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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025036899
(43)【公開日】2025-03-17
(54)【発明の名称】ネイルシール
(51)【国際特許分類】
   A45D 29/00 20060101AFI20250310BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20250310BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20250310BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20250310BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20250310BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20250310BHJP
【FI】
A45D29/00
C09J7/38
C09J201/00
C09D201/00
B32B27/40
B32B27/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023143535
(22)【出願日】2023-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】中尾 彩弥子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 祥史
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J038
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK01C
4F100AK25C
4F100AK51C
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100CB00B
4F100EH46
4F100JA05C
4F100JA07C
4F100JB16C
4F100JK06
4F100JK12
4F100YY00C
4J004AB01
4J004FA04
4J038CG141
4J038NA11
4J038PB01
4J040JB09
4J040NA02
(57)【要約】
【課題】爪への密着性と耐傷性とに優れるネイルシールを提供すること。
【解決手段】基材フィルム(A)、前記基材フィルム(A)の一方面に位置する粘着層(B)、及び、前記基材フィルム(A)の他方面に位置するコート層(C)を含み、前記コート層(C)が、ガラス転移温度が20~80℃の範囲である熱可塑性樹脂(c1)及び前記熱可塑性樹脂(c1)以外のウレタン樹脂(c2)を含むものである、ネイルシールによる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム(A)、前記基材フィルム(A)の一方面に位置する粘着層(B)、及び、前記基材フィルム(A)の他方面に位置するコート層(C)を含み、前記コート層(C)が、ガラス転移温度が20~80℃の範囲である熱可塑性樹脂(c1)及び前記熱可塑性樹脂(c1)以外のウレタン樹脂(c2)を含むものである、ネイルシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はネイルシールに関する。
【背景技術】
【0002】
手や足の爪を装飾する手法としてネイルアートがある。従来のネイルアートは一般にマニキュアと呼ばれる、アクリル樹脂等の樹脂や色材、揮発性溶剤等を含有する樹脂溶液を手や足の爪に塗布して装飾する方法が主流であった。しかしながら、マニキュアによる装飾は塗布後に長時間乾燥させる必要がある上、揮発性溶剤の臭気が強い等の問題を抱えていた。
【0003】
マニキュアに代わる手法として、無溶剤型のUV硬化性樹脂を用いたジェルネイルがある。ジェルネイルによる装飾は紫外線光の照射により短時間で硬化すること、無溶剤であるためマニキュアと比較して臭気が低減される等の利点がある。しかしながら、装飾部を爪から除去する際には樹脂硬化物への浸潤性の高い溶剤を使用するため、爪やその周辺の皮膚が傷みやすいという問題があった。
【0004】
近年、より簡便な爪の装飾手法として、爪に樹脂液を塗布するのではなく、爪形状を有するネイルシールを貼付して装飾する手法がある。ネイルシールは一般に粘着層、基材層、コート層等を含む多層構造を有しており、シールを貼るだけで簡単に爪の装飾が可能である、印刷を利用した自由度の高い装飾が可能である、装飾部の除去が比較的容易である等の利点がある。ネイルシールの一例としては、例えば、粘着層、基材層、及び表面保護層がいずれもアクリル樹脂である爪装飾用シールが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-4155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたネイルシールでは爪への密着性と耐傷性とのバランスが十分ではなかった。
【0007】
本発明は、爪への密着性と耐傷性とに優れるネイルシールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、基材フィルム(A)、前記基材フィルム(A)の一方面に位置する粘着層(B)、及び、前記基材フィルム(A)の他方面に位置するコート層(C)を含み、前記コート層(C)が、ガラス転移温度が20~80℃の範囲である熱可塑性樹脂(c1)及び前記熱可塑性樹脂(c1)以外のウレタン樹脂(c2)を含むものである、ネイルシールに関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、爪への密着性と耐傷性とに優れるネイルシールを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について詳しく説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることはなく、様々な修正や変更が加えられてもよいことはいうまでもない。
【0011】
本発明の一実施形態であるネイルシールは、基材フィルム(A)、基材フィルム(A)の一方面に位置する粘着層(B)、及び、基材フィルム(A)の他方面に位置するコート層(C)を含み、コート層(C)が、ガラス転移温度が20~80℃の範囲である熱可塑性樹脂(c1)及び熱可塑性樹脂(c1)以外のウレタン樹脂(c2)を含むものである。
【0012】
基材フィルム(A)は、フィルム状の基材であれば材質は特に限定されず、多種多様なものを用いることができる。特に、爪に装着した際の自然な発色や見た目の高級感を有するネイルシールとなることから、透明樹脂フィルムであることが好ましい。具体的には、例えば、ポリエチレン系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリ塩化ビニル系フィルム、ポリウレタン系フィルム、アクリル系フィルム等が挙げられる。中でも、柔軟性が高く爪への装着が容易であり、かつ、透明性が高く印刷による加飾性にも優れることから、ポリ塩化ビニル系フィルムが好ましい。基材フィルム(A)の厚さは特に限定されないが、爪への密着性と耐傷性とのバランスに優れるネイルシールとなることから20~120μmの範囲であることが好ましい。
【0013】
粘着層(B)は基材フィルム(A)の一方面に位置する。粘着層(B)は基材フィルム(A)に隣接していてもよいし、基材フィルム(A)と粘着層(B)との間にその他の層が存在していてもよい。ネイルシールの厚みが大きくなり過ぎない観点からは、粘着層(B)は基材フィルム(A)に隣接していることが好ましい。
【0014】
粘着層(B)は、爪への接着が可能であれば材質は特に限定されず、多種多様なものを用いることができる。特に、加飾性及び発色に優れるネイルシールとなる観点からは、粘着層(B)として透明樹脂粘着剤を用いることが好ましい。透明樹脂粘着剤の具体例としてはアクリル系樹脂粘着剤が挙げられる。粘着層(B)の厚さは特に限定されないが、爪への密着性と耐傷性とのバランスに優れるネイルシールとなることから5~30μmの範囲であることが好ましい。
【0015】
コート層(C)は、上記基材フィルム(A)の他方面、すなわち、粘着層(B)とは反対側の面に位置する。コート層(C)は基材フィルム(A)に隣接していてもよいし、基材フィルム(A)とコート層(C)との間にその他の層が存在していてもよい。その他の層としては、例えば、ネイルシールに柄や色彩を付与するための加飾層(D)等が挙げられる。加飾層(D)は一枚のフィルムとして設置されてもよいし、基材フィルム(A)上の印刷面として設置されてもよい。ネイルシールの厚みが大きくなり過ぎない観点からは、コート層(C)は基材フィルム(A)に隣接しているか、又は、基材フィルム(A)とコート層(C)との間に基材フィルム(A)上の印刷面としての加飾層(D)を設けることが好ましい。
【0016】
基材フィルム(A)上の印刷面としての加飾層(D)について、印刷方法は特に限定されず、多種多様な方法を用いることができる。例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、電子写真、インクジェット印刷等でも良いし、手書き等でも良い。中でも、色彩豊かな印刷、例えば、色再現性の高いグラデーションの印刷や、バリエーション豊かなデザインの印刷が可能である点では、インクジェット印刷がより好ましい。インクジェット印刷に使用するインクは、基材フィルム(A)上に印刷可能なものであれば種類は問わない。
【0017】
上記コート層(C)は、ガラス転移温度が20~80℃の範囲である熱可塑性樹脂(c1)及び前記熱可塑性樹脂(c1)以外のウレタン樹脂(c2)を含む。
【0018】
熱可塑性樹脂(c1)のガラス転移温度は20~80℃の範囲であるが、爪への密着性と耐傷性との両方により優れるネイルシールとなることから30~70℃の範囲であることが好ましく、40~60℃の範囲であることがより好ましい。なお、本願明細書において樹脂のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定(DSC)により測定される値である。
【0019】
熱可塑性樹脂(c1)の分子量は特に限定されないが、爪への密着性と耐傷性との両方により優れるネイルシールとなることから、重量平均分子量(Mw)が10,000~500,000の範囲であることが好ましい。熱可塑性樹脂(c1)の重量平均分子量(Mw)は20,000以上であってもよく、30,000以上であってもよく、50,000以上であってもよい。また、300,000以下であってもよく、200,000以下であってもよく、100,000以下であってもよい。なお、本願本明細書において樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーション(GPC)法によるポリスチレン換算の値である。
【0020】
熱可塑性樹脂(c1)の樹脂種は特に限定されず、多種多様なものを用いることができる。具体例としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。ポリエステル樹脂は、例えば、複数の水酸基を有する化合物と、ポリカルボン酸化合物との縮合重合体が挙げられる。ポリウレタン樹脂は、例えば、複数の水酸基を有する化合物と、ポリイソシアネート化合物との重付加物が挙げられる。(メタ)アクリル樹脂は、例えば、アクリロイル基或いはメタクリロイル基を有する化合物を1種類以上用いた(共)重合体が挙げられる。熱可塑性樹脂(c1)はガラス転移温度が20~80℃の範囲であればよく、常温(5~35℃)で液体或いは固体の樹脂の他、エマルション或いは分散体の状態であってもよい。熱可塑性樹脂(c1)の中でも、耐傷性により優れるネイルシールとなることから、常温(5~35℃)で固体の樹脂が好ましい。また、樹脂の透明性が比較的高い傾向にある点においてはポリエステル樹脂又は(メタ)アクリル樹脂が好ましく、(メタ)アクリル樹脂がより好ましい。ガラス転移温度が20~80℃の範囲である(メタ)アクリル樹脂の例としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製「ダイヤナールBR」シリーズのBR-101、BR-105、BR-106、BR-107、BR-115、BR-116、BR-605、BR―1122、MB-2478、MB-2539、MB-3070、MB-7497、MB-7922、DSM社製「NeoCryl」シリーズのB-300,B-700、B-722、B-723、B-819、B-842、B-875、B-880等が挙げられるが、この限りではない。また、ガラス転移温度が20~80℃の範囲であるポリエステル樹脂の例としては、例えば、三菱ケミカル株式会社「ポリエスターLP-035」等が挙げられるが、この限りではない。
【0021】
コート層(C)中の熱可塑性樹脂(c1)の含有量は特に限定されないが、爪への密着性と耐傷性とのバランスに優れるネイルシールとなることから3~30質量%の範囲であることが好ましい。また、コート層(C)中の熱可塑性樹脂(c1)の含有量は8質量%以上であってもよく、25質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよい。
【0022】
熱可塑性樹脂(c1)以外のウレタン樹脂(c2)は、例えば、20~80℃の範囲以外にガラス転移温度を有する熱可塑性のウレタン樹脂や、2液硬化型ウレタン樹脂、分子構造中にウレタン構造を有する重合性不飽和基含有樹脂等が挙げられる。中でも、コート層(C)を形成するための樹脂材料において溶剤量を低減できることから常温で液体の樹脂が好ましい。更に、ウレタン樹脂が有する柔軟性、強度、及び復元力が高い特徴が顕著に発現することから、常温で液状の2液硬化型ウレタン樹脂がより好ましい。
【0023】
2液硬化型ウレタン樹脂は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを含有する。2液硬化型ウレタン樹脂が常温で液体である場合、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との両方が常温で液状であってもよいし、どちらか一方が常温で固体であっても、他方が常温で液状であり、混合することにより液状にできる場合は、そのような形態であってもよい。
【0024】
上記ポリオール化合物の具体的な構造は特に限定されず、多種多様なものを用いることができ、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。より具体的には、三菱ケミカル株式会社製「PEPCD NT1002」、「PEPCD NT2002」、「PEPCD NT2006」、UBE株式会社製「ETERNACOLL」シリーズのPH-50、PH-100、PH-200、株式会社ADEKA製「アデカポリエーテル」シリーズのP-400、P-700、P-1000、P-2000、P-3000、東亞合成株式会社製「ARUFON」シリーズのUH-2000、UH-2041、UH-2190等が挙げられるが、この限りではない。
【0025】
上記ポリオール化合物は、爪への密着性と耐傷性とのバランスに優れるネイルシールとなることから、重量平均分子量(Mw)が400~2,000の範囲であることが好ましく、500~1,000の範囲であることが好ましい。一分子中の平均水酸基数は2~3であることが好ましく、2であることがより好ましい。上記各種ポリオール化合物の中でも、ポリエーテルポリオールであることが好ましく、ポリエーテルジオールであることがより好ましい。
【0026】
上記ポリイソシアネート化合物の具体構造は特に限定されず、多種多様なものを用いることができ、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、及びこれらのビウレット変性体、イソシアヌレート変性体、アダクト変性体などのポリイソシアネート等が挙げられる。より具体的には、旭化成株式会社「デュラネート」シリーズのTMA-100、TPA-100、TKA-100、TLA-100、TUL-100、TSE-100、東ソー株式会社「コロネート」シリーズのHX、HK、2770、2785、2793、DIC株式会社製「バーノック」シリーズのDNW-5500、DNW-5502、DNW-5500-ZS、バーノックPU8985、旭化成ケミカルズ社製「デュラネート」シリーズの24A-100、21S-75E、TPA-100、TKA-100、デグサ社製「VESTANAT T1890」等を挙げることができる。
【0027】
上記ポリイソシアネート化合物は、透明性の高いコート層となることから、脂肪族ポリイソシアネート或いはその各種変性体が好ましい。更に、耐傷性により優れるコート層となることから脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート変性体が好ましい。当該イソシアヌレート変性体の数平均分子量(Mn)は1,200~2,500の範囲であることが好ましい。一分子中の平均官能基数は3~7の範囲であることが好ましい。イソシアネート基含有量は5~20質量%の範囲であることが好ましい。
【0028】
上記ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との配合量は特に限定されないが、ポリオール化合物中の水酸基1モルに対し、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基が0.9~1.05モルとなる範囲であることが好ましい。
【0029】
コート層(C)中のウレタン樹脂(c2)の含有量は特に限定されないが、爪への密着性と耐傷性とのバランスに優れるネイルシールとなることから70~98質量%の範囲であることが好ましい。
【0030】
上記コート層(C)は、熱可塑性樹脂(c1)及びウレタン樹脂(c2)以外のその他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、色材やラメ等の加飾成分や、界面活性剤、ウレタン化触媒等が挙げられる。
【0031】
上記コート層(C)はネイルシールを製造する際の塗工性に優れることから、界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤の具体構造は特に限定されず、多種多様なものを用いることができ、例えばシリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン誘導体等が挙げられる。シリコーン系界面活性剤としては、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーンを用いることが好ましい。これらの具体例としては、ビックケミー・ジャパン社製「BYK」シリーズの307、313、330、333、342、370,377,378、3550、3750、3761,3762,3764、BYK-SILCLEAN3700、日信化学工業製「シルフェイス」シリーズのSAG005、SAG008、SAG503A等が挙げられる。フッ素系界面活性剤としては、ビックケミー・ジャパン社製「BYK-340」や、旭硝子株式会社製「サーフロン」シリーズのS-241、S-242、S-242L、S-243、S-420、S-431等が挙げられる。ポリオキシエチレン誘導体としては、アセチレングリコール系界面活性剤を用いることが好ましい。具体例としては、エアープロダクツジャパン社製「サーフィノール」シリーズの420、440、465、485、日信化学株式会社製「オルフィン」シリーズのE-1004、E-1010等が挙げられる。
【0032】
コート層(C)中の界面活性剤の含有量は特に限定されないが、十分な塗工性を付与できることから0.5~2質量%の範囲であることが好ましい。
【0033】
コート層(C)の厚みや体積は、特に限定されないが、爪への密着性と耐傷性とのバランスに優れるネイルシールとなることから塗膜量が300~500g/mの範囲であることが好ましい。
【0034】
コート層(C)を形成するための樹脂材料は、コート層(C)が含有する各成分の他、溶剤を含有していてもよい。溶剤としては、コート層(C)が含有する各成分を溶解し得るものであれば特に限定なく、多種多様なものを用いることができる。また、複数種の混合溶剤として用いてもよい。溶剤の具体例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が挙げられる。中でも、ネイルシール製造時の作業性の観点から、沸点が160℃以下であるものが好ましい。樹脂材料中の溶剤量は特に限定なくコート層(C)が含有する各成分の溶解度や塗工性に応じて適宜調整することができる。耐傷性や美観の観点において十分な厚みを有するコート層(C)の形成が可能となる点では、5~40質量%の範囲であることが好ましい。
【0035】
ネイルシールの製造方法は特に限定されず、いかなる方法にて製造してもよい。一例としては、例えば、下記の手順にて製造する方法が挙げられる。なお、ネイルシールの製造方法はこれに限定されるものではなく、例えば、基材フィルム(A)上に先にコート層(C)を設置したのち、あとで粘着層(B)を設置する方法や、すべての層構成を形成したのちに所望形状へのカッティングを行う方法等でもよい。
手順1.基材フィルム(A)の一方面に粘着層(B)を形成する
手順2.基材フィルム(A)の他方面に加飾層(D)を形成する
手順3.所望形状(ネイル形状)にカットする
手順4.コート層(C)を形成するための樹脂材料を塗布する
手順5.樹脂材料を硬化させ、コート層(C)を形成する
【0036】
前記手順1について、基材フィルム(A)上に粘着層(B)を形成する方法は特に限定されず、例えば、基材フィルム(A)上に粘着層(B)形成用の樹脂材料を塗布する、両面テープを貼付する等の方法が挙げられる。また、市販の粘着層付き基材フィルムを利用してもよい。また、手順2以降の作業性や、ネイルシールの保存性の観点から、粘着層(B)上に剥離フィルムを設置してもよい。
【0037】
前記手順2について、上述の通り基材フィルム(A)の他方面に加飾層(D)を形成する方法は特に限定されないが、インクジェット印刷を用いることが好ましい。
【0038】
前記手順3について、カット方法は特に限定されず、多種多様な方法を用いることができる。
【0039】
前記手順4について、コート層(C)を形成するための樹脂材料の塗布方法は特に限定されず、多種多様な方法を用いることができる。中でも、ポッティングによる塗布が好ましい。ポッティングでは樹脂材料が基材の縁までレベリングする現象を利用して塗布するため、ネイルシールにおける美観が向上する。このときの樹脂材料の塗布量は、樹脂材料中の溶剤量等にもよるが、300~550g/mの範囲であることが好ましい。
【0040】
前記手順5について、上記コート層(C)が含有するウレタン樹脂(c2)が2液硬化型ウレタン樹脂である場合には、加熱により硬化させることができる。より具体的には、70~100℃の温度範囲で0.5~2時間加熱する方法が挙げられる。
【0041】
得られたネイルシールはそのまま爪に張り付けてもよいし、必要に応じてジェルネイルとのプライマーを爪に塗布したのちに、ネイルシールを貼付してもよい。必要に応じ、貼付前にネイルシールを加熱することにより、上記熱可塑性樹脂(c1)の可塑性に起因してネイルシールの柔軟性が向上し、作業性が向上するとともに、爪への密着性も向上する。爪への貼付後は自然放冷により上記熱可塑性樹脂(c1)の可塑性が低下し、耐傷性に優れるシール表面となるとともに、爪に沿った形状を維持することから、剥がれが生じにくく、耐久性の高いネイルシールとなる。ネイルシールの加熱は特に限定されず、例えば、ドライヤーやカイロ、携帯カイロ等を用いることができる。
【実施例0042】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
[コート層形成用樹脂材料の製造]
表1に示す割合で各成分をビーカーに量り取り、スリーワンモーターで混合攪拌して、コート層形成用樹脂材料1~9を得た。表中の各成分の詳細は以下の通り。
【0044】
・熱可塑性樹脂(c1-1):三菱ケミカル株式会社製「ダイヤナールBR-106」、熱可塑性(メタ)アクリル樹脂、ガラス転移温度47℃、重量平均分量(Mw)55,000
・熱可塑性樹脂(c1-2):三菱ケミカル株式会社製「ダイヤナールMB-3070」、熱可塑性(メタ)アクリル樹脂、ガラス転移温度52℃、重量平均分量(Mw)100,000
・熱可塑性樹脂(c1-3):三菱ケミカル株式会社製「ダイヤナールMB-3015」、熱可塑性(メタ)アクリル樹脂、ガラス転移温度83℃、重量平均分量(Mw)80,000
・熱可塑性樹脂(c1-4):三菱ケミカル株式会社製「ダイヤナールBR-1122」、熱可塑性(メタ)アクリル樹脂、ガラス転移温度20℃、重量平均分量(Mw)180,000
・熱可塑性樹脂(c1-5):東亜合成株式会社製「ARUFON UP-1000」、熱可塑性(メタ)アクリル樹脂、ガラス転移温度-77℃、重量平均分量(Mw)3,000
・熱可塑性樹脂(c1-6):三菱ケミカル株式会社製「ニチゴーポリエスターLP-035」、熱可塑性ポリエステル樹脂、ガラス転移温度20℃、重量平均分量(Mw)16,000
・ポリオール化合物:株式会社ADEKA製「アデカポリエーテルP-700」、ポリエーテルジオール、重量平均分量(Mw)700、水酸基価155mgKOH/g
・ポリイソシアネート化合物:旭化成株式会社製「デュラネートTSE-100」、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体、イソシアネート基含有量12.0%
・界面活性剤:ビックケミー・ジャパン社製「BYK-307」
・溶剤:三協化学株式会社エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、沸点145℃
【0045】
【表1】
【0046】
実施例1~6及び比較例1~3
[ネイルシールの製造]
粘着層付き基材フィルム(*1)上にインクジェット印刷にて単色のベタ印刷を行うとともに、ネイル形にハーフカットした(*2)。不要部分を除去しネイル形に切り抜いたフィルムに、上記コート層形成用樹脂材料を塗布量が約420g/mになるようにポッティングにて塗布し、80℃で1時間加熱硬化させてネイルシールを得た。
(*1)株式会社ケイエヌ・トレーディング社製「SL-CR」:厚さ100μmのポリ塩化ビニル系フィルム基材の片面に厚さ20μmの永久性透明粘着剤層を有するフィルム
(*2)印刷およびハーフカットにはローランドディー・ジー株式会社製溶剤インクジェットプリンタ「VS-540i」(プリント&カット機)を使用した
【0047】
[ネイルシールの評価]
得られたネイルシールを下記の方法にて評価した。結果を表2に示す。
【0048】
[貼付時の爪への密着性]
作製したネイルシールを60℃に加熱し、プラスチック製のネイルチップに貼付した。その際の密着性を以下の基準で評価した。
A:爪に密着して貼れる
B:一部浮きがあるが概ね爪に沿って貼れる
C:爪に沿っていない、浮いている部分がある
D:爪に沿って貼ることができない
【0049】
[ネイルシールの耐傷性]
作製したネイルシールをタテおよびヨコに折り曲げ、コート層の割れが生じるか目視で観察し、以下の基準で評価した。
A:シールを曲げても折れない、かつ表面に折り傷がつかない
B:シールを曲げても折れない、表面にやや折り後がつくが目立たない
C:シールを曲げるとコート層にひびが入る、表面に折り傷もややつく
D:シールを曲げるとコート層が折れる
【0050】
[爪への長期密着性]
作製したネイルシールを60℃に加熱し、プラスチック製のネイルチップに貼付した。ネイルシール付きネイルチップを常温の室内に静置し、ネイルシールがネイルチップから剥がれるまでの時間を測定して、以下の基準で評価した。
A:3日を経過しても剥がれない
B:貼付後1日を超えて3日以内に剥がれる
C:貼付後1時間を超えて1日以内に剥がれる
D:貼付後1時間以内に剥がれる
【0051】
【表2】
【0052】
比較例1は熱可塑性樹脂(c1)を配合していないことから、加熱してもネイルシールが軟化せず、貼付時に爪に対し密着させることができなかったうえ、すぐ剥がれてしまった。また、ネイルシールを曲げると割れが発生した。
【0053】
比較例2は熱可塑性樹脂(c1)のガラス転移点が高すぎたことから、加熱してもネイルシールが軟化せず、貼付時に爪に対し密着させることができなかったうえ、すぐ剥がれてしまった。また、ネイルシールを曲げると割れが発生した。
【0054】
比較例3は熱可塑性樹脂(c1)のガラス転移点が低すぎたことから、コート層(C)表面のベタつきが大きく、作業性が低かったうえ、爪に対し密着させることができず、すぐに剥がれてしまった。また、ネイルシールを曲げると割れが発生した。