(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025035081
(43)【公開日】2025-03-13
(54)【発明の名称】輸液ポンプ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20250306BHJP
【FI】
A61M5/142 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023141873
(22)【出願日】2023-08-31
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】390029676
【氏名又は名称】株式会社トップ
(74)【代理人】
【識別番号】100159628
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 雅比呂
(72)【発明者】
【氏名】平 胤之
(72)【発明者】
【氏名】前迫 文男
(72)【発明者】
【氏名】杉江 隼人
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD16
4C066QQ15
4C066QQ47
4C066QQ82
(57)【要約】
【課題】
ドアの開閉状態にかかわらずフリーフローを防止可能な輸液ポンプを提供する
【解決手段】
ポンプ部10を有する輸液ポンプ本体2と、輸液ポンプ本体2に対して開閉自在に配置されたドア4と、ドア4が開いた状態で輸液チューブ100を閉塞させ、ドア4が閉じた状態で輸液チューブ100の閉塞を解除するチューブクランプ機構5と、を有し、チューブクランプ機構5は、ドア4の内面に配置され先端に傾斜面を有する解除突起42と、輸液ポンプ本体2に配置され先端面に曲面部524を有し、解除突起42の傾斜面が曲面部524を押圧していない状態では受け部材514に対して閉じて輸液チューブ100を閉塞し、解除突起42の傾斜面が曲面部524を押圧した状態では受け部材514に対して開いて輸液チューブ100を開放するクランプ部材52と、を有する構成の医療用ポンプとした。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸液チューブにより液状物を送出する医療用ポンプであって、
ポンプ部を有する輸液ポンプ本体と、
前記輸液ポンプ本体に対して開閉自在に配置されたドアと、
前記ドアが開いた状態で前記輸液チューブを閉塞させ、前記ドアが閉じた状態で前記輸液チューブの閉塞を解除するチューブクランプ機構と、を有し、
前記チューブクランプ機構は、
前記ドアの内面に配置され先端に傾斜面を有する解除突起と、
前記輸液ポンプ本体に配置され先端面に曲面部を有し、前記解除突起の傾斜面が前記曲面部を押圧していない状態では受け部材に対して閉じて前記輸液チューブを閉塞し、前記解除突起の傾斜面が前記曲面部を押圧した状態では受け部材に対して開いて前記輸液チューブを開放するクランプ部材と、を有することを特徴とする医療用ポンプ。
【請求項2】
前記クランプ部材は、前記先端面に前記曲面部に連続して形成された斜面部を有し、
前記解除突起の前記傾斜面と接する前記先端面が前記曲面部から前記斜面部に切り換わる状態の時に前記クランプ部材の開度が最大になることを特徴とする請求項1に記載の医療用ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用の輸液ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場において、輸液チューブ内の薬液を送液する医療用の輸液ポンプが利用されている。輸液ポンプは薬液バッグと接続された輸液チューブを保持し、その輸液チューブの外周面を複数のフィンガの押圧動作によって送液を行うポンプ機構を備えている(特許文献1参照)。
【0003】
輸液ポンプは本体とドアの間に輸液チューブを保持し、ポンプ機構のフィンガとドアの裏面に設けられたバックプレートとの間に輸液チューブを挟み、個々のフィンガを蠕動運動のように順次作動させることで輸液を送出している。
【0004】
このような従来の輸液ポンプでは、ポンプ動作が停止し、ドアが閉じている状態ではいずれかのフィンガが輸液チューブを押圧している為、輸液チューブ内の液体が自由に流れることはない。一方、ドアが開放されると、フィンガによる輸液チューブの押圧が開放され、輸液チューブ内の液体が患者に対してフリーに流れ込む(フリーフロー)現象が生じる虞がある。
【0005】
このため、この種の輸液ポンプでは、特許文献1に記載されているような、クリップ等を用いてフリーフローを防止している。
【0006】
上記のようなクリップを用いるメリットは、あらかじめ輸液ラインに装着した状態で、輸液ポンプに取り付けることができる点であるが、クリップを取り外し可能とする為、フリーフロー防止機構の構造が複雑になるという問題がある。また、クレンメなどを実装している場合には、クリップはなくても問題ない。
【0007】
このため、例えば
図22に示すような、クリップを介さずに直接輸液チューブを閉塞するフリーフロー防止機構も考案されている。
【0008】
図示例のフリーフロー防止機構であるチューブクランプ(500)は、輸液ポンプ本体(2)側に設けられた、開閉動作を行うクランプレバー(520)と、このクランプレバー(520)と協働してチューブを挟む受け部材(514)と、クランプレバー(520)を受け部材(514)に向けて付勢する押圧バネ部材(550)と、を有する。
【0009】
図示例は、ドア(4)が閉じられている状態を示しており、ドア(4)の内側に設けられている解除突起(42)の先端傾斜斜面により、クランプレバー(520)の先端傾斜面(523A)が押圧され、押圧バネ部材(550)の力に抗して回動軸(601)を中心にして図面左方向に移動し、受け部材(514)との間が開いた状態になっている。クランプレバー(520)と、受け部材(514)との間には、輸液チューブ(100)が配置されている。
【0010】
一方、ドア(4)が開くと、解除突起(42)の押圧力が無くなり、押圧バネ部材(550)の付勢力により、クランプレバー(520)は受け部材(514)方向に移動して閉じた状態になり、それらの間に位置している輸液チューブ100は閉塞される。これにより、フリーフローが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、図示例のフリーフロー防止機構はドアの開閉状態と、輸液チューブの閉塞状態とが完全に一致せず、誤ってドアを開けた際に、クランプレバーが作動して輸液チューブを閉塞するタイミングが遅れる場合や、ドアが完全に閉まり蠕動ポンプのフィンガで輸液チューブを閉塞する前にクランプレバーが開いてしまう場合など、ドア開閉時の特定のタイミングでフリーフロー現象が生じる虞があった。
【0013】
本発明の目的は、ドアの開閉状態にかかわらずフリーフローを防止可能な輸液ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)本発明の医療用ポンプは、輸液チューブにより液状物を送出する医療用ポンプであって、
ポンプ部を有する輸液ポンプ本体と、
前記輸液ポンプ本体に対して開閉自在に配置されたドアと、
前記ドアが開いた状態で前記輸液チューブを閉塞させ、前記ドアが閉じた状態で前記輸液チューブの閉塞を解除するチューブクランプ機構と、を有し、
前記チューブクランプ機構は、
前記ドアの内面に配置され先端に傾斜面を有する解除突起と、
前記輸液ポンプ本体に配置され先端面に曲面部を有し、前記解除突起の傾斜面が前記曲面部を押圧していない状態では受け部材に対して閉じて前記輸液チューブを閉塞し、前記解除突起の傾斜面が前記曲面部を押圧した状態では受け部材に対して開いて前記輸液チューブを開放するクランプ部材と、を有することを特徴とする(以下、「第1の本発明の医療用ポンプ」という。)。
【0015】
第1の本発明の医療用ポンプによれば、クランプ部材の先端面に曲面部を有するので、解除突起の傾斜面に押圧されたときのクランプ部材の開度、つまり開く角度の割合を少なく(小さく)することができ、クランプ部材が必要以上に大きく開くことを防止することができる。このため、誤ってドアが開けられた時などに、クランプ部材の閉動作を迅速に行うことができ、フリーフローを防止することができる。
【0016】
また、ドアを閉じるときには、クランプ部材の開動作が少しずつ進行するため、フィンガによる輸液チューブの閉塞が先行して、フリーフローを防止することができる。
【0017】
(2)また、本発明の医療用ポンプは、前記クランプ部材は、前記先端面に前記曲面部に連続して形成された斜面部を有し、
前記解除突起の前記傾斜面と接する前記先端面が前記曲面部から前記斜面部に切り換わる状態の時に前記クランプ部材の開度が最大になることを特徴とする(以下、「第2の本発明の医療用ポンプ」という。)。
【0018】
第2の本発明の医療用ポンプによれば、クランプ部材の先端面には曲面部に連続して斜面部が形成されているので、クランプ部材の開度の設定が容易である。すなわち、解除突起の傾斜面が先端面に接触して押圧する際、曲面部でクランプ部材の開動作を行わせ、斜面部で開動作を終了するので、斜面部の位置を調整することでクランプ部材の開く度合いを調整することができる。このため、必要以上にクランプ部材を開かせることを防止でき、クランプ部材の閉動作を迅速に行うことができ、フリーフローを防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ドアの開閉状態とフリーフロー防止機構の動作を一致させることが可能な輸液ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】チューブクランプの内部構造を下方から見た状態を示した平面図である。
【
図7】ドア側の解除突起の傾斜面がクランプレバーの先端面の曲面部に最初に当接した状態を示す平面図である。
【
図8】ドアが完全に閉じられた際の解除突起の傾斜面がクランプレバーの先端面の斜面部に当接している状態を示す平面図である。
【
図9】閉塞検出機構の構成を示す分解斜視図である。
【
図11】ドアと輸液ポンプ本体の防滴構造を示す断面図である。
【
図12】ドアと輸液ポンプ本体のパッキン部材が配置された周辺の構造を示す断面図である。
【
図16】メインフレームのポンプ部開口部周辺構造を裏側からの視点で示した斜視図である。
【
図17】障壁凸部を有する構成での蠕動ポンプのフィンガと輸液チューブとバックパネルの関係を示した模式図である。
【
図18】障壁凸部が無い構成での蠕動ポンプのフィンガと輸液チューブとバックパネルの関係を示した模式図である。
【
図19】ドアハンドルの概略構成を示す斜視図である。
【
図20】ドアハンドルとロックピンとの位置関係を示す模式図である。
【
図21】(A)は本実施形態のドアハンドルの全体構成を示す平面図、(B)は従来のドアハンドルの全体構成を示す平面図である。
【
図22】従来のチューブクランプの内部構造を下方から見た状態を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の輸液ポンプ1は、例えば
図1に示すように輸液ポンプ本体2とドア4とを備える。
図1は輸液ポンプ1の全体構成を示す斜視図であって、ドア4が開いた状態を示している。ドア4の表面には各種操作スイッチと、輸液ポンプ1の状態などを表示するディスプレイなどが備えられているが、本明細書では説明を省略する。
【0022】
ドア4のドア基体47(本発明のドアの内面に相当)には、ドア4を輸液ポンプ本体2に開閉自在に固定するための軸受穴が貫通した軸受部49が形成され、その上下に輸液ポンプ本体2に固定された一対のヒンジ部材301が配置されている。
【0023】
このヒンジ部材301には軸受穴が形成されていて、軸受部49の軸受穴と一致するようになっている。これらの軸受穴には、細長い棒状の回動軸303が頭部を下側にして挿入され、その上端部が軸固定部材304により固定されることで、ドア4を輸液ポンプ本体2に対して回動自在に固定している。
【0024】
輸液ポンプ本体2には、メインフレーム3の各種構造物を除いた略中央箇所にチューブ装着溝31が上限に貫通する位置に形成され、この部分に輸液チューブ100が輸液ポンプ本体2の前面を上下に貫通して装着されるようになっている。
【0025】
メインフレーム3のチューブ装着溝31に沿った上方には第1の閉塞検出機構6Aが配置され、さらにその下側にはポンプ部開口8を介して複数のフィンガ10nを備えた蠕動ポンプ10(本発明のポンプ部に相当)が露出している。
【0026】
チューブ装着溝31に上下に貫通するように輸液チューブ100を装着し、ドア4を閉じると、バックプレート45が蠕動ポンプ10に向けて輸液チューブ100を押圧する。この状態で蠕動ポンプ10を作動させると、複数のフィンガ10nが蠕動運動のように順次上下に動作して、輸液チューブ100内の液状物を送出することができる。
【0027】
さらに、前記蠕動ポンプ10の下側には、気泡を検出するための気泡センサー11が配置され、その下側に第2の閉塞検出機構6Bが配置され、さらにその下側にフリーフロー防止機構であるチューブクランプ5(本発明のチューブクランプ機構に相当)が配置されている。なお、以下の説明において第1の閉塞検出機構6Aおよび第2の閉塞検出機構6Bに共通する内容を説明する場合には、符号の末尾のA,Bを省き、単に閉塞検出機構6と称して説明する。
【0028】
また、輸液ポンプ本体2の上部には移動時に輸液ポンプ1を保持するための移動用ハンドル21が形成され、下部の四隅には輸液ポンプ本体2を安定して固定するためのフット22がそれぞれ形成されている。
【0029】
ドア4側にはドア基体47上に形成されたバックパネル41に、前記閉塞検出機構6A,6Bに対応した位置に閉塞センサー押え部材43A,43Bが配置され、蠕動ポンプ10に対応した位置にバックプレート45が配置され、気泡センサー11に対応した位置に気泡センサー押え部材46が配置されている。
【0030】
さらに、気泡センサー押え部材46の下側にフリーフロー防止機構であるチューブクランプ5が配置されている。
【0031】
[チューブクランプ5の構成]
以下に、チューブクランプ5の構成について詳細に説明する。チューブクランプ5は、
図2に示すように、筐体51に取り付けられたクランプレバー52(本発明のクランプ部材に相当)と、ラッチレバー53と、解除レバー54とを有する。
【0032】
クランプレバー52は、筐体51の前壁512の第1開口515内に先端部が配置され、筐体51に形成された受け部材514に対して、鋏のように接近(以下閉じると称する)または離反(以下開くと称する)自在に動作できるようになっている。
【0033】
受け部材514は、筐体51の第1開口515と第2開口516との間に形成され、断面が先細となる四角柱状の構造物である。受け部材514の一端面はクランプレバー52と対向し、クランプレバー52のエッジ部522と共に輸液チューブ100を挟持する機能を有する。ランプレバー52のエッジ部522の長さは受け部材514の長さと同等か、これより僅かに短くなっている。
【0034】
筐体51にはクランプレバー52が開閉する部位に対応して、上下に切欠517が形成され、この切欠517の内部に上下に貫通して輸液チューブ100(図示せず)が配置されるようになっている。よって、切欠517内に配置されえた輸液チューブ100は、クランプレバー52と受け部材514の一端面との間に配置される。
【0035】
クランプレバー52には、受け部材514と対向する部位にエッジ部522が形成されている。エッジ部522は丁度ナイフエッジのように、断面三角形状に先細となっていて輸液チューブ100を効果的に圧し潰して閉塞できるようになっている。もっとも、輸液チューブ100を傷つけないように、その先端縁は丸められている。
【0036】
ラッチレバー53は、ドア4が開き閉じた状態となっているクランプレバー52を、強制的に開かせる機能を有する。ラッチレバー53は、クランプレバー52の右側にこれと直列するように前壁512の第2開口516内に配置され、作動前は第2開口516から突出している。動作時には、これを内部に向けて押し込むことで作動させることができる。
【0037】
解除レバー54は、ラッチレバー53の動作により、開いた状態になったクランプレバー52を閉じさせる機能を有する。解除レバー54はクランプレバー52の下側(
図1における上下)に並列して配置され、ラッチレバー53を押し込んでクランプレバー52を開くと、解除レバー54の先端が第1開口515から突出する。そして、クランプレバー52の開状態を解除するときには、この先端部分を内部に押し込むことで、クランプレバー52を閉じさせることができる。
【0038】
図3はチューブクランプ5の内部構造を下方から見た状態を示した平面図である。なお、理解を容易にするために一部の構造物は、透過、または省略して示している。
【0039】
図において、筐体51の基部511には、バネ固定ブロック551が固定され、その左側面に形成されたバネ収納孔内に押圧バネ部材550の一端が配置されている。押圧バネ部材550の他端はクランプレバー52に形成された一対の押圧バネ取付凹部527内に配置されている。
【0040】
クランプレバー52は
図4に示すように、横長い矩形の板状体で、一端側にはクランプ回動軸601に固定するためのクランプ軸孔521が形成され、他端側の上端縁にはエッジ部522が形成されている。エッジ部522の長さは、エッジ部522に対して配置された輸液チューブ100が、その長手方向に多少ずれても圧し潰すことが可能な長さであればよい。
【0041】
また、エッジ部522から一端529側(
図4の左端)に向かって直線状に延びる端縁である平坦部525aが形成され、この平坦部525aの端部から内側に凸に凹んだ弧状凹部525bが形成され、さらに弧状凹部525bの端部から一端側に向かって上方に傾斜して直線状に延びる傾斜部525cが形成されている。よって、一端529側は他端側より幅広(
図4における上下方向の長さ)になっている。
【0042】
クランプレバー52において、エッジ部522の先端縁の高さ(
図4における上下方向の長さ)はクランプ軸孔521の高さと略等しくなっている。クランプレバー52の下側526ほぼ中央には、一対の押圧バネ取付凹部527と、凸部528とが形成されている。凸部528の両端は押圧バネ部材550を装着しやすいように面取り部528aが形成されている。
【0043】
クランプレバー52の他端側にはエッジ部522から先端(他端側)に向けて斜面部523が形成されている。斜面部523はエッジ部522端縁側におけるクランプレバー52の長さが短く、幅方向中央側の長さが長くなるように傾斜して直線状に形成されている。斜面部523はクランプレバー52のエッジ部522側における幅方向の中央位置まで形成されている。
【0044】
斜面部523はその端面が斜面になる。斜面部523の傾斜角としては、ドア4側の解除突起42の形状にもよるが、例えばエッジ部522の端縁を延長した直線と直交する仮想線に対して25~35°、好ましくは27~31°程度である。
【0045】
本実施形態では斜面部523は、解除突起42の傾斜面と接してもクランプレバー52を押圧しないように設定されている。このため、斜面部523の形成位置を調整することで、クランプレバー52の開度を調整することができる。
【0046】
斜面部523の端縁、つまりクランプレバー52の他端側における幅方向の中央位置からクランプレバー52の下端縁(
図4における下端)までは曲面部524が形成されている。曲面部524は一定の曲率の円弧で形成されている。
【0047】
曲面部524の曲率としては、特に規制されるものではないが、半径Rの円弧で表したとき、クランプ軸孔521の中心から先端部の最遠端迄の長さR1とすると、R=1/7R1~1/15R1程度であり、好ましくは1/8R1~1/12R1である。
【0048】
曲面部524の端面が曲面を形成する。曲面部524の曲面および斜面部523の斜面がドア4側の解除突起42と協働してクランプレバー52の開閉動作が行われる。ドア4の開閉時には、主に曲面部524の曲面がドア4側の解除突起42に対してして当接する。
【0049】
つまり、ドア4の閉動作の時には、先ず解除突起42の傾斜面が曲面部524に当接する。その後、ドア4の閉動作が進み、締め切る直前に解除突起42の傾斜面の接点が曲面部524から斜面部523に移行すると、それ以上クランプレバー52が開かなくなる。
【0050】
ドア4の開動作の時にはこの逆となるが、解除突起42の傾斜面の接点が曲面部524に移行すると、急速にクランプレバー52が閉じてゆき、輸液チューブ100の閉塞動作が迅速に行われる。
【0051】
図3において、バネ固定ブロック551にはクランク状のクランプ固定板552が固定され、クランプ固定板552に固定されたクランプ回動軸601にクランプレバー52が軸支されている。
【0052】
クランプレバー52の右側にはラッチレバー53が配置され、そのラッチ軸孔532(
図5参照)には筐体51の基部511に植設されたラッチ回動軸603が挿通して、これにより軸支されている。
【0053】
ラッチレバー53は、
図5に示すように本体531と、この本体531の先端側(
図5の右側)に形成されたラッチ軸孔532と、このラッチ軸孔532の上方に向けて形成された腕部533と、腕部533先端側に形成された操作部533aとを有する。
【0054】
ラッチレバー53の後方には、断面コ字状に切欠かれた切欠部534と、この切欠き部の両側に形成された取付部531bが形成されている。切欠部534内部には表面が被覆部材537aで覆われたベアリング537が配置され、取付部531bのコロ軸孔535に固定されたコロ軸538により軸支されている。
【0055】
また、本体531の一側面には解除係合突起536が形成され、解除レバー54の端部を係合できるようになっている。本体531の中央部には肉盗み531aが形成されている。
【0056】
図3において、ラッチレバー53のベアリング537は、クランプレバー52のエッジ側側縁に当接している。
【0057】
ラッチレバー53の手前側には、解除レバー54が配置され、解除軸孔542にラッチ回動軸603が挿通して軸支されている。つまり、ラッチレバー53と解除レバー54とは共通軸で軸支されている。
【0058】
解除レバー54は、
図6に示すように、略L字状の板部材により形成され、レバー基部541と、その一端側から上方に延びるレバー腕部544を有し、レバー腕部544の上端にはこれを外側(図の手前側)に折り曲げることで形成され、上部に平坦面を有するレバー操作部544aが形成されている。
【0059】
また、レバー腕部544の下部には、解除バネ固定孔545が形成されている。レバー基部541の他端側には解除軸孔542が形成され、この解除軸孔542の一端側寄りにラッチ係止腕543が形成され、このラッチ係止腕543の先端にはラッチ係止腕543を内側(図面奥側)に折り曲げることで形成されるラッチ係止突起543aが形成されている。
【0060】
図3によく表されているように、ラッチレバー53の操作部533aが押されて、ラッチレバー53が回動すると、ラッチレバー53のベアリング537がクランプレバー52のエッジ側側縁である傾斜部525cおよび弧状凹部525b(
図4参照)を摺動して、ラッチレバー53を左方向に押圧して移動させ、クランプ回動軸601を中心にクランプレバー52を開くように動作させる。
【0061】
この時、摺動するベアリング537がクランプレバー52の弧状凹部525bから、さらに平坦部525aに移動すると、ベアリング537のコロ軸538の軸中心がラッチ回動軸603の軸中心より上側に位置するようになる。これにより、クランプレバー52から加えられる右方向への押圧力ではラッチレバー53が復帰できなくなり、当該位置で固定され、クランプレバー52は開状態に維持される。
【0062】
また、この時解除レバー54の下端縁がラッチレバー53の解除係合突起536に当接すると、解除レバー54も解除バネ部材556の付勢力に抗してラッチレバー53と共に回動する。これにより、解除レバー54のレバー操作部544aが第1開口515から突出する。
【0063】
一方、ラッチレバー53により開かれたクランプレバー52を解除して閉じさせるときには、先ず、押し上げられた解除レバー54のレバー操作部544aを押し下げて解除レバー54を逆方向に回動させる。この時、ラッチ係合突起543aがラッチレバー53のレバー基部531上端縁に当接すると、ラッチレバー53も共に回動することになる。
【0064】
[チューブクランプ5の動作]
次に、チューブクランプ5の動作について説明する。先ず、
図7に示すように、ドア4を閉めて行くと、ドア4の解除突起42の先端面がクランプレバー52の曲面部524に当接する。なお、
図7においてクランプレバー52は圧し潰された輸液チューブ100の厚み分開いているが、理解を容易にするために完全に閉じた状態として記載している。
【0065】
解除突起42の先端面は、クランプレバー52に対してエッジ部522側が高く、曲面部524側が低くなるように傾斜している。解除突起42の先端面の傾斜角としては、例えば上下に貫通して装着される輸液チューブ100の軸中心に近似される垂直線と直交する仮想線に対してクランプレバー52の斜面部523の傾斜角と同等か、これより僅かに小さくなっている。より具体的には、24~34°、好ましくは26~30°程度である。
【0066】
次に、
図7の状態からさらにドア4を閉めて行くと、クランプレバー52の曲面部524は解除突起42の傾斜した先端面に押されて、クランプレバー52は左方向に押されて、クランプ回動軸601を中心に回動して、クランプ受け514に対して開いていく。
【0067】
この時、解除突起42の傾斜した先端面は、曲面部524を押すため、ドア4の開閉動作における移動長さないし押し込み長さ、つまり解除突起42の移動長さないし押し込み長さに対応したクランプレバー52の開度、つまり開く角度の割合を少なくすることができ、過剰に開くことを防止できる。
【0068】
次に、
図8に示すように、ドア4が完全に閉じられる直前では、解除突起42の傾斜した先端面は、その当接位置がクランプレバー52の先端面のうち曲面部524から斜面部523に差し掛かり、さらに斜面部523に当接するとそれ以上クランプレバー52の先端面を押せなくなり、クランプレバー52の開動作が停止する。
【0069】
つまり、解除突起42の傾斜面と接するクランプレバー52の先端面が曲面部524から斜面部523に切り換わる状態の時にクランプレバー52の開度は最大になる。この開度のクランプレバー52の位置は、クランプレバー52が、輸液チューブ100の圧縮を解除して流動性を確保でき、なおかつ輸液チューブ100に対して開きすぎていない位置である。
【0070】
ドア4を開くときには、上記と逆の動作によりクランプレバー52が閉じられ、輸液チューブ100は閉塞される。この時、クランプレバー52の開度は開きすぎることなく適正に調整されているので、速やかに閉じることができる。
【0071】
[閉塞検出機構6の構成]
次に、閉塞検出機構6の構成について説明する。本実施形態では閉塞検出機構6は、上側の閉塞検出機構6Aと下側の閉塞検出機構6Bとを有するが、いずれも同じ構成のため以下では便宜上、これらを総称して閉塞検出機構6として説明する。
【0072】
図9に示されるように、閉塞検出機構6は、センサーケース61と、防水キャップ62と、シャフトガイド63と、シャフト64とセンサー基板65とキャップ66とを備えている。
図9は閉塞検出機構6を分解した状態を後方から見た視点で示す分解斜視図である。
【0073】
センサーケース61は閉塞検出機構6全体を保護するものであり、その先端側には一対の凸部613とその間に形成された検出用凹部614とを有する。その中央には、後部から先端にかけて貫通する検出孔612が形成されている。
【0074】
センサーケース61の後部の検出孔612両側部には、後端面より凹んだ基板収納部が形成されさらにその両側部には、同様に後端面より凹んだ固定用凹部617が形成されている。固定用凹部617の中央には固定用のネジ挿入孔616が形成されている。
【0075】
固定用凹部617の裏面側は、
図10に示されるように、側面部611より陥没した、ネジ取付部618が形成されている。なお、
図10は閉塞検出機構6の構成を示す断面図である。
【0076】
防水キャップ62は先端面621が閉じた円筒状部材であり、円筒状の胴部622の基端側には検出孔612内面との密着性を確保するフランジ部623が形成されている。防水キャップ62は、例えばシリコーン樹脂、合成ゴム、天然ゴムなどの柔軟かつ弾性を有する材料で形成されている。
【0077】
シャフトガイド63は、先細の円筒状部材であり、内部にシャフト64を収納するシャフトガイド孔631が形成されている。
【0078】
シャフトガイド63の外形は、基端側から基端面632を有する大径部633と段差部を介して縮径した中径部634と、さらに段差部を介して縮径した小径部635が形成され、この小径部635の先端に先端面636が形成されている。
【0079】
シャフトガイド63は内部に収納されるシャフト64の位置を規制し摺動性を確保する部材であり、摩擦抵抗が小さい樹脂が好ましい。例えば、塩化ビニル(PVC)、ABSなどの一般的樹脂を用いてもよいし、潤滑性の良好なポリアセタール・ポリオキシメチレン樹脂などを用いてもよい。
【0080】
シャフト64は円柱状の部材であり、輸液チューブ100の圧力を圧力検出素子653に伝達する機能を有する。シャフト64は一定外径の胴部641と、これに直交する基端面642および先端面643を有する。
【0081】
シャフト64を構成する材料としては、輸液チューブ100の圧力を、確実に圧力検出素子653に伝達する必要があることから、変形しにくい硬質な材料である金属が好ましく、金属の中でも、錆びにくく、加工が容易で、比較的安価なステンレス鋼が好ましい。例えば、SUS303、SUS304、SUS316等の一般的なステンレス鋼を用いてもよいし、SUS410、SUS403、SUS440C等のさらに硬質なステンレス鋼が好ましい。
【0082】
センサー基板65は、圧力検出素子653が搭載され、これを保持すると共に、他の電子回路と接続する機能を有する。センサー基板65は、回路基板651と、圧力検出素子653と、接続素子652とを有する。
【0083】
キャップ66は、センサーケース61の後端部を閉じて、防水キャップ62、シャフトガイド63、シャフト64、センサー基板65をセンサーケース61内部に保持する機能を有する。キャップ66はセンサーケース61の外形に則した矩形状の本体661に、センサーケース61の固定用凹部617にアクセスするためのネジ窓665と、センサー基板65の接続素子652にアクセスする接続用窓664が形成されている。
【0084】
キャップ66の両側部には上方に突出した板状の腕部662と、この腕部662の先端に形成された顎部663を有し、
図10に示すように、この顎部663がキャップ66のネジ取付部618の縁端に係止してスナップフィットするようになっている。
【0085】
図10に示されるように、シャフトガイド63内部にシャフト64が配置され、シャフトガイド63の先端部が防水キャップ62で覆われる。この防水キャップ62は、シャフトガイド63の中径部634までを覆う。
【0086】
このため、シャフトガイド63の小径部635の外周面と防水キャップ62の内周面との間には間隙が形成され、防水キャップ62の先端面に加えられる圧力による変形を容易にしている。また、これにより侵入した薬液等による固着現象も回避できるようになっている。
【0087】
シャフトガイド63の中径部634を覆う防水キャップ62の外周面およびフランジ部623の外周面は検出孔612の内周面に密着し、液密性を確保している。なお、
図10から明らかなように、検出孔612は先端側の小径部635と、基端側の大径部633とを有し、フランジ部623がこの大径部633の先端側に位置するようになっている。
【0088】
閉塞検出機構6は、取り付けネジ667によりメインフレーム3に取り付けられる。この時、センサー基板65の接続素子652には、他の電子回路が形成された、回路基板68に搭載された支持部材67が接続され、センサー基板65の圧力検出素子653と回路基板68とが、電気的に接続されるようになっている。なお、回路基板68はネジ部材681により、メインフレーム3に固定されている。
【0089】
図10に示すように、ドア4側の閉塞検出機構6に対応する位置には閉塞センサー押え部材43A,43Bが配置されている。以下の説明では閉塞検出機構6同様、閉塞センサー押え部材43A,43Bはいずれも同一の構成であるため、これらを纏めて、閉塞センサー押え部材43として説明する。
【0090】
閉塞センサー押え部材43は、バックパネル41内に配置され、先端側が閉鎖され基端側が開放された矩形の角筒状部材である。閉塞センサー押え部材43の中央部分には圧縮バネ部材433を固定するためのバネ固定突起434が形成されている。
【0091】
圧縮バネ部材433は、その先端側にバネ固定突起434を内挿するようにして、閉塞センサー押え部材43内に挿入され、その基端側はドア基体47に形成された固定孔に配置されることで、バネ固定突起434とドア基体47との間で挟持される。
【0092】
よって、閉塞センサー押え部材43は圧縮バネ部材433により先端側に付勢される。閉塞センサー押え部材43の先端面には
図1に示されるように、その上下に亘って形成され、輸液チューブ100に対応し、これと対向する一条の押さえ凸部432が形成されていて、これにより、輸液チューブ100をより圧縮できるようになっている。
【0093】
[防滴構造]
次に、防滴構造について説明する。本実施形態における防滴構造は、
図11に示すように、ドア4側に装着されたパッキン部材7と、メインフレーム3にその外周を囲むように形成された第1庇構造32と、その内側に形成された第2庇構造34と、これらの間に形成された溝構造33とにより構成される。
【0094】
第1庇構造32は、
図1および
図11に示されるように、メインフレーム3の外周に沿って形成され、輸液ポンプ本体2の下部を除きメインフレーム3の外周を囲っている。なお、メインフレーム3のドア4の開閉機構、つまり
図1におけるヒンジ部材301等が配置されている側は上部を覆うに止められて、途切れている。なお、防滴構造であるから輸液ポンプ本体2の下部を囲む必要の無いことは言うまでもない
【0095】
また、
図1に示されるように、ドアハンドル9側では、ロックピン支持部材121の上方に廃液開口35が形成され、溝構造33内に侵入した液体を排出できるようになっている。
【0096】
第2庇構造34は、第1庇構造32から内側に離間して形成され、これらの間に溝構造33を形成する。ドア4の開閉機構、つまり
図1におけるヒンジ部材301等が配置されている領域はこれを避けるようにこれらの内側に形成されている。また、ドアハンドル9側では、ロックピン支持部材121の上方で廃液開口35に向けて折れ曲がり、廃液を誘導すると共に、その下方では第1庇構造32の内側に沿ってこれより僅かに高さを高くした領域34aが形成され、ロックピン支持部材121の下方で途切れている。
【0097】
図11に示すように、第1庇構造32の上部中央位置には、チューブ装着溝31に対応したU字状の庇凹部321が形成されている。庇凹部321内部には、その幅方向の中央部分が突出した封止凸部が形成され、この部分で輸液チューブ100を挟持すると共に、後述するパッキン部材7と協働して、輸液チューブ100を伝う液状物の侵入を防止している。
【0098】
第2庇構造34にも第1庇構造32と同様に、チューブ装着溝31に対応して庇切欠部341が形成されている。庇切欠部341の幅も、輸液チューブ100の幅に対応した長さに設定され、これによりさらに輸液チューブ100を伝う液状物の侵入を防止している。
【0099】
第2庇構造34の下方で、第1の閉塞検出機構6Aの上方のチューブ装着溝31には、防滴用幅狭部311が形成されている。防滴用幅狭部311の幅も輸液チューブ100の幅に対応した長さに設定され、これにより、万が一第2庇構造34から侵入した液状物をある程度くい止めて、輸液チューブ100を伝う液状物の侵入をさらに防止している。
【0100】
パッキン部材7は、ドア4側に配置、固定され、溝構造33と協働して輸液ポンプ1の防滴性を確保している。具体的には、
図12の断面図に示されるように、ドア基体47上部に固定されると共に、メインフレーム3の溝構造33の底面にその先端の密着用リブ73を密着させることで、ドア基体47とメインフレーム3の上方空間を液密に封止している。なお、
図12に示される密着用リブ73は実際には溝構造33の底面によって潰されていて見えないが、理解を容易にするために表示している。
【0101】
パッキン部材7は、
図13~15に示されるように、全体として歪んだ逆U字また倒コ字状をなし、一定の幅を有する厚みのある板状部材である。なお、
図13はパッキン部材7の正面図。
図14はパッキン部材7の平面図。
図15はパッキン部材7の下方から見た斜視図である。
【0102】
パッキン部材7は、メインフレーム3の溝構造33に沿った形に形成されている。このため、ドア4のヒンジ部材301が配置された側に対応する一方の下端718は、ドアハンドル9側の他方の下端717より短くなっていて、ドアハンドル9側の他方の下端717は完全に垂下した位置にあるが、一方の下端718は完全に垂下する前に途切れている。
【0103】
パッキン部材7の本体71は、平坦な上面711と下面712を有し、所定の厚みを有する弾性体により形成され、ヒンジ部材301側の折曲部716を介して緩やかに90°折曲して一方の下端718まで延伸し、また、ドアハンドル9側の折曲部715を介して緩やかに90°折曲して他方の下端717まで延伸している。
【0104】
パッキン部材7は、
図13に示されるように、その正面側(
図13の手前側)の先端面714の幅方向中央部にパッキン部材7の全域にわたって突出した細長帯状の密着用リブ73が形成されている。密着用リブ73は溝構造33の底面に当接することで押し潰され、密閉性を確保する機能を有する。このため、適度な力で押し潰すことが可能で、なおかつ溝構造33の底面との間に隙間が生じない程度の高さを有している。
【0105】
パッキン部材7の中央部には、上下に貫通したU字状のチューブ収納用凹部72が形成されている。チューブ収納用凹部72は収納する輸液チューブ100の外形に則した大きさになっているが、太径の輸液チューブ100にも対応できるよう、パッキン部材7の板厚方向中央であってチューブ収納用凹部72の外周を溝状に拡径・拡幅した溝部72aが形成されている。
【0106】
このため、密着用リブ73は、チューブ収納用凹部72の開口近傍で、上下にコ字状に枝分かれし、チューブ収納用凹部72の開口端で途切れている。コ字状に枝分かれした密着用リブ73の内部には溝部72aの端部が現れている。
【0107】
図13,15に示されるように、パッキン部材7の固定構造として、その下部の幅方向の基端側1/3の部分には、前方固定用リブ75が下方にパッキン部材7の形状に沿った板状に突出して形成され、基端面713の下縁には後方固定用リブ76が下方に板状に突出して形成されている。
【0108】
図12によく示されるように、前方固定用リブ75は後方固定用リブ76に比べて、突出長さが長く、先端側のパッキン部材7の荷重を受け止めて、安定して保持できるようになっている。
【0109】
図14に示されるように、パッキン部材7は幅方向の基端側1/3を中間点として、先端側部71Bと後端側部71Aとに分かれている。前方固定用リブ75は、この中間点から下方に形成されている。先端側部71Bは、端縁に向かって厚みが僅かに漸減する先細テーパーに形成されている。
【0110】
先端側部71Bと後端側部71Aの上面711は、いずれもその前後端部に向かって傾斜していて、侵入した液状物が前後端部に誘導されるようになっている。先端側部71Bと後端側部71Aとの接合部71Cにおいて、後端側部71Aの高さが僅かに高くなっており、段差が形成されている。
【0111】
先端側部71Bには、その先端縁に上方に突出した縦防水リブ74が形成されている。縦防水リブ74は、チューブ収納用凹部72の外周を含む先端側部71Bの先端縁全域にわたって形成されており、侵入した液状物は、縦防水リブ74を伝って、両下端717,718まで誘導されるようになっている。
【0112】
後端側部71Aの中央部分にはドア4の構造物である動作インジケーター収納部を回避するコ字状に開口した凹部77が形成されている。また、前方固定用リブ75にもこれに即したコ字状の屈曲部が形成されている。
【0113】
パッキン部材の材質としては、所定の柔軟性と弾性を備えた樹脂材料が好ましく、具体的には、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、特殊ゴムにはアクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)、シリコーンゴム(Q)等の合成ゴム系の樹脂が好ましい。また、場合によっては天然ゴムを用いてもよい。
【0114】
[ポンプ部チューブ蛇行防止構造]
次に、ポンプ部チューブ蛇行防止構造について説明する。
図1に示される蠕動ポンプ10の上部に配置されたメインフレーム3のポンプ部開口8には、
図16に示されるようにその両側部の下面側に障壁凸部82が形成されている。ポンプ部開口8の周囲にはこれを囲むように補強リブが形成され、その近傍にはメインフレーム3と蠕動ポンプ10とを固定するポンプ固定ネジ孔320が形成されている。
【0115】
ポンプ部開口8の周囲の裏面には、チューブ装着溝31を形成するために肉厚のチューブ装着溝形成部310が形成されている。
【0116】
障壁凸部82は、
図17によく示されるように、最も上昇して上死点に達した蠕動ポンプ10のフィンガ10nの上端から障壁凸部82の下面迄のギャップtを所定の長さに規制している。
【0117】
これにより、例えば
図18に示すように、輸液チューブ100が蛇行して、メインフレーム3の裏側とフィンガ10nとの間に入り込んでポンプ動作が正常に行われなくなる現象を防止することができる。つまり、障壁凸部82が輸液チューブ100の蛇行を防止し、輸液チューブ100がバックプレート45とフィンガ10nに挟まれて正常に押し潰されるようにガイドしている。
【0118】
蠕動ポンプ10のフィンガ10nの最上端から障壁凸部82の下面迄のギャップtとしては、輸液チューブ100が入り込まない程度の隙間に設定すればよいが、例えば想定される最小外径の輸液チューブ100の外径の1/8~0(技術的に可能な範囲で極小)程度である。
【0119】
一方、輸液チューブ100がメインフレーム3の上部で蛇行した場合、メインフレーム3とドア基体47の間に輸液チューブ100が挟まれて、正常なポンプ動作ができなくなる。
【0120】
この時、ドア4が正規の閉位置から浮いた状態になるが、
図21Bに示すドアハンドル構造ではこのような状態でもドア4がロックされる場合があった。
【0121】
このドアハンドル9は、
図19に示すようにハンドル操作部93と、ハンドル本体91と、このハンドル本体91に形成された内側ガイド壁95と外側ガイド壁94と、これらに挟まれたガイド溝底面96とを有する。なお、
図19は、ドアハンドル9と固定ピンとの関係を示す一部透過斜視図で、理解を容易にするために他の構造物は省略している。
【0122】
この内側ガイド壁95と外側ガイド壁94内部に、輸液ポンプ本体2側に固定されたロックピン12が捕捉されることでロック動作が行われる。なお、ロックピン12はロックピン支持部材121によりメインフレーム3に固定されている。なお、ドアハンドル9はハンドル回動軸92に軸支されてこれを中心に回動する。
【0123】
このロックピン12をドアハンドル9で捕捉する動作は、
図20に示されるように、ハンドル操作部93が開いた状態でガイド溝の外側ガイド壁94がロックピン12と係合可能な位置に達することで行われる。この位置は、通常ドア44が適正な閉位置にあるときのハンドル回動軸92の軸中心と、外側ガイド壁94がロックピン12と係合し始めた時のロックピン12の軸中心迄の距離L1(以下捕捉距離と称する)で規定されている。
【0124】
なお、ハンドル操作部93を閉じると、ドアハンドル9がハンドル回動軸92を中心に
図20の反時計回り回動し、ガイド溝の終端にロックピン12が案内される。この時、ハンドル回動軸92の軸中心と、ロックピン12の軸中心迄の距離L2は捕捉距離L1に比べて短いため、ドア4は輸液ポンプ本体2に向かって押し付けられ、密着する。
【0125】
ところが、
図21Bに示すドアハンドル構造は、
図21Aに示されるドアハンドル構造に比べて外側ガイド壁94先端に係止爪94aが形成されている分、捕捉距離L1が長くなり、ドア4が輸液チューブ100を挟み込んで不十分な閉位置にあってもロックピン12を捕捉し、ロック動作が行われることがある。
【0126】
そこで、本実施形態ではドアハンドル9の構造を
図21Aに示されるように、係止爪94aがない構造とし、捕捉距離L1を短くして、ドア44が適正な閉位置にあるときのみロック可能としている。これにより、輸液チューブ100の蛇行による輸液ポンプ1の動作不良が生じるのを防止することができる。
【0127】
[ドア4の配線カバー]
ドア4と輸液ポンプ本体2との間には、これらを電気的に接続し、ドア4に備え付けられた各種操作スイッチ、あるいは表示装置と輸液ポンプ本体2の図示しない制御装置との間で電気信号の授受を行うための接続ケーブルが配置されている。
【0128】
この接続ケーブルは、本実施形態では
図1に示される輸液ポンプ本体2の一対のヒンジ部材301の間に形成された第2庇構造34が内方に湾曲した外側からドア4に向かって延出し、屈曲して対応するドア基体47の端縁からドア内部に導入されて、図示しない表示装置等が搭載された電気回路基板に接続されている。
【0129】
通常、この接続ケーブルにはフレキシブルフラットケーブル等のフラットケーブルが用いられるが、ドア4の開け閉めが繰り返されることで、輸液ポンプ本体2とドア4との間に渡って延びる接続ケーブルが徐々に外部に飛び出してくることがあり、断線を生じるリスクがあった。
【0130】
このため、輸液ポンプ本体2側に、ドア4に向かって延在する接続ケーブルの上部を塞いで横方向に誘導するカバー体を設け、接続ケーブルの浮き上がりを防止し、外部から直接アクセスできなくして、接続ケーブルを保護してもよい。
【0131】
[作用・効果]
以下に、本実施形態の作用効果を説明する。
【0132】
本実施形態の医療用輸液ポンプ1によれば、クランプ部材(52)の先端面に曲面部524を有するので、解除突起42の傾斜面に押圧されたときのクランプ部材(52)の開度、つまり開く角度の割合を少なく(小さく)することができ、クランプ部材(52)が必要以上に大きく開くことを防止することができる。このため、誤ってドア4が開けられた時などに、クランプ部材(52)の閉動作を迅速に行うことができ、フリーフローを防止することができる。
【0133】
また、ドア4を閉じるときには、クランプ部材(52)の開動作が少しずつ進行するため、フィンガ10nによる輸液チューブ100の閉塞が先行して、フリーフローを防止することができる。
【0134】
また、本実施形態の医療用輸液ポンプ1によれば、クランプ部材(52)の先端面には曲面部524に連続して斜面部523が形成されているので、クランプ部材(52)の開度の設定が容易である。すなわち、解除突起42の傾斜面が先端面に接触して押圧する際、曲面部524でクランプ部材52の開動作を行わせ、斜面部523で開動作を終了するので、斜面部523の位置を調整することでクランプ部材52の開く度合いを調整することができる。このため、必要以上にクランプ部材(52)が開くことを防止でき、クランプ部材(52)の閉動作を迅速に行うことができ、フリーフローを防止することができる。
【0135】
本実施形態の医療用輸液ポンプ1によれば、クランプ部材(52)の先端面に曲面部524を有するため、解除突起42の傾斜面に当たる部分が曲面形状になり、解除突起42の傾斜面を傷つけ難く、損傷を防止できる。
【0136】
本実施形態の医療用輸液ポンプ1によれば、閉塞検出機構6のシャフトガイド63の小径部635の外周面と防水キャップ62の内周面との間には間隙が形成され、防水キャップ62の先端面に加えられる圧力による変形を容易にしている。このため、閉塞検出機構6に薬液等が侵入して固化しても、閉塞検出機構6の動作を妨げにくい。
【0137】
本実施形態の医療用輸液ポンプによれば、閉塞検出機構6のシャフト64は金属で形成されているため変形し難く、輸液チューブ100の圧力をロスなく圧力検出素子653に伝達することができる。
【0138】
本実施形態の医療用輸液ポンプによれば、閉塞検出機構6の閉塞センサー押え部材43にはその上下に亘って輸液チューブ100に対向する一条の押さえ凸部432が形成されているので、より輸液チューブ100を圧迫することができ、圧力検出素子653での輸液チューブ100の圧力検出を容易にしている。
【0139】
本実施形態の医療用輸液ポンプ1によれば、メインフレーム3の外周に第1庇構造32が形成され、その内側に所定の間隔を空けて第2庇構造34が形成されているので、外部から液状物が侵入し難い。
【0140】
本実施形態の医療用輸液ポンプ1によれば、ドア基体47上部にパッキン部材7が固定され、その先端が第1庇構造32と第2庇構造34とで形成された溝構造33の底面に密着するので、さらに外部から液状物が侵入し難くなっている。
【0141】
本実施形態の医療用輸液ポンプ1によれば、パッキン部材7の中央部には、上下に貫通したU字状のチューブ収納用凹部72が形成され、収納する輸液チューブ100の外形に則した大きさに設定され、さらにチューブ収納用凹部72の外周を溝状に拡径・拡幅した溝部72aが形成されているので、パッキン部材7は輸液チューブ100に密着することができ、輸液チューブ100を伝う液状物の侵入も防止することができる。
【0142】
[変形例]
以下に、本実施形態の変形例について説明する。
【0143】
本実施形態では、クランプレバー52を横長矩形状の板状体として示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、先端面に曲面部524を形成可能な形状で、輸液チューブ
100を挟持できるものであれば、各棒や丸棒でもよく、板状、ブロック状とした場合の先端面以外の胴部の形状は自由に設定できる。
【0144】
本実施形態では、クランプレバー52を、クランプ回動軸601を中心に回動して開閉する構造を例示して示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばリニアベアリングやリニア移動ステージを応用して直線状に移動する構造としてもよい。
【0145】
本実施形態では、ドア4が開いているときにクランプレバー52の開閉を行わせる構成として、ラッチレバー53と解除レバー54を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の機構により開閉させるようにしてもよい。
【0146】
本実施形態では、ドア4が開いているときにクランプレバー52の開閉を行わせる構成として、ラッチレバー53と解除レバー54を有する構成を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらを省略してもよく、その場合クランプレバー52に把持部を設け、直接手で開閉できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0147】
2 輸液ポンプ本体
3 メインフレーム
4 ドア
5 チューブクランプ(チューブクランプ機構)
10 蠕動ポンプ(ポンプ部)
42 解除突起
52 クランプレバー(クランプ部材)
100 輸液チューブ
514 受け部材
523 斜面部
524 曲面部