(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025035236
(43)【公開日】2025-03-13
(54)【発明の名称】空気齢測定方法及び空気齢測定システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/63 20180101AFI20250306BHJP
G01N 15/06 20240101ALI20250306BHJP
【FI】
F24F11/63
G01N15/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023142156
(22)【出願日】2023-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】591023479
【氏名又は名称】ダイダン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108442
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義孝
(74)【代理人】
【識別番号】100206195
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】清輔 隼仁
(72)【発明者】
【氏名】松井 俊也
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB15
3L260BA13
3L260BA75
3L260CA17
3L260CB51
3L260FC01
(57)【要約】
【課題】換気系の室において換気運転を一時停止させる必要はなく、換気運転を継続しつつ室の空気齢を測定することができる空気齢測定方法を提供する。
【解決手段】空気齢測定方法は、室11の空気を換気する空気換気工程と、室11を換気した状態で室11にトレーサー微粒子を拡散させるトレーサー拡散工程と、トレーサー微粒子を拡散させた室11におけるトレーサー微粒子の濃度を測定し、室11におけるトレーサー微粒子の濃度分布が定常状態であるかを判定するトレーサー濃度判定工程と、室11におけるトレーサー微粒子の濃度分布が定常状態であると判定した場合、トレーサー微粒子の拡散を停止するとともに室11の換気を継続しつつ、室11に拡散したトレーサー微粒子の数値データを計測するトレーサー計測工程と、トレーサー微粒子の拡散を停止してから室11におけるトレーサー微粒子の時間の経過による減衰状況に基づいて室11の空気齢を算出する空気齢算出工程とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレーサーを利用して所定の空間の空気齢を測定する空気齢測定方法において、
前記空気齢測定方法が、前記空間の空気を換気する空気換気工程と、前記空気換気工程によって前記空間を換気した状態で該空間に前記トレーサーを拡散させるトレーサー拡散工程と、前記トレーサー拡散工程によって前記トレーサーを拡散させた空間におけるトレーサーの濃度を測定し、該空間におけるトレーサーの濃度分布が定常状態であるかを判定するトレーサー濃度判定工程と、前記トレーサー濃度判定工程によって前記空間におけるトレーサーの濃度分布が定常状態であると判定した場合、前記トレーサー拡散工程によるトレーサーの拡散を停止するとともに前記空気換気工程による前記空間の換気を継続しつつ、前記空間に拡散したトレーサーの数値データを計測するトレーサー計測工程と、前記トレーサー計測工程によってトレーサーの数値データの計測を開始してから前記空間における該トレーサーの時間の経過による減衰状況に基づいて該空間の空気齢を算出する空気齢算出工程とを有することを特徴とする空気齢測定方法。
【請求項2】
前記空気齢測定方法が、前記トレーサー拡散工程における前記トレーサーの発生量を調整し、前記空間におけるトレーサーの濃度分布が定常状態になるまで前記トレーサー拡散工程によって前記空間にトレーサーを発生させる請求項1に記載の空気齢測定方法。
【請求項3】
前記トレーサー濃度判定工程が、前記空間の所定寸法離間した位置における複数の判定点において該空間におけるトレーサーの濃度分布が定常状態であるかを判定する請求項1又は請求項2に記載の空気齢測定方法。
【請求項4】
前記トレーサー拡散工程が、前記空間の所定寸法離間した位置における複数のトレーサー発生点から該空間に前記トレーサーを拡散させる請求項3に記載の空気齢測定方法。
【請求項5】
前記トレーサーが、微小な液体の拡散に伴って拡散するトレーサー微粒子であり、前記トレーサー拡散工程が、前記空気換気工程による換気を継続しつつ前記トレーサー微粒子を含む微小な液体を前記空間に拡散させ、前記トレーサー計測工程が、前記空気換気工程による換気を継続しつつ前記トレーサー拡散工程による前記トレーサー微粒子の拡散を停止してから所定の測定時間の間に該トレーサー微粒子の数値データを計測し、前記空気齢算出工程が、前記空間における前記トレーサー微粒子の時間の経過による数値データの減衰状況から該空間の空気齢を算出する請求項4に記載の空気齢測定方法。
【請求項6】
前記空気換気工程による換気を継続しつつ前記トレーサー拡散工程による前記トレーサー微粒子の拡散を停止してから前記トレーサー計測工程によって前記トレーサー微粒子の数値データを測定する測定時間が、前記トレーサー微粒子の数値データの減衰から該数値データが0になるまでの時間である請求項5に記載の空気齢測定方法。
【請求項7】
前記トレーサー拡散工程では、超音波振動子によって超音波を発生させて前記トレーサー微粒子を含む前記微小な液体を作り、該微小な液体を前記空間に拡散させる超音波加湿器が使用される請求項6に記載の空気齢測定方法。
【請求項8】
前記トレーサー計測工程では、前記トレーサー拡散工程によって拡散した前記空間のトレーサー微粒子の粒径を含む計測レンジを有して該空間に浮遊する該トレーサー微粒子の個数データを光散乱方式によって計測するパーティクルカウンター、又は、前記トレーサー拡散工程によって拡散した前記空間のトレーサー微粒子の粒径を含む計測レンジを有して該空間に浮遊する微小粒子状物質を測定するPM2.5測定器が使用される請求項7に記載の空気齢測定方法。
【請求項9】
トレーサーを利用して所定の空間の空気齢を測定する空気齢測定システムにおいて、
前記空気齢測定システムが、前記空間の空気を換気する空気換気手段と、前記空間に前記トレーサーを拡散させるトレーサー拡散手段と、前記空間におけるトレーサーの濃度分布が定常状態であるかを判定するトレーサー濃度判定手段と、前記空間に拡散するトレーサーの所定の測定時間の間における数値データを計測するトレーサー計測手段と、前記計測されたトレーサーの数値データに基づいて前記空間の空気齢を算出する空気齢算出手段とを備え、
前記空気齢測定システムでは、前記空気換気手段によって前記空間の空気を換気した状態で前記トレーサー拡散手段によって該空間に前記トレーサーを拡散させ、前記トレーサー濃度判定手段によって前記空間におけるトレーサーの濃度分布が定常状態であると判定した場合、前記トレーサー拡散手段によるトレーサーの拡散を停止するとともに前記空気換気工程による前記空間の換気を継続しつつ、前記トレーサー計測手段によって前記空間に拡散したトレーサーの数値データを計測し、前記空気齢算出手段が前記空間における該トレーサーの時間の経過による減衰状況から該空間の空気齢を算出することを特徴とする空気齢測定システム。
【請求項10】
前記空気齢測定システムが、前記トレーサー拡散手段における前記トレーサーの発生量を調整し、前記空間におけるトレーサーの濃度分布が定常状態になるまで前記トレーサー拡散手段によって前記空間にトレーサーを発生させる請求項9に記載の空気齢測定システム。
【請求項11】
前記トレーサー濃度判定手段が、前記空間の所定寸法離間した位置における複数の判定点において該空間におけるトレーサーの濃度分布が定常状態であるかを判定する請求項9又は請求項10に記載の空気齢測定システム。
【請求項12】
前記トレーサー拡散手段が、前記空間の所定寸法離間した位置における複数のトレーサー発生点から該空間に前記トレーサーを拡散させる請求項11に記載の空気齢測定システム。
【請求項13】
前記トレーサーが、微小な液体の拡散に伴って拡散するトレーサー微粒子であり、前記トレーサー拡散手段が、前記空気換気工程による換気を継続しつつ前記トレーサー微粒子を含む微小な液体を前記空間に拡散させ、前記トレーサー計測手段が、前記空気換気手段による換気を継続しつつ前記トレーサー拡散手段による前記トレーサー微粒子の拡散を停止してから所定の測定時間の間に該トレーサー微粒子の数値データを計測し、前記空気齢算出手段が、前記空間における前記トレーサー微粒子の時間の経過による数値データの減衰状況から該空間の空気齢を算出する請求項12に記載の空気齢測定システム。
【請求項14】
前記空気換気手段による換気を継続しつつ前記トレーサー拡散手段工程による前記トレーサー微粒子の拡散を停止してから前記トレーサー計測手段によって前記トレーサー微粒子の数値データを測定する測定時間が、前記トレーサー微粒子の数値データの減衰から該数値データが0になるまでの時間である請求項13に記載の空気齢測定システム。
【請求項15】
前記トレーサー拡散手段では、超音波振動子によって超音波を発生させて前記トレーサー微粒子を含む前記微小な液体を作り、該微小な液体を前記空間に拡散させる超音波加湿器が使用される請求項14に記載の空気齢測定システム。
【請求項16】
前記トレーサー計測手段では、前記トレーサー拡散手段によって拡散した前記空間のトレーサー微粒子の粒径を含む計測レンジを有して該空間に浮遊する該トレーサー微粒子の個数データを光散乱方式によって計測するパーティクルカウンター、又は、前記トレーサー拡散手段によって拡散した前記空間のトレーサー微粒子の粒径を含む計測レンジを有して該空間に浮遊する微小粒子状物質を測定するPM2.5測定器が使用される請求項15に記載の空気齢測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレーサーを利用して所定の空間の空気齢を測定する空気齢測定方法及び空気齢測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
流体の連続式、流体の質量保存則と運動量保存則を満たすNavier-Stokes方程式、フーリエの法則に基づくエネルギー保存則から乱流をモデル化した平均流の乱流モデルにより、解析空間において流れ場と温度場との解析・演算を行い、演算結果の流れ場と温度場とのデータを記憶部へ格納する解析空間演算部と、流れ場と温度場とを固定させて、測定点への空気の流入の各吹出口毎の割合を示す吹出寄与率の空間分布を求める吹出寄与率演算部と、各吹出寄与率をその場の有効体積とする各吹き出し口に対応する有効体積分布毎に、室内空間で一様にトレーサーを発生させ、拡散方程式を解いて演算する濃度場演算部と、濃度場を、各々対応する吹出寄与率で除算することにより、各吹き出し口から流入した空気の空気齢の空間分布を演算する空気齢演算部とを有する空気齢分布性状解析システムが開示されている(特許文献1参照)。この空気齢分布性状解析システムは、複数の吹出・吸込口が存在している室内において、各々の吹出口と吸込口とのそれぞれの空気の流入と流出との寄与率に対応して、各吹出口,吸込口に対応する空気齢を評価することができ、効率的な換気システムの設計が可能となる。
【0003】
平均空気齢が短い場合、空間における空気がすぐに入れ替わり、空間の空気の喚起が良好と評価される。逆に、平均空気齢が長い場合、気流が滞って空気が澱み、空間の喚起が悪い(不良)と評価される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような既存の手法(ステップアップ法)で空間の空気齢を測定する場合、室内へのトレーサーの拡散工程、トレーサーの拡散工程によって室内に拡散したトレーサーの濃度を測定する濃度測定工程、濃度測定工程によって測定した室におけるトレーサーの濃度の時間の経過による減衰状況から空気齢を算出する空気齢算出工程が実施される。尚、室には、空調制御ユニットの室内空調制御の下、空調機によって作られた空調空気が給気ファンによって室内に給気され、室内を通流した空調空気が排気ファンによって室外に排気される換気運転が行われている。
【0006】
換気系の室におけるトレーサーの拡散工程では、室の空調制御ユニットが給気ファンや排気ファン、空調機を停止させ、室の換気を停止させた後、トレーサー発生装置が起動し、トレーサー発生装置によってトレーサーを室内に拡散させる。室内に拡散させたトレーサーの濃度が設定濃度になった後、空調制御ユニットが給気ファンや排気ファン、空調機を稼働させて換気運転を再開し、換気運転を行いつつ濃度測定工程によって室のトレーサーの濃度を継続して測定し、室におけるトレーサーの濃度の時間の経過による減衰状況に基づいて室の空気齢を算出する。この場合、トレーサーを室内に所定濃度で拡散させるために室の換気運転を停止しなければならず、換気運転を継続した状態で室の空気齢を算出することができなかった。
【0007】
本発明の目的は、換気系の空間において換気運転を一時停止させる必要なく、換気運転を継続しつつ空間の空気齢を測定することができる空気齢測定方法及び空気齢測定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための本発明の第1の前提は、トレーサーを利用して所定の空間の空気齢を測定する空気齢測定方法である。
【0009】
前記第1の前提における本発明の第1の特徴としては、空気齢測定方法が、空間の空気を換気する空気換気工程と、空気換気工程によって空間を換気した状態で空間にトレーサーを拡散させるトレーサー拡散工程と、トレーサー拡散工程によってトレーサーを拡散させた空間におけるトレーサーの濃度を測定し、空間におけるトレーサーの濃度分布が定常状態であるかを判定するトレーサー濃度判定工程と、トレーサー濃度判定工程によって空間におけるトレーサーの濃度分布が定常状態であると判定した場合、トレーサー拡散工程によるトレーサーの拡散を停止するとともに空気換気工程による空間の換気を継続しつつ、空間に拡散したトレーサーの数値データを計測するトレーサー計測工程と、トレーサー計測工程によってトレーサーの数値データの計測を開始してから空間におけるトレーサーの時間の経過による減衰状況に基づいて空間の空気齢を算出する空気齢算出工程とを有することにある。
【0010】
前記第1の特徴を有する本発明の一例としては、空気齢測定方法が、トレーサー拡散工程におけるトレーサーの発生量を調整し、空間におけるトレーサーの濃度分布が定常状態になるまでトレーサー拡散工程によって空間にトレーサーを発生させる。
【0011】
前記第1の特徴を有する本発明の他の一例としては、トレーサー濃度判定工程が、空間の所定寸法離間した位置における複数の判定点において空間におけるトレーサーの濃度分布が定常状態であるかを判定する。
【0012】
前記第1の特徴を有する本発明の他の一例としては、トレーサー拡散工程が、空間の所定寸法離間した位置における複数のトレーサー発生点から空間にトレーサーを拡散させる。
【0013】
前記第1の特徴を有する本発明の他の一例としては、トレーサーが、微小な液体の拡散に伴って拡散するトレーサー微粒子であり、トレーサー拡散工程が、空気換気工程による換気を継続しつつトレーサー微粒子を含む微小な液体を空間に拡散させ、トレーサー計測工程が、空気換気工程による換気を継続しつつトレーサー拡散工程によるトレーサー微粒子の拡散を停止してから所定の測定時間の間にトレーサー微粒子の数値データを計測し、空気齢算出工程が、空間におけるトレーサー微粒子の時間の経過による数値データの減衰状況から空間の空気齢を算出する。
【0014】
前記第1の特徴を有する本発明の他の一例としては、空気換気工程による換気を継続しつつトレーサー拡散工程によるトレーサー微粒子の拡散を停止してからトレーサー計測工程によってトレーサー微粒子の数値データを測定する測定時間が、トレーサー微粒子の数値データの減衰から数値データが0になるまでの時間である。
【0015】
前記第1の特徴を有する本発明の他の一例として、トレーサー拡散工程では、超音波振動子によって超音波を発生させてトレーサー微粒子を含む微小な液体を作り、微小な液体を空間に拡散させる超音波加湿器が使用される。
【0016】
前記第1の特徴を有する本発明の他の一例として、トレーサー計測工程では、トレーサー拡散工程によって拡散した空間のトレーサー微粒子の粒径を含む計測レンジを有して空間に浮遊するトレーサー微粒子の個数データを光散乱方式によって計測するパーティクルカウンター、又は、トレーサー拡散工程によって拡散した空間のトレーサー微粒子の粒径を含む計測レンジを有して空間に浮遊する微小粒子状物質を測定するPM2.5測定器が使用される。
【0017】
前記課題を解決するための本発明の第2の前提は、トレーサーを利用して所定の空間の空気齢を測定する空気齢測定システムである。
【0018】
前記第2の前提における本発明の第2の特徴としては、空気齢測定システムが、空間の空気を換気する空気換気手段と、空間にトレーサーを拡散させるトレーサー拡散手段と、空間におけるトレーサーの濃度分布が定常状態であるかを判定するトレーサー濃度判定手段と、空間に拡散するトレーサーの所定の測定時間の間における数値データを計測するトレーサー計測手段と、計測されたトレーサーの数値データに基づいて空間の空気齢を算出する空気齢算出手段とを備え、空気齢測定システムでは、空気換気手段によって空間の空気を換気した状態でトレーサー拡散手段によって空間にトレーサーを拡散させ、トレーサー濃度判定手段によって空間におけるトレーサーの濃度分布が定常状態であると判定した場合、トレーサー拡散手段によるトレーサーの拡散を停止するとともに空気換気工程による空間の換気を継続しつつ、トレーサー計測手段によって空間に拡散したトレーサーの数値データを計測し、空気齢算出手段が空間におけるトレーサーの時間の経過による減衰状況から空間の空気齢を算出することにある。
【0019】
前記第2の特徴を有する本発明の一例としては、空気齢測定システムが、トレーサー拡散手段におけるトレーサーの発生量を調整し、空間におけるトレーサーの濃度分布が定常状態になるまでトレーサー拡散手段によって空間にトレーサーを発生させる。
【0020】
前記第2の特徴を有する本発明の他の一例としては、トレーサー濃度判定手段が、空間の所定寸法離間した位置における複数の判定点において空間におけるトレーサーの濃度分布が定常状態であるかを判定する。
【0021】
前記第2の特徴を有する本発明の他の一例としては、トレーサー拡散手段が、空間の所定寸法離間した位置における複数のトレーサー発生点から空間にトレーサーを拡散させる。
【0022】
前記第2の特徴を有する本発明の他の一例としては、トレーサーが、微小な液体の拡散に伴って拡散するトレーサー微粒子であり、トレーサー拡散手段が、空気換気工程による換気を継続しつつトレーサー微粒子を含む微小な液体を空間に拡散させ、トレーサー計測手段が、空気換気手段による換気を継続しつつトレーサー拡散手段によるトレーサー微粒子の拡散を停止してから所定の測定時間の間にトレーサー微粒子の数値データを計測し、空気齢算出手段が、空間におけるトレーサー微粒子の時間の経過による数値データの減衰状況から空間の空気齢を算出する。
【0023】
前記第2の特徴を有する本発明の他の一例としては、空気換気手段による換気を継続しつつトレーサー拡散手段工程によるトレーサー微粒子の拡散を停止してからトレーサー計測手段によってトレーサー微粒子の数値データを測定する測定時間が、トレーサー微粒子の数値データの減衰から数値データが0になるまでの時間である。
【0024】
前記第2の特徴を有する本発明の他の一例として、トレーサー拡散手段では、超音波振動子によって超音波を発生させてトレーサー微粒子を含む前記微小な液体を作り、微小な液体を空間に拡散させる超音波加湿器が使用される。
【0025】
前記第2の特徴を有する本発明の他の一例として、トレーサー計測手段では、トレーサー拡散手段によって拡散した空間のトレーサー微粒子の粒径を含む計測レンジを有して空間に浮遊するトレーサー微粒子の個数データを光散乱方式によって計測するパーティクルカウンター、又は、トレーサー拡散手段によって拡散した空間のトレーサー微粒子の粒径を含む計測レンジを有して空間に浮遊する微小粒子状物質を測定するPM2.5測定器が使用される。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る空気齢測定方法及び空気齢測定システムによれば、空間を換気した状態で空間にトレーサーを拡散させ、トレーサーを拡散させた空間におけるトレーサーの濃度を測定し、空間におけるトレーサーの濃度分布が定常状態であるかを判定し、空間におけるトレーサーの濃度分布が定常状態であると判定した場合、トレーサーの拡散を停止するとともに空間の換気を継続しつつ、空間に拡散したトレーサーの数値データを計測するとともに、トレーサーの拡散を停止してから空間におけるトレーサーの時間の経過による減衰状況に基づいて空間の空気齢を算出するから、換気系の空間におけるトレーサーの拡散時に空間の換気運転を一時停止させる必要はなく、換気運転を継続しつつ空間の空気齢を測定することができる。空気齢測定方法及び空気齢測定システムは、換気運転の発停を所定のタイミングで行う必要はなく、換気運転の発停を行う手間を省いた状態で空間の空気齢を測定することができる。空気齢測定方法及び空気齢測定システムは、トレーサーの拡散を停止してから所定の測定時間の間にトレーサーの数値データを測定しつつ、トレーサーの時間の経過による数値データの減衰状況から空間における空気齢を算出するから、トレーサーを利用して空間の空気齢を精度よく測定することができる。
【0027】
空間のトレーサーの発生量を調整し、空間におけるトレーサーの濃度分布が定常状態になるまで空間にトレーサーを発生させる空気齢測定方法及び空気齢測定システムは、空間のトレーサーの発生量を調整することで、空間におけるトレーサーの濃度分布を確実に定常状態にすることができる。空気齢測定システム及び空気齢測定システムは、トレーサーの発生量を調整することで、空間におけるトレーサーの濃度分布を定常状態にすることができるから、空間におけるトレーサーの濃度分布を定常状態にするために空間の換気運転を一時停止させる必要はなく、換気運転を継続しつつ空間の空気齢を測定することができる。
【0028】
空間の所定寸法離間した位置における複数の判定点において空間におけるトレーサーの濃度分布が定常状態であるかを判定する空気齢測定方法及び空気齢測定システムは、空間の任意の複数の判定点においてトレーサーの濃度分布が定常状態であるかを判定することで、空間全域におけるトレーサーの濃度分布を精度よく測定することができ、空間におけるトレーサーの濃度分布の定常状態を正確に判定することができる。
【0029】
空間の所定寸法離間した位置における複数のトレーサー発生点から空間にトレーサーを拡散させる空気齢測定方法及び空気齢測定システムは、空間の複数のトレーサー発生点からトレーサーを拡散させることで、空間全域にトレーサーを速やかに拡散させることができ、換気運転を継続しつつ空間におけるトレーサーの濃度分布を定常状態にすることができる。
【0030】
トレーサーが微小な液体の拡散に伴って拡散するトレーサー微粒子であり、換気を継続しつつトレーサー微粒子を含む微小な液体を空間に拡散させ、換気を継続しつつトレーサー微粒子の拡散を停止してから所定の測定時間の間にトレーサー微粒子の数値データを計測するとともに、空間におけるトレーサー微粒子の時間の経過による数値データの減衰状況から空間の空気齢を算出する空気齢測定方法及び空気齢測定システムは、トレーサーとして微小な液体の拡散に伴って拡散するトレーサー微粒子を使用するから、空間の空気齢を確実かつ容易に測定することができるとともに、トレーサー微粒子を利用して空間の空気齢を精度よく測定することができる。空気齢測定方法及び空気齢測定システムは、トレーサーとして微小な液体の拡散に伴って拡散するトレーサー微粒子を使用するから、空間の空気齢の算出が大掛かりになることはなく、簡易に空間の空気齢を算出することができる。
【0031】
換気を継続しつつトレーサー微粒子の拡散を停止してからトレーサー微粒子の数値データを測定する測定時間がトレーサー微粒子の数値データの減衰から数値データが0になるまでの時間である空気齢測定方法及び空気齢測定システムは、トレーサー微粒子の数値データを測定する測定時間をトレーサー微粒子の数値データの減衰から数値データが0になるまでの時間とすることで、トレーサー微粒子の濃度の減衰を正確に捉えることができ、空間の正確な空気齢を測定することができる。
【0032】
超音波振動子によって超音波を発生させてトレーサー微粒子を含む微小な液体を作り、微小な液体を空間に拡散させる超音波加湿器が使用される空気齢測定方法及び空気齢測定システムは、超音波による振動エネルギーによってトレーサー微粒子を含む微小な液体を発生させるから、特別な熱源を使用することなく常温のトレーサー微粒子を使用して空間の空気齢を確実かつ容易に測定することができる。空気齢測定システム及び空気齢測定システムは、換気を継続しつつ超音波加湿器によってトレーサー微粒子を含む微小な液体を空間に拡散させ、トレーサー微粒子を含む微小な液体を空間に拡散させた後、拡散を停止させてから所定の測定時間の間にトレーサー微粒子の数値データを測定し、空間におけるトレーサー微粒子の時間の経過による数値データの減衰状況から空間の空気齢を算出するから、空間における空気齢を速やかに測定することができる。
【0033】
拡散した空間のトレーサー微粒子の粒径を含む計測レンジを有して空間に浮遊するトレーサー微粒子の個数データを光散乱方式によって計測するパーティクルカウンター、又は、拡散した空間のトレーサー微粒子の粒径を含む計測レンジを有して空間に浮遊する微小粒子状物質を測定するPM2.5測定器が使用される空気齢測定方法及び空気齢測定システムは、トレーサー微粒子を含む微小な液体の拡散を停止させてから所定の測定時間の間に、光散乱方式のパーティクルカウンターを使用して空間におけるトレーサー微粒子の数値データを測定するから、そのパーティクルカウンターによってトレーサー微粒子の数値データを正確に測定することができ、空間の正確な空気齢を測定することができる。空気齢測定方法及び空気齢測定システムは、パーティクルカウンターよりも測定レンジは狭いが、PM2.5と同等のサイズのトレーサー微粒子を正確に捉え、かつ相対的にシンプルな構成のPM2.5測定器を用いるから、PM2.5測定器によってトレーサー微粒子の数値データを正確に測定することができ、空間の正確な空気齢を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】換気系の室における空気齢測定システムの一例を示す上面図。
【
図2】換気系の室において空気齢を算出する手順の一例を説明する図。
【
図3】
図2から続く空気齢を算出する手順を説明する図。
【
図4】
図3から続く空気齢を算出する手順を説明する図。
【
図5】
図4から続く空気齢を算出する手順を説明する図。
【
図6】空気齢測定手法である濃度減衰法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
添付の図面を参照し、本発明に係る空気齢測定方法及び空気齢測定システム10の詳細を説明すると、以下のとおりである。尚、
図1は、換気系の室11(空間)における空気齢測定システム10の一例を示す上面図である。
図1中の□は、超音波加湿器15を示し、
図1中の〇は、光散乱方式気中パーティクルカウンター16又はPM2.5測定器17を示す。
【0036】
空気齢測定方法(空気齢測定システム10)は、トレーサーを利用して所定の室11(空間)の空気齢を測定する。空気齢測定方法(空気齢測定システム10)では、トレーサーとして微小な液体12(液粒)の拡散に伴って拡散するトレーサー微粒子を使用する。
【0037】
図1の室11における空気齢測定方法(空気齢測定システム10)は、空気換気工程(空気換気手段)と、トレーサー拡散工程(トレーサー拡散手段)と、トレーサー濃度判定工程(トレーサー濃度判定手段)と、トレーサー計測工程(トレーサー計測手段)と、空気齢測定工程(空気齢測定手段)とを有する。
【0038】
空気換気工程(空気換気手段)は、室11(空間)の空気を換気する。
図1に示す室11(空気齢を測定する実在の室)は、空調機(図示せず)によって空調された空気(外気)が給気ダクト13によって室11の内部に給気され、排気ダクト14によって室11の内部の空気が室11の外部に排気される換気系の室11である。図示はしていないが、給気ダクト13には、給気ファン(給気手段)が設置され、排気ダクト14には、排気ファン(排気手段)が設置されている。
【0039】
室11では、換気運転が行われる。換気運転では、給気ファンによって給気ダクト13を通流した空気(空調機によって空調された空気)が室11に給気され、室11を通流した空気が排気ファンによって排気ダクト14を通流した後、室11内の空気が外部に排気される。尚、給気ファン、排気ファン、空調機が制御ユニット(図示せず)に接続され、空調制御システムが形成されている。給気ファンや排気ファン、空調機の発停や出力が制御ユニットによってコントロールされている。この実施例では、第1種換気の構成にて説明しているが、第2種換気及び第3種換気の構成でも適用可能である。
【0040】
トレーサー拡散工程(トレーサー拡散手段)は、トレーサー微粒子を含む微小な液体12を所定容積の室11(空間)に拡散させる。トレーサー拡散工程(トレーサー拡散手段)には、超音波加湿器15が使用されている。超音波加湿器15は、タンクの底に設置された超音波振動子によって超音波(振動)を発生させ、その振動がタンクに収容された水の表面で弾けて微小な液粒(ミスト)を作り、その微少にされた液体12を濃度拡散の物理現象を利用して空気中(室11内)に拡散させる。
【0041】
トレーサー拡散工程(トレーサー拡散手段)として、特別な熱源を使用することなく常温域のトレーサー微粒子を含む微小な液体12を発生させる超音波加湿器15の他に、水をヒーターで加熱して蒸発させ、その水蒸気をファンを利用して空気中(室11内)に拡散させるスチーム式(加熱式)加湿器、このスチーム式と超音波式とを組み合わせたハイブリッド式加湿器、又、水を含ませたフィルターにヒーターとファンで作った温風を通気して水分を気化させ、水蒸気を空気中(室11内)に拡散させる加熱気化式加湿器、水を含ませたフィルターにファンで作った風を通気して水を蒸発させ、水蒸気を空気中(室11内)に拡散させる気化式加湿器を使用することもできる。
【0042】
図1では、室11(空気齢を測定する実在の室)の内部に複数台の超音波加湿器15が設置されている。室11の内部における超音波加湿器15の設置個所は、室11の風上側の箇所と空気齢が悪くなると予想される箇所に配置される。尚、
図1では、室11に複数台の超音波加湿器15が設置されているが、室11における超音波加湿器15の設置数や設置個所に特に限定はなく、室11の容積や室11の間取り等によって設置数や設置個所を決定する。又、室11の内部に超音波加湿器15が1台のみ設置されていてもよい。
【0043】
それら超音波加湿器15には、例えば、加湿器識別番号(加湿器識別子)が設定され、その加湿器識別番号が後記するコンピュータのハードディスクに記憶されている。加湿器識別番号(加湿器識別子)は、各超音波加湿器15の固体識別番号又は型式番号が用いられる他、コンピュータが各超音波加湿器15毎のユニークな識別子を生成し、生成した識別子を加湿器識別番号とすることができる。
【0044】
超音波加湿器15やスチーム式加湿器、ハイブリッド式加湿器、気化式加湿器に使用する液体は、人に親和性のある水道水が使用されている(場合によりHEPAフィルタの試験に使用されるPAO、あるいは食塩水を使用してもよい)。空気齢測定方法(空気齢測定システム10)は、トレーサー拡散工程(トレーサー拡散手段)として超音波加湿器15や他の加湿器を利用することで、加湿器を室11の内部に設置すればよく、加湿器を利用して室11の内部全域に微小な液体12を容易に拡散させることができ、微小な液体12の拡散に伴ってトレーサー微粒子を室11の内部全域に容易に拡散させることができる。空気齢測定方法(空気齢測定システム10)は、加湿器に使用する水として水道水を使用するから、特別な水溶液を用意する必要はなく、水道管から水道水を加湿器に給水すればよく、空気齢測定システム10の簡略化及び低コスト化を図ることができる。
【0045】
トレーサー濃度判定工程(トレーサー濃度判定手段)は、室11内(空間)おけるトレーサー微粒子(トレーサー)の濃度分布が定常状態(それ以上室11内にトレーサー微粒子が拡散できない飽和状態)であるかを判定する。トレーサー濃度判定工程(トレーサー濃度判定手段)には、後記する光散乱方式気中パーティクルカウンター16(微粒子計測機)又はPM2.5自動測定装置17、コンピュータが利用される。
【0046】
コンピュータは、光散乱方式気中パーティクルカウンター16が計測したトレーサー微粒子の計測個数データ(計測数値データ)が時間経過による上昇値の変化量が十分に0に近くなったと判断したら室11内(空間)おけるトレーサー微粒子の濃度分布が定常状態であると判断する。
【0047】
又、コンピュータは、PM2.5自動測定装置17が計測したトレーサー微粒子の測定濃度データ(測定数値データ)が時間経過による上昇値の変化量が十分に0に近くなったと判断したら室11内(空間)おけるトレーサー微粒子の濃度分布が定常状態であると判断する。
【0048】
トレーサー計測工程(トレーサー計測手段)は、室11(空間)に拡散したトレーサー微粒子の数値データ(個数データ又は濃度データ)を計測する。トレーサー計測工程(トレーサー計測手段)には、超音波加湿器15(又は他の加湿器)(拡散手段)によって拡散した室11(空間)のトレーサー微粒子の粒径を含む計測レンジを有する光散乱方式気中パーティクルカウンター16(微粒子計測機)が使用されている。又、トレーサー計測工程(トレーサー計測手段)には、超音波加湿器15(又は他の加湿器)(拡散手段)によって拡散した室11(空間)のトレーサー微粒子の粒径を含む計測レンジを有するPM2.5測定器17が使用されている。
【0049】
トレーサー計測工程(トレーサー計測手段)では、トレーサー拡散工程(トレーサー拡散手段)によってトレーサー微粒子を含む微小な液体12を室11の内部(空間)に拡散させ、トレーサー濃度判定工程(トレーサー濃度判定手段)によって室11内(空間)おけるトレーサー微粒子の濃度分布が定常状態であると判断した場合、超音波加湿器15(トレーサー拡散工程(トレーサー拡散手段))を停止させてから所定の測定時間の間にトレーサー微粒子の数値データ(個数データ又は濃度データ)を計測する。
【0050】
光散乱方式気中パーティクルカウンター16は、インレットノズルから室11内の空気を取り込み、取り込んだ空気にレーザー光を照射する。室11の空気中に含まれる(空間に浮遊する)トレーサー微粒子にレーザー光が当たることで光を散乱する。 その散乱光をフォトダイオードで検知し、電気信号に変換してトレーサー微粒子の個数(個数データ)を計測する。 電圧から粒子のサイズを割り出すことができ、波形の数から室11の空気中のトレーサー微粒子の個数(個/m3)を計測することができる。
【0051】
トレーサー計測工程(トレーサー計測手段)では、光散乱方式気中パーティクルカウンター16の他に、光遮断方式のパーティクルカウンターを使用することができる。光遮断方式のパーティクルカウンターは、光源と受光素子を対面させ、光を電気信号に変換する。その光を室11の空気中に含まれる(空間に浮遊する)トレーサー微粒子が通過すると、受光素子が受ける光が弱くなる。電気信号の減衰量がトレーサー微粒子の粒径となり、光が遮られた回数がトレーサー微粒子の個数データ(個/m3)となる。
【0052】
PM2.5測定器17には、PM2.5自動測定装置17が使用されている。PM2.5自動測定装置17は、パーティクルカウンター16と同様に光散乱式ながら相対的に安価で測定レンジがシンプルで狭い。PM2.5自動測定装置17は、ポンプによって吸引した粒子をインパクターを用いて分級した後に、分級した粒子に光を照射した際の光散乱の強度を用いて重量濃度を算出する光散乱法を採用している。又組み合わせの方式として、分級した粒子をa紙上に捕集し、捕集した粒子にb線を当てb線の透過量より重量濃度を算出するb線吸収法によってPM2.5の重量濃度を算出している。
【0053】
インパクターでは、外部から吸引された粒子が選択された4種類のインパクター(PM1、PM2.5、PM4、PM10)によって捕集効率50%にて分級される。分級後、吸引口から内部に入った粒子は、その流量の1/3がHEPAフィルターを通してシースエアーとして利用され、それ以外の粒子は検出器へ送られる。シースエアーは測定される粒子を含んだエアーを覆うようにして検出器へ入る。シースエアーによって検出器が保護されることにより、安定した精度を確保する。
【0054】
検出器に入った粒子はレーザーを通過し、その際に散乱した散乱光がフォトディテクターに検出される。 散乱光強度は、粒子濃度、粒径分布、屈折率、形状等に依存し、フォトディテクターからの信号は瞬時に重 量濃度に変換された後、内部のロガーに保存(記憶)される。 検出後の粒子は、グラヴィメトリックフィルターに捕集され、重量や成分の測定に用いられる。尚、校正係数を用いて測定結果をより精度の高い値に近づけている。
【0055】
図1では、室11の内部に複数台の光散乱方式気中パーティクルカウンター16又は複数台のPM2.5自動測定装置17が設置されている。尚、室11における光散乱方式気中パーティクルカウンター16又はPM2.5自動測定装置17の設置台数や設置個所に特に限定はなく、室11の容積やや室11の間取り等によって設置台数や設置個所を決定する。又、室11の内部の排気口近傍14(出口近傍)に光散乱方式気中パーティクルカウンター16又はPM2.5自動測定装置17が1台のみ設置されていてもよい。
【0056】
それら光散乱方式気中パーティクルカウンター16又はそれらPM2.5自動測定装置17には測定器識別番号(加湿器識別子)が設定され、その測定器識別番号がコンピュータのハードディスクに記憶されている。測定器識別番号(加湿器識別子)は、各光散乱方式気中パーティクルカウンター16又は各PM2.5自動測定装置17の固体識別番号又は型式番号が用いられる他、コンピュータが各光散乱方式気中パーティクルカウンター16毎又は各PM2.5自動測定装置17毎のユニークな識別子を生成し、生成した識別子を測定器識別番号とすることができる。
【0057】
空気齢測定システム10(空気齢測定方法)は、光散乱方式気中パーティクルカウンター16又はPM2.5自動測定装置17(PM2.5測定器)を使用して室11内の空気中に含まれる(空間に浮遊する)トレーサー微粒子の数値データ(個数データ又は濃度データ)を測定するから、光散乱方式気中パーティクルカウンター16又はPM2.5自動測定装置17によって室11内の空気中に含まれるトレーサー微粒子の数値データを正確に測定することができ、室11(空間)の正確な空気齢を測定することができる。
【0058】
空気齢測定工程(空気齢測定手段)では、トレーサー計測工程(トレーサー計測手段)(光散乱方式気中パーティクルカウンター16又はPM2.5自動測定装置17)によって計測された
図1の換気系の室11の内部の空気中に含まれるトレーサー微粒子(トレーサー)に関する数値データ(個数データ又は濃度データ)に基づいて室11(空間)の各測定ポイント18における空気齢を測定する。空気齢測定工程(空気齢測定手段)では、光散乱方式気中パーティクルカウンター16又はPM2.5自動測定装置17(トレーサー計測工程(トレーサー計測手段))によって計測されたトレーサー微粒子(トレーサー)の時間の経過による数値データの減衰状況からコンピュータが
図1の換気系の室11(空間)の各測定ポイント18における空気齢を算出する。
【0059】
空気齢測定工程(空気齢測定手段)による空気齢の算出には、コンピュータ(図示せず)が使用されている。コンピュータには、中央処理部(CPU又はMPU)とメモリ(メインメモリ及びキャッシュメモリ)とを備えて大容量ハードディスクを内蔵し、独立したオペレーティングシステム(OS)によって動作する物理的なコンピュータが使用される。物理的なコンピュータには、ディススプレイやタッチパネル、キーボード、マウス等の入出力装置が接続されている。
【0060】
尚、空気齢測定工程(空気齢測定手段)による空気齢の算出にクラウドを使用することもできる。クラウドには、Infrastructure as a Service(IaaS)、Platform as a Service(PaaS)、Software as a Service(SaaS)を利用することができる。クラウドを利用することで、クラウドサービスプラットフォームからインターネット経由でITリソースをオンデマンドで利用することができる。クラウドは、仮想CPU又は仮想MPU(中央処理部)と仮想メインメモリ及び仮想キャッシュメモリ(仮想メモリ)とを有して独立したオペレーティングシステム(仮想OS)によって動作する仮想コンピュータであり、大容量仮想記憶領域が生成されている。
【0061】
コンピュータには、室11の制御ユニット、超音波加湿器15の制御部、光散乱方式気中パーティクルカウンター16の制御部又はPM2.5自動測定装置17の制御部が信号線(有線又は無線)を介して接続されている。コンピュータのメモリには、空気齢を算出するアプリケーションがインストールされている。空気齢の算出は、濃度減衰法(ステップダウン法)の以下に示す既存の算出式によって算出される。空気齢の算出式の一例は以下のとおりである。
【0062】
空気齢の算出式:
【0063】
【数1】
:局所平均空気齢「s」、C
p(t):減衰開始 t 秒後での室11内(空間)におけるトレーサー微粒子の個数データ「個/m
3」又は減衰開始 t 秒後での室11内(空間)におけるトレーサー微粒子の重量濃度「μg/m
3」、C
p(0):減衰開始時点での室11内(空間)のトレーサー微粒子の個数データ「個/m
3」又は減衰開始時点での室11内(空間)のトレーサー微粒子の初期重量濃度「μg/m
3」、C
o:トレーサー微粒子散布前の室11内(空間)のトレーサー微粒子の初期個数データ「個/m
3」又はトレーサー微粒子散布前の室11内(空間)のトレーサー微粒子の初期重量濃度「μg/m
3」。
【0064】
尚、コンピュータは、室11の排気口近傍14(出口近傍)に設置された光散乱式パーティクルカウンター16又はPM2.5自動測定装置17によって計測された数値データに基づいて算出した空気齢から室11における換気回数を算出する。換気回数は、以下に示す既存の算出式によって算出される。換気回数の算出式は、コンピュータのメモリに記憶されている。算出式の一例は以下のとおりである。
【0065】
【数2】
:室11の換気回数「回/s」、
:室11の排気口近傍14(出口近傍)の局所平均空気齢「s」。
【0066】
図2は、換気系の室11において空気齢を算出する手順の一例を説明する図であり、
図3は、
図2から続く空気齢を算出する手順を説明する図である。
図4は、
図3から続く空気齢を算出する手順を説明する図であり、
図5は、
図4から続く空気齢を算出する手順を説明する図である。
図6は、空気齢測定手法である濃度減衰法を説明する図である。
図2は、トレーサー拡散工程(トレーサー拡散手段)を示し、
図3は、トレーサー濃度判定工程(トレーサー濃度判定手段)を示す。
図4は、トレーサー計測工程(トレーサー計測手段)を示し、
図5は、空気齢算出工程(空気齢算出手段)を示す。
【0067】
空気齢測定方法(空気齢測定システム10)における濃度減衰法では、トレーサー微粒子を室11内(空間)に拡散させて室11おけるトレーサー微粒子の濃度分布が定常状態になった場合、トレーサーの拡散を停止し、時間の経過によるトレーサー微粒子の個数データ又は濃度データの減衰を測定する。尚、
図1に示すように、室11の内部に複数台の超音波加湿器15が設置されているとともに、複数台の光散乱方式気中パーティクルカウンター16又は複数台のPM2.5自動測定装置17が設置されている。それら超音波加湿器15のタンクには水道水がフルレンジで給水されている。
【0068】
以下、一例としてコンピュータ処理とユーザーによる入出力処理について説明する。コンピュータのハードディスクには、
図1の室11(空間)の容積「m3」、室11(空間)からの空調空気の換気風量「m3/s」、1台の超音波加湿器15から発生するトレーサー微粒子を含む微小な液体12の発生量「m3/s」、室11(空間)に設置した超音波加湿器15の設置台数及び加湿器識別番号、室11(空間)に設置した光散乱方式気中パーティクルカウンター16又はPM2.5自動測定装置17の設置台数、光散乱方式気中パーティクルカウンター16又はPM2.5自動測定装置17の測定器識別番号が室11の室特定識別番号(室特定識別子)に関連付けられた状態で記憶されている。
【0069】
室11(空間)の容積や室11(空間)からの空調空気の換気風量、超音波加湿器15から発生するトレーサー微粒子を含む微小な液体12の発生量、超音波加湿器15の設置台数、光散乱方式気中パーティクルカウンター16又はPM2.5自動測定装置17の設置台数は、タッチパネルやキーボード、マウス等の入力装置によってコンピュータに入力し、それらを適宜変更することができる。
【0070】
ディスプレイやタッチパネルに出力(表示)されたコンピュータの起動画面(図示せず)には、空気齢を算出するアプリケーションを示すアイコンが出力(表示)されている。そのアイコンをクリック(タップ)すると、ディスプレイやタッチパネルには、空気齢算出のための条件設定画面(図示せず)が出力(表示)される。条件設定画面には、測定開始ボタン、室サンプル画像作成ボタン、数値入力ボタン、キャンセルボタンが出力(表示)される。キャンセルボタンをクリック(タップ)すると、アプリケーションが終了する(以下のキャンセルボタンも同様)。既に室サンプル画像が作成されているとともに各数値が設定されている場合は、測定開始ボタンをクリック(タップ)することで、空気齢や換気回数の測定を開始することができる。
【0071】
コンピュータを利用して室サンプル画像を作成するには、室サンプル画像作成ボタンをクリック(タップ)する。室サンプル画像作成ボタンをクリック(タップ)すると、室サンプル画像作成画面(図示せず)がディスプレイやタッチパネルに出力(表示)される。室サンプル画像作成画面には、室サンプル画像作成エリア、サンプル確定ボタン、クリアボタン、キャンセルボタンが出力(表示)される。タッチパネルやキーボード、マウスを利用し、室サンプル画像作成エリアにおいて
図1に示す換気系の室11を自由にアレンジした任意の間取りの各種複数の室サンプル画像を作成する。尚、クリアボタンをクリック(タップ)すると、作成した室サンプル画像がクリアされる。
【0072】
室サンプル画像を作成した後、サンプル確定ボタンをクリック(タップ)すると、コンピュータの中央処理部(CPU又はMPU)は、作成された室サンプル画像を識別するユニークな室特定識別番号(室特定識別子)を生成し、作成した室サンプル画像を室特定識別番号(室特定識別子)及び作成日時に関連付けた状態でハードディスクに記憶する。室特定識別番号(室特定識別子)は、後記する室サンプル画像を作成する度毎にコンピュータの中央処理部が各室毎(各室サンプル画像毎)のユニークな室特定識別子を生成し、生成した室特定識別子を室特定識別番号とする。空気齢測定方法(空気齢測定システム10)は、タッチパネルやキーボード、マウスを利用し、実在する室を模擬した
図1に示す換気系の室11を自由にアレンジした任意の間取りの各種複数の室サンプル画像を作成することができる。
【0073】
室サンプル画像をハードディスクに記憶した後、コンピュータは、トレーサー発生・測定ポイント設定画面(図示せず)をディスプレイ又はタッチパネルに出力(表示)する。トレーサー発生・測定ポイント設定画面には、
図1に示す換気系の室11の室サンプル画像の室サンプル画像を表わす各種複数の室サンプル画像(室サンプル上面画像)、設定確定ボタン、クリアボタン、キャンセルボタンが出力(表示)される。
【0074】
トレーサー発生・測定ポイント設定画面において各種複数の室サンプル画像から所定の室サンプル画像を選択した後、タッチパネルやキーボード、マウスを利用し、ドラッグアンドドロップによって室サンプル画像の任意の箇所(トレーサー発生点)に複数台の超音波加湿器15(トレーサー微粒子発生点)を張り付け(表示し)、室サンプル画像の任意の箇所(判定点)に複数台の光散乱方式気中パーティクルカウンター16(トレーサー微粒子測定ポイント18)又は複数台のPM2.5自動測定装置17(トレーサー微粒子測定ポイント18)を張り付ける(表示する)。クリアボタンをクリック(タップ)すると、張り付けた超音波加湿器15や光散乱方式気中パーティクルカウンター16又はPM2.5自動測定装置17がクリアされる。
【0075】
空気齢測定方法(空気齢測定システム10)は、タッチパネルやキーボード、マウスを利用し、
図1に示す換気系の室11の室サンプル画像の任意の箇所(トレーサー発生点)に複数台の超音波加湿器15(トレーサー微粒子発生源)を自由に張り付けることができ(自由に表示することができ)、
図1に示す換気系の室11の室サンプル画像の任意の箇所(判定点)に複数台の光散乱方式気中パーティクルカウンター16(トレーサー微粒子測定ポイント18)又は複数台のPM2.5自動測定装置17(トレーサー微粒子測定ポイント18)を自由に張り付けることができる(自由に表示することができる)。
【0076】
尚、
図1に示す換気系の室11の室サンプル画像に張り付けられたそれら超音波加湿器15の位置は、実際の室11に設置された超音波加湿器15の位置に相当し、
図1に示す換気系の室11の室サンプル画像に張り付けられたそれら光散乱方式気中パーティクルカウンター16又はそれらPM2.5自動測定装置17は、実際の室11に設置された光散乱方式気中パーティクルカウンター16又はPM2.5自動測定装置17の位置に相当する。
【0077】
トレーサー発生・測定ポイント設定画面において配置確定ボタンをクリック(タップ)すると、コンピュータは、張り付けた超音波加湿器15、光散乱方式気中パーティクルカウンター16又はPM2.5自動測定装置17を張り付けた状態の室11の室サンプル画像を室特定識別番号(室特定識別子)及び貼付け日時に関連付けた状態でハードディスクに記憶する。
【0078】
空気齢測定方法及び空気齢測定システムは、室11(空間)の所定寸法離間した位置における複数の箇所(判定点)において室11におけるトレーサー微粒子(トレーサー)の濃度分布が定常状態であるかを判定するから、室11(空間)全域におけるトレーサー微粒子の濃度分布を精度よく測定することができ、室11におけるトレーサー微粒子の濃度分布の定常状態を正確に判定することができる。
【0079】
空気齢測定方法及び空気齢測定システムは、室11(空間)の所定寸法離間した位置における複数の箇所(トレーサー発生点)から室11内にトレーサー微粒子(トレーサー)を拡散させるから、室11(空間)全域にトレーサー微粒子を速やかに拡散させることができ、換気運転を継続しつつ室11におけるトレーサー微粒子の濃度分布を定常状態にすることができる。
【0080】
次に、コンピュータは、数値入力画面(図示せず)をディスプレイ又はタッチパネルに出力(表示)する。数値入力画面には、室11(空間)からの空調空気の換気風量(室11の実際の換気風量)を入力する換気風量入力エリア、超音波加湿器15の設置台数を入力する加湿器設置台数入力エリア、超音波加湿器15の液体12の発生量(超音波加湿器15の実際の液体12の発生量)を入力する発生量入力エリア、室11の容積を入力する室容積入力エリア、光散乱方式気中パーティクルカウンター16又はPM2.5自動測定装置17の設置台数を入力する測定ポイント入力エリア、数値確定ボタン、クリアボタン、キャンセルボタンが出力(表示)される。クリアボタンをクリック(タップ)すると、各入力エリアに入力された数値がクリアされる。
【0081】
室サンプル画像の任意の箇所に超音波加湿器15を張り付けるとともに光散乱方式気中パーティクルカウンター16又はPM2.5自動測定装置17を張り付け、各数値入力エリアに室11からの換気風量を入力し、加湿器設置台数入力エリアに超音波加湿器15の設置台数を入力する。更に、発生量入力エリアに超音波加湿器15の液体12の発生量を入力し、室容積入力エリアに室11の容積を入力し、光散乱方式気中パーティクルカウンター16又はPM2.5自動測定装置17の設置台数を入力する。
【0082】
各入力エリアに必要項目を入力した後、数値確定ボタンをクリック(タップ)すると、コンピュータは、張り付けられた超音波加湿器15(加湿器識別番号)、光散乱方式気中パーティクルカウンター16又はPM2.5自動測定装置17(測定器識別番号)、入力されたそれら数値を室特定識別番号(室特定識別子)及び入力日時に関連付けた状態でハードディスクに記憶する。尚、室11からの換気風量よりも超音波加湿器15の設置台数×超音波加湿器15の液体12の発生量が多くなる。
【0083】
張り付けられた超音波加湿器15(加湿器識別番号)、張り付けられた光散乱方式気中パーティクルカウンター16又はPM2.5自動測定装置17(測定器識別番号)、測定開始ボタン、キャンセルボタン、クリアボタンをディスプレイ又はタッチパネルに出力(表示)する。ディスプレイ又はタッチパネルに出力された測定開始ボタンをクリック(タップ)すると、コンピュータは、
図1の室11の各測定ポイント18における空気齢を測定するとともに、
図1の室11の換気回数の測定を開始する。
【0084】
以下、空気齢測定の具体的手法を例示する。コンピュータは、室11の制御ユニットに換気継続信号を送信し、それら超音波加湿器15(実際の室11に設置された超音波加湿器15)の制御部に起動信号を送信するとともに、それら光散乱方式気中パーティクルカウンター16の制御部又はそれらPM2.5自動測定装置17の制御部に起動信号を送信する。換気継続信号を受信した室11の制御ユニットは、給気ファンや排気ファン、空調機の稼働を継続させる。給気ファンや排気ファン、空調機の稼働が継続することで、空調機によって作られた空調空気(外気)が給気ファンによって室11に給気(流入)され、排気ファンによって室11内の空調空気が外部へ排気(流出)され、換気運転が継続して室11の内部に空気が通流し、室11(空間)の空気が換気される(空気換気工程(空気換気手段))。
【0085】
起動信号を受信した超音波加湿器15の制御部は、超音波加湿器15を起動させる。超音波加湿器15の超音波振動子が超音波(振動)を発生させ、その振動によって超音波加湿器15からトレーサー微粒子を含む微小な液体12が連続して放出される。トレーサー微粒子を含む微小な液体12は、
図2に示すように、室11(空間)の空気中に次第に拡散する(トレーサー拡散工程(トレーサー拡散手段))。
【0086】
トレーサー拡散工程(トレーサー拡散手段)では、空気換気工程(空気換気手段)によって室11内(空間)を換気した状態で室11内にトレーサー微粒子を含む微小な液体12を拡散させる。トレーサー拡散工程(トレーサー拡散手段)では、室11(空間)の所定寸法離間した位置における複数個所に配置された複数の超音波加湿器15(トレーサー発生点)から室11内にトレーサー微粒子を含む微小な液体12(トレーサー)を拡散させる。
【0087】
尚、室11の定常濃度が高くなるように、超音波加湿器15の設置台数、超音波加湿器15のトレーサー発生量を調整し、トレーサー拡散工程(トレーサー拡散手段)におけるトレーサー微粒子を含む微小な液体12(トレーサー)の発生量が調整され、室11内におけるトレーサー微粒子(トレーサー)の濃度分布が定常状態になるまでトレーサー拡散工程(トレーサー拡散手段)によって室11内にトレーサー微粒子を含む微小な液体12(トレーサー)を発生させる。
【0088】
空気齢測定方法及び空気齢測定システム10は、室11の定常濃度が高くなるように、超音波加湿器15の設置台数、超音波加湿器15のトレーサー発生量を調整し、室11(空間)におけるトレーサーの濃度分布が定常状態になるまで室11にトレーサーを発生させるから、空間におけるトレーサーの濃度分布を確実に定常状態にすることができ、室11におけるトレーサーの濃度分布を定常状態にするために室11の換気運転を一時停止させる必要はない。
【0089】
起動信号を受信したそれら光散乱方式気中パーティクルカウンター16の制御部又はそれらPM2.5自動測定装置17の制御部は、それら光散乱方式気中パーティクルカウンター16又はそれらPM2.5自動測定装置17を起動させる。それら光散乱方式気中パーティクルカウンター16は、超音波加湿器15(トレーサー拡散工程(トレーサー拡散手段))が起動する前から
図1の室11内に拡散したトレーサー微粒子の個数データ(数値データ)の計測を開始する。又は、それらPM2.5自動測定装置17は、超音波加湿器15(トレーサー拡散工程(トレーサー拡散手段))が起動する前から
図1の室11内に拡散したトレーサー微粒子の重量濃度データ(数値データ)の計測を開始する。
【0090】
それら光散乱方式気中パーティクルカウンター16の制御部は、光散乱方式気中パーティクルカウンター16が計測した室11内のトレーサー微粒子の個数データ(数値データ)をコンピュータに時系列に連続して送信する。光散乱方式気中パーティクルカウンター16の制御部がトレーサー微粒子の個数データ(数値データ)を所定の時間間隔でコンピュータに送信する場合もある。それらPM2.5自動測定装置17の制御部は、PM2.5自動測定装置17が計測した室11内のトレーサー微粒子の重量濃度データ(数値データ)をコンピュータに時系列に連続して送信する。PM2.5自動測定装置17の制御部がトレーサー微粒子の重量濃度データ(数値データ)を所定の時間間隔でコンピュータに送信する場合もある。
【0091】
コンピュータの中央処理部は、それら超音波加湿器15から微小な液体12の放出が開始されてから光散乱方式気中パーティクルカウンター16が計測したトレーサー微粒子の計測個数データ(計測数値データ)「個/m3」について時間経過による上昇値の変化量が十分に0に近くなったと判断したら定常状態と判定する(トレーサー濃度判定工程(トレーサー濃度判定手段))。
【0092】
又は、コンピュータの中央処理部は、それら超音波加湿器15から微小な液体12の放出が開始されてからPM2.5自動測定装置17が計測したトレーサー微粒子の計測濃度データ(計測数値データ)「μg/m3」について時間経過による上昇値の変化量が十分に0に近くなったと判断したら定常状態と判定する(トレーサー濃度判定工程(トレーサー濃度判定手段))。
【0093】
コンピュータの中央処理部は、トレーサー濃度判定工程(トレーサー濃度判定手段)によって計測数値データが定常数値データ状態になったと判定した場合、それら超音波加湿器15の制御部に停止信号を送信するとともに、それら光散乱方式気中パーティクルカウンター16の制御部又はそれらPM2.5自動測定装置17の制御部に計測継続信号を送信する。更に、室11の制御ユニットに換気継続信号を送信する。
【0094】
図3に示すように、トレーサー微粒子(トレーサー)が室11の内部にて定常状態のなか、停止信号を受信した超音波加湿器15の制御部は、超音波加湿器15を停止させる。
【0095】
換気継続信号を受信した室11の制御ユニットは、給気ファンや排気ファン、空調機の稼働を継続させる。給気ファンや排気ファン、空調機の稼働が継続することで、空調機によって作られた空調空気(外気)が給気ファンによって室11に給気(流入)され、排気ファンによって室11内の空調空気が外部へ排気(流出)され、換気運転が継続して室11の内部に空気が通流し、室11(空間)の空気が換気される(空気換気工程(空気換気手段))。
【0096】
計測継続信号を受信したそれら光散乱方式気中パーティクルカウンター16の制御部は、超音波加湿器15(トレーサー拡散工程(トレーサー拡散手段))が停止した直後に、それら光散乱方式気中パーティクルカウンター16による室11内(空間)のトレーサー微粒子(トレーサー)の計測個数データ(計測数値データ)の計測を空気齢の算出のための計測として継続する(トレーサー計測工程(トレーサー計測手段))。それら光散乱方式気中パーティクルカウンター16の制御部は、各光散乱方式気中パーティクルカウンター16が計測した室11内(空間)のトレーサー微粒子の計測個数データをコンピュータに時系列に連続して送信する。
【0097】
計測継続信号を受信したそれらPM2.5自動測定装置17の制御部は、超音波加湿器15(トレーサー拡散工程(トレーサー拡散手段))が停止した直後に、それらPM2.5自動測定装置17による室11内(空間)のトレーサー微粒子トレーサーの計測濃度データ(計測数値データ)の計測を空気齢の算出のための計測として継続し(トレーサー計測工程(トレーサー計測手段))、それらPM2.5自動測定装置17が計測した室11内(空間)のトレーサー微粒子の計測濃度データをコンピュータに時系列に連続して送信する。
【0098】
空調機、給気ファン、排気ファンの稼働によって換気運転が継続し、空調機によって空調された空気(外気)が給気ファン(給気手段)によって室11の内部に給気され、排気ファン(排気手段)によって室11内の空気が外部に排気されているから、
図4に示すように、室11内のトレーサー微粒子の濃度が次第に低下する。従って、それら光散乱方式気中パーティクルカウンター16によって計測されるトレーサー微粒子の計測個数データ「個/m3」が時間の経過に伴って次第に減少し、又は、それらPM2.5自動測定装置17によって計測されるトレーサー微粒子の計測濃度データ「μg/m3」が時間の経過に伴って次第に減少する。
【0099】
コンピュータの中央処理部は、それら光散乱方式気中パーティクルカウンター17の制御部から送信された室11(空間)の内部のトレーサー微粒子の計測個数データが0(トレーサー微粒子の計測個数データが外気のそれと同一)になった場合、又は、それらPM2.5自動測定装置17の制御部から送信された室11(空間)の内部のトレーサー微粒子の計測濃度データが0(トレーサー微粒子の計測濃度データが外気のそれと同一)になった場合、それら光散乱方式気中パーティクルカウンター16の制御部又はそれらPM2.5自動測定装置17の制御部に停止信号(測定停止信号)を送信する。停止信号を受信したそれら光散乱方式気中パーティクルカウンター16の制御部の制御部は、各光散乱方式気中パーティクルカウンター16の起動を停止させる。停止信号を受信したそれらPM2.5自動測定装置17の制御部は、各PM2.5自動測定装置17の起動を停止させる。
【0100】
コンピュータの中央処理部は、
図4に示すように、
図1の室11(空間)におけるトレーサー微粒子の時間の経過による数値データの減衰状況(トレーサー微粒子が室11の略全域に拡散した定常状態からトレーサー微粒子の計測個数データ又は計測濃度データが0になるまでの減衰状況)から既述の空気齢の算出式を利用して室11(空間)の各測定ポイント18における空気齢を算出する(空気齢算出工程(空気齢算出手段))。更に、コンピュータの中央処理部は、
図1の室11の排気口近傍14に設置された光散乱方式気中パーティクルカウンター16計測個数データ又はPM2.5自動測定装置17によって計測された計測濃度データに基づいて算出した空気齢から既述の換気回数の算出式を利用して室11における換気回数を算出する(換気回数算出工程(換気回数算出手段))。
【0101】
コンピュータは、空気齢算出工程(空気齢算出手段)によって算出した室11(空間)の各測定ポイント18における空気齢を各光散乱方式気中パーティクルカウンター16の測定器識別番号又は各PM2.5自動測定装置17の測定器識別番号、室特定識別番号、算出日時に関連付けた状態でハードディスクに記憶する。コンピュータは、換気回数算出工程(換気回数算出手段)によって算出した室11の換気回数を室特定識別番号、算出日時に関連付けた状態でハードディスクに記憶する。
【0102】
空気齢を算出するとともに換気回数を算出した後、コンピュータは、空気齢及び換気回数出力画面(図示せず)をディスプレイ又はタッチパネルに出力(表示)する。空気齢及び換気回数出力画面には、
図1の室11の室サンプル画像に出力(表示)された各光散乱方式気中パーティクルカウンター16(トレーサー微粒子測定ポイント18)又は各PM2.5自動測定装置17(トレーサー微粒子測定ポイント18)の近傍にそのトレーサー微粒子測定ポイント18における空気齢を出力(表示)するとともに、換気回数表示エリアに換気回数を出力(表示)する。
【0103】
ディスプレイ又はタッチパネルに出力(表示)された各測定ポイント18(判定点)における空気齢を見ることで、室11における換気状態が良好な個所と、室11における換気状態が不良な個所を知ることができる。換気回数表示エリアに出力(表示)された換気回数を見ることで、室11における換気回数を知ることができる。
【0104】
空気齢測定方法及び空気齢測定システム10は、室11(空間)を換気した状態で室11の内部にトレーサー微粒子(トレーサー)を拡散させ、トレーサー微粒子を拡散させた室11におけるトレーサー微粒子の数値データ(濃度)を測定し、室11におけるトレーサー微粒子の濃度分布が定常状態であるかを判定し、室11におけるトレーサー微粒子の濃度分布が定常状態であると判定した場合、トレーサー微粒子の拡散を停止するとともに室11の換気を継続しつつ、室11に拡散したトレーサー微粒子の数値データを計測するとともに、トレーサー微粒子の拡散を停止してから室11におけるトレーサー微粒子の時間の経過による減衰状況に基づいて室11の空気齢を算出するから、換気系の室11におけるトレーサー微粒子の拡散時に室11に対する換気運転を一時停止させる必要はなく、換気運転を継続しつつ室11の空気齢を測定することができる。
【0105】
空気齢測定方法及び空気齢測定システム10は、換気運転の発停を所定のタイミングで行う必要はなく、換気運転の発停を行う手間を省いた状態で室11(空間)の空気齢を測定することができる。空気齢測定方法及び空気齢測定システム10は、トレーサー微粒子(トレーサー)の拡散を停止してから所定の測定時間の間にトレーサー微粒子の数値データを測定しつつ、トレーサー微粒子の時間の経過による数値データの減衰状況から室11(空間)における空気齢を算出するから、トレーサー微粒子を利用して室11の空気齢を精度よく測定することができる。
【0106】
空気齢測定方法及び空気齢測定システム10は、トレーサーとして微小な液体の拡散に伴って拡散するトレーサー微粒子を使用するから、室11の空気齢を確実かつ容易に測定することができる。空気齢測定方法及び空気齢測定システム10は、トレーサーとして微小な液体の拡散に伴って拡散するトレーサー微粒子を使用するから、室11(空間)の空気齢の算出が大掛かりになることはなく、簡易に室11の空気齢を算出することができる。
【0107】
空気齢測定方法及び空気齢測定システム10は、換気を継続しつつトレーサー微粒子(トレーサー)の拡散を停止してからトレーサー微粒子の数値データを測定する測定時間がトレーサー微粒子の数値データの減衰から数値データが0になるまでの時間であり、トレーサー微粒子の数値データを測定する測定時間をトレーサー微粒子の数値データの減衰から数値データが0になるまでの時間とすることで、トレーサー微粒子の濃度の減衰を正確に捉えることができ、室11(空間)の正確な空気齢を測定することができる。
【0108】
空気齢測定方法及び空気齢測定システム10は、超音波による振動エネルギーによってトレーサー微粒子(トレーサー)を含む微小な液体を発生させるから、特別な熱源を使用することなく常温のトレーサー微粒子を使用して室11(空間)の空気齢を確実かつ容易に測定することができる。空気齢測定システム及び空気齢測定システム10は、換気を継続しつつ超音波加湿器によってトレーサー微粒子を含む微小な液体を室11(空間)に拡散させ、トレーサー微粒子を含む微小な液体を室11に拡散させてトレーサー微粒子の濃度分布を定常状態にした後、超音波加湿器によるトレーサー微粒子の拡散を停止させてから所定の測定時間の間にトレーサー微粒子の数値データを測定し、室11におけるトレーサー微粒子の時間の経過による数値データの減衰状況から室11の空気齢を算出するから、室11における空気齢を速やかに測定することができる。
【0109】
空気齢測定方法及び空気齢測定システム10は、トレーサー微粒子(トレーサー)を含む微小な液体の拡散を停止させてから所定の測定時間の間に、光散乱方式のパーティクルカウンターを使用して室11(空間)におけるトレーサー微粒子の数値データを測定するから、パーティクルカウンターによってトレーサー微粒子の数値データを正確に測定することができ、室11の正確な空気齢を測定することができる。空気齢測定方法及び空気齢測定システム10は、パーティクルカウンターよりも測定レンジは狭いが、PM2.5と同等のサイズのトレーサー微粒子を正確に捉え、かつ相対的にシンプルな構成のPM2.5測定器を用いるから、PM2.5測定器によってトレーサー微粒子の数値データを正確に測定することができ、室11(空間)の正確な空気齢を測定することができる。
【符号の説明】
【0110】
10 空気齢測定システム
11 室
12 液体
13 給気ダクト
14 排気ダクト
15 超音波加湿器
16 光散乱方式気中パーティクルカウンター
17 PM2.5測定器
18 測定ポイント