(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025036880
(43)【公開日】2025-03-17
(54)【発明の名称】情報処理システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/405 20060101AFI20250310BHJP
B41J 2/525 20060101ALI20250310BHJP
【FI】
H04N1/405 510A
B41J2/525
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023143502
(22)【出願日】2023-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白木 聖二
(72)【発明者】
【氏名】水村 政彦
(72)【発明者】
【氏名】三須 長政
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕士郎
(72)【発明者】
【氏名】設樂 沙樹
【テーマコード(参考)】
5C077
【Fターム(参考)】
5C077LL06
5C077NN11
5C077PP20
5C077PP41
5C077PP46
5C077PP68
5C077TT02
(57)【要約】
【課題】注目画素を含む予め定めた領域内の有色画素の数や割合に基づいて注目画素を補正するか否かを制御する方式よりも、粒状感がよい画像を得る。
【解決手段】解像度変換部16は、注目画素から遠いほど小さくなる重みの分布の情報を有する。重み積算部164は、注目画素の周囲の所定の大きさの領域内に含まれる有色画素ごとに、注目画素からその有色画素までの距離に応じた重みをその分布から求め、それら各有色画素の重みの総和を計算する。閾値処理部166は、その総和と予め定めた閾値とを比較し、総和が閾値未満であれば、注目画素の濃度を下げる補正を行い、総和が閾値以上であればその補正を行わない。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
白画素と有色画素とを含む画像データのうち、注目する有色画素である注目画素を含む予め定めた領域の中の、前記注目画素の周囲の有色画素の各々に対して、前記注目画素から遠いほど小さい重みを付与する付与処理を実行し、
前記注目画素の周囲の前記有色画素の各々の重みの総和が閾値未満である場合に、前記注目画素を補正する、
情報処理システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、
0から1までの実数値をとる基準重みであって前記注目画素から遠いほど小さい基準重み、をn乗(nは1以上の整数)したものに基づき、前記注目画素の周囲の前記有色画素の各々に対して付与する、前記注目画素から遠いほど小さい前記重み、を算出し、
前記nを変更することにより、前記注目画素からの遠さに応じた前記重みの減少度合いを変更可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記情報処理システムによる補正後の画像データを印刷する印刷装置で印刷に用いる色ごとに、
白画素と当該色の有色画素とを含む画像データに対して前記付与処理を実行し、
前記注目画素の周囲の前記有色画素の各々の重みの総和を計算し、
計算した重みの総和が閾値未満である場合において、他の色の中に前記重みの総和が閾値以上のものがある場合には、前記注目画素を補正せず、他の色の中に前記重みの総和が閾値以上のものがない場合には、前記注目画素を補正する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記情報処理システムによる補正後の画像データを印刷する印刷装置のドットゲインが大きいほど、前記閾値として小さい値を用いる、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項5】
コンピュータに、
白画素と有色画素とを含む画像データのうち、注目する有色画素である注目画素を含む予め定めた領域の中の、前記注目画素の周囲の有色画素の各々に対して、前記注目画素から遠いほど小さい重みを付与する付与処理を実行し、
前記注目画素の周囲の前記有色画素の各々の重みの総和が閾値未満である場合に、前記注目画素を補正する、
処理を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、二値画像をより高解像度の画像に変換する際に、粒状性のよい出力画像を得る手法が開示されている。この手法では、注目する有色画素を含む予め定めた領域内に占める有色画素の割合に応じて、注目する有色画素に割り当てる白ドットに対する有色ドットの比率を変更する。
【0003】
特許文献1の手法では、予め定めた領域(第1領域という)よりも大きいサイズの第2領域で見た場合に、第2領域内の有色画素の数がほぼ同じであるにもかかわらず、第1領域内の有色画素数の違いで注目画素が補正されるかどうかが切り替わる場合がある。これは濃度むらの原因となる。
【0004】
これに対する対応として、特許文献2に開示された手法では、第1領域内の有色画素の数が所定値以下の場合に、それより広い第2領域内の有色画素の数を調べ、その数が閾値以下の場合は注目する有色画素を孤立点と判定して補正する。その数が閾値より大きい場合は、注目する有色画素を補正しない。
【0005】
特許文献2の方式は、場合によっては大きさが異なる2段階の領域を用いるものの、基本的なアイデアは、注目する有色画素(以下単に「注目画素」と呼ぶ)を含んだ予め定めた領域内の有色画素の数や割合に基づいて注目画素の補正の要否を決める方式である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-149786号公報
【特許文献2】特開2021-114662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
誤差拡散等で二値化された画像をドットゲインが大きい印刷装置で印刷した場合、画像の画素に対応して印字されるドットのサイズが大きくなり、例えば画素より顕著に大きいドットが印字される。このため、周囲の有色画素が注目画素に近いほど、その有色画素のドットは注目画素のドットと重なりやすい。
【0008】
周囲の有色画素のドットの中に注目画素のドットに重なるものがない場合は、注目画素のドットは孤立点として目立ちやすく、粒状感が悪く見える。したがって、このような場合には補正を行う必要性が高い。しかし、領域内の有色画素の数や割合が閾値より大きければ孤立点補正を行わず、小さければ行うという方式では、そのような場合でも、遠い有色画素が領域内に閾値より多く存在すれば、補正が行われない。
【0009】
本発明は、注目画素を含む予め定めた領域内の有色画素の数や割合に基づいて注目画素を補正するか否かを制御する方式よりも、粒状感がよい画像を得ることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、プロセッサを備え、前記プロセッサは、白画素と有色画素とを含む画像データのうち、注目する有色画素である注目画素を含む予め定めた領域の中の、前記注目画素の周囲の有色画素の各々に対して、前記注目画素から遠いほど小さい重みを付与する付与処理を実行し、前記注目画素の周囲の前記有色画素の各々の重みの総和が閾値未満である場合に、前記注目画素を補正する、情報処理システムである。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記プロセッサは、0から1までの実数値をとる基準重みであって前記注目画素から遠いほど小さい基準重み、をn乗(nは1以上の整数)したものに基づき、前記注目画素の周囲の前記有色画素の各々に対して付与する、前記注目画素から遠いほど小さい前記重み、を算出し、前記nを変更することにより、前記注目画素からの遠さに応じた前記重みの減少度合いを変更可能である、ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理システムである。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記プロセッサは、前記画像処理装置による補正後の画像データを印刷する印刷装置で印刷に用いる色ごとに、白画素と当該色の有色画素とを含む画像データに対して前記付与処理を実行し、前記注目画素の周囲の前記有色画素の各々の重みの総和を計算し、計算した重みの総和が閾値未満である場合において、他の色の中に前記重みの総和が閾値以上のものがある場合には、前記注目画素を補正せず、他の色の中に前記重みの総和が閾値以上のものがない場合には、前記注目画素を補正する、ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理システムである。
【0013】
請求項4に係る発明は、前記プロセッサは、前記画像処理装置による補正後の画像データを印刷する印刷装置のドットゲインが大きいほど、前記閾値として小さい値を用いる、ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理システムである。
【0014】
請求項5に係る発明は、コンピュータに、白画素と有色画素とを含む画像データのうち、注目する有色画素である注目画素を含む予め定めた領域の中の、前記注目画素の周囲の有色画素の各々に対して、前記注目画素から遠いほど小さい重みを付与する付与処理を実行し、前記注目画素の周囲の前記有色画素の各々の重みの総和が閾値未満である場合に、前記注目画素を補正する、処理を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1又は5に係る発明によれば、注目画素を含む予め定めた領域内の有色画素の数や割合に基づいて注目画素を補正するか否かを制御する方式よりも、粒状感がよい画像を得ることができる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、注目画素からの遠さに応じた重みの減少度合いを調整することができる。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、多色の画像を取り扱う場合に、注目画素の属する色の画像のみの有色画素を考慮する方法よりも、補正による色のバランスの変化を低減することができる。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、印刷装置のドットゲインによらず同じ閾値を用いる場合と比べて、粒状感がよりよい出力画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】画像処理装置の全体的な機能的構成を例示する図である。
【
図3】領域内の有色画素の配置の例を示す図である。
【
図4】領域内の有色画素の配置の別の例を示す図である。
【
図6】領域内の有色画素の配置の更に別の例を示す図である。
【
図7】解像度変換部の機能的構成を例示する図である。
【
図8】解像度変換部の処理手順を例示する図である。
【
図9】各色の画像とこれらを合成した多色画像における有色画素の配置の例を示す図である。
【
図10】多色画像を処理する場合の閾値処理の手順を例示する図である。
【
図11】重み設定UIを含む画像処理装置の機能的構成を例示する図である。
【
図12】情報処理システムが実装されるコンピュータのハードウエア構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
<全体的な装置構成>
図1に、画像処理装置10の全体的な機能的構成を例示する。画像処理装置10は、例えば、プリンタ、複写機、複合機(すなわち、プリンタ、スキャナ、複写機、ファクシミリ等の機能を併せ持つ多機能装置)等のような印刷機能を持つ装置である。画像処理装置10は、情報処理システム11と画像出力部18とを備える。情報処理システム11は、入力された画像データに対して画像処理等の情報処理を実行する機能モジュールである。画像出力部18は、印刷装置であり、入力された画像データを紙等の記録媒体(以下「用紙」という)に印刷出力する。画像出力部18の印刷方式は特に限定されず、例えば電子写真方式であっても、インクジェット方式であってもよい。
【0022】
情報処理システム11は、画像入力部12、誤差拡散処理部14、解像度変換部16を備える。
【0023】
画像入力部12は、対象となる画像データの入力を受け付ける。画像入力部12は、例えば、原稿を光学的に読み取って電子的な画像データに変換するスキャナである。また、画像入力部12は、パーソナルコンピュータ等の外部の装置で生成され、ネットワーク等を経由して送られてきた画像データのファイルを受け取るものであってもよい。画像データのファイルを受け取った場合、画像入力部12は、そのファイルに含まれる画像データをビットマップ画像へと変換する。
【0024】
また、画像入力部12に入力された画像データと、画像出力部1とで色空間とが異なる場合、画像入力部12は、入力された画像データに対して画像出力部18の色空間に合わせる色変換を行う。例えば、入力された画像データがRGB形式で、画像出力部18がCMYK形式を取り扱う場合、画像入力部12はRGBからCMYKへの変換を行う。
【0025】
したがって、画像入力部12から誤差拡散処理部14に渡される画像データは、画像出力部18の色空間で表現された、多値(例えば各色8ビット)のビットマップ画像データである。
【0026】
誤差拡散処理部14は、画像入力部12から入力された多値画像データに対して公知の誤差拡散処理を施すことにより、その多値画像データを二値画像データへと変換する。例えば、入力された画像データがCMYKの多値画像データである場合、誤差拡散処理部14は、CMYKの各色の多値画像をそれぞれ二値画像データへと変換する。各色の二値画像データは、濃度が0の白画素と、予め定めた濃度の有色画素と、で表される画像である。
【0027】
解像度変換部16は、誤差拡散処理部14から出力された各色の二値画像データを、画像出力部18の解像度の画像データへと変換する。誤差拡散処理部14から出力された各色の二値画像データの解像度は画像入力部12に入力された画像データの解像度と同じである。一方、印刷を行う画像出力部18の解像度は、入力される画像データの解像度よりも高い場合がある。そこで、解像度変換部16は、誤差拡散後の二値画像データに対して解像度の変換を行うのである。
【0028】
以下では、解像度変換部16に入力される画像データ、すなわち誤差拡散処理部14が出力した二値画像データ、の解像度を入力解像度と呼び、解像度変換部16から出力される画像データの解像度を出力解像度と呼ぶ。入力解像度は、画像入力部12に入力された画像データの解像度と同じである。また、出力解像度は、画像出力部18の解像度と同じである。また以下では、解像度変換部16に入力される画像データを入力画像データと呼び、解像度変換部16から出力される画像データを出力画像データと呼ぶ。また入力画像データの画素を入力が外呼び、出力画像データの画素を出力画素と呼ぶ。
【0029】
また、解像度変換部16は、解像度変換の際に、孤立点補正も合わせて行う。孤立点補正は、1画素だけ孤立している有色画素の濃度を下げる補正である。すなわち、解像度変換部16は、入力画像データの中から孤立点に該当する有色画素を見つけると、その有色画素の濃度を下げる補正を行う。
【0030】
解像度変換部16での孤立点補正は、例えば以下のようにして行う。
【0031】
解像度変換部16が1つの入力画素をm×n個(m,nは1以上の整数)の行列状の出力画素に変換することを考える。出力画素の面積は、入力画素の面積の(m×n)分の1である。m又はnのうち少なくとも一方が2以上であれば、出力画像データの解像度が入力画像データの解像度よりも高くなる。例えば、1つの入力画素を2行4列の出力画素群に解像度変換する場合、出力画像データの画素数は入力画像データの画素数の8倍となる。
【0032】
解像度変換部16は、孤立点以外の入力画素については、その入力画素を、その入力画素と同じ値を持つm行n列の出力画素群に変換する。例えば、孤立点でない入力画素が白画素である場合、解像度変換部16は、その入力画素をm×n個の白の出力画素群へと変換する。また孤立点でない入力画素が有色画素である場合、解像度変換部16は、その入力画素をm×n個の有色の出力画素群へと変換する。個々の有色の出力画素の濃度は、入力画素である有色画素の濃度と同じである。したがって、孤立点でない入力画素については、解像度変換では濃度が変わらない。
【0033】
一方、入力画素が孤立点(すなわち孤立した有色画素)であると判定した場合、解像度変換部16は、m行n列の出力画素群のうちの1以上の出力画素を白画素に変えることにより、濃度を下げる。すなわち、孤立点でない有色画素ならばm行n列の有色の出力画素群に変換されるところ、孤立点である有色画素の場合は、m行n列の有色の出力画素群のうち1以上が白画素に置き換えられるので、濃度が下がるのである。なお、孤立点補正において、m行n列の出力画素群のうちのどの画素を白画素に置き換えるのかについては、予め定めたルールに従って決定すればよい。また、本実施形態における孤立点の判定手法については、後で詳しく説明する。
【0034】
解像度変換部16から出力された出力画像データは、画像出力部18に供給される。画像出力部18は、その出力画像データに従って用紙上に画像を出力する。
【0035】
<孤立点判定の方法>
従来、入力画像データ中の注目する有色画素(以下「注目画素」と呼ぶ)が孤立点か否かの判定は、その注目画素の周囲の所定サイズの領域内における有色画素の数に基づいて行われていた。
【0036】
これに対して、本実施形態では、注目画素の周囲の有色画素に対して、注目画素から遠くなるほど値が小さくなる重みを付与し、それら周囲の有色画素の重みの総和に基づいて、注目画素が孤立点かどうかを判定する。ここで重みは、0以上の値である。
【0037】
より詳しくは、本実施形態では、注目画素の周囲の有色画素の重みの総和が予め定めた閾値未満である場合に、その注目画素が孤立点であると判定する。注目画素から遠い有色画素ほど重みが小さい、言い換えれば注目画素から近い有色画素ほど重みが大きい、ので、注目画素の近くに有色画素が多いほど、重みの総和が大きくなりやすく、したがって注目画素が孤立点と判定されにくい。
【0038】
逆に、注目画素の近くに有色画素がない場合は、注目画素は孤立点と判定されやすい。例えば、注目画素から遠くに多くの有色画素があっても、近くには有色画素が全くない場合、印刷結果において、注目画素のドットに周囲の有色画素のドットが全く重なり合わないことがある。このような場合、注目画素は孤立点として目立ちやすいので、孤立点補正の対象とすることが望ましい。
【0039】
このような考え方に基づき、解像度変換部16は、注目画素の周囲の有色画素の重みの総和を計算し、この総和と閾値との比較により、注目画素に対して孤立点補正を行うか否かを判定する。
【0040】
<重み付けの例>
図2に、注目画素の周囲の画素群に対する重み付与の例を示す。
図2は、注目画素200を中心とする7×7画素の領域300内の各画素位置210,220等の重みを示している。この例では、各画素位置(i,j)の重みW
ijは以下の式で計算されている。
W
ij=1/(i
2+j
2)
1/2×3
【0041】
ここで、i及びjは、注目画素200の位置を原点(0,0)としたときの各画素位置のx座標及びy座標である。例えば、x座標は原点より右側が正の値、左側が負の値であり、y座標は原点より上側が正の値、下側が負の値である。この式では、重みWijは注目画素からの距離に反比例しており、比例定数は3である。なお、重みが距離に反比例するという関係、及び比例定数3は、あくまで一例に過ぎない。
【0042】
図2の例では、注目画素200は重みの総和の対象ではないので、注目画素200の位置の重みは0であり、注目画素200の下の隣接画素の画素位置210の重みは3.0000、右下隣の画素の画素位置220の重みは2.1213である。また、領域300内で注目画素200から最も遠い、領域300内の左下隅の画素の画素位置230の重みは0.7071である。
【0043】
図2に示す重み分布を用いた場合の孤立点補正の有無の判定の例を、
図3を用いて説明する。
図3には、注目画素200を中心とする7×7画素の領域300を示している。領域300内の有色画素の重みの総和から注目画素200に補正を行うか否かが判定される。
図3のうち(a)は、領域300の中で、座標(-2,2)に有色画素240が1つだけ存在する例を示し、(b)は座標(-2,0)に有色画素250が1つだけ存在する例を示す。
【0044】
円202は、注目画素200を画像出力部18で印刷したときにできるドットの外周を示す。すなわち、注目画素200を孤立点補正なしで画像出力部18により印刷した場合、その注目画素200の位置には、円202内を有色画素の色のインクで塗りつぶしたドットが用紙上に形成される。同様に円242は有色画素240を画像出力部18で印刷したときにできるドットの外周、円252は有色画素250を画像出力部18で印刷したときにできるドットの外周を示す。この例では、印刷されるドットは入力画像データのドット(すなわち
図3に示す画素とほぼ同じ面積の円)の2倍の半径を持つので、画像出力部18のドットゲインは2である。
【0045】
ドットゲインとは、プリンタの特性の1つであり、入力画像における1つの有色画素(すなわちドット)を、何倍のサイズのドットとして印刷するかを表す倍率である。言い換えれば、ドットゲインは、入力画像のドットのサイズ(例えば半径)に対する、出力されるドットのサイズの比である。ドットゲインが大きいほど、入力画像における有色画素が、用紙上の出力画像では大きいサイズのドットとなる。
【0046】
図3の例では、重み分布は
図2に例示したものを用い、孤立点補正の要否の判定の閾値は1.5であるとする。すなわち、領域300内の有色画素の重みの総和が1.5未満であれば補正するものと判定され、1.5以上であれば補正しないものと判定される。
【0047】
(a)に示す例では、領域300内の有色画素は、有色画素240のみなので、領域300内の有色画素の重みの総和は、有色画素240の重み1.0607と等しく、これは閾値1.5未満である。したがって、注目画素200を補正するものと判定される。
【0048】
これに対して(b)に示す例では、領域300内の有色画素の重みの総和は、有色画素250の重み1.5000と等しく、これは閾値1.5以上である。したがって、注目画素200を補正しないものと判定される。
【0049】
図3から分かるように、(a)に示す例では、円202を外周とする注目画素200のドットは周囲の有色画素240のドット(このドットの外周は円242)と重ならないのに対して、(b)に示す例では注目画素200のドットは周囲の有色画素250のドット(このドットの外周は円252)と重なる。したがって、(a)に示す例の方が(b)に示す例よりも、注目画素200が周囲の有色画素から孤立している度合いが高いといえる。このため、領域300内に有色画素240又は250が1つしかないならば、その有色画素240又は250が注目画素200から遠いほど、注目画素200を補正するものとの判定がなされやすい。
【0050】
図3の例で用いた重み分布(
図2参照)と閾値1.5の組合せはあくまで一例に過ぎない。この組合せでは、ユーザの希望に添った補正ができない場合がある。そのような場合を、
図4を参照して説明する。
【0051】
図4に示す例では、領域300内の座標(-2,2)、(-2,-2)、(2,-2)、(2,2)の4つの位置に4つの有色画素240,260,270,280が存在する。この場合、
図3の例と同じ重み分布と閾値の組合せを用いると、領域300内の重みの総和は1.0607×4=4.2428であり、これは閾値1.5より大きい。したがって、この場合、注目画素200を補正しないと判定されることとなる。
【0052】
ここで、4つの有色画素240,260,270,280を印刷したときのドット等は、いずれも注目画素200のドットと重ならない。この場合、注目画素200の周囲の有色の度合いが高いとみて孤立点補正をしないか、注目画素200のドットと重なるドットがないので孤立点補正をするかは、ユーザの求める画質による。
図4の例で注目画素200に対して孤立点補正を行いたい場合は、重み分布と閾値の組合せを上述の例とは異なるものとする必要がある。このような場合には、例えば、
図5に示す重み分布と閾値1.5の組合せを用いてもよい。この例では、重み分布だけを変えることで、そのようなニーズに対応する。
【0053】
図5に示す重み分布は、次式に従って計算される。
W
ij={1/(i
2+j
2)
1/2}
7×16.98
【0054】
すなわち、
図5の例では、各画素の重みW
ijは、注目画素200からの距離の逆数の7乗に比例定数16.98を掛けたものである。この重みは、距離の7乗に反比例するので、注目画素200から離れるにつれて急激に減少する。この重み分布を用いた場合、
図6に例示するように、注目画素200を中心とする3×3画素の外側の画素群が全て有色画素であっても、それら有色画素についての重みの総和は1.1574である。この総和1.1574は、閾値1.5より小さいので、注目画素200に対して孤立点補正を行うと判定されることとなる。したがって、
図6の例よりも有色画素が少ない
図4の例でも、孤立点補正を行うと判定されることとなる。
【0055】
<解像度変換部の処理>
以上、重み分布と閾値を用いた孤立点補正の要否判定の考え方を説明した。次に、考え方に従った解像度変換部16の内部構成の例を、
図7を参照して説明する。
【0056】
図7に例示する解像度変換部16は、多値化部162、重み積算部164、閾値処理部166を含む。
【0057】
多値化部162は、誤差拡散処理部14から入力される二値画像データの各画素の値を、多値へと変換する。この変換は、重み積算部164で重みと乗算できるように、画素の値を重みと同じ実数値とするためのものである。例えば、二値画像を8ビットの多値に変換する場合、多値化部162は、二値画像の白画素(すなわち値が0)の値は実数値0.0を表す8ビットの値に、二値画像の有色画素(すなわち値が1)の値は実数値での1.0を表す8ビットの値に変換する。すなわち、多値化部162は、0及び1の二値画像を、多ビットではあるが実体的には0.0及び1.0の二値の画像へと変換することとなる。
【0058】
重み積算部164は、多値化部162から出力された多値画像データの各画素を注目画素として、注目画素ごとに、その注目画素の周囲の有色画素の重みの総和を計算する。
【0059】
閾値処理部166は、重み積算部164が計算した重みの総和を閾値と比較することにより、注目画素に対して孤立点補正を行うか否かを決定し、その決定に従って、注目画素に対応する出力を生成する。この出力の生成の際、閾値処理部166は、1つの注目画素を複数の出力画素の行列へと変換する。この作用により、入力画像データが、より高解像度の出力画像データへと変換される。
【0060】
この変換では、閾値処理部166は、孤立点補正を行わない注目画素については、その注目画素の値(すなわち0又は1)と同じ値を持つm×n画素の出力画素群を出力する。すなわち閾値処理部166は、注目画素が白画素ならば、m×n個の白の出力画素群を出力し、注目画素が有色画素ならば、m×nの有色の出力画素群を出力する。また、孤立点補正を行う注目画素については、閾値処理部166は、それら出力画素群のうちいくつかを所定のルールに従って白画素に変更したものを出力する。
【0061】
重み積算部164及び閾値処理部166が実行する処理の手順を
図8に例示する。この説明では、
図3も参照する。
【0062】
図8の手順では、重み積算部164は、入力画像データの中から所定の順序に従って注目画素100を1つ選択する(S10)。次に重み積算部164は、選んだ注目画素100がドット(すなわち有色画素)か否かを判定する(S12)。注目画素100がドットでない場合、すなわち注目画素100が白画素である場合には、閾値処理部166が、その注目画素に対応する出力画素群として、m×n画素の白画素群を出力する(S26)。
【0063】
S12において、注目画素100がドットであると判定した場合、重み積算部164は、内部変数として保持している積算結果の値を0にクリアする(S14)。次に重み積算部164は、注目画素100の周囲の領域300内の画素を所定の順序で調べていき、有色画素を見つけると、その有色画素の位置の重みを重み分布(例えば
図2又は
図5)から求める。そして重み積算部164は、その有色画素の値とその重みを乗算し、得られた乗算結果を積算結果に対して加算する(S16)。次に重み積算部164は、領域300内の全ての画素を調査し終わったか判定し(S18)、未調査の画素がある場合には、S16に戻り、未調査の画素を処理する。
【0064】
S18で全ての画素の調査が終わったと判定した場合、内部変数である積算結果には、領域300内にある有色画素の値とその有色画素の重みとの乗算結果の総和の値が保持されている。有色画素の値は実数値1.0なので、結局のところ、最終的な積算結果は、領域300内の有色画素の重みの総和を表すものとなる。重み積算部164は、この最終的な積算結果を閾値処理部166に渡す。
【0065】
閾値処理部166は、受け取った最終的な積算結果を閾値未満であるかを判定する(S20)。その積算結果が閾値未満である場合(S20の判定結果がYes)、閾値処理部166は、その注目画素に対応する出力画素群として、孤立点補正を施したドット群を出力する(S22)。すなわち、この場合、閾値処理部166は、注目画素が孤立点であると判定し、孤立点補正を施すのである。S22が行われるケースでは注目画素はドット(すなわち有色画素)なので、仮に孤立点補正を施さないならば、閾値処理部166は、m×n画素のドット群を解像度変換の結果として出力する。しかし、S22では孤立点補正を施すので、閾値処理部166は、それらm×n画素のドット群のうち孤立点補正のルールによって定められた所定の1以上のドットを白画素に変換して出力することとなる。これにより、注目画素に対応する出力画素群の濃度が、孤立点補正を行わない場合よりも低くなる。
【0066】
S22では、最終的な積算結果、すなわち重みの総和に応じて、孤立点補正の強度を変えてもよい。すなわち、最終的な積算結果の値が小さいほど、注目画素の周囲の濃度は低いので、孤立点補正により注目画素の濃度がより低くなるよう、出力画素群のうち白画素に変換する画素の数を多くする。
【0067】
S20の判定結果がNo、すなわち最終的な積算結果が閾値以上である場合、閾値処理部166は、注目画素に対応するm×n画素のドット群をそのまま、解像度変換の結果として出力する(S24)。すなわち、この場合は、注目画素に対して孤立点補正は施されない。
【0068】
S22、S24又はS26の後、重み積算部164は、入力画像データの全ての画素についてS10~S26の処理が完了したかを判定する(S28)。この判定の結果がNoであれば、重み積算部164は、S10に戻って、入力画像データの中から次の注目画素を選択し、その注目画素についてS12以降の処理を実行する。
【0069】
S28の判定結果がYesとなると、入力画像データに対する解像度変換の処理が完了する。
【0070】
以上に説明したように、本実施形態では、注目画素からの距離が遠くなるほど小さくなる重みを有色画素に付与し、注目画素の周囲の有色画素群の重みの総和が閾値未満の場合に、その注目画素に対して孤立点補正を行う。この方法は、注目画素の周囲の有色画素の数に基づき孤立点補正の要否を判定する手法と比べて、よりきめの細かい判定を可能とする。
【0071】
<複数色からなる画像についての処理>
図8に示した処理手順は、単色の画像を処理する場合のものであった。これに対して、フルカラー印刷のように複数の色の画像を合成した多色画像の処理では、複数の色の画像を考慮した処理が必要となる。
【0072】
すなわち、多色画像の処理では、ある色の画像の注目画素のドットがその画像内では孤立点であっても、近傍に他の色のドットがある場合がある。このような場合、その注目画素について孤立点補正を行っても、粒状感は変化しない。逆に、このような場合に孤立点補正を行うと、注目点の色と周囲の他の色のドットとのバランスが崩れ、色が異なって見えてしまう。そのような場合の一例を
図9に示す。
【0073】
図9において、画像400Cはシアン色の版の画像の一部分であり、画像400Mは同じ部分についてのマゼンタ色の版である。画像400Cも画像400Mも、誤差拡散処理後の二値画像である。画像400Cは、白画素405と、予め定めた濃度のいくつかのシアン画素410Cから構成されている。画像400Mは、白画素405と、予め定めた濃度のいくつかのマゼンタ画素410Mから構成されている。そして、画像400Aは、画像400Cと画像400Mを合成した多色画像である。
【0074】
ここで、画像400Cの7×7画素のうちの中央のシアン画素410Cを注目画素とし、この注目画素が孤立点であるか否かの判定を行う場合を考える。ここでは、説明を簡潔にするために、注目画素の周囲の3×3画素の領域450内に有色画素が1以上あれば注目画素は孤立点ではなく、1つもなければ注目画素は孤立点であるとする。
図9の例では、シアン版の画像400Cを見ると、注目画素である中央のシアン画素410Cの周囲の領域450内は白画素のみであり、シアン画素は存在しない。したがって、画像400Cのみに着目すると、注目画素は孤立点と判定される。しかし、マゼンタ版の画像400Mを見ると、領域450内には、注目画素の位置の周囲に、マゼンタ画素410Mが2つ存在している。多色画像400Aでは、四隅の画素420はシアンとマゼンタを合成した色である。また中央のシアン画素410C(=注目画素)の左上と右下にマゼンタ画素410Mが存在している。この場合、シアン版の画像400Cのみに基づいて孤立点補正を行って、注目画素のシアン色の濃度を下げてしまうと、近傍のマゼンタ画素410Mとの色のバランスが、元の画像でのバランスと違ったものとなってしまう。
【0075】
そこで、この例では、解像度変換部16は、ある色の注目画素についての孤立点補正の要否を判断する際に、他の色の版における注目画素の周囲の有色画素も考慮に入れる。この場合の解像度変換部16の処理手順は、
図8に示した手順のステップS22を、
図10に示したステップS220~S224に置き換えたものでよい。以下、
図10を参照してこの処理について説明する。
【0076】
この処理手順では、解像度変換部16は、個々の色の版ごとに、
図8の手順(ただしS22を
図10に置き換えたもの)を実行する。各色についての処理は例えば並列に実行され、
図10のステップS220を実行しようとする時点では、すべての版についてS10~S20の処理は終わっているものとする。すなわち、その時点では、各色の画像について、注目画素の周囲の有色画素についての最終的な積算結果(すなわち重みの総和)の計算が済んでいる。
【0077】
S20で、ある色の注目画素の周囲の有色画素についての最終的な積算結果が閾値未満であると判定した場合、解像度変換部16の閾値処理部166は、他の各色について計算済みの最終的な積算結果をそれぞれ閾値と比較する。そして、閾値処理部166は、他の色の最終的な積算結果がすべて閾値未満であるかどうかを判定する(S220)。S220の判定結果がYesの場合、閾値処理部116は、その注目画素に対応する出力画素群として、孤立点補正を施したドット群を出力する(S222)。S220の判定結果がNoの場合、閾値処理部166は、注目画素に対応するm×n画素のドット群をそのまま、解像度変換の結果として出力する(S224)。S222又はS224の後、解像度変換部16は、S28の処理に進む。
【0078】
以上に説明した通り、この例では、注目画素がその注目画素の属する色の画像では孤立点であっても、他の色の画像も考慮に入れると孤立点ではない場合は、その注目画素には孤立点補正は行われない。このような処理により、色バランスの悪化が防がれる。
【0079】
<ユーザによる重み分布の指定>
重み積算部164が用いる重み分布のテーブルは、ユーザの指示に応じて変更できるようにしてもよい。例えば、重みWijを次式で定義し、
Wij={1/(i2+j2)1/2}n×k
この定義式内のパラメータn及びkを、ユーザの指示に応じて変更することにより、多様な重み分布を用意できるようにしてもよい。ここでnは1以上の実数であり、kは正の実数である。n=1、k=1の場合を基準重みとすると、その基準重みのn乗に比例定数kを乗じることにより、多くの重みを生成することができる。なお、ここで例示した基準重みはあくまで一例に過ぎない。
【0080】
この例では、nが大きくなるほど、注目画素200(
図3,
図4参照)からの距離に応じた重みの減少度合いが急になる。領域300内の注目画素200から遠いところに有色画素が多くあっても、注目画素に対して孤立点補正を行いたければ、nの値を大きくすればよい。
【0081】
ここで、nを大きくするだけだと、注目画素200のごく近くに有色画素がある場合でも重みの総和が閾値未満となって、注目画素に対して孤立点補正が行われる可能性がある。このようなことを防ぎたい場合は、比例定数kの値を大きい値に設定すればよい。
【0082】
nとkの値の組合せにより、注目画素200の周囲にある有色画素の分布がどのような場合に孤立点補正が行われ、別のどのような場合に孤立点補正が行われないかが決まる。
【0083】
画像処理装置10の情報処理システム11は、ユーザが希望する画質(例えば粒状感)を実現するために、重み分布の設定を受け付ける重み設定UI(ユーザインタフェース)15を備えていてもよい(
図11参照)。重み設定UI15は、例えば、領域300内の有色画素の分布が異なるいくつかの画像(例えば
図3の(a)、(b)、
図4、
図6に例示した各画像)を画像処理装置10に接続されたディスプレイの画面に表示する。そして、重み設定UI15は、表示した画像ごとに、その画像内の注目画素200に対して孤立点補正を行うか否かの指示を入力する。重み設定UI15は、各画像に対してユーザが入力した指示の組合せに基づき、上述の式におけるn及びkの値を決定する。
【0084】
以上説明したように、この例では、基準重みの分布を一つ用意しておけば、nの値やkの値を変えることで、様々な特性を持った重みの分布を生成することができる。
【0085】
<閾値の選択>
図8の手順のステップS20で重みの総和との比較に用いる閾値を、画像出力部18のドットゲインに応じて切り替えてもよい。例えば、画像出力部18のドットゲインが大きいほど、閾値の値を小さくする。例えば、閾値はドットゲインに反比例させる。解像度変換部16は、このようなドットゲインと閾値の関係を示すルール、関係式又はテーブル等を保持しており、画像出力部18のドットゲインに応じた閾値をそのルール等から求め、S20で用いる。例えば、画像処理装置10が、外部のプリンタのために解像度変換を実行する場合、そのプリンタのドットゲインの情報をネットワーク経由等によりそのプリンタから取得し、そのドットゲインに対応する閾値をルール等から求めて、
図8等の処理手順に用いる。
【0086】
ドットゲインが大きいほど、ドットが大きくなるので、注目画素からより遠く離れた有色画素のドットでも注目画素のドットと重なる。一方、注目画素のドットに周囲の有色画素のドットが重なる場合には、孤立点補正を行わない方が粒状感がよい。これらのことから、ドットゲインが大きくなる程、孤立点補正が行われにくくした方が、粒状感がよくなる。したがって、画像出力部18や外部のプリンタのドットゲインが大きくなる程、孤立点補正が行われにくくするために、S20で用いる閾値を小さくすればよい。
【0087】
以上に説明した実施形態はあくまで例示的なものにすぎず、本発明の技術的思想の範囲内で様々な変形が可能である。例えば、上述の画像処理装置10は、入力された多値画像データを誤差拡散により二値化したが、二値化の手法はこれに限定されない。ディザ法など他の手法で二値化してももちろんよい。
【0088】
また、
図1の例では、画像処理装置10は画像出力部18を有していたが、画像出力部18を備えない構成であってもよい。この場合、画像処理装置10は、外部のプリンタで印刷する画像をホストから受け取り、その画像に対して本実施形態の手法で二値化及び解像度変換(孤立点補正を含む)を行い、その結果得られた画像をそのプリンタに供給してもよい。
【0089】
以上に説明した画像処理装置10の情報処理システム11は、例えば、汎用のコンピュータを用いて構成される。このコンピュータは、例えば、
図12に例示するように、プロセッサ1002、ランダムアクセスメモリ(RAM)等のメモリ(主記憶装置)1004、フラッシュメモリやSSD(ソリッドステートドライブ)、HDD(ハードディスクドライブ)等の不揮発性記憶装置である補助記憶装置1006を制御するコントローラ、各種の入出力装置1008とのインタフェース、ローカルエリアネットワークなどのネットワークとの接続のための制御を行うネットワークインタフェース1010等が、例えばバス1012等のデータ伝送路を介して接続された回路構成を有する。上記実施形態の処理の内容が記述されたプログラムが、ネットワーク等を経由してそのコンピュータにインストールされ、補助記憶装置1006に記憶される。補助記憶装置1006に記憶されたプログラムが、プロセッサ1002によりメモリ1004を用いて実行されることにより、本実施形態の情報処理機構が構成される。また、情報処理システム11は、汎用又は特定目的の画像処理を高速に実行するための画像処理プロセッサ等を備えていてもよい。
【0090】
また、情報処理システム11は、単一のコンピュータにより構成されてもよいし、複数のコンピュータにより構成されてもよい。例えば、情報処理システム11の一部の機能が画像処理装置10の外部の他のコンピュータ、に設けられてもよい。
【0091】
上記各実施形態において、プロセッサとは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。
【0092】
また上記各実施形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサの各動作の順序は上記各実施形態において記載した順序のみに限定されるものではなく、適宜に変更してもよい。
【0093】
(付記)
(((1)))
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
白画素と有色画素とを含む画像データのうち、注目する有色画素である注目画素を含む予め定めた領域の中の、前記注目画素の周囲の有色画素の各々に対して、前記注目画素から遠いほど小さい重みを付与する付与処理を実行し、
前記注目画素の周囲の前記有色画素の各々の重みの総和が閾値未満である場合に、前記注目画素を補正する、
情報処理システム。
(((2)))
前記プロセッサは、
0から1までの実数値をとる基準重みであって前記注目画素から遠いほど小さい基準重み、をn乗(nは1以上の整数)したものに基づき、前記注目画素の周囲の前記有色画素の各々に対して付与する、前記注目画素から遠いほど小さい前記重み、を算出し、
前記nを変更することにより、前記注目画素からの遠さに応じた前記重みの減少度合いを変更可能である、
ことを特徴とする(((1)))に記載の情報処理システム。
(((3)))
前記プロセッサは、
前記画像処理装置による補正後の画像データを印刷する印刷装置で印刷に用いる色ごとに、
白画素と当該色の有色画素とを含む画像データに対して前記付与処理を実行し、
前記注目画素の周囲の前記有色画素の各々の重みの総和を計算し、
計算した重みの総和が閾値未満である場合において、他の色の中に前記重みの総和が閾値以上のものがある場合には、前記注目画素を補正せず、他の色の中に前記重みの総和が閾値以上のものがない場合には、前記注目画素を補正する、
ことを特徴とする(((1)))又は(((2)))に記載の情報処理システム。
(((4)))
前記プロセッサは、
前記画像処理装置による補正後の画像データを印刷する印刷装置のドットゲインが大きいほど、前記閾値として小さい値を用いる、
ことを特徴とする(((1)))~(((3)))のいずれか1項に記載の情報処理システム。
(((5)))
コンピュータに、
白画素と有色画素とを含む画像データのうち、注目する有色画素である注目画素を含む予め定めた領域の中の、前記注目画素の周囲の有色画素の各々に対して、前記注目画素から遠いほど小さい重みを付与する付与処理を実行し、
前記注目画素の周囲の前記有色画素の各々の重みの総和が閾値未満である場合に、前記注目画素を補正する、
処理を実行させるためのプログラム。
【0094】
(((1)))に記載の情報処理システム及び(((5)))に記載のプログラムによれば、注目画素を含む予め定めた領域内の有色画素の数や割合に基づいて注目画素を補正するか否かを制御する方式よりも、粒状感がよい画像を得ることができる。
(((2)))に記載の情報処理システムによれば、注目画素からの遠さに応じた重みの減少度合いを調整することができる。
(((3)))に記載の情報処理システムによれば、多色の画像を取り扱う場合に、注目画素の属する色の画像のみの有色画素を考慮する方法よりも、補正による色のバランスの変化を低減することができる。
(((4)))に記載の情報処理システムによれば、印刷装置のドットゲインによらず同じ閾値を用いる場合と比べて、粒状感がよりよい出力画像を得ることができる。
【符号の説明】
【0095】
10 画像処理装置、11 情報処理システム、12 画像入力部、14 誤差拡散処理部、16 解像度変換部、18 画像出力部、162 多値化部、164 重み積算部、166 閾値処理部。