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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025035965
(43)【公開日】2025-03-14
(54)【発明の名称】ファブリペロー干渉フィルタ
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/00 20060101AFI20250306BHJP
【FI】
G02B26/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023184652
(22)【出願日】2023-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2023142258
(32)【優先日】2023-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大幾
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 光人
(72)【発明者】
【氏名】藁科 禎久
【テーマコード(参考)】
2H141
【Fターム(参考)】
2H141MA22
2H141MB28
2H141MC06
2H141MD02
2H141ME22
2H141MF05
2H141MF24
2H141MZ02
2H141MZ30
(57)【要約】
【課題】第1電極と第2電極との間の初期距離が精度良く確保されたファブリペロー干渉フィルタを提供する。
【解決手段】ファブリペロー干渉フィルタ1は、第1反射膜50と、第2反射膜60と、第1反射膜50を支持している第1層10と、Z軸方向における一方の側において第1層10上に積層された第2層20と、を備える。第2層20は、第2基板21と、第2電極22と、を含む。第1層10は、光透過部材14と、支持部材15と、半導体層12と、を含む。半導体層12は、光透過部材14上に配置された電極部16と、支持部材15上に配置された支持部17と、電極部16と支持部17とを接続している弾性変形部18と、を含む。電極部16は、第1電極19である。半導体層12には、電極部16の表面16a及び弾性変形部18の表面18aが支持部17の表面17aよりもZ軸方向における他方の側に位置するように、凹部が形成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1反射膜と、
光透過領域において、空間を介して前記第1反射膜と向かい合っている第2反射膜と、
第1電極を含み、前記第1反射膜及び前記第2反射膜が互いに向かい合っている第1方向に移動可能な可動部において前記第1反射膜を支持している可動層と、
前記第1方向における一方の側において前記可動層上に積層された配線層と、を備え、
前記配線層は、
基板と、
前記基板に対して前記可動層側に配置されており、前記第1方向において空間を介して前記第1電極と向かい合っている第2電極と、を含み、
前記可動層は、
前記可動部を構成している光透過部材と、
前記第1方向から見た場合に前記光透過領域を包囲している支持部材と、
前記光透過部材及び前記支持部材に対して前記配線層側に配置された半導体層と、を含み、
前記半導体層は、
前記光透過部材上に配置されており、前記第1電極が設けられた又は前記第1電極である電極部と、
前記第1方向から見た場合に前記光透過領域を包囲しており、前記支持部材上に配置された支持部と、
前記電極部と前記支持部とを接続している弾性変形部と、を含み、
前記半導体層は、前記支持部における前記配線層側の接合面において前記基板と接合されており、
前記半導体層には、前記電極部における前記配線層側の表面及び前記弾性変形部における前記配線層側の表面が前記支持部の前記接合面よりも前記第1方向における他方の側に位置するように、前記配線層側に開口する凹部が形成されている、ファブリペロー干渉フィルタ。
【請求項2】
前記基板は、ガラス基板であり、
前記半導体層は、シリコン層である、請求項1に記載のファブリペロー干渉フィルタ。
【請求項3】
前記基板における前記可動層側の表面は、平坦面である、請求項1に記載のファブリペロー干渉フィルタ。
【請求項4】
前記第1電極と前記第2電極との間に電位差が発生していない状態において、前記第1電極と前記第2電極との間の距離は、前記凹部の深さよりも小さい、請求項1に記載のファブリペロー干渉フィルタ。
【請求項5】
前記第1方向における前記他方の側において前記可動層上に積層されており、前記第2反射膜を支持している固定層を更に備える、請求項1に記載のファブリペロー干渉フィルタ。
【請求項6】
前記凹部は、ドライエッチングによって形成された凹部である、請求項1に記載のファブリペロー干渉フィルタ。
【請求項7】
前記凹部の側面は、前記第1方向から見た場合に前記支持部材における内側の側面よりも外側に位置している、請求項1に記載のファブリペロー干渉フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファブリペロー干渉フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
第1基板と、第1基板上に積層された第2基板と、第2基板上に積層された第3基板と、第1基板における第2基板側の表面上に配置された第1反射膜と、空間を介して第1反射膜と向かい合うように第2基板における第1基板側の表面上に配置された第2反射膜と、第2基板における第3基板側の表面上に配置された第1電極と、空間を介して第1電極と向かい合うように第3基板における第2基板側の表面上に配置された第2電極と、を備えるファブリペロー干渉フィルタであって、第1基板、第2基板及び第3基板のそれぞれがガラス基板であり、第2基板において第2反射膜及び第1電極を支持している部分が、第1反射膜と第2反射膜との間の距離を変化させるための可動部として構成されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-224995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなファブリペロー干渉フィルタでは、第1電極及び第2電極が空間を介して互いに向かい合うように、第2基板側に開口する凹部が第3基板に形成されている。しかし、第3基板がガラス基板であるため、ファブリペロー干渉フィルタの製造時に第3基板に凹部を精度良く形成することが困難であり、その結果、製造されたファブリペロー干渉フィルタでは、第1電極と第2電極との間の初期距離(第1電極と第2電極との間に電位差が発生していない状態での第1電極と第2電極との間の距離)が所望の値からずれるおそれがある。なお、第2基板もガラス基板であるため、ファブリペロー干渉フィルタの製造時に第2基板に凹部を精度良く形成することも困難である。
【0005】
本発明は、第1電極と第2電極との間の初期距離が精度良く確保されたファブリペロー干渉フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のファブリペロー干渉フィルタは、[1]「第1反射膜と、光透過領域において、空間を介して前記第1反射膜と向かい合っている第2反射膜と、第1電極を含み、前記第1反射膜及び前記第2反射膜が互いに向かい合っている第1方向に移動可能な可動部において前記第1反射膜を支持している可動層と、前記第1方向における一方の側において前記可動層上に積層された配線層と、を備え、前記配線層は、基板と、前記基板に対して前記可動層側に配置されており、前記第1方向において空間を介して前記第1電極と向かい合っている第2電極と、を含み、前記可動層は、前記可動部を構成している光透過部材と、前記第1方向から見た場合に前記光透過領域を包囲している支持部材と、前記光透過部材及び前記支持部材に対して前記配線層側に配置された半導体層と、を含み、前記半導体層は、前記光透過部材上に配置されており、前記第1電極が設けられた又は前記第1電極である電極部と、前記第1方向から見た場合に前記光透過領域を包囲しており、前記支持部材上に配置された支持部と、前記電極部と前記支持部とを接続している弾性変形部と、を含み、前記半導体層は、前記支持部における前記配線層側の接合面において前記基板と接合されており、前記半導体層には、前記電極部における前記配線層側の表面及び前記弾性変形部における前記配線層側の表面が前記支持部の前記接合面よりも前記第1方向における他方の側に位置するように、前記配線層側に開口する凹部が形成されている、ファブリペロー干渉フィルタ」である。
【0007】
上記[1]記載のファブリペロー干渉フィルタでは、可動層において、光透過部材及び支持部材に対して配線層側に半導体層が配置されており、電極部、支持部及び弾性変形部を含む半導体層が、支持部における配線層側の接合面において配線層の基板と接合されており、電極部における配線層側の表面及び弾性変形部における配線層側の表面が支持部の接合面よりも第1方向における他方の側に位置するように、配線層側に開口する凹部が半導体層に形成されている。ここで、例えばガラス基板に比べると、半導体層には凹部を精度良く形成することが可能である。そのため、配線層の基板の材料に依らず、第1電極と第2電極との間の初期距離が所望の値からずれるのを抑制することができる。よって、上記[1]記載のファブリペロー干渉フィルタは、第1電極と第2電極との間の初期距離が精度良く確保されたものとなる。
【0008】
本発明のファブリペロー干渉フィルタは、[2]「前記基板は、ガラス基板であり、前記半導体層は、シリコン層である、上記[1]に記載のファブリペロー干渉フィルタ」であってもよい。当該[2]記載のファブリペロー干渉フィルタによれば、ガラス基板に比べて加工性に優れたシリコン基板に凹部を形成すればよいため、第1電極と第2電極との間の初期距離が所望の値からずれるのをより確実に抑制することができる。
【0009】
本発明のファブリペロー干渉フィルタは、[3]「前記基板における前記可動層側の表面は、平坦面である、上記[1]又は[2]に記載のファブリペロー干渉フィルタ」であってもよい。当該[3]記載のファブリペロー干渉フィルタによれば、配線層の基板の材料に依らず、半導体層に凹部を形成するだけで、第1電極と第2電極との間の初期距離が所望の値からずれるのを抑制することができる。
【0010】
本発明のファブリペロー干渉フィルタは、[4]「前記第1電極と前記第2電極との間に電位差が発生していない状態において、前記第1電極と前記第2電極との間の距離は、前記凹部の深さよりも小さい、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載のファブリペロー干渉フィルタ」であってもよい。当該[4]記載のファブリペロー干渉フィルタによれば、可動部の可動範囲が制限されることになるため、弾性変形部が損傷するのを抑制することができる。
【0011】
本発明のファブリペロー干渉フィルタは、[5]「前記第1方向における前記他方の側において前記可動層上に積層されており、前記第2反射膜を支持している固定層を更に備える、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載のファブリペロー干渉フィルタ」であってもよい。当該[5]記載のファブリペロー干渉フィルタによれば、可動層の可動部を配線層及び固定層によって両側から保護することができる。
【0012】
本発明のファブリペロー干渉フィルタは、[6]「前記凹部は、ドライエッチングによって形成された凹部である、上記[1]~[5]のいずれか一つに記載のファブリペロー干渉フィルタ」であってもよい。当該[6]記載のファブリペロー干渉フィルタによれば、凹部が精度良く形成されたものとなるため、第1電極と第2電極との間の初期距離が所望の値からずれるのをより確実に抑制することができる。
【0013】
本発明のファブリペロー干渉フィルタは、[7]「前記凹部の側面は、前記第1方向から見た場合に前記支持部材における内側の側面よりも外側に位置している、上記[1]~[6]のいずれか一つに記載のファブリペロー干渉フィルタ」であってもよい。当該[7]記載のファブリペロー干渉フィルタによれば、支持部材に対する凹部の位置が若干ずれたとしても、凹部の側面が支持部材上に位置しなくなるのを抑制することができ、弾性変形部を適切に機能させることができる。なお、凹部の側面が支持部材上に位置しなくなると、弾性変形部の長さが変わってしまうため、弾性変形部を適切に機能させることができないおそれがある。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第1電極と第2電極との間の初期距離が精度良く確保されたファブリペロー干渉フィルタを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態のファブリペロー干渉フィルタの斜視図である。
図2図1に示されるファブリペロー干渉フィルタの分解斜視図である。
図3図1に示されるファブリペロー干渉フィルタの分解斜視図である。
図4図1に示されるファブリペロー干渉フィルタの縦断面図である。
図5図1に示される第1層の平面図及び底面図である。
図6図1に示される第2層の平面図及び底面図である。
図7図1に示される第3層の平面図及び底面図である。
図8図1に示される吸収膜の一部分の縦断面図である。
図9図4に示されるファブリペロー干渉フィルタの一部分の縦断面図である。
図10】変形例のファブリペロー干渉フィルタの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[ファブリペロー干渉フィルタの構成]
【0017】
図1図2図3及び図4に示されるように、ファブリペロー干渉フィルタ1は、第1層(可動層)10と、第2層(配線層)20と、第3層(固定層)30と、第1反射膜50と、第2反射膜60と、吸収膜70と、を備えている。第1反射膜50及び第2反射膜60は、空間を介して互いに向かい合っている。以下の説明では、第1反射膜50及び第2反射膜60が互いに向かい合っている方向(第1方向)を「Z軸方向」といい、Z軸方向に垂直な一方向(第1方向と交差する第2方向)を「X軸方向」といい、Z軸方向及びX軸方向の両方向に垂直な方向(第1方向及び第2方向の両方向と交差する第3方向)を「Y軸方向」という。なお、単に「一方の側」といった場合には、Z軸方向における一方の側を意味し、単に「他方の側」といった場合には、Z軸方向における他方の側を意味する。また、単に「厚さ」といった場合には、Z軸方向における厚さを意味する。
【0018】
ファブリペロー干渉フィルタ1では、Z軸方向から見た場合に第1反射膜50及び第2反射膜60の両方と重なる領域が光透過領域1aとして機能する。光透過領域1aは、第1反射膜50及び第2反射膜60がミラーとして機能し、第1反射膜50と第2反射膜60との距離に応じた光を透過させる領域である。一例として、光透過領域1aは、Z軸方向に平行な直線Lを中心線とする円柱状の領域である。以下の説明では、Z軸方向から見た場合に直線Lを中心とする円の径方向を単に「径方向」といい、当該円の周方向を単に「周方向」という。なお、図4の縦断面図は、ファブリペロー干渉フィルタ1を模式的に示したものであり、図4において縦横の比率は実際のものと一致していない。
【0019】
図4及び図5に示されるように、第1層10は、第1基板11と、半導体層12と、金属パッド13と、を含んでいる。なお、図5の(a)は、第1層10の平面図であり、図5の(b)は、第1層10の底面図である。
【0020】
第1基板11は、光透過部材14と、支持部材15と、を含んでいる。光透過部材14及び支持部材15のそれぞれの材料は、例えば、ガラス、シリコン等の光透過性材料である。一例として、光透過部材14及び支持部材15は、半導体層12となるシリコン基板と接合されたガラス基板をエッチングすることで、別体で形成される。なお、ガラス基板とシリコン基板との接合には、常温接合、プラズマ活性化接合、陽極接合等の気密接合が用いられる。ファブリペロー干渉フィルタ1では、同一の光透過性材料によって形成された光透過部材14及び支持部材15が第1基板11を構成しているが、少なくとも光透過部材14が光透過性材料によって形成されていれば、光透過部材14及び支持部材15は、互いに異なる材料によって形成されていてもよい。
【0021】
光透過部材14は、光透過領域1aの一部を構成している。Z軸方向から見た場合に、光透過部材14の外縁は、光透過領域1aの外縁の外側に位置している。一例として、光透過部材14は、直線Lを中心線とする円形板状に形成されている。光透過部材14の外径は、例えば、4~6mm程度である。光透過部材14の厚さは、例えば、0.2~0.5mm程度である。
【0022】
支持部材15は、Z軸方向から見た場合に光透過部材14を包囲している。つまり、支持部材15は、Z軸方向から見た場合に光透過領域1aを包囲している。光透過部材14と支持部材15との間には、空間が形成されている。支持部材15の厚さは、光透過部材14の厚さと略等しい。一例として、支持部材15は、X軸方向に垂直な一対の側面及びY軸方向に垂直な一対の側面を有するように矩形枠状に形成されている。X軸方向及びY軸方向のそれぞれの方向における支持部材15の幅は、例えば、11mm程度である。支持部材15の厚さは、例えば、0.2~0.5mm程度である。光透過部材14と支持部材15との間の空間の幅は、例えば、0.5~1.5mm程度である。
【0023】
半導体層12は、光透過部材14及び支持部材15に対して第2層20側(すなわち、一方の側)に配置されている。半導体層12は、電極部16と、支持部17と、複数の弾性変形部18と、を含んでいる。電極部16、支持部17、及び複数の弾性変形部18は、導電性を有している。電極部16、支持部17、及び複数の弾性変形部18のそれぞれの材料は、例えば、低抵抗(1Ωcm以下)のp型シリコンである。つまり、半導体層12は、シリコン層である。一例として、電極部16、支持部17、及び複数の弾性変形部18は、第1基板11となるガラス基板と接合されたシリコン基板をエッチングすることで、一体で形成される。
【0024】
電極部16は、Z軸方向から見た場合に光透過領域1aを包囲している。電極部16は、Z軸方向から見た場合に光透過部材14の外縁に沿って延在しており、光透過部材14における一方の側の表面14aに接合されている。つまり、電極部16は、光透過部材14上に配置されている。Z軸方向から見た場合に、電極部16の外縁は、光透過部材14の外縁の外側に位置している。Z軸方向から見た場合に、電極部16の内縁は、光透過部材14の外縁の内側に位置しており、光透過領域1aの外縁と略一致している。一例として、電極部16は、直線Lを中心線とする円形枠状に形成されている。電極部16の内径は、例えば、3~5mm程度である。電極部16の外径は、例えば、4~6mm程度である。電極部16の厚さは、例えば、30μm程度である。ファブリペロー干渉フィルタ1では、電極部16は、第1電極19として機能する。つまり、第1層10は、第1電極19を含んでいる。
【0025】
支持部17は、Z軸方向から見た場合に電極部16を包囲している。つまり、支持部17は、Z軸方向から見た場合に光透過領域1aを包囲している。電極部16と支持部17との間には、空間が形成されている。支持部17は、支持部材15における一方の側の表面15aに接合されている。つまり、支持部17は、支持部材15上に配置されている。ファブリペロー干渉フィルタ1では、Z軸方向から見た場合に、支持部17の外縁は、支持部材15の外縁と略一致している。Z軸方向から見た場合に、支持部17の内縁は、支持部材15の内縁の内側に位置している。一例として、支持部17は、X軸方向に垂直な一対の側面及びY軸方向に垂直な一対の側面を有するように矩形枠状に形成されている。X軸方向及びY軸方向のそれぞれの方向における支持部17の幅は、例えば、11mm程度である。支持部17の厚さは、例えば、34μm程度である。電極部16と支持部17との間の空間の幅は、例えば、0.5~1.5mm程度である。
【0026】
複数の弾性変形部18は、電極部16と支持部17との間に位置しており、Z軸方向から見た場合に電極部16を包囲している。互いに隣り合っている一対の弾性変形部18の間には、空間が形成されている。各弾性変形部18は、電極部16と支持部17とを接続している。つまり、各弾性変形部18の一端部は、電極部16に接続されており、各弾性変形部18の他端部は、支持部17に接続されている。一例として、複数の弾性変形部18は、等角度間隔で周方向に並んでいる。一例として、各弾性変形部18は、径方向に延在するように矩形板状に形成されている。ファブリペロー干渉フィルタ1では、複数の弾性変形部18は、X軸方向において電極部16の両側に位置する一対の弾性変形部18、及びY軸方向において電極部16の両側に位置する一対の弾性変形部18である。径方向における各弾性変形部18の幅は、例えば、0.5~1.5mm程度である。径方向に垂直な方向における各弾性変形部18の幅は、例えば、50μm~1mm程度である。各弾性変形部18の厚さは、例えば、30μm程度である。
【0027】
各弾性変形部18の厚さは、電極部16の厚さと略等しい。支持部17の厚さは、支持部17のうちZ軸方向から見た場合に内縁に沿った内縁領域を除き、電極部16の厚さ及び各弾性変形部18の厚さよりも大きい。支持部17の内縁領域の厚さは、電極部16の厚さ及び各弾性変形部18の厚さと略等しい。電極部16における一方の側の表面16a、各弾性変形部18における一方の側の表面18a、及び支持部17の内縁領域における一方の側の表面17cは、一続きとなっている。電極部16の表面16a、各弾性変形部18の表面18a、及び支持部17の内縁領域の表面17cは、支持部17における一方の側の表面17aよりも低くなっている。つまり、電極部16の表面16a、各弾性変形部18の表面18a、及び支持部17の内縁領域の表面17cは、支持部17における一方の側の表面17aよりも他方の側に位置している。電極部16における他方の側の表面16b、各弾性変形部18における他方の側の表面18b、及び支持部17における他方の側の表面17bは、一続きとなっている。電極部16には、各弾性変形部18の一端部の両側(周方向における両側)において外側に開口する複数の切欠き部16cが形成されている。なお、支持部17は、表面17cを有する内側領域を含め、支持部材15の表面15aに接合されている。
【0028】
金属パッド13は、支持部17の表面17aに形成されている。金属パッド13は、半導体層12を配線として、第1電極19である電極部16と電気的に接続されている。つまり、半導体層12は、第1電極19と金属パッド13とを電気的に接続する配線層として機能する。一例として、金属パッド13は、表面17aの外縁のうちY軸方向に平行な一辺に沿って延在するように矩形膜状に形成されている。金属パッド13の材料は、例えば、Al等の金属材料である。X軸方向における金属パッド13の幅は、例えば、0.1~1mm程度である。Y軸方向における金属パッド13の幅は、例えば、0.1~8mm程度である。金属パッド13の厚さは、例えば、1μm程度である。
【0029】
以上のように構成された第1基板11及び半導体層12では、光透過部材14及び電極部16によって可動部10aが構成されている。可動部10aは、光透過領域1aと重なる部分であり、複数の弾性変形部18が変形することでZ軸方向に移動可能となっている。つまり、第1層10は、光透過領域1aと重なる部分がZ軸方向に移動可能な可動部10aとして構成された可動層である。
【0030】
第1反射膜50は、光透過部材14における他方の側の表面14b上に配置されている。つまり、第1層10は、可動部10aにおいて第1反射膜50を支持している。第1反射膜50は、可動部10aと共にZ軸方向に移動可能である。一例として、第1反射膜50は、直線Lを中心線とする円形膜状に形成されている。第1反射膜50は、例えば、Ag等からなる金属膜における表面14bとは反対側の表面に、酸化アルミニウム等からなる誘電体膜が形成されることで、構成されている。第1反射膜50の外径は、例えば、4~6mm程度である。第1反射膜50の厚さは、例えば、210nm程度である。なお、第1反射膜50は、Ag等からなる金属膜のみによって構成されていてもよいし、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム等からなる誘電体膜のみによって構成されていてもよいし、或いは、それらの複数の誘電体膜が積層されることで構成されていてもよい。
【0031】
図4及び図6に示されるように、第2層20は、第1層10の一方の側において第1層10上に積層されている。第2層20は、第2基板(基板)21と、複数の第2電極22と、遮光膜23と、複数の第3電極24と、複数の電極パッド25と、複数の貫通電極26と、を含んでいる。なお、図6の(a)は、第2層20の平面図であり、図6の(b)は、第2層20の底面図である。
【0032】
第2基板21は、光透過領域1aの一部を構成している。第2基板21は、一方の側の表面21a及び他方の側の表面21bを有している。表面21aは、第1層10とは反対側の表面であり、表面21bは、第1層10側の表面である。第2基板21の表面21bは、支持部17の表面17aと接合されており、電極部16の表面16a、各弾性変形部18の表面18a、及び支持部17の内縁領域の表面17cから離間している。第2基板21の厚さは、半導体層12の厚さよりも大きい。一例として、第2基板21は、X軸方向に垂直な一対の側面及びY軸方向に垂直な一対の側面を有するように矩形板状に形成されている。ファブリペロー干渉フィルタ1では、Z軸方向から見た場合に、第2基板21の外縁は、後述する切欠き部210を除き、支持部17の外縁と略一致している。第2基板21は、ガラス基板である。X軸方向及びY軸方向のそれぞれの方向における第2基板21の幅は、例えば、11mm程度である。第2基板21の厚さは、例えば、0.5mm程度である。なお、支持部17と第2基板21との接合には、常温接合、プラズマ活性化接合、陽極接合等の気密接合が用いられる。
【0033】
第2基板21には、切欠き部210が形成されている。切欠き部210は、X軸方向において光透過領域1aとは反対側に開口しており、金属パッド13を外部に露出させている。切欠き部210は、第1側面210a、及び一対の第2側面210bを有している。第1側面210aは、X軸方向において外側に向いている。一対の第2側面210bは、Y軸方向において互いに向かい合っている。第1側面210aと各第2側面210bとの間の隅部には、ラウンド状の面取り面210cが形成されている。X軸方向における切欠き部210の幅は、例えば、1mm程度である。Y軸方向における切欠き部210の幅は、例えば、1~10mm程度である。
【0034】
複数の第2電極22は、第2基板21の表面21b上に配置されている。つまり、複数の第2電極22は、第2基板21に対して第1層10側に配置されている。複数の第2電極22は、Z軸方向から見た場合に光透過領域1aを包囲しており、Z軸方向において空間を介して電極部16(すなわち、第1電極19)と向かい合っている。一例として、複数の第2電極22は、等角度間隔で周方向に並んでおり、互いに隣り合っている一対の第2電極22の間には、径方向に延在するスリット状の隙間が形成されている。一例として、各第2電極22は、周方向に延在するように膜状に形成されている。各第2電極22の材料は、例えば、Au等の金属材料である。径方向における各第2電極22の幅は、例えば、1mm程度である。周方向における各第2電極22の幅は、例えば、円周に沿って複数の第2電極22が並んでいる場合に当該円周の長さを第2電極22の数で除した値であり、例えば、5mmの直径を有する円周に沿って四つの第2電極22が並んでいる場合には、4mm程度である。各第2電極22の厚さは、例えば、1~5μm程度である。互いに隣り合っている一対の第2電極22の間の隙間の幅は、例えば、0.1mm程度である。電極部16(すなわち、第1電極19)と各第2電極22との間の初期距離(第1電極19と各第2電極22との間に電位差が発生していない状態での第1電極19と各第2電極22との間の距離)は、例えば、3μm程度である。
【0035】
ファブリペロー干渉フィルタ1では、複数の第2電極22は、X軸方向において光透過領域1aの両側に位置する一対の第2電極22、及びY軸方向において光透過領域1aの両側に位置する一対の第2電極22である。各第2電極22は、本体部22aと、一対の突出部22bと、を含んでいる。本体部22aは、周方向に延在する部分であり、Z軸方向において空間を介して第1電極19と向かい合っている。一対の突出部22bは、本体部22aから径方向における外側に突出する部分であり、Z軸方向から見た場合に、周方向において弾性変形部18の両側に位置している(図5参照)。本体部22aには、一対の突出部22bの間において外側に開口する切欠き部22cが形成されている。切欠き部22cは、Z軸方向から見た場合に、弾性変形部18の一端部及びその両側の一対の切欠き部16cと重なっている(図5参照)。
【0036】
遮光膜23は、第2基板21の表面21a上に配置されている。つまり、遮光膜23は、第2層20の一方の側において第2層20上に形成されている。遮光膜23は、Z軸方向から見た場合に光透過領域1aを包囲している第1金属膜27である。遮光膜23は、Z軸方向から見た場合に光透過領域1aの外縁に沿って延在している。ファブリペロー干渉フィルタ1では、遮光膜23は、Z軸方向から見た場合に光透過領域1aの外縁に沿って円環状に延在している。遮光膜23は、Z軸方向から見た場合に光透過領域1aと重なる開口23aを有している。遮光膜23の材料は、例えば、Au等の金属材料である。遮光膜23の内径(すなわち、開口23aの直径)は、例えば、3~5mm程度である。遮光膜23の外径は、例えば、5~7mm程度である。遮光膜23の厚さは、例えば、1~5μm程度である。なお、遮光膜23(すなわち、第1金属膜27)は、電極又は配線としての機能を有していない。
【0037】
複数の第3電極24は、第2基板21の表面21a上に配置されている。複数の第3電極24は、Z軸方向から見た場合に第1金属膜27を包囲している複数の第2金属膜28である。つまり、複数の第3電極24は、Z軸方向から見た場合に光透過領域1aを包囲している。一例として、複数の第3電極24は、等角度間隔で周方向に並んでおり、互いに隣り合っている一対の第3電極24の間には、径方向に延在するスリット状の隙間が形成されている。一例として、各第3電極24は、周方向に延在するように膜状に形成されており、遮光膜23と各第3電極24との間には、周方向に延在するスリット状の隙間が形成されている。各第3電極24の材料は、例えば、Au等の金属材料である。径方向における各第3電極24の幅は、例えば、1mm程度である。周方向における各第3電極24の幅は、例えば、円周に沿って複数の第3電極24が並んでいる場合に当該円周の長さを第3電極24の数で除した値であり、例えば、5mmの直径を有する円周に沿って四つの第3電極24が並んでいる場合には、4mm程度である。各第3電極24の厚さは、例えば、1~5μm程度である。互いに隣り合っている一対の第3電極24の間の隙間の幅は、例えば、0.1mm程度である。遮光膜23と各第3電極24との間の隙間の幅は、例えば、0.1mm程度である。
【0038】
ファブリペロー干渉フィルタ1では、複数の第3電極24は、X軸方向において遮光膜23の両側に位置する一対の第3電極24、及びY軸方向において遮光膜23の両側に位置する一対の第3電極24である。各第3電極24は、Z軸方向から見た場合に、各第2電極22の本体部22aに対して径方向における外側に位置している。各第3電極24は、Z軸方向から見た場合に、各第2電極22の一対の突出部22bと重なっている。
【0039】
複数の電極パッド25は、複数の配線25aと共に、第2基板21の表面21a上に配置されている。各第3電極24は、各配線25aを介して各電極パッド25と電気的に接続されている。ファブリペロー干渉フィルタ1では、各電極パッド25は、矩形状の表面21aの四隅のそれぞれに配置されており、円形膜状に形成されている。各配線25aは、互いに対応する第3電極24及び電極パッド25において、周方向における第3電極24の一端部と電極パッド25とを接続している。各電極パッド25の材料及び各配線25aの材料は、例えば、Au等の金属材料である。各電極パッド25の外径は、例えば、0.5~1mm程度である。各配線25aの幅は、例えば、0.1~0.5mm程度である。各電極パッド25の厚さ及び各配線25aの厚さは、例えば、1~5μm程度である。
【0040】
ファブリペロー干渉フィルタ1では、遮光膜23、及び複数の第3電極24は、同じ材料によって形成されている。つまり、第1金属膜27、及び複数の第2金属膜28は、同じ材料によって形成されている。複数の電極パッド25及び複数の配線25aは、第1金属膜27及び第2金属膜28と同じ材料によって、複数の第3電極24と一体で形成されている。
【0041】
複数の貫通電極26は、第2基板21に設けられている。複数の貫通電極26は、Z軸方向に延在し且つ表面21a及び表面21bに開口するように第2基板21に形成された複数の貫通孔内に配置されており、複数の貫通孔を気密に塞いでいる。各第2電極22は、複数の貫通電極26の少なくとも二つの貫通電極26を介して各第3電極24と電気的に接続されている。ファブリペロー干渉フィルタ1では、各貫通電極26は、互いに対応する第2電極22及び第3電極24において、第2電極22の各突出部22bと第3電極24とを接続している。つまり、互いに対応する第2電極22及び第3電極24において、第2電極22は、二つの貫通電極26を介して第3電極24と電気的に接続されている。各貫通電極26の材料は、例えば、Au等の金属材料である。Z軸方向における各貫通電極26の長さは、例えば、0.5mm程度である。Z軸方向に垂直な方向における各貫通電極26の幅は、例えば、0.1mm程度である。なお、複数の貫通電極26は、第2基板21に形成された複数の貫通孔を気密に塞いでいなくてもよい。
【0042】
図4及び図7に示されるように、第3層30は、第1層10の他方の側において第1層10上に積層されている。第3層30は、第3基板31と、複数の凸部32と、を含んでいる。なお、図7の(a)は、第3層30の平面図であり、図7の(b)は、第3層30の底面図である。
【0043】
第3基板31は、光透過領域1aの一部を構成している。第3基板31は、一方の側の表面31a及び他方の側の表面31bを有している。表面31aは、第1層10側の表面であり、表面31bは、第1層10とは反対側の表面である。第3基板31の表面31aは、支持部材15における他方の側の表面15bと接合されている。第3基板31の厚さは、半導体層12の厚さよりも大きい。一例として、第3基板31は、X軸方向に垂直な一対の側面及びY軸方向に垂直な一対の側面を有するように矩形板状に形成されている。ファブリペロー干渉フィルタ1では、Z軸方向から見た場合に、第3基板31の外縁は、支持部材15の外縁と略一致している。第3基板31は、ガラス基板である。X軸方向及びY軸方向のそれぞれの方向における第3基板31の幅は、例えば、11mm程度である。第3基板31の厚さは、例えば、0.5mm程度である。なお、支持部材15と第3基板31との接合には、常温接合、プラズマ活性化接合、金属拡散接合等の気密接合が用いられる。
【0044】
複数の凸部32は、第3基板31の表面31a上に配置されている。複数の凸部32は、Z軸方向から見た場合に光透過領域1aを包囲しており、第1反射膜50のうち光透過領域1aの外側に位置する領域とZ軸方向において向かい合っている。一例として、各凸部32は、円柱状に形成されている。各凸部32の材料は、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素等である。各凸部32の外径は、例えば、0.1mm程度である。Z軸方向における各凸部32の高さは、例えば、50nm程度である。
【0045】
第2反射膜60は、第3基板31の表面31a上に配置されている。つまり、第3層30は、第2反射膜60を支持している。第2反射膜60のうち光透過領域1aの外側に位置する領域は、複数の凸部32を覆っている。一例として、第2反射膜60は、直線Lを中心線とする円形膜状に形成されている。ファブリペロー干渉フィルタ1では、第1電極19と各第2電極22との間に電位差が発生していない状態において、第2反射膜60のうち各凸部32上に位置する部分は、第1反射膜50のうち光透過領域1aの外側に位置する領域と接触している。これにより、光透過領域1aにおいては、第1反射膜50と第2反射膜60との間に空間が形成され、第1反射膜50と第2反射膜60との面接触が防止される。第2反射膜60は、例えば、Ag等からなる金属膜における表面14bとは反対側の表面に、酸化アルミニウム等からなる誘電体膜が形成されることで、構成されている。第2反射膜60の外径は、例えば、5~8mm程度である。第2反射膜60の厚さは、例えば、210nm程度である。第1電極19と各第2電極22との間に電位差が発生していない状態において、光透過領域1aにおける第1反射膜50と第2反射膜60との間の距離は、例えば、50nm程度である。なお、第2反射膜60は、Ag等からなる金属膜のみによって構成されていてもよいし、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム等からなる誘電体膜のみによって構成されていてもよいし、或いは、それらの複数の誘電体膜が積層されることで構成されていてもよい。
【0046】
吸収膜70は、第3基板31の表面31b上に配置されている。つまり、吸収膜70は、第1反射膜50及び第2反射膜60に対して他方の側に位置している。吸収膜70における一方の側の面70aは、光吸収性を有しており、吸収膜70における他方の側の面70bは、光反射性を有している。吸収膜70は、Z軸方向から見た場合に光透過領域1aを包囲している。吸収膜70は、Z軸方向から見た場合に光透過領域1aと重なる開口70cを有している。ファブリペロー干渉フィルタ1では、Z軸方向から見た場合に、吸収膜70の外縁は、第3基板31の外縁と略一致している。開口70cの直径は、例えば、3~5mm程度である。
【0047】
図8に示されるように、吸収膜70は、反射層71と、共振層72と、吸収層73と、を含む多層構造を有している。反射層71、共振層72及び吸収層73は、第3基板31とは反対側からこの順序で積層されている。つまり、共振層72は、反射層71と第3基板31との間に配置されており、吸収層73は、共振層72と第3基板31との間に配置されている。反射層71は、一方の側の面70aに入射する光(少なくとも、互いの距離が可変な第1反射膜50及び第2反射膜60を透過する波長帯の光)を透過させない金属層である。一方の側の面70aに入射する光の波長において、共振層72の内部の光透過率は、吸収層73の内部の光透過率より大きい。一方の側の面70aに入射する光の波長において、反射層71の表面の光反射率は、共振層72の表面の光反射率より大きい。このように構成された吸収膜70は、一方の側の面70aが光吸収性を有し且つ他方の側の面70bが光反射性を有するものとなる。反射層71の材料は、例えば、Cr、Ti、Al等の金属材料である。反射層71の厚さは、例えば、100nm以上である。共振層72の材料は、例えば、SiO等の誘電体材料である。共振層72の厚さは、例えば、一方の側の面70aに入射する光の波長(中心波長等の基準波長)の4分の1の整数倍を中心とする±20%の範囲内である。吸収層73の材料は、例えば、Cr、Ti等の金属材料、又はシリサイドである。吸収層73の厚さは、例えば、1~10nm程度である。
【0048】
以上のように構成されたファブリペロー干渉フィルタ1では、金属パッド13及び複数の電極パッド25を介して第1電極19及び複数の第2電極22に電圧が印加されることで第1電極19と複数の第2電極22との間に電位差が発生すると、当該電位差に応じた静電力が第1電極19と複数の第2電極22との間に発生する。第1電極19と複数の第2電極22との間に静電力が発生することで可動部10aが一方の側に移動し、第1反射膜50と第2反射膜60との間の距離が変化する。ここで、ファブリペロー干渉フィルタ1の光透過領域1aを通過する光の波長は、第1反射膜50と第2反射膜60との間の距離に依存する。したがって、第1電極19及び複数の第2電極22に印加する電圧(すなわち、第1電極19と複数の第2電極22との間に発生する電位差)を調整することで、ファブリペロー干渉フィルタ1を透過する光の波長を選択することができる。なお、ファブリペロー干渉フィルタ1では、第1基板11、半導体層12、第2基板21及び第3基板31が互いに気密に接合されており、第2基板21に形成された複数の貫通孔が複数の貫通電極26によって気密に塞がれているため、可動部10aは、気密空間においてZ軸方向に移動することになる。
[第1層の半導体層の構成]
【0049】
上述したように、第1層10の半導体層12は、シリコン層であり、第2層20の第2基板21は、ガラス基板である。図4及び図9に示されるように、電極部16の表面16a、各弾性変形部18の表面18a、及び支持部17の内縁領域の表面17cは、支持部17の表面17aよりも他方の側に位置している。つまり、半導体層12には、電極部16の表面16a及び各弾性変形部18の表面18aが支持部17の表面17aよりも他方の側に位置するように、第2層20に開口する凹部120が形成されている。ファブリペロー干渉フィルタ1では、凹部120の側面121が、支持部17の表面17aと支持部17の内縁領域の表面17cとの間の段差面(表面17a,17cに垂直な面)であり、凹部120の底面122が、電極部16の表面16a、各弾性変形部18の表面18a、及び支持部17の内縁領域の表面17cを含む面である。Z軸方向から見た場合に、凹部120の側面121は、支持部17の表面17a上に位置しており、支持部材15における内側の側面15cよりも外側(Z軸方向から見た場合にファブリペロー干渉フィルタ1の中央からファブリペロー干渉フィルタ1の外縁に向かう側、すなわち、ファブリペロー干渉フィルタ1では径方向における外側)に位置している。以上のような凹部120は、半導体層12となるシリコン基板に対してドライエッチングを施すことで形成される。つまり、凹部120は、ドライエッチングによって形成された凹部である。
【0050】
半導体層12は、支持部17の表面(接合面)17aにおいて第2基板21と接合されている。より具体的には、半導体層12は、支持部17の表面17aと第2基板21の表面21bとが互いに接合されることで、第2基板21と接合されている。第2基板21の表面21bは、平坦面である。第2基板21では、他方の側に向いている面(第2基板21の厚さ方向に垂直な面)が平坦面として構成されており、他方の側に向いている当該面が表面21bである。第1電極19(すなわち、電極部16)と各第2電極22との間の初期距離(第1電極19と各第2電極22との間に電位差が発生していない状態での第1電極19と各第2電極22との間の距離)d1は、凹部120の深さ(Z軸方向における支持部17の表面17aと支持部17の内縁領域の表面17cとの距離)d2よりも小さくなっている。第1電極19と各第2電極22との間の初期距離d1は、例えば、3μm程度であり、凹部120の深さd2は、例えば、4μm程度である。ファブリペロー干渉フィルタ1では、第1電極19と各第2電極22との間に電位差が発生していない状態において、第1反射膜50の厚さ、第2反射膜60の厚さ及び凸部32の高さの総和の分だけ光透過部材14が支持部材15に対して第2層20側に移動しているため、第1電極19と各第2電極22との間の初期距離d1が、凹部120の深さd2よりも小さくなっている。
[作用及び効果]
【0051】
ファブリペロー干渉フィルタ1では、第1層10において、光透過部材14及び支持部材15に対して第2層20側に半導体層12が配置されており、電極部16、支持部17、及び複数の弾性変形部18を含む半導体層12が、支持部17の表面17aにおいて第2層20の第2基板21と接合されており、電極部16の表面16a及び各弾性変形部18の表面18aが支持部17の表面17aよりも他方の側に位置するように、第2層20側に開口する凹部120が半導体層12に形成されている。ここで、例えばガラス基板に比べると、半導体層12には凹部120を精度良く形成することが可能である。そのため、第2層20の第2基板21の材料に依らず、第1電極19と各第2電極22との間の初期距離d1が所望の値からずれるのを抑制することができる。よって、ファブリペロー干渉フィルタ1は、第1電極19と各第2電極22との間の初期距離d1が精度良く確保されたものとなる。
【0052】
ファブリペロー干渉フィルタ1では、一例として、次のように凹部120の形成を実施することができる。すなわち、第2基板21の表面21bに第2電極22を形成し、形成された第2電極22の厚さを測定し、測定された厚さに応じて凹部120の深さを決定し、決定された深さを有するように半導体層12に凹部120を形成する。これによれば、形成された第2電極22の厚さがばらつくような場合にも、第1電極19と第2電極22との間の初期距離d1が精度良く確保されたファブリペロー干渉フィルタ1を得ることができる。例えばガラス基板に比べると、半導体層12には凹部120を精度良く形成することが可能であるため、上述したような凹部120の形成は、第1電極19と各第2電極22との間の初期距離d1を精度良く確保する上で、特に有効である。また、第2基板21の表面21bに第2電極22をめっきによって形成する場合には、第2電極22の厚さがばらつきやすいため、上述したような凹部120の形成は、第1電極19と各第2電極22との間の初期距離d1を精度良く確保する上で、特に有効である。
【0053】
ファブリペロー干渉フィルタ1では、第2基板21がガラス基板であり、半導体層12がシリコン層である。この場合、ガラス基板に比べて加工性に優れたシリコン基板に凹部120を形成すればよいため、第1電極19と各第2電極22との間の初期距離d1が所望の値からずれるのをより確実に抑制することができる。
【0054】
ファブリペロー干渉フィルタ1では、第2基板21の表面21bが平坦面である。この場合、第2層20の第2基板21の材料に依らず、半導体層12に凹部120を形成するだけで、第1電極19と各第2電極22との間の初期距離d1が所望の値からずれるのを抑制することができる。
【0055】
ファブリペロー干渉フィルタ1では、第1電極19と各第2電極22との間の初期距離d1が、凹部120の深さd2よりも小さい。これにより、可動部10aの可動範囲が制限されることになるため、各弾性変形部18が損傷するのを抑制することができる。
【0056】
ファブリペロー干渉フィルタ1では、第1層10の他方の側において第1層10上に積層された第3層30が、第2反射膜60を支持している。これにより、第1層10の可動部10aを第2層20及び第3層30によって両側から保護することができる。
【0057】
ファブリペロー干渉フィルタ1では、凹部120が、ドライエッチングによって形成された凹部である。この場合、凹部120が精度良く形成されたものとなるため、第1電極19と各第2電極22との間の初期距離d1が所望の値からずれるのをより確実に抑制することができる。
【0058】
ファブリペロー干渉フィルタ1では、凹部120の側面121が、Z軸方向から見た場合に支持部材15における内側の側面15cよりも外側に位置している。これにより、支持部材15に対する凹部120の位置が若干ずれたとしても、凹部120の側面121が支持部材15上に位置しなくなるのを抑制することができ、各弾性変形部18を適切に機能させることができる。なお、凹部120の側面121が支持部材15上に位置しなくなると、各弾性変形部18の長さが変わってしまうため、各弾性変形部18を適切に機能させることができないおそれがある。
【0059】
ファブリペロー干渉フィルタ1では、半導体層12の支持部17が、表面17cを有する内側領域を含め、支持部材15の表面15aに接合されている。これにより、支持部材15に対する凹部120の位置が若干ずれたとしても、各弾性変形部18の長さが変わるのを抑制することができ、各弾性変形部18を適切に機能させることができる。
[変形例]
【0060】
本発明は、上記実施形態に限定されない。例えば、第2基板21は、ガラス基板に限定されず、ガラス以外の光透過性材料(例えば、シリコン)からなる基板であってもよい。同様に、第3基板31は、ガラス基板に限定されず、ガラス以外の光透過性材料(例えば、シリコン)からなる基板であってもよい。また、半導体層12は、シリコン層に限定されず、シリコン以外の半導体材料からなる層であってもよい。その場合にも、例えばガラス基板に比べれば、半導体層12に凹部120を精度良く形成することが可能である。
【0061】
第2基板21の表面21bは、平坦面に限定されず、例えば、第2基板21の表面21bに、第1層10側に開口している凹部が形成されており、当該凹部の底面上に第2電極22が配置されていてもよい。その場合にも、例えば、当該凹部の深さ及び第2電極22の厚さに応じて凹部120の深さを決定し、決定された深さを有するように半導体層12に凹部120を形成すれば、第2基板21の凹部の深さ及び第2電極22の厚さがばらつくような場合にも、第1電極19と第2電極22との間の初期距離d1が精度良く確保されたファブリペロー干渉フィルタ1を得ることができる。
【0062】
第1電極19と第2電極22との間の初期距離d1は、凹部120の深さd2以上であってもよい。上述したように、第2基板21の表面21bに、第1層10側に開口している凹部が形成されており、当該凹部の底面上に第2電極22が配置されている場合に、初期距離d1が深さd2以上となり得る。
【0063】
第1層10の他方の側において第1層10上に第3層30が積層されておらず、第2層20が第2反射膜60を支持していてもよい。その場合、例えば、第1反射膜50が、第1電極19の内側において光透過部材14の表面14a上に配置され、第2反射膜60が、第2電極22の内側において第2基板21の表面21b上に配置される。
【0064】
凹部120は、ドライエッチングによって形成された凹部に限定されず、その他の方法によって形成された凹部であってもよい。また、凹部120の側面121は、Z軸方向から見た場合に支持部材15における内側の側面15cと一致していてもよいし、或いは、Z軸方向から見た場合に支持部材15における内側の側面15cよりも内側に位置していてもよい。
【0065】
第2層20は、Z軸方向において空間を介して第1電極19と向かい合っている一つの第2電極22と、Z軸方向から見た場合に第1金属膜27を包囲している一つの第2金属膜28と、を含んでいてもよい。その場合、一つの第2電極22は、少なくとも一つの貫通電極26を介して一つの第2金属膜28と電気的に接続されていてもよい。つまり、第2層20は、Z軸方向から見た場合に遮光膜23を包囲している一つの第3電極24を含んでいてもよい。
【0066】
第2層20は、Z軸方向から見た場合に光透過領域1aを包囲している複数の第1金属膜27を含んでいてもよい。その場合、各第2電極22は、少なくとも一つの貫通電極26を介して各第1金属膜27と電気的に接続されていてもよい。また、第2層20は、Z軸方向において空間を介して第1電極19と向かい合っている一つの第2電極22と、Z軸方向から見た場合に光透過領域1aを包囲している一つの第1金属膜27と、を含んでいてもよい。その場合、一つの第2電極22は、少なくとも一つの貫通電極26を介して一つの第1金属膜27と電気的に接続されていてもよい。以上のように、第2層20では、第1金属膜27が第3電極24として構成されており、第2金属膜28が遮光膜23として構成されていてもよい。
【0067】
第1電極19は、電極部16に設けられていてもよい。一例として、図10に示されるように、第1電極19は、電極部16における一方の側の表面上に配置されていてもよい。図10に示される例では、第1電極19は、Z軸方向から見た場合に光透過領域1aを包囲している一つの電極であり、Z軸方向において、空間を介して複数の第2電極22と向かい合っている。
【0068】
第2層20は、第2基板21の表面21a上に配置された第4電極を更に含んでいてもよい。その場合、第4電極は、少なくとも一つの貫通電極26を介して第1電極19と電気的に接続されていてもよい。
【0069】
第1層10は、Z軸方向から見た場合に光透過領域1aを包囲している複数の第1電極19を含んでおり、第2層20は、Z軸方向から見た場合に光透過領域1aを包囲している複数の第4電極を更に含んでいてもよい。その場合、各第1電極19は、少なくとも一つの貫通電極26を介して各第4電極と電気的に接続されていてもよい。これによれば、例えば、第1反射膜50及び第2反射膜60が互いに平行となるように、各第1電極19に付与する電位を微調整することができると共に、各第2電極22に付与する電位を微調整することができる。
【0070】
第2基板21の表面21a上には、第2金属膜28を包囲している少なくとも一つの第3金属膜が配置されていてもよい。その場合、遮光膜23と同様に、少なくとも一つの第3金属膜を遮光膜として機能させることができる。
【符号の説明】
【0071】
1…ファブリペロー干渉フィルタ、1a…光透過領域、10…第1層(可動層)、10a…可動部、12…半導体層、14…光透過部材、15…支持部材、15c…側面、16…電極部、16a…表面、17…支持部、17a…表面(接合面)、18…弾性変形部、18a…表面、19…第1電極、20…第2層(配線層)、21…第2基板(基板)、21b…表面、22…第2電極、30…第3層(固定層)、50…第1反射膜、60…第2反射膜、120…凹部、121…側面。
図1
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図10