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特開2025-34981シクラニリプロールの製造中間体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025034981
(43)【公開日】2025-03-13
(54)【発明の名称】シクラニリプロールの製造中間体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 231/02 20060101AFI20250306BHJP
   C07C 233/65 20060101ALI20250306BHJP
【FI】
C07C231/02
C07C233/65
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023141694
(22)【出願日】2023-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000354
【氏名又は名称】石原産業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】浅川 堅一
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 祐介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】杉山 良幸
(72)【発明者】
【氏名】菅田 美樹
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC53
4H006BA50
4H006BE90
4H006BJ20
4H006BJ50
4H006BM30
4H006BM72
4H006BS30
4H006BU36
4H006BV72
(57)【要約】
【課題】 高純度のシクラニリプロールの製造中間体の製造方法を提供する。
【解決手段】 溶媒及び特定の縮合剤、必要に応じて縮合反応用添加剤の存在下で、式(II)で表される化合物又はその塩と、式(III)で表される化合物又はその塩とを反応させることにより、シクラニリプロールの製造中間体を高純度に製造することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
で表される化合物又はその塩の製造方法であって、
(a)溶媒、カルボジイミド系縮合剤及び縮合反応用添加剤の存在下で、
式(II):
【化2】
で表される化合物又はその塩と
式(III):
【化3】
で表される化合物又はその塩とを反応させる工程、又は
(b)溶媒及びウロニウム系縮合剤の存在下で、式(II)で表される化合物又はその塩と式(III)で表される化合物又はその塩とを反応させる工程を特徴とする、製造方法。
【請求項2】
前記カルボジイミド系縮合剤がN,N’‐ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩及びN,N’-ジイソプロピルカルボジイミドからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記縮合反応用添加剤が1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エチル、及びシアノグリオキシル酸エチルオキシムからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ウロニウム系縮合剤が1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-ベンゾトリアゾリウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート、及び(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロホスファートからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクラニリプロールの製造中間体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シクラニリプロール(cyclaniliprole;3-ブロモ-N-[2-ブロモ-4-クロロ-6-[[(1-シクロプロピルエチル)アミノ]カルボニル]フェニル]-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド)は、市販の農業用殺虫剤の有効成分として有用な化合物である。2-アミノ-5-クロロ-N-(1-シクロプロピルエチル)ベンズアミド(後述の式(I)で表される化合物に含まれており、以下に単に化合物(Ia)という。)は、シクラニリプロールの重要な製造中間体である。
【0003】
特許文献1には、シクラニリプロールを含むアントラニルアミド系化合物又はその塩について、効率的かつ安価に製造する方法が記載されている。アントラニルアミド系化合物の製造中間体として、化合物(Ia)を包含する化合物(化合物(V-1)及び化合物(V-2))の製造方法(反応〔U〕及び反応〔V〕)についても記載されており、実施例28(1)及び(2)では、反応〔U〕に相当する製造方法として、化合物(Ia)の製造方法が具体的に記載されている。すなわち、実施例28(1)で、塩化チオニルを用いて、5-クロロ-2-ニトロ安息香酸から酸クロライドを合成した後、前記酸クロライドと1-シクロプロピルエチルアミンをトリエチルアミンの存在下で反応させ、5-クロロ-N-(1-シクロプロピルエチル)-2-ニトロベンズアミドを合成し、実施例28(2)で、還元鉄を用いて、5-クロロ-N-(1-シクロプロピルエチル)-2-ニトロベンズアミドから2-アミノ-5-クロロ-N-(1-シクロプロピルエチル)ベンズアミドを合成する、製造方法が記載されている。しかしながら、特許文献1では、アントラニルアミド系化合物の製造中間体に関し、高純度な化合物(Ia)を製造するという観点での検討は、一切なされていない。
特許文献2には、反応Scheme-1のe工程にアミド化反応が記載されている。しかしながら、前記反応Scheme-1のe工程に即する実施例の記載がなく、化合物(Ia)の具体的な製造方法に関する記載も一切ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/072745号
【特許文献2】国際公開第2022/058916号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
農薬原体としてシクラニリプロールを工業的に製造する場合、所定の規格に適合するように高純度のシクラニリプロールを製造する必要がある。そのためには、高純度のシクラニリプロールの製造中間体を製造する必要があり、効率的な製造方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するために種々検討を行った。
具体的には、まず、2-アミノ-5-クロロ-安息香酸を出発原料として選択し、特許文献1に記載の反応〔U〕を参考に、2-アミノ-5-クロロ-安息香酸から酸クロライドを合成した後、1-シクロプロピルエチルアミンと反応させ化合物(Ia)の製造を試みたが、反応が十分に進行しなかった。そこで、さらに反応条件も含めて検討を継続したところ、特定の縮合剤及び必要に応じて縮合反応用添加剤を選択することにより、酸クロライドを経由することなく、高純度な化合物(I)を効率的に製造できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、式(I):
【0008】
【化1】
で表される化合物又はその塩(以下、単に化合物(I)という。)の製造方法であって、
(a)溶媒、カルボジイミド系縮合剤及び縮合反応用添加剤の存在下で、
式(II):
【0009】
【化2】
で表される化合物又はその塩(以下、単に化合物(II)という。)と
式(III):
【0010】
【化3】
で表される化合物又はその塩(以下、単に化合物(III)という。)とを反応させる工程、又は
(b)溶媒及びウロニウム系縮合剤の存在下で、化合物(II)と化合物(III)とを反応させる工程を特徴とする、製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、シクラニリプロールの製造に有用な製造中間体である化合物(I)を高純度で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[化合物(I)の製造方法]
本発明の化合物(I)の製造方法は、(a)溶媒、カルボジイミド系縮合剤及び縮合反応用添加剤の存在下で、化合物(II)と化合物(III)とを反応させる工程(以下、単に工程(a)ともいう。)、又は(b)溶媒及びウロニウム系縮合剤の存在下で、化合物(II)と化合物(III)とを反応させる工程(以下、単に工程(b)ともいう。)を特徴とする。
【0013】
式(I)、(II)又は(III)として表される化合物の塩としては、農薬上許容されるものであればあらゆるものを含み、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩など)、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩(ジメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩など)、酸付加塩(塩酸塩、臭化水素酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、メタンスルホン酸塩)などが挙げられる。
【0014】
本発明における、化合物(II)及び化合物(III)は、当技術分野において公知の方法(例えば、化合物(III)は特許文献1などに記載された方法)又はそれに準じる方法により製造することができ、或いは市販品を使用することもできる。
【0015】
工程(a)及び工程(b)における、化合物(II)と化合物(III)の使用量は、反応が進行する限り特に限定されないが、化合物(II)1モルに対して、例えば、0.5~20モル、好ましくは、1~10モル、より好ましくは、1~5モル、特に好ましくは、1~1.2モルの化合物(III)を使用することができる。
【0016】
工程(a)において使用されるカルボジイミド系縮合剤は、特に限定されないが、例えば、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩、及びN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド等を使用することができる。これらの中で、工程(a)で得られる化合物(I)の純度の観点から、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、又は1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩が好ましく、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミドがより好ましい。工程(a)において使用されるカルボジイミド系縮合剤は、1種でもよく、2種以上であってもよい。
工程(a)におけるカルボジイミド系縮合剤の使用量は、特に限定されないが、化合物(II)1モルに対して、例えば、0.5~20モル、好ましくは、1~10モル、より好ましくは、1~5モル、特に好ましくは1~1.2モルのカルボジイミド系縮合剤を使用することができる。
【0017】
工程(a)において使用される縮合反応用添加剤は、特に限定されないが、ヒドロキシトリアゾール系添加剤(例えば、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物、及び1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール等)、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エチル、及びシアノグリオキシル酸エチルオキシム等を使用することができる。これらの中で、工程(a)で得られる化合物(I)の純度の観点から、ヒドロキシトリアゾール系添加剤が好ましく、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物、又は1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾールがより好ましく、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物が特に好ましい。工程(a)において使用される縮合反応用添加剤は、1種でもよく、2種以上であってもよい。
工程(a)における縮合反応用添加剤の使用量は、特に限定されないが、化合物(II)1モルに対して、例えば、0.01~5モル、好ましくは、0.05~2モル、より好ましくは、0.1~1モルの縮合反応用添加剤を使用することができる。
【0018】
工程(b)において使用されるウロニウム系縮合剤は、特に限定されないが、例えば、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-ベンゾトリアゾリウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート、及び(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロホスファート等を使用することができる。これらの中で、工程(b)で得られる化合物(I)の純度の観点から、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート、又は1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-ベンゾトリアゾリウム3-オキシドヘキサフルオロホスファートが好ましく、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスファートがより好ましい。工程(b)において使用されるウロニウム系縮合剤は、1種でもよく、2種以上であってもよい。
工程(b)におけるウロニウム系縮合剤の使用量は、特に限定されないが、化合物(II)1モルに対して、例えば、0.5~20モル、好ましくは、1~10モル、より好ましくは、1.2~5モルのウロニウム系縮合剤を使用することができる。
【0019】
工程(a)及び工程(b)において使用される溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリルなど)、エーテル類(テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなど)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼンなど)、エステル類(酢酸エチル、酢酸イソプロピルなど)、極性溶媒類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドなど)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレンなど)、ピリジン類(ピリジン、ピコリンなど)又はこれらの混合溶媒が挙げられる。
これらの中でも、各工程で得られる化合物(I)のそれぞれの純度の観点から、ケトン類又はエステル類が好ましく、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル又は酢酸イソプロピルがより好ましく、アセトン、又は酢酸エチルが特に好ましい。溶媒の使用量は、各工程の反応が進行する限り特に限定されないが、化合物(II)に対して、例えば、1.0~30倍量(V/W)、好ましくは、5.3~20倍量(V/W)、より好ましくは5.3~10倍量(V/W)である。
【0020】
工程(a)及び工程(b)において、式(II)として表される化合物の塩及び/又は式(III)として表される化合物の塩を用いる場合は、場合によって塩基を使用してもよい。工程(a)及び工程(b)において使用される塩基としては、特に限定されないが、例えば、トリエチルアミン、N-メチルモルホリン又はジアザビシクロウンデンセン等を使用することができる。工程(a)及び工程(b)において、塩基を使用する場合は、塩基は1種でもよく、2種以上であってもよい。工程(a)及び工程(b)における塩基の使用量は、特に限定されないが、化合物(II)の塩1モルに対して、例えば、0.5~20モル、好ましくは、1~10モル、より好ましくは、1~5モルの塩基を使用することができる。
【0021】
工程(a)の反応形態について、化合物(II)、化合物(III)、カルボジイミド系縮合剤、縮合反応用添加剤及び溶媒の添加の順序は、特に限定されず、任意の順序で添加及び混合すればよい。化合物(II)、化合物(III)、カルボジイミド系縮合剤、縮合反応用添加剤、及び溶媒の反応系への添加は、一度に又は分割して行ってもよいし、連続的であってもよい。例えば、添加の順序としては、全ての成分を一度に混合してもよいし、或いは、一部の成分を後で添加してもよく、このような添加の具体例としては、例えば、化合物(II)及び溶媒を混合し、そこに化合物(III)、カルボジイミド系縮合剤及び縮合反応用添加剤を順次添加する、などが挙げられる。
【0022】
工程(b)の反応形態について、化合物(II)、化合物(III)、ウロニウム系縮合剤及び溶媒の添加の順序は、特に限定されず、任意の順序で添加及び混合すればよい。化合物(II)、化合物(III)、ウロニウム系縮合剤及び溶媒の反応系への添加は、一度に又は分割して行ってもよいし、連続的であってもよい。例えば、添加の順序としては、全ての成分を一度に混合してもよいし、或いは、一部の成分を後で添加してもよく、このような添加の具体例としては、例えば、化合物(II)及び溶媒を混合し、そこに化合物(III)及びウロニウム系縮合剤を順次添加する、などが挙げられる。
【0023】
工程(a)及び工程(b)において、塩基を使用する場合は、塩基の添加の順序は、特に限定されず、任意の順序で添加及び混合すればよい。塩基の反応系への添加は、一度又は分割して行ってもよいし、連続的であってもよい。
【0024】
工程(a)及び工程(b)の反応温度は、通常、0~50℃程度、好ましくは、20~40℃程度である。工程(a)及び工程(b)の反応時間は、通常、10分間~24時間程度、好ましくは、1~16時間程度、より好ましくは、1~5時間程度、特に好ましくは、1~3時間程度である。
【0025】
工程(a)及び工程(b)において、各工程の反応の終了後、例えば、中和、抽出、洗浄、及び乾燥などの常法による後処理を行うことにより化合物(I)を得る。これらの常法による後処理を1種または2種以上を適宜選択し、化合物(I)を単離することができる。また、その後、必要により、再結晶、及びリパルプなどの常法により、化合物(I)を精製してもよい。なお、化合物(I)を単離することなく、又は単離された化合物(I)を精製することなく、得られた化合物(I)をそのまま次の反応に使用することもできる。
【0026】
本発明の製造方法により得られる化合物(I)の純度は、工程(a)又は工程(b)の反応溶液及び/又は精製後に得られる化合物(I)をHPLCを用いて分析し、得られた面積%により判断できる。本発明の製造方法により得られる化合物(I)の純度は、通常、HPLCによる分析結果で80面積%以上、好ましくは、90面積%以上、より好ましくは、95面積%以上である。このような化合物(I)を使用してシクラニリプロールを製造することにより、農薬原体としての規格を満たす高純度のシクラニリプロールを製造することができる。
【0027】
本発明の方法における種々の構成要素は、前述した複数の例示や条件の中から、例えば、前述した通常範囲の例示及び条件だけでなく好ましい範囲の例示及び条件の中から適宜選択し、かつ、相互に組み合わせることができる。
【0028】
以下に本発明の好ましい実施形態の一例を列記するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[1]式(I):
【0029】
【化4】
で表される化合物又はその塩の製造方法であって、
(a)溶媒、カルボジイミド系縮合剤及び縮合反応用添加剤の存在下で、
式(II):
【0030】
【化5】
で表される化合物又はその塩と
式(III):
【0031】
【化6】
で表される化合物又はその塩とを反応させる工程、又は
(b)溶媒及びウロニウム系縮合剤の存在下で、式(II)で表される化合物又はその塩と化合物(III)で表される化合物又はその塩とを反応させる工程を特徴とする、製造方法。
[2]前記カルボジイミド系縮合剤がN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩及びN,N’-ジイソプロピルカルボジイミドからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、[1]に記載の製造方法。
[3]前記縮合反応用添加剤がヒドロキシトリアゾール(例えば、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール)、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エチル、及びシアノグリオキシル酸エチルオキシムからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4]前記ウロニウム系縮合剤が1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-ベンゾトリアゾリウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート、及び(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロホスファートからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、[1]に記載の製造方法。
【実施例0032】
次に本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。なお、明細書において、室温は、15~30℃を意味する。
【0033】
・化合物(Ia):
【0034】
【化7】
【0035】
・化合物(IIa):
【0036】
【化8】
【0037】
・化合物(IIIa)
【0038】
【化9】
・化合物(IIIb)
【0039】
【化10】
【0040】
本実施例におけるHPLCの分析条件は以下の通りである。
・使用機器:株式会社島津製作所製Nexera XSシリーズ
・カラム:株式会社クロマニックテクノロジーズ製SunShell C18(2.6μm、2.1×100mm)
・検出:UV検出器(240nm)
・カラム温度:40℃
・流速:0.5mL/min
・移動相:A液:0.1%ギ酸水溶液、及びB液:アセトニトリル
グラジエント条件は以下の通りである。
【0041】
【表1】
【0042】
(1)化合物(I)の合成
[実験例1]
化合物(IIa)20g、化合物(IIIa)9.9g、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物1.8g及びアセトン100mLの混合液に、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド24.1gが溶解したアセトン溶液20mLを添加した。添加終了後に、室温下で2時間攪拌し反応溶液を得た。得られた反応溶液をHPLCにて反応チェックを行ったところ、化合物(Ia)が98.3面積%で生成していた。その後、前記反応溶液の温度を40~45℃になるように水浴で調節し、同温度で1時間攪拌した。減圧ろ過後にアセトンで洗浄し、ろ液を得た。得られたろ液を減圧濃縮し、結晶を析出させた。得られた結晶をアセトンと水の混合溶媒で洗浄し、温風で乾燥後、結晶として化合物(Ia)28.1gを定量的に得たことを確認した。反応溶液のHPLCの分析結果から、高純度の化合物(Ia)が高収率で得られたことが分かった。
【0043】
[実験例2]
化合物(IIa)10g、化合物(IIIa)6.0g、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物0.89g及びアセトン60mLの混合液に、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩13.4gを添加した。添加終了後に、室温下で3時間撹拌し反応溶液を得た。反応溶液をHPLCにて反応チェックを行ったところ、化合物(Ia)が95.7面積%で生成していた。その後、反応溶液を減圧濃縮し、アセトンと水の混合溶媒を加え、結晶を析出させた。得られた結晶をアセトンと水の混合溶媒で洗浄し、温風で乾燥した。乾燥した結晶をアセトンで洗浄し、温風で乾燥後、結晶として化合物(Ia)10.5g(収率75.5%)を得た。
【0044】
[実験例3]
化合物(IIa)15g、ジメチルホルムアミド80mL、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート39.9g及びN-メチルモルホリン26.5gの混合液に、化合物(IIIb)12.8gを添加した。添加終了後に、室温下で1時間撹拌し反応溶液を得た。反応溶液をHPLCにて反応チェックを行ったところ、化合物(Ia)が生成したことを確認した。
【0045】
[実験例4]
化合物(IIa)0.5g、化合物(IIIa)0.3g、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物0.04g及びアセトニトリル5mLの混合液に、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド0.72gを添加した。添加終了後に室温下で1時間撹拌した後にHPLCにて反応チェックを行ったところ、化合物(Ia)が87.8面積%で生成していた。
【0046】
[実験例5]
化合物(IIa)0.5g、化合物(IIIa)0.3g、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物0.04g及びジクロロメタン5mLの混合液に、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド0.72gを添加した。添加終了後に室温下で16時間撹拌した後にHPLCにて反応チェックを行ったところ、化合物(Ia)が97.8面積%で生成していた。
【0047】
[実験例6]
化合物(IIa)0.5g、化合物(IIIa)0.3g、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物0.04g及び酢酸エチル5mLに、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド0.72gを添加した。添加終了後に室温下で16時間撹拌した後にHPLCにて反応チェックを行ったところ、化合物(Ia)が生成したことを確認した。
【0048】
[実験例7]
化合物(IIa)0.5g、化合物(IIIa)0.3g、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物0.04g及びテトラヒドロフラン5mLの混合液に、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド0.72gを添加した。添加終了後に室温下で16時間撹拌した後にHPLCにて反応チェックを行ったところ、化合物(Ia)が94.9面積%で生成していた。
【0049】
[実験例8]
化合物(IIa)0.5g、化合物(IIIa)0.3g、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物0.04g及びクロロベンゼン5mLの混合液に、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド0.72gを添加した。添加終了後に室温下で10分間撹拌した後にHPLCにて反応チェックを行ったところ、化合物(Ia)が96.2面積%で生成していた。
【0050】
[実験例9]
化合物(IIa)0.5g、化合物(IIIa)0.3g、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物0.04g及びジメチルホルムアミド5mLの混合液に、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド0.72gを添加した。添加終了後に室温下で16時間撹拌した後にHPLCにて反応チェックを行ったところ、化合物(Ia)が83.9面積%で生成していた。
【0051】
[実験例10]
化合物(IIa)1g、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール0.08g、アセトン5mL、及び化合物(IIIa)0.5gの混合液に、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド1.2gが溶解したアセトン溶液5mLを添加した。添加終了後に、室温下で16時間撹拌し反応溶液を得た。得られた反応溶液をHPLCにて反応チェックを行ったところ、化合物(Ia)が96.0面積%で生成していた。
【0052】
[実験例11]
化合物(IIa)1g、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エチル0.08g、アセトン5mL及び化合物(IIIa)0.5gの混合液に、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド1.2gが溶解したアセトン溶液5mLを添加した。添加終了後に、15時間室温で撹拌し反応溶液を得た。得られた反応溶液をHPLCにて反応チェックを行ったところ、化合物(Ia)が90.6面積%で生成していた。
【0053】
(2)比較例
化合物(IIa)1g、化合物(IIIa)0.5g及びアセトン5mLの混合液に、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド1.2gを添加した。添加終了後に室温下で10分間撹拌した後にHPLCにて反応チェックを行ったところ、HPLCのチャート上で原料の化合物(IIa)のピークは消失したが、目的物の化合物(Ia)のピークは確認されず、副生成物のピークを確認できた。縮合反応用添加剤が非存在下でカルボジイミド系縮合剤を用いた反応条件では化合物(Ia)を合成できないことが示唆された。