(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025035837
(43)【公開日】2025-03-14
(54)【発明の名称】フィルタおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 29/07 20060101AFI20250307BHJP
B01D 46/52 20060101ALI20250307BHJP
【FI】
B01D29/06 510F
B01D46/52 A
B01D46/52 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023143135
(22)【出願日】2023-09-04
(71)【出願人】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大場 俊哉
【テーマコード(参考)】
4D058
4D116
【Fターム(参考)】
4D058JA10
4D058JB24
4D058JB25
4D058JB39
4D058KA11
4D058KA25
4D116AA16
4D116BB01
4D116BC13
4D116BC27
4D116BC71
4D116EE04
4D116EE09
4D116FF14B
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4D116FF18B
4D116GG01
4D116GG04
4D116GG12
4D116GG21
4D116GG27
4D116GG29
4D116GG34
4D116QB16
4D116QB21
4D116QB23
4D116ZZ01
4D116ZZ03
4D116ZZ05
4D116ZZ06
(57)【要約】
【課題】
濾材における対向する端部同士の接着が好適になされている、筒状プリーツ濾材を備えるフィルタの提供を目的とする。
【解決手段】
不織布層と布帛層を備えた濾材からなる、布帛層同士が対面した状態で、対向する端部同士が接着層によって接着している筒状プリーツ濾材の、対向する端部同士が接着層によって接着している部分において、
・対向する両不織布層同士を最短距離で結ぶ線分上にわたり前記接着層が存在している時に、
および/または、
・当該線分と平行を成す、対向する両不織布層同士を結ぶ線分上にわたり前記接着層が存在している時に、
濾材における対向する端部同士の接着が強固に成されることを見出した。
そのため、接着層によって対向する端部同士の接着が強固に成された、筒状プリーツ濾材を提供できる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する端部間がジグザグ形状に折り加工されている濾材の、対向する端部同士を接着して中空円筒状に形成した筒状プリーツ濾材を備える、フィルタであって、
前記濾材は不織布層と布帛層を備えており、
前記布帛層同士が対面した状態で、前記対向する端部同士が接着層によって接着しており、
前記対向する端部同士が接着層によって接着している部分において、前記対向する端部のうち一方が備える不織布層と、前記対向する端部のうちもう一方が備える不織布層とを最短距離で結ぶ線分上、および/または、当該線分と平行を成し前記対向する端部のうち一方が備える不織布層と、前記対向する端部のうちもう一方が備える不織布層とを結ぶ別の線分上にわたり前記接着層が存在している、
フィルタ。
【請求項2】
(工程1)不織布層と布帛層を備える濾材を用意する工程、
(工程2)前記濾材における対向する端部間をジグザグ形状に折り加工する工程、
(工程3)前記ジグザグ形状に折り加工された濾材における対向する両端部について、前記布帛層同士が対面した状態で、前記布帛層同士の間に接着層を構成可能な接着成分の層を設けて、前記端部同士を重ね合わせる工程、
(工程4)前記端部同士が重ね合わされた部分へ、圧力あるいは熱と圧力を作用させる工程、
を備える、前記ジグザグ形状に折り加工された濾材の、前記対向する端部同士が接着していることで中空円筒状に形成された筒状プリーツ濾材を備える、フィルタの製造方法であって、
前記(工程3)において、前記接着成分の層の厚みが、前記布帛層の厚み二層分以上である、フィルタの製造方法。
【請求項3】
前記接着成分の層が両面テープである、請求項2記載のフィルタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向する端部間がジグザグ形状に折り加工されている濾材の、対向する端部同士を接着して中空円筒状に形成した筒状プリーツ濾材を備える、フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルタには、圧力損失が低く、塵埃の捕集に伴う目詰まりが生じ難い性能が求められている。このような要望を満足できるフィルタを生産性良く実現するため、例えば特許文献1(特開2016-168519)にも開示されているように、対向する端部間がジグザグ形状に折り加工された濾材の、対向する端部同士を接着して中空円筒状に形成した筒状プリーツ濾材を備える、フィルタが検討されている。
【0003】
当該構成を有するフィルタは、対向する端部間がジグザグ形状に折り加工されていることで面積の大きい濾材を備えることができ、濾過を可能とする面積を増加できる。その結果、圧力損失が低く、塵埃の捕集に伴う目詰まりが生じ難いフィルタを実現可能なものである。
【0004】
なお、特許文献1に開示されている筒状プリーツ濾材は、濾材の端部同士が両面テープなどに由来する接着層によって、接着され形成されていることが開示されている。しかし、それ以外には当該接着層の詳細は開示されておらず、その構成について詳細な検討はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-168519(0034、
図3など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願出願人は、更に圧力損失が低いフィルタを実現できるよう、不織布を濾材として採用すると共に、その目付を低減化することを試みた。このようにして調製した濾材は圧力損失が低いものであったが、それに併せて強度が低下した。
【0007】
そこで、本願出願人は、不織布を布帛で補強してなる積層体を濾材として採用することを試みた。このようにして調製した濾材は、強度の低下が抑制されていた。
【0008】
しかし、当該濾材(不織布を布帛で補強してなる積層体)における対向する端部間をジグザグ形状に折り加工し、次いで、当該濾材が備える布帛層同士を対面した状態にして、当該端部同士を接着成分によって接着して筒状プリーツ濾材を調製したところ、布帛同士の間や布帛と不織布の間で層間剥離が発生するなど、当該端部同士の接着が意図せず弱いことがあった。
【0009】
そのため、当該筒状プリーツ濾材へ外力が作用すると布帛同士の間や布帛と不織布の間で層間剥離が発生して、当該端部同士が外れ易いものであった。その結果、フィルタにリークが発生して、塵埃の捕集性能が低下する恐れがあった。
【0010】
本発明では、濾材における対向する端部同士の接着が好適になされている、筒状プリーツ濾材を備えるフィルタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
「(請求項1)
対向する端部間がジグザグ形状に折り加工されている濾材の、対向する端部同士を接着して中空円筒状に形成した筒状プリーツ濾材を備える、フィルタであって、
前記濾材は不織布層と布帛層を備えており、
前記布帛層同士が対面した状態で、前記対向する端部同士が接着層によって接着しており、
前記対向する端部同士が接着層によって接着している部分において、前記対向する端部のうち一方が備える不織布層と、前記対向する端部のうちもう一方が備える不織布層とを最短距離で結ぶ線分上、および/または、当該線分と平行を成し前記対向する端部のうち一方が備える不織布層と、前記対向する端部のうちもう一方が備える不織布層とを結ぶ別の線分上にわたり前記接着層が存在している、
フィルタ。
(請求項2)
(工程1)不織布層と布帛層を備える濾材を用意する工程、
(工程2)前記濾材における対向する端部間をジグザグ形状に折り加工する工程、
(工程3)前記ジグザグ形状に折り加工された濾材における対向する両端部について、前記布帛層同士が対面した状態で、前記布帛層同士の間に接着層を構成可能な接着成分の層を設けて、前記端部同士を重ね合わせる工程、
(工程4)前記端部同士が重ね合わされた部分へ、圧力あるいは熱と圧力を作用させる工程、
を備える、前記ジグザグ形状に折り加工された濾材の、前記対向する端部同士が接着していることで中空円筒状に形成された筒状プリーツ濾材を備える、フィルタの製造方法であって、
前記(工程3)において、前記接着成分の層の厚みが、前記布帛層の厚み二層分以上である、フィルタの製造方法。
(請求項3)
前記接着成分の層が両面テープである、請求項2記載のフィルタの製造方法。」
である。
【発明の効果】
【0012】
本願出願人が検討を続けた結果、「対向する端部間がジグザグ形状に折り加工されている濾材の、対向する端部同士を接着して中空円筒状に形成した筒状プリーツ濾材を備える、フィルタであって、前記濾材は不織布層と布帛層を備えており、前記布帛層同士が対面した状態で、前記対向する端部同士が接着層によって接着して」いる筒状プリーツ濾材の、対向する端部同士が接着層によって接着している部分において、
・対向する端部のうち一方が備える不織布層と、対向する端部のうちもう一方が備える不織布層を最短距離で結ぶ線分上にわたり前記接着層が存在している時に、
および/または、
・当該線分と平行を成し前記対向する端部のうち一方が備える不織布層と、前記対向する端部のうちもう一方が備える不織布層とを結ぶ別の線分(以降、別の線分と略すことがある)上にわたり前記接着層が存在している時に、
濾材における対向する端部同士の接着が強固に成されていることを見出した。
【0013】
当該効果が発揮される理由は、完全に明らかにできたものではないが、次の効果が発揮されているためだと考えられる。
【0014】
対向する端部同士が接着層によって接着している部分において、不織布層同士を最短距離で結ぶ線分上および/または別の線分上にわたり接着層が存在していることは、対向する端部同士における一方の布帛層の不織布層側主面からもう一方の布帛層の不織布層側主面にわたり、前記接着層が存在していることを意味している。そのため、当該部分では布帛層の厚み方向全体にわたり接着層が存在していることによって、布帛層同士の接着が確実かつ強固になされている。
【0015】
加えて、当該部分では、接着層によって布帛層同士の接着がなされているのに留まらず、布帛層と不織布層、および、不織布層同士の接着もなされている。
【0016】
そのため、本発明にかかる筒状プリーツ濾材は、接着層によって対向する端部同士の接着が強固に成されている。
【0017】
また、本発明にかかる筒状プリーツ濾材を備えるフィルタの製造方法は、布帛層同士の間に接着層を構成可能な接着成分の層を設けて、端部同士を重ね合わせる工程で、接着層を構成可能な接着成分の層の厚みが、当該布帛層の厚み二層分以上であることを特徴としている。
【0018】
本工程を有することによって、対向する端部同士が接着層によって接着している部分において、対向する端部のうち一方が備える不織布層と、対向する端部のうちもう一方が備える不織布層とを最短距離で結ぶ線分上および/または別の線分上にわたり接着層を存在させることができる。その結果、本発明にかかる構成を有した、筒状プリーツ濾材を備えるフィルタを製造できる。
【0019】
更に、接着成分の層が両面テープである場合、つまり、布帛層の厚み二層分以上の厚みを有する両面テープを用いて、端部同士を重ね合わせ筒状プリーツ濾材を備えるフィルタを製造した場合、製造された筒状プリーツ濾材における対向する端部同士の接着が強固に成されていることに加え、当該端部同士が接着している部分の伸度が向上することを見出した。そのため、筒状プリーツ濾材へ外力が作用した場合であっても、当該部分が伸張し易く外力に追従できるため、当該端部同士が外れ難い筒状プリーツ濾材を備えるフィルタを製造できる。
【0020】
以上から、本発明によって、濾材における対向する端部同士の接着が更に好適になされている、筒状プリーツ濾材を備えるフィルタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】(a)対向する端部間がジグザグ形状に折り加工されている濾材を布帛層側から見た模式正面図であり、(b)対向する端部間がジグザグ形状に折り加工されている濾材を側面から見た模式側面図である。
【
図3】筒状プリーツ濾材における、対向する端部同士が接着層によって接着している部分を拡大し表した模式拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明では、例えば以下の構成など、各種構成を適宜選択できる。なお、本発明で説明する各種測定は特に記載のない限り、大気圧下のもと測定を行う。また、25℃温度条件下で測定を行う。そして、本発明で説明する各種測定結果は特に記載のない限り、求める値よりも一桁小さな値まで測定で求め、前記値を四捨五入することで求める値を算出する。具体例として、小数第一位までが求める値である場合、測定によって小数第二位まで値を求め、得られた小数第二位の値を四捨五入することで小数第一位までの値を算出し、この値を求める値とする。そして、本発明で例示する各上限値および各下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0023】
本発明にかかる濾材は、不織布層と布帛層を備えている。具体例として、不織布層と布帛層が積層した積層体を備えた濾材、あるいは、当該積層体のみで構成された濾材を採用できる。
【0024】
ここでいう不織布層とは繊維同士が絡合してなる繊維の層を指し、具体例として、乾式不織布由来の繊維層や湿式不織布由来の繊維層であることができる。濾材において不織布層は、主としてフィルタを通過する濾過対象物を捕集する役割を担う層であり、より初期圧力損失が低く捕集性に優れると共に、濾過性能を長期間維持し易いフィルタを提供することに寄与する。
【0025】
また、布帛層は複数の空隙を有する布帛由来の層であって、例えば、繊維同士が織られてなる繊維の層(織物由来の繊維層など)、あるいは、繊維同士が編まれてなる繊維の層(編物(ニット)由来の繊維層など)であることができる。なお、布帛層は上述した不織布層よりも剛性に優れた、別の不織布由来の繊維層であってもよい。濾材において布帛層は、主として上述した不織布層を補強する役割を担う層であるが、不織布層を効率よく補強できるよう布帛層は編物(ニット)由来の繊維層であるのが好ましい。
【0026】
そして、布帛層は一方の主面からもう一方の主面にわたり空隙を有しており、空隙中に接着層を保持するものである。
【0027】
不織布層や布帛層の構成繊維として、例えば、ガラス繊維、シリカ繊維やアルミナ繊維などの金属酸化物繊維といった無機系繊維や、ポリプロピレン繊維などの有機系繊維を採用できる。なお、有機系繊維は、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をシアノ基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂(例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、ニトリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)など、公知の樹脂を用いて構成できる。
【0028】
なお、構成している樹脂は、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、また樹脂がブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、また樹脂の立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも、特に限定されるものではない。更には、有機繊維は当該樹脂が複数種類混合してなる繊維であってもよい。
【0029】
不織布層の構成繊維は、より初期圧力損失が低く捕集性に優れると共に、濾過性能を長期間維持し易いフィルタを提供できるよう、構成繊維はガラス繊維を含むのが好ましく、構成繊維はガラス繊維のみであるのがより好ましい。
【0030】
一方、布帛層の構成繊維は、不織布層や後述する接着層との接着性に優れるよう、構成繊維に有機系繊維を含むのが好ましく、構成繊維が有機系繊維のみ(例えば、ポリプロピレン繊維のみ)であるのがより好ましい。
【0031】
不織布層の構成繊維は、例えば、溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法など)、複合繊維から一種類以上の樹脂成分を除去することで繊維径が細い繊維を抽出する方法、繊維を叩解して分割された繊維を得る方法など公知の方法により得ることができる。
【0032】
不織布層の構成繊維は、一種類の無機成分や有機系繊維を構成できる樹脂から構成されてなるものでも、後述する複合繊維のように複数種類の無機成分や有機系繊維を構成できる樹脂を備えているものでも構わない。複数種類の無機成分や有機系繊維を構成できる樹脂を備えている繊維として、一般的に複合繊維と称される、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型、バイメタル型などの態様であることができる。
【0033】
また、不織布層の構成繊維は、その断面形状が略円形の繊維や楕円形の繊維以外にも異形断面繊維を含んでいてもよい。なお、異形断面繊維として、中空形状、三角形形状などの多角形形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、あるいはこれらの形状が複数結合した形状などの繊維断面を有する繊維であってもよい。
【0034】
不織布層や布帛層が構成繊維として熱融着性の複合繊維を含んでいる場合には、構成繊維同士を熱融着することによって、濾材に強度と形態安定性を付与でき好ましい。このような熱融着性の複合繊維として一部融着型の複合繊維を採用できる。
【0035】
不織布層を構成可能な不織布は、例えば、上述の繊維をカード装置やエアレイ装置などに供することで繊維を絡み合わせる乾式法、繊維を分散媒に分散させシート状に抄き繊維を絡み合わせる湿式法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法、紡糸原液と気体流を平行に吐出して紡糸する方法(例えば、特開2009-287138号公報に開示の方法)など)を用いて繊維の紡糸を行うと共に紡糸された繊維を絡み合わせて捕集する方法、などによって調製できる。
【0036】
また、連続長を有する繊維と、特定の繊維長を有する繊維とが混合してなる不織布由来の不織布層であると、より初期圧力損失が低く捕集性に優れると共に、濾過性能を長期間維持し易いフィルタを提供でき好ましい。
【0037】
また、不織布層を構成可能な不織布の構成繊維を、更に一体化させてもよい。構成繊維同士を、一体化させる方法として、後述する接着成分によって構成繊維同士を接着することで一体化させる以外にも、例えば、ニードルや水流によって絡合する方法、加熱処理へ供するなどして構成繊維に含まれる全融着型の繊維や一部融着型の複合繊維によって、構成繊維同士を融着することで一体化させる方法などを挙げることができる。
【0038】
加熱処理の方法は適宜選択できるが、例えば、ロールにより加熱または加熱加圧する方法、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機などの加熱機へ供し加熱する方法、無圧下で赤外線を照射して含まれている接着成分を加熱する方法などを用いることができる。
【0039】
不織布層を構成する繊維の平均繊維径や繊維長は特に限定するものではないが、より初期圧力損失が低く捕集性に優れると共に、濾過性能を長期間維持し易いフィルタを提供できるよう、適宜調整できる。平均繊維径は、0.1~50μmであることができ、0.2~30μmであることができ、0.3~10μmであることができる。構成繊維は、直接紡糸繊維(メルトブロー繊維や静電紡糸繊維など)のように、特定の長さを有さない連続長を有する繊維であることができる。あるいは、構成繊維は特定の繊維長を有するようカットされた繊維であってもよく、その繊維長は、10~120mmであることができ、20~100mmであることができ、30~80mmであることができる。なお、「繊維長」は、JIS L1015(2010)、8.4.1c)直接法(C法)に則って測定した値をいう。
【0040】
不織布層の、例えば、厚み、目付などの諸構成は、特に限定するものではないが、より初期圧力損失が低く捕集性に優れると共に、濾過性能を長期間維持し易いフィルタを提供できるよう、適宜調整できる。厚みは、0.1~50mmであることができ、0.2~40mmであることができ、0.3~30mmであることができる。目付は、5~500g/m2であることができ、10~400g/m2であることができ、30~300g/m2であることができる。なお、本発明において厚みとは、主面と垂直方向へ0.5g/cm2圧縮荷重をかけた時の当該垂直方向の両主面間の長さをいい、目付とは測定対象物の最も広い面積を有する面(主面)における1m2あたりの質量をいう。
【0041】
布帛層を構成する繊維の線径や繊維長、および、布帛層の厚みや目付は特に限定するものではないが、不織布層を効率良く補強できるよう、適宜調整できる。布帛層の線径は、0.02~7mmであることができ、0.03~5mmであることができ、0.05~1mmであることができる。なお、当該線径を有する織物や編物(ニット)を用いることで、当該線径を有する布帛層を備えた濾材を調製できる。布帛層が別の不織布由来の繊維層である場合、当該布帛層の平均繊維径は、0.2~70μmであることができ、0.3~50μmであることができ、0.5~10μmであることができる。
【0042】
布帛層を構成する糸は、特定の長さを有さない連続長を有する繊維であってもよい。当該糸を備える織物や編物(ニット)を用いることで、当該構成繊維を備える布帛層を備えた濾材を調製できる。
【0043】
布帛層の厚みは、0.1~50mmであることができ、0.2~40mmであることができ、0.3~30mmであることができる。布帛層の目付は、5~500g/m2であることができ、10~400g/m2であることができ、30~300g/m2であることができる。
【0044】
布帛層を成す織物や編物(ニット)の目開きは、0.3~50mmであることができ、0.5~40mmであることができ、0.6~30mmであることができる。ここでいう「目開き」は、構成繊維同士で形成される網目状の開口の一辺の長さである。なお、開口の形状が矩形でない場合には、当該開口の面積を有する正方形を想定し、当該正方形の一辺の長さを当該開口の目開きとする。
【0045】
不織布層と布帛層の積層態様は適宜調整できる。間にバインダの層やホットメルトウェブの層を設けることによって、不織布層と布帛層が接着一体化している濾材であってもよい。あるいは、不織布層および/または布帛層に含まれる熱可塑性樹脂繊維を溶融あるいは軟化させ接着することによって、不織布層と布帛層が一体化している濾材であってもよい。特に、不織布層と布帛層が強固に接着されるよう、布帛層に含まれる熱可塑性樹脂繊維を溶融あるいは軟化させ接着することによって、不織布層と布帛層が一体化している濾材であるのが好ましい。
【0046】
上述のようにして調製した濾材はジグザグ形状に折り加工されるが、不織布層側に別途用意した布帛(不織布、織物や編物など)あるいは多孔フィルムなどを設けることで調製した濾材を、ジグザグ形状に折り加工しても良い。このとき、不織布層と、別途用意した布帛あるいは多孔フィルムとの積層態様は、不織布層と布帛層の積層態様と同様にして適宜調整できる。
【0047】
濾材の厚みや目付といった諸構成は、特に限定するものではないが、より初期圧力損失が低く捕集性に優れると共に、濾過性能を長期間維持し易いフィルタを提供できるよう、適宜調整できる。厚みは、0.2~100mmであることができ、0.3~50mmであることができ、0.6~30mmであることができる。目付は、10~1000g/m2であることができ、50~500g/m2であることができ、80~300g/m2であることができる。
【0048】
本発明にかかる、対向する端部間がジグザグ形状に折り加工されている濾材について、当該濾材を布帛層側から見た模式正面図である
図1(a)、および、当該濾材を側面から見た模式側面図である
図1(b)を用いて説明する。
【0049】
図1に図示している当該濾材は、一例として、長方形を有する不織布層(1)と布帛層(2)の積層体であり、その対向する辺(11)を有する対向する端部(12)同士の間が、ジグザグ形状に折り加工されている。つまり、対向する端部(12)間で山折りと谷折りが交互に行われ、ジグザグ形状に折り加工されてプリーツ濾材(100)が形成されている。
【0050】
ここで、
図1(b)に図示されているように、プリーツ濾材(100)を平坦な主面を有する板(3)の上に静置した際の、当該板の主面と垂直をなす方向(紙面上の上下方向)における、プリーツ濾材(100)が有する紙面上の上方向側に存在する折り加工が成されている部分をプリーツ山(A)とし、そして、プリーツ濾材(100)が有する紙面上の下方向側に存在する折り加工が成されている部分をプリーツ谷(B)とする。 なお、プリーツ山(A)における紙面上の上方向側端部、および/または、プリーツ谷(B)における紙面上の下方向側端部は、曲面構造を有していても良い。
【0051】
そして、当該板(3)の主面と垂直をなす方向(紙面上の上下方向)における、当該板(3)の主面とプリーツ山(A)を結ぶ最短距離の長さを、プリーツ山高さ(C)とする。プリーツ濾材(100)が有するプリーツ山高さ(C)は、より初期圧力損失が低く捕集性に優れると共に、濾過性能を長期間維持し易いフィルタを提供できるよう、適宜調整するが、3~100mmであることができ、4~50mmであることができ、5~30mmであることができる。
【0052】
また、プリーツ濾材(100)が有する、隣接するプリーツ山(A)同士の最短距離の長さ(D1)、または、隣接するプリーツ谷(B)同士の最短距離の長さ(D2)は、より初期圧力損失が低く捕集性に優れると共に、濾過性能を長期間維持し易いフィルタを提供できるよう、適宜調整するが、1~100mmであることができ、2~50mmであることができ、3~25mmであることができる。
【0053】
本発明にかかる筒状プリーツ濾材(200)について、筒状プリーツ濾材の模式斜視図である
図2、および、筒状プリーツ濾材における、対向する端部同士が接着層によって接着している部分を拡大し表した模式拡大図である
図3を用いて説明する。
【0054】
本発明にかかる筒状プリーツ濾材(200)では、布帛層同士(2a、2b)が対面した状態で、濾材における端部(12)同士が接着層(21)によって接着している。それによって、対向する端部(12)同士が接着層(21)によって接着している部分(20)が形成され、ジグザグ形状に折り加工されている濾材(100)が筒状の態様を有するものとなっている。
【0055】
ここでいう布帛層同士(2a、2b)が対面した状態で、前記対向する端部(12)同士が接着層(21)によって接着しているとは、間に接着層(21)のみを介して布帛層同士(2a、2b)が接着していることを指す。
【0056】
本発明で使用する接着層(21)は、濾材における端部(12)同士を接着する役割を担っている。接着層(21)は布帛層(2a、2b)が有する空隙中にも存在していることで、接着層(21)によって布帛層同士(2a、2b)の接着がなされているのに留まらず、布帛層と不織布層(2aと1aならびに2bと1b)、および、不織布層同士(1aと1b)の接着もなされている。なお、接着層(21)は不織布層(1a、1b)に接した態様を成し存在していることに加え、不織布層(1a、1b)の空隙中へ侵入していても良い。
【0057】
接着層(21)は当該役割を担うことができるのであれば、その組成は適宜調整できる。例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン樹脂などの接着成分を備える層であることができる。
【0058】
本発明にかかる筒状プリーツ濾材(200)は、対向する端部(12)同士が接着層(21)によって接着している部分(20)において、当該対向する端部(12)のうち一方が備える不織布層(1a)と、当該対向する端部(12)のうちもう一方が備える不織布層(1b)とを最短距離で結ぶ線分(E)上にわたり接着層(21)が存在していることを特徴としている。
【0059】
筒状プリーツ濾材(200)が当該構成を満足するものであるか否かは、以下の方法で確認できる。
(1)接着層(21)と布帛層(2)および/または不織布層(1)を染色可能な、染色液(例えば、カヤステインQ(日本化薬(株)製)など)を用意する。
(2)染色液を用いて、筒状プリーツ濾材(200)における濾材の端部(12)同士が接着している部分(20)に存在する、接着層(21)と布帛層(2)および/または不織布層(1)を染色する。
(3)染色後の筒状プリーツ濾材(200)を構成する、濾材(100)の端部(12)同士が接着している部分(20)を濾材(100)の厚さ方向に切断し、切断後の当該部分(20)の両主面間をガラス板で挟み、保持し固定(ガラス板による厚さ方向へ作用させる圧力:20g/cm2)する。
(4)次いで、その状態で切断面の顕微鏡写真を撮影する。なお、顕微鏡写真における縦方向の範囲内に、濾材(100)の厚さ方向の全体が収まるように撮影する。つまり、顕微鏡写真中にガラス板に挟まれている、不織布層-布帛層二層と接着層を含む層-不織布層の積層態様全体が写るように撮影する。
(5)撮影により得られた顕微鏡写真上に、対向する端部(12)のうち一方が備える不織布層(1a)と、対向する端部(12)のうちもう一方が備える不織布層(1b)とを最短距離で結ぶ線分(E)を引く。次いで、撮影により得られた顕微鏡写真上に、当該線分(E)と平行を成し前記対向する端部(12)のうち一方が備える不織布層(1a)と、前記対向する端部(12)のうちもう一方が備える不織布層(1b)とを結ぶ別の線分(線分(E)と異なる線分(別の線分)、図示せず)を、ランダムに100本引く。
なお、引いた線分は、当該布帛の構成成分(構成繊維など)以外の布帛が有する1以上の空隙中を通過するものである。また、布帛層同士(2a、2b)が離間しているなど、布帛層同士(2a、2b)の間に別の空隙が存在している場合には、引いた線分は、1以上の当該別の空隙中を通過するものである。
(6)各線分(線分(E)以外図示せず)を作図した顕微鏡写真において、まず、線分(E)と前記空隙とが重なる箇所、あるいは、線分(E)と前記空隙および前記別の空隙とが重なる箇所、すべてに接着層(21)を構成する接着成分が存在しているか確認する。次いで、残りの別の線分についても、同じく確認する。
(7)上述した(6)における確認の結果、各線分(線分(E)以外図示せず)のうち少なくとも一本の線分における前記空隙あるいは前記空隙および前記別の空隙とが重なる箇所のすべてに、接着層(21)を構成する接着成分が存在していた場合、対向する端部(12)同士が接着層(21)によって接着している部分(20)において、前記対向する端部のうち一方が備える不織布層(1a)と、前記対向する端部のうちもう一方が備える不織布層(1b)とを最短距離で結ぶ線分(E)上および/または別の線分(図示せず)上にわたり接着層(21)が存在していると判断する。
(8)一方、上述した(6)における確認の結果、各線分(線分(E)以外図示せず)いずれにおいても、前記空隙あるいは前記空隙および前記別の空隙とが重なる箇所のすべてに、接着層(21)を構成する接着成分が存在していなかった場合、対向する端部(12)同士が接着層(21)によって接着している部分(20)において、前記対向する端部のうち一方が備える不織布層(1a)と、前記対向する端部のうちもう一方が備える不織布層(1b)とを最短距離で結ぶ線分(E)上および別の線分(図示せず)上にわたり接着層(21)が存在していないと判断する。
【0060】
なお、上述した本発明の構成を備える筒状プリーツ濾材(200)では、顕微鏡写真に引かれた線分(E)上および/または別の線分(図示せず)上において、接着層(21)の厚みは布帛層(2)の厚み二層分以上の厚みを有しているものとなる。そのため、例えば、線分(E)の長さは、線分(E)における一方の端部から布帛層(2a)の主面までの長さ(Fa、一方の布帛層の厚み)に、線分(E)におけるもう一方の端部から布帛層(2b)の主面までの長さ(Fb、もう一方の布帛層の厚み)を足した長さ以上である。
【0061】
当該構成を備えることによって、濾材における対向する端部(12)同士の接着が好適になされている、筒状プリーツ濾材(200)を備えるフィルタを提供できる。
【0062】
当該効果が発揮される理由は、完全に明らかにできたものではないが、次の効果が発揮されているためだと考えられる。
【0063】
対向する端部(12)同士が接着層(21)によって接着している部分(20)において、不織布層同士(1a、1b)を最短距離で結ぶ線分(E)上および/または別の線分(図示せず)上にわたり接着層(21)が存在している場合には、対向する端部(12)同士における一方の布帛層(2a)の不織布層(1a)側主面からもう一方の布帛層(2b)の不織布層(1b)側主面にわたり、前記接着層(21)が存在している。そのため、当該部分(20)では布帛層(2a、2b)の厚み方向全体にわたり接着層(21)が存在していることによって、布帛層同士(2a、2b)の接着が確実かつ強固になされている。
【0064】
加えて、当該部分(20)では、接着層(21)によって布帛層同士(2a、2b)の接着がなされているのに留まらず、布帛層と不織布層(2aと1aならびに2bと1b)、および、不織布層同士(1aと1b)の接着もなされている。
【0065】
そのため、本発明にかかる筒状プリーツ濾材(200)は、接着層(21)によって対向する端部(12)同士の接着が強固に成されている。
【0066】
その結果、本発明にかかる筒状プリーツ濾材(200)では、筒状プリーツ濾材(200)に外力が作用した場合であっても端部(12)同士が外れ難くなっていると考えられる。
【0067】
特に、線分(E)および別の線分を作図した顕微鏡写真に、線分(E)および別の線分を延長して形成される直線(図示せず)を作図した際、当該直線と重なる不織布層(1aまたは1b、より好ましくは1aおよび1b)が有する空隙中にも接着層(21)を構成する接着成分が存在しているのが好ましい。このような態様の筒状プリーツ濾材(200)では、接着層(21)を構成する接着成分が不織布層(1aおよび/または1b)の内部まで侵入している。そのため、布帛層と不織布層(2aと1aおよび/または2bと1b)、および、不織布層同士(1aと1b)がより強固接着されている結果、接着層(21)によって対向する端部(12)同士の接着が強固に成されている筒状プリーツ濾材(200)を提供でき、好ましい。
【0068】
なお、本発明にかかる筒状プリーツ濾材(200)は、対向する端部(12)同士が接着層によって接着している部分(20)において、布帛層同士(2a、2b)が対面している部分の全てで、接着層(21)が布帛層同士(2a、2b)を接着している場合には、最も接着層(21)によって対向する端部(12)同士の接着が強固に成されている筒状プリーツ濾材(200)を提供でき、好ましい。
【0069】
接着層(21)の厚みは本発明の構成を満足する限り適宜調整できるが、0.5~5mmであることができ、0.6~4mmであることができ、0.7~3mmであることができる。
【0070】
筒状プリーツ濾材(200)の形状はフィルタに求められる用途や機能などによって、適宜調整できる。
【0071】
筒状プリーツ濾材(200)におけるプリーツ山(A)の頂点を連続してつなぎ形成できる線と平行を成す方向の長さ(つまり、筒状プリーツ濾材(200)の高さ)は、20~500mmであることができ、30~400mmであることができ、40~300mmであることができる。
【0072】
また、筒状プリーツ濾材(200)における円筒形状を、プリーツ山(A)の頂点を連続してつなぎ形成できる線と平行を成す方向から見た際の、筒状プリーツ濾材(200)の内周に接する最大の円の直径は、8~500mmであることができ、15~400mmであることができ、30~500mmであることができる。また、筒状プリーツ濾材(200)の外周に接する円の直径は、10~700mmであることができ、32~600mmであることができ、48~500mmであることができる。なお、当該外周に接する円の直径から、当該内周に接する最大の円の直径を引き2で割った長さは、筒状プリーツ濾材(200)におけるプリーツ山高さとなる。当該プリーツ山高さは、1~100mmであることができ、3~50mmであることができ、5~30mmであることができる。
【0073】
次いで、本発明にかかる筒状プリーツ濾材を備えるフィルタの製造方法について、一例を挙げ説明する。なお、既に説明した構成については記載を省略する。
【0074】
本発明にかかる筒状プリーツ濾材を備えるフィルタの製造方法は適宜選択できるが、例えば、
(工程1)不織布層と布帛層を備える濾材を用意する工程、
(工程2)前記濾材における対向する端部間をジグザグ形状に折り加工する工程、
(工程3)前記ジグザグ形状に折り加工された濾材における対向する両端部について、前記布帛層同士が対面した状態で、前記布帛層同士の間に接着層を構成可能な接着成分の層を設けて、前記端部同士を重ね合わせる工程、
(工程4)前記端部同士が重ね合わされた部分へ、圧力あるいは熱と圧力を作用させる工程、
(工程5)前記熱あるいは熱と圧力を作用させた部分を冷却する工程、
を備える、前記ジグザグ形状に折り加工された濾材の、前記対向する端部同士が接着していることで中空円筒状に形成された筒状プリーツ濾材を備える、フィルタの製造方法であって、
前記(工程3)において、前記接着成分の層の厚みが、前記布帛層の厚み二層分以上である、フィルタの製造方法、
であることができる。
【0075】
(工程1)において、用意した濾材における、不織布層と布帛層の積層態様は適宜調整できる。両層がただ積層してなる濾材であっても、両層がバインダによって接着一体化してなる濾材であっても、不織布層および/または布帛層の構成繊維が溶着することで両層が接着一体化してなる濾材であってもよい。
【0076】
また、当該濾材は、長方形など意図した形状となるよう打ち抜くあるいは切り抜く、厚みを調整する、エンボス加工を施すなど、二次加工へ供しても良い。
【0077】
(工程3)において、接着層(21)の形成方法は適宜調整できるが、濾材の端部(12)における布帛層(2)の露出する主面上に、接着層(21)を構成可能な接着成分の層を設けることで形成できる。接着成分の層を設ける具体例として、例えば、接着成分を含んだ溶液あるいは分散液を布帛層(2)の露出する主面上に塗工する方法、濾材の端部(12)における布帛層(2)の露出する主面上に溶融した接着成分を付与する方法、濾材の端部(12)における布帛層(2)の露出する主面上に接着成分で構成されたホットメルトウェブを載せる方法、濾材の端部(12)における布帛層(2)の主面上に接着成分を備える両面テープを載せる方法などを挙げることができる。
【0078】
なお、濾材の端部(12)における布帛層(2)の露出する主面上に設ける接着成分の層として、布帛層(2)の厚み二層分以上の厚みを有する接着成分の層が形成されるよう、溶融した接着成分や接着成分の溶液あるいは分散液を塗工する方法、好ましくは、布帛層(2)の厚み二層分以上の厚みを有する両面テープを設ける方法を採用できる。
【0079】
特に、布帛層(2)の厚み二層分以上の厚みを有する両面テープを設ける方法を採用することによって、筒状プリーツ濾材(200)における対向する端部(12)同士の接着が強固に成されていることに加え、当該端部(12)同士が接着している部分(20)の伸度を向上できる。
【0080】
そのため、筒状プリーツ濾材(200)に外力が作用した場合であっても、当該部分(20)が伸張し易く外力に追従できるため、当該端部(12)同士が外れ難い筒状プリーツ濾材(200)を備えるフィルタを製造できる。
【0081】
また、接着層(21)を形成するため両面テープを用いることで、生産性良く筒状プリーツ濾材(200)を備えるフィルタを製造できる。このような両面テープとして、紙やフィルムあるいは布帛などの基材の両主面に接着成分の層を備えた両面テープや、接着成分のみで構成された両面テープなどを採用できる。特に、外力が作用した場合であっても、更に当該部分(20)が伸張し易く外力に追従でき、当該端部(12)同士が外れ難い筒状プリーツ濾材(200)を備えるフィルタを提供できることから、接着成分のみで構成された両面テープを採用するのが好ましい。
【0082】
(工程4)において、端部同士が重ね合わされた部分へ、圧力あるいは熱と圧力を作用させる。当該方法は適宜調整でき、例えば、クリップを用いて圧力を作用させる方法、プレス機を用いて圧力を作用させる方法、ヒートシール機を作用させることで熱と圧力を作用させる方法、超音波溶着機によって熱と圧力を作用させる方法などを採用できる。なお、本工程において、端部同士が重ね合わされた部分へ熱を作用させることで、接着成分を含んだ溶液あるいは分散液中に含まれる溶媒あるいは分散媒を除去できる、および/または、接着成分を溶融できる。
【0083】
そして、本工程の後に、圧力あるいは熱と圧力を作用させた部分を冷却する工程を設けても良い。冷却する方法は適宜調整でき、室温下で放冷させる方法、冷蔵庫へ供し冷却する方法、冷風を当てる方法、冷却した板やローラーなどの部材を当てる方法などを採用できる。
【0084】
上述のようにして調製した筒状プリーツ濾材(200)は、そのままフィルタとして用いてもよいが、筒状プリーツ濾材(200)の両端部にエンドプレート(図示せず)を設ける、筒状プリーツ濾材(200)の円筒内部へ多孔を有する筒状支持体を挿入する、および/または、筒状プリーツ濾材(200)の外周面を覆う多孔を有する筒状支持体を設けるなどしてフィルタを調製しても良い。筒状プリーツ濾材(200)とエンドプレートや支持体とを接着する方法は、前述した接着成分を備えた接着成分を用いる、両面テープを用いて接着するなど、一般的な接着方法から適宜選択できる。
【実施例0085】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0086】
(濾材の用意)
ガラス繊維を湿式抄造して調製したガラス繊維不織布(平均繊維径:1.6μm、目付:70g/m2、厚み:0.38mm)を用意した。
また、ポリプロピレン繊維のネット(線径:0.2mm、開口の形状:開口における短辺の目開き0.6mm、開口における長辺の目開き0.8mmの矩形、目付:50g/m2、厚み:0.3mm)を用意した。
そして、ガラス繊維不織布の一方の主面上に、ポリプロピレン繊維のネットをただ積層することで、濾材(目付:120g/m2、厚み:0.68mm、ネット由来の布帛層の厚み:0.3mm)を調製した。
【0087】
(ジグザグ形状に折り加工されている濾材の調製方法)
濾材から長方形(長辺:240mm、短辺:120mm)の試料を採取した。
そして、採取した試料における対向する短辺を有する端部同士の間を、ジグザグ形状に折り加工した。なお、当該ジグザグ形状に折り加工されている濾材は、6mmのプリーツ山高さを有するものであった。
【0088】
(比較例1)
アクリル樹脂のみで形成された両面テープ(厚み:0.4mm)を用意した。
ジグザグ形状に折り加工されている濾材が有する対向する端部のうち、一方の端部を構成する露出しているネット上全体に両面テープを設けた。
そして、間に両面テープを介して当該露出しているネットと、ジグザグ形状に折り加工されている濾材が有する対向する端部のうち、もう一方の端部を構成する露出しているネットとを重ね合わせた。その結果、
図3に図示したように、間に両面テープを介してネット由来の布帛層同士が対面した状態となるよう重ね合わせた。
当該重ね合わされている部分、つまり、ガラス繊維不織布由来の不織布層-ネット由来の布帛層-両面テープ-ネット由来の布帛層-ガラス繊維不織布由来の不織布層の積層態様を有する部分に対し圧力を作用させることで、当該端部同士を両面テープによって接着して、筒状プリーツ濾材(高さ:120mm、内周に接する最大の円の直径:15mm、外周に接する円の直径:27mm、プリーツ山高さ:6mm)を調製した。
このようにして調製された筒状プリーツ濾材では、対向する端部同士が接着層によって接着している部分において、対向する端部のうち一方が備える不織布層と、対向する端部のうちもう一方が備える不織布層とを最短距離で結ぶ線分上にわたり接着層が存在していないものであり、別の線分上にわたり接着層が存在していないものであった。また、当該部分において、布帛層二層分の厚みは0.6mmであったのに対し、両面テープ由来の接着層の厚みはそれよりも薄い(0.4mmよりも厚く0.6mmよりも薄い)ものであった。
【0089】
(実施例1)
アクリル樹脂のみで形成された両面テープ(厚み:0.8mm)を用意した。
このようにして用意した両面テープを用いたこと以外は、比較例1と同様にして、筒状プリーツ濾材を調製した。
このようにして調製された筒状プリーツ濾材では、対向する端部同士が接着層によって接着している部分において、対向する端部のうち一方が備える不織布層と、対向する端部のうちもう一方が備える不織布層とを最短距離で結ぶ線分上および別の線分上にわたり接着層が存在していた。また、当該部分において、布帛層二層分の厚みは0.6mmであったのに対し、両面テープ由来の接着層の厚みはそれよりも厚い(0.8mmよりも厚い)ものであった。
【0090】
(実施例2)
ジグザグ形状に折り加工されている濾材が有する対向する端部のうち、一方の端部を構成する露出しているネット上全体に、ポリウレタンエマルジョン接着剤を塗布した。
そして、当該露出しているネットと、ジグザグ形状に折り加工されている濾材が有する対向する端部のうち、もう一方の端部を構成する露出しているネットとを重ね合わせた。その結果、
図3に図示したように、間にポリウレタン樹脂を分散媒に分散させてなるポリウレタンエマルジョン接着剤を介してネット由来の布帛層同士が対面した状態となるよう重ね合わされた。
当該重ね合わされている部分、つまり、不織布層-布帛層二層とポリウレタンエマルジョン接着剤を含む層-不織布層の積層態様を有する部分に対し圧力を作用させた後に乾燥させることで、当該端部同士をポリウレタンエマルジョン接着剤によって接着して、筒状プリーツ濾材(高さ:120mm、内周に接する最大の円の直径:15mm、外周に接する円の直径:27mm、プリーツ山高さ:6mm)を調製した。
このようにして調製された筒状プリーツ濾材では、対向する端部同士が接着層によって接着している部分において、対向する端部のうち一方が備える不織布層と、対向する端部のうちもう一方が備える不織布層とを最短距離で結ぶ線分上および別の線分上にわたり接着層が存在していた。また、当該部分において、布帛層二層分の厚みは0.6mmであったのに対し、ポリウレタンエマルジョン接着剤由来の接着層の厚みはそれよりも厚い(1.0mmよりも厚い)ものであった。
【0091】
(実施例3)
アクリル樹脂のみで形成された両面テープ(厚み:1.2mm)を用意した。
このようにして用意した両面テープを用いたこと以外は、比較例1と同様にして、筒状プリーツ濾材を調製した。
このようにして調製された筒状プリーツ濾材では、対向する端部同士が接着層によって接着している部分において、対向する端部のうち一方が備える不織布層と、対向する端部のうちもう一方が備える不織布層とを最短距離で結ぶ線分上および別の線分上にわたり接着層が存在していた。また、当該部分において、布帛層二層分の厚みは0.6mmであったのに対し、両面テープ由来の接着層の厚みはそれよりも厚い(1.2mmよりも厚い)ものであった。
【0092】
なお、実施例1~3で調製した筒状プリーツ濾材では、布帛層同士が対面している部分の全てで、アクリル樹脂(実施例1、3)あるいはポリウレタン樹脂(実施例2)が不織布層同士の間に存在していると共に、当該両不織布層の内部まで侵入していた。それにより、当該アクリル樹脂あるいはポリウレタン樹脂からなる接着層が、布帛層同士を接着していることに加え、布帛層と不織布層ならびに不織布層同士も接着しているものであった
【0093】
上述のようにして調製した各筒状プリーツ濾材の諸物性を、以下の測定方法へ供して、測定結果を表1にまとめた。
【0094】
(捕集効率の測定方法)
筒状プリーツ濾材を一つのプリーツ山の頂点を連続してつなぎ形成できる線に沿って切り、ジグザグ形状に折り加工されている濾材を調製した。このとき、ジグザグ形状に折り加工されている濾材の中央部分には、端部同士が接着層によって接着している部分が来るように、当該線に沿って切るプリーツ山を選定した。
そして、山折りと谷折りを伸ばして、主面上側から見た際に長方形を有する平板状の濾材を調製した。なお、平板状の濾材における、短辺方向は当該線と平行を成す方向である。
次いで、円形の開口を有する試験ダクト(有効間口面積:0.01m2)に、当該開口全てを覆うよう平板状の濾材を設置した。このとき、布帛層側が試験ダクトと接すると共に、端部同士が接着層によって接着している部分が、平板状の濾材の主面に重なるよう折り曲げると共に、当該重なっている部分が当該ダクトの中心に来るようにした。
そして、計数法により捕集効率(%)を算出した。つまり、平板状の濾材を有効間口面積0.01m2の試験ダクトのホルダーにセットした後、粒子径0.3μmのNaCl(NaCl数:U)を平板状の濾材の上流側(平板状の濾材における不織布層側)に供給し、面風速5.3cm/sで空気を通過させた時の、下流側(平板状の濾材における布帛層側)における粒子径0.3μmのNaCl数(D)をパーティクルカウンタ(RION社製:形式KC-22B)で測定し、次式より算出した値をNaCl初期効率(単位:%)とした。
NaCl初期効率=[1-(D/U)]×100
なお、本算出値が高い筒状プリーツ濾材は、測定中に風力(外力)が作用しても、端部同士が接着層によって接着している部分に剥離が発生し難く、濾過対象となるNaClのリークが発生し難いものであったことを意味する。
【0095】
(対向する端部同士の接着強度の測定方法)
上述した(捕集効率の測定方法)で調製した平板状の濾材(長辺:228mm、短辺:120mmの長方形形状)から、試料(長辺:228mm(当該平板状の濾材における長辺と平行をなす方向)、短辺:50mm(当該平板状の濾材における短辺と平行をなす方向))を採取した。当該試料に対し、端部同士が接着層によって接着している部分がチャック間(チャック間距離:100mm)に来るようにして、平板状の濾材を定速伸長型引張試験機(オリエンテック社製、テンシロン)のチャックに各々固定した。そして、平板状の濾材における長辺方向と定速伸長型引張試験機による引張方向とが平行となるようにして、当該端部同士が外れるまで速度100mm/分で引張った。そして、当該端部同士が外れるまでに測定された最大応力(単位:N/50mm)を求め、接着強度(単位:N/50mm)とした。
なお、接着強度(単位:N/50mm)の値が高い筒状プリーツ濾材は、外力が作用した場合であっても、端部同士が接着層によって接着している部分に剥離が発生し難いことを意味する。
【0096】
(対向する端部同士が接着している部分の伸度の測定方法)
上述した(対向する端部同士の接着強度の測定方法)において、当該端部同士が外れた時のチャック間の距離(単位:mm)から測定当初のチャック間の長さ(100mm)を引くことで、平板状の濾材が伸張した長さ(単位:mm)を算出する。そして、算出された平板状の濾材が伸張した長さを、測定当初のチャック間の長さ(100mm)で割り100をかけることで、伸度(単位:%)を求めた。
【0097】
【0098】
比較例1と実施例1~3を比較した結果から、対向する端部同士が接着層によって接着している部分において、対向する端部のうち一方が備える不織布層と、対向する端部のうちもう一方が備える不織布層とを最短距離で結ぶ線分上および/または別の線分上にわたり接着層が存在していることによって、端部同士の接着が強固に成されたフィルタを提供できることが判明した。
【0099】
特に、実施例1および実施例3と実施例2を比較した結果から、布帛層の厚み二層分以上の厚みを有する両面テープを用いて、端部同士を重ね合わせ筒状プリーツ濾材を備えるフィルタを製造することによって、端部同士が接着している部分の伸度が向上したフィルタを提供できることが判明した。その結果、本発明にかかる筒状プリーツ濾材を用いることで、当該端部同士が外れ難い筒状プリーツ濾材を備えるフィルタを提供できる。
【0100】
以上から、本発明によって、濾材における対向する端部同士の接着が好適になされている、筒状プリーツ濾材を備えるフィルタを提供できることが判明した。
本発明のフィルタは、例えば、食品や医療品の生産工場用途、電池など精密機器の製造工場用途、農作物の室内栽培施設用途、一般家庭用途あるいは病院やオフィスビルなどの産業施設用途、空気清浄機用途やOA機器用途などの電化製品用途、自動車や航空機などの各種車両用途において、気体フィルタや液体フィルタとして好適に使用できる。
なお、本発明で用いた、対向する端部間がジグザグ形状に折り加工されている濾材の別の活用方法として、当該濾材を例えば矩形のフィルタフレームに納め、濾材とフィルタフレームとの接触点を両面テープなどからなる接着層によって接着一体化することで、平板状のフィルタユニットを調製できるものであるが、一方の主面に布帛層を備えたフィルタフレーム(厚み方向に通気性を有するフィルタフレーム、あるいは、厚み方向に通気性を有していないフィルタフレーム)を採用した場合には、両面テープなどからなる接着層によって、当該濾材の端部における布帛層側が、フィルタフレームの主面に存在する布帛層側に接着した平板状のフィルタユニットを調製できる。
このとき、対向する端部間がジグザグ形状に折り加工されている濾材における布帛層と、フィルタフレームにおける一方の主面に設けられている布帛層同士が対面した状態で、両布帛層同士が接着層によって接着している。そして、前記接着層によって接着している部分において、
・前記濾材が備える不織布層と、前記フィルタフレームが備える金属枠など前記布帛層における前記濾材と面する側と反対側に存在する構成部材とを最短距離で結ぶ線分上、
および/または、
・当該線分と平行を成し、前記濾材が備える不織布層と、前記フィルタフレームが備える金属枠など前記布帛層における前記濾材と面する側と反対側に存在する構成部材とを結ぶ別の線分上、
にわたり前記接着層が存在しているものとなる。
その結果、濾材とフィルタフレームとの接触点では、接着層により当該濾材の布帛層とフィルタフレームの布帛層の接着が強固に成された、平板状のフィルタユニットを容易に調製し得る。