(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025035227
(43)【公開日】2025-03-13
(54)【発明の名称】電動ポンプユニット
(51)【国際特許分類】
F04B 53/08 20060101AFI20250306BHJP
F04B 53/16 20060101ALI20250306BHJP
F04C 15/00 20060101ALI20250306BHJP
F04B 53/00 20060101ALI20250306BHJP
【FI】
F04B53/08 E
F04B53/16 A
F04C15/00 E
F04B53/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023142141
(22)【出願日】2023-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉原 雅道
【テーマコード(参考)】
3H044
3H071
【Fターム(参考)】
3H044AA02
3H044BB05
3H044CC10
3H044DD01
3H044DD12
3H044DD18
3H044DD24
3H071AA03
3H071BB02
3H071CC01
3H071DD32
3H071DD82
3H071DD84
(57)【要約】
【課題】制御部の冷却効率を向上させる。
【解決手段】電動ポンプユニット105は、電動ポンプ100を備え、電動ポンプ100は、ポンプ部10、モータ部20、及び制御部30を収容するハウジング40と、を有し、ハウジング40は、吸込ポート45と、ハウジング40の外周面から突出し、駆動シャフト1の軸方向に延びる軸方向壁49と、モータ部20と制御部30とを仕切る仕切り部42と、を有し、仕切り部42には、仕切り部42を貫通して形成されポンプ部10に吸い込まれる流体が通過する冷却通路48と、冷却通路48の入口と出口である二つの開口部48aと、が形成され、軸方向壁49は、駆動シャフト1の周方向において、冷却通路48の二つの開口部48の間に形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動ポンプユニットであって、
電動ポンプと、
前記電動ポンプが収容される収容部を有する被取付体と、
前記電動ポンプと前記収容部との間に形成され流体が流れる空間と、を備え、
前記電動ポンプは、
流体を吐出するポンプ部と、
駆動シャフトを回転させて前記ポンプ部を駆動させるモータ部と、
前記モータ部を制御する制御部と、
前記ポンプ部、前記モータ部、及び前記制御部を収容するハウジングと、を有し、
前記ハウジングは、
前記空間の流体を前記ポンプ部に流体を導く吸込ポートと、
前記ハウジングの外周面から突出し、前記駆動シャフトの軸方向に延びる軸方向壁と、
前記モータ部と前記制御部とを仕切る仕切り部と、を有し、
前記仕切り部には、前記仕切り部を貫通して形成され前記ポンプ部に吸い込まれる流体が通過する冷却通路と、前記冷却通路の入口と出口である二つの開口部と、が形成され、
前記軸方向壁は、前記駆動シャフトの周方向において、前記冷却通路の前記二つの開口部の間に形成されることを特徴とする電動ポンプユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の電動ポンプユニットであって、
前記軸方向壁は、前記周方向に離れて前記空間を二つに隔てるように一対設けられ、前記一対の軸方向壁により前記冷却通路の前記二つの開口部が隔てられることを特徴とする電動ポンプユニット。
【請求項3】
請求項1に記載の電動ポンプユニットであって、
前記ハウジングは、二つの前記吸込ポートを有し、
前記被取付体には、前記空間に連通し前記空間に流体を供給する供給通路が形成され、
前記ハウジングは、前記供給通路と前記供給通路に近い前記吸込ポートとの間に形成され前記駆動シャフトの周方向に延びる周方向壁をさらに有し、
前記周方向壁は、前記供給通路から前記供給通路に近い前記吸込ポートへの流体の流れに抵抗を付与することを特徴とする電動ポンプユニット。
【請求項4】
請求項1に記載の電動ポンプユニットであって、
前記ハウジングは、二つの前記吸込ポートを有し、
前記被取付体には、前記空間に連通し前記空間に流体を供給する供給通路が形成され、
前記軸方向壁または前記軸方向壁と前記収容部の間には、流量調整部が形成され、前記流量調整部を通じて前記供給通路から遠い前記吸込ポートに流体が導かれることを特徴とする電動ポンプユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ポンプユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ユニットハウジング内にポンプ、ポンプ駆動用電動モータ、およびモータのコントローラが組み込まれている電動ポンプユニットが開示されている。コントローラは、コンデンサなどの電子部品が実装された基板を有し、ユニットハウジングに収容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような電動ポンプユニットでは、駆動時にコントローラの電子部品が発熱し、熱がユニットハウジングに伝達される。ユニットハウジングが外気により空冷されることにより、コントローラ(電子部品)が冷却される。特許文献1に記載のような電動ポンプユニットでは、このように空冷によりコントローラが冷却されるため、コントローラの冷却効率を向上させる余地がある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、制御部の冷却効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電動ポンプユニットであって、電動ポンプと、電動ポンプが収容される収容部を有する被取付体と、電動ポンプと収容部との間に形成され流体が流れる空間と、を備え、電動ポンプは、流体を吐出するポンプ部と、駆動シャフトを回転させてポンプ部を駆動させるモータ部と、モータ部を制御する制御部と、ポンプ部、モータ部、及び制御部を収容するハウジングと、を有し、ハウジングは、空間の流体をポンプ部に流体を導く吸込ポートと、ハウジングの外周面から突出し、駆動シャフトの軸方向に延びる軸方向壁と、モータ部と制御部とを仕切る仕切り部と、を有し、仕切り部には、仕切り部を貫通して形成されポンプ部に吸い込まれる流体が通過する冷却通路と、冷却通路の入口と出口である二つの開口部と、が形成され、軸方向壁は、駆動シャフトの周方向において、冷却通路の二つの開口部の間に形成されることを特徴とする。
【0007】
この発明では、電動ポンプの駆動時に制御部の電子部品で発生する熱が仕切り部に伝達される。仕切り部には冷却通路が形成されるため、冷却通路を通過する流体によって仕切り部が冷却されることにより、制御部が冷却される。このように、ポンプ部に吸い込まれる流体を利用して制御部を冷却することで、制御部の冷却効率を向上させることができる。さらに、軸方向壁により、ハウジングの外周面に沿って流れ吸込ポートに導かれる流体の流れが阻害されて冷却通路に導かれる流量が多くなるため、制御部を効率的に冷却することができる。
【0008】
また、本発明は、軸方向壁は、周方向に離れて空間を二つに隔てるように一対設けられ、一対の軸方向壁により冷却通路の二つの開口部が隔てられることを特徴とする。
【0009】
この発明では、軸方向壁により空間が二つに隔てられるため、一方の空間から他方の空間には冷却通路を通じて流体が導かれる。よって、冷却通路に導かれる流量がより多くなるため、制御部を効率的に冷却することができる。
【0010】
また、本発明は、ハウジングは、二つの吸込ポートを有し、被取付体には、空間に連通し空間に流体を供給する供給通路が形成され、ハウジングは、供給通路と供給通路に近い吸込ポートとの間に形成され駆動シャフトの周方向に延びる周方向壁をさらに有し、周方向壁は、供給通路から供給通路に近い吸込ポートへの流体の流れに抵抗を付与することを特徴とする。
【0011】
この発明では、供給通路に近い吸込ポートに導かれる流体に抵抗が付与されることにより、冷却通路及び供給通路から遠い吸込ポートに導かれる流量が多くなるため、制御部を効率的に冷却することができる。
【0012】
また、本発明は、ハウジングは、二つの吸込ポートを有し、被取付体には、空間に連通し空間に流体を供給する供給通路が形成され、軸方向壁または軸方向壁と収容部の間には、流量調整部が形成され、流量調整部を通じて供給通路から遠い吸込ポートに流体が導かれることを特徴とする。
【0013】
この発明では、冷却通路だけでなく流量調整部を通じて流体が吸込ポートに導かれるため、流量調整部の形状を調整することにより、吸込ポートに導かれる流量を制御することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、制御部の冷却効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る電動ポンプの斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る電動ポンプの断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る、電動ポンプが被取付体に取り付けられた状態を示す電動ポンプユニットの側面図であって、被取付体は断面で示す。
【
図4】吸込ポートに導かれる流体の流れを示す模式図であり、
図1に対応して示す。
【
図5】本発明の実施形態の変形例3に係る電動ポンプユニットを示す図である。
【
図6】本発明の実施形態の変形例5に係る電動ポンプユニットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る電動ポンプユニット105について説明する。電動ポンプユニット105は、電動ポンプ100と、電動ポンプ100が取り付けられる被取付体101と、を備える。
【0017】
まず、電動ポンプ100の構成について詳しく説明する。電動ポンプ100は、例えば車両に搭載され、車両に搭載された電動モータを冷却するための冷却液(流体)を吐出したり、車両に搭載されたギヤを潤滑するための油(流体)を吐出するものである。電動ポンプ100は、機器を駆動するための作動流体を吐出する流体圧供給源として用いられてもよい。また、電動ポンプ100は、車両以外の産業機械に搭載されてもよい。
【0018】
図1は電動ポンプ100の斜視図であり、
図2は、
図1における正面側から見た電動ポンプ100の断面図である。
図1、
図2に示すように、電動ポンプ100は、流体を吐出するポンプ部10と、駆動シャフト1を回転させてポンプ部10を駆動させるモータ部20と、モータ部20を制御する制御部30と、ポンプ部10、モータ部20、及び制御部30を収容するハウジング40と、を備える。電動ポンプ100では、
図1、
図2における上側から、制御部30、モータ部20、及びポンプ部10が、この順番で配置される。以後では、駆動シャフト1の軸方向を単に「軸方向」、駆動シャフト1の径方向を単に「径方向」、駆動シャフト1の周方向を単に「周方向」とも称する。
【0019】
本実施形態では、ポンプ部10は、ベーンポンプである。
図2に示すように、ポンプ部10は、ポンプロータ11と、ベーン(図示省略)と、カムリング12と、第一サイドプレート13と、第二サイドプレート14と、ポンプ室15と、を有する。ベーンポンプの構成及び動作は、周知な構成と同様であるため、詳しい説明は省略する。ハウジング40の後述するハウジング本体部41及びポンプカバー部44に、ポンプ部10が収容される。
【0020】
図1に示すように、ハウジング本体部41は、外部からポンプ部10のポンプ室15に流体を導く吸込ポート45を有する。なお、
図2では吸込ポート45が含まれない断面を示している。ポンプカバー部44には、ポンプ室15から吐出される流体を外部へ導く吐出ポート46が形成される。ポンプロータ11の回転に伴い、ポンプ室15が拡張する吸込領域では吸込ポート45を通じて流体が吸入され、ポンプ室15が収縮する吐出領域では流体が吐出され吐出ポート46を通じて外部へ導かれる。本実施形態では、吸込ポート45は、駆動シャフト1を挟んで互いに対向するように二つ(一対)設けられる。つまり、
図1においては、一方の吸込ポート45のみが図示されており、紙面奥側に吸込ポート45がもう一つ形成される。
【0021】
図2に示すように、モータ部20は、環状のステータ21と、ステータ21の径方向内側に配置されるモータロータ25と、を有する。ステータ21及びモータロータ25は、ハウジング40(具体的には、ハウジング本体部41)に収容される。
【0022】
ステータ21は、モータロータ25を取り囲むように設けられる円環状のステータコア22と、ステータコア22に巻回されるコイル線23と、を有する。ステータコア22は、ハウジング40(ハウジング本体部41)の内周面に接する環状のヨーク部22aと、ヨーク部22aから径方向内側に向けて突出し周方向に所定の間隔で配置される複数のティース部22bと、を有する。コイル線23は、ステータコア22のティース部22bに巻回され、これにより各ティース部22bには、三相の駆動電流に対応するU相コイル、V相コイル及びW相コイルが形成される。各コイル線23の末端は、制御部30に接続される。
【0023】
モータロータ25は、駆動シャフト1の外周面に設けられ駆動シャフト1とともに回転するロータコア25aと、ロータコア25aの外周面に設けられる複数の永久磁石25bと、を有する。永久磁石25bは環状に設けられ、N極とS極が交互に配置される。モータ部20では、ステータ21のステータコア22の磁化状態と永久磁石25bとの作用によって、モータロータ25が駆動シャフト1を軸として回転する。これにより、ポンプ部10が駆動される。
【0024】
制御部30は、モータ部20を駆動させるために、ステータ21に供給される電流を制御するものである。制御部30は、電子部品31が実装される基板32を有する。電子部品31には、例えば、駆動シャフト1の回転に応じて変化する磁気の変化を検出可能なホール素子等の磁気検出センサや、当該磁気検出センサの検出値に基づいて駆動シャフト1の回転角度及び回転数を演算する演算部や、トランジスタ等が含まれる。基板32には、モータ部20のコイル線23が電気的に接続される。制御部30は、駆動シャフト1の回転角度に応じてステータ21のコイル線23を流れる電流の向きを制御するとともに、駆動シャフト1の回転数が外部から入力される目標回転数となるように、コイル線23に供給される電流の大きさを制御する。制御部30は、電子部品31がハウジング40に接触して設けられる。
【0025】
図1、
図2に示すように、ハウジング40は、開口部41a(
図2参照)を有するハウジング本体部41と、開口部41aを覆いモータ部20と制御部30とを仕切る仕切り部42と、仕切り部42に連結され制御部30を覆うカバー部43と、ポンプ部10を収容し覆うポンプカバー部44と、ハウジング40の外周面から突出する軸方向壁49と、を有する。
【0026】
図2に示すように、ハウジング本体部41は、駆動シャフト1が挿通される挿通孔41bと、モータ部20が収容される環状のモータ収容凹部41cと、ポンプ部10が収容されるポンプ収容凹部41eと、を有する。挿通孔41bは、開口部41a及びポンプ収容凹部41eにわたって軸方向に延びて、モータ収容凹部41cの径方向内側に形成される。モータ収容凹部41cは、開口部41aと連続して形成され、モータ部20のステータコア22の環状のヨーク部22aが内周面に接して設けられる。挿通孔41bには、駆動シャフト1の外周面に設けられ駆動シャフト1を回転可能に支持する軸受50と、オイルシール60と、が収容される。ポンプ収容凹部41eには、第一サイドプレート13と、ポンプロータ11の一部と、カムリング12の一部が収容される。ハウジング本体部41は、締結部材82(
図1参照)により仕切り部42と連結される。ハウジング本体部41には、上記のように吸込ポート45(
図1参照)一対形成される。吸込ポート45は、ハウジング本体部41とポンプカバー部44にわたって形成される。
【0027】
仕切り部42は、ハウジング本体部41とは別体に設けられ、ハウジング本体部41の開口部41aを覆ってハウジング本体部41に連結される。仕切り部42には、制御部30が収容される凹状の収容部42aが形成される。収容部42aは、ハウジング本体部41とは反対側の端部に形成され、収容部42aには制御部30の電子部品31及び基板32が収容される。基板32は、ハウジング40に設けられるコネクタ(図示省略)により外部と電気的に接続される。仕切り部42は、ハウジング本体部41側が小径に形成されるとともに制御部30側が大径に形成されて、両者の間に肩面42dが形成される。
【0028】
仕切り部42には、冷却通路48(
図1、
図2参照)が形成される。なお、
図1では、冷却通路48が形成される開口領域をハッチングで示している。冷却通路48は、制御部30の電子部品31とモータ部20の間に位置するように形成される。冷却通路48は、直線状に延びて仕切り部42を貫通するように形成される。そのため、仕切り部42には、冷却通路48の入口と出口である二つの開口部48a,48b(
図3参照)が形成される。冷却通路48は、制御部30を冷却するために形成される。冷却通路48の詳細については後述する。仕切り部42には、駆動シャフト1の端部が挿入される挿入孔42cが形成され、挿入孔42cには駆動シャフト1の外周面に設けられ駆動シャフト1を回転自在に支持する軸受51が収容される。
【0029】
カバー部43は、ハウジング本体部41とは反対側に(
図2における上側に)突出する突部43aを有する。突部43aは中空状に形成され、制御部30の基板32を覆うように設けられる。カバー部43は、締結部材81により仕切り部42に固定される。
【0030】
ポンプカバー部44は、ポンプ収容凹部41eを覆うように設けられ、締結部材83(
図1参照)によりハウジング本体部41に固定される。ポンプカバー部44には、モータ部20と反対側に向けて突出する突出部44aが形成され、突出部44aには吐出ポート46が形成される。突出部44aの外周面には、環状のシール部材61が設けられる。ポンプカバー部44には、上記のように、吸込ポート45がハウジング本体部41にわたって一対形成される。
【0031】
軸方向壁49は、ハウジング40の外周面から径方向に突出する。軸方向壁49は、軸方向に延びる第一軸方向壁49a及び第二軸方向壁49cを有する。つまり、本実施形態では、軸方向壁49は一対設けられる。本実施形態では、第一軸方向壁49a及び第二軸方向壁49cは、周方向に離れて互いに駆動シャフト1を挟んで対向して設けられる。第一軸方向壁49a及び第二軸方向壁49cは、駆動シャフト1の周方向において、二つの吸込ポート45の間にそれぞれ形成されるとともに冷却通路48の二つの開口部48a,48bの間にそれぞれ形成される。第一軸方向壁49a及び第二軸方向壁49cは、仕切り部42の肩面42dから、ハウジング本体部41の外周面、及びポンプカバー部44の外周面にわたってそれぞれ形成される。第一軸方向壁49a及び第二軸方向壁49cは、それぞれの頂面49b,49dが軸方向に延びて形成され、頂面49b,49dは、仕切り部42の肩面42dにおける内周縁と外周縁の間に位置する。本実施形態では、第一軸方向壁49aは、第二軸方向壁49cよりも後述する供給通路102に近い位置に設けられる。第一軸方向壁49a及び第二軸方向壁49cは駆動シャフト1を挟んで対称な構成であるため、以降では、第一軸方向壁49a及び第二軸方向壁49cを総称して単に「軸方向壁49」とも称する。
【0032】
次に、被取付体101の構成と電動ポンプ100の取り付けについて詳しく説明する。
【0033】
図3に示すように、電動ポンプユニット105は、電動ポンプ100が収容される収容部101aを有する被取付体101と、電動ポンプ100と収容部101aとの間に形成され流体が流れる空間70と、を備える。
図3は電動ポンプ100が被取付体101に取り付けられた状態を示す側面図であり、
図4は吸込ポート45に導かれる流体の流れを示す模式図である。なお、
図3では被取付体101を断面で示すとともに、紙面奥側の冷却通路48の開口部48b、紙面奥側の吸込ポート45b、及び紙面奥側の流体の流れ(矢印C)を点線で示している。また、
図4では被取付体101を点線で示している。
【0034】
図3、
図4に示すように、電動ポンプ100は、被取付体101の凹状の収容部101aに収容されて取り付けられる。収容部101aは、大径部101b及び小径部101cを有する段状に形成される。
【0035】
電動ポンプ100が被取付体101に取り付けられた状態では、仕切り部42の肩面42dが被取付体101の端面に接触し、ポンプカバー部44の突出部44aの先端が小径部101cに収容される。また、軸方向壁49(第一軸方向壁49a及び第二軸方向壁49c)の先端部が収容部101aの大径部101bと小径部101cの間の段部101dに接触する。さらに、ハウジング本体部41、仕切り部42における肩面42dよりもハウジング本体部41側、ポンプカバー部44の一部、及び軸方向壁49が、大径部101bに収容される。大径部101bは、ハウジング本体部41、仕切り部42における肩面42dよりもハウジング本体部41側、及びポンプカバー部44よりも大径に形成され、ハウジング40の外周面と大径部101bの内周面との間には、空間70が形成される。空間70は、被取付体101に形成される供給通路102と連通する。空間70には、供給通路102を通じて電動ポンプ100の吸込ポート45に導かれる流体が供給される。つまり、電動ポンプ100の吸込ポート45には、供給通路102及び空間70を通じて流体が導かれる。なお、
図3、
図4においては、供給通路102は、第一軸方向壁49aよりも紙面手前側で空間70と連通する。
【0036】
第一軸方向壁49a及び第二軸方向壁49cは、空間70を二つに隔てるように設けられる。具体的には、第一軸方向壁49aは、頂面49bが収容部101aの大径部101bの内周面に接触して設けられ、第二軸方向壁49cは、頂面49dが収容部101aの大径部101bの内周面に接触して設けられる。言い換えれば、第一軸方向壁49a及び第二軸方向壁49cは、収容部101aの大径部101bの形状に対応して、それぞれの頂面49b,49dが大径部101bの内周面に接触するように形成される。これにより、空間70は、供給通路102に連通する第一空間70a(
図3、
図4における紙面手前側)と、供給通路102に連通しない第二空間70b(
図3、
図4における紙面奥側)とに隔てられる。一対の軸方向壁49により、二つの吸込ポート45が隔てられるとともに冷却通路48の二つの開口部48a,48bが隔てられる(
図3参照)。
【0037】
次に、空間70における流体の流れと、冷却通路48の機能について詳しく説明する。
【0038】
供給通路102から空間70に供給される流体は、二つの吸込ポート45に導かれる。具体的には、
図3、
図4に矢印Aで示すように、第一空間70aにあり供給通路102に近い第一吸込ポート45aには、供給通路102から流体が直接導かれる。これに対して、第二空間70bにあり供給通路102から遠い第二吸込ポート45b(
図3参照)には、軸方向壁49により空間70が隔てられているため、供給通路102から流体が直接導かれず、冷却通路48を通過した流体が導かれる。具体的には、
図3、
図4に矢印Bで示すように、供給通路102から空間70aに供給された流体は、冷却通路48における供給通路102に近い(第一空間70aにある)第一開口部48a(入口)から冷却通路48に流入する。冷却通路48は、直線状に延びて仕切り部42を貫通するように形成されるため、冷却通路48を通過した流体は、供給通路102から遠い(第二空間70bにある)第二開口部48b(出口)から第二空間70bに流出し、
図4に矢印Cで示すように、第二吸込ポート45bに導かれる。このようにして、供給通路102からの流体は、2つの経路を経てそれぞれ二つの吸込ポート45に導かれる。
【0039】
ここで、本実施形態の電動ポンプ100では、駆動時に制御部30の電子部品31が発熱する。電子部品31はハウジング40の仕切り部42に接触し、熱が仕切り部42に伝達される。仕切り部42には冷却通路48が形成されるため、冷却通路48を通過する流体によって仕切り部42が冷却されることにより、電子部品31が冷却される。このように、空冷ではなく、ポンプ部10に吸い込まれる流体を利用して制御部30を冷却することで、制御部30の冷却効率を向上させることができる。さらに、軸方向壁49(第一軸方向壁49a及び第二軸方向壁49c)により、第二吸込ポート45bには、供給通路102から流体が直接導かれず、冷却通路48を通過した流体が導かれる。つまり、本実施形態では、軸方向壁49により空間70が二つに隔てられるため、一方の空間70aから他方の空間70bには冷却通路48を通じて流体が導かれる。したがって、冷却通路48に導かれる流量が多くなるため、制御部30を効率的に冷却することができる。
【0040】
また、本実施形態では、軸方向壁49の頂面49b,49dが収容部101aの大径部101bの内周面に接触して設けられるため、電動ポンプ100を収容部101aに収容する際に、軸方向壁49がガイドとして機能する。そのため、電動ポンプ100を被取付体101に取り付けやすい。
【0041】
また、本実施形態では、冷却通路48は、基板32の電子部品31の位置に対応して形成される。具体的には、冷却通路48は、軸方向において電子部品31と重なるような位置に形成される。これにより、熱源となる電子部品31に近い位置を冷却することができ、制御部30をより効率的に冷却することができる。
【0042】
また、
図2に示すように、本実施形態では、冷却通路48は、仕切り部42の基板32側の端部との間の長さD1がモータ部20側の端部との間の長さD2よりも大きいように形成される。具体的には、仕切り部42において、冷却通路48から基板32側の端部までの軸方向長さD1は、冷却通路48からモータ部20側の端部までの軸方向長さD2よりも大きい。これにより、電子部品31の熱が伝達される領域である、仕切り部42における冷却通路48から基板32側の端部までの肉厚を大きくすることができ、制御部30をより効率よく冷却することができる。さらに、電動ポンプ100は、仕切り部42の肩面42dが被取付体101に接触して取り付けられるため、電動ポンプ100の取り付け時や電動ポンプ100に荷重が作用した際には、肩面42d近傍で応力が作用しやすい。しかしながら、冷却通路48がこのように仕切り部42におけるモータ部20側に形成されて肩面42d近傍の肉厚が確保されることにより、仕切り部42の強度を向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態では、仕切り部42はハウジング本体部41とは別体に形成されるため、仕切り部42単体を加工することにより冷却通路48を形成することができる。よって、冷却通路48を容易に形成することができる。
【0044】
以上の本実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0045】
電動ポンプ100では、仕切り部42には冷却通路48が形成されるため、冷却通路48を通過する流体によって仕切り部42が冷却されることにより、制御部30が冷却される。このように、ポンプ部10に吸い込まれる流体を利用して制御部30を冷却することで、制御部30の冷却効率を向上させることができる。さらに、軸方向壁49により、ハウジング40の外周面に沿って流れ吸込ポート45(第二吸込ポート45b)に導かれる流体の流れが阻害されて冷却通路48に導かれる流量が多くなるため、制御部30を効率的に冷却することができる。
【0046】
次に、本実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0047】
<変形例1>
上記実施形態では、冷却通路48は、直線状に延びて仕切り部42を貫通するように形成され、挿入孔42cの周囲を囲わないように形成される。しかしながら、冷却通路48は、仕切り部42に形成されてポンプ部10に吸い込まれる流体が通過し、仕切り部42に二つの開口部48a,48bが形成されれば、上記構成に限られない。例えば、冷却通路48は、挿入孔42cの周囲を囲って形成されるとともに仕切り部42を貫通して仕切り部42における広範囲に形成されてもよい。また、冷却通路48の構成として、制御部30の電子部品31の位置に対応して形成されることや、仕切り部42における基板32側の端部との間の長さがモータ部20側の端部との間の長さよりも大きいように形成されることは、必須の構成ではない。
【0048】
<変形例2>
上記実施形態では、軸方向壁49(第一軸方向壁49a及び第二軸方向壁49c)は、空間70を二つに隔てるように一対設けられる。これに限らず、軸方向壁49は、第一軸方向壁49a及び第二軸方向壁49cの一方のみが設けられてもよい。この場合には、軸方向壁49は、周方向において、二つの吸込ポート45の間に形成されるとともに冷却通路48の二つの開口部48a,48bの間に形成される。この場合では、空間70が二つに隔てられないため、供給通路102から遠い第二吸込ポート45bには、冷却通路48を通過した流体が導かれるとともに、供給通路102からハウジング40の外周面に沿って流れる流体も導かれる。しかしながら、本変形例においても、軸方向壁49により、ハウジング40の外周面に沿って流れ第二吸込ポート45bに導かれる流体の流れが阻害されて冷却通路48に導かれる流量が多くなるため、制御部30を効率的に冷却することができる。
【0049】
<変形例3>
図5に示すように、ハウジング40は、軸方向壁49に加えて、ハウジング本体部41の外周面に形成され周方向に延びる周方向壁49eをさらに有してもよい。周方向壁49eは、供給通路102と供給通路102に近い第一吸込ポート45aとの間に形成され、一端部が第一軸方向壁49aに接触して形成される。周方向壁49eの頂面49fは、収容部101aの大径部101bの内周面に接触して設けられる。また、この場合には、第一吸込ポート45aの周囲に隆起部45cが形成され、隆起部45cと大径部101bの内周面との間の距離が小さく形成される。この構成では、周方向壁49eは、矢印Dで示すように、供給通路102から第一吸込ポート45aへの流体の流れを迂回させるとともに抵抗を付与する。そのため、供給通路102に近い第一吸込ポート45aに導かれる流量が少なくなるため、冷却通路48及び供給通路102から遠い第二吸込ポート45bに多くの流量を導くことができる。よって、制御部30を効率的に冷却することができる。なお、周方向壁49eが第一軸方向壁49a及び第二軸方向壁49cの間にわたって形成され、周方向壁49eに形成される切り欠きを通じて供給通路102から第一吸込ポート45aに流体が導かれる構成であってもよい。
【0050】
<変形例4>
上記実施形態では、軸方向壁49は、収容部101aの大径部101bの内周面及び段部101dに接触して設けられる。しかしながら、軸方向壁49は、収容部101aの大径部101bの内周面及び段部101dに必ずしも接触する必要はなく、隙間を空けて設けられてもよい。
【0051】
<変形例5>
図6に示すように、軸方向壁49に流量調整部が形成されてもよい。具体的には、軸方向壁49に流量調整部としての切り欠き49gが形成され、切り欠き49gを通じて供給通路102から遠い第二吸込ポート45bに流体が導かれてもよい。この構成では、冷却通路48だけでなく切り欠き49gを通じて流体が第二吸込ポート45bに導かれるため、切り欠き49gの形状(大きさ)を調整することにより、第二吸込ポート45bに導かれる流量を制御することができる。よって、第二吸込ポート45bに導かれる流量が少ないことによる電動ポンプ100の不具合を防止することができる。なお、流量調整部は、切り欠き49gに限らず、軸方向壁49を貫通して形成される貫通孔や、上記変形例4のように軸方向壁49と収容部101aの間に形成される隙間であってもよい。
【0052】
<変形例6>
上記実施形態では、仕切り部42は、ハウジング本体部41とは別体に形成される。これに限らず、仕切り部42は、ハウジング本体部41と一体に形成されてもよい。この構成であっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0053】
<変形例7>
上記実施形態では、ポンプ部10は、ベーンポンプである。これに限らず、ポンプ部10は、ギヤポンプ等の他のポンプであってもよい。この場合には、ハウジング40は一つの吸込ポート45を有し、一対の軸方向壁49により冷却通路48の二つの開口部48a,48bが隔てられる。この構成であっても、軸方向壁49により空間70が二つに隔てられ、一方の空間70から他方の空間70には冷却通路48を通じて流体が導かれるため、冷却通路48に導かれる流量がより多くなり、制御部30を効率的に冷却することができる。なお、この場合には、冷却通路48に導かれる流量がより多くなるように、吸込ポート45は、供給通路102に連通しない第二空間70bに設けられることが好ましい。また、上記変形例2のように、第一軸方向壁49a及び第二軸方向壁49cの一方のみが設けられる場合であっても、軸方向壁49により、ハウジング40の外周面に沿って流れ吸込ポート45に導かれる流体の流れが阻害されて冷却通路48に導かれる流量が多くなるため、制御部30を効率的に冷却することができる。この場合には、冷却通路48に導かれる流量がより多くなるように、吸込ポート45は、供給通路102から離れた位置に設けられることが好ましい。
【0054】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0055】
電動ポンプユニット105は、電動ポンプ100と、電動ポンプ100が収容される収容部101aを有する被取付体101と、電動ポンプ100と収容部101aとの間に形成され流体が流れる空間70と、を備え、電動ポンプ100は、流体を吐出するポンプ部10と、駆動シャフト1を回転させてポンプ部10を駆動させるモータ部20と、モータ部20を制御する制御部30と、ポンプ部10、モータ部20、及び制御部30を収容するハウジング40と、を有し、ハウジング40は、空間70の流体をポンプ部10に流体を導く吸込ポート45と、ハウジング40の外周面から突出し、駆動シャフト1の軸方向に延びる軸方向壁49と、モータ部20と制御部30とを仕切る仕切り部42と、を有し、仕切り部42には、仕切り部42を貫通して形成されポンプ部10に吸い込まれる流体が通過する冷却通路48と、冷却通路48の入口と出口である二つの開口部48a,48bと、が形成され、軸方向壁49は、駆動シャフト1の周方向において、冷却通路48の二つの開口部48a,48bの間に形成される。
【0056】
この構成では、電動ポンプ100の駆動時に制御部30の電子部品31で発生する熱が仕切り部42に伝達される。仕切り部42には冷却通路48が形成されるため、冷却通路48を通過する流体によって仕切り部42が冷却されることにより、制御部30が冷却される。このように、ポンプ部10に吸い込まれる流体を利用して制御部30を冷却することで、制御部30の冷却効率を向上させることができる。さらに、軸方向壁49により、ハウジング40の外周面に沿って流れ吸込ポート45に導かれる流体の流れが阻害されて冷却通路48に導かれる流量が多くなるため、制御部30を効率的に冷却することができる。
【0057】
また、電動ポンプユニット105では、軸方向壁49は、周方向に離れて空間70を二つに隔てるように一対設けられ、一対の軸方向壁49により冷却通路48の二つの開口部48a,48bが隔てられる。
【0058】
この構成では、軸方向壁49により空間70が二つに隔てられるため、一方の空間70から他方の空間70には冷却通路48を通じて流体が導かれる。よって、冷却通路48に導かれる流量がより多くなるため、制御部30を効率的に冷却することができる。
【0059】
また、電動ポンプユニット105では、ハウジング40は、二つの吸込ポート45を有し、被取付体101には、空間70に連通し空間70に流体を供給する供給通路102が形成され、軸方向壁49は、供給通路102と供給通路102に近い吸込ポート45との間に形成され駆動シャフト1の周方向に延びる周方向壁49eをさらに有し、周方向壁49eは、供給通路102から供給通路102に近い吸込ポート45aへの流体の流れに抵抗を付与する。
【0060】
この構成では、供給通路102に近い吸込ポート45aに導かれる流体に抵抗が付与されることにより、冷却通路48及び供給通路102から遠い吸込ポート45bに導かれる流量が多くなるため、制御部30を効率的に冷却することができる。
【0061】
また、電動ポンプユニット105では、ハウジング40は、二つの吸込ポート45を有し、被取付体101には、空間70に連通し空間70に流体を供給する供給通路102が形成され、軸方向壁49または軸方向壁49と収容部101aの間には、流量調整部(切り欠き49g)が形成され、流量調整部を通じて供給通路102から遠い吸込ポート45bに流体が導かれる。
【0062】
この構成では、冷却通路48だけでなく流量調整部を通じて流体が吸込ポート45bに導かれるため、流量調整部の形状を調整することにより、吸込ポート45bに導かれる流量を制御することができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0064】
1…駆動シャフト、10…ポンプ部、20…モータ部、30…制御部、40…ハウジング、42…仕切り部、45a…第一吸込ポート(吸込ポート)、45b…第二吸込ポート(吸込ポート)、48…冷却通路、48a…第一開口部(開口部)、48b…第二開口部(開口部)、49…軸方向壁、49a…第一軸方向壁(軸方向壁)、49c…第二軸方向壁(軸方向壁)、49e…周方向壁、49g…切り欠き(流量調整部)、70a…第一空間(空間)、70b…第二空間(空間)、100…電動ポンプ、101…被取付体、101a…収容部、102…供給通路、105…電動ポンプユニット