(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003514
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】支持基材及びポリマー部材を有しかつ無機粒子を有する複合体、その製造方法、並びにこの方法に好適なポリマー粒子
(51)【国際特許分類】
B32B 3/10 20060101AFI20241226BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20241226BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
B32B3/10
B32B27/20 Z
C08J5/18 CER
C08J5/18 CEZ
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024182196
(22)【出願日】2024-10-17
(62)【分割の表示】P 2020039954の分割
【原出願日】2020-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】添田 淳史
(72)【発明者】
【氏名】畳開 真之
(57)【要約】
【課題】本開示は、支持基材及びポリマー部材を有しかつ無機粒子を有する複合体を、優れた品質を確保しつつ製造するための方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ポリマー粒子を提供すること、支持基材を提供すること、及び支持基材上にポリマー粒子を堆積させて支持基材上にポリマー粒子の層を形成することを含み、ポリマー粒子又は支持基材のうちの少なくともいずれかが無機粒子を含む、ポリマー粒子の層-支持基材複合体の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー粒子を提供すること、
支持基材を提供すること、及び
前記支持基材上に前記ポリマー粒子を堆積させて、前記支持基材上にポリマー粒子層を形成すること、
を含み、
前記ポリマー粒子又は前記支持基材のうちの少なくともいずれかが、無機粒子を含む、
ポリマー粒子層-支持基材複合体の製造方法。
【請求項2】
前記ポリマー粒子が、無機粒子含有ポリマー粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマー粒子が、無機粒子含有ポリマー粒子と無機粒子非含有ポリマー粒子との混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記支持基材への前記ポリマー粒子の堆積が、下記の操作を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法:
分散媒に前記ポリマー粒子が分散している分散体を提供すること、及び
前記分散体を前記支持基材上に塗布し、そして乾燥させること。
【請求項5】
前記支持基材が、無機粒子非含有ポリマー基材である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記支持基材が、無機粒子含有ポリマー基材である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記支持基材が、下記である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法:
ポリマー基材及び追加のポリマー基材を有しており、前記ポリマー基材及び前記追加のポリマー基材が、少なくとも部分的に、互いに重なり合って配置されており、かつ、前記ポリマー基材及び前記追加のポリマー基材のうちの少なくともいずれかが無機粒子を含む、追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体。
【請求項8】
前記支持基材が、無機基材である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法によってポリマー粒子層-支持基材複合体を製造すること、及び
前記ポリマー粒子層-支持基材複合体の前記ポリマー粒子層を熱プレスすることによって、前記支持基材上にポリマー基材を形成すること、
を含む、ポリマー基材-支持基材複合体の製造方法。
【請求項10】
前記支持基材が、剥離用基材上に保持されており、かつ
前記ポリマー粒子層を熱プレスする前に、又は前記ポリマー粒子層を熱プレスした後に、前記剥離用基材から前記支持基材を剥がすこと、
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記支持基材として剥離用基材を用いて、請求項9に記載の方法によって、ポリマー基材-支持基材複合体を得ること、
前記ポリマー基材-支持基材複合体において、剥離用基材である前記支持基材から前記ポリマー基材を剥がすことによって、ポリマー基材を得ること、
を含む、ポリマー基材の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法によって、ポリマー基材を製造すること、
追加のポリマー基材を提供すること、及び、
前記ポリマー基材と前記追加のポリマー基材とを互いに重ね合わせることを含む、
追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体の製造方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法によって、ポリマー基材を製造すること、
無機基材を提供すること、及び、
前記ポリマー基材を、前記無機基材上に配置すること、
を含む、ポリマー基材-無機基材複合体の製造方法。
【請求項14】
請求項9又は13に記載の方法によって、ポリマー基材-無機基材複合体を製造すること
追加のポリマー基材を提供すること、及び
前記追加のポリマー基材を、前記ポリマー基材-無機基材複合体のポリマー基材の上に配置すること、
を含む、追加のポリマー基材-ポリマー基材-無機基材複合体の製造方法。
【請求項15】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法によってポリマー粒子層-支持基材複合体を得ること、
前記ポリマー粒子層-支持基材複合体の上に、無機粒子非含有ポリマー粒子、無機粒子含有ポリマー粒子、又は無機粒子含有ポリマー粒子と無機粒子非含有ポリマー粒子との混合物を堆積させて、前記ポリマー粒子層-支持基材複合体の上に、追加のポリマー粒子層を形成すること、
を含む、追加のポリマー粒子層-ポリマー粒子層-支持基材複合体の製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法によって、追加のポリマー粒子層-ポリマー粒子層-支持基材複合体を製造すること、
前記追加のポリマー粒子層-ポリマー粒子層-支持基材複合体の前記ポリマー粒子層及び前記追加のポリマー粒子層を熱プレスすることによって、前記支持基材上に、ポリマー基材、及び追加のポリマー基材を形成すること、
を含む、追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体の製造方法。
【請求項17】
前記支持基材として剥離用基材を用いて、請求項16に記載の方法によって、追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体を得ること、
前記追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体において、剥離用基材である前記支持基材から追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体を剥がすことによって、追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体を得ること
を含む、追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体の製造方法。
【請求項18】
請求項9、10、12及び17のいずれか一項に記載の方法によって、少なくとも部分的に互いに重なり合っているポリマー基材及び追加のポリマー基材を有している追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体を製造すること、ここで、前記ポリマー基材が、無機粒子含有ポリマー基材であり、かつ/又は、前記追加のポリマー基材が、追加の無機粒子含有ポリマー基材である、
無機基材を提供すること、並びに
前記無機基材に、無機粒子ポリマー基材である前記ポリマー基材又は追加の無機粒子含有ポリマー基材である前記追加のポリマー基材が前記無機基材の方を向くようにして、前記追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体を配置すること、
を含む、追加のポリマー基材-ポリマー基材-無機基材複合体の製造方法。
【請求項19】
積層されている少なくとも3つのポリマー基材を有しているポリマー基材積層体であって、前記ポリマー基材それぞれにおける無機粒子の含有量が前記積層体の最外層から始めて積層方向に沿って段階的に増加又は減少するように、前記少なくとも3つのポリマー基材が積層されているポリマー基材積層体、を製造するための、下記を含む方法:
(a)無機粒子非含有ポリマー基材、無機粒子含有ポリマー基材、及び、少なくとも2つのポリマー基材から構成される複合体、からなる群から、少なくとも2つの材料を選択すること、ここで、前記少なくとも2つの材料は、請求項11に記載の方法によって製造されたポリマー基材、及び/又は、請求項9、10、12、16及び17のいずれか一項に記載の方法によって製造された、少なくとも2つのポリマー基材から構成される複合体、を含み、かつ、合計で少なくとも3つのポリマー基材を含む、
(b)無機粒子の含有量が積層方向に沿って段階的に増加又は減少するように、前記少なくとも2つの材料を積層して、ポリマー基材積層体を得ること。
【請求項20】
少なくとも1つの無機粒子含有ポリマー基材及び少なくとも1つの無機粒子非含有ポリマー基材を有しており、無機粒子含有ポリマー基材と無機粒子非含有ポリマー基材とが交互に積層された構造を有しているポリマー基材積層体を製造するための、下記を含む方法:
(a)無機粒子非含有ポリマー基材、無機粒子含有ポリマー基材、並びに、少なくとも1つの無機粒子含有ポリマー基材及び少なくとも1つの無機粒子非含有ポリマー基材から構成されておりかつ無機粒子含有ポリマー基材と無機粒子非含有ポリマー基材とが交互に積層された構造を有している複合体、からなる群から、少なくとも2つの材料を選択すること、ここで、前記少なくとも2つの材料は、請求項11に記載の方法によって製造されたポリマー基材、又は、請求項9、10、12、16及び17のいずれか一項に記載の方法によって製造された複合体、を含み、かつ、合計で少なくとも3つのポリマー基材を含む、
(b)前記少なくとも2つの材料を、無機粒子含有ポリマー基材と無機粒子非含有ポリマー基材とが隣り合うように積層して、ポリマー基材積層体を製造すること。
【請求項21】
請求項9、10、16、19及び20のいずれか一項に記載の方法によって、少なくとも3つのポリマー基材を有するポリマー基材積層体を製造すること、
無機基材、又は、ポリマー基材及び無機基材を有する複合体、を提供すること、並びに
前記ポリマー基材積層体を、前記無機基材の上に、又は前記複合体の前記ポリマー基材の上に、配置すること、
を含む、ポリマー基材積層体-無機基材複合体の製造方法。
【請求項22】
無機基材、又は、ポリマー基材及び無機基材を有する複合体、を提供すること、並びに
前記無機基材の上に又は前記複合体の前記ポリマー基材の上に、請求項19又は20に記載の方法によって、前記ポリマー基材積層体を製造すること、
を含む、ポリマー基材積層体-無機基材複合体の製造方法。
【請求項23】
前記ポリマー基材及び無機基材を有する複合体を、請求項8,13,14,16及び18のいずれか一項に記載の方法によって製造する、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
ポリマー、並びに
金属及び半金属、金属及び半金属の酸化物、金属及び半金属の窒化物、金属及び半金属の炭化物、炭素材料、並びにそれらの組み合わせからなる群より選択され、一次粒径が1nm~500nmであり、かつ前記ポリマー中に分散している、無機粒子、
を含む、無機粒子含有ポリマー粒子。
【請求項25】
前記無機粒子が、シリコン粒子である、請求項24に記載の無機粒子含有ポリマー粒子。
【請求項26】
前記ポリマーが、オレフィンポリマーである、請求項24又は25に記載の無機粒子含有ポリマー粒子。
【請求項27】
前記ポリマーが、シクロオレフィンポリマーである、請求項24~26のいずれか一項に記載の無機粒子含有ポリマー粒子。
【請求項28】
カップリング剤をさらに含む、請求項24~27のいずれか一項に記載の無機粒子含有ポリマー粒子。
【請求項29】
平均粒径が0.5μm~100μmである、請求項24~28のいずれか一項に記載の無機粒子含有ポリマー粒子。
【請求項30】
無機粒子非含有ポリマー粒子及び/又は請求項24~29のいずれか一項に記載の無機粒子含有ポリマー粒子、並びに分散媒を含む、分散体。
【請求項31】
前記分散媒が、2-プロパノール、エチレングリコール、及びターピネオールのうち少なくとも1種類を含む、請求項30に記載の分散体。
【請求項32】
ポリマー基材、及び
前記ポリマー基材に堆積されている、ポリマー粒子層
を有しており、かつ、
前記ポリマー粒子層が、請求項24~29のいずれか一項に記載の無機粒子含有ポリマー粒子を含む、
ポリマー粒子層-ポリマー基材複合体。
【請求項33】
ポリマー基材、及び
前記ポリマー基材に堆積されている、ポリマー粒子層
を有しており、かつ、
前記ポリマー粒子層が、無機粒子非含有ポリマー粒子からなる、
ポリマー粒子層-ポリマー基材複合体。
【請求項34】
前記ポリマー基材が、無機粒子含有ポリマー基材である、請求項33に記載の複合体。
【請求項35】
ポリマー基材、
前記ポリマー基材に堆積されている、ポリマー粒子層、
前記ポリマー粒子層に堆積されている、追加のポリマー粒子層、
を含む、追加のポリマー粒子層-ポリマー粒子層-ポリマー基材複合体。
【請求項36】
前記ポリマー基材、前記ポリマー粒子層、前記追加のポリマー粒子層のうちの少なくともいずれかが、無機粒子を有している、請求項35に記載の複合体。
【請求項37】
ポリマー基材、及び追加のポリマー基材を有しており、
前記ポリマー基材及び前記追加のポリマー基材のうちの少なくともいずれかが、無機粒子を有しており、
前記ポリマー基材及び前記追加のポリマー基材が、少なくとも部分的に、互いに重なり合って配置されており、かつ
前記ポリマー基材と前記追加のポリマー基材との界面が、平坦である、
追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体。
【請求項38】
前記ポリマー基材及び前記追加のポリマー基材のうちの少なくともいずれかが、カップリング剤をさらに含む、請求項37に記載の複合体。
【請求項39】
前記ポリマー基材及び前記追加のポリマー基材が、膜状又はフィルム状である、請求項37又は38に記載の複合体。
【請求項40】
積層されている少なくとも3つのポリマー基材を含有し、かつ
隣接するポリマー基材の界面のうちの少なくとも1つが、平坦である、
ポリマー基材積層体。
【請求項41】
前記ポリマー基材積層体を構成する前記少なくとも3つのポリマー基材における無機粒子の含有量が、それぞれ、互いに異なっている、請求項40に記載の積層体。
【請求項42】
前記ポリマー基材積層体を構成する前記少なくとも3つのポリマー基材における無機粒子の含有量が、積層方向に沿って段階的に増加又は減少するように、前記ポリマー基材が積層されている、
請求項41に記載の積層体。
【請求項43】
少なくとも1つの無機粒子非含有ポリマー基材及び少なくとも1つの無機粒子含有ポリマー基材を有しており、かつ、無機粒子非含有ポリマー基材及び無機粒子含有ポリマー基材が交互に積層された構造を有している、
請求項40に記載の積層体。
【請求項44】
光学用である、請求項32~40のいずれか一項に記載の複合体、又は請求項41~43のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項45】
シクロオレフィンポリマー、及び
一次粒径が1nm~500nmであるシリコン粒子
を含む、膜状又はフィルム状基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、支持基材及びポリマー部材を有しかつ無機粒子を有する複合体並びにその製造方法に関する。
【0002】
本開示は、また、上記の方法に好適に用いることができるポリマー粒子及び分散体にも関する。さらに、本開示は、ポリマー基材、ポリマー基材及び支持基材を含む複合体、ポリマー基材及び追加のポリマー基材を含む複合体、ポリマー基材及び無機基材を含む複合体、ポリマー基材積層体、並びにポリマー基材積層体及び無機基材を含む複合体、並びにそれらの製造方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
ポリマー部材、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、シクロオレフィンポリマーなどのポリオレフィン系ポリマー基材は、軽さ、機械的強度、耐薬品性などに優れていることから、樹脂フィルム、不織布、自動車用部品、電気機器用部品、カメラレンズなどの成形品に幅広く用いられている。これに対して、金属、半導体、又はそれらの酸化物等の無機材料は、ポリマー部材とは異なる機械的、熱的、光学的、及び化学的性質を有する。
【0004】
したがって、ポリマー部材を無機基材に接合してポリマー部材-無機基材複合体を製造し、それらの異なる性質を好ましく利用することが検討されている。
【0005】
さらに、このようなポリマー部材-無機基材複合体に、無機粒子を含有するポリマーをさらに堆積することによって、新たな特性を有する複合体を得ることも検討されている。
【0006】
ここで、上述のような複合体を製造する際に、上層を形成するために用いられる溶剤によって下層の支持基材が望ましくない影響を受けるおそれがある。
【0007】
特許文献1は、有機機能層が積層された有機薄膜積層体の製造方法を開示している。当該文献では、上層の溶媒が下層に浸透することをブロック可能な中間層を形成することによって、上層(第2発光層側)を湿式法で形成する際に下層(第1発光層側)に対する溶媒によるダメージを低減したことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、支持基材及びポリマー部材を有しかつ無機粒子を有する複合体を製造する際に、溶剤によって支持基材が望ましくない影響を受けるおそれがあった。
【0010】
この背景において、本開示は、支持基材及びポリマー部材を有しかつ無機粒子を有する複合体を、優れた品質を確保しつつ製造するための方法を提供することを目的とする。
【0011】
また、本開示は、上記の方法に好適なポリマー粒子及び分散体を提供することを目的とする。さらに本開示は、優れた品質を有するポリマー基材、ポリマー基材及び支持基材を含む複合体、ポリマー基材及び追加のポリマー基材を含む複合体、ポリマー基材及び無機基材を含む複合体、ポリマー基材積層体、並びにポリマー基材積層体及び無機基材を含む複合体、並びにそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題に対して、本件の発明者らは、下記の態様を有する本発明を見出した:
〈態様1〉
ポリマー粒子を提供すること、
支持基材を提供すること、及び
前記支持基材上に前記ポリマー粒子を堆積させて、前記支持基材上にポリマー粒子層を形成すること、
を含み、
前記ポリマー粒子又は前記支持基材のうちの少なくともいずれかが、無機粒子を含む、
ポリマー粒子層-支持基材複合体の製造方法。
〈態様2〉
前記ポリマー粒子が、無機粒子含有ポリマー粒子である、態様1に記載の方法。
〈態様3〉
前記ポリマー粒子が、無機粒子含有ポリマー粒子と無機粒子非含有ポリマー粒子との混合物である、態様1に記載の方法。
〈態様4〉
前記支持基材への前記ポリマー粒子の堆積が、下記の操作を含む、態様1~3のいずれか一項に記載の方法:
分散媒に前記ポリマー粒子が分散している分散体を提供すること、及び
前記分散体を前記支持基材上に塗布し、そして乾燥させること。
〈態様5〉
前記支持基材が、無機粒子非含有ポリマー基材である、態様1~4のいずれか一項に記載の方法。
〈態様6〉
前記支持基材が、無機粒子含有ポリマー基材である、態様1~4のいずれか一項に記載の方法。
〈態様7〉
前記支持基材が、下記である、態様1~4のいずれか一項に記載の方法:
ポリマー基材及び追加のポリマー基材を有しており、前記ポリマー基材及び前記追加のポリマー基材が、少なくとも部分的に、互いに重なり合って配置されており、かつ、前記ポリマー基材及び前記追加のポリマー基材のうちの少なくともいずれかが無機粒子を含む、追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体。
〈態様8〉
前記支持基材が、無機基材である、態様1~4のいずれか一項に記載の方法。
〈態様9〉
態様1~8のいずれか一項に記載の方法によってポリマー粒子層-支持基材複合体を製造すること、及び
前記ポリマー粒子層-支持基材複合体の前記ポリマー粒子層を熱プレスすることによって、前記支持基材上にポリマー基材を形成すること、
を含む、ポリマー基材-支持基材複合体の製造方法。
〈態様10〉
前記支持基材が、剥離用基材上に保持されており、かつ
前記ポリマー粒子層を熱プレスする前に、又は前記ポリマー粒子層を熱プレスした後に、前記剥離用基材から前記支持基材を剥がすこと、
をさらに含む、態様9に記載の方法。
〈態様11〉
前記支持基材として剥離用基材を用いて、態様9に記載の方法によって、ポリマー基材-支持基材複合体を得ること、
前記ポリマー基材-支持基材複合体において、剥離用基材である前記支持基材から前記ポリマー基材を剥がすことによって、ポリマー基材を得ること、
を含む、ポリマー基材の製造方法。
〈態様12〉
態様11に記載の方法によって、ポリマー基材を製造すること、
追加のポリマー基材を提供すること、及び、
前記ポリマー基材と前記追加のポリマー基材とを互いに重ね合わせることを含む、
追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体の製造方法。
〈態様13〉
態様11に記載の方法によって、ポリマー基材を製造すること、
無機基材を提供すること、及び、
前記ポリマー基材を、前記無機基材上に配置すること、
を含む、ポリマー基材-無機基材複合体の製造方法。
〈態様14〉
態様9又は13に記載の方法によって、ポリマー基材-無機基材複合体を製造すること
追加のポリマー基材を提供すること、及び
前記追加のポリマー基材を、前記ポリマー基材-無機基材複合体のポリマー基材の上に配置すること、
を含む、追加のポリマー基材-ポリマー基材-無機基材複合体の製造方法。
〈態様15〉
態様1~8のいずれか一項に記載の方法によってポリマー粒子層-支持基材複合体を得ること、
前記ポリマー粒子層-支持基材複合体の上に、無機粒子非含有ポリマー粒子、無機粒子含有ポリマー粒子、又は無機粒子含有ポリマー粒子と無機粒子非含有ポリマー粒子との混合物を堆積させて、前記ポリマー粒子層-支持基材複合体の上に、追加のポリマー粒子層を形成すること、
を含む、追加のポリマー粒子層-ポリマー粒子層-支持基材複合体の製造方法。
〈態様16〉
態様15に記載の方法によって、追加のポリマー粒子層-ポリマー粒子層-支持基材複合体を製造すること、
前記追加のポリマー粒子層-ポリマー粒子層-支持基材複合体の前記ポリマー粒子層及び前記追加のポリマー粒子層を熱プレスすることによって、前記支持基材上に、ポリマー基材、及び追加のポリマー基材を形成すること、
を含む、追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体の製造方法。
〈態様17〉
前記支持基材として剥離用基材を用いて、態様16に記載の方法によって、追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体を得ること、
前記追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体において、剥離用基材である前記支持基材から追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体を剥がすことによって、追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体を得ること
を含む、追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体の製造方法。
〈態様18〉
態様9、10、12及び17のいずれか一項に記載の方法によって、少なくとも部分的に互いに重なり合っているポリマー基材及び追加のポリマー基材を有している追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体を製造すること、ここで、前記ポリマー基材が、無機粒子含有ポリマー基材であり、かつ/又は、前記追加のポリマー基材が、追加の無機粒子含有ポリマー基材である、
無機基材を提供すること、並びに
前記無機基材に、無機粒子ポリマー基材である前記ポリマー基材又は追加の無機粒子含有ポリマー基材である前記追加のポリマー基材が前記無機基材の方を向くようにして、前記追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体を配置すること、
を含む、追加のポリマー基材-ポリマー基材-無機基材複合体の製造方法。
〈態様19〉
積層されている少なくとも3つのポリマー基材を有しているポリマー基材積層体であって、前記ポリマー基材それぞれにおける無機粒子の含有量が前記積層体の最外層から始めて積層方向に沿って段階的に増加又は減少するように、前記少なくとも3つのポリマー基材が積層されているポリマー基材積層体、を製造するための、下記を含む方法:
(a)無機粒子非含有ポリマー基材、無機粒子含有ポリマー基材、及び、少なくとも2つのポリマー基材から構成される複合体、からなる群から、少なくとも2つの材料を選択すること、ここで、前記少なくとも2つの材料は、態様11に記載の方法によって製造されたポリマー基材、及び/又は、態様9、10、12、16及び17のいずれか一項に記載の方法によって製造された、少なくとも2つのポリマー基材から構成される複合体、を含み、かつ、合計で少なくとも3つのポリマー基材を含む、
(b)無機粒子の含有量が積層方向に沿って段階的に増加又は減少するように、前記少なくとも2つの材料を積層して、ポリマー基材積層体を得ること。
〈態様20〉
少なくとも1つの無機粒子含有ポリマー基材及び少なくとも1つの無機粒子非含有ポリマー基材を有しており、無機粒子含有ポリマー基材と無機粒子非含有ポリマー基材とが交互に積層された構造を有しているポリマー基材積層体を製造するための、下記を含む方法:
(a)無機粒子非含有ポリマー基材、無機粒子含有ポリマー基材、並びに、少なくとも1つの無機粒子含有ポリマー基材及び少なくとも1つの無機粒子非含有ポリマー基材から構成されておりかつ無機粒子含有ポリマー基材と無機粒子非含有ポリマー基材とが交互に積層された構造を有している複合体、からなる群から、少なくとも2つの材料を選択すること、ここで、前記少なくとも2つの材料は、態様11に記載の方法によって製造されたポリマー基材、又は、態様9、10、12、16及び17のいずれか一項に記載の方法によって製造された複合体、を含み、かつ、合計で少なくとも3つのポリマー基材を含む、
(b)前記少なくとも2つの材料を、無機粒子含有ポリマー基材と無機粒子非含有ポリマー基材とが隣り合うように積層して、ポリマー基材積層体を製造すること。
〈態様21〉
態様9、10、16、19又は20に記載の方法によって、少なくとも3つのポリマー基材を有するポリマー基材積層体を製造すること、
無機基材、又は、ポリマー基材及び無機基材を有する複合体、を提供すること、並びに
前記ポリマー基材積層体を、前記無機基材の上に、又は前記複合体の前記ポリマー基材の上に、配置すること、
を含む、ポリマー基材積層体-無機基材複合体の製造方法。
〈態様22〉
無機基材、又は、ポリマー基材及び無機基材を有する複合体、を提供すること、並びに
前記無機基材の上に又は前記複合体の前記ポリマー基材の上に、態様19又は20に記載の方法によって、前記ポリマー基材積層体を製造すること、
を含む、ポリマー基材積層体-無機基材複合体の製造方法。
〈態様23〉
前記ポリマー基材及び無機基材を有する複合体を、態様8,13,14,16及び18のいずれか一項に記載の方法によって製造する、態様21又は22に記載の方法。
〈態様24〉
ポリマー、並びに
金属及び半金属、金属及び半金属の酸化物、金属及び半金属の窒化物、金属及び半金属の炭化物、炭素材料、並びにそれらの組み合わせからなる群より選択され、一次粒径が1nm~500nmであり、かつ前記ポリマー中に分散している、無機粒子、
を含む、無機粒子含有ポリマー粒子。
〈態様25〉
前記無機粒子が、シリコン粒子である、態様24に記載の無機粒子含有ポリマー粒子。
〈態様26〉
前記ポリマーが、オレフィンポリマーである、態様24又は25に記載の無機粒子含有ポリマー粒子。
〈態様27〉
前記ポリマーが、シクロオレフィンポリマーである、態様24~26のいずれか一項に記載の無機粒子含有ポリマー粒子。
〈態様28〉
カップリング剤をさらに含む、態様24~27のいずれか一項に記載の無機粒子含有ポリマー粒子。
〈態様29〉
平均粒径が0.5μm~100μmである、態様24~28のいずれか一項に記載の無機粒子含有ポリマー粒子。
〈態様30〉
無機粒子非含有ポリマー粒子及び/又は態様24~29のいずれか一項に記載の無機粒子含有ポリマー粒子、並びに分散媒を含む、分散体。
〈態様31〉
前記分散媒が、2-プロパノール、エチレングリコール、及びターピネオールのうち少なくとも1種類を含む、態様30に記載の分散体。
〈態様32〉
ポリマー基材、及び
前記ポリマー基材に堆積されている、ポリマー粒子層
を有しており、かつ、
前記ポリマー粒子層が、態様24~29のいずれか一項に記載の無機粒子含有ポリマー粒子を含む、
ポリマー粒子層-ポリマー基材複合体。
〈態様33〉
ポリマー基材、及び
前記ポリマー基材に堆積されている、ポリマー粒子層
を有しており、かつ、
前記ポリマー粒子層が、無機粒子非含有ポリマー粒子からなる、
ポリマー粒子層-ポリマー基材複合体。
〈態様34〉
前記ポリマー基材が、無機粒子含有ポリマー基材である、態様33に記載の複合体。
〈態様35〉
ポリマー基材、
前記ポリマー基材に堆積されている、ポリマー粒子層、
前記ポリマー粒子層に堆積されている、追加のポリマー粒子層、
を含む、追加のポリマー粒子層-ポリマー粒子層-ポリマー基材複合体。
〈態様36〉
前記ポリマー基材、前記ポリマー粒子層、前記追加のポリマー粒子層のうちの少なくともいずれかが、無機粒子を有している、態様35に記載の複合体。
〈態様37〉
ポリマー基材、及び追加のポリマー基材を有しており、
前記ポリマー基材及び前記追加のポリマー基材のうちの少なくともいずれかが、無機粒子を有しており、
前記ポリマー基材及び前記追加のポリマー基材が、少なくとも部分的に、互いに重なり合って配置されており、かつ
前記ポリマー基材と前記追加のポリマー基材との界面が、平坦である、
追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体。
〈態様38〉
前記ポリマー基材及び前記追加のポリマー基材のうちの少なくともいずれかが、カップリング剤をさらに含む、態様37に記載の複合体。
〈態様39〉
前記ポリマー基材及び前記追加のポリマー基材が、膜状又はフィルム状である、態様37又は38に記載の複合体。
〈態様40〉
積層されている少なくとも3つのポリマー基材を含有し、かつ
隣接するポリマー基材の界面のうちの少なくとも1つが、平坦である、
ポリマー基材積層体。
〈態様41〉
前記ポリマー基材積層体を構成する前記少なくとも3つのポリマー基材における無機粒子の含有量が、それぞれ、互いに異なっている、態様40に記載の積層体。
〈態様42〉
前記ポリマー基材積層体を構成する前記少なくとも3つのポリマー基材における無機粒子の含有量が、積層方向に沿って段階的に増加又は減少するように、前記ポリマー基材が積層されている、
態様41に記載の積層体。
〈態様43〉
少なくとも1つの無機粒子非含有ポリマー基材及び少なくとも1つの無機粒子含有ポリマー基材を有しており、かつ、無機粒子非含有ポリマー基材及び無機粒子含有ポリマー基材が交互に積層された構造を有している、
態様40に記載の積層体。
〈態様44〉
光学用である、態様32~40のいずれか一項に記載の複合体、又は態様41~43のいずれか一項に記載の積層体。
〈態様45〉
シクロオレフィンポリマー、及び
一次粒径が1nm~500nmであるシリコン粒子
を含む、膜状又はフィルム状基材。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、支持基材及びポリマー部材を有しかつ無機粒子を有する複合体を、優れた品質を確保しつつ製造するための方法を提供することができる。
【0014】
また、本開示によれば、上記の方法に好適なポリマー粒子及び分散体を提供することができる。さらに本開示によれば、優れた品質を有する無機粒子含有ポリマー基材、ポリマー粒子層-支持基材複合体、ポリマー基材-支持基材複合体、追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体、及びポリマー基材積層体、並びにそれらの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本開示に係るポリマー粒子層-支持基材複合体の製造方法の1つの実施態様を概略的に示す。
【
図2】
図2は、本開示に係るポリマー粒子層-支持基材複合体の製造方法の別の実施態様を概略的に示す。
【
図3】
図3は、本開示に係るポリマー粒子層-支持基材複合体の製造方法における堆積工程の1つの実施態様を概略的に示す。
【
図4】
図4は、本開示に係るポリマー粒子層-支持基材複合体の製造方法における堆積工程で用いることができる分散体の実施態様を概略的に示す。
【
図5】
図5は、本開示に係るポリマー基材-支持基材複合体の製造方法の1つの実施態様を概略的に示す。
【
図6A】
図6Aは、支持基材として無機粒子非含有ポリマー基材を使用した場合の、本開示に係るポリマー基材-支持基材複合体の製造方法の1つの実施態様を概略的に示す。
【
図6B】
図6Bは、支持基材として無機粒子含有ポリマー基材を使用した場合の、本開示に係るポリマー基材-支持基材複合体の製造方法の1つの実施態様を概略的に示す。
【
図6C】
図6Cは、支持基材として無機粒子含有ポリマー基材を使用した場合の、本開示に係るポリマー基材-支持基材複合体の製造方法の別の実施態様を概略的に示す。
【
図7A】
図7Aは、支持基材として2つのポリマー基材を有する複合体を使用した場合の、本開示に係るポリマー基材-支持基材複合体の製造方法の1つの実施態様を概略的に示す。
【
図7B】
図7Bは、支持基材として2つのポリマー基材を有する複合体を使用した場合の、本開示に係るポリマー基材-支持基材複合体の製造方法の別の実施態様を概略的に示す。
【
図8A】
図8Aは、支持基材が剥離用基材に支持されている場合の、本開示に係るポリマー基材-支持基材複合体の製造方法の1つの実施態様を概略的に示す。
【
図8B】
図8Bは、支持基材が剥離用基材に支持されている場合の、本開示に係るポリマー基材-支持基材複合体の製造方法の別の実施態様を概略的に示す。
【
図9】
図9は、支持基材として無機基材を使用した場合の、本開示に係るポリマー基材-支持基材複合体の製造方法の1つの実施態様を概略的に示す。
【
図10A】
図10Aは、支持基材として剥離用基材を用いた場合の、本開示に係るポリマー基材の製造方法の1つの実施態様を概略的に示す。
【
図10B】
図10Bは、支持基材として剥離用基材を用いた場合の、本開示に係るポリマー基材の製造方法の別の実施態様を概略的に示す。
【
図11】
図11は、基材を重ね合わせることを含む、本開示に係る追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体の製造方法の製造方法の1つの実施態様を概略的に示す。
【
図12】
図12は、ポリマー基材を無機基材上に配置することを含む、本開示に係るポリマー基材-無機基材複合体の製造方法の製造方法の1つの実施態様を概略的に示す。
【
図13】
図13は、追加のポリマー基材を提供することを含む、本開示に係る追加のポリマー基材-ポリマー基材-無機基材複合体の製造方法の製造方法の1つの実施態様を概略的に示す。
【
図14A】
図14Aは、支持基材としてポリマー基材を用いることを含む、本開示に係る追加のポリマー粒子層-ポリマー粒子層-支持基材複合体の製造方法の1つの実施態様を概略的に示す。
【
図14B】
図14Bは、支持基材としてポリマー基材を用いることを含む、本開示に係る追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体の製造方法の1つの実施態様を概略的に示す。
【
図15A】
図15Aは、支持基材として2つのポリマー基材を含む複合体を用いることを含む、本開示に係る追加のポリマー粒子層-ポリマー粒子層-支持基材複合体の製造方法の1つの実施態様を概略的に示す。
【
図15B】
図15Bは、支持基材として2つのポリマー基材を含む複合体を用いることを含む、本開示に係る追加のポリマー基材-ポリマーポリマー基材-支持基材複合体の製造方法の1つの実施態様を概略的に示す。
【
図16】
図16は、支持基材として無機基材を用いることを含む、本開示に係る追加のポリマー基材-ポリマーポリマー基材-支持基材複合体の製造方法の1つの実施態様を概略的に示す。
【
図17】
図17は、支持基材として剥離用基材を用いることを含む、本開示に係る追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体の製造方法の1つの実施態様を概略的に示す。
【
図18】
図18は、無機基材の上に追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体を配置することを含む、追加のポリマー基材-ポリマー基材-無機基材複合体の製造方法の1つの実施態様を概略的に示す。
【
図19】
図19は、本開示に係るポリマー基材積層体の製造方法の1つの実施態様を概略的に示す。
【
図20】
図20は、本開示に係るポリマー基材積層体の製造方法の別の実施態様を概略的に示す。
【
図21】
図21は、ポリマー基材積層体を無機基材の上に配置することを含む、本開示に係るポリマー基材積層体-無機基材複合体の製造方法の1つの実施態様を概略的に示す。
【
図22】
図22は、ポリマー基材積層体を、ポリマー基材及び無機基材を有する複合体のポリマー基材の上に配置することを含む、本開示に係るポリマー基材積層体-無機基材複合体の製造方法の1つの実施態様を概略的に示す。
【
図23】
図23は、ポリマー基材及び無機基材を有する複合体のポリマー基材の上にポリマー基材積層体を製造することを含む、本開示に係るポリマー基材積層体-無機基材複合体の製造方法の別の実施態様を概略的に示す。
【
図24】
図24は、スプレードライ法によって製造した実施例1に係るポリマー粒子のSEM画像を示す。
【
図25】
図25は、再沈殿法によって製造した実施例2に係るポリマー粒子のSEM画像を示す。
【
図26A】
図26Aは、比較例2に係るポリマー基材-支持基材複合体の断面のSEM画像、及び平坦性の評価方法を示す図である。
【
図26B】
図26Bは、実施例1に係るポリマー基材-支持基材複合体の断面のSEM画像、及び平坦性の評価方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
≪ポリマー粒子層-支持基材複合体の製造方法≫
本開示に係るポリマー粒子層-支持基材複合体の製造方法は、
ポリマー粒子を提供すること(ポリマー粒子提供工程)、
支持基材を提供すること(支持基材提供工程)、並びに
支持基材上にポリマー粒子を堆積させて、支持基材上にポリマー粒子層を形成すること(堆積工程)、
を含み、
ポリマー粒子又は支持基材のうちの少なくともいずれかが、無機粒子を含む。
【0017】
図1は、本開示に係るポリマー粒子層-支持基材複合体210aの製造方法の1つの実施態様を概略的に示したものである。
図1の方法では、無機粒子13及びポリマー12を含むポリマー粒子14を支持基材100上に堆積させて、支持基材100上にポリマー粒子層160aを形成させ、それによって、ポリマー粒子層-支持基材複合体210aを得ている。
【0018】
本開示に係るポリマー粒子層-支持基材複合体の製造方法では、ポリマー粒子又は支持基材のうちの少なくともいずれかが、無機粒子を含む。したがって、本開示に係る方法によれば、ポリマー粒子層及び支持基材のうちの少なくともいずれかが無機粒子を含んでいる複合体を得ることができる。
【0019】
従来の方法では、支持基材及びポリマー部材を有しかつ無機粒子を有する複合体を製造する場合、ポリマーを支持基材上に配置する際に、ポリマーを溶剤に溶解させた溶液を用いていた。その場合、ポリマーを溶解させるための溶剤によって、支持基材に望ましくない影響が及ぼされるおそれがあった。
【0020】
これに対して、本開示に係る方法では、支持基材及びポリマー部材を有しかつ無機粒子を有する複合体を製造する際に、ポリマー溶液を支持基材上に適用する代わりに、ポリマー粒子の堆積を行うので、ポリマーを溶解させるための溶剤を低減することができる。したがって、溶剤によって支持基材に望ましくない影響が及ぼされることを回避又は抑制することができる。また、本開示に係る方法では、ポリマーを溶解させるための溶剤の使用が抑制されているため、溶剤を用いることに伴う環境負荷、及び健康への望ましくない影響を低減することができる。
【0021】
〈ポリマー粒子提供工程〉
本開示に係るポリマー粒子層-支持基材複合体の製造方法におけるポリマー粒子提供工程では、ポリマー粒子を提供する。
【0022】
(ポリマー粒子)
ポリマー粒子としては、無機粒子非含有ポリマー粒子、無機粒子含有ポリマー粒子、及び、無機粒子含有ポリマー粒子と無機粒子非含有ポリマー粒子との混合物が挙げられる。
【0023】
支持基材が無機粒子を含まない場合、例えば支持基材が無機粒子非含有ポリマー基材である場合には、ポリマー粒子として、無機粒子含有ポリマー粒子、又は、無機粒子含有ポリマー粒子と無機粒子非含有ポリマー粒子との混合物を用いることができる。
【0024】
支持基材が無機粒子を含む場合、例えば支持基材が無機粒子含有ポリマー基材である場合には、ポリマー粒子として、無機粒子非含有ポリマー粒子を用いることができる。
【0025】
ポリマー粒子の平均粒径は、好ましくは、0.1μm~1000μmであり、より好ましくは0.5μm~100μmであり、特に好ましくは、1.0μm~50μmであり、更に特に好ましくは、1.5μm~10μmである。ポリマー粒子の平均粒子径が当該範囲であることによって、ポリマー粒子を用いて層を形成する場合などに、良好な成形性が確保されうる。
【0026】
なお、ポリマー粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)等を用いて取得した画像において、無作為に選んだ100個の粒子の面積円相当径の平均を算出することによって測定することができる。
【0027】
本開示に係るポリマー粒子は、不定形の粒子であってよく、その形状は特に限定されない。ポリマー粒子の形状は、例えば、球状、鱗片状、又は繊維状であってよい。なお、本願に関して、「不定形」は、ポリマー粒子が型などによって成形されていないことを意味している。
【0028】
(無機粒子含有ポリマー粒子)
無機粒子含有ポリマー粒子は、無機粒子及びポリマーを含む。
【0029】
上述した
図1に係る方法では、ポリマー粒子として無機粒子含有ポリマー粒子14を用いている。この場合には、例えば、無機粒子含有ポリマー粒子に含有される無機粒子の含有量を調節することによって、得られるポリマー粒子層における無機粒子の含有量を調節することができる。
【0030】
無機粒子含有ポリマー粒子における無機粒子及びポリマーの含有割合は、例えば、無機粒子含有ポリマー粒子におけるポリマーと無機粒子の体積比が、1:99~99:1、5:95~95:5、10:90~85:15、20:80~80:20、30:70~75:25、又は40:60~70:30になるようにすることができる。無機粒子が少なすぎる場合には、無機粒子を含有することによって期待される所望の効果が得られない場合がある。また、無機粒子が多すぎる場合には、無機粒子含有ポリマー粒子の一体性及び強度等が維持できない場合がある。
【0031】
無機粒子含有ポリマー粒子においては、無機粒子がポリマー中に分散していることが好ましい。
【0032】
本開示に係る無機粒子含有ポリマー粒子は、例えば、スプレードライ法、又は再沈殿法などの方法によって製造することができる。
【0033】
スプレードライ法による無機粒子含有ポリマー粒子の製造方法では、スプレードライ装置を用いることができる。具体的には、スプレードライ法による無機粒子含有ポリマー粒子の製造方法は、例えば、ポリマー溶液に無機粒子が分散している前駆体溶液を調整する工程、この前駆体溶液を噴霧(スプレー)する工程、噴霧によって形成された無機粒子含有ポリマー粒子前駆体を乾燥させる工程、及び、乾燥処理された無機粒子含有ポリマー粒子前駆体を解砕する工程を含む。前駆体溶液を調整する工程において、ポリマー溶液は、例えば、ポリマーをトルエンなどの溶剤に溶解させることによって調製してよい。また、無機粒子含有ポリマー粒子は、ポリマーを溶解させるための溶剤を実質的に含まないことが好ましい。解砕の方法は、特に限定されず、公知の方法によって行うことができる。
【0034】
スプレードライ法によれば、比較的球形度が高い無機粒子含有ポリマー粒子を得ることができる場合がある。また、スプレードライ法によれば、面積円相当径が0.1~50μmである無機粒子含有ポリマー粒子を得ることができる場合がある。
【0035】
再沈殿法による無機粒子含有ポリマー粒子の製造方法は、例えば、ポリマー溶液に無機粒子が分散している前駆体溶液を調整する工程、この前駆体溶液を溶媒中に滴下する工程、溶媒中に生成される固形分を沈殿物として回収する工程、及び、回収した沈殿物を乾燥する工程を含む。前駆体溶液を調整する工程では、例えば、ポリマーをトルエンなどの溶剤に溶解させることによってポリマー溶液を調整することができる。無機粒子含有ポリマー粒子は、ポリマーを溶解させるための溶剤を実質的に含まないことが好ましい。前駆体溶液を溶媒中に滴下する工程では、例えば2-プロパノールを溶媒として用いることができる。沈殿物を回収する工程では、例えば、遠心分離機を用いることができる。回収した沈殿物を乾燥する工程では、真空炉を用いて乾燥を行うことができる。
【0036】
再沈殿法によれば、比較的不定形の無機粒子含有ポリマー粒子を得ることができる場合がある。また、再沈殿法によって、面積円相当径が1μm以下である無機粒子含有ポリマーポリマー粒子を得ることができる場合がある。
【0037】
(無機粒子)
本開示における無機粒子としては、ポリマー中に分散させることができる任意の無機粒子を挙げることができ、このような無機粒子としては、例えば金属又は半金属の粒子、金属又は半金属の酸化物又はフッ化物の粒子、金属又は半金属を含む化合物の粒子を挙げることができる。
【0038】
このような金属又は半金属としては、Si、Ge、Al、Mg,Ti、Ni、Cr,Fe、Cu、Au、Ag、W、Zr、Y、In及びIrからなる群から選ばれる少なくとも一種を好適に用いることができ、Si、Geを特に好適に用いることができる。また、このような金属又は半金属の酸化物及びフッ化物としては、MgO、Al2O3、Bi2O3、CaF2、In2O3、In2O3・SnO2、HfO2、La2O3、MgF2、Sb2O5、Sb2O5・SnO2、SiO2、SnO2、TiO2、Y2O3、ZnO及びZrO2、からなる群から選ばれる少なくとも一種を好適に用いることができ、MgO、Al2O3、SiO2、TiO2を特に好適に用いることができる。また、このような金属又は半金属を含む化合物としては、GaAs、InGaAs、InAlAs、LiTaOx、NbTaOx、ZnTe、GaSe、GaP、CdTe、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン、SiCなどが挙げられる。
【0039】
無機粒子がシリコン粒子である場合、シリコン粒子としては、レーザー熱分解法、特にCO2レーザーを用いたレーザー熱分解法によって得られたシリコン粒子を挙げることができる。
【0040】
上記の無機粒子、特にシリコン粒子は、個々の不純物元素の濃度が1,000ppm以下、500ppm以下、300ppm以下、100ppm以下、50ppm以下、10ppm以下、又は1ppm以下であってよい。上記の無機粒子がシリコン粒子である場合、このような不純物としては、13族及び15族元素を挙げることができる。不純物が上記のように低減されているシリコン粒子は、良好な物理的性質を有するため好ましく、特には、良好な光学的な性質を与えるため、好ましい。
【0041】
無機粒子の平均一次粒子径は、1nm以上、又は3nm以上であって、10000nm以下、5000nm以下、2000nm以下、1000nm以下、500nm以下、200nm以下、100nm以下、50nm以下、30nm以下、20nm以下、又は10nm以下であることが好ましい。
【0042】
ここで、本発明においては、粒子の平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡等によって撮影した画像を元に直接に面積円相当径を計測し、集合数100以上からなる粒子群を解析することで、数平均一次粒子径として求めることができる。
【0043】
なお、無機粒子の粒径が大きすぎる場合は、散乱を生じやすくなるため好ましくないことがあり、また、無機粒子の粒径が小さすぎる場合は、粒子の比表面積が増大することにより粒子表面の活性化を促し、粒子同士の凝集性が著しく高くなり、それによって取り扱い性が低下するため好ましくないことがある。
【0044】
無機粒子、特に金属又は半金属は、ポリマーとの結合に利用できる官能基、例えば水酸基を増加させるために、オゾン処理、紫外線処理等の処理をその表面に行うことができる。
【0045】
(ポリマー)
ポリマー粒子に含有されるポリマーは、オレフィンポリマー、例えばシクロオレフィンポリマーで形成されていてよい。
【0046】
なお、オレフィンポリマーは、オレフィンを主成分として含有するモノマーを重合させることによって得られるポリマー、すなわちオレフィン由来のモノマー部分を50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上含有するモノマーを重合させることによって得られるポリマーを意味する。オレフィンポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、プロピレン-エチレン共重合体やプロピレン-ブテン共重合体などのα-オレフィンとエチレン若しくはプロピレンとの共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ヘキサジエン-スチレン共重合体、スチレン-ペンタジエン-スチレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(RPDM)、シクロオレフィンポリマー等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのオレフィンポリマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0047】
これらのオレフィンポリマーのなかでは、特にシクロオレフィンポリマーを挙げることができる。
【0048】
シクロオレフィンポリマーは、ポリマー主鎖にシクロオレフィン部分を有するポリマーである。このようなシクロオレフィンポリマーとしては、例えば、シクロオレフィンモノマーの開環重合体、シクロオレフィンモノマーの付加重合体、シクロオレフィンモノマーと鎖状オレフィンとの共重合体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0049】
シクロオレフィンモノマーは、炭素原子で形成される環構造を有し、当該環構造中に炭素-炭素二重結合を有する化合物である。シクロオレフィンモノマーとしては、例えば、2-ノルボルネン、ノルボルナジエンなどの二環体、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエンなどの三環体、テトラシクロドデセン、エチリデンテトラシクロドデセン、フニルテトラシクロドデセンなどの四環体、トリシクロペンタジエンなどの五環体、テトラシクロペンタジエンなどの七環体などのノルボルネン環を含むモノマーであるノルボルネン系モノマー;シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、シクロドデセン、1,5-シクロオクタジエンなどの単環シクロオレフィンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。シクロオレフィンモノマーは、本発明の目的が阻害されない範囲で置換基を有していてもよい。
【0050】
シクロオレフィンポリマーは、例えば、日本ゼオン(株)製、商品名:ゼオネックス・シリーズ、ゼオノア・シリーズなど、住友ベークライト(株)製、商品名:スミライト・シリーズ、JSR(株)製、商品名:アートン・シリーズ、三井化学(株)製、商品名:アペル・シリーズ、Ticona社製、商品名:Topas、日立化成(株)製、商品名:オプトレッツ・シリーズなどとして商業的に容易に入手することができる。
【0051】
(カップリング剤)
本開示に係る無機粒子含有ポリマー粒子は、さらにカップリング剤を含むことができる。
【0052】
本発明におけるカップリング剤は、特に限定されず、好ましくは、無機粒子と組み合わせることができる任意のカップリング剤を用いることができる。具体的にはカップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤を用いることができ、特にシランカップリング剤を用いることができる。
【0053】
無機粒子含有ポリマー粒子に含有されるポリマーとして、オレフィンポリマー、例えばシクロオレフィンポリマーを用いる場合、カップリング剤としては、これらのポリマーに対する混和性が良好な官能基、例えばアルキル鎖、シクロヘキシル基、ベンゼン環を有するカップリング剤、より具体的には炭素原子数が1~30、1~25、又は1~20のアルキル鎖、シクロヘキシル基、ベンゼン環を有するカップリング剤を用いることができる。カップリング剤及び/又はカップリング剤の加水分解縮合物は、単独もしくは2種以上を併用してもよい。
【0054】
具体的には、カップリング剤としては、オクタデシルトリエトキシシラン(OTS)、オクチルトリエトキシシラン、トリエトキシフェニルシラン、3-フェニルプロピルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリクロロシラン、3-アミノプロピルトリメトシシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン・塩酸塩、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、オクタデシルジメチル〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕アンモニウムクロライド、オクタデシルジメチル〔3-(トリエトキシシリル)プロピル〕アンモニウムクロライド、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0055】
無機粒子含有ポリマー粒子がさらにカップリング剤を含有していることによって、無機粒子含有ポリマー粒子と支持基材との間の密着性をさらに向上することができる場合がある。特に、無機粒子を含有していることによって無機粒子含有ポリマー粒子と支持基材との間の密着性が低下する場合に、密着性をさらに向上させうる。
【0056】
理論に限定されるものではないが、無機粒子含有ポリマー粒子がさらにカップリング剤を含有している場合には、無機粒子の表面に付着しているカップリング剤が、無機粒子含有ポリマー粒子中における無機粒子の分散性を改良すると考えられ、かつ、残部のカップリング剤が、支持基材(特にポリマー基材)に対する無機粒子含有ポリマー粒子の密着性を改良すると考えられる。
【0057】
無機粒子含有ポリマー粒子がカップリング剤を含有する場合、カップリング剤の含有割合は、例えば、無機粒子とカップリング剤との質量比が、1:99~99:1、5:95~95:5、10:90~90:10、20:80~80:20、30:70~70:30、又は40:60~60:40になるようにすることができる。無機粒子とカップリング剤との質量比が当該範囲であることによって、無機粒子含有ポリマー粒子と支持基材と間の特に良好な密着性を確保できる場合があり、かつ、無機粒子含有ポリマー粒子の一体性及び強度等を良好に確保できる場合がある。
【0058】
本開示に係る製造方法で使用される無機粒子含有ポリマー粒子は、その他の添加剤を含むことができる。添加剤としては、硬化促進剤、変色防止剤、界面活性剤、着色剤、及び粘度調整剤を例示することができる。
【0059】
(無機粒子非含有ポリマー粒子)
無機粒子非含有ポリマー粒子は、ポリマーを含み、かつ無機粒子を含まない。
【0060】
無機粒子非含有ポリマー粒子に含まれるポリマーについては、無機粒子含有ポリマー粒子についての上述の記載を参照することができる。また、無機粒子非含有ポリマー粒子は、無機粒子含有ポリマー粒子について上述したのと同様に、カップリング剤及びその他の添加物を含むことができる。無機粒子非含有ポリマー粒子がさらにカップリング剤を含有していることによって、無機粒子非含有ポリマー粒子と支持基材との間の密着性をさらに向上することができる場合がある。
【0061】
無機粒子非含有ポリマー粒子は、ポリマー溶液に無機粒子が分散している前駆体溶液の代わりにポリマー溶液を前駆体溶液として用いること以外は、無機粒子含有ポリマー粒子に関して上述したスプレードライ法又は再沈殿法と同様にして、製造することができる。
【0062】
(無機粒子含有ポリマー粒子と無機粒子非含有ポリマー粒子との混合物)
ポリマー粒子は、無機粒子含有ポリマー粒子と無機粒子非含有ポリマー粒子との混合物であってよい。
【0063】
図2は、本開示に係るポリマー粒子層-支持基材複合体の製造方法の別の実施態様を概略的に示す。
図2に係る方法では、ポリマー粒子として、無機粒子含有ポリマー粒子14と無機粒子非含有ポリマー粒子15との混合物を用いている。ポリマー粒子として無機粒子含有ポリマー粒子と無機粒子非含有ポリマー粒子との混合物を用いる場合には、無機粒子含有ポリマー粒子中に含有される無機粒子の含有量だけではなく、混合物における無機粒子含有ポリマー粒子と無機粒子非含有ポリマー粒子との割合も調節することができる。したがって、ポリマー粒子として無機粒子含有ポリマー粒子と無機粒子非含有ポリマー粒子との混合物を用いることによって、ポリマー粒子層における無機粒子の含有量を、さらに簡便に調節することが可能となる。
【0064】
無機粒子含有ポリマー粒子と無機粒子非含有ポリマー粒子との混合物における無機粒子含有ポリマー粒子及び無機粒子非含有ポリマー粒子の割合は、特に限定されないが、混合物に含まれる無機粒子非含有ポリマー粒子が、無機粒子含有ポリマー粒子100質量部に対して、0.01質量部以上、0.1質量部以上、1質量部以上、5質量部以上、10質量部以上、若しくは50質量部以上であってよく、かつ/又は、10000質量部以下、1000質量部以下、100質量部以下、若しくは75質量部以下であってよい。
【0065】
無機粒子含有ポリマー粒子と無機粒子非含有ポリマー粒子との混合物は、無機粒子含有ポリマー粒子及び無機粒子非含有ポリマー粒子を直接に混合して製造してもよく、又は、無機粒子含有ポリマー粒子又は無機粒子非含有ポリマー粒子を含有する適当な分散媒に、無機粒子非含有ポリマー粒子又は無機粒子含有ポリマー粒子を添加して攪拌することによって、製造してもよい。
【0066】
〈支持基材提供工程〉
本開示に係るポリマー粒子層-支持基材複合体の支持基材提供工程では、支持基材を提供する。
【0067】
(支持基材)
【0068】
支持基材としては、ポリマー基材、無機基材、又は剥離用基材を用いることができる。
【0069】
支持基材は任意の形態であってよく、例えば、フィルム状、シート状、プレート状(板状)、管状、棒状、円盤状等であってよい。また、支持基材は任意の大きさであってよい。
【0070】
支持基材の厚さは、特に限定されないが、例えば1nm以上、5nm以上、又は10nm以上であってよく、また10cm以下、1cm以下、1mm以下、100μm以下、30μm以下、又は10μm以下、さらには1000nm以下、500nm以下、又は100nm以下であってよい。
【0071】
支持基材上のポリマー粒子層をさらに熱プレス処理する場合には、好ましくは、支持基材を構成する材料として、ポリマー粒子を構成するポリマーのガラス転移温度よりも高いガラス転移温度又は融点を有する材料を用いる。
【0072】
(ポリマー基材)
ポリマー基材は、ポリマーを含む。ポリマー基材に含まれるポリマーについては、ポリマー粒子に含まれるポリマーに関する上記の記載を参照することができる。ポリマー基材は、オレフィンポリマー、例えばシクロオレフィンポリマーで形成されていてよい。ポリマー基材は、任意の形状の部材であってよく、例えば膜状又はフィルム状であってよい。ポリマー基材の厚みは、0.5μm以上、1μm以上、2μm以上、5μm以上、又は10μm以上であってよく、1000μm以下、500μm以下、200μm以下、又は100μm以下であってよい。
【0073】
ポリマー基材は、例えば、溶剤に溶解させたポリマーを室温において混合及び攪拌することによって得たポリマー溶液を、ガラス板などの基材上に塗布し、かつ乾燥させることによって得ることができる。このようにして製造されたポリマー基材は、必要に応じて基材から剥離させてよい。ポリマー溶液の塗布過程では、ドクターブレード、グラビアコーターを用いて一定の厚みで塗布を行ってよい。また、塗布後の乾燥過程では、加熱することによって乾燥を行ってよく、例えば、80℃~200℃の温度で1分間~2時間にわたって乾燥を行ってよい。ポリマーを溶解させるための溶剤としては、例えば、トルエンを用いることができる。
【0074】
また、ポリマー基材は、例えば、ポリマーからなる粉体を、ガラス板等の基材又はポリマー粒子層の上に堆積し、堆積された粉体からなる層を熱プレスすることによって、得ることもできる。
【0075】
また、ポリマー基材は、溶融したポリマーをTダイ等の口金から押し出すことによって得たフィルムを延伸し、所望の厚さに成型することによって得ることもできる。
【0076】
ポリマー基材は、無機粒子を含んでいてもよく、含まなくてもよい。特には、ポリマー基材は、無機粒子を含有しない無機粒子非含有ポリマー基材、又は無機粒子を含有する無機粒子含有ポリマー基材であってよい。
【0077】
ポリマー基材が無機粒子を含む場合、ポリマー基材における無機粒子及びポリマーの含有割合は、例えば、ポリマーと無機粒子の体積比が、1:99~99:1、5:95~95:5、10:90~85:15、20:80~80:20、30:70~75:25、又は40:60~70:30になるようにすることができる。
【0078】
また、支持基材としてのポリマー基材は、下記の追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体であってもよい:
ポリマー基材及び追加のポリマー基材を有しており、ポリマー基材及び追加のポリマー基材が、少なくとも部分的に、互いに重なり合って配置されており、かつ、ポリマー基材及び追加のポリマー基材のうちの少なくともいずれかが無機粒子を含む、追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体。
【0079】
上述の追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体において、ポリマー基材及び追加のポリマー基材は、それぞれ、その主たる面を介して、互いに少なくとも部分的に重なり合っていることが好ましく、互いに重なり合っていることがより好ましい。さらに好ましくは、上述の追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体において、ポリマー基材及び追加のポリマー基材のうちの一方の主たる面が、他方の主たる面を実質的に覆っている。
【0080】
あるいは、ポリマー基材は、下記の追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体であってもよい:
ポリマー基材、及び、ポリマー基材に積層されている追加のポリマー基材を有しており、かつ、
ポリマー基材及び追加のポリマー基材のうちの少なくともいずれかが無機粒子を含む、追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体。
【0081】
好ましくは、追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体において、追加のポリマー基材は、ポリマー基材の主たる面に積層されている。
【0082】
支持基材としての無機粒子非含有ポリマー基材、無機粒子含有ポリマー基材、又は上述の追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体は、本開示に係る方法によって製造されたものであってよい。
【0083】
ポリマー粒子が無機粒子を含まない場合、例えばポリマー粒子が無機粒子非含有ポリマー粒子である場合には、支持基材提供工程で提供される支持基材は、無機粒子を含む。
【0084】
(無機基材)
無機基材を構成する材料は、任意の無機材料であってよく、例えば金属及び半金属、金属及び半金属の酸化物、金属及び半金属の窒化物、金属及び半金属の炭化物、炭素材料、並びにそれらの組み合わせからなる群より選択することができる。具体的には、金属としては、アルミニウム、マグネシウム、チタン、ニッケル、クロム、鉄、銅、金、銀、タングステン、ジルコニウム、イットリウム、インジウム、イリジウム等を挙げることができ、半金属としては、シリコン、ゲルマニウム、GaAs、InGaAs、InAlAs、LiTaOx、NbTaOx、ZnTe、GaSe、GaP、CdTe、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン等を挙げることができる。したがって、金属酸化物としては、これらの金属の酸化物等を挙げることができ、また半金属酸化物としては、これらの半金属の酸化物等を挙げることができる。シリコンの酸化物としては、石英ガラス、ソーダガラスなどのガラスを挙げることができ、アルミニウムの酸化物としてはサファイア等を挙げることができる。窒化物としては、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等を挙げることができる。炭化物としては、炭化ケイ素を挙げることができる。また、炭素材料としては、ダイヤモンド等を挙げることができる。
【0085】
無機基材を構成する無機材料、特に金属又は半金属は、ポリマー粒子層又は無機粒子含有ポリマー層に含有されるポリマーとの結合に利用できる官能基、例えば水酸基を増加させるために、オゾン処理、紫外線処理等の処理をその表面に行うことができる。
【0086】
無機基材の上に形成されたポリマー粒子層を熱プレス処理する場合には、無機基材上に安定にポリマー基材を形成する観点から、熱変性ポリマー層の熱変性温度よりも高い融点を有する無機材料を好ましく用いることができる。
【0087】
(剥離用基材)
剥離用基材は、特に限定されないが、ポリマー基材からの剥離性に優れているものが好ましい。剥離用基材は、例えば、ガラス板、ポリアミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエチレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド、ポリテトラフルオロエチレンなどであってよい。
【0088】
〈堆積工程〉
本開示に係るポリマー粒子層-支持基材複合体の製造方法における堆積工程では、支持基材にポリマー粒子を堆積させて、支持基材上にポリマー粒子層を形成する。
【0089】
支持基材へのポリマー粒子の堆積は、公知の方法で行ってよく、例えば、ポリマー粒子を分散媒に分散させること等を含む湿式法、電着法、静電吸着法、又はインクジェット法などによって行ってよい。
【0090】
本開示に係るポリマー粒子層-支持基材複合体の製造方法の1つの実施態様では、堆積工程が、下記の操作を含んでよい:
分散媒にポリマー粒子が分散している分散体を提供すること、及び、
分散体を支持基材上に塗布し、そして乾燥させること。
【0091】
図3は、本開示に係る堆積工程の1つの実施態様を概略的に示したものである。
図3で示されている方法では、無機粒子含有ポリマー粒子14を分散媒24に分散させて、分散体22を得る。そして、この分散体22を、支持基材100上に、例えばドクターブレード等の機器29を用いて塗布し、かつ乾燥させて、ポリマー粒子層-支持基材複合体210aを得る。
【0092】
(分散)
分散媒にポリマー粒子が分散している分散体を提供する様式は、特に限定されない。例えば、容器内に保持された分散媒にポリマー粒子を投入し、ホモジナイザーなどによって適宜攪拌を行うことによって、分散体を得てよい。
【0093】
図4は、堆積工程で用いることができる分散体の種々の実施態様を概略的に示す。
図4左に示される分散体22′では、分散媒24に無機粒子非含有ポリマー粒子15及び無機粒子含有ポリマー粒子14が分散している。
図4右に示される分散体22′′では、分散媒24に無機粒子非含有ポリマー粒子15が分散している。
【0094】
(分散媒)
堆積工程において使用することができる分散媒は、ポリマー粒子を良好に分散させることができるものであれば特に限定されないが、ポリマー粒子に含まれるポリマー成分を溶解しにくいものであることが好ましい。また、堆積工程において使用することができる分散媒は、支持基材を構成する材料を溶解しにくいものであることが特に好ましい。支持基材を構成する材料を溶解しにくいものを分散媒として用いることによって、支持基材上にポリマー粒子を堆積する際に、支持基材が望ましくない影響を受けることを回避又は抑制することができる。
【0095】
特に、支持基材としてポリマー基材を用いる場合、堆積工程で用いる分散媒は、ポリマー基材を構成するポリマー成分を溶解しにくいものであることが好ましい。
【0096】
堆積工程において使用することができる分散媒としては、水、アルコール、エステル、エーテル溶剤、並びにこれらのうち少なくとも1つを含む混合物が挙げられる。アルコールとしては、例えば、エタノール、2-プロパノール、エチレングリコール、及びターピネオールが挙げられる。
【0097】
分散媒の粘度が高い場合には、粘度の高い分散体が得られるため、塗工工程において均一性の高い塗膜が得られる利点がある。そのような観点から、分散媒は、エチレングリコール、ターピネオール等の高粘度溶剤を含むことが好ましい。
【0098】
分散媒を構成する溶剤の沸点は、20℃以上、又は50℃以上であることが好ましく、350℃以下、300℃以下、250℃以下、又は230℃以下であることが好ましい。分散媒を構成する溶剤の沸点が上記の範囲であると、塗工中の乾燥による塗工不良が生じにくく、乾燥工程における溶剤の除去性が良い利点がある。
【0099】
分散媒は、ポリマー粒子に含まれる樹脂との濡れ性の良い分散媒を用いることが好ましい。ポリマー粒子に対する、分散媒の濡れ性が良い場合には、分散体中でのポリマー粒子が良好に分散し、均一かつ欠点の無い塗膜が形成できる利点がある。
【0100】
また、分散体は、ポリマー粒子の分散媒中での分散性を向上させるため、分散剤を含んでよい。分散剤は、例えば、界面活性剤を用いることができる。
【0101】
(塗布)
堆積工程の1つの実施態様では、例えば、上記の分散体を支持基材上に塗布し、そして乾燥させる。塗布の方法としては、スピンコート法、ロールコーター法、スプレーコーティング法、ダイコーター法、アプリケータ法、浸漬コーティング法、刷毛塗り、ヘラ塗り、ローラー塗り、カーテンフローコーター法等の溶液を用いる手法等を挙げることができる。堆積工程の塗布過程では、例えばドクターブレードを用いて、一定の厚みで塗布を行ってよい。
【0102】
(乾燥)
堆積工程の1つの実施態様における塗布後の乾燥過程では、加熱することによって乾燥を行ってよく、例えば、100℃~200℃の温度で1分間~2時間にわたって乾燥を行ってよい。例えば、堆積工程において分散体を支持基材に塗布した後に、加熱によって分散媒を除去することによって、乾燥を行ってよい。この場合、加熱条件は、塗膜から分散媒を除去するのに十分な温度及び加熱時間、雰囲気圧力条件を選択することができる。
【0103】
(支持基材-ポリマー粒子層-無機基材複合体の製造方法)
本開示に係る1つの実施態様では、下記の工程を有する方法によって、支持基材-ポリマー粒子層-無機基材複合体を形成することもできる:
本開示の方法に従って、ポリマー粒子層-支持基材複合体を製造すること、
無機基材を提供すること、及び
ポリマー粒子層-支持基材複合体を、ポリマー粒子層が無機基材側に向くようにして、無機基材上に配置すること。
【0104】
ここで、上記の支持基材-ポリマー粒子層-無機基材複合体の製造における支持基材としては、好ましくは、ポリマー基材が用いられる。
【0105】
≪ポリマー基材-支持基材複合体の製造方法≫
本開示に係る、ポリマー基材-支持基材複合体の製造方法は、
本開示に係る方法によって、ポリマー粒子層-支持基材複合体を得ること(複合体提供工程)、及び
ポリマー粒子層-支持基材複合体のポリマー粒子層を熱プレスすることによって、支持基材上にポリマー基材を形成すること(熱プレス工程)、
を含む。
【0106】
図5は、本開示に係るポリマー基材-支持基材複合体の製造方法の1つの実施態様を概略的に示す。
図5に示されている製造方法では、ポリマー粒子層-支持基材複合体210aが、支持基材100上に堆積された無機粒子含有ポリマー粒子層160aを有しており、かつ、ポリマー粒子層-支持基材複合体210aを熱プレス処理することによって得られる無機粒子含有ポリマー基材-支持基材複合体220aが、支持基材100上に配置された無機粒子含有ポリマー基材170aを有している。
【0107】
図5で例示されているポリマー基材-支持基材複合体の製造方法では、本開示に係る方法によって得られるポリマー粒子層-支持基材複合体を用いている。したがって、上記で説明したように、ポリマーを溶解させるための溶剤によって支持基材が望ましくない影響を受けることを回避又は抑制することができる。また、ポリマーを溶解させるための溶剤を低減することができるため、ポリマーを溶解させるための溶剤を用いることに伴う環境負荷、及び健康への望ましくない影響を低減することができる。
【0108】
さらに、本開示に係るポリマー基材-支持基材複合体の製造方法は、ポリマー粒子層を熱プレス処理する工程を含むため、ポリマー粒子層と比較して充填性及び強度がさらに優れているポリマー基材を得ることができると考えられる。理論によって限定する意図はないが、ポリマー粒子層には、ポリマー粒子の間に間隙が存在する場合があり、ポリマー粒子層を熱プレスすることによって、このような間隙を低減又は実質的に除去することができると考えられる。結果として、充填性及び強度がさらに優れるポリマー基材を得ることができると考えられる。
【0109】
〈複合体提供工程〉
ポリマー基材-支持基材複合体の製造方法における複合体提供工程では、本開示に係るポリマー粒子層-支持基材複合体の製造方法に従って、ポリマー粒子層-支持基材複合体を得る。ポリマー粒子層-支持基材複合体を得る方法については、上述のポリマー粒子層-支持基材複合体の製造方法についての記載を参照することができる。
【0110】
本開示に係るポリマー基材-支持基材複合体の製造方法では、ポリマー粒子層-支持基材複合体のポリマー粒子層における無機粒子の含有量を調節することによって、得られるポリマー基材-支持基材複合体のポリマー基材における無機粒子含有量を調節することができる。ポリマー粒子層における無機粒子の含有量の調節は、ポリマー粒子層を構成する無機粒子含有ポリマー粒子中の無機粒子の量を調節することによって行ってもよく、又は、無機粒子含有ポリマー粒子と無機粒子非含有ポリマー粒子との割合を調節することによって行ってもよい。
【0111】
〈熱プレス工程〉
ポリマー基材-支持基材複合体の製造方法における熱プレス工程では、上記の複合体提供工程で提供されるポリマー粒子層-支持基材複合体のポリマー粒子層を熱プレスすることによって、支持基材上にポリマー基材を形成する。
【0112】
熱プレスを行う様式は、特に限定されない。熱プレスとしては、例えば、真空加熱プレス機を用いた真空熱プレスを挙げることができる。熱プレスの温度は、ポリマー粒子を構成するポリマーの熱変性温度以上であることが好ましい。熱プレスは、例えば、真空条件(例えば0~10Pa)で行ってよく、100℃~300℃の温度条件下で行ってよく、かつ、1分間から10時間にわたって行ってよい。熱プレスは、例えば、0.1~1000MPa、0.2~500MPa、0.5~500MPa、1~200MPa、2~100MPa、5~100MPa、10~70MPaの加圧条件で行ってよい。
【0113】
〈支持基材としてのポリマー基材〉
本開示に係る1つの実施態様では、ポリマー基材-支持基材複合体の製造方法において、支持基材として、ポリマー基材を用いる。
【0114】
図6Aは、支持基材として無機粒子非含有ポリマー基材を用いることを含む、本開示に係るポリマー基材-支持基材複合体の製造方法の1つの実施態様を概略的に示す。
図6Aに示されている製造方法では、支持基材としての無機粒子非含有ポリマー基材150上に堆積された無機粒子含有ポリマー粒子層160aを有しているポリマー粒子層-支持基材複合体212aを熱プレス処理することによって、無機粒子含有ポリマー基材-支持基材複合体222aを得ている。得られた無機粒子含有ポリマー基材-支持基材複合体222aは、支持基材としての無機粒子非含有ポリマー基材150上に配置された無機粒子含有ポリマー基材170aを有している。
【0115】
従来から、無機粒子及びポリマーを含有する無機粒子含有ポリマーと無機粒子非含有ポリマーとが積層されている複合体が、例えば光学用部材として用いられてきた。従来の方法では、無機粒子非含有ポリマー基材上に無機粒子含有ポリマーを配置する際に、ポリマーを溶剤に溶解させたポリマー溶液に無機粒子を含有させて塗布していた。しかしながら、この方法では、塗布の際に、ポリマーを溶解させるための溶剤によってポリマー基材が溶解し、結果として得られる複合体の品質が低下するおそれがあった。
【0116】
これに対して、
図6Aで例示されている方法では、ポリマー溶液を塗布する代わりにポリマー粒子の堆積を行うことによって、無機粒子含有ポリマー層が支持基材としてのポリマー基材上に配置されている複合体を得ることができるため、ポリマーを溶解させるための溶剤が低減されている。そのため、溶剤によってポリマー基材が溶解してしまうという問題を回避又は抑制することができ、結果として、製造される複合体の良好な性質を確保することができる。また、本開示に係る方法によって得られる、支持基材としてのポリマー基材を有するポリマー基材-支持基材複合体は、従来のポリマー溶液によって堆積を行う方法と比較して、ポリマー基材間の界面の平坦性が向上している。
【0117】
さらに、無機粒子含有ポリマー基材を有するポリマー基材-支持基材複合体は、ポリマーのみからなる基材と比較して、種々の用途に有用な物理的特性を有する。例えば、無機粒子含有ポリマー基材は、ポリマーのみからなる層とは異なる屈折率を有しうると考えられるため、無機粒子含有ポリマー基材を有するポリマー基材-支持基材複合体は、優れた反射・透過特性、特には優れた反射防止特性を有する光学用部材として有用であると考えられる。
【0118】
本開示に係るポリマー基材-支持基材複合体の製造方法の別の実施態様では、支持基材として、無機粒子含有ポリマー基材を用いることもできる。
【0119】
図6Bは、支持基材として無機粒子含有ポリマー基材を用いることを含む、本開示に係るポリマー基材-支持基材複合体の製造方法の1つの実施態様を概略的に示す。
【0120】
図6Bでは、支持基材としての無機粒子含有ポリマー基材170a上に堆積された無機粒子非含有ポリマー粒子層160を有しているポリマー粒子層-支持基材複合体213aを熱プレス処理することによって、ポリマー基材-支持基材複合体222aを得ている。ポリマー基材-支持基材複合体222aは、支持基材としての無機粒子含有ポリマー基材170a上に配置された無機粒子非含有ポリマー基材150を有している。
【0121】
図6A及び
図6Bで示される製造工程は、互いに異なる工程を有しているが、結果として得られる複合体は、同一の構成を有している。したがって、本開示によれば、特定の構成を有する複合体を製造するために、複数の選択肢を提供することができる。
【0122】
図6Cは、支持基材として無機粒子含有ポリマー基材を用いることを含む、本開示に係るポリマー基材-支持基材複合体の製造方法の、別の実施態様を概略的に示す。
図6Cでは、ポリマー粒子層-支持基材複合体213bが、支持基材としての無機粒子含有ポリマー基材170a上に堆積された無機粒子含有ポリマー粒子層160bを有しており、かつ、熱プレスによって得られるポリマー基材-支持基材複合体222bが、支持基材としての無機粒子含有ポリマー基材170a上に配置された無機粒子含有ポリマー基材170bを有している。
【0123】
図6Cにおいて、無機粒子含有ポリマー基材170bは、無機粒子含有ポリマー基材170aと比較して、無機粒子の含有量が低い。すなわち、ポリマー基材-支持基材複合体222bは、積層方向に沿って無機粒子の含有量が増加又は減少する無機粒子含有量の勾配を有している。このような無機粒子含有量の勾配を形成するために、
図6Cに係る方法では、無機粒子含有ポリマー粒子と無機粒子非含有ポリマー粒子との混合物を用い、かつ混合物における無機粒子含有ポリマー粒子と無機粒子非含有ポリマー粒子との割合を調節することによって、無機粒子含有ポリマー基材170bにおける無機粒子の含有量が、無機粒子含有ポリマー基材170aよりも低い値となるようにしている。
【0124】
したがって、本開示に係る方法によれば、無機粒子の含有量が互いに異なっている2つのポリマー基材を有する複合体を、優れた品質を確保しつつ、比較的簡便に製造することができる。
【0125】
また、無機粒子含有量が異なる2つの無機粒子含有ポリマー基材を有するポリマー基材-支持基材複合体は、ポリマーのみからなる基材と比較して、種々の用途に有用な物理的特性を有する。例えば、この複合体では、隣り合う無機粒子含有ポリマー基材の間での無機粒子含有量の差を調節することによって、構成部材間における屈折率を調節することが可能であるため、優れた反射防止特性を有する光学用部材として有用であると考えられる。
【0126】
本開示に係るポリマー基材-支持基材複合体の製造方法の別の実施態様では、支持基材として、下記の追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体を用いることができる:
ポリマー基材及び追加のポリマー基材を有しており、ポリマー基材及び追加のポリマー基材が、少なくとも部分的に、互いに重なり合って配置されており、かつ、ポリマー基材及び追加のポリマー基材のうちの少なくともいずれかが無機粒子を含む、追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体。
【0127】
支持基材としての追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体については、ポリマー粒子層-支持基材複合体の製造方法における支持基材に関する上述の記載を参照することができる。追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体は、例えば、
図6A~
図6Cに例示される複合体222a又は222bであってよい。
【0128】
図7A及び
図7Bは、支持基材として2つのポリマー基材を有する複合体を用いることを含む、本開示に係るポリマー基材-支持基材複合体の製造方法の1つの実施態様を概略的に示す。
図7A及び
図7Bに示されているポリマー粒子層-支持基材複合体322a、322bは、それぞれ、支持基材として、2つのポリマー基材を有する複合体222a、222bを有しており、かつ、それぞれ、ポリマー粒子層160a、160cを有している。複合体222a及び222bは、
図6A及び
図6Bで記載したものと同一の構成を有している。
【0129】
図7Aの複合体322aでは、複合体222aを構成している無機粒子非含有ポリマー基材150の上に無機粒子含有ポリマー粒子層160aが形成されている。この複合体322aを熱プレスすることによって得られる複合体332aは、2つの無機粒子含有ポリマー基材170a、170a′、及び、これらによって挟持されている無機粒子非含有ポリマー基材150を、有している。
【0130】
また、
図7Bの複合体322bでは、複合体222bを構成している2つの無機粒子含有ポリマー基材のうち、比較的低い無機粒子含有量を有している170b上に、無機粒子含有ポリマー粒子と無機粒子非含有ポリマー粒子との混合物から構成されるポリマー粒子層160cが形成されている。この複合体322bを熱プレス処理することによって得られる複合体332bは、3つの無機粒子含有ポリマー基材170a、170b、170cを有しており、これらの基材は、積層方向に沿った無機粒子含有量の勾配を有するように積層されている。
【0131】
支持基材としての2つのポリマー基材を有するポリマー基材-支持基材複合体は、種々の用途に有用な物理的特性を有する。例えば、これらの複合体では、隣り合う無機粒子含有ポリマー基材の間での無機粒子含有量の差を調節することによって、構成部材間における屈折率を調節することが可能であるため、優れた透過・反射特性、特には優れた反射防止特性を有する光学用部材として有用であると考えられる。特に、
図7A及びBで例示される複合体は3つのポリマー基材を有しているため、光学特性をさらに細かく調節することが可能であると考えられる。
【0132】
(支持基材が剥離用基材に保持されている態様)
本開示に係る1つの実施態様では、支持基材が剥離用基材上に保持されており、かつ、ポリマー粒子層を熱プレスする前に、又はポリマー粒子層を熱プレスした後に、この剥離用基材からポリマー基材を剥がす。
【0133】
図8Aに示されている方法では、支持基材としてのポリマー基材150が、剥離用基材190の上に保持されている。本開示に係る方法によって、支持基材としてのポリマー基材150の上に無機粒子含有ポリマー粒子層160aを形成した後に、熱プレス処理によって、ポリマー基材-支持基材複合体222aと剥離用基材190との複合体226aを得る。そして、この複合体226aにおいて、剥離用基材190からポリマー基材-支持基材複合体222aを剥がすことによって、ポリマー基材-支持基材複合体222aを得る。
【0134】
また、本開示に係る別の実施態様では、ポリマー粒子層を熱プレスする前に、上記剥離用基材から、支持基材としてのポリマー基材を剥がしてもよい。すなわち、例えば、
図8Bで見られるように、剥離用基材190上に支持基材としてのポリマー基材150を形成し、かつポリマー基材150の上に無機粒子含有ポリマー粒子層160aを形成することによって、ポリマー粒子層-ポリマー基材複合体と剥離用基材との複合体216aを得た後に、この複合体216aにおいて、剥離用基材190からポリマー粒子層-支持基材複合体212aを剥がすことによって、ポリマー粒子層-支持複合体212aを得てよい。さらに、このようにして得られたポリマー粒子層-支持基材複合体212aに熱プレス処理を行うことによって、ポリマー基材-支持基材複合体222aを製造することができる。
【0135】
支持基材を保持するための剥離用基材は、特に限定されない。剥離基材からポリマー含有層を剥がす際の剥離性が良好であることから、剥離用基材は、ガラス板、ポリアミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエチレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド、ポリテトラフルオロエチレンであることが好ましい。
【0136】
支持基材が剥離用基材に保持されている上記の製造方法によれば、ポリマー粒子層を形成する際、及び/又は、ポリマー粒子層を熱プレスする際などに、支持基材を外部環境から保護することが可能となり、得られる複合体の品質をさらに向上させることができる場合がある。
【0137】
〈支持基材として無機基材を用いる態様〉
本開示に係る1つの実施態様では、ポリマー基材-支持基材複合体の製造方法において、支持基材として無機基材を用いる。
【0138】
図9は、支持基材として無機基材を使用した場合の、本開示に係るポリマー基材-支持基材複合体の製造方法の1つの実施態様を概略的に示す。
図9に示されている実施態様では、本開示に係る方法によって、支持基材としての無機基材180上に堆積された無機粒子含有ポリマー粒子層160aを有しているポリマー粒子層-支持基材複合体421aを製造する。そして、得られたポリマー粒子層-支持基材複合体421aのポリマー粒子層160aを熱プレスし、支持基材としての無機基材180上に無機粒子含有ポリマー基材170aを形成して、ポリマー基材-支持基材複合体420aを得る。得られたポリマー基材-支持基材複合体420aは、支持基材としての無機基材180上に配置された無機粒子含有ポリマー基材170aを有している。
【0139】
支持基材として無機基材を有するポリマー基材-支持基材複合体は、例えば無機基材と比較して異なる物理的性質を有しており、種々の用途、特に光学部材として有用である。例えば、ポリマー基材として無機粒子含有ポリマー基材を有しかつ支持基材として無機基材を有するポリマー基材-支持基材複合体は、無機粒子非含有ポリマー基材と無機基材とからなる複合体と比較して、構成部材間での屈折率の差異が低減されており、その結果として、複合体における反射率が低減されていると考えられる。
【0140】
〈支持基材として剥離用基材を用いる態様〉
本開示に係る1つの実施態様では、ポリマー基材-支持基材複合体の製造方法において、支持基材として剥離用基材を用いる。
【0141】
特に、本開示によれば、支持基材として剥離用基材と用いることによって、ポリマー基材を製造することができる。すなわち、本開示は、下記を含む、ポリマー基材の製造方法を含む:
支持基材として剥離用基材を用いて、本開示に係る方法によって、ポリマー基材-支持基材複合体を得ること(複合体提供工程)、
ポリマー基材-支持基材複合体において、剥離用基材である前記支持基材から前記ポリマー基材を剥がすことによって、ポリマー基材を得ること(剥離工程)。
【0142】
図10Aは、支持基材として剥離用基材190を用いることによって、無機粒子非含有ポリマー基材150を得る方法の概略図を示している。
図10Aに示されている方法では、ポリマー粒子として無機粒子非含有ポリマー粒子を用い、かつ支持基材として剥離用基材190を用いることによって、本開示に係る方法によってポリマー粒子層-支持基材複合体216bを製造している。そして、このポリマー粒子層-支持基材複合体216bにおける無機粒子非含有ポリマー粒子層160を熱プレスすることによって剥離用基材190上に無機粒子非含有ポリマー基材150を形成して、ポリマー基材-支持基材複合体226bを得る。そして、剥離用基材190から無機粒子非含有ポリマー基材150を剥がすことによって、ポリマー基材としての無機粒子非含有ポリマー基材150を得ている。
【0143】
図10Bは、ポリマー粒子として無機粒子含有ポリマー粒子を用いること以外は、
図10Aと同様の方法によって、ポリマー基材としての無機粒子含有ポリマー基材170aを得る方法を示している。
【0144】
ポリマー基材を得るための上記の本開示に係る製造方法では、適当な剥離用基材を選択することによって、無機粒子含有ポリマー基材の剥離を比較的容易に行うことができる。
【0145】
また、本開示に係る製造方法によって得られる無機粒子含有ポリマー基材は、無機粒子を含有していることに起因して、例えばポリマーのみからなるポリマー基材とは異なる物理的性質を有している。特に、無機粒子含有ポリマー基材は、屈折率に関して、無機基材とポリマーとの間の中間的な値を有しうるため、例えば光学用途において有用である。具体的には、例えば、無機基材とポリマーとの屈折率の差が大きい場合に、その差に起因する問題、例えば反射率の増加の問題を低減するために、無機粒子含有ポリマー基材を用いることができる。
【0146】
(複合体提供工程)
本開示に係るポリマー基材の製造方法の複合体提供工程では、支持基材として剥離用基材を用いて、本開示に係る方法によって、ポリマー基材-支持基材複合体を得る。ポリマー基材-支持基材複合体の製造方法については、上記の記載を参照することができる。
【0147】
(剥離用基材)
本開示に係るポリマー基材の製造方法で支持基材として用いられる剥離用基材は、特に限定されないが、ポリマー基材からの剥離性に優れているものが好ましい。剥離用基材については、上述の記載を参照することができる。
【0148】
(剥離工程)
本開示に係るポリマー基材の製造方法の剥離工程では、ポリマー基材-支持基材複合体において、剥離用基材である前記支持基材から前記ポリマー基材を剥がすことによって、ポリマー基材を得る。剥離の方法は、特に限定されず、公知の方法で行うことができる。
【0149】
≪基材を重ね合わせることを含む、追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体の製造方法≫
本開示は、下記を含む、追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体の製造方法を含んでいる:
本開示に係る方法によって、ポリマー基材を製造すること(基材製造工程)、
追加のポリマー基材を提供すること(基材提供工程)、及び、
ポリマー基材と追加のポリマー基材とを互いに重ね合わせること(配置工程)。
【0150】
図11に示される方法では、本開示に係る方法によって無機粒子含有ポリマー基材170aを製造し、かつ、追加のポリマー基材として、無機粒子非含有ポリマー基材150を提供する。そして、無機粒子含有ポリマー基材170aと無機粒子非含有ポリマー基材150とを互いに重ね合わせて、追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体222a′を得ている。
【0151】
追加のポリマー基材として無機粒子含有ポリマー基材を有する追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体は、ポリマーのみからなる基材と比較して、種々の用途に有用な物理的特性を有する。特に、無機粒子含有ポリマー基材は、ポリマーのみからなる層とは異なる屈折率を有しうると考えられるため、当該複合体は、優れた反射防止特性を有する光学用部材として有用であると考えられる。
【0152】
〈基材製造工程〉
本開示に係る、基材を重ね合わせることを含む追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体の製造方法における基材製造工程では、本開示に係る方法によって、ポリマー基材を製造する。ポリマー基材の製造方法については、上記の記載を参照することができる。
【0153】
〈基材提供工程〉
本開示に係る、基材を重ね合わせることを含む追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体の製造方法における基材提供工程では、追加のポリマー基材を提供する。追加のポリマー基材としては、無機基材含有ポリマー基材又は無機基材非含有ポリマー基材が挙げられる。追加のポリマー基材としての無機基材含有ポリマー基材又は無機基材非含有ポリマー基材については、上記の記載を参照することができる。追加のポリマー基材としての無機基材含有ポリマー基材又は無機基材非含有ポリマー基材は、本開示に係るポリマー基材の製造方法によって製造されたものであってよい。
【0154】
〈配置工程〉
本開示に係る、基材を重ね合わせることを含む追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体の製造方法における配置工程では、ポリマー基材と追加のポリマー基材とを、互いに重ね合わせる。配置工程では、好ましくは、ポリマー基材と追加のポリマー基材とを、それらの主たる面を介して、互いに少なくとも部分的に重なり合うように、特には互いに重なり合うように、重ね合わせる。より好ましくは、ポリマー基材と追加のポリマー基材とを、ポリマー基材及び追加のポリマー基材のうちの一方の主たる面が、他方の主たる面を実質的に覆うように、互いに重ね合わせる。
【0155】
〈熱圧着工程〉
本開示に係る1つの実施態様では、配置工程で得られた追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体に対して、さらに熱圧着処理を行うことができる。複合体に対して熱圧着処理を行うことによって、追加のポリマー基材とポリマー基材との密着性がさらに向上しうる。熱圧着処理については、ポリマー基材-無機基材複合体の製造方法に関する下記の記載を参照することができる。
【0156】
≪ポリマー基材-無機基材複合体の製造方法≫
本開示は、下記を含む、ポリマー基材-無機基材複合体の製造方法を含む:
本開示に係る方法によって、ポリマー基材を製造すること(基材製造工程)、
無機基材を提供すること(無機基材提供工程)、及び、
ポリマー基材を、無機基材上に配置すること(配置工程)。
【0157】
図12に示される方法では、本開示に係る方法によって無機粒子含有ポリマー基材170aを製造し、かつ、無機基材180を提供する。そして、無機基材180上に、無機粒子含有ポリマー基材170aを配置して、ポリマー基材-無機基材複合体420aを得る。無機粒子含有ポリマー基材170aは、例えば、
図10Bで例示される製造方法によって製造してよい。
【0158】
ポリマー基材として無機粒子含有ポリマー基材を有するポリマー基材-無機基材複合体は、無機基材と比較して異なる物理的性質を有しており、種々の用途、得には光学用部材として有用である。特に、当該複合体は、無機粒子非含有ポリマー基材及び無機基材からなる複合体と比較して、構成部材間での屈折率の差異が低減されており、その結果として、複合体における反射率が低減されていると考えられる。
【0159】
〈基材製造工程〉
本開示のポリマー基材-無機基材複合体の製造方法における基材製造工程では、本開示に係る方法によって、ポリマー基材を製造する。ポリマー基材の製造方法については、本開示に係る上述の記載を参照することができる。
【0160】
〈無機基材提供工程〉
本開示のポリマー基材-無機基材複合体の製造方法における無機基材提供工程では、無機基材を提供する。無機基材については、上述の記載を参照することができる。
【0161】
〈配置工程〉
本開示のポリマー基材-無機基材複合体の製造方法における配置工程では、ポリマー基材を、無機基材上に配置する。
【0162】
配置工程では、好ましくは、ポリマー基材及び無機基材が、それらの主たる面を介して、互いに少なくとも部分的に重なり合うように、特には互いに重なり合うように、ポリマー基材を、無機基材上に配置してよい。あるいは、配置工程において、ポリマー基材及び無機基材のうちの一方の主たる面が、他方の主たる面を実質的に覆うように、ポリマー基材を、無機基材上に配置してよい。
【0163】
配置工程においてポリマー基材を無機基材上に配置する様式は、特に限定されない。例えば、ポリマー基材を無機基材に直接配置することができる。
【0164】
別の実施態様では、配置工程においてポリマー基材を無機基材上に配置する際に、例えば、あらかじめ無機基材上に密着ポリマー層を配置し、かつ、ポリマー基材を、当該密着ポリマー層を介して、無機基材上に配置することができる。ポリマー基材が密着ポリマー層を介して無機基材上に配置されている場合には、ポリマー基材と無機基材との密着性がさらに向上するため、好ましい。
【0165】
密着ポリマー層は、ポリマー基材と無機基材との密着性を向上させることができるものであれば、特に限定されない。密着ポリマー層とポリマー基材との接合がさらに促進されるため、密着ポリマー層は、ポリマー基材と同種のポリマーで構成されていることが特に好ましい。
【0166】
密着ポリマー層は、好ましくは、熱変性ポリマー層である。密着ポリマー層としての熱変性ポリマー層は、例えば、コーティング及び/又は熱圧着によって無機基材上にポリマー層を形成し、かつ、当該ポリマー層を加熱して熱変性ポリマー層にすることによって、形成することができる。加熱の方法は、特に限定されないが、例えば、オーブン、ホットプレート、赤外線、火炎、レーザー、又はフラッシュランプなどの加熱源を用いた方法が挙げられる。ここで、熱変性の程度は、熱変性のための加熱の温度、時間、周囲雰囲気等によって調節することができる。具体的には、熱変性の程度は、例えば、無機基材に対するポリマー層の密着性と比較して、熱変性ポリマー層の無機基材に対する密着性が大きくなる程度にすることができる。
【0167】
〈熱圧着工程〉
本開示に係る1つの実施態様では、配置工程で得られたポリマー基材-無機基材複合体に対して、さらに熱圧着処理を行うことができる。複合体に対して熱圧着処理を行った場合には、ポリマー基材と無機基材と間の密着性が、さらに向上しうる。
【0168】
ポリマー基材-無機基材複合体に対する熱圧着処理の様式は、特に限定されず、公知の方法によって行うことができる。熱圧着処理は、例えば、真空条件(例えば0~10Pa)で行ってよく、かつ/又は、ポリマー基材を構成するポリマーの熱変性温度以上で行ってよい。熱圧着処理の温度は、例えば、80℃~300℃であってよい。熱圧着処理の圧力は、例えば、0.1~1000MPaであってよく、又は、0.2~500MPa、0.5~500MPa、1~200MPa、2~100MPa、5~100MPa、若しくは10~70MPaであってよい。熱圧着処理の時間は、例えば、1分間~10時間であってよく、又は、10分間~300分間、若しくは30分間~120分間であってよい。
【0169】
≪追加のポリマー基材を提供することを含む、追加のポリマー基材-ポリマー基材-無機基材複合体の製造方法≫
本開示は、下記を含む、追加のポリマー基材-ポリマー基材-無機基材複合体の製造方法を、含む:
本開示に係る方法によって、ポリマー基材-無機基材複合体を製造すること(複合体製造工程)
追加のポリマー基材を提供すること(基材提供工程)、及び
追加のポリマー基材を、ポリマー基材-無機基材複合体におけるポリマー基材の上に配置すること(配置工程)。
【0170】
図13では、本開示に係る方法によってポリマー基材-無機基材複合体420aを製造し、かつ、追加のポリマー基材として無機粒子非含有ポリマー基材150を提供している。そして、無機粒子非含有ポリマー基材150を、ポリマー基材-無機基材複合体420aにおける無機粒子含有ポリマー基材170aの上に配置することによって、追加のポリマー基材-ポリマー基材-無機基材複合体430aを製造している。
【0171】
無機粒子含有ポリマー基材を有する追加のポリマー基材-ポリマー基材-無機基材複合体は、優れた物性を有しており、特に、無機粒子非含有ポリマー基材及び無機基材のみからなる複合体と比較して、構成部材間での屈折率の差異が低減されており、その結果として、優れた反射特性を有すると考えられる。
【0172】
〈複合体製造工程〉
本開示に係る、追加のポリマー基材を提供することを含む追加のポリマー基材-ポリマー基材-無機基材複合体の製造方法の複合体製造工程では、本開示に係る方法によって、ポリマー基材-無機基材複合体を製造する。ポリマー基材-無機基材複合体の製造方法については、上記の記載を参照することができ、例えば、上述の
図9又は
図12で例示される製造方法によって、ポリマー基材-無機基材複合体を製造することができる。
【0173】
好ましくは、複合体製造工程において、ポリマー基材として無機基材含有ポリマー基材を有する、ポリマー基材-無機基材複合体を製造する。この場合には、構成部材間における屈折率が比較的低減された追加のポリマー基材-ポリマー基材-無機基材複合体を得ることができ、特に光学用途において有用である。
【0174】
〈基材提供工程〉
本開示に係る、追加のポリマー基材を提供することを含む追加のポリマー基材-ポリマー基材-無機基材複合体の製造方法の基材提供工程では、追加のポリマー基材を提供する。追加のポリマー基材としては、無機基材含有ポリマー基材又は無機基材非含有ポリマー基材が挙げられ、本開示に係る方法によって製造されたものであってよい。追加のポリマー基材としての無機基材含有ポリマー基材又は無機基材非含有ポリマー基材については、上記の記載を参照することができる。好ましくは、基材提供工程で提供される追加のポリマー基材は、無機粒子非含有ポリマー基材であるか、又は、複合体製造工程で製造される複合体に含まれるポリマー基材よりも低い無機粒子含有量を有している。
【0175】
〈配置工程〉
本開示に係る、追加のポリマー基材を提供することを含む追加のポリマー基材-ポリマー基材-無機基材複合体の製造方法の配置工程では、追加のポリマー基材を、ポリマー基材-無機基材複合体におけるポリマー基材の上に配置する。配置工程では、追加のポリマー基材、及びポリマー基材-無機基材複合体におけるポリマー基材が、それぞれ、それらの主たる面を介して、互いに少なくとも部分的に重なり合うように、特には互いに重なり合うように、配置を行ってよい。あるいは、配置工程において、追加のポリマー基材、又はポリマー基材-無機基材複合体におけるポリマー基材のうちの一方の主たる面が、他方の主たる面を実質的に覆うように、配置を行ってよい。
【0176】
〈熱圧着工程〉
本開示に係る1つの実施態様では、配置工程で得られた追加のポリマー基材-ポリマー基材-無機基材複合体に対して、さらに熱圧着処理を行うことができる。熱圧着処理によって、複合体を構成する基材間の密着性が、さらに向上しうる。熱圧着処理については、「ポリマー基材-無機基材複合体の製造方法」に関して上述した記載を参照することができる。
【0177】
なお、追加のポリマー基材-ポリマー基材-無機基材複合体を製造する際に、ポリマー基材-無機基材複合体におけるポリマー基材の上に追加のポリマー基材を配置するだけではなく、異なるタイミングで、ポリマー基材を配置してもよい。
図13には示していないが、例えば、無機粒子含有ポリマー基材上にポリマー基材を配置することによって追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体を製造した後に、この追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体を、無機基材上に配置してもよく、又は、ポリマー基材-剥離用基材複合体において剥離用基材からポリマー基材を剥離する前に、ポリマー基材上に追加のポリマー基材を配置してもよい。
【0178】
≪追加のポリマー粒子層-ポリマー粒子層-支持基材複合体の製造方法≫
本開示は、下記を含む、追加のポリマー粒子層-ポリマー粒子層-支持基材複合体の製造方法を含む:
本開示に係る方法によってポリマー粒子層-支持基材複合体を得ること(複合体提供工程)、
ポリマー粒子層-支持基材複合体の上に、無機粒子非含有ポリマー粒子、無機粒子含有ポリマー粒子、又は無機粒子含有ポリマー粒子と無機粒子非含有ポリマー粒子との混合物を堆積させて、ポリマー粒子層-支持基材複合体の上に、追加のポリマー粒子層を形成すること(追加のポリマー粒子層提供工程)。
【0179】
図14Aに示されている例では、無機粒子含有ポリマー粒子14と無機粒子非含有ポリマー粒子15との混合物を、ポリマー粒子層-支持基材複合体214bのポリマー粒子層160b上に堆積することによって、追加のポリマー粒子層160cを形成し、複合体312bを製造している。
【0180】
本開示に係る製造方法によれば、2つのポリマー粒子層を有する複合体を比較的簡便に製造することができ、特には、無機粒子の含有量が互いに異なる2つのポリマー粒子層を有する複合体を、比較的簡便に製造することができる。
【0181】
支持基材としてポリマー基材を有する追加のポリマー粒子層-ポリマー粒子層-支持基材複合体は、異なる無機粒子含有量を有する複数のポリマー粒子層を有しうることに起因して、例えば1つのポリマー基材と比較して異なる光学的性質を有するため、光学用部材として有用であると考えられる。
【0182】
〈複合体提供工程〉
本開示に係る追加のポリマー粒子層-ポリマー粒子層-支持基材複合体の製造方法における複合体提供工程では、本開示に係る方法によって、ポリマー粒子層-支持基材複合体を得る。好ましくは、ポリマー粒子層-支持基材複合体は、支持基材としてポリマー基材を用いて製造される。ポリマー粒子層-支持基材複合体の製造方法については、上述の記載を参照することができる。
【0183】
〈追加のポリマー粒子層提供工程〉
本開示に係る追加のポリマー粒子層-ポリマー粒子層-支持基材複合体の製造方法における追加のポリマー粒子層提供工程では、ポリマー粒子層-支持基材複合体の上に、無機粒子非含有ポリマー粒子、無機粒子含有ポリマー粒子、又は無機粒子含有ポリマー粒子と無機粒子非含有ポリマー粒子との混合物を堆積させて、ポリマー粒子層-支持基材複合体の上に、追加のポリマー粒子層を形成する。
【0184】
ポリマー粒子の堆積は、本開示に係るポリマー粒子層-支持基材複合体について上述した方法と同様にして、行うことができる。具体的には、例えば、ポリマー粒子を分散媒に分散させることによって分散体を作製し、そして、複合体提供工程で提供されるポリマー粒子層-支持基材複合体のポリマー粒子層の上にこの分散体を堆積し、かつ分散体を乾燥させることによって、追加のポリマー粒子層-ポリマー粒子層-支持基材複合体を製造することができる。
【0185】
≪追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体の製造方法≫
本開示に係る方法は、下記を含む、追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体の製造方法を含む:
本開示に係る方法によって、追加のポリマー粒子層-ポリマー粒子層-支持基材複合体を製造すること(複合体製造工程)、
追加のポリマー粒子層-ポリマー粒子層-支持基材複合体のポリマー粒子層及び追加のポリマー粒子層を熱プレスすることによって、支持基材上に、ポリマー基材、及び追加のポリマー基材を形成すること(熱プレス工程)。
【0186】
図14Bは、支持基材としてポリマー基材を用いた場合の、本開示に係る追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体の製造方法の1つの実施態様を示す。
図14Bに示されている方法では、本開示に係る方法によって製造された追加のポリマー粒子層-ポリマー粒子層-支持基材複合体312bのポリマー粒子層160b及び追加のポリマー粒子層160cを熱プレスことによって、追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体332bを製造している。得られた追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体332bは、無機粒子の含有量が互いに異なるポリマー基材170a、170b、及び170cを有している。
【0187】
本開示に係る追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体の製造方法では、積層された複数のポリマー粒子層を含む複合体に対して熱プレスを行うため、2つのポリマー粒子層を一度に熱プレスして、積層された複数のポリマー基材を有する複合体を製造することができる。したがって、この製造方法によれば、積層された2つのポリマー基材を有する複合体を、比較的簡便に製造することができる。特には、本開示に係る追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体の製造方法によれば、支持基材としてポリマー基材を用いることによって、3つ又は4つのポリマー基材を含む複合体を比較的簡便に製造することができる。
【0188】
また、本開示に係る方法では、ポリマーを溶解させるための溶剤の使用が低減されているため、得られる複合体において、隣り合うポリマー基材の間の界面の平坦性が向上している。
【0189】
さらに、無機粒子含有ポリマー基材を有する追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体は、種々の用途に有用な物理的特性を有する。例えば、当該複合体では、隣り合う無機粒子含有ポリマー基材の間での無機粒子含有量の差を調製することによって、構成部材間における屈折率を調節することが可能であるため、優れた反射特性、特には優れた反射防止特性を有する光学用部材として有用であると考えられる。
【0190】
上述のように、本開示に係る追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体の製造方法によれば、4つのポリマー基材から構成される複合体を製造することもできる。
図15Aに示されている方法では、本開示に係る方法によって、支持基材として2つのポリマー基材を有しているポリマー粒子層-支持基材複合体322bを製造し、そして、この複合体322bのポリマー粒子層160cの上に、追加のポリマー粒子層160dを形成して、追加のポリマー粒子層-ポリマー粒子層-支持基材複合体422aを製造している。そして、
図15Bでは、得られた複合体422aの追加のポリマー粒子層160d、及びポリマー粒子層160cを熱プレスすることによって、追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体442aを製造している。得られた複合体442aは、無機粒子の含有量が互いに異なっている4つのポリマー基材170a、170b、170c、及び170dを有しており、積層方向における無機粒子含有量の勾配を有している。
【0191】
本開示に係る方法によって得られる4つのポリマー基材から構成される複合体は、例えば
図15Bに見られるように、無機粒子の含有量が、最外層を構成するポリマー基材から出発して、積層方向に段階的に増加又は減少している構成を有することができる。このような複合体では、無機粒子含有量が異なる4つの無機粒子含有ポリマー基材が隣り合って存在しているため、構成部材間における屈折率をさらにより細かく調節することが可能であり、優れた反射防止特性を有する光学用部材として、特に有用であると考えられる。
【0192】
〈複合体製造工程〉
本開示に係る追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体の製造方法における複合体製造工程では、本開示に係る方法によって、追加のポリマー粒子層-ポリマー粒子層-支持基材複合体を製造する。追加のポリマー粒子層-ポリマー粒子層-支持基材複合体の製造方法については、上記の記載を参照することができる。
【0193】
〈熱プレス工程〉
本開示に係る追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体の製造方法における熱プレス工程では、追加のポリマー粒子層-ポリマー粒子層-支持基材複合体のポリマー粒子層及び追加のポリマー粒子層を熱プレスすることによって、支持基材上に、ポリマー基材、及び追加のポリマー基材を形成する。ポリマー粒子層及び追加のポリマー粒子層を熱プレスする方法については、本開示に係るポリマー基材-支持基材複合体の製造方法で上述した記載を参照することができる。
【0194】
≪支持基材として無機基材を用いることを含む、追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体の製造方法≫
本開示に係る追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体の製造方法において、支持基材として無機基材を用いることによって、無機基材の上にポリマー基材及び追加のポリマー基材が積層されている複合体を得ることができる。
【0195】
図16では、無機基材180の上に堆積されたポリマー粒子層160a及び160を有する追加のポリマー粒子層-ポリマー粒子層-支持基材複合体431aを製造し、この複合体431aに対して熱プレス処理を行うことによって、支持基材としての無機基材180の上に配置されたポリマー基材150及び170aを有する追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体430a′を製造している。
【0196】
当該方法によれば、無機基材の上にポリマー基材及び追加のポリマー基材が積層されている複合体を、比較的簡便に得ることができる。また、支持基材として無機基材を有しかつ無機粒子含有ポリマー基材を有する追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体は、優れた物性を有しており、例えば、無機粒子非含有ポリマー基材及び無機基材のみからなる複合体と比較して、構成部材間での屈折率の差異が低減されており、その結果として、優れた反射特性、特には優れた反射防止特性を有すると考えられる。
【0197】
≪支持基材として剥離用基材を用いることを含む、追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体の製造方法≫
本開示は、下記を含む、追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体の製造方法を含む:
支持基材として剥離用基材を用いて、上記の本開示に係る方法によって、追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体を得ること(複合体製造工程)、
追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体において、剥離用基材である支持基材から追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体を剥がすことによって、追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体を得ること(剥離工程)。
【0198】
図17は、支持基材として剥離用基材を用いることを含む、追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体222a′の製造方法の1つの実施態様を示す。図中の各構成要素については、上述の記載を参照することができる。無機粒子含有ポリマー基材を有する追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体は、既述した追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体と同様に、種々の用途に有用な物理的特性を有すると考えられ、特に、優れた反射防止特性を有する光学用部材として有用であると考えられる。
【0199】
〈複合体製造工程〉
本開示に係る、支持基材として剥離用基材を用いることを含む追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体の製造方法の複合体製造工程では、支持基材として剥離用基材を用いて、上記の本開示に係る方法によって、追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体を製造する。支持基材としての剥離用基材、及び、追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体の製造方法については、上述の記載を参照することができる。
【0200】
複合体製造工程で製造される追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体を構成する追加のポリマー基材及びポリマー基材のうち、少なくともいずれかは、無機粒子含有ポリマー基材であることが好ましい。
【0201】
〈剥離工程〉
本開示に係る、支持基材として剥離用基材を用いることを含む追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体の製造方法の剥離工程では、追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体において、剥離用基材である支持基材から追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体を剥がすことによって、追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体を得る。剥離の方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0202】
≪無機基材に複合体を配置することを含む、追加のポリマー基材-ポリマー基材-無機基材複合体の製造方法≫
本開示は、下記を含む、追加のポリマー基材-ポリマー基材-無機基材複合体の製造方法、を含む:
本開示に係る製造方法によって、少なくとも部分的に互いに重なり合っているポリマー基材及び追加のポリマー基材を有している追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体を製造すること(複合体製造工程)、ここで、ポリマー基材が、無機粒子含有ポリマー基材であり、かつ/又は、追加のポリマー基材が、追加の無機粒子含有ポリマー基材である、
無機基材を提供すること(無機基材提供工程)、並びに
無機基材に、無機粒子ポリマー基材であるポリマー基材又は追加の無機粒子含有ポリマー基材である追加のポリマー基材が無機基材の方を向くようにして、追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体を配置すること(配置工程)。
【0203】
図18は、無機基材に複合体を配置することを含む、追加のポリマー基材-ポリマー基材-無機基材複合体430a′′の製造方法の1つの実施態様を示す。
図18に示されている方法では、
図6Aなどで例示される本開示に係る方法によって、ポリマー基材-支持基材複合体222aを製造し、かつ、無機基材180を提供している。そして、無機基材180に、ポリマー基材-支持基材複合体222aを、ポリマー基材-支持基材複合体222aの無機粒子含有ポリマー基材170aが無機基材180の方を向くようにして、配置している。
【0204】
無機粒子含有ポリマー基材を有する追加のポリマー基材-ポリマー基材-無機基材複合体は、既述したように、優れた物性を有している。例えば、当該複合体は、ポリマー部材及び無機基材のみからなる複合体と比較して、構成部材間での屈折率の差異が低減されており、その結果として、優れた反射防止特性を有すると考えられる。
【0205】
〈複合体製造工程〉
本開示の、無機基材に複合体を配置することを含む追加のポリマー基材-ポリマー基材-無機基材複合体の製造方法に係る複合体製造工程では、少なくとも部分的に互いに重なり合っているポリマー基材及び追加のポリマー基材を有している追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体を、製造する。ここで、「追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体」は、
図11又は
図17で例示される本開示に係る方法によって製造される、追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体であってよい。また、「追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体」は、上記の
図6A、6B、6C、
図8A及び
図8Bで例示される本開示に係る方法によって製造される、支持基材としてのポリマー基材を有するポリマー基材-支持基材であってよい。
【0206】
〈無機基材提供工程〉
本開示の、無機基材に複合体を配置することを含む追加のポリマー基材-ポリマー基材-無機基材複合体の製造方法に係る無機基材提供工程では、無機基材を提供する。無機基材については、上述の記載を参照することができる。
【0207】
〈配置工程〉
本開示の、無機基材に複合体を配置することを含む追加のポリマー基材-ポリマー基材-無機基材複合体の製造方法に係る配置工程では、無機基材に、無機粒子ポリマー基材であるポリマー基材又は追加の無機粒子含有ポリマー基材である追加のポリマー基材が無機基材の方を向くようにして、追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体を配置する。
【0208】
配置工程において追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体を無機基材上に配置する様式に関しては、ポリマー基材-無機基材複合体の製造方法に関して上述した記載を参照することができる。例えば、無機基材上に、追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体を、直接に、又は、密着ポリマー層を介して、配置することができる。
【0209】
配置工程では、追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体の追加のポリマー基材又はポリマー基材と、無機基材とが、それぞれ、それらの主たる面を介して、互いに少なくとも部分的に重なり合うように、特には互いに重なり合うように、配置を行ってよい。あるいは、配置工程において、追加のポリマー基材又はポリマー基材、及び無機基材のうちの一方の主たる面が、他方の主たる面を実質的に覆うように、配置を行ってよい。
【0210】
〈熱圧着工程〉
本開示に係る1つの実施態様では、配置工程で得られた追加のポリマー基材-ポリマー基材-無機基材複合体に対して、さらに熱圧着処理を行うことができる。熱圧着処理によって、追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体と無機基材複合体との密着性が、さらに向上しうる。熱圧着処理については、ポリマー基材-無機基材複合体の製造方法に関して上述した記載を参照することができる。
【0211】
≪勾配型のポリマー基材積層体の製造方法≫
本開示は、積層されている少なくとも3つのポリマー基材を有しているポリマー基材積層体であって、ポリマー基材それぞれにおける無機粒子の含有量が積層体の最外層から始めて積層方向に沿って段階的に増加又は減少するように、少なくとも3つのポリマー基材が積層されているポリマー基材積層体(以下、「勾配型のポリマー基材積層体」と呼ぶ。)を製造する方法、を含んでおり、この製造方法は、下記の(a)及び(b)を含む:
(a)無機粒子非含有ポリマー基材、無機粒子含有ポリマー基材、及び、少なくとも2つのポリマー基材から構成される複合体、からなる群から、少なくとも2つの材料を選択すること(材料選択工程)、ここで、少なくとも2つの材料は、本開示に係る方法によって製造されたポリマー基材、及び/又は本開示に係る方法によって製造された、少なくとも2つのポリマー基材から構成される複合体、を含み、かつ、合計で少なくとも3つのポリマー基材を含む、
(b)無機粒子の含有量が積層方向に沿って段階的に増加又は減少するように、少なくとも2つの材料を積層して、ポリマー基材積層体を得ること(積層工程)。
【0212】
図19は、勾配型のポリマー基材積層体の製造方法の1つの実施態様を概略的に示す。
図19に示されている方法では、少なくとも2つの材料として、本開示に係る方法によって製造された、支持基材としてポリマー基材を有するポリマー基材-支持基材複合体222b、222d及び222eを選択している。これらの複合体は、本開示に係る方法によって製造された、少なくとも2つのポリマー基材から構成される複合体である。複合体222bにおいて、ポリマー基材170aにおける無機粒子の含有量は、ポリマー基材170bよりも多い。複合体222dにおいて、ポリマー基材170cにおける無機粒子の含有量は、ポリマー基材170bよりも少なく、かつ、ポリマー基材170dよりも多い。複合体222eは、ポリマー基材170dよりも少ない無機粒子含有量を有するポリマー基材170e、及び無機粒子非含有ポリマー基材150を有している。
【0213】
図19に示されている方法では、選択されたこれらの材料を、無機粒子の含有量が積層方向に沿って段階的に増加又は減少するように積層して、ポリマー基材積層体470a′を得ている。ポリマー基材積層体470a′は、積層されている6つのポリマー基材170a~170e及び150を有しており、ポリマー基材積層体470a′を構成するポリマー基材それぞれにおける無機粒子の含有量が、積層体の最外層から始めて積層方向に沿って段階的に増加又は減少するように、6つのポリマー基材が積層されている。
【0214】
この方法によれば、優れた品質を有する勾配型のポリマー基材積層体を、比較的簡便に製造することができる。特に、本開示に係る製造方法によって得られる2つのポリマー基材を有する複合体を用いた場合には、ポリマー基材間の界面の平坦性が比較的高いポリマー基材積層体を得ることができる。
【0215】
また、上記の方法によって得られる勾配型のポリマー基材積層体は、種々の用途に有用な物理的特性を有する。例えば、多数の無機粒子含有ポリマー基材を有する勾配型のポリマー基材積層体では、その膜構造を変化させることによって、特殊な効果を付加することができ、例えば、透過する波長帯域の拡大・縮小若しくは限定を行うこと、又は反射率を任意の値にすることができる。したがって、本開示に係る勾配型のポリマー基材積層体は、優れた反射・透過特性を有する光学用部材として特に有用である。
【0216】
(勾配型のポリマー基材積層体)
勾配型のポリマー基材積層体は、積層されている少なくとも3つのポリマー基材を有している。勾配型のポリマー基材積層体は、例えば、少なくとも3つの無機粒子含有ポリマー基材からなっていてよく、又は、少なくとも2つの無機粒子含有ポリマー基材及び1つの無機粒子非含有ポリマー基材からなっていてよい。ポリマー基材積層体を構成するポリマー基材、無機粒子、及びポリマーについては、上記の記載を参照することができる。ポリマー基材積層体を構成する少なくとも3つのポリマー基材は、好ましくは、同じ種類のポリマーを含有している。
【0217】
勾配型のポリマー基材積層体は、好ましくは、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、若しくは8以上のポリマー基材を有していてよく、かつ/又は、20以下、18以下、16以下、14以下、12以下、若しくは10以下のポリマー基材を有していてよい。
【0218】
勾配型のポリマー基材積層体においては、ポリマー基材それぞれにおける無機粒子の含有量が、積層体の最外層から始めて、積層方向に沿って段階的に増加又は減少するように、少なくとも3つのポリマー基材が積層されている。
【0219】
「無機粒子の含有量が積層方向に沿って段階的に増加又は減少する」とは、ポリマー基材積層体において、積層方向に沿って無機粒子の含有量における勾配が形成されていることを意味する。無機粒子の含有量における段階的な増加又は減少は、ポリマー基材積層体を構成するポリマー基材のうちの少なくとも1つのペアの間で形成されていればよい。例えば、6つのポリマー基材から構成されるポリマー基材積層体において、最外層から5つのポリマー基材における無機粒子含有量が同一であり、かつ、6つ目のポリマー基材が、その他の5つのポリマー基材よりも多いか又は少ない無機粒子含有量を有していてもよい。好ましくは、ポリマー基材積層体を構成しているポリマー基材が、それぞれ、隣り合うポリマー基材とは異なる無機粒子含有量を有している。
【0220】
ポリマー基材における無機粒子の含有量については、支持基材としてのポリマー基材に関する上述の記載を参照することができる。ポリマー基材積層体を構成するそれぞれのポリマー基材は、互いに異なる種類の無機粒子を含有していてもよく、又は、互いに同じ種類の無機粒子を含有していてもよい。好ましくは、ポリマー基材積層体を構成するそれぞれのポリマー基材が、互いに同じ種類の無機粒子を含有している。
【0221】
好ましくは、ポリマー基材積層体は、ポリマー基材からなっており、剥離用基材及び無機基材を含んでいない。このようなポリマー基材積層体は、ポリマー基材及び/又はポリマー基材からなる複合体を材料として用いることによって、製造することができる。
【0222】
〈材料選択工程〉
本開示に係る、勾配型のポリマー基材積層体の製造方法における材料選択工程では、下記からなる群から、少なくとも2つの材料を選択する:
無機粒子非含有ポリマー基材、
無機粒子含有ポリマー基材、及び、
少なくとも2つのポリマー基材から構成される複合体。
【0223】
材料選択工程において選択される少なくとも2つの材料は、本開示に係る方法によって製造されたポリマー基材、及び/又は、本開示に係る方法によって製造された、少なくとも2つのポリマー基材から構成される複合体、を含み、かつ、合計で少なくとも3つのポリマー基材を含む。
【0224】
材料選択工程における「本開示に係る方法によって製造されたポリマー基材」は、本開示に係る方法によって製造された無機粒子含有ポリマー基材であってよい。無機基材含有ポリマー基材の製造方法については、上記の記載を参照することができる。
【0225】
材料選択工程における「本開示に係る方法によって製造された、少なくとも2つのポリマー基材から構成される複合体」は、好ましくは2つ~4つ、より好ましくは2つ~3つ、特に好ましくは2つのポリマー基材から構成されており、かつ/又は、ポリマー基材以外の構成要素、特には無機基材又は剥離用基材、を含んでいない。「本開示に係る方法によって製造された、少なくとも2つのポリマー基材から構成される複合体」としては、例えば、支持基材としてポリマー基材を用いて製造されたポリマー基材-支持基材複合体(例えば
図6A~C参照)、支持基材として2つのポリマー基材を有する複合体を用いて製造されたポリマー基材-支持基材複合体(例えば
図7B参照)、無機粒子含有ポリマー基材を含む追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体(例えば
図11参照)、支持基材としてポリマー基材又は2つのポリマー基材を有する複合体を有する、追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体(例えば
図14B、
図15B参照)、追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体(例えば
図17参照)を挙げることができる。
【0226】
材料選択工程では、選択された材料全体に含まれるすべてのポリマー基材を考慮した場合に、少なくともいずれかのポリマー基材のペアの間で、無機粒子の含有量が異なっている。好ましくは、選択された材料全体に含まれるすべてのポリマー基材を考慮した場合に、すべてのポリマー基材における無機粒子の含有量が、それぞれ互いに異なっている。例えば、
図19の例では、選択された材料222b、222d、及び222eに含まれるすべてのポリマー基材170a~170e及び150を考慮した場合に、すべてのポリマー基材における無機粒子の含有量が、それぞれ互いに異なっている。
【0227】
材料選択工程において、材料は、得られるポリマー基材積層体が少なくとも3つのポリマー基材を有するように、選択される。例えば、材料として、3つ若しくは4つのポリマー基材を有する複合体のみを選択することができ、又は、材料として、2つのポリマー基材を有する複合体及び1つのポリマー基材を、選択することができる。
【0228】
また、材料選択工程において、材料は、材料を積層して得られるポリマー基材積層体において、無機粒子の含有量が積層方向に沿って段階的に増加又は減少するように、選択される。例えば、材料として、3つ又は4つのポリマー基材を有する複合体を選択した場合、当該複合体は、積層方向に沿って段階的に増加又は減少する無機粒子の含有量を有する。
【0229】
〈積層工程〉
本開示に係る勾配型のポリマー基材積層体の製造方法における積層工程では、無機粒子の含有量が積層方向に沿って段階的に増加又は減少するように、少なくとも2つの材料を積層して、ポリマー基材積層体を得る。
【0230】
例えば、
図19に示されている例では、複合体222bを構成するポリマー基材170bの上に、ポリマー基材170bよりも無機粒子含有量が少ないポリマー基材170cがポリマー基材170bの方を向くようにして、複合体222dを積層する。そして、得られた複合体222b及び222dからなる積層体において、ポリマー基材170dの上に、ポリマー基材170dよりも無機粒子含有量が少ないポリマー基材170eがポリマー基材170dの方を向くようにして、複合体222eを積層する。結果として、最外層を構成するポリマー基材170aから出発して、無機粒子の含有量が積層方向に沿って段階的に減少しているポリマー基材積層体470a′が得られる。なお、ポリマー基材積層体470a′では、最外層を構成するポリマー基材150から出発して、無機粒子の含有量が、積層方向に沿って段階的に増加している。
【0231】
〈熱圧着工程〉
本開示に係る1つの実施態様では、積層工程で得られた勾配型のポリマー基材積層体に対して、さらに熱圧着処理を行うことができる。熱圧着処理によって、勾配型のポリマー基材積層体を構成するポリマー基材間の密着性が、さらに向上しうる。熱圧着処理については、ポリマー基材-無機基材複合体の製造方法に関して上述した記載を参照することができる。
【0232】
≪交互型のポリマー基材積層体の製造方法≫
本開示は、少なくとも1つの無機粒子含有ポリマー基材及び少なくとも1つの無機粒子非含有ポリマー基材を有しており、無機粒子含有ポリマー基材と無機粒子非含有ポリマー基材とが交互に積層された構造を有しているポリマー基材積層体(以下、「交互型のポリマー基材積層体」と呼ぶ。)を製造する方法を含んでおり、この方法は、下記の(a)及び(b)を含む:
(a)無機粒子非含有ポリマー基材、無機粒子含有ポリマー基材、並びに、少なくとも1つの無機粒子含有ポリマー基材及び少なくとも1つの無機粒子非含有ポリマー基材から構成されておりかつ無機粒子含有ポリマー基材と無機粒子非含有ポリマー基材とが交互に積層された構造を有している複合体、からなる群から、少なくとも2つの材料を選択すること(材料選択工程)、ここで、少なくとも2つの材料は、本開示に係る方法によって製造されたポリマー基材、又は、本開示に係る方法によって製造された複合体、を含み、かつ、合計で少なくとも3つのポリマー基材を含む、
(b)少なくとも2つの材料を、無機粒子含有ポリマー基材と無機粒子非含有ポリマー基材とが隣り合うように積層して、ポリマー基材積層体を製造すること(積層工程)。
【0233】
図20は、本開示に係るポリマー基材積層体の製造方法の別の実施態様を概略的に示す。
図20に示されている方法では、材料として、複合体222aを4つ選択している。材料としてのこれらの複合体222aは、無機粒子含有ポリマー基材及び無機粒子非含有ポリマー基材をそれぞれ1つずつ有している。複合体222aは、例えば、本開示に係る方法によって製造された、支持基材としてのポリマー基材を有するポリマー基材-支持基材複合体であってよい(
図6A、6B参照)。
図20に示される方法では、選択された4つの複合体222aを、無機粒子含有ポリマー基材と無機粒子非含有ポリマー基材とが隣り合うように積層して、ポリマー基材積層体490a′を製造している。得られたポリマー基材積層体490a′は、4つの無機粒子含有ポリマー基材及び4つの無機粒子非含有ポリマー基材を有しており、かつ、無機粒子含有ポリマー基材と無機粒子非含有ポリマー基材とが交互に積層された構造を有している。
【0234】
上記の方法によれば、優れた品質を有する交互型のポリマー基材積層体を、比較的簡便に製造することができる。
【0235】
上記の方法によって得られる交互型のポリマー基材積層体は、種々の用途に有用な物理的特性を有する。例えば、無機粒子非含有ポリマー基材と無機粒子含有ポリマー基材が交互に積層されている本開示に係る交互型のポリマー基材積層体では、屈折率が互いに異なる基材が交互に配列しているため、積層体全体として、非常に反射率の高い反射膜を得ることができる場合がある。また、多数のポリマー基材を有している本開示に係るポリマー基材積層体では、その膜構造を変化させることによって、特殊な効果を付加することができ、例えば、透過する波長帯域の拡大・縮小若しくは限定を行うこと、又は反射率を任意の値にすることができる場合がある。したがって、本開示に係る交互型のポリマー基材積層体は、優れた反射・透過特性を有する光学用部材として特に有用である。
【0236】
(交互型のポリマー基材積層体)
交互型のポリマー基材積層体は、少なくとも1つの無機粒子含有ポリマー基材及び少なくとも1つの無機粒子非含有ポリマー基材を有している。ポリマー基材積層体を構成するポリマー基材、無機粒子、及びポリマーについては、上記の記載を参照することができる。ポリマー基材積層体を構成するそれぞれのポリマー基材は、好ましくは、同じ種類のポリマーから構成されている。
【0237】
交互型のポリマー基材積層体は、好ましくは、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、若しくは8以上のポリマー基材を有していてよく、かつ/又は、20以下、18以下、16以下、14以下、12以下、若しくは10以下のポリマー基材を有している。交互型のポリマー基材積層体は、好ましくは、無機粒子非含有ポリマー基材及び無機粒子含有ポリマー基材を、それぞれ同一の数ずつ有している。
【0238】
〈材料選択工程〉
本開示に係る、交互型のポリマー基材積層体の製造方法における材料選択工程では、下記からなる群から、少なくとも2つの材料を選択する:
無機粒子非含有ポリマー基材、
無機粒子含有ポリマー基材、並びに、
少なくとも1つの無機粒子含有ポリマー基材及び少なくとも1つの無機粒子非含有ポリマー基材から構成されており、かつ無機粒子含有ポリマー基材と無機粒子非含有ポリマー基材とが交互に積層された構造を有している、複合体、
【0239】
材料選択工程において選択される少なくとも2つの材料は、本開示に係る方法によって製造されたポリマー基材、又は、本開示に係る方法によって製造された複合体、を含む。
【0240】
材料選択工程における「本開示に係る方法によって製造されたポリマー基材」は、
図10Bで例示される本開示に係る方法によって製造された無機基材含有ポリマー基材であってよい。無機基材含有ポリマー基材の製造方法については、上記の記載を参照することができる。
【0241】
材料選択工程における「本開示に係る方法によって製造された複合体」は、好ましくは、2~4つのポリマー基材、より好ましくは2又は3つのポリマー基材、特に好ましくは2つのポリマー基材から構成されており、かつ/又は、ポリマー基材以外の構成要素、特には無機基材又は剥離用基材、を含んでいない。「本開示に係る方法によって製造された複合体」としては、例えば、支持基材としてポリマー基材又は2つのポリマー基材を有する複合体を有する、ポリマー基材-支持基材複合体(例えば
図6A~B、
図7A、
図8A、及び
図8B参照)、無機粒子含有ポリマー基材と無機粒子非含有ポリマー基材とを有する追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体(例えば
図11参照)、支持基材としてポリマー基材又は2つのポリマー基材を有する複合体を有する、追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体、追加のポリマー基材-ポリマー基材(例えば
図17参照)を挙げることができる。これらの複合体の製造方法については、上述の記載を参照することができる。
【0242】
〈積層工程〉
本開示に係る勾配型のポリマー基材積層体の製造方法における積層工程では、少なくとも2つの材料を、無機粒子含有ポリマー基材と無機粒子非含有ポリマー基材とが隣り合うように積層して、ポリマー基材積層体を製造する。
【0243】
積層工程について、
図20を参照して説明すると、例えば、材料としての4つの複合体222aのうちの1つの複合体222aの無機粒子非含有ポリマー基材150上に、別の複合体222aに含まれる無機粒子含有ポリマー基材170aが接するようにして、別の複合体222aを配置して、合計で4つのポリマー基材を有する積層体前駆体Aを製造する。そして、当該積層体前駆体Aの最外層を構成している無機粒子非含有ポリマー層150に、さらに別の複合体222aを、同様に配置して、合計で6つのポリマー基材を有する積層体前駆体Bを製造する。そして、同様の工程を繰り返すことによって、交互型のポリマー基材積層体490a′を製造することができる。
【0244】
〈熱圧着工程〉
本開示に係る1つの実施態様では、積層工程で得られた交互型のポリマー基材積層体に対して、さらに熱圧着処理を行うことができる。熱圧着処理によって、交互型のポリマー基材積層体を構成するポリマー基材間の密着性が、さらに向上しうる。熱圧着処理については、ポリマー基材-無機基材複合体に関して上述した記載を参照することができる。
【0245】
≪配置工程を有するポリマー基材積層体-無機基材複合体の製造方法≫
本開示は、ポリマー基材積層体-無機基材複合体の製造方法を含み、この方法は、下記を含む:
本開示に係る方法によって、少なくとも3つのポリマー基材を有するポリマー基材積層体を製造すること(ポリマー基材積層体製造工程)、
無機基材、又は、ポリマー基材及び無機基材を有する複合体、を提供すること(提供工程)、並びに
ポリマー基材積層体を、無機基材の上に、又は複合体の前記ポリマー基材の上に、配置すること(配置工程)。
【0246】
図21は、ポリマー基材積層体470a′を無機基材180の上に配置することを含む、本開示に係るポリマー基材積層体-無機基材複合体470aの製造方法の1つの実施態様を概略的に示す。
図22は、ポリマー基材積層体470a′′を、ポリマー基材及び無機基材を有する複合体430bのポリマー基材170bの上に配置することを含む、本開示に係るポリマー基材積層体-無機基材複合体470aの製造方法の1つの実施態様を概略的に示す。
【0247】
本開示に係る上記のポリマー基材積層体-無機基材複合体の製造方法では、本開示に係る方法によって製造されるポリマー基材積層体を用いてポリマー基材積層体-無機基材複合体を製造するため、優れた品質を有するポリマー基材積層体-無機基材複合体を比較的簡便に製造することができる。また、本開示に係る方法によって製造されるポリマー基材積層体-無機基材複合体は、本開示に係るポリマー基材積層体を有しているため、光学用途において特に有用であると考えられる。
【0248】
(ポリマー基材積層体-無機基材複合体)
ポリマー基材積層体-無機基材複合体は、無機基材、及び、無機基材の上に配置された、少なくとも3つのポリマー基材を有するポリマー基材積層体を有する。少なくとも3つのポリマー基材を有するポリマー基材積層体は、上述の勾配型のポリマー基材積層体、又は上述の交互型のポリマー基材積層体であってよい(例えば
図19、20参照)。また、少なくとも3つのポリマー基材を有するポリマー基材積層体は、支持基材として2つのポリマー基材を有する複合体を用いているポリマー基材-支持基材複合体(例えば
図7A、B参照)、又は、支持基材としてのポリマー基材を有する追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体であってよい(例えば
図14B、
図15B参照)。
【0249】
〈ポリマー基材積層体製造工程〉
本開示に係るポリマー基材積層体-無機基材複合体の製造方法のポリマー基材積層体製造工程では、本開示に係る方法によって、少なくとも3つのポリマー基材を有するポリマー基材積層体を製造する。少なくとも3つのポリマー基材を有するポリマー基材積層体としての、ポリマー基材積層体、支持基材として2つのポリマー基材を有する複合体を用いているポリマー基材-支持基材複合体、及び、支持基材としてのポリマー基材を有する追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体の製造方法については、上述の記載を参照することができる。
【0250】
〈提供工程〉
本開示に係るポリマー基材積層体-無機基材複合体の製造方法の提供工程では、無機基材、又は、ポリマー基材及び無機基材を有する複合体、を提供する。
【0251】
当該提供工程で提供される「ポリマー基材及び無機基材を有する複合体」は、本開示に係る方法によって製造される複合体であってよい。例えば、「ポリマー基材及び無機基材を有する複合体」は、本開示に係る製造方法によって製造されるポリマー基材若しくは追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体を無機基材上に配置することによって製造される複合体(例えば
図12、
図13、
図18参照)であってよく、又は、支持基材として無機基材を用いて本開示に係る方法によって製造されるポリマー基材-支持基材複合体(例えば
図9参照)若しくは追加のポリマー基材-ポリマー基材-支持基材複合体(例えば
図16参照)であってもよい。
【0252】
〈配置工程〉
本開示に係るポリマー基材積層体-無機基材複合体の製造方法の配置工程では、ポリマー基材積層体を、無機基材の上に、又は複合体の前記ポリマー基材の上に、配置する。
【0253】
配置工程においてポリマー基材積層体を無機基材上に配置する様式については、ポリマー基材-無機基材複合体の製造方法に関して上述した記載を参照することができる。例えば、無機基材上に、ポリマー基材積層体を、直接に、又は、密着ポリマー層を介して、配置することができる。
【0254】
〈熱圧着工程〉
本開示に係る1つの実施態様では、配置工程で得られたポリマー基材積層体-無機基材複合体に対して、さらに熱圧着処理を行うことができる。熱圧着処理によって、ポリマー基材積層体と無機基材との密着性が、さらに向上しうる。熱圧着処理については、ポリマー基材-無機基材複合体の製造方法に関して上述した記載を参照することができる。
【0255】
≪無機基材の上にポリマー基材積層体を製造することを含む、ポリマー基材積層体-無機基材複合体の製造方法≫
本開示は、下記を含む、ポリマー基材積層体-無機基材複合体の製造方法も含む:
無機基材、又は、ポリマー基材及び無機基材を有する複合体、を提供すること(提供工程)、並びに
無機基材の上に又は前記複合体の前記ポリマー基材の上に、本開示に係る方法によって、ポリマー基材積層体を製造すること(積層工程)。
【0256】
図23は、ポリマー基材及び無機基材を有する複合体430bのポリマー基材170bの上に、材料としてポリマー基材170c及び3つのポリマー基材を有する複合体332cを用いてポリマー基材積層体を製造することを含む、本開示に係るポリマー基材積層体-無機基材複合体470aの製造方法の別の実施態様を概略的に示す。
【0257】
本開示に係る、積層工程を有するポリマー基材積層体-無機基材複合体の製造方法では、本開示に係る方法によって無機基材等の上にポリマー基材積層体製造することによって、ポリマー基材積層体-無機基材複合体を製造する。したがって、当該方法によれば、優れた品質を有するポリマー基材積層体-無機基材複合体を比較的簡便に製造することができる。
【0258】
(提供工程)
積層工程を有するポリマー基材積層体-無機基材複合体の製造方法における提供工程については、上述の「配置工程を有するポリマー基材積層体-無機基材複合体の製造方法」における記載を参照することができる。
【0259】
(積層工程)
積層工程を有するポリマー基材積層体-無機基材複合体の製造方法における積層工程では、上記の提供工程で提供された無機基材、又は上記の提供工程で提供された複合体におけるポリマー基材の上に、本開示に係る方法に従って、ポリマー基材積層体を製造する。製造されるポリマー基材積層体は、上述の勾配型のポリマー基材積層体、又は上述の交互型のポリマー基材積層体であってよい。これらのポリマー基材積層体の製造方法については、上述の記載を参照することができる。
【0260】
(熱圧着工程)
本開示に係る1つの実施態様では、積層工程で得られたポリマー基材積層体-無機基材複合体に対して、さらに熱圧着処理を行うことができる。熱圧着処理によって、ポリマー基材積層体と無機基材との密着性がさらに向上しうる。熱圧着処理については、ポリマー基材-無機基材複合体に関して上述した記載を参照することができる。
【0261】
≪無機粒子含有ポリマー粒子≫
本開示は、下記を含む無機粒子含有ポリマー粒子を含んでいる:
ポリマー、並びに
金属及び半金属、金属及び半金属の酸化物、金属及び半金属の窒化物、金属及び半金属の炭化物、炭素材料、並びにそれらの組み合わせからなる群より選択され、一次粒径が1nm~500nmであり、かつポリマー中に分散している、無機粒子。
【0262】
本開示に係る無機粒子含有ポリマー粒子は、本開示に係る上述のポリマー粒子層-支持基材複合体を製造する際に、特に有用である。本開示に係る無機粒子含有ポリマー粒子を用いることによって、ポリマーを溶解させるための溶剤を低減しつつ複合体を製造することができるため、ポリマーを溶解させるための溶剤によって支持基材が望ましくない影響を受けることを回避することができる。特に、支持基材がポリマー基材である場合には、ポリマーを溶解させるための溶剤によって支持基材が溶解することを回避することができる。
【0263】
本開示に係る無機粒子含有ポリマー粒子、並びに無機粒子含有ポリマー粒子に含有されるポリマー及び無機粒子については、本開示の製造方法における無機粒子含有ポリマー粒子、並びに無機粒子含有ポリマー粒子に含有されるポリマー及び無機粒子についての上記の記載を参照することができる。
【0264】
〈カップリング剤〉
本開示に係る無機粒子含有ポリマー粒子は、カップリング剤をさらに含むことができる。本開示の無機粒子含有ポリマー粒子に含有されうるカップリング剤については、本開示の製造方法における無機粒子含有ポリマー粒子に含有されうるカップリング剤についての上述の記載を参照することができる。
【0265】
≪分散体≫
本開示は、無機粒子非含有ポリマー粒子及び/又は本開示に係る無機粒子含有ポリマー粒子並びに分散媒を含む、分散体を含んでいる。
【0266】
本開示に係る分散体を用いることによって、支持基材上に膜状のポリマー粒子層を形成する場合などに、均一なポリマー粒子層を容易に得ることが可能となる。
【0267】
また、分散体を構成する分散媒として、支持基材を溶解しにくいものを用いることが好ましく、この場合には、分散体を用いて支持基材上にポリマー粒子を堆積する際に、支持基材への望ましくない影響をさらに抑制することができる。
【0268】
〈ポリマー粒子、分散媒、分散体〉
本開示に係る分散体、並びに分散体に含有されるポリマー粒子及び分散媒については、それぞれ、本開示に係る製造方法における分散体、ポリマー粒子及び分散媒についての上記の記載を参照することができる。
【0269】
≪無機粒子含有ポリマー粒子層-ポリマー基材複合体≫
本開示は、下記である、ポリマー粒子層-ポリマー基材複合体、を含む:
ポリマー基材、及び
ポリマー基材に堆積されている、ポリマー粒子層
を有しており、かつ、
ポリマー粒子層が、本開示に係る無機粒子含有ポリマー粒子を含む。
【0270】
無機粒子含有ポリマー粒子層を含むポリマー粒子層-ポリマー基材複合体は、ポリマー粒子層に無機粒子を有していることによって、例えばポリマーのみからなる基材と比較して異なる物理的性質を有しうる。例えば、当該複合体は、ポリマーのみからなる基材とは異なる屈折率を有しうるため、光学用部材、特には反射防止フィルム、又は当該反射防止フィルムのための前駆体素材として有用であると考えられる。
【0271】
このようなポリマー粒子層-ポリマー基材複合体は、上述した本開示に係る製造方法によって製造することができる。本開示に係るポリマー粒子層-ポリマー基材複合体に含有されるポリマー基材、無機粒子含有ポリマー粒子層、及び無機粒子含有ポリマー粒子については、本開示に係る製造方法に関する上述の記載を参照することができる。
【0272】
無機粒子含有ポリマー粒子層の厚みは、2μm以上、5μm以上、10μm以上、又は20μm以上であってよく、2000μm以下、1000μm以下、500μm以下、200μm以下、又は100μm以下であってよい。
【0273】
〈カップリング剤〉
本開示に係るポリマー粒子層-ポリマー基材複合体において、ポリマー粒子層及びポリマー基材のいずれか又は両方が、カップリング剤をさらに含んでいてよい。本開示のポリマー粒子に含有されうるカップリング剤については、本開示の製造方法におけるポリマー粒子に含有されうるカップリング剤についての上記の記載を参照することができる。
【0274】
≪無機粒子非含有ポリマー粒子層-ポリマー基材複合体≫
また、本開示は、下記である、ポリマー粒子層-ポリマー基材複合体、を含む:
ポリマー基材、及び
ポリマー基材に堆積されている、ポリマー粒子層
を有しており、かつ、
ポリマー粒子層が、無機粒子非含有ポリマー粒子からなる。
【0275】
当該ポリマー粒子層-ポリマー基材複合体を構成するポリマー基材は、好ましくは、無機粒子含有ポリマー基材である。
【0276】
ポリマー基材として無機粒子含有ポリマー基材を有する無機粒子非含有ポリマー粒子層-ポリマー基材複合体は、無機粒子含有ポリマー粒子層に無機粒子を有していることによって、例えばポリマーのみからなる基材と比較して異なる物理的性質を有しうる。例えば、当該複合体は、ポリマーのみからなる基材とは異なる屈折率を有しうるため、光学用部材、特には反射防止フィルム、又は当該反射防止フィルムのための前駆体素材として有用であると考えられる。
【0277】
このようなポリマー粒子層-ポリマー基材複合体は、上述した本開示に係る製造方法によって製造することができる。本開示に係るポリマー粒子層-ポリマー基材複合体に含有されるポリマー基材、無機粒子非含有ポリマー粒子層、及び無機粒子非含有ポリマー粒子については、本開示に係る上述の製造方法に係る記載を参照することができる。
【0278】
〈カップリング剤〉
本開示に係る無機粒子含有ポリマー粒子層-ポリマー基材複合体において、無機粒子含有ポリマー粒子層及びポリマー基材のいずれか又は両方が、カップリング剤をさらに含んでいてよい。本開示のポリマー粒子に含有されうるカップリング剤については、本開示の製造方法におけるポリマー粒子に含有されうるカップリング剤についての上記の記載を参照することができる。
【0279】
≪追加のポリマー粒子層-ポリマー粒子層-ポリマー基材複合体≫
本開示は、下記を含む、追加のポリマー粒子層-ポリマー粒子層-ポリマー基材複合体を含む:
ポリマー基材、
ポリマー基材に堆積されている、ポリマー粒子層、
ポリマー粒子層に堆積されている、追加のポリマー粒子層。
【0280】
好ましくは、追加のポリマー粒子層-ポリマー粒子層-ポリマー基材複合体に含有されるポリマー基材、ポリマー粒子層、追加のポリマー粒子層のうちの少なくともいずれかが、無機粒子を有している。
【0281】
無機粒子含有ポリマー粒子層を含む追加のポリマー粒子層-ポリマー粒子層-支持基材複合体では、隣り合うポリマー粒子層の間における無機粒子含有量の差を調節することによって、屈折率を調節することができるため、光学用部材として有用であると考えられる。
【0282】
追加のポリマー粒子層-ポリマー粒子層-ポリマー基材複合体に含まれるポリマー基材は、無機粒子非含有ポリマー基材、若しくは無機粒子含有ポリマー基材であってよく、又は、少なくとも2つのポリマー基材を有する複合体であってよい。ポリマー基材、及び少なくとも2つのポリマー基材を有する複合体は、上述の本開示に係る方法によって得られるものであってよい。
【0283】
ポリマー粒子層及び追加のポリマー粒子層は、それぞれ、無機粒子非含有ポリマー粒子若しくは無機粒子含有ポリマー粒子、又は、無機粒子非含有ポリマー粒子と無機粒子含有ポリマー粒子との混合物から構成される。
【0284】
このような無機粒子非含有ポリマー粒子層-ポリマー基材複合体は、上述した本開示に係る製造方法によって製造することができる。本開示に係る追加のポリマー粒子層-ポリマー粒子層-ポリマー基材複合体に含有されるポリマー基材、ポリマー粒子層、及び追加のポリマー粒子層については、本開示に係る上述の製造方法に係る記載を参照することができる。
【0285】
≪追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体≫
本開示は、下記である追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体、を含む:
ポリマー基材、及び追加のポリマー基材を有しており、
ポリマー基材及び追加のポリマー基材のうちの少なくともいずれかが、無機粒子を有しており、
ポリマー基材及び追加のポリマー基材が、少なくとも部分的に、互いに重なり合って配置されており、かつ
ポリマー基材と追加のポリマー基材との界面が、平坦である。
【0286】
本開示に係る追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体は、光学用部材として使用することができ、特には、反射防止フィルムとして使用することができる。特に、無機粒子含有ポリマー基材を有するポリマー基材-ポリマー基材複合体は、ポリマー基材と無機粒子含有ポリマー層との界面における界面粗さが低減されているため、光散乱が抑制され、光学用部材特には反射防止フィルムとして特に有用であると考えられる。
【0287】
本開示に係る追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体は、ポリマー基材、及び追加のポリマー基材を有しており、ポリマー基材及び追加のポリマー基材のうちの少なくともいずれかが、無機粒子を有しており、好ましくは、ポリマー基材及び追加のポリマー基材が、無機粒子を有している。特には、本開示に係る追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体においては、ポリマー基材及び追加のポリマー基材のうちの少なくともいずれかが、無機粒子含有ポリマー基材であり、特に好ましくは、ポリマー基材及び追加のポリマー基材が、無機粒子含有ポリマー基材である。本開示に係る追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体は、ポリマー基材又は追加のポリマー基材として、無機粒子非含有ポリマー基材を有していることができる。ポリマー基材及び追加のポリマー基材がともに無機粒子含有ポリマー基材である場合、それぞれの基材における無機粒子含有量が、互いに異なっていてよい。
【0288】
本開示に係る追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体は、本開示に係る製造方法によって製造される追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体であってよく、例えば、支持基材としてポリマー基材を用いて本開示に係る方法によって製造されるポリマー基材-支持基材複合体であってよい。
【0289】
本開示に係る追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体を構成するポリマー基材、無機粒子、及びポリマー、並びに、無機粒子含有ポリマー基材及び無機粒子非含有ポリマー基材については、本開示に係る製造方法についての上記の記載を参照することができる。
【0290】
本開示に係る追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体において、ポリマー基材及び追加のポリマー基材のうちの少なくともいずれかが、膜状又はフィルム状であってよく、又は、ポリマー基材及び追加のポリマー基材が、膜状又はフィルム状であってよい。
【0291】
本開示に係る追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体において、ポリマー基材及び追加のポリマー基材の厚みは、0.5μm以上、1μm以上、2μm以上、又は5μm以上であってよく、2000μm以下、1000μm以下、500μm以下、200μm以下、又は100μm以下であってよい。
【0292】
〈カップリング剤〉
本開示に係る追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体において、ポリマー基材及び追加のポリマー基材のうちの少なくともいずれかが、カップリング剤をさらに含んでいてよい。ポリマー基材及び追加のポリマー基材のうちの少なくともいずれかに含有されうるカップリング剤については、本開示の製造方法においてポリマー粒子に含有されうるカップリング剤についての上記の記載を参照することができる。
【0293】
本開示に係る追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体において、ポリマー基材及び追加のポリマー基材のうちの少なくともいずれかが、カップリング剤をさらに含んでいることによって、追加のポリマー基材とポリマー基材との密着性がさらに向上する場合がある。
【0294】
本開示に係る追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体では、ポリマー基材及び追加のポリマー基材が、少なくとも部分的に、互いに重なり合って配置されている。
【0295】
上述の追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体において、ポリマー基材及び追加のポリマー基材は、それぞれ、その主たる面を介して互いに少なくとも部分的に重なり合っていてよい。あるいは、上述の追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体において、ポリマー基材及び追加のポリマー基材は、一方の主たる面が他方の主たる面を実質的に覆っていてよい。あるいは、上述の追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体は、ポリマー基材、及び、ポリマー基材に積層されている追加のポリマー基材を有していてよい。
【0296】
〈平坦性〉
本開示に係る追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体では、ポリマー基材と追加のポリマー基材との界面が、平坦である。界面が平坦であるとは、界面の粗さ(界面粗さ)が低減されていることを意味している。本開示に係る追加のポリマー基材-ポリマー基材複合体では、ポリマー基材と追加のポリマー基材との界面における界面の粗さが低減されており、好ましくは、下記の方法で算出される「界面の粗さs」が、0.01μm以上、0.1μm以上、0.2μm以上、0.5μm以上、0.8μm以上、1.0μm以上、又は1.2μm以上であり、2.5μm以下、2.0μm以下、又は1.7μm以下である。
【0297】
少なくとも部分的に互いに重なり合って配置されているポリマー基材(P1)とポリマー基材(P2)との界面における「界面の粗さs」を評価する方法について、
図26Bを参照して説明する。
図26Bは、実施例1に係る、支持基材としてのポリマー基材を有するポリマー基材-支持基材複合体の断面のSEM画像、及び平坦性の評価方法を示す図である。
【0298】
少なくとも部分的に互いに重なり合って配置されているポリマー基材P1とポリマー基材P2との界面における「界面の粗さs」は、下記の方法によって評価することができる:
走査型電子顕微鏡(SEM)によって取得した複合体の断面のSEM画像において、ポリマー基材P2と周囲雰囲気(空気など)との界面A(又は、ポリマー基材P2の、ポリマー基材P1とは反対側の表面A)からポリマー基材P2とポリマー基材P1との界面Bにまで厚み方向に延びる線分を、ポリマー基材P2の面方向に沿って、一定間隔で25本引く;
25本の線分のうち、ポリマー基材P1側界面Bにおける末端が最も周囲雰囲気寄りに位置している(ポリマー基材P1側界面Bにおける末端がポリマー基材P1から最も離れて位置している)線分を特定する;
このように特定した線分のポリマー基材P1側界面Bにおける末端に接しており、かつ、当該線分と垂直である直線(基準線)を引く;
25本の線分それぞれについて、当該基準線との交点からポリマー基材側界面における末端までの長さを計測する;
計測された長さの標準偏差を算出し、算出された標準偏差を、界面の粗さsとする。
【0299】
≪ポリマー基材積層体≫
本開示は、下記であるポリマー基材積層体を含む:
積層されている少なくとも3つのポリマー基材を含有し、かつ
隣接するポリマー基材の界面のうちの少なくとも1つが、平坦である。
【0300】
本開示に係るポリマー基材積層体は、光学用部材として使用することができ、特には、反射防止フィルムとして使用することができる。特に、本開示に係るポリマー基材積層体においては、隣接するポリマー基材の界面のうちの少なくとも1つの界面粗さが低減されているため、光散乱が抑制され、光学用部材特には反射防止フィルムとして特に有用であると考えられる。
【0301】
本開示に係るポリマー基材積層体は、少なくとも3つのポリマー基材を含有している。少なくとも3つのポリマー基材は、無機粒子含有ポリマー基材及び/又は無機粒子非含有ポリマー基材から構成されてよい。好ましくは、ポリマー基材積層体は、交互型のポリマー基材積層体、又は勾配型のポリマー基材積層体であってよい。
【0302】
本開示に係るポリマー基材積層体において、少なくとも3つのポリマー基材は、積層されている。好ましくは、少なくとも3つのポリマー基材は、それぞれ、その主たる面を介して、下層を構成しているポリマー基材の主たる面に接触している。より好ましくは、少なくとも3つのポリマー基材は、それぞれ、その主たる面によって、下層を構成しているポリマー基材の主たる面を、実質的に覆っている。
【0303】
本開示に係るポリマー基材積層体においては、隣接するポリマー基材の界面のうちの少なくとも1つが、平坦である。界面の平坦性及び界面の平坦性を評価する指標としての界面の粗さsについては、上記の記載を参照することができる。
【0304】
本開示に係るポリマー基材積層体の1つの実施態様では、ポリマー基材積層体を構成する少なくとも3つのポリマー基材における無機粒子の含有量が、それぞれ、互いに異なっており、特には、ポリマー基材積層体を構成する少なくとも3つの無機粒子含有ポリマー基材における無機粒子の含有量が、それぞれ、互いに異なっている。当該実施態様において、ポリマー基材積層体が、互いに異なる無機粒子含有量を有する複数の無機粒子含有ポリマー基材に加えて、無機粒子非含有ポリマー基材を有していてもよい。
【0305】
(勾配型のポリマー基材積層体)
本開示に係るポリマー基材積層体の別の実施態様では、ポリマー基材積層体を構成する少なくとも3つのポリマー基材における無機粒子の含有量が、積層方向に沿って段階的に増加又は減少するように、ポリマー基材が積層されており、特には、ポリマー基材積層体を構成する少なくとも3つの無機粒子含有ポリマー基材における無機粒子の含有量が、積層方向に沿って段階的に増加又は減少するように、ポリマー基材が積層されている。このようなポリマー基材積層体については、勾配型のポリマー基材積層体の製造方法における上記の記載を参照することができる。
【0306】
当該実施態様において、ポリマー基材積層体が、互いに異なる無機粒子含有量を有する複数の無機粒子含有ポリマー基材に加えて、無機粒子非含有ポリマー基材を有していてもよい。
【0307】
勾配型のポリマー基材積層体は、種々の用途に有用な物理的特性を有する。例えば、多数の無機粒子含有ポリマー基材を有する勾配型のポリマー基材積層体では、その膜構造を変化させることによって、特殊な効果を付加することができ、例えば、透過する波長帯域の拡大・縮小若しくは限定を行うこと、又は反射率を任意の値にすることができる。したがって、本開示に係る勾配型のポリマー基材積層体は、優れた反射・透過特性を有する光学用部材として有用であると考えられる。
【0308】
(交互型のポリマー基材積層体)
本開示に係るポリマー基材積層体のさらに別の実施態様では、ポリマー基材積層体が、少なくとも1つの無機粒子非含有ポリマー基材及び少なくとも1つの無機粒子含有ポリマー基材を有しており、かつ、無機粒子非含有ポリマー基材及び無機粒子含有ポリマー基材が交互に積層された構造を有している。このようなポリマー基材積層体については、交互型のポリマー基材積層体の製造方法における上記の記載を参照することができる。
【0309】
交互型のポリマー基材積層体は、種々の用途に有用な物理的特性を有する。例えば、無機粒子非含有ポリマー基材と無機粒子含有ポリマー基材が交互に積層されている本開示に係る交互型のポリマー基材積層体では、屈折率が互いに大きく異なる基材が交互に配列することとなるため、積層体全体として、非常に反射率の高い反射膜を得ることができる場合がある。また、多数のポリマー基材を有しているポリマー基材積層体では、その膜構造を変化させることによって、特殊な効果を付加することができ、例えば、透過する波長帯域の拡大・縮小若しくは限定を行うこと、又は反射率を任意の値にすることができる場合がある。したがって、本開示に係る勾配型のポリマー基材積層体は、優れた反射・透過特性を有する光学用部材として有用であると考えられる。
【0310】
本開示に係るポリマー基材積層体は、上述の本開示に係るポリマー基材積層体の製造方法によって、製造することができる。
【0311】
≪シリコン粒子含有シクロオレフィンポリマー部材≫
本開示は、シクロオレフィンポリマー及び一次粒径が1nm~500nmであるシリコン粒子を含有する膜状又はフィルム状部材を、含む。
【0312】
シリコン粒子含有シクロオレフィンポリマー部材は、シリコン粒子を含有していることに起因して、例えばシクロオレフィンポリマーのみからなるポリマー部材とは異なる物理的性質を有している。特に、シリコン粒子含有シクロオレフィンポリマー部材は、屈折率に関して、シリコン基材とシクロオレフィンポリマーとの間の中間的な値を有しうるため、例えば光学用途において有用である。具体的には、例えば、シリコン基材とシクロオレフィンポリマーとの屈折率の差に起因する問題、例えば反射率の増加の問題を低減するために、シリコン粒子含有シクロオレフィンポリマー部材を用いることができる。
【0313】
さらに、上記のシリコン粒子含有シクロオレフィンポリマー部材は、一次粒径が1nm~500nmであるシリコン粒子を含有していることによって、光学用途において有利な効果を有しており、特には、優れた反射防止効果を有する。また、上記の部材は、膜状又はフィルム状の形状であることによって、反射防止フィルムとして使用するために特に適している。
【実施例0314】
以下、本開示に係る発明を、実施例により具体的に説明する。
【0315】
以下の実施例1~2及び比較例1~2では、ポリマーとして、シクロオレフィンポリマー(cycloolefin polymer、COP;日本ゼオン株式会社、Zeonex(商標)480R、ガラス転移点温度138℃)を用いた。
【0316】
また、以下の実施例1~2及び比較例1~2では、無機粒子として、シリコン粒子を用いた。無機粒子としてのシリコンはレーザー熱分解法で作製した。また、得られたシリコン粒子の金属不純物含有量を、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)を用いて測定したところ、Feの含有量は15ppb、Cuの含有量は18ppb、Niの含有量は10ppb、Crの含有量は21ppb、Coの含有量は13ppb、Naの含有量は20ppb、及びCaの含有量は10ppbであった。無機粒子の平均一次粒径は、100nmであった。
【0317】
≪実施例1≫
〈無機粒子含有ポリマー粒子の製造〉
(無機粒子分散ポリマー溶液の製造)
無機粒子としてのシリコン粒子35.5質量部、ポリマーとしてのシクロオレフォンポリマー64.5質量部、及びポリマー溶剤としてのトルエン826質量部を混合し、ホモジナイザー(IKA製、T25)を用いて20000rpmの回転速度で分散して、無機粒子分散ポリマー溶液を得た。
【0318】
上記の無機粒子分散ポリマー溶液を、スプレードライ装置(大川原化工機製、CNL-3)を用いて乾燥、造粒して、無機粒子含有ポリマー粒子を得た。得られた無機粒子含有ポリマー粒子の面積円相当径は、2.0μmであった。なお面積円相当径は、走査型電子顕微鏡(日立ハイテク製、TM3000)を用いて取得した観察画像において、無作為に選んだ100個の粒子の直径の平均を算出することにより求めた。
【0319】
スプレードライ法によって取得した実施例1に係る無機粒子含有ポリマー粒子の光学顕微鏡画像を、
図24に示す。
【0320】
〈分散体の調製〉
エチレングリコール(富士フイルム和光純薬株式会社製)70質量部、及びターピネオール(富士フイルム和光純薬株式会社製)30質量部を混合することにより、分散媒を得た。この分散媒65質量部及び上記の無機粒子含有ポリマー粒子35質量部を混合し、かつホモジナイザー(IKA製、T20)を用いて20000rpmの回転速度で分散して、無機粒子含有ポリマー粒子が分散媒に分散している分散体(実施例1の分散体)を得た。
【0321】
〈剥離用基材上に保持されているポリマー基材の製造〉
ガラス板上に、ポリマーとしてのシクロオレフィンが35重量%の濃度でトルエンに溶解したドープを、ドクターブレードによって塗工し、かつ、100℃の電気炉で10分間加熱して溶剤を除去することによって、剥離用基材としてのガラス板上に保持された支持基材としてのポリマー基材を得た。ポリマー基材の厚さは30μmであった。
【0322】
〈ポリマー粒子層-支持基材複合体の製造〉
支持基材としての上述のポリマー基材上に、無機粒子含有ポリマー粒子が分散媒に分散している上述の分散体をドクターブレードによって塗工し、かつ170℃の電気炉で15分間加熱して分散媒を除去することによって、無機粒子含有ポリマー粒子層-支持基材複合体と剥離用基材との複合体を得た。そして、ポリマー粒子層-支持基材複合体を、剥離用基材としてのガラス板から剥離して、実施例1に係るポリマー粒子層-支持基材複合体を得た。実施例1に係るポリマー粒子層-支持基材複合体は、ポリマー粒子層として無機粒子含有ポリマー粒子層を有しており、かつ、支持基材として、無機粒子非含有ポリマー基材を有していた。実施例1に係るポリマー粒子層-支持基材複合体のポリマー粒子層の厚みは、52μmであった。
【0323】
〈ポリマー基材-支持基材複合体の製造〉
得られた実施例1に係るポリマー粒子層-支持基材複合体を、真空熱プレス装置(北川精機製、VH1-2294)を用いて、130℃、50MPaの条件で1時間熱プレスすることによって、実施例1に係るポリマー基材-支持基材複合体を得た。実施例1に係るポリマー基材-支持基材複合体は、ポリマー基材として無機粒子含有ポリマー基材を有しており、かつ、支持基材として、無機粒子非含有ポリマー基材を有していた。無機粒子含有ポリマー基材の厚みは、22μmであった。
【0324】
実施例1に係るポリマー基材-支持基材複合体では、表面のひび割れは観察されず、良好な一体性を有していた。
【0325】
〈平坦性評価〉
実施例1に係るポリマー基材-支持基材複合体について、支持基材としての無機粒子非含有ポリマー基材と、ポリマー基材としての無機粒子含有ポリマー基材との界面の平坦性(界面の粗さ)を調べた。実施例1に係るポリマー基材-支持基材複合体を、カッターナイフで切断し、複合体の断面画像を、走査型電子顕微鏡(SEM)によって取得した。取得したSEM画像において、下記の手順で、界面の粗さsを算出した:
(1)ポリマー基材―周囲雰囲気(空気)界面から、ポリマー基材-支持基材界面まで厚み方向に延びる線分を、ポリマー基材の面方向に沿って一定間隔で25本引いた。
(2)25本の線分のうち、支持基材側界面における末端が最も周囲雰囲気側に位置している線分を特定した。
(3)このようにして特定した線分の支持基材側界面における末端に接しており、かつ、当該線分と垂直である直線(基準線)を引いた。
(4)25本の線分それぞれについて、基準線との交点から支持基材側界面における末端までの長さを計測し、計測された長さの標準偏差を算出して、この標準偏差を、界面の粗さsとした。
【0326】
実施例1に係るポリマー基材-支持基材複合体について、界面の粗さs=1.54μmであった。実施例1に係るポリマー基材-支持基材複合体の断面のSEM画像、及び界面の粗さを算出する過程を、
図26Bに示す。実施例1に関する評価結果を、下記の表1にまとめた。
【0327】
≪実施例2≫
下記のようにして、実施例2に係る無機粒子含有ポリマー粒子を製造した:
実施例1に記載の方法によって調製した無機粒子分散ポリマー溶液1質量部に対してトルエンを10質量部混合した分散液を、90質量部の2-プロパノール中に、2-プロパノールを攪拌しながら滴下して、ポリマーを2-プロパノール中で凝固させて、固体分を得た。得られた固体分を、遠心分離機(日立ハイテクノロジー製、CR20GIII)によって沈殿させ、かつ沈殿物を真空炉で乾燥させることによって、実施例2に係る無機粒子含有ポリマー粒子を得た。
【0328】
再沈殿法によって製造した実施例2に係る無機粒子含有ポリマー粒子のSEM画像を、
図25に示す。
【0329】
≪比較例1≫
ガラス板上に、シクロオレフィンが35重量%の濃度で溶剤としてのトルエンに溶解したドープを塗工し、100℃の電気炉で10分間加熱し、かつ溶媒を除去することによって、ガラス板上に、支持基材としてのポリマー基材を得た。ポリマー基材の厚さは30μmであった。
【0330】
さらに、実施例1に記載の方法によって調製した無機粒子分散ポリマー溶液を、上記の支持基材としてのポリマー基材上に塗布し、乾燥させたところ、ポリマー基材に割れが生じた。比較例1に関する評価結果を、下記の表1にまとめた。
【0331】
≪比較例2≫
ガラス基材上に、シクロオレフィンが35重量%の濃度でトルエンに溶解したドープを塗工し、100℃の電気炉で10分間加熱し、かつ溶媒を除去することによって、ガラス基材上に、支持基材としてのポリマー基材を得た。ポリマー基材の厚さは30μmであった。
【0332】
さらに、実施例1に記載の方法によって調製した無機粒子分散ポリマー溶液1質量部とトルエン9質量部を混合することにより得られた液を、上記の支持基材としてのポリマー基材上にスプレー塗布し、かつ、100℃の電気炉で10分間加熱することによって溶媒を除去して、比較例2に係るポリマー基材前駆体-支持基材複合体を得た。
【0333】
その後、比較例2に係るポリマー基材前駆体-支持基材複合体を、真空熱プレス装置(北川精機製、VH1-2294)を用いて、130℃、50MPaの条件で1時間にわたって熱プレスすることによって、比較例2に係るポリマー基材-支持基材複合体を得た。比較例2に係るポリマー基材-支持基材複合体は、ポリマー基材としての無機粒子含有ポリマー基材を有しており、かつ、支持基材としての無機粒子非含有ポリマー基材を有していた。比較例2に係るポリマー基材-支持基材複合体では、表面のひび割れは観察されず、良好な一体性を有していた。
【0334】
比較例2に係るポリマー基材-支持基材複合体について、実施例1と同様にポリマー基材と支持基材との界面粗さを評価したところ、界面の粗さs=2.81μmであった。
図26Aに、比較例2に係るポリマー基材-支持基材複合体の断面のSEM画像、及び界面の粗さを算出する過程を示す。比較例2に関する評価結果を、下記の表1にまとめた。
【0335】
【0336】
表1に見られるように、ポリマー粒子の堆積及びポリマー粒子層の熱プレスを伴う方法によって製造された実施例1に係るポリマー基材-支持基材複合体は、塗布工程を伴う方法によって製造されたポリマー基材を有する比較例1に係るポリマー基材-支持基材複合体と比較して、良好な一体性を有していた。
【0337】
比較例1に係る製造方法は、ポリマー溶解用の溶剤であるトルエンを含む無機粒子分散ポリマー溶液を支持基材としてのポリマー基材上に塗布する工程(塗布工程)を含んでいるため、支持基材が望ましくない影響を受け、結果として良好な一体性を有する複合体を得ることができなかったと考えられる。これに対して、実施例1に係る製造方法では、支持基材としてのポリマー基材上にポリマー粒子を堆積する際にポリマー溶解用の溶剤であるトルエンを用いず、ポリマー粒子の分散媒としてポリマーに対する非溶媒であるエチレングリコールを分散媒として用いているため、支持基材へのダメージを抑制することができ、結果として良好な一体性を有する複合体を得ることができたと考えられる。
【0338】
さらに、表1で見られるように、ポリマー粒子の堆積及びポリマー粒子層の熱プレスを伴う方法によって製造された実施例1に係るポリマー基材-支持基材複合体は、スプレー工程を伴う方法によって製造されたポリマー基材を有する比較例2に係るポリマー基材-支持基材複合体と比較して、ポリマー基材と支持基材との界面の平坦性が高かった(界面の粗さが低減されていた)。
【0339】
比較例2に係る方法では、ポリマー溶解用の溶剤であるトルエンを含む溶液を支持基材であるポリマー基材上にスプレーする工程(スプレー工程)を含んでいるため、トルエンによって支持基材の表面が部分的に溶解し、結果として、複合体におけるポリマー基材と支持基材との界面が比較的粗くなったと考えられる。これに対して、実施例1に係る製造方法では、支持基材としてのポリマー基材上にポリマー粒子を堆積する際にポリマー溶解用の溶剤であるトルエンを用いず、ポリマー粒子の分散媒としてポリマーに対する非溶媒であるエチレングリコールを分散媒として用いているため、支持基材としてのポリマー基材の溶解を抑制することができ、結果として、複合体におけるポリマー基材と支持基材との界面の平坦性が向上したと考えられる。