(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025034874
(43)【公開日】2025-03-13
(54)【発明の名称】樹脂発泡体の減容処理方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/06 20060101AFI20250306BHJP
C08J 9/36 20060101ALI20250306BHJP
【FI】
C08J11/06 ZAB
C08J9/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023141538
(22)【出願日】2023-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】506209422
【氏名又は名称】地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】許 ▲深▼
(72)【発明者】
【氏名】吉野 徹
(72)【発明者】
【氏名】小林 隆一
【テーマコード(参考)】
4F074
4F401
【Fターム(参考)】
4F074AA32L
4F074AB04
4F074CC04Z
4F074CD20
4F074DA02
4F074DA34
4F401AA08
4F401AA11
4F401AA22
4F401AA23
4F401AC10
4F401AD09
4F401CA06
4F401CA88
4F401CA89
4F401FA02Y
(57)【要約】
【課題】簡便な処理で樹脂発泡体を減容する。
【解決手段】樹脂発泡体を減容する方法であって、収容体に収容された樹脂発泡体を、当該収容体の内部の圧力が大気圧よりも低い状態で、かつ、ガラス転移温度以上で加熱する減容工程を具備する減容処理方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂発泡体を減容する方法であって、
収容体に収容された樹脂発泡体を、当該収容体の内部の圧力が大気圧よりも低い状態で、かつ、ガラス転移温度以上で加熱する減容工程を具備する
減容処理方法。
【請求項2】
前記減容工程は、前記収容体の内部の圧力を大気圧よりも低い目的圧力まで低下させる減圧工程を含む
請求項1の減容処理方法。
【請求項3】
前記減容工程は、前記収容体の内部の圧力を大気圧よりも低い目的圧力から上昇させる加圧工程を含む
請求項1の減容処理方法。
【請求項4】
前記目的圧力は、0.1MPa以下である
請求項2または3の減容処理方法。
【請求項5】
前記減容工程では、前記樹脂発泡体を融点以下の温度で加熱する
請求項1の減容処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂発泡体を減容するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂発泡体は、例えば、農林水産物用容器、緩衝材、食品容器、断熱材および建築用材料等の様々な用途で使用されている。以上のように樹脂発泡体は多くの用途で用いられることから、使用済みの樹脂発泡体が多量に廃棄されることになる。したがって、近年では、使用済みの樹脂発泡体は、資源としてリサイクルする動きが活発である。
【0003】
しかし、樹脂発泡体は、通常、原料となる樹脂を数倍から数十倍程度に体積を膨張させて製造される。すなわち、樹脂発泡体は、重量に対して体積が非常に大きい。したがって、樹脂発泡体をリサイクルするために、そのまま運送しようとすると費用が膨大になる。そこで、樹脂発泡体のリサイクルにあたっては、体積を減少させる処理(減容処理)が施されることが多い。
【0004】
減容処理の方法としては、例えば溶剤を用いて樹脂発泡体を溶解することで減容する方法がある(例えば特許文献1-3)。しかし、樹脂発泡体を溶解するための溶剤は、環境面での影響が懸念されることや、取り扱いの面においても注意が必要である。
【0005】
そこで、溶剤を使用することなく、樹脂発泡体を粉砕する際の摩擦熱で溶融することで減容する方法も提案されている(例えば特許文献4)。具体的には、粉砕機により樹脂発泡体を粉砕する際の摩擦熱で溶融した溶融物が得られる。この溶融物は、例えば、板状に押し出された後に冷却されインゴットとなる。インゴットは、例えばペレット状にされ再生原料として各種の製品に再利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-128949号公報
【特許文献2】特開2002-069230号公報
【特許文献3】特開平07-113089号公報
【特許文献4】特開平11-300743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、摩擦熱で減容する方法では、樹脂発泡体を粉砕および溶融した後に、さらに溶融物を押し出してインゴット化する必要があることから、樹脂発泡体を再利用するまでの工程が多く、手間がかかるという問題があった。以上の事情を考慮して、本発明では、簡便な処理で樹脂発泡体を減容することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]樹脂発泡体を減容する方法であって、収容体に収容された樹脂発泡体を、当該収容体の内部の圧力が大気圧よりも低い状態で、かつ、ガラス転移温度以上で加熱する減容工程を具備する減容処理方法。
【0009】
[2]前記減容工程は、前記収容体の内部の圧力を大気圧よりも低い目的圧力まで低下させる減圧工程を含む[1]の減容処理方法。
【0010】
[3]前記減容工程は、前記収容体の内部の圧力を大気圧よりも低い目的圧力から上昇させる加圧工程を含む[1]または[2]の減容処理方法。
【0011】
[4]前記目的圧力は、0.1MPa以下である[2]または[3]の何れかの減容処理方法。
【0012】
[5]前記減容工程では、前記樹脂発泡体を融点以下の温度で加熱する[1]から[4]の何れかの減容処理方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る減容処理方法によれば、簡便な処理で樹脂発泡体を減容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る収容体の内部の圧力変化である。
【
図2】未減容の魚箱と減容後の魚箱とについて、3次元デジタイザを用いて得られた3次元データである。
【
図3】減容前の魚箱と減容後の魚箱との写真である。
【
図5】未減容の蓋と減容後の蓋とにおける電子顕微鏡画像である。
【
図6】減容後の粉末を人工砂として再利用しているインテリア用品の写真である。
【
図7】未減容の緩衝材と減容後の緩衝材との写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る減容処理方法は、樹脂発泡体を減容する(すなわち体積を減少させる)方法である。樹脂発泡体は、例えば、基材樹脂を発泡させて成形される成形体であり、多数の気泡(セル)を有する。基材樹脂としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂およびポリカーボネート系樹脂であり、特に限定されない。農林水産物用容器、緩衝材、食品容器、断熱材および建築用材料等の様々な用途で樹脂発泡体が使用される。
【0016】
本発明の減容処理方法は、収容体に収容された樹脂発泡体を、当該収容体の内部(すなわち樹脂発泡体が置かれている環境)の圧力が大気圧よりも低い状態で、かつ、ガラス転移温度以上で加熱する減容工程を具備する。減容工程には、例えば、温度および圧力の双方の制御が可能である減容装置(例えば減圧恒温槽や真空乾燥装置)が使用される。以上のような減容装置の内部空間(温度および圧力の制御が可能な空間)が収容体の例示である。
【0017】
減容工程における樹脂発泡体を加熱する温度(加熱目的温度)は、上述した通り、樹脂発泡体のガラス転移温度以上であり、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは120℃以上であり、さらに好ましくは130℃以上である。加熱目的温度の上限は、樹脂発泡体の減容が可能であれば特に限定されず、樹脂発泡体の種類に応じて適宜に変更し得るが、例えば180℃が想定される。
【0018】
本実施形態では、収容体の圧力について第1処理と第2処理とを実行することで、減容処理を実行させる。なお、樹脂発泡体の加熱目的温度(設定上の温度)は、典型的には、第1処理と第2処理とにわたり、ガラス転移温度以上の温度で一定である。
【0019】
図1は、第1処理および第2処理における収容体の内部の圧力変化を表した図である。第1処理は、収容体の内部の圧力を大気圧(常圧)から大気圧よりも低い圧力(以下「目的圧力」という)になるまで低下させる工程である。第1処理は、収容体の内部を負圧にする処理であるとも換言できる。
図1では、第1処理において、大気圧から目的圧力まで連続的に圧力が減少するように収容体の内部の圧力を変化させる場合を例示する。
【0020】
第2処理は、収容体の内部の圧力を目的圧力から大気圧(常圧)になるまで上昇させる処理である。第2処理は、収容体の内部が正圧に近づくように圧力を上昇させる処理であるとも換言できる。
図1では、第2処理において、目的圧力から大気圧まで連続的に圧力が増加するように収容体の内部の圧力を変化させる場合を例示する。
【0021】
第1処理が行われる期間(すなわち大気圧から目的圧力になるまでの時間)は、例えば1~15分程度である。同様に、第2処理が行われる期間(すなわち目的圧力から大気圧になるまでの時間)は、例えば1~15分程度である。なお、第1処理は、収容体の内部の圧力を短時間で目的圧力にする観点からは、樹脂発泡体がガラス転移温度以上になってから開始することが好ましい。
【0022】
第1処理および第2処理により収容体の圧力を制御することで、減容工程が実現される。第1処理および第2処理において、
図1の時系列上で、収容体の圧力が大気圧よりも低い区間(大気圧になっている状態を含まない区間)が減容工程に相当する。
【0023】
本実施形態の減容工程は、収容体の内部の圧力を目的圧力まで低下させる減圧工程と、収容体の内部の圧力を目的圧力から上昇させる加圧工程とを含むとも換言できる。減圧工程は、第1処理のうち収容体の圧力が大気圧よりも低い区間(大気圧になっている状態を含まない区間)の処理である。加圧工程は、第2処理のうち収容体の圧力が大気圧よりも低い区間(大気圧になっている状態を含まない区間)の処理である。
【0024】
目的圧力(絶対圧力、以下同じ。)は、例えば0.1MPa以下であり、好ましくは0.05MPa以下であり、より好ましくは0.03MPa以下であり、さらに好ましくは0.02MPa以下であり、特に好ましくは0.015MPa以下であり、最も好ましくは0.011MPa以下である。目的圧力を以上の範囲内にすることで、減容率を上昇させることができる。目的圧力の下限は、特に限定されず、減容工程で使用する減容装置の仕様において到達できる限界の圧力でもよい。
【0025】
ここで、例えば、樹脂発泡体を粉砕する際の摩擦熱で溶融することで減容する方法(以下「比較例」という)では、粉砕による摩擦熱を利用した溶融の工程や溶融物を押し出してインゴット化する工程などが必要であり、手間がかかるという問題や樹脂発泡体の粉末が周りに飛散するという問題などがあった。それに対して、本実施形態の減容処理方法は、大気圧よりも低い気圧環境下で、かつ、ガラス転移温度以上で樹脂発泡体を加熱する減容工程により、樹脂発泡体を減容することができる。すなわち、比較例と比較して、簡便な方法で樹脂発泡体を減容できる。ただし、本実施形態の減容処理方法においても、樹脂発泡体を粉砕した上で減容してもよい。
【0026】
本実施形態の減容処理方法において減容が進む理由を説明する。樹脂発泡体は、製造する工程(基材樹脂を発泡させる工程)において気泡内が負圧になることがある。時間の経過とともに気泡の内部は大気圧に近づく。ただ、樹脂発泡体の気泡は完全には大気圧(常圧)にはならず、ある程度負圧の状態になっていると考えられる。本実施形態の減容処理方法では、樹脂発泡体の気泡が負圧であることが大きく減容する要因の一つであると考えられる。
【0027】
まず、減圧工程では、加熱による熱収縮が影響した減容が顕著になっていると考えられる。具体的には、樹脂発泡体の独立した気泡内の気体が加熱により膨張することで、気泡(壁)が破れる(すなわち相互に連通した気泡や外気と連通する気泡になる)。そして、気泡が破れたことに加えて、ガラス転移温度以上に加熱された樹脂発泡体は容易に変形することから、熱収縮が顕著になる。一方で、加圧工程では、減圧工程では破れずに独立した状態を維持している負圧状態の気泡や相互に連通したがまだ負圧の状態の気泡が、収容体の内部の圧力が上昇することで、圧縮されると考えられる。
【0028】
以上の通り、本実施形態の減容処理方法は、減圧工程と加圧工程との双方とを含むことで、樹脂発泡体を減容する効果が顕著になる。ただし、減圧工程と加圧工程との何れか一方を減容処理方法が含んでもよい。
【0029】
また、比較例では、樹脂発泡体を減容するために、粉砕機や押出機を含む大型の減容機を使用する必要がある。したがって、樹脂発泡体が排出される現場での導入が容易ではないという問題があった。それに対して、本実施形態の減容処理方法では、温度と圧力との双方とが制御可能であれば、粉砕機や押出機を搭載していない減容装置(例えば減圧恒温槽や真空乾燥装置)であっても、樹脂発泡体を減容することができる。すなわち、比較例と比較して、簡単な減容装置により樹脂発泡体を減容することができる。したがって、減容装置の導入が容易になる。
【実施例0030】
実施例により本発明を詳述する。ただし、本発明は実施例には限定されない。
【0031】
[実施例1]
発泡倍率60倍のEPS(Expanded Polystyrene,ビーズ法発泡スチロール)魚箱(外寸仕様:580mm×370mm×231mm)を減圧した。なお、魚箱のガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量計DSC-60,株式会社島津製作所)を用いて測定した結果、95℃であることが分かった。魚箱は、減圧恒温槽(MZT-11H-H,エスペック株式会社)を用いて減容した。まず、魚箱を収容した槽内を常圧下で120℃から130℃まで加熱した。次に、槽内の圧力を減圧することで約7分間かけて0.0107MPaにした。そして、槽内を約2分間かけて常圧(0.1013MPa)に戻した。なお、同種の2箱のEPS魚箱について、それぞれ減容を行った。
図2には、未減容の魚箱(Box-o)と、減容後の魚箱(Box-T1,Box-T7)とについて、3次元デジタイザ(FLARE Pro 16M東京貿易テクノシステム株式会社)を用いて得られた3次元データを示す。また、表1は、未減容の魚箱(Box-o)と、減容後の魚箱(Box-T1,Box-T7)とについて、質量、体積、密度および減容率を示す表である。魚箱の寸法および体積は、3次元デジタイザを用いて測定した。魚箱の質量は、汎用のスケールを用いて測定した。
【0032】
【0033】
図2に示される通り、元の魚箱の形状を完全ではないもののある程度維持しつつ、魚箱が減容された。表1に示される通り、減容後の魚箱は、体積が大きく減少し、密度が増加して、減容率(%)((1-減容後の体積/減容前の体積)×100)が約97%となった。なお、減容前の体積は、近似的に、Box-oの体積を使用した。
【0034】
[実施例2]
実施例1と同様の条件で、図柄を記載した魚箱を減容した。
図3には、図柄を記載した減容前の魚箱と、減容後の魚箱(枠内)との写真が示されている。なお、減容後の魚箱は、比較するために、当該減容後の魚箱と同種の未減容の魚箱の上に置いて写真を撮影した。
図3に示す通り、減容前後で図柄が大きく崩れていないことが確認できる。
【0035】
[実施例3]
実施例2と同様の条件でEPS(Expanded Polystyrene,ビーズ法発泡スチロール)魚箱の蓋について減容した。
図4には、未減容の蓋(Lid-o)と減容後の蓋(Lid-T)との写真が示されている。
図5には、未減容の蓋(Lid-o)と減容後の蓋(Lid-T)とについて表面および断面をSEM(走査電子顕微鏡JSM-6390LV,日本電子株式会社)により撮像したSEM画像を示す。
図5に示される通り、減容後は、球状のビーズが隙間をなくすほど変形し、気泡がつぶれて密になっていることが確認される。
【0036】
なお、比較のために、前記の減圧恒温槽を用いて、常圧下において、130℃で15分間加熱した同種の蓋について、表面および断面のSEM画像も
図5に示されている。
図5から把握される通り、常圧のまま130℃で長時間(15min)蓋を加熱しても、一定の減容効果が得られるものの、球状のビーズ内の気泡が殆どつぶれていなく、ビーズの間にも隙間が確認できる。以上の説明から理解される通り、加熱しながら、減圧そして常圧に戻す本発明に係る減容処理方法によれば、同程度の処理時間で加熱のみの処理方法と比較して、より高い減容率が得られると言える。
【0037】
表2には、未減容の蓋と減容後の蓋とから切り出した試験片について万能試験機(オートグラフAG-10TD,株式会社島津製作所)により測定した曲げ弾性率、最大点応力(曲げ強さ)および破断ひずみを示す。なお、
図4に示す通り、いずれの蓋も平板ではなく、凹凸模様を有する形状をしているため、厚みがある程度均一な部分から試験片を切り出した。曲げ試験の条件は、JIS K 7171(ISO 180)を参考にして設定した。未減容の蓋(Lid-o)について、寸法約380mm×20mm×18mmの試験片を切り出し、支点間距離220mm、試験速度は5mm/minの条件で試験した。一方、減容後の蓋(Lid-T)について、寸法約140mm×15mm×6mmの試験片を切り出し、支点間距離96mm、試験速度は2mm/minの条件で試験した。
【0038】
【0039】
表2から把握される通り、減容後は、未減容と比較して、曲げ弾性率が20倍以上になり、最大点応力(曲げ強さ)も2倍以上になった。なお、前述の通り、試験片の形状が特殊であるため、測定値は参考値である。
【0040】
以上の実施例1-3の通り、本発明に係る減容処理方法により、樹脂発泡体を大きく減容できることが確認できた。なお、比較例の減容処理方法で製造されたインゴットは、例えばペレット状にされ再生原料として各種の製品に再利用される。それに対して、本発明により減容された樹脂発泡体は、減容前の形状が維持されやすいため、再生原料を経由せずにそのまま製品化できるという利点もある。例えば、箱型の樹脂発泡体を減容した場合には、小物入れや文房具入れなどの製品として使用できる可能性がある。
【0041】
実施例1-3では、魚箱や魚箱の蓋を減容する場合を例示したが、例えば粉末状の樹脂発泡体(例えば樹脂発泡体の製造の際に発生した粉末など)を減容してもよい。また、減圧恒温槽以外の減容装置を用いて減容してもよい。
【0042】
[実施例4]
常圧下で室温から130℃まで加熱した真空乾燥機(AVO-250N,アズワン株式会社)内に、摩擦熱を利用した従来の減容方法で発生した樹脂発泡体の粉末を投入し、機内の圧力を減圧することで約3分間かけて-0.1MPa(ゲージ圧力)にした。そして、機内を約1分間かけて常圧0MPa(ゲージ圧力)に戻した。減容した粉末状の樹脂発泡体は密度が高くなるため、飛散しにくくなり、各種の用途で用いることができる。例えば、
図6に示される通り、減容後の粉末はインテリア用品に敷く人工砂として利用されることができる。
【0043】
[実施例5]
PE(Polyethylene,ポリエチレン)の発泡体である緩衝材を、真空乾燥機(AVO-250N,アズワン株式会社)を用いて、実施例4と同様の条件で減容した。
図7には、未減容のPE緩衝材と、減容後のPE緩衝材との写真が示されている。
図7に示される通り、元の緩衝材の形状を完全ではないもののある程度維持しつつ、緩衝材が減容された。また、EPS発泡体に限らず、PE発泡体も減容できることが確認できた。
【0044】
<変形例>
以上に例示した形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を適宜に併合することも可能である。
【0045】
(1)樹脂発泡体の加熱目的温度は、典型的には、減容工程(第1処理と第2処理と)にわたり一定である。ただし、ガラス転移温度以上であれば減容工程内において樹脂発泡体の加熱目的温度を変化させてもよい。
【0046】
(2)第1処理と第2処理との間に目的圧力で所定の時間にわたり維持する処理を含んでもよい。
【0047】
(3)減圧工程(第1処理)において、収容体の内部の圧力を連続的に低下させることは必須ではない。例えば、減圧工程では、収容体の内部の圧力を段階的に低下させてもよい。なお、減圧工程では、途中に圧力が上昇する区間や圧力が維持される区間を含んだとしても最終的に目的圧力まで圧力が低下すればよい。
【0048】
(4)加圧工程(第2処理)において、収容体の内部の圧力を連続的に上昇させることは必須ではない。例えば、加圧工程では、収容体の内部の圧力を段階的に上昇させてもよい。なお、加圧工程では、途中に圧力が低下する区間や圧力が維持される区間を含んだとしても最終的に大気圧に近づくように圧力が上昇すればよい。また、加圧工程は、収容体の内部の圧力を大気圧に近づく方向に上昇させる工程であれば、目的圧力から上昇させることは必須ではない。すなわち、加圧工程は、収容体の内部の圧力を、目的圧力よりも高いまたは低い圧力から、大気圧に近づくように上昇させる工程であってもよい。
【0049】
(5)収容体の内部の圧力が大気圧よりも低い状態で樹脂発泡体をガラス転移温度以上に加熱することが可能であれば、減容処理方法が減圧工程と加圧工程とを含むことは必須ではない。例えば、減容工程が減圧工程および加圧工程の何れか一方を含む構成や収容体の内部の圧力を大気圧よりも低い圧力(目的圧力)で一定に維持する工程を減容工程が含む構成も採用される。
【0050】
(6)減容処理方法は、減容工程以外の工程を含んでもよい。例えば、減容工程の前に常圧で樹脂発泡体を加熱する工程を減容処理方法が含んでもよい。また、減容工程の前に複数の樹脂発泡体を組立てる工程を減容処理方法が含んでもよい。さらに、治具や型などを利用して、減容後の樹脂発泡体に賦形する工程を減容処理方法が含んでもよい。