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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025035066
(43)【公開日】2025-03-13
(54)【発明の名称】アシストグリップ
(51)【国際特許分類】
   B60N 3/02 20060101AFI20250306BHJP
【FI】
B60N3/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023141846
(22)【出願日】2023-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 克彦
(72)【発明者】
【氏名】梅田 豊
(72)【発明者】
【氏名】星島 清人
【テーマコード(参考)】
3B088
【Fターム(参考)】
3B088DA01
3B088DA05
3B088DB02
(57)【要約】
【課題】簡単な構造で取付対象からの突出高さを低くすることが可能なアシストグリップを提供する。
【解決手段】アシストグリップは、帯状の可撓性を有する把持部材と、車両が備える取付対象に取り付けられ、前記把持部材の長手方向の端部を覆うと共に前記端部を前記長手方向に移動可能に保持するブラケットと、を備え、前記ブラケットは、前記取付対象へ締結部材を用いて取り付けるためのボス部を有し、前記把持部材は、前記端部に設けられ、前記ボス部の外周に接することにより前記端部の前記長手方向の移動をガイドするガイド部を有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の可撓性を有する把持部材と、
車両が備える取付対象に取り付けられ、前記把持部材の長手方向の端部を覆うと共に前記端部を前記長手方向に移動可能に保持するブラケットと、
を備え、
前記ブラケットは、前記取付対象へ締結部材を用いて取り付けるためのボス部を有し、
前記把持部材は、前記端部に設けられ、前記ボス部の外周に接することにより前記端部の前記長手方向の移動をガイドするガイド部を有する、
アシストグリップ。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記把持部材の幅方向に対向して配置され、前記長手方向に延びる一対のガイド面である、請求項1に記載のアシストグリップ。
【請求項3】
前記把持部材の前記端部には、前記長手方向に延びる長孔が設けられ、
前記長孔の対向する一対の長辺によって前記一対のガイド面が構成される、請求項2に記載のアシストグリップ。
【請求項4】
前記ブラケットは、前記把持部材の長手方向の端部を覆うカバー部と、前記カバー部の両側にそれぞれ設けられ、前記カバー部と共に前記把持部材の長手方向の端部が出し入れ可能に収められる格納空間を形成する一対の側壁部と、を有し、
前記一対の側壁部には、前記カバー部と反対側の各端部から互いに対向する方向にそれぞれ突出し、前記格納空間に収められた前記把持部材の長手方向の端部が前記カバー部と反対側に抜け出るのを阻止する一対の突起が設けられている、請求項1に記載のアシストグリップ。
【請求項5】
前記一対の突起は、それぞれ前記格納空間の入口側に設けられている、請求項4に記載のアシストグリップ。
【請求項6】
前記把持部材の把持領域における幅が前記一対の突起の先端間の間隔よりも広い、請求項4に記載のアシストグリップ。
【請求項7】
前記把持部材の長手方向の端部側には、前記一対の突起が収まる第一凹部が設けられている、請求項4~請求項6のいずれか1項に記載のアシストグリップ。
【請求項8】
前記把持部材には、前記第一凹部よりも前記長手方向の外側に前記第一凹部につながり前記第一凹部よりも浅い第二凹部が前記把持部材の幅方向に一対設けられており、
前記把持部材の前記端部が前記ブラケットに対して前記長手方向に移動すると、前記一対の突起のそれぞれは、一対の前記第二凹部上を摺動する、請求項7に記載のアシストグリップ。
【請求項9】
前記カバー部から前記突起までの距離は、前記把持部材の厚み以下である、請求項4~請求項8のいずれか1項に記載のアシストグリップ。
【請求項10】
前記把持部材の長手方向の両端部のそれぞれが、前記ブラケットによって覆われる、請求項1に記載のアシストグリップ。
【請求項11】
前記取付対象は、車両用シートである、請求項1に記載のアシストグリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アシストグリップに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、グリップの端部に設けられた長孔がボルトを摺動軸として摺動するアシストグリップが開示されている。
【0003】
特許文献2には、カバーに摺動軸を備え、グリップの摺動孔を取付対象に対して平行に設けたカバン用把手が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-59250号公報
【特許文献2】登録実用新案第3057900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のアシストグリップでは、取付対象への取り付けに複数の部材を用いるため、取付対象からの突出高さが高くなる傾向がある。
【0006】
また、特許文献2のカバン用把手では、摺動孔をカバー内に収納するためカバーの取付対象からの突出高さが高くなる傾向がある。
【0007】
本開示は上記事実を考慮し、簡単な構造で取付対象からの突出高さを低くすることが可能なアシストグリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1態様のアシストグリップは、帯状の可撓性を有する把持部材と、車両が備える取付対象に取り付けられ、前記把持部材の長手方向の端部を覆うと共に前記端部を前記長手方向に移動可能に保持するブラケットと、を備え、前記ブラケットは、前記取付対象へ締結部材を用いて取り付けるためのボス部を有し、前記把持部材は、前記端部に設けられ、前記ボス部の外周に接することにより前記端部の前記長手方向の移動をガイドするガイド部を有する。
【0009】
第1態様のアシストグリップでは、把持部材を把持して引っ張ると、把持部材の端部が長手方向に移動してブラケットから引き出される。このとき把持部材の端部は、ガイド部がボス部の外周に接することによって長手方向の移動がガイドされる。
【0010】
ここで、上記アシストグリップでは、把持部材のガイド部がボス部の外周に接することによって把持部材の端部の長手方向の移動をガイドすることから、例えば、ブラケットにボス部とは別の専用部位を設けて把持部材の端部の移動をガイドする構成と比べて、ブラケットの構造を簡単にできる。
【0011】
また、上記アシストグリップでは、把持部材の端部を覆うブラケットにボス部を設けることから、例えば、ブラケットの内側にガイド部が接する専用部材を設けて把持部材の端部の移動をガイドする構成と比べて、ブラケットの取付対象からの突出高さを低くすることが可能になる。
【0012】
したがって、第1態様のアシストグリップでは、簡単な構造で取付対象からの突出高さを低くすることが可能になる。
【0013】
本開示の第2態様のアシストグリップは、第1態様のアシストグリップにおいて、前記ガイド部は、前記把持部材の幅方向に対向して配置され、前記長手方向に延びる一対のガイド面である。
【0014】
第2態様のアシストグリップでは、ガイド部を把持部材の長手方向に延びる一対のガイド面とすることから、ボス部の外周が一対のガイド面に接することにより把持部材に対してブラケットが把持部材の幅方向に移動するのが阻止される。
【0015】
本開示の第3態様のアシストグリップは、第2態様のアシストグリップにおいて、前記把持部材の前記端部には、前記長手方向に延びる長孔が設けられ、前記長孔の対向する一対の長辺によって前記一対のガイド面が構成される請求項2に記載のアシストグリップ。
【0016】
第3態様のアシストグリップでは、把持部材の長手方向の端部に設けられた長孔の対向する一対の長辺によって一対のガイド面が構成される。すなわち、把持部材に長孔を成形することで一対のガイド面を設けることができる。このため、把持部材に対する一対のガイド面38Aの成形が容易になる。
【0017】
本開示の第4態様のアシストグリップは、第1態様~第3態様のいずれか一態様のアシストグリップにおいて、前記ブラケットは、前記把持部材の長手方向の端部を覆うカバー部と、前記カバー部の両側にそれぞれ設けられ、前記カバー部と共に前記把持部材の長手方向の端部が出し入れ可能に収められる格納空間を形成する一対の側壁部と、を有し、前記一対の側壁部には、前記カバー部と反対側の各端部から互いに対向する方向にそれぞれ突出し、前記格納空間に収められた前記把持部材の長手方向の端部が前記カバー部と反対側に抜け出るのを阻止する一対の突起が設けられている。
【0018】
第4態様のアシストグリップでは、ブラケットの格納空間に把持部材の長手方向の端部が収められている。そして、把持部材の長手方向の端部は、一対の突起によりブラケットの格納空間に収められた状態が保持される。このようにアシストグリップでは、把持部材の長手方向の端部がブラケットの格納空間に収められた状態(仮保持状態)が保持されるため、搬送時等に把持部材の端部からブラケットが脱落するのが抑制される。
【0019】
本開示の第5態様のアシストグリップは、第4態様のアシストグリップにおいて、前記一対の突起は、それぞれ前記格納空間の入口側に設けられている。
【0020】
第5態様のアシストグリップでは、一対の突起をそれぞれ格納空間の入口側に設けていることから、例えば、一対の突起をそれぞれ格納空間の奥側に設ける構成と比べて、把持部材の長手方向の端部を所定位置まで格納空間から引き出した状態でも、把持部材の長手方向の端部が一対の突起によりブラケットの格納空間に収められた状態が保持される。
【0021】
本開示の第6態様のアシストグリップは、第4態様又は第5態様のアシストグリップにおいて、前記把持部材の把持領域における幅が前記一対の突起の先端間の間隔よりも広い。
【0022】
第6態様のアシストグリップでは、把持部材の把持領域における幅を一対の突起の先端間の間隔よりも広くすることで、搬送時において、格納空間に収められた把持部材の長手方向の端部がブラケットの格納空間におけるカバー部と反対側の開口から抜け出る、すなわち、把持部材からブラケットが脱落するのが抑制される。
【0023】
本開示の第7態様のアシストグリップは、第4態様~第6態様のいずれか一態様のアシストグリップにおいて、前記把持部材の長手方向の端部側には、前記一対の突起が収まる第一凹部が設けられている。
【0024】
第7態様のアシストグリップでは、把持部材にブラケットを取り付けると一対の突起が第一凹部に収まるため、搬送時において格納空間に収められた把持部材の長手方向の端部がブラケットの格納空間の入口から抜け出る、すなわち、把持部材からブラケットが脱落するのが抑制される。
【0025】
本開示の第8態様のアシストグリップは、第7態様のアシストグリップにおいて、前記把持部材には、前記第一凹部よりも前記長手方向の外側に前記第一凹部につながり前記第一凹部よりも浅い第二凹部が前記把持部材の幅方向に一対設けられており、前記把持部材の前記端部が前記ブラケットに対して前記長手方向に移動すると、前記一対の突起のそれぞれは、一対の前記第二凹部上を摺動する。
【0026】
第8態様のアシストグリップでは、把持部材の長手方向の端部がブラケットに対して移動すると、一対の突起のそれぞれが一対の第二凹部上を摺動する。このため、アシストグリップでは、例えば、第一凹部につながる第二凹部が設けられない構成と比べて、把持部材の長手方向の端部をブラケットに対して移動させる際の操作感の低下を抑制することができる。
【0027】
本開示の第9態様のアシストグリップは、第4態様~第8態様のいずれか一態様のアシストグリップにおいて、前記カバー部から前記突起までの距離は、前記把持部材の厚み以下である。
【0028】
第9態様のアシストグリップでは、カバー部から突起までの距離を把持部材の厚み以下とすることで、搬送時において格納空間に収められた把持部材の長手方向の端部がブラケットの格納空間の入口から抜け出る、すなわち、把持部材からブラケットが脱落するのが抑制される。
【0029】
本開示の第10態様のアシストグリップは、第1態様~第9態様のいずれか一態様のアシストグリップにおいて、前記把持部材の長手方向の両端部のそれぞれが、前記ブラケットによって覆われる。
【0030】
第10態様のアシストグリップでは、把持部材の長手方向の両端部のそれぞれをブラケットによって覆う、すなわち、把持部材の両端部のそれぞれにブラケットを取り付けることから、把持部材の引き出し量を増やすことができる。
【0031】
本開示の第11態様のアシストグリップは、第1態様~第10態様のいずれか一態様のアシストグリップにおいて、前記取付対象は、車両用シートである。
【0032】
第11態様のアシストグリップでは、取付対象を車両用シートとしているため、着座した乗員が起き上がるときや前に倒した背もたれを持ち上げるとき等に有効に利用することができる。
【発明の効果】
【0033】
本開示によれば、簡単な構造で取付対象からの突出高さを低くすることが可能なアシストグリップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本開示の一実施形態に係るアシストグリップを取付対象に取り付けた状態を示す斜視図である。
図2図1に示すアシストグリップの斜視図である。
図3図1に示すアシストグリップを把持して引っ張っている状態を示す側面図である。
図4図2に示すアシストグリップの平面図(表面から見た図)である。
図5図2に示すアシストグリップの背面図(裏面から見た図)である。
図6図5の矢印6Xで指し示す部分の拡大図である。
図7図2に示すアシストグリップの側面図である。
図8図4に示すアシストグリップの8X-8X線端面図である。
図9図4に示すアシストグリップの9X-9X線端面図である。
図10図6に示すアシストグリップの10X-10X線断面図である。
図11】取付対象を二点鎖線で示したアシストグリップの端面図(図8に対応する端面図)である。
図12】その他の実施形態のアシストグリップの要部を示す斜視図である。
図13図12に示すアシストグリップの端面図である。
図14】その他の実施形態のアシストグリップの要部の拡大断面斜視図である。
図15】その他の実施形態のアシストグリップの要部の拡大断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本開示を実施するための形態を図面に基づき説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一又は同様の構成要素であることを意味する。なお、以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。また、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0036】
[アシストグリップ20]
本実施形態のアシストグリップ20は、図1に示されるように、車両100が備える取付対象102に取り付けられて使用される。取付対象102としては、例えば、車両用シートが挙げられる。本実施形態のアシストグリップ20は、一例として、車両用シートの背面、具体的には、リアシートの背面に取り付けられる。このアシストグリップ20は、リアシートのシートアレンジの際に使用者が把持する部分として用いられる。なお、本開示のアシストグリップの用途は上記に限定されない。アシストグリップ20は、例えば、車室内側に設置されるグリップとして用いてもよいし、ラッゲージスペースの床下収納の蓋等に用いてもよい。
【0037】
図2及び図4に示されるように、アシストグリップ20は、把持部材30と、一対のブラケット50と、を備える。
【0038】
(把持部材30)
図2図4及び図5に示されるように、把持部材30は、帯状で可撓性を有する。この把持部材30は、長手方向の中央部32と、長手方向の両側の端部34とを有する。把持部材30の中央部32は、使用者が把持する部分であり、把持領域ともいう。把持部材30の端部34は、ブラケット50に保持される部分である。なお、把持部材30の長手方向を以下では単に長手方向Xという。また把持部材30の幅方向を以下では幅方向Yという。さらに把持部材30の厚み方向を以下では厚み方向Zという。また、把持部材30の長手方向Xの外側という場合は、把持部材30の長手方向Xの中央から遠い側を指す。
【0039】
本実施形態の把持部材30は、図6に示されるように、中央部32における幅方向Yに沿った幅W1よりも端部34における幅方向Yに沿った幅W2が広くなっている。また端部34における中央部32側の部分は、中央部32から徐々に幅が広がる拡径部35とされている。本実施形態では、把持部材30の両側の端部34の構成が同じため、片側の端部34の構成を代表して説明する。
【0040】
把持部材30の端部34には、図6に示されるように、ガイド部36が設けられている。このガイド部36は、後述するブラケット50のボス部56の外周に接することにより端部34の長手方向Xの移動をガイドする機能を有する。具体的には、ガイド部36は、幅方向Yに対向して配置され、長手方向Xに沿って延びる一対のガイド面38Aである。より具体的には、把持部材30の端部34には、長手方向Xに延びる長孔38が設けられており、この長孔38の対向する一対の長辺によって一対のガイド面38Aが構成されている。なお、本実施形態では、長孔38の一対の長辺を一対のガイド面38Aとしているが、本開示はこの構成に限定されない。例えば、長孔38の代わりに長方形の貫通孔の一対の長辺を一対のガイド面38Aとしてもよい。
【0041】
また、把持部材30の端部34には、図6及び図10に示されるように、ブラケット50の後述する一対の突起58が収まる第一凹部40が設けられている。具体的には、第一凹部40は、把持部材30の裏面に設けられている。ここで把持部材30の裏面とは、アシストグリップ20を取付対象102に取り付けた状態における取付対象102側の面を指す。なお、把持部材30の表面とは、アシストグリップ20を取付対象102に取り付けた状態における取付対象102と反対側の面を指す。なお、以下において単に「表面」、「裏面」というときは、アシストグリップ20を取付対象102に取り付けた状態における取付対象102側の面、取付対象102側と反対側の面を指す。第一凹部40は、端部34の裏面において拡径部35側に設けられている。また第一凹部40は、端部34の幅方向Yの一端から他端まで直線状に延びている。すなわち、第一凹部40は、幅方向Yに延びる溝である。
【0042】
把持部材30には、図6及び図10に示されるように、第一凹部40よりも長手方向Xの外側に第一凹部40につながり第一凹部40よりも浅い第二凹部42が幅方向Yに一対設けられている。具体的には、一対の第二凹部42は、端部34の裏面において第一凹部40よりも長手方向Xの外側に幅方向Yに間隔をあけてそれぞれ設けられている。より具体的には、一対の第二凹部42は、端部34の幅方向Yの両端部にそれぞれ設けられている。また一対の第二凹部42は、長手方向Xにそれぞれ延びている。具体的には、第二凹部42の長手方向Xに沿った長さは、第一凹部40の長手方向に沿った長さよりも長くなっている。
【0043】
本実施形態の把持部材30は、樹脂材料によって構成される。一例として、把持部材30は、樹脂の一体成型品である。
【0044】
(ブラケット50)
図11に示されるように、ブラケット50は、取付対象102に取り付けられ、把持部材30の端部34を覆うと共に端部34を長手方向Xに移動可能に保持する機能を有する。なお、本実施形態では、把持部材30の両側の端部34のそれぞれが一対のブラケット50によって覆われると共に長手方向Xに移動可能に保持される。
【0045】
ブラケット50は、図2図5及び図9に示されるように、カバー部52と、一対の側壁部54と、ボス部56とを有する。
【0046】
カバー部52は、図2及び図9に示されるように、ブラケット50において、把持部材30の端部34を覆う部分である。具体的には、カバー部52は、端部34の表面を覆う。
【0047】
一対の側壁部54は、図9に示されるように、ブラケット50において、カバー部52の幅方向Yの両側にそれぞれ設けられて格納空間Sを形成する部分である。この格納空間Sは、把持部材30の端部34が出し入れ可能に収められる空間である。
【0048】
ボス部56は、図11に示されるように、ブラケット50を取付対象102へ締結部材104を用いて取り付けるための部分である。具体的には、ボス部56は、カバー部52の裏面から突出する筒部である。本実施形態では、一例として、ボス部56は円筒部であるが、ボス部56の形状はこれに限定されない。なお、締結部材104は、ブラケット50を取付対象102へ取り付ける部材であれば特に限定されない。例えば、締結部材104としてねじ部材を用いてもよいし、リベットを用いてもよい。
【0049】
またボス部56の内部空間56Aは、図9に示されるように、カバー部52の表面に設けられた穴53に連通している。なお、ボス部56の内径(内部空間56Aの径)は、穴53の穴径よりも小径である。そのため、穴53とボス部56との間に段差57が形成されている。この段差57は、締結部材104がねじ部材の場合にねじ頭の座となる部分である。なお、ねじ部材の雄ねじ部は、ボス部56の内部空間56Aを貫通し、先端部が取付対象102に設けられた雌ねじ部106にねじ込まれる。なお、本実施形態では、一例として雌ねじ部106は取付対象102に固着されたナットによって構成される。このように締結部材104によってブラケット50が取付対象102に取り付けられる。また、ボス部56の内部空間56Aには、補強としてカラー59が嵌め込まれている。なお、カラー59は省略してもよい。
【0050】
またボス部56は、図6及び図9に示されるように、把持部材30の長孔38に挿入される。具体的には、把持部材30の端部34がブラケット50の格納空間Sに収められた状態では、ボス部56が端部34の長孔38に挿入される。ブラケット50を取付対象102に取り付けた状態では、ボス部56が長孔38に挿入されていることから、固定されたブラケット50によって把持部材30の端部34が長手方向Xに移動可能に保持される。また、前述したように、把持部材30の端部34は、ガイド部36がブラケット50のボス部56の外周に接することにより長手方向Xの移動がガイドされる。
【0051】
またブラケット50は、図6及び図10に示されるように、一対の突起58を有する。一対の突起58は、それぞれ一対の側壁部54に設けられており、格納空間Sに収められた把持部材30の端部34がカバー部52と反対側に抜け出るのを阻止する機能を有する。具体的には、一対の突起58は、一対の側壁部54のカバー部52と反対側の各端部から互いに対向する方向にそれぞれ突出している。さらに一対の突起58は、それぞれ格納空間Sの入口側に設けられている。また、把持部材30の把持領域における幅W1が一対の突起58における先端間の間隔W3よりも広くなっている。このため、ボス部56が長孔38に挿入されていない状態でも、把持部材30の把持領域に一対の突起58が干渉することで、搬送時において把持部材30からブラケット50が脱落するのが抑制される。
【0052】
また、把持部材30の端部34がブラケット50に対して長手方向Xに移動すると、一対の突起58のそれぞれは、一対の第二凹部42上を摺動する。
【0053】
また一対の側壁部54のうち一方の側壁部54には、図6に示されるように、小突起60が設けられている。小突起60は、格納空間Sに収められた把持部材30の端部34がカバー部52と反対側に抜け出るのを阻止する機能を有する。具体的には、小突起60は、一方の側壁部54のカバー部52と反対側の端部から他方の側壁部54に向けて突出している。小突起60は、格納空間Sの奥側に設けられている。具体的には、小突起60は、一対の突起58よりも格納空間Sの奥側に設けられている。小突起60の突出高さは、突起58の突出高さよりも低くなっている。把持部材30の端部34に小突起60が干渉することで、把持部材30の端部34がブラケット50の格納空間Sに収められた状態を維持することができる。なお、本開示はこの構成に限定されず、一対の側壁部54にそれぞれ小突起60を設ける構成としてもよい。
【0054】
また図10に示されるように、把持部材30の端部34がブラケット50の格納空間Sに収められた状態において、カバー部52から突起58までの距離Lは、把持部材30の中央領域(中央部32)の厚みT以下としてもよいし、厚みTよりも若干大きい値としてもよい。なお、本実施形態の把持部材30は、一例として中央部32及び端部34における厚みが略同じである(ただし、端部34の凹要素は除く)。
【0055】
本実施形態のブラケット50は、樹脂材料によって構成される。一例として、ブラケット50は、樹脂の一体成型品である。なお、把持部材30を構成する樹脂材料とブラケット50を構成する樹脂材料は同じでも異なっていてもよい。把持部材30とブラケット50は、各々の特徴に応じた樹脂材料で構成することが好ましい。
【0056】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態のアシストグリップ20では、把持部材30の中央部32を把持して引っ張ると、把持部材30の端部34が長手方向Xに移動してブラケット50の格納空間Sから引き出される。また把持部材30の中央部32が反発力により元の状態に戻る際に、把持部材30の端部34が長手方向Xに移動してブラケット50の格納空間Sに押し戻される。このとき把持部材30の端部34は、ガイド部36がボス部56の外周に接することによって長手方向Xの移動がガイドされる。
【0057】
ここで、アシストグリップ20では、把持部材30のガイド部36がボス部56の外周に接することによって把持部材30の端部34の長手方向Xの移動をガイドすることから、例えば、ブラケット50にボス部とは別の専用部位を設けて把持部材30の端部34の移動をガイドする構成と比べて、ブラケット50の構造を簡単にできる。
【0058】
また、アシストグリップ20では、把持部材30の端部34を覆うブラケット50にボス部56を設けることから、例えば、ブラケット50の内側にガイド部36が接する専用部材を設けて把持部材30の端部34の移動をガイドする構成と比べて、ブラケット50の取付対象102からの突出高さを低くすることが可能になる。
【0059】
したがって、本実施形態のアシストグリップ20では、簡単な構造で取付対象102からの突出高さを低くすることが可能になる。ここで、アシストグリップ20において、取付対象102からの突出高さが低くなると、車両用シートの背もたれを前に倒したシート格納状態においてシート背面への荷物の積み下ろしをする際に、アシストグリップ20に荷物が引掛りにくくなる。また、取付対象102からの突出高さが低くなることでアシストグリップ20の見栄えが向上する。
【0060】
またアシストグリップ20では、ガイド部36を把持部材30の長手方向に延びる一対のガイド面38Aとすることから、ボス部56の外周が一対のガイド面38Aに接することにより把持部材30に対してブラケット50が幅方向Yに移動するのが阻止される。
【0061】
またアシストグリップ20では、把持部材30の端部34に設けられた長孔38の対向する一対の長辺によって一対のガイド面38Aが構成される。すなわち、把持部材30の端部34に長孔38を成形することで端部34に一対のガイド面38Aを設けることができる。このため、把持部材30に対する一対のガイド面38Aの成形が容易になる。
【0062】
またアシストグリップ20では、ブラケット50の格納空間Sに把持部材30の端部34が収められている。そして、把持部材30の端部34は、一対の突起58によりブラケット50の格納空間Sに収められた状態が保持される。このようにアシストグリップ20では、把持部材30の端部34がブラケット50の格納空間に収められた状態(仮保持状態)が保持されるため、搬送時等に把持部材30の端部34からブラケット50が脱落するのが抑制される。
【0063】
またアシストグリップ20では、一対の突起58をそれぞれ格納空間Sの入口側に設けていることから、例えば、一対の突起58をそれぞれ格納空間の奥側に設ける構成と比べて、把持部材30の端部34を所定位置まで格納空間Sから引き出した状態でも、把持部材30の端部34が一対の突起58によりブラケット50の格納空間Sに収められた状態が保持される。
【0064】
またアシストグリップ20では、一対の突起58における先端間の間隔W3よりも、把持部材30の把持領域(中央部32)における幅W1を広くすることで、搬送時において、格納空間Sに収められた把持部材30の端部34がブラケット50の格納空間Sにおけるカバー部52と反対側の開口から抜け出る、すなわち、把持部材30からブラケット50が脱落するのが抑制される。
【0065】
またアシストグリップ20では、把持部材30にブラケット50を取り付けると一対の突起58が第一凹部40に収まるため、搬送時において、格納空間Sに収められた把持部材30の端部34がブラケット50の格納空間Sの入口から抜け出る、すなわち、把持部材30からブラケット50が脱落するのが抑制される。
【0066】
またアシストグリップ20では、把持部材30の端部34がブラケット50に対して移動すると、一対の突起58のそれぞれが一対の第二凹部42上を摺動する。このため、アシストグリップ20では、例えば、第一凹部40につながる第二凹部42が設けられない構成と比べて、把持部材30の端部34をブラケット50に対して移動させる際の操作感の低下を抑制することができる。
【0067】
またアシストグリップ20では、カバー部52から突起58までの距離Lを把持部材30の把持領域における厚みTよりも若干大きい値とした場合、カバー部52と突起58との間に把持部材30を通しやすく、かつ、搬送時において格納空間Sに収められた把持部材30の端部34がブラケット50の格納空間Sの入口から抜け出る、すなわち、把持部材30からブラケット50が脱落するのが抑制される。一方、アシストグリップ20では、距離Lを厚みT以下とした場合、搬送時において把持部材30からブラケット50が脱落するのがより効果的に抑制される。
【0068】
またアシストグリップ20では、把持部材30の両側の端部34のそれぞれをブラケット50によって覆う、すなわち、把持部材30の両側の端部34のそれぞれにブラケット50を取り付けることから、例えば、片側の端部のみにブラケット50を取り付ける構成と比べて、把持部材30の引き出し量を増やすことができる。これにより、使用者が把持部材30を把持しやすくなる。
【0069】
またアシストグリップ20では、取付対象102を車両用シートとしているため、着座した乗員が起き上がるときや前に倒した背もたれを持ち上げるとき等に有効に利用することができる。
【0070】
(その他の実施形態)
前述の実施形態では、把持部材30の端部34に第一凹部40を設けているが、本開示はこの構成に限定されない。例えば、図12及び図13に示すアシストグリップ70のように第一凹部40の代わりに弾性変形可能な凸部72を幅方向Yに間隔をあけて一対設けてもよい。一対の突起58がそれぞれ一対の凸部72に当たることでブラケット50が把持部材30の中央部32上を移動するのが抑制される。すなわち、把持部材30に対してブラケット50の仮保持状態が解除されるのを抑制することができる。
【0071】
前述の実施形態では、ブラケット50の一対の突起58が把持部材30の端部34の第一凹部40に収まるように構成しているが、本開示はこの構成に限定されない。例えば、図14に示すアシストグリップ80のように突起58、第一凹部40及び第二凹部42の代わりに軸部材82をブラケット50の側壁部54に設けられた貫通孔に挿入し、端部34を幅方向Yに貫通する長孔84に挿入する構成としてもよい。この構成でも把持部材30の端部34にブラケット50が仮保持される。
また、図15に示すアシストグリップ90のように突起58の代わりに突起58、第一凹部40、第二凹部42及びカラー59の代わりにフランジ付きカラー92をボス部56の内部空間56Aに圧入する構成としてもよい。この構成でも把持部材30の端部34にブラケット50が仮保持される。
【0072】
前述の実施形態では、把持部材30の両側の端部34にそれぞれブラケット50を取り付ける構成としているが、本開示はこの構成に限定されない。例えば、把持部材30の片側の端部34にのみブラケット50を取り付ける構成としてもよい。
【0073】
また前述の実施形態では、把持部材30の端部34に長孔38を設けているが、本開示はこの構成に限定されない。例えば、把持部材30の端部34に長手方向X外側に向けて開口を有する切欠きを設け、この切欠きの対向する面を一対のガイド面(ガイド部)としてもよい。
【0074】
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0075】
20 アシストグリップ
30 把持部材
32 中央部
34 端部
35 拡径部
36 ガイド部
38 長孔
38A ガイド面
40 第一凹部
42 第二凹部
50 ブラケット
52 カバー部
53 穴
54 側壁部
56 ボス部
56A 内部空間
57 段差
58 突起
60 小突起
100 車両
102 取付対象
104 締結部材
106 雌ねじ部
S 格納空間
L 距離
T 厚み
W1 中央部の幅
W2 端部の幅
W3 一対の突起の先端間の間隔
X 長手方向
Y 幅方向
Z 厚み方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15