(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025034755
(43)【公開日】2025-03-13
(54)【発明の名称】太陽発電衛星および太陽発電衛星の制御方法
(51)【国際特許分類】
B64G 1/44 20060101AFI20250306BHJP
B64G 1/66 20060101ALI20250306BHJP
【FI】
B64G1/44
B64G1/66 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023141347
(22)【出願日】2023-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】高野 忠
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 康行
(72)【発明者】
【氏名】森 治
(57)【要約】
【課題】より少ないエネルギーで衛星の姿勢を維持でき、太陽発電衛星の稼働コストを低減させることができる太陽発電衛星および太陽発電衛星の制御方法を提供する。
【解決手段】送電用アンテナ110と、間隔を空けて配置された複数の縦梁120と、前記縦梁120同士を接続する横梁130と、1または複数の太陽電池パネル140と、を備える長尺の太陽発電衛星1であって、前記複数の縦梁120は、前記太陽発電衛星1の長手方向に平行または傾斜する方向に延び、前記送電用アンテナ110は、前記太陽発電衛星1の長手方向の一方の端部側に設けられ、前記送電用アンテナ110の送電方向が前記太陽発電衛星1の前記長手方向と平行な方向を向き、前記太陽電池パネル140は、前記縦梁120に対して回転可能に接続される、ことを特徴とする太陽発電衛星1とその制御方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電用アンテナと、
間隔を空けて配置された複数の縦梁と、
前記縦梁同士を接続する横梁と、
1または複数の太陽電池パネルと、
を備える長尺の太陽発電衛星であって、
前記複数の縦梁は、前記太陽発電衛星の長手方向に平行または傾斜する方向に延び、
前記送電用アンテナは、前記太陽発電衛星の前記長手方向の一方の端部側に設けられ、
前記送電用アンテナの送電方向が前記太陽発電衛星の前記長手方向と平行な方向を向き、
前記太陽電池パネルは、前記縦梁に対して回転可能に接続され、
前記太陽電池パネルの回転軸が前記太陽電池パネルの面と平行でありかつ前記複数の縦梁の長手方向と直交する、
ことを特徴とする太陽発電衛星。
【請求項2】
前記太陽電池パネルが、前記縦梁の前記長手方向に複数設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽発電衛星。
【請求項3】
前記太陽電池パネルと前記縦梁とを接続する回転ジョイントおよび支持部がさらに設けられ、
前記支持部は、前記縦梁および前記回転軸に交差する方向または前記縦梁の前記長手方向に延び、
前記支持部に沿って、前記回転ジョイントが移動可能である、
ことを特徴とする請求項2に記載の太陽発電衛星。
【請求項4】
前記太陽電池パネルの前記回転軸に沿って、複数の前記太陽電池パネルが設けられている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の太陽発電衛星。
【請求項5】
前記縦梁の前記長手方向の長さが、前記太陽電池パネルの前記回転軸と垂直な方向の長さの3倍以上である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の太陽発電衛星。
【請求項6】
送電用アンテナと、
間隔を空けて配置された複数の縦梁、前記縦梁同士を接続する横梁および複数の太陽電池パネルを一組として含む複数のパネル構造体と、
を備える長尺の太陽発電衛星であって、
前記複数の縦梁は、前記太陽発電衛星の長手方向に平行または傾斜する方向に延び、
前記送電用アンテナは、前記太陽発電衛星の前記長手方向の一方の端部側に設けられ、
前記送電用アンテナの送電方向が前記太陽発電衛星の前記長手方向と平行な方向を向き、
前記パネル構造体のそれぞれにおいて、
前記複数の太陽電池パネルのそれぞれは、前記縦梁に対して回転可能に接続され、
前記太陽電池パネルの回転軸が前記太陽電池パネルの面と平行でありかつ前記複数の縦梁の長手方向と直交し、
前記太陽発電衛星の前記長手方向の前記送電用アンテナが設けられた端部とは反対側の端部において、前記パネル構造体同士が接続されている、
ことを特徴とする太陽発電衛星。
【請求項7】
前記太陽電池パネルと前記縦梁とを接続する回転ジョイントおよび支持部がさらに設けられ、
前記支持部は、前記縦梁および前記回転軸に交差する方向または前記縦梁の前記長手方向に延び、
前記支持部に沿って、前記回転ジョイントが移動可能である、
ことを特徴とする請求項6に記載の太陽発電衛星。
【請求項8】
前記縦梁の前記長手方向の長さが、前記太陽電池パネルの前記回転軸と垂直な方向の長さの3倍以上である、
ことを特徴とする請求項6または7に記載の太陽発電衛星。
【請求項9】
請求項1、2、6または7に記載の太陽発電衛星の制御方法であって、
公転軌道上において、前記太陽電池パネルが太陽を向くように制御し、かつ前記送電用アンテナが地球上の受信用アンテナを向くように制御する、
ことを特徴とする太陽発電衛星の制御方法。
【請求項10】
請求項2または3に記載の太陽発電衛星の制御方法であって、
前記太陽発電衛星が公転軌道上で太陽方向から40~50度または220~230度の位相に位置するときに、前記太陽発電衛星を前記太陽発電衛星の前記長手方向と平行な回転軸周りに180度回転させる、
ことを特徴とする太陽発電衛星の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽発電衛星および太陽発電衛星の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球周りの公転軌道上に人工衛星を打ち上げて、太陽光発電を行う宇宙太陽発電衛星システムがある。このシステムに用いられる太陽発電衛星は、発電するための太陽電池パネルを太陽方向に、地球上にマイクロ波電力を送るための送電用アンテナを地球方向に、各々向ける必要がある。太陽発電衛星は、そのサイズが数km、重さが数万トンとなる巨大構造物である。そのため、姿勢安定のために多大のエネルギーを要する。
【0003】
例えば、非特許文献1又は2に記載されるような従来の太陽発電衛星では、広くて薄い太陽電池パネルが公転軌道の軌道面内に広がっている。このような構造では、衛星の姿勢制御に多大な推力が要る。また、非特許文献3に記載されるような従来の太陽発電衛星では、太陽電池パネルを太陽方向に、アンテナを地球方向に、各々向けることができないため、発電能力が不十分である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】G. M. Hanley, “Satellite power systems (SPS) concept definition study I-Executive summary”, NASA, CR- 3317, 1980.
【非特許文献2】DOE and NASA report; “Satellite Power System; Concept Development and Evaluation Program”, Reference System Report, Oct. 1978.
【非特許文献3】S. Sasaki, K. Tanaka, K. Higuchi, N. Okuizumi, S. Kawasaki, N. Shinohara, K. Senda, and K. Ishimura, “A new concept of solar power satellite: Tethered-SPS”, Acta Astronautica, 60, pp.153 - 165, 2006.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、従来では、太陽発電衛星が巨大であるため、その姿勢安定には多大なエネルギーが必要になるという問題があった。また、効率的な発電および送電のためには、太陽電池パネルを太陽方向に、アンテナを地球方向に、各々向けるための特別な構造と装置が必要であった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、より少ないエネルギーで衛星の姿勢を維持でき、太陽発電衛星の稼働コストを低減させることができる太陽発電衛星および太陽発電衛星の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の一態様に係る太陽発電衛星は、
送電用アンテナと、
間隔を空けて配置された複数の縦梁と、
前記縦梁同士を接続する横梁と、
1または複数の太陽電池パネルと、
を備える長尺の太陽発電衛星であって、
前記複数の縦梁は、前記太陽発電衛星の長手方向に平行または傾斜する方向に延び、
前記送電用アンテナは、前記太陽発電衛星の前記長手方向の一方の端部側に設けられ、
前記送電用アンテナの送電方向が前記太陽発電衛星の前記長手方向と平行な方向を向き、
前記太陽電池パネルは、前記縦梁に対して回転可能に接続され、
前記太陽電池パネルの回転軸が前記太陽電池パネルの面と平行でありかつ前記複数の縦梁の長手方向と直交する、
ことを特徴とする。
上記の構成からなる太陽発電衛星によれば、地球上の受信アンテナを指向する送電用アンテナが長尺の太陽発電衛星の長手方向の一方の端部側に設けられかつその送電方向が太陽発電衛星の長手方向と平行な方向を向いているため、重力方向と太陽発電衛星の長手方向がほぼ一致するため、より少ないエネルギーで衛星の姿勢を維持できる。また、太陽電池パネルが縦梁に対して回転可能に接続されているため、公転軌道上で、太陽電池パネルの面が太陽へ向くように制御することが可能となり、太陽光を効率的に受光できる。よって、衛星の制御を簡略化し、より少ないエネルギーで衛星の姿勢を維持できるため、太陽発電衛星の稼働コストを低減させることができる。
(2)上記(1)に記載の太陽発電衛星では、
前記太陽電池パネルが、前記縦梁の前記長手方向に複数設けられていてもよい。
(3)上記(2)に記載の太陽発電衛星では、
前記太陽電池パネルと前記縦梁とを接続する回転ジョイントおよび支持部がさらに設けられ、
前記支持部は、前記縦梁および前記回転軸に交差する方向または前記縦梁の前記長手方向に延び、
前記支持部に沿って、前記回転ジョイントが移動可能であってもよい。
(4)上記(1)から(3)のいずれかに記載の太陽発電衛星では、
前記太陽電池パネルの前記回転軸に沿って、複数の前記太陽電池パネルが設けられていてもよい。
(5)上記(1)から(3)のいずれかに記載の太陽発電衛星では、
前記縦梁の前記長手方向の長さが、前記太陽電池パネルの前記回転軸と垂直な方向の長さの3倍以上であってもよい。
(6)本開示の一態様に係る太陽発電衛星は、
送電用アンテナと、
間隔を空けて配置された複数の縦梁、前記縦梁同士を接続する横梁および複数の太陽電池パネルを一組として含む複数のパネル構造体と、
を備える長尺の太陽発電衛星であって、
前記複数の縦梁は、前記太陽発電衛星の長手方向に平行または傾斜する方向に延び、
前記送電用アンテナは、前記太陽発電衛星の前記長手方向の一方の端部側に設けられ、
前記送電用アンテナの送電方向が前記太陽発電衛星の前記長手方向と平行な方向を向き、
前記パネル構造体のそれぞれにおいて、
前記複数の太陽電池パネルのそれぞれは、前記縦梁に対して回転可能に接続され、
前記太陽電池パネルの回転軸が前記太陽電池パネルの面と平行でありかつ前記複数の縦梁の長手方向と直交し、
前記太陽発電衛星の前記長手方向の前記送電用アンテナが設けられた端部とは反対側の端部において、前記パネル構造体同士が接続されている、
ことを特徴とする。
上記の構成からなる太陽発電衛星によれば、地球上の受信アンテナを指向する送電用アンテナが長尺の太陽発電衛星の端部側に設けられかつその送電方向が太陽発電衛星の長手方向と平行な方向を向いているため、重力方向と太陽発電衛星の長手方向がほぼ一致するため、より少ないエネルギーで衛星の姿勢を維持できる。また、太陽電池パネルが縦梁に対して回転可能に接続されているため、公転軌道上で、太陽電池パネルの面が太陽へ向くように制御することが可能となり、太陽光を効率的に受光できる。よって、衛星の制御を簡略化し、より少ないエネルギーで衛星の姿勢を維持できるため、太陽発電衛星の稼働コストを低減させることができる。さらに、パネル構造体同士が接続されていることによって、太陽発電衛星自体の剛性を確保することができる。
(7)上記(6)に記載の太陽発電衛星では、
前記太陽電池パネルと前記縦梁とを接続する回転ジョイントおよび支持部がさらに設けられ、
前記支持部は、前記縦梁および前記回転軸に交差する方向または前記縦梁の前記長手方向に延び、
前記支持部に沿って、前記回転ジョイントが移動可能であってもよい。
(8)上記(6)または(7)に記載の太陽発電衛星では、
前記縦梁の前記長手方向の長さが、前記太陽電池パネルの前記回転軸と垂直な方向の長さの3倍以上であってもよい。
(9)本開示の一態様に係る太陽発電衛星の制御方法は、
上記(1)、(2)、(6)または(7)に記載の太陽発電衛星の制御方法であって、
公転軌道上において、前記太陽電池パネルが太陽を向くように制御し、かつ前記送電用アンテナが地球上の受信用アンテナを向くように制御する、
ことを特徴とする。
(10)本開示の一態様に係る太陽発電衛星の制御方法は、
上記(2)または(3)に記載の太陽発電衛星の制御方法であって、
前記太陽発電衛星が公転軌道上で太陽方向から40~50度または220~230度の位相に位置するときに、前記太陽発電衛星を前記太陽発電衛星の長手方向と平行な回転軸周りに180度回転させる、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る太陽発電衛星および太陽発電衛星の制御方法によれば、より少ないエネルギーで衛星の姿勢を維持でき、太陽発電衛星の稼働コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示に係る太陽発電衛星の軌道を説明するための概略的な図である。
【
図2】第一実施形態に係る太陽発電衛星の構造を説明するための概略的な斜視図である。
【
図3】第一実施形態に係る太陽発電衛星の構造を説明するための概略的な斜視図である。
【
図4】第一実施形態に係る太陽発電衛星のそれぞれの位相における太陽電池パネルの向きを説明するための概略的な図である。
【
図5】第二実施形態に係る太陽発電衛星の構造を説明するための概略的な斜視図である。
【
図6】第二実施形態に係る制御方法1において、太陽発電衛星のそれぞれの位相における太陽電池パネルの向きを説明するための概略的な図である。
【
図7】第二実施形態に係る制御方法2において、太陽発電衛星のそれぞれの位相における太陽電池パネルの向きを説明するための概略的な図である。
【
図8】第三実施形態に係る太陽発電衛星の構造を説明するための概略的な斜視図である。
【
図9】
図8の太陽発電衛星を太陽電池パネルの回転軸に平行な方向から見た平面図である。
【
図10】第三実施形態に係る太陽発電衛星を太陽電池パネルの回転軸に平行な方向から見た平面図である。
【
図11】第四実施形態に係る太陽発電衛星の構造を説明するための概略的な斜視図である。
【
図12】第四実施形態に係る他の太陽発電衛星の構造を説明するための概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について例を挙げて説明するが、本発明は以下で説明する例に限定されないことは自明である。
以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本発明の効果が得られる限り、他の数値や材料を適用してもよい。また、以下の実施形態の各構成要素は、互いに組み合わせることができる。また本明細書中において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
[第一実施形態]
図1は、本開示に係る太陽発電衛星の軌道を説明するための概略的な図である。本実施形態に係る太陽発電衛星1は、
図1に示すように、地球E周りの公転軌道0に沿って周回する。太陽発電衛星1は、後述する送電用アンテナ110から地球上の受信用アンテナ(図示せず)に向けてマイクロ波を送信するため、地球Eの自転と共に公転軌道O上を周回する。
図1に例示するように、送電用アンテナ110の送電方向が太陽発電衛星1の長手方向と平行な方向を向くため、太陽発電衛星1の長手方向は公転軌道Oを含む面とほぼ平行となる。
【0012】
上述のように、太陽発電衛星1は地球Eの自転と共に公転軌道O上を周回するため、約一日で地球Eの周りを一周する。また、送電用アンテナ110が地球Eの方向へ向くために、太陽発電衛星1の長手方向は常に地球Eの方向へ向いている。一方、一日の間には、地球Eに対する太陽光の照射方向は変化しない。そのため、太陽発電衛星1の公転軌道O上の位置によって、太陽発電衛星1の長手方向と太陽光の照射方向との間の角度が変化する。
【0013】
そこで、太陽光を効率的に太陽発電衛星1に設けられた太陽電池パネル140で集光するためには、太陽電池セルが載置されている太陽電池パネル140の集光パネル面140Aを、太陽の方向、すなわち太陽光の照射方向に対して垂直となるように常に維持しておく必要がある。
本実施形態に係る太陽発電衛星1では、太陽電池パネル140が、太陽発電衛星1を構成する縦梁120に対して回転可能に接続されているため、常に太陽電池パネル140の集光パネル面140Aを太陽光の照射方向に対して垂直に維持できる。
【0014】
次に、本実施形態に係る太陽発電衛星1の構造について説明する。
図2および
図3は、本実施形態に係る太陽発電衛星1の構造を説明するための概略的な斜視図である。以下の図において、X座標軸、Y座標軸およびZ座標軸は互いに直交している。
【0015】
本実施形態に係る太陽発電衛星1は、送電用アンテナ110と、間隔を空けて配置された2つの縦梁120と、縦梁120同士を接続する横梁130とを備え、1つの太陽電池パネル140を備える長尺の構造物である。
【0016】
送電用アンテナ110は、太陽発電衛星1の長手方向の一方の端部側(
図2の例では、Z座標の負方向側)に設けられている。送電用アンテナ110の送電方向は、太陽発電衛星1の長手方向と平行な方向を向いている。すなわち、送電用アンテナ110のアンテナ面110aはZ座標軸に対して垂直である。
送電用アンテナ110は地球上の受信アンテナと対になり、受信アンテナに電力を送信するための装置であり、例えばアレーアンテナを採用できる。
【0017】
2つの縦梁120は、
図2に例示するように、間隔を空けて配置され、縦梁120の間に太陽電池パネル140が位置する。縦梁120は太陽発電衛星1の長手方向に平行または傾斜する方向に延びている。
図2または
図3の例では、太陽発電衛星1の長手方向はZ座標軸に平行であり、縦梁120もZ座標軸に平行な方向に延在している。
【0018】
縦梁120の長手方向における送電用アンテナ110側(Z座標の負方向側)の縦梁120の端部はアンテナ保持部111に接続されている。アンテナ保持部111は、送電用アンテナ110を保持するための構造である。
また、縦梁120の長手方向における送電用アンテナ110側(Z座標の正方向側)とは反対側の端部において、縦梁120は横梁130に接続されている。縦梁120の長手方向における各端部側において、アンテナ保持部111と横梁130によって縦梁120を支持することにより、太陽発電衛星1の構造を強固にして、太陽電池パネル140を支える縦梁120間の間隔を保持することができる。
図2または
図3の例では、縦梁120、アンテナ保持部111および横梁130によって、太陽電池パネル140を囲む範囲が構成されている。
【0019】
本実施形態に係る縦梁120の長さは、実用の観点からは、10~15kmの範囲であることが好ましい。
【0020】
上記の構成によれば、地球上の受信アンテナを指向する送電用アンテナ110が長尺の太陽発電衛星1の長手方向の一方の端部側に設けられかつその送電方向が太陽発電衛星1の長手方向と平行な方向を向いているため、太陽発電衛星1に対する地球の重力方向と太陽発電衛星1の長手方向がほぼ一致する。このような重力傾斜安定方式(地球の引力が距離の二乗に反比例して変化するため長手方向が地球の中心を指す姿勢で自然に安定する。)を用いることで、太陽発電衛星1の姿勢保持と制御が容易となり、より少ないエネルギーで衛星の姿勢を維持できる。
【0021】
太陽電池パネル140は、縦梁120に対して回転可能に接続されている。太陽電池パネル140の回転軸Cは、太陽電池パネル140の面と平行でありかつ2つの縦梁120の長手方向と直交している。
太陽電池パネル140は、太陽電池と、太陽電池を支持する支持パネルとを含む。太陽電池は、太陽電池セル、電極、これらの部品を保護する封止剤やガラスなどを含む。太陽電池は、支持パネルの一方の面に設けられている。本実施形態の例では、太陽電池パネル140の一方の集光パネル面140A上に太陽電池が設けられている。
【0022】
太陽電池パネル140は、回転ジョイント150を介して、縦梁120に対して回転可能に接続されていることが好ましい。
図2または
図3に例示するように、太陽電池パネル140の回転軸Cは、太陽電池パネル140を支持する2つの回転ジョイント150それぞれの回転軸と一致する。回転軸Cは、Y座標軸に平行であり、太陽電池パネル140の面と平行でありかつ2つの縦梁120の長手方向と直交している。
【0023】
回転ジョイント150は、太陽電池パネル140の幅方向(
図2の例では、Y座標軸に平行な方向)に沿って、太陽電池パネル140の端部に接続されている。また、回転ジョイント150は、その回転軸に沿った方向において、太陽電池パネル140に接続される側とは反対側で縦梁120に接続されている。
例えば、大型の太陽電池パネル140を採用する場合、太陽電池パネル140の長さ方向(
図2の例では、Z座標軸に平行な方向)の中心を太陽電池パネル140の回転軸Cが通るように配置することで、少ない駆動力で安定して太陽電池パネル140を回転させることができる。
【0024】
回転ジョイント150は、例えば互いに嵌合し、かつその回転軸で相対的に回転可能な2つの要素から構成されていることが好ましい。また、回転ジョイント150は、接続される部品同士を電気的に接続するための構造を有していることが好ましい。回転ジョイント150としては、例えばスリップリングなどの、回転機構と導電性を兼ね備えた公知の部品を採用できる。
このような部品を採用することで、縦梁120と太陽電池パネル140とを回転可能に接続するとともに、太陽電池パネル140の太陽電池と送電用アンテナ110とを電気的に接続することができる。
【0025】
太陽電池パネル140は、縦梁120に対して回転可能に接続されているため、送電用アンテナ110と太陽電池パネル140とは回転軸C周りに異なる方向を向くことができる。そのため、太陽発電衛星1が公転軌道O上にあるとき、送電用アンテナ110のアンテナ面110aを地球Eへ向けたまま、太陽電池パネル140の集光パネル面140Aが常に太陽へ向くように制御することが可能となり、集光パネル面140Aにより太陽光を効率的に受光できる。
【0026】
本実施形態に係る太陽電池パネル140の平面の大きさは、実用の観点からは、5×10km~3×15kmであることが好ましい。
【0027】
本実施形態に係る太陽発電衛星1によれば、地球上の受信アンテナを指向する送電用アンテナ110が長尺の太陽発電衛星1の長手方向の一方の端部側に設けられかつその送電方向が太陽発電衛星1の長手方向と平行な方向を向いているため、重力方向と太陽発電衛星1の長手方向がほぼ一致する。そのため、より少ないエネルギーで太陽発電衛星1の姿勢を維持できる。また、太陽電池パネル140が縦梁120に対して回転可能に接続されているため、公転軌道O上で、太陽電池パネル140の面が太陽へ向くように制御することが可能となり、太陽光を効率的に受光できる。
したがって、太陽発電衛星1の制御を簡略化し、より少ないエネルギーで衛星の姿勢を維持できるため、太陽発電衛星1の稼働コストを低減させることができる。
【0028】
第一実施形態に係る太陽発電衛星1では、縦梁120などによって衛星全体の強度を確保できるため、太陽電池パネル140には強度が求められず、大型あるいは薄型などの種々の太陽電池あるいは太陽電池パネルを採用できるという利点がある。
【0029】
(制御方法)
次に、本実施形態に係る太陽発電衛星1の制御方法について説明する。
上述のように、太陽発電衛星1は地球Eに対する公転軌道Oに沿って、地球Eの周りを周回する。
図4は、太陽発電衛星1のそれぞれの位相(公転軌道O上の位置)における太陽電池パネル140の向きを説明するための概略的な図である。公転軌道Oと
図4の紙面とは平行である。
【0030】
図4に例示するように、太陽発電衛星1は、位相P1~位相P8の状態となるように、周期的に地球Eの周りを周回する。太陽発電衛星1が公転軌道O上にあるときには、送電用アンテナ110は常に地球Eの方向を向くように制御される。一方、
図4に例示するように、太陽電池パネル140は、太陽発電衛星1の位相によって縦梁120に対する角度が変わるように制御される。
【0031】
図4の例では、送電用アンテナ110の送電方向は、太陽発電衛星1の長手方向と平行な方向を向いている。また、太陽電池パネル140の回転軸は
図4の紙面に垂直である。よって、太陽電池パネル140の回転方向は
図4の紙面に平行となる。太陽電池パネル140の回転軸は、に対して垂直となる。
図4の例では、太陽発電衛星1の長手方向と縦梁120の長手方向とは平行であるとする。
【0032】
図4の例では、位相P1では、太陽光の照射方向と太陽発電衛星1の長手方向が平行となるため、太陽電池パネル140の集光パネル面140Aが縦梁120の長手方向に対して垂直となるように制御される。
位相P2では、太陽光の照射方向に対して太陽発電衛星1の長手方向が傾くため、太陽電池パネル140の集光パネル面140Aが太陽の照射方向に対して垂直となるように制御される。そのため、太陽電池パネル140の集光パネル面140Aに対して縦梁120の長手方向が傾いた状態となる。
位相P3では、太陽光の照射方向に対して太陽発電衛星1の長手方向が直交するため、太陽電池パネル140の集光パネル面140Aが縦梁120の長手方向に平行となるように制御される。
位相P4、位相P6および位相P8では、位相P2と同様に、太陽光の照射方向に対して太陽発電衛星1の長手方向が傾くため、太陽電池パネル140の集光パネル面140Aが太陽の照射方向に対して垂直となるように制御される。位相P5では、位相P1と同様に、太陽電池パネル140の集光パネル面140Aが縦梁120の長手方向に対して垂直となるように制御される。位相P7では、位相P3と同様に、太陽電池パネル140の集光パネル面140Aが縦梁120の長手方向に平行となるように制御される。
【0033】
地球E上の制御装置から太陽発電衛星1に制御信号を送信することで太陽発電衛星1の制御を実施することが好ましい。また、太陽発電衛星1の位相のデータを地球E上の制御装置へ送信して、この位相のデータに基づいて太陽発電衛星1の制御を実施してもよい。
【0034】
本実施形態に係る太陽発電衛星の制御方法によれば、重力方向と太陽発電衛星の長手方向がほぼ一致するため、より少ないエネルギーで衛星の姿勢を維持できる。また、公転軌道上で、太陽電池パネルの面が太陽へ向くように制御することで、太陽光を効率的に受光できる。
よって、衛星の制御を簡略化し、より少ないエネルギーで衛星の姿勢を維持できるため、太陽発電衛星の稼働コストを低減させることができる。
【0035】
[第二実施形態]
本実施形態に係る太陽発電衛星2は、基本的な構造は第一実施形態に係る太陽発電衛星1と同様だが、縦梁220の長手方向に複数の太陽電池パネル241および242が設けられている。本実施形態に係る太陽発電衛星2は、太陽電池パネルが複数設けられていること以外は、第一実施形態に係る太陽発電衛星1と同様の構成を採用できるため、同様の構成の詳細な説明を省略する。
【0036】
図5は、第二実施形態に係る太陽発電衛星2の構造を説明するための概略的な斜視図である。
本実施形態に係る太陽発電衛星2は、送電用アンテナ210と、間隔を空けて配置された2つの縦梁220と、縦梁220同士を接続する横梁230とを備え、2つの太陽電池パネル241および242を備える長尺の構造物である。
送電用アンテナ210、縦梁220および横梁230の構成は第一実施形態と同様である。
【0037】
2つの太陽電池パネル241および242は、それぞれが縦梁220に対して回転可能に接続されている。太陽電池パネル241および242の回転軸C1およびC2は、それぞれが太陽電池パネル240の面と平行でありかつ2つの縦梁220の長手方向と直交している。
太陽電池パネル241および242のそれぞれは、太陽電池と、太陽電池を支持する太陽電池支持パネルとを含む。太陽電池は、太陽電池セル、電極、これらの部品を保護する封止剤やガラスなどを含む。太陽電池は、太陽電池支持パネルの一方の面に設けられている。本実施形態の例では、太陽電池パネル241および太陽電池パネル242の一方の集光パネル面241Aおよび242A上のそれぞれに太陽電池が設けられている。
【0038】
太陽電池パネル241および太陽電池パネル242のそれぞれは、回転ジョイント250を介して、縦梁220に対して回転可能に接続されていることが好ましい。
図5に例示するように、太陽電池パネル241の回転軸C1および太陽電池パネル242の回転軸C2のそれぞれは、太陽電池パネル241および太陽電池パネル242のそれぞれに接続された各回転ジョイント250の回転軸と一致する。回転軸C1およびC2は、Y座標軸に平行であり、太陽電池パネル241および242のそれぞれの面と平行でありかつ2つの縦梁220の長手方向と直交している。
回転ジョイント250の構成は第一実施形態と同様である。太陽電池パネル241および242のそれぞれにおいて、回転軸C1またはC2に沿った方向を各太陽電池パネルの幅方向とし、幅方向と直交しかつ各太陽電池パネルのパネル面と平行な方向を各太陽電池パネルの長さ方向とする。
【0039】
図5の例では、回転軸C1および回転軸C2のそれぞれは、太陽電池パネル241および242の長さ方向の端部側に位置している。
しかし、回転軸C1および回転軸C2のそれぞれの位置はこれに限定されず、回転軸C1および回転軸C2のそれぞれは、太陽電池パネル241および242の中心を通るように配置されていてもよい。
【0040】
本実施形態に係る太陽発電衛星2では、縦梁220の長手方向において、複数の太陽電池パネル241および242を備えていることで、1枚の太陽電池パネルを採用するよりも太陽電池パネル自体の剛性を低く設計することができる。そのため、より軽量な太陽発電衛星とすることができる。
【0041】
次に、本実施形態に係る太陽発電衛星2の制御方法について説明する。
(制御方法1)
まず、
図6に例示するように、縦梁220の長手方向の長さを長くした太陽発電衛星2の制御方法1について説明する。この例では、縦梁220の長手方向の長さを太陽電池パネル241および242の長さ方向の長さの3倍程度としている。
図6は、太陽発電衛星2のそれぞれの位相(公転軌道O上の位置)における太陽電池パネル240の向きを説明するための概略的な図である。公転軌道Oと
図6の紙面とは平行である。
【0042】
図6に例示するように、太陽発電衛星2は、位相P1~位相P8の状態となるように、周期的に地球Eの周りを周回する。太陽発電衛星2が公転軌道O上にあるときには、送電用アンテナ210は常に地球Eの方向を向くように制御される。一方、
図6に例示するように、太陽電池パネル241および242は、それぞれが、太陽発電衛星2の位相によって縦梁220に対する角度が変わるように制御される。
【0043】
図6の例では、送電用アンテナ210の送電方向は、太陽発電衛星2の長手方向と平行な方向を向いている。また、太陽電池パネル241および242のそれぞれの回転軸は
図6の紙面に垂直である。よって、太陽電池パネル241および242のそれぞれの回転方向は
図6の紙面に平行となる。太陽電池パネル241および242のそれぞれの回転軸は、公転軌道Oを含む面に対して垂直となる。
図6の例では、太陽発電衛星2の長手方向と縦梁220の長手方向とは平行であるとする。
【0044】
図6の例では、位相P1では、太陽光の照射方向と太陽発電衛星2の長手方向が平行となるため、太陽電池パネル241および太陽電池パネル242のそれぞれの集光パネル面241Aおよび集光パネル面242Aが縦梁220の長手方向に対して垂直となるように制御される。
位相P2では、太陽光の照射方向に対して太陽発電衛星2の長手方向が傾くため、集光パネル面241Aおよび集光パネル面242Aのそれぞれが太陽の照射方向に対して垂直となるように制御される。そのため、集光パネル面241Aおよび集光パネル面242Aのそれぞれに対して縦梁220の長手方向が傾いた状態となる。
位相P3では、太陽光の照射方向に対して太陽発電衛星2の長手方向が直交するため、集光パネル面241Aおよび集光パネル面242Aのそれぞれが縦梁220の長手方向に平行となるように制御される。
位相P4、位相P6および位相P8では、位相P2と同様に、太陽光の照射方向に対して太陽発電衛星2の長手方向が傾くため、集光パネル面241Aおよび集光パネル面242Aのそれぞれが太陽の照射方向に対して垂直となるように制御される。位相P5では、位相P1と同様に、集光パネル面241Aおよび集光パネル面242Aのそれぞれが縦梁220の長手方向に対して垂直となるように制御される。位相P7では、位相P3と同様に、集光パネル面241Aおよび集光パネル面242Aのそれぞれが縦梁220の長手方向に平行となるように制御される。
【0045】
制御方法1に係る太陽発電衛星2では、縦梁220の長手方向の長さを2つの太陽電池パネル241および太陽電池パネル242の長さ方向の長さの3倍程度としているため、太陽電池パネル同士が互いに太陽光の影を作りにくくなっているため好ましい。
【0046】
(制御方法2)
次に、
図7に例示するように、縦梁220の長手方向の長さを太陽電池パネル241および242の長さ方向の長さの2倍程度とした太陽発電衛星2の制御方法2について説明する。
図7は、太陽発電衛星2のそれぞれの位相(公転軌道O上の位置)における太陽電池パネル240の向きを説明するための概略的な図である。公転軌道Oと
図7の紙面とは平行である。
【0047】
図7に例示するように、太陽発電衛星2は、位相P1~位相P8の状態となるように、周期的に地球Eの周りを周回する。太陽発電衛星2が公転軌道O上にあるときには、送電用アンテナ210は常に地球Eの方向を向くように制御される。一方、
図7に例示するように、太陽電池パネル241および242は、それぞれが、太陽発電衛星2の位相によって縦梁220に対する角度が変わるように制御される。
【0048】
図7の例では、送電用アンテナ210の送電方向は、太陽発電衛星2の長手方向と平行な方向を向いている。また、太陽電池パネル241および242のそれぞれの回転軸は
図7の紙面に垂直である。よって、太陽電池パネル241および242のそれぞれの回転方向は
図7の紙面に平行となる。太陽電池パネル241および242のそれぞれの回転軸は、公転軌道Oを含む面に対して垂直となる。
図7の例では、太陽発電衛星2の長手方向と縦梁220の長手方向とは平行であるとする。
【0049】
制御方法2では、太陽発電衛星2が公転軌道O上で太陽方向から40~50度又は220~230度の位相に位置するときに、太陽発電衛星2を太陽発電衛星2の長手方向と平行な回転軸周りに180度回転させる。
太陽方向から40~50度または220~230度の位相とは、太陽光の方向を基準にして測った角度であり、地球上で概ね午前3時または午後3時を意味する。
【0050】
図7の例では、位相P1では、太陽光の照射方向と太陽発電衛星2の長手方向が平行となるため、太陽電池パネル241および太陽電池パネル242のそれぞれの集光パネル面241Aおよび集光パネル面242Aが縦梁220の長手方向に対して垂直となるように制御される。
【0051】
位相P2では、太陽光の照射方向に対して太陽発電衛星2の長手方向が傾くため、集光パネル面241Aおよび集光パネル面242Aのそれぞれが太陽の照射方向に対して垂直となるように制御される。そのため、集光パネル面241Aおよび集光パネル面242Aのそれぞれに対して縦梁220の長手方向が傾いた状態となる。
【0052】
さらに位相P2は、太陽方向から40~50度の位相に相当するため、太陽発電衛星2を太陽発電衛星2の長手方向と平行な回転軸周りに180度回転させる。これにより、位相P2’に示すように、公転軌道Oを含む面上で、太陽電池パネル241および太陽電池パネル242が縦梁220に対して反対側へ移動することになる。
縦梁220の長手方向の長さによっては、太陽側に位置する太陽電池パネル(
図7の例では、太陽電池パネル241)の影が、太陽に対して後方側に位置する太陽電池パネル(
図7の例では、太陽電池パネル242)の面に生じることがある。しかし、上記のように太陽発電衛星2を太陽発電衛星2の長手方向と平行な回転軸周りに180度回転させ、縦梁220を中心とする太陽電池パネル241と太陽電池パネル242の位置関係を入れ替えることで、このような影の影響を抑制することができる。
【0053】
位相P3では、太陽光の照射方向に対して太陽発電衛星2の長手方向が直交するため、集光パネル面241Aおよび集光パネル面242Aのそれぞれが縦梁220の長手方向に平行となるように制御される。
【0054】
位相P4では、太陽光の照射方向に対して太陽発電衛星2の長手方向が傾くため、集光パネル面241Aおよび集光パネル面242Aのそれぞれが太陽の照射方向に対して垂直となるように制御される。なお、この位相では、上述したような前方側の太陽電池パネルの影の問題は生じない。
【0055】
位相P5では、位相P1と同様に、集光パネル面241Aおよび集光パネル面242Aのそれぞれが縦梁220の長手方向に対して垂直となるように制御される。
【0056】
位相P6では、位相P2と同様に、太陽光の照射方向に対して太陽発電衛星2の長手方向が傾くため、集光パネル面241Aおよび集光パネル面242Aのそれぞれが太陽の照射方向に対して垂直となるように制御される。
また、位相P6は、太陽方向から220~230度の位相に相当するため、太陽発電衛星2を太陽発電衛星2の長手方向と平行な回転軸周りに180度回転させる。これにより、位相P6’に示すように、公転軌道Oを含む面上で、太陽電池パネル241および太陽電池パネル242が縦梁220に対して反対側へ移動することになる。位相P2の状態と同様に、太陽発電衛星2を太陽発電衛星2の長手方向と平行な回転軸周りに180度回転させ、縦梁220を中心とする太陽電池パネル241と太陽電池パネル242の位置関係を入れ替えることで、上述の影の影響を抑制することができる。
【0057】
位相P7では、位相P3と同様に、集光パネル面241Aおよび集光パネル面242Aのそれぞれが縦梁220の長手方向に平行となるように制御される。位相P8では、位相P4と同様に、太陽光の照射方向に対して太陽発電衛星2の長手方向が傾くため、集光パネル面241Aおよび集光パネル面242Aのそれぞれが太陽の照射方向に対して垂直となるように制御される。なお、この位相では、上述したような前方側の太陽電池パネルの影の問題は生じない。
【0058】
太陽発電衛星2の太陽発電衛星2の長手方向と平行な回転軸周りの回転はスラスタまたはリアクションホイールによって行う。
【0059】
[第三実施形態]
本実施形態に係る太陽発電衛星は、基本的な構造は第二実施形態に係る太陽発電衛星と同様だが、縦梁と回転ジョイントとを接続する支持部が設けられ、この支持部に沿って回転ジョイントが移動可能である。
本実施形態に係る太陽発電衛星3は、支持部に沿って回転ジョイントが移動可能であること以外は、第二実施形態に係る太陽発電衛星2と同様の構成を採用できるため、同様の構成の詳細な説明を省略する。
【0060】
図8は、第三実施形態に係る太陽発電衛星の構造を説明するための概略的な斜視図である。
本実施形態に係る太陽発電衛星3は、送電用アンテナ310と、間隔を空けて配置された2つの縦梁320と、縦梁320同士を接続する横梁330とを備え、4つの太陽電池パネル341~344を備える長尺の構造物である。
送電用アンテナ310、縦梁320および横梁330の構成は第一実施形態または第二実施形態と同様である。
【0061】
本実施形態に係る太陽発電衛星3では、支持部361および支持部362がさらに設けられ、太陽電池パネル341および342のそれぞれと縦梁320とが、複数の回転ジョイント351、支持部361および支持部362を介して縦梁320に接続されている。また、太陽電池パネル343と太陽電池パネル344は、複数の回転ジョイント350を介して縦梁320に接続されている。
【0062】
支持部361は、縦梁320および太陽電池パネル341の回転軸C1に交差する方向または縦梁320の長手方向に延びている。同様に、支持部362は、縦梁320および太陽電池パネル342の回転軸C2に交差する方向または縦梁320の長手方向に延びている。
図8の例では、支持部361および支持部362はそれぞれ、縦梁320および太陽電池パネル341の回転軸C1(または太陽電池パネル342の回転軸C2)と直交する方向に延びている。
【0063】
図8に例示するように、太陽電池パネル341の回転軸C1、太陽電池パネル342の回転軸C2、太陽電池パネル343の回転軸C3および太陽電池パネル344の回転軸C4のそれぞれは、各太陽電池パネル341~344に接続されたそれぞれの回転ジョイント350および351の回転軸と一致する。回転軸C1~回転軸C4は、Y座標軸に平行であり、太陽電池パネル341~太陽電池パネル344のそれぞれの面と平行でありかつ2つの縦梁320の長手方向と直交している。
【0064】
回転ジョイント350または351の構成は第一実施形態または第二実施形態と同様である。太陽電池パネル341~344のそれぞれにおいて、回転軸C1~回転軸C4に沿った方向を各太陽電池パネルの幅方向とし、幅方向と直交しかつ各太陽電池パネルのパネル面と平行な方向を各太陽電池パネルの長さ方向とする。
【0065】
図8の例では、回転軸C1~回転軸C4のそれぞれは、太陽電池パネル341~344それぞれの長さ方向の端部側に位置している。
しかし、回転軸C1~回転軸C4のそれぞれの位置はこれに限定されず、回転軸C1~回転軸C4は、太陽電池パネル341~344の中心を通るように配置されていてもよい。
【0066】
本実施形態に係る太陽発電衛星3では、各回転ジョイント351は、支持部361または支持部362に沿って移動可能である。これにより、例えば、太陽側に位置する太陽電池パネルの影が後方側に位置する太陽電池パネルの面に生じたとしても、この影の影響を小さくするように太陽電池パネルを移動させることができる。そのため、電力損失を抑制することができる。
【0067】
一対の支持部361および一対の支持部362は、例えば、長尺の部材であり、レール構造や溝が設けられたものであってもよい。このようなレール構造や溝に沿って回転ジョイント351が移動するように構成してもよい。
【0068】
次に、本実施形態に係る太陽発電衛星3の制御方法について説明する。
(制御方法3)
本実施形態に係る太陽発電衛星3の基本的な動作は、第二実施形態の制御方法1と同様である。太陽発電衛星3は、周期的に地球の周りを周回し、太陽発電衛星3が公転軌道O上にあるときには、送電用アンテナ310は常に地球の方向を向くように制御される。また、太陽電池パネル341~344は、それぞれが、太陽発電衛星3の位相によって縦梁320に対する角度が変わるように制御される。
【0069】
図9は、
図8の太陽発電衛星3を回転軸C1~回転軸C4に平行な方向から見た平面図である。よって、太陽電池パネル341~344のそれぞれの回転方向は
図9の紙面に平行となる。また、縦梁320の長手方向の軸線Lは
図9の紙面に平行となる。太陽電池パネル341~344のそれぞれの回転軸は、公転軌道Oを含む面に対して垂直となる。
【0070】
図9の例では、太陽発電衛星3の縦梁320の長手方向における送電用アンテナ310側とは反対側の端部側から太陽光が照射されている。すなわち、地球と太陽の間に太陽発電衛星3が位置している。また、太陽光の照射方向に対して太陽発電衛星3の縦梁320の長手方向が傾いた状態である。
この状態では、太陽電池パネル341~太陽電池パネル344の集光パネル面341A~集光パネル面344Aのそれぞれが太陽の照射方向に対して垂直となるように制御される。そのため、集光パネル面341A~集光パネル面344Aのそれぞれに対して縦梁320の長手方向が傾いた状態となる。
【0071】
また、支持部361を介して縦梁320に接続された太陽電池パネル341および支持部362を介して縦梁320に接続された太陽電池パネル342は、支持部361または支持部362に沿って縦梁320の長手方向の軸線Lに対して垂直な方向へ平行移動する。
縦梁320の長さ方向の長さや太陽電池パネルの枚数によっては、太陽側に位置する太陽電池パネル(
図9の例では、太陽電池パネル342)の影が、太陽に対して後方側に位置する太陽電池パネル(
図9の例では、太陽電池パネル343)の面に生じることがある。しかし、上記のように支持部を介して縦梁に接続された太陽電池パネルが縦梁に対して垂直な方向へ平行移動することで、このような影の影響を抑制することができる。
【0072】
また、
図10に例示するような制御を行ってもよい。
図10は、
図9と同様に、太陽発電衛星4を太陽電池パネル441および太陽電池パネル442の回転軸に平行な方向から見た平面図である。
図10の例では、太陽電池パネル441を保持する回転ジョイント450が、縦梁420の長手方向に延びている支持部によって、縦梁420の長手方向に沿って移動可能である。この場合、支持部は、例えば縦梁420の軸線Lに沿って縦梁420の一部の範囲に設けられたレール構造や溝であってもよい。これにより、回転ジョイント450が縦梁420の長手方向に沿って平行移動することができる。
図10に例示するように、特定の方向において太陽電池パネル441が太陽電池パネル442と重なることを避けるようにできる。そのため、太陽電池パネル441の集光パネル面441Aおよび太陽電池パネル442の集光パネル面442Aにより、効率的に集光できる。
上記のように、縦梁420の長手方向に沿って設けられた支持部を介して縦梁に接続された太陽電池パネルが縦梁に平行な方向へ移動することで、このような影の影響を抑制することができる。
【0073】
[第四実施形態]
本実施形態に係る太陽発電衛星は、基本的な構造は上述の各実施形態に係る太陽発電衛星と同様だが、間隔を空けて配置された複数の縦梁、縦梁同士を接続する横梁、および複数の太陽電池パネルを一組として含むパネル構造体を備えている。本実施形態に係る太陽発電衛星は、複数のパネル構造体を備える太陽電池パネルが複数設けられていること以外は、上述の各実施形態に係る太陽発電衛星と同様の構成を採用できるため、同様の構成の詳細な説明を省略する。
【0074】
図11は、第四実施形態に係る太陽発電衛星5の構造を説明するための概略的な斜視図である。
本実施形態に係る太陽発電衛星5は、送電用アンテナ510を備えている。また太陽発電衛星5は、間隔を空けて配置された複数の縦梁520、縦梁520同士を接続する横梁530、および複数の太陽電池パネル541~544(または太陽電池パネル545~548)を一組のパネル構造体(パネル構造体501またはパネル構造体502)として備えている。
【0075】
図11に例示するように、パネル構造体501において、2つの縦梁520は、間隔を空けて配置され、縦梁520の間に4つの太陽電池パネル541~544が位置する。縦梁520は太陽発電衛星5の長手方向に平行な方向に延びている。
図11の例では、太陽発電衛星5の長手方向はZ座標軸に平行であり、各縦梁520もZ座標軸に平行な方向に延在している。
パネル構造体502においても、パネル構造体501と同様の構成である。パネル構造体502において、2つの縦梁520は、間隔を空けて配置され、縦梁520の間に4つの太陽電池パネル545~548が位置する。
【0076】
縦梁520の長手方向における送電用アンテナ510側(Z座標の負方向側)の縦梁520の端部はアンテナ保持部511に接続されている。また、縦梁520の長手方向における送電用アンテナ510側(Z座標の正方向側)とは反対側の端部において、縦梁520は横梁530に接続されている。
また、縦梁520の長手方向における送電用アンテナ510側(Z座標の正方向側)とは反対側の端部において、パネル構造体501とパネル構造体502が、支持梁560を介して接続されている。縦梁520の長手方向における各端部側において、アンテナ保持部511と横梁530、さらに支持梁560によって縦梁520を支持することにより、太陽発電衛星5の剛性をさらに高めることができる。
【0077】
複数の太陽電池パネル541~太陽電池パネル548は、各縦梁520に対して回転可能に接続されている。太陽電池パネル541~548の回転軸C1~C8のそれぞれは、太陽電池パネル541~548の面と平行でありかつ縦梁520の長手方向と直交している。
太陽電池パネル541~太陽電池パネル548は、回転ジョイント550を介して、縦梁520に対して回転可能に接続されていることが好ましい。
図11に例示するように、太陽電池パネル541~548の回転軸C1~C8のそれぞれは、各太陽電池パネル541~548を支持する2つの回転ジョイント550それぞれの回転軸と一致する。各回転軸C1~C8は、Y座標軸に平行であり、各太陽電池パネル541~548の面と平行でありかつ縦梁520の長手方向と直交している。
【0078】
太陽電池パネル541~548の回転軸C1~C8に平行な方向からの平面視においては、太陽発電衛星5は全体として矩形に見える。
なお、送電用アンテナ510、縦梁520、横梁530および太陽電池パネル541~548の構成は上述の各実施形態と同様である。
【0079】
次に、本実施形態に係る太陽発電衛星の他の例について
図12を用いて説明する。
図12は、太陽発電衛星6の構造を説明するための概略的な斜視図である。
図12に例示する太陽発電衛星6は、縦梁620の長手方向における送電用アンテナ610側(Z座標の正方向側)とは反対側の端部において、パネル構造体601およびパネル構造体602のそれぞれを構成する縦梁620同士が接続されていること以外は、
図11に例示した太陽発電衛星5と同様の構成を採用できるため、同様の構成の詳細な説明を省略する。
【0080】
太陽発電衛星6は、縦梁620の長手方向における送電用アンテナ610側(Z座標の正方向側)とは反対側の端部において、パネル構造体601およびパネル構造体602のそれぞれを構成する縦梁620同士が接続されている。
パネル構造体601およびパネル構造体602は横梁630を共有し、それぞれのパネル構造体に含まれる縦梁620同士は、横梁630により接続されている。
【0081】
太陽発電衛星6は、間隔を空けて配置された複数の縦梁620、縦梁620同士を接続する横梁630、および複数の太陽電池パネル641および642(太陽電池パネル643および644)を一組のパネル構造体(パネル構造体601またはパネル構造体602)として備えている。
【0082】
図12に例示するように、パネル構造体601において、2つの縦梁620は、間隔を空けて配置され、縦梁620の間に2つの太陽電池パネル641および642が位置する。縦梁620のそれぞれは太陽発電衛星6の長手方向に対して傾斜する方向に延びている。
【0083】
図12に例示する太陽発電衛星6は、太陽電池パネル641~644の回転軸C1~C4に平行な方向からの平面視においては、太陽発電衛星6は全体として二等辺三角形に見える。
【0084】
太陽発電衛星6の構造により、梁構造を少なくし、軽くできるという利点がある。
【0085】
本実施形態に係る太陽発電衛星によれば、地球上の受信アンテナを指向する送電用アンテナが長尺の太陽発電衛星の端部側に設けられかつその送電方向が太陽発電衛星の長手方向と平行な方向を向いているため、重力方向と太陽発電衛星の長手方向がほぼ一致するため、より少ないエネルギーで太陽発電衛星の姿勢を維持できる。また、太陽電池パネルが縦梁に対して回転可能に接続されているため、公転軌道上で、太陽電池パネルの各面が太陽へ向くように制御することが可能となり、太陽光を効率的に受光できる。よって、太陽発電衛星の制御を簡略化し、より少ないエネルギーで太陽発電衛星の姿勢を維持できるため、太陽発電衛星の稼働コストを低減させることができる。さらに、パネル構造体およびパネル構造体同士がそれぞれを構成する縦梁の長手方向の各端部側で接続されていることによって、太陽発電衛星自体の剛性を確保することができる。
【0086】
本実施形態に係る太陽発電衛星では、第三実施形態で説明した、縦梁と回転ジョイントとを接続する支持部を採用することで、支持部に沿って回転ジョイントが移動可能となるように構成してもよい。これにより、例えば、太陽側に位置する太陽電池パネルの影が後方側に位置する太陽電池パネルの面に生じたとしても、この影の影響を小さくするように太陽電池パネルを移動させることができる。そのため、電力損失を抑制することができる。
【0087】
本実施形態に係る太陽発電衛星の制御方法は、上記の各実施形態の制御方法を採用することができる。
【0088】
[変形例]
上記の各実施形態に係る太陽発電衛星では、太陽電池パネルの回転軸に沿って、複数の太陽電池パネルが設けられていることが好ましい。
1つの縦梁に対し、太陽電池パネルの回転軸に沿って同数のパネルを配置することで、縦梁の長手方向に直行する方向のバランスを良好に維持できる。
【0089】
上記の各実施形態に係る太陽発電衛星では、縦梁の長手方向の長さが、太陽電池パネルの回転軸と垂直な方向の長さの3倍以上であることが好ましい。太陽電池パネルの回転軸と垂直な方向は、上述の実施形態で説明した太陽電池パネルの長さ方向でもある。
縦梁の長手方向の長さが太陽電池パネルの長さの3倍以上であることにより、太陽発電衛星の長手方向、すなわち重力方向に対する長さが確保され、より小さいエネルギーで太陽発電衛星の姿勢を安定させることができる。
【0090】
本開示に係る太陽発電衛星および太陽発電衛星の制御方法によれば、より少ないエネルギーで衛星の姿勢を維持でき、太陽発電衛星の稼働コストを低減させることができる。そのため、本開示に係る太陽発電衛星および太陽発電衛星の制御方法を用いることで、数100万kWの大電力を地球に供給できる。また、本開示に係る太陽発電衛星および太陽発電衛星の制御方法を用いることで、地球温暖化や資源枯渇の問題を回避できる。
【符号の説明】
【0091】
1,2,3,4,5,6 太陽発電衛星
110,210,310,410,510,610 送電用アンテナ
111,211,311,411,511,611 アンテナ保持部
120,220,320,420,520,620 縦梁
130,230,330,430,530,630 横梁
140,241,242,341,342,343,344,441,442,541,542,543,544,545,546,547,548,641,642,643,644 太陽電池パネル
150,250,350,351,450,550,650 回転ジョイント
361,362 支持部
501,502,601,602 パネル構造体