(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025036175
(43)【公開日】2025-03-14
(54)【発明の名称】算出装置、算出方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20250306BHJP
C02F 1/00 20230101ALI20250306BHJP
【FI】
G06Q50/10
C02F1/00 V
C02F1/00 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024131968
(22)【出願日】2024-08-08
(62)【分割の表示】P 2023142476の分割
【原出願日】2023-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 裕太
(72)【発明者】
【氏名】稲田 教介
【テーマコード(参考)】
5L050
【Fターム(参考)】
5L050CC11
(57)【要約】
【課題】設備への汚れの付着を抑制することで得られる効果を特定する算出装置、算出方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】対象設備への汚れの付着が抑制されることに応じて得られる抑制効果を特定する抑制効果特定部、を備え、前記抑制効果特定部は、前記汚れの付着を抑制する付着抑制手段により前記汚れの付着が抑制されることに応じて得られる前記抑制効果を特定する算出装置。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象設備への汚れの付着が抑制されることに応じて得られる抑制効果を特定する抑制効果特定部、
を備え、
前記抑制効果特定部は、前記汚れの付着を抑制する付着抑制手段により前記汚れの付着が抑制されることに応じて得られる前記抑制効果を特定する、
算出装置。
【請求項2】
前記抑制効果特定部は、前記対象設備の状態量を表すプロセスデータに対応する前記抑制効果を特定する、
請求項1に記載の算出装置。
【請求項3】
前記抑制効果特定部は、前記対象設備に設けられ、前記対象設備の状態量を計測するセンサの計測結果に対応する前記抑制効果を特定する、
請求項1に記載の算出装置。
【請求項4】
前記抑制効果特定部は、前記対象設備に設けられ、前記対象設備への汚れの付着の度合いを計測するセンサの計測結果に基づき、前記抑制効果を特定する、
請求項1に記載の算出装置。
【請求項5】
前記抑制効果特定部は、複数の時期を示す複数の時期情報と、複数の前記抑制効果と、の対応関係に基づいて、前記抑制効果を特定する、
請求項1に記載の算出装置。
【請求項6】
前記特定された抑制効果に基づき、前記抑制することの対価を算出する対価算出部をさらに備え、
前記対価算出部は、前記抑制効果が大きくなるにしたがい、高い対価を算出する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の算出装置。
【請求項7】
前記特定された抑制効果に基づき、前記抑制することの対価を算出する対価算出部と、
前記対価に基づいて請求費用を算出する請求費用算出部と、をさらに備え、
前記請求費用は、前記抑制効果が所定の基準を超える場合の方が、前記抑制効果が所定の基準を超えない場合よりも、高い、
請求項1から5のいずれか一項に記載の算出装置。
【請求項8】
前記特定された抑制効果に基づき、前記抑制することの対価を算出する対価算出部と、
前記対価に基づいて請求費用を算出する請求費用算出部と、をさらに備え、
前記請求費用は、所定期間にわたって定期的に支払われるものである、
請求項1から5のいずれか一項に記載の算出装置。
【請求項9】
前記特定された抑制効果に基づき、前記抑制することの対価を算出する対価算出部と、
前記対価に基づいて請求費用を算出する請求費用算出部と、をさらに備え、
前記請求費用は、前記請求費用が所定期間にわたって定期的に支払われる場合と、前記抑制効果が所定の基準を超えるときに前記請求費用が支払われる場合とにより、異なる、
請求項1から5のいずれか一項に記載の算出装置。
【請求項10】
前記付着抑制手段は、超音波発生装置により汚れの付着を抑制する手段である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の算出装置。
【請求項11】
請求項1から5のいずれか1項に記載の算出装置としてコンピュータを機能させるプログラム。
【請求項12】
対象設備への汚れの付着が抑制されることに応じて得られる抑制効果を特定する抑制効果特定ステップ、
を備え、
前記抑制効果特定ステップは、前記汚れの付着を抑制する付着抑制手段により前記汚れの付着が抑制されることに応じて得られる前記抑制効果を特定する、
コンピュータが実行する算出方法。
【請求項13】
前記抑制効果特定ステップは、前記対象設備の状態量を表すプロセスデータに対応する前記抑制効果を特定する、
請求項12に記載の算出方法。
【請求項14】
前記抑制効果特定ステップは、前記対象設備に設けられ、前記対象設備の状態量を計測するセンサの計測結果に対応する前記抑制効果を特定する、
請求項12に記載の算出方法。
【請求項15】
前記抑制効果特定ステップは、前記対象設備に設けられ、前記対象設備への汚れの付着の度合いを計測するセンサの計測結果に基づき、前記抑制効果を特定する、
請求項12に記載の算出方法。
【請求項16】
前記抑制効果特定ステップは、複数の時期を示す複数の時期情報と、複数の前記抑制効果と、の対応関係に基づいて、前記抑制効果を特定する、
請求項12に記載の算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、算出装置、算出方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換が行われる設備や流体が通液する設備には、内部でスケール障害が発生することがある。発生したスケール障害に対しては、通常、物理洗浄や化学洗浄で対応することが多い。
一方で、このようなスケール障害を抑制するために、スケール抑制剤を用いる方法がある。また、特許文献1には、一般工場などの熱交換器の冷却水系の循環水に超音波を照射した後、析出物補足装置に通水することにより、この冷却水系のスケール付着防止を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スケール抑制剤を用いる方法や超音波を照射する方法においては、物理洗浄や化学洗浄と比較して、様々な効果を得ることができる。しかしながら、超音波照射により汚れの付着を抑制することによる効果を具体的に提示することは難しい。
本発明の目的は、前述の事情に鑑みてなされたものであって、設備への汚れの付着を抑制することで得られる効果を特定することができる算出装置、算出方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、対象設備への汚れの付着が抑制されることに応じて得られる抑制効果を特定する抑制効果特定部、を備え、前記抑制効果特定部は、前記汚れの付着を抑制する付着抑制手段により前記汚れの付着が抑制されることに応じて得られる前記抑制効果を特定する算出装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、設備への汚れの付着を抑制することで得られる抑制効果を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係る対価算出システムの構成を示す図である。
【
図6】汚れ付着による対象設備の性能の低下を補填するために必要なエネルギーの削減効果の一例を示す図である。
【
図7】二酸化炭素排出炭素価格又は二酸化炭素関連税の削減効果の一例を示す図である。
【
図8】生産性低下の改善効果の一例を示す図である。
【
図9】製品の歩留まり低下の改善効果を示す図である。
【
図10】表示部に表示される抑制効果のそれぞれに対応する複数の図形の一例である。
【
図11】算出装置の動作を示すフローチャートである。
【
図12】第2の実施形態に係る算出装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本実施形態に係る対価算出システム1の構成を示す図である。対価算出システム1は、付着抑制システム2と算出装置3を備える。対価算出システム1において、付着抑制システム2は対象設備の汚れの付着を抑制し、算出装置3は付着抑制システム2が汚れの付着を抑制することの対価を算出する。
【0009】
図2は、付着抑制システム2の構成例を示す図である。付着抑制システム2は、対象設備21、付着抑制装置22、センサ23を備える。
対象設備21は、汚れ付着を抑制する対象の装置である。対象設備21は、例えば熱交換器や配管である。対象設備21は、例えば製品を製造する装置である。対象設備21により製造される製品は、例えば原油、石油、化学原料、化成品、飲食品である。
【0010】
付着抑制装置22は、対象設備21の汚れ付着を抑制する装置である。付着抑制装置22は、汚れ付着を抑制する動作についてのデータを算出装置3に出力する。
付着抑制装置22は、例えば超音波発生装置であって、超音波を対象設備21に発生させることで汚れ付着を抑制する。付着抑制装置22は、例えば発生させる超音波についてのデータを算出装置3に出力する。対象設備21の汚れ付着の抑制は、スケール抑制剤を用いて行われてもよい。付着抑制装置22やスケール抑制剤など、対象設備21の汚れ付着を抑制するための手段を以下、付着抑制手段と呼ぶ。
【0011】
センサ23は、対象設備21に取り付けられる。センサ23は、対象設備21の状態量(温度、流量など)を表すプロセスデータを計測する。対象設備21の状態量は、対象設備21への汚れの付着の度合いを推定するための判断指示値として用いられる。例えば、センサ23は、対象設備21が熱交換器である場合、熱交換器の低温流体側に流入する流体の流量と、入口及び出口のそれぞれにおける流体の温度と、を計測する。また、例えば、センサ23は、対象設備21が熱交換器である場合、熱交換器の高温流体側に流入する流体の流量と、入口及び出口のそれぞれにおける流体の温度と、を計測する。
【0012】
図3は、算出装置3の構成例を示す図である。算出装置3は、センサデータ取得部31、抑制効果特定部32、対価算出部33、請求費用算出部34、出力部35、記憶部39を備える。記憶部39は、センサデータ取得部31が取得するプロセスデータや、対価算出部33が対価の算出に使用する定数を記憶する。
【0013】
センサデータ取得部31は、センサ23により計測されるセンサデータである対象設備21に関係する状態量を表すプロセスデータを取得する。
【0014】
抑制効果特定部32は、付着抑制手段により汚れの付着が抑制されることに応じて得られる効果(以下、抑制効果と呼ぶ)を特定する。抑制効果特定部32は、例えば過去のプロセスデータと現在のプロセスデータを比較することで、抑制効果を特定する。過去のプロセスデータは、例えば記憶部39に記憶させておく。
【0015】
記憶部39が時期情報と抑制効果との対応関係を記憶し、抑制効果特定部32は時期情報と抑制効果との対応関係に基づいて抑制効果を特定してもよい。時期情報は、例えば季節や月の情報である。環境条件により抑制効果は異なる可能性があるため、時期情報と抑制効果との対応関係に基づいて抑制効果を特定することで外的要因である環境要因の影響を排除することができる。
【0016】
対価算出部33は、抑制効果特定部32により特定された抑制効果やセンサ23による計測結果に基づき、抑制することによる対価を算出する。対価算出部33が算出する対価は、例えば抑制効果が大きくなるに従い高くなる。例えば、抑制効果にはいくつかの段階があり、高い抑制効果は高い対価に対応し、低い抑制効果は低い対価に対応する。
【0017】
請求費用算出部34は、対価算出部33が算出した対価に基づき請求費用を算出する。請求費用算出部34は、対価が所定の基準を超える場合の方が、所定の基準を超えない場合よりも高い請求費用を算出する。
【0018】
請求費用算出部34は、請求費用の支払い方式により異なる請求費用を算出してもよい。支払方式は、例えば所定期間にわたり定期的に支払われるサブスクリプション方式や、改善効果が所定の基準を超えた場合のみ支払われるインセンティブ方式である。請求費用算出部34は、対価が等しく請求費用の支払い方式がサブスクリプション方式とインセンティブ方式とで異なる場合に、異なる請求費用を算出してもよい。
【0019】
抑制効果は、複数種類あってもよい。抑制効果の種類は、対象設備21で製造される製品に応じて異なってもよい。
【0020】
抑制効果は、例えば対象設備21の汚れを洗浄するための洗浄関連費用の削減効果である。対価算出部33は、洗浄関連費用の削減効果に基づき抑制することの対価を算出するとき、対象設備21に含まれる洗浄対象物の数、所定期間における洗浄回数、対象設備21の大きさとに基づき抑制することの対価を算出する。
【0021】
図4は、直接的な洗浄費用の他、洗浄作業を実施するにあたり準備する仮設コストおよび洗浄後廃液の処理コストなど一連の洗浄関連費用の削減効果を示す図である。対価算出部33は、対象設備21の数、年間においてサービス導入により削減された洗浄の回数及び対象設備21のサイズにより異なる洗浄関連費用の積を削減コストとして算出する。対価算出部33は、削減コストを対価として算出する。
対象設備21のサイズにより異なる洗浄関連費用は、対象設備21が製造する製品により異なってもよい。
【0022】
抑制効果は、例えば以前の洗浄を行わないことによる稼働率向上効果である。対価算出部33は、稼働率向上効果に基づき抑制することの対価を算出するとき、所定期間における対象設備21を洗浄するのに以前要していた時間、所定期間における対象設備21の運転時間及び対象設備21における生産高とに基づき、抑制することの対価を算出する。従来の洗浄方式(物理洗浄および化学洗浄)の場合には対象設備21を止める必要があるが、付着抑制手段により対象設備21を止めることなく稼働を継続することができる。
【0023】
図5は、稼働率向上効果を示す図である。対価算出部33は設備運転時間に対する洗浄削減時間(洗浄にかかっていた時間)の割合を算出することで向上した稼働率を算出する。その後、対価算出部33は生産高に向上した稼働率を掛けることで、売上高増加予想値を算出し、売上高増加予想値に利益率を掛けることで期待される収入増加量(期待収入増)を算出する。対価算出部33は、期待収入増を対価として算出する。
【0024】
抑制効果は、例えば対象設備21に汚れが付着することによる対象設備21の性能の低下を補填するために必要なエネルギーの削減効果である。対価算出部33は、必要なエネルギーの削減効果に基づき抑制することの対価を算出するとき、所定期間における対象設備21の必要熱交換量と熱効率低下とに基づき、抑制することの対価を算出する。熱効率低下は、例えばセンサ23による温度及び流量の計測結果の差により算出される。対価算出部33は、必要なエネルギーの改善効果に基づき抑制することの対価を算出するとき、対象設備21の汚れ付着に伴う熱効率低下と、蒸気などの熱源単価と、対象設備21の運転時間とに基づき、抑制することの対価を算出する。
【0025】
図6は、汚れ付着による対象設備21の性能の低下を補填するために必要なエネルギーの削減効果の一例を示す図である。対価算出部33は、対象設備の時間当たりの蒸気使用量と設備運転時間から所定期間における蒸気消費量(例えば年間蒸気消費量)を算出する。対価算出部33は、配管口径、蒸気圧力及び蒸気流速に基づいて蒸気使用量を推定してもよい。対価算出部33は、所定期間における蒸気消費量と対象設備21の汚れ付着に伴う熱効率低下の値を掛け、補填するのに必要な蒸気量(必要補填蒸気量)を算出する。対価算出部33は、必要補填蒸気量に蒸気単価を掛けることで補填に必要なコストを算出する。蒸気単価は、単位当たりの蒸気を製造するために必要なエネルギー量を算出し、当該エネルギー量を所定の燃料(都市ガスなど)で製造するために必要な燃料量を低位発熱量(単位容積当たりの熱量)から算出し、当該燃料量と所定の燃料の単価を蒸気単価とすることで算出する。対価算出部33は、補填に必要なコストを対価として算出する。
なお、蒸気圧力は、センサ23により計測されても良い。また、対価算出部33は、センサ23により計測された蒸気流量[t/h]に基づいて蒸気消費量を推定しても良い。
【0026】
抑制効果は、例えば対象設備21に汚れが付着することにより熱量維持が必要となり、熱量維持する上で必要となる補填蒸気を製造することによって増加する二酸化炭素排出炭素価格又は二酸化炭素関連税の削減効果である。対価算出部33は、二酸化炭素排出炭素価格又は二酸化炭素関連税の削減効果に基づき抑制することの対価を算出するとき、対象設備21で用いられる燃料の種別と、所定期間における補填熱源の使用量に相当するエネルギー量と、燃料の種別に対応する二酸化炭素の排出係数と、二酸化炭素取引価格又は温暖化対策税とに基づき、抑制することの対価を算出する。
【0027】
図7は、二酸化炭素排出炭素価格又は二酸化炭素関連税の削減効果の一例を示す図である。対価算出部33は、燃料の種別に対応する二酸化炭素の排出係数と所定期間における補填熱源の使用量に相当するエネルギー量(補填燃料量)を掛けることで、洗浄により余剰エネルギーの使用を削減することで削減することができた二酸化炭素の発生量を算出する。対価算出部33は、二酸化炭素の発生量に二酸化炭素取引価格又は温暖化対策税としてICP(Internal carbon pricing)及び地球温暖化対策税の和を掛けることで、二酸化炭素取引コストを算出する。対価算出部33は、二酸化炭素取引コストを対価として算出する。
【0028】
抑制効果は、例えば対象設備21に汚れが付着することによる対象設備21の生産性低下の改善効果である。対価算出部33は、生産性低下の改善効果に基づき抑制することの対価を算出するとき、所定期間において対象設備21がもたらす利益と、生産性低下に対応する数値とに基づき、対象設備21の汚れを抑制することの対価を算出する。生産性低下に対応する数値は、例えばセンサ23により計測される流量の差に基づき算出される。
【0029】
図8は、生産性低下の改善効果の一例を示す図である。対価算出部33は、生産高と利益率を掛けることで所定期間において対象設備21がもたらす利益を算出する。対価算出部33は、生産性低下に対応する数値として対象設備21を洗浄しなかった場合の生産性低下率を用い、生産性低下率と対象設備21がもたらす利益を掛けることで機会利益ロスを算出する。対価算出部33は、機会利益ロスを対価として算出する。
【0030】
抑制効果は、例えば対象設備21の汚れ付着に伴う設備損傷の改善効果である。設備損傷は、例えば腐食や洗浄による減肉である。
【0031】
抑制効果は、例えば対象設備21への汚れの付着を抑制することに伴う環境負荷の改善効果を含む。対価算出部33は、環境負荷の改善効果に基づき抑制することの対価を算出するとき、超音波やスケール抑制剤ではなく化学洗浄を行った場合の環境負荷を対価として算出する。ここで算出される対価は、例えば化学洗浄を行った場合に生じる化学廃液の中和処理や廃棄にかかるコストである。
【0032】
抑制効果は、例えば対象設備21に汚れが付着することにより、その汚れが剥がれて製品に混入することで発生する歩留まり低下の改善効果を含む。
図9は、製品の歩留まり低下の改善効果を示す図である。対価算出部33は、生産高、汚れが製品に混入することで生じる廃棄ロス率、製品の原価率を掛けることで、洗浄による対価を算出する。
【0033】
出力部35は、対価算出部33により算出された対価情報を出力する。出力部35は例えば表示部を備え、抑制効果のそれぞれに対応する複数の図形を表示する。表示される複数の図形のそれぞれの大きさは、複数の図形のそれぞれが対応する抑制効果が示す対価の大きさに対応する。
図10は、表示部に表示される抑制効果のそれぞれに対応する複数の図形の一例である。抑制効果のそれぞれに対応する複数の図形は例えば円グラフである。表示部は、抑制効果のそれぞれに対応する複数の図形とともに、抑制効果が示す対価又は全体の対価に対する割合を表示してもよい。
出力部35は、請求費用算出部34により算出された請求費用を出力してもよい。
【0034】
図11は、算出装置3の動作を示すフローチャートである。センサデータ取得部31は、センサ23からセンサデータを取得する(ステップS101)。抑制効果特定部32は、センサデータに基づき抑制効果を特定する(ステップS102)。対価算出部33は、対価を算出する(ステップS103)。出力部35は、算出した対価を出力する(ステップS104)。
【0035】
図12は、第2の実施形態に係る算出装置3の構成の一例を示す図である。第2の実施形態に係る算出装置3は、第1の実施形態に係る算出装置3に加えメンテナンス時期推定部36を備える。第2の実施形態に係る記憶部39は、メンテナンス時期推定モデルを記憶する。メンテナンス時期推定モデルは、センサ23による計測結果を入力として、対象設備21のメンテナンス時期を出力するモデルである。メンテナンス時期推定モデルは、センサ23による計測結果(例えば、センサ23により計測される温度であって熱交換器の入口及び出口それぞれにおける温度、の差)を学習データとして、対象設備21のメンテナンス時期(例えば、付着抑制装置22により対象設備21の汚れ付着が抑制されている場合のメンテナンス時期)を学習データに対応する正解とする機械学習により得られる。
【0036】
メンテナンス時期推定部36は、メンテナンス時期推定モデルにセンサ23による計測結果を入力することでメンテナンス時期を推定する。これにより、メンテナンス時期を把握することができる。
【0037】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
算出装置3は、付着抑制装置22である超音波発生装置のパラメータを設定する設定部37と、設定部によって設定されるパラメータに従って、超音波発生装置に超音波を発振させる発振部38を備えてもよい。また、設定部37は、対象設備21と設備の構造(大きさや厚み)や内部に存在する流体物性が類似する設備に対応するパラメータに基づき、パラメータを設定する。
【0038】
上述した実施形態における算出装置3の一部又は全部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記録装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものを含んでもよい。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」は、クラウドストレージを含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。また、算出装置3の一部または全部は、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 対価算出システム、2 付着抑制システム、21 対象設備、22 付着抑制装置、23 センサ、3 算出装置、31 センサデータ取得部、32 抑制効果特定部、33 対価算出部、34 請求費用算出部、35 出力部、36 メンテナンス時期推定部