(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025036699
(43)【公開日】2025-03-14
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
G01V 3/12 20060101AFI20250306BHJP
G01N 21/3581 20140101ALI20250306BHJP
【FI】
G01V3/12 A
G01N21/3581
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024232956
(22)【出願日】2024-12-27
(62)【分割の表示】P 2021048693の分割
【原出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 景太朗
(57)【要約】
【課題】複合鏡を用いない場合に比べて、集めた電磁波に基づき人の所持物を検査する検査装置を小さくする。
【解決手段】複合鏡11は、複数の凹面鏡M
0、M
1、…、M
i、M
i+1、…を有する。凹面鏡M
0、M
1、…、M
i、M
i+1、…がxy平面を通る曲線は、それぞれ独立変数xの関数f
0(x)、f
1(x)、…、f
i(x)、f
i+1(x)、…で表される。これら複数の関数は、いずれも共通の光軸I、及び焦点Pを有する放物線であるから、複合鏡11を構成する複数の凹面鏡Mは、放物面鏡である。凹面鏡Mは、いずれも厚みtを超えないように切り取られている。つまり、凹面鏡Mのy座標は0以上、かつ、t以下である。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
xyz座標空間に、光軸がy軸に一致し、焦点のx座標が0、y座標がpとなり、y軸方向における0からt(ただし、0<t<p)までの範囲を占めるように配置された、焦点距離が異なる複数の凹面鏡により集めた電磁波に基づき人の所持物を検査する検査装置。
【請求項2】
前記凹面鏡は放物面鏡である
請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記複数の凹面鏡は、前記人の動線を遮らないように配置されている
請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記複数の凹面鏡は、前記光軸に沿った方向から見て隙間がない
請求項1から3のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記複数の凹面鏡は、前記焦点から見て隙間がない
請求項1から3のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記焦点に配置した光学系により前記複数の凹面鏡が集めた電磁波を検知器に導く
請求項1から5のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項7】
前記光学系はポリゴン鏡である
請求項6に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波に基づき人の所持物を検査する検査装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象の内部の様子を検査するスキャナとして、例えば空港等におけるボディチェックを行うためのボディスキャナが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献2は、歩行者等の移動する物体(移動体)の位置を検知して、検知された位置に応じてテラヘルツ波の伝搬方向を切り替える移動体スキャナを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-36680号公報
【特許文献2】特開2019-190951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電磁波により物体を画像化する手法には、電磁波を物体に照射し、その透過波、又は反射波を検出して画像化するアクティブイメージングのほか、物体そのものから放射される電磁波を検出して画像化するパッシブイメージングがある。
【0006】
例えば、テラヘルツ波は周波数が100GHz以上、10THz未満程度の電磁波である。このテラヘルツ波は、上述したアクティブイメージングにも用いられるが、人体や所持物からそれぞれ微量に放射されているため、その放射量の違いを用いて隠し持った所持物を検出する、上述したパッシブイメージング型のウォークスルー所持物検査装置にも利用されている。
【0007】
物体から放射される微弱なテラヘルツ波を受光するために、受光系は広帯域に対応する必要がある。しかし、レンズは色収差を持つことから広帯域には適さない。また、人の全身から放射される電磁波を一枚の放物面鏡で集めようとすると、相応の奥行きが必要となり、装置が大きくなり、省スペース化が図り難くなる。このことは、アクティブイメージングの場合でも同じである。
【0008】
本発明の目的の一つは、本発明に係る複合鏡を用いない場合に比べて、集めた電磁波に基づき人の所持物を検査する検査装置を小さくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明は、焦点距離が異なる複数の凹面鏡を光軸及び焦点のそれぞれが重なるように配置した複合鏡により集めた電磁波に基づき人の所持物を検査する検査装置、を第1の態様として提供する。
【0010】
第1の態様の検査装置によれば、本発明に係る複合鏡を用いない場合に比べて、集めた電磁波に基づき人の所持物を検査する検査装置を小さくすることができる。
【0011】
第1の態様の検査装置において、前記複合鏡は定数p、c
1及び前記光軸からの距離を示す独立変数xを用いて表される
なる関数曲線を、該光軸を中心に回転させた曲面を有する、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0012】
第2の態様の検査装置によれば、集めた電磁波に基づき人の所持物を検査する検査装置を小さくすることができる。
【0013】
第1の態様の検査装置において、前記凹面鏡は放物面鏡である、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0014】
第3の態様の検査装置によれば、検査対象からの平行光(平行に進む電磁波)を1つの焦点に集めることができる。
【0015】
第1から第3の態様のいずれか1の検査装置において、前記複合鏡は、前記人の動線を遮らないように配置されている、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0016】
第4の態様の検査装置によれば、複合鏡が人の動線を妨げることがない。
【0017】
第1から第4の態様のいずれか1の検査装置において、前記複合鏡は、前記焦点から見て隙間がない、という構成が第5の態様として採用されてもよい。
【0018】
第5の態様の検査装置によれば、複合鏡を構成する複数の凹面鏡が互いに離れていても、焦点に届く反射光同士は連続している。
【0019】
第1から第5の態様のいずれか1の検査装置において、前記焦点に配置した光学系により前記複合鏡が集めた電磁波を検知器に導く、という構成が第6の態様として採用されてもよい。
【0020】
第6の態様の検査装置によれば、光学系は、焦点から検知器に電磁波を導く。
【0021】
第6の態様の検査装置において、前記光学系はポリゴン鏡である、という構成が第7の態様として採用されてもよい。
【0022】
第7の態様の検査装置によれば、ポリゴン鏡である光学系を回転させて検査対象を走査することにより広い範囲を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る検査システム9を上から見た例を示す平面図。
【
図2】検査装置1の高さ方向について説明する概念図。
【
図4】検査装置1に収容されている複合鏡11の例を示す図。
【
図5】複合鏡11が長さLzの検査対象から放射される電磁波を検査する様子の例を示す図。
【
図6】複合鏡11を構成する複数の凹面鏡の例を示す図。
【
図7】光学系12にポリゴン鏡を用いた検査装置1の例を示す図。
【
図8】焦点Pから見て隙間がない複合鏡11の例を示す図。
【
図9】一つの関数で表される複数の凹面鏡Mの形状の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<実施形態>
<検査装置の構成>
以下、図において、各構成が配置される空間をXYZ右手系座標空間、又はxyz右手系座標空間として表す。また、図に示す座標記号のうち、円の中に点を描いた記号は、紙面奥側から手前側に向かう矢印を表し、円の中に交差する2本の線を描いた記号は、紙面手前側から奥側に向かう矢印を表す。空間においてx軸に沿う方向をx軸方向という。また、x軸方向のうち、x成分が増加する方向を+x方向といい、x成分が減少する方向を-x方向という。y、z成分、及びX、Y、Z成分についても、x成分と同様に定義される。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る検査システム9を上から見た例を示す平面図である。検査システム9は、通路を歩行する人Qの所持物を検査するシステムであり、通路の両側であって通路を遮らない位置に2つずつ、計4つの検査装置1を配置する。この通路は、XYZ右手系座標空間において、Y軸方向に伸びる幅Wの通路であり、人Qが歩行する際の動線を含む。4つの検査装置1は、いずれも通路を遮らない位置に置かれているため、人Qの動線を遮ることがない。なお、
図1において、-Z方向は下向き、つまり、重力の方向であり、X軸方向は、通路の幅の方向である。
【0026】
4つの検査装置1は、それぞれ人Q、及びその所持物から方向Dに放射されるテラヘルツ波等の電磁波を受光(又は受波)する。人Qが+Y方向に歩行(移動)することにより、4つの検査装置1は、Y軸方向、及びX軸方向(すなわち水平方向)に人Q及びその所持物をスキャンする。また、4つの検査装置1は、人Q及びその所持物の、Z軸方向のスキャンを行う。
【0027】
図2は、検査装置1の高さ方向について説明する概念図である。人Qが身につけている所持物は、例えば、
図2に斜線で示す、膝上から首下までの範囲等に存在する。したがって、検査装置1は、上述した通路のある床面Gの上を歩行する人Qの膝の位置H1から、首の位置H2までの、Z軸に沿った範囲を検査対象とする必要がある。この範囲の、Z軸に沿った長さLzは、例えば1200ミリメートルである。
【0028】
図3は、放物面鏡を説明するための図である。
図3に示すxy平面には、原点Oを通る放物線が描かれている。この放物線は、従属変数yが独立変数xの二次関数で示されるときの、(x,y)を結んだ曲線である。ここでは、y軸上に焦点Pをとり、そのy成分をpとする。この場合、従属変数yは、以下の数式(1)で表される。
【0029】
【数1】
y軸を中心にして、この放物線を回転して得られる曲面は、放物面である。この放物面の凹部が鏡になった部材が放物面鏡である。上述した電磁波を受ける方向Dが-y方向になるようにこの放物面鏡を配置すると、方向Dに放射される平行光は、いずれも焦点Pに集められる。
【0030】
放物面鏡により、焦点Pで受光する電磁波の入射角度の範囲が二直角、すなわち2πラジアンを超えると、入射光同士が向き合うことになり、これらを光学系でコリメート光(平行光)に変換して検知器に導くことが困難になる。したがって、一般に、この放物面鏡の端点E1、及び端点E2のそれぞれのy成分は、いずれも焦点Pのy成分であるpを超えない。そして、例えば、端点E1、及び端点E2のそれぞれのy成分が焦点Pのy成分であるpと同じである場合、端点E1から端点E2までの距離は4pである。
【0031】
したがって、一枚の放物面鏡で、上述した長さLzを検査対象とする場合、その奥行きはLz/4である。上述した長さLzが1200ミリメートルである場合、放物面鏡の奥行きは300ミリメートルとなる。つまり、一枚の放物面鏡で、例えば1200ミリメートルの高さを検査対象とする場合、検査装置1は、奥行き方向が300ミリメートルの放物面鏡を収容するだけの大きさが必要となる。
【0032】
<複合鏡の構成>
図4は、検査装置1に収容されている複合鏡11の例を示す図である。
図5は、複合鏡11が長さLzの検査対象から放射される電磁波を検査する様子の例を示す図である。上述した通り、検査装置1は、いずれも人Qの動線を遮ることがなく、複合鏡11は、検査装置1に収容されている。したがって、
図4、
図5に示す複合鏡11は、いずれも人Qの動線を遮ることがない。
【0033】
図4には、-Z方向に検査装置1の中身を見た図が示されている。xyz右手系座標空間は、+x方向が+Z方向に一致し、-y方向が電磁波を受光する方向Dに一致するように定められる。
図4に示す検査装置1は、複合鏡11、光学系12、及び検知器13を有する。
【0034】
複合鏡11の光軸Iは、方向Dと平行な方向に伸びている。光軸I上の焦点Pには、光学系12が配置されている。この光学系12は、例えば放物面鏡であり、複合鏡11で集められた電磁波を、その進行方向が平行になるように調整し、光軸I上に配置された検知器13に導く。すなわち、この光学系12を有する検査装置1は、焦点に配置した光学系により複合鏡が集めた電磁波を検知器に導く検査装置の例である。
【0035】
図5に示す通り、複合鏡11のy軸方向の厚みは、長さLzの四分の一よりも薄い。これは、この複合鏡11が一枚の放物面鏡ではなく、焦点距離が異なる複数の凹面鏡を、光軸I及び焦点Pのそれぞれが重なるように配置して形成されたものだからである。
【0036】
<複合鏡の詳細構成>
図6は、複合鏡11を構成する複数の凹面鏡の例を示す図である。
図6には、y軸を回転中心とする回転体である複合鏡11を、y軸を含むxy平面で切断した断面が示されている。y軸は、複合鏡11の光軸Iに一致する。
【0037】
この複合鏡11は、複数の凹面鏡M0、M1、…、Mi、Mi+1、…(以下、これらを区別しない場合、単に凹面鏡Mという)を有する。
【0038】
これら複数の凹面鏡Mの添字iは、0から始まる整数であり、添字i=0のとき、凹面鏡M0は原点Oを含む。添字iが大きくなるほど、凹面鏡Mは、y軸から遠ざかる。
【0039】
凹面鏡M
0、M
1、…、M
i、M
i+1、…がxy平面を通る曲線は、それぞれ独立変数xの関数f
0(x)、f
1(x)、…、f
i(x)、f
i+1(x)、…で表される。
図6に示すこれら複数の関数は、いずれも共通の光軸I、及び焦点Pを有する放物線である。つまり、
図6に示す複合鏡11を構成する複数の凹面鏡Mは、y軸を中心にして上述した放物線を、それぞれ回転させた曲面状の鏡、すなわち、放物面鏡である。
【0040】
y=fi(x)は、一般化すると、y軸上のy座標がyi(yi≦0)であり、焦点P(0,p)を焦点とする放物線であるから、以下の式(2)で表される。なお、y0=0であり、i=0,1,2,…(0から始まる整数)である。
【0041】
【数2】
図6に示す凹面鏡Mは、いずれも厚みt(ただし、t<p)を超えないように切り取られている。つまり、凹面鏡Mのy座標は0以上、かつ、t以下である。凹面鏡M
0は原点Oで、それ以外の凹面鏡M
i(i≧1)は、それぞれの内周で、いずれもx軸と接している。
【0042】
また、全ての凹面鏡Mは、それぞれの外周で、いずれもy=tで示す直線と接している。そして、
図6に示す複数の凹面鏡M
i(i≧0)の外周のx座標は、いずれもその外側に隣接する凹面鏡M
i+1の内周のx座標と一致している。すなわち、これら複数の凹面鏡Mで構成される複合鏡11は、y軸方向から見て隙間がない。
【0043】
ここで、式(2)で示されるy=fi(x)がy=tで示す直線と接する点aiのx座標をxi(xi>0)とする。この点aiからx軸に降ろした垂線は、x軸と点bi+1で交差する。この点bi+1は、y=fi+1(x)がx軸と交差する点である。
【0044】
また、
図6に示す複数の凹面鏡Mのうち、凹面鏡M
0は内周がなく、それ以外の凹面鏡M
i(i≧1)の内周は、y座標が0である。
【0045】
上述したとおり、y=fi(x)は、点ai(xi,t)を通るので、式(2)にこれを代入してxiをp,yi,tで表すと次の式(3)になる。
【0046】
【数3】
また、上述したとおり、y=f
i+1(x)は、点b
i+1(x
i,0)を通り、焦点P(0,p)を有する。点b
i+1(x
i,0)と、焦点P(0,p)との距離は、√(x
i
2+p
2)である。それゆえ、y=f
i+1(x)における準線は次の式(4)で示される。
【0047】
【数4】
この準線のy座標と、焦点Pのy座標との中点が、y=f
i+1(x)とy軸とが交差する点のy座標であるy
i+1に等しいから、y
i+1は以下の式(5)で示される。
【0048】
【数5】
この式(5)に式(3)を適用すると、y
iについての漸化式である次の式(6)が得られる。
【0049】
【数6】
上述した通り、y
0=0を式(6)に代入することにより、y
0、y
1、…、y
i、y
i+1、…が得られる。そして、これらを式(2)に代入することにより、凹面鏡Mを示す関数f
0(x)、f
1(x)、…、f
i(x)、f
i+1(x)、…がそれぞれ定まる。これら複数の凹面鏡Mは、光軸Iに沿って-y方向に進む電磁波を反射して焦点Pに集める。
【0050】
以上、説明した通り、検査システム9に備えられた4つの検査装置1は、焦点距離が異なる複数の凹面鏡Mを光軸I、及び焦点Pのそれぞれが重なるように配置した複合鏡11を有する。この複合鏡11は、
図6に示す例では、光軸Iに沿った厚みがpよりも薄いtであるが、光軸Iに平行な電磁波を受光したときに、そのx座標がどこであっても、それらを焦点Pに集めることができる。したがって、本発明にかかる検査装置1は、複合鏡11を用いない場合に比べて小さくなる。
【0051】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさ及び配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。したがって、本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【0052】
<変形例>
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例は組み合わされてもよい。
【0053】
<1>
上述した実施形態において、光学系12は、複合鏡11で集められた電磁波をコリメート化して検知器13へ導く放物面鏡であったが、他の構成であってもよい。例えば、光学系12は、ポリゴン鏡であってもよい。
【0054】
図7は、光学系12にポリゴン鏡を用いた検査装置1の例を示す図である。
図7に示す光学系12は、例えば、四角錐のポリゴン鏡であり、軸Jを中心に回転することで、Z軸方向(x軸方向)に複合鏡11を走査する。複合鏡11で反射した電磁波は、光学系12でさらに反射し、放物面鏡14でさらに反射して検知器13に導かれる。
【0055】
<2>
上述した実施形態において、複合鏡11はy軸方向から見て隙間がないように構成されていたが、焦点Pから見て隙間がなければよい。
【0056】
図8は、焦点Pから見て隙間がない複合鏡11の例を示す図である。
図8に示す複合鏡11は、xy平面において、焦点Pから凹面鏡Mの外周上の点へ伸ばした直線と、x軸とが交差する点は、その凹面鏡Mの外側に配置される凹面鏡Mの内周上の点である。この構成であっても、-y方向に進む電磁波は、複数の凹面鏡Mで反射されて焦点Pに集まる。そして、焦点Pから見て複合鏡11に隙間はないので、集められる電磁波は離散しない。
【0057】
<3>
上述した実施形態において、複数の凹面鏡Mの曲面形状は、互いに異なるxy平面の関数f0(x)、f1(x)、…、fi(x)、fi+1(x)、…により定まっていたが、共通の関数f(x)により定まってもよい。
【0058】
図9は、一つの関数で表される複数の凹面鏡Mの形状の例を示す図である。
図9に示す複数の凹面鏡Mは、一つの関数f(x)をy軸方向に沿ってtごとに切断した形状を有する。これら複数の凹面鏡Mは、いずれも下端がx軸に接するように平行移動した配置となっている。
【0059】
この場合、複数の凹面鏡Mのいずれもが、-y方向に入射する電磁波をその内周で反射して焦点P(0,p)に導き、また、その外周で反射して点Pt(0,p+t)に導く。
【0060】
例えば、複合鏡11のうち、x座標がxiの点は、凹面鏡Miの外周上と凹面鏡Mi+1の内周上に存在する。これらの点の各凹面鏡Mにおける傾きは、それぞれ上述したy=f(x)上のx座標がxiの点における接線Tの傾きと一致する。したがって、これらの点において-y方向に入射する電磁波は、接線Tに沿って配置された平面鏡によって反射される方向に反射される。
【0061】
法線Nは、x座標がx
iの点において、接線Tに垂直な線である。
図9に示す入射角と反射角とは等しく、いずれも角度Φである。そして、角度Φを2倍した角度の余角は、x軸と上述した反射方向とが成す角度θである。したがって、角度Φと角度θとの関係は、以下の式(7)で表される。
【0062】
【数7】
また、角度θは、p,x
iにより以下の式(8)で表される。
【0063】
【数8】
上述したx
iは全てのx(x≧0)で成り立つ。また、上述した法線Nの傾きは-tan(θ+Φ)である。法線Nと接線Tとは直交し、接線Tの傾きは上述した関数f(x)の1次微分に等しい。したがって、この1次微分は、還元公式により以下の式(9)で表される。
【0064】
【数9】
この式(9)に式(7)、式(8)を適用し、x
iをxに置き換えると、以下の式(110)で表される常微分方程式が得られる。
【0065】
【数10】
この式(10)を、xについて積分すると、以下の式(11)で表される通り、微分方程式の解が得られる。なお、式(11)におけるc
1は積分定数である。
【0066】
【数11】
この式(11)に対して、上述した点を通ることによる境界条件を満たすように積分定数c
1を決めると関数f(x)が定まる。
【0067】
この場合、複合鏡11は、厚みがtであっても、-y方向に放射される電磁波を受光したときに、そのx座標がどこであっても、それらを焦点Pから焦点Ptまでの間に集めることができる。
【符号の説明】
【0068】
1…検査装置、11…複合鏡、12…光学系、13…検知器、14…放物面鏡、9…検査システム。