(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003493
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
B60R 11/02 20060101AFI20241226BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
B60R11/02 W
G08G1/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024181774
(22)【出願日】2024-10-17
(62)【分割の表示】P 2020198779の分割
【原出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 英毅
(72)【発明者】
【氏名】小柳 匠冴
(72)【発明者】
【氏名】加藤 淑子
(57)【要約】
【課題】車両持込状態のロバストな判定を実現すること。
【解決手段】通信制御端末1は、情報処理装置の一例であって、加速度と回転速度の値を取得する取得部11と、加速度から進行方向を判定し、進行方向と回転速度の値に基づき回転異常状態を判定する異常判定部12と、回転異常状態に基づいて、通信制御端末1が車両に持ち込まれた状態であることを判定する判定部13と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置であって、
加速度と回転速度の値を取得する取得手段と、
前記加速度から進行方向を判定し、前記進行方向と前記回転速度の値に基づき回転異常状態を判定する異常判定手段と、
前記回転異常状態に基づいて、前記情報処理装置が車両に持ち込まれた状態であることを判定する判定手段と、
を備える情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
OBD(On-Board Diagnostics)2や車速信号線と接続する事で車速信号などを取得して走行状態を検出する手法が知られている。OBD2の場合は車種との適合表が必要になり、車速信号の場合には車体との接続加工作業が必要になる。このため、取り付けが簡易ではなく、結果として、専門店での加工が必要である。
【0003】
この他、車載状態か否かにより自動的に表示する地図画像の表示態様を変更できる地図表示装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。例えば、特許文献1に記載の地図表示装置では、使用場所が車内である場合には、車内での使用に適した地図画像を表示し、使用場所が家庭内であれば家庭内での使用に合った地図画像を表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、車載時の振動を真似て地図表示装置の筐体を持って振る不正な動作等も車載状態と誤判定するおそれがあるので、車載状態のロバストな判定を実現できない、という問題が一例として挙げられる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、例えば、車両持込状態のロバストな判定を実現できる情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の情報処理装置は、情報処理装置であって、加速度と回転速度の値を取得する取得手段と、前記加速度から進行方向を判定し、前記進行方向と前記回転速度の値に基づき回転異常状態を判定する異常判定手段と、前記回転異常状態に基づいて、前記情報処理装置が車両に持ち込まれた状態であることを判定する判定手段と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る通信制御端末の機能構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、通信制御端末の利用シーンの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、回転異常状態の判定方法の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、振動異常状態の判定方法の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、走行状態の判定方法の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、渋滞状態の判定方法の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、タイマーの起動条件の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、タイマーのリセット条件の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、実施の形態に係る通信制御処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態)について説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付している。
【0010】
<情報処理装置の一例>
図1は、実施の形態に係る通信制御端末の機能構成例を示すブロック図である。
図1に示す通信制御端末1は、車両に持ち込まれた状態であるか否かに応じて、各種の機能やサービスなどを制御する情報処理装置の一例である。以下、通信制御端末1が車両に持ち込まれた状態であることを指して「車両持込状態」と記載する場合がある。
【0011】
このような通信制御端末1の一例として、無線LAN(Local Area Network)等に対応する無線通信機器をLTE(Long Term Evolution)や5G(Generation)などに対応するモバイル網に接続するモバイル型のルータなどが挙げられる。
【0012】
<サービスへの適用例>
例えば、通信制御端末1は、上記の車両持込状態の下でモバイル網を用いるデータ通信を無線LAN対応の機器に利用させるネットワーク接続サービスに適用することができる。
【0013】
図2は、通信制御端末1の利用シーンの一例を示す図である。
図2には、データ通信の利用可否と、通信制御端末1の利用シーンとが対応付けて示されている。
図2に示すように、通信制御端末1が乗用車やトラック、バスなどの車両に持ち込まれた状態である場合、データ通信の利用が許可される。その一方で、電車や航空機、船舶、自転車、バイク、住宅、公園等の公共施設、徒歩等の移動の他、通信制御端末1が車外で利用される場面では、データ通信の利用が制限される。
【0014】
このように、本実施の形態に係る通信制御端末1は、車両持込状態の下でデータ通信の利用を許可する一方で、非車両持込状態の下でデータ通信の利用を制限するといった新規のネットワーク接続サービスに適用され得る。
【0015】
なお、
図2には、あくまで一例として、無線LAN対応の機器が通信制御端末1に無線通信により接続される例を挙げたが、ネットワーク接続サービスの対象は必ずしも無線LAN対応の機器に限定されない。例えば、ネットワーク接続サービスの提供を受ける機器が有線により通信制御端末1に接続されることを妨げない。また、通信制御端末1が実行するデータ通信の利用制限としては、通信制御端末1と車内にある無線LAN対応の機器との間のデータ通信を制限する場合や、通信制御端末1とモバイル網を提供するキャリア側の通信機器との間のデータ通信を制限する場合が含まれる。
【0016】
<通信制御端末1の構成>
次に、本実施の形態に係る通信制御端末1の機能的構成について説明する。
図1には、通信制御端末1が有する機能に対応するブロックが模式化されている。
図1に示すように、通信制御端末1は、電源接続部2と、通信部3と、ジャイロ加速度センサ4と、制御部10とを備える。
【0017】
電源接続部2は、車両等に装備される電源に接続され得る。あくまで一例として、電源接続部2は、通信制御端末1の筐体に接続されるコネクタ付きケーブルとして実現される。例えば、コネクタは、車両のアクセサリソケット、あるいはシガーソケットへ着脱可能に形成される。このようなコネクタがアクセサリソケット、あるいはシガーソケットに装着されることにより、アクセサリソケット、あるいはシガーソケットからコネクタ付きケーブルを介して通信制御端末1の本体へ給電が開始される。
【0018】
通信部3は、他の装置との通信を行う。例えば、通信部3は、通信手段の一例に相当する。1つの側面として、通信部3は、LAN側のインタフェイスとして、無線LANアクセスポイントの機能を有する。他の側面として、通信部3は、WAN(Wide Area Network)側のインタフェイスとして、モバイル網等のネットワーク接続などの機能を有する。
【0019】
ジャイロ加速度センサ4は、加速度検出部および角速度検出部の一例に対応する。角速度検出部の他の一例として、地磁気センサを利用することもできる。例えば、ジャイロ加速度センサ4は、3つの軸、例えばX軸、Y軸及びZ軸の加速度および3つの軸回り、例えばロール、ピッチ及びヨーの角速度を検出することができる。なお、ここでは、3軸の加速度および3軸の角速度が検出される例を挙げたが、加速度および角速度の検出対象とする軸の数は3つに限定されない。また、ここでは、加速度および角速度の両方が検出される例を挙げるが、2つのうちいずれか一方だけが検出されることを妨げない。
【0020】
制御部10は、通信制御端末1の全体制御を行う処理部である。
図1に示すように、制御部10は、取得部11と、異常判定部12と、判定部13と、異常監視タイマー15Aと、走行監視タイマー15Bと、起動タイマー15Cと、通信制御部17とを有する。
【0021】
取得部11は、加速度、角速度およびこれらの組合せを取得する処理部である。例えば、取得部11は、取得手段の一例に相当する。あくまで一例として、取得部11は、ジャイロ加速度センサ4から3軸の加速度および3軸の角速度の時系列データを取得することができる。例えば、ジャイロ加速度センサ4が通信制御端末1の筐体に内蔵して設置されるとしたとき、ジャイロ加速度センサ4により検出される3軸加速度および3軸角速度は、通信制御端末1を基準とするセンサ座標系の値として取得できる。
【0022】
以下、あくまで一例として、異常判定部12、判定部13および通信制御部17が異常監視タイマー15A、走行監視タイマー15Bおよび起動タイマー15Cのいずれのタイマー値よりも短い所定の周期、例えば1分間ごとに処理を繰り返す場合を例に挙げる。
【0023】
異常判定部12は、回転異常状態または振動異常状態のいずれかの異常状態を判定する処理部である。例えば、異常判定部12は、異常判定手段の一例に相当する。ここで言う「回転異常状態」とは、車両持込状態の下では発生し得ない回転が異常として検出される状態を指す。また、「振動異常状態」とは、車両持込状態の下では発生し得ない振動が異常として検出される状態を指す。これら「回転異常状態」または「振動異常状態」のいずれかを指して「異常状態」と記載する場合がある。すなわち、異常判定部12は、異常状態を検知することで、車両持込状態、非車両持込状態、または、車載時の振動を真似た不正な動作の状態を識別する。
【0024】
1つの側面として、異常判定部12は、上記の回転異常状態の一例として、車両持込状態で発生し得ないローリングの異常を判定する。
図3は、車両座標系の一例を示す図である。
図3には、車両の前後方向に対応するX
c軸、車両の左右方向に対応するY
c軸および車両の上下方向に対応するZ
c軸により定義される車両座標系が例示されている。
図3に示す車両座標系で言えば、車両の前後方向に対応するX
c軸回りの角速度、すなわちロール回転速度の異常が判定される。
【0025】
あくまで一例として、異常判定部12は、加速度から進行方向を判定し、進行方向と回転速度の値に基づき回転異常状態を判定する。
図4は、回転異常状態の判定方法の一例を示す図である。回転異常状態が判定される場合、
図4に示すように、X軸の加速度、Y軸の加速度およびZ軸の加速度と、ロール角速度、ピッチ角速度およびヨー角速度とが入力として用いられ得る。例えば、上述した例の通り、回転異常状態が1分間周期で判定される場合、1分間のセンサ値、例えば3軸加速度および3軸角速度の時系列データが入力されることになる。
【0026】
このような入力の下、異常判定部12は、センサ値の時系列データのうちジャイロ加速度センサ4のサンプリング周波数に対応する全てのセンサ値または所定間隔、例えば1秒間おきにリサンプリングされたセンサ値ごとに次のような処理を実行する。
【0027】
すなわち、異常判定部12は、X軸の加速度、Y軸の加速度およびZ軸の加速度の3軸加速度から進行方向を分析する。具体的には、異常判定部12は、3軸加速度が合成された合成加速度から重力加速度を除去する。その上で、異常判定部12は、重力加速度が除去された合成加速度のベクトルを水平面へ投影する。例えば、水平面は、通信制御端末1の静止時、例えば起動直後等のX軸、Y軸およびZ軸の加速度等を用いてキャリブレーションすることによりあらかじめ算出しておくことができる。そして、異常判定部12は、水平面へ投影された合成加速度のベクトルから進行方向を分析することができる。このようにして得られた進行方向は、
図3に示す車両座標系のロール運動の回転軸X
cの方向に対応すると推定できる。また、センサ座標系および車両座標系の間で各軸の向きの相対関係が固定である場合、進行方向も変化しないので、最初に行われた分析結果を継続して再使用できる。
【0028】
このことから、異常判定部12は、ロール角速度、ピッチ角速度およびヨー角速度のうち、車両座標系のロール運動に対応する角速度を回転速度へ変換する。例えば、ジャイロ加速度センサ4からロール角速度、ピッチ角速度およびヨー角速度などの角速度(rad/sec)が出力される場合、角速度が回転速度(rpm)へ変換される。その後、異常判定部12は、車両座標系のロール運動に対応する回転速度が閾値Th1以上であるか否かを判定する。例えば、閾値Th1には、車両の旋回時に発生し得るロール回転速度の上限値よりも大きい値、例えば上限値+マージンαを設定することができる。このとき、センサ値の時系列データのうちいずれか1つの時点でも、車両座標系のロール運動に対応する回転速度が閾値Th1以上である場合、回転異常状態と判定される。
【0029】
このように、異常判定部12は、車両の旋回時のロール運動では発生し得ない回転異常状態を検知するので、車両持込状態と、非車両持込状態、例えば車載時の振動を真似て通信制御端末1の筐体を持って振る不正な動作が行われている状態とを識別できる。
【0030】
上記の進行方向の分析や上記の回転異常状態の判定は、通信制御端末1が任意の向きで車両に載置されたとしても実現できる。例えば、通信制御端末1の筐体が箱状である場合を例に挙げる。この場合、通信制御端末1の筐体のいずれの面が車両に載置されたとしても、上記の進行方向の分析や上記の回転異常状態の判定を実現できる。また、車両において通信制御端末1の筐体が載置される面が前後または左右に傾いていても、上記の進行方向の分析や上記の回転異常状態の判定を実現できる。
【0031】
なお、ここでは、あくまで一例として、ローリングの異常が判定される例を挙げたが、ヨーイングの異常またはピッチングの異常が判定されることとしてもよいし、これら3つの異常のうち2つ以上の異常を組み合わせて判定することとしてもよい。さらに、上記の進行方向の分析が加速度を用いて行われる例を挙げたが、角速度を用いて行われることとしてもよい。
【0032】
他の側面として、異常判定部12は、上記の振動異常状態の一例として、車両持込状態で発生し得ない鉛直方向の振動の異常を判定する。例えば、
図3に示す車両座標系で言えば、車両の上下方向(鉛直方向)に対応するZ
c軸の振幅の異常が判定される。
【0033】
あくまで一例として、異常判定部12は、加速度の値に基づいて振動異常状態を判定する。
図5は、振動異常状態の判定方法の一例を示す図である。
図5に示すように、振動異常状態が判定される場合、あくまで一例として、X軸の加速度、Y軸の加速度およびZ軸の加速度が入力として用いられ得る。例えば、上述した例の通り、振動異常状態が1分間周期で判定される場合、1分間の3軸加速度の時系列データが入力されることになる。
【0034】
このような入力の下、異常判定部12は、3軸加速度の時系列データから車両座標系の鉛直方向、すなわち車両座標系のZ
c軸方向の振幅の時系列データを分析する。具体的には、異常判定部12は、3軸加速度が合成された合成加速度から重力加速度を除去する。続いて、異常判定部12は、重力加速度が除去された合成加速度のうち水平面の法線方向、すなわち
図3に示す車両座標系の鉛直方向(上下方向)に対応する加速度成分を抽出する。そして、異常判定部12は、車両座標系の鉛直方向に対応する加速度成分の時系列データを二階積分する。これにより、車両座標系の鉛直方向に対応する変位の時系列データが得られる。さらに、異常判定部12は、車両座標系の鉛直方向に対応する変位の時系列データのうち極値、例えば極大値や極小値を抽出する。これにより、車両座標系の鉛直方向に対応する振幅の時系列データが得られる。その上で、異常判定部12は、車両座標系の鉛直方向に対応する振幅が閾値Th2以上であるか否かを判定する。例えば、閾値Th2には、車両の走行時のロードノイズとして発生し得る振幅の上限値よりも大きい値、例えば上限値+マージンβを設定することができる。このとき、3軸加速度の時系列データのうちいずれか1つの時点でも、車両座標系の鉛直方向に対応する振幅が閾値Th2以上である場合、振動異常状態と判定される。なお、上記の振幅の分析や上記の振動異常状態の判定についても、通信制御端末1が任意の向きで車両に載置されたとしても実現できる。
【0035】
このように、異常判定部12は、車両の走行時のロードノイズでは発生し得ない振動異常状態を検知するので、車両持込状態と、非車両持込状態、例えば車載時の振動を真似て通信制御端末1の筐体を持って振る不正な動作が行われている状態とを識別できる。
【0036】
判定部13は、通信制御端末1が車両に持ち込まれた状態であるか否か判定する処理部である。あくまで一例として、判定部13は、異常判定部12により回転異常状態または振動移動状態のいずれかの異常状態であると判定された場合、非車両持込状態であると判定する。一方、判定部13は、異常判定部12により回転異常状態および振動移動状態のいずれの異常状態でもないと判定された場合、車両持込状態であると判定する。このように異常状態でない場合に車両持込状態と判定する一因として、通信制御端末1に電源が供給された段階で通信制御端末1が車両のアクセサリソケット、あるいはシガーソケットに装着されており、車両持込状態である可能性が高まることが挙げられる。
【0037】
例えば、判定部13は、判定手段の一例に相当する。
図1に示すように、判定部13は、走行状態判定部13Aと、渋滞状態判定部13Bとを有する。
【0038】
走行状態判定部13Aは、車両が走行状態であることを判定する処理部である。あくまで一例として、走行状態判定部13Aは、判定部13により車両持込状態であると判定された場合、走行状態の判定を実行する。
【0039】
図6は、走行状態の判定方法の一例を示す図である。
図6に示すように、走行状態が判定される場合、あくまで一例として、X軸の加速度、Y軸の加速度およびZ軸の加速度が入力として用いられ得る。例えば、上述した例の通り、走行状態が1分間周期で判定される場合、1分間の3軸加速度の時系列データが入力されることになる。
【0040】
このような入力の下、走行状態判定部13Aは、3軸加速度の時系列データから振動状態、例えば車両座標系の鉛直方向に対応する振幅のばらつきを分析する。ここで、上記の振幅の分析は、振幅異常状態の判定時と同様であるので、その説明を省略する。なお、車両座標系の鉛直方向に対応する振幅の時系列データは、異常判定部12または走行状態判定部13Aのうち一方の処理部の処理結果を他方の処理部に共有することもできる。
【0041】
上述の通り、車両座標系の鉛直方向に対応する振幅の時系列データが得られると、走行状態判定部13Aは、当該振幅の時系列データを所定長の区間、例えば10秒間に分割する。続いて、走行状態判定部13Aは、振幅の時系列データが分割された区間ごとに当該区間に含まれる振幅の分散値σを算出する。その上で、走行状態判定部13Aは、区間ごとに算出された振幅の分散値σが所定の範囲内であるか否かを判定する。例えば、上記の範囲を定める上限値Th3および下限値Th4には、車両の走行時のロードノイズとして発生し得る振幅の上限値および下限値を設定できる。このとき、振幅の時系列データの分割により得られた全ての区間において車両座標系の鉛直方向に対応する振幅の分散値が上限値Th3以下であり、かつ下限値Th4以上である場合、車両持込状態かつ走行状態と判定される。なお、上記の振幅の分析や上記の走行状態の判定についても、通信制御端末1が任意の向きで車両に載置されたとしても実現できる。
【0042】
このように、走行状態判定部13Aは、車両の走行時のロードノイズとして発生し得る振幅に基づいて走行状態を判定するので、道路走行時に発生し得る車両の挙動から走行状態を検知できる結果、走行状態の検知精度を高めることができる。
【0043】
渋滞状態判定部13Bは、車両が渋滞状態であることを判定する処理部である。ここで言う「渋滞状態」には、短時間走行、例えば走行状態の判定周期である1分間未満の走行も含まれてよい。あくまで一例として、渋滞状態判定部13Bは、走行状態判定部13Aにより非走行状態であると判定された場合、渋滞状態の判定を実行する。さらに、非走行状態であることに加えて、渋滞状態判定部13Bは、走行状態判定部13Aによりいずれかの区間で振幅の分散値が下限値Th4未満であると判定された場合に絞り込んで、渋滞状態の判定を実行することもできる。
【0044】
図7は、渋滞状態の判定方法の一例を示す図である。
図7に示すように、渋滞状態が判定される場合、あくまで一例として、X軸の加速度、Y軸の加速度およびZ軸の加速度が入力として用いられ得る。例えば、上述した例の通り、渋滞状態が1分間周期で判定される場合、1分間の3軸加速度の時系列データが入力されることになる。
【0045】
このような入力の下、渋滞状態判定部13Bは、X軸の加速度、Y軸の加速度およびZ軸の加速度の3軸加速度から進行方向を分析する。ここで、上記の進行方向の分析は、回転異常状態の判定時と同様であるので、その説明を省略する。なお、上記の進行方向は、異常判定部12または渋滞状態判定部13Bのうち一方の処理部の処理結果を他方の処理部に共有することもできる。
【0046】
上述の通り、進行方向が得られると、渋滞状態判定部13Bは、進行方向の移動状態、例えば加速および減速を分析する。具体的には、渋滞状態判定部13Bは、3軸加速度の時系列データのうちジャイロ加速度センサ4のサンプリング周波数に対応する全ての3軸加速度または所定間隔、例えば1秒間おきにリサンプリングされた3軸加速度ごとに次のような処理を実行する。すなわち、渋滞状態判定部13Bは、3軸加速度が合成された合成加速度から重力加速度を除去する。続いて、渋滞状態判定部13Bは、重力加速度が除去された合成加速度のうち、進行方向に対応する加速度成分を抽出する。そして、渋滞状態判定部13Bは、進行方向に対応する加速度成分の時系列データを一階積分する。これにより、進行方向に対応する速度の時系列データが得られる。その後、渋滞状態判定部13Bは、進行方向に対応する速度の時系列データから閾値Th5以上の加速および減速が検出される頻度を計数する。例えば、加速の頻度は、加速度の符号が正であり、かつ速度の絶対値が閾値Th5以上となる速度が検出される回数をカウントすることにより得ることができる。また、減速の頻度は、加速度の符号が負であり、かつ速度の絶対値が閾値Th5以上となる速度が検出される回数をカウントすることにより得ることができる。そして、渋滞状態判定部13Bは、加速の頻度および減速の頻度が閾値Th6以上であるか否かにより、渋滞状態であるか否かを判定する。例えば、加速の頻度および減速の頻度が閾値Th6以上である場合、渋滞状態であると判定される一方で、加速の頻度または減速の頻度が閾値Th6未満である場合、非渋滞状態であると判定される。
【0047】
このように、渋滞状態判定部13Bは、加速の頻度および減速の頻度に基づいて渋滞状態を判定するので、渋滞時に発生する車両の挙動から渋滞状態を検知できる結果、渋滞状態の検知精度を高めることができる。
【0048】
なお、ここでは、加速の頻度および減速の頻度に基づいて渋滞状態であるか否かを判定する例を挙げたが、いずれか一方のみに基づいて渋滞状態であるか否かを判定することもできる。
【0049】
異常監視タイマー15A、走行監視タイマー15Bおよび起動タイマー15Cは、いずれもタイマー機能を有する。異常監視タイマー15Aは、第1のタイマーの一例に相当する。走行監視タイマー15Bは、第2のタイマーの一例に相当する。起動タイマー15Cは、第3のタイマーの一例に相当する。
【0050】
以下、あくまで一例として、上記の3つのタイマーは、制御部10がタイマーソフトを実行することにより実現される場合を例示するが、ハードウェアにより実現されることとしてもかまわない。さらに、あくまで一例として、上記の3つのタイマーが経過時間を計数するカウントアップ方式である場合を例示するが、猶予期間を計数するカウントダウン方式であってもかまわない。
【0051】
これら異常監視タイマー15A、走行監視タイマー15Bおよび起動タイマー15Cの3つのタイマーの起動およびリセットは、異常判定部12や判定部13の判定結果、すなわち通信制御端末1の状態に応じて起動またはリセットされる。
【0052】
図8は、タイマーの起動条件の一例を示す図である。
図8には、異常監視タイマー15Aが起動する条件を満たす通信制御端末1の状態が縦線のハッチングで示される一方で、走行監視タイマー15Bが起動する条件を満たす通信制御端末1の状態が斜線のハッチングで示されている。
【0053】
図8に示すように、回転異常状態または振動異常状態のいずれかの異常状態である場合、車載時の振動を真似て通信制御端末1の筐体を持って振る不正な動作が行われている可能性が疑われる。この場合、異常監視タイマー15Aが異常判定部12により起動される。
【0054】
また、車両持込状態、非走行状態、かつ非渋滞状態である場合、車両が停車中である可能性が高い。この場合、長時間の停車時にデータ通信を行うことを認めたのでは、車両持込時かつ走行または渋滞状態限定のネットワーク接続サービスとは言えず、既存のネットワーク接続サービスとの差別化が図りづらい。このため、長時間の停車時にデータ通信が行われるのを抑制する側面から、走行監視タイマー15Bが判定部13により起動される。
【0055】
なお、
図8には、起動タイマー15Cの起動条件の図示を省略したが、起動タイマー15Cは、車両の電源、例えばアクセサリソケット、あるいはシガーソケットなどからの給電、すなわち通信制御端末1の電源ONが検知された場合に起動することができる。この際、車両の電源からの給電の遮断、すなわち通信制御端末1の電源OFFが検知された段階で起動タイマー15Cのタイマー値を不揮発性メモリ等にバックアップしておくことで、次回の通信制御端末1の電源ON時にタイマー値を引き継がせることができる。
【0056】
図9は、タイマーのリセット条件の一例を示す図である。
図9には、異常監視タイマー15A、走行監視タイマー15Bおよび起動タイマー15Cが起動する条件を満たす通信制御端末1の状態が斜線のハッチングで示されている。
【0057】
図9に示すように、車両持込状態であり、かつ走行状態または渋滞状態のいずれかの状態である場合、車両持込時限定の趣旨に相応しいネットワーク接続サービスの利用状態であると判明する。この場合、走行監視タイマー15Bおよび起動タイマー15Cのタイマー値が初期値、例えば「0」へリセットされる。
【0058】
ここで、異常監視タイマー15Aのタイマー値は、車両持込状態であり、かつ走行状態または渋滞状態のいずれかの状態である場合であっても直ちにリセットされるとは限らず、更なる加重要件がある。
【0059】
すなわち、異常監視タイマー15Aが回転異常状態または振動移動状態のいずれの異常状態により起動されたかに応じて異常監視タイマー15Aのタイマー値がリセットされるか否かが制御される。
【0060】
例えば、異常監視タイマー15Aが回転異常状態により起動された場合、異常監視タイマー15Aが一旦タイムアウトするまで、異常監視タイマー15Aのタイマー値のリセットは禁止される。その一方で、異常監視タイマー15Aが振動異常状態により起動された場合、異常監視タイマー15Aのタイマー値のリセットが許可される。
【0061】
このように、異常監視タイマー15Aが回転異常状態により起動された場合、異常監視タイマー15Aをタイムアウトさせるのは、振動移動状態よりも回転異常状態の方が車載時の振動を真似た不正な動作が行われている可能性が高いからである。
【0062】
通信制御部17は、車両持込状態であるか否かに応じて、通信部3による通信の利用制限を行うか否かを制御する処理部である。通信制御部17は、通信制御手段の一例に相当する。
【0063】
あくまで一例として、通信制御部17は、異常監視タイマー15A、走行監視タイマー15Bおよび起動タイマー15Cの3つのタイマーを監視する。そして、通信制御部17は、3つのタイマーのうちいずれかのタイマーがタイムアウトしているか否かを判定する。
【0064】
例えば、各タイマーのタイマー値と比較する閾値の例を挙げれば、異常監視タイマー15Aのタイマー値が閾値Th7、例えば60分を超える場合、タイムアウトと判定される。また、走行監視タイマー15Bのタイマー値が閾値Th8、例えば90分を超える場合、タイムアウトと判定される。このように、異常監視タイマー15Aのタイムアウトを走行監視タイマー15Bのタイムアウトよりも短く設定するのは、停車の検知時のタイムアウトよりも不正な動作の検知時のタイムアウトを優先するためである。また、起動タイマー15Cのタイマー値が閾値Th9、例えば60分を超える場合、タイムアウトと判定される。
【0065】
ここで、通信制御部17は、3つのタイマーのうちいずれかのタイマーがタイムアウトしている場合、通信の利用制限を行う。あくまで一例として、通信制御部17は、無線LANアクセスポイントの機能をOFFに制御することにより、無線通信機能をOFFに制御する。他の一例として、通信制御部17は、通信制御端末1とモバイル網の基地局との通信コネクションを切断することにより、無線通信機能をOFFに制御する。
【0066】
なお、ここでは、あくまで一例として、3つのタイマーがカウントアップ方式である例を挙げたが、先にも述べたように、3つのタイマーはカウントダウン方式であってもよい。この場合、3つのタイマーには、3つのタイマーのタイムアウトに設定された閾値Th7~閾値Th9の各々を初期値として設定し、各々のタイマーのタイマー値がゼロになった場合にタイムアウトと判定することとすればよい。
【0067】
<処理の流れ>
次に、本実施の形態に係る通信制御端末1の処理の流れについて説明する。
図10は、実施の形態に係る通信制御処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、あくまで一例として、通信制御端末1の電源がONにされた場合、車両の電源からアクセサリソケット、あるいはシガーソケットを介して給電が開始された場合に開始される。
【0068】
図10に示すように、通信制御部17は、不揮発性メモリ等にバックアップされた前回の起動タイマー15Cのタイマー値を取得する(ステップS101)。このとき、前回の起動タイマー15Cのタイマー値が閾値Th9を超えない場合(ステップS102No)、通信制御部17は、無線通信機能をONに制御し(ステップS103)、起動タイマーの動作を開始させる(ステップS104)。
【0069】
また、前回の起動タイマー15Cのタイマー値が閾値Th9を超える場合(ステップS102Yes)、通信制御部17は、無線通信機能をOFFに制御する(ステップS105)。
【0070】
続いて、通信制御部17は、異常監視タイマー15A、走行監視タイマー15Bおよび起動タイマー15Cの3つのタイマーのうちいずれかのタイマーがタイムアウトしているか否かを判定する(ステップS106)。
【0071】
このとき、3つのタイマーのうちいずれかのタイマーがタイムアウトしている場合(ステップS106Yes)、通信制御部17は、無線通信機能をOFFに制御する(ステップS107)。なお、3つのタイマーのうちいずれのタイマーもタイムアウトしていない場合(ステップS106No)、ステップS107の処理をスキップしてステップS108の処理へ移行する。
【0072】
その後、異常判定部12は、加速度から進行方向を判定し、進行方向と回転速度の値に基づき回転異常状態を判定する(ステップS108)。そして、回転異常状態でない場合(ステップS108No)、異常判定部12は、加速度の値に基づいて振動異常状態を判定する(ステップS109)。
【0073】
ここで、回転異常状態または振動移動状態のいずれかの異常状態である場合(ステップS108YesまたはステップS109Yes)、異常判定部12は、異常監視タイマー15Aを起動する(ステップS110)。
【0074】
このように、回転異常状態または振動移動状態のいずれかの異常状態である場合、判定部13により非車両持込状態と判定されるので、以降の処理はスキップされてステップS106の処理へ移行する。
【0075】
一方、回転異常状態または振動移動状態のいずれの異常状態でもない場合(ステップS108NoおよびステップS109No)、判定部13により車両持込状態と判定される。この場合、ステップS110の処理をスキップしてステップS111の処理へ移行する。
【0076】
そして、走行状態判定部13Aは、加速度に基づき判定される振動状態により、走行状態であるか否かを判定する(ステップS111)。このとき、非走行状態である場合(ステップS111No)、渋滞状態判定部13Bは、加速度に基づき判定される移動状態により、渋滞状態であるか否かを判定する(ステップS112)。なお、走行状態または渋滞状態のいずれでもない場合(ステップS111NoおよびステップS112No)、以降の処理をスキップしてステップS106の処理へ移行する。
【0077】
ここで、走行状態または渋滞状態のいずれかの状態である場合(ステップS111YesまたはステップS112Yes)、判定部13は、走行監視タイマー15Bおよび起動タイマー15Cのタイマー値をリセットする(ステップS113)。さらに、通信制御部17は、無線通信機能をON状態へ制御する(ステップS114)。
【0078】
続いて、判定部13は、異常監視タイマー15Aが起動中であるか否かを判定する(ステップS115)。このとき、異常監視タイマー15Aが起動中である場合(ステップS115Yes)、判定部13は、異常監視タイマー15Aが回転異常状態の検知により起動されたか否かを判定する(ステップS116)。
【0079】
ここで、異常監視タイマー15Aが振動異常状態の検知により起動された場合(ステップS116No)、判定部13は、異常監視タイマー15Aのタイマー値をリセットし(ステップS117)、ステップS106の処理へ移行する。
【0080】
なお、異常監視タイマー15Aが起動中でない場合または異常監視タイマー15Aが振動異常状態の検知により起動された場合(ステップS115NoまたはステップS116Yes)、ステップS117の処理をスキップしてステップS106の処理へ移行する。
【0081】
<実施の形態の効果>
上述してきたように、本実施の形態の通信制御端末1は、加速度の値に基づき、通信制御端末1が車両持込状態でないことを判定した場合、通信の利用制限を行う。このような車両持込状態の判定に用いる加速度は必ずしも車両から供給されずともよい。したがって、本実施の形態の通信制御端末1によれば、車両からの信号供給に依存しない車両持込状態の判定を実現できる。また、端末は任意の向きで設置することが可能となる。
【0082】
また、本実施の形態の通信制御端末1は、加速度から進行方向を判定し、進行方向と回転速度の値に基づき判定される回転異常状態に基づいて、通信制御端末1が車両持込状態でないことを判定する。このため、車載時の振動を真似て通信制御端末1の筐体を持って振る不正な動作等を車両持込状態と誤判定するおそれを低減できる。したがって、本実施の形態の通信制御端末1によれば、車両持込状態のロバストな判定を実現できる。
【0083】
また、本実施の形態の通信制御端末1は、車両持込状態でないことを判定した場合、通信の利用制限を行う。したがって、本実施の形態の通信制御端末1によれば、例えば、上記の車両持込時限定のネットワーク接続サービスなどを実現できる。
【0084】
また、本実施の形態の通信制御端末1は、車両持込状態でない場合、車両持込状態でないことが検知されてから通信の利用制限が行われるまでの猶予期間または車両持込状態でないことが検知されてからの経過時間を計測する異常監視タイマーを起動する。さらに、本実施の形態の通信制御端末1は、異常監視タイマー15Aで計測されるタイマー値が所定時間になるまで、通信の利用を許可し、タイマー値が所定時間になった場合、通信の利用制限を行う。したがって、本実施の形態の通信制御端末1によれば、車載時の振動を真似た不正な動作の発生が疑われる状況で通信の利用制限までに一定の猶予を与えるので、車両持込時限定のネットワーク接続サービスなどの利便性が損なわれるのを抑制できる。
【0085】
また、本実施の形態の通信制御端末1は、加速度の値に基づいて走行状態を判定し、異常監視タイマー15Aのタイマー値が所定時間になった場合、走行状態の判定結果に関わらず、通信の利用制限を行う。したがって、本実施の形態の通信制御端末1によれば、車載時の振動を真似た不正な動作の発生が疑われる状況で車両持込時限定のネットワーク接続サービスなどの利便性よりも通信の利用制限を優先できる。
【0086】
また、本実施の形態の通信制御端末1は、加速度の値に基づいて振動異常状態をさらに判定し、振動異常状態に基づいて、車両持込状態でないことを判定した場合、異常監視タイマー15Aのタイマーを起動する。したがって、本実施の形態の通信制御端末1によれば、車載時の振動を真似た不正な動作の発生が疑われる状況を多面的に検知できるので、車載時の振動を真似た不正な動作の検知漏れをさらに抑制できる。
【0087】
また、本実施の形態の通信制御端末1は、加速度の値に基づいて走行状態を判定し、走行状態である場合、回転異常状態または振動異常状態のうちいずれの異常状態により車両持込状態でないことを検知したかに応じて、異常監視タイマー15Aのタイマー値を初期値にリセットするか否かを制御する。したがって、本実施の形態の通信制御端末1によれば、車載時の振動を真似た不正な動作の発生の疑わしさに応じて車両持込時限定のネットワーク接続サービスなどの利便性または通信の利用制限のいずれを優先するかを変更できる。
【0088】
また、本実施の形態の通信制御端末1は、回転異常状態により車両持込状態でないことを検知することで起動した異常監視タイマー15Aのタイマー値に対するリセットを禁止する。したがって、本実施の形態の通信制御端末1によれば、車載時の振動を真似た不正な動作の発生が振動異常状態の検知時よりも疑われる状況下で通信の利用制限を優先できる。
【0089】
また、本実施の形態の通信制御端末1は、振動異常状態により車両持込状態でないことを検知することで起動した異常監視タイマー15Aのタイマー値に対するリセットを許可する。したがって、本実施の形態の通信制御端末1によれば、車載時の振動を真似た不正な動作の発生のおそれが回転異常状態の検知時よりも低い状況下で車両持込時限定のネットワーク接続サービスなどの利便性を優先できる。
【0090】
また、本実施の形態の通信制御端末1は、非走行状態と判定した場合、非走行状態が検知されてから通信の利用制限が行われるまでの猶予期間または非走行状態が検知されてからの経過時間を計測する走行監視タイマー15Bを起動する。さらに、本実施の形態の通信制御端末1は、走行監視タイマー15Bで計測されるタイマー値が所定時間になるまで、通信の利用を許可し、走行監視タイマー15Bのタイマー値が所定時間になった場合に、通信の利用制限を行う。したがって、本実施の形態の通信制御端末1によれば、車両持込時限定のネットワーク接続サービスなどの提供時に短時間の停車が許可される一方で長時間の停車が制限されるので、既存のネットワーク接続サービスとの差別化を図ることができる。
【0091】
また、本実施の形態の通信制御端末1は、走行監視タイマー15Bが計測する所定時間よりも短い所定時間を用いて、異常監視タイマー15Aが計測するタイマー値に基づく通信の利用制限を行う。したがって、本実施の形態の通信制御端末1によれば、停車の検知時のタイムアウトよりも不正な動作の検知時のタイムアウトを優先できる。
【0092】
また、本実施の形態の通信制御端末1は、電源がON状態にされてから通信の利用制限が行われるまでの猶予期間または電源がON状態にされてからの経過時間を計測する起動タイマー15Cで計測されるタイマー値に基づいて、通信の利用制限を行う。したがって、本実施の形態の通信制御端末1によれば、車両に持ち込まれた時点から通信の利用制限までに一定の猶予を与えるので、車両持込時限定のネットワーク接続サービスなどの利便性が損なわれるのを抑制できる。
【0093】
また、本実施の形態の通信制御端末1は、通信の利用制限として、無線通信機能をオフに制御する。したがって、本実施の形態の通信制御端末1によれば、例えば、無線LANアクセスポイントの機能を制限したり、モバイル網の基地局とのコネクションを遮断したりといった通信の利用制限を実現できる。
【0094】
<応用例>
本実施の形態の応用例について例示する。例えば、
図10に示すフローチャートでは、非走行状態である場合(ステップS111No)、渋滞状態の判定が実行される例を挙げたが、渋滞状態の判定が実行される条件をさらに絞り込んでもよい。例えば、振幅の時系列データの分割により得られた区間のうちいずれかの区間において車両座標系の鉛直方向に対応する振幅の分散値が下限値Th4未満となる場合に絞り込んで、渋滞状態の判定を渋滞状態判定部13Bに実行させることもできる。これにより、渋滞状態でない可能性が高い場合に渋滞状態の判定を省略できる。
【0095】
<適用例>
本実施の形態の適用例について例示する。例えば、本実施の形態では、車両持込状態であるか否かに応じて通信の利用制限を行うか否かを制御する例を挙げたが、車両持込状態であるか否かに応じて制御される対象は通信の利用制限に限定されない。あくまで一例として、車両持込状態であるか否かに応じて携帯端末装置やタブレット端末、ウェアラブル端末が有するナビゲーション機能のルート選択モードを切り替えることができる。例えば、車両持込状態である場合に目的地までのルートとして車両用のルートを選択する一方で、非車両持込状態である場合に車両以外の移動手段用のルート、例えば徒歩用のルートや交通機関の利用時のルートを選択する。他の一例として、車両持込状態であるか否かに応じて携帯端末装置やタブレット端末、ウェアラブル端末が有するテレビジョン機能の利用制限を行うか否かを制御することもできる。例えば、車両持込状態である場合にテレビジョン機能の利用制限、例えば映像の表示制限を行う一方で、非車両持込状態である場合にテレビジョン機能の利用を許可する。
【0096】
<システム>
上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0097】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られない。つまり、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0098】
さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPU(Central Processing Unit)および当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0099】
<ハードウェア>
次に、本実施の形態で説明した情報処理装置と同様の機能を有する情報処理プログラムを実行するコンピュータのハードウェア構成例について説明する。
図11は、ハードウェア構成例を説明する図である。
図11に示すように、コンピュータ100は、通信装置100a、HDD(Hard Disk Drive)100b、メモリ100c、プロセッサ100dを有する。また、
図11に示した各部は、バス等で相互に接続される。
【0100】
通信装置100aは、ネットワークインタフェースカードなどであり、他のサーバとの通信を行う。HDD100bは、
図1等に示した機能を動作させるプログラムやDB(DataBase)を記憶する。
【0101】
プロセッサ100dは、
図1等に示した各処理部と同様の処理を実行するプログラムをHDD100b等から読み出してメモリ100cに展開することで、
図1等で説明した各機能を実行するプロセスを動作させる。例えば、プロセスは、コンピュータ100が有する各処理部と同様の機能を実行する。具体的には、プロセッサ100dは、取得部11、異常判定部12、判定部13、異常監視タイマー15A、走行監視タイマー15B、起動タイマー15Cおよび通信制御部17等と同様の機能を有するプログラムをHDD100b等から読み出す。そして、プロセッサ100dは、取得部11、異常判定部12、判定部13、異常監視タイマー15A、走行監視タイマー15B、起動タイマー15Cおよび通信制御部17等と同様の処理を実行するプロセスを実行する。
【0102】
このように、コンピュータ100は、プログラムを読み出して実行することで各種処理方法を実行する情報処理装置として動作する。また、コンピュータ100は、媒体読取装置によって記録媒体から上記プログラムを読み出し、読み出された上記プログラムを実行することで上記した実施例と同様の機能を実現することもできる。なお、この他の実施の形態でいうプログラムは、コンピュータ100によって実行されることに限定されるものではない。例えば、他のコンピュータまたはサーバがプログラムを実行する場合や、これらが協働してプログラムを実行するような場合にも、本実施の形態で説明した情報処理装置が有する機能を同様に実現することができる。
【0103】
このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することができる。
【符号の説明】
【0104】
1 通信制御端末
2 電源接続部
3 通信部
4 ジャイロ加速度センサ
10 制御部
11 取得部
12 異常判定部
13 判定部
13A 走行状態判定部
13B 渋滞状態判定部
15A 異常監視タイマー
15B 走行監視タイマー
15C 起動タイマー
17 通信制御部