IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 共和コンクリート工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-防御陣地用構造物 図1
  • 特開-防御陣地用構造物 図2
  • 特開-防御陣地用構造物 図3
  • 特開-防御陣地用構造物 図4
  • 特開-防御陣地用構造物 図5
  • 特開-防御陣地用構造物 図6
  • 特開-防御陣地用構造物 図7
  • 特開-防御陣地用構造物 図8
  • 特開-防御陣地用構造物 図9
  • 特開-防御陣地用構造物 図10
  • 特開-防御陣地用構造物 図11
  • 特開-防御陣地用構造物 図12
  • 特開-防御陣地用構造物 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025035247
(43)【公開日】2025-03-13
(54)【発明の名称】防御陣地用構造物
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/14 20060101AFI20250306BHJP
   E04B 2/20 20060101ALI20250306BHJP
   E04B 2/02 20060101ALI20250306BHJP
【FI】
E04H9/14 E
E04H9/14 Z
E04B2/20
E04B2/02 115Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023142167
(22)【出願日】2023-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000162216
【氏名又は名称】共和コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(74)【代理人】
【識別番号】100150773
【弁理士】
【氏名又は名称】加治 信貴
(72)【発明者】
【氏名】近藤 和仁
(72)【発明者】
【氏名】國嶋 典裕
(72)【発明者】
【氏名】大屋 英明
(72)【発明者】
【氏名】池田 誠司
【テーマコード(参考)】
2E139
【Fターム(参考)】
2E139AA25
2E139AA30
2E139AB24
(57)【要約】
【課題】ミサイルの爆風、ミサイルの破片の落下などに耐え得ることのできる堅固な防御陣地用構造物を提供する。
【解決手段】人や車両、あるいは補給品などを内部に収容して防護する役目を果たす防御陣地用構造物1であって、コンクリートブロック5を前後に向けて並べかつ上下に積み上げて築く左右の側壁2と、左右の側壁2の後端で、コンクリートブロック5を左右に向けて並べかつ上下に積み上げて築く背面壁3と、左右の側壁2の上部で、その側壁2間に架設する架設部材6を複数並べて形成する頂版4とからなり、左右の側壁2と背面壁3を築くコンクリートブロック5は、上面に十字状の突起部51を設けるとともに、下面に十字状の窪み部52を設け、コンクリートブロック5を上下に積み上げたとき、下側のコンクリートブロック5の上面の突起部51と、上側のコンクリートブロック5の下面の窪み部52とが嵌合する防御陣地用構造物1である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人や車両、あるいは補給品などを内部に収容して防護する役目を果たす防御陣地用構造物であって、
コンクリートブロックを前後に向けて並べかつ上下に積み上げて築く左右の側壁と、左右の側壁の後端で、コンクリートブロックを左右に向けて並べかつ上下に積み上げて築く背面壁と、左右の側壁の上部で、その側壁間に架設する架設部材を複数並べて形成する頂版とからなり、
左右の側壁と背面壁を築くコンクリートブロックは、上面に十字状の突起部を設けるとともに、下面に十字状の窪み部を設け、コンクリートブロックを上下に積み上げたとき、下側のコンクリートブロックの上面の突起部と、上側のコンクリートブロックの下面の窪み部とが嵌合することを特徴とする防御陣地用構造物。
【請求項2】
請求項1に記載された防御陣地用構造物において、
コンクリートブロックには、横方向に貫通するシース孔を設け、コンクリートブロックを前後または左右に並べたとき、前後または左右に並べたコンクリートブロックのシース孔にPC鋼材を挿入し、挿入したPC鋼材を緊張して前後または左右に並べたコンクリートブロックを連結する防御陣地用構造物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された防御陣地用構造物において、
頂版を形成する架設部材は、角型鋼管である防御陣地用構造物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載された防御陣地用構造物において、
頂版を形成する架設部材は、コンクリートブロックである防御陣地用構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自衛隊の隊員などの人や車両、あるいは補給品などを内部に収容して防護する役目を果たす防御陣地用構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の緊迫した国際情勢により、ミサイルなどの攻撃の脅威が高まっている。このような状況により、ミサイルの爆風、ミサイルの破片の落下などに耐え得ることのできる防御陣地用構造物の普及が急務である。この防御陣地用構造物とは、その内部に、例えば自衛隊の隊員などの人や車両、あるいは補給品などを収容し、収容した人や車両などをミサイルの爆風などから防護する役目を果たすものである。
【0003】
従来、防御陣地用構造物は、土砂や砕石などを内部に詰め込んで造った箱型土嚢を用いて構築することが知られている(特許文献1)。
箱型土嚢を用いた防御陣地用構造物は、金網によって箱型のかご枠を形成し、この箱型のかご枠の内部に、土砂や砕石などを詰め込んで箱型土嚢を造る。次に、土砂や砕石などを内部に詰め込んだ箱型土嚢を複数用意し、この箱型土嚢を前後に向けて並べるとともに上下に積み上げることで、左右の側壁を築く。また、左右の側壁の後端で、箱型土嚢を左右に向けて並べかつ上下に積み上げて背面壁を築く。続いて、左右の側壁の上部において、その側壁間に板材を架設して、その上に箱型土嚢を載置して頂版を形成する。これにより、左右の側壁、背面壁及び頂版に囲まれた空間を作り出し、この内側の空間に、自衛隊の隊員などの人や車両、あるいは補給品などを収容することができる。
【0004】
ここで、本明細書中において使用する用語、「前後」及び「左右」について説明する。
前後とは、防御陣地用構造物の奥行の方向での前と後である。なお、後述する本実施形態の中で示す図面では、前後方向を矢印Aで示す。
また、左右とは、防御陣地用構造物の幅方向での左と右である。なお、後述する本実施形態の中で示す図面では、左右方向を矢印Bで示す。
【0005】
ところで、防御陣地用構造物を構築するとき、複数の箱型土嚢を前後又は左右に並べるとともに上下に積み上げて左右の側壁又は背面壁を築くが、このときの前後又は左右あるいは上下に隣接する箱型土嚢同士の固定は、ワイヤケーブルを用いて隣接する金網からなるかご枠同士を結束することで、隣接する箱型土嚢同士を固定している。
【0006】
かかる従来の箱型土嚢を用いた防御陣地用構造物では、前後又は左右あるいは上下に隣接する箱型土嚢をワイヤケーブルで隣接するかご枠を結束して箱型土嚢同士を固定していたため、その固定部分が脆弱であった。そのため、ミサイル攻撃などによる衝撃、爆圧、爆風を受けると、箱型土嚢同士の固定部分が壊れて、前後又は左右に並べた箱型土嚢、あるいは上下に積み上げた箱型土嚢がずれたり、あるいは崩れたりすることがある。つまり、ミサイルの爆風、ミサイルの破片の落下などに耐え得ることができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-94120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、ミサイルの爆風、ミサイルの破片の落下などに耐え得ることのできる堅固な防御陣地用構造物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、人や車両、あるいは補給品などを内部に収容して防護する役目を果たす防御陣地用構造物であって、コンクリートブロックを前後に向けて並べかつ上下に積み上げて築く左右の側壁と、左右の側壁の後端で、コンクリートブロックを左右に向けて並べかつ上下に積み上げて築く背面壁と、左右の側壁の上部で、その側壁間に架設する架設部材を複数並べて形成する頂版とからなり、左右の側壁と背面壁を築くコンクリートブロックは、上面に十字状の突起部を設けるとともに、下面に十字状の窪み部を設け、コンクリートブロックを上下に積み上げたとき、下側のコンクリートブロックの上面の突起部と、上側のコンクリートブロックの下面の窪み部とが嵌合する防御陣地用構造物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、左右の側壁及び背面壁をコンクリートブロックを積み上げた構造にし、頂版を複数の架設部材を用いて形成した構造にするとともに、コンクリートブロック同士を強固に固定することで、防御陣地用構造物を堅固な構造物にすることができる。これにより、ミサイル攻撃などによる衝撃、爆圧、爆風を受けても、崩れたり壊れたりすることがなく、つまり、ミサイルの爆風、ミサイルの破片の落下などに耐え得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明による防御陣地用構造物の正面図である。
図2】本発明による防御陣地用構造物の側面図である。
図3】本発明による防御陣地用構造物の背面図である。
図4】コンクリートブロックを示す図であり、図4Aは、コンクリートブロックの正面図、図4Bは、コンクリートブロックの側面図である。
図5】コンクリートブロックを示す図であり、図5Aは、コンクリートブロックの平面図、図5Bは、コンクリートブロックの底面図である。
図6】別のコンクリートブロックを示す図であり、図6Aは、別のコンクリートブロックの正面図、図6Bは、別のコンクリートブロックの平面図である。
図7】別のコンクリートブロックを示す図であり、図7Aは、別のコンクリートブロックの正面図、図7Bは、別のコンクリートブロックの平面図である。
図8図8Aは、左右の側壁と背面壁において1段目のコンクリートブロックを並べたときの正面図、図8Bは、左右の側壁と背面壁において1段目のコンクリートブロックを並べたときの側面図である。
図9図9Aは、左右の側壁と背面壁において2段目のコンクリートブロックを積み上げたときの正面図、図9Bは、図9AのX部拡大図、図9Cは、左右の側壁と背面壁において2段目のコンクリートブロックを積み上げたときの側面図である。
図10図10Aは、左右の側壁間に角型鋼管を架設したときの正面図、図10Bは、左右の側壁間に角型鋼管を架設したときの側面図である。
図11】本発明による別の防御陣地用構造物の正面図である。
図12】本発明による別の防御陣地用構造物の側面図である。
図13】本発明による別の防御陣地用構造物の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の防御陣地用構造物の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る防御陣地用構造物は、例えば自衛隊の隊員などの人や車両、あるいは補給品などを内部に収容し、収容した人や車両、あるいは補給品などをミサイルの爆風などから防護する役目を果たすものである。
図1は、防御陣地用構造物1の正面図、図2は、防御陣地用構造物1の側面図、図3は、防御陣地用構造物1の背面図である。なお、図1では、図面を理解しやすいようにするため、後述する背面壁3のコンクリートブロック5を省略する。
【0013】
防御陣地用構造物1は、図1図2図3に示すように、複数のコンクリートブロック5を用いて築いた左右の側壁2及び背面壁3と、複数の架設部材6を用いて形成する頂版4とからなる。
【0014】
左右の側壁2は、図1図2に示すように、コンクリートブロック5を前後に向けて並べかつ上下に積み上げて築くもので、これを左右にそれぞれ配置する。また、コンクリートブロック5の積み上げは、上下のコンクリートブロック5を交互にずらして千鳥状に積み上げる。なお、コンクリートブロック5を千鳥状に積み上げたとき、その前後の端の部分には、横の長さが異なる(短い)コンクリートブロック5を配置して、側壁の前後の端部が上下に直線になるようにする。ただし、コンクリートブロック5の積み上げは、千鳥状に積み上げるものに限定されるものではない。
【0015】
背面壁3は、図3に示すように、左右の側壁2の後端において、コンクリートブロック5を左右に向けて並べかつ上下に積み上げて築くものである。また、この背面壁3でも、コンクリートブロック5の積み上げは、上下のコンクリートブロック5を交互にずらして千鳥状に積み上げる。なお、コンクリートブロック5を千鳥状に積み上げたとき、その左右の端の部分には、横の長さが異なる(短い)コンクリートブロック5を配置して、背面壁3の左右の端部が上下に直線になるようにする。ただし、コンクリートブロック5の積み上げは、千鳥状に積み上げるものに限定されるものではない。
【0016】
図4はコンクリートブロック5を示す図であり、図4Aは、コンクリートブロック5の正面図、図4Bは、コンクリートブロック5の側面図である。図5もコンクリートブロック5を示す図であり、図5Aは、コンクリートブロック5の平面図、図5Bは、コンクリートブロック5の底面図である。
左右の側壁2及び背面壁3に用いるコンクリートブロック5は、図4A図4B、及び図5A図5Bに示すように、前面5a、後面5b、上面5c、下面5d、2つの側面5eの6つの面からなる直方体で、横に長く伸びた形状である。なお、コンクリートブロック5の大きさは任意であり、左右の側壁2や背面壁3を築くとき、吊り上げて搬送できる大きさであればよい。
【0017】
コンクリートブロック5には、図4A図4B図5Aに示すように、その上面5cに十字状の突起部51を長手方向に4つ等間隔で設ける。これとともに、図4A図4B図5Bに示すように、下面5dに十字状の窪み部52も長手方向に4つ等間隔で設ける。この十字状の突起部51と十字状の窪み部52は、ほぼ同じ大きさ同じ形状で、コンクリートブロック5を上下に積み上げたとき、下側のコンクリートブロック5の上面5cの突起部51と、上側のコンクリートブロック5の下面5dの窪み部52とが嵌合することで、積み上げた上下のコンクリートブロック5同士を固定する。また、積み上げた上下のコンクリートブロック5には、図示しないが、連結金具をボルトにより上下のコンクリートブロック5に取り付ける。これによっても、上下のコンクリートブロック5同士を固定する。さらに、必要に応じて、前後または左右に並べたコンクリートブロック5に、図示しないが、連結金具をボルトにより前後または左右のコンクリートブロック5に取り付けることで、前後または左右に並べたコンクリートブロック5同士を固定することができる。
【0018】
また、コンクリートブロック5を積み上げたとき、その最上段に積み上げるコンクリートブロック5は、その上面5cに突起部51を設けない。この上面5cには、架設部材40をボルトで取り付けるためのボルト穴を複数設ける。
【0019】
また、前述した左右の側壁2及び背面壁3の端の部分に配置する横(長手方向)の長さが異なる(短い)コンクリートブロック5は、図6A図6Bに示すように、その横の長さを通常用いるコンクリートブロック5の横の長さの半分にし、また、上面5cと下面5dに設ける突起部51と窪み部52を2つにしている。
なお、コンクリートブロック5において、その大きさ、あるいは十字状の突起部51と十字状の窪み部52の数などは、前述のものに限定されるものではない。例えば、図7A図7Bに示すように、コンクリートブロック5の横の長さを異ならせ(短くし)、その上面5cと下面5dに設ける十字状の突起部51と十字状の窪み部52の数を3つにしてもよい。
【0020】
また、コンクリートブロック5には、横方向(コンクリートブロック5の長手方向)に貫通するシース孔53を2つ設ける。シース孔53は、コンクリートブロック5を前後または左右に並べたとき、このシース孔53にPC鋼材(図示せず)を挿入し、挿入したPC鋼材を緊張することで、前後または左右に並べたコンクリートブロック5を連結して固定する。なお、コンクリートブロック5に設けるシース孔53は2つに限定されるものではなく、1つあるいは3つ以上でもよい。
また、コンクリートブロック5には、図示していないが、その上面5cに吊り上げ用のフックを取り付けるフック取り付け穴を設け、このフック取り付け穴にフックを取り付けて、フックを介してワイヤーでコンクリートブロック5を吊り上げることができる。
【0021】
頂版4は、図1図2に示すように、左右の側壁2の上部で、その側壁2間に架設する架設部材6を複数並べて形成するものである。頂版4を形成する架設部材6は、角型鋼管61である。すなわち、この角型鋼管61を左右の側壁2の上部において前後に向けて複数並べて架設するもので、左右の側壁2の前端から後端さらに背面壁3の上まで架設する。角型鋼管61を左右の側壁2間に架設するとき、角型鋼管61は左右の側壁2の上部にボルト(図示せず)で固定する。
【0022】
また、左右の側壁2の上部において、前後に向けて並べて架設した角型鋼管61(架設部材6)の上に、土嚢7を載置する。土嚢7は、袋の中に土砂や砕石などを詰め込んだもので、複数の土嚢7を、前後に向けて並べて架設した角型鋼管61の上全体に載置する。ただし、土嚢7は必要に応じて角型鋼管61の上に載置するもので、土嚢7を載置しないこともある。
【0023】
このようにして、コンクリートブロック5を用いて築いた左右の側壁2及び背面壁3と、架設部材6を用いて形成する頂版4とにより構築した防御陣地用構造物1では、その前面が開口し、この開口した箇所より、自衛隊の隊員などの人や車両が出たり入ったり、あるいは補給品などを内部に入れたり内部より出したりすることができる。
【0024】
次に、防御陣地用構造物1の構築について説明する。
図8Aは、左右の側壁2と背面壁3において1段目のコンクリートブロック5を並べたときの正面図、図8Bは、左右の側壁2と背面壁3において1段目のコンクリートブロック5を並べたときの側面図である。図9Aは、左右の側壁2と背面壁3において2段目のコンクリートブロック5を積み上げたときの正面図、図9Bは、図9AのX部拡大図、図9Cは、左右の側壁2と背面壁3において2段目のコンクリートブロック5を積み上げたときの側面図である。図10Aは、左右の側壁2間に角型鋼管61を架設したときの正面図、図10Bは、左右の側壁2間に角型鋼管61を架設したときの側面図である。なお、図8A図9A図10Aでは、図面を理解しやすいようにするため、背面壁3のコンクリートブロック5を省略する。
【0025】
図8A図8Bに示すように、左右の側壁2の1段目のコンクリートブロック5を前後に向けて並べる。また同時に、背面壁3の1段目のコンクリートブロック5も左右に向けて並べる。
【0026】
続いて、前後または左右に並べた複数のコンクリートブロック5のシース孔53にPC鋼材54を挿入し、PC鋼材54を緊張して、並べたコンクリートブロック5を連結して固定する。これにより、左右の側壁2と背面壁3の1段目を築く。
【0027】
次に、図9A図9B図9Cに示すように、左右の側壁2の2段目のコンクリートブロック5を積み上げる。この積み上げでは、1段目と2段目のコンクリートブロック5を前後方向においてずらして千鳥状に積み上げる。また同時に、背面壁3の2段目のコンクリートブロック5を積み上げる。この積み上げでも、1段目と2段目のコンクリートブロック5を左右方向においてずらして千鳥状に積み上げる。このとき、1段目のコンクリートブロック5の上面5cの突起部51と、2段目のコンクリートブロック5の下面5dの窪み部52とが嵌合し、1段目と2段目のコンクリートブロック5同士を固定する。さらに、1段目と2段目のコンクリートブロック5に連結金具55をボルト56により取り付けて、1段目と2段目のコンクリートブロック5同士を固定する。
【0028】
続いて、積み上げた2段目のコンクリートブロック5において、1段目のコンクリートブロック5と同様、複数のコンクリートブロック5のシース孔53にPC鋼材54を挿入し、PC鋼材54を緊張して、並べたコンクリートブロック5を連結して固定する。これにより、左右の側壁2と背面壁3の2段目を築く。なお、コンクリートブロック5を積み上げるとき、図9A図9Cに示すように、コンクリートブロック5にフック57を取り付け、フック57を介してワイヤー58で吊り上げることで、コンクリートブロック5を搬送する。
このコンクリートブロック5の積み上げを繰り返し行って、コンクリートブロック5を所定の高さまで積み上げることで、左右の側壁2と背面壁3を築く。
【0029】
次に、左右の側壁2と背面壁3を築いた後、左右の側壁2の上部で、その側壁2間に角型鋼管61を複数並べて架設して頂版4を形成する。
すなわち、図10A図10Bに示すように、左右の側壁2の上部に角型鋼管61を吊り上げて搬送し、左右の側壁2間に前後に向けて並べて複数の角型鋼管61を架設する。このとき、角型鋼管61は左右の側壁2の最上段のコンクリートブロック5の上部にボルト66で固定する。この角型鋼管61の架設を、左右の側壁2の前端から後端さらに背面壁3の上まで行う。続いて、図示していないが、左右の側壁2間に架設した複数の角型鋼管61の上全体に、土嚢7を載置する。これにより、左右の側壁2及び背面壁3の上部に頂版4を形成する。
【0030】
このように、コンクリートブロック5を積み上げて左右の側壁2と背面壁3を築くとともに、左右の側壁2及び背面壁3の上部に、角型鋼管61を架設し、この角型鋼管61の上に土嚢7を載置して頂版4を形成することで、防御陣地用構造物1を構築する。
【0031】
以上説明したように、本実施形態によれば、防御陣地用構造物1は、左右の側壁2及び背面壁3をコンクリートブロック5を積み上げた構造にするとともに、頂版4を複数の架設部材6を架設して形成した構造にすることで、堅固な構造物にすることができる。これにより、ミサイル攻撃などによる衝撃、爆圧、爆風を受けても、崩れたり壊れたりすることがなく、つまり、ミサイルの爆風、ミサイルの破片の落下などに耐え得ることができる。
【0032】
また、防御陣地用構造物1の構築は、コンクリートブロック5を積み上げ、あるいは架設部材6を架設するだけであるから、その作業が手間がかかることなく簡単に行うことができ、これにより、防御陣地用構造物1を迅速に構築することができる。
【0033】
さらに、左右の側壁2及び背面壁3では、コンクリートブロック5の上面5cに十字状の突起部51を設けるとともに、下面5dに十字状の窪み部52を設けることで、コンクリートブロック5を上下に積み上げたとき、突起部51と窪み部52とが嵌合し、上下のコンクリートブロック5同士を固定することができる。このとき、嵌合する突起部51と窪み部52では、その形状を十字状にすることで、角の部分が多くなり、例えば、四角形状だと角の部分はその四隅の4ヶ所であるのに対し、十字状だと角の部分は12ヶ所になる。これにより、突起部51と窪み部52とがしっかりと嵌合するようになり、上下のコンクリートブロック5同士を強固に固定することができ、防御陣地用構造物1を堅固な構造物にすることができる。
【0034】
また、前後または左右に並べた複数のコンクリートブロック5も、シース孔53に挿入したPC鋼材54の緊張により、前後または左右に並べたコンクリートブロック5同士を強固に固定することができ、これによっても、防御陣地用構造物1を堅固な構造物にすることができる。
【0035】
図11は、別の防御陣地用構造物1の正面図、図12は、別の防御陣地用構造物1の側面図、図13は、別の防御陣地用構造物1の背面図である。なお、図11では、図面を理解しやすいようにするため、背面壁3のコンクリートブロック5を省略する。
【0036】
前述した実施形態における防御陣地用構造物1では、頂版4を形成する架設部材6が角型鋼管61であったが、これに限定されるものではない。例えば、架設部材6がコンクリートブロック62であってもよい。
すなわち、頂版4では、図11図12図13に示すように、左右の側壁2の上部において、その側壁2間に架設するコンクリートブロック62を前後に向けて複数並べて形成している。
【符号の説明】
【0037】
1…防御陣地用構造物、2…側壁、3…背面壁、4…頂版、5…コンクリートブロック、5a…前面、5b…後面、5c…上面、5d…下面、5e…側面、6…架設部材、7…土嚢、51…突起部、52…窪み部、53…シース孔、54…PC鋼材、55…連結金具、56…ボルト、57…フック、58…ワイヤー、61…角型鋼管、62…コンクリートブロック、66…ボルト。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2024-12-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明は、人や車両、あるいは補給品などを内部に収容して防護する役目を果たす防御陣地用構造物であって、コンクリートブロックを前後に向けて並べかつ上下に積み上げて築く左右の側壁と、左右の側壁の後端で、コンクリートブロックを左右に向けて並べかつ上下に積み上げて築く背面壁と、左右の側壁の上部で、その側壁間に架設する架設部材を複数並べて形成する頂版とからなり、左右の側壁と背面壁を築くコンクリートブロックは、上面に十字状の突起部を設けるとともに、下面に十字状の窪み部を設け、コンクリートブロックを上下に積み上げたとき、下側のコンクリートブロックの上面の突起部と、上側のコンクリートブロックの下面の窪み部とが嵌合するとともに、コンクリートブロックには、横方向に貫通するシース孔を設け、コンクリートブロックを前後または左右に並べたとき、前後または左右に並べたコンクリートブロックのシース孔にPC鋼材を挿入し、挿入したPC鋼材を緊張して前後または左右に並べたコンクリートブロックを連結する防御陣地用構造物である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人や車両、あるいは補給品などを内部に収容して防護する役目を果たす防御陣地用構造物であって、
コンクリートブロックを前後に向けて並べかつ上下に積み上げて築く左右の側壁と、左右の側壁の後端で、コンクリートブロックを左右に向けて並べかつ上下に積み上げて築く背面壁と、左右の側壁の上部で、その側壁間に架設する架設部材を複数並べて形成する頂版とからなり、
左右の側壁と背面壁を築くコンクリートブロックは、上面に十字状の突起部を設けるとともに、下面に十字状の窪み部を設け、コンクリートブロックを上下に積み上げたとき、下側のコンクリートブロックの上面の突起部と、上側のコンクリートブロックの下面の窪み部とが嵌合するとともに、
コンクリートブロックには、横方向に貫通するシース孔を設け、コンクリートブロックを前後または左右に並べたとき、前後または左右に並べたコンクリートブロックのシース孔にPC鋼材を挿入し、挿入したPC鋼材を緊張して前後または左右に並べたコンクリートブロックを連結することを特徴とする防御陣地用構造物。
【請求項2】
請求項1に記載された防御陣地用構造物において、
頂版を形成する架設部材は、角型鋼管である防御陣地用構造物。
【請求項3】
請求項1に記載された防御陣地用構造物において、
頂版を形成する架設部材は、コンクリートブロックである防御陣地用構造物。