(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003588
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】移動支援装置、移動支援方法及び移動支援用プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20241226BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
G08G1/09 H
G08G1/16 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024186490
(22)【出願日】2024-10-23
(62)【分割の表示】P 2023115676の分割
【原出願日】2014-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120189
【弁理士】
【氏名又は名称】奥 和幸
(72)【発明者】
【氏名】藤原 稔樹
(57)【要約】
【課題】ある程度前方の状況を前もって予測可能とすることで、余裕を持った移動に資することが可能な移動支援装置を提供する。
【解決手段】車両Cに搭載され、且つ他の車両Cとの間で無線通信による情報の授受が可能な端末装置SSにおいて、方向指示器情報及び位置情報を含む車両情報を他の車両からそれぞれ取得し、その取得された方向指示情報及び位置情報に基づいて、端末装置SSが搭載されている車両の進行方向前方の既定の前方領域に含まれる位置の状況を予測する。そして当該予測された状況に基づいて、端末装置SSが搭載されている車両Cの移動に関する移動支援を行う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体で利用され、且つ他の移動体との間で無線通信による情報の授受が可能な移動支援装置において、
前記他の移動体における方向指示部の使用状況を示す方向指示情報と、前記他の移動体の位置を示す位置情報と、を含む移動体情報を、前記他の移動体からそれぞれ取得する取得手段と、
各前記取得された方向指示情報及び位置情報に基づいて、前記移動支援装置が利用される前記移動体の進行方向前方の予め設定された前方領域に含まれる位置の状況を予測する予測手段と、
前記予測された状況に基づいて、前記移動支援装置が利用される前記移動体の移動に関する移動支援を行う支援手段と、
を備えることを特徴とする移動支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、移動支援装置、移動支援方法及び移動支援用プログラムの技術分野に属し、より詳細には、車両の移動を支援する移動支援装置及び移動支援方法、並びに当該移動支援装置用のプログラムの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信可能な距離にある二台以上の車両間において通信を行い、例えば安全運転のための注意喚起の精度を向上させること等が検討されている。なお以下の説明において、通信可能な距離にある二台以上の車両間の通信を、単に「車車間通信」と称する。このような車車間通信についての従来技術を開示する文献としては、例えば下記特許文献1が挙げられる。この特許文献1記載の従来技術では、運転者が車線変更をするに当たり、周辺に位置する車両の方向指示器情報や位置情報等を収集し、それらの情報と自分の車両の情報とに基づいて上記車線変更後の道路状況を予測し、当該車線変更により他の車両と接触の危険性が生じる場合に、運転者に対して必要な注意喚起をする構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている従来技術では、注意喚起を受ける運転者が上記車線変更のために方向指示器の操作を行った後から道路状況の予測及び接触の危険性の判定を行うので、車線変更のための操作が行われたタイミングでしか注意喚起がされないこととなり、更に当該タイミング自体も遅きに失するという問題点があった。
【0005】
また、自分の車両の周辺を走行している他の車両からの情報のみを用いるので、それより前方にある地点についての予測ができないという問題点もあった。
【0006】
そこで本願は、上記の各問題点に鑑みて為されたもので、その課題の一例は、ある程度前方の状況を前もって予測可能とすることで、余裕を持った移動に資することが可能な移動支援装置及び移動支援方法、並びに当該移動支援装置用のプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両等の移動体で利用され、且つ他の移動体との間で無線通信による情報の授受が可能な移動支援装置において、前記他の移動体における方向指示部の使用状況を示す方向指示情報と、前記他の移動体の位置を示す位置情報と、を含む移動体情報を、前記他の移動体からそれぞれ取得するインターフェース等の取得手段と、各前記取得された方向指示情報及び位置情報に基づいて、前記移動支援装置が利用される前記移動体の進行方向前方の予め設定された前方領域に含まれる位置の状況を予測する予測部等の予測手段と、前記予測された状況に基づいて、前記移動支援装置が利用される前記移動体の移動に関する移動支援を行う支援部等の支援手段と、を備える。
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項6に記載の発明は、車両等の移動体で利用され、且つ他の移動体との間で無線通信による情報の授受が可能な移動支援装置において実行される移動支援方法において、前記他の移動体における方向指示部の使用状況を示す方向指示情報と、前記他の移動体の位置を示す位置情報と、を含む移動体情報を、前記他の移動体からそれぞれ取得する取得工程と、各前記取得された方向指示情報及び位置情報に基づいて、前記移動支援装置が利用される前記移動体の進行方向前方の予め設定された前方領域に含まれる位置の状況を予測する予測工程と、前記予測された状況に基づいて、前記移動支援装置が利用される前記移動体の移動に関する移動支援を行う支援工程と、を含む。
【0009】
上記の課題を解決するために、請求項7に記載の発明は、車両等の移動体で利用され、且つ他の移動体との間で無線通信による情報の授受が可能な移動支援装置に含まれるコンピュータを、前記他の移動体における方向指示部の使用状況を示す方向指示情報と、前記他の移動体の位置を示す位置情報と、を含む移動体情報を、前記他の移動体からそれぞれ取得する取得手段、各前記取得された方向指示情報及び位置情報に基づいて、前記移動支援装置が利用される前記移動体の進行方向前方の予め設定された前方領域に含まれる位置の状況を予測する予測手段、及び、前記予測された状況に基づいて、前記移動支援装置が利用される前記移動体の移動に関する移動支援を行う支援手段、として機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る移動支援装置の概要構成を示すブロック図である。
【
図2】実施例に係る車車間通信システムの概要構成を示すブロック図である。
【
図3】実施例に係る端末装置の概要構成を示すブロック図である。
【
図4】実施例に係る走行支援処理を示すフローチャートである。
【
図5】実施例に係る走行支援処理を例示する概念図(I)であり、(a)は第一例を示す図であり、(b)は第二例を示す図である。
【
図6】実施例に係る走行支援処理を例示する概念図(II)であり、(a)は第三例を示す図であり、(b)は第四例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本願を実施するための形態について、
図1を用いて説明する。なお
図1は、実施形態に係る移動支援装置の概要構成を示すブロック図である。
【0012】
図1に示すように、実施形態に係る移動支援装置Sは、移動体で利用され、且つ他の移動体との間で無線通信による情報の授受が可能な移動支援装置であり、取得手段1と、予測手段2と、支援手段3と、を備えている。なおこの場合、「移動体」とは、自動車、二輪車、自転車等の移動手段としての車両の他、実施形態に係る移動支援装置Sを携帯して移動する人も含まれる。
【0013】
この構成において取得手段1は、他の移動体における方向指示部の使用状況を示す方向指示情報と、当該他の移動体の位置を示す位置情報と、を含む移動体情報を、当該他の移動体からそれぞれ取得する。
【0014】
そして予測手段2は、取得手段1により取得された方向指示情報及び位置情報に基づいて、移動支援装置Sが利用される移動体の進行方向前方の予め設定された前方領域に含まれる位置の状況を予測する。
【0015】
これにより支援手段3は、予測手段2により予測された状況に基づいて、移動支援装置Sが利用される移動体の移動に関する移動支援を行う。
【0016】
以上説明したように、実施形態に係る移動支援装置Sの動作によれば、他の移動体から取得された移動体情報に含まれる方向指示情報及び位置情報に基づいて、移動支援装置Sが利用される移動体の前方領域に含まれる位置の状況を予測し、その状況に基づいて移動支援を行う。よって、他の移動体から取得した移動体情報に含まれる方向指示情報及び位置情報を用いて予測された前方領域の状況に基づいて移動支援がされるので、ある程度前方の状況が前もって予測されることから、余裕を持った移動に資することができる。
【実施例0017】
次に、上述した実施形態に対応する具体的な実施例について、
図2乃至
図6を用いて説明する。なお以下に説明する実施例は、実施形態に係る移動体の一例に相当する車両にそれぞれ搭載された端末装置により当該車両の走行を支援する車車間通信システムに対して実施形態を適用した場合の実施例である。
【0018】
また、
図2は実施例に係る車車間通信システムの概要構成を示すブロック図であり、
図3は実施例に係る端末装置の概要構成を示すブロック図であり、
図4は実施例に係る走行支援処理を示すフローチャートであり、
図5及び
図6は当該走行支援処理をそれぞれ例示する概念図である。このとき
図3では、
図1に示した実施形態に係る移動支援装置Sにおける各構成部材に対応する実施例の構成部材それぞれについて、当該移動支援装置Sにおける各構成部材と同一の部材番号を用いている。
【0019】
図2に示すように、実施例に係る車車間通信システムCSは、それぞれが車両Cに搭載された端末装置SSであって、アンテナATを介した直接の無線通信による相互接続により種々のデータの授受が可能とされている端末装置SSにより構成されている。ここで車車間通信システムCSを構成する端末装置SSは、それ自体が案内用の地図データを記録しており、これを用いた車両Cの案内処理が可能とされている。
【0020】
次に、実施例に係る端末装置SSについて、
図3を用いてその構成及び概要動作を説明する。
【0021】
図3に示すように、実施例に係る端末装置SSは、アンテナATに接続されたインターフェース1と、CPU、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等からなる処理部10と、揮発性領域及び不揮発性領域を有し上記案内用の地図データ等が記録されている記録部11と、操作ボタン又はタッチパネル等からなる操作部12と、端末装置SSを備える車両Cの現在位置や進行方向、又は速度や走行距離を検出するための各種センサ等からなるセンサ部13と、端末装置SSによる案内処理として必要な案内画像や地図画像等を表示するための液晶ディスプレイ等からなるディスプレイ14と、により構成されている。このときインターフェース1が、実施形態に係る取得手段1の一例に相当する。
【0022】
また処理部10は、実施形態に係る予測手段2の一例、本願に係る「判定手段」の一例及び本願に係る「算出手段」の一例にそれぞれ相当する予測部2と、実施形態に係る支援手段3の一例に相当する支援部3と、により構成されている。このとき、予測部2及び支援部3はそれぞれ、処理部10を構成するハードウェアロジック回路により実現されるものであってもよいし、後述する走行支援処理用プログラムを処理部10が読み出して実行することによりソフトウェア的に実行されるものであってもよい。更に、インターフェース1並びに処理部10の予測部2及び支援部3により、実施形態に係る移動支援装置Sの一例を構成している(
図3破線参照)。
【0023】
以上の構成においてインターフェース1は、処理部10の制御の下、他の端末装置SSとの間のデータの授受を制御する。また記録部11は、実施例に係る走行支援処理を処理部10が実行するに当たって必要なデータ等を一時的に記憶すると共に、上記地図データ等を記録し、必要に応じてそれぞれ読み出させる。更にセンサ部13は、例えば自立的に或いはGPS(Global Positioning System)航法衛星からの航法電波を受信する等の手法により、端末装置SSの現在位置を検出し、当該現在位置を示す現在位置データを処理部10に出力する。またセンサ部13は、車両Cの速度、進行方向及び走行距離等を自立的に検出し、当該速度を示す速度データ等を処理部10に出力する。更に操作部12は、端末装置SSとしての動作(実施例に係る走行支援処理の動作又は案内処理の動作等)を指定するための操作等が実行されることにより、当該操作等に対応する操作信号を処理部10に出力する。これらにより処理部10は、必要な情報又は地図画像等をディスプレイ14に表示しつつ、上記案内処理及び実施例に係る走行支援処理を実行する。このとき、処理部10の予測部2及び支援部3が中心となって、当該走行支援処理を実行する。
【0024】
次に、実施例に係る走行支援処理について、より具体的に
図3乃至
図6を用いて説明する。なお実施例に係る走行支援処理は、例えば操作部12における開始操作が行われたことをトリガとして開始される。また以下の説明において、
図3乃至
図6に示す走行支援処理が実行される端末装置SSが搭載されている車両Cを「自車C0」と示す。更に、自車C0以外の後述する他の車両Cを、車両C1、車両C2、車両C3、…、車両Cn(nは自然数)と示す。また、自車C0乃至車両Cnについて共通の事項を説明する場合には、単に「車両C」と示す。
【0025】
即ち実施例に係る走行支援処理は
図4に示すように、例えば上記開始操作が行われると処理部10は先ず、インターフェース1及びアンテナATを介した他の車両Cnの端末装置SSとの間の直接の無線通信(車車間通信)により、当該走行支援処理に必要なデータを取得する(ステップS1)。このステップS1により他の端末装置SSから取得されるデータには、例えば送信元識別データ、宛先識別データ、現在位置データ、種別データ、形状データ、交差点データ、軌跡データ、距離データ、ウインカデータ及びハザードデータ等が含まれている。このとき送信元識別データは、当該他の端末装置SSが搭載されている車両Cを他の車両Cから識別するためのデータである。また宛先識別データは、送信先(宛先)である端末装置SSが搭載されている自車C0を他の車両Cnから識別するためのデータである。更に現在位置データは、他の端末装置SSが搭載されている車両Cnの現在位置を示すデータである。また種別データは、当該車両Cnが現在走行している道路の種別(例えば、一般道路を走行しているか、或いは高速道を走行しているか等の種別)を示すデータである。更に形状データは、当該車両Cnが現在走行している道路の形状を例えばいわゆるリンクデータ及びノードデータ等により示すデータである。また交差点データは、当該車両Cnが現在走行している道路において進行方向直近にある交差点の位置、その交差点までの距離及び方位、その交差点の形状、並びにその交差点における信号の有無等を示すデータである。また軌跡データは、当該車両Cnの走行履歴(走行軌跡)を示すデータである。更に距離データは、端末装置SSが搭載されている車両C間の距離(例えば、自車C0と他の車両Cnとが同じ道路を同じ方向に走行している場合には両者の車間距離)を示すデータである。なお上記種別データ、形状データ及び交差点データは、端末装置SSが搭載されている車両Cnが案内処理用の地図データを記録していることに起因して送信されてくる。最後にウインカデータ及びハザードデータはそれぞれ、他の車両Cnにおけるウインカスイッチ及びハザードスイッチがそれぞれオンとされているかオフとされているかを示すデータである。このときウインカデータには、車両Cnの左右どちらの方向にウインカを出しているかを示すデータも含まれている。
【0026】
ステップS1において各種データの受信が開始されると、処理部10の予測部2は次に、当該各種データの送信元たる他の車両Cnが、自車C0の進行方向前方の予め設定された範囲の領域(以下、当該領域を「前方領域」と称する)内に存在するか否かを判定する(ステップS2)。そしてステップS2の判定において、前方領域内に他の車両Cnが存在しない場合(ステップS2;NO)、予測部2は後述するステップS8に移行する。
【0027】
ここで上記ステップS2の判定は、例えば他の車両Cnから送信されてくる上記現在位置データと、センサ部13から出力されてくる自車C0の現在位置データと、を比較することにより実行される。またこのときの前方領域とは、具体的に例えば、自車C0の現在位置をその中心とし、自車C0の進行方向を中心軸(対称軸)とした左右90°(左右合計で180°)の中心角を有し、且つその半径が例えば250メートルの扇形形状の前方領域とされる。更に処理部10は、自車C0が走行している道路沿いに20メートルごとに扇形形状の前方領域を分割した分割領域ごとに、他の車両Cnが存在するか否かを判定する。なお以下の説明では、当該分割領域のことを「カウントエリア」と称する。実施例に係る各カウントエリアは、自車C0の現在位置を起点とするものではなく、例えば自車C0が走行している道路の前方にある交差点、分岐点、流入点、或いは地図データとしてのノードを起点として処理部10により設定される。
【0028】
ここで、実施例に係る前方領域及びカウントエリアについてより具体的に
図5(a)を用いて説明する。
図5(a)において、例えば自車C0が道路R0を走行している場合、カウントエリアA1及びカウントエリアA2が、図示のように自車C0の処理部10により設定される。なお以下の説明において、カウントエリアA1及びカウントエリアA2に共通の事項を説明する場合、単に「カウントエリアA」と示す。そして一つのカウントエリアAの幅(
図5左右方向の長さ)は、上記の前方領域の場合、例えば20メートルとされる。また
図5(a)に例示するように自車C0が走行する道路R0に隣接する道路R1がある場合、その道路R1を走行中の車両Cnで各カウントエリアA内にある車両C1乃至車両C6については、上記ステップS2の判定において当該車両C1乃至車両C6が自車C0の前方領域内に存在すると判定される(ステップS2;YES)。なお
図5(b)に示すように、自車C0について設定された前方領域内に交差点CR(より具体的には分岐点又は合流点)がある場合、カウントエリアAとしては、その交差点CRを挟んで前後で合計20メートルが一つのカウントエリアAとなるように設定される(
図5(b)のカウントエリアA2参照)。
【0029】
ステップS2の判定において前方領域内にいずれかの車両Cnが存在する場合(ステップS2;YES)、次に予測部2は、当該存在している車両Cnのうち、そのウインカを出している車両Cnの数を計数すると共に、ウインカを出している車両Cnの場合はその進行方向に対するウインカの方向を検出する(ステップS3)。このステップS3の判定は、例えば他の車両Cnから送信されてくる上記ウインカデータに基づいて実行される。このステップS3の検出において予測部2は、例えば
図6(a)に示すように、カウントエリアAごとに、その中に存在する車両CnのうちウインカWを出している車両C2、車両C4、車両C5及び車両C6を計数する。このとき予測部2は、
図6(a)に例示する場合、カウントエリアA1については、「右にウインカを出している車両Cが一台」と計数する。また、自車C0から見てカウントエリアA1より遠方にあるカウントエリアA2については、「右にウインカを出している車両Cが三台」と計数する。そして処理部10は、例えば三台以上の車両CnがウインカWを同じ方向に出している場合、その三台は、特定の地点(例えば流入点や交差点CR等)に接近しているためにウインカWを出していると認識する。ステップS3の判定においてウインカWを出している車両Cnがない場合(ステップS3;NO)、処理部10は後述するステップS8に移行する。
【0030】
一方ステップS3の判定において、ウインカWを出している車両Cnが存在し、且つそのウインカWを出している方法が検出されている場合(ステップS3;YES)、予測部2は次に、例えば記録部11に記録されている地図データ等に基づき、自車C0が走行している道路の前方に接続している他の道路があるか否かを判定する(ステップS4)。ここで、当該他の道路は、例えば交差点CR、分岐点又は流入点により自車C0が走行している道路に接続されることになる。また以下の説明において、当該接続している他の道路を、単位「接続道路」と称する。ステップS4の判定において接続道路が前方にない場合(ステップS4;NO)、処理部10の支援部3は、上記ステップS3の計数においてウインカWを出している車両Cnは、自車C0が走行している道路における落下物等の障害物を避けるためにウインカWを出していると判定し、その旨の注意喚起等の案内処理を例えばディスプレイ14を用いて実行する(ステップS9)。この場合に支援部3は、例えば「前方に落下物の可能性があります。注意して下さい。」といった警告をディスプレイ14に表示する。その後処理部10は、後述するステップS8に移行する。
【0031】
他方ステップS4の判定において、接続道路が前方にある場合(ステップS4;YES)、予測部2は、例えばセンサ部13からの現在位置データに基づき、自車C0の現在位置が当該接続道路に係る分岐点の付近であるか否かを判定する(ステップS5)。このとき予測部2は、例えば
図6(b)に例示するように、前方の交差点CRを含むカウントエリアA2と、当該カウントエリアA2に対して相隣接しているカウントエリアA1の双方においてウインカWを出している車両C2乃至車両C5がある場合、自車C0の現在位置が分岐点(交差点CR)付近であると判定する。ステップS5の判定において、自車C0の現在位置が分岐点付近である場合(ステップS5;YES)、支援部3は何ら案内処理を実行することなく、後述するステップS8に移行する。一方ステップS5の判定において、自車C0の現在位置が分岐点付近でない場合(ステップS5;NO)、予測部2は次に、ステップS4の判定においてその存在が判定された接続道路が、前方の交差点CRを流入点として自車C0が走行する道路に流入してくる接続道路であるか否かを判定する(ステップS6)。このステップS6の判定は、上記ステップS5において分岐点付近にあるか否かを判定する場合の手法と同様の手法により行われる。またステップS6の判定において予測部2は、前方において流入してくる接続道路であるか否かに加えて、接続道路が接続している方向に対して反対側のウインカWを出している車両Cnがあるか否かを合わせて判定する。すなわち予測部2は、例えば進行方向に向かって左方から接続してくる接続道路がある場合、そのときの前方領域に存在している車両Cnにおいて、右方向にウインカWを出している車両Cnがあるか否かを、合わせて判定する。
【0032】
ステップS6の判定において、流入してくる接続道路がある場合(ステップS6;YES)、支援部3は、当該接続道路が流入してくる方向に合わせて、当該接続道路がある旨の合流案内を実行する(ステップS10)。このステップS10において支援部3は、例えば前方に左方から流入してくる接続道路がある場合は(ステップS6;YES参照)、「左からの合流があります。右側の車線へ移動して下さい。」といった警告表示を、例えば左方から流入する接続道路を示すシンボルマークと共にディスプレイ14に表示する。
【0033】
一方ステップS6の判定において、流入してくる接続道路がない場合(ステップS6;NO)、予測部2は次に、前方の車両CnにおいてウインカWが出されている地点が、前方の合流地点内か又は合流地点の手前であるかを判定する(ステップS7)。ステップS7の判定において、前方の車両CnにおいてウインカWが出されている地点が、前方の合流地点内か又は合流地点の手前である場合(ステップS7;YES)、支援部3は、上記ステップS10と同様の合流案内を実行する。一方ステップS7の判定において、前方の車両CnにおいてウインカWが出されている地点が、前方の合流地点内でなく且つ合流地点の手前でもない場合(ステップS7;NO)、予測部2は次に、例えば端末装置SSの電源がオフとされた等の理由により、実施例に係る走行支援処理を終了するか否かを判定する(ステップS8)。ステップS8の判定において引き続き走行支援処理を実施する場合(ステップS8;NO)、予測部2は上記ステップS1に戻る。一方ステップS8の判定において実施例に係る走行支援処理を終了する場合(ステップS8;YES)、予測部2はそのまま当該走行支援処理を終了する。
【0034】
以上の
図4に例示する実施例に係る走行支援処理を纏めると、自車C0に設定された前方領域において、自車C0の現在位置が前方の分岐点付近であると判定された場合(
図4ステップS5;YES参照)、たとえ他の車両CnにおいてウインカWが出されていると判定しても(
図4ステップS3;YES参照)、支援部3はそれに対応した合流案内等は行わない。これに対し、前方において流入してくる接続道路上の車両CnにおいてウインカWが出されていると判定した場合(
図4ステップS6;YES参照)、支援部3は必要な案内処理を実行する(
図4ステップS10参照)。
【0035】
一方、前方に流入する接続道路がない場合でも(
図4ステップS6;NO参照)、合流地点より手前の道路に存在する車両CnにおいてウインカWが出されていると判定した場合(
図4ステップS7;YES参照)、支援部3は必要な案内処理を実行する(
図4ステップS10参照)。これに対して、前方に流入する接続道路がない場合で、且つ合流地点より手前ではない(前方の)の道路に存在する車両CnにおいてウインカWが出されていると判定した場合(
図4ステップS7;NO参照)、支援部3はそれに対応した合流案内等は行わない。
【0036】
更に、前方に交差点CRや分岐点がない場合であって、付近に存在する車両CnにおいてウインカWが出されていると判定した場合(
図4ステップS4;NO参照)、支援部3は、落下物又は車線規制があるとしてその旨の案内処理を実行する(
図4ステップS9参照)。
【0037】
以上それぞれ説明したように、実施例に係る車車間通信システムCSの動作によれば、他の車両Cnから取得されたウインカデータ及び現在位置データ(以下、単に「ウインカデータ等」と称する)に基づいて、自車C0の前方領域の状況を予測し、その状況に基づいて必要な案内処理を行う(
図4ステップS9及びステップS10参照)ので、前方領域に存在する他の車両Cnから取得したウインカデータ等を用いて予測された前方領域の状況に基づいて案内処理がされることから、ある程度前方の状況が前もって予測されることにより、自車C0は余裕を持って走行することができる。
【0038】
また、自車C0の進行方向に沿ったカウントエリアAごとにウインカデータ等をそれぞれ取得すると共に、前方の状況を予測するので、カウントエリアAごとにより詳細に前方の状況を予測することができる。
【0039】
更に、予測された状況についての案内処理が必要であると判定されたとき、自車C0の運転者等に対して当該案内処理を行うので、不要な案内処理が行われることに起因する運転者等における煩わしさを軽減しつつ、予測された前方の状況を案内することができる。
【0040】
更にまた、進行方向前方の他の車両Cnから取得したウインカデータ等に基づいて進行方向前方にある地点へ流入する他の車両Cnの数を算出し、その算出された数及び各車両Cnからのデータに基づいて前方の状況を予測するので、車両が流入してくる前方の地点について、前もって必要な案内処理を行うことができる。
【0041】
また、ウインカデータ等に基づいて、進行方向前方において車線変更をする必要性があるか否かを予測するので、車線変更の必要性について、運転者等が前もって認識することができる。
【0042】
なお上述した実施例において、当該実施例に係る上記前方領域を、自車C0が走行する道路上をその現在位置から辿れる領域に絞るようにしてもよい。
【0043】
また、他の車両Cnからウインカデータに加えて上記ハザードデータを受信し、これにより、自車C0の前方に存在する渋滞について案内処理を行うように構成してもよい。この場合、例えばハザードデータを受信した車両Cnが一台のみなのか、多数の車両Cnからハザードデータが受信されたかを判定することにより、渋滞なのか(多数の車両Cnからハザードデータが受信された場合)、或いは故障等その他の理由で偶発的にハザードを使用しているか(一台の車両Cnからのみハザードデータを受信した場合)を判定し、その判定結果に応じた案内処理を行うように構成すればよい。
【0044】
更に車線変更しようとしている前方の車両Cnまでの距離が近い場合と遠い場合とで、例えば音声を用いた案内処理とするか(近い場合)、アラーム音を用いた案内処理とするか(遠い場合)、を切り換えるように構成することもできる。
【0045】
更にまた上述した実施例では、車車間通信を用いる車車間通信システムCSに対して本願を適用した場合について説明したが、これ以外に、例えばインターネット等のネットワークを介して(即ち、所定のサーバ装置を介して)車両C間のデータの授受を行う通信システムに対して本願を適用することも可能である。この場合には、上記送信元識別データ等を用いて各端末装置SSが互いを識別しつつ、データの授受を行うことになる。
【0046】
また、実施例に係る記録部11に記録されている地図データ等について、これを記録部11内に記録するのではなく、例えばインターネット等のネットワークを介して必要の都度取得するように構成してもよい。
【0047】
更に上述した実施例では、車車間通信を用いる車車間通信システムCSに対して本願を適用した場合について説明したが、これ以外に、例えば実施形態に係る移動体の一例としての人が携帯する携帯型情報端末装置(いわゆるスマートフォンを含む)間で通信を行いつつ、その携帯型情報端末装置を携帯する人の移動を支援するシステムに対して本願を適用することも可能である。この場合には、互いを識別する識別データ等を用いて互いの識別しつつ、携帯型情報端末装置間において必要なデータの授受を行うことになる。
【0048】
更にまた、
図4に示したフローチャートに相当する走行支援用プログラムを、光ディスク又はハードディスク等の記録媒体に記録しておき、或いはインターネット等のネットワークを介して取得しておき、これを汎用のマイクロコンピュータ等に読み出して実行することにより、当該マイクロコンピュータ等を実施例に係る処理部10として機能させることも可能である。