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特開2025-35529円筒穴の仕上げ加工用工具、および円筒穴の仕上げ加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025035529
(43)【公開日】2025-03-14
(54)【発明の名称】円筒穴の仕上げ加工用工具、および円筒穴の仕上げ加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/10 20060101AFI20250306BHJP
   B23C 5/26 20060101ALI20250306BHJP
   B23C 5/12 20060101ALI20250306BHJP
   B23C 3/00 20060101ALI20250306BHJP
   B23B 35/00 20060101ALI20250306BHJP
【FI】
B23C5/10 D
B23C5/26
B23C5/12 Z
B23C3/00
B23B35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023140917
(22)【出願日】2023-08-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.JIMTOF 2022のパンフレット 発行日 令和4年10月1日 刊行物 「JIMTOF 2022 11/8(火)~13(日)第31回日本国際工作機械見本市のご案内」 2.YouTubeショート(JIMTOF 2022) ウェブサイトの掲載日 令和4年10月10日 ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/shorts/F96C24sRrsc https://www.youtube.com/shorts/hShS4ftDNg0 3.YouTube(JIMTOF 2022) ウェブサイトの掲載日 令和4年11月2日 ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=1bGdPmseJo8&t=142s&ab_channel=MST_TOOLING 4.JIMTOF 2022 開催日 令和4年11月8日(火)~13日(日) 展示会名 JIMTOF 2022(第31回日本国際工作機械見本市) 5.「機械と工具」誌 発行日 令和4年11月10日 刊行物 機械と工具2022年11月号 6.「生産財マーケティング」誌 発行日 令和4年11月1日 刊行物 月刊生産財マーケティング2022年11月号、第A-171ページ 7.「機械技術」誌 発行日 令和4年11月5日 刊行物 機械技術2022年12月臨時増刊号 8.「ツールエンジニア」誌 発行日 令和4年11月1日 刊行物 ツールエンジニア2022年11月号、第35ページ 9.展示会「THAI METALEX 2022」 開催日 令和4年11月16日(水)~19日(土) 展示会名 THAI METALEX 2022
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 10.YouTube(JIMTOF 2022のハイライト) ウェブサイトの掲載日 令和4年11月28日 ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=_Zoc7-_ew5w&ab_channel=MST_TOOLING 11.展示会「TOOL TECH 2023」 開催日 令和5年1月19日(木)~25日(水) 展示会名 TOOL TECH 2023 12.日本物流新聞 発行日 令和5年2月10日 刊行物 日本物流新聞2023年2月10日号 13.プレスリリース プレスリリースの配信日 令和5年2月24日 プレスリリースの配信先 株式会社日本物流新聞社 日刊大阪アド株式会社(「日刊工業新聞」、「機械技術」誌、「型技術」誌) 株式会社ニュースダイジェスト社(「生産財マーケティング」誌) 株式会社日本産機新聞社 日本工業出版株式会社(「機械と工具」誌) 株式会社大河出版(「ツールエンジニア」誌) 14.日本物流新聞 発行日 令和5年3月10日 刊行物 日本物流新聞2023年3月10日号 15.展示会「INTERMOLD KOREA 2023」 開催日 令和5年3月14日(火)~18日(土) 展示会名 INTERMOLD KOREA 2023 16.日刊工業新聞 発行日 令和5年3月15日 刊行物 日刊工業新聞2023年3月15日号 17.YouTubeショート(INTERMOLD KOREA 2023) ウェブサイトの掲載日 令和5年3月18日 ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/shorts/-rLhUEj3Ek8 18.管機産業新聞 発行日 令和5年3月22日 刊行物 管機産業新聞2023年3月22日号 19.「機械と工具」誌 発行日 令和5年3月31日 刊行物 機械と工具2023年4月号、第4ページ
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 20.自社ホームページでの製品紹介 ウェブサイトの掲載日 令和5年4月3日 ウェブサイトのアドレス https://www.mst-corp.co.jp/mc_tool/millbore/ 21.「生産財マーケティング」誌 発行日 令和5年4月1日 刊行物 月刊生産財マーケティング2023年4月号、第A-146ページ 22.日本産機新聞 発行日 令和5年4月5日 刊行物 日本産機新聞2023年4月5日号 23.日本物流新聞 発行日 令和5年4月10日 刊行物 日本物流新聞2023年4月10日号、第8面 24.展示会「CIMT 2023」 開催日 令和5年4月10日(月)~15日(土) 展示会名 CIMT 2023(中国国際工作機械見本市) 25.「型技術」誌 発行日 令和5年4月12日 刊行物 型技術2023年5月号、第008ページ 26.展示会「INTERMOLD 2023」 開催日 令和5年4月12日(水)~15日(土) 展示会名 INTERMOLD 2023(第34回金型加工技術展) 27.YouTube(「ミルボア」紹介) ウェブサイトの掲載日 令和5年4月18日 ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=OehDj4ZRUPk&t=26s&ab_channel=MST_TOOLING 28.YouTube(「ミルボア」紹介、英語版) ウェブサイトの掲載日 令和5年4月24日 ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=mtTG28vxuWQ&t=86s&ab_channel=MST_TOOLING 29.YouTube(CIMT 2023のダイジェスト) ウェブサイトの掲載日 令和5年4月26日 ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=DhqSVehqEaI&ab_channel=MST_TOOLING
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 30.「ツールエンジニア」誌 発行日 令和5年4月28日 刊行物 ツールエンジニア2023年5月号、第9ページ 31.「西川ニュース」誌 発行日 令和5年4月27日 刊行物 ロボテック情報西川ニュース135号(2023年5月号)、第7ページ 32.山善ものづくりハンドブック「セレシナ」 発行日 令和5年4月1日 刊行物 山善ものづくりハンドブック「セレシナ vol.11」、第145ページ 33.「機械技術」誌 発行日 令和5年5月25日 刊行物 機械技術2023年6月号、第19ページおよび第62~63ページ 34.日本物流新聞 発行日 令和5年6月10日 刊行物 日本物流新聞2023年6月10日号、第5面 35.「タナカ善ニュース」誌 発行日 令和5年6月9日 刊行物 第65号タナカ善ニュース夏号 36.展示会「DMC 2023」 開催日 令和5年6月11日(日)~14日(水) 展示会名 DMC 2023(第22回中国国際金型技術と設備展示会) 37.YouTube(DMC 2023の紹介) ウェブサイトの掲載日 令和5年6月13日 ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=FfPztJiXXBc&ab_channel=MST_TOOLING 38.「ミルボア」の貸出 貸出日 令和5年5月31日 販売相手先 フジ精工株式会社 39.展示会「大阪機械加工システム展」 開催日 令和5年2月16日(木)~17日(金) 展示会名 大阪機械加工システム展(ジーネット)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 40.展示会「2023広島どてらい市」 開催日 令和5年3月3日(金)~4日(土) 展示会名 2023広島どてらい市 41.展示会「2023岐阜どてらい市」 開催日 令和5年3月4日(土)~5日(日) 展示会名 2023岐阜どてらい市 42.展示会「2023北関東どてらい市」 開催日 令和5年3月10日(金)~11日(土) 展示会名 2023北関東どてらい市 43.展示会「中部機械加工システム展」 開催日 令和5年3月16日(木)~17日(金) 展示会名 中部機械加工システム展(ジーネット) 44.展示会「2023静岡どてらい市」 開催日 令和5年3月17日(金)~18日(土) 展示会名 2023静岡どてらい市 45.展示会「2023東北どてらい市」 開催日 令和5年4月7日(金)~8日(土) 展示会名 2023東北どてらい市 46.展示会「ナンシン機工プライベートショー」 開催日 令和5年4月14日(金)~15日(土) 展示会名 ナンシン機工プライベートショー 47.展示会「第17回TACプライベートショー」 開催日 令和5年4月20日(木)~22日(土) 展示会名 第17回TACプライベートショー 48.展示会「MEX金沢2023」 開催日 令和5年5月18日(木)~20日(土) 展示会名 MEX金沢2023(第59回機械工業見本市金沢) 49.展示会「2023東北信どてらい市」 開催日 令和5年5月19日(金)~20日(土) 展示会名 2023東北信どてらい市
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 50.展示会「国興展2023」 開催日 令和5年5月25日(木)~26日(金) 展示会名 国興展2023 51.展示会「2023モテキ感謝セール」 開催日 令和5年6月2日(金)~3日(土) 展示会名 2023モテキ感謝セール(モテキトータルフェア) 52.展示会「2023中部どてらい市」 開催日 令和5年6月8日(木)~10日(土) 展示会名 2023中部どてらい市 53.展示会「2023新潟どてらい市」 開催日 令和5年6月9日(金)~10日(土) 展示会名 2023新潟どてらい市 54.展示会「2023鹿児島どてらい市」 開催日 令和5年6月10日(土)~12日(月) 展示会名 2023鹿児島どてらい市 55.展示会「2023富山どてらい市」 開催日 令和5年6月16日(金)~17日(土) 展示会名 2023富山どてらい市 56.展示会「2023米子どてらい市」 開催日 令和5年6月17日(土)~19日(月) 展示会名 2023米子どてらい市 57.展示会「MTA VIETNAM 2023」 開催日 令和5年7月4日(火)~7日(金) 展示会名 MTA VIETNAM 2023 58.YouTube(MTA VIETNAM 2023の紹介) ウェブサイトの掲載日 令和5年7月6日(木) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=z5Z7Z0_Obkk&t=3s&ab_channel=MST_TOOLING 59.展示会「2023大阪どてらい市」 開催日 令和5年7月6日(木)~8日(土) 展示会名 2023大阪どてらい市
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 60.YouTubeショート(2023大阪どてらい市の紹介) ウェブサイトの掲載日 令和5年7月6日(木) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/shorts/3hCFh721RMU 61.YouTube(2023大阪どてらい市の紹介) ウェブサイトの掲載日 令和5年7月7日(金) ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=gU2zFYB6Y_c&t=6s&ab_channel=MST_TOOLING 62.展示会「2023北九州どてらい市」 開催日 令和5年7月6日(木)~7日(金) 展示会名 2023北九州どてらい市 63.展示会「The解決展in中南信」 開催日 令和5年8月24日(木)~25日(金) 展示会名 The解決展in中南信 64.「タナカ善ニュース」誌 発行日 令和5年8月17日 刊行物 タナカ善ニュース第65号
(71)【出願人】
【識別番号】591286982
【氏名又は名称】株式会社MSTコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】溝口 春機
【テーマコード(参考)】
3C022
3C036
【Fターム(参考)】
3C022AA04
3C022AA08
3C022AA10
3C022KK03
3C022KK04
3C022KK12
3C022KK29
3C022PP00
3C036AA11
(57)【要約】
【課題】円筒穴の内周面を、円筒穴の入口の部分と出口の部分を含めて精度よくかつ高い加工能率で仕上げることが可能な円筒穴の仕上げ加工用工具を提供する。
【解決手段】焼きばめホルダ1で保持した超硬アーバ2の軸方向前端に着脱可能に固定して使用され、マシニングセンタで回転させながらワークWの円筒穴Hの中心まわりを螺旋状に移動させることで円筒穴Hの内周面を仕上げ加工する円筒穴の仕上げ加工用工具3であって、円筒穴Hの内周面を仕上げ加工する外周切れ刃24が、ストレート刃27と、ストレート刃27の軸方向前端から軸方向前方に向かって刃先径が次第に小さくなる第1傾斜刃28と、ストレート刃27の軸方向後端から軸方向後方に向かって刃先径が次第に小さくなる第2傾斜刃29とで構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼きばめホルダ(1)で保持した超硬アーバ(2)の軸方向前端の工具取付穴(12)に着脱可能に固定して使用され、マシニングセンタで回転させながらワーク(W)に形成された円筒穴(H)の中心まわりを螺旋状に移動させることで前記円筒穴(H)の内周面を仕上げ加工する円筒穴の仕上げ加工用工具であって、
前記円筒穴(H)の内周面を仕上げ加工する外周切れ刃(24)が、軸方向に沿って刃先径が一定のストレート刃(27)と、前記ストレート刃(27)の軸方向前端から軸方向前方に向かって刃先径が次第に小さくなる第1傾斜刃(28)と、前記ストレート刃(27)の軸方向後端から軸方向後方に向かって刃先径が次第に小さくなる第2傾斜刃(29)とで構成されている、円筒穴の仕上げ加工用工具。
【請求項2】
前記第1傾斜刃(28)は、回転方向から見て、少なくとも前記ストレート刃(27)の刃先半径よりは大きな曲率半径をもって湾曲するゆるやかな曲線状であり、その曲線のいずれの位置においても曲線の接線方向が軸方向に対してなす角度が30°以下となるように形成され、
前記第2傾斜刃(29)も、回転方向から見て、少なくとも前記ストレート刃(27)の刃先半径よりは大きな曲率半径をもって湾曲するゆるやかな曲線状であり、その曲線のいずれの位置においても曲線の接線方向が軸方向に対してなす角度が30°以下となるように形成されている請求項1に記載の円筒穴の仕上げ加工用工具。
【請求項3】
前記第1傾斜刃(28)は、軸方向に対して30°以下の角度で傾斜した直線状に形成され、
前記第2傾斜刃(29)も、軸方向に対して30°以下の角度で傾斜した直線状に形成されている請求項1に記載の円筒穴の仕上げ加工用工具。
【請求項4】
前記第1傾斜刃(28)と前記第2傾斜刃(29)が、軸方向に直角な仮想面に対して対称に形成されている請求項1から3のいずれかに記載の円筒穴の仕上げ加工用工具。
【請求項5】
前記仕上げ加工用工具は、前記外周切れ刃(24)が周方向に180°の間隔をおいて2箇所に形成された単一のインサートチップ(16)と、前記インサートチップ(16)が装着される工具本体(15)とを有する請求項1から3のいずれかに記載の円筒穴の仕上げ加工用工具。
【請求項6】
前記工具本体(15)は、前記超硬アーバ(2)の軸方向前端の前記工具取付穴(12)に嵌合して径方向の位置決めをする径方向の位置決め用の嵌合軸部(17)と、前記嵌合軸部(17)の軸方向後端から軸方向後方に延びるねじ軸部(18)とを有する請求項5に記載の円筒穴の仕上げ加工用工具。
【請求項7】
ワーク(W)に形成された円筒穴(H)の内周面を仕上げ加工する円筒穴の仕上げ加工方法であって、
軸方向前端が開口するチャック筒部(6)と、マシニングセンタの主軸(8)のテーパ穴(9)に挿入して固定されるテーパシャンク部(5)とを有する焼きばめホルダ(1)と、
前記チャック筒部(6)に挿入して焼きばめにより固定される基端部(10)と、前記基端部(10)から前記チャック筒部(6)の外側を軸方向前方に延びる棒状の軸部(11)と、前記軸部(11)の軸方向前端に開口する工具取付穴(12)とを有する超硬合金製の超硬アーバ(2)と、
前記超硬アーバ(2)の軸方向前端の前記工具取付穴(12)に着脱可能に固定される請求項1から3のいずれかに記載の円筒穴の仕上げ加工用工具(3)と、を使用し、
前記マシニングセンタで前記仕上げ加工用工具(3)を回転させながら前記ワーク(W)の前記円筒穴(H)の中心まわりを螺旋状に移動させることで前記円筒穴(H)の内周面を仕上げ加工する円筒穴の仕上げ加工方法。
【請求項8】
前記第1傾斜刃(28)と前記ストレート刃(27)とが前記円筒穴(H)の内周面を切削しながら前記円筒穴(H)を軸方向後側から軸方向前側に通過するように前記仕上げ加工用工具(3)を回転させながら軸方向前方に向かって一定の径の螺旋状に移動させる往路の中仕上げ加工工程と、
前記往路の中仕上げ加工工程の後、前記第2傾斜刃(29)と前記ストレート刃(27)とが前記円筒穴(H)の内周面を切削しながら前記円筒穴(H)を軸方向前側から軸方向後側に通過するように前記仕上げ加工用工具(3)を回転させながら軸方向後方に向かって前記一定の径よりも仕上げ加工の取り代の分だけ大きい径の螺旋状に移動させる復路の仕上げ加工工程とを行なう請求項7に記載の円筒穴の仕上げ加工方法。
【請求項9】
前記ストレート刃(27)の軸方向長さを、前記往路の中仕上げ加工工程において前記仕上げ加工用工具(3)を螺旋状に移動させる際の螺旋のリード長さ以上、かつ、前記復路の仕上げ加工工程において前記仕上げ加工用工具(3)を螺旋状に移動させる際の螺旋のリード長さ以上の長さに設定した請求項8に記載の円筒穴の仕上げ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、円筒穴の仕上げ加工用工具、およびその仕上げ加工用工具を使用した円筒穴の仕上げ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークに形成された円筒穴の内周面を仕上げ加工する場合、一般に、ボーリングヘッドが使用される(例えば、特許文献1)。図10にボーリングヘッド50の一例を示す。ボーリングヘッド50は、工作機械の主軸51のテーパ穴52に挿入して固定されるテーパシャンク部53と、そのテーパシャンク部53から軸方向に延びる棒状の軸部54と、その軸部54の先端に設けられた刃部55とを有する。刃部55は、軸部54に対して径方向に移動可能に支持されており、調整ねじ56を操作することで刃部55の径方向位置を調節することができるようになっている。
【0003】
このボーリングヘッド50の使用例を説明する。まず、図11に示すように、ボーリングヘッド50をツールプリセッタ57にセットし、ボーリングヘッド50の調整ねじ56を操作することで、ボーリングヘッド50の先端の刃部55の径方向位置を、ワークWの円筒穴Hの内径の仕上げ寸法に対応する径方向位置からわずかに径方向内側にオフセットした位置に調整する。次に、図10に示すように、ボーリングヘッド50を工作機械の主軸51にセットし、ボーリングヘッド50を定位置(円筒穴Hの中心位置)で回転させながらワークWの円筒穴Hに挿入することで、円筒穴Hの内周面を軸方向全長にわたって切削する。
【0004】
その後、円筒穴Hの内径を測定し、その測定値と円筒穴Hの内径の仕上げ寸法との差を求める。そして、図11に示すように、ボーリングヘッド50を再びツールプリセッタ57にセットし、円筒穴Hの内径の測定値と円筒穴Hの内径の仕上げ寸法との差の分だけボーリングヘッド50の先端の刃部55の径方向位置が径方向外側に移動するよう、手作業で刃部55の位置調整を行なう。その後、再び、図10に示すように、ボーリングヘッド50を工作機械の主軸51にセットし、ボーリングヘッド50を定位置で回転させながらワークWの円筒穴Hに挿入することで、円筒穴Hの内周面を軸方向全長にわたって切削し、円筒穴Hの内径を所定の仕上げ寸法に仕上げる。以上のように、ワークWの円筒穴Hの内周面の仕上げ加工は、一般にボーリングヘッド50を使用して行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-079517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図10図11に示すように、ボーリングヘッド50を使用して円筒穴Hの内周面の仕上げ加工を行なう場合、以下のような問題がある。
【0007】
図10に示すように、円筒穴Hの内周面を切削し、その後、図11に示すように、円筒穴Hの内径の測定値と円筒穴Hの内径の仕上げ寸法との差の分だけボーリングヘッド50の先端の刃部55の径方向位置が径方向外側に移動するよう、手作業で刃部55の位置調整を行なうのに人のスキルが必要であり、その作業のための時間もかかる。また、ボーリングヘッド50を定位置で回転させながらワークWの円筒穴Hに挿入する加工は、長くつながった切り屑を生じやすく、その切り屑がボーリングヘッド50に絡み付いて機械停止等の問題が生じやすい。また、内径の異なる複数の円筒穴Hを仕上げ加工する場合、軸径の異なる複数のボーリングヘッド50を準備する必要があるので、コストがかかる。
【0008】
そこで、この発明の発明者は、人のスキルを要せず、また、切り屑の絡み付きによる機械停止等を生じにくく、さらに、内径の異なる複数の円筒穴Hの内周面を低コストで仕上げることができる方法を検討した。
【0009】
その検討の結果、発明者は、図12に示すように、焼きばめにより工具を固定する焼きばめホルダ60と、超硬合金で形成された超硬アーバ61とを組み合わせて使用し、その超硬アーバ61の軸方向前端に装着した工具62でワークWの円筒穴Hの内周面を仕上げ加工するという着想を得た。
【0010】
すなわち、焼きばめにより工具を固定する焼きばめホルダ60と、超硬合金で形成された超硬アーバ61とを組み合わせて使用すれば、焼きばめホルダ60は、一般的なコレット式ホルダに比べて工具の振れを著しく小さく抑えることが可能であり、また超硬アーバ61は、一般的な鋼製アーバに比べて軸直角方向の剛性が著しく高いことから、焼きばめホルダ60で保持した超硬アーバ61の軸方向前端に工具62を装着し、その工具62をマシニングセンタで回転させながらワークWの円筒穴Hの中心まわりを螺旋状に移動させることでワークWの円筒穴Hの内周面を仕上げ加工すれば、ワークWの円筒穴Hの内周面を、ボーリングヘッド50で仕上げ加工するのと同等かそれ以上の仕上げ精度(仕上げ加工後の形状精度、寸法精度、表面粗さ等をいう。以下同じ)で加工することが可能となるという着想を得た。
【0011】
ところが、発明者が、図12に示すような一般的な工具62を使用して円筒穴Hの内周面の仕上げ加工を行ない、その仕上げ精度の評価を行なったところ、円筒穴Hの入口(図では円筒穴Hの上部開口)と円筒穴Hの出口(図では円筒穴Hの下部開口)において、円筒穴Hの内周面の仕上げ精度が低下する場合があることが分かった。
【0012】
そこで、発明者が、円筒穴Hの入口と出口で仕上げ精度が低下する原因を調査したところ、工具62の外周切れ刃63の軸方向前端部(図では下端部)が、円筒穴Hの入口の部分(図では上部開口の部分)の内周面を切削し始めたときに、工具62の切削抵抗が急激に上昇することで、工具62の外周切れ刃63が円筒穴Hの入口の部分の内周面に深く食い込み、その結果、工具62のびびりや円筒穴Hの入口の部分の拡径が生じたり、また、工具62の外周切れ刃63の軸方向後端部(図では上端部)が、円筒穴Hの出口の部分(図では下部開口の部分)を抜ける直前に、超硬アーバ61および工具62の撓みが急激に戻ることで、工具62の外周切れ刃63が円筒穴Hの出口の部分の内周面に深く食い込み、その結果、工具62のびびりや円筒穴Hの出口の部分の拡径が生じたりし、そのことが仕上げ精度の低下の原因になっていることが分かった。
【0013】
また、図12に示すような一般的な工具62を使用して円筒穴Hを仕上げ加工する場合、まず、下穴として形成された円筒穴Hの内周面を工具62で切削して中仕上げ加工を行ない、次に、工具62の移動の螺旋径を仕上げ加工の取り代の分だけ大きくした状態で、再び、図12に示すように、円筒穴Hの内周面を工具62で切削して仕上げ加工を行なうという方法が考えられる。中仕上げ加工は、その後の仕上げ加工を精度よく行なうために、仕上げ加工の取り代を残して円筒穴Hの内周面を削る加工である。すなわち、下穴として形成された円筒穴Hは、通常、穴の形状精度や寸法精度や表面粗さが低いため、そのまま仕上げ加工を行なったのでは、円筒穴Hの内周面の取り代が一定せず、円筒穴Hを精度よく仕上げることができない。そのため、仕上げ加工における円筒穴Hの内周面の取り代を一定させて円筒穴Hを精度よく仕上げるため、一般に、仕上げ加工の前に中仕上げ加工が行なわれる。ここで、本願の発明者は、上述した中仕上げ加工および仕上げ加工を行なうときの加工能率を向上させることも併せて検討した。
【0014】
この発明が解決しようとする課題は、円筒穴の内周面を、円筒穴の入口の部分と出口の部分を含めて精度よくかつ高い加工能率で仕上げることが可能な円筒穴の仕上げ加工用工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明では、上記の課題を解決するため、以下の構成の円筒穴の仕上げ加工用工具を提供する。
[構成1]
焼きばめホルダで保持した超硬アーバの軸方向前端の工具取付穴に着脱可能に固定して使用され、マシニングセンタで回転させながらワークに形成された円筒穴の中心まわりを螺旋状に移動させることで前記円筒穴の内周面を仕上げ加工する円筒穴の仕上げ加工用工具であって、
前記円筒穴の内周面を仕上げ加工する外周切れ刃が、軸方向に沿って刃先径が一定のストレート刃と、前記ストレート刃の軸方向前端から軸方向前方に向かって刃先径が次第に小さくなる第1傾斜刃と、前記ストレート刃の軸方向後端から軸方向後方に向かって刃先径が次第に小さくなる第2傾斜刃とで構成されている、円筒穴の仕上げ加工用工具。
【0016】
この構成を採用すると、仕上げ加工用工具の外周切れ刃が、軸方向に沿って刃先径が一定のストレート刃と、そのストレート刃の軸方向前端から軸方向前方に向かって刃先径が次第に小さくなる第1傾斜刃とを有するので、仕上げ加工用工具の外周切れ刃が、円筒穴の入口の部分の内周面を切削し始めるときに、仕上げ加工用工具の切削抵抗が次第にゆっくりと上昇する。そのため、仕上げ加工用工具の外周切れ刃が円筒穴の入口の部分の内周面に深く食い込むことによる工具のびびりや円筒穴の入口の部分の拡径を防止することができる。また、仕上げ加工用工具の外周切れ刃が、軸方向に沿って刃先径が一定のストレート刃と、そのストレート刃の軸方向後端から軸方向後方に向かって刃先径が次第に小さくなる第2傾斜刃とを有するので、仕上げ加工用工具の外周切れ刃が、円筒穴の出口の部分を抜ける直前に、超硬アーバおよび仕上げ加工用工具の撓みが次第にゆっくりと戻る。そのため、仕上げ加工用工具の外周切れ刃が円筒穴の出口の部分の内周面に深く食い込むことによる工具のびびりや円筒穴の出口の部分の拡径を防止することができる。
【0017】
また、仕上げ加工用工具の外周切れ刃が、ストレート刃の軸方向前端から軸方向前方に向かって刃先径が次第に小さくなる第1傾斜刃と、ストレート刃の軸方向後端から軸方向後方に向かって刃先径が次第に小さくなる第2傾斜刃とを有するので、1回の往復加工(具体的には、第1傾斜刃とストレート刃とが円筒穴の内周面を切削しながら円筒穴を軸方向後側から軸方向前側に通過するように仕上げ加工用工具を回転させながら軸方向前方に向かって一定の径の螺旋状に移動させる往路の中仕上げ加工と、その往路の中仕上げ加工の後、第2傾斜刃とストレート刃とが円筒穴の内周面を切削しながら円筒穴を軸方向前側から軸方向後側に通過するように仕上げ加工用工具を回転させながら軸方向後方に向かって前記一定の径よりも仕上げ加工の取り代の分だけ大きい径の螺旋状に移動させる復路の仕上げ加工)だけで円筒穴の中仕上げ加工および仕上げ加工を行なうことができ、高い加工能率で円筒穴の内周面を仕上げることが可能である。
【0018】
以上のように、上記構成を採用すると、円筒穴の内周面を、円筒穴の入口の部分と出口の部分を含めて精度よくかつ高い加工能率で仕上げることが可能となる。
【0019】
なお、上記構成において、第1傾斜刃は、直線状に延びる刃に限らず、凸円弧状に湾曲して延びる刃、凹円弧状に湾曲して延びる刃などを含む。要するに、回転方向から見てストレート刃の軸方向前端から軸方向前方に向かって刃先径が次第に小さくなる方向に傾斜して延びる刃であればよい。同様に、第2傾斜刃についても、回転方向から見てストレート刃の軸方向後端から軸方向後方に向かって刃先径が次第に小さくなる方向に傾斜して延びる刃であればよい。
【0020】
[構成2]
前記第1傾斜刃は、回転方向から見て、少なくとも前記ストレート刃の刃先半径よりは大きな曲率半径をもって湾曲するゆるやかな曲線状であり、その曲線のいずれの位置においても曲線の接線方向が軸方向に対してなす角度が30°以下となるように形成され、
前記第2傾斜刃も、回転方向から見て、少なくとも前記ストレート刃の刃先半径よりは大きな曲率半径をもって湾曲するゆるやかな曲線状であり、その曲線のいずれの位置においても曲線の接線方向が軸方向に対してなす角度が30°以下となるように形成されている構成1に記載の円筒穴の仕上げ加工用工具。
【0021】
この構成を採用すると、第1傾斜刃が、軸方向に対して接線方向のなす角度が30°以下となるゆるやかな曲線状に形成されているので、仕上げ加工用工具の外周切れ刃が円筒穴の入口の部分の内周面に深く食い込むことによる工具のびびりや円筒穴の入口の部分の拡径を効果的に防止することができる。また、第2傾斜刃も、軸方向に対して接線方向のなす角度が30°以下となるゆるやかな曲線状に形成されているので、仕上げ加工用工具の外周切れ刃が円筒穴の出口の部分の内周面に深く食い込むことによる工具のびびりや円筒穴の出口の部分の拡径を効果的に防止することができる。
【0022】
[構成3]
前記第1傾斜刃は、軸方向に対して30°以下の角度で傾斜した直線状に形成され、
前記第2傾斜刃も、軸方向に対して30°以下の角度で傾斜した直線状に形成されている構成1に記載の円筒穴の仕上げ加工用工具。
【0023】
この構成を採用すると、第1傾斜刃が、軸方向に対して30°以下の角度で傾斜した直線状に形成されているので、仕上げ加工用工具の外周切れ刃が円筒穴の入口の部分の内周面に深く食い込むことによる工具のびびりや円筒穴の入口の部分の拡径を効果的に防止することができる。また、第2傾斜刃も、軸方向に対して30°以下の角度で傾斜した直線状に形成されているので、仕上げ加工用工具の外周切れ刃が円筒穴の出口の部分の内周面に深く食い込むことによる工具のびびりや円筒穴の出口の部分の拡径を効果的に防止することができる。
【0024】
[構成4]
前記第1傾斜刃と前記第2傾斜刃が、軸方向に直角な仮想面に対して対称に形成されている構成1から3のいずれかに記載の円筒穴の仕上げ加工用工具。
【0025】
この構成を採用すると、第1傾斜刃と第2傾斜刃が対称形状なので、往復加工(具体的には、第1傾斜刃とストレート刃とが円筒穴の内周面を切削しながら円筒穴を軸方向後側から軸方向前側に通過するように仕上げ加工用工具を回転させながら軸方向前方に向かって一定の径の螺旋状に移動させる往路の中仕上げ加工と、その往路の中仕上げ加工の後、第2傾斜刃とストレート刃とが円筒穴の内周面を切削しながら円筒穴を軸方向前側から軸方向後側に通過するように仕上げ加工用工具を回転させながら軸方向後方に向かって前記一定の径よりも仕上げ加工の取り代の分だけ大きい径の螺旋状に移動させる復路の仕上げ加工と行なう加工)をするときに、安定した加工が可能となる。
【0026】
[構成5]
前記仕上げ加工用工具は、前記外周切れ刃が周方向に180°の間隔をおいて2箇所に形成された単一のインサートチップと、前記インサートチップが装着される工具本体とを有する構成1から4のいずれかに記載の円筒穴の仕上げ加工用工具。
【0027】
この構成を採用すると、周方向に180°の間隔をおいて2箇所の外周切れ刃が形成された単一のインサートチップを使用するので、インサートチップの径方向の位置決めが容易である。そのため、人のスキルを必要とせずに、精度よく円筒穴の内周面を仕上げることが可能である。
【0028】
[構成6]
前記工具本体は、前記超硬アーバの軸方向前端の前記工具取付穴に嵌合して径方向の位置決めをする径方向の位置決め用の嵌合軸部と、前記嵌合軸部の軸方向後端から軸方向後方に延びるねじ軸部とを有する構成5に記載の円筒穴の仕上げ加工用工具。
【0029】
この構成を採用すると、工具本体を超硬アーバの軸方向前端に固定したときに、工具本体の嵌合軸部が、超硬アーバの工具取付穴に嵌合することで、自動的に仕上げ加工用工具の径方向の位置決めがされる。そのため、人のスキルを必要とせずに、精度よく円筒穴の内周面を仕上げることが可能である。
【0030】
また、この発明では、上記の仕上げ加工用工具を使用した円筒穴の仕上げ加工方法として、以下の構成のものを併せて提供する。
[構成7]
ワークに形成された円筒穴の内周面を仕上げ加工する円筒穴の仕上げ加工方法であって、
軸方向前端が開口するチャック筒部と、マシニングセンタの主軸のテーパ穴に挿入して固定されるテーパシャンク部とを有する焼きばめホルダと、
前記チャック筒部に挿入して焼きばめにより固定される基端部と、前記基端部から前記チャック筒部の外側を軸方向前方に延びる棒状の軸部と、前記軸部の軸方向前端に開口する工具取付穴とを有する超硬合金製の超硬アーバと、
前記超硬アーバの軸方向前端の前記工具取付穴に着脱可能に固定される構成1から6のいずれかに記載の円筒穴の仕上げ加工用工具と、を使用し、
前記マシニングセンタで前記仕上げ加工用工具を回転させながら前記ワークの前記円筒穴の中心まわりを螺旋状に移動させることで前記円筒穴の内周面を仕上げ加工する円筒穴の仕上げ加工方法。
【0031】
この構成を採用すると、焼きばめホルダは、一般的なコレット式ホルダに比べて工具の振れを著しく小さく抑えることが可能であり、また超硬アーバは、一般的な鋼製アーバに比べて軸直角方向の剛性が著しく高いことから、ワークの円筒穴の内周面を、ボーリングヘッドで仕上げ加工するのと同等かそれ以上の仕上げ精度で加工して所定の内径に仕上げることができる。また、ワークの円筒穴の内径が所定の仕上げ寸法になるように、仕上げ加工用工具が螺旋状に移動するときの螺旋径をマシニングセンタの数値制御で自動的に調整することが可能である。そのため、手作業による刃部の位置調整が不要であり、人のスキルを要しない。また、仕上げ加工用工具を回転させながらワークの円筒穴の中心まわりを螺旋状に移動させるので、ワークの円筒穴の内周面を加工するときの切り屑が細かく分断され、長くつながった切り屑が生じにくい。そのため、切り屑の絡み付きによる機械停止等を生じにくい。また、内径の異なる複数のワークの円筒穴を仕上げ加工する場合、仕上げ加工用工具が螺旋状に移動するときの螺旋径をマシニングセンタの数値制御で変更することで、内径の異なる複数のワークの円筒穴を仕上げ加工することができる。そのため、低コストである。
【0032】
[構成8]
前記第1傾斜刃と前記ストレート刃とが前記円筒穴の内周面を切削しながら前記円筒穴を軸方向後側から軸方向前側に通過するように前記仕上げ加工用工具を回転させながら軸方向前方に向かって一定の径の螺旋状に移動させる往路の中仕上げ加工工程と、
前記往路の中仕上げ加工工程の後、前記第2傾斜刃と前記ストレート刃とが前記円筒穴の内周面を切削しながら前記円筒穴を軸方向前側から軸方向後側に通過するように前記仕上げ加工用工具を回転させながら軸方向後方に向かって前記一定の径よりも仕上げ加工の取り代の分だけ大きい径の螺旋状に移動させる復路の仕上げ加工工程とを行なう構成7に記載の円筒穴の仕上げ加工方法。
【0033】
この構成を採用すると、仕上げ加工用工具をワークの円筒穴に1回挿入するだけで、円筒穴の中仕上げ加工および仕上げ加工を行なうことができるので、高い加工能率で円筒穴の内周面を仕上げることが可能となる。
【0034】
[構成9]
前記ストレート刃の軸方向長さを、前記往路の中仕上げ加工工程において前記仕上げ加工用工具を螺旋状に移動させる際の螺旋のリード長さ以上、かつ、前記復路の仕上げ加工工程において前記仕上げ加工用工具を螺旋状に移動させる際の螺旋のリード長さ以上の長さに設定した構成8に記載の円筒穴の仕上げ加工方法。
【0035】
この構成を採用すると、ストレート刃の軸方向長さが、往路の中仕上げ加工工程における仕上げ加工用工具が螺旋状に移動する際の螺旋のリード長さ以上、かつ、前記復路の仕上げ加工工程において前記仕上げ加工用工具を螺旋状に移動させる際の螺旋のリード長さ以上の長さとされているので、仕上げ加工用工具が螺旋状に1周移動する前の状態でのストレート刃による軸方向の加工範囲と、仕上げ加工用工具が螺旋状に1周移動した後の状態でのストレート刃による軸方向の加工範囲とが重なり、その結果、円筒穴の内周面の形状精度や表面粗さを効果的に高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0036】
この発明の円筒穴の仕上げ加工用工具は、円筒穴の内周面を、円筒穴の入口の部分と出口の部分を含めて精度よくかつ高い加工能率で仕上げることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】この発明の実施形態にかかる円筒穴の仕上げ加工用工具を使用して、円筒穴の内周面を仕上げ加工する使用状態を示す部分断面図
図2図1の仕上げ加工用工具の近傍を拡大して示す図
図3図2に示す仕上げ加工用工具を軸方向前側から見た図
図4図2に示す仕上げ加工用工具で、図1に示す円筒穴の入口の部分の内周面を切削し始めるときの仕上げ加工用工具の外周切れ刃の近傍を回転方向から見た図
図5図4に示す仕上げ加工用工具が円筒穴の内周面を切削しながら軸方向前方に移動し、図1に示す円筒穴の中間部分に位置するときの仕上げ加工用工具の外周切れ刃の近傍を回転方向から見た図
図6図5に示す仕上げ加工用工具が円筒穴の内周面を切削しながらさらに軸方向前方に移動し、図1に示す円筒穴の出口の部分を抜ける直前の位置にあるときの仕上げ加工用工具の外周切れ刃の近傍を回転方向から見た図
図7図6に示す仕上げ加工用工具が円筒穴の出口を抜けた後、軸方向後方に移動して円筒穴の内周面を再び切削し始める直前の仕上げ加工用工具の外周切れ刃の近傍を回転方向から見た図
図8図2に示す外周切れ刃の変形例を示す仕上げ加工用工具の軸方向前端部の拡大図
図9図2に示す外周切れ刃の他の変形例を示す仕上げ加工用工具の軸方向前端部の拡大図
図10】従来のボーリングヘッドを使用して円筒穴の内周面を仕上げ加工する状態を示す部分断面図
図11図10に示すボーリングヘッドの刃部の位置調整をツールプリセッタで行なう状態を示す図
図12】比較例の工具を使用して円筒穴の内周面を仕上げ加工する使用状態を示す部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1に、焼きばめホルダ1と、焼きばめホルダ1に保持される超硬アーバ2と、この発明の実施形態にかかる仕上げ加工用工具3とを使用して、ワークWを貫通して形成された円筒穴Hの内周面を仕上げ加工する使用状態を示す。
【0039】
焼きばめホルダ1は、フランジ部4と、フランジ部4から軸方向後方(図では上方)に延びるテーパシャンク部5と、フランジ部4から軸方向前方(図では下方)に延びるチャック筒部6とを有する。フランジ部4の外周には、マシニングセンタの工具交換用マニピュレータ(図示せず)で把持するための周方向溝7が形成されている。
【0040】
テーパシャンク部5は、マシニングセンタの主軸8のテーパ穴9に挿入して固定される部分である。マシニングセンタは、主軸8の軸線方向であるZ軸方向(図では上下方向)と、Z軸方向に直交するX軸方向(図では左右方向)、Y軸方向(図では紙面に直交する方向)の合計3軸方向の動作を同時制御することが可能なものを使用している。
【0041】
チャック筒部6は、軸方向前端(図では下端)が開口する筒状に形成されている。テーパシャンク部5とフランジ部4とチャック筒部6は、鋼材で一体に形成されている。チャック筒部6を構成する鋼材は、フランジ部4およびテーパシャンク部5を構成する鋼材よりも線膨張係数の大きい鋼材(例えば、オーステナイト鋼)を使用し、その両者を溶接等により一体化した構成を採用すると好ましい。
【0042】
超硬アーバ2は、焼きばめホルダ1のチャック筒部6に挿入して焼きばめにより固定される基端部10と、基端部10からチャック筒部6の外側を軸方向前方(図では下方)に延びる棒状の軸部11と、軸部11の軸方向前端(図では下端)に開口する工具取付穴12とを有する。基端部10と軸部11は、軸方向に細長い円柱状であり、超硬合金で一体に形成されている。図では、軸部11の外径が基端部10の外径よりもわずかに小さい超硬アーバ2を示したが、軸部11の外径と基端部10の外径が同一寸法の超硬アーバ2を採用することも可能である。
【0043】
図2に示すように、工具取付穴12は、内周に雌ねじをもつねじ穴部13と、ねじ穴部13に対して軸部11の軸方向前端(図では下端)の側に形成された嵌合穴部14とを有する。
【0044】
仕上げ加工用工具3は、超硬アーバ2の軸方向前端(図では下端)の工具取付穴12に着脱可能に固定されている。仕上げ加工用工具3は、工具本体15と、工具本体15に装着したインサートチップ16とを有する。工具本体15は、工具本体15から軸方向後方(図では上方)に延びる嵌合軸部17と、嵌合軸部17の軸方向後端(図では上端)から軸方向後方に延びるねじ軸部18とを有する。ねじ軸部18は、工具取付穴12のねじ穴部13にねじ係合している。嵌合軸部17は、工具取付穴12の嵌合穴部14に嵌合して工具本体15を径方向に位置決めしている。
【0045】
図2図3に示すように、工具本体15には、軸方向前方に突出する一対の対向片19が形成されている。一対の対向片19は、仕上げ加工用工具3の回転中心を間に挟んで軸直角方向に対向しており、その一対の対向片19の間にインサートチップ16が挿入されている。インサートチップ16は、ボルト20を締め込むことで一対の対向片19に固定されている。インサートチップ16は超硬合金で形成されている。
【0046】
図3に示すように、一対の対向片19のうち一方の対向片19には、ボルト20のねじ軸とねじ係合するねじ穴21が形成され、他方の対向片19には、ボルト20の頭部が着座する座面22が形成されている。インサートチップ16には、ボルト20が挿通される貫通孔23が形成されている。
【0047】
インサートチップ16は、周方向に180°の間隔をおいて2箇所に外周切れ刃24が形成されている。外周切れ刃24は、仕上げ加工用工具3の回転方向前方を向くすくい面25と、径方向外方を向く逃げ面26との間の交差稜であり、この部分で、図2に示すように、ワークWの円筒穴Hの内周面を切削する。
【0048】
図4に示すように、外周切れ刃24は、軸方向に沿って刃先径が一定のストレート刃27と、ストレート刃27の軸方向前端から軸方向前方に向かって刃先径が次第に小さくなる第1傾斜刃28と、ストレート刃27の軸方向後端から軸方向後方に向かって刃先径が次第に小さくなる第2傾斜刃29とで構成されている。
【0049】
ストレート刃27の軸方向長さは、後述の往路の中仕上げ加工工程において仕上げ加工用工具3を螺旋状に移動させる際の螺旋のリード長さ以上の長さに設定され、具体的には、仕上げ加工用工具3を螺旋状に移動させる際の螺旋のリード長さが1mm以下の場合、ストレート刃27の軸方向長さは、1mm以上(好ましくは2mm以上)に設定されている。また、第1傾斜刃28の径方向幅は、後述の往路の中仕上げ加工工程において円筒穴Hの内周面を切削するときの切削深さ(取り代)以上の寸法、具体的には0.1mm以上の大きさに設定されている。
【0050】
第1傾斜刃28は、軸方向に対して3°以上30°以下(好ましくは15°以下、より好ましくは10°以下)の角度で傾斜した直線状に形成され、第2傾斜刃29も、軸方向に対して3°以上30°以下(好ましくは15°以下、より好ましくは10°以下)の角度で傾斜した直線状に形成されている。
【0051】
ここでは、第1傾斜刃28および第2傾斜刃29として、図4に示すように回転方向から見て直線状のものを挙げて説明したが、第1傾斜刃28および第2傾斜刃29は、回転方向から見て大きな曲率半径で湾曲するゆるやかな曲線状とすることもできる。この場合、第1傾斜刃28および第2傾斜刃29を、少なくともストレート刃27の刃先半径の1倍(好ましくは1.5倍、より好ましくは2倍(=刃先径))よりも大きな曲率半径をもって湾曲するゆるやかな曲線状(例えばゆるやかな凸円弧状)とし、その曲線の後述の中仕上げ加工または仕上げ加工を行なう部分のいずれの位置においても曲線の接線方向が軸方向に対してなす角度が30°以下(好ましくは15°以下、より好ましくは10°以下)となるように形成すると好ましい。
【0052】
また、第1傾斜刃28と第2傾斜刃29は、図8に示すような凸円弧状に湾曲したものを採用することも可能であり、また、図9に示すような凹円弧状に湾曲したものを採用することも可能である。
【0053】
図4に示すように、第1傾斜刃28と第2傾斜刃29は、軸方向(図では上下方向)に直角な仮想面に対して対称に形成されている。
【0054】
上述の焼きばめホルダ1と超硬アーバ2と仕上げ加工用工具3を使用して、図1に示すワークWの円筒穴Hの内周面を仕上げ加工する仕上げ加工方法の一例を説明する。
【0055】
図1に示す主軸8を回転駆動することで仕上げ加工用工具3を回転させながら、マシニングセンタのXYZの同時3軸制御により仕上げ加工用工具3をワークWの円筒穴Hの中心まわりを螺旋状に移動させることで円筒穴Hの内周面を軸方向全長にわたって切削する(粗加工)。このとき、切削後の円筒穴Hの内径が仕上げ寸法(目標寸法)よりもわずかに小さくなるように切削を行なう。
【0056】
その後、マシニングセンタのタッチプローブ(図示せず)で、円筒穴Hの内径を測定する。その後、再び、図1に示す主軸8を回転駆動することで、図2に示すように、仕上げ加工用工具3を回転させながら、マシニングセンタのXYZの同時3軸制御により仕上げ加工用工具3をワークWの円筒穴Hの中心まわりを螺旋状に移動させることで円筒穴Hの内周面を軸方向全長にわたって切削し、円筒穴Hの内径を仕上げ寸法(目標寸法)に一致させる。
【0057】
この加工は、往復加工により行なう。すなわち、図4図6に示すように、まず、第1傾斜刃28とストレート刃27とが円筒穴Hの内周面を切削しながら円筒穴Hを軸方向後側(図では上側)から軸方向前側(図では下側)に通過するように、仕上げ加工用工具3を回転させながら軸方向前方(図では下方)に向かって一定の径の螺旋状に移動させる往路の中仕上げ加工工程を行なう。その後、図7に示すように、第2傾斜刃29とストレート刃27とが円筒穴Hの内周面を切削しながら円筒穴Hを軸方向前側(図では下側)から軸方向後側(図では上側)に通過するように仕上げ加工用工具3を回転させながら軸方向後方(図では上方)に向かって螺旋状に移動させる復路の仕上げ加工工程を行なう。
【0058】
ここで、復路の仕上げ加工工程において仕上げ加工用工具3を螺旋状に移動させるとき、仕上げ加工用工具3の移動の螺旋径は、往路の中仕上げ加工工程において仕上げ加工用工具3を螺旋状に移動させるときの螺旋径よりも仕上げ加工の取り代(半径で0.03mm~0.1mm程度)の分だけ大きく設定する。この復路の仕上げ加工工程を行なうことにより、超硬アーバ2や工具3の僅かな撓みによる往路の中仕上げ加工工程での円筒穴Hの内周面の切り残しを除去し、円筒穴Hの内径寸法の精度を高めることができる。
【0059】
上記の方法で円筒穴Hの内周面の仕上げ加工を行なうと、図1に示す焼きばめホルダ1は、一般的なコレット式ホルダに比べて工具の振れを著しく小さく抑えることが可能であり、また超硬アーバ2は、一般的な鋼製アーバに比べて軸直角方向の剛性が著しく高いことから、ワークWの円筒穴Hの内周面を、ボーリングヘッドで仕上げ加工するのと同等かそれ以上の精度で加工して所定の内径に仕上げることができる。
【0060】
また、上記の方法で円筒穴Hの内周面の仕上げ加工を行なうと、図1に示すワークWの円筒穴Hの内径が所定の仕上げ寸法になるように、仕上げ加工用工具3が螺旋状に移動するときの螺旋径をマシニングセンタの数値制御で自動的に調整することが可能である。そのため、手作業による刃部の位置調整が不要であり、人のスキルを要しない。
【0061】
また、上記の方法で円筒穴Hの内周面の仕上げ加工を行なうと、図1に示す仕上げ加工用工具3を回転させながらワークWの円筒穴Hの中心まわりを螺旋状に移動させるので、ワークWの円筒穴Hの内周面を加工するときの切り屑が細かく分断され、長くつながった切り屑が生じにくい。そのため、切り屑の絡み付きによる機械停止等を生じにくい。
【0062】
また、内径の異なる複数のワークWの円筒穴Hを仕上げ加工する場合、仕上げ加工用工具3が螺旋状に移動するときの螺旋径をマシニングセンタの数値制御で変更することで、内径の異なる複数のワークWの円筒穴Hを仕上げ加工することができる。そのため、低コストである。
【0063】
また、上記の方法で円筒穴Hの内周面の仕上げ加工を行なうと、図4図7に示すように、仕上げ加工用工具3をワークWの円筒穴Hに1回挿入するだけで、ワークWの円筒穴Hの中仕上げ加工および仕上げ加工を行なうことができるので、高い加工能率で円筒穴Hの内周面を仕上げることが可能である。
【0064】
この実施形態の仕上げ加工用工具3は、図2に示すように、外周切れ刃24が、軸方向に沿って刃先径が一定のストレート刃27と、そのストレート刃27の軸方向前端から軸方向前方に向かって刃先径が次第に小さくなる第1傾斜刃28とを有するので、図4に示すように、外周切れ刃24が、円筒穴Hの入口の部分の内周面を切削し始めるときに、切削抵抗が次第にゆっくりと上昇する。そのため、外周切れ刃24が円筒穴Hの入口の部分の内周面に深く食い込むことによる工具3のびびりや円筒穴Hの入口の部分の拡径を防止することができる。
【0065】
また、この仕上げ加工用工具3は、図2に示すように、外周切れ刃24が、軸方向に沿って刃先径が一定のストレート刃27と、そのストレート刃27の軸方向後端から軸方向後方に向かって刃先径が次第に小さくなる第2傾斜刃29とを有するので、図6に示すように、外周切れ刃24が、円筒穴Hの出口の部分を抜ける直前に、超硬アーバ2および仕上げ加工用工具3の撓みが次第にゆっくりと戻る。そのため、外周切れ刃24が円筒穴Hの出口の部分の内周面に深く食い込むことによる工具3のびびりや円筒穴Hの出口の部分の拡径を防止することができる。したがって、円筒穴Hの内周面を、円筒穴Hの入口の部分と出口の部分を含めて精度よく仕上げることが可能である。
【0066】
また、この仕上げ加工用工具3は、図2に示すように、外周切れ刃24が、ストレート刃27の軸方向前端から軸方向前方に向かって刃先径が次第に小さくなる第1傾斜刃28と、ストレート刃27の軸方向後端から軸方向後方に向かって刃先径が次第に小さくなる第2傾斜刃29とを有するので、1回の往復加工(具体的には、第1傾斜刃28とストレート刃27とが円筒穴Hの内周面を切削しながら円筒穴Hを軸方向後側(図では上側)から軸方向前側(図では下側)に通過するように仕上げ加工用工具3を回転させながら軸方向前方に向かって一定の径の螺旋状に移動させる往路の中仕上げ加工と、その往路の中仕上げ加工の後、第2傾斜刃29とストレート刃27とが円筒穴Hの内周面を切削しながら円筒穴Hを軸方向前側(図では下側)から軸方向後側(図では上側)に通過するように仕上げ加工用工具3を回転させながら軸方向後方に向かって前記一定の径よりも仕上げ加工の取り代の分だけ大きい径の螺旋状に移動させる復路の仕上げ加工)だけで円筒穴Hの中仕上げ加工および仕上げ加工を行なうことができ、高い加工能率で円筒穴Hの内周面を仕上げることが可能である。
【0067】
また、この仕上げ加工用工具3は、図2に示す第1傾斜刃28が、軸方向に対して30°以下(好ましくは15°以下、より好ましくは10°以下)の角度で傾斜した直線状に形成されているので、図4に示すように、外周切れ刃24が、円筒穴Hの入口の部分の内周面を切削し始めるときに、外周切れ刃24が円筒穴Hの入口の部分の内周面に深く食い込むことによる工具3のびびりや円筒穴Hの入口の部分の拡径を効果的に防止することができる。
【0068】
また、この仕上げ加工用工具3は、図2に示す第2傾斜刃29が、軸方向に対して30°以下(好ましくは15°以下、より好ましくは10°以下)の角度で傾斜した直線状に形成されているので、図6に示すように、外周切れ刃24が、円筒穴Hの出口の部分を抜ける直前に、外周切れ刃24が円筒穴Hの出口の部分の内周面に深く食い込むことによる工具3のびびりや円筒穴Hの出口の部分の拡径を効果的に防止することができる。
【0069】
また、この仕上げ加工用工具3は、図2に示すように、第1傾斜刃28と第2傾斜刃29が対称形状なので、図4図7に示すように、往復加工をするときに安定した加工が可能である。
【0070】
また、この仕上げ加工用工具3は、図3に示すように、周方向に180°の間隔をおいて2箇所の外周切れ刃24が形成された単一のインサートチップ16を使用しているので、インサートチップ16の径方向の位置決めが容易である。そのため、人のスキルを必要とせずに、精度よく円筒穴Hの内周面を仕上げることが可能である。
【0071】
また、この仕上げ加工用工具3は、図2に示すように、工具本体15を超硬アーバ2の軸方向前端に固定したときに、工具本体15の嵌合軸部17が、超硬アーバ2の工具取付穴12に嵌合することで、自動的に仕上げ加工用工具3の径方向の位置決めがされる。そのため、人のスキルを必要とせずに、精度よく円筒穴Hの内周面を仕上げることが可能である。
【0072】
また、この仕上げ加工用工具3は、図2に示す外周切れ刃24のストレート刃27の軸方向長さが、往路の中仕上げ加工工程において仕上げ加工用工具3が螺旋状に移動する際の螺旋のリード長さ以上、かつ、復路の仕上げ加工工程において仕上げ加工用工具3が螺旋状に移動する際の螺旋のリード長さ以上の長さとされているので、仕上げ加工用工具3が螺旋状に1周移動する前の状態でのストレート刃27による軸方向の加工範囲と、仕上げ加工用工具3が螺旋状に1周移動した後の状態でのストレート刃27による軸方向の加工範囲とが重なり、その結果、円筒穴Hの内周面の形状精度や表面粗さを効果的に高めることが可能となっている。
【0073】
上記実施形態では、工具3のびびりや円筒穴Hの入口と出口の部分の拡径を効果的に防止するため、回転方向から見て軸方向に対して30°以下(好ましくは15°以下、より好ましくは10°以下)の角度で傾斜した直線状に形成された第1傾斜刃28および第2傾斜刃29を採用したが、第1傾斜刃28および第2傾斜刃29として、回転方向から見て軸方向に対して接線方向のなす角度が30°以下(好ましくは15°以下、より好ましくは10°以下)となるゆるやかな曲線状に形成されたものを採用しても、外周切れ刃24が円筒穴Hの入口と出口の部分の内周面に深く食い込むことによる工具3のびびりや円筒穴Hの入口と出口の部分の拡径を効果的に防止することが可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 焼きばめホルダ
2 超硬アーバ
3 円筒穴の仕上げ加工用工具
5 テーパシャンク部
6 チャック筒部
8 主軸
9 テーパ穴
10 基端部
11 軸部
12 工具取付穴
15 工具本体
16 インサートチップ
17 嵌合軸部
18 ねじ軸部
24 外周切れ刃
27 ストレート刃
28 第1傾斜刃
29 第2傾斜刃
W ワーク
H 円筒穴
図1
図2
図3
図4
図5
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図12