された物品としてのタイヤは、好適な金型において高温(例えば、140℃(413.15K)~170℃(443.15K))及び高圧でその成分のアセンブリを成型及び硬化することによって調製されることが理解される。
【0148】
概して、本明細書に記載されているタイヤトレッドのいずれかでは、タイヤトレッドのうちの1つを含むタイヤは、本発明の別の態様である。
【0149】
タイヤ及びタイヤトレッドは、車両、例えば、限定されないが、重量物を運び且つ持続速度で運転する車両、例えば、トラック、トラクタ、トレーラ又はバスにフィットし得る。
【0150】
例えば、本発明のタイヤは、重量物を運び且つ持続速度で運転する車両、例えば、トラック、トラクタ、トレーラ又はバスにフィットすることが意図される、放射状のカーカス補強材、及びエラストマー性材料(すなわち、ゴムコンパウンド)のさらなる層又はゾーンを有するトレッドを有する空気式タイヤであり得る。
【0151】
代替的には、タイヤ及びタイヤトレッドは、車両、例えば、軽トラック、乗用車、高性能車、オートバイ、道路以外で使われる車両、建設機械車両、航空機、及び、行路に搭載されるゴムトレッドを有する、行路とフィットする車両を含めた他の車両にフィットし得る。
【0152】
本発明のタイヤ及びフィラー、エラストマー、並びに/又は他のパラメータの具体例にとして以下が挙げられる。
【0153】
タイヤは、道路以外で使われる車両又は建設機械車両のタイヤであり得、トレッドは、少なくとも1つの天然又は合成ポリイソプレンを含む60~100phrのエラストマー、並びに少なくとも130m2/gのBET及び115ml/g以下のCOANを有する少なくとも1つのカーボンブラックを含む少なくとも40phrのフィラーを含む。
【0154】
タイヤは、道路以外で使われる車両又は建設機械車両のタイヤであり得、トレッドは、少なくとも1つのスチレンブタジエンコポリマー、若しくはブタジエンポリマー、又はこれらの組み合わせをさらに含む。
【0155】
タイヤは、道路以外で使われる車両又は建設機械車両のタイヤであり得、トレッドは、少なくとも1つの天然又は合成ポリイソプレンを含む60~100phrのエラストマー、並びに、少なくとも130m2/gのBET及び115ml/g以下のCOANを有する少なくとも1つのカーボンブラック並びに5~10phrの少なくとも1つのシリカを含む少なくとも40phrのフィラーを含む。例えば、タイヤは、道路以外で使われる車両又は建設機械車両のタイヤであり得、トレッドは、150m2/g超のBET、100ml/g未満のOAN、及び90ml/g未満のCOANを有する少なくとも1つのカーボンブラックをさらに含む。
【0156】
タイヤは、高性能車又はオートバイのタイヤであり得、トレッドは、溶液スチレンブタジエンコポリマー及びブタジエンポリマー並びにこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つポリマーを含む100phrのエラストマー、並びに、150~220m2/gのSTSAを有する少なくとも1つのカーボンブラック及び150~200m2/gのBETを有する少なくとも1つのシリカを含む少なくとも40phrのフィラーを含む。
【0157】
タイヤは、トラック又はバスのタイヤであり得、トレッドは、60~100phrの少なくとも1つの天然又は合成ポリイソプレンエラストマー、並びに、少なくとも115m2/gのSTSA及び110ml/g未満のCOANを有する少なくとも1つのカーボンブラックを含む少なくとも30phrのフィラー、並びに、1~25phrの少なくとも1つのシリカフィラーを含む。
【0158】
タイヤは、トラック又はバスのタイヤであり得、トレッドは、60~100phrの少なくとも1つの天然又は合成ポリイソプレンエラストマー、並びに、少なくとも115m2/gのSTSA及び110ml/g未満のCOANを有する少なくとも1つのカーボンブラックを含む45~60phrのフィラー、並びに、1~25phrの少なくとも1つのシリカフィラーを含む。
【0159】
タイヤは、トラック又はバスのタイヤであり得、トレッドは、60~100phrの少なくとも1つの天然又は合成ポリイソプレンエラストマー、並びに、150m2/g超のBET、100ml/g未満のOAN、及び90ml/g未満のCOANを有する少なくとも1つのカーボンブラックを含む少なくとも30phrのフィラー、並びに、1~25phrの少なくとも1つのシリカフィラーを含む。
【0160】
タイヤは、トラック又はバスのタイヤであり得、トレッドのショルダー成分は、60~100phrの少なくとも1つの天然又は合成ポリイソプレンエラストマー、並びに、少なくとも120m2/gのBET及び110ml/g未満のCOANを有する少なくとも1つのカーボンブラックを含む少なくとも40phrのフィラー、並びに、1~20phrの少なくとも1つのシリカフィラーを含む。
【0161】
タイヤは、トラック又はバスのタイヤであり得、トレッドのショルダー成分は、60~100phrの少なくとも1つの天然又は合成ポリイソプレンエラストマー、並びに、150m2/g超のBET、100ml/g未満のOAN、及び90ml/g未満のCOANを有する少なくとも1つのカーボンブラックを含む少なくとも40phrのフィラー、並びに、1~25phrの少なくとも1つのシリカフィラーを含む。
【0162】
タイヤは、トレッドの下層が、60~100phrの少なくとも1つの天然若しくは合成ポリイソプレンエラストマー、ポリブタジエンエラストマー、又はこれらの組み合わせ、並びに、100m2/g未満のBET及び110g/kg未満のI2価を有する少なくとも1つのカーボンブラックを含む少なくとも40phrのフィラーを含むものであり得る。
【0163】
タイヤは、面修飾カーボンブラック、酸化カーボンブラック、多相凝集体カーボンブラック(例えば、ECOBLACK(商標)材料)、及び少なくとも2000ppmの面水素含量を有するカーボンブラックから選択される少なくとも1つのカーボンブラックを含む少なくとも20phrのフィラーを含むタイヤトレッドを有するタイヤであり得る。
【0164】
任意選択として、湿潤混合複合体は、空気式タイヤ並びに非空気式又は中実タイヤにおいて、タイヤトレッド以外のタイヤの様々な部、例えば、基部、アンダトレッド、インナーライナー、タイヤ側壁、タイヤ側壁インサート、タイヤ用ワイヤースキム、及び再生タイヤ用クッションゴムにおいて使用され得、又は使用のために(例えば、組み入れられる加硫物を形成するために)製造され得る。
【0165】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている複合体及び配合物は、様々なタイヤ設計、例えば、全て全体が参照により本明細書に援用される米国特許第3,157,218号明細書;米国特許第6,247,512号明細書;米国特許第8,936,056号明細書;米国特許第9,713,943号明細書;米国特許第10,308,073号明細書;米国特許第6,540,858号明細書;米国特許第9,649,883号明細書;米国特許第8,302,643号明細書;米国特許第9,713,942号明細書;米国特許第8,720,508号明細書;米国特許第8,939,183号明細書;米国特許第9,387,728号明細書;米国特許第9,783,004号明細書;米国特許第10,245,891号明細書;米国特許第10,336,140号明細書;米国特許第7,028,734号明細書;米国特許第7,735,533号明細書;米国特許第8,695,662号明細書;米国特許第8,936,056号明細書;米国特許第10,399,386号明細書;米国特許第10,543,718号明細書;米国特許出願公開公報第2019/0351716号明細書及び米国特許出願公開公報第2020/0070577号明細書;並びに国際公開第2018/122496A1号パンフレット;国際公開第2014/102136A1号パンフレット;国際公開第2019/092361A1号パンフレット;及び国際公開第2019/122618A1号パンフレットに記載されているものにおいて使用され、又は(例えば、組み入れられる加硫物を形成するために)これらにおける使用のために製造される。
【0166】
本発明に関して、いずれの「任意選択」又は「任意選択的な特徴」も、他の任意選択的な特徴と組み合わせ可能である。本明細書における開示は、ある特定の示されている例を指しており、これらの例は、例として提示されているものであって、限定的ではないことが理解されるべきである。上記の詳細な説明の内容は、好ましい例を考察しているが、さらなる開示によって定義されている本発明の精神及び範囲内にあり得るとして、当該例の全ての変形、代替、及び等価物をカバーすると解釈されるべきである。
【0167】
この開示における全ての列挙されている参照文献の全内容が、本開示と矛盾しない程度まで、参照により本明細書に援用される。
【0168】
本発明は、文章及び/又は段落に記載されている、上記に記載されている及び/又は特許請求の範囲における様々な特徴又は実施形態の任意の組み合わせを含むことができる。本明細書に開示されている特徴の任意の組み合わせが本発明の部分とされ、組み合わせ可能な特徴に関して限定は意図されていない。
【0169】
本発明の他の実施形態は、本明細書に開示されている本発明の本明細書及び実施を考慮することから当業者に明らかである。本明細書及び例は、本発明の真の範囲及び精神が以下のその特許請求の範囲及び等価物によって示されて、単に例示的なものであるとされることが意図される。
【実施例0170】
例では、湿潤混合複合体(マスターバッチ)、マスターバッチから調製されるコンパウンド、及び本発明の対応する加硫されたタイヤトレッド(サンプルE1、E3)、並びに比較材料(サンプルC1及びC2)の調製を記載する。
【0171】
例1~3
サンプルE1湿潤混合複合体の調製
本発明のタイヤトレッド(サンプルE1)のためのゴムコンパウンドを調製するのに使用される湿潤混合複合体について、湿潤カーボンブラックは、N234カーボンブラックペレット(Cabot Corporationから得られるVulcan(登録商標)7Hカーボンブラック)をジェットミリングし、乾燥したミリングしたカーボンブラックを、ピンペレタイザーにおいて、逆浸透(RO)処理された水によって再ペレット化及び湿潤することによって得た。湿潤カーボンブラックの含水率は、湿潤カーボンブラックの重量基準で、54~60%の範囲であった。
【0172】
湿潤カーボンブラック及び固体天然ゴムを使用する湿潤混合複合体の混合は、目標とするフィラー仕込み量が51phrで、2段階混合プロセスにおいて実施した。複合体を形成する第1段階の混合を、表1Aにおける混合プロトコルにより、66.2Lの正味容量で、4WNロータとフィットするKobelco BB-72接線ミキサーにおいて行った。得られた混合物を、固定刃とフィットするTSR-125二軸ダンピング押出機(Kobelco Kobe Steel Group)に移し、さらに加工して、混合の第2段階用に第2ミキサーに吐出した。混合の第2段階は、表1Bにおける混合プロトコルにより、6WIロータとフィットするKobelco BB-16接線ミキサー(14.4L容量)において行い、当該プロトコルでは、ミキサーのrpmを変動させることにより混合物の温度を(135℃(408.15K)の定値で)維持する自動制御ユニットを用いて、マスチック化及び水の蒸発を完了させて複合体を得た。得られた混合物を、ローラダイとフィットする二軸ダンピング押出機(Kobelco Kobe Steel Group)に移し、複合体シートに変換した。標準グレードRSS3天然ゴム(Von Bundit Co.,Thailand)を使用し、劣化防止剤(2phr 6PPD)を混合の第1段階の間に添加した。
【表1A】
【表1B】
【0173】
サンプルC2乾燥混合複合体の調製
比較乾燥混合複合体及びコンパウンドの混合及び混和を、表2及び4~5において後述するように実施した。使用したゴムは、別途示されない限り、標準グレードRSS3天然ゴム(Von Bundit Co.,Thailand)であった。
【0174】
サンプルC1固体エラストマーマスターバッチの調製
C1比較固体エラストマーマスターバッチサンプルを、以下に記述されているもの以外は、米国特許第8,586,651号明細書、例2の液体マスターバッチプロセスによって調製した。
【0175】
エラストマーラテックス(希釈及び脱スラッジ化したMVL Fieldラテックス)は、乾燥ゴム含量が28重量%であり、フィラースラリーは、13~14重量%のカーボンブラック(Cabot Corporation,Boston,MAから得られる(Vulcan(登録商標)7Hカーボンブラック(N234グレード))を含有した。流量を調整して、目標の、仕上げのカーボンブラック仕込み量の50phrを、所望の生成速度で得た。得られた複合体の平均カーボンブラック仕込みレベルは50.8phrであった。脱水した複合体をマスチック化し、連続混和器(2つの#15ロータを備えたFarrel Unimix Continuous Mixer(FCM);190~320rpmで作動される、Farrel Corporation,Ansonia,CT)において2phrの酸化防止剤(6PPD)と混合して乾燥し、さらにマスチック化し、オープンミルにおいて冷却及び乾燥した。
【0176】
得られた固体エラストマーマスターバッチ複合体を、表3における配合、並びに表2及び4に概説するプロセスによって混和した。
【0177】
コンパウンド調製
全てのコンパウンド混合プロセスを、以下の表2及び4~5に記載されているように実施した。320リットルの交差反転式ミキサー(Harburg Feudenberger GK 320)及び55リットルの交差反転式ミキサー(旋回ロータと交差反転しているCarter55L)を使用して、複合体及びコンパウンドバッチを混合した。比較例C1及びC2の第1段階混合を、320Lミキサーを使用して達成し、55Lミキサーを使用して下流の混合操作を行った。本発明のサンプルE1についての全ての混合段階を、55Lミキサーを使用して行った。混合段階を選択して、仕上げのコンパウンドにおいて6565~80MU(100℃(373.15K)でML(1+4))の範囲の所望のムーニー粘度値を達成した。
【0178】
コンパウンド(C1、E1及びC2サンプル)の第1段階の混合を、表2に記載されているように行った。
【表2】
【0179】
効果前の吐出された複合体の含水率を、水分てんびん(Model:HE53、製造者:Mettler Toledo NA,Ohio)を使用して測定した。複合体を小片(サイズ:長さ、幅、高さ<5mm)にスライスし、2~2.5gの材料を使い捨てアルミニウムディスク/プレートに置き、これを水分てんびん内に置いた。重量損失を125℃(398.15K)で30分間記録した。30分の終わりに、複合体の水分含量を以下のように記録した:
複合体の水分含量=((初期重量-最終重量)/初期重量)*100
【0180】
複合体におけるカーボンブラック仕込み量を、熱重量分析(Model Q500単位、製造者:TA Instruments,DE)によって求めた。約15~20mgのゴムサンプルを使用した。サンプルを、まず、窒素雰囲気下で室温から125℃(398.15K)に30℃(303.15K)/分で加熱し、30分間等温にして水分を除去し、次いで最大550℃(823.15K)に30℃(303.15K)/分で加熱し、5分間等温にしてゴム含量を求めた。雰囲気を空気に切り替えた後、サンプルを次いで最大800℃(1073.15K)に30℃(303.15K)/分で加熱し、15分間等温にして、カーボンブラック(CB)含量及び他の残余を求めた。CB仕込み量を次いでゴム及びCB含量データに基づいて算出した。
【0181】
以下の試験を使用して、加硫されたタイヤトレッドのそれぞれについてのゴム特性を得た:
- 100%伸び(M100)での引張応力及び300%伸び(M300)での引張応力を、23℃(296.15K)(RT)、50%の相対湿度でASTM D412によって評価した。損失正接を、0.5Nの前引張で、10Hzにおいて0.5%の歪み下、引張モードにおいて、動的機械分析の温度掃引によって測定した。結果を60℃(333.15K)の温度で報告する。
【0182】
トレッド混和手順
仕上げのコンパウンドを、表3における配合物で作製した。これらの配合物を表2及び4に記載されているように混合した。
【0183】
C2乾燥混合複合体を変換して混和し、加硫されたタイヤトレッドにするために、少なくとも1つのさらなる混合段階を、表5に記載されているように実施した。
【0184】
全ての配合物において使用した成分は、カーボンブラックフィラー(Cabot Corporationから得られるVulcan(登録商標)7H(N234)カーボンブラック)、酸化防止剤6PPD[N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン]及びTMQ、酸化亜鉛、ステアリン酸及び硫黄の標準ゴムグレード、並びにTBBS促進剤を含み、全てAkrochem,Akron,Ohioから得た。固体乾燥RSS3天然ゴムは、<1重量%の水分含量を有した。
【表3】
【表4】
【表5】
【0185】
トレッドコンパウンドC1、E1及びC2によって作製されるタイヤ
本発明のトレッドコンパウンド及び比較コンパウンドによって作製されるタイヤの製造を公知のプロセスによって実施した。
【0186】
ORBITREAD(登録商標)再トレッド化デバイス(McNeil & NRM,Inc.,Akron,Ohio)及びプロセスを使用してタイヤ(タイヤサイズ:195/55R15)を組み立てた。タイヤを、以下の工程を含む、当該分野において公知である標準技術によって組み立てて硬化した:(1)新しい市販のタイヤを磨いてトレッドコンパウンドを除去した;(2)ゴムコンパウンドを押出し、タイヤに適用した;(3)ストリップが適用されたタイヤを、硬化曲線、タイヤ温度プロファイルの熱電対測定、及びタイヤ硬化挙動のモデリングに基づいて、予め決定された硬化条件(硬化時間)を使用して150℃(423.15K)で硬化した。
【0187】
表6は、実験用C1、E1及びC2の硬化されたタイヤトレッドの試験した特性を、それぞれ、唯一のゴム及び補強フィラーとして天然ゴム及びカーボンブラックを含む、重量車、例えば、トラックについて設計された一連の32の比較の市販のタイヤトレッドにおいて測定した同特性と一緒に記載する。
【表6】
【0188】
表6のデータは、本発明による、天然ゴム及び湿潤カーボンブラックを含むタイヤトレッドコンパウンドが、以下を有することを実証している:乾燥混合プロセスによって調製される比較例C2よりも(a)高い引張応力比(M300/M100)及び(b)低いδ値;並びに、液体マスターバッチの複雑さ及び制限を排除することによって得られる有意な湿潤混合複合体加工利点を有しながらも、液体マスターバッチプロセスによって調製される比較例C1のものに対して(a)等価の破断伸び及び(b)近いM300/M100値。
【0189】
表6におけるデータは、本発明のタイヤトレッドが以下のうちの組み合わせを有することをさらに実証している:(a)より高い破断伸び及び、全てであるが2つの場合において、より高い引張応力比(M300/M100);並びに、匹敵する補強グレードのカーボンブラックフィラーを用いて同様のフィラー仕込み量レベルで天然ゴム/カーボンブラック配合物から作製された、広範な市販のトラックタイヤトレッドコンパウンドと比較して、(b)より低い又は匹敵するtanδ値。
【0190】
例4
トレッドコンパウンドにおけるフィラー分散
例1~3のコンパウンドによって作製したタイヤトレッドにおけるカーボンブラックフィラー分散量を、匹敵するゴム配合物を含む市販のトラックタイヤトレッドのサンプルと一緒に、以下の方法によって測定した。加硫されたコンパウンドについてのマクロ分散をVによって示し、10μm超の未分散カーボンブラック粒子の面積百分率を、トレッドサンプルにおいて、伝送モードで光学顕微鏡によって求めた。
【0191】
マクロ分散試験方法:
マクロ分散の特徴を、伝送モードで光学顕微鏡によって求めた。ゴムサンプルの冷凍ミクロトーム薄片(1μm厚さ)を、PTPC PowerTomeウルトラミクロトーム機器(RMC Boeckeler)においてダイヤモンドナイフを用いて切断した。薄片をスライドガラスに置き、0.55mm
2の視野で、0.65μm/ピクセルの解像度において、透過光学的画像化を行った。各サンプルについて少なくとも10の光学画像を取得し、各画像は同じサンプルの異なる薄片から撮影した。画像を、まず、ガウスぼかしに基づいて疑似フラットフィールド補正により画像の不均一な背景を補正することによって処理した。画像ノイズは、エッジ保存双方向フィルタを使用して低減し、必要に応じて画像コントラスト強調を適用する。画像における暗い対象物及び明るい対象物は、それぞれ、非分散粒子及び空隙を表したものであるが、一方で、灰色の画像背景は、よく分散されたカーボンブラックによるゴムの区域を表したものである。対象物を、好適な全体又は局所閾値化法を使用することにより画像のセグメント化によって画像から分離して、それぞれ、非分散粒子及び空隙を表す2つの二値画像を作り出した。画像のフィルタリング及びセグメント化を最適化して、確実に、空隙及び非分散粒子の境界が、セグメント化された画像と元の画像との間の視覚的比較によって明確に定義されるようにした。非分散粒子のサイズ分布を次いでそれぞれ二値画像から分析した。非分散粒子のサイズは、二値画像において対応する対象物の面積相当直径を使用して求めた。面積相当直径は:面積相当直径=(4
*暗い対象物の面積/π)
1/2である。本明細書において使用されているとき、用語「粒子」は、カーボンブラックの個々の一次粒子ではなく、カーボンブラック凝集粒子を表す。10μm超の未分散カーボンブラック粒子の面積百分率(値「V」)を表7に示す。
【表7】
【0192】
マクロ分散の特徴を調査するにおいて、サンプルC1、比較液体マスターバッチサンプルは、本発明のサンプルE1と比較して、少数の非分散の大きな粒子によって示されているように、より多いマクロ分散を有している。本発明のタイヤトレッドは、C1液体マスターバッチサンプルよりも非分散の大きなフィラー粒子を有したが、市販のトレッドの比較サンプルの全てよりも良好な分散及び少ない非分散の大きなフィラー粒子を有した。優れたカーボンブラックマクロ分散及び付随する優れたゴム材料特性をタイヤトレッドに届けることが知られているプロセスによって作製したサンプルC1と比較して僅かに有益さに劣るマクロ分散特徴を実証しているにもかかわらず、本発明のサンプルE1は、表6に記載されているデータによって示されているように、サンプルC1のものと匹敵するゴム特性を予想外にも示した。
【0193】
匹敵する市販のタイヤトレッドのものと比較して、本発明のサンプルE1の優れているマクロ分散特徴と一致して、サンプルE1のゴム材料特性は、比較の市販のトレッドコンパウンドのものより優れている。
【0194】
例5
エラストマー及びフィラーのブレンドによるトレッドコンパウンド
湿潤混合複合体調製
この例においては、2つのエラストマー(80/20phrのNR/BR比での、RCMA Group,Singaporeから得られるRSS1天然ゴム及びLanxess,Germanyから得られるBuna(登録商標)CB22ブタジエンゴム)と、2つのフィラー(Cabot Corporationから得られるPROPEL(登録商標)X25カーボンブラック及びSolvay USA Inc.,Cranbury,NJから得られるZEOSIL(登録商標)Z1165 MP沈降シリカ)とのブレンドを使用して、サンプルE3、湿潤混合複合体を調製した。2つの湿潤混合複合体(部A及び部B)を調製してE3サンプルコンパウンドを作製した。全湿潤カーボンブラックの重量基準で55~58%の含水率を有する乾燥していないカーボンブラックペレットを天然ゴムと混合して、表8Aに記載されている部Aの配合物を作製した。表8Aに記載されている部Bの配合物を作製するために、Z1165 MPシリカ(5~7%の水分)を5ガロン容器に入れ、Ika実験室ミキサーに取り付けたWarner Paint撹拌機を用いて可変速度で混合しながら、水及びシリカが均一系となって湿潤ペーストを形成するまで、水(逆浸透処理した)をゆっくりと添加した。湿潤シリカの容器を24時間シールした後、部Bの湿潤混合複合体の調製の際に、シラン(Si69)カップリング剤を含む部Bの他の成分に添加した。
【表8A】
【0195】
BR-1600Banbury(登録商標)実験室ミキサー(「BR1600」ミキサー;Farrel Corporation,Ansonia,CT)を使用して、湿潤混合複合体部A及びBを作製した。BR1600ミキサーは、2つの2翼接線ロータ(2WL)によって作動して、1.6Lの容量を付与した。2つの湿潤混合複合体を調製するのに使用したプロセスを表8Bに示す。
【表8B】
【0196】
コンパウンド調製
E3サンプルコンパウンドに使用した配合を表9に記載する。使用した成分は、酸化防止剤6PPD[N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン](部A及び部Bにおいても使用)及びTMQ、酸化亜鉛、ステアリン酸、ワックスビーズ、硫黄及びTBBS促進剤の標準ゴムグレードを含み、全てAkrochem,Akron,Ohioから得た。固体乾燥天然ゴムは、<1重量%の水分含量を有した。
【0197】
交差反転式ミキサー(Carter,Manchester,UKによる旋回ロータを備えたCarter55L交差反転式ミキサー)を使用してE3サンプルコンパウンドを混合した。混和プロセスを、表10に記載されているように実施した。
【0198】
E3サンプルコンパウンドを含むトレッドによるタイヤを、例1~3に記載されているように調製した。
【表9】
【表10】
【表11】
【0199】
本発明のE3サンプルトレッドに関する、表7におけるマクロ分散データから観察され得るように、匹敵する市販のタイヤトレッドと比較して、エラストマーのブレンド並びにシリカ及びカーボンブラックフィラーを含む本発明のタイヤトレッドは、より高品質なフィラー分散を示して、特有の製品特徴を実証している。表11に記載されているデータは、エラストマーのブレンド並びにカーボンブラック及びシリカフィラーのブレンドを含むかかるタイヤトレッドのゴム特性が、広範な13の匹敵する市販のトラックタイヤトレッドのものよりも優れたことを示す。
【0200】
出願人らは、この開示における全ての列挙されている参照文献の全内容を具体的に援用する。さらに、量、濃度、又は他の値若しくはパラメータが、範囲、好ましい範囲、又は好ましい上限値及び好ましい下限値のリストのいずれかとして与えられているとき、これは、範囲が別々に開示されているか否かにかかわらず、任意の上限範囲又は好ましい値及び任意の下限範囲又は好ましい値の任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示されていると理解されるべきである。数値範囲が本明細書において列挙されているとき、別途記述されていない限り、範囲は、その終点、並びに、当該範囲内の全ての整数及び分数を含むことが意図される。本発明の範囲は、範囲を定義しているとき、列挙されている具体的な値に限定されることは意図されていない。
【0201】
本発明の他の実施形態は、本明細書に開示されている本発明の本明細書及び実施の考慮から当業者に明らかである。本明細書及び例は、本発明の真の範囲及び精神が以下のその特許請求の範囲及び等価物によって例としてのみ示されているとされることが意図される。
少なくとも1種のエラストマー及び40~80phrの少なくとも1種のフィラーを含むタイヤトレッドであって、前記フィラーが、少なくとも40phrの少なくとも1種のカーボンブラックを含み、前記タイヤトレッドが:
a.弾性率比>5.60;
b.パーセント破断伸び>470、並びに
c.60℃(333.15K)における損失正接≧0.10及び<0.25
を有する、前記タイヤトレッド。