(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025035091
(43)【公開日】2025-03-13
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
F16F 9/58 20060101AFI20250306BHJP
【FI】
F16F9/58 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023141886
(22)【出願日】2023-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】安河内 直樹
(72)【発明者】
【氏名】森 拓仁
(72)【発明者】
【氏名】井ノ口 拓実
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA50
3J069CC05
3J069DD47
3J069EE01
3J069EE54
(57)【要約】
【課題】液圧ロック機能を発揮できるとともに製造が容易で製造コストを低減できる緩衝器を提供する。
【解決手段】本発明の緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストンロッド2と、ピストンロッド2に連結されるとともにシリンダ1内に移動可能に挿入されてシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン3と、シリンダ1に対して軸方向に不動であってピストン3に軸方向で対向するロック室Lを形成するケース8cと、ピストンロッド2の伸側室R1に面する外周に装着されるサポート4と、ピストンロッド2の伸側室R1に面する外周に配置されてサポート4によってピストン側への移動が規制されるクッション5と、ピストンロッド2の外周であってクッション5の反ピストン側に軸方向へ移動可能に設けられてロック室L内に侵入可能なロックピース6とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストンロッドと、
前記ピストンロッドに連結されるとともに前記シリンダ内に移動可能に挿入されて前記シリンダ内を液体が充満する伸側室と圧側室とに区画するピストンと、
前記シリンダに対して軸方向に不動であって前記ピストン側に向かって開口するロック室を形成するケースと、
前記ピストンロッドの伸側室に面する外周に装着されるサポートと、
前記ピストンロッドの伸側室に面する外周に配置されて前記サポートによってピストン側への移動が規制されるクッションと、
前記ピストンロッドの外周であって前記クッションの反ピストン側に配置され軸方向へ移動可能に設けられて前記ロック室内に侵入可能なロックピースとを備えた
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
前記ロックピースは、
環状であって前記ピストンロッドの外周に配置されて前記ピストンロッドとの間に環状の絞り通路を形成するとともに前記ロック室に侵入可能なピース本体を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項3】
前記ロックピースは、
前記サポートに摺接する摺接部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項4】
前記ロックピースは、前記ロック室に侵入可能であって前記ケース側を向く面に凹凸面を具備するピース本体を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項5】
前記ロックピースが前記クッションに対して軸方向で離間すると、前記ロックピースと前記クッションとの間に前記絞り通路に連通される隙間が形成され、
前記摺接部は、前記ピース本体に対して周方向で間隔を空けて延びる複数の腕からなる
ことを特徴とする請求項2に記載の緩衝器。
【請求項6】
前記ロックピースは、
前記摺接部に前記サポートからの抜けを阻止する規制部を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に利用される緩衝器にあっては、たとえば、シリンダと、シリンダ内に移動可能に挿入されるピストンロッドと、ピストンロッドの先端に連結されるとともにシリンダ内に移動可能に挿入されてシリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンとを備えている。
【0003】
このように構成された従来の緩衝器では、ピストンロッドの外周にピストン側端が支持されるリバウンドスプリングを装着して、当該リバウンドスプリングの自由端を最伸長時にピストンロッドを支持するロッドガイドに当接させてリバウンドスプリングを圧縮し、リバウンドスプリングの弾発力で最伸長時の衝撃を緩和している。
【0004】
近年、軽自動車や小型車の乗心地を向上させるため、良路走行時の緩衝器の減衰力を低くする傾向にある一方で、電動化や外観デザイン性の向上のためばね下重量は重たくなってきているため、緩衝器が最伸長する際の衝撃の緩和について弾性反発を生じない油圧を用いたオイルロックの利用が要望されるようになってきた。
【0005】
このような要望に応えるため、シリンダの端部にテーパ状の拡径部を設けるとともに、ピストンロッドの外周にC形状の弾性リングを保持するセグメントとセグメントをピストン側へ向けて付勢するばねを設けて、セグメントが拡径部に到達してそれ以上緩衝器が伸長するとテーパ面よって弾性リングが徐々に縮径して、弾性リングとセグメントとで仕切られる上方の空間をオイルロック室として機能させる緩衝器が開発されるに至っている(たとえば、特許文献1参照)。
【0006】
このように構成された緩衝器では、良路走行時にはセグメントが拡径部に到達しないようになっていて、良路走行時には低い減衰力を発揮して車両における乗心地を損なうことがないが、最伸長時には油圧利用のオイルロック機能を発揮して高い減衰力を発生させて衝撃を緩和できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の緩衝器は、伸長側のストロークエンドでの衝撃の緩和について前記要望に十分に応えることができるが、シリンダを拡径させる加工が必要で、さらに、オイルロック機能を発揮するために多くの部品をピストンロッドの外周に設置する必要があるので、加工コストが嵩むとともに部品点数が増加するため、製造コストと製造の難易度が高くなるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、液圧ロック機能を発揮できるとともに製造が容易で製造コストを低減できる緩衝器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の緩衝器は、シリンダと、シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストンロッドと、ピストンロッドに連結されるとともにシリンダ内に移動可能に挿入されてシリンダ内を液体が充満する伸側室と圧側室とに区画するピストンと、シリンダに対して軸方向に不動であってピストン側に開口するロック室を形成するケースと、ピストンロッドの伸側室に面する外周に装着されるサポートと、ピストンロッドの伸側室に面する外周に配置されてサポートによってピストン側への移動が規制されるクッションと、ピストンロッドの外周であってクッションの反ピストン側に配置され軸方向へ移動可能に設けられてロック室内に侵入可能なロックピースとを備えている。
【0011】
このように構成された緩衝器では、シリンダに対して軸方向へ不動のケースを設けるとともに、ピストンロッドにロックピースを設けることによって、伸長作動時にストロークエンドの近傍でロックピースがロック室内に侵入して液圧ロック機能を発揮して緩衝器の伸長を抑制できるだけでなく、伸長が進んで最伸長時にはクッションの圧縮によって大きな荷重を発生させて緩衝器の伸長を停止させ、最伸長時の衝撃を緩和できる。また、以上のように構成された緩衝器によれば、一般的な緩衝器に対して、ケースとロックピースの追加によって伸長作動時に液圧ロック機能を発揮できるから、従来の緩衝器のようにシリンダの端部にテーパ状の拡径部を設けたり、弾性リング、セグメントやばねといった多くの部品を追加したりする必要が無い。
【0012】
また、緩衝器におけるロックピースは、環状であってピストンロッドの外周に配置されてピストンロッドとの間に環状の絞り通路を形成するとともにロック室に侵入可能なピース本体を有してもよい。このように構成された緩衝器によれば、ロック室にピース本体が侵入すると絞り通路の抵抗に応じた大きさの荷重を発生させることができ、絞り通路の流路面積の設定によって荷重を調整できるとともに、ピース本体の内周とピストンロッドとの間のクリアランスによってピース本体がクッションに対して上下方向へ容易に移動できるので、ロックピースがロック室内に侵入した後のクッションの圧縮がスムーズになる。。
【0013】
さらに、緩衝器におけるロックピースは、サポートに摺接する摺接部を有してもよい。このように構成された緩衝器によれば、サポートによってロックピースを調心してケースおよびクッションに対してロックピースを径方向で位置決めでき、ケース内へロックピースの挿入が容易になる。
【0014】
そして、緩衝器におけるロックピースは、ロック室内に侵入可能であってケース側を向く面に周方向に沿う凹凸面を具備するピース本体を有してもよい。このように構成された緩衝器によれば、ピース本体のケース側を向く面が凹凸面となっているので、ピース本体がロック室に深く侵入してロック室の底面となるロッドガイドの小径部の下面に当接してもピース本体の上面全体が小径部に当接せず、ピース本体のロック室の底面への貼り付きが防止される。また、緩衝器が最伸長してピース本体がロック室の底面へ当接してから収縮作動を呈する場合に、ピース本体が速やかにロック室内から後退でき、緩衝器の収縮作動に抵抗を与えずに済む。
【0015】
また、緩衝器におけるロックピースは、摺接部にサポートから抜けを阻止する規制部を有してもよい。このように構成された緩衝器によれば、伸長作動時にロックピースがロック室内に侵入して液圧ロック機能を発揮した後、伸縮方向が切り換わって収縮作動を呈する際に、ロックピースの規制部がサポートからロックピースが抜けるのを阻止するため、ロックピースがピストンロッドとともにケースに対して離間する方向へ移動でき、ロックピースがロック室内に留まってしまうことがなく、伸縮を繰り返しても安定して液圧ロック機能を発揮できる。
【0016】
そしてさらに、緩衝器におけるロックピースがクッションに対して軸方向で離間すると、ロックピースとクッションとの間に絞り通路に連通される隙間が形成され、摺接部は、ピース本体に対して周方向で間隔を空けて延びる複数の腕によって構成されてもよい。このように構成された緩衝器では、伸長作動時にロックピースがロック室内に侵入して液圧ロック機能を発揮した後、伸縮方向が切り換わって収縮作動を呈してロックピースがロック室から退出する際に、ロックピースとクッションとが離間してピース本体の内周であってロック室に連通される絞り通路がロックピースとクッションとの間の隙間と腕間の隙間とを介して伸側室に連通されるようになる。摺接部が複数の腕によって構成されており、腕間に大きな隙間を形成できるとともに、ロックピースとクッションとが離間して隙間が形成されるので、ロックピースのロック室からの退出時に、前記隙間によって伸側室からロック室へ移動する液体の流れに与えられる抵抗を極めて小さくでき、絞り通路の抵抗以外に余計な抵抗を与えずに済むので、ロック室内からロックピースを速やかに退出させることができ、緩衝器の収縮作動に抵抗を与えずに済む。
【発明の効果】
【0017】
本発明の緩衝器によれば、液圧ロック機能を発揮できるとともに製造が容易で製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施の形態における緩衝器の断面図である。
【
図2】
図2(a)は、ロックピースの平面図である。
図2(b)は、ロックピースの側面図である。
図2(c)は、ロックピースの底面図である。
【
図3】
図3(a)は、ロックピースがロック室Lから離間した位置に配置された状態の緩衝器の一部拡大断面図である。
図3(b)は、ロックピースがロック室L内に侵入し始めた際の緩衝器の一部拡大断面図である。
図3(c)は、ロックピースがロック室Lから離間した位置に配置された状態の緩衝器の一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の緩衝器を図に基づいて説明する。一実施の形態における緩衝器Dは、
図1に示すように、シリンダ1と、シリンダ1内に挿入されるピストンロッド2と、ピストンロッド2に連結されるとともにシリンダ1内に挿入されてシリンダ1内を液体が充填される伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン3と、シリンダ1に対して軸方向に不動であってピストン3に軸方向で対向するロック室Lを形成するケース8cと、ピストンロッド2の外周に装着される環状のサポート4と、ピストンロッド2の外周に配置されるクッション5と、ピストンロッド2の外周に設けられてロック室L内に侵入可能なロックピース6とを備えている。緩衝器Dは、図示しない車両における車体と車輪との間に介装されて伸縮時に減衰力を発生して車体の振動を抑制する。
【0020】
以下、緩衝器Dの各部について詳細に説明する。シリンダ1は、筒状であって内部に前述したようにピストンロッド2およびピストン3が軸方向となる
図1中上下方向へ移動可能に挿入されている。シリンダ1内は、ピストン3によって、
図1中上方の伸側室R1と
図1中下方の圧側室R2とに区画されている。また、伸側室R1と圧側室R2内には、液体として、具体的にはたとえば、作動油が充填されている。なお、液体としては、作動油の他にも、水、水溶液等を充填してもよい。
【0021】
また、シリンダ1は、外周側に配置される有底筒状の外筒7内に収容されており、シリンダ1と外筒7との間の環状隙間でリザーバRが形成されている。このリザーバR内は、この場合、液体としての作動油と気体とが貯留されている。なお、リザーバR内に充填される気体は、作動油の劣化を防止するべく窒素等といった不活性ガスとされているが、それ以外の気体とされてもよい。また、リザーバRは、本実施の形態では、シリンダ1と外筒7との間に形成されているが、シリンダ1とは別個に設けられたタンクによってリザーバRが形成されてもよい。
【0022】
ピストンロッド2は、シリンダ1の
図1中上端に嵌合する環状のロッドガイド8の内周に挿通されて先端側がシリンダ1内に挿入されており、基端側となる
図1中上端がシリンダ1の外方へ突出している。
【0023】
ロッドガイド8は、環状であって、シリンダ1の上端内周に嵌合する小径部8aと、小径部8aの
図1中上端に連なって外筒7の内周に嵌合する大径部8bと、小径部8aの下端外周から
図1中下方へ向けて延びる筒状のケース8cと、
図1中上端となる大気側の内周が拡径されて形成されるシール収容部8dと、シール収容部8dから開口して大径部8bの下端へ通じる圧抜き通路8eとを備えている。また、ロッドガイド8の内周には、ピストンロッド2の外周に摺接する筒状のブッシュ9が装着されている。
【0024】
ロッドガイド8は、シリンダ1の上端内周に小径部8aを嵌合させるとともに大径部8bの外周を外筒7の上端内周に嵌合させて、シリンダ1と外筒7の上端を閉塞する。また、ケース8cは、筒状であって小径部8aの下端の外周から垂下されており方側の内径を拡径して形成されており、内部を伸側室R1に開口させて伸側室R1に面するロック室Lを形成している。また、ケース8cの下端の開口部の内周には、
図1中下方へ向かうほど内径が大きくなるテーパ面8c1が設けられている。
【0025】
ロッドガイド8は、シリンダ1および外筒7の
図1中上端を閉塞するとともに、ブッシュ9内に挿通されるピストンロッド2を支えてピストンロッド2の軸方向への移動を案内する。
【0026】
また、ロッドガイド8の
図1中上方には、ピストンロッド2と外筒7との間をシールする環状のシール部材10が積層されている。シール部材10は、環状板で形成される芯金10aと、芯金10aの内周側に溶着されてピストンロッド2の外周に摺接する環状の内周シール10bと、芯金10aの
図1中下端外周に溶着されて外筒7の内周面に密着する環状の外周シール10cと、芯金10aの下端に溶着されてロッドガイド8のシール収容部8d内に収容されるとともにロッドガイド8の内周と圧抜き通路8eとの間に離着座する環状のチェックシール10dとを備えている。
【0027】
ロッドガイド8にシール部材10を積層すると、内周シール10bの下方部分とチェックシール10dとがシール収容部8d内に収容され、内周シール10bがピストンロッド2の外周に摺接するとともに外周シール10cの外周が外筒7の内周面に密着する。このようにシール部材10は、ピストンロッド2と外筒7との間をシールして緩衝器D内の液体および気体が緩衝器D外へ流出するのを阻止する。
【0028】
なお、チェックシール10dは、伸側室R1からピストンロッド2とブッシュ9との間を通過したのち、内周シール10bによってかき落された液体がシール収容部8d内に貯留されてシール収容部8d内の圧力が高くなると、ロッドガイド8から離座してシール収容部8d内の液体を圧抜き通路8eを介してリザーバRへ戻す。そのため、シール収容部8dが高圧なるのが防止されて、内周シール10bがシール収容部8d内の圧力によってピストンロッド2を過剰に締め付けてピストンロッド2の円滑な移動を妨げることはない。
【0029】
ピストン3は、伸側室R1と圧側室R2とを連通する伸側通路3aおよび圧側通路3bと、伸側通路3aに設けられて伸側室R1から圧側室R2へ向かう作動油の流れのみを許容するとともに当該作動油の流れに抵抗を与える伸側減衰バルブ3cと、圧側通路3bに設けられて圧側室R2から伸側室R1へ向かう作動油の流れのみを許容する圧側チェックバルブ3dとを備えている。
【0030】
さらに、シリンダ1の
図1中下端には外筒7の底部に載置されるバルブケース11が嵌合されている。バルブケース11は、
図1中で下端の外周に外筒7の内周に嵌合するとともにシリンダ1の下端に当接するフランジ11aを備えており、シール部材10、ロッドガイド8およびシリンダ1とともに外筒7内に挿入され、外筒7の上端を外周側から加締めて形成される加締部7aと外筒7の底部とで挟持されて外筒7内で固定される。
【0031】
また、バルブケース11は、圧側室R2とリザーバRとを仕切っており、圧側室R2とリザーバRとを連通する排出通路11bおよび吸込通路11cと、排出通路11bに設けられて圧側室R2からリザーバRへ向かう作動油の流れのみを許容するとともに当該作動油の流れに抵抗を与える圧側減衰バルブ11dと、吸込通路11cに設けられてリザーバRから圧側室R2へ向かう作動油の流れのみを許容する伸側チェックバルブ11eとを備えている。
【0032】
よって、緩衝器Dは、シリンダ1に対してピストン3が
図1中上方へ移動する伸長作動時には、ピストン3の移動によって縮小される伸側室R1の作動油が伸側減衰バルブ3cを通過して拡大する圧側室R2へ移動し、作動油の流れに対して伸側減衰バルブ3cが抵抗を与えて伸側室R1の圧力が上昇するため、伸長作動を妨げる減衰力を発生する。また、緩衝器Dの伸長作動時には、ピストンロッド2がシリンダ1内から退出するため、ピストンロッド2がシリンダ1内から退出する体積分の作動油が伸側チェックバルブ11eを介してリザーバRからシリンダ1内に供給される。
【0033】
また、緩衝器Dは、シリンダ1に対してピストン3が
図1中下方へ移動する収縮作動時には、ピストン3の移動によって縮小される圧側室R2の作動油が圧側チェックバルブ3dを通過して拡大する伸側室R1へ移動し、圧側チェックバルブ3dが作動油の流れに対して然程抵抗を与えないため、伸側室R1と圧側室R2との圧力は略等しくなる。緩衝器Dの収縮作動時には、ピストンロッド2がシリンダ1内に侵入して、ピストンロッド2がシリンダ1内へ侵入する体積分の作動油がシリンダ1内で過剰となるため、過剰分の作動油が圧側減衰バルブ11dを通過してリザーバRへ排出される。このように、作動油がシリンダ1内からリザーバRへ排出される際に、作動油の流れに対して圧側減衰バルブ11dが抵抗を与えるために伸側室R1および圧側室R2の圧力が略等しく上昇する。ここで、ピストン3の圧側室R2の圧力を受ける受圧面積がピストン3の伸側室R1の圧力を受ける受圧面積よりもピストンロッド2の断面積だけ大きいため、伸側室R1と圧側室R2との圧力の上昇によってピストン3を押し上げる力が大きくなり、緩衝器Dは収縮作動を妨げる減衰力を発生する。
【0034】
このように、緩衝器Dは、振動の入力によって伸縮作動を呈すると伸縮を妨げる減衰力を発生する。また、リザーバRは、緩衝器Dの伸縮作動によってシリンダ1内に出入りするピストンロッド2の体積分の作動油をシリンダ1とでやり取りすることによって、シリンダ1内に出入りするピストンロッド2の体積を補償する。なお、本実施の形態における緩衝器Dは、ピストンロッド2がシリンダ1内に出入りする体積の補償をリザーバRとシリンダ1内との液体のやり取りによって行っているが、リザーバRを設ける代わりに、シリンダ1内にフリーピストンやブラダなどによって気体が充填される気室を設けて、シリンダ1内に出入りするピストンロッド2の体積を気室の容積の拡縮によって補償してもよい。よって、緩衝器Dは、本実施の形態のようにリザーバRを備えて複筒型に設定される他にもシリンダ1内に気室を備える単筒型に設定されてもよい。なお、緩衝器Dは、シリンダ1と外筒7との間に通路を形成するために中間筒を備える複筒型の緩衝器であってもよい。
【0035】
つづいて、ピストンロッド2の伸側室R1に面する外周には、環状のサポート4が装着されている。サポート4は、筒部4aと、筒部4aの
図1中上端に連なるフランジ状の支持部4bとを備えており、筒部4aがピストンロッド2の外周にスポット溶接されることなどによってピストンロッド2に取り付けられている。
【0036】
クッション5は、環状であってゴムや発泡ウレタン等で形成されており、ピストンロッド2の伸側室R1に面する外周に嵌合されている。また、クッション5は、ピストンロッド2のサポート4よりも
図1中上方側に配置されて、
図1中でサポート4の支持部4bの反ピストン側面に載置されており、サポート4によってピストン側への移動が規制されている。このように、クッション5は、ピストンロッド2の伸側室R1に面する外周に配置されてサポート4によってピストン側への移動が規制されている。なお、クッション5は、環状とされているので、ピストンロッド2への装着が容易であるが、ピストンロッド2の外周側に配置されてサポート4によってピストン側への移動が規制されていればよいので、必ずしも環状でなくてもよくサポート4に溶着等によって取付けられてもよい。また、サポート4は、クッション5のピストン側への移動を規制できればよいので、その限りにおいてサポート4の構造については任意に設計変更可能であり、図示した構造以外の構造とされてもよい。
【0037】
ロックピース6は、ピストンロッド2の外周であってクッション5の反ピストン側となる
図1中上方側に軸方向へ移動可能に設けられている。ロックピース6は、
図1および
図2に示すように、環状であってピストンロッド2の外周に配置されるピース本体6aと、ピース本体6aから延びてサポート4の支持部4bの外周に摺接する摺接部6bとを備えている。ロックピース6は、本実施の形態では硬質の合成樹脂製とされているが、材質はこれに限定されない。
【0038】
ピース本体6aは、環状であって、内周側にピストンロッド2が挿通された状態でピストンロッド2の外周に配置されており、ケース8cで形成されるロック室Lに軸方向で対向している。ピース本体6aの外径は、ケース8cの内周に嵌合可能な径となっており、ピストンロッド2がシリンダ1内から退出する緩衝器Dの伸長作動時において伸長側のストロークエンド近傍までピストンロッド2が変位すると、ケース8c内で形成したロック室Lに侵入できる。
【0039】
また、ピース本体6aの軸方向長さは、ケース8cの全長よりも長く、ピース本体6aがロック室L内の最深部まで侵入するとロッドガイド8の小径部8aの下端面に当接できる。なお、ピース本体6aのロック室側となる
図2中上端面は、周方向で凹凸面6a2となっており、ピース本体6aがロッドガイド8の小径部8aの下端に当接してもピース本体6aが小径部8aに面接触することが無く、ピース本体6aとロッドガイド8との当接時にロックピース6がロッドガイド8の小径部8aに張り付いてしまうのを防止できる。
【0040】
ピース本体6aの内径は、ピストンロッド2の外径よりも大径となっていて、ピストンロッド2との間に環状の絞り通路Pを形成している。また、ピース本体6aは、ピストンロッド2との間に絞り通路P分でなるクリアランスがもうけられているので、ピストンロッド2に対して径方向へクリアランス分だけ移動できる。
【0041】
また、ピース本体6aの外径がケース8cの内周に嵌合可能な径となっており、ピース本体6aの内径がピストンロッド2の外径よりも大径となっていて、ピース本体6aの内周とピストンロッド2との間のクリアランス分だけピース本体6aのピストンロッド2に対する径方向への移動が許容されるので、ケース8cに対してピース本体6aが偏心していてもピース本体6aがロック室L内に侵入できる。なお、ピース本体6aをピストンロッド2の外周に摺接させてもケース8c内に挿入可能である場合には、ピース本体6aの外周に軸方向に沿って設けた溝やピース本体6aの上端から開口して下端に連通される孔によって絞り通路Pを形成してもよいし、ケース8cの内周に軸方向に沿って設けた溝やケース8cの内径をピース本体6aの外径よりも大径にして形成されるケース8cとピース本体6aとの間の隙間によって絞り通路Pを形成してもよい。
【0042】
摺接部6bは、本実施の形態では、
図2中でピース本体6aの下端外周から下端にかかる部分から下方側へ向けて延びる複数の腕6b1を備えている。また、ロックピース6は、摺接部6bを構成する各腕6b1の先端となる
図2中下端から内周側へ向けて突出する爪6cを備えている。
【0043】
腕6b1は、ピース本体6aに対してピース本体6aの周方向で間隔を空けて等間隔に5つ設けられている。各腕6b1は、ピース本体6aから下方に向けて互いに平行に延びている。
【0044】
つづいて、各腕6b1のピストンロッド側を向く内面に内接する内接円の直径は、サポート4の支持部4bの外径と等しいか僅かに小さく、かつ、クッション5の外径よりも大きい。よって、ピストンロッド2の外周にロックピース6を組付けると、ロックピース6は、各腕6b1の内面をサポート4の支持部4bの外周面に摺接させることができる。また、ピース本体6aの
図1中上端から腕6b1の
図1中上端までの長さは、ケース8cの先端となる
図1中下端からロック室Lの底となる小径部8aまでの長さよりも長く、ピース本体6aは、ロッドガイド8の小径部8aに当接するまでロック室L内に侵入できる。本実施の形態の緩衝器Dでは、ピース本体6aが小径部8aに当接しても腕6b1にケース8cが干渉しないが、ロッドガイド8から荷重が腕6b1に作用しないが、ケース8cに腕6b1の付根を当接させてピース本体6aと小径部8aとの接触を避けることも可能である。
【0045】
爪6cは、腕6b1の先端となる
図2中下端に設けられており、腕6b1の内周面側へ向けて径方向へ突出しており、各爪6cの先端同士に内接する円の直径は、サポート4の支持部4bの外径よりも小さい。また、爪6cは、下端の先端側にテーパ面6c1を備えており、先端へ向かうほど先細りとなる形状となっている。よって、ロックピース6の組付時にピストンロッド2にロックピース6を
図1中上端側から挿入していくと、やがて、サポート4の支持部4bの
図1中上端の外周縁が各爪6cのテーパ面6c1に当接し、さらに、ピストンロッド2のロックピース6内に挿入し続けると、サポート4の支持部4bがテーパ面6c1に押しつけられるので、腕6b1が撓んで爪6cが径方向へ押し退けられる。そして、支持部4bが爪6cを乗り越えると、撓んだ腕6b1が復元力で元に戻って支持部4bの外周面に当接するとともに、爪6cの先端が支持部4bのピストン側面となる
図1中下面に対向する。このようにロックピース6がピストンロッド2の外周に配置されてサポート4の支持部4bに組み付けられると、摺接部6bにおける腕6b1の内面が支持部4bの外周面に摺接するとともに、爪6cが支持部4bのピストン側面に対向するので、ロックピース6は、サポート4から脱落することなく、爪6cが支持部4bのピストン側面に当接するまで、サポート4から離間する方向へ移動できる。このように、爪6cは、ロックピース6のサポート4からの抜けを防止する規制部を構成しており、ロックピース6のサポート4に対する軸方向への移動を許容しつつもロックピース6がサポート4に対して抜ける方向へ移動限界まで到達するとロックピース6がサポート4から抜けて脱落してしまうのを防止している。
【0046】
また、
図1に示すように、ピース本体6aの
図3中下端から腕6b1における爪6cまでの長さXは、サポート4の支持部4bの
図1中下端からクッション5の上端までの長さYよりも長くなっており、爪6cが支持部4bに当接する状態では、ピース本体6aの下端と支持部4bに載置されたクッション5の上端との間に隙間が生じる。そのため、ロックピース6は、クッション5の圧縮変形を考えなければ、爪6cが支持部4bに当接する状態からピース本体6aがクッション5に当接する範囲でピストンロッド2に対して軸方向に往復動可能となっている。
【0047】
また、ピース本体6aの
図2中下端となるピストン側端には、内周から外周に亘って複数条の溝6a1が設けられている。溝6a1は、腕6b1を避けた位置に設けられており、クッション5がピース本体6aに当接しても絞り通路Pが溝6a1を介してロックピース6の外方へ通じるようになっている。
【0048】
緩衝器Dは、以上のように構成されており、以下にその作動を説明する。緩衝器Dが伸縮作動を呈すると減衰力を発生するのは前述した通りであるが、シリンダ1に対してピストン3が
図1中上方へ移動する伸長作動時には、ピストンロッド2がシリンダ1に対して上方へ移動することによって、サポート4に載置されるクッション5およびサポート4の支持部4bの外周に取り付けられたロックピース6も上方へ移動してロッドガイド8におけるケース8cに接近する。
【0049】
そして、
図3(b)に示すように、ロックピース6のピース本体6aがケース8c内のロック室Lに挿入され始めると、ピース本体6aがケース8c内に嵌合してロック室Lと伸側室R1とを絞り通路Pのみを介して連通させるようになる。なお、ピース本体6aがケース8c内に挿入しようとする際、ピース本体6aがケース8cに対して偏心していても、ピース本体6aの
図1中上端外周がケース8cの下端内周に設けられたテーパ面8c1に当接すると、ピース本体6aがテーパ面8c1に倣って径方向へ移動しながらケース8c内に容易に侵入できる。このように、ロックピース6は、ピース本体6aとピストンロッド2との間に環状の絞り通路Pが設けられているために、ピストンロッド2に対して径方向へ移動できるから、ケース8cに対してピース本体6aが偏心していてもロック室Lへ無理なく侵入できる。
【0050】
ピース本体6aがロック室Lに挿入された状態で、さらに、ピストンロッド2がシリンダ1に対して上方へ移動すると、ロック室Lがロックピース6によって圧縮されるため、ロック室L内の液体は、ピース本体6aとピストンロッド2との間の絞り通路P、ピース本体6aとクッション5との間および腕6b1,6b1間を通過して伸側室R1へ移動する。絞り通路Pは、このような液体の流れに対して抵抗を与えるので、ロック室L内の圧力が上昇してロックピース6を押し下げてピース本体6aをクッション5に当接させる。ピース本体6aにクッション5が当接しても、溝6a1は閉塞されないのでロック室Lと伸側室R1との連通は断たれない。
【0051】
そして、ロック室L内の圧力上昇によって、ピース本体6aとクッション5とが当接し、ロック室Lの圧力上昇による荷重がサポート4およびピストンロッド2に作用し、ピストンロッド2のシリンダ1に対する上方側への移動を妨げる。よって、このように構成された緩衝器Dでは、ロックピース6がロック室L内に侵入して、緩衝器Dが更に伸長しようとすると、前述のロック室Lの圧力上昇による荷重によって緩衝器Dの伸長を妨げる液圧ロック機能が発揮される。
【0052】
さらに、ピース本体6aがロック室Lに挿入されてから、ピストンロッド2がシリンダ1に対して上方へ移動しつづけると、やがて、
図3(c)に示すように、ピース本体6aの上端がロッドガイド8のロック室Lの底である小径部8aの下端に当接してロックピース6のケース8cに対する上方への移動が規制されてロック室Lを最圧縮する。そして、それ以上の緩衝器Dが伸長しようとすると、ロックピース6の上方への移動が規制されているため、クッション5が圧縮されてピストンロッド2のシリンダ1に対する上方への移動を妨げる弾発力を発揮する。このように、緩衝器Dは、ロックピース6がロック室Lを最圧縮すると、クッション5の圧縮に起因する弾発力によって伸長を妨げる荷重を発生する。クッション5の圧縮による弾発力は、液圧ロック機能による荷重よりも大きく、緩衝器Dは最伸長状態となると大きな力を発生して伸長作動を妨げる。
【0053】
ロック室L内にロックピース6が侵入した後、緩衝器Dが収縮してピストンロッド2がシリンダ1に対して下方へ移動すると、ロックピース6に対してもピストンロッド2が下方へ移動するが、ロックピース6の爪6cがサポート4の支持部4bのピストン側端に当接すると、ロックピース6もピストンロッド2とともに下方へ移動してロック室Lから退出する。ロック室L内にロックピース6が侵入してもロック室Lが絞り通路Pを介して伸側室R1に連通されるので、ロックピース6が退出する際にロック室L内に伸側室R1から液体が供給される。よって、ロックピース6がロック室Lから抜け出る際にピストンロッド2の下方への移動に過剰な抵抗を与えることもない。
【0054】
このように、緩衝器Dは、伸長作動を呈してストロークエンド近傍まで伸長すると、まずはロック室L内の圧力を上昇させて液圧ロック機能による荷重によって伸長作動を妨げるとともに、最伸長状態となるクッション5の弾発力によって伸長作動を妨げる。
【0055】
以上、本実施の形態の緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストンロッド2と、ピストンロッド2に連結されるとともにシリンダ1内に移動可能に挿入されてシリンダ1内を液体が充満する伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン3と、シリンダ1に対して軸方向に不動であってピストン3に軸方向で対向するロック室Lを形成するケース8cと、ピストンロッド2の伸側室R1に面する外周に装着されるサポート4と、ピストンロッド2の伸側室R1に面する外周に配置されてサポート4によってピストン側への移動が規制されるクッション5と、ピストンロッド2の外周であってクッション5の反ピストン側に軸方向へ移動可能に設けられてロック室L内に侵入可能なロックピース6とを備えている。
【0056】
このように構成された緩衝器Dでは、シリンダ1に対して軸方向へ不動のケース8cを設けるとともに、ピストンロッド2にロックピース6を設けることによって、伸長作動時にストロークエンドの近傍でロックピース6がロック室L内に侵入して液圧ロック機能を発揮して緩衝器Dの伸長を抑制できるだけでなく、伸長が進んで最伸長時にはクッション5の圧縮によって大きな荷重を発生させて緩衝器Dの伸長を停止させ、最伸長時の衝撃を緩和できる。
【0057】
よって、緩衝器Dは、良路走行時には減衰力を低くしてもストロークエンドの近傍で弾性反発を生じない液圧ロック機能を発揮して制動時などで生じる車体のピッチング挙動の際の乗心地を向上しつつ、最伸長するとクッション5によって大きな力を発揮してリバウンドを抑制できるので、近年の軽自動車や小型車への利用に最適となる。
【0058】
そして、以上のように構成された緩衝器Dによれば、サポート4とクッション5とを備えてクッション5の圧縮のみによって最伸長時の衝撃を緩和する一般的な緩衝器に対して、ケース8cとロックピース6の追加によって伸長作動時に液圧ロック機能を発揮できるから、従来の緩衝器のようにシリンダの端部にテーパ状の拡径部を設けたり、弾性リング、セグメントやばねといった多くの部品を追加したりする必要が無い。よって、本実施の形態の緩衝器Dによれば、従来の緩衝器で必要であったシリンダを拡径させる加工および多くの部品をピストンロッド2の外周への設置が不要となるので、加工コストが低減されるとともに部品点数も削減できる。以上、本実施の緩衝器Dによれば、液圧ロック機能を発揮できるとともに製造が容易で製造コストを低減できる。
【0059】
また、本実施の形態の緩衝器Dにおけるロックピース6は、環状であってピストンロッド2の外周に配置されてピストンロッド2との間に環状の絞り通路Pを形成するとともにロック室Lに侵入可能なピース本体6aを備えている。このように構成された緩衝器Dによれば、ロック室Lにピース本体6aが侵入すると絞り通路Pの抵抗に応じた大きさの荷重を発生させることができ、絞り通路Pの流路面積の設定によって荷重を調整できるとともに、ピース本体6aの内周とピストンロッド2との間のクリアランスによってピース本体6aがクッション5に対して上下方向へ容易に移動できるので、ロックピース6がロック室L内に侵入した後のクッション5の圧縮がスムーズになる。
【0060】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dにおけるロックピース6は、サポート4の外周に摺接する摺接部6bを備えている。このように構成された緩衝器Dによれば、サポート4によってロックピース6を調心してケース8cおよびクッション5に対してロックピース6を径方向にて位置決めでき、ケース8c内へロックピース6の挿入が容易になる。
【0061】
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、ロックピース6におけるピース本体6aがケース8c側を向く面に周方向に沿う凹凸面6a2を有している。このように構成された緩衝器Dによれば、ピース本体6aのケース側を向く
図1中上面が凹凸面6a2となっているので、ピース本体6aがロック室Lに深く侵入してロック室Lの底面となるロッドガイド8の小径部8aの下面に当接してもピース本体6aの上面全体が小径部8aに当接しないので、ピース本体6aのロック室Lの底面への貼り付きが防止される。よって、緩衝器Dが最伸長してピース本体6aがロック室Lの底面へ当接してから収縮作動を呈する場合に、ピース本体6aが速やかにロック室L内から後退でき、緩衝器Dの収縮作動に抵抗を与えずに済む。
【0062】
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、ロックピース6が摺接部6bにサポート4からの抜けを阻止する爪(規制部)6cを備えている。このように構成された緩衝器Dによれば、伸長作動時にロックピース6がロック室L内に侵入して液圧ロック機能を発揮した後、伸縮方向が切り換わって収縮作動を呈する際に、ロックピース6の爪(規制部)6cがサポート4のピストン側面に引っ掛かるため、ロックピース6がピストンロッド2とともにケース8cに対して
図1中下方へ移動するので、ロックピース6がロック室L内に留まってしまうことがなく、伸縮を繰り返しても安定して液圧ロック機能を発揮できる。なお、規制部は、ロックピース6がサポート4に対してある程度の距離を軸方向へ移動するのを許容しつつ、ピストンロッド2が
図1中で下方へ移動する際にロック室L内に侵入したロックピース6がロック室L内に取り残されないようにピストンロッド2の収縮側への移動に追従できるようにサポート4からの抜けを防止できればよい。よって、規制部は、摺接部6bに設けられる爪6c以外にも、ピストンロッド2の外周に設けた軸方向に沿う溝と摺接部6bに設けられて当該溝内に挿入されるピンとで構成されてもよいし、摺接部6bに設けられた軸方向に沿う長孔と、サポート4或いはピストンロッド2に設けられて前記長孔内に挿入されるピンとによって構成されてもよい。
【0063】
そしてさらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、ロックピース6がクッション5に対して軸方向で最も離間すると、ロックピース6とクッション5との間に隙間が形成され、摺接部6bは、ピース本体6aに対して周方向で間隔を空けて延びる複数の腕6b1によって構成されている。このように構成された緩衝器Dでは、伸長作動時にロックピース6がロック室L内に侵入して液圧ロック機能を発揮した後、伸縮方向が切り換わって収縮作動を呈してロックピース6がロック室Lから退出する際に、ロックピース6とクッション5とが離間してピース本体6aの内周であってロック室Lに連通される絞り通路Pがロックピース6とクッション5との間の隙間と腕6b1,6b1間の隙間とを介して伸側室R1に連通されるようになる。摺接部6bが複数の腕6b1によって構成されており、腕6b1,6b1間に大きな隙間を形成できるとともに、ロックピース6とクッション5とが離間して隙間が形成されるので、ロックピース6のロック室Lからの退出時に、前記隙間によって伸側室R1からロック室Lへ移動する液体の流れに与えられる抵抗を極小さくでき、絞り通路Pの抵抗以外に余計な抵抗を与えずに済むので、ロック室L内からロックピース6を速やかに退出させることができ、緩衝器Dの収縮作動に抵抗を与えずに済む。
【0064】
また、摺接部6bが複数の腕6b1で構成されているので、前述したように、ロックピース6がロック室Lから退出する際に、腕6b1,6b1間に伸側室R1からロック室Lへ向かう液体の通過を然程の抵抗を与えずに許容する隙間を形成できる。
【0065】
以上のように摺接部6bが複数の腕6b1を備えていると前記した種々の利点を享受できるが、摺接部6bは、側方に伸側室R1を絞り通路Pへ連通させる孔や切欠を備えた円筒によって形成されてもよい。このように摺接部6bが円筒状である場合、爪6cは円筒の下端に環状に設けられてもよいし周方向で間欠的に設けられてもよい。
【0066】
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、ロック室Lを形成するケース8cがロッドガイド8に設けられているので、他にケースを独立に設ける場合と比較すれば部品点数を少なくでき、製造コストをより一層低減できるが、ケースはロッドガイド8とは別部品とされてもよく、シリンダ1或いは外筒7にロッドガイド8とは無関係に固定されてもよいし、ロッドガイド8に別部品として装着されてもよい。
【0067】
なお、ロックピース6は、接着や融着等によってクッション5に一体化されてもよく、その場合、クッション5がサポート4の外周を把持するなどしてサポート4に取り付け得るようにすればよい。また、ロック室Lは、ロッドガイド8におけるケース8cの内側に形成されているが、ロッドガイド8の内周側に環状のケースを設けて当該ケースとシリンダ1との間でロック室Lを形成してもよい。このようにロッドガイド8の外周側にロック室Lを設ける場合、ロックピース6がロック室L内に侵入可能なようにロック室Lに対向する環状のピース本体を備えていればよい。
【0068】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0069】
1・・・シリンダ、2・・・ピストンロッド、3・・・ピストン、4・・・サポート、5・・・クッション、6・・・ロックピース、6a・・・ピース本体、6a2・・・凹凸面、6b・・・摺接部、6b1・・・腕、6c・・・爪(規制部)、8c・・・ケース、D・・・緩衝器、P・・・戻り通路、R・・・リザーバ、R1・・・伸側室、R2・・・圧側室