(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025035320
(43)【公開日】2025-03-13
(54)【発明の名称】遠隔操作装置及び遠隔操作方法
(51)【国際特許分類】
F16K 31/46 20060101AFI20250306BHJP
G21D 1/00 20060101ALI20250306BHJP
【FI】
F16K31/46 Z
G21D1/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023142293
(22)【出願日】2023-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 瑠伊
(72)【発明者】
【氏名】西野 浩二
(72)【発明者】
【氏名】小島 信夫
(72)【発明者】
【氏名】豊田 毅仁
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 平章
【テーマコード(参考)】
3H063
【Fターム(参考)】
3H063BB07
3H063DA17
3H063EE02
3H063GG16
(57)【要約】
【課題】遠隔操作距離が長い場合でも操作トルクの伝達効率の低下を抑制でき、更に、施工上の逃げ代及び建屋間相対変位を吸収でき且つ干渉物を回避できること。
【解決手段】可撓性を備えたフレキシブルシャフト11と、剛性を備えた配管材12と、フレキシブルシャフト11の両端部に配管材12の一端部を結合させる固定具13と、を有して一体型構造シャフト16が構成され、この一体型構造シャフト16により、トルク発生装置から遠隔操作対象弁までのトルク伝達経路20が形成されるよう構成されたものである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を備えたフレキシブルシャフトと、剛性を備えた配管材と、前記フレキシブルシャフトの両端部に前記配管材の一端部を結合させる固定具と、を有して一体型構造シャフトが構成され、
この一体型構造シャフトにより、トルク発生装置から遠隔操作対象弁までのトルク伝達経路が形成されるよう構成されたことを特徴とする遠隔操作装置。
【請求項2】
前記配管材の他端部にはユニバーサルジョイントが結合され、一体型構造シャフトが前記ユニバーサルジョイントにより軸方向に複数連結されたことを特徴とする請求項1に記載の遠隔操作装置。
【請求項3】
前記フレキシブルシャフトは、内部がワイヤを巻き付けた構造で且つ外部が被覆で覆われ、更に、両端部に金属部を備えて構成されたことを特徴とする請求項1に記載の遠隔操作装置。
【請求項4】
前記フレキシブルシャフトは、金属製のフレキシブルシャフト固定リングを嵌合可能な嵌合溝が、両端部に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の遠隔操作装置。
【請求項5】
前記配管材は、金属製の配管材固定リングを嵌合可能な嵌合溝が、一端部に形成されたことを特徴とする請求項4に記載の遠隔操作装置。
【請求項6】
前記固定具は、フレキシブルシャフト固定リング及び配管材固定リングを介して、フレキシブルシャフトの両端部と配管材の一端部を挟持し締結されることで、前記フレキシブルシャフトと前記配管材を結合させるよう構成されたことを特徴とする請求項5に記載の遠隔操作装置。
【請求項7】
前記固定具は、ボルト及びナットによる締結、雄ねじ及び雌ねじによる締結、または着脱式構造による締結によって、フレキシブルシャフトと配管材とを取り外し可能に結合させるよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載の遠隔操作装置。
【請求項8】
前記配管材の他端部にピースが結合され、このピースにユニバーサルジョイントが結合されたことを特徴とする請求項2に記載の遠隔操作装置。
【請求項9】
複数の前記一体型構造シャフトの連結は、一方の前記一体型構造シャフトのユニバーサルジョイントと他方の前記一体型構造シャフトの前記ユニバーサルジョイントとの結合によりなされ、これらの結合されるユニバーサルジョイントの回動方向が同一または異なって設定されたことを特徴とする請求項2に記載の遠隔操作装置。
【請求項10】
前記一体型構造シャフトは、トルク伝達経路の周囲における建築構造材に設けられた支持装置により支持されて構成されたことを特徴とする請求項1に記載の遠隔操作装置。
【請求項11】
前記支持装置は、装置本体と、この装置本体に軸回りに回転自在に設けられると共に、一体型構造シャフトの配管材の外周面に摺接可能な摺動部材と、前記装置本体に固定されて前記摺動部材の軸方向の移動を規制すると共に、前記配管材の前記外周面との間に隙間を形成する押え板と、を有して構成されたことを特徴とする請求項10に記載の遠隔操作装置。
【請求項12】
連結された複数の前記一体型構造シャフトは、トルク発生装置から遠隔操作対象弁までの領域における施工上の逃げ代、建屋間相対変位及び干渉物の少なくとも1つの影響を受ける箇所に設置されることを特徴とする請求項1に記載の遠隔操作装置。
【請求項13】
前記遠隔操作対象弁は、原子力発電所に設置されて、電源喪失時に機械式による遠隔開閉操作が必要な弁であることを特徴とする請求項1に記載の遠隔操作装置。
【請求項14】
可撓性を備えたフレキシブルシャフトと、剛性を備えた配管材と、前記フレキシブルシャフトの両端部に前記配管材の一端部を結合させる固定具と、を有して構成された一体型構造シャフトを用い、
この一体型構造シャフトにより形成されたトルク伝達経路により、トルク発生装置から遠隔操作対象弁へ操作トルクを伝達して、前記遠隔操作対象弁を開閉操作することを特徴とする遠隔操作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、操作対象弁を遠隔操作する遠隔操作装置及び遠隔操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力規制委員会は、重大事故時に操作が必要な弁に対し、機械的に遠隔操作できる手段を要求している。この要求は、重大事故により炉心冷却機能が失われた際に、原子炉圧力容器の内部にある核燃料の炉心溶融により発生するガスが、原子炉格納容器内に蓄積し、設計限界圧力を超えることを防ぐためである。
【0003】
つまり、原子力発電所に設置されたベント弁を操作し、ガスをフィルタベントシステムに導くことで、原子炉格納容器の加圧破損を防止することができる。このベント弁は、通常運転時の交流電源、及び非常時の直流電源による操作が可能である。ところが、原子力規制委員会では更に、全電源喪失と事故環境とを考慮して、機械的に遠隔操作できる手段を要求している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5976518号公報
【特許文献2】特許第6650590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
弁の機械的な遠隔開閉装置として、可撓性を有するフレキシブルシャフトを用いた装置(特許文献1)が提案されている。また、自転車のような駆動装置により、フレキシブルシャフトを用いて弁を駆動する弁駆動方法(特許文献2)も提案されている。
【0006】
しかし、特許文献1及び2は、フレキシブルシャフトを適用した遠隔開閉装置であり、遠隔操作距離の2乗に比例して、操作トルクの伝達効率が低下する課題がある。また、弁の操作トルクを下げるためにギアを多用することで、弁の遠隔操作が数時間に及ぶ可能性もある。弁の操作に時間を要することは、重大事故時の安全対応や作業員の被ばくの観点から望ましくない。
【0007】
本発明の実施形態は、上述の事情を考慮してなされたものであり、遠隔操作距離が長い場合でも操作トルクの伝達効率の低下を抑制でき、更に、施工上の逃げ代及び建屋間相対変位を吸収でき且つ干渉物を回避できる遠隔操作装置及び遠隔操作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態における遠隔操作装置は、可撓性を備えたフレキシブルシャフトと、剛性を備えた配管材と、前記フレキシブルシャフトの両端部に前記配管材の一端部を結合させる固定具と、を有して一体型構造シャフトが構成され、この一体型構造シャフトにより、トルク発生装置から遠隔操作対象弁までのトルク伝達経路が形成されるよう構成されたことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の実施形態における遠隔操作方法は、可撓性を備えたフレキシブルシャフトと、剛性を備えた配管材と、前記フレキシブルシャフトの両端部に前記配管材の一端部を結合させる固定具と、を有して構成された一体型構造シャフトを用い、この一体型構造シャフトにより形成されたトルク伝達経路により、トルク発生装置から遠隔操作対象弁へ操作トルクを伝達して、前記遠隔操作対象弁を開閉操作することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、遠隔操作距離が長い場合でも操作トルクの伝達効率の低下を抑制でき、更に、施工上の逃げ代及び建屋間相対変位を吸収でき且つ干渉物を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る遠隔操作装置の適用例を示す斜視図。
【
図3】
図2の一体型構造シャフトの構成を示し、(A)が正面図、(B)が平面図。
【
図6】
図3の固定具による結合構造を示し、(A)が正面図、(B)が平面図。
【
図12】
図11のE-F-G-H-I-J-K-L線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
図1は、一実施形態に係る遠隔操作装置の適用例を示す斜視図であり、
図2は、
図1の一部を拡大して示す斜視図である。
図2に示すように、一体型構造シャフト16は、1つのフレキシブルシャフト11と2つの配管材12とを有し、2つの配管材12の一方がフレキシブルシャフト11の一端部に結合され、2つの配管材12の他方がフレキシブルシャフト11の他端部に結合されている。具体的には、遠隔操作装置10は、フレキシブルシャフト11の両端部に固定具13を用いて2つの配管材12のそれぞれの一端部が結合され、これらの配管材12の他端部にピース14を用いてユニバーサルジョイント15が結合されて一体型構造シャフト16が構成され、この複数の一体型構造シャフト16が、互いにユニバーサルジョイント15を結合させて軸方向に連結されることで構成される。
【0013】
そして、遠隔操作装置10は、
図1に示すように、トルク発生装置17から操作対象弁18を駆動する弁駆動装置19までのトルク伝達経路20を形成し、このトルク伝達経路20により、トルク発生装置17から弁駆動装置19を経て操作対象弁18へ操作トルクを伝達して、操作対象弁18を遠隔で開閉操作する。ここで、遠隔操作装置10を構成する一体型構造シャフト16は、トルク伝達経路20の周囲における壁や天井、床などの建築構造材21に設けられた支持装置22により、鉛直方向の荷重が支持される。
【0014】
上述の
図1に示す遠隔操作装置10は、トルク発生装置17から操作対象弁18までの距離が長く、更に、この領域における施工上の逃げ代、建屋間相対変位及び干渉物23の少なくとも一つの影響を受ける箇所に設置される。例えば、トルク伝達経路20として、地上に設置された遠隔操作室から地下を経由する必要がある地下式フィルタベント設備がある。このフィルタベント設備では、操作対象弁18までが長距離で且つ多数の干渉物23及び建屋間を跨いだ遠隔操作装置10の配置が想定される。この例では、操作対象弁18は、原子力発電所に設置されて、電源喪失時に機械式による遠隔開閉操作が必要な弁である。また、干渉物23は、配管、電源、支持構造物、電気計装品、ケーブル、電源盤などである。
【0015】
図1に示す遠隔操作装置10では、トルク発生装置17は人力により操作トルクを発生し、この操作トルクが、建築構造材21を貫通する貫通シャフト24に伝達される。この貫通シャフト24は、一体型構造シャフト16(フレキシブルシャフト11、配管材12、固定具13、ピース14及びユニバーサルジョイント15)に連結されて、操作トルクが伝達される。
【0016】
この一体型構造シャフト16は、干渉物23等が存在せず配置に制約がない箇所では、フレキシブルシャフト11を使用せず、配管材12を単独でピース14及びユニバーサルジョイント15を介して連結して、トルクの伝達効率を高めてもよい。また、鉛直方向については、傘歯車を備えるL型ジョイント25にピース14を介して配管材12を連結させ、この配管材12のトルクをL型ジョイント25の傘歯車に伝達させる。
【0017】
上述のような複数の一体型構造シャフト16と貫通シャフト24及びL型ジョイント25とが連結された遠隔操作装置10により、トルク発生装置17からの操作トルクが弁駆動装置19を経て操作対象弁18へ伝達される。この際、一体型構造シャフト16のフレキシブルシャフト11によって施工上の逃げ代、建屋間相対変位が吸収され、干渉物23が回避される。また、配管材12によって、トルク伝達経路20が長距離であっても操作トルクの伝達効率の低下が抑制される。
【0018】
次に、遠隔操作装置10の標準的な構成について、
図2~
図12を用いて詳説する。
図2、
図3及び
図5に示すように、フレキシブルシャフト11は、内部が複数本のワイヤを巻きつけた構造で且つ外部が被覆で覆われて可撓性を有し、両端部に金属部を備えて構成される。フレキシブルシャフト11は、内部のワイヤにより操作トルクを伝達可能に構成される。また、フレキシブルシャフト11が可撓性を有することで、遠隔操作装置10は、施工上の逃げ代及び建屋間相対変位の吸収が可能になり、且つ干渉物23の回避が可能になる。
【0019】
フレキシブルシャフト11は、要求される可撓性に応じて長さを変更することで、逃げ代、建屋間相対変位及び干渉物23への良好な対応(吸収、回避)が可能になる。また、フレキシブルシャフト11を最小限の長さに設定することで、フレキシブルシャフト11の撓みによるトルク伝達効率の低下が抑制可能になる。更に、フレキシブルシャフト11の両端部の金属部には、金属製のフレキシブルシャフト固定リング27を嵌合可能な嵌合溝26が形成されている。
【0020】
図2、
図3及び
図5に示すように、配管材12は剛性を備え、この剛性により遠隔操作装置10のトルクの伝達効率が高く保持される。配管材12の一端部には、金属製の配管材固定リング29が嵌合可能な嵌合溝28が形成されている。また、配管材12の他端部は、有底円筒形状のピース14に挿入されて、このピース14に結合され、更にピース14にユニバーサルジョイント15が結合される。これにより、配管材12は、ピース14を介してユニバーサルジョイント15に軸回りに回転一体に結合されて、操作トルクをユニバーサルジョイント15へ伝達する。
【0021】
図2、
図3、
図6及び
図7に示す固定具13は一対設けられて、例えばボルト31及びナット32により締結される。この一対の固定具13は、
図8に示すように、フレキシブルシャフト11の嵌合溝26に嵌合されたフレキシブルシャフト固定リング27と配管材12の嵌合溝28に嵌合された配管材固定リング29とを介して、フレキシブルシャフト11の両端部と配管材12の一端部とを上下方向の両側から挟持し、ボルト31及びナット32により締結される。これにより、固定具13は、フレキシブルシャフト11と配管材12とを軸回りに回転一体に結合させて、これらのフレキシブルシャフト11及び配管材12間で操作トルクの伝達を可能とする。
【0022】
上述のような一対の固定具13の締結は、ボルト31及びナット32に限らず、雄ねじ及び雌ねじによる締結、または着脱式構造による締結であってもよい。一対の固定具13は、上述の締結手段によって取り外し可能に締結される。
【0023】
ここで、フレキシブルシャフト11と配管材12の回転一体の結合について、
図8、
図9及び
図10を用いて詳説する。
図8及び
図9に示すように、フレキシブルシャフト11の両端部に設けられた嵌合溝26には、周方向に凹部26Xが複数、例えば対向して2箇所形成される。そして、フレキシブルシャフト固定リング27が嵌合溝26に嵌合する際に、フレキシブルシャフト固定リング27の内周側の凸部27Xが、嵌合溝26の凹部26Xに係合する。
【0024】
また、一対の固定具13の内周に、周方向に嵌合溝33が連続して形成されている。この嵌合溝33には、周方向に凹部33Yが複数、例えば等間隔に4箇所形成される。そして、フレキシブルシャフト固定リング27が固定具13の嵌合溝33に嵌合する際に、フレキシブルシャフト固定リング27の外周側の凸部27Yが、嵌合溝33の凹部33Yに係合する。このようにして、フレキシブルシャフト固定リング27を介して、フレキシブルシャフト11が固定具13と回転一体に構成される。
【0025】
一方、
図8及び
図10に示すように、配管材12の一端部に設けられた嵌合溝28には、周方向に凹部28Xが複数、例えば対向して2箇所形成される。そして、配管材固定リング29が嵌合溝28に嵌合する際に、配管材固定リング29の内周側の凸部29Xが、嵌合溝28の凹部28Xに係合する。
【0026】
また、一対の固定具13の内周に、周方向に嵌合溝34が連続して形成されている。この嵌合溝34には、周方向に凹部34Yが複数、例えば等間隔に4箇所形成される。そして、配管材固定リング29が固定具13の嵌合溝34に嵌合する際に、配管材固定リング29の外周側の凸部29Yが、嵌合溝34の凹部34Yに係合する。このようにして、配管材固定リング29を介して配管材12が固定具13と回転一体に構成される。
【0027】
以上のことから、フレキシブルシャフト11と配管材12とは、固定具13、フレキシブルシャフト固定リング27及び配管材固定リング29により回転一体に結合される。
【0028】
図3~
図5に示すように、ユニバーサルジョイント15は、軸に直交する2方向の回動を可能とする2自由度を有する継手である。複数の一体型構造シャフト16の連結は、一方の一体型構造シャフト16のユニバーサルジョイント15と他方の一体型構造シャフト16のユニバーサルジョイント15との結合によってなされ、一方の一体型構造シャフト16から他方の一体型構造シャフト16へ操作トルクが伝達される。一方と他方の一体型構造シャフト16におけるユニバーサルジョイント15同士の結合に際しては、それぞれのユニバーサルジョイント15の回動方向が同一または異なるように設定される。これにより、連結する複数の一体型構造シャフト16は、任意の方向に屈曲されて操作トルクを伝達する。
【0029】
図2、
図11及び
図12に示すように、支持装置22は、装置本体35、摺動部材36及び押え板37を有して構成され、装置本体35が建築構造材21に取り付けられる。摺動部材36は、装置本体35に軸回りに回転自在に収容されると共に、一体型構造シャフト16の配管材12の外周面に摺接可能に設けられる。また、押え板37は、例えばボルト38を用いて装置本体35に固定されて、摺動部材36の軸方向の移動を規制すると共に、配管材12の外周面との間に隙間Tが設定される。
【0030】
上述のように摺動部材36が軸回りに回転自在に設けられて配管材12の外周面に摺接することで、配管材12は、操作トルクにより軸回りに回転する際に、一体型構造シャフト16の荷重を支持する支持装置22による摩擦抵抗が低減される。また、押え板37は、配管材12との間に隙間Tが設定されることで、操作トルクを伝達する配管材12の軸回りの回転を拘束することがない。
【0031】
以上のように構成されたことから、本実施形態によれば、次の効果(1)~(4)を奏する。
(1)
図1及び
図2に示すように、一体型構造シャフト16が、可撓性を備えたフレキシブルシャフト11を有することから、施工上の逃げ代及び建屋間相対変位を吸収でき、且つ干渉物23を回避することができる。また、一体型構造シャフト16が、剛性を備えた配管材12を有することから、遠隔操作距離が長い場合でも操作トルクの伝達効率の低下を抑制することができる。特に、干渉物を回避するためのフレキシブルシャフト11が最小限に(または少なくとも配管12の距離よりも短く)抑えられて設定され、剛性を備える配管12がその距離を長く設定することで、一体型構造シャフト16は全体として伝達効率の低下を抑制することができる。
【0032】
(2)
図6及び
図7に示すように、フレキシブルシャフト11と配管材12を回転一体に結合する一対の固定具13が、ボルト31及びナット32等により取り外し可能に締結される。これにより、一対の固定具13を取り外すことで、施工性及びメンテナンス性を向上させることができる。
【0033】
(3)
図11及び
図12に示すように、一体型構造シャフト16の荷重を支持する支持装置22は、装置本体35に対し軸回りに回転自在な摺動部材36が、一体型構造シャフト16の配管材12の外周面に摺接して設けられ、且つ摺動部材36の軸方向移動を規制する押え板37が、配管材12の外周面との間に隙間Tを設定している。これらにより、支持装置22は、一体型構造シャフト16の配管材12に対し摩擦抵抗を低減できるので、操作トルクの伝達効率の低下を抑制することができる。更に、一体型構造シャフト16に対する支持装置22の配置位置を適切に設定することで、遠隔操作装置10の耐震性を向上させることができる。
【0034】
(4)配置に制約性がない遠隔操作装置10の設置箇所では、一体型構造シャフト16においてフレキシブルシャフト11を用いず、配管材12、ピース14及びユニバーサルジョイント15により一体型構造シャフト16を構成し、この一体型構造シャフト16のユニバーサルジョイント15同士を連結して遠隔操作装置10を構成してもよい。これにより、操作トルクの伝達効率の低下をより一層抑制することができる。
【0035】
(5)一体型構造シャフト16が、剛性を備える配管12を有することで、この一体型構造シャフト16を用いて操作対象弁18を操作する際にギアを用いる必要がなく、従って、操作対象弁18を短時間に操作することができる。
【0036】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができ、また、それらの置き換えや変更、組み合わせは、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
10…遠隔操作装置、11…フレキシブルシャフト、12…配管材、13…固定具、14…ピース、15…ユニバーサルジョイント、16…一体型構造シャフト、17…トルク発生装置、18…操作対象弁、20…トルク伝達経路、21…建築構造材、22…支持装置、23…干渉物、26…嵌合溝、27…フレキシブルシャフト固定リング、28…嵌合溝、29…配管材固定リング、35…装置本体、36…摺動部材、37…押え板、T…隙間