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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025034738
(43)【公開日】2025-03-13
(54)【発明の名称】渦巻きポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/42 20060101AFI20250306BHJP
【FI】
F04D29/42 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023141312
(22)【出願日】2023-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000152170
【氏名又は名称】株式会社酉島製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】増田 直樹
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA03
3H130AB22
3H130AB43
3H130AC30
3H130BA74A
3H130BA74J
3H130CA05
3H130CA09
3H130CA21
3H130DF03Z
3H130DG04X
3H130DG09Z
3H130EA07A
3H130EA07H
3H130EA07J
(57)【要約】
【課題】部分流量での運転時のラジアルスラストを効果的に低減できる渦巻きポンプを提供する。
【解決手段】渦巻きポンプ1は、渦巻き流路5に接続された第1端部11aと羽根車3の入口3b側に接続された第2端部11bとをそれぞれ有する複数のバランス配管11A~11Hを備える。個々のバランス配管11A~11Hは、渦巻き流路5の圧力P1の羽根車3の入口3b側の圧力P2に対する差圧(P1-P2)が閾値Pth未満であれば渦巻き流路5と入口3b側との連通を遮断し、差圧(P1-P2)が閾値Pth以上であれば渦巻き流路5と入口3b側とを連通させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
渦巻きケーシングと、
内周側に入口を有して外周側に出口を有する複数の羽根を備え、前記渦巻きケーシング内に配置された羽根車と、
前記渦巻きケーシング内において前記羽根車の外周側に前記出口に隣接して設けられた渦巻き流路と、
前記渦巻き流路に接続された第1端部と前記入口側に接続された第2端部とをそれぞれ有し、前記渦巻き流路の圧力の前記羽根車の前記入口側の圧力に対する差圧が閾値未満であれば前記渦巻き流路と前記羽根車の前記入口側との連通を遮断し、前記渦巻き流路の圧力の前記羽根車の前記入口側の圧力に対する差圧が閾値以上であれば前記渦巻き流路と前記羽根車の前記入口側とを連通させる複数のバランス配管と
を備える、渦巻きポンプ。
【請求項2】
複数のバランス配管にそれぞれ設けられ、前記渦巻き流路側の圧力の前記羽根車の前記入口側の圧力に対する差圧が閾値未満であれば閉弁し、前記渦巻き流路側の圧力の前記羽根車の前記入口側の圧力に対する差圧が閾値以上であれば開弁する複数の差圧制御弁を備える、請求項1に記載の渦巻きポンプ。
【請求項3】
前記複数のバランス配管は、前記渦巻き流路の周方向に均等に配置されている、請求項2に記載の渦巻きポンプ。
【請求項4】
前記第1端部に隣接して配置されて前記渦巻き流路の前記圧力をそれぞれ検出する複数の第1圧力センサと、
前記羽根車の入口側の前記圧力を検出する第2圧力センサと、
前記複数のバランス配管にそれぞれ設けられた、複数の開閉弁と、
前記第1圧力センサが検出する前記圧力の前記第2圧力センサが検出する圧力に対する差圧が前記閾値未満であれば、対応する前記バランス配管に設けられた前記開閉弁を閉弁状態とし、前記第1圧力センサが検出する前記圧力の前記第2圧力センサが検出する圧力に対する差圧が前記閾値未満であれば、対応する前記バランス配管に設けられた前記開閉弁を開弁状態とする、制御部と
を備える、請求項1に記載の渦巻きポンプ。
【請求項5】
前記複数のバランス配管と前記第1圧力センサは、前記渦巻き流路の周方向に均等に配置されている、請求項4に記載の渦巻きポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は渦巻きポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
渦巻きポンプでは、定格流量を下回る部分流量での運転時に羽根車出口の流れの軸対称性が損なわれ、羽根車出口の渦巻き流路における圧力分布が不均一となり、羽根車にラジアル方向の不釣り合い合力(ラジアルスラスト)が作用することが知られている。
【0003】
特許文献1に開示された渦巻きポンプでは、渦巻きケーシングの外側に設けた環状配管に対して渦巻き流路をそれぞれ接続する複数の接続配管を設けることで、渦巻き流路における圧力分布を均一化して、ラジアルスラストの低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭57-23115号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された渦巻きポンプでは、複数の接続配管が共通の環状配管に接続されているため、圧力勾配の影響で圧力分布を効果的に均一化できない。つまり、特許文献1に開示された渦巻きポンプでは、ラジアルスラストを効果的に低減できない。
【0006】
本発明は、部分流量での運転時のラジアルスラストを効果的に低減できる渦巻きポンプを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、渦巻きケーシングと、内周側に入口を有して外周側に出口を有する複数の羽根を備え、前記渦巻きケーシング内に配置された羽根車と、前記渦巻きケーシング内において前記羽根車の外周側に前記出口に隣接して設けられた渦巻き流路と、前記渦巻き流路に接続された第1端部と前記入口側に接続された第2端部とをそれぞれ有し、前記渦巻き流路の圧力の前記羽根車の前記入口側の圧力に対する差圧が閾値未満であれば前記渦巻き流路と前記羽根車の前記入口側との連通を遮断し、前記渦巻き流路の圧力の前記羽根車の前記入口側の圧力に対する差圧が閾値以上であれば前記渦巻き流路と前記羽根車の前記入口側とを連通させる複数のバランス配管とを備える、渦巻きポンプを提供する。
【0008】
バランス配管は、渦巻き流路の圧力の羽根車の入口側の圧力の差圧が閾値未満であれば、渦巻き流路と羽根車の入口側の連通を遮断するが、この差圧が閾値以上になれば渦巻き流路と羽根車の入口側を連通させる。従って、渦巻きポンプの部分流量での運転時に、渦巻き流路の圧力分布が不均一となって圧力増加領域が生じ、差圧が閾値以上となると、圧力増加領域と羽根車の入口側とを接続するバランス配管は圧力増加領域と羽根車の入口側とを連通させる。そして、連通状態となったバランス配管を介して、圧力増加領域から羽根車の入口側へ戻る流れが発生する。その結果、圧力増加領域の圧力が低下して、渦巻き流路の圧力分布が均一化されてラジアルスラストが低減される。複数のバランス配管がそれぞれ個別に渦巻き流路と羽根車の入口側とを接続しているので、1本のバランス配管を介した圧力増加領域から羽根車の入口側に向かう流れは、他のバランス配管の圧力損失等の影響を受けない。よって、圧力分布の均一化によるラジアルスラストの低減を効果的に実現できる。
【0009】
一つの具体的な態様では、複数のバランス配管にそれぞれ設けられ、前記渦巻き流路側の圧力の前記羽根車の前記入口側の圧力に対する差圧が閾値未満であれば閉弁し、前記渦巻き流路側の圧力の前記羽根車の前記入口側の圧力に対する差圧が閾値以上であれば開弁する複数の差圧制御弁を備える。
【0010】
この場合、前記複数のバランス配管は、前記渦巻き流路の周方向に均等に配置されている。
【0011】
別の具体的な態様では、前記第1端部に隣接して配置されて前記渦巻き流路の前記圧力をそれぞれ検出する複数の第1圧力センサと、前記羽根車の入口側の前記圧力を検出する第2圧力センサと、前記複数のバランス配管にそれぞれ設けられた、複数の開閉弁と、前記第1圧力センサが検出する前記圧力の前記第2圧力センサが検出する圧力に対する差圧が前記閾値未満であれば、対応する前記バランス配管に設けられた前記開閉弁を閉弁状態とし、前記第1圧力センサが検出する前記圧力の前記第2圧力センサが検出する圧力に対する差圧が前記閾値未満であれば、対応する前記バランス配管に設けられた前記開閉弁を開弁状態とする、制御部とを備える。
【0012】
この場合、前記複数のバランス配管と前記第1圧力センサは、前記渦巻き流路の周方向に均等に配置されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る渦巻きポンプは、部分流量での運転時のラジアルスラストを効果的に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る渦巻きポンプを示す模式的な斜視図。
図2図1の渦巻きポンプのシャフトに直交する断面での模式的な断面図。
図3図1の渦巻きポンプの定格流量での運転時におけるシャフトに直交する断面での模式的な断面図。
図4図1の渦巻きポンプの部分流量での運転時におけるシャフトに直交する断面での模式的な断面図。
図5】本発明の第2実施形態に係る渦巻きポンプを示す模式的な斜視図。
図6図5の渦巻きポンプのシャフトに直交する断面での模式的な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1及び図2を参照すると、本発明の実施形態に係る片吸込型の渦巻きポンプ1は、渦巻きケーシング2を備え、渦巻きケーシング2内には羽根車3が収容されている。羽根車3にはシャフト4が機械的に連結されており、シャフト4は図示しないモータ等の駆動機構により回転駆動され、羽根車3はシャフト4と共に回転する。羽根車3は複数の羽根3aを備え、個々の羽根3aの入口3bと出口3c(羽根車3自体の入口と出口でもある)は、それぞれ内周側と外周側に位置している。
【0017】
渦巻きケーシング2内には、羽根車3の外周側を隣接して取り囲みように、従って個々の羽根3bの出口3cに隣接して、渦巻き流路5が設けられている。渦巻きケーシング2には、羽根車3の入口3bに対向するように吸込口2aが設けられ、渦巻き流路5と連続するように吐出口2bが設けられている。吸込口2aには吸込側配管6が接続され、吐出口2bには吐出側配管7が接続されている。
【0018】
渦巻きケーシング2は、8本のバランス配管11A~11Hを備える。個々のバランス配管11A~11Hは、渦巻きケーシング2に取り付けられて渦巻き流路5の一部ないし限定された領域に流体的に接続された第1端部11aと、吸込側配管6に取り付けられて羽根車3の入口3b側に流体的に接続された第2端部11bとを備える。8本のバランス配管11A~11Hの第1端部11aは渦巻き流路5の周方向に均等に配置されている。具体的には、8本のバランス配管11A~11Hの第1端部11aはシャフト4の軸線L周りに等角度間隔(45度間隔)で設けられている。以下の説明では、バランス配管11A~11Hのうちの1本について言及し、かつバランス配管11A~11Hのうちのいずれであるのかを特定する必要がない場合は、バランス配管11という場合がある。
【0019】
個々のバランス配管11A~11Hには、第1端部11aと第2端部11bの間に、差圧駆動式自力調整弁(以下、自力調整弁と呼ぶ)12が介設されている。自動調整弁12は、開閉に動力を必要とせず、一次側と二次側の差圧に応じてばね等で付勢された弁体が移動することで自動的に開閉する。
【0020】
自力調整弁12は、一次側である第1端部11a側、つまりバランス配管11が流体的に接続されている渦巻き流路5の一部ないし限定された領域における圧力P1の、二次側である第2端部11b側、つまり羽根車3の入口3b側の圧力P2に対する差圧(P1-P2)の、規定圧力ないし閾値Pthに対する大小で開閉状態が変化する。
【0021】
渦巻き流路5の一部ないし限定された領域における圧力P1の羽根車3の入口3b側の圧力P2に対する差圧(P1-P2)が閾値Pth未満であれば、自力調整弁12は閉弁状態を維持する。つまり、差圧(P1-P2)が閾値Pth未満であれば、バランス配管11は、渦巻き流路5の第1端部11aが接続された部分ないし領域と、羽根車3の入口側3bとの連通を遮断する。一方、渦巻き流路5の一部ないし限定された領域における圧力P1の羽根車3の入口3b側の圧力P2に対する差圧(P1-P2)が閾値Pth以上であれば、自力調整弁12が開弁する。つまり、差圧(P1-P2)が閾値Pth以上となると、バランス配管11は、渦巻き流路5の第1端部11aが接続された部分ないし領域と、羽根車3の入口側3bとを連通させ、渦巻き流路5の第1端部11aが接続された部分ないし領域から吸込側配管6へ水(他の液体であってもよい)が流れる。
【0022】
図3を参照すると、定格流量での運転時には、羽根車3の個々の羽根3aの入口3bから出口3cに流れる水の流量FLは概ね均一である。そのため、定格流量での運転時には、渦巻き流路5の周方向、つまり渦巻き流路5における水の経路FPに沿った圧力分布(経路FPを示す線の太さで概念的に示す)が概ね均一であるので、羽根車3にはラジアルスラストが作用しないか、作用したとしても十分に小さい。自力調整弁12の閾値Pthは、定格流量での運転時の渦巻き流路5の一部ないし限定された領域における圧力P1の羽根車3の入口3b側の圧力P2に対する差圧(P1-P2)よりも十分大きく設定している。そのため、定格流量での運転時には、すべてのバランス配管11A~11Hの自力調整弁12は閉弁状態を維持している。つまり、定格流量での運転時には、バランス配管11A~11Hを設けたことは、渦巻きポンプ1の性能に影響せず、バランス配管11A~11Hを設けない場合と同じポンプ最高効率を維持できる。
【0023】
一方、図4を参照すると、定格流量を下回る部分流量での運転時には、羽根車3の個々の羽根3aの入口3bから出口3cに流れる水の流量FLが不均一となり、渦巻き流路5の周方向、つまり渦巻き流路5における水の経路FPに沿った圧力分布が不均一となる。図4の例では、渦巻き流路5のうちバランス配管11A,11Bの第1端部11aが接続されている領域に圧力増加領域HPAが生じ、この圧力増加領域HPAに対して周方向反対側に圧力低下領域LPAが生じている。自力調整弁12の閾値Pthは、圧力増加領域HPAにおける前述した差圧(P1-P2)以上となるように設定しているので、バランス配管11A~11Hのうち、バランス配管11C~11Hの自力調整弁12は閉弁状態を維持するが、第1端部11aが圧力増加領域HPAに接続されているバランス配管11A,11Bの自力調整弁12が閉弁状態から開弁状態に切り替わる。かかる自力調整弁12の開弁により、バランス配管11A,11Bを介して、圧力増加領域HPAから吸込側配管6に戻る水の流れが発生する。その結果、圧力増加領域HPAの圧力が低下して、渦巻き流路5の圧力分布が均一化されてラジアルスラストが低減される。バランス配管11A~11Hがそれぞれ個別に渦巻き流路5と吸込側配管6を接続しているので、バランス配管11Aを介した圧力増加領域HPAから吸込側配管6に向かう流れは、バランス配管11Bを介した圧力増加領域HPAから吸込側配管6に向かう流れにおける圧力損失等の影響を受けない。この点は、バランス配管11Bを介した圧力増加領域HPAから吸込側配管6に向かう流れについても同様である。よって、圧力分布の均一化によるラジアルスラストの低減を効果的に実現できる。そして、ラジアルスラストの低減により、渦巻きポンプ1の振動低減、長寿命化、及び構造簡素化を図ることができる。また、ラジアルスラストの低減により、シャフト4やそれを支持する軸受(図示せず)の小型化、渦巻きポンプ1全体の低剛性化や重量低減を図ることもできる。
【0024】
本実施形態の渦巻きポンプ1はさらに以下の利点ないし特徴を有する。
【0025】
自力調整弁12を備える複数のバランス配管11を設けるだけで、本実施形態の渦巻きポンプ1を実現できる。つまり、本実施形態の渦巻きポンプ1は、新たに設計して製造することで実現できるだけでなく、既存の渦巻きポンプに自力調整弁12を備える複数のバランス配管11を設ける改造を行うことによっても実現できる。
【0026】
前述のように自力調整弁12は一次側と二次側の差圧で動作し、開閉に動力を必要としない。そのため、追加の電化設備や制御回路は不要である。
【0027】
自力調整弁12の設定圧力ないし閾値Pthを調整することで、渦巻きポンプのサイズ及び比速度によらず、自力調整弁12を備える複数のバランス配管11を設けるという同じ構造で、本実施形態の渦巻きポンプ1を実現できる。
【0028】
締切運転時には、すべてのバランス配管11A~11Hについて、自力調整弁12の一次側である渦巻き流路5側の圧力P1が上昇し、二次側である吸込側配管6側の圧力P2に対する差圧(P1-P2)が閾値Pthを上回り、自力調整弁12が開弁状態となる。つまり、締切運転時には、バランス配管11A~11Hを介して渦巻き流路5から羽根車3の入口3b側に戻る水の流れが発生する。そのため、締切運転時であっても、ポンプ内部では締切運転とならず、過大なラジアルスラストの発生を防止することができる。また、締切運転時でもポンプ内部の締切運転を回避可能であるので、吐出側配管7の圧力レーティングを決定する締切全揚程を低減することができ、吐出側配管7の管厚の薄肉化とそれにより低コスト化を達成できる。この効果は比速度が大きい場合に顕著である。
【0029】
(第2実施形態)
以下、図5及び図6を参照して本発明の第2実施形態に係る渦巻きポンプ1を説明する。以下の説明において、特に言及しない点については本実施形態の渦巻きポンプ1は第1実施形態のものと同様である。また、図5及び図6において、第1実施形態と同一又は同様の要素には同一の符号を付している。
【0030】
本実施形態の渦巻きポンプ1では、個々のバランス配管11A~11Hは、第1実施形態における自力調整弁12(例えば図1参照)に代えて、オン/オフ型の電磁弁22を備えている。これらの電磁弁22は後述する制御部25から開弁信号受信しない限り閉弁状態を維持する常閉型である。
【0031】
渦巻きケーシング2の渦巻き流路5に臨む壁面には、バランス配管11A~11Hの第1端部11aのそれぞれの近傍に、第1圧力センサ23A~23Hが設けられている。個々の第1圧力センサ23A~23Hは、渦巻き流路5のうち対応するバランス配管11A~11Hの第1端部11aが接続されている部分ないし領域の圧力を検出する。例えば、第1圧力センサ23Aは、渦巻き流路5のうちバランス配管11Aの第1端部11aが接続されている部分ないし領域の圧力を検出する。つまり、個々の第1圧力センサ23A~23Hは、第1実施形態で説明した圧力P1を検出する。一方、吸込側配管6の内壁面には、第2圧力センサ24が設けられている。つまり、第2圧力センサ24は、第1実施形態で説明した圧力P2を検出する。
【0032】
本実施形態の渦巻きポンプ1は、制御部25を備える。制御部25には、個々の第1圧力センサ23A~23Hから圧力P1が時々刻々と入力されると共に、第2圧力センサ24から圧力P2が時々刻々と入力される。制御部25は入力される圧力P1,P2に基づいて、個々のバランス配管11A~11Hの電磁弁22の開閉状態を制御する。制御部25は、ROM、RAMのような記憶装置と、CPUのような演算装置により構築できる。制御部25に対する第1圧力センサ23A~23H、第2圧力センサ24、及び電磁弁22の通信接続は、有線であっても無線であってもよい。
【0033】
制御部25は、第1実施形態で説明した閾値Pthを記憶している。制御部25は第1圧力センサ23A~23Hのそれぞれについて、差圧(P1-P2)が閾値Pth未満であれば対応する電磁弁22に対して開弁信号を出力せず当該電磁弁22を閉弁状態で維持するが、差圧(P1-P2)が閾値Pth以上となると対応する電磁弁22に対して開弁信号を出力して当該電磁弁22を開弁状態とする。
【0034】
例えば、2個の圧力センサ23A,23Bについて差圧(P1-P2)が閾値Pth以上となると、制御部25はバランス配管11A,11Bの電磁弁22に対して開弁信号を出力し開弁状態とする。これにより、バランス配管11A,11Bを介して、渦巻き流路5の圧力増加領域HPA(図4参照)から吸込側配管6に戻る水流れが発生する。その結果、圧力増加領域HPAの圧力が低下して、渦巻き流路5の圧力分布が均一化されてラジアルスラストが低減される。
【0035】
本実施形態では、制御部25に記憶された閾値Pthの値を変更することで、部品の交換等を伴うことなく閾値Pthを調整できる。
【0036】
本発明は以上の実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。
【0037】
例えば、バランス配管11の本数は実施形態のような8本に限定されず、例えば4本から12本の範囲で設定できる。
【0038】
実施形態では、バランス配管11の第2端部11bは吸込側配管6に接続されている。しかし、第2端部11bの接続箇所は羽根車3の入口3a側であれば特に限定されない。
【符号の説明】
【0039】
1 渦巻きポンプ
2 渦巻きケーシング
2a 吸込口
2b 吐出口
3 羽根車
3a 羽根
3b 入口
3c 出口
4 シャフト
5 渦巻き流路
6 吸込側配管
7 吐出側配管
11A~11H バランス配管
11a 第1端部
11b 第2端部
12 差圧駆動式自力調整弁
22 電磁弁
23A~23H 第1圧力センサ
24 第2圧力センサ
25 制御部
AX 軸線
FL 個々の羽根3aにおける水の流量
FP 渦巻き流路5における水の経路
HPA 圧力増加領域
LPA 圧力低下領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6