(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025034664
(43)【公開日】2025-03-13
(54)【発明の名称】見守りシステム、見守り装置、見守り方法及び見守りプログラム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/04 20060101AFI20250306BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20250306BHJP
G06T 7/246 20170101ALI20250306BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20250306BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20250306BHJP
G06Q 50/22 20240101ALI20250306BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20250306BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20250306BHJP
【FI】
G08B25/04 K
G06T7/00 660B
G06T7/246
G08B21/02
G08B25/00 510M
G06Q50/22
A61B5/11 120
A61B5/00 102C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023141177
(22)【出願日】2023-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(74)【代理人】
【識別番号】100148655
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 淳一
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 大貴
(72)【発明者】
【氏名】森田 翔治
【テーマコード(参考)】
4C038
4C117
5C086
5C087
5L096
5L099
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VA12
4C038VA16
4C038VB17
4C038VB35
4C038VC05
4C117XA03
4C117XB04
4C117XC01
4C117XE43
4C117XE55
4C117XH12
4C117XJ45
5C086AA22
5C086AA47
5C086CA25
5C086CA28
5C086CB36
5C086DA08
5C086FA02
5C086FA18
5C087AA02
5C087AA10
5C087AA25
5C087AA32
5C087BB74
5C087DD03
5C087DD30
5C087EE08
5C087EE18
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087GG02
5C087GG08
5C087GG09
5C087GG70
5C087GG83
5L096BA02
5L096FA18
5L096GA51
5L096HA04
5L096HA05
5L099AA11
(57)【要約】
【課題】入居者の体調の変化を効率良く検知することが課題である。
【解決手段】見守りシステム10は、撮像装置20により入居者の画像を撮像し、歩行速度算出装置30において、画像に基づいて骨格認識を行い、胸座標を時系列的に取得することにより歩行軌跡データを取得する。その後、歩行速度算出装置30は、歩行軌跡データに基づいて歩行速度を算出する。管理装置40は、算出された歩行速度を速度毎に累積加算し頻度分布を生成し、該頻度分布に基づいて所定期間における入居者の歩行速度を特定する。その後、管理装置40は、取得した歩行速度と特定した歩行速度との差分を算出し、該差分が所定の閾値以上か否かを判定する。該差分が所定の閾値以上となった場合は、報知を行う。また、携帯端末50においても、該判定の結果を受信し、該差分が所定の閾値以上となった場合に報知を行うようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
居室における入居者を見守る見守りシステムであって、
前記居室内における人物の歩行軌跡を示す歩行軌跡データを取得する歩行軌跡データ取得部と、
前記歩行軌跡データの所定長毎に前記人物の歩行速度を算出する歩行速度算出部と、
前記歩行速度を速度毎に累積加算して頻度分布を生成する頻度分布生成部と、
前記頻度分布に基づいて、前記入居者の入居者歩行速度を特定する歩行速度特定部と、
を備えたことを特徴とする見守りシステム。
【請求項2】
前記歩行速度特定部は、
前記頻度分布において頻度が最も多い前記歩行速度を前記入居者歩行速度として特定することを特徴とする請求項1に記載の見守りシステム。
【請求項3】
前記所定長は、
予め定められた前記歩行軌跡の所定の計測単位長であることを特徴とする請求項1に記載の見守りシステム。
【請求項4】
前記歩行軌跡データ取得部は、
撮像画像から前記人物の骨格推定を行い、その胸座標を時系列的に取得することで前記歩行軌跡データを取得することを特徴とする請求項1に記載の見守りシステム。
【請求項5】
前記入居者歩行速度を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記入居者歩行速度と、前記歩行速度特定部により特定された前記入居者歩行速度との差分が所定の閾値以上となった場合に報知する報知部と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の見守りシステム。
【請求項6】
前記頻度分布生成部は、所定期間における前記頻度分布を生成し、
前記記憶部は、前記所定期間における前記入居者歩行速度を記憶する
ことを特徴とする請求項5に記載の見守りシステム。
【請求項7】
前記歩行軌跡データ取得部により取得された前記歩行軌跡データが前記頻度分布の生成対象として適するか否かを判定する判定部をさらに備え、
前記歩行速度算出部は、
前記判定部により前記頻度分布の生成対象として適すると判定された場合に前記歩行速度を算出することを特徴とする請求項1に記載の見守りシステム。
【請求項8】
前記判定部は、
前記歩行軌跡データ取得部により取得された前記歩行軌跡が複数人の歩行軌跡である場合に、前記頻度分布の生成対象として適さないと判定することを特徴とする請求項7に記載の見守りシステム。
【請求項9】
前記判定部は、
前記歩行軌跡データ取得部により取得された前記歩行軌跡が予め設定された所定領域内に存在する場合に、前記頻度分布の生成対象として適さないと判定することを特徴とする請求項7に記載の見守りシステム。
【請求項10】
前記判定部は、
計測単位長の歩行軌跡の始点と終点をそれぞれ中心とし、前記計測単位長未満の所定値を半径とする円内に前記歩行軌跡データの所定割合以上が存在する場合に、前記頻度分布の生成対象として適さないと判定することを特徴とする請求項7に記載の見守りシステム。
【請求項11】
前記所定長は、
前記歩行軌跡データのうちの歩行軌跡が回帰直線として表した始点と終点の間の線分長であることを特徴とする請求項1に記載の見守りシステム。
【請求項12】
居室における入居者を見守る見守り装置であって、
前記居室内における人物の歩行軌跡を示す歩行軌跡データを取得する歩行軌跡データ取得部と、
前記歩行軌跡データの所定長毎に前記人物の歩行速度を算出する歩行速度算出部と、
前記歩行速度を速度毎に累積加算して頻度分布を生成する頻度分布生成部と、
前記頻度分布に基づいて、前記入居者の入居者歩行速度を特定する歩行速度特定部と、
を備えたことを特徴とする見守り装置。
【請求項13】
居室における入居者を見守る見守りシステムで実行される見守り方法であって、
前記居室内における人物の歩行軌跡を示す歩行軌跡データを取得する歩行軌跡データ取得工程と、
前記歩行軌跡データの所定長毎に前記人物の歩行速度を算出する歩行速度算出工程と、
前記歩行速度を速度毎に累積加算して頻度分布を生成する頻度分布生成工程と、
前記頻度分布に基づいて、前記入居者の入居者歩行速度を特定する歩行速度特定工程と、
を含むことを特徴とする見守り方法。
【請求項14】
居室における入居者を見守る見守り装置で実行される見守りプログラムであって、
前記居室内における人物の歩行軌跡を示す歩行軌跡データを取得する歩行軌跡データ取得手順と、
前記歩行軌跡データの所定長毎に前記人物の歩行速度を算出する歩行速度算出手順と、
前記歩行速度を速度毎に累積加算して頻度分布を生成する頻度分布生成手順と、
前記頻度分布に基づいて、前記入居者の入居者歩行速度を特定する歩行速度特定手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする見守りプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入居者の体調の変化を効率良く検知する見守りシステム、見守り装置、見守り方法及び見守りプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、介護施設等では、入居者の歩行速度を算出し、算出した歩行速度が要介護度の判定指標の一つとして用いられている。このため、介護施設等の入居者の歩行速度を判定する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、入居者の歩行軌跡データから歩行速度を算出し、入居者の属性(年齢、性別、身長、体重等)に基づいて歩行速度の正規化を行う技術が開示されている。また、特許文献2には、居室内の歩行軌跡を表した異なる日の複数の軌跡データを取得し、入居者以外の軌跡データと入居者の軌跡データを判別し、入居者の軌跡データのみを用いて歩行速度を算出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2020-003954号公報
【特許文献2】特許第7215481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1は、入居者の属性により歩行速度の正規化を行っているものの、後期高齢者の女性が前期高齢者の男性よりも若々しい場合も多く、一概に入居者の属性が歩行速度に影響を与えるとは限らない。このため、正規化された歩行速度が入居者の実情に即したものでない可能性があり、入居者の体調変化を検知することが難しい場合がある。
【0006】
また、上記引用文献2のものは、歩行軌跡データを入居者のものか、入居者以外のものかを判別したうえで、入居者の歩行軌跡データと判別されたものだけを用いて歩行速度を算出しているが、その判別方法が軌跡の始点や終点の位置に基づいて判別したり、時間帯で特定したりしているため、必ずしも入居者のみの歩行軌跡に該当するとは限らない。その結果、入居者の体調変化を適正に検知できない可能性がある。
【0007】
本発明は、上記従来技術による問題点(課題)を解決するためになされたものであって、入居者の体調の変化を効率良く検知する見守りシステム、見守り装置、見守り方法及び見守りプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、居室における入居者を見守る見守りシステムであって、前記居室内における人物の歩行軌跡を示す歩行軌跡データを取得する歩行軌跡データ取得部と、前記歩行軌跡データの所定長毎に前記人物の歩行速度を算出する歩行速度算出部と、前記歩行速度を速度毎に累積加算して頻度分布を生成する頻度分布生成部と、前記頻度分布に基づいて、前記入居者の入居者歩行速度を特定する歩行速度特定部と、を備えた。
【0009】
また、本発明は、上記発明において、前記歩行速度特定部は、前記頻度分布において頻度が最も多い歩行速度を前記入居者歩行速度として特定する。
【0010】
また、本発明は、上記発明において、前記所定長は、予め定められた前記歩行軌跡の所定の計測単位長である。
【0011】
また、本発明は、上記発明において、前記歩行軌跡データ取得部は、撮像画像から人物の骨格推定を行い、その胸座標を時系列的に取得することで前記歩行軌跡データを取得する。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、前記入居者歩行速度を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記入居者歩行速度と、前記歩行速度特定部により特定された前記入居者歩行速度との差分が所定の閾値以上となった場合に報知する報知部と、をさらに備えた。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、前記頻度分布生成部は、所定期間における頻度分布を生成し、前記記憶部は、前記所定期間における前記入居者歩行速度を記憶する。
【0014】
また、本発明は、上記発明において、前記歩行軌跡データ取得部により取得された前記歩行軌跡データが前記頻度分布の生成対象として適するか否かを判定する判定部をさらに備え、前記歩行速度算出部は、前記判定部により前記頻度分布の生成対象として適すると判定された場合に前記歩行速度を算出する。
【0015】
また、本発明は、上記発明において、前記判定部は、前記歩行軌跡データ取得部により取得された前記歩行軌跡が複数人の歩行軌跡である場合に、前記頻度分布の生成対象として適さないと判定する。
【0016】
また、本発明は、上記発明において、前記判定部は、前記歩行軌跡データ取得部により取得された前記歩行軌跡が予め設定された所定領域内に存在する場合に、前記頻度分布の生成対象として適さないと判定する。
【0017】
また、本発明は、上記発明において、前記判定部は、計測単位長の歩行軌跡の始点と終点をそれぞれ中心とし、前記計測単位長未満の所定値を半径とする円内に前記歩行軌跡データの所定割合以上が存在する場合に、前記頻度分布の生成対象として適さないと判定する。
【0018】
また、本発明は、上記発明において、前記所定長は、前記歩行軌跡データのうちの歩行軌跡が回帰直線として表した始点と終点の間の線分長である。
【0019】
また、本発明は、居室における入居者を見守る見守り装置であって、前記居室内における人物の歩行軌跡を示す歩行軌跡データを取得する歩行軌跡データ取得部と、前記歩行軌跡データの所定長毎に前記人物の歩行速度を算出する歩行速度算出部と、前記歩行速度を速度毎に累積加算して頻度分布を生成する頻度分布生成部と、前記頻度分布に基づいて、前記入居者の入居者歩行速度を特定する歩行速度特定部と、を備えた。
【0020】
また、本発明は、居室における入居者を見守る見守りシステムで実行される見守り方法であって、前記居室内における人物の歩行軌跡を示す歩行軌跡データを取得する歩行軌跡データ取得工程と、前記歩行軌跡データの所定長毎に前記人物の歩行速度を算出する歩行速度算出工程と、前記歩行速度を速度毎に累積加算して頻度分布を生成する頻度分布生成工程と、前記頻度分布に基づいて、前記入居者の入居者歩行速度を特定する歩行速度特定工程と、を含む。
【0021】
また、本発明は、居室における入居者を見守る見守り装置で実行される見守りプログラムであって、前記居室内における人物の歩行軌跡を示す歩行軌跡データを取得する歩行軌跡データ取得手順と、前記歩行軌跡データの所定長毎に前記人物の歩行速度を算出する歩行速度算出手順と、前記歩行速度を速度毎に累積加算して頻度分布を生成する頻度分布生成手順と、前記頻度分布に基づいて、前記入居者の入居者歩行速度を特定する歩行速度特定手順と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、入居者の体調の変化を効率良く検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る見守りシステムの概要を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した見守りシステムのシステム構成を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2に示した撮像装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、
図2に示した歩行速度算出装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図5】
図5は、
図2に示した管理装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図6】
図6は、
図2に示した携帯端末の構成を示す機能ブロック図である。
【
図7】
図7は、学習済モデルの生成を説明するための説明図である。
【
図8】
図8は、歩行軌跡データとして扱わない除外領域について説明する説明図である。
【
図9】
図9は、胸座標の算出について説明する説明図である。
【
図10】
図10は、歩行軌跡の一例及び歩行速度の算出を説明する説明図である。
【
図11】
図11は、頻度分布の生成に適さない歩行軌跡データの一例を示す図である。
【
図12】
図12は、歩行速度の頻度分布の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、
図2の見守りシステムの入居者歩行速度の特定の処理手順を示すシーケンス図である。
【
図16】
図16は、
図13の歩行頻度データ適否判定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、
図2の見守りシステムの処理手順を示すシーケンス図(その1)である。
【
図18】
図18は、
図2の見守りシステムの処理手順を示すシーケンス図(その2)である。
【
図19】
図19は、変形例に係る見守りシステムの歩行軌跡データの一例を示す図である。
【
図20】
図20は、変形例に係る見守りシステムの歩行方向の変化点の検知について説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係る見守りシステム、見守り装置、見守り方法及び見守りプログラムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0025】
[見守りシステムの概要]
本実施形態に係る見守りシステムの概要について説明する。
図1は、本実施形態に係る見守りシステムの概要を示す図である。
図1(a)に示すように、見守りシステムは、撮像装置20と、歩行速度算出装置30と、管理装置40と、携帯端末50とを有する。撮像装置20は、要介護者が入居する居室90の天井に配設されており、居室内の床面91方向の画像を撮像し、画像を歩行速度算出装置30に送信する。また、
図1(b)に示すように、本実施形態に係る見守りシステムは、撮像した画像100に基づいて入居者の歩行速度を求め、該歩行速度を速度毎に累積加算し頻度分布を生成する。そして、頻度分布の最頻値を入居者の歩行速度と特定し、この特定された歩行速度に基づいて入居者の体調変化を検出する。
【0026】
歩行速度算出装置30は、撮像装置20から送信された画像データに基づいて居室内の入居者の骨格認識を行い胸座標から入居者の歩行軌跡データを取得する。その後、歩行速度算出装置30は、歩行軌跡データに基づいて入居者の歩行速度を算出する。その後、歩行速度算出装置30は、入居者の歩行速度を管理装置40に送信する。なお、詳細については後述するが、歩行速度算出装置30は、歩行軌跡データがベッド92の領域及び壁に近い領域である場合には、その歩行軌跡データを無効とする処理を行う。
【0027】
管理装置40は、歩行速度算出装置30から入居者の歩行速度を受信し、入居者の歩行速度を速度毎に累積加算し頻度分布を生成する。そして、管理装置40は、所定期間における頻度分布に基づいて、入居者歩行速度を特定する。具体的には、例えば、1ヶ月間の入居者の歩行速度の速度毎の累積分布を生成し、その累積分布データの最も頻度の高い歩行速度を、入居者歩行速度として特定する。
【0028】
管理装置40は、歩行速度算出装置30から入居者の歩行速度を受信したならば、受信した入居者の歩行速度と、特定された入居者歩行速度とを比較し、差分が所定の閾値以上か否かを判定する。管理装置40は、該差分が閾値以上であった場合は、警報を報知する。また、管理装置40は、歩行速度の判定結果データを携帯端末50に送信する。携帯端末50は、判定結果に基づいて警報を報知するか否かを判定する。携帯端末50は、判定結果が「問題あり」で有った場合は、警報を報知する。
【0029】
[見守りシステム10のシステム構成]
次に、見守りシステム10のシステム構成について説明する。
図2は、
図1に示した見守りシステムのシステム構成を示す図である。
図2に示すように、見守りシステム10は、撮像装置20、歩行速度算出装置30、管理装置40及び携帯端末50を有する。歩行速度算出装置30と、管理装置40と、携帯端末50とは、ネットワークNを介して接続されている。また、撮像装置20は、歩行速度算出装置30と接続されている。
【0030】
撮像装置20は、居室内の入居者の画像を撮像する装置である。撮像装置20は、撮像部を駆動するモータを備えており、撮像部で撮像した画像に基づいて人物を認識し、人物が画像データの画角に入るようにモータを制御する。
【0031】
歩行速度算出装置30は、撮像装置20から送信された画像データに基づいて骨格認識処理を行い、入居者の歩行軌跡データを取得する。そして、歩行速度算出装置30は、取得した歩行軌跡データが歩行速度を算出するのに適したデータか否かを判定し、歩行軌跡データが歩行速度を算出するのに適したデータと判定された場合に、歩行軌跡データに基づいて歩行速度を算出する処理を行う装置である。
【0032】
管理装置40は、歩行速度算出装置30から送信された入居者の歩行速度データを速度毎に累積分布を生成する処理と、所定期間における歩行速度の累積分布データに基づいて入居者の入居者歩行速度を特定する処理と、歩行速度算出装置30から送信された入居者の歩行速度と特定された入居者歩行速度とを比較し、入居者の歩行速度と特定された入居者歩行速度との差分が所定の閾値以上か否かを判定する処理と、該差分が所定の閾値以上であった場合に、警報を報知する処理と、入居者の歩行速度と特定された入居者歩行速度との差分が所定の閾値以上か否かの判定結果データを携帯端末50に送信する処理とを行う装置である。
【0033】
携帯端末50は、管理装置40から判定結果データを受信し、判定結果データに基づいて入居者の状態を表示する処理を行う装置である。また、携帯端末50は、判定結果デーが「問題あり」の場合は、警報を報知する処理を行う。
【0034】
[撮像装置20の構成]
次に、
図2に示した撮像装置20の構成について説明する。
図3は、
図2に示した撮像装置20の構成を示す機能ブロック図である。
図3に示すように、撮像装置20は、撮像部21と、光源部22と、モータ23と、通信I/F部24と、記憶部25と、制御部26とを有する。撮像部21は、居室内の入居者を撮像するカメラである。具体的には、後述する歩行速度算出装置30において骨格認識を行うための赤外線画像を取得する。光源部22は、赤外線画像を撮像するために赤外光を照射する装置である。
【0035】
モータ23は、撮像部21の画角を変えるために用いられる駆動部である。モータ23は、DCモータ、サーボモータ、ステッピングモータ等が使用され後述するモータ制御部26dにより制御される。通信I/F部24は、歩行速度算出装置30と通信を行うためのインターフェース部で、通信方式として移動通信規格である第3世代移動通信方式、第4世代移動通信方式又は第5世代移動通信方式等による無線通信、無線LAN(Local Area Network)等による近距離無線通信などを行う。
【0036】
記憶部25は、ハードディスク装置や不揮発性メモリ等の記憶デバイスであり、人物認識学習済モデル25aと、画像データ25bとを記憶する。人物認識学習済モデル25aは、図示しないサーバ装置等からダウンロードされた学習済モデルである。具体的には、
図7に示すように、多数のデータで構成される教師用データAをCNN(Convolutional Neural Network)Bに入力するとともに、例えば、正解データRに基づいてバックプロパゲーションを行わせ、各パスの重みを決定する教師あり学習を繰り返して、学習済モデルMを生成する。なお、正解データR、すなわち既知の現象である確率は、教師あり学習を行う担当者が付与することができる。画像データ25bは、撮像部21で撮像した赤外線画像と深度情報を結びつけた画像データである。
【0037】
制御部26は、撮像装置20全体を制御する制御部であり、光源制御部26aと、画像取得部26bと、人物認識部26cと、モータ制御部26dと、画像送信部26eとを有する。実際には、これらのプログラムをCPU、GPU(Graphics Processing Unit)又はNPU(Neural Processing Unit)等にロードして実行することにより、光源制御部26aと、画像取得部26bと、人物認識部26cと、モータ制御部26dと、画像送信部26eとにそれぞれ対応するプロセスを実行させることになる。
【0038】
光源制御部26aは、光源部22のオン/オフ制御の処理を行う。画像取得部26bは、撮像部21を用いて、赤外線画像の取得と、ToF(Time of Flight)技術を用いて深度情報を取得する処理を行う。人物認識部26cは、撮像した画像を人物認識学習済モデル25aに入力し、人物の認識を行う処理部である。
【0039】
モータ制御部26dは、モータ23を制御し、撮像部21の画角を調整する処理部である。画像送信部26eは、撮像した画像データ25bを歩行速度算出装置30に通信I/F部24を介して送信する処理部である。
【0040】
[歩行速度算出装置30の構成]
次に、歩行速度算出装置30の構成について説明する。
図4は、
図2に示した歩行速度算出装置30の構成を示す機能ブロック図である。
図4に示すように、歩行速度算出装置30は、通信I/F部31、記憶部34及び制御部35を有する。通信I/F部31は、撮像装置20及び管理装置40と通信を行うためのインターフェース部で、通信方式として移動通信規格である第3世代移動通信方式、第4世代移動通信方式又は第5世代移動通信方式等による無線通信、無線LAN(Local Area Network)等による近距離無線通信などを行う。
【0041】
記憶部34は、ハードディスク装置や不揮発性メモリ等の記憶デバイスであり、骨格認識学習済モデル34aと、画像データ34bと、骨格認識データ34cと、歩行軌跡データ34dと、除外領域データ34eとを記憶する。骨格認識学習済モデル34aは、図示しないサーバ装置等からダウンロードされた学習済モデルである。骨格認識学習済モデル34aは、画像データ34bを入力し、画像に含まれる人物の骨格を認識する学習済モデルである。なお、学習済モデルの生成については、既に説明しているため、ここでは、詳細な説明は省略する。
【0042】
画像データ34bは、撮像装置20から受信した画像及び深度情報のデータである。骨格認識データ34cは、画像データ34bに含まれる人物の骨格認識を行ったデータである。歩行軌跡データ34dは、入居者が歩行した軌跡のデータである。除外領域データ34eは、入居者が歩行した場所のなかで、歩行軌跡として認識しない領域を表わすデータである。具体的には、
図8に示すように、居室90の床面91において、ベッド92が設置しているベッド領域94と、壁領域95等を除外領域として設定している。なお、除外領域は、入居者の通常の歩行速度が得られない、カメラの性能により深度情報が信頼できない等の理由により設定してもよい。
【0043】
制御部35は、歩行速度算出装置30全体を制御する制御部であり、画像データ受信部35aと、骨格認識部35bと、歩行軌跡データ取得部35cと、判定部35dと、歩行速度算出部35eと、歩行速度データ送信部35fとを有する。実際には、これらのプログラムをCPUにロードして実行することにより、画像データ受信部35aと、骨格認識部35bと、歩行軌跡データ取得部35cと、判定部35dと、歩行速度算出部35eと、歩行速度データ送信部35fとにそれぞれ対応するプロセスを実行させることになる。
【0044】
画像データ受信部35aは、撮像装置20から送信された画像データを受信し、記憶部34に記憶する処理部である。骨格認識部35bは、画像データ34bに基づいて画像データ34bに含まれる人物の骨格認識を行う処理部である。具体的には、
図9に示すように、撮像装置20から受信した画像110に含まれる人物111の骨格認識を、画像110を骨格認識学習済モデル24aに入力し、人物111の骨格モデル130を取得する。
【0045】
なお、ここでは、骨格モデル130は、口:B0、胸:B1、右肩:B2、右肘:B3、右手首:B4、左肩:B5、左肘:B6、左手首:B7、右足付根:B8、右足膝:B9、右足足首:B10、左足付根:B11、左足膝:B12、左足足首:B13、右目:B14、左目:B15、右耳:B16、左目:B17の部位で認識している。
【0046】
その後、骨格認識部35bは、認識した骨格モデル130と、深度情報120とに基づいて、骨格モデル130の各部位の3次元座標140を特定する。
【0047】
歩行軌跡データ取得部35cは、骨格認識した人物の胸座標を時系列に取得することにより歩行軌跡データ34dを取得する処理部である。また、歩行軌跡データ取得部35cは、所定の計測単位長毎にデータを取得する。なお、所定の計測単位長は、例えば、2mであり、骨格認識した胸座標の時系列の移動距離が2mとなったならば、1つの歩行軌跡データ34dとして記憶部34に記憶する。
【0048】
具体的には、
図10(a)に示すように、骨格認識した人物の胸座標を時系列に取得するとともに、胸座標の変化量を累積加算し、累積値が所定の計測単位長となったならば、
図10(b)に示すように、歩き始めW
Sと歩き終わりW
Eを結ぶ直線を歩行軌跡データ34dとして記憶部34に記憶する。
【0049】
判定部35dは、取得した歩行軌跡データ34dに基づいて算出される歩行速度が後述する管理装置40の頻度分布の生成対象として適しているか否かを判定する処理部である。具体的には、判定部35dは、歩行軌跡データ34dに複数人の歩行軌跡が記録されている場合と、歩行軌跡データ34dに除外領域データ34eに設定されている座標が含まれる場合には、歩行軌跡データ34dは不適切であると判定する。
【0050】
また、
図11に示すように、所定の計測単位長の歩き始めW
Sと歩き終わりW
Eをそれぞれ中心とし、所定の計測単位長未満の所定値を半径とする円内に複数の胸座標が所定の割合存在するか否かで歩行軌跡データ34dが適切であるかいなかを判定する。例えば、所定の割合を60%とした場合は、
図11(a)に示すように、歩き始めW
Sと歩き終わりW
Eをそれぞれ中心とした所定の半径の円内に、複数の胸座標が存在するが、その割合が60%より少ないので、この歩行軌跡データ34dは適切であると判定し、
図11(b)に示すように、歩き始めW
Sと歩き終わりW
Eをそれぞれ中心とした所定の半径の円内に60%以上の胸座標が存在する場合は、歩行軌跡データ34dは不適切であると判定する。
【0051】
歩行速度算出部35eは、歩行軌跡データ34d及び所定の計測単位長を歩くのに要した時間に基づいて歩行速度を算出する処理部である。歩行速度データ送信部35fは、算出した歩行速度データを管理装置40に送信する処理部である。
【0052】
[管理装置40の構成]
次に、管理装置40の構成について説明する。
図5は、
図2に示した管理装置40の構成を示す機能ブロック図である。
図5に示すように、管理装置40は、表示部41と、入力部42と、通信I/F部43と、記憶部44と、制御部45とを有する。表示部41は、各種情報を表示する液晶ディスプレイなどの表示デバイスである。
【0053】
入力部42は、マウスやキーボードなどの入力デバイスである。通信I/F部43は、歩行速度算出装置30及び携帯端末50と通信を行うためのインターフェース部で、通信方式として移動通信規格である第3世代移動通信方式、第4世代移動通信方式又は第5世代移動通信方式等による無線通信、無線LAN(Local Area Network)等による近距離無線通信などを行う。
【0054】
記憶部34は、ハードディスク装置や不揮発性メモリ等の記憶デバイスであり、歩行速度データ44aと、歩行速度頻度分布データ44bと、特定入居者歩行速度データ44cと、判定結果データ44dとを記憶する。歩行速度データ44aは、歩行速度算出装置30から受信した入居者の歩行速度のデータである。歩行速度頻度分布データ44bは、歩行速度の速度毎に累積加算したデータである。
【0055】
特定入居者歩行速度データ44cは、所定期間における歩行速度頻度分布データ44bに基づいて、最も頻度の高い歩行速度を特定したデータである。判定結果データ44dは、入居者の歩行速度データ44aが、入居者の特定入居者歩行速度データ44cと比べて、その差分が所定の閾値以内であるか否かを判定した判定結果のデータである。
【0056】
制御部45は、管理装置40全体を制御する制御部であり、歩行速度データ受信部45aと、頻度分布生成部45bと、歩行速度特定部45cと、歩行速度判定部45dと、報知部45eと、判定結果データ送信部45fとを有する。実際には、これらのプログラムをCPUにロードして実行することにより、歩行速度データ受信部45aと、頻度分布生成部45bと、歩行速度特定部45cと、歩行速度判定部45dと、報知部45eと、判定結果データ送信部45fとにそれぞれ対応するプロセスを実行させることになる。
【0057】
歩行速度データ受信部45aは、歩行速度算出装置30で算出された入居者の歩行速度データを受信し、記憶部44に歩行速度データ44aとして記憶する処理部である。頻度分布生成部45bは、入居者の歩行速度データ44aを歩行速度の速度毎に累積加算する処理部である。
【0058】
歩行速度特定部45cは、歩行速度頻度分布データ44bに基づいて、所定期間における入居者の歩行速度を特定し、特定入居者歩行速度データ44cとして記憶部44に記憶する処理部である。例えば、
図12に示すように、歩行速度が0から1.0m/sの範囲で0.05m/s刻みで分類し、速度毎の累積分布データに基づいて、頻度の最も高い歩行速度0.25m/s~0.30m/sを、所定期間における入居者の歩行速度と特定する。
【0059】
歩行速度判定部45dは、歩行速度算出装置30から送信された歩行速度データ44aと歩行速度特定部45cで特定された所定期間における特定入居者歩行速度データ44cとを比較し、差分が所定の閾値以上か否かを判定する処理部である。歩行速度判定部45dは、歩行速度算出装置30から送信された歩行速度データ44aと、歩行速度特定部45cで特定された所定期間における特定入居者歩行速度データ44cとの差分が所定の閾値以内である場合には、歩行速度は「問題なし」と判定し、該差分が所定の閾値より大きい場合は、歩行速度は「問題あり」と判定する。その後、歩行速度判定部45dは、判定結果データ44dを記憶部44に記憶する
【0060】
報知部45eは、判定結果データ44dに基づいて報知を行う処理部である。具体的には、報知部45eは、判定結果データ44dが「問題あり」の場合は、歩行速度を所定の表示部41に表示するとともに、警告音を鳴らす。また、報知部45eは、判定結果データ44dが「問題なし」の場合は、歩行速度を所定の表示部41に表示する。
【0061】
判定結果データ送信部45fは、判定結果データ44dを携帯端末50に送信する処理部である。
【0062】
[携帯端末50の構成]
次に、携帯端末50の構成について説明する。
図6は、
図2に示した携帯端末50の構成を示す機能ブロック図である。
図6に示すように、携帯端末50は、操作表示部51と、通信I/F部52と、記憶部54と、制御部55とを有する。操作表示部51は、タッチパネル式液晶ディスプレイ等の入力兼表示デバイスである。
【0063】
通信I/F部52は、管理装置40と通信を行うインターフェース部で、通信方式として移動通信規格である第3世代移動通信方式、第4世代移動通信方式又は第5世代移動通信方式等による無線通信、無線LAN(Local Area Network)等による近距離無線通信などを行う。記憶部54は、ハードディスク装置や不揮発性メモリ等の記憶デバイスである。
【0064】
制御部55は、携帯端末50全体を制御する制御部であり、判定結果データ受信部55aと、報知部55bとを有する。実際には、これらのプログラムをCPUにロードして実行することにより、判定結果データ受信部55aと、報知部55bとにそれぞれ対応するプロセスを実行させることになる。
【0065】
判定結果データ受信部55aは、管理装置40から送信された判定結果データ44dを受信する処理部である。報知部55bは、判定結果データ44dに基づいて報知を行う処理部である。具体的には、報知部55bは、判定結果データ44dが「問題あり」の場合は、歩行速度を所定の操作表示部51に表示するとともに、警告音を鳴らす。また、報知部55bは、判定結果データ44dが「問題なし」の場合は、歩行速度を所定の操作表示部51に表示する。
【0066】
[見守りシステムの入居者歩行速度を特定する場合の処理手順]
次に、見守りシステム10の入居者歩行速度を特定する場合の処理手順について説明する。
図13は、
図2の見守りシステム10の入居者歩行速度の特定の処理手順を示すシーケンス図である。
図13に示すように、見守りシステム10の撮像装置20は、画像取得処理を行う(ステップS101)。そして、撮像装置20は、歩行速度算出装置30に画像データを送信する(ステップS102)。
【0067】
歩行速度算出装置30は、撮像装置20から画像データを受信したか否かを判定する(ステップS103)。歩行速度算出装置30は、画像データを受信していない場合は、画像データを受信するまで待機する(ステップS103:No)。
【0068】
歩行速度算出装置30は、画像データを受信したならば(ステップS103:Yes)、歩行軌跡データ生成処理を行う(ステップS104)。そして、歩行速度算出装置30は、入居者の移動距離が所定の閾値(計測単位長)を超えたか否かを判定する(ステップS105)。歩行速度算出装置30は、移動距離が所定の閾値を超えていない場合は(ステップS105:No)、ステップS103に移行し、撮像装置20からの画像データの受信を待機する。
【0069】
一方、歩行速度算出装置30は、移動距離が所定の閾値を超えた場合は(ステップS105:Yes)、歩行軌跡データ適否判定処理を行う(ステップS106)。そして、歩行速度算出装置30は、歩行軌跡データが歩行速度を算出し頻度分布データに累積するデータとして適切であるか否かを判定する(ステップS107)。歩行速度算出装置30は、歩行軌跡データが適切でない場合には(ステップS107:No)、ステップS103に移行し、撮像装置20から画像データが送信されるのを待機する。
【0070】
一方、歩行速度算出装置30は、歩行軌跡データが適切である場合には(ステップS107:Yes)、歩行速度を算出する(ステップS108)。その後、歩行速度算出装置30は、歩行速度データを管理装置40に送信する(ステップS109)。
【0071】
管理装置40は、歩行速度算出装置30から歩行速度データを受信したか否かを判定する(ステップS110)。管理装置40は、歩行速度データを受信していないならば(ステップS110:No)、歩行速度データの受信を待機する。一方、管理装置40は、歩行速度算出装置30から歩行速度データを受信したならば(ステップS110:Yes)、歩行速度頻度分布データに受信した歩行速度データを速度毎に累積加算する(ステップS111)。
【0072】
そして、管理装置40は、所定期間経過したか否かを判定する(ステップS112)。管理装置40は、所定期間経過していなかった場合は(ステップS112:No)、処理を終了する。一方、管理装置40は、所定時間経過していた場合は(ステップS112:Yes)、歩行速度頻度分布データに基づいて、頻度の最も高い歩行速度を入居者歩行速度として特定する(ステップS113)。
【0073】
[画像取得処理の処理手順]
次に、
図13に示した画像取得処理の処理手順について説明する。
図14は、
図13の画像取得処理の処理手順を示すフローチャートである。撮像装置20は、撮像部21を用いて居室90の画像を撮像する(ステップS201)。そして、撮像装置20は、撮像データから人物を認識する(ステップS202)。
【0074】
その後、撮像装置20は、人物が撮像範囲内に入るように撮像部の角度を調整する(ステップS203)。そして、撮像装置20は、撮像部21を用いて居室90の画像を撮像し(ステップS204)、
図13のステップS102に戻る。
【0075】
[歩行軌跡データ生成処理の処理手順]
次に、
図13に示した歩行軌跡データ生成処理の処理手順について説明する。
図15は、
図13の歩行軌跡データ生成処理の処理手順を示すフローチャートである。
図15に示すように、歩行速度算出装置30は、画像データに基づいて骨格認識を行う(ステップS301)。
【0076】
そして、歩行速度算出装置30は、骨格認識データに基づいて胸座標を取得する(ステップS302)。その後、歩行速度算出装置30は、胸座標を歩行軌跡として記憶する(ステップS303)。その後、胸座標の差分より移動距離を算出し(ステップS304)、
図13のステップS105に戻る
【0077】
[歩行頻度データ適否判定処理の処理手順]
次に、
図13の歩行頻度データ適否判定処理の処理手順について説明する。
図16は、
図13の歩行頻度データ適否判定処理の処理手順を示すフローチャートである。
図16に示すように、歩行速度算出装置30は、歩行軌跡データ34dが1人以上のデータか否かを判定する(ステップS401)。歩行速度算出装置30は、誰も映っていない場合は(ステップS401:No)、歩行軌跡データ34dは「適切でない」と判定し(ステップS407)、
図13のS107に戻る。
【0078】
一方、歩行速度算出装置30は、映っている人数が1人以上の場合は(ステップS401:Yes)、動いている人が1人か否かを判定する(ステップS402)。動いている人が2人以上の場合は(ステップS402:No)、歩行軌跡データ34dは「適切でない」と判定し(ステップS407)、
図13のS107に戻る。
【0079】
一方、歩行速度算出装置30は、動いている人が1人である場合には(ステップS402:Yes)、胸座標が除外領域外か否かを判定する(ステップS403)。胸座標が除外領域であった場合は(ステップS403:No)、歩行軌跡データ34dは「適切でない」と判定し(ステップS407)、
図13のS107に戻る。
【0080】
一方、歩行速度算出装置30は、胸座標が除外領域外であった場合は(ステップS403:Yes)、胸座標の上下動が所定の閾値以下か否かを判定する(ステップS404)。胸座標の上下動が所定の閾値より大きい場合は(ステップS404:No)、歩行軌跡データ34dは「適切でない」と判定し(ステップS407)、
図13のS107に戻る。
【0081】
一方、歩行速度算出装置30は、胸座標の上下動が所定の閾値以下であった場合は(ステップS404:Yes)、胸座標が歩き始めと歩き終わりを中心とする所定の大きさの円の中に所定の割合以上存在するか否かを判定する(ステップS405)。胸座標が所定の割合以上存在する場合は(ステップS405:No)、歩行軌跡データ34dは「適切でない」と判定し(ステップS407)、
図13のS107に戻る。
【0082】
一方、歩行速度算出装置30は、胸座標が所定の割合以上存在しない場合は(ステップS405:Yes)、歩行軌跡データ34dは「適切」と判定し(ステップS406)、
図13のステップS107に戻る。
【0083】
[見守りシステム10の処理手順]
次に、
図2に示した見守りシステム10の入居者の見守りの場合の処理手順について説明する。
図17及び
図18は、
図2の見守りシステム10の処理手順を示すシーケンス図である。
図17に示すように、見守りシステム10の撮像装置20は、画像取得処理を行う(ステップS501)。そして、撮像装置20は、歩行速度算出装置30に画像データを送信する(ステップS502)。なお、画像取得処理については、すでに説明しているので、ここでは、詳細な説明は省略する。
【0084】
歩行速度算出装置30は、撮像装置20から画像データを受信したか否かを判定する(ステップS503)。歩行速度算出装置30は、画像データを受信していない場合は、画像データを受信するまで待機する(ステップS503:No)。
【0085】
歩行速度算出装置30は、画像データを受信したならば(ステップS503:Yes)、歩行軌跡データ生成処理を行う(ステップS504)。そして、歩行速度算出装置30は、入居者の移動距離が所定の閾値を超えたか否かを判定する(ステップS505)。歩行速度算出装置30は、移動距離が所定の閾値を超えていない場合は(ステップS505:No)、ステップS503に移行し、撮像装置20からの画像データの受信を待機する。なお、歩行軌跡データ生成処理については、すでに説明しているので、ここでは、詳細名説明は省略する。
【0086】
一方、歩行速度算出装置30は、移動距離が所定の閾値を超えた場合は(ステップS505:Yes)、歩行軌跡データ適否判定処理を行う(ステップS506)。そして、歩行速度算出装置30は、歩行軌跡データが歩行速度を算出し頻度分布データに累積するデータとして適切であるか否かを判定する(ステップS507)。歩行速度算出装置30は、歩行軌跡データが適切でない場合には(ステップS507:No)、ステップS503に移行し、撮像装置20から画像データが送信されるのを待機する。なお、歩行軌跡データ適否判定処理については、すでに説明しているので、ここでは、詳細な説明を省略する。
【0087】
一方、歩行速度算出装置30は、歩行軌跡データが適切である場合には(ステップS507:Yes)、歩行速度を算出する(ステップS508)。その後、歩行速度算出装置30は、歩行速度データを管理装置40に送信する(ステップS509)。
【0088】
管理装置40は、歩行速度算出装置30から歩行速度データを受信したか否かを判定する(ステップS510)。管理装置40は、歩行速度データを受信していないならば(ステップS510:No)、歩行速度データの受信を待機する。一方、管理装置40は、歩行速度算出装置30から歩行速度データを受信したならば(ステップS510:Yes)、歩行速度特定部45cで特定された特定入居者歩行速度データ44cを読出し(ステップS511)、歩行速度データと特定入居者歩行速度データ44cを比較する(ステップS512)。
【0089】
そして、管理装置40は、歩行速度と特定入居者歩行速度の差分が所定の閾値以内であった場合は(ステップS513:Yes)、歩行速度は「問題なし」と判定する(ステップS514)。一方、歩行速度と特定入居者歩行速度の差分が所定の閾値以内でなかった場合は(ステップS513:No)、歩行速度は「問題あり」と判定する(ステップS515)。
【0090】
その後、管理装置40は、携帯端末50に判定結果を送信するとともに(ステップS516)、所定の表示部41に判定結果データを表示する(ステップS517)。そして、管理装置40は、判定結果が「問題あり」か否かを判定する(ステップS518)。判定結果が「問題あり」の場合は(ステップS518:Yes)、警告を報知する(ステップS519)。警告の報知は、例えば、「入居者の○○さんの歩行速度が20%低下しています」等のメッセージを表示する。一方、管理装置40は、判定結果が「問題なし」の場合は(ステップS518:No)、処理を終了する。
【0091】
携帯端末50は、判定結果データを受信したならば(ステップS520)、受信した判定結果データを所定の操作表示部51に表示する(ステップS521)。そして、携帯端末50は、判定結果が「問題あり」か否かを判定する(ステップS522)。判定結果が「問題あり」の場合は(ステップS522:Yes)、警告を報知する(ステップS523)。警告の報知は、例えば、「入居者の○○さんの歩行速度が20%低下しています」等のメッセージを表示する。一方、携帯端末50は、判定結果が「問題なし」の場合は(ステップS522:No)、処理を終了する。
【0092】
上述してきたように、本実施形態では、見守りシステム10は、撮像装置20により入居者の画像を撮像し、歩行速度算出装置30において、画像に基づいて骨格認識を行い、胸座標を時系列的に取得することにより歩行軌跡データを取得する。その後、歩行速度算出装置30は、歩行軌跡データに基づいて歩行速度を算出する。管理装置40は、算出された歩行速度を速度毎に累積加算し頻度分布を生成し、該頻度分布に基づいて所定期間における入居者の歩行速度を特定する。その後、管理装置40は、取得した歩行速度と特定した歩行速度との差分を算出し、該差分が所定の閾値以上か否かを判定する。該差分が所定の閾値以上となった場合は、報知を行う。また、携帯端末50においても、該判定の結果を受信し、該差分が所定の閾値以上となった場合に報知を行うようにしたので、入居者の体調の変化を効率良く検知することができる。
【0093】
<変形例>
ところで、上記実施形態では、見守りシステム10は、入居者の歩行軌跡について歩き始めWSと歩き終わりWEは、1つの回帰直線上に表わされる場合について説明したが、変形例では、入居者の歩行軌跡が1つの回帰直線上に表わされない場合について説明する。
【0094】
図19は、変形例に係る見守りシステムの歩行軌跡データの一例を示す図である。
図19(a)に示すように、入居者の歩行軌跡が複数の曲線を描く場合には、所定の計測単位長(例えば、W
SからW
Eまでの距離)未満であっても、入居者の歩き始めW
Sから入居者の歩行軌跡の歩行方向が変化した第1の変化点W
nまでの回帰直線を算出し、この距離の移動に要した時間と回帰直線の長さL1に基づいて歩行速度を算出してもよい。
【0095】
また、
図19(b)に示すように、入居者が、さらに歩く方向を変えた場合には、第1の変化点W
nを起点として、第2の変化点W
mまでの回帰直線を算出して、この距離の移動に要した時間と回帰直線の長さL2に基づいて歩行速度を算出してもよい。
【0096】
さらに、
図19(c)に示すように、見守りシステムは、入居者の第2の変化点W
mから歩き終わりW
Eまでの回帰直生を算出し、この距離の移動に要した時間と回帰直線の長さL3に基づいて歩行速度を算出してもよい。
【0097】
[変化点の検知について]
次に、変形例に係る見守りシステムの入居者の歩行方向の変化点の検知について説明する。
図20は、変形例に係る見守りシステムの歩行方向の変化点の検知について説明する説明図である。
図20(a)に示すように、入居者の歩き始めW
Sを原点として、胸座標の時系列のデータの座標をそれぞれg
0、g
1、g
2とする。
【0098】
そして、
図20(b)に示すように、歩き始めW
sを原点として、歩き始めW
sと、第1の胸座標の時系列データg
0との成すXY平面上での角度を基準角度とする。そして、歩き始めW
sと、第2の胸座標の時系列データg
1との成すXY平面上での角度と基準角度との差分θ
1を算出する。さらに、歩き始めW
sと、第3の胸座標の時系列データg
2との成すXY平面上での角度と基準角度との差分θ
2を算出する。
【0099】
見守りシステムは、このように、歩き始めWsを原点として、第1の胸座標の時系列データg0との成すXY平面上での角度を基準角度とする。そして、各胸座標の時系列データの座標と基準角度との差分が所定の閾値を超えた場合に、入居者は、歩く方向を変えたと判定する。
【0100】
なお、上記実施形態では、見守りシステム10の管理装置40は、入居者の歩行速度の判定結果データを携帯端末50に送信する場合について説明したが、管理装置40は、判定結果データが「問題あり」の場合に、警告データを携帯端末50に送信するようにしてもよい。
【0101】
<ハードウエアとの関係>
次に、本実施形態に係る見守りシステム10の管理装置40と、コンピュータの主たるハードウエア構成の対応について説明する。
図21は、ハードウエア構成の一例を示す図である。
【0102】
一般的に、コンピュータは、CPU81、ROM82、RAM83及び不揮発性メモリ84などがバス85により接続された構成となる。不揮発性メモリ84の代わりにハードディスク装置が設けられていてもよい。説明の便宜上、基本的なハードウエア構成のみを示している。
【0103】
ここで、ROM82又は不揮発性メモリ84には、オペレーティングシステム(以下、単に「OS」と言う)の起動に必要となるプログラム等が記憶されており、CPU81は、電源投入時にROM82又は不揮発性メモリ84からOSのプログラムをリードして実行する。
【0104】
一方、OS上で実行される各種のアプリケーションプログラムは、不揮発性メモリ84に記憶されており、CPU81がRAM83を主メモリとして利用しつつアプリケーションプログラムを実行することにより、アプリケーションに対応するプロセスが実行される。
【0105】
そして、本実施形態に係る見守りシステム10の管理装置40の見守りプログラムについても、他のアプリケーションプログラムと同様に不揮発性メモリ84等に記憶され、CPU81が、かかる施術管理プログラムをロードして実行することになる。本実施形態に係る見守りシステム10の管理装置40の場合には、
図5に示した歩行速度データ受信部45aと、頻度分布生成部45bと、歩行速度特定部45cと、歩行速度判定部45dと、報知部45eと、判定結果データ送信部45fとに対応するルーチンを含む見守りプログラムが不揮発性メモリ84等に記憶される。CPU81により見守りプログラムがロード実行されることにより、歩行速度データ受信部45aと、頻度分布生成部45bと、歩行速度特定部45cと、歩行速度判定部45dと、報知部45eと、判定結果データ送信部45fとに対応する見守りプロセスが生成される。
【0106】
上記の各実施形態で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明に係る見守りシステム、見守り装置、見守り方法及び見守りプログラムは、入居者の体調の変化を効率良く検知する場合に適している。
【符号の説明】
【0108】
10 見守りシステム
20 撮像装置
21 撮像部
22 光源部
23 モータ
24 通信I/F部
25 記憶部
25a 人物認識学習済モデル
25b 画像データ
26 制御部
26a 光源制御部
26b 画像取得部
26c 人物認識部
26d モータ制御部
27e 画像送信部
30 歩行速度算出装置
31 通信I/F部
34 記憶部
34a 骨格認識学習済モデル
34b 画像データ
34c 骨格認識データ
34d 歩行軌跡データ
34e 除外領域データ
35 制御部
35a 画像データ受信部
35b 骨格認識部
35c 歩行軌跡データ取得部
35d 判定部
35e 歩行速度算出部
35f 歩行速度データ送信部
40 管理装置
41 表示部
42 入力部
43 通信I/F部
44 記憶部
44a 歩行速度データ
44b 歩行速度頻度分布データ
44c 特定入居者歩行速度データ
44d 判定結果データ
45 制御部
45a 歩行速度データ受信部
45b 頻度分布生成部
45c 歩行速度特定部
45d 歩行速度判定部
45e 報知部
45f 判定結果データ送信部
50 携帯端末
51 操作表示部
52 通信I/F部
54 記憶部
55 制御部
55a 判定結果データ受信部
55b 報知部
81 CPU
82 ROM
83 RAM
84 不揮発性メモリ
85 バス
90 居室
91 床面
92 ベッド
93 扉
94 ベッド領域
95 壁領域
100 画像
110 赤外線画像
111 人物
120 深度情報
130 骨格モデル
140 3次元座標
A 教師用データ
B CNN
M 学習済モデル
N ネットワーク
R 正解データ