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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003642
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】転写具
(51)【国際特許分類】
   B43L 19/00 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
B43L19/00 H
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024187847
(22)【出願日】2024-10-25
(62)【分割の表示】P 2020023901の分割
【原出願日】2020-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】荒木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】福井 哲也
(57)【要約】
【課題】リールの逆転を防止するための構成に起因して部材が偏心し易くなるという不具合を好適に抑制し得る転写具を提供する。
【解決手段】繰出用のリールHから繰り出された転写テープTを転写ヘッドを経由させて巻取用のリールIに巻き取らせるようにした転写具であり、巻取用のリールIの逆転を防止するラチェット機構Kを備えている。ラチェット機構Kは、巻取用のリールIに設けられた第一、第二のラチェット爪k1、k2と、ケースFに設けられ第一、第二のラチェット爪k1、k2が係合し得るとともに円周方向に等間隔をなして配された複数のラチェット歯Rとを備えたものであり、第一、第二のラチェット爪k1、k2がラチェット歯Rに対して同時に当たらないように設けられている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰出用のリールから繰り出された転写テープを転写ヘッドを経由させて巻取用のリールに巻き取らせるようにした転写具であって、
前記繰出用又は巻取用の何れか一方のリールの逆転を防止するラチェット機構を備えたものであり、
前記ラチェット機構が、前記リール又は前記リールの支持部材の何れか一方に設けられた第一、第二のラチェット爪と、他方に設けられ前記第一、第二のラチェット爪が係合し得るとともに円周方向に等間隔をなして配された複数のラチェット歯とを備えたものであり、
前記第一、第二のラチェット爪が前記ラチェット歯に対して同時に係合しないように設けられている転写具。
【請求項2】
前記第一、第二のラチェット爪が、前記リールに設けられたものであり、
前記ラチェット歯が、前記支持部材に設けられたものである請求項1記載の転写具。
【請求項3】
前記支持部材が、前記リールを収容するケースである請求項1又は2記載の転写具。
【請求項4】
前記第一、第二のラチェット爪が、前記リールの回転中心を基準に対称に設けられたものであり、前記ラチェット歯が円周方向に奇数設けられたものである請求項1、2又は3記載の転写具。
【請求項5】
前記第一、第二のラチェット爪が、前記巻取用のリールに設けられたものである請求項1、2、3又は4記載の転写具。
【請求項6】
前記繰出用のリール及び前記巻取用のリールの回転を連動させるリール連動機構を備えている請求項1、2、3、4又は5記載の転写具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、糊等の転写物が添着された転写テープが繰り出される繰出用のリールと、この繰出用のリールから繰り出された転写テープを巻き取るための巻取用のリールと、これら繰出用のリールと巻取用のリールの回転を連動させるリール連動機構とを備えた転写具が知られている。
【0003】
この種の転写具には、例えば、特許文献1に示すように、リールの逆転を防止するための逆転防止機構を設けてなるものが存在する。特許文献1に示された転写具における逆転防止機構は、リール連動機構を構成する繰出ギア(供給ギア)に設けられた一本の爪をケースの内面に設けられたラチェット歯に係合させるものである。
【0004】
ところが、かかる構成のものであると、ラチェット歯と係合する一本の爪が繰出ギアの軸心から離れて位置しているため、一本の爪を設けたギアが回転時において偏心してしまう(所期の姿勢から傾いてしまう)という不具合が生じやすい。ギアが回転時において偏心してしまうと、転写テープの歪みや緩みが生じたりリール連動機構の動作不良が生じたりする恐れがある。
【0005】
かかる問題を解消するために、従来から爪を二本以上の複数にすることも検討されていたが、仮にそのようにした場合には、転写操作時に発生する音が大きくなるという問題や、転写操作時の快適な動作を損ね得る大きな抵抗が生じやすいという問題や、複数の爪の存在により見た目を損ねやすいという問題が生じるというジレンマがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3834503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたものであり、少なくとも、リールの逆転を防止するための構成に起因して部材が偏心し易くなるという不具合を好適に抑制し得る転写具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は次の構成をなしている。
【0009】
請求項1に記載の発明は、繰出用のリールから繰り出された転写テープを転写ヘッドを経由させて巻取用のリールに巻き取らせるようにした転写具であって、前記繰出用又は巻取用の何れか一方のリールの逆転を防止するラチェット機構を備えたものであり、前記ラチェット機構が、前記リール又は前記リールの支持部材の何れか一方に設けられた第一、第二のラチェット爪と、他方に設けられ前記第一、第二のラチェット爪が係合し得るとともに円周方向に等間隔をなして配された複数のラチェット歯とを備えたものであり、前記第一、第二のラチェット爪が前記ラチェット歯に対して同時に係合しないように設けられている転写具である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記第一、第二のラチェット爪が、前記リールに設けられたものであり、前記ラチェット歯が、前記支持部材に設けられたものである請求項1記載の転写具である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記支持部材が、前記リールを収容するケースである請求項1又は2記載の転写具である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記第一、第二のラチェット爪が、前記リールの回転中心を基準に対称に設けられたものであり、前記ラチェット歯が円周方向に奇数設けられたものである請求項1、2又は3記載の転写具である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記第一、第二のラチェット爪が、前記巻取用のリールに設けられたものである請求項1、2、3又は4記載の転写具である。
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記繰出用のリール及び前記巻取用のリールの回転を連動させるリール連動機構を備えている請求項1、2、3、4又は5記載の転写具である。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、少なくとも、リールの逆転を防止するための構成に起因して部材が偏心し易くなるという不具合を好適に抑制し得る転写具を提供することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態を示す右側面図。
図2】同実施形態における平面図。
図3】同実施形態における分解斜視図。
図4】同実施形態における分解斜視図。
図5図2におけるX-X線断面図。
図6】同実施形態における巻取リールの右側面図。
図7】同実施形態におけるラチェット歯を示す部分拡大左側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を、図1~7を参照して説明する。
【0018】
この実施形態は、本発明を、転写物である糊(図示せず)を用紙等の転写対象面に対して転写するための転写具に適用したものである。転写具は、繰出用のリールHから繰り出された転写テープTを、転写ヘッドGを経由させて巻取用のリールIに巻き取らせるようにしたものである。
【0019】
転写具は、先端部に転写ヘッドGを設けた転写具本体Aと、転写具本体Aにスライド可能に保持されたスライダーBと、スライダーBに対して回転可能に支持され転写ヘッドGを覆い隠す形状を有したキャップCとを備えている。なお、キャップCは、スライダーBを転写具本体Aに対して前後方向にスライドさせることにより、転写ヘッドGを被覆し得る被覆位置(D)と転写ヘッドGから退避した退避位置(E)とを採り得るものである。
【0020】
以下、転写具について詳述する。
【0021】
転写具本体Aは、内部に繰出用のリールH、及び、巻取用のリールIを回転可能に収容するケースFと、ケースFの前端部に配された転写ヘッドGと、ケースF内に収容され糊を保持した転写テープTが巻装された繰出用のリールHと、ケースF内に収容され繰出用
のリールHから繰り出されるとともに転写ヘッドGの転写ロールg1を経由した転写テープTを巻き取るための巻取用のリールIと、繰出用のリールHと巻取用のリールIの回転を連動させるリール連動機構Wと、巻取用のリールIとケースFとの間に設けられ巻取用のリールIの正転を許容しつつ逆転を防止するラチェット機構Kとを備えたものである。
【0022】
ケースFは、内部に収容空間spを形成し得る合成樹脂製のものである。ケースFは、左右の側壁11、21と、左右の側壁11、21の上端部間に配された上壁22と、左右の側壁11、21の後端部間に配された後壁23と、左右の側壁11、21の下端部間に配された下壁24とを備えている。ケースFの前側には、転写テープTを転写ヘッドGに導出するとともに転写ヘッドGを経由した転写テープTをケースFの内部に導入するための開口部Mが形成されている。
【0023】
この実施形態では、ケースFは、左の側壁11を有した第一ケース部材1と、右の側壁21、上壁22、後壁23、及び、下壁24を有した第二ケース部材2とによって構成されている。つまり、第一ケース部材1と第二ケース部材2とを組み合わせることにより、繰出用のリールH、巻取用のリールI、及び、リール連動機構Wを収容し得る収容空間spが形成されたケースFが構成されている。
【0024】
左の側壁11には、その内面に、繰出用のリールHやリール連動機構Wを構成する繰出ギア3を回転可能に支持する第一の支軸j1が突設されている。また、左の側壁11には、巻取用のリールI及びリール連動機構Wを構成する巻取ギア4を回転可能に支持する第二の支軸j2が突設されている。
【0025】
なお、巻取ギア4は、巻取用のリールIにおける左側部に一体に設けられている。第一の支軸j1及び第二の支軸j2は、左の側壁11に対して略直交する方向に延びている。第一の支軸j1は、第二の支軸j2よりも後に設けられている。
【0026】
左の側壁11における後端部には、第二ケース部材2の方向に延びてなる第一の係止爪t1が設けられている。第一の係止爪t1は、第二ケース部材2の後壁23に設けられた第一の爪受部u1に係合し得るものとなっている。
【0027】
左の側壁11における前端部の下部には、図示しない第二の爪受部が設けられている。第二の爪受部には、第二ケース部材2の下壁24に設けられた第二の係止爪t2が係合し得るものとなっている。
【0028】
つまり、第一ケース部材1及び第二ケース部材2は、第一、第二の係止爪t1、t2を第一、第二の爪受部u1にそれぞれ係合させることにより、収容空間spに、繰出ギア3、繰出用のリールH、及び、巻取ギア4と一体化した巻取用のリールIを回転可能に支持している。
【0029】
繰出ギア3及び繰出用のリールHは、第一の支軸j1に対して回転可能に支持されている。巻取ギア4と一体化した巻取用のリールIは、第二の支軸j2に対して回転可能に支持されている。
【0030】
なお、左の側壁11には、キャップCと係合し、当該キャップCが被覆位置(D)と退避位置(E)とを採り得るように姿勢変更させる図示しない案内溝が設けられている。
【0031】
右の側壁21には、その内面側に、第一の支軸j1の先端部を保持し得る第一のボス部b1が設けられているとともに第二の支軸j2の先端部を保持し得る第二のボス部b2が設けられている。第一のボス部b1は、左の側壁11から立設された第一の支軸j1の先
端部に外嵌し得る形態をなしており、第二のボス部b2は、左の側壁11から立設された第二の支軸j2の先端部に外嵌し得る形態をなしている。
【0032】
上壁22には、スライダーBを前後方向にスライド可能に支持し得る溝状のスライダー支持部22aが設けられている。
【0033】
転写ヘッドGは、転写テープTを転写対象面に対して押し付ける転写ロールg1と、転写ロールg1を回動可能に支持する板状をなす左右の支持部g2とを主体に構成されたものである。左右の支持部g2は、左の側壁11に支持されている。
【0034】
繰出用のリールHは、転写テープTが巻装される円筒状をなす繰出用リール本体部h1と、繰出用リール本体部h1の左右両側部に設けられた左右の鍔部h2とを備えたものである。繰出用リール本体部h1には、リール連動機構Wを構成する繰出ギア3の軸部32と係わり合う左右方向に貫通した中心孔caが設けられている。
【0035】
巻取用のリールIは、繰出用のリールHから転写ヘッドGを介して送り出された転写テープTを巻き取るものである。巻取用のリールIは、転写テープTを巻き取る円筒状をなす巻取用リール本体部i1と、巻取用リール本体部i1の左右両端部に設けられた左右の鍔部i2、i3と、巻取用リール本体部i1と軸心jsを一致させて右側の鍔部i3から外側方に突設された円筒状のボス部i4とを備えたものである。
【0036】
巻取用リール本体部i1の中心には、第二の支軸j2に対して回転可能に嵌合する左右方向に貫通した軸孔jaが形成されている。なお、巻取用のリールIの右側部と第二ケース部材2における右の側壁21との間には、後で詳述するように、巻取用のリールIの逆転を防止するラチェット機構Kが設けられている。
【0037】
リール連動機構Wは、第一の支軸j1に回転可能に支持され繰出用のリールHとともに回転し得る繰出ギア3と、第二の支軸j2に回転可能に支持され巻取用のリールIと一体に回転し得る巻取ギア4とを備えたものである。
【0038】
繰出ギア3は、外周縁に巻取ギア4と噛合する複数の歯が設けられた円盤状をなす繰出ギア本体31と、繰出ギア本体31の中央部から立設され繰出用のリールHにおける中心孔caに嵌合する軸部32と、軸部32の先端に設けられ繰出用のリールHと係合して当該繰出用のリールHが軸部32から抜け出ることを規制する抜け止め部33とを備えたものである。
【0039】
なお、繰出用のリールHにおける中心孔caと繰出ギア3の軸部32との間には、一定以上のトルクが作用した場合に繰出用のリールHと繰出ギア3との相対回転を許容するすべり機構Sが設けられている。
【0040】
巻取ギア4は、外周縁に繰出ギア3と噛合する複数の歯が設けられたものである。巻取ギア4は、巻取用のリールIと軸心jsを一致させて当該巻取用のリールIの左側部に一体に設けられている。
【0041】
しかして、この実施形態の転写具は、リールである巻取用のリールIと支持部材であるケースFにおける右の側壁21との間に、巻取用のリールIの逆転を防止するとともに正転を許容するラチェット機構Kが設けられている。
【0042】
ラチェット機構Kは、巻取用のリールIの右側部に設けられた第一、第二のラチェット爪k1、k2と、ケースFにおける右の側壁21の内面に設けられ第一、第二のラチェッ
ト爪k1、k2が係合し得るとともに円周方向に等間隔をなして配された複数のラチェット歯Rとを備えたものである。換言すれば、第一、第二のラチェット爪k1、k2は巻取用のリールIに設けられたものであり、ラチェット歯RはケースFに設けられたものである。
【0043】
この実施形態のラチェット機構Kは、二つの爪すなわち第一、第二のラチェット爪k1、k2がラチェット歯Rに対して同時に係合しないように設けられている。すなわち、第一、第二のラチェット爪k1、k2は、巻取用のリールIの回転中心である軸心jsを基準に対称に設けられている。そして、第一、第二のラチェット爪k1、k2と係合し得るラチェット歯Rは、円周方向に等間隔に奇数(この実施形態では15個)設けられたものとなっている。
【0044】
第一、第二のラチェット爪k1、k2の基端部は、巻取用のリールIにおける右側の鍔部i3及び円環状のボス部i4にそれぞれ接続したものとなっている。
【0045】
第一、第二のラチェット爪k1、k2は、右側の鍔部i3及びボス部i4に一体に接続した第一、第二の基礎壁k11、k21と、第一、第二の基礎壁k11、k21に片持ち的に支持され円環状のボス部i4の外周に沿って湾曲状に設けられた第一、第二のアーム部k12、k22と、第一、第二のアーム部k12、k22の先端に突設されラチェット歯Rと当接する第一、第二の先端部k13、k23とを備えている。
【0046】
第一、第二の基礎壁k11、k21は、略矩形壁状をなしている。第一の基礎壁k11と第二の基礎壁k21は、巻取用のリールIにおける軸心jsを基準にして対称に配設されている。
【0047】
第一、第二のアーム部k12、k22は、巻取用のリールIにおける右側の鍔部i3及びボス部i4から離れて位置し得るものである。第一、第二のアーム部k12、k22は、第一、第二の基礎壁k11、k21から一体に延設されている。
【0048】
第一、第二の先端部k13、k23は、側面視において軸心jsから離れる方向に向かって漸次幅狭になる形態部分を有している。第一、第二の先端部k13、k23には、第一、第二のアーム部k12、k22の外周面に連続し正転時において複数のラチェット歯Rに対して摺接し得る傾斜面n1、及び、傾斜面n1よりも先端側に位置するとともに巻取用のリールIの回転方向に対して略直交しており逆転時においてラチェット歯Rに対して当接し得る起立面n2が形成されている。
【0049】
複数のラチェット歯Rは、円周方向に等間隔に奇数(15か所)設けられている。すなわち、複数のラチェット歯Rは、軸心jsに対応する中心部を基準に円環状に配設されている。ラチェット歯Rは、巻取用のリールIの回転中心すなわち軸心js方向に向かって凸をなす山型をなしている。
【0050】
ラチェット歯Rは、巻取用のリールIが正転する際に第一、第二のラチェット爪k1、k2における傾斜面n1が当接し得る傾斜した第一当接面r1と、巻取用のリールIが逆転しようとする際に第一、第二のラチェット爪k1、k2における起立面n2が当接し得る傾斜した第二当接面r2とを備えたものとなっている。第二当接面r2は、第一当接面r1よりも急こう配をなしている。本実施形態に示すように、奇数のラチェット歯Rが円周方向に等間隔に配列されている場合には、当該奇数のラチェット歯Rは、巻取用のリールIの回転中心を基準にして対称位置に位置しないものとなる。
【0051】
ラチェット機構Kは、巻取用のリールIが正転する時には、第一、第二のラチェット爪
k1、k2における第一、第二の先端部k13、k23の傾斜面n1が、ラチェット歯Rの第一当接面r1と当接する。そして、ラチェット爪k1、k2における第一、第二の先端部k13、k23は、第一当接面r1に案内されて軸心js方向に移動しようとする。このとき、第一、第二の先端部k13、k23を支持する第一、第二のアーム部k12、k22は一時的に弾性変形し、第一、第二の先端部k13、k23の移動を許容する。このようにして、巻取用のリールIが正転する時には、第一、第二のラチェット爪k1、k2は、当接していたラチェット歯Rを乗り越えることができるようになっている。
【0052】
一方で、ラチェット機構Kは、巻取用のリールIが逆転しようとする時には、第一、第二のラチェット爪k1、k2における第一、第二の先端部k13、k23の起立面n2は面的に第二当接面r2と当接することなく局所的(点的)にラチェット歯Rの第二当接面r2と当接する。このとき、ラチェット爪k1、k2における第一、第二の先端部k13、k23は、通常の逆転トルクでは第二当接面r2による案内作用を得ることができない。このようにして、巻取用のリールIの逆転が適切に防止されるものとなっている。
【0053】
以上に詳述した通り、本実施形態に示す転写具は、繰出用のリールHから繰り出された転写テープTを、転写ヘッドGを経由させて巻取用のリールIに巻き取らせるようにしたものである。
【0054】
そして、巻取用のリールIの逆転を防止するラチェット機構Kが、リールである巻取用のリールIに設けられた第一、第二のラチェット爪k1、k2と、支持部材であるケースFにおける右の側壁21に設けられ第一、第二のラチェット爪k1、k2が係合し得るとともに円周方向に等間隔をなして配された複数のラチェット歯Rとを備えている。
【0055】
ラチェット機構Kを構成する第一、第二のラチェット爪k1、k2は、ラチェット歯Rに対して同時に係合しないように設けられている。
【0056】
このため、本実施形態に示す転写具であれば、巻取用のリールIの逆転を防止するための構成に起因して巻取用のリールIが偏心し易くなるという不具合を好適に抑制し得るものとなっている。
【0057】
つまり、二本のラチェット爪である第一、第二のラチェット爪k1、k2を所定の位置に配設することにより、転写テープTに添着された糊を転写対象面に転写する操作時において、第一、第二のラチェット爪k1、k2がラチェット歯Rに対して交互に係合し得るものとなる。
【0058】
そのため、軸心に対して偏った位置に配された一本のラチェット爪のみを用いた従来のラチェット機構と比較して、巻取用のリールIが第二の支軸j2に対して偏心し難いものとなっている。
【0059】
したがって、本実施形態の転写具であれば、巻取用のリールIの逆転を防止するための構成に起因して、転写操作時において、転写テープTの歪みや緩みが生じたりリール連動機構Wの動作不良が生じたりするという不具合を好適に抑制し得るものとなっている。
【0060】
また、ラチェット機構Kを構成する第一、第二のラチェット爪k1、k2は、ラチェット歯Rに対して同時に係合しないように設けられているため、転写具の転写操作時における正転を妨げる抵抗力を好適に抑制し得るものとなっている。
【0061】
さらに、ラチェット機構Kを構成する第一、第二のラチェット爪k1、k2は、ラチェット歯Rに対して同時に係合しないように設けられているため、第一のラチェット爪k1
とラチェット歯Rとが係合する際に生じる一方の音と、第二のラチェット爪k2とラチェット歯Rとが係合する際に生じる他方の音とが、同時に発生して大きな音になってしまうことも適切に抑制されたものとなっている。
【0062】
しかも、ラチェット機構Kは、第一、第二のラチェット爪k1、k2を交互にラチェット歯Rに係合させ得るものとなっているため、円周方向に等間隔をなして配されたラチェット歯Rの総数を比較的少なく設定し得るものとなっている。すなわち、一本のラチェット爪を複数のラチェット歯に係合させるようにした従来のものと比較して、本実施形態におけるラチェット機構Kでは逆転防止の機能を損ねることなくラチェット歯Rの総数を二分の一の数に設定し得るものとなっている。
【0063】
これにより、使用者等に対しては、ラチェット歯が過密配置されたような煩雑な印象を与え難いものとなり、むしろ好適な印象に資するすっきりとした見た目を与え易いものとなっている。
【0064】
また、個々のラチェット歯Rを比較的大きなものに形成し易いものとなっており、既知のラチェット歯において顕著であった鋭角な部分を形成する必要性が低減され得るものとなっている。その結果、本実施形態におけるラチェット機構Kであれば、製造時において金型から抜けやすいラチェット歯Rの形態を無理なく設計し得るものとなるため、加工がし易いだけでなく製造不良が生じ難いものとなっている。
【0065】
第一、第二のラチェット爪k1、k2が、巻取用のリールIに設けられたものであり、ラチェット歯Rが、支持部材であるケースFに設けられたものであるため、所定の形態をなす第一、第二のラチェット爪k1、k2及びラチェット歯Rを精度よく成形し易いものとなっている。
【0066】
第一、第二のラチェット爪k1、k2が、巻取用のリールIの回転中心すなわち軸心jsを基準に対称に設けられたものであり、ラチェット歯Rが円周方向に奇数設けられたものである。
【0067】
このため、第一、第二のラチェット爪k1、k2が、巻取用のリールIの偏心を好適に抑制し得る位置に設けられたものとなっている。しかも、かかる構成であれば、第一、第二のラチェット爪k1、k2がラチェット歯Rに対して同時に係合しないようにするための設計が柔軟に行えるものとなっている。
【0068】
換言すれば、ラチェット機構Kを、第一、第二のラチェット爪k1、k2を巻取用のリールIの軸心jsを基準に対称に設けるとともにラチェット歯Rを円周方向に奇数設けるように構成したものとすれば、第一のラチェット爪k1がラチェット歯Rに係合するタイミングと、第二のラチェット爪k2がラチェット歯Rに係合するタイミングとが、合致しないように設定し易いものとなっている。
【0069】
繰出用のリールH及び巻取用のリールIの回転を連動させるリール連動機構Wを備えている。本実施形態では、上述したように、巻取ギア4を一体に設けた巻取用のリールIが軸心jsに対して偏心し難いように、ラチェット機構Kを構成している。そのため、リール連動機構Wが動作不良を起こし難いものとなり、所期の動作を適切に実現し得るものとなっている。
【0070】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0071】
転写具は、転写物を転写対象物に転写するものであればどのようなものであってもよい
。換言すれば、転写物は、本実施形態に示された糊に限られるものではなく、例えば、修正用の修正剤(修正テープ)や装飾用の装飾剤(装飾テープ)であってもよい。
【0072】
また、転写具は、転写テープが無くなった場合に以後使用できなくなるいわゆるディスポーザブルタイプのものに限られるものではない。転写具は、転写テープを保持したリフィルをケースに対して付け替え可能に構成されたいわゆるリフィル交換タイプのものであってもよい。
【0073】
リールの支持部材は、ケースに限られるものではなく、例えば、リフィルの支持板であってもよい。すなわち、リフィルの一例としては、支持部材たる支持板と、当該支持板に対して回転可能に支持された繰出用のリール及び巻取用のリールとを備えてなるものを挙げることができる。リフィルのラチェット機構は、繰出用のリールと支持部材たる支持板との間に設けられたものであってもよいし、巻取用のリールと支持部材たる支持板との間に設けられたものであってもよい。
【0074】
ラチェット機構は、巻取用のリールと当該巻取用のリールの支持部材に設けられたものに限られるものではなく、繰出用のリールと当該繰出用のリールの支持部材に設けられたものであってもよい。
【0075】
ラチェット機構は、第一、第二のラチェット爪がリールに設けられるとともに複数のラチェット歯が支持部材に設けられてなるものに限られない。すなわち、ラチェット機構は、第一、第二のラチェット爪が支持部材に設けられるとともに複数のラチェット歯がリールに設けられてなるものであってもよい。
【0076】
ラチェット機構は、第一、第二のラチェット爪がラチェット歯に対して同時に係合しないものであればよく、その態様は上述した実施形態に示したものに限られない。例えば、第一、第二のラチェット爪が、リールの回転中心を基準に非対称に設けられたものであり、これら第一、第二のラチェット爪が係合するラチェット歯が円周方向に偶数又は奇数設けられたものとしてもよい。つまり、ラチェット歯が偶数であっても奇数であっても、第一、第二のラチェット爪の位置をラチェット歯に対して同時に係合しないようにした所定の非対称位置に設定すれば、所期の目的を達成し得るものとなっている。
【0077】
第一、第二のラチェット爪及びラチェット歯の突出方向は互いに噛合し得る関係にあればどのような方向に突設されたものであってもよい。
【0078】
第一、第二のラチェット爪に加えて他のラチェット爪を増やしたものであっても構わない。換言すれば、ラチェット機構を構成するラチェット爪が三本又はそれ以上の複数であってもよい。
【0079】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0080】
F…ケース(支持部材)
G…転写ヘッド
H…繰出用のリール
I…巻取用のリール(リール)
K…ラチェット機構
k1、k2…第一、第二のラチェット爪
R…ラチェット歯
T…転写テープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-11-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰出用のリール及び巻取用のリールを回転可能に収容するケースを備え、前記繰出用のリールから繰り出された転写テープを転写ヘッドを経由させて前記巻取用のリールに巻き取らせるようにした転写具であって、
前記繰出用のリールと前記ケースとの間、又は、前記巻取用のリールと前記ケースとの間の何れかに、リールの逆転を防止するラチェット機構が設けられたものであり、
前記ラチェット機構が、前記リールの一側部に設けられた複数のラチェット爪と、前記ケースの内面に設けられ前記複数のラチェット爪が係合し得るとともに円周方向に等間隔をなして配された複数のラチェット歯とを備えたものであり、
前記複数のラチェット爪のそれぞれが、前記リールの回転中心から離れる方向に漸次幅狭になる形態部分を有し前記ラチェット歯と当接する先端部を備えたものであり、
前記ラチェット歯が、前記リールの回転中心に向かって凸をなしている転写具。
【請求項2】
前記複数のラチェット歯が、前記円周方向に延びるとともに前記回転中心方向を向く面を介して、円周方向に離間して配されたものである請求項1記載の転写具。
【請求項3】
前記複数のラチェット歯が、前記ケースにおける側壁の内面から収容空間側に突設された円筒部分の内周面に配設されている請求項1又は2記載の転写具。
【請求項4】
前記複数のラチェット爪が、前記巻取用のリールに設けられたものであり、
前記巻取用のリールが、前記転写テープを巻き取る巻取用リール本体部と、この巻取用リール本体部の左右両側端部に設けられた左右の鍔部と、前記巻取用リール本体部と軸心を一致させて一方の前記鍔部から外側方に突設された円筒状のボス部とを備えたものであり、
前記複数のラチェット爪の基端部が、一方の前記鍔部及び前記ボス部にそれぞれ接続したものとなっている請求項1、2又は3記載の転写具。
【請求項5】
前記複数のラチェット爪が、前記リールの回転中心を基準に対称に設けられたものである請求項1、2、3又は4記載の転写具。
【請求項6】
前記複数のラチェット爪が、第一、第二のラチェット爪である請求項1、2、3、4又は5記載の転写具。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
請求項1に記載の発明は、繰出用のリール及び巻取用のリールを回転可能に収容するケースを備え、前記繰出用のリールから繰り出された転写テープを転写ヘッドを経由させて前記巻取用のリールに巻き取らせるようにした転写具であって、前記繰出用のリールと前記ケースとの間、又は、前記巻取用のリールと前記ケースとの間の何れかに、リールの逆転を防止するラチェット機構が設けられたものであり、前記ラチェット機構が、前記リールの一側部に設けられた複数のラチェット爪と、前記ケースの内面に設けられ前記複数のラチェット爪が係合し得るとともに円周方向に等間隔をなして配された複数のラチェット歯とを備えたものであり、前記複数のラチェット爪のそれぞれが、前記リールの回転中心から離れる方向に漸次幅狭になる形態部分を有し前記ラチェット歯と当接する先端部を備えたものであり、前記ラチェット歯が、前記リールの回転中心に向かって凸をなしている転写具である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記複数のラチェット歯が、前記円周方向に延びるとともに前記回転中心方向を向く面を介して、円周方向に離間して配されたものである請求項1記載の転写具である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記複数のラチェット歯が、前記ケースにおける側壁の内面から収容空間側に突設された円筒部分の内周面に配設されている請求項1又は2記載の転写具である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記複数のラチェット爪が、前記巻取用のリールに設けられたものであり、前記巻取用のリールが、前記転写テープを巻き取る巻取用リール本体部と、この巻取用リール本体部の左右両側端部に設けられた左右の鍔部と、前記巻取用リール本体部と軸心を一致させて一方の前記鍔部から外側方に突設された円筒状のボス部とを備えたものであり、前記複数のラチェット爪の基端部が、一方の前記鍔部及び前記ボス部にそれぞれ接続したものとなっている請求項1、2又は3記載の転写具である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記複数のラチェット爪が、前記リールの回転中心を基準に対称に設けられたものである請求項1、2、3又は4記載の転写具である。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記複数のラチェット爪が、第一、第二のラチェット爪である請求項1、2、3、4又は5記載の転写具である。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0073
【補正方法】削除
【補正の内容】