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特開2025-3531DNA結合ドメイントランスアクチベーター及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003531
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】DNA結合ドメイントランスアクチベーター及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20241226BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20241226BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20241226BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20241226BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20241226BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241226BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20241226BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20241226BHJP
   C07K 14/46 20060101ALN20241226BHJP
   C12N 5/0793 20100101ALN20241226BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/864 100Z
C12N7/01
C12N5/10
A61K48/00
A61K38/17
A61K38/46
A61K31/7105
A61P25/08
A61P43/00 105
C12N15/12 ZNA
C07K19/00
C07K14/46
C12N5/0793
C12N15/12
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024184019
(22)【出願日】2024-10-18
(62)【分割の表示】P 2021549631の分割
【原出願日】2020-02-24
(31)【優先権主張番号】62/810,005
(32)【優先日】2019-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505231659
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ マサチューセッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ミゲル セナ エステベス
(72)【発明者】
【氏名】スコット エー. ウルフ
(57)【要約】
【課題】DNA結合ドメイントランスアクチベーター及びその使用の提供。
【解決手段】いくつかの態様では、本開示は、DNA結合ドメインと転写調節因子ドメインとを含む融合タンパク質をコードする核酸を含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)、及びその使用方法に関する。いくつかの実施形態では、融合タンパク質の発現によって、細胞内の標的遺伝子の発現が改変される。本開示の複数の態様は、遺伝子送達用の単離核酸及び組換えAAVベクターに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、発明の名称が「ZINC FINGER PROTEIN TRANSACTIVATORS AND USES THEREOF」(ジンクフィンガータンパク質トランスアクチベーター及びその使用)である2019年2月25日出願の米国特許仮出願第62/810,005号の出願日の利益を米国特許法119条(e)に基づいて主張するものであり、当該出願の全容を参照によって本明細書に援用するものである。
【背景技術】
【0002】
標的遺伝子発現の調節は、生体医学研究の主要領域として台頭してきた。遺伝子発現の増加は、遺伝子発現の減少によって生じるハプロ不全を修正することができる。ハプロ不全は、1つ以上の機能喪失変異が少なくとも1つの遺伝子のコピーに存在する場合に生じる。ハプロ不全に伴う疾患の治療における遺伝子増強のAAVを用いたアプローチは、従来のrAAVベクターのパッケージング容量によって阻まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示の複数の態様は、遺伝子送達用の単離核酸及び組換えAAVベクターに関する。本開示は、標的遺伝子の発現を調節するための組成物(例えば、rAAVベクター及びrAAV)及び方法であって、標的遺伝子がSCN1Aなどのハプロ不全であるような組成物及び方法に一部基づいたものである。いくつかの実施形態では、本開示は、Cys2-His2ジンクフィンガータンパク質(ZFP)などのDNA結合ドメインと、転写調節因子ドメインと、を含む融合タンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、本開示に記載される組成物は、転写調節因子ドメインに融合されたDNA結合ドメイン(例えば、ZFP、転写アクチベーター様エフェクター(TALE)ドメインなど)を含む融合タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本開示に記載される融合タンパク質は、標的遺伝子(例えば、SCN1A)の発現を増大させ、したがって、正常な細胞または対象と比較して細胞または対象内の標的遺伝子の発現不全により特徴付けられる疾患(例えば、標的遺伝子のハプロ不全に関連する疾患)の治療に有用である。
【0004】
したがって、いくつかの態様では、本開示は、少なくとも1つの転写調節因子ドメインに融合された少なくとも1つのDNA結合ドメインを発現するように構成された導入遺伝子を含む単離核酸であって、DNA結合ドメインが(例えば、対象または細胞内の)標的遺伝子または標的遺伝子の調節領域(例えば、エンハンサー配列、プロモーター配列、リプレッサー配列など)に結合し、標的遺伝子が電圧ゲートナトリウムチャネル(例えば、Nav1.1)をコードする、単離核酸を提供する。いくつかの実施形態では、標的遺伝子はSCN1A遺伝子である。いくつかの実施形態では、導入遺伝子にはアデノ随伴ウイルス(AAV)の逆位末端反復配列(ITR)が隣接される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのDNA結合ドメインが(例えば、対象または細胞内の)標的遺伝子に結合し、転写調節因子ドメインは標的遺伝子の発現を改変する(例えば、増加させる)。
【0005】
いくつかの態様では、本開示は、少なくとも1つの転写調節因子ドメインに融合された少なくとも1つのDNA結合ドメインをコードする導入遺伝子を含む核酸を含む組換えAAV(rAAV)であって、DNA結合ドメインが(例えば、対象または細胞内の)標的遺伝子または標的遺伝子の調節領域に結合し、標的遺伝子が電圧ゲートナトリウムチャネル(例えば、Nav1.1)と少なくとも1つのカプシドタンパク質とをコードする、組換えAAV(rAAV)を提供する。いくつかの実施形態では、標的遺伝子はSCN1A遺伝子である。いくつかの実施形態では、導入遺伝子にはAAVの逆位末端反復配列(ITR)が隣接される。
【0006】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのDNA結合ドメインが(例えば、対象または細胞内の)標的遺伝子に結合し、転写調節因子ドメインは対象内の標的遺伝子の発現を改変する(例えば、増加させる)。
【0007】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのDNA結合ドメインが、標的遺伝子の非翻訳領域に結合する。いくつかの実施形態では、DNA結合ドメインが、標的遺伝子の調節領域、場合により、エンハンサー配列、プロモーター配列、及び/またはリプレッサー配列に結合する。
【0008】
いくつかの実施形態では、DNA結合ドメインが、標的遺伝子の調節領域(例えば、エンハンサー配列、プロモーター配列、リプレッサー配列など)の2~2000bp上流または2~2000bp上流または下流に結合する。
【0009】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのDNA結合ドメインが、ジンクフィンガータンパク質(ZFP)、転写活性化因子様エフェクター(TALE)、dCasタンパク質(例えば、dCas9またはdCas12a)、及び/またはホメオドメインをコードする。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのDNA結合ドメインが、配列番号5~7のいずれか1つに記載の核酸配列に結合する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのDNA結合ドメインは、配列番号11~16、23~28、または35~40のいずれか1つに記載の配列を有する核酸によってコードされる認識ヘリックスを含むジンクフィンガータンパク質である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのDNA結合ドメインは、配列番号17~22、29~34、または41~46のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含むジンクフィンガータンパク質である。
【0010】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのDNA結合ドメインは、配列番号11を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号12を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号13を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号14を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号15を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、及び/または配列番号16を含む核酸によってコードされる認識ヘリックスを含むジンクフィンガータンパク質である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのDNA結合ドメインは、配列番号57のアミノ酸配列を含むジンクフィンガータンパク質である。いくつかの実施形態では、SCN1A遺伝子に結合するZFPは、配列番号57のアミノ酸配列と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0011】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのDNA結合ドメインは、配列番号23を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号24を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号25を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号26を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号27を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、及び/または配列番号28を含む核酸によってコードされる認識ヘリックスを含むジンクフィンガータンパク質である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのDNA結合ドメインは、配列番号59のアミノ酸配列を含むジンクフィンガータンパク質である。いくつかの実施形態では、SCN1A遺伝子に結合するZFPは、配列番号59のアミノ酸配列と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0012】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのDNA結合ドメインは、配列番号35を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号36を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号37を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号38を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号39を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、及び/または配列番号40を含む核酸によってコードされる認識ヘリックスを含むジンクフィンガータンパク質である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのDNA結合ドメインは、配列番号61のアミノ酸配列を含むジンクフィンガータンパク質である。いくつかの実施形態では、SCN1A遺伝子に結合するZFPは、配列番号61のアミノ酸配列と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0013】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのDNA結合ドメインは、配列番号17のアミノ酸配列を含む認識ヘリックス、配列番号18のアミノ酸配列を含む認識ヘリックス、配列番号19のアミノ酸配列を含む認識ヘリックス、配列番号20のアミノ酸配列を含む認識ヘリックス、配列番号21のアミノ酸配列を含む認識ヘリックス、及び/または配列番号22のアミノ酸配列を含む認識ヘリックスを含むジンクフィンガータンパク質である。
【0014】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのDNA結合ドメインは、配列番号29を含む認識ヘリックス、配列番号30を含む認識ヘリックス、配列番号31を含む認識ヘリックス、配列番号32を含む認識ヘリックス、配列番号33を含む認識ヘリックス、及び/または配列番号34を含む認識ヘリックスを含むジンクフィンガータンパク質である。
【0015】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのDNA結合ドメインは、配列番号41を含む認識ヘリックス、配列番号42を含む認識ヘリックス、配列番号43を含む認識ヘリックス、配列番号44を含む認識ヘリックス、配列番号45を含む認識ヘリックス、及び/または配列番号46を含む認識ヘリックスを含むジンクフィンガータンパク質である。
【0016】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのDNA結合ドメインは、触媒的に不活性なCRISPR関連タンパク質(Casタンパク質)である。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性なCasタンパク質(または「不活化Casタンパク質」)は、dCas9またはdCas12タンパク質である。いくつかの実施形態では、核酸またはrAAVは、少なくとも1つのガイド核酸(例えば、ガイドRNA、またはgRNA)を更に含む。いくつかの実施形態では、ガイド核酸は、SCN1Aを標的とするスペーサー配列を含む。いくつかの実施形態では、ガイド核酸は、配列番号85、86、89、90、93、または94のいずれか1つのヌクレオチド配列を有するスペーサー配列を含む。いくつかの実施形態では、ガイド核酸は、配列番号83~94のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ガイド核酸は、配列番号83~94のいずれか1つに記載の核酸配列によってコードされる。
【0017】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの転写調節因子ドメインは、VP16ドメイン、VP64ドメイン、Rtaドメイン、p65ドメイン、Hsf1ドメイン、またはVPRドメイン(VP64+p65+Rta1ドメイン)などのこれらの任意の組み合わせを含むトランスアクチベータードメインである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの転写調節因子ドメインは、配列番号47に記載の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのトランス活性化ドメインは、配列番号48に記載の核酸配列を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、導入遺伝子に隣接するITRは、AAV1 ITR、AAV2 ITR、AAV3 ITR、AAV4 ITR、AAV5 ITR、AAV6 ITR、AAV8 ITR、AAVrh8 ITR、AAV9 ITR、AAV10 ITR、またはAAVrh10 ITRからなる群から選択されるITRを含む。いくつかの実施形態では、ITRは、ΔTRまたはmTRである。
【0019】
いくつかの実施形態では、単離核酸の導入遺伝子は、プロモーターと機能的に連結される。いくつかの実施形態では、プロモーターは、組織特異的プロモーターである。いくつかの実施形態では、組織特異的プロモーターは、SST、NYP、リン酸活性化グルタミナーゼ(PAG)、小胞グルタミン酸トランスポーター1(VGLUT1)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65及び57(GAD65、GAD67)、シナプシンI、a-CamKII、Dock10、Prox1、パルブアルブミン(PV)、ソマトスタチン(SST)、コレシストキニン(CCK)、カルレチニン(CR)、またはニューロペプチドY(NPY)などのニューロン性プロモーターである。
【0020】
いくつかの実施形態では、導入遺伝子のDNA結合ドメインは、リンカードメインによって転写調節因子ドメインに融合される。いくつかの実施形態では、リンカードメインは、例えばグリシンリッチリンカーもしくはグリシン-セリンリンカーなどの柔軟なリンカー、または光切断可能なリンカーもしくは酵素(例えば、プロテアーゼ)切断可能なリンカーなどの切断可能なリンカーである。
【0021】
いくつかの実施形態では、単離核酸は、複数のDNA結合ドメイン、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のDNA結合ドメインをコードする導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、単離核酸は、複数の転写調節因子ドメイン、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の転写調節因子ドメインをコードする導入遺伝子を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、単離核酸またはrAAVは、正常な細胞または対象に対して標的遺伝子の異常な発現またはハプロ不全(例えば、発現の増加または発現の減少)を特徴とする細胞または対象で発現される。いくつかの実施形態では、単離核酸またはrAAVは、正常な細胞または対象に対して標的遺伝子の発現の不全(例えば、減少)を特徴とする細胞または対象で発現される。いくつかの実施形態では、単離核酸またはrAAVの標的遺伝子は、SCN1Aである。
【0023】
いくつかの実施形態では、AAVカプシドの血清型は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAV9、AAV10、AAVrh10、またはAAV.PHPBからなる群から選択される。
【0024】
いくつかの態様形態では、本開示は、標的遺伝子の発現を調節する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、本明細書に記載される単離核酸またはrAAVを、標的遺伝子を発現する細胞または対象に投与することを含み、対象は標的遺伝子についてハプロ不全(例えば、SCN1Aについてハプロ不全)である。例えば、いくつかの実施形態では、SCN1Aなどの標的遺伝子の発現は、正常な細胞または対象における標的遺伝子の発現に対して不全である(例えば、減少している)。いくつかの実施形態では、単離核酸またはrAAVが投与される細胞は、ニューロンである。いくつかの実施形態では、ニューロンは、GABA作動性ニューロンである。
【0025】
いくつかの実施形態では、単離核酸またはrAAVの投与は、単離核酸またはrAAVが投与されていない対象に対して少なくとも2倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、または少なくとも100倍増加した標的遺伝子の発現(例えば、SCN1Aの発現)をもたらす。いくつかの実施形態では、単離核酸またはrAAVの投与は、単離核酸またはrAAVが投与される前の対象における標的遺伝子(例えば、SCN1A)の発現に対して少なくとも2倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、または少なくとも100倍増加した標的遺伝子の発現(例えば、SCN1Aの発現)をもたらす。
【0026】
いくつかの実施形態では、本開示は、対象における遺伝子発現(例えば、SCN1Aの発現)を調節する方法であって、本明細書に記載される単離核酸またはrAAVが、標的遺伝子を発現する対象に投与される、方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象における標的遺伝子の発現は、健康な対象に対して異常である(例えば、増加または減少している)。いくつかの実施形態では、対象は、健康な対象に対して標的遺伝子の発現に関してハプロ不全であるか、またはハプロ不全であることが疑われる。
【0027】
いくつかの実施形態では、対象は、標的遺伝子のハプロ不全発現によって引き起こされる疾患または状態を有するか又は有することが疑われる。例えば、SCN1Aの発現についてハプロ不全である対象は、いくつかの実施形態では、ドラベ症候群を患っている。いくつかの実施形態では、単離核酸またはrAAVは、静脈内注射、筋肉内注射、吸入、皮下注射、及び/または頭蓋内注射により対象に投与される。
【0028】
いくつかの態様では、本開示は、本開示に記載される単離核酸またはrAAVを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、組成物は、薬学的に許容される担体を含む。
【0029】
いくつかの態様では、本開示は、本開示に記載される単離核酸またはrAAVを収容した容器を含むキットを提供する。いくつかの実施形態では、キットは、薬学的に許容される担体を収容した容器を含む。いくつかの実施形態では、単離核酸またはrAAVと薬学的に許容される担体とは同じ容器に収容される。いくつかの実施形態では、容器は注射器である。
【0030】
いくつかの態様では、本開示は、本開示に記載される単離核酸またはrAAVを含む宿主細胞を提供する。いくつかの実施形態では、宿主細胞は真核細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞はヒト細胞、場合によりニューロン、例えばGABA作動性ニューロンである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1-1】ヒト(HEK)とマウス(HEPG2)のSCN1A遺伝子間の配列の保存を示すクロマトグラフィーシークエンシングデータを示す(コンセンサス配列:配列番号98、標的配列:配列番号99、Hep-SCN1A_R4配列(上):配列番号100、Hep-SCN1A_R4配列(下):配列番号101。
図1-2】ヒト(HEK)とマウス(HEPG2)のSCN1A遺伝子間の配列の保存を示すクロマトグラフィーシークエンシングデータを示す(コンセンサス配列:配列番号98、標的配列:配列番号99、Hep-SCN1A_R4配列(上):配列番号100、Hep-SCN1A_R4配列(下):配列番号101。
図1-3】ヒト(HEK)とマウス(HEPG2)のSCN1A遺伝子間の配列の保存を示すクロマトグラフィーシークエンシングデータを示す(コンセンサス配列:配列番号98、標的配列:配列番号99、Hep-SCN1A_R4配列(上):配列番号100、Hep-SCN1A_R4配列(下):配列番号101。
図2】ヒト(配列番号1)とマウス(配列番号2)のSCN1A遺伝子の近位プロモーター領域の配列のアラインメントを示し、保存領域が強調表示されている。この保存配列内には、ジンクフィンガータンパク質(ZFP)結合領域の対象標的領域があり、太字で示されている(配列番号4)。
図3】SCN1A遺伝子の近位プロモーター領域内の3つの重複する標的ZFP(ZFP1、ZFP2、ZFP3)(配列番号5~7)結合部位の位置(配列番号3)を示す模式図である。
図4】A~Dは、SCN1A遺伝子の近位プロモーター領域(配列番号2)内の個々の3塩基領域(「・」によって分けられた赤で示すDNAトリプレット)を認識するZFP1の個々のジンクフィンガー(フィンガー1~フィンガー6:F1~F6)の6個の認識ヘリックス配列のアラインメントを示す。Aは、ZFP1のジンクフィンガー1~6(F1~F6)が結合するヌクレオチド配列(配列番号3)を強調して示す。Bは、ZFP1のフィンガー1~6の各認識ヘリックス(アミノ酸7個)(配列番号17~22)によって認識される3ヌクレオチド配列を示す。Cは、各ラインに1つずつ示される6個のフィンガーを含むZFP1のアミノ酸配列を示し、各フィンガー間のリンカーはカノニカル(TGEKP)及び非カノニカル(TGSQKP)リンカー配列を示すために強調表示されている(配列番号65~70)。Dは、ZFP1(F1~F6)のヌクレオチド配列(配列番号102~107)を示す。
図5】(A)~(D)は、SCN1A遺伝子の近位プロモーター領域(配列番号3)内の個々の3塩基領域(「*」によって分けられた赤で示すDNAトリプレット)を認識するZFP2の個々のジンクフィンガー(フィンガー1~フィンガー6:F1~F6)の6個の認識ヘリックス配列のアラインメントを示す。Aは、ZFP2のジンクフィンガー1~6(F1~F6)が結合するヌクレオチド配列(配列番号3)を強調して示す。Bは、ZFP2のフィンガー1~6の各認識ヘリックス(アミノ酸7個)(配列番号29~34)によって認識される最初の3個のヌクレオチドを示す。Cは、各ラインに1つずつ示される6個のフィンガーを含むZFP2のアミノ酸配列(配列番号69~74)を示し、各フィンガー間のリンカーはカノニカル(TGEKP)及び非カノニカル(TGSQKP)リンカー配列を示すために強調表示されている。Dは、ZFP2(F1~F6)のヌクレオチド配列(配列番号108~113)を示す。
図6】A~Dは、SCN1A遺伝子の近位プロモーター領域(配列番号4)内の個々の3塩基領域(「*」によって分けられた赤で示すDNAトリプレット)を認識するZFP2の個々のジンクフィンガー(フィンガー1~フィンガー6:F1~F6)の6個の認識ヘリックス配列のアラインメントを示す。Aは、ZFP3のジンクフィンガー1~6(F1~F6)が結合するヌクレオチド配列(配列番号3)を強調して示す。Bは、ZFP3のフィンガー1~6の各認識ヘリックス(アミノ酸7個)(配列番号41~46)によって認識される最初の3個のヌクレオチドを示す。Cは、各ラインに1つずつ示される6個のフィンガーを含むZFP3のアミノ酸配列(配列番号75~80)を示し、各フィンガー間のリンカーはカノニカル(TGEKP)及び非カノニカル(TGSQKP)リンカー配列を示すために強調表示されている。Dは、ZFP3(F1~F6)のヌクレオチド配列(配列番号114~119)を示す。
図7図4~6に示される各SCN1A結合ZFPが、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)により測定した場合にHEK293T細胞内のSCN1A遺伝子の発現を増加させることを示すデータを示す。これらの発現コンストラクトは、以下の転写調節因子をコードする発現プラスミドの一過性トランスフェクションにより細胞に送達した。化膿レンサ球菌(ストレプトコッカス・ピオゲネス)(Streptococcus pyogenes)のCas9+SCN1AガイドRNA(SpCas9+Scn1a)、エンドヌクレアーゼ活性のないCas9(dCas9)、VPR活性化ドメイン+SCN1AガイドRNA(dCas9_VPR+Scn1a)、VPR活性化ドメイン+ZFP1(VPR_ZFP1)、VPR活性化ドメイン+ZPF2(VPR_ZFP2)、VPR活性化ドメイン+ZFP3(VPR_ZFP3)、SpCas9+ASCL1ガイドRNA(SpCas9+Ascl1)、3個のVPR_ZFP(VPR_ZFP1+VPR_ZFP2+VPR_ZFP3)。発現レベルは、各試料でqRT-PCRにより測定されたTBPの発現レベルに対して正規化した。
図8図4~6に示される各SCN1A結合ZFP及びCas9+SCN1AガイドRNAが、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)により測定した場合にHEK293T細胞内のSCN1A遺伝子の発現を増加させることを示すデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示の複数の態様は、細胞または対象の標的遺伝子の発現を調節(例えば、増加させる)ための方法及び組成物であって、標的遺伝子がハプロ不全(すなわち、標的遺伝子が1つの機能的コピーを含む)であるような方法及び組成物に関する。いくつかの実施形態では、標的遺伝子はSCN1Aである。
【0033】
いくつかの実施形態では、本開示はZFPなどのDNA結合ドメインと、転写調節因子ドメインと、を含む融合タンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、ZFPなどのDNA結合ドメインと、トランスアクチベータードメイン(例えば、VPRドメイン)と、を含む融合タンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、DNA結合タンパク質が標的遺伝子の配列または標的遺伝子の調節領域に結合する。いくつかの実施形態では、調節領域は、エンハンサー配列、プロモーター配列、またはリプレッサー配列である。いくつかの実施形態では、プロモーター配列は、内部プロモーター(例えば、標的遺伝子のイントロン内に位置する)または外部プロモーター(例えば、標的遺伝子の転写開始点の上流に位置する)であってよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される融合タンパク質のDNA結合ドメインは、標的遺伝子(例えば、SCN1A)のプロモーター領域内の保存された配列と結合し、その際、トランスアクチベータードメインは遺伝子の発現を増加させる。
【0034】
いくつかの態様では、本開示は、細胞または対象の標的遺伝子(例えば、SCN1A)の発現を増加させるための方法に関する。いくつかの実施形態では、標的遺伝子は細胞または対象を標的遺伝子についてハプロ不全とする変異を含む。したがって、本開示の方法及び組成物は、いくつかの実施形態では、例えば、電圧ゲートナトリウムチャネルαサブユニットNav1.1のハプロ不全につながるSCN1A遺伝子の一方のコピーの変異から一般的に生じるドラベ症候群など、標的遺伝子産物のハプロ不全に関連した疾患及び障害を治療するために用いることができる。
【0035】
トランスアクチベーター融合タンパク質
本開示のいくつかの態様は、DNA結合ドメイン(DBD)と、トランスアクチベータードメインと、を含む融合タンパク質に関する。本明細書で使用するところの融合タンパク質は、2つ以上の別々のアミノ酸配列によってコードされた2つ以上の連結されたポリペプチドを含む。本明細書で使用するところのキメラタンパク質は、2つ以上の連結された遺伝子が異なる種に由来するものである、融合タンパク質である。融合タンパク質は、通常、組換えにより産生され、融合タンパク質をコードする遺伝子は、2つ以上の連結された遺伝子の発現及び得られたmRNAの組換えタンパク質への翻訳を支持するシステム内にある。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、原核細胞または真核細胞内で組換えにより産生される。融合タンパク質は、複数の配置で構成することができる。例えば、1つのタンパク質(タンパク質A)が第2のタンパク質(タンパク質B)の上流に配置される。他の融合タンパク質の構成では、タンパク質Bはタンパク質Aの上流に配置される。いくつかの実施形態では、DNA結合ドメインをコードする核酸配列が、トランスアクチベータードメインをコードする核酸配列の上流に配置され、トランスアクチベーターに連結されたDBDを含む融合タンパク質を産生する。いくつかの実施形態では、トランスアクチベータードメインをコードする核酸が、DNA結合ドメインをコードする核酸配列の上流に配置され、DNA結合ドメインに連結されたトランスアクチベータードメインを含む融合タンパク質を産生する。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、DNA結合ドメインの上流に配置されたトランスアクチベータードメインを含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、トランスアクチベータードメインの上流に配置されたDNA結合ドメインを含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、本開示に記載される融合タンパク質は、DNA結合ドメインを含む。本明細書で使用するところの「DNA結合ドメイン(DBD)」とは、二本鎖または一本鎖DNA(dsDNAまたはssDNA)を認識する少なくとも1つの構造モチーフを含む独立してフォールディングしたタンパク質を指す。ある特定のDBDが特定の配列(認識配列またはモチーフ)を認識するのに対して、他のタイプのDBDは、DNAに対する一般的な親和性を有する。いくつかの実施形態では、本開示に記載される融合タンパク質は、配列特異的なDBDを含む。いくつかの実施形態では、DBDは、SCN1Aタンパク質(例えば、Nav1.1)をコードする遺伝子内の、またはそれに隣接した核酸配列を認識する(例えば、特異的に結合する)。DBDを含むタンパク質は、転写、複製、修復、及びDNA貯蔵などの細胞プロセスに一般的に関与している。転写因子のDBDは、プロモーター領域内またはエンハンサーエレメント内の特異的DNA配列を認識して遺伝子発現を促進する。転写因子のDBDは、標的遺伝子の発現を調節するための遺伝子操作において融合タンパク質として用いられ、DNA結合特異性またはDNA結合親和性を変化させるように変異させることができ、これにより、所望の標的遺伝子の発現を調節することができる。DBDの例としては、限定されるものではないが、ヘリックス・ターン・ヘリックスモチーフ、ジンクフィンガーモチーフ(Cys2-His2ジンクフィンガーを含む)、転写活性化因子様エフェクター(TALE)、ウィングドヘリックスモチーフ、HMGボックス、dCasタンパク質(例えば、dCas9またはdCas12a)、ホメオドメイン及びOBフォールドドメインが挙げられる。
【0037】
いくつかの実施形態では、本開示は、ジンクフィンガーDBD融合タンパク質に関する。本明細書で使用するところの「ジンクフィンガータンパク質(ZFP)」とは、タンパク質のフォールドを安定化させる1つ以上の亜鉛イオンの配位を特徴とする少なくとも1つの構造的モチーフを含むタンパク質を指す。ジンクフィンガーは、タンパク質にみられる最も多様な構造的モチーフであり、ヒト遺伝子の最大3%がジンクフィンガーをコードしている。ほとんどのZFPは、DNA、RNA、及び小分子タンパク質であるユビキチンを含む標的遺伝子とタンデムに接触する複数のジンクフィンガーを含んでいる。「古典的」なジンクフィンガーモチーフは、2個のシステインアミノ酸と2個のヒスチジンアミノ酸とで構成され(C)、配列特異的にDNAと結合する。転写因子IIIA(TFIIIA)をはじめとするこれらのZFPは、通常、遺伝子発現に関与している。DNA結合タンパク質中の複数のジンクフィンガーモチーフが、DNAの二重らせんと結合して外側を包み込む。それらの比較的小さいサイズ(例えば、各フィンガーはアミノ酸約25~40個、通常27~35個である)のため、ジンクフィンガードメイン融合タンパク質は、新規なDNA結合特異性を有するDBDを作製するために用いられる。これらのDBDは、他の融合ドメイン(例えば、転写活性化もしくは抑制ドメインまたはエピジェネティック改変ドメイン)を送達して標的遺伝子の転写調節を変化させることができる。いくつかの実施形態では、ジンクフィンガータンパク質は2~8個のフィンガーを含み、各フィンガーは24~40個のアミノ酸(例えば、27、28、29、30、31、32
、33、34、35、36、37、38、39または40個のアミノ酸)を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、ZFPは、1、2、3、4、5、6、7、または8個のジンクフィンガーを含む。各ジンクフィンガーは、25~40個、25~30個、30~35個、35~40個、または40~45個のアミノ酸を含むことができる。いくつかの実施形態では、ジンクフィンガーは、27~35個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ジンクフィンガーは、27、28、29、30、31、32、33、34、または35個のアミノ酸を含む。ジンクフィンガーは、対象においてハプロ不全である標的配列、例えば、標的遺伝子または標的遺伝子の調節領域を特異的に認識するかまたはそれに特異的に結合することができる。いくつかの実施形態では、ジンクフィンガーは、SCN1A遺伝子、例えば配列番号49に記載されるヒトSCN1Aの標的配列に結合する。いくつかの実施形態では、SCN1A遺伝子の標的配列に結合するジンクフィンガーは、配列番号63~80のうちの1つ以上のアミノ酸配列、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、ジンクフィンガーは3ヌクレオチド配列を含む標的配列を特異的に認識するかまたは特異的に結合する。
【0039】
いくつかの実施形態では、ジンクフィンガーは、標的配列、例えば、3ヌクレオチド配列を含む標的配列を認識するかまたはこれに結合する認識ヘリックスを含む。いくつかの実施形態では、認識ヘリックスは、3ヌクレオチドに結合する。いくつかの実施形態では、認識ヘリックスは、4~10個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、認識ヘリックスは、4、6、7、8、9、または10個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、認識ヘリックスは、SCN1A遺伝子の3ヌクレオチド配列に結合する。いくつかの実施形態では、SCN1A遺伝子に結合する認識配列は、配列番号17~22、29~34、または41~46のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、SCN1A遺伝子に結合する認識配列は、配列番号11~16、23~28、または35~40のいずれか1つによってコードされる。いくつかの実施形態では、ジンクフィンガーは、配列番号17~22、29~34、または41~46のいずれか1つのアミノ酸配列を含む認識ヘリックスと同じヌクレオチド配列に結合する。
【0040】
いくつかの実施形態では、ジンクフィンガーは、そのC末端に、前記ジンクフィンガーを更なるジンクフィンガーに連結または接続する機能を有しうるリンカー配列を有する。いくつかの実施形態では、リンカー配列は、例えば、TGEKP(配列番号120)のアミノ酸配列を含むカノニカルリンカーとすることができる。いくつかの実施形態では、リンカー配列は、例えば、TGSQKP(配列番号121)のアミノ酸配列を含む非カノニカルリンカーとすることができる。いくつかの実施形態では、リンカー配列は、2~10個のアミノ酸、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸であってよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、標的遺伝子、例えばSCN1A遺伝子に結合するZFPは、それぞれが標的遺伝子、例えばSCN1A遺伝子の異なる3ヌクレオチド配列を認識するかまたはこれに結合する6個のジンクフィンガーを含む。いくつかの実施形態では、SCN1A遺伝子に結合するZFPは、配列番号57のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、SCN1A遺伝子に結合するZFPは、配列番号63、64、65、66、67、及び/または68のアミノ酸配列を含むジンクフィンガーを含む。いくつかの実施形態では、SCN1A遺伝子に結合するZFPは、配列番号17、18、19、20、21、及び/または22のアミノ酸配列を含む認識ヘリックスを含む。いくつかの実施形態では、SCN1A遺伝子に結合するZFPは、配列番号59のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、SCN1A遺伝子に結合するZFPは、配列番号69、70、71、72、73、及び/または74のアミノ酸配列を含むジンクフィンガーを含む。いくつかの実施形態では、SCN1A遺伝子に結合するZFPは、配列番号29、30、31、32、33、及び/または34のアミノ酸配列を含む認識ヘリックスを含む。いくつかの実施形態では、SCN1A遺伝子に結合するZFPは、配列番号61のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、SCN1A遺伝子に結合するZFPは、配列番号75、76、77、78、79、及び/または80のアミノ酸配列を含むジンクフィンガーを含む。いくつかの実施形態では、SCN1A遺伝子に結合するZFPは、配列番号41、42、43、44、45、及び/または46のアミノ酸配列を含む認識ヘリックスを含む。いくつかの実施形態では、SCN1A遺伝子に結合するZFPは、下記に示される配列番号57、59、または61と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0042】
配列番号57(ZFP1タンパク質のアミノ酸配列)
RPFQCRICMRNFSQRGNLVRHIRTHTGEKPFACDICGKKFALSFNLTRHTKIHTGSQKPFQCRICMRNFSRSDNLTRHIRTHTGEKPFACDICGKKFADRSHLARHTKIHTGSQKPFQCRICMRNFSQKAHLTAHIRTHTGEKPFACDICGRKFARSDNLTRHTKIHLRQKD
配列番号59(ZFP2タンパク質のアミノ酸配列)
RPFQCRICMRNFSRSSNLTRHIRTHTGEKPFACDICGKKFADKRTLIRHTKIHTGSQKPFQCRICMRNFSQRGNLVRHIRTHTGEKPFACDICGKKFALSFNLTRHTKIHTGSQKPFQCRICMRNFSRSDNLTRHIRTHTGEKPFACDICGRKFADRSHLARHTKIHLRQKD
配列番号61(ZFP3タンパク質のアミノ酸配列)
RPFQCRICMRNFSDRSALARHIRTHTGEKPFACDICGKKFARSDNLTRHTKIHTGSQKPFQCRICMRNFSQSGDLTRHIRTHTGEKPFACDICGKKFAVRQTLKQHTKIHTGSQKPFQCRICMRNFSAAGNLTRHIRTHTGEKPFACDICGRKFARSDNLTRHTKIHLRQKD
【0043】
いくつかの実施形態では、DBDは、転写活性化因子様エフェクタータンパク質(TALE)である。TALEは、標的配列、例えば、標的遺伝子または標的遺伝子の調節領域を特異的に認識するかまたは特異的に結合することができる。いくつかの実施形態では、対象は、標的遺伝子についてハプロ不全である。いくつかの実施形態では、TALEは、SCN1A遺伝子、例えば配列番号49に示されるヒトSCN1Aの標的配列に結合する。TALEタンパク質は細菌によって分泌され、宿主植物内のプロモーター配列と結合して細菌感染を助ける植物遺伝子の発現を活性化する。一般的に、TALEタンパク質は、約30~30個の可変の数のアミノ酸の反復配列からなる中央の反復ドメインによって標的配列を認識し、各反復配列は標的配列内の1個の塩基対を認識することから、新たなDNA配列に結合するように操作される。DNA配列を認識するためにはこれらの反復配列のアレイが通常、必要とされる。
【0044】
いくつかの実施形態では、DBDは、ホメオドメインである。ホメオドメインは、標的配列、例えば、標的遺伝子または標的遺伝子の調節領域を特異的に認識するかまたは特異的に結合することができる。いくつかの実施形態では、対象は、標的遺伝子についてハプロ不全である。いくつかの実施形態では、ホメオドメインは、SCN1A遺伝子、例えば配列番号49に示されるヒトSCN1Aの標的配列に結合する。ホメオドメインは、標的配列の認識に関与する3個のαヘリックスとN末端アームを有するタンパク質である。ホメオドメインは、小さなDNA配列(約4~8塩基対)を通常は認識するが、これらのドメインを他のDNA結合ドメイン(他のホメオドメインまたはジンクフィンガータンパク質)とタンデムに融合させることでより長い伸長された配列(12~24塩基対)を認識させることができる。したがって、ホメオドメインは、ヒトゲノム内の固有の配列を認識するDBDの構成要素となりうる。
【0045】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのDNA結合ドメインは、触媒的に不活性なCRISPR関連タンパク質(Casタンパク質)である。触媒的に不活性なCasタンパク質(dCasまたは「不活化Casタンパク質」としても知られる)は、ヌクレアーゼ活性(例えば、エンドヌクレアーゼ活性)が低下しているかまたはすべてのヌクレアーゼ活性(例えば、エンドヌクレアーゼ活性)を欠くように改変または変異されたCasタンパク質である。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性なCasタンパク質は、dCas9またはdCas12タンパク質である。いくつかの実施形態では、DBDは、dCas9またはdCas12などのdCasタンパク質(「不活化Cas」としても知られる)である。dCasタンパク質は、触媒的に不活化された、すなわち、ヌクレオチド切断ができないように変異させられたCRISPR関連タンパク質(Cas、例えばCas9またはCas12a)の変異体である。dCasは、標的配列、例えば、標的遺伝子または標的遺伝子の調節領域を特異的に認識するかまたは特異的に結合することができる。dCasタンパク質とガイド核酸(例えば、gRNA)とを含む複合体は、ガイド核酸と相補的な特異的ヌクレオチド配列または遺伝子を標的とする、及び/またはこれと結合することができる。いくつかの実施形態では、対象は、標的遺伝子についてハプロ不全である。いくつかの実施形態では、dCasは、SCN1A遺伝子、例えば配列番号49に示されるヒトSCN1Aの標的配列に結合する。ただし、dCasタンパク質は、標的DNA配列と完全または部分的に相補的なガイド核酸(例えば、ガイドRNA、gRNA、またはsgRNA)に結合された場合に標的DNA配列を認識して結合する能力を維持する。いくつかの実施形態では、dCas(例えば、dCas9)タンパク質をSCN1Aにターゲティングするためのガイド核酸は、配列番号85、86、89、90、93、または94のいずれか1つを有するスペーサー配列を含む。いくつかの実施形態では、dCas(例えば、dCas9)タンパク質をSCN1Aにターゲティングするためのガイド核酸は、配列番号85、86、89、90、93、または94のいずれか1つの少なくとも15個(例えば、16、17、18、19、または20個)の連続したヌクレオチドを有するスペーサー配列を含む。いくつかの実施形態では、dCas(例えば、dCas9)タンパク質をSCN1Aにターゲティングするためのガイド核酸は、配列番号83、84、87、88、91、または92のいずれか1つを含む。いくつかの実施形態では、dCas(例えば、dCas9)タンパク質をSCN1Aにターゲティングするためのガイド核酸は、配列番号83~94のいずれか1つを含むかまたはそれからなる。したがって、dCasエンドヌクレアーゼは、ヒトゲノム内の固有の配列を認識するDBDの構成要素となりうる。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、dCas9タンパク質とトランス活性化ドメイン(例えば、VPRドメイン)とを含む。
【0046】
本開示は、いくつかの態様において、電圧ゲートナトリウムチャネル(例えば、Nav1.1)をコードする遺伝子に結合するDNA結合ドメインに関する。いくつかの実施形態では、電圧ゲートナトリウムチャネルをコードする遺伝子はSCN1A遺伝子であり、配列番号49に記載される配列を含む。いくつかの実施形態では、DNA結合ドメインは、3’非翻訳領域(3’UTR)または5’非翻訳領域(5’UTR)などの標的遺伝子の非翻訳領域に結合する。いくつかの実施形態では、非翻訳領域は、調節配列、例えば、エンハンサー、プロモーター、イントロン、またはリプレッサー配列を含む。いくつかの実施形態では、DNA結合ドメインは、配列番号57~62に記載される配列を含むジンクフィンガータンパク質である。いくつかの実施形態では、DNA結合ドメインは、配列番号5~7のいずれか1つに記載される核酸配列に結合する。
【0047】
導入遺伝子によってコードされるDNA結合ドメインの数は異なりうる。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は1個のDNA結合ドメインをコードする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は2個のDNA結合ドメインをコードする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は3個のDNA結合ドメインをコードする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は4個のDNA結合ドメインをコードする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は5個のDNA結合ドメインをコードする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は6個のDNA結合ドメインをコードする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は7個のDNA結合ドメインをコードする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は8個のDNA結合ドメインをコードする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は9個のDNA結合ドメインをコードする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は10個のDNA結合ドメインをコードする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、10個よりも多い(例えば、20、30、50、100個など)DNA結合ドメインをコードする。DNA結合ドメインは、同じDNA結合ドメイン(例えば、同じDBDの複数のコピー)、異なるDNA結合ドメイン(例えば、各DBDは固有の配列に結合する)、またはこれらの組み合わせであってよい。
【0048】
本開示は、いくつかの態様において、トランスアクチベータードメインを含む融合タンパク質に関する。本明細書で使用するところの「トランス活性化ドメイン」とは、転写調節共役因子のような遺伝子発現を調節する他のタンパク質に対する結合部位を含む転写因子内のスカフォールドドメインを指す。いくつかの実施形態では、トランス活性化ドメイン(転写活性化ドメインとしても知られる)は、DBDと共に働いて、転写因子と接触することによって直接、またはコアクチベータータンパク質を介して間接的にプロモーターまたはエンハンサーからの転写を活性化する。トランス活性化ドメイン(TAD)は、そのアミノ酸組成に関して一般的に命名され、それらのアミノ酸は活性に不可欠なものであるかまたはTAD中に最も多く存在するものである。TADは、標的遺伝子の発現を調節するための遺伝子操作において融合タンパク質として用いられ、転写活性化のレベル、したがって標的遺伝子の発現レベルを変化させるように変異させることができる。トランス活性化ドメインの例としては、限定されるものではないが、GAL4、HAP1、VP16、P65、RTA及びGCN4が挙げられる。
【0049】
いくつかの実施形態では、トランスアクチベータードメインは、VP64ドメインを含む。VP64は、単純ヘルペスウイルスによって自然に発現されるVP16タンパク質の4個のタンデムなコピーで構成される酸性TADである。遺伝子のプロモーターと、またはその近くに結合するDBDと融合された場合、VP64は強力な転写活性化因子として作用するため、標的遺伝子(例えば、SCN1A)の発現を調節するために用いることができる。VP64ドメインは一般的に、単純ヘルペスタンパク質VP16の最小活性化ドメインの四量体反復配列からなる。いくつかの実施形態では、VP64ドメインは、VP16のアミノ酸残基437~448の4つの反復配列を含む。いくつかの実施形態では、VP16タンパク質は、NCBI参照配列アクセッション番号NC_001798.2に記載される配列を含むヒトヘルペスウイルス2UL48遺伝子によってコードされる。いくつかの実施形態では、VP16遺伝子は、NCBI参照配列アクセッション番号YP_009137200.1に記載される核酸配列によってコードされるアミノ酸配列と99%同一、95%同一、90%同一、80%同一、70%同一、60%同一、または50%同一であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、VP16タンパク質は、NCBI参照配列アクセッション番号Q69113-1に記載されるアミノ酸配列と99%同一、95%同一、90%同一、80%同一、70%同一、60%同一、または50%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VP16遺伝子は、配列番号51に記載される核酸配列によってコードされるアミノ酸配列と99%同一、95%同一、90%同一、80%同一、70%同一、60%同一、または50%同一であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、VP16タンパク質は、配列番号52に記載されるアミノ配列と99%同一、95%同一、90%同一、80%同一、70%同一、60%同一、または50%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、トランスアクチベータードメインは、P65活性化ドメインを含む。P65は、そのC末端に2個の隣接した酸性TADを含むNF-κβ転写因子のサブユニットである。例えば、Urlinger,et al.“The p65 domain from NF-kappaB is an efficient human activator in the tetracycline-regulatable gene expression system,”Gene,2000によって記載されるように、p65タンパク質は、遺伝子のプロモーターに、またはその近くに結合するDBDと融合された場合、強力な転写活性化因子として作用するため、標的遺伝子の発現を調節するために用いることができる。いくつかの実施形態では、p65タンパク質は、NCBI参照配列アクセッション番号NM_001145138.1、NM_001243984.1、NM_001243985.1、またはNM_021975.3に記載される配列を含むヒトRELA遺伝子によってコードされる。いくつかの実施形態では、RELA遺伝子は、NCBI参照配列番号NM_001145138.1、NM_001243984.1、NM_001243985.1、またはNM_021975.3のいずれかに記載される核酸配列によってコードされるアミノ酸配列と99%同一、95%同一、90%同一、80%同一、70%同一、60%同一、または50%同一であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、p65タンパク質は、NP_001138610.1、NP_001230913.1、NP_001230914.1、及びNP_068110.3に記載されるアミノ酸配列と99%同一、95%同一、90%同一、80%同一、70%同一、60%同一、または50%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、RELA遺伝子は、配列番号53に記載される核酸配列によってコードされるアミノ酸配列と99%同一、95%同一、90%同一、80%同一、70%同一、60%同一、または50%同一であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、p65タンパク質は、配列番号54に記載されるアミノ配列と99%同一、95%同一、90%同一、80%同一、70%同一、60%同一、または50%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、トランスアクチベータードメインは、RTAドメインを含む。RTAは、エンハンサー領域に結合していくつかのウイルス遺伝子の発現を促進する強力なトランス活性化ドメインであるエプスタイン・バール・ウイルスに由来する疎水性TADである。例えば、Miyazawa,et al.,“IL-10 promoter transactivation by the viral K-RTA protein involves the host-cell transcription factors,specificity proteins 1 and 3,”Journal of Biological Chemistry,2018によって記載されるように、RTAタンパク質は、遺伝子のプロモーターと、またはその近くに結合するDBDと融合された場合、強力な転写活性化因子として作用するため、標的遺伝子の発現を調節するために用いることができる。いくつかの実施形態では、RTAタンパク質は、NCBI参照配列アクセッション番号YP_041674.1に記載される配列を含むエプスタイン・バール・ウイルスBRLF1遺伝子によってコードされる。いくつかの実施形態では、BRLF1遺伝子は、NCBI参照配列番号YP_041674.1のいずれかに記載される核酸配列によってコードされるアミノ酸配列と99%同一、95%同一、90%同一、80%同一、70%同一、60%同一、または50%同一であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、RTAタンパク質は、YP_041674.1に記載されるアミノ配列と99%同一、95%同一、90%同一、80%同一、70%同一、60%同一、または50%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、BRLF1遺伝子は、配列番号55に記載される核酸配列によってコードされるアミノ酸配列と99%同一、95%同一、90%同一、80%同一、70%同一、60%同一、または50%同一であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、RTAタンパク質は、配列番号56に記載されるアミノ配列と99%同一、95%同一、90%同一、80%同一、70%同一、60%同一、または50%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0052】
本開示は、ハイブリッドトランスアクチベータードメインを含む融合タンパク質に一部基づくものである。本明細書で使用するところの「ハイブリッドトランスアクチベータードメイン」とは、複数の転写活性化タンパク質またはそれらの部分(例えば、2、3、4、5個、またはそれよりも多い転写活性化タンパク質、またはそれらの部分)を含む融合タンパク質を指す。ハイブリッドトランスアクチベータードメインは、標的遺伝子の発現を増加させるために遺伝子工学で用いられる。本開示のいくつかの実施形態では、Chavez,et al.“Highly efficient Cas9-mediated transcriptional programming”,Nat Methods,2015に記載される、VP64-P65-RTA(VPR)のヌクレオチド配列を含む3つの部分からなるハイブリッドトランス活性化ドメイン(配列番号47)が、標的遺伝子(例えば、SCN1A)の発現を増加させるために用いられる。
【0053】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される融合タンパク質は、DBD(例えば、ZFP)と、転写リプレッサータンパク質とを含むことができる。いくつかの態様では、本開示は、転写リプレッサードメインを含む融合タンパク質に関する。本明細書で使用するところの「転写リプレッサー」タンパク質とは、標的遺伝子の発現を減少させるポリペプチドを一般的に指す。転写リプレッサーの例としては、限定されるものではないが、KRAB、SMRT/TRAC-2、及びNCoR/RIP-13が挙げられる。いくつかの実施形態では、かかる転写リプレッサー融合タンパク質は、標的遺伝子(例えば、機能獲得型疾患において過剰発現される遺伝子)の発現レベルを低減させるのに有用である。
【0054】
単離核酸
単離核酸とは、DNAまたはRNA配列を指す。いくつかの実施形態では、本開示のタンパク質及び核酸は単離される。本明細書で使用するところの「単離された」なる用語は、人工的に生成されることを意味する。核酸に関して本明細書で使用するところの「単離された」なる用語は、(i)例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりインビトロで増幅されたもの、(ii)クローニングにより組換えによって産生されたもの、(iii)切断及びゲル分離などにより精製されたもの、または(iv)例えば化学合成により合成されたものを指す。単離核酸は、当該技術分野では周知の組換えDNA技術により容易に操作可能であるものである。したがって、5’及び3’側の制限部位が知られているかまたはそのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)用のプライマー配列が開示されている、ベクターに含まれるヌクレオチド配列は単離されたものとみなされるが、天然宿主内にその天然状態で存在する核酸配列は単離されたものとはみなされない。単離核酸は実質的に精製されていてもよいが、そうである必要はない。例えば、クローニングベクターまたは発現ベクター内で単離されている核酸は、単離核酸が存在する細胞内の物質のわずかな割合のみを構成し得る点で純粋ではない。しかしながら、かかる核酸は、当業者には周知の標準的な技術により容易に操作可能であるため、本明細書でこの用語が使用されているように単離されている。タンパク質またはペプチドに関して本明細書で使用するところの「単離された」なる用語は、その天然の環境から単離されているかまたは人工的に生成された(例えば、化学合成により、組換えDNA技術により、など)タンパク質またはペプチドを指す。
【0055】
いくつかの態様では、本開示は、1つ以上のZFP-トランス活性化ドメイン融合タンパク質を発現するように構成された単離核酸(例えば、rAAVベクターなどの発現コンストラクト)に関する。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、1~10個(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個)のDBD及び/または1~10個(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個)のトランスアクチベータードメインを含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、10個超のDBS及び/または10個超のトランスアクチベータードメインを含む。
【0056】
本開示のいくつかの態様では、DNA結合ドメインは、リンカーを介して転写調節ドメインに間接的に融合される。本明細書で使用するところの「リンカー」とは、一般的に、単一の導入遺伝子内の2個の別個のポリペプチド同士を構造的に連結するポリペプチドのストレッチである。いくつかの実施形態では、リンカーは、別個のポリペプチドが動くことができるような柔軟なものである。いくつかの実施形態では、柔軟なリンカーは、グリシン残基を含む。いくつかの実施形態では、柔軟なリンカーは、グリシン残基とセリン残基の混合物を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、ポリペプチド同士を分離することができるように切断可能なものである。いくつかの実施形態では、切断可能なリンカーは、プロテアーゼにより切断される。いくつかの実施形態では、プロテアーゼはトリプシンまたは第X因子である。
【0057】
いくつかの実施形態では、リンカーは、5~30個のアミノ酸(例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個のアミノ酸)を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、3~30個のアミノ酸(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個のアミノ酸)を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、3~20個のアミノ酸(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個のアミノ酸)を含む。
【0058】
本開示は、例えばSCN1Aなどの電圧ゲートナトリウムイオンチャネルサブユニットタンパク質(SCNタンパク質とも呼ばれる)をコードする遺伝子の発現を増加させるように操作された融合タンパク質に一部基づいたものである。本明細書で使用するところの「SCNタンパク質」とは、興奮性膜の電圧依存性ナトリウムイオン透過性を媒介し、ナトリウムイオンが膜を通過することを可能とするナトリウムイオンチャネルタンパク質を指す。ヒトのSCNタンパク質の例としては、限定されるものではないが、SCN1A、SCN3A、SCN5A、SCN10A、及びSCN11Aが挙げられる。いくつかの実施形態では、SCNタンパク質は、1型αイオンチャネルサブユニットをコードするSCN1A(Nav1.1とも呼ばれる)である。いくつかの実施形態では、SCNタンパク質は、1型βイオンチャネルサブユニットまたはSCN1CをコードするSCN1Bタンパク質である。いくつかの実施形態では、SCNタンパク質は、SCN1A、SCN1B、及び/またはSCN1Cの組み合わせである。本明細書で使用するところのSCNタンパク質は、SCNタンパク質の部分またはフラグメントであってよい。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるSCNタンパク質は、点突然変異体または切断変異体などのSCNタンパク質の変異体である。
【0059】
ヒトでは、SCN1Aは、チンパンジー、アカゲザル、イヌ、ウシ、マウス、ラット、及びニワトリで保存されているSCN1A遺伝子(遺伝子ID6323、ヒト)によりコードされる。ヒトのSCN1A遺伝子は、脳、肺、及び睾丸で主に発現している。いくつかの実施形態では、SCNタンパク質は、5つの構造的リピート(I、II、III、IV、Q)を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、SCNタンパク質は、NCBI参照配列番号NM_001165963.2、NM_00165964.2、NM_001202435.2、NM_001353948.1、NM_001353949.1、NM_001353950.1、NM_00135395.1、NM_001353952.1、NM_001353954.1、NM_00353955.1、NM_001353957.1、NM_001353958.1、NM_001353960.1、NM_001353961.1、またはNM_006920.5に記載される配列を含むヒトSCN1A遺伝子によりコードされる。いくつかの実施形態では、SCN1Aタンパク質は、NCBI参照配列番号NM_001313997.1またはNM_018733.2に記載される配列を含むマウスSCN1A遺伝子によりコードされる。いくつかの実施形態では、SCN1Aタンパク質は、NCBI参照配列番号NG_011906.1、NM_001313997.1またはNM_018733.2のいずれかに記載される核酸によりコードされるアミノ酸配列と99%同一、95%同一、90%同一、80%同一、70%同一、60%同一、または50%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、SCN1A遺伝子は、配列番号50に記載される配列と99%同一、95%同一、90%同一、80%同一、70%同一、60%同一、または50%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒトSCNタンパク質は、NCBI参照配列番号NP_001159435.1、NP_0011159436.1、NP_001189364.1、NP_001340877.1、NP_001340878.1、NP_001340879.1、NP_001340880.1、NP_001340881.1、NP_001340883.1、NP_001340884.1、NP_001340886.1、NP_001340887.1、NP_001340889.1、NP_001340890.1、NP_00851.3に記載される配列を含む。いくつかの実施形態では、SCN1Aタンパク質は、NCBI参照配列番号NG_011906.1、NM_001313997.1またはNM_018733.2のいずれかに記載される核酸によりコードされるアミノ酸配列と99%同一、95%同一、90%同一、80%同一、70%同一、60%同一、または50%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、マウスSCN1Aタンパク質は、NCBI参照配列番号NP_001300926.1またはNP_061203.2に記載される配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒトSCN1Aタンパク質は、配列番号49に記載される核酸配列と99%同一、95%同一、90%同一、80%同一、70%同一、60%同一、または50%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0061】
本開示の単離核酸は、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(rAAVベクター)とすることができる。いくつかの実施形態では、本開示に記載される単離核酸は、第1のアデノ随伴ウイルス(AAV)逆位末端反復配列(ITR)を含む領域(例えば、第1の領域)、またはそのバリアントを含む。単離核酸(例えば、組換えAAVベクター)は、カプシドタンパク質にパッケージングして、対象に投与する、及び/または選択された標的細胞に送達することができる。「組換えAAV(rAAV)ベクター」は、通常、最低でも、導入遺伝子及びその調節配列、ならびに5’及び3’側のAAV逆位末端反復配列(ITR)で構成される。導入遺伝子は、本開示の別の箇所に記載されるように、例えば、タンパク質及び/または発現制御配列(例えば、ポリAテール)をコードする領域を含むことができる。
【0062】
一般的に、ITR配列は長さ約145bpである。好ましくは、ITRをコードする配列のほぼ全体を分子中に用いることができるが、これらの配列のある程度の改変は許容される。これらのITR配列を改変することは当業者の技能の範囲内である(例えば、Sambrook et al.,“Molecular Cloning.A Laboratory Manual”,2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(1989);及び K.Fisher et
al.,J Virol.,70:520 532(1996)などの文献を参照)。本開示で用いられるかかる分子の例として、導入遺伝子を含む「シス作用性」プラスミドがあり、選択された導入遺伝子配列と付随する調節エレメントに5’及び3’側のAAVのITR配列が隣接させられたものである。AAVのITR配列は、本明細書で特定される哺乳動物のAAV型を含むいずれの公知のAAVからも得ることができる。いくつかの実施形態では、単離核酸は、第2のAAVのITRを含む領域(例えば、第2の領域、第3の領域、第4の領域など)を更に含む。
【0063】
組換えAAVベクターについて上記に特定された主要なエレメント以外に、ベクターは、ベクターをトランスフェクトした、または本開示により作製されたウイルスを感染させた細胞内での導入遺伝子の転写、翻訳及び/または発現を可能とする形で導入遺伝子の各エレメントと機能的に連結された従来の制御エレメントも含む。本明細書で使用するところの「機能的に連結された」配列とは、対象とする遺伝子と連続している発現制御配列、及びトランスに作用するかまたは一定距離を置いて作用することで対象とする遺伝子を制御する発現制御配列の両方を含む。発現制御配列は、適当な転写開始配列、転写終止配列、プロモーター配列、及びエンハンサー配列;スプライシング及びポリアデニル化(ポリA)シグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化させる配列;翻訳効率を高める配列(例えば、コザックコンセンサス配列);タンパク質安定性を高める配列;及び必要に応じてコードされた産物の分泌を高める配列を含む。天然、誘導性、構成的、及び/または組織特異的なプロモーターをはじめとする多数の発現制御配列が当該技術分野では周知であり、使用することができる。
【0064】
本明細書で使用するところの核酸配列(例えば、コード配列)と調節配列とは、核酸配列の発現または転写が調節配列の影響下または制御下に置かれるような形で共有結合により連結されている場合に機能的に連結されていると言われる。核酸配列が機能性タンパク質に翻訳されることが望ましい場合、2個のDNA配列は、5’側の調節配列内のプロモーターの誘導がコード配列の転写をもたらす場合、及び2個のDNA配列間の連結の性質が、(1)フレームシフト変異の導入につながらず、(2)コード配列の転写を誘導するプロモーター領域の能力を妨げず、または(3)タンパク質に翻訳される対応するRNA転写産物の能力を妨げない場合に機能的に連結されていると言われる。したがって、あるプロモーター領域は、そのプロモーター領域がDNA配列の転写を行う能力を有し、生じた転写産物が所望のタンパク質またはポリペプチドに翻訳されうる場合、核酸配列と機能的に連結されている。同様に、2つ以上のコード領域は、共通のプロモーターからのそれらの転写がインフレームで翻訳された2つ以上のタンパク質の発現をもたらすような形で連結されている場合に機能的に連結されている。いくつかの実施形態では、機能的に連結されたコード配列は、融合タンパク質を生じる。
【0065】
導入遺伝子(例えば、融合タンパク質などを含む)を含む領域は、融合タンパク質の発現を可能とする単離核酸の任意の適当な位置に配置することができる。
【0066】
導入遺伝子が複数のポリペプチドをコードする場合、各ポリペプチドは導入遺伝子内の任意の適当な位置に配置することができる点は認識されるはずである。例えば、第1のポリペプチドをコードする核酸を導入遺伝子のイントロンに配置することができ、第2のポリペプチドをコードする核酸を別の非翻訳領域内(例えば、タンパク質コード配列の最後のコドンと導入遺伝子のポリAシグナルの最初の塩基との間)に配置することができる。
【0067】
「プロモーター」とは、遺伝子の特異的転写を開始するために必要とされる、細胞の合成マシナリーまたは導入された合成マシナリーによって認識されるDNA配列を指す。「機能的に連結された」、「機能的に配置された」、「制御下の」、または「転写制御下」なる表現は、核酸に対してプロモーターが、RNAポリメラーゼの開始及び遺伝子の発現を制御するための適正な位置及び向きにあることを意味する。
【0068】
タンパク質をコードする核酸の場合、ポリアデニル化配列が一般的に導入遺伝子配列の後ろで3’側のAAVのITR配列の前に挿入される。本開示で有用なrAAVコンストラクトは、望ましくはプロモーター/エンハンサー配列と導入遺伝子との間に位置するイントロンも含むことができる。1つの可能なイントロン配列はSV-40に由来し、SV-40Tイントロン配列と呼ばれる。使用することが可能な別のベクターエレメントは、内部リボソーム進入部位(IRES)である。IRES配列は、単一の遺伝子転写産物から複数のポリペプチドを生成するために用いられる。IRES配列は、複数のポリペプチド鎖を含むタンパク質を生成するために用いられる。これらの、及び他の共通のベクターエレメントの選択は従来技術であり、多くのそのような配列が利用可能である[例えば、Sambrook et al.,ならびに本明細書に引用される参照文献の例えば3.18 3.26及び16.17 16.27頁、及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York,1989を参照]。いくつかの実施形態では、手足口病ウイルス2A配列がポリタンパク質に含まれる。これは、ポリタンパク質の切断を媒介することが示されている小分子ペプチド(アミノ酸約18個の長さ)である(Ryan,M D et al.,EMBO,1994;4:928-933;Mattion,N M et al.,J Virology,November 1996;p. 8124-8127;Furler,S et al.,Gene Therapy,2001;8:864-873;及びHalpin,C et al.,The Plant Journal,1999;4:453-459)。2A配列の切断活性は、プラスミド及び遺伝子療法ベクターを含む人工的システムにおいてこれまでに実証されている(AAV及びレトロウイルス)(Ryan,M D et al.,EMBO,1994;4:928-933;Mattion,N M et al.,J Virology,November 1996;p.8124-8127;Furler,S et al.,Gene Therapy,2001;8:864-873;and
Halpin,C et al.,The Plant Journal,1999;4:453-459;de Felipe,P et al.,Gene Therapy,1999;6:198-208;de Felipe,P et al.,Human Gene Therapy,2000;11:1921-1931.;及びKlump,H et al.,Gene Therapy,2001;8:811-817)。
【0069】
構成的なプロモーターの例としては、限定されるものではないが、レトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(場合によりRSVエンハンサーを伴う)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(場合によりCMVプロモーターを伴う)[例えば、Boshart et al.,Cell,41:521-530(1985)]、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、βアクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、及びEF1αプロモーター[Invitrogen]が挙げられる。いくつかの実施形態では、プロモーターはP2プロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターはニワトリβアクチン(CBA)プロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターは2個のCBAプロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターは、CMVプロモーターによって分離された2個のCBAプロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターはCAGプロモーターである。
【0070】
誘導性プロモーターは遺伝子発現の調節を可能とし、外因的に供給される化合物、温度などの環境因子、もしくは例えば急性期、細胞の特定の分化状態などの特定の生理学的状態の存在によって、または複製中の細胞においてのみ調節され得る。誘導性プロモーター及び誘導性システムは、限定されるものではないが、Invitrogen、Clontech及びAriadをはじめとする広範な販売元から入手可能である。多くの他のシステムが記載されており、当業者によって容易に選択することができる。外因的に供給されるプロモーターによって調節される誘導性プロモーターの例としては、亜鉛誘導性ヒツジメタロチオニン(MT)プロモーター、デキサメタゾン(Dex)誘導性マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーターシステム(WO98/10088);エクジソン昆虫プロモーター(No et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:3346-3351(1996))、テトラサイクリン抑制システム(Gossen et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:5547-5551(1992))、テトラサイクリン誘導システム(Gossen et al.,Science,268:1766-1769(1995),Harvey et al.,Curr.Opin.Chem.Biol.,2:512-518(1998)も参照)、RU486誘導システム(Wang et al.,Nat.Biotech.,15:239-243(1997)及びWang et al.,Gene Ther.,4:432-441(1997))及びラパマイシン誘導システム(Magari et al.,J.Clin.Invest.,100:2865-2872(1997))が挙げられる。この関連で有用となり得る更に他のタイプの誘導性プロモーターは、例えば温度、急性期、細胞の特定の分化状態などの特定の生理学的状態により、または複製中の細胞においてのみ調節されるものである。
【0071】
別の実施形態では、導入遺伝子の天然プロモーターが用いられる。天然プロモーターは、導入遺伝子の発現が天然の発現を模倣したものであることが望ましい場合に好ましい場合がある。天然プロモーターは、導入遺伝子の発現が、時間的もしくは発生的に、または組織特異的に、または特定の転写刺激に応答して調節される必要がある場合に用いることができる。更なる実施形態では、エンハンサーエレメント、ポリアデニル化部位またはコザックコンセンサス配列などの他の天然の発現制御エレメントを天然の発現を模倣するために用いることもできる。
【0072】
いくつかの実施形態では、調節配列は、組織特異的な遺伝子発現能力を付与する。いくつかの場合では、組織特異的調節配列は、組織特異的に転写を誘導する組織特異的な転写因子と結合する。かかる組織特異的調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)は当該技術分野では周知のものである。例示的な組織特異的調節配列としては、限定されるものではないが、以下の組織特異的プロモーター、すなわち、肝臓特異的チロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーター、インスリンプロモーター、グルカゴンプロモーター、ソマトスタチンプロモーター、膵臓ポリペプチド(PPY)プロモーター、シナプシン1(Syn)プロモーター、クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーター、哺乳動物デスミン(DES)プロモーター、α-ミオシン重鎖(α-MHC)プロモーター、または心筋トロポニンT(cTnT)プロモーターが挙げられる。他の例示的なプロモーターとしては、当業者には明らかであるものの中でもとりわけ、β-アクチンプロモーター、B型肝炎ウイルスコアプロモーター(Sandig et al.,Gene Ther.,3:1002-9(1996));α-フェトプロテイン(AFP)プロモーター(Arbuthnot et al.,Hum.Gene Ther.,7:1503-14(1996))、骨オステオカルシンプロモーター(Stein et al.,Mol.Biol.Rep.,24:185-96(1997));骨シアロタンパク質プロモーター(Chen et al.,J.Bone Miner.Res.,11:654-64(1996))、CD2プロモーター(Hansal et al.,J.Immunol.,161:1063-8(1998));免疫グロブリン重鎖プロモーター;T細胞受容体α鎖プロモーター、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーターなどのニューロン性プロモーター(Andersen et al.,Cell.Mol.Neurobiol.,13:503-15(1993))、神経フィラメント軽鎖遺伝子プロモーター(Piccioli et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:5611-5(1991))、及びニューロン特異的vgf遺伝子プロモーター(Piccioli et al.,Neuron,15:373-84(1995))が挙げられる。
【0073】
いくつかの実施形態では、DBDとトランスアクチベーターとを含む融合タンパク質をコードする導入遺伝子はプロモーターと機能的に連結される。いくつかの実施形態では、プロモーターは構成的プロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターは誘導性プロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターは組織特異的プロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターは神経組織に特異的である。いくつかの実施形態では、プロモーターはSSTまたはNPYプロモーターである。
【0074】
本開示の複数の態様は、複数のプロモーター(例えば、2、3、4、5、またはそれよりも多いプロモーター)を含む単離核酸に関する。例えば、1つのタンパク質をコードする第1の領域と1つのタンパク質をコードする第2の領域とを含む導入遺伝子を有するコンストラクトとの関連では、第1のプロモーター配列(例えば、タンパク質コード領域に機能的に連結された第1のプロモーター配列)を用いて第1のタンパク質コード領域の発現を誘導し、第2のプロモーター配列(例えば、第2のタンパク質コード領域に機能的に連結された第2のプロモーター配列)を用いて第2のタンパク質コード領域の発現を誘導することが望ましい場合がある。一般的に、第1のプロモーター配列と第2のプロモーター配列とは、同じプロモーター配列または異なるプロモーター配列であってよい。いくつかの実施形態では、第1のプロモーター配列(例えば、タンパク質コード領域の発現を誘導するプロモーター)は、RNAポリメラーゼIII(pol III)プロモーター配列である。pol IIIプロモーター配列の非限定的な例としては、U6及びH1プロモーター配列が挙げられる。いくつかの実施形態では、第2のプロモーター配列(例えば、第2のタンパク質の発現を誘導するプロモーター配列)は、RNAポリメラーゼII(pol II)プロモーター配列である。pol IIプロモーター配列の非限定的な例としては、T7、T3、SP6、RSV、及びサイトメガロウイルスプロモーター配列が挙げられる。いくつかの実施形態では、pol IIIプロモーター配列が第1のタンパク質コード領域の発現を誘導する。いくつかの実施形態では、pol IIプロモーター
配列が第2のタンパク質コード領域の発現を誘導する。
【0075】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)
いくつかの態様では、本開示は、単離されたアデノ随伴ウイルス(AAV)を提供する。AAVに関連して本明細書で使用するところの「単離された」なる用語は、人工的に作製された、または得られたAAVを指す。単離されたAAVは、組換え法を用いて作製することができる。かかるAAVは、本明細書では「組換えAAV」と呼ばれる。組換えAAV(rAAV)は、ヌクレアーゼ及び/またはrAAVの導入遺伝子が1つ以上の所定の組織(複数可)に特異的に送達されるような組織特異的ターゲティング能力を有することが好ましい。AAVカプシドは、これらの組織特異的なターゲティング能力を決定する重要な要素である。したがって、標的とされる組織に適したカプシドを有するrAAVを選択することができる。
【0076】
所望のカプシドターゲティングを有する組換えAAVを得るための方法は当該技術分野では周知である(例えば、参照によって本明細書にその全容を援用するUS2003/0138772を参照)。一般的に、その方法は、AAVカプシドタンパク質と、機能性rep遺伝子と、AAVの逆位末端反復配列(ITR)及び導入遺伝子からなる組換えAAVベクターと、組換えAAVベクターのAAVカプシドタンパク質内へのパッケージングを可能とするのに十分なヘルパー機能と、をコードする核酸配列を含む宿主細胞を培養することを含む。いくつかの実施形態では、カプシドタンパク質は、AAVのcap遺伝子によりコードされる構造タンパク質である。AAVは、いずれも選択的スプライシングによって単一のcap遺伝子から転写されるビリオンタンパク質1~3の3つのカプシドタンパク質(VP1、VP2、及びVP3と名付けられている)を含む。いくつかの実施形態では、VP1、VP2、及びVP3の分子量はそれぞれ約87kDa、約72kDa及び約62kDaである。いくつかの実施形態では、カプシドタンパク質は翻訳されるとウイルスゲノムの周囲に球状の60量体タンパク質を形成する。いくつかの実施形態では、カプシドタンパク質の機能は、ウイルスゲノムを保護し、ゲノムを送達し、宿主と相互作用することである。いくつかの態様では、カプシドタンパク質はウイルスゲノムを組織特異的に宿主に送達する。
【0077】
いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAV9、AAV10、AAVrh10、及びAAV.PHP.Bからなる群から選択されるAAV血清型のものである。いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質は、例えばAAVrh8血清型のような非ヒト霊長類に由来する血清型のものである。いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質は、例えば、AAV.PHP.Bなどの広範かつ効率的なCNSへの形質導入を行うために誘導された血清型のものである。いくつかの実施形態では、カプシドタンパク質は、AAV血清型9のものである。
【0078】
rAAVベクターをAAVベクター内にパッケージングするために宿主細胞内で培養される構成成分は、宿主細胞にトランスで与えることができる。あるいは、必要な構成成分(例えば、組換えAAVベクター、rep配列、cap配列、及び/またはヘルパー機能)のいずれか1つ以上が、当業者には周知の方法を用いて必要な構成成分の1つ以上を含むように操作された安定な宿主細胞によって与えられてもよい。かかる安定な宿主細胞は、誘導性プロモーターの制御下の必要な構成成分(複数可)を含むことが最も適当である。しかしながら、必要な構成成分(複数可)は構成的プロモーターの制御下にあってもよい。適当な誘導性及び構成的プロモーターの例は、導入遺伝子とともに使用するのに適した調節エレメントの考察において、本明細書で提供される。更なる別の代替例では、選択された安定な宿主細胞は、構成性プロモーターの制御下にある選択された構成成分(複数可)と、1つ以上の誘導性プロモーターの制御下にある他の選択された構成成分(複数可)とを含むことができる。例えば、293細胞(構成性プロモーターの制御下にあるE1ヘルパー機能を含む)から誘導されるが、誘導性プロモーターの制御下にあるrep及び/またはcapタンパク質を含む安定な宿主細胞を作製することができる。当業者は、更なる他の安定な宿主細胞を作製することができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、本開示は、導入遺伝子(例えば、転写調節ドメインに融合されたDNA結合ドメイン)をコードするコード配列を含む核酸を含む宿主細胞に関する。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、哺乳動物、酵母細胞、細菌細胞、昆虫細胞、植物細胞、または真菌細胞である。
【0080】
本開示のrAAVを作製するために必要とされる組換えAAVベクター、rep配列、cap配列、及びヘルパー機能は、任意の適当な遺伝的エレメント(ベクター)を使用してパッケージング宿主細胞に送達することができる。選択された遺伝的エレメントは、本明細書に記載されるものを含む任意の適当な方法によって送達することができる。本明細書のいずれの実施形態を構築するために用いられる方法も核酸操作の分野の当業者には周知のものであり、遺伝子操作、組換え操作、及び/または合成技術を含む(例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.を参照)。同様に、rAAVビリオンを作製する方法は周知であり、適当な方法の選択は本開示を限定するものではない(例えば、K.Fisher et al.,J.Virol.,70:520-532(1993)、及び米国特許第5,478,745号を参照)。
【0081】
いくつかの実施形態では、組換えAAVは、三重トランスフェクション法(米国特許第6,001,650号に詳細に記載される)を用いて作製することができる。一般的に、組換えAAVは、AAV粒子、AAVヘルパー機能ベクター、及びアクセサリー機能ベクターにパッケージングするためのAAVベクター(ITRエレメントを隣接させた導入遺伝子を含む)を宿主細胞にトランスフェクトすることにより作製される。AAVヘルパー機能ベクターは、生産的AAV複製及びカプシド形成を行うためにトランスで機能する「AAVヘルパー機能」配列(例えば、rep及びcap)をコードする。好ましくは、AAVヘルパー機能ベクターは、検出可能な野生型AAVビリオン(例えば、機能性のrep及びcap遺伝子を含むAAVビリオン)を生成することなく、効率的なAAVの作製を支持する。本開示とともに使用するのに適したベクターの非限定的な例としては、米国特許第6,001,650号に記載されるpHLP19、及び米国特許第6,156,303号に記載されるpRep6cap6ベクターが挙げられ、いずれも本明細書にその全容を援用する。アクセサリー機能ベクターは、AAVが複製するために依存する非AAV由来のウイルス及び/または細胞機能(例えば、アクセサリー機能)のためのヌクレオチド配列をコードする。アクセサリー機能としては、限定されるものではないが、AAV遺伝子の転写活性化、段階特異的なAAVのmRNAスプライシング、AAVのDNA複製、cap発現産物の合成、及びAAVカプシドのアセンブリに関与する部分を含む、AAVの複製に必要とされる機能が挙げられる。ウイルスに基づくアクセサリー機能は、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス1型以外の)、及びワクシニアウイルスなどの既知のヘルパーウイルスのいずれかに由来するものであってよい。
【0082】
いくつかの態様では、本明細書は、トランスフェクトされた宿主細胞を提供する。「トランスフェクション」なる用語は、細胞による外来DNAの取り込みを指し、細胞は外因性DNAが細胞膜の内部に導入されている場合に「トランスフェクト」されている。いくつかのトランスフェクション法が当該技術分野で一般的に知られている(例えば、Graham et al.(1973)Virology,52:456,Sambrook
et al.(1989)Molecular Cloning,a laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratories,New York,Davis et al.(1986)Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier,and Chu et al.(1981)Gene 13:197.を参照)。これらの方法を使用して、ヌクレオチド組込みベクターおよび他の核酸分子のような1つ以上の外因性核酸を適当な宿主細胞内に導入することができる。
【0083】
「宿主細胞」とは、対象とする物質を有しているかまたは有することが可能な任意の細胞を指す。宿主細胞はしばしば哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞はニューロンであり、場合によりGABA作動性ニューロンである。本明細書で使用するところの「GABA作動性ニューロン」とは、γ-アミノ酪酸(GABA)を生成する神経細胞である。哺乳動物では、GABAは、ニューロンと結合し、結合するニューロンを抑制する神経系に広く分布する神経伝達物質である。そのため、GABAは、てんかん、自閉症、及び不安症をはじめとする神経系を冒す多くの疾患との関係が示唆されている。SCN1Aヘミ接合体及びノックアウトマウスにおける研究により、脳内のGABA作動性ニューロンにおける著明なナトリウム電流欠陥が観察されている。宿主細胞を、AAVヘルパーコンストラクト、AAVミニ遺伝子プラスミド、アクセサリー機能ベクター、または組み換えAAVの生成に関連する他のトランスファーDNAのレシピエントとして用いることができる。この用語は、トランスフェクトされた元の細胞の子孫を含む。したがって、本明細書で使用するところの「宿主細胞」とは、外因性DNA配列をトランスフェクトした細胞を指す場合もある。単一の親細胞の子孫は、天然の変異、偶発的な変異、または意図的な変異のため、形態において、またはゲノム相補体もしくは全DNAの相補体に
おいて、元の親と必ずしも完全に同一でない場合がある点は理解されよう。
【0084】
本明細書で使用するところの「細胞株」なる用語は、インビトロで持続的または長期的な増殖及び分裂が可能な細胞の集団を指す。細胞株はしばしば、単一の前駆細胞に由来するクローン集団である。更に、かかるクローン集団の貯蔵または伝達の際に、核型に自然変化または誘導される変化が生じ得ることが当該分野で知られている。したがって、ここで言う細胞株に由来する細胞は、祖先細胞または培養物と正確に同じでない場合があり、ここで言う細胞株はかかるバリアントを含む。
【0085】
本明細書で使用するところの「組み換え細胞」なる用語は、生物学的に活性なポリペプチドの転写またはRNAなどの生物学的に活性な核酸の産生をもたらすDNAセグメントなどの外因性DNAセグメントが導入された細胞を指す。
【0086】
本明細書で使用するところの「ベクター」なる用語は、適切な制御エレメントと結合する際に複製可能であり、細胞間で遺伝子配列を伝達することができる、例えばプラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、人工染色体、ウイルス、ビリオンなどの任意の遺伝子エレメントを含む。いくつかの実施形態では、ベクターは、rAAV、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどのウイルスベクターである。したがって、この用語は、クローニング及び発現ビヒクル、ならびにウイルスベクターを含む。いくつかの態様において、有用なベクターは、転写しようとする核酸セグメントが、プロモーターの転写制御下に置かれたベクターであると企図される。
【0087】
「プロモーター」とは、遺伝子の特異的転写を開始させるために必要な細胞の合成マシナリーまたは導入された合成マシナリーによって認識されるDNA配列を指す。「機能的に連結された」、「機能的に配置された」、「制御下の」、または「転写制御下」なる語句は、核酸に対してプロモーターが、RNAポリメラーゼの開始及び遺伝子の発現を制御するための適正な位置及び向きにあることを意味する。「発現ベクターまたはコンストラクト」なる用語は、その核酸のコード配列の一部またはすべてが転写され得る核酸を含むあらゆる種類の遺伝子コンストラクトを意味する。いくつかの実施形態において、発現とは、例えば、転写された遺伝子から生物学的に活性なポリペプチド産物を生成するための核酸の転写を含む。組み換えベクターを所望のAAVカプシド中にパッケージングして本開示のrAAVを作製するための上記の方法は限定的であることを意図したものではなく、当業者には他の適当な方法が明らかであろう。
【0088】
標的遺伝子の発現を調節するための方法
本開示は、細胞または対象の遺伝子発現を調節するための方法を提供する。本方法は、細胞または対象に、DNA結合ドメイン(例えば、ZFPドメイン)とトランス活性化ドメインとを含む融合タンパク質をコードする導入遺伝子を含む単離核酸またはrAAVを投与することを一般的に含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、ZFPとVP64トランスアクチベーターとを含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、ZFPとp65トランスアクチベーターとを含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、ZFPとRTAトランスアクチベーターとを含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、ZFPとVPRトランスアクチベーターとを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、細胞または対象に、dCas9タンパク質と、SCN1Aを標的とする少なくとも1つのガイド核酸(例えば、配列番号83~94のいずれか1つを含むか、または配列番号83~94のいずれか1つによってコードされるガイド核酸)を投与することを含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質(例えばトランスアクチベーターを含む融合タンパク質)をコードする単離核酸またはrAAVを細胞または対象に投与することは、標的遺伝子(例えば、SCN1A)の発現を増加させる。したがって、いくつかの実施形態では、本開示に記載される組成物及び方法は、SCN1A遺伝子のハプロ不全により生じるドラベ症候群などの標的遺伝子のハプロ不全によって生じる状態を治療するうえで有用である。
【0090】
本明細書で使用するところの「ハプロ不全」とは、遺伝子(例えば、SCN1A)の一方のコピーが例えば遺伝子変異または欠失などにより不活性化されており、遺伝子の残りの機能的コピーがその遺伝子の正常な機能を維持するのに十分な量の遺伝子産物を生成するのに適切でない遺伝的状態を指す。
【0091】
ドラベ症候群は、乳児重症ミオクロニーてんかんとしても知られ、通常、3才までに発症する稀な生涯にわたるてんかんの形態である。ドラベ症候群は、長く頻繁な発作、行動及び発達遅滞、運動及びバランス障害、言語及び会話の遅れの問題、ならびに自律神経系の障害を特徴とする。いくつかの実施形態では、対象は、SCN1A遺伝子の一方のコピーが変異している結果、細胞または対象内のSCN1Aタンパク質が減少しているといった、ドラベ症候群に伴うハプロ不全を有する。ドラベ症候群患者の大半は、トランケートされたタンパク質に翻訳されるSCN1A変異を有している。ドラベ症候群に関連した他のSCN1A変異には、スプライス部位変異及びミスセンス変異、ならびにSCN1A遺伝子全体にランダムに分布した変異が含まれる。いくつかの実施形態では、本開示の融合タンパク質は、SCN1A遺伝子を特異的に標的とする(例えば、それに結合する)ZFPドメインと、トランス活性化ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、SCN1Aを標的とするための組成物は、(i)dCasタンパク質とトランス活性化ドメインとを含む融合タンパク質と、(ii)SCN1A遺伝子を特異的に標的とする(例えば、それに結合する)ガイド核酸(例えば、gRNA)と、を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、対象は、MED13Lハプロ不全症候群に関連したハプロ不全を有し、対象はMED13L遺伝子の1個の機能的コピーのみを有する。MED13Lハプロ不全症候群を患う対象は、通常、MED13L遺伝子の2番目の非機能的コピーに変異を有する。MED13Lハプロ不全症候群は、知的障害、会話障害、特徴的顔貌、及び発達遅滞を特徴とする。いくつかの実施形態では、本開示の融合タンパク質は、MED13L遺伝子を特異的に標的とする(例えば、それに結合する)ZFPドメインと、トランス活性化ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、MED13Lを標的とするための組成物は、(i)dCasタンパク質とトランス活性化ドメインとを含む融合タンパク質と、(ii)MED13L遺伝子を特異的に標的とする(例えば、それに結合する)ガイド核酸(例えば、gRNA)と、を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、対象は、骨髄異形成症候群に関連したハプロ不全を有する。骨髄異形成症候群を患う対象は通常、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ1(IDH1)、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ1(IDH2)、及び/またはGATA2遺伝子の一方のコピーに変異を有する。骨髄異形成症候群は、骨髄中の未成熟な血液細胞が正常な血液細胞に成熟しない一群のがんである。この症候群は、急性骨髄性白血病につながる場合がある。いくつかの実施形態では、本開示の融合タンパク質は、IDH1遺伝子を特異的に標的とする(例えば、結合する)ZFPドメインと、トランス活性化ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、IDH1を標的とするための組成物は、(i)dCasタンパク質とトランス活性化ドメインとを含む融合タンパク質と、(ii)IDH1遺伝子を特異的に標的とする(例えば、それに結合する)ガイド核酸(例えば、gRNA)と、を含む。いくつかの実施形態では、本開示の融合タンパク質は、IDH2遺伝子を特異的に標的とする(例えば、それに結合する)ZFPドメインと、トランス活性化ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、IDH2を標的とするための組成物は、(i)dCasタンパク質とトランス活性化ドメインとを含む融合タンパク質と、(ii)IDH2遺伝子を特異的に標的とする(例えば、それに結合する)ガイド核酸(例えば、gRNA)と、を含む。いくつかの実施形態では、本開示の融合タンパク質は、GATA2遺伝子を特異的に標的とする(例えば、それに結合する)ZFPドメインと、トランス活性化ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、GATA2を標的とするための組成物は、(i)dCasタンパク質とトランス活性化ドメインとを含む融合タンパク質と、(ii)GATA2遺伝子を特異的に標的とする(例えば、それに結合する)ガイド核酸(例えば、gRNA)と、を含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、対象は、ディジョージ症候群に関連したハプロ不全を有する。ディジョージ症候群を有する対象は通常、22番染色体の中央の22q11.2として知られる位置に30~40個の遺伝子の欠失を有している。詳細には、この疾患はTBX遺伝子のハプロ不全を特徴としうる。ディジョージ症候群は、先天性心臓疾患、特定の顔貌、頻繁な感染、発達遅滞、学習障害及び口蓋裂を特徴とする。いくつかの実施形態では、本開示の融合タンパク質は、TBX遺伝子を特異的に標的とする(例えば、それに結合する)ZFPドメインと、トランス活性化ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、TBXを標的とするための組成物は、(i)dCasタンパク質とトランス活性化ドメインとを含む融合タンパク質と、(ii)TBX遺伝子を特異的に標的とする(例えば、それに結合する)ガイド核酸(例えば、gRNA)と、を含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、対象は、CHARGE症候群に関連したハプロ不全を有する。多くの症例において、CHARGE症候群を有する対象は、CHD7遺伝子についてハプロ不全である。CHARGE症候群は、眼のコロボーマ、心臓の欠陥、後鼻孔閉鎖症、成長及び/または発達の遅滞、生殖器及び/または泌尿器異常、及び/または耳の異常及び聴覚消失を特徴とする。いくつかの実施形態では、本開示の融合タンパク質は、CHD7遺伝子を特異的に標的とする(例えば、それに結合する)ZFPドメインと、トランス活性化ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、CHD7を標的とするための組成物は、(i)dCasタンパク質とトランス活性化ドメインとを含む融合タンパク質と、(ii)CHD7遺伝子を特異的に標的とする(例えば、それに結合する)ガイド核酸(例えば、gRNA)と、を含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、対象は、エーラス・ダンロス症候群に関連したハプロ不全を有する。エーラス・ダンロス症候群を有する対象は、COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL5A1、COL5A2、TNXB、ADAMTS2、PLOD1、B4GALT7、DSE、及び/またはD4ST1/CHST14遺伝子についてハプロ不全でありうる。エーラス・ダンロス症候群は、皮膚の過伸展性を特徴とし、大動脈解離、脊柱側弯症、及び若年性骨関節症を生じうる。いくつかの実施形態では、本開示の融合タンパク質は、COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL5A1、COL5A2、TNXB、ADAMTS2、PLOD1、B4GALT7、DSE、またはD4ST1/CHST14遺伝子のうちのいずれか1つを特異的に標的とする(例えば、それに結合する)ZFPドメインと、トランス活性化ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL5A1、COL5A2、TNXB、ADAMTS2、PLOD1、B4GALT7、DSE、またはD4ST1/CHST14のうちのいずれか1つを標的とするための組成物は、(i)dCasタンパク質とトランス活性化ドメインとを含む融合タンパク質と、(ii)COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL5A1、COL5A2、TNXB、ADAMTS2、PLOD1、B4GALT7、DSE、またはD4ST1/CHST14遺伝子のうちのいずれか1つを特異的に標的とする(例えば、それに結合する)ガイド核酸(例えば、gRNA)と、を含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、対象は、前頭側頭型認知症(FTD)に関連したハプロ不全を有する。FTDを有する対象は、Tauタンパク質をコードするMAPT遺伝子及び/またはGRN遺伝子についてハプロ不全である。FTDは、記憶の喪失、社会性の欠如、衝動制御障害、及び会話の困難を特徴とする。いくつかの実施形態では、本開示の融合タンパク質は、MAPT遺伝子を特異的に標的とする(例えば、それに結合する)ZFPドメインと、トランス活性化ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、MAPTを標的とするための組成物は、(i)dCasタンパク質とトランス活性化ドメインとを含む融合タンパク質と、(ii)MAPT遺伝子を特異的に標的とする(例えば、それに結合する)ガイド核酸(例えば、gRNA)と、を含む。いくつかの実施形態では、本開示の融合タンパク質は、GRN遺伝子を特異的に標的とする(例えば、それに結合する)ZFPドメインと、トランス活性化ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、GRNを標的とするための組成物は、(i)dCasタンパク質とトランス活性化ドメインとを含む融合タンパク質と、(ii)GRN遺伝子を特異的に標的とする(例えば、それに結合する)ガイド核酸(例えば、gRNA)と、を含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、対象は、ホルト・オーラム症候群に関連したハプロ不全を有する。ホルト・オーラム症候群を有する対象は、TBX5遺伝子についてハプロ不全である。ホルト・オーラム症候群は、先天性心臓欠陥及び心臓興奮伝導障害を含む心臓合併症を特徴とする。いくつかの実施形態では、本開示の融合タンパク質は、TBX5遺伝子を特異的に標的とする(例えば、それに結合する)ZFPドメインと、トランス活性化ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、TBX5を標的とするための組成物は、(i)dCasタンパク質とトランス活性化ドメインとを含む融合タンパク質と、(ii)TBX5遺伝子を特異的に標的とする(例えば、それに結合する)ガイド核酸(例えば、gRNA)と、を含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、対象は、マルファン症候群に関連したハプロ不全を有する。マルファン症候群を有する対象は、通常、フィブリン1タンパク質をコードするFBN1遺伝子についてハプロ不全である。マルファン症候群は、不均衡四肢長、若年性関節炎、心臓合併症、及び/または自律神経系の機能不全を特徴とする。いくつかの実施形態では、本開示の融合タンパク質は、FBN1遺伝子を特異的に標的とする(例えば、それに結合する)ZFPドメインと、トランス活性化ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、FBN1を標的とするための組成物は、(i)dCasタンパク質とトランス活性化ドメインとを含む融合タンパク質と、(ii)FBN1遺伝子を特異的に標的とする(例えば、それに結合する)ガイド核酸(例えば、gRNA)と、を含む。
【0100】
本開示は、本明細書に記載の融合タンパク質を対象に投与する方法に一部基づいたものである。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、DBDと、転写活性化因子とを含む。いくつかの実施形態では、DBDは、SCN1A遺伝子に結合するZNF、TALE、dCasタンパク質(例えば、dCas9またはdCas12a)、またはホメオドメインである。いくつかの実施形態では、転写活性化因子は、VP64、p65、RTA、またはVP64-p65-RTA(VPR)を含む3つの部分からなる転写活性化因子である。いくつかの実施形態では、融合タンパク質にはAAVの逆位末端反復(ITR)配列が隣接される。いくつかの実施形態では、融合タンパク質はプロモーターと機能的に連結される。いくつかの実施形態では、対象は、SCN1Aタンパク質のハプロ不全につながるSCN1Aの変異を有するかまたは有することが疑われる。いくつかの実施形態では、対象は、ドラベ症候群を有するかまたは有することが疑われる。
【0101】
いくつかの態様では、本開示は、細胞内の標的遺伝子の発現を調節する(例えば、増加させる、減少させる、など)方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、細胞内の標的遺伝子(例えば、SCN1A)の発現を増加させる方法に関する。いくつかの実施形態では、細胞は哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は対象内(例えば、インビボ)にある。いくつかの実施形態では、対象は哺乳動物対象、例えばヒトである。いくつかの実施形態では、細胞は神経系細胞(中枢神経系細胞または末梢神経系細胞)、例えば、ニューロン(例えば、GABA作動性ニューロン、単極性ニューロン、双極性ニューロン、バスケット細胞、ベッツ細胞、ルガロ細胞、有棘ニューロン、プルキンエ細胞、錐体細胞、レンショー細胞、顆粒細胞、運動ニューロン、紡錘細胞など)またはグリア細胞(例えば、アストロサイト、希突起膠細胞、上衣細胞、
放射状グリア細胞、シュワン細胞など)である。
【0102】
「正常な」細胞または対象では、標的遺伝子(例えば、SCN1A)の発現は十分であり、細胞または対象が標的遺伝子(例えば、SCN1A)に関してハプロ不全ではない。いくつかの実施形態では、導入遺伝子の発現または活性の「改善」または「増加」は、本明細書に記載される1つ以上の単離核酸、rAAV、または組成物が投与されていない細胞または対象における導入遺伝子の発現または活性に対して測定される。いくつかの実施形態では、導入遺伝子の発現または活性の「改善」または「増加」は、対象に本明細書に記載される1つ以上の単離核酸、rAAV、または組成物が投与された後(例えば、遺伝子発現は投与前または投与後に測定される)の対象における導入遺伝子の発現または活性に対して測定される。例えば、いくつかの実施形態では、細胞または対象におけるSCN1Aの発現の「改善」または「増加」は、融合ZFP-トランスアクチベーターをコードする導入遺伝子が投与されていない細胞または対象に対して測定される。いくつかの実施形態では、本開示に記載される方法は、本開示に記載される1つ以上の組成物を投与されていない対象のSCN1Aの発現及び/または活性に対して2倍~100倍(例えば、2倍、5倍、10倍、50倍、100倍など)増加したSCN1Aの発現及び/または活性を対象にもたらす。
【0103】
本明細書で使用するところの「治療」、「治療する」、及び「療法」なる用語は、治療的処置及び防止的または予防的措置を指す。これらの用語には、例えばハプロ不全の遺伝子、例えばハプロ不全のSCN1A遺伝子に関連する症状などの既存の症状を改善すること、更なる症状を予防すること、症状の基礎にある要因を改善または予防することと、症状の要因を予防または逆転させることを含む。したがって、これらの用語は、疾患(例えば、ハプロ不全遺伝子に関連する疾患または状態、例えばドラベ症候群)を有する、またはかかる疾患を発症する可能性を有する対象に有益な結果がもたらされることを示す。更に、「治療」なる用語は、対象への薬剤(例えば、治療剤または治療組成物、例えば、標的遺伝子または標的遺伝子の調節領域を標的とするかもしくはこれに結合する単離核酸またはrAAV)の適用または投与、または、疾患、疾患の症状または疾患の素因を治療、治癒、軽減、緩和、変化、修正、改善、向上し、または影響を及ぼす目的での、疾患、疾患の症状または疾患の素因を有する可能性のある対象から単離された組織または細胞株の投与も含む。
【0104】
治療剤または治療組成物は、特定の疾患(例えば、ハプロ不全に関連する疾患または状態、例えば、ドラベ症候群)の症状を予防及び/または軽減する薬学的に許容される形態の化合物を含むことができる。例えば、治療組成物は、ハプロ不全に関連する疾患または状態、例えばドラベ症候群の症状を予防及び/または軽減する医薬組成物とすることができる。本発明の治療組成物は任意の適当な形態で提供されることが企図される。治療組成物の形態は、本明細書に記載される投与方法を含む多くの要因に依存する。治療組成物は、本明細書に記載される他の成分の中でもとりわけ、希釈剤、アジュバント、及び賦形剤を含有することができる。
【0105】
投与方法
本明細書の単離核酸、rAAV、及び組成物は、当該技術分野では周知の任意の適切な方法による組成物として対象に投与することができる。例えば、好ましくは、生理学的に適合する担体中に懸濁した(例えば、組成物中)rAAVを、例えば、ヒト、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ヒツジ、ウサギ、ウマ、ウシ、ヤギ、ブタ、モルモット、ハムスター、ニワトリ、シチメンチョウ、または非ヒト霊長類(例えば、マカク)などの対象、すなわち宿主動物に投与することができる。いくつかの実施形態では、宿主動物は、ヒトを含まない。
【0106】
哺乳動物対象へのrAAVの投与は、例えば、筋肉内注射によるか、または哺乳動物対象の血流中への投与によるものとすることができる。血流中への投与は、静脈、動脈、または他の任意の脈管中への注入によるものとすることができる。いくつかの実施形態では、rAAVは、外科分野では周知の方法である分離式肢灌流法によって血流中に投与されるが、この方法は当業者がrAAVビリオンの投与に先立って全身の循環から肢を分離することを基本的に可能とする。当業者は、米国特許第6,177,403号に記載される分離式肢灌流法の変法を用いて、分離された肢の脈管構造中にビリオンを投与して筋肉細胞または組織中への形質導入を潜在的に増強することもできる。更に、ある特定の場合では、ビリオンを対象のCNSに送達することが望ましい場合もある。「CNS」とは、脊椎動物の脳及び脊髄のすべての細胞及び組織を意味する。したがって、この用語には、限定されるものではないが、神経細胞、グリア細胞、アストロサイト、脳脊髄液(CSF)、間質空間、骨、軟骨などが含まれる。組換えAAVは、例えば定位注射などによる当該分野では周知の神経外科技術を用いて、針、カテーテルまたは関連する装置により、例えば脳室領域中への、ならびに線条体(例えば、線条体の尾状核もしくは被殻)、脊髄及び神経筋接合部、または小脳小葉への注射により、CNSまたは脳に直接投与することができる(例えば、Stein et al.,J Virol 73:3424-3429,1999、Davidson et al.,PNAS 97:3428-3432,2000;Davidson et al.,Nat.Genet.3:219-223,1993、及びAlisky and Davidson,Hum.Gene Ther.11:2315-2329,2000を参照)。いくつかの実施形態では、本開示に記載されるrAAVは静脈内注射によって投与される。いくつかの実施形態では、rAAVは脳内注射によって投与される。いくつかの実施形態では、rAAVは髄腔内注射によって投与される。いくつかの実施形態では、rAAVは線条体内注射によって投与される。いくつかの実施形態では、rAAVは頭蓋内注射によって送達される。いくつかの実施形態では、rAAVは大槽内注射によって送達される。いくつかの実施形態では、rAAVは側脳室注射によって送達される。
【0107】
本開示の複数の態様は、カプシドタンパク質と、導入遺伝子をコードする核酸とを含む組換えAAVを含む組成物であって、導入遺伝子が1つ以上のタンパク質をコードする核酸を含む、組成物に関する。いくつかの実施形態では、核酸はAAV ITRを更に含む。いくつかの実施形態では、組成物は、薬学的に許容される担体を更に含む。
【0108】
本開示の組成物は、rAAVを単独で、または1つ以上の他のウイルス(例えば、1つ以上の異なる導入遺伝子を有する第2のrAAV)と組み合わせて含んでもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、1つ以上の異なる導入遺伝子をそれぞれが有する1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれより多くの異なるrAAVを含む。
【0109】
当業者によれば、rAAVが対象とする適応症を考慮して、適当な担体を容易に選択することができる。例えば、1つの適当な担体は食塩水を含み、広範な緩衝液(例えばリン酸緩衝生理食塩水)と配合することができる。他の例示的な担体としては、無菌食塩水、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、ゼラチン、デキストラン、寒天、ペクチン、ピーナッツ油、ゴマ油、及び水が挙げられる。担体の選択は、本開示の限定要因ではない。
【0110】
場合により、本開示の組成物は、rAAVおよび担体(複数可)以外に、保存剤または化学安定化剤などの他の従来の医薬成分を含んでもよい。適当な例示的な保存剤としては、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、没食子酸プロピル、パラベン類、エチルバニリン、グリセリン、フェノール、パラクロロフェノール、及びPluronic(登録商標)F-68などのポロキサマー(非イオン性界面活性剤)が挙げられる。適当な化学安定化剤としては、ゼラチン及びアルブミンが挙げられる。
【0111】
rAAVは、所望の組織の細胞にトランスフェクトするうえで、また過度の有害作用を伴わずに十分なレベルの遺伝子導入及び発現を与えるうえで十分な量で投与される。従来の、及び薬学的に許容される投与経路としては、限定されるものではないが、選択された臓器への直接送達(例えば、肝臓への門脈内送達)、経口、吸入(鼻内及び気管内送達を含む)、眼内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、腫瘍内、及び他の非経口の投与経路が挙げられる。投与経路は必要に応じて組み合わせることができる。
【0112】
特定の「治療効果」を得るために必要とされるrAAVビリオンの用量、例えば体重1キログラムあたりのゲノムコピー数(GC/kg)としての用量の単位は、限定されるものではないが、rAAVビリオンの投与経路、治療効果を得るために必要とされる遺伝子またはRNAの発現のレベル、治療される特定の疾患または障害、及び遺伝子またはRNA産物の安定性を含むいくつかの要因に基づいて異なる。当業者であれば、上記に述べた因子、ならびに当該技術分野では周知の他の因子に基づいて、特定の疾患または障害を有する患者を治療するためのrAAVビリオンの用量範囲を容易に決定することができる。
【0113】
rAAVの有効量とは、動物に感染させ、所望の組織を標的とするのに十分な量である。いくつかの実施形態では、rAAVの有効量は、リソソーム蓄積症の発症前段階において対象に投与される。いくつかの実施形態では、リソソーム蓄積症の発症前段階は、出生時(例えば、周産期)~4週目に生じる。
【0114】
いくつかの実施形態では、rAAV組成物は、特に高濃度のrAAVが存在する場合(例えば、約1013GC/mL以上)、組成物中のAAV粒子の凝集を低減するように配合される。rAAVの凝集を低減するための方法は当該技術分野では周知であり、例えば、界面活性剤の添加、pH調整、塩濃度の調整などを含む(例えば、参照によって本明細書にその内容を援用するWright FR,et al.,Molecular Therapy(2005)12,171-178を参照)。
【0115】
薬学的に許容される賦形剤及び担体溶液の配合は当業者には周知であり、様々な治療レジメンにおいて本明細書に記載される特定の組成物を使用するのに適した投与及び治療レジメンの開発もまた、当業者には周知である。
【0116】
一般的には、これらの製剤は、少なくとも約0.1%以上の活性化合物を含有することができるが、活性成分(複数可)の割合は無論のこと異なってよく、都合に応じて全製剤の重量または体積の約1または2%~約70%または80%以上であってよい。当然ながら、各々の治療上有用な組成物中の活性化合物の量は、化合物の任意の特定の単位用量中で適当な投与量が得られるように調製することができる。溶解度、バイオアベイラビリティー、生物学的半減期、投与経路、製品の有効期間、及び他の薬理学的考慮事項などの要因は、かかる医薬製剤の調製の分野における当業者によって想到されるものであり、したがって、様々な投与量及び治療レジメンが望ましい場合がある。
【0117】
ある特定の状況では、本明細書に開示される適切に配合された医薬組成物中のrAAVベースの治療用コンストラクトを、皮下、膵臓内、鼻腔内、非経口、静脈内、筋肉内、髄腔内、または経口、腹腔内投与するか、または吸入により投与することが望ましい。いくつかの実施形態では、米国特許第5,543,158号、同第5,641,515号及び同第5,399,363号(いずれも参照によって本明細書にその全容を具体的に援用する)に記載される投与モダリティを用いてrAAVを投与することができる。いくつかの実施形態では、好ましい投与方法は、門脈注射によるものである。
【0118】
注射用途に適した医薬形態としては、滅菌注射溶液または分散液の即時調製のための滅菌水溶液または分散液及び滅菌粉末が挙げられる。グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びこれらの混合物中で、また、油中で分散液を調製することもできる。通常の保存および使用条件下では、これらの製剤は、微生物の増殖を防止するための防腐剤を含む必要がある。多くの場合、かかる形態は滅菌状態であり、かつ容易に注射可能な程度の流動性を有さなければならない。組成物は、製造及び保存条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、及び植物油を含む溶媒または分散媒とすることができる。例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合には必要な粒径の維持、及び界面活性剤の使用によって適切な流動性を維持することができる。例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどの様々な抗細菌剤及び抗真菌剤によって微生物の活動を防止することができる。多くの場合で、例えば、糖類または塩化ナトリウムなどの等張剤を含むことが好ましい。例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの吸収を遅延させる剤を組成物中に使用することによって注射用組成物の吸収を遅延させることができる。
【0119】
注射可能な水溶液を投与するには、例えば、溶液を必要に応じて適宜、緩衝化することができ、液体希釈剤を初めに十分な食塩水またはグルコースにより等張液にすることができる。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下及び腹腔内投与に特に適している。このことに関連して、使用することができる無菌の水性媒質は当業者には周知のものである。例えば、1回の投与量を、1mlの等張NaCl溶液中に溶解し、1000mlの皮下点滴液に添加するか、または提示された点滴部位で注入することができる(例えば、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”15th Edition,pages 1035-1038及び1570-1580を参照)。投与量のある程度の変動が、宿主の条件に応じて必然的に生じる。どのような場合であれ、投与の責任者は個々の宿主についての適当な用量を決定する。
【0120】
必要な量の活性rAAVを適当な溶媒中に、必要に応じて本明細書に列挙した各種の他の成分とともに加えた後、滅菌濾過を行うことによって滅菌注射液が調製される。一般的に、分散液は、基本分散媒及び上記に列挙したものからの必要な他の成分を含む滅菌ビヒクルに各種の滅菌有効成分を添加することによって調製される。滅菌注射液の調製用の滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥及びフリーズドライ法であり、予め滅菌濾過したその溶液から有効成分及び任意の更なる所望の成分の粉末が得られる。
【0121】
本明細書に開示されるrAAV組成物は、中性または塩の形態で製剤化することができる。薬学的に許容される塩としては、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と形成される)が挙げられ、例えば、塩酸またはリン酸などの無機酸と、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸と形成される。遊離カルボキシル基と形成される塩も、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化鉄などの無機塩基から、また、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から誘導することができる。製剤化に際して、溶液は、投与製剤と適合する形で、かつ治療上有効な量で投与される。これらの製剤は、注射可能な溶液、薬物放出カプセルなどの様々な剤形で容易に投与される。
【0122】
本明細書で使用するところの「担体」には、ありとあらゆる溶媒、分散媒、ビヒクル、コーティング、希釈剤、抗細菌及び抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤、緩衝化剤、担体溶液、懸濁液、コロイドなどが含まれる。薬学的に活性な物質用のかかる媒質および剤の使用は当該技術分野では周知である。補助的な活性成分を組成物に添加することもできる。「薬学的に許容される」なる表現は、宿主に投与される際にアレルギー反応または同様の有害な反応を生じない分子実体及び組成物を指す。
【0123】
リポソーム、ナノカプセル、微粒子、マイクロスフェア、脂質粒子、小胞などの送達ビヒクルを、適当な宿主細胞中への本開示の組成物の導入に使用することができる。詳細には、rAAVベクターにより送達される導入遺伝子は、脂質粒子、リポソーム、小胞、ナノスフェア、またはナノ粒子などの中に封入して送達用に製剤化することができる。
【0124】
かかる製剤は、本明細書に開示される核酸またはrAAVコンストラクトの薬学的に許容される製剤の導入に好ましいものとなりうる。リポソームの形成および使用は、当業者には一般的に知られている。近年、血清安定性及び循環半減期が向上したリポソームが開発されている(米国特許第5,741,516号)。更に、有望な薬剤担体としてのリポソーム及びリポソーム様製剤の様々な方法が記載されている(米国特許第5,567,434号、同第5,552,157号、同第5,565,213号、同第5,738,868号及び同第5,795,587号)。
【0125】
リポソームは、他の手順によるトランスフェクションに対して通常では耐性を示す多くの細胞タイプで効果的に使用されてきた。加えて、リポソームは、ウイルスベースの送達系で一般的であるDNAの長さによる制約を有さない。リポソームは、遺伝子、薬物、放射性治療剤、ウイルス、転写因子及びアロステリックエフェクターを様々な培養細胞株および動物中に導入するために効果的に用いられている。加えて、リポソーム媒介薬物送達の有効性を検証するいくつかの成功した臨床試験が行われている。
【0126】
リポソームは、水性の溶媒中に分散して多重膜の同心状二重層小胞(多重膜小胞(MLV)とも呼ばれる)を自発的に形成するリン脂質から形成される。MLVは一般的に25nm~4μmの直径を有する。MLVを超音波処理すると、コア中に水溶液を含む、200~500オングストロームの範囲の直径を有する小さな単層膜小胞(SUV)が形成される。
【0127】
あるいは、rAAVのナノカプセル製剤を用いることもできる。ナノカプセルは、一般的に、物質を安定かつ再現可能な形で閉じ込めることができる。細胞内の過剰量のポリマーによる副作用を防止するため、こうした超微粒子(約0.1μmの粒径)はインビボで分解可能なポリマーを用いて設計する必要がある。これらの要件を満たす生分解性ポリアルキルシアノアクリレートナノ粒子の使用が考えられる。
【0128】
上記の送達の方法に加えて、以下の技術もrAAV組成物を宿主に送達する代替的な方法として想到される。米国特許第5,656,016号には、ソノフォレーシス(例えば、超音波)が、循環系中への、また循環系にわたった薬物浸透の速度及び有効性を増強するためのデバイスとして使用及び記載されている。想到される他の薬物送達の選択肢としては、骨内注射法(米国特許第5,779,708号)、マイクロチップデバイス(米国特許第5,797,898号)、眼用製剤(Bourlais et al.,1998)、経皮マトリックス(米国特許第5,770,219号及び同第5,783,208号)ならびにフィードバック制御送達(米国特許第5,697,899号)がある。
【実施例0129】
実施例1.SCN1A遺伝子発現を増加させるためのジンクフィンガータンパク質の設計
ヒト(HEK293T細胞)とマウス(HEPG2細胞)のSCN1Aプロモーター配列間の相同領域を、それぞれの種についてRIKEN CAGE-seqデータセットで特定された2つの著明な転写開始点の周囲の配列のアラインメントによって特定した(図1)。ヒト(HEK)とマウス(HEPG2)間の高度に保存された配列がSCN1Aの近位プロモーター領域に存在している(図2)。6個のフィンガーで構成される3つのZFPを、所定のDNA結合特異性での1個のフィンガーモジュールと2個のフィンガーモジュールとのアセンブリによって、重複する15~22ヌクレオチドの相同性領域に結合するように設計した(図3)。それぞれ6個のフィンガーで構成される3つのZFP(ZFP1~ZFP3)を、図3に特定される重複した高度に保存された配列に結合するように設計した。各フィンガーは、SCN1Aの近位プロモーターの高度に保存された領域内の3塩基領域(トリプレット)に結合するように設計する。
【0130】
ZFP1は、図4Aに示されるSCN1A遺伝子の近位プロモーター領域(配列番号2)内の個々の3つの塩基領域(「・」によって分けられた赤で示されたDNAトリプレット)を認識する。図4Bに示されるように、ZFP1のフィンガー1~フィンガー6の各認識へリックス(7個のアミノ酸からなる)は、3ヌクレオチドの配列と結合する。ZFP1の6個のフィンガーのアミノ酸配列(配列番号17~22)を図4Cに示す。各フィンガー間のリンカーが強調表示され、カノニカル(TGEKP)及び非カノニカル(TGSQKP)リンカー配列を示す。ZFP1の6個のフィンガーのヌクレオチド配列(配列番号11~16)を図4Dに示す。
【0131】
表1.SCN1Aを標的とするZFP1の認識ヘリックス
【表1】
【0132】
ZFP2は、図5Aに示されるSCN1A遺伝子の近位プロモーター領域(配列番号3)内の個々の3塩基領域(「・」によって分けられた赤で示されたDNAトリプレット)を認識する。図5Bに示されるように、ZFP2のフィンガー1~フィンガー6の各認識へリックス(7個のアミノ酸からなる)は、3ヌクレオチドの配列と結合する。ZFP2の6個のフィンガーのアミノ酸配列(配列番号29~34)を図5Cに示す。各フィンガー間のリンカーが強調表示され、カノニカル(TGEKP)及び非カノニカル(TGSQKP)リンカー配列を示す。ZFP1の6個のフィンガーのヌクレオチド配列(配列番号23~28)を図5Dに示す。
【0133】
表2.SCN1Aを標的とするZFP2の認識ヘリックス
【表2】
【0134】
ZFP3は、図6Aに示されるSCN1A遺伝子の近位プロモーター領域(配列番号4)内の個々の3塩基領域(「・」によって分けられた赤で示されたDNAトリプレット)を認識する。図6Bに示されるように、ZFP3のフィンガー1~フィンガー6の各認識へリックス(7個のアミノ酸からなる)は、3ヌクレオチドの配列と結合する。ZFP3の6個のフィンガーのアミノ酸配列(配列番号41~46)を図6Cに示す。各フィンガー間のリンカーが強調表示され、カノニカル(TGEKP)及び非カノニカル(TGSQKP)リンカー配列を示す。ZFP1の6個のフィンガーのヌクレオチド配列(配列番号35~40)を図6Dに示す。
【0135】
表3.SCN1Aを標的とするZFP3の認識ヘリックス
【表3】
【0136】
SCN1A遺伝子の近位プロモーター領域内で保存された配列を標的とするように設計された更なるZFPは、それぞれ5個または6個のフィンガードメインを含み、ヒトとマウスのSCN1A間で高度に保存された15~22ヌクレオチドの領域に結合する。
【0137】
表4.SCN1Aを標的とするジンクフィンガータンパク質
【表4-1】
【表4-2】
【0138】
実施例2.ZFPは、ヒト細胞のSCN1A遺伝子の発現を増加させる。
ZFP1~ZFP3がSCN1Aの転写を増加させる能力を調べるため、ZFP1~ZFP3のDNA結合ドメインを、VP64、p53、及びRTA(VPR)の3つの部分からなる強力なハイブリッド転写アクチベータードメインに融合してキメラトランスアクチベーターを作製した。VPR融合アクチベータードメインは、転写調節複合体を動員してクロマチンへのアクセシビリティを高めるように働き、高い遺伝子発現レベルを得る助けとなる。したがって、ZFPドメインは、VPRアクチベーターが近位プロモーター領域内の高度に保存された領域を標的とするようにさせることによってSCN1A遺伝子の発現を増加させる。
【0139】
VPR-ZFP1、VPR-ZFP2、及び/またはVPR-ZFP3融合タンパク質をコードする発現プラスミドを一過性トランスフェクションによってHEK293細胞にトランスフェクトし、SCN1A遺伝子の発現量をqRT-PCRにより測定した(TBPの発現量を正規化の基準として用いた)。VPR-ZFP融合体は、VPRに融合されたZFP1、ZFP2、及び/またはZFP3を含む。VPRにそれぞれ融合させたZFP1、ZFP2、及びZFP3を含む多重調節用の3つのコンストラクトのトランスフェクションにより、非トランスフェクト細胞と比較してSCN1A遺伝子の発現量が45倍に増加し、VPR-ZFPキメラトランスアクチベーターが遺伝子のプロモーター近位領域で結合することにより、SCN1A遺伝子の発現を増加させることができることを示した。
【0140】
VPR-[ZFP1~ZFP3]融合タンパク質、ならびにZFPのDNA結合ドメインが現在設計中であるVPR-ZFP融合タンパク質が、HeLa及びHEPG2細胞にトランスフェクトされており、どちらも低いSCN1A発現レベルを示している。各VPR-ZFP融合タンパク質は、VPRトランスアクチベーターに融合された1個の、または複数のZFPのDNA結合ドメインの組み合わせを含んでいる。SCN1A遺伝子の発現量をqRT-PCRにより測定してこれらのVPR-ZFP融合体が遺伝子発現を増加させることができるかどうかを調べた。最も有望なVPR-ZFP融合体候補を、アデノ随伴ウイルス(AAV)による各融合タンパク質の送達後に初代マウス皮質ニューロンでSCN1Aの発現を増加させる能力について試験した。
【0141】
各ZFPドメインの特異性が、DNAへの結合に重要な残基を変化させたランダム化ライブラリーから理想的なZFPを特定するために細菌1ハイブリッド選択システム(例えば、Meng,et al.,“Targeted gene inactivation in zebrafish using engineered zinc-finger nucleases,”Nat Biotechnol,2008を参照)を用いて更に最適化されている。新たに選択されたZFPを、個々に、及び複数のZFPの組み合わせとしてVPRトランスアクチベータードメインに融合して、HEK293、HeLa、及びHEPG2細胞、ならびに初代マウス皮質ニューロンにトランスフェクトし、qRT-PCR分析後にSCN1A遺伝子の発現を最も増加させる候補ZFPドメインを特定する。
【0142】
実施例3.有効性の異なるZFPSCN1Aトランスアクチベーターシリーズの生成
最も効果的にSCN1A遺伝子の発現を増加させた実施例2からのZFPを、期待される有効性の勾配を有する一連のヒトトランス活性化ドメイン(例えば、Rta、p65、Hsf1)と融合させて、一定範囲のAAVの多重感染度(MOI)にわたってSCN1A遺伝子の発現の2倍の増加を達成するアセンブリを特定する。正常なマウス及びSCN1A+/-マウスから得たマウス初代皮質ニューロンに、ZFPSCN1A融合トランスアクチベーターを発現するAAVベクターを感染させる Nav1.1タンパク質の発現レベルを、ウェスタンブロット及びqPCRを用いて評価する。TGFαによる処置はNav1.1タンパク質の発現量を約6~8倍増加させる(Chen et al.,2015,Neuroinflammation 12:126)ことから、TGFαで8時間処理した初代ニューロンをポジティブコントロールとして使用する。ZFPSCN1Aトランス活性化の特異性を実証するために他のNavαサブユニット遺伝子の発現レベルの変化も評価する。免疫蛍光法を用い、ZFPSCN1Aに対する抗体(HAtag)及びGABA作動性ニューロンに特異的なマーカー(例えば、パルブアルブミンまたはソマトスタチン)または汎用ニューロンマーカー(例えば、NeuN、TUBIII、及び/またはMap2)による二重免疫蛍光染色により、Nav1.1の発現がGABA作動性介在ニューロンに制限されたままであるかどうかを判定する。SCN1A遺伝子のトランス活性化に対するZFPSCN1Aの特異性もChIP-Seq及びRNA-Seqにより評価して、ゲノム結合部位及び結果として得られる遺伝子導入時に生成されるトランスクリプトームプロファイルをマッピングする。
【0143】
実施例4.プロモーター活性に依存したSCN1A-ZFPトランスアクチベーターの設計を導くためのGABA作動性抑制性ニューロンにおけるヒストン組織化及びSCN1Aプロモーターのエピゲノミック・ランドスケープ
ゲノム標的と結合するZFPの能力は、標的配列のアクセシビリティ(例えば、ヌクレオソーム非含有領域の存在)に依存する。DNAへのアクセシビリティについてのこの要件を用いて、DNAの標的配列アクセシビリティの存在に基づいてある細胞タイプのサブセットでのみ機能するZFPトランスアクチベーターを設計する。細胞タイプの活性における更なる制限は、ZFPトランスアクチベーター発現に対する組織特異的プロモーターの使用により実現される。フグ(トラフグ)ソマトスタチン及びニューロペプチドY遺伝子由来の小型プロモーターは、AAVベクター及びレンチウイルスとの関連で皮質及び海馬の抑制性介在ニューロンに高度に特異的な導入遺伝子発現を誘導することが示されている。いくつかの実施形態では、DNAへのアクセシビリティに感受性を有するSCN1A特異的なZFPのAAVを用いた転写制限の組み合わせは、脳全体にわたった抑制性介在ニューロンにおけるNav1.1タンパク質発現の高度に特異的な増加をもたらす。この二重調節アプローチは、Nav1.1が通常は発現されない細胞におけるNav1.1タンパク質の異所性発現によって生じ得る副作用を最小限に抑える。
【0144】
ヌクレオソーム構造及びSCN1Aプロモーターのエピジェネティック・ランドスケープを、マウス及びヒトのGABA作動性抑制性ニューロン及びグルタミン酸作動性興奮性ニューロンの両方で分析する。この情報を用いて、この細胞タイプのSCN1A遺伝子座の周囲でのみアクセシブルな配列をターゲティングすることにより、GABA作動性抑制性ニューロンに制限されたZFPトランスアクチベーターを設計する。
【0145】
GAD67プロモーターの制御下でTdTomatoを発現するトランスジェニックマウスからのGABA抑制性ニューロン、及びEmx1-IRES-CreマウスとROSA26/stop/EGFPマウスを交配させることにより生じるGFP陽性グルタミン酸作動性興奮性ニューロンを、蛍光活性化細胞選別法(FACS)を用いて単離する。ヒトGABA作動性及び興奮性ニューロンが、人工多能性幹(iPS)細胞から作製され、これらの細胞タイプに特異的なマーカーについての免疫染色及びRT-PCR、ならびに電気生理学的活動を用いて確認される。マウス及びヒトニューロン集団におけるSCN1Aプロモーターの周囲のアクセシブルなゲノム領域を、トランスポザーゼアクセシブルクロマチンアッセイ(ATAC-Seq(Assay for Transposase-Accessible Chromatin))を用いて特性評価する。
【0146】
GABA作動性ニューロンにおいてのみアクセシブルな配列を認識するZFPSCN1Aトランスアクチベーターが、抑制性及び興奮性ニューロンの周囲のゲノム領域のクロマチンへのアクセシビリティの差に基づいて設計されている。異なるSCN1Aのアクセシブルな領域をターゲティングするために一連の候補ZFP-VPRトランスアクチベーター融合体が作製されており、各トランスアクチベーターの結合は、抑制性領域のNav1.1の発現を強力に増加させるとともに、興奮性ニューロンにおけるNav1.1の望ましくない誘導性発現を明らかにすることが予想される。
【0147】
培養したヒトiPS由来ニューロン及びドラベ症候群をモデル化したマウスSCN1A+/-初代ニューロンで発現実験を行い、抑制性ニューロンにおいてのみアクセシブルなDNA配列を認識するように設計されたZFPSCN1Aトランスアクチベーターが、全ニューロンのヒトシナプシン1プロモーターまたは抑制性介在ニューロン特異的プロモーターの制御下でAAVベクターから発現させた場合に必要な特異性を与えるか否かを判定する。Nav1.1の発現レベルを、抑制性GABA作動性(例えば、GABA、GAD65/67、ソマトスタチン、及び/またはパルブアルブミン)ニューロン及び興奮性グルタミン酸作動性(例えば、Cux1+、FoxG1+、GABA受容体GABA)ニューロンについて、qRT-PCR、ウェスタンブロット、及びニューロンタイプ特異的マーカーを用いた二重免疫蛍光法により測定する。クロマチン構造及びシンテニー領域内のDNA配列は種間で異なるため、ZFPSCN1Aトランスアクチベーターの細胞タイプ特異性は、マウス及びヒトSCN1Aプロモーター内の異なる配列をターゲティングするように設計されている。これらの実験におけるコントロールとしては、GFP、トランス活性化ドメインを含まないZFP、またはZFPのDNA結合ドメインを含まないトランスアクチベーターをコードした同様のAAVベクターを感染させたニューロン培養物が含まれる。
【0148】
microRNA (miRNA)結合部位が、望ましくない発現が生じている細胞タ
イプ(例えば、グルタミン酸作動性興奮性ニューロン)に制限されたZFPSCN1Aトランスアクチベーターの3’非翻訳領域(3’UTR)内に組み込まれている。このアプローチは、AAV送達導入遺伝子の発現を制限するために過去に用いられている(Xie,et al.,“MicroRNA-regulated,systematically delivered rAAV9:a step closer to CNS-restricted transgene expression,” Mol.T
her.2011)。GABA作動性抑制性ニューロンと他の細胞タイプのmiRNA発現プロファイルの差を小分子RNAシークエンシングにより決定する。
【0149】
実施例5.患者由来のiPSから生成されたGABA作動性介在ニューロンにおけるナトリウム電流欠損を修正するAAV-ZFPSCN1A遺伝子療法の効果の評価
ドラベ症候群に対するZFPSCN1Aトランスアクチベーターの開発における重要なステップの1つは、これらの人工トランスアクチベーターがヒトニューロンにおいて所望の機能を有することを証明することである。この目的のため、ドラベ患者(n=4~6)及び非ドラベ患者(n=4)由来のiPS細胞が得られている。非ドラベ症候群の遺伝的バックグラウンドがこれらの細胞内で表されるため、人工的に遺伝子発現を操作する必要がなく、そのため、iPS細胞は生体医学研究用の最新の細胞株として台頭している。SCN1Aの遺伝子変異を野生型配列に修復することにより、またはドラベ関連変異をコントロール細胞株内の正常な対立遺伝子に導入することによりアイソジェニック細胞株を作製するためにCRISPR-Cas9ゲノム編集技術が用いられている。これにより、アイソジェニック株は、異なるヒト被験者由来の細胞株を比較することにより生じる自然変動がなく、そのため、疾患特異的な表現型を確認してこれを増幅するために有用である。iPS細胞を前脳のGABA作動性抑制性介在ニューロンに分化させるために確立された抑制性ニューロン分化プロトコール及び検証パイプラインが用いられている。
【0150】
全細胞パッチクランプ電気生理学測定により測定されるように、ドラベ患者由来の抑制性ニューロンではナトリウム電流が低下し、活動電位の発火が妨げられる。本明細書に記載されるドラベ由来ニューロンがこれらの疾患関連表現型を再現することを確認するために同様の測定が行われている。ナトリウム電流の欠陥は、ドラベ患者の抑制性ニューロンで生じるが興奮性ニューロンでは生じず(Sunら)、したがって本開示では抑制性ニューロンのみを用いている。ドラベ患者由来の抑制性ニューロンにおける変異誘導性ナトリウム電流欠陥は、野生型SCN1Aの異所性発現によって修復することができる(参照文献20)。したがって、本開示に記載される方法は、ドラベ症候群との関連で野生型ナトリウムチャネルの機能及び生理機能を回復させるうえでのZFPSCN1Aトランスアクチベーターの有効性を試験するのに適している。
【0151】
GABA作動性抑制性ニューロン培養物に、汎用ニューロンプロモーターまたは抑制性ニューロン特異的プロモーターの制御下でZFPSCN1AトランスアクチベーターをコードしたAAVベクターを感染させる。Nav1.1の発現レベルの変化をウェスタンブロットにより評価する。阻害性ニューロンにおける機能的ナトリウム電流の回復を、感染細胞と比較した非感染細胞の全細胞パッチクランピングにより評価する。すべての患者に由来するゲノムにまたがったZFPSCN1Aトランスアクチベーターの結合をChIP-seqにより分析し、RNA-seqによって検出される特定されたトランスクリプトーム変化と相関させる。これらの実験におけるコントロールは、GFP、VPRトランスアクチベータードメインを含まないZFP、及びZFPのDNA結合ドメインを含まないVPRトランスアクチベータードメインをコードした同様のAAVベクターを感染させたニューロン培養物である。
【0152】
実施例6.異なる週齢及びSCN1Aマウスにおける異なる投与経路でのAAV-ZFPSCN1A介入の治療効果の評価
AAVの幅広いトロピズムは、幅広く発現する遺伝子に対する遺伝子療法用途における重要な性質であるが、対象とする導入遺伝子が細胞タイプに特異的な形で発現する場合には大きな問題となりうる。この問題は、それぞれ、サイロキシン結合タンパク質(TBP)、クレアチンキナーゼ、及びトロポニンTなどの組織特異的プロモーターの使用により、肝臓、筋肉、及び心臓などの体内の主要組織では概ね解消されている。更なるレベルの制御を組織特異的プロモーターに重ね合わせることで、肝臓におけるmiR-122及び骨格筋におけるmiR-1などのこれらの組織に非常に多く存在するmicroRNAに対する結合部位の複数のコピーを取り込ませることにより、特定の組織からのより高度な脱標的化を実現することが可能である。最近、報告されたAAV-PHP.B血清型は、全身投与後のCNS遺伝子導入において極めて効率的であり、広い範囲の細胞タイプに形質導入する。更に、末梢組織へのそのトロピズムは、ほとんどの場合、AAV9のものと同じく広範である。ドラベ症候群に対する遺伝子療法アプローチの目標は、GABA作動性阻害性介在ニューロンのみでNav1.1の発現を回復する一方で他のニューロン及びそれ以外の場所での異所性発現による有害作用は防止することにある。フグ(トラフグ)ソマトスタチン及びニューロペプチドY遺伝子由来の小型プロモーター(2.8kb未満)の制御下のGFPをコードしたAAV及びレンチウイルスベクターが、頭蓋内注射によりマウス脳における阻害性ニューロン特異的発現を誘導することが示されている。GFP発現を誘導するこれらのプロモーターを有するAAV-PHP.Bベクターは、遍在性の強力なCAGプロモーター及び最小の比較的弱いマウスMeCP2プロモーターにより導入遺伝子の発現が誘導されるコントロールベクターと比較されている。fSST及びfNYPを有するAAV-PHP.B-GFPベクターのGABA作動性抑制性介在ニューロンに対する特異性が、6週齢(尾静脈)及び生後1日目(後眼窩)のマウスにおける全身投与、新生児におけるCSF送達、及び最後に歯状回(DG)をターゲティングした一側性注射によるCNSへの送達により試験されている(表5)。CNSへの遺伝子導入の効率は投与経路によって大きく異なり、異なる週齢のSCN1A+/-マウスで処置が行われているため、それぞれの投与経路についてCNS全体にわたったニューロンへの形質導入効率及びGABA作動性抑制性介在ニューロンに対するプロモーター特異性のベースラインを確立するための幅広い分析が行われている。短いfSST及びfNYPプロモーターからGFP発現を誘導するAAVベクターは、直接注射後に海馬の阻害性介在ニューロンに対して高度に特異的であることがこれまでに示されている。本開示のAAV-PHP.Bベクターは、その後の試験と同じ方法で検証されており、Scn1a+/-マウスの海馬体の阻害性ニューロン(詳細には歯状回及び顆粒細胞層の内側ライニングに位置する)におけるNav1.1の発現を回復する治療効果の評価が行われている(理論的解釈は下記に述べる)。Jackson Laboratories(Bar Harbor,ME)より入手した129SvJマウスとC57BL/6マウスを交配することによってUMMSで作製された129SvJ/C57BL/6マウスで実験が行われている。マウスは、注入の1か月後に安楽死させ、脳及び脊髄を採取して、細胞特異的マーカー及びGFPに対する抗体による二重免疫蛍光法を用いて形質導入の効率及び特異性の組織学的分析を行う。GABA作動性抑制性介在ニューロンに対する遺伝子導入の効率及び特異性を、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD;GABA作動性ニューロンに対するマーカー)及びGFPに対する抗体を用いた二重免疫蛍光染色により脳及び脊髄の全体にわたって評価する。更に、ソマトスタチン(SST)、パルブアルブミン(PV)、カルレチニン(CR)、血管作動性小腸ペプチド(VIP)、マウスニューロペプチドY(NPY)を発現する阻害性介在ニューロンのサブセットについて、これらのタンパク質及びGFPに特異的な抗体を用いて各プロモーター及び/またはAAV-PHP.Bの選択的特異性を評価する。全身投与及びICV投与により処置したマウスから肝臓、心臓及び骨格筋を採取してGFPの発現を組織学的に評価し、ウェスタンブロットを用いて末梢組織における異所性発現の可能性を調べる。
【0153】
表5.実験群
【表5】
*各群は、両方の性からの同数のマウスで構成される。
#各ベクター当たり1匹の同腹子に注入。
略号: ICV-脳室内注入、IC-頭蓋内注入、PND1-生後1日目
【0154】
6週齢のScn1a+/-マウスに歯状回への両側性注射により、様々なZFPScn1aトランスアクチベータータンパク質をコードしたAAV-PHP.Bベクター、アクチベーター単独の影響についてのコントロールとして、ZFPScn1aアクチベータードメインを含むがDNA結合ドメインは含まないコンストラクト、または同体積のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を投与する(n=雄3頭+雌3頭/群)。これらの実験で使用した一本鎖AAVベクターは、形質導入された細胞の特定を容易とするためにZFPScn1acDNAの下流にIRES-GFPカセットも有している。広範なニューロンにおいてより幅広い活性化を行うことができる少なくとも2つのZFPScn1acトランスアクチベーターと、上記に述べた最も有望な2つのGABA作動性抑制性介在ニューロンに制限されたZFPSCN1Aトランスアクチベーターを試験する。注入1か月後、脳を採取し、脳の片半球からの海馬を切除し、βアクチン及びチューブリンをローディングコントロールとして用いたウェスタンブロットによりZFPScn1ac、Nav1.1、Nav1.3、GAD65、GAD67タンパク質の発現レベルを評価する。脳の他方の半球を、脳の連続切片(10μm)を使用した組織学的検査により調べ、GAD及びGFPに対する、またはGAD及びすべてのZFPScn1acタンパク質に含まれるエピトープタグ(HAまたはmycタグ)に対する抗体を用いた二重免疫蛍光染色によって歯状回及び顆粒細胞層の内葉における形質導入された阻害性介在ニューロンの割合(%)を分析する。また、ナトリウムチャネルの発現の正常なパターンの回復を証明するため、Nav1.1及びNav1.3を発現するGAD陽性ニューロンの割合(%)も決定する。Nav1.1及びNav1.3タンパク質発現の免疫蛍光法による検出に加えて、Nav1.1、Nav1.3、ZFPScn1ac及びGADに対するRNAscopeプローブを使用してGABA作動性介在ニューロンにおけるmRNAレベルの変化を評価する。RNAScopeは、脳のニューロンにおけるmRNAレベルを分析するためのインサイチューハイブリダイゼーション法において高い感度を有する。ZFPScn1acの発現から生じるNav1.1のレベルを評価するためのこれら2つのアプローチの組み合わせは、本開示の遺伝子療法アプローチによって介在ニューロンの変化がどのように得られるかについての包括的な理解を与える。
【0155】
AAV-PHP.B-ZFPScn1ac遺伝子療法の治療効果を、尾静脈を介して生後1日目、または6週齢で開始される両方の性別のScn1a+/-マウスで分析する。コントロールには、ZFPのDNA結合ドメインを含まないZFP様タンパク質をコードしたAAVベクターで処置したマウス、ならびに同齢の非処置のScn1a+/-マウス及び野生型同腹子(各群、n=雄15頭及びn=雌15頭)が含まれる。各群のマウスのサブセット(n=雄3頭及び雌3頭)を12週齢で安楽死させ、ウェスタンブロット、ならびにGAD(及びGAD65、GAD67などの他のニューロンタイプ特異的マーカー)及びZFPに対する抗体による免疫蛍光法、及び脳及び脊髄全体にわたったこれらの細胞におけるNav1.1の発現量の回復を用いてGABA作動性介在ニューロンへの遺伝子導入効率を評価する。更に、ZFPの異所性発現、ならびに末梢組織におけるNav1.1を評価する。各群(n=24)の動物の他のサブセットを用いて生存率(年齢1才までの)、運動性能及び行動に対する影響を調べる。これは月齢2~12か月まで2か月ごとに試験する。Scn1a+/-マウスは生後21日目までに前肢及び後肢の協調運動が損なわれることから、加速ローターロッド及び平均台歩行試験を用いて運動機能及び協調運動を評価する。更に、オープンフィールド試験、高架式十字迷路試験、巣作り試験、ガラス玉覆い隠し試験、バーンズ迷路試験を含む、Scn1a+/-マウスにおいて成績が低下する行動試験を用いて、Scn1a+/-で深刻な低下がみられる空間学習及び記憶能力を試験する。Scn1a+/-マウスではドラベ症候群患者に特徴的な自発性発作も著明であり、その頻度は加齢及び体温とともに増加する。更に、強直間代発作の直後にScn1a+/-マウスの早期突然死が生じる。したがって、月齢2、6、及び12か月に24時間の連続的なビデオ監視を用いて発作の頻度及び持続時間を評価する。新奇な物体、匂いに応じたチャンバ嗜好性指示値を用いて社会的相互作用試験を行い、上記に述べた試験で測定された主要評価項目に有意な変化が検出された場合にマウスを考慮する。脳、脊髄、及び末梢臓器を採取し、人道的エンドポイントについて実験で評価して上記に示した分子的及び組織学的分析を行う。
【0156】
実施例7.ZFP及びdCas9システムは、ヒト細胞のSCN1A遺伝子の発現を増加させる
ZFP1~ZFP3がSCN1Aの転写を増加させる能力を調べるため、ZFP1~ZFP3のDNA結合ドメインを、VP64、p53、及びRTA(VPR)の3つの部分からなる強力なハイブリッド転写アクチベータードメインに融合してキメラトランスアクチベーターを作製した。VPR融合アクチベータードメインは、転写調節複合体を動員してクロマチンへのアクセシビリティを高めるように働き、高い遺伝子発現レベルを得る助けとなる。したがって、ZFPドメインは、VPRアクチベーターが近位プロモーター領域内の高度に保存された領域を標的とするようにさせ、SCN1A遺伝子の発現を増加させる。
【0157】
更に、SCN1Aを標的とするdCas9システムがSCN1Aの転写を増加させる能力を調べるため、SCN1Aを標的とする3つのガイドRNAをdCas9タンパク質と複合体化した。
【0158】
HEK293T細胞を以下の実験条件、すなわち(1)VPR-ZFP1コンストラクト、(2)VPR-ZFP2コンストラクト、(3)VPR-ZFP3コンストラクト、(4)VPR-ZFP1、VPR-ZFP2、及びVPR-ZFP3コンストラクトの3つすべて、(5)dCas9-VPRコンストラクトとSCN1AガイドRNA1、(6)dCas9-VPRコンストラクトとSCN1AガイドRNA2、(7)dCas9-VPRコンストラクトとSCN1AガイドRNA3、(8)dCas9-VPRコンストラクトとSCN1AガイドRNA1、SCN1AガイドRNA2、及びSCN1AガイドRNA3の3つすべて、ならびに(9)ガイドRNAを全く伴わないdCas9-VPR(コントロール)のうちの1つで一過性にトランスフェクトした。SCN1A遺伝子の発現をqRT-PCRにより測定した。SCN1Aの活性化倍率をコントロール実験(ガイドRNAを全く伴わないdCas9-VPR)に対して正規化した。
【0159】
試験した実験条件のすべてが、コントロール実験に対してSCN1Aの遺伝子活性化を増加させた(図8)。これらのデータは、本実施例及び本明細書全体を通じて記載されるジンクフィンガータンパク質がSCN1Aを標的として遺伝子発現に影響を及ぼすことができることを示している。これらのデータは、本実施例の各ガイドRNA配列(配列番号83~94)が、dCas9がSCN1Aを標的とするようにさせて遺伝子発現に影響を及ぼすことができることを更に示している。
【0160】
【表6】
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
少なくとも1つの転写調節因子ドメインに融合された少なくとも1つのDNA結合ドメインを発現するように構成された導入遺伝子を含む単離核酸であって、前記DNA結合ドメインが標的遺伝子または標的遺伝子の調節領域に結合し、前記標的遺伝子が電圧ゲートナトリウムチャネルをコードする、前記単離核酸。
(項目2)
前記導入遺伝子にアデノ随伴ウイルス(AAV)由来の逆位末端反復配列(ITR)が隣接されている、項目1に記載の単離核酸。
(項目3)
前記転写調節因子ドメインが前記標的遺伝子の発現を増加させる、項目1または2に記載の単離核酸。
(項目4)
前記少なくとも1つのDNA結合ドメインが、前記標的遺伝子の非翻訳領域に結合する、項目1~3のいずれか1項に記載の単離核酸。
(項目5)
前記非翻訳領域が、エンハンサー、プロモーター、イントロン、及び/またはリプレッサーである、項目4に記載の単離核酸。
(項目6)
前記DNA結合ドメインが、前記標的遺伝子の調節領域の2~2000bp上流または2~2000bp下流で結合する、項目4または5に記載の単離核酸。
(項目7)
前記少なくとも1つのDNA結合ドメインが、ジンクフィンガータンパク質(ZFP)、転写活性化因子様エフェクター(TALE)、dCasタンパク質(例えば、dCas9またはdCas12a)、及び/またはホメオドメインをコードする、項目1~6のいずれか1項に記載の単離核酸。
(項目8)
前記少なくとも1つのDNA結合ドメインが、配列番号5~7のいずれか1つに記載の核酸配列に結合する、項目1~7のいずれか1項に記載の単離核酸。
(項目9)
前記少なくとも1つのDNA結合ドメインが、配列番号11~16、23~28、または35~40のいずれか1つに記載の配列を有する核酸によってコードされる認識ヘリックスを含むジンクフィンガータンパク質である、項目1~8のいずれか1項に記載の単離核酸。
(項目10)
前記少なくとも1つのDNA結合ドメインが、配列番号11を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号12を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号13を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号14を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号15を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、及び/または配列番号16を含む核酸によってコードされる認識ヘリックスを含むジンクフィンガータンパク質である、項目9に記載の単離核酸。
(項目11)
前記少なくとも1つのDNA結合ドメインが、配列番号23を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号24を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号25を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号26を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号27を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、及び/または配列番号28を含む核酸によってコードされる認識ヘリックスを含むジンクフィンガータンパク質である、項目9に記載の単離核酸。
(項目12)
前記少なくとも1つのDNA結合ドメインが、配列番号35を含む核酸によってコード
される認識ヘリックス、配列番号36を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号37を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号38を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号39を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、及び/または配列番号40を含む核酸によってコードされる認識ヘリックスを含むジンクフィンガータンパク質である、項目9に記載の単離核酸。
(項目13)
前記少なくとも1つのDNA結合ドメインが、配列番号17~22、29~34、または41~46のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含むジンクフィンガータンパク質である、項目1~12のいずれか1項に記載の単離核酸。
(項目14)
前記少なくとも1つのDNA結合ドメインが、配列番号17を含む認識ヘリックス、配列番号18を含む認識ヘリックス、配列番号19を含む認識ヘリックス、配列番号20を含む認識ヘリックス、配列番号21を含む認識ヘリックス、及び/または配列番号22を含む認識ヘリックスを含むジンクフィンガータンパク質である、項目13に記載の単離核酸。
(項目15)
前記少なくとも1つのDNA結合ドメインが、配列番号29を含む認識ヘリックス、配列番号30を含む認識ヘリックス、配列番号31を含む認識ヘリックス、配列番号32を含む認識ヘリックス、配列番号33を含む認識ヘリックス、及び/または配列番号34を含む認識ヘリックスを含むジンクフィンガータンパク質である、項目13に記載の単離核酸。
(項目16)
前記少なくとも1つのDNA結合ドメインが、配列番号41を含む認識ヘリックス、配列番号42を含む認識ヘリックス、配列番号43を含む認識ヘリックス、配列番号44を含む認識ヘリックス、配列番号45を含む認識ヘリックス、及び/または配列番号46を含む認識ヘリックスを含むジンクフィンガータンパク質である、項目13に記載の単離核酸。
(項目17)
前記少なくとも1つのDNA結合ドメインが、dCasタンパク質、場合によりdCas9タンパク質であり、前記単離核酸が少なくとも1つのガイド核酸を更に含む、項目1~7のいずれか1項に記載の単離核酸。
(項目18)
前記ガイド核酸が、SCN1Aを標的とするスペーサー配列を含む、項目17に記載の単離核酸。
(項目19)
前記ガイド核酸が、配列番号85、86、89、90、93、または94のいずれか1つのヌクレオチド配列を有するスペーサー配列を含む、項目17または18に記載の単離核酸。
(項目20)
前記ガイド核酸が、配列番号83~94のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、項目17~19のいずれか1項に記載の単離核酸。
(項目21)
前記少なくとも1つの転写調節因子ドメインが、VPR、Rta、p65、もしくはHsf1トランスアクチベーター、またはこれらの任意の組み合わせを含む、項目1~16のいずれか1項に記載の単離核酸。
(項目22)
前記少なくとも1つのトランス活性化ドメインが、配列番号47に記載の核酸配列によってコードされる、項目1~21のいずれか1項に記載の単離核酸。
(項目23)
前記少なくとも1つのトランス活性化ドメインが、配列番号48に記載のアミノ酸配列
によってコードされる、項目1~22のいずれか1項に記載の単離核酸。
(項目24)
前記核酸が、AAV2のITRを含む、項目1~23のいずれかに記載の単離核酸。
(項目25)
前記ITRが、ΔTR及び/またはmTRである、項目24に記載の単離核酸。
(項目26)
前記導入遺伝子がプロモーターと機能的に連結されている、項目1~25のいずれか1項に記載の単離核酸。
(項目27)
前記プロモーターが組織特異的プロモーターであり、場合により、前記プロモーターが、SST、NPY、リン酸活性化グルタミナーゼ(PAG)、小胞グルタミン酸トランスポーター1(VGLUT1)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65及び57(GAD65、GAD67)、シナプシンI、a-CamKII、Dock10、Prox1、パルブアルブミン(PV)、ソマトスタチン(SST)、コレシストキニン(CCK)、カルレチニン(CR)、またはニューロペプチドY(NPY)などのニューロン性プロモーターである、項目26に記載の単離核酸。
(項目28)
前記少なくとも1つのDNA結合ドメインが、リンカードメインによって前記少なくとも1つの転写調節因子ドメインに融合されている、項目1~27のいずれか1項に記載の単離核酸。
(項目29)
前記リンカードメインが、場合により、
(i)場合によりグリシンで構成される柔軟なリンカー、または
(ii)切断可能なリンカー
である、項目28に記載の単離核酸。
(項目30)
前記導入遺伝子が、1個のDNA結合ドメイン、2個のDNA結合ドメイン、3個のDNA結合ドメイン、4個のDNA結合ドメイン、5個のDNA結合ドメイン、6個のDNA結合ドメイン、7個のDNA結合ドメイン、8個のDNA結合ドメイン、9個のDNA結合ドメイン、または10個のDNA結合ドメインをコードする、項目1~29のいずれか1項に記載の単離核酸。
(項目31)
前記導入遺伝子が、1個の転写調節因子ドメイン、2個の転写調節因子ドメイン、3個の転写調節因子ドメイン、4個の転写調節因子ドメイン、5個の転写調節因子ドメイン、6個の転写調節因子ドメイン、7個の転写調節因子ドメイン、8個の転写調節因子ドメイン、9個の転写調節因子ドメイン、または10個の転写調節因子ドメインをコードする、項目1~30のいずれか1項に記載の単離核酸。
(項目32)
(i)少なくとも1つの転写調節因子ドメインに融合された少なくとも1つのDNA結合ドメインをコードした導入遺伝子を含む核酸であって、前記DNA結合ドメインが標的遺伝子または標的遺伝子の調節領域に結合し、前記標的遺伝子が電圧ゲートナトリウムチャネルをコードする、前記核酸と、
(ii)少なくとも1つのカプシドタンパク質と、
を含む、組換えAAV(rAAV)。
(項目33)
前記導入遺伝子にアデノ随伴ウイルス(AAV)由来の逆位末端反復配列(ITR)が隣接されている、項目32に記載のrAAV。
(項目34)
前記転写調節因子が前記標的遺伝子の発現を増加させる、項目32または項目33に記載のrAAV。
(項目35)
前記少なくとも1つのDNA結合ドメインが、前記標的遺伝子の非翻訳領域に結合する、項目32~34のいずれか1項に記載のrAAV。
(項目36)
前記非翻訳領域が、エンハンサー、プロモーター、イントロン、及び/またはリプレッサーである、項目35に記載のrAAV。
(項目37)
前記DNA結合ドメインが、前記標的遺伝子の調節領域の2~2000bp上流または2~2000bp下流で結合する、項目35または36に記載のrAAV。
(項目38)
前記少なくとも1つのDNA結合ドメインが、ジンクフィンガータンパク質(ZFP)、転写活性化因子様エフェクター(TALE)、dCasタンパク質(例えば、dCas9またはdCas12a)、及び/またはホメオドメインをコードする、項目32~37のいずれか1項に記載のrAAV。
(項目39)
前記少なくとも1つのDNA結合ドメインが、配列番号5~7のいずれか1つに記載の核酸配列に結合する、項目32~38のいずれか1項に記載のrAAV。
(項目40)
前記少なくとも1つのDNA結合ドメインが、配列番号11~16、23~28、または35~40のいずれか1つに記載の配列を有する核酸によってコードされる認識ヘリックスを含むジンクフィンガータンパク質である、項目32~39のいずれか1項に記載のrAAV。
(項目41)
前記少なくとも1つのDNA結合ドメインが、配列番号11を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号12を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号13を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号14を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号15を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、及び/または配列番号16を含む核酸によってコードされる認識ヘリックスを含むジンクフィンガータンパク質である、項目40に記載のrAAV。
(項目42)
前記少なくとも1つのDNA結合ドメインが、配列番号23を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号24を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号25を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号26を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号27を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、及び/または配列番号28を含む核酸によってコードされる認識ヘリックスを含むジンクフィンガータンパク質である、項目40に記載のrAAV。
(項目43)
前記少なくとも1つのDNA結合ドメインが、配列番号35を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号36を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号37を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号38を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、配列番号39を含む核酸によってコードされる認識ヘリックス、及び/または配列番号40を含む核酸によってコードされる認識ヘリックスを含むジンクフィンガータンパク質である、項目40に記載のrAAV。
(項目44)
前記少なくとも1つのDNA結合ドメインが、配列番号17~22、29~34、または41~46のいずれか1つに記載の配列を含むジンクフィンガータンパク質である、項目32~43のいずれか1項に記載のrAAV。
(項目45)
前記少なくとも1つのDNA結合ドメインが、配列番号17を含む認識ヘリックス、配列番号18を含む認識ヘリックス、配列番号19を含む認識ヘリックス、配列番号20を
含む認識ヘリックス、配列番号21を含む認識ヘリックス、及び/または配列番号22を含む認識ヘリックスを含むジンクフィンガータンパク質である、項目44に記載のrAAV。
(項目46)
前記少なくとも1つのDNA結合ドメインが、配列番号29を含む認識ヘリックス、配列番号30を含む認識ヘリックス、配列番号31を含む認識ヘリックス、配列番号32を含む認識ヘリックス、配列番号33を含む認識ヘリックス、及び/または配列番号34を含む認識ヘリックスを含むジンクフィンガータンパク質である、項目44に記載のrAAV。
(項目47)
前記少なくとも1つのDNA結合ドメインが、配列番号41を含む認識ヘリックス、配列番号42を含む認識ヘリックス、配列番号43を含む認識ヘリックス、配列番号44を含む認識ヘリックス、配列番号45を含む認識ヘリックス、及び/または配列番号46を含む認識ヘリックスを含むジンクフィンガータンパク質である、項目44に記載のrAAV。
(項目48)
前記少なくとも1つのDNA結合ドメインが、dCasタンパク質、場合によりdCas9タンパク質であり、前記rAAVが少なくとも1つのガイド核酸を更に含む、項目32~37のいずれか1項に記載の単離核酸。
(項目49)
前記ガイド核酸が、SCN1Aを標的とするスペーサー配列を含む、項目48に記載のrAAV。
(項目50)
前記ガイド核酸が、配列番号85、86、89、90、93、または94のいずれか1つのヌクレオチド配列を有するスペーサー配列を含む、項目48または49に記載のrAAV。
(項目51)
前記ガイド核酸が、配列番号83~94のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、項目48~50のいずれか1項に記載のrAAV。
(項目52)
前記少なくとも1つの転写調節因子ドメインが、VRP、Rta、p65、Hsf1またはこれらの任意の組み合わせに由来するトランスアクチベーターである、項目32~47のいずれか1項に記載のrAAV。
(項目53)
前記少なくとも1つの転写調節因子ドメイン導入遺伝子をコードする前記導入遺伝子が、配列番号47に記載の配列を含む、項目32~52のいずれか1項に記載のrAAV。(項目54)
前記少なくとも1つの転写調節因子ドメインが、配列番号48に記載のアミノ酸配列によってコードされる、項目32~53のいずれか1項に記載の核酸。
(項目55)
前記少なくとも1つのDNA結合ドメインが、リンカードメインによって前記少なくとも1つの転写調節因子ドメインに融合されている、項目32~54のいずれか1項に記載のrAAV。
(項目56)
前記リンカードメインが、場合により、
(i)場合によりグリシンで構成される柔軟なリンカー、または
(ii)切断可能なリンカー
である、項目55に記載のrAAV。
(項目57)
前記導入遺伝子が、1個のDNA結合ドメイン、2個のDNA結合ドメイン、3個のD
NA結合ドメイン、4個のDNA結合ドメイン、5個のDNA結合ドメイン、6個のDNA結合ドメイン、7個のDNA結合ドメイン、8個のDNA結合ドメイン、9個のDNA結合ドメイン、または10個のDNA結合ドメインをコードする、項目32~56のいずれか1項に記載のrAAV。
(項目58)
前記導入遺伝子が、1個の転写調節因子ドメイン、2個の転写調節因子ドメイン、3個の転写調節因子ドメイン、4個の転写調節因子ドメイン、5個の転写調節因子ドメイン、6個の転写調節因子ドメイン、7個の転写調節因子ドメイン、8個の転写調節因子ドメイン、9個の転写調節因子ドメイン、または10個の転写調節因子ドメインをコードする、項目32~57のいずれか1項に記載のrAAV。
(項目59)
前記AAVカプシドの血清型が、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAV9、AAV10、AAVrh10、またはAAV.PHPBからなる群から選択される、項目32~58のいずれか1項に記載のrAAV。
(項目60)
前記AAVカプシドの血清型が、AAV9である、項目32~59のいずれか1項に記載のrAAV。
(項目61)
前記AAVカプシドの血清型が、AAV.PHBPである、項目32~59のいずれか1項に記載のrAAV。
(項目62)
前記核酸が、AAV2のITRを含む、項目32~61のいずれか1項に記載のrAAV。
(項目63)
前記ITRが、ΔTR及び/またはmTRである、項目62に記載のrAAV。
(項目64)
前記導入遺伝子がプロモーターと機能的に連結されている、項目32~63のいずれか1項に記載のrAAV。
(項目65)
前記プロモーターが組織特異的プロモーターである、項目64に記載のrAAV。
(項目66)
前記組織特異的プロモーターが、SST、NPY、リン酸活性化グルタミナーゼ(PAG)、小胞グルタミン酸トランスポーター1(VGLUT1)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65及び57(GAD65、GAD67)、シナプシンI、a-CamKII、Dock10、Prox1、パルブアルブミン(PV)、ソマトスタチン(SST)、コレシストキニン(CCK)、カルレチニン(CR)、またはニューロペプチドY(NPY)などのニューロン性プロモーターである、項目64または65に記載のrAAV。
(項目67)
標的遺伝子の発現を増加させる方法であって、前記標的遺伝子を含む細胞または対象に、項目1~31のいずれか1項に記載の単離核酸、または項目32~66のいずれか1項に記載のrAAVを投与することを含む、前記方法。
(項目68)
前記対象が前記標的遺伝子についてハプロ不全である、項目57に記載の方法。
(項目69)
前記標的遺伝子がSCN1Aである、項目67または68に記載の方法。
(項目70)
前記細胞がニューロン、場合により、GABA作動性ニューロンである、項目67~69のいずれか1項に記載の方法。
(項目71)
項目1~31のいずれか1項に記載の単離核酸、または項目32~66のいずれか1項に記載のrAAVの投与が、投与前の前記対象における前記導入遺伝子の発現に対して少なくとも2倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、または少なくとも100倍増加した標的遺伝子の発現をもたらす、項目67~70のいずれか1項に記載の方法。
(項目72)
対象のドラベ症候群を治療する方法であって、標的遺伝子を発現する対象に、項目1~31のいずれか1項に記載の単離核酸、または項目32~66のいずれか1項に記載のrAAVを投与することを含む、前記方法。
(項目73)
前記対象における前記標的遺伝子の発現が、正常な対象と比較して減少している、項目72に記載の方法。
(項目74)
前記対象が、正常な対象に対して標的遺伝子の発現においてハプロ不全であるか、またはハプロ不全であることが疑われる、項目72または73に記載の方法。
(項目75)
前記対象が、前記標的遺伝子のハプロ不全発現によって引き起こされる状態を有するか、または有することが疑われる、項目72~74のいずれか1項に記載の方法。
(項目76)
前記標的遺伝子が、SCN1Aである、項目72~75のいずれか1項の記載の方法。(項目77)
前記単離核酸または前記rAAVが、静脈内注射、筋肉内注射、吸入、皮下注射、及び/または頭蓋内注射により投与される、項目72~76のいずれか1項に記載の方法。
(項目78)
前記単離核酸または前記rAAVの投与が、投与前の前記対象における前記導入遺伝子の発現に対して少なくとも2倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、または少なくとも100倍増加した標的遺伝子の発現をもたらす、項目72~77のいずれか1項に記載の方法。
(項目79)
項目1~31のいずれか1項に記載の単離核酸または項目32~66のいずれか1項に記載のrAAVを含む、組成物。
(項目80)
薬学的に許容される担体を更に含む、項目79に記載の組成物。
(項目81)
項目1~31のいずれか1項に記載の単離核酸、または項目32~66のいずれか1項に記載のrAAVを収容した容器を含む、キット。
(項目82)
薬学的に許容される担体を収容した容器を更に含む、項目81に記載のキット。
(項目83)
前記単離核酸または前記rAAV及び前記薬学的に許容される担体が同じ容器に収容されている、項目81または82に記載のキット。
(項目84)
前記容器が注射器である、項目81~83のいずれか1項に記載のキット。
(項目85)
項目1~31のいずれか1項に記載の単離核酸、または項目32~66のいずれか1項に記載のrAAVを含む、宿主細胞。
(項目86)
真核細胞である、項目85に記載の宿主細胞。
(項目87)
哺乳動物細胞である、項目85に記載の宿主細胞。
(項目88)
前記宿主細胞が、ヒト細胞、場合によりニューロン、場合によりGABA作動性ニューロンである、項目87に記載の宿主細胞。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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【外国語明細書】