(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025036846
(43)【公開日】2025-03-17
(54)【発明の名称】判定回路、電源システム、直流配電システム、起動方法及び起動停止方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20250310BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20250310BHJP
【FI】
H02J3/38 110
H02J3/00 170
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023143440
(22)【出願日】2023-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(74)【代理人】
【識別番号】100231038
【弁理士】
【氏名又は名称】正村 智彦
(72)【発明者】
【氏名】加茂 章太郎
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AA03
5G066AA09
5G066AB02
5G066HB06
5G066KA01
5G066LA08
(57)【要約】
【課題】発電設備の不要な運転による損失を低減するとともに、発電設備の発電機会の喪失を低減する。
【解決手段】発電設備20と電力系統10との間に介在される電力変換器30に組み込まれる判定回路40であって、計測された発電設備20の計測電圧Vpv及び発電設備20が起動するために必要な電圧である起動電圧Vrefを取得する電圧取得部41と、発電設備20が停止している状態において、計測電圧Vpvが起動電圧Vrefよりも大きい状態が、所定の判定時間を継続したことに基づいて、発電設備20が起動可能かどうかを判定する起動可能判定部43とを備え、起動可能判定部43は、判定時間を継続したと判定した場合に、発電設備20を起動させる起動信号S1を出力し、判定時間を継続していないと判定した場合に、判定時間をより長い判定時間に変更した後、変更後の判定時間に基づいて発電設備20が起動可能かどうかを判定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電設備と電力系統との間に介在される電力変換器に組み込まれる判定回路であって、
計測された前記発電設備の計測電圧及び前記発電設備が起動するために必要な電圧である起動電圧を取得する電圧取得部と、
前記発電設備が停止している状態において、前記計測電圧が前記起動電圧よりも大きい状態が、所定の判定時間を継続したことに基づいて、前記発電設備が起動可能かどうかを判定する起動可能判定部とを備え、
前記起動可能判定部は、
前記判定時間を継続したと判定した場合に、前記発電設備を起動させる起動信号を出力し、
前記判定時間を継続していないと判定した場合に、前記判定時間をより長い判定時間に変更した後、変更後の判定時間に基づいて前記発電設備が起動可能かどうかを判定する、判定回路。
【請求項2】
長さが異なる複数の前記判定時間を格納する判定時間格納部をさらに備え、
前記起動可能判定部は、前記判定時間格納部から複数の判定時間を取得するものであり、前記判定時間を継続していないと判定した場合に、前記判定時間よりも長い判定時間に変更した後、前記判定時間を継続したかどうかを判定する、請求項1に記載の判定回路。
【請求項3】
前記発電設備の発電を継続させる発電継続時間を前記判定時間に応じて調整する発電継続時間調整部をさらに備える、請求項1に記載の判定回路。
【請求項4】
計測された前記発電設備の計測電力及び前記発電設備を停止させる基準の電力である停止基準電力を取得する電力取得部と、
前記計測電力が前記停止基準電力未満となる前記発電継続時間での時間割合を演算する時間割合演算部と、
前記時間割合の設定値である時間割合設定値を取得する時間割合設定値取得部と、
前記発電設備が発電している状態において、前記時間割合と前記時間割合設定値とを比較して、前記発電設備を停止させる停止信号を出力するかどうかを判定する停止信号出力判定部とをさらに備える、請求項3に記載の判定回路。
【請求項5】
前記発電設備が停止した場合における前記時間割合に基づいて、前記判定時間を調整する判定時間調整部をさらに備え、
前記発電設備が停止して前記発電設備が起動可能かどうかを再び判定する場合に、前記起動可能判定部は、前記判定時間調整部により調整された判定時間を最初に用いる、請求項4に記載の判定回路。
【請求項6】
電力系統に給電する発電設備と、
前記発電設備と前記電力系統との間に介在される電力変換器と、
前記電力変換器に組み込まれる請求項1乃至5の何れか一項に記載の判定回路と、を備える電源システム。
【請求項7】
直流電力を出力して、電力系統に給電する発電設備と、
前記発電設備に接続されたDCDCコンバータと、
前記DCDCコンバータ及び前記電力系統との間に介在されるACDCコンバータと、
前記DCDCコンバータに組み込まれる請求項1乃至5の何れか一項に記載の判定回路と、を備える直流配電システム。
【請求項8】
発電設備を起動させる起動方法であって、
計測された前記発電設備の計測電圧及び前記発電設備が起動するために必要な電圧である起動電圧を取得し、
前記発電設備が停止している状態において、前記計測電圧が前記起動電圧よりも大きい状態が、所定の判定時間を継続した場合に、前記発電設備を起動させ、
前記判定時間を継続していないと判定した場合に、前記判定時間をより長い判定時間に変更した後、変更後の判定時間に基づいて前記発電設備が起動可能かどうかを判定する、起動方法。
【請求項9】
発電設備を起動及び停止させる起動停止方法であって、
前記発電設備が停止している状態において、
計測された前記発電設備の計測電圧及び前記発電設備が起動するために必要な電圧である起動電圧を取得し、
前記計測電圧が前記起動電圧よりも大きい状態が、所定の判定時間を継続した場合に、前記発電設備を起動させ、
前記判定時間を継続していないと判定した場合に、前記判定時間をより長い判定時間に変更した後、変更後の判定時間に基づいて前記発電設備が起動可能かどうかを判定し、
前記発電設備が発電している状態において、
前記発電設備の発電を継続させる発電継続時間を前記判定時間に応じて調整し、
計測された前記発電設備の計測電力及び前記発電設備を停止させる基準の電力である停止基準電力を取得し、
前記計測電力が前記停止基準電力未満となる前記発電継続時間での時間割合を演算し、
前記時間割合の設定値である時間割合設定値を取得し、
前記時間割合と前記時間割合設定値とを比較して、前記発電設備を停止させる停止信号を出力するかどうかを判定する、起動停止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、判定回路、電源システム、直流配電システム、発電設備の起動方法及び発電設備の起動停止方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電力系統に連系された発電設備が起動可能かどうかを判定する判定回路が提案されている。例えば特許文献1に示すように、発電設備である太陽電池をパワーコンディショナにより連系させた太陽光発電システムにおいて、太陽電池の出力電圧に基づいてシステムを起動させるかどうかを判定する判定回路が挙げられる。
【0003】
この種の判定回路は、太陽電池の出力電圧を検出するとともに、直前にシステム停止した時の開放電圧に判定基準マージンを付加した開放電圧を記憶している。そして、判定回路は、太陽電池の出力電圧と開放電圧とを比較し、太陽電池の出力電圧が開放電圧よりも大きい状態が所定時間継続した場合に、又は、太陽電池の出力電圧が予め設定された開放電圧よりも大きい場合に起動信号を出力する。これにより、開放電圧が変動したとしても、判定回路は、直前にシステム停止した時の開放電圧を用いて起動可能かどうかを判定するので、太陽電池の使用状況に応じてシステムを起動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、直前にシステム停止した時の開放電圧は、日射や気温などの条件によって変化する一方、判定に用いる所定時間は変更されていないので、上記の判定回路では、適切な判定をすることができなくなる可能性がある。例えば、所定時間を経過するよりも前の時間で太陽電池の発電ができる場合であっても、所定時間を変更せずに判定が行われるので、システムを起動することができず、太陽電池の発電機会を喪失する可能性がある。
【0006】
また、例えば直前にシステム停止した時の開放電圧が低い場合では、太陽電池による発電があまり期待できない。この場合、所定時間を変更せずに判定を行ってシステムを起動させると、太陽電池の発電よりも太陽電池の運転に伴う損失の方が大きい状態となってしまい、システムを無駄に起動させてしまう。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、発電設備の不要な運転による損失を低減するとともに、発電設備の発電機会の喪失を低減することを主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る判定回路は、発電設備と電力系統との間に介在される電力変換器に組み込まれる判定回路であって、計測された前記発電設備の計測電圧及び前記発電設備が起動するために必要な電圧である起動電圧を取得する電圧取得部と、前記発電設備が停止している状態において、前記計測電圧が前記起動電圧よりも大きい状態が、所定の判定時間を継続したことに基づいて、前記発電設備が起動可能かどうかを判定する起動可能判定部とを備え、前記起動可能判定部は、前記判定時間を継続したと判定した場合に、前記発電設備を起動させる起動信号を出力し、前記判定時間を継続していないと判定した場合に、前記判定時間をより長い判定時間に変更した後、変更後の判定時間に基づいて前記発電設備が起動可能かどうかを判定することを特徴とする。
【0009】
このような構成であれば、発電設備が停止している状態において、計測電圧が起動電圧よりも大きい状態(以下、起動可能状態という)が、所定の判定時間継続していない場合には、発電設備が起動できないと判定されることとなる。この場合、判定時間をより長い判定時間に変更した後、変更後の判定時間に基づいて発電設備が起動可能かどうかを判定するので、発電設備の起動を遅らせることができる。その結果、発電設備の発電が期待できる状態で発電設備を起動させることができるので、発電設備の不要な運転による損失を低減することができる。
また、起動可能状態が所定の判定時間継続したと判定された場合には発電設備が起動するので、発電できるときに発電設備を起動することができ、発電設備による発電機会の喪失を低減することができる。
【0010】
前記判定回路の具体的な態様としては、長さが異なる複数の前記判定時間を格納する判定時間格納部をさらに備え、前記起動可能判定部は、前記判定時間を経過していないと判定した場合に、前記判定時間格納部から前記判定時間よりも長い判定時間を取得した後、前記判定時間を経過したかどうかを判定するものが挙げられる。
【0011】
ここで、判定時間の大小は、発電設備の発電を継続させる発電継続時間の大小と関連している。具体的には、長い判定時間に基づいて発電設備が起動した場合は、発電設備による発電が期待できない場合であるので、長時間の発電を継続させることが難しい。一方、短い判定時間に基づいて発電設備を起動させた場合は、発電設備による発電が期待できる場合であるので、長時間の発電を継続できる可能性が高まる。
そこで、前記判定回路は、前記発電設備の発電を継続させる発電継続時間を前記判定時間に応じて調整する発電継続時間調整部をさらに備えることが望ましい。
このような構成であれば、判定時間の大小に基づいて発電継続時間が調整されるので、発電設備の不要な運転による損失を低減することができる。
【0012】
計測された前記発電設備の計測電力及び前記発電設備を停止させる基準の電力である停止基準電力を取得する電力取得部と、前記計測電力が前記停止基準電力未満となる前記発電継続時間での時間割合を演算する時間割合演算部と、前記時間割合の設定値である時間割合設定値を取得する時間割合設定値取得部と、前記発電設備が発電している状態において、前記時間割合と前記時間割合設定値とを比較して、前記発電設備を停止させる停止信号を出力するかどうかを判定する停止信号出力判定部とをさらに備えることが挙げられる。
計測電力が停止基準電力未満である場合、発電設備を起動させても、発電設備による発電よりも発電設備の運転に伴う運転損失が発生してしまう。そこで、上記のような構成であれば、運転損失が発生する発電継続時間での時間割合に基づいて、停止信号を出力するかどうかが判定されるので、発電設備を停止させるタイミングを調整することができ、不要な運転による損失を低減することができる。
【0013】
前記判定回路は、前記発電設備が停止した場合における前記時間割合に基づいて、前記判定時間を調整する判定時間調整部をさらに備え、前記発電設備が停止して前記発電設備が起動可能かどうかを再び判定する場合に、前記起動可能判定部は、前記判定時間調整部により調整された判定時間を最初に用いることが挙げられる。
このような構成であれば、発電設備が停止した場合の時間割合に基づいて判定時間が調整されるので、停止後の発電設備を再度起動させる場合に、当該発電設備による発電が期待できるかどうかに応じて、判定時間を調整することができる。そして、起動可能判定部は、調整後の判定時間を最初に用いて起動の判定をするので、再度起動する場合での発電機会の喪失及び不要な運転による損失を低減することができる。
【0014】
また、電源システムは、電力系統に給電する発電設備と、前記発電設備と前記電力系統との間に介在される電力変換器と、前記電力変換器に組み込まれる前記判定回路とを備えるものが挙げられる。
このような構成であれば、上記の判定回路と同様の作用効果を得ることができる。
【0015】
電源システムの中でも特に直流配電システムでは、発電設備の運転に伴う損失が大きい場合であっても、発電設備の電圧が所定の基準値よりも大きい場合には、発電設備の運転が継続してしまうので、不要な運転による損失が発生しやすい。そのため、上記の判定回路と同様の作用効果を得るためには、電源システムは直流配電システムであることが好ましく、当該直流配電システムの具体的な態様としては、直流電力を出力して、電力系統に給電する発電設備と、前記発電設備に接続されたDCDCコンバータと、前記DCDCコンバータ及び前記電力系統との間に介在されるACDCコンバータと、前記DCDCコンバータに組み込まれる前記判定回路とを備えるものが挙げられる。
【0016】
さらに、発電設備を起動させる起動方法は、計測された前記発電設備の計測電圧及び前記発電設備が起動するために必要な電圧である起動電圧を取得し、前記発電設備が停止している状態において、前記計測電圧が前記起動電圧よりも大きい状態が、所定の判定時間を経過した場合に、前記発電設備を起動させ、前記判定時間を経過していないと判定した場合に、前記判定時間をより長い判定時間に変更した後、変更後の判定時間に基づいて前記発電設備が起動可能かどうかを判定する方法が挙げ有れる。
このような構成であれば、上記の判定回路と同様の作用効果を得ることができる。
【0017】
その上、発電設備を起動及び停止させる起動停止方法は、前記発電設備が停止している状態において、計測された前記発電設備の計測電圧及び前記発電設備が起動するために必要な電圧である起動電圧を取得し、前記計測電圧が前記起動電圧よりも大きい状態が、所定の判定時間を経過した場合に、前記発電設備を起動させ、前記判定時間を経過していないと判定した場合に、前記判定時間をより長い判定時間に変更した後、変更後の判定時間に基づいて前記発電設備が起動可能かどうかを判定し、前記発電設備が発電している状態において、前記発電設備の発電を継続させる発電継続時間を前記判定時間に応じて調整し、計測された前記発電設備の計測電力及び前記発電設備を停止させる基準の電力である停止基準電力を取得し、前記計測電力が前記停止基準電力未満となる前記発電継続時間での時間割合を演算し、前記時間割合の設定値である時間割合設定値を取得し、前記時間割合と前記時間割合設定値とを比較して、前記発電設備を停止させる停止信号を出力するかどうかを判定する方法が挙げられる。
このような構成であれば、上記の判定回路と同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
このように構成した本発明によれば、発電設備の不要な運転による損失を低減するとともに、発電設備の発電機会の喪失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態における電源システムの構成を示す模式図である。
【
図2】同実施形態における判定回路の機能ブロックを示す模式図である。
【
図3】同実施形態における太陽電池の起動及び停止のフローチャートである。
【
図4】同実施形態における太陽電池の起動における時系列を表す図である。
【
図5】従来例における(a)太陽電池の停止のシミュレーション結果、(b)太陽電池の起動のシミュレーション結果である。
【
図6】特許文献1における(a)太陽電池の停止のシミュレーション結果、(b)太陽電池の起動のシミュレーション結果である。
【
図7】特許文献1における(a)太陽電池の停止のシミュレーション結果、(b)太陽電池の起動のシミュレーション結果である。
【
図8】本実施形態における(a)太陽電池の停止のシミュレーション結果、(b)太陽電池の起動のシミュレーション結果である。
【
図9】他の実施形態における太陽電池の起動及び停止のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る判定回路の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し、又は、誇張して模式的に描かれている場合がある。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0021】
<装置構成>
本実施形態における電源システム100は、
図1に示すように、発電設備20から電力変換器30を介して電力系統10へと給電を行うものである。本実施形態において電源システム100は、電力変換器30を構成する第1の電力変換器31及び第2の電力変換器32が直流母線Lによって電気的に接続されており、第1の電力変換器31は、発電設備20と直流母線Lとの間の電力融通を行うとともに、第2の電力変換器32は、電力系統10と直流母線Lとの間の交流直流変換及び電力融通を行う、いわゆる直流配電システムである。なお、この直流配電システムは、需要家が直流母線Lに直流機器を任意で追加して接続できるように構成される。
【0022】
具体的に電源システム100は、電力系統10に給電する発電設備20と、発電設備20から給電された電力を変換する電力変換器30と、電力変換器30に組み込まれる判定回路40とを備える。以下、各部について説明する。
【0023】
発電設備20は、例えば太陽電池であり、太陽光の日射量又は気温に応じて直流電力を給電するものである。なお、発電設備20は、太陽電池に限られず、例えば風力発電といった再生可能エネルギー発電であってもよい。
【0024】
電力変換器30は、発電設備20と電力系統10との間に介在されるものである。
本実施形態において、第1の電力変換器31は、太陽電池である発電設備20から給電される直流電圧を昇圧又は降圧するDCDCコンバータ31である。また、第2の電力変換器32は、ACDCコンバータ32であり、ACDCコンバータ32は、直流母線Lに流れる直流電力を交流電力に変換して、その交流電力を電力系統10に融通するとともに、電力系統10に流れる交流電力を直流電力に変換して、その直流電力を直流母線Lに融通するものである。
【0025】
そして判定回路40は、発電設備20の電圧又は電力に基づいて、DCDCコンバータ31を制御するものである。本実施形態において、判定回路40は、DCDCコンバータ31に組み込まれた制御装置(不図示)の回路を構成する。ここで、判定回路40を構成する制御装置は、CPU、メモリ、入出力インターフェイス等を備えた、汎用乃至専用のコンピュータであり、そのメモリに記憶させた所定のプログラムに従ってCPUや周辺機器を共同させることにより、
図2に示すような機能を発揮する。
【0026】
具体的に、発電設備20が停止している状態において、判定回路40は、
図2に示すように、電圧を取得する電圧取得部41と、判定時間を格納する判定時間格納部42と、発電設備20が起動可能かどうかを判定する起動可能判定部43とを備える。また、発電設備20が起動している状態において、判定回路40は、
図2に示すように、発電設備20が発電を継続する発電継続時間調整部44と、電力を取得する電力取得部45と、発電継続時間における時間割合Prを演算する時間割合演算部46と、時間割合の設定値である時間割合設定値を取得する時間割合設定値取得部47と、発電設備20が停止可能かどうかを判定する停止信号出力判定部48と、判定時間を調整する判定時間調整部49とを備える。以下、判定回路40の各機能について詳述する。
【0027】
電圧取得部41は、計測された発電設備20の計測電圧Vpv、及び、発電設備20が起動するために必要な電圧である起動電圧Vrefを取得するものである。具体的には、発電設備20の出力側に設けられた電圧計(不図示)が電圧を計測し、電圧取得部41は、当該電圧計から計測された電圧を取得して、計測電圧Vpvとしている。また本実施形態において、電圧取得部41は、例えばユーザからの入力により、発電設備20の開放電圧の仕様値を取得し、当該仕様値を起動電圧Vrefとしている。なお、電圧取得部41は、ユーザからの入力によらずとも、予め起動電圧Vrefを記憶していてもよい。また、起動電圧Vrefは発電設備20の開放電圧の仕様値に限られず、その他の値であってもよい。
【0028】
判定時間格納部42は、発電設備20が起動可能かどうかを判定する判定時間を格納するものである。判定時間格納部42は、長さが異なる複数の判定時間を格納しており、本実施形態では、3つの判定時間(Δt1、Δt2、Δt3)を格納している。ここで、Δt1、Δt2及びΔt3は、Δt1<Δt2<Δt3の大小関係を満たすものであり、当該大小関係を満たすのであれば、Δt1、Δt2及びΔt3は、変更可能に構成されていてもよい。なお、判定時間格納部42が格納する判定時間は3つに限られない。
【0029】
起動可能判定部43は、発電設備20が停止している状態において、計測電圧Vpvが起動電圧Vrefよりも大きい状態が、所定の判定時間を継続したことに基づいて、発電設備20が起動可能かどうかを判定するものである。具体的に起動可能判定部43は、判定時間を継続したと判定した場合に、発電設備20を起動させる起動信号S1を出力する。一方、起動可能判定部43は、判定時間を継続していないと判定した場合、判定時間をより長い判定時間に変更した後、変更後の判定時間に基づいて発電設備20が起動可能かどうかを判定する。
【0030】
起動可能判定部43は、電圧取得部41から計測電圧Vpv及び起動電圧Vrefを取得し、判定時間格納部42から長さが異なる複数の判定時間を取得する。本実施形態では、起動可能判定部43は、判定時間格納部42からΔt1、Δt2及びΔt3を取得する。
【0031】
そして、起動可能判定部43は、計測電圧Vpvが起動電圧Vrefよりも大きい状態(以下、起動可能状態という)が判定時間Δt1を継続したかどうかを判定する。起動可能判定部43は、起動可能状態がΔt1を継続したと判定した場合、発電設備20を起動させる起動信号S1を出力して、DCDCコンバータ31を制御する。
【0032】
一方、起動可能判定部43は、起動可能状態が判定時間Δt1を継続していないと判定した場合、判定時間をΔt2に変更した後、起動可能状態が判定時間Δt2を継続したかどうかをΔt1の継続判定と同様の方法で判定する。そして、起動可能判定部43は、起動可能状態が判定時間Δt2を継続していないと判定した場合、判定時間を判定時間Δt3に変更した後、起動可能状態が判定時間Δt3を継続したかどうかをΔt1の継続判定と同様の方法で判定する。
【0033】
発電継続時間調整部44は、判定時間に応じて発電継続時間を調整するものである。具体的には、短い判定時間で発電設備20が起動された場合、発電設備20による発電が期待できるので、発電設備20は、発電継続時間を長くする。一方、長い判定時間で発電設備20が起動された場合、発電設備20による発電が期待できないので、発電設備20は、発電継続時間を短くする。
【0034】
より詳細には、起動可能状態が判定時間Δt1を継続したと判定された場合、発電継続時間調整部44は、発電継続時間をΔt3に調整する。起動可能状態が判定時間Δt2を継続したと判定された場合、発電継続時間調整部44は発電継続時間をΔt2に調整する。起動可能状態が判定時間Δt3を継続したと判定された場合、発電継続時間調整部44は発電継続時間をΔt1に調整する。
【0035】
電力取得部45は、計測された発電設備20の計測電力Ppv、及び、発電設備20を停止させるために必要な電力である停止基準電力Prefを取得するものである。具体的には、発電設備20の出力側に設けられた電力計(不図示)が電力を計測し、電力取得部45は、当該電力計から計測された電力を取得して、計測電力Ppvとしている。また本実施形態において、電力取得部45は、例えばユーザからの入力により、例えば発電設備20の発電定格電力最大値を取得し、当該最大値の例えば1%を停止基準電力Prefとしている。
【0036】
なお、電力取得部45は、ユーザからの入力によらずに、予め停止基準電力Prefを記憶していてもよい。また、停止基準電力Prefは発電設備20の発電定格電力最大値の1%に限られず、その他の値であってもよい。さらに、電力計(不図示)は、DCDCコンバータ31の直流母線L側に設けられていてもよい。
【0037】
時間割合演算部46は、計測電力Ppvが停止基準電力Pref未満となる発電継続時間での時間割合Prを演算するものである。計測電力Ppvが停止基準電力Pref未満である状態では、発電設備20による発電よりも運転に伴う損失の方が大きくなるので、発電設備20による発電が期待できない。従って、本実施形態において、時間割合Prは、発電継続時間において発電設備20による発電が期待できない時間の割合を言う。
【0038】
本実施形態において、時間割合演算部46は、発電継続時間、計測電力Ppv及び停止基準電力Prefを取得することにより、時間割合Prを演算する。具体的に時間割合Prは、以下の数1で演算される。なお、時間割合Prは、その他の数式により演算されていてもよい。数1において、発電電力量は、発電継続時間における計測電力Ppvの合計である。
【0039】
【0040】
なお、所定電力量は以下の数2で表される。
【0041】
【0042】
時間割合設定値取得部47は、例えばユーザの入力により時間割合設定値を取得するものである。本実施形態において、時間割合設定値取得部47は、大きさが異なる複数の時間割合を取得するものであり、より詳細には、3つの時間割合(Pr1、Pr2、Pr3)を取得する。ここで、Pr1、Pr2及びPr3は、Pr1<Pr2<Pr3の大小関係を満たすものであり、当該大小関係を満たすものであれば、Pr1、Pr2及びPr3は、変更可能に構成されていてもよい。
【0043】
停止信号出力判定部48は、発電設備20が起動している状態において、時間割合Prと時間割合設定値とを比較して、発電設備20を停止させる停止信号S2を出力するかどうかを判定するものである。本実施形態において、停止信号出力判定部48は、まず、時間割合Prと時間割合設定値Pr1とを比較する。時間割合Prが時間割合設定値Pr1よりも小さい場合、停止信号出力判定部48は、停止信号S2を出力せず、発電設備20の発電を継続させるようにDCDCコンバータ31を制御する。
【0044】
一方、時間割合Prが時間割合設定値Pr1よりも大きい場合、停止信号出力判定部48は、時間割合Prと時間割合設定値Pr2とを比較する。時間割合Prが時間割合設定値Pr2よりも小さい場合、停止信号出力判定部48は、停止信号S2を出力して、発電設備20を停止するようにDCDCコンバータ31を制御する。時間割合Prが時間割合設定値Pr2よりも大きい場合、停止信号出力判定部48は、時間割合Prと時間割合設定値Pr3とを比較して、停止信号S2を出力し、発電設備20を停止するようにDCDCコンバータ31を制御する。
【0045】
判定時間調整部49は、発電設備20が停止した場合における時間割合Prに基づいて、判定時間を調整するものである。具体的に判定時間調整部49は、発電設備20が停止して発電設備20が起動可能かどうかを再び判定する場合に、起動可能判定部43が最初に用いる判定時間を調整する。
【0046】
より詳細には、時間割合Prと時間割合設定値(Pr1及びPr2)との大小関係がPr1<Pr<Pr2である場合に停止信号S2が出力されると、判定時間調整部49は、判定時間をΔt1に調整して、起動可能判定部43に出力する。また、時間割合Prと時間割合設定値(Pr2及びPr3)との大小関係がPr2<Pr<Pr3である場合に停止信号S2が出力されると、判定時間調整部49は、判定時間をΔt2に調整して、起動可能判定部43に出力する。さらに、時間割合Prと時間割合設定値(Pr3)との大小関係がPr3<Prである場合に停止信号S2が出力されると、判定時間調整部49は、判定時間をΔt3に調整して、起動可能判定部43に出力する。
【0047】
<発電設備の起動方法及び停止方法>
次に本実施形態の判定回路40を用いた発電設備20の起動方法及び停止方法について、
図3及び
図4を参照しつつ説明する。
【0048】
(1)発電設備20の起動方法
まず、発電設備20が停止している状態において、発電設備20が起動可能かどうかを判定回路40が判定する起動方法について説明する。
【0049】
発電設備20が停止している状態において、電圧取得部41は、電圧計(不図示)を介して計測電圧Vpvを常時取得している。また、電圧取得部41は、ユーザからの入力によって起動電圧Vrefを取得する。そして、起動可能判定部43は、電圧取得部41から計測電圧Vpv及びVrefを取得し、判定時間格納部42から所定の判定時間(Δt1、Δt2、Δt3)を取得する。
【0050】
次に、起動可能判定部43は、計測電圧Vpvが起動電圧Vrefよりも大きい状態(起動可能状態)が判定時間Δt1を継続したかどうかを判定する。本実施形態において起動可能判定部43は、
図4に示すように、所定時間t0からt1の間に、起動可能状態が判定時間Δt1を継続したかどうかを判定する。起動可能状態が判定時間Δt1を継続したと起動可能判定部43が判定した場合、起動可能判定部43は、起動信号S1を出力して、DCDCコンバータ31を制御する。また、発電継続時間調整部44は、発電継続時間をΔt3に調整する。
【0051】
一方、起動可能状態が判定時間Δt1を継続していないと起動可能判定部43が判定した場合、起動可能判定部43は、所定時間t1を継続した後に判定時間をΔt2に変更する。その後、起動可能判定部43は、所定時間t1からt2の間に、起動可能状態が判定時間Δt2を継続したかどうかを判定する。起動可能状態が判定時間Δt2を継続したと判定された場合、起動可能判定部43は、起動信号S1を出力して、DCDCコンバータ31を制御する。また、発電継続時間調整部44は、発電継続時間をΔt2に調整する。
【0052】
起動可能状態が判定時間Δt2を継続していないと判定された場合、起動可能判定部43は、所定時間t2を経過した後に判定時間をΔt3に変更する。その後、起動可能判定部43は、所定時間t2からt3の間に、起動可能状態が判定時間Δt3を継続したかどうかを判定する。起動可能状態が判定時間Δt3を継続したと判定された場合、起動可能判定部43は、起動信号S1を出力して、DCDCコンバータ31を制御する。また、発電継続時間調整部44は、発電継続時間をΔt1に調整する。
【0053】
起動可能状態が判定時間Δt3を継続していないと判定された場合、起動可能判定部43は、判定時間をΔt3のまま保持する。所定時間t3以降において、起動可能状態が判定時間Δt3を継続したと判定されるまで、発電設備20の停止状態が継続する。
【0054】
(2)発電設備20の停止方法
次に、発電設備20が起動している状態において、停止信号S2を出力するかどうかを判定回路40が判定する停止方法について説明する。
【0055】
発電設備20が起動している状態において、電力取得部45は、電力計(不図示)を介して、計測電力Ppvを常時取得している。また、電力取得部45は、ユーザからの入力によって停止基準電力Prefを取得する。
【0056】
時間割合演算部46は、発電継続時間、計測電力Ppv及び停止基準電力Prefに基づいて時間割合Prを演算する。具体的に時間割合演算部46は、判定時間Δt1が継続したと判定された場合、発電継続時間Δt3における時間割合Prを演算する。時間割合演算部46は、判定時間Δt2が継続したと判定された場合、発電継続時間Δt2における時間割合Prを演算する。時間割合演算部46は、判定時間Δt3が継続したと判定された場合、発電継続時間Δt1における時間割合Prを演算する。
【0057】
その後、停止信号出力判定部48が、時間割合演算部46から時間割合Prを取得し、時間割合設定値取得部47から時間割合設定値(Pr1、Pr2、Pr3)を取得して、停止信号S2を出力するかどうかを判定する。
【0058】
まず、停止信号出力判定部48は、時間割合Prと時間割合設定値Pr1との大小を比較する。時間割合Prが時間割合設定値Pr1よりも小さい場合、停止信号出力判定部48は、発電設備20の運転を継続するようにDCDCコンバータ31を制御するとともに、時間割合演算部46に対して、発電継続時間Δt3における時間割合Prを演算するよう指令する。
【0059】
一方、時間割合Prが時間割合設定値Pr1よりも大きい場合、停止信号出力判定部48は、時間割合Prと時間割合設定値Pr2との大小を比較する。時間割合Prが時間割合設定値Pr2よりも小さい場合(すなわち、Pr1<Pr<Pr2)、停止信号出力判定部48は、停止信号S2を出力して、発電設備20を停止するようにDCDCコンバータ31を制御する。そして、判定時間調整部49は、判定時間をΔt1に調整して、起動可能判定部43に出力する。
【0060】
時間割合Prが時間割合設定値Pr2よりも大きい場合、停止信号出力判定部48は、時間割合Prと時間割合設定値Pr3との大小を比較する。時間割合Prが時間割合設定値Pr2よりも小さい場合(すなわち、Pr2<Pr<Pr3)、停止信号出力判定部48は、停止信号S2を出力して、発電設備20を停止するようにDCDCコンバータ31を制御する。そして、判定時間調整部49は、判定時間をΔt2に調整して、起動可能判定部43に出力する。
【0061】
時間割合Prが時間割合設定値Pr3よりも大きい場合(すなわち、Pr3<Pr)、停止信号出力判定部48は、停止信号S2を出力する。そして、判定時間調整部49は、判定時間をΔt3に調整して、起動可能判定部43に出力する。
【0062】
<実施例>
次に、様々な判定回路を用いて発電設備である太陽電池を起動又は停止させる場合での時間変化を示すシミュレーション結果を示す。なお、以下に示す何れのシミュレーション結果においても、停止基準電力Prefはすべて同じ値を使用し、
図5及び
図8における起動電圧Vrefは同じ値を使用している。また、以下に示す何れのシミュレーション結果においても、開放電圧は太陽電池の計測電圧を示し、PV側発電電力は、太陽電池が出力する電力を示し、バス側発電電力は、太陽電池が発電する電力を示す。
【0063】
ここで、以下に示す何れのシミュレーション結果においても、バス側電力が停止基準電力Prefを上回ると、太陽電池による発電が太陽電池による運転損失を上回り、太陽電池による発電が期待できる状態であることを示す。一方、電力バス側電力が停止基準電力Prefを下回ると、太陽電池による運転損失の方が太陽電池による発電を上回り、太陽電池による発電が期待できない状態であることを示す。
【0064】
(1)従来の判定回路を用いた太陽電池の起動及び停止
図5は、従来の判定回路を用いて太陽電池を起動又は停止させる場合での時間変化を示すシミュレーション結果である。従来では、判定時間及び発電継続時間をどちらも5分に固定している。ここで、
図5(a)に示すように、太陽電池を停止させる場合に、電力バス側電力が停止基準電力Prefを下回り、太陽電池による発電が期待できない状態となっている。一方、開放電圧が起動電圧Vrefを上回った状態が判定時間(5分)継続するので、発電が期待できない状態であっても太陽電池が起動してしまう(以下、「不要な運転による損失」という。)。その結果、太陽電池を停止させる場合に、25分の不要な運転による損失が発生している。
【0065】
また、
図5(b)に示すように、太陽電池を起動させる場合にも、不要な運転による損失が25分発生している。さらに、
図5(b)では、バス側電力が停止基準電力Prefを上回り、発電が期待できる状態であるにもかかわらず、判定時間を経過していないために太陽電池を起動できない状態が発生している(以下、「発電機会の喪失」という。)。なお、
図5(b)では、発電機会の喪失が5分発生している。従って、合計30分の損失が発生している。
【0066】
(2)特許文献1の判定回路を用いた太陽電池の起動及び停止
図6は、従来の判定回路を用いて太陽電池を起動又は停止させる場合での時間変化を示すシミュレーション結果である。
図6(a)に示すように、太陽電池を停止させる場合に、不要な運転による損失を無くすことはできている。一方、
図6(b)に示すように、判定時間が固定値で調整されないので、30分の発電機会の喪失が発生している。
【0067】
図7は、特許文献1の判定回路において、起動電圧Vrefが
図7における起動電圧Vrefよりも小さい場合でのシミュレーション結果である。この場合、
図7(a)に示すように、太陽電池を停止させる場合、不要な運転による損失を無くすことはできている。一方、
図7(b)に示すように、判定時間が固定値で調整されないので、5分の発電機会の喪失が発生している。さらに、起動電圧Vrefが小さいので、開放電圧が起動電圧Vrefよりも大きくなりやすく、25分の不要な運転による損失が発生している。従って、合計30分の損失が発生している。
【0068】
(3)本実施形態の判定回路40を用いた太陽電池の起動及び停止
図8は、本実施形態の判定回路40を用いて太陽電池を起動又は停止させる場合での時間変化を示すシミュレーション結果である。このシミュレーション結果において、判定時間は1分、発電継続時間は10分としている。この場合太陽電池が停止している状態において、開放電圧が起動電圧Vrefを上回った状態が判定時間(1分)継続すると、太陽電池が起動する。また、発電継続時間(10分)での時間割合に基づいて、太陽電池を停止させている。
【0069】
その結果、
図8(a)に示すように、太陽電池を停止させる場合において、不要な運転による損失が発生するものの、その時間は9分に短縮されている。また、
図8(b)に示すように、発電機を起動させる場合において、不要な運転による損失が発生するものの、その時間は5分に短縮されている。さらに、算出された時間割合に基づいて判定時間が調整されるので、発電機会の喪失は5分に短縮されている。
【0070】
<本実施形態の効果>
本実施形態によれば、発電設備20が停止している状態において、計測電圧Vpvが起動電圧Vrefよりも大きい状態(以下、起動可能状態という)が、所定の判定時間(例えばΔt1)継続していない場合には、発電設備20が起動できないと判定されることとなる。この場合、判定時間Δt1をより長い判定時間(例えばΔt2又はΔt3)に変更した後、変更後の判定時間(例えばΔt2又はΔt3)に基づいて発電設備20が起動可能かどうかを判定するので、発電設備20の起動を遅らせることができる。その結果、発電設備20の発電が期待できる状態で発電設備20を起動させることができるので、発電設備20の不要な運転による損失を低減することができる。
また、起動可能状態が所定の判定時間継続したと判定された場合には、発電設備20が起動するので、発電できるときに発電設備20を起動することができ、発電設備20による発電機会の喪失を低減することができる。
【0071】
さらに、判定時間の大小は、発電設備20の発電を継続させる発電継続時間の大小と関連している。具体的には、長い判定時間(例えばΔt3)に基づいて発電設備20が起動した場合は、発電設備20による発電が期待できない場合であるので、長時間の発電を継続させることが難しい。一方、短い判定時間(例えばΔt1)に基づいて発電設備20を起動させた場合は、発電設備20による発電が期待できる場合であるので、長時間の発電を継続できる可能性が高まる。
そこで本実施形態によれば、発電継続時間調整部44が判定時間の大小に基づいて発電継続時間を調整するので、発電設備20の不要な運転による損失を低減することができる。
【0072】
その上、本実施形態によれば、停止信号出力判定部48が、運転損失が発生する発電継続時間での時間割合Prに基づいて、停止信号S2を出力するかどうかを判定するので、発電設備20を停止させるタイミングを調整することができ、不要な運転による損失を低減することができる。
【0073】
加えて、発電設備20が停止した場合の時間割合Prに基づいて判定時間が調整されるので、停止後の発電設備20を再度起動させる場合に、当該発電設備20による発電が期待できるかどうかに応じて、判定時間を調整することができる。そして、起動可能判定部43は、調整後の判定時間を最初に用いて起動可能の判定をするので、再度起動する場合での発電機会の喪失及び不要な運転による損失を低減することができる。
【0074】
さらに、本実施形態の電源システム100は、直流配電システムであるので、起動可能判定部43は、計測電圧Vpvが起動電圧Vrefを上回った場合であっても、所定の判定時間が継続していないと判定すると起動信号S1を出力しないので、直流配電システムにおける発電設備20の不要な運転による損失を低減することができる。
【0075】
<その他の実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0076】
本実施形態において、起動可能判定部43は、判定時間をΔt1、Δt2及びΔt3と離散的に変更するものであったが、判定時間を連続的に変更するものであってもよい。具体的には、
図5に示すように、起動可能判定部43は、判定時間を演算して変更するものが挙げられる。以下、
図9のフローチャートについて説明する。
【0077】
この実施形態において、判定時間格納部42は、判定時間の演算値Δtv及び判定時間の上限値Δtv’を格納している。発電設備20が停止している状態において、起動可能判定部43は、電圧取得部41から計測電圧Vpv及び起動電圧Vrefを取得し、判定時間格納部42から演算値Δtv及び上限値Δtv’を取得する。そして、起動可能判定部43は、計測電圧Vpvが起動電圧Vrefを上回っている状態(起動可能状態)が演算値Δtv継続しているかどうかを判定する。
【0078】
起動可能状態が演算値Δtv継続していないと判定された場合、起動可能判定部43は、演算値Δtvと上限値Δtv’との大小関係を比較する。演算値Δtvが上限値Δtv’よりも小さい場合、例えば上限値Δtv’の10分の1といった加算時間aを演算値Δtvに加算した後、起動可能状態が加算後の演算値Δtvを継続するかどうかを判定する。演算値Δtvが上限値Δtv’よりも大きい場合、加算時間aを加算せずに、起動可能状態が加算後の演算値Δtvを継続するかどうかを判定する。
【0079】
起動可能状態が演算値Δtv継続したと判定された場合、起動可能判定部43は、起動信号S1を出力して、DCDCコンバータ31を制御する。そして、発電継続時間調整部44は、発電継続時間Δtpを演算する。なお、発電継続時間Δtpは、上限値Δtv’から演算値Δtvを引いた値であり、下限値は加算時間aである。
【0080】
その後、時間割合演算部46は、計測電力Ppvが停止基準電力Pref未満となる発電継続時間Δtpにおける時間割合Prを演算する。
【0081】
そして、停止信号出力判定部48は、時間割合演算部46から時間割合Prを、時間割合設定値取得部47から時間割合設定値Pr1を取得して、時間割合Prと時間割合設定値Pr1との大小関係を比較する。時間割合Prが時間割合設定値Pr1よりも小さい場合、停止信号出力判定部48は、発電設備20の運転を継続するようDCDCコンバータ31を制御するとともに、時間割合演算部46に対してPrを再度演算するよう指令する。
【0082】
一方、時間割合Prが時間割合設定値Pr1よりも大きい場合、停止信号出力判定部48は、停止信号S2を出力して、発電設備20を停止するようにDCDCコンバータ31を制御する。
【0083】
その後、判定時間調整部49は、以下の数3により、演算値Δtvを演算する。そして、判定時間調整部49は、演算値Δtvを起動可能判定部43に出力する。そして、発電設備20が起動可能かどうかを判定する場合に、起動可能判定部43は、判定時間調整部49により演算された後の演算値Δtvを用いる。
【0084】
【0085】
本実施形態において、電源システム100は、いわゆる直流配電システムであったが、電源システムの種類は直流配電システムに限られず、例えば交流電源システムであってもよい。
【0086】
本実施形態において、判定回路40は、DCDCコンバータ31に組み込まれるものであったが、DCDCコンバータ31に限られず、例えばパワーコンディショナといったその他の電力変換器に組み込まれていてもよい。
【0087】
本実施形態において、電圧取得部41又は電力取得部45はそれぞれ電圧計又は電力計を介して取得するものであったが、電圧取得部41又は電力取得部45が直接電圧又は電力を検出してもよい。
【0088】
本実施形態において、判定回路40は、判定時間格納部42を備える構成であったが、判定時間格納部42を備えない構成であってもよく、例えば、ユーザが入力した判定時間を起動可能判定部43が直接受け付ける構成としてもよい。
【0089】
本実施形態において、発電継続時間調整部44は、発電継続時間を判定時間であるΔt1、Δt2及び、Δt3の何れかに調整するものであったが、発電継続時間はこれに限られない。例えば、判定時間Δt1で起動可能と判定された場合、発電設備20による発電が期待できるので、発電継続時間調整部44は、発電継続時間をΔt3よりも長い時間に変更してもよい。一方、判定時間Δt3で起動可能と判定された場合、発電設備20による発電が期待できないので、発電継続時間調整部44は、発電継続時間をΔt1よりも短い時間に変更してもよい。
【0090】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0091】
100・・・電源システム
10 ・・・電力系統
20 ・・・発電設備
30 ・・・電力変換器
31 ・・・DCDCコンバータ
32 ・・・ACDCコンバータ
40 ・・・判定回路
41 ・・・電圧取得部
42 ・・・起動可能判定部
43 ・・・起動可能判定部
44 ・・・発電継続時間調整部
45 ・・・電力取得部
46 ・・・時間割合演算部
47 ・・・時間割合設定値取得部
48 ・・・停止信号出力判定部
49 ・・・判定時間調整部
L ・・・直流母線
S1 ・・・起動信号
S2 ・・・停止信号