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特開2025-3520スニチニブリンゴ酸塩を有効成分とする医薬錠剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003520
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】スニチニブリンゴ酸塩を有効成分とする医薬錠剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/404 20060101AFI20241226BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20241226BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
A61K31/404
A61P43/00 111
A61K9/20
A61P35/00
A61K47/26
A61K47/38
A61K47/32
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024182404
(22)【出願日】2024-10-18
(62)【分割の表示】P 2020157193の分割
【原出願日】2020-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 崇則
(57)【要約】
【課題】
スニチニブリンゴ酸塩はカプセル製剤として提供されているが、カプセルは嚥下しにくいという課題がある。そこで、より嚥下しやすい剤型である、スニチニブリンゴ酸塩を有効成分とする医薬錠剤を提供することであって、既存のカプセル製剤と類似の溶出挙動を示す医薬錠剤を提供することを課題とする。
【解決手段】
スニチニブリンゴ酸塩を有効成分とする医薬錠剤であって、スニチニブリンゴ酸塩含有率が4質量%以上で15質量%以下の医薬錠剤とすることにより、既存カプセル製剤と類似の溶出挙動を示し、服薬しやすい医薬錠剤を提供することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スニチニブリンゴ酸塩及び賦形剤を含有する医薬錠剤であって、該医薬錠剤質量におけるスニチニブリンゴ酸塩含有率が4質量%以上で15質量%以下の、医薬錠剤。
【請求項2】
賦形剤の含有率が、該医薬錠剤質量において73質量%以上で93質量%以下の、請求項1に記載の医薬錠剤。
【請求項3】
崩壊剤の含有率が、該医薬錠剤質量において2質量%以上で9質量%以下の、請求項1又は2に記載の医薬錠剤。
【請求項4】
結合剤の含有率が、該医薬錠剤質量において1質量%以上で8質量%以下の、請求項1~3の何れか一項に記載の医薬錠剤。
【請求項5】
フィルムコーティングを施した、請求項1~4の何れか一項に記載の医薬錠剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スニチニブリンゴ酸塩を有効成分とし、スーテント(登録商標)カプセルと類似の溶出挙動を示す医薬錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
スニチニブリンゴ酸塩は、化学名をN-[2-(ジエチルアミノ)エチル]-5-[(Z)-(5-フルオロ-2-オキソ-1、2-ジヒドロ-3H-インドール-3-イリデン)メチル]-2、4-ジメチル-1H-ピロール-3-カルボキサミド モノ[(2S)-2-ヒドロキシサクシネート]とする、式(1)で示される構造を有する化合物である。
【0003】
【化1】
【0004】
スニチニブは複数の受容体チロシンキナーゼ(RTK)をターゲットとする新規のキナーゼ阻害剤である。in vitroの試験において、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR-α及びPDGFR-β)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR-1、VEGFR-2及びVEGFR-3)、幹細胞因子受容体(KIT)、fms様チロシンキナーゼ3(FLT3)、コロニー刺激因子-1受容体及びグリア細胞株由来神経栄養因子受容体のRTK活性を阻害し、また、in vivoの腫瘍においてもPDGFR-β、VEGFR-2、KIT及びFLT3のリン酸化を阻害することが報告されている。さらに、非臨床薬理試験において、スニチニブは種々の固形癌に対する直接的な抗腫瘍活性と腫瘍血管新生阻害作用を有することが示唆された。スニチニブは、スーテント(登録商標)の商品名にて、カプセル製剤として提供されている(非特許文献1)。
【0005】
スニチニブ製剤は硬カプセル剤として報告されている。特許文献1に、スニチニブリンゴ酸塩、マンニトール、クロスカルメロースナトリウム、ポビドン(K-25)の混合物を撹拌造粒し、これにクロスカルメロースナトリウムとステアリン酸マグネシウムを加え、カプセルに充填して得られる硬カプセル剤が記載されている。また、特許文献2には、スニチニブリンゴ酸塩、マンニトール、クロスカルメロースナトリウム、ポビドン(K-25)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの混合物を撹拌造粒し、これにステアリン酸マグネシウムを加え、ゼラチンカプセルに充填して得られる硬カプセル剤が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】スーテント(登録商標)カプセル 12.5mg添付文書(2019年10月改定 第1版)
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2006-503032号
【特許文献2】欧州特許出願第3539536号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的に、カプセル剤は嚥下困難な傾向にある剤型であると言われている。このためスニチニブも嚥下性に優れた錠剤の開発が望まれる。しかし、錠剤化に当たり、既存のスニチニブ製剤と同等の溶出性を示すことが求められる。本発明の目的は、スニチニブリンゴ酸塩を有効成分とする医薬錠剤を提供することであって、スーテント(登録商標)カプセルと類似の溶出挙動を示す医薬錠剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、スニチニブリンゴ酸塩の錠剤化に当たり、スニチニブリンゴ酸塩含有率が4質量%以上で15質量%以下の医薬錠剤とすることにより、スーテント(登録商標)カプセルと類似の溶出挙動を示す医薬錠剤を提供することが可能となることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の[1]~[5]を要旨とする。
【0010】
[1] スニチニブリンゴ酸塩及び賦形剤を含有する医薬錠剤であって、該医薬錠剤質量におけるスニチニブリンゴ酸塩含有率が4質量%以上で15質量%以下の、医薬錠剤。
スニチニブリンゴ酸塩含有率を4質量%以上で15質量%以下の医薬錠剤とすることにより、有効成分の溶出性を抑制的に制御することができ、スーテント(登録商標)カプセルと類似の溶出挙動を示す医薬錠剤を提供することが可能となる。
[2] 賦形剤の含有率が、該医薬錠剤質量において73質量%以上で93質量%以下の、[1]に記載の医薬錠剤。
本発明において、賦形剤を適切に多く含有した医薬錠剤とすることで、より好ましい溶出性の制御が可能となる。
[3] 崩壊剤の含有率が、該医薬錠剤質量において2質量%以上で9質量%以下の、[1]または「2」に記載の医薬錠剤。
[4] 結合剤の含有率が、該医薬錠剤質量において1質量%以上で8質量%以下の、[1]~[3]の何れか一項に記載の医薬錠剤。
[5] フィルムコーティングを施した、[1]~[4]の何れか一項に記載の医薬錠剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明の医薬錠剤は、スーテント(登録商標)カプセルと類似の溶出挙動を示す医薬錠剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、スニチニブを有効成分とする医薬錠剤であって、スニチニブリンゴ酸塩含有率が4質量%以上で15質量%以下の医薬錠剤である。以下にその詳細について説明する。
【0013】
本発明の医薬錠剤は、有効成分としてスニチニブリンゴ酸塩を用いる。スニチニブリンゴ酸塩は、化学名をN-[2-(ジエチルアミノ)エチル]-5-[(Z)-(5-フルオロ-2-オキソ-1、2-ジヒドロ-3H-インドール-3-イリデン)メチル]-2、4-ジメチル-1H-ピロール-3-カルボキサミド モノ[(2S)-2-ヒドロキシサクシネート]とする化合物である。当該化合物は、特許第3663382号公報にて開示されており、それに記載の方法により合成することができる。
【0014】
スニチニブリンゴ酸塩には、複数の結晶多形が存在する。代表的なものとして、I型結晶多形及びII型結晶多形が挙げられ、特許第4159988号公報において開示されている。I型結晶多形は、粉末X線結晶回折(XRD)にて、2θ(°)が略11.39、11.90、13.16、15.92、16.79、17.18、19.40、20.30、21.26、21.68、22.13、22.91、24.17、25.46、26.06、26.96、27.56、32.27、32.93及び34.43のピークで特徴付けられる。II型結晶多形は、粉末X線結晶回折(XRD)にて、2θ(°)が略3.02、5.93、7.61、9.26、12.08、14.54、17.54、19.46、23.36、24.77及び27.71のピークで特徴付けられる。
本発明において、有効成分であるスニチニブリンゴ酸塩は医薬品原薬として用いられる品質であれば特に問題なく用いることができる。また結晶多形においても特に限定されることなく適用することができる。好ましくはI型結晶多形が適用される。
有効成分であるスニチニブリンゴ酸塩は、当該医薬錠剤総量に対し4質量%以上15質量%以下で使用することが好ましい。好ましくは6質量%以上15質量%以下である。
なお、本願において医薬錠剤とは市場流通している製剤型を指し、裸錠又はフィルムコーティング錠であっても良い。フィルムコーティング錠であることが好ましい。フィルムコーティング錠の場合は、コーティング層も含んだ総質量を基準として、各組成成分含有率が設定される。
【0015】
本発明の医薬錠剤は賦形剤を含有する。賦形剤としては、マンニトール、乳糖、マルトース、スクロース、ソルビトール、キシリトール、イノシトール等の糖類、トウモロコシデンプン等のデンプン類、結晶セルロースが挙げられ、これらの単独使用、若しくは2種以上を組み合せて用いることが好ましい。糖類の使用が好ましく、デンプン類及び結晶セルロースを含まないことが好ましい。糖類としては、マンニトール及び/又は乳糖が好ましい。
賦形剤を用いる場合は、当該医薬錠剤総量に対し73質量%以上93質量%以下で使用することが好ましい。好ましくは75質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは75質量%以上85質量%以下である。
また、賦形剤はスニチニブリンゴ酸塩1質量部に対して、5質量部以上20質量部以下で用いることが好ましい。より好ましくは5質量部以上15質量部以下である。更により好ましくは5質量部以上10質量部以下である。
【0016】
当該錠剤を調製するためには、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、可溶化剤、流動化剤、安定化剤、保存剤等の医薬製剤を調製するための通常の医薬製剤用添加剤を用いても良い。
崩壊剤としては、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドン、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム等が挙げられ、これらの単独使用、若しくは2種以上を組み合せて用いることが好ましい。好ましくはクロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドンからなる群から選択される1種以上である。より好ましくはクロスカルメロースナトリウム及び/又はカルボキシメチルスターチナトリウムである。
崩壊剤を用いる場合は、当該医薬錠剤総量に対し1質量%以上10質量%以下で使用することが好ましい。好ましくは2質量%以上9質量%以下であり、より好ましくは3質量%以上8質量%以下である。
また、崩壊剤はスニチニブリンゴ酸塩1質量部に対して、0.30質量部以上1.00質量部以下で用いることが好ましい。より好ましくは0.30質量部以上0.70質量部以下である。更に好ましくは、前記賦形剤含量と関連して、スニチニブリンゴ酸塩1質量部に対して、崩壊剤が0.30質量部以上0.70質量部以下であり、且つ賦形剤が5質量部以上10質量部以下である。
【0017】
結合剤としては、ポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、コポリビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、部分アルファ化デンプン、ポリビニルアルコール等が挙げられ、これらの単独使用、若しくは2種以上を組み合せて用いることが好ましい。好ましくはポビドン、ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される1種以上である。
ポビドンは、一般に分子量と相関する粘性特性値であるK値によりその規格が規定される。K-25及び/又はK-30のものを用いることが好ましい。上記ポビドンとしては、例えばKollidon(BASF株式会社)等を挙げることができ、グレード25、グレード30等があり、これらを用いることが好ましい。
結合剤を用いる場合は、当該医薬錠剤総量に対し1質量%以上10質量%以下で使用することが好ましい。好ましくは1質量%以上8質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上7質量%以下である。
また、結合剤はスニチニブリンゴ酸塩1質量部に対して、0.10質量部以上0.80質量部以下で用いることが好ましい。より好ましくは0.20質量部以上0.70質量部以下である。更に好ましくは、前記賦形剤含量と関連して、スニチニブリンゴ酸塩1質量部に対して、結合剤が0.20質量部以上0.70質量部以下であり、且つ賦形剤が5質量部以上10質量部以下である。
【0018】
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、カルナウバロウ等が挙げられ、これらの単独使用、若しくは2種以上を組み合せて用いることが好ましい。
滑沢剤を用いる場合は、当該医薬錠剤総量に対し0.1質量%以上10質量%以下で使用することが好ましい。好ましくは0.2質量%以上5質量%以下である。
【0019】
製剤用添加剤としては、その他、着色剤、可溶化剤、流動化剤、安定化剤、保存剤等を含んでも良い。
着色剤としては、酸化チタン、三二酸化鉄、タルク、黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄、褐色酸化鉄、酸化亜鉛、食用黄色素類、食用青色素類、食用赤色素類等が挙げられる。
可溶化剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、大豆レシチン、精製大豆レシチン、ソルビタン脂肪酸エステル、ダイズ油、ラウロマクロゴール等が挙げられる。
流動化剤としては、軽質無水ケイ酸、タルク、含水二酸化ケイ素等が挙げられる。
安定化剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、亜硫酸塩等が挙げられる。
保存剤としては、パラオキシ安息香酸エステル類等が挙げられる。
【0020】
これらの添加剤は、医薬品製剤用途で許容される純度であれば特に制限されることなく用いることができる。これらの添加剤は1種のみを用いても良く、これらの混合物として用いても良い。
【0021】
本発明の医薬錠剤は、スニチニブリンゴ酸塩と賦形剤等の添加剤を混合して、直接打錠することによっても得られるが、撹拌造粒法、流動層造粒法、押出造粒法、乾式造粒法等により調製した造粒物を打錠することによっても得ることができる。
造粒物を調製する方法は、スニチニブリンゴ酸塩及び賦形剤、並びに任意の前記添加剤を混合し、これに水及び/又は有機溶媒を添加し、造粒した後、乾燥し、必要であれば整粒し、その後、必要であれば適度にふるい分けして造粒物を得る撹拌造粒法、又は流動層造粒法が挙げられる。若しくは、スニチニブリンゴ酸塩及び任意の前記添加剤を混合し、これに水及び/又は有機溶媒を添加し、混練し、造粒した後、乾燥し、必要であれば整粒し、若しくは、必要であれば整粒し、乾燥し、その後、必要であれば適度にふるい分けして造粒物を得る押出造粒法が挙げられる。撹拌造粒法、流動層造粒法、押出造粒法は、水及び/又は有機溶媒を添加して造粒することから総じて湿式造粒法ともいう。湿式造粒法において、水及び/又は有機溶媒として、結合剤を含んだ溶液を用いても良い。
または、スニチニブリンゴ酸塩及び任意の前記添加剤を混合し、それを圧縮し、必要であれば整粒し、その後、必要であれば適度にふるい分けして造粒物を得る乾式造粒法が挙げられる。
本発明の医薬錠剤は造粒物を調製し、これを成型してなる錠剤であることが好ましい。より好ましくは、スニチニブリンゴ酸塩及び賦形剤、並びに崩壊剤、結合剤を含む混合物を湿式造粒法により造粒物を調製し、これを成型してなる医薬錠剤である。
【0022】
本発明の医薬錠剤は、有効成分としてスニチニブリンゴ酸塩と賦形剤を用い、その他の添加剤として任意の崩壊剤、結合剤、滑沢剤等の製剤用添加剤と併せて混合し、成型することで調製される。成型方法としては、ロータリー打錠、単発打錠等が挙げられる。その製剤型は、裸錠、フィルムコーティング錠、分散錠、口腔内崩壊錠、チュアブル錠、発泡錠等の形態の何れの態様であっても良い。
【0023】
フィルムコーティング錠は、前記フィルムコーティングを施していない素錠に対し、酸化チタン、三二酸化鉄等の添加剤や任意の可塑剤等の添加剤を含むコーティング剤を、水又は水と任意の割合で混合し得る有機溶剤を含む水性溶剤にて溶解又は懸濁させてコーティング剤水性溶液を調製し、スプレー等により錠剤表面に付着させ、熱風を送り錠剤表面から溶媒を除去乾燥させる方法により調製することができる。
【0024】
コーティング剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、エチルセルロース、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチルコポリマー等が挙げられ、これらの単独使用、若しくは2種以上を組み合せて用いることが好ましい。好ましくはヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコールである。
コーティング剤を用いる場合は、当該医薬錠剤総量に対し0.1質量%以上10質量%以下で使用することが好ましい。好ましくは0.2質量%以上5質量%以下である。
【0025】
着色剤としては、酸化チタン、三二酸化鉄、タルク、黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄、褐色酸化鉄、酸化亜鉛、食用黄色素類、食用青色素類、食用赤色素類等が挙げられ、これらの単独使用、若しくは2種以上を組み合せて用いることが好ましい。好ましくは酸化チタン、三二酸化鉄である。
着色剤を用いる場合は、当該医薬錠剤総量に対し0.01質量%以上4質量%以下で使用することが好ましい。好ましくは0.02質量%以上2質量%以下である。
【0026】
可塑剤としては、トリアセチン、クエン酸トリエチル、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリソルベート、D-ソルビトール、流動パラフィン等が挙げられ、これらの単独使用、若しくは2種以上を組み合せて用いることが好ましい。可塑剤を用いる場合は、当該医薬錠剤総量に対し0.01質量%以上4質量%以下で使用することが好ましい。好ましくは0.02質量%以上2質量%以下である。
【0027】
本発明の医薬製剤は、錠剤や口腔内崩壊錠に代表される錠剤形態である。すなわち、本発明の医薬錠剤は、有効成分としてスニチニブリンゴ酸塩と賦形剤を用い、その他の添加剤として任意の崩壊剤、結合剤、滑沢剤等の製剤用添加剤と併せて混合し、成型することで調製される錠剤である。
【0028】
本発明の医薬錠剤は、既存のスニチニブリンゴ酸塩製剤と類似の溶出性を示す。すなわち、スーテント(登録商標)カプセルと類似の溶出挙動を示す医薬錠剤であることを特徴とする。
本発明の医薬錠剤の、既存のカプセル製剤との溶出類似性は、通常の溶出試験方法により確認することができる。その溶出試験方法を例示すると、溶出試験におけるpH6.8の水性溶液は、日本薬局方に記載されている方法で調製することが好ましい。そして、前記の試験液900mLを用いて、日本薬局方溶出試験第2法(パドル法)により、本発明の医薬錠剤及び既存カプセル製剤から有効成分を試験液中へ溶出させ、紫外可視吸光度計もしくは液体クロマトグラフィーを用いて試験液への溶出率を評価することで、本発明の特徴である既存カプセル製剤との溶出類似性を確認することができる。
【実施例0029】
以下、本発明を実施例により更に説明する。ただし、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
[実施例1]
1錠当たりの含量として、スニチニブリンゴ酸塩16.7mg、マンニトール143.4mg、クロスカルメロースナトリウム8.7mg、ポビドン(K-25)5.2mgの比率で混合し、その混合物当たり精製水40μLを添加し、撹拌造粒した。得られた造粒物を、60℃で1時間乾燥させた。この造粒物174mg当たり、ステアリン酸マグネシウム1.8mgの比率で混合し打錠することで、実施例1に係る錠剤を調製した。
【0031】
[実施例2]
1錠当たりの含量として、スニチニブリンゴ酸塩16.7mg、マンニトール123.3mg、クロスカルメロースナトリウム7.6mg、ポビドン(K-25)4.7mgの比率で混合し、その混合物当たり精製水30μLを添加し、撹拌造粒した。得られた造粒物を、60℃で1時間乾燥させた。この造粒物152.3mg当たり、ステアリン酸マグネシウム1.5mgの比率で混合し打錠することで、実施例2に係る錠剤を調製した。
【0032】
[実施例3]
1錠当たりの含量として、スニチニブリンゴ酸塩16.7mg、マンニトール103.5mg、クロスカルメロースナトリウム6.5mg、ポビドン(K-25)3.9mgの比率で混合し、その混合物当たり精製水25μLを添加し、撹拌造粒した。得られた造粒物を、60℃で1時間乾燥させた。この造粒物130.6mg当たり、ステアリン酸マグネシウム1.3mgの比率で混合し打錠することで、実施例3に係る錠剤を調製した。
【0033】
[実施例4]
1錠当たりの含量として、スニチニブリンゴ酸塩16.7mg、マンニトール93.4mg、クロスカルメロースナトリウム6.0mg、ポビドン(K-25)3.6mgの比率で混合し、その混合物当たり精製水10μLを添加し、撹拌造粒した。得られた造粒物を、60℃で1時間乾燥させた。この造粒物119.7mg当たり、ステアリン酸マグネシウム1.2mgの比率で混合し打錠することで、実施例4に係る錠剤を調製した。
【0034】
[実施例5]
実施例1において、ポビドン(K-25)5.2mgを、ポビドン(K-30)5.2mgに変更し、それ以外は同様の方法で実施例5の錠剤を調製した。
【0035】
[実施例6]
1錠当たりの含量として、スニチニブリンゴ酸塩16.7mg、マンニトール138.0mg、クロスカルメロースナトリウム10.5mg、ポビドン(K-25)8.8mgの比率で混合し、その混合物当たり精製水40μLを添加し、撹拌造粒した。得られた造粒物を、60℃で1時間乾燥させた。この造粒物174mg当たり、ステアリン酸マグネシウム1.8mgの比率で混合し打錠することで、実施例6に係る錠剤を調製した。
【0036】
[実施例7]
実施例1で得た錠剤に、1錠当たりの含量として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2.5mg、酸化チタン0.3mg、三二酸化鉄0.2mgでフィルムコーティングすることで、実施例7に係るフィルムコーティング錠剤を調製した。
【0037】
[実施例8]
実施例1で得た錠剤に、1錠当たりの含量として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース5.1mg、酸化チタン0.7mg、三二酸化鉄0.5mgでフィルムコーティングすることで、実施例8に係るフィルムコーティング錠剤を調製した。
【0038】
[実施例9]
実施例1で得た錠剤に、1錠当たりの含量として、ポリビニルアルコール2.5mg、酸化チタン0.3mg、三二酸化鉄0.2mgでフィルムコーティングすることで、実施例9に係るフィルムコーティング錠剤を調製した。
【0039】
[実施例10]
実施例1で得た錠剤に、1錠当たりの含量として、ポリビニルアルコール5.1mg、酸化チタン0.7mg、三二酸化鉄0.5mgでフィルムコーティングすることで、実施例10に係るフィルムコーティング錠剤を調製した。
【0040】
本願発明の特徴を示すための比較例として、特表2006-503032号に記載の製剤処方例を参考に、実施例4に係る処方による錠剤、及び実施例3に係る処方による錠剤を比較例1及び2として設定した。
【0041】
[比較例1]
1錠当たりの含量として、スニチニブリンゴ酸塩16.7mg、マンニトール80mg、クロスカルメロースナトリウム6.6mg、ポビドン(K-25)5.6mgの比率で混合し、この混合物当たり精製水30μLを添加し、撹拌造粒した。得られた造粒物を、60℃で1時間乾燥させた。この造粒物108.9mg当たり、ステアリン酸マグネシウム1.1mgを混合し打錠することで、比較例1に係る錠剤を調製した。
【0042】
[比較例2]
1錠当たりの含量として、スニチニブリンゴ酸塩16.7mg、マンニトール19.3mg、クロスカルメロースナトリウム2.5mg、ポビドン(K-25)2.1mgの比率で混合し、この混合物当たり精製水10μLを添加し、撹拌造粒した。得られた造粒物を、60℃で1時間乾燥させた。この造粒物40.6mg当たり、ステアリン酸マグネシウム0.6mgを混合し打錠することで、比較例2に係る錠剤を調製した。
【0043】
[試験例1]
実施例1~10並びに比較例1、2の錠剤、及びスーテント(登録商標)カプセルを、日本薬局方に記載されている方法で調製したpH6.8の試験溶液を用いて、日本薬局方溶出試験第2法(パドル法)により溶出率を評価した。
溶出試験器(NTR-6200A、富山産業株式会社製)及び紫外可視分光時計(UV-1700、島津製作所製)を用い、試験液量を900mL、試験液温を37±0.5℃、パドル回転数を50rpmとして溶出率を評価した。
スーテントカプセルとの溶出類似判定に用いられる時点及び溶出率とその判定を表1にまとめた。
【0044】
【表1】
【0045】
実施例1~10の医薬錠剤は、既存製剤であるスーテント(登録商標)カプセルと比較して、15分及び90分における溶出率が±15%の範囲内であり、類似判定を示した。一方、比較例は、特に初期の溶出性を抑制的に制御することができず、非類似判定であった。すなわち、本発明は、既存カプセル製剤と類似の溶出挙動を示す医薬錠剤であり、本発明により嚥下性に優れ、服薬を容易にする医薬製剤を提供することができる。