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2025-36922静電荷像現像用キャリア、静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び画像形成方法
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  • -静電荷像現像用キャリア、静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び画像形成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025036922
(43)【公開日】2025-03-17
(54)【発明の名称】静電荷像現像用キャリア、静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/113 20060101AFI20250310BHJP
【FI】
G03G9/113 361
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023143584
(22)【出願日】2023-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 涼
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 洋介
(72)【発明者】
【氏名】角倉 康夫
(72)【発明者】
【氏名】井口 もえ木
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AB01
2H500AB05
2H500CA04
2H500CB12
2H500CB14
2H500EA42E
2H500EA44E
2H500EA52E
2H500EA60E
2H500FA04
(57)【要約】
【課題】画像形成装置を高温高湿下で長期間静置した後に駆動させて形成された画像における細線再現性の向上と、低温低湿下で連続形成された高密度画像における画像端の白抜けの抑制と、を両立する静電荷像現像用キャリアを提供すること。
【解決手段】芯材と、前記芯材を被覆し、樹脂とカーボンブラック粒子とを含有する樹脂被覆層と、を有し、前記樹脂被覆層は、前記カーボンブラック粒子の凝集体の円相当径をAμmとし前記樹脂被覆層の平均厚さをBμmとしたときに下記式(1)を満たす前記凝集体を含み、前記樹脂被覆層の断面において、前記樹脂被覆層の面積全体に対する下記式(1)を満たす前記凝集体の合計面積の割合が10%以上50%以下である、静電荷像現像用キャリア。
式(1):0.2×B≦A≦0.8×B
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、
前記芯材を被覆し、樹脂とカーボンブラック粒子とを含有する樹脂被覆層と、
を有し、
前記樹脂被覆層は、前記カーボンブラック粒子の凝集体の円相当径をAμmとし前記樹脂被覆層の平均厚さをBμmとしたときに下記式(1)を満たす前記凝集体を含み、
前記樹脂被覆層の断面において、前記樹脂被覆層の面積全体に対する下記式(1)を満たす前記凝集体の合計面積の割合が10%以上50%以下である、静電荷像現像用キャリア。
式(1):0.2×B≦A≦0.8×B
【請求項2】
前記樹脂被覆層は、前記カーボンブラック粒子以外の無機粒子をさらに含有する、請求項1に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項3】
前記無機粒子の個数平均一次粒径は、前記カーボンブラック粒子の個数平均一次粒径よりも小さい、請求項2に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項4】
前記樹脂被覆層の断面のうち、一辺が2μmの正方形内に存在する前記式(1)を満たす凝集体の断面の数が、2個以上10個以下である、請求項1に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項5】
前記樹脂被覆層の平均厚さは、0.3μm以上3μm以下である、請求項1に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項6】
前記樹脂被覆層の平均厚さは、0.4μm以上2μm以下である、請求項5に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項7】
静電荷像現像用トナーと、
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリアと、
を含む、静電荷像現像剤。
【請求項8】
請求項7に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像装置を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【請求項9】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成装置と、
請求項7に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像装置と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着装置と、
を備える画像形成装置。
【請求項10】
像保持体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
請求項7に記載の静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、
を有する画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用キャリア、静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、芯材粒子と、該芯材粒子表面を被覆してなる被覆層と、を有し、該被覆層は、特定の構造を有するモノマー成分を含む共重合体を加熱処理して得られた樹脂、及び導電性微粒子を含有してなり、前記被覆層の平均膜厚hと、前記導電性微粒子の分散粒径Dと、の比D/hは、0.001以上5以下であることを特徴とする静電潜像現像用キャリアが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、フェライト芯材粒子と該フェライト芯材粒子を被覆する被覆層とからなる静電潜像現像剤用キャリアにおいて、前記被覆層は、少なくともカーボンブラックと、無機粒子と、樹脂とを含有し、前記被覆層は厚み方向に無機微粒子及びカーボンブラックが濃度勾配を持ち、前記被覆層の外表面に向かうほど無機粒子の体積%濃度は高く、カーボンブラックの体積%濃度は低くなり、前記キャリアの40℃70%RH環境下での保管前後の水分吸着量変動量が0.0040%以下となることを特徴とする、静電潜像現像剤用キャリアが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-063438号公報
【特許文献2】特開2018-084608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、式(1)を満たす凝集体の合計面積の割合が10%未満又は50%超えの場合に比べ、画像形成装置を高温高湿下で長期間静置した後に駆動させて形成された画像における細線再現性の向上と、低温低湿下で連続形成された高密度画像における画像端の白抜けの抑制と、を両立する静電荷像現像用キャリアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段は、以下の態様を含む。
<1>
芯材と、
前記芯材を被覆し、樹脂とカーボンブラック粒子とを含有する樹脂被覆層と、
を有し、
前記樹脂被覆層は、前記カーボンブラック粒子の凝集体の円相当径をAμmとし前記樹脂被覆層の平均厚さをBμmとしたときに下記式(1)を満たす前記凝集体を含み、
前記樹脂被覆層の断面において、前記樹脂被覆層の面積全体に対する下記式(1)を満たす前記凝集体の合計面積の割合が10%以上50%以下である、静電荷像現像用キャリア。
式(1):0.2×B≦A≦0.8×B
<2>
前記樹脂被覆層は、前記カーボンブラック粒子以外の無機粒子をさらに含有する、<1>に記載の静電荷像現像用キャリア。
<3>
前記無機粒子の個数平均一次粒径は、前記カーボンブラック粒子の個数平均一次粒径よりも小さい、<2>に記載の静電荷像現像用キャリア。
<4>
前記樹脂被覆層の断面のうち、一辺が2μmの正方形内に存在する前記式(1)を満たす凝集体の断面の数が、2個以上10個以下である、<1>~<3>のいずれか1つ請求項1に記載の静電荷像現像用キャリア。
<5>
前記樹脂被覆層の平均厚さは、0.3μm以上3μm以下である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用キャリア。
<6>
前記樹脂被覆層の平均厚さは、0.4μm以上2μm以下である、<5>に記載の静電荷像現像用キャリア。
<7>
静電荷像現像用トナーと、
<1>~<6>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用キャリアと、
を含む、静電荷像現像剤。
<8>
<7>に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像装置を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
<9>
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成装置と、
<7>に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像装置と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着装置と、
を備える画像形成装置。
<10>
像保持体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
<7>に記載の静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、
を有する画像形成方法。
【発明の効果】
【0007】
<1>に係る発明によれば、式(1)を満たす凝集体の合計面積の割合が10%未満又は50%超えの場合に比べ、画像形成装置を高温高湿下で長期間静置した後に駆動させて形成された画像における細線再現性の向上と、低温低湿下で連続形成された高密度画像における画像端の白抜けの抑制と、を両立する静電荷像現像用キャリアが提供される。
<2>に係る発明によれば、樹脂被覆層がカーボンブラック粒子以外の無機粒子を含有しない場合に比べ、画像形成装置を高温高湿下で長期間静置した後に駆動させて形成された画像における細線再現性の向上と、低温低湿下で連続形成された高密度画像における画像端の白抜けの抑制と、を両立する静電荷像現像用キャリアが提供される。
<3>に係る発明によれば、無機粒子の個数平均一次粒径がカーボンブラック粒子の個数平均一次粒径以上である場合に比べ、画像形成装置を高温高湿下で長期間静置した後に駆動させて形成された画像における細線再現性の向上と、低温低湿下で連続形成された高密度画像における画像端の白抜けの抑制と、を両立する静電荷像現像用キャリアが提供される。
<4>に係る発明によれば、一辺が2μmの正方形内に存在する式(1)を満たす凝集体の断面の数が2個未満又は10個超えである場合に比べ、画像形成装置を高温高湿下で長期間静置した後に駆動させて形成された画像における細線再現性の向上と、低温低湿下で連続形成された高密度画像における画像端の白抜けの抑制と、を両立する静電荷像現像用キャリアが提供される。
<5>に係る発明によれば、樹脂被覆層の平均厚さが0.3μm未満又は3μm超えである場合に比べ、画像形成装置を高温高湿下で長期間静置した後に駆動させて形成された画像における細線再現性の向上と、低温低湿下で連続形成された高密度画像における画像端の白抜けの抑制と、を両立する静電荷像現像用キャリアが提供される。
<6>に係る発明によれば、樹脂被覆層の平均厚さが0.4μm未満又は2μm超えである場合に比べ、画像形成装置を高温高湿下で長期間静置した後に駆動させて形成された画像における細線再現性の向上と、低温低湿下で連続形成された高密度画像における画像端の白抜けの抑制と、を両立する静電荷像現像用キャリアが提供される。
<7>、<8>、<9>、又は<10>に係る発明によれば、式(1)を満たす凝集体の合計面積の割合が10%未満又は50%超えである静電荷像現像用キャリアを適用した場合に比べ、画像形成装置を高温高湿下で長期間静置した後に駆動させて形成された画像における細線再現性の向上と、低温低湿下で連続形成された高密度画像における画像端の白抜けの抑制と、を両立する静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置、又は画像形成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図2】本実施形態に係る画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0010】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0011】
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0012】
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0013】
本開示において実施形態を図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0014】
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0015】
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
【0016】
本開示において「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方を意味する。
【0017】
本開示において、「静電荷像現像用トナー」を「トナー」ともいい、「静電荷像現像用キャリア」を「キャリア」ともいい、「静電荷像現像剤」を「現像剤」ともいう。
【0018】
[静電荷像現像用キャリア]
本実施形態に係る静電荷像現像用キャリアは、芯材と、前記芯材を被覆し、樹脂とカーボンブラック粒子とを含有する樹脂被覆層と、を有し、前記樹脂被覆層は、前記カーボンブラック粒子の凝集体の円相当径をAμmとし前記樹脂被覆層の平均厚さをBμmとしたときに下記式(1)を満たす前記凝集体を含み、前記樹脂被覆層の断面において、前記樹脂被覆層の面積全体に対する下記式(1)を満たす前記凝集体の合計面積の割合が10%以上50%以下である。
式(1):0.2×B≦A≦0.8×B
以下、式(1)を満たす凝集体を「特定凝集体」、樹脂被覆層の断面において樹脂被覆層の面積全体に対する特定凝集体の合計面積の割合を「特定凝集体割合」ともいう。
【0019】
本実施形態では、樹脂被覆層が特定凝集体を含み、かつ、特定凝集割合が前記範囲であることにより、画像形成装置を高温高湿下で長期間静置した後に駆動させて形成された画像における細線再現性の向上と、低温低湿下で連続形成された高密度画像における画像端の白抜けの抑制と、を両立する。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
【0020】
芯材の表面を樹脂被覆層により被覆したキャリアにおいては、キャリアの導電性を調整する目的で、樹脂被覆層にカーボンブラック粒子が添加される。
しかし、カーボンブラック粒子が添加された樹脂被覆層を有するキャリアは、外部環境に対する抵抗変動が大きい場合がある。具体的には、画像形成装置を高温高湿下(例えば、温度30℃、相対湿度88%の環境下)で長期間(例えば、12時間)静置した後に駆動させて細線の画像を形成すると、細線の太り、つぶれ、ぼやけ等が発生し、細線再現性の低い画像となることがある。その理由は、樹脂被覆層内のカーボンブラック粒子の凝集体がさらに二次凝集することにより大きなストラクチャーを形成し、芯材とキャリアの表面との間に導電路が形成されることにより、高温高湿下の静置に伴ってキャリアの抵抗が下がるためと考えられる。そして、静置に伴ってキャリアの抵抗が下がった後に画像形成装置を駆動させることで、さらにキャリアの抵抗が下がるため、キャリアの抵抗が低すぎることで、細線再現性が低下すると考えられる。
【0021】
一方、大きなストラクチャー構造が形成されないようにカーボンブラック粒子の添加量を低くすると、キャリアの抵抗が高くなりすぎることがある。そして、キャリアの抵抗が高くなりすぎると、低温低湿下(例えば、温度10℃、相対湿度15%の環境下)において、低画像密度の画像を連続印刷後、ハーフトーン画像にベタ画像を組み合わせた画像を連続形成したときに、画像端の白抜けが発生することがある。以下、低温低湿下で連続形成された画像に画像端の白抜けが発生する現象を「スタベーション」ともいう。
【0022】
これに対して本実施形態では、樹脂被覆層が特定凝集体を含み、かつ、特定凝集体割合が前記範囲である。つまり、大きなストラクチャーではなく、樹脂被覆層の平均厚さに対して0.2倍以上0.8倍以下の円相当径を有する特定凝集体が、樹脂被覆層中に適度に分散した海島構造となっている。そのため、画像形成装置を高温高湿下で長期間静置することによるキャリアの抵抗低下が起こりにくく、長期間静置した後に駆動させて形成された画像における細線再現性が向上すると考えられる。加えて、特定凝集体が樹脂被覆層中に適度に分散した海島構造となっていることにより、キャリアの抵抗値が適切な値となるため、キャリアの抵抗が高すぎることに起因する白抜けも抑制されると考えられる。
【0023】
以上の理由により、画像形成装置を高温高湿下で長期間静置した後に駆動させて形成された画像における細線再現性の向上と、低温低湿下で連続形成された高密度画像における画像端の白抜けの抑制と、を両立すると推測される。
【0024】
ここで、特定凝集体の存在確認及び特定凝集体割合の算出は、以下のようにして行う。
まず、エポキシ樹脂などの包埋剤でキャリアを包埋して包埋品を得た後、ダイヤモンドナイフなどで包埋品の表面を切断する。芯材の断面が十分に確保される場所まで、切断を続け、測定用試料とし、断面の撮影を行なう。断面の撮影は、走査型電子顕微鏡(SEM)等、従来公知の手法により行ってもよい。
次に、従来公知の画像解析ソフト(例えば、WinRoof(三谷商事株式会社))を用いて、100個のキャリアについて断面を解析する。
【0025】
樹脂被覆層の平均厚さは、キャリアの各粒子の断面における樹脂被覆層の厚さを9箇所ずつ求め、100個の粒子における各9箇所の厚さすべてを平均することで求める。
また、キャリアの樹脂被覆層の断面をエネルギー分散型X線分光法(EDX)により元素分析し、炭素が存在する領域をマッピングする。
具体的にはマッピングで得られた画像に対して2値化処理を行い、強度が強く色が濃い領域を炭素が存在する領域とする。
樹脂被覆層では、基本的にカーボンブラックは凝集体として存在しており、各凝集体について求めた円相当径を各凝集体の円相当径とする。そして、確認された各凝集体が特定凝集体に該当するか判断し、特定凝集体の存在確認及び特定凝集体割合の算出を行う。
なお、樹脂被覆層中に特定凝集体が分散した海島構造の確認、ストラクチャーの確認等も、特定凝集体の存在確認と同様の方法で行う。
【0026】
特定凝集体割合は、10%以上50%以下であり、15%以上45%以下であることが好ましく、20%以上40%以下であることがより好ましい。
ここで、特定凝集体割合が10%未満である形態としては、例えば、下記形態[1]~[3]が挙げられる。
形態[1]:カーボンブラック粒子の凝集体がさらに二次凝集することにより大きなストラクチャーを形成することで、樹脂被覆層の平均厚さに対して0.8倍以下の円相当径を有する島状の特定凝集体が少なく、特定凝集体割合が10%未満となった形態
形態[2]:カーボンブラック粒子が過度に分散することで、樹脂被覆層の平均厚さに対して0.2倍以上の円相当径を有する島状の特定凝集体が少なく、特定凝集体割合が10%未満となった形態
形態[3]:樹脂被覆層内におけるカーボンブラック粒子の含有量が少なく、特定凝集体割合が10%未満となった形態
【0027】
本実施形態では、特定凝集体割合が上記下限値以上であることにより、上記形態[1]に比べて、高温高湿下での長期間静置によるキャリアの抵抗低下が起こりにくく細線再現性が向上するとともに、上記形態[2]及び[3]に比べてキャリアの抵抗が高すぎることに起因する白抜けも抑制される。
また、本実施形態では、特定凝集体割合が上記上限値以下であることにより、高温高湿下での長期間静置によるキャリアの抵抗低下が起こりにくく細線再現性が向上する。
【0028】
本実施形態では、細線再現性の向上と白抜けの抑制とを両立する観点から、樹脂被覆層が下記式(2)を満たす凝集体を含むことが好ましく、樹脂被覆層の断面において、樹脂被覆層の面積全体に対する下記式(2)を満たす凝集体の合計面積の割合が5%以上40%以下であることがより好ましく、10%以上35%以下であることがさらに好ましく、15%以上30%以下であることが特に好ましい。
式(2):0.3×B≦A≦0.7×B
【0029】
本実施形態では、樹脂被覆層の断面のうち、一辺が2μmの正方形内に存在する特定凝集体の断面の数が、2個以上10個以下であることが好ましく、3個以上9個以下であることがより好ましく、4個以上8個以下であることがさらに好ましい。
上記特定凝集体の断面の数が上記下限値以上であることにより、キャリアの抵抗が高すぎることに起因する白抜けが抑制される。また、上記特定凝集体の断面の数が上記上限値以下であることにより、キャリア表面と低抵抗の芯材との間での導通路が形成されず、容易な電荷移動を抑制するため、高温高湿下での長期間静置によるキャリアの抵抗低下が起こりにくく細線再現性が向上する。
なお、一辺が2μmの正方形内に一部のみが入る特定凝集体の個数については、特定凝集体の断面の面積全体に対する上記正方形内に入る領域の面積の割合で表す。例えば、特定凝集体の断面のうち半分の面積が上記正方形内に入る特定凝集体の個数は0.5個とする。
【0030】
特定凝集体の円相当径及び特定凝集体割合を制御する方法は、特に限定されず、例えば、樹脂被覆層の形成条件を調整する方法のほか、樹脂被覆層にカーボンブラック粒子以外の無機粒子を含有させ、かつ、樹脂被覆層の形成条件を調整する方法等が挙げられる。以下、カーボンブラック粒子以外の無機粒子を単に「無機粒子」ともいう。
例えば樹脂被覆層が後述する湿式製法により形成される場合、樹脂、カーボンブラック粒子、無機粒子、及び必要に応じて他の成分を溶剤に溶解又は分散させた樹脂液を用い、芯材と樹脂液との混合時の条件及び溶剤を除去する乾燥時の条件を調整することで、特定凝集体の円相当径及び特定凝集体割合が制御される。混合時の条件及び乾燥時の条件としては、例えば、温度、圧力、時間等が挙げられる。混合時の条件としては、例えば、温度65℃以上90℃以下、時間70分以上150分以下等が挙げられる。混合液から溶剤を除去する乾燥時の条件としては、例えば、温度75℃以上100℃以下、圧力(ゲージ圧)-99kPa以上-80kPa以下等が挙げられる。
無機粒子を含む樹脂液を用い、かつ、混合時及び乾燥時の条件を調整することで、特定凝集体の円相当径及び特定凝集体割合が制御される理由は定かではないが、カーボンブラック粒子のストラクチャーが、相対的に比重の大きな無機粒子によって適度に崩されて特定凝集体となり、特定凝集体間に無機粒子が入り込み二次凝集が抑制された状態を維持しながら溶剤が除去されることが理由の一つと推測される。
以下、本実施形態に係るキャリアの一例として、樹脂被覆層に無機粒子を含有させ、かつ、湿式製法により樹脂被覆層が形成されたキャリアについて詳細に説明する。
【0031】
<芯材>
芯材は、磁性を有するものであれば特に制限されず、キャリアの芯材として用いられる公知の材料が適用される。
芯材としては、例えば、粒子状の磁性粉(磁性粒子);多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸磁性粒子;樹脂中に磁性粉が分散して配合された磁性粉分散樹脂粒子;などが挙げられる。芯材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
磁性粒子としては、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属の粒子;フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等が挙げられ、磁性酸化物粒子であることが好ましい。
芯材を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、芯材を構成する樹脂には、導電性粒子等の添加剤を含ませてもよい。導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。
【0033】
芯材は、粒子状の磁性粉、つまり、磁性粒子であることが好ましい。
【0034】
芯材の個数平均粒径は、トナー-キャリア間の付着力が適度でありトナーの現像量が十分得られ、かつ適正な磁気ブラシが得られ細線再現性に優れる画像が形成される観点から、15μm以上100μm以下が好ましく、20μm以上80μm以下がより好ましく、25μm以上40μm以下が更に好ましい。
なお、芯材の個数平均粒径は、前述の特定凝集体の存在確認方法と同様にして、100個のキャリアについて断面の解析を行うことで求める。具体的には、各芯材の断面210の円相当径を求め、100個の粒子について平均した値を、芯材の個数平均粒径とする。
【0035】
芯材の磁力は、3000エルステッドの磁場における飽和磁化が、50emu/g以上が好ましく、60emu/g以上がより好ましい。上記飽和磁化の測定は、振動試料型磁気測定装置VSMP10-15(東英工業社製)を用いて行う。測定試料は内径7mm、高さ5mmのセルに詰めて前記装置にセットする。測定は印加磁場を加え、最大3000エルステッドまで掃引する。次いで、印加磁場を減少させ、記録紙上にヒステリシスカーブを作製する。カーブのデータより、飽和磁化、残留磁化、保持力を求める。
【0036】
芯材の体積電気抵抗(体積抵抗率)は、1×10Ω・cm以上1×10Ω・cm以下が好ましく、1×10Ω・cm以上1×10Ω・cm以下がより好ましい。
芯材の体積電気抵抗(Ω・cm)は以下のように測定する。20cmの電極板を配した円形の治具の表面に、測定対象物を1mm以上3mm以下の厚さになるように平坦に載せ、層を形成する。この上に前記20cmの電極板を載せて層を挟み込む。測定対象物間の空隙をなくすため、層上に配置した電極板の上に4kgの荷重をかけてから層の厚み(cm)を測定する。層の上下の両電極には、エレクトロメーターおよび高圧電源発生装置に接続されている。両電極に電界が103.8V/cmとなるように高電圧を印加し、このとき流れた電流値(A)を読み取る。測定環境は、温度20℃、相対湿度50%とする。測定対象物の体積電気抵抗(Ω・cm)の計算式は、下記式に示す通りである。
R=E×20/(I-I)/L
上記式中、Rは測定対象物の体積電気抵抗(Ω・cm)、Eは印加電圧(V)、Iは電流値(A)、Iは印加電圧0Vにおける電流値(A)、Lは層の厚み(cm)をそれぞれ表す。係数20は、電極板の面積(cm)を表す。
【0037】
<樹脂被覆層>
樹脂被覆層は、上記芯材の表面を被覆する。樹脂被覆層は、芯材の表面の少なくとも一部を被覆していればよい。樹脂被覆層は、芯材の表面の一部のみを被覆し、芯材の表面が露出する領域があってもよく、芯材の表面をすべて被覆してもよい。
樹脂被覆層は、樹脂とカーボンブラック粒子とを少なくとも含有し、さらに無機粒子を含有することが好ましく、さらに、樹脂、カーボンブラック粒子、及び無機粒子以外の他の成分を含有してもよい。
以下、樹脂被覆層に含有される樹脂、カーボンブラック粒子、無機粒子、及び他の成分について説明する。
【0038】
(樹脂)
樹脂被覆層に含有される樹脂としては、スチレン・アクリル酸共重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、(メタ)アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン等のポリビニル系又はポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体;オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂又はその変性物;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;尿素・ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂;などが挙げられる。
中でも、樹脂被覆層に含有される樹脂は、無機粒子との親和性が高いことで無機微粒子の分散性が向上することや、カーボンブラックの分散性向上に起因した過度なストラクチャー構造を抑制する点から、(メタ)アクリル樹脂を含むことが好ましく、(メタ)アクリル樹脂を、樹脂被覆層中の樹脂の全質量に対し、50質量%以上含むことがより好ましく、(メタ)アクリル樹脂を、樹脂被覆層中の樹脂の全質量に対し、80質量%以上含むことが特に好ましい。
【0039】
樹脂被覆層に含有される樹脂は、無機粒子との親和性が高いことで無機粒子の分散性が向上することや、カーボンブラックの分散性向上に起因した過度なストラクチャー構造を抑制する観点から、脂環構造を有する(メタ)アクリル樹脂を含有することが好ましい。脂環構造を有する(メタ)アクリル樹脂は、重合成分として、脂環構造を有する重合成分を少なくとも含む。脂環構造を有する(メタ)アクリル樹脂の重合成分のうち、脂環構造を有する重合成分としては、(メタ)アクリル酸の脂環アルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数が3以上9以下の脂環構造を有するアルコールとのエステル)が挙げられ、具体的には、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
脂環構造を有する(メタ)アクリル樹脂は、脂環構造を有する重合成分と脂環構造を有さない重合成分との共重合体であってもよい。脂環構造を有さない重合成分としては、(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステル(例えば、アルキル基の炭素数が1以上9以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステル)が好ましく、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単量体は、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
脂環構造を有する(メタ)アクリル樹脂は、重合成分としてシクロヘキシル(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。脂環構造を有する(メタ)アクリル樹脂に含まれるシクロヘキシル(メタ)アクリレートに由来するモノマー単位の含有量は、脂環構造を有する(メタ)アクリル樹脂の全質量に対して、75質量%以上100質量%以下が好ましく、85質量%以上100質量%以下がより好ましく、95質量%以上100質量%以下が更に好ましい。
【0041】
樹脂被覆層に含有される樹脂は、無機粒子との親和性が高いことで無機粒子の分散性が向上することや、カーボンブラックの分散性向上に起因した過度なストラクチャー構造を抑制する観点から、窒素原子を有する樹脂を含むことが好ましい。
窒素原子を有する樹脂としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル等を含んで重合してなる窒素原子を有する(メタ)アクリル樹脂;ウレア、メラミン、グアナミン、アニリン等のアミノ樹脂;アミド樹脂;ウレタン樹脂;前記樹脂の共重合体;などが挙げられる。これらの中でも、窒素原子を有する樹脂は、無機粒子との親和性が高いことで無機粒子の分散性が向上することや、それに伴うカーボンブラックの分散性向上に起因した過度なストラクチャー構造を抑制する観点から、窒素原子を有する(メタ)アクリル樹脂が好ましく、アミノ基を有する(メタ)アクリル樹脂がより好ましく、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートを重合成分として含む重合体がさらに好ましい。
【0042】
樹脂被覆層に含有される樹脂が窒素原子を有する樹脂を含む場合、画像濃度の環境差を抑制する観点から、窒素原子を有さない樹脂をさらに含むことが好ましい。
窒素原子を有さない樹脂としては、前述の樹脂の具体例のうち窒素原子を有さないものが挙げられ、窒素原子を有さない(メタ)アクリル樹脂が好ましく、窒素原子を有さず脂環構造を有する(メタ)アクリル樹脂がより好ましく、シクロヘキシル(メタ)アクリレートを重合成分として含む重合体がさらに好ましい。
樹脂被覆層が窒素原子を有する樹脂と窒素原子を有さない樹脂との両方を含有する場合、窒素原子を有する樹脂は、樹脂被覆層中の樹脂の全質量に対し、0.2質量%以上5.0質量%以下の範囲で含むことが好ましく、0.3質量%以上3.0質量%以下の範囲で含むことがより好ましい。
【0043】
樹脂被覆層に含有される樹脂の重量平均分子量は、狙いの抵抗値を得るための磁性粒子への密着性が得られやすい観点から、30万未満であることが好ましく、25万未満であることがより好ましく、5,000以上25万未満であることが更に好ましく、1万以上20万以下であることが特に好ましい。
ここで、重量平均分子量の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC-8120を用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM-M(15cm)を使用し、THF溶媒で行った。重量平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作製した分子量校正曲線を使用して算出したものである。
【0044】
(カーボンブラック粒子)
カーボンブラック粒子としては、例えば、ファーネスブラック粒子、サーマルブラック粒子、チャンネルブラック粒子、ケッチェンブラック粒子、アセチレンブラック粒子、カラーブラック粒子等が挙げられる。カーボンブラック粒子は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
カーボンブラック粒子のDBP吸油量としては、例えば100ml/100g以上400ml/100g以下が挙げられ、120ml/100g以上300ml/100g以下が好ましく、140ml/100g以上200ml/100g以下がより好ましい。
カーボンブラック粒子のDBP吸油量が上記範囲であることにより、樹脂被覆層内におけるカーボンブラック粒子の分散性が適度であり、キャリアの抵抗値が適切な値となる。そのため、二次凝集による大きなストラクチャーが形成されることに起因する細線再現性の低下が抑制され、かつ、キャリアの抵抗が高すぎることに起因する白抜けも抑制されると考えられる。
DBP吸油量は、カーボンブラック粒子100gに吸収されるジブチルフタレート(DBP)の量を示すものであり、ASTM(アメリカ標準試験法)D2414-6TTに定義される値である。
なお、2種以上のカーボンブラック粒子を併用した場合、カーボンブラック粒子のDBP吸油量は含有量についての加重平均値とする。
【0046】
カーボンブラック粒子のpHとしては、特に限定しないが、例えば2以上10以下が挙げられ、5以上9以下が好ましい。
上記pHは、20℃の水1000mlにカーボンブラック粒子50gを加えた水溶液のpHであり、JIS Z8802(2011)規定のpH測定方法によって測定される値である。
なお、2種以上のカーボンブラック粒子を併用した場合、カーボンブラック粒子のpHは含有量についての加重平均値とする。
【0047】
カーボンブラック粒子の個数平均一次粒径は、10nm以上100nm以下が好ましく、12nm以上80nm以下がより好ましく、15nm以上60nm以下がさらに好ましい。カーボンブラック粒子の個数平均一次粒径が上記上限値以下であることにより、芯材とキャリアの表面との間に導電路が形成されることによる細線再現性の低下が抑制される。また、カーボンブラック粒子の個数平均一次粒径が上記下限値以上であることにより、キャリアの抵抗が高すぎることに起因する白抜けも抑制されると考えられる。
カーボンブラック粒子の個数平均一次粒径は、透過型電子顕微鏡を用いて求める。具体的にはカーボンブラック試料を、150kHz、0.4kWの超音波分散機により、10分間クロロホルムに分散させて分散試料を作製し、これをカーボン補強した支持膜に振り掛けて固定する。これを透過型電子顕微鏡で撮影し、50000~200000倍に拡大した画像からEndterの装置を用いてランダムに1000個以上のカーボンブラックの粒子径を測定し、一次粒子の円相当径を個数平均した値をカーボンブラック粒子の個数平均一次粒径とする。
【0048】
カーボンブラック粒子の凝集体の個数平均円相当径としては、例えば100nm以上900nm以下が挙げられ、細線再現性の向上と白抜けの抑制とを両立する観点から、200nm以上800nm以下が好ましく、300nm以上700nm以下がより好ましい。
カーボンブラック粒子の凝集体の個数平均円相当径は、前述の特定凝集体の存在確認方法と同様にして、キャリアの断面を観察し、解析することで求める。具体的には、観察域に存在するカーボンブラック粒子の凝集体の円相当径を個数平均した値をカーボンブラック粒子の凝集体の個数平均円相当径とする。
【0049】
カーボンブラック粒子のBET法による比表面積は、50m/g以上500m/g以下が好ましく、100m/g以上400m/g以下がより好ましく、150m/g以上400m/g以下がさらに好ましい。カーボンブラック粒子の比表面積が上記下限値以上であることにより、芯材とキャリアの表面との間に導電路が形成されることによる細線再現性の低下が抑制される。また、カーボンブラック粒子の比表面積が上記上限値以下であることにより、キャリアの抵抗が高すぎることに起因する白抜けも抑制されると考えられる。
上記BET法による比表面積は、流動式比表面積自動測定装置(島津製作所フローソープII2300)を用い窒素置換法にて測定した値である。
【0050】
樹脂被覆層に含有されるカーボンブラック粒子の含有量は、樹脂被覆層の全質量に対して、0.5質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上12質量%以下がより好ましく、2質量%以上10質量%以下が更に好ましい。
カーボンブラック粒子の含有量が上記上限値以下であることにより、芯材とキャリアの表面との間に導電路が形成されることによる細線再現性の低下が抑制される。また、カーボンブラック粒子の比表面積が上記下限値以上であることにより、キャリアの抵抗が高すぎることに起因する白抜けも抑制されると考えられる。
【0051】
(無機粒子)
無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン(チタニア)、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化クロム、酸化セリウム、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム等の金属酸化物粒子;硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の金属化合物粒子;金、銀、銅等の金属粒子;などが挙げられる。無機粒子は、1種のみの無機粒子からなるものであってもよく、2種以上の無機粒子からなるものであってもよい。
無機粒子は、カーボンブラックより粒径が小さくかつ比重が重い観点から、これらのなかでも、シリカ粒子を含むことが好ましい。
【0052】
無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていてもよい。無機粒子がシリカを含む場合、疎水化処理剤としては、例えば、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)を有する公知の有機珪素化合物が挙げられ、具体例には、アルコキシシラン化合物、シロキサン化合物、シラザン化合物等が挙げられる。これらの中でも、疎水化処理剤は、シラザン化合物が好ましく、ヘキサメチルジシラザンが好ましい。疎水化処理剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
無機粒子の表面に疎水化処理が施されることで無機粒子の樹脂組成物中への均一分散性が向上されるため、カーボンブラックの分散性を向上することができる。
【0053】
無機粒子を疎水化処理剤により疎水化処理する方法としては、例えば、超臨界二酸化炭素を利用して、超臨界二酸化炭素中に疎水化処理剤を溶解させて、無機粒子表面に疎水化処理剤を付着させる方法;大気中において、疎水化処理剤と前記疎水化処理剤を溶解する溶媒とを含む溶液を無機粒子表面に付与(例えば噴霧又は塗布)して、無機粒子表面に疎水化処理剤を付着させる方法;大気中において、無機粒子分散液に疎水化処理剤と前記疎水化処理剤を溶解する溶媒とを含む溶液を添加して保持した後、無機粒子分散液及び前記溶液の混合溶液を乾燥させる方法;が挙げられる。
【0054】
無機粒子の個数平均一次粒径は、細線再現性の向上と白抜けの抑制とを両立する観点から、1nm超え80nm以下が好ましく、2nm以上60nm以下がより好ましく、5nm以上50nm以下がさらに好ましい。
無機粒子の個数平均一次粒径は、カーボンブラック粒子の個数平均一次粒径よりも小さいことが好ましい。無機粒子の個数平均一次粒径がカーボンブラック粒子の個数平均一次粒径よりも小さいことで、カーボンブラック粒子のストラクチャーが適度に崩されやすく、特定凝集体割合が適切な値に制御されやすい。そのため、細線再現性の向上と白抜けの抑制とが両立される。
無機粒子の個数平均一次粒径は、細線再現性の向上と白抜けの抑制とを両立する観点から、カーボンブラック粒子の個数平均一次粒径の0.01倍以上8倍以下であることが好ましく、0.1倍以上2倍以下であることがより好ましく、0.2倍以上0.8倍以下であることがさらに好ましい。
無機粒子の個数平均一次粒径は、前述の特定凝集体の存在確認方法と同様にして、キャリアの断面を観察し、解析することで求める。具体的には、樹脂被覆層に含有される50個の無機粒子の一次粒子の円相当径を個数平均した値を無機粒子の個数平均一次粒径とする。
【0055】
無機粒子の比重は、細線再現性の向上と白抜けの抑制とを両立する観点から、2以上8以下が好ましく、2以上5以下がより好ましく、2以上3以下がさらに好ましい。
無機粒子の比重は、細線再現性の向上と白抜けの抑制とを両立する観点から、カーボンブラック粒子の比重の1倍以上5倍以下であることが好ましく、1倍以上2倍以下であることがより好ましく、1倍以上1.5倍以下であることがさらに好ましい。
【0056】
上記比重の測定は、ルシャトリエ比重瓶を用い、JIS K 0061(2001)の5-2-1に準拠して、下記の作業にて行う。
(1)ルシャトリエ比重瓶に250mlのエチルアルコールを入れ、メニスカスが目盛の位置にくるように調整する。
(2)比重瓶を恒温水槽に浸し、液温が20.0℃±0.2℃になったときに、メニスカスの位置を比重瓶の目盛で正確に読み取る(精度0.0025ml)。
(3)試料を100g量り取る。
(4)量り取った試料を比重瓶に入れ泡を除く。
(5)比重瓶を恒温槽に浸し、液温が20.0℃±0.2℃になったときに、メニスカスの位置を比重瓶の目盛で正確に読み取る(精度0.0025ml)。
(6)次式により比重を算出する。
・式:D=W/(L2-L1)
・式:S=D/0.9982
式中、Dは試料の密度(g/cm、20℃)、Sは試料の比重(20℃)、Wは試料の見かけの質量(g)、L1は試料を比重瓶に入れる前のメニスカスの読み値(ml、20℃)、L2は試料を比重瓶に入れた後のメニスカスの読み値(ml、20℃)、0.9982は20℃における水の密度(g/cm)である。
【0057】
樹脂被覆層に含有される無機粒子の含有量は、細線再現性の向上と白抜けの抑制とを両立する観点から、樹脂被覆層の全質量に対して、10質量%以上60質量%以下が好ましく、15質量%以上50質量%以下がより好ましく、20質量%以上40質量%以下が更に好ましい。
樹脂被覆層に含有される無機粒子の含有量は、細線再現性の向上と白抜けの抑制とを両立する観点から、カーボンブラック粒子の含有量の0.01倍以上3倍以下であることが好ましく、0.1倍以上2倍以下であることがより好ましく、0.1倍以上0.5倍以下であることがさらに好ましい
【0058】
(他の成分)
樹脂被覆層は、必要に応じてその他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、例えば、窒素含有樹脂粒子等が挙げられる。
樹脂被覆層が窒素含有樹脂粒子を含有することで、帯電を制御できるという利点がある。
窒素含有樹脂粒子としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル等を含んで重合してなる(メタ)アクリル系樹脂;ウレア、メラミン、グアナミン、アニリン等のアミノ樹脂;アミド樹脂;ウレタン樹脂;前記樹脂の共重合体;などの粒子が挙げられる。樹脂被覆層が窒素含有樹脂粒子を含有する場合、窒素含有樹脂粒子の含有量は、帯電制御の観点から、樹脂被覆層の全質量に対して、5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、8質量%以上16質量%以下であることがより好ましく、9.5質量%以上14質量%以下であることがさらに好ましい。
【0059】
(樹脂被覆層の特性及び形成)
樹脂被覆層の平均厚さは、抵抗および帯電性能の観点から、0.6μm以上1.4μm以下が好ましく、0.8μm以上1.2μm以下がより好ましく、0.8μm以上1.1μm以下がさらに好ましい。
樹脂被覆層の平均厚さが上記下限値以上であることにより、芯材とキャリアの表面との間に導電路が形成されることによる細線再現性の低下が抑制される。また、樹脂被覆層の平均厚さが上記上限値以下であることにより、キャリアの抵抗が高すぎることに起因する白抜けも抑制されると考えられる。
【0060】
樹脂被覆層を芯材表面に形成する方法としては、例えば、湿式製法及び乾式製法が挙げられる。湿式製法は、樹脂被覆層を構成する樹脂を溶解又は分散させる溶剤を用いる製法である。一方、乾式製法は、上記溶剤を用いない製法である。
【0061】
湿式製法としては、例えば、芯材を樹脂被覆層形成用樹脂液中に浸漬して被覆する浸漬法;樹脂被覆層形成用樹脂液を芯材表面に噴霧するスプレー法;芯材を流動床中に流動化させた状態で樹脂被覆層形成用樹脂液を噴霧する流動床法;ニーダーコーター中で芯材と樹脂被覆層形成用樹脂液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法;などが挙げられる。これらの製法を繰り返したり、組み合わせたりしてもよい。
湿式製法において用いられる樹脂被覆層形成用樹脂液は、樹脂、カーボンブラック粒子、無機粒子、及びその他の成分を溶剤に溶解又は分散させて調製する。溶剤としては、特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;などが使用される。
【0062】
乾式製法としては、例えば、芯材と樹脂被覆層形成用樹脂の混合物を乾燥状態で加熱して樹脂被覆層を形成する方法が挙げられる。具体的には例えば、芯材と樹脂被覆層形成用樹脂とを気相中で混合して加熱溶融し、樹脂被覆層を形成する。
【0063】
本実施形態では、前記の通り、特定凝集体の円相当径及び特定凝集体割合を制御しやすくするため、湿式製法により樹脂被覆層を形成することが好ましい。
芯材と樹脂液との混合時の条件としては、例えば、温度65℃以上90℃以下(好ましくは70℃以上80℃以下)、圧力(ゲージ圧)-30kPa以上-10kPa以下(好ましくは-25kPa以上-15kPa以下)、時間70分以上150分以下(好ましくは100分以上140分以下)等が挙げられる。
芯材と樹脂液との混合液から溶剤を除去する乾燥時の条件、例えば、温度75℃以上100℃以下(好ましくは80℃以上95℃以下)、圧力(ゲージ圧)-99kPa以上-80kPa以下(好ましくは-95kPa以上-85kPa以下)等が挙げられる。
【0064】
キャリア表面における芯材の露出面積率は、5%以上30%以下であることが好ましく、7%以上25%以下であることがより好ましく、10%以上25%以下であることが更に好ましい。キャリアにおける芯材の露出面積率は、樹脂被覆層の形成に用いる樹脂の量で制御でき、芯材の量に対する樹脂の量が多いほど露出面積率は小さくなる。
【0065】
芯材が磁性粒子である場合、キャリア表面における芯材の露出面積率は、以下の方法で求める値である。
対象となるキャリアと、対象となるキャリアから樹脂被覆層を除いた磁性粒子とを用意する。キャリアから樹脂被覆層を除く方法としては、例えば、有機溶剤で樹脂成分を溶解させて樹脂被覆層を除去する方法、800℃程度の加熱により樹脂成分を消失させて樹脂被覆層を除去する方法などが挙げられる。キャリアと磁性粒子とをそれぞれ測定試料にして、XPSにより試料表面のFe濃度(atomic%)を定量し、(キャリアのFe濃度)÷(磁性粒子のFe濃度)×100を算出し、磁性粒子の露出面積率(%)とする。
【0066】
キャリアは、画像の濃度ムラを抑制する観点から、表面粗さRaが、0.1μm超え1.0μm未満であることが好ましく、0.11μm以上0.85μm未満であることがより好ましく、0.12μm以上0.8μm以下であることがさらに好ましい。
キャリアの表面粗さRaを制御する手法は、特に制限されないが、例えば、芯材の表面粗さRaを調整する手法;被覆樹脂層の平均厚さを調整する手法;キャリアを製造する際に、被覆樹脂層を構成する樹脂と芯材とカーボンブラック粒子と無機粒子と必要に応じて加える溶媒とを混合し撹拌する撹拌速度、撹拌温度及び撹拌時間を調整する手法;などが挙げられる。
【0067】
キャリアの表面粗さRaの測定は、以下の方法で行うものとする。キャリア表面のRa(算術平均粗さ)の測定方法は、キャリアを2,000個、超深度カラー3D形状測定顕微鏡(VK9700、(株)キーエンス製)を用い、倍率1,000倍で表面を換算して求める方法であり、JIS B0601(1994年度版)に準じて行う。具体的には、キャリア表面のRaは、前記顕微鏡にて観察したキャリア表面の3次元形状から粗さ曲線を求め、該粗さ曲線の測定値と平均値までの偏差の絶対値を合計し、平均することにより求められる。キャリア表面のRaを求める際の基準長さは10μmであり、カットオフ値は0.08mmである。
【0068】
キャリアの個数平均粒径は、トナー-キャリア間の付着力が適度でありトナーの現像量が十分得られ、かつ適正な磁気ブラシが得られ細線再現性に優れる画像が形成される観点から、15μm以上100μm以下が好ましく、20μm以上80μm以下がより好ましく、25μm以上40μm以下が特に好ましい。キャリアの個数平均粒径は、前述の芯材の個数平均粒径と同様の方法で求める。
【0069】
[静電荷像現像剤]
本実施形態に係る現像剤は、本実施形態に係る静電荷像現像用キャリアと、トナーと、を含む二成分現像剤である。トナーは、トナー粒子と、必要に応じて外添剤と、を含む。
【0070】
現像剤おけるキャリアとトナーとの混合比(質量比)は、キャリア:トナー=100:1乃至100:30が好ましく、100:3乃至100:20がより好ましい。
【0071】
<トナー粒子>
トナー粒子は、例えば、結着樹脂と、必要に応じて、着色剤と、離型剤と、その他添加剤と、を含んで構成される。
【0072】
-結着樹脂-
結着樹脂としては、例えば、スチレン類(例えばスチレン、パラクロロスチレン、α-メチルスチレン等)、(メタ)アクリル酸エステル類(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等)、エチレン性不飽和ニトリル類(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエーテル類(例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)、ビニルケトン類(例えばビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)、オレフィン類(例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン等)等の単量体の単独重合体、又はこれら単量体を2種以上組み合せた共重合体からなるビニル系樹脂が挙げられる。
結着樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂、これらと前記ビニル系樹脂との混合物、又は、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等も挙げられる。
これらの結着樹脂は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
結着樹脂としては、ポリエステル樹脂が好適である。
ポリエステル樹脂としては、例えば、公知の非晶性ポリエステル樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂と共に、結晶性ポリエステル樹脂を併用してもよい。但し、結晶性ポリエステル樹脂は、全結着樹脂に対して、含有量が2質量%以上40質量%以下(好ましくは2質量%以上20質量%以下)の範囲で用いることがよい。
【0074】
樹脂の「結晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有することを指し、具体的には、昇温速度10(℃/min)で測定した際の吸熱ピークの半値幅が10℃以内であることを指す。
一方、樹脂の「非晶性」とは、半値幅が10℃を超えること、階段状の吸熱量変化を示すこと、又は明確な吸熱ピークが認められないことを指す。
【0075】
・非晶性ポリエステル樹脂
非晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体が挙げられる。非晶性ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
【0076】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、セバシン酸等)、脂環式ジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、多価カルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステル等が挙げられる。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0077】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等)、脂環式ジオール(例えばシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等)、芳香族ジオール(例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等)が挙げられる。これらの中でも、多価アルコールとしては、例えば、芳香族ジオール、脂環式ジオールが好ましく、より好ましくは芳香族ジオールである。
多価アルコールとしては、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上の多価アルコールを併用してもよい。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0078】
非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上65℃以下がより好ましい。
ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求め、より具体的にはJIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0079】
非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5000以上1000000以下が好ましく、7000以上500000以下がより好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、2000以上100000以下が好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂の分子量分布Mw/Mnは、1.5以上100以下が好ましく、2以上60以下がより好ましい。
重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC-8120GPCを用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM-M(15cm)を使用し、THF溶媒で行う。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0080】
非晶性ポリエステル樹脂は、公知の製造方法により得られる。具体的には、例えば、重合温度を180℃以上230℃以下とし、必要に応じて反応系内を減圧し、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる方法により得られる。
原料の単量体が、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。この場合、重縮合反応は溶解補助剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪い単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い単量体とその単量体と重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と重縮合させるとよい。
【0081】
・結晶性ポリエステル樹脂
結晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合体が挙げられる。結晶性ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
ここで、結晶性ポリエステル樹脂は、結晶構造を容易に形成するため、芳香環を有する重合性単量体よりも直鎖状脂肪族の重合性単量体を用いた重縮合体が好ましい。
【0082】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸等の二塩基酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価のカルボン酸としては、例えば、芳香族カルボン酸(例えば1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。
多価カルボン酸としては、これらジカルボン酸と共に、スルホン酸基を持つジカルボン酸、エチレン性二重結合を持つジカルボン酸を併用してもよい。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0083】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えば主鎖部分の炭素数が7以上20以下である直鎖型脂肪族ジオール)が挙げられる。脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,14-エイコサンデカンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、脂肪族ジオールとしては、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオールが好ましい。
多価アルコールは、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のアルコールを併用してもよい。3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0084】
ここで、多価アルコールは、脂肪族ジオールの含有量を80モル%以上とすることがよく、好ましくは90モル%以上である。
【0085】
結晶性ポリエステル樹脂の融解温度は、50℃以上100℃以下が好ましく、55℃以上90℃以下がより好ましく、60℃以上85℃以下がさらに好ましい。
融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0086】
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、6,000以上35,000以下が好ましい。
【0087】
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、非晶性ポリエステルと同様に、公知の製造方法により得られる。
【0088】
結着樹脂の含有量は、トナー粒子全体に対して、40質量%以上95質量%以下が好ましく、50質量%以上90質量%以下がより好ましく、60質量%以上85質量%以下が更に好ましい。
【0089】
-着色剤-
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレート等の顔料;アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系等の染料;が挙げられる。
着色剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0090】
着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、着色剤は、複数種を併用してもよい。
【0091】
着色剤の含有量は、トナー粒子全体に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0092】
-離型剤-
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。離型剤は、これに限定されるものではない。
【0093】
離型剤の融解温度は、50℃以上110℃以下が好ましく、60℃以上100℃以下がより好ましい。
融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0094】
離型剤の含有量は、トナー粒子全体に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0095】
-その他の添加剤-
その他の添加剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等の公知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、内添剤としてトナー粒子に含まれる。
【0096】
-トナー粒子の特性等-
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造のトナー粒子であってもよい。
コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂と必要に応じて着色剤及び離型剤等のその他添加剤とを含んで構成された芯部と、結着樹脂を含んで構成された被覆層と、で構成されていることがよい。
【0097】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)は、2μm以上10μm以下が好ましく、4μm以上8μm以下がより好ましい。
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)は、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)を用い、電解液はISOTON-II(ベックマン・コールター社製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5質量%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。サンプリングする粒子数は50000個である。体積基準の粒度分布を小径側から描いて、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとする。
【0098】
トナー粒子の平均円形度は、0.94以上1.00以下が好ましく、0.95以上0.98以下がより好ましい。
トナー粒子の平均円形度は、(円相当周囲長)/(周囲長)[(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)]により求められる。具体的には、次の方法で測定される値である。
まず、測定対象となるトナー粒子を吸引採取し、扁平な流れを形成させ、瞬時にストロボ発光させることにより静止画像として粒子像を取り込み、その粒子像を画像解析するフロー式粒子像解析装置(シスメックス社製のFPIA-3000)によって求める。そして、平均円形度を求める際のサンプリング数は3500個とする。
トナーが外添剤を有する場合、界面活性剤を含む水中に、測定対象となるトナー(現像剤)を分散させた後、超音波処理を行って外添剤を除去したトナー粒子を得る。
【0099】
-トナー粒子の製造方法-
トナー粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば、凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。これらの製法に特に制限はなく、公知の製法が採用される。これらの中でも、凝集合一法により、トナー粒子を得ることがよい。
【0100】
具体的には、例えば、トナー粒子を凝集合一法により製造する場合、結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液を準備する工程(樹脂粒子分散液準備工程)と、樹脂粒子分散液中で(必要に応じて他の粒子分散液を混合した後の分散液中で)、樹脂粒子(必要に応じて他の粒子)を凝集させ、凝集粒子を形成する工程(凝集粒子形成工程)と、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を加熱し、凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程(融合・合一工程)と、を経て、トナー粒子を製造する。
【0101】
以下、各工程の詳細について説明する。
以下の説明では、着色剤、及び離型剤を含むトナー粒子を得る方法について説明するが、着色剤、離型剤は、必要に応じて用いられるものである。無論、着色剤、離型剤以外のその他添加剤を用いてもよい。
【0102】
-樹脂粒子分散液準備工程-
結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と共に、例えば、着色剤粒子が分散された着色剤粒子分散液、離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液を準備する。
【0103】
樹脂粒子分散液は、例えば、樹脂粒子を界面活性剤により分散媒中に分散させることにより調製する。
【0104】
樹脂粒子分散液に用いる分散媒としては、例えば水系媒体が挙げられる。
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0105】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも特に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0106】
樹脂粒子分散液において、樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等の一般的な分散方法が挙げられる。また、樹脂粒子の種類によっては、転相乳化法によって分散媒に樹脂粒子を分散させてもよい。転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて中和したのち、水系媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの転相を行い、樹脂を水系媒体中に粒子状に分散する方法である。
【0107】
樹脂粒子分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒径としては、例えば0.01μm以上1μm以下が好ましく、0.08μm以上0.8μm以下がより好ましく、0.1μm以上0.6μm以下がさらに好ましい。
樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製LA-700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとして測定される。他の分散液中の粒子の体積平均粒径も同様に測定される。
【0108】
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の含有量は、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0109】
樹脂粒子分散液と同様にして、例えば、着色剤粒子分散液、離型剤粒子分散液も調製される。つまり、樹脂粒子分散液における粒子の体積平均粒径、分散媒、分散方法、及び粒子の含有量に関しては、着色剤粒子分散液中に分散する着色剤粒子、及び離型剤粒子分散液中に分散する離型剤粒子についても同様である。
【0110】
-凝集粒子形成工程-
次に、樹脂粒子分散液と、着色剤粒子分散液と、離型剤粒子分散液と、を混合する。
そして、混合分散液中で、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とをヘテロ凝集させ目的とするトナー粒子の径に近い径を持つ、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とを含む凝集粒子を形成する。
【0111】
具体的には、例えば、混合分散液に凝集剤を添加すると共に、混合分散液のpHを酸性(例えばpH2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後、樹脂粒子のガラス転移温度に近い温度(具体的には、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度-30℃以上ガラス転移温度-10℃以下)に加熱し、混合分散液に分散された粒子を凝集させて、凝集粒子を形成する。
凝集粒子形成工程においては、例えば、混合分散液を回転せん断型ホモジナイザーで撹拌下、室温(例えば25℃)で凝集剤を添加し、混合分散液のpHを酸性(例えばpH2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、加熱を行ってもよい。
【0112】
凝集剤としては、例えば、混合分散液に含まれる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩、2価以上の金属錯体が挙げられる。凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。
凝集剤と共に、該凝集剤の金属イオンと錯体もしくは類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。
【0113】
無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の金属塩;ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体;などが挙げられる。
キレート剤としては、水溶性のキレート剤を用いてもよい。キレート剤としては、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸;イミノ二酸酢(IDA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のアミノカルボン酸;などが挙げられる。
キレート剤の添加量は、樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上3.0質量部未満がより好ましい。
【0114】
-融合・合一工程-
次に、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度以上(例えば樹脂粒子のガラス転移温度より10℃から30℃高い温度)に加熱して、凝集粒子を融合・合一し、トナー粒子を形成する。
【0115】
以上の工程を経て、トナー粒子が得られる。
凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を得た後、当該凝集粒子分散液と、樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と、をさらに混合し、凝集粒子の表面にさらに樹脂粒子を付着するように凝集して、第2凝集粒子を形成する工程と、第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱をし、第2凝集粒子を融合・合一して、コア・シェル構造のトナー粒子を形成する工程と、を経て、トナー粒子を製造してもよい。
【0116】
融合・合一工程終了後、溶液中に形成されたトナー粒子に、公知の洗浄工程、固液分離工程、及び乾燥工程を施して乾燥した状態のトナー粒子を得る。洗浄工程は、帯電性の観点から、イオン交換水による置換洗浄を充分に施すことがよい。固液分離工程は、生産性の観点から、吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。乾燥工程は、生産性の観点から、凍結乾燥、気流乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
【0117】
そして、本実施形態に係るトナーは、例えば、得られた乾燥状態のトナー粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー等によって行うことがよい。更に、必要に応じて、振動篩分機、風力篩分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0118】
-外添剤-
外添剤としては、例えば、無機粒子が挙げられる。該無機粒子として、SiO、TiO、SrTiO,Al、CuO、ZnO、SnO、CeO、Fe、MgO、BaO、CaO、KO、NaO、ZrO、CaO・SiO、KO・(TiO、Al・2SiO、CaCO、MgCO、BaSO、MgSO等が挙げられる。
【0119】
外添剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量は、通常、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である。
【0120】
外添剤としては、樹脂粒子(ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えば、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。
【0121】
外添剤の外添量は、トナー粒子に対して、0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.01質量%以上6.0質量%以下がより好ましい。
【0122】
[画像形成装置、画像形成方法]
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電装置と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成装置と、静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像装置と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着装置と、を備える。そして、静電荷像現像剤として、本実施形態に係る静電荷像現像剤が適用される。
【0123】
本実施形態に係る画像形成装置では、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、本実施形態に係る静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法(本実施形態に係る画像形成方法)が実施される。
【0124】
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体の表面に形成されたトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー画像の転写後、帯電前の像保持体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えたクリーニング装置;トナー画像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える除電装置;等の公知の画像形成装置が適用される。
本実施形態に係る画像形成装置が中間転写方式の装置の場合、転写装置は、例えば、表面にトナー画像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写装置と、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写装置と、を有する構成が適用される。
【0125】
本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、現像装置を含む部分が、画像形成装置に着脱するカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、現像装置を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0126】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。以下の説明においては、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0127】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づく、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジであってもよい。
【0128】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの上方には、各ユニットを通して中間転写ベルト(中間転写体の一例)20が延設されている。中間転写ベルト20は、駆動ロール22及び支持ロール24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行するようになっている。支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナーの供給がなされる。
【0129】
第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成及び動作を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。
【0130】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ロール(帯電装置の一例)2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yによって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成装置の一例)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置4Y、現像したトナー画像を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール5Y(一次転写装置の一例)、及び一次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング装置の一例)6Yが順に配置されている。
一次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。各ユニットの一次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各一次転写ロールに印加する転写バイアスの値を変える。
【0131】
以下、第1のユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。
まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が-600V乃至-800Vの電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(例えば20℃における体積抵抗率1×10-6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂の抵抗)であるが、レーザ光線が照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3からレーザ光線3Yを照射する。それにより、イエローの画像パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0132】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転する。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによってトナー画像として現像され可視化される。
【0133】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で撹拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体の一例)上に保持されている。そして、感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー画像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー画像が予め定められた一次転写位置へ搬送される。
【0134】
感光体1Y上のイエロートナー画像が一次転写位置へ搬送されると、一次転写ロール5Yに一次転写バイアスが印加され、感光体1Yから一次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー画像に作用し、感光体1Y上のトナー画像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と逆極性の(+)極性であり、第1のユニット10Yでは制御部(図示せず)によって例えば+10μAに制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーは感光体クリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0135】
第2のユニット10M以降の一次転写ロール5M、5C、5Kに印加される一次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエローのトナー画像が転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー画像が重ねられて多重転写される。
【0136】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と、中間転写ベルトの内面に接する支持ロール24と、中間転写ベルト20の像保持面側に配置された二次転写ロール(二次転写装置の一例)26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録紙(記録媒体の一例)Pが供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に予め定められたタイミングで給紙され、二次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と同極性の(-)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー画像に作用し、中間転写ベルト20上のトナー画像が記録紙P上に転写される。この際の二次転写バイアスは二次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0137】
この後、記録紙Pは定着装置28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれ、トナー画像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。
【0138】
トナー画像を転写する記録紙Pとしては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙が挙げられる。記録媒体としては、記録紙P以外にも、OHPシート等も挙げられる。
定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録紙Pの表面も平滑であることが好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等が好適に使用される。
【0139】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【0140】
[プロセスカートリッジ]
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像装置を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【0141】
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、上記構成に限られず、現像装置と、その他、必要に応じて、例えば、像保持体、帯電装置、静電荷像形成装置、及び転写装置等のその他装置から選択される少なくとも一つと、を備える構成であってもよい。
【0142】
以下、本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示すが、これに限定されるわけではない。以下の説明においては、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0143】
図2は、本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
図2に示すプロセスカートリッジ200は、例えば、取り付けレール116及び露光のための開口部118が備えられた筐体117により、感光体107(像保持体の一例)と、感光体107の周囲に備えられた帯電ロール108(帯電装置の一例)、現像装置111、及び感光体クリーニング装置113(クリーニング装置の一例)を一体的に組み合わせて保持して構成し、カートリッジ化されている。
図2中、109は露光装置(静電荷像形成装置の一例)、112は転写装置、115は定着装置、300は記録紙(記録媒体の一例)を示している。
【実施例0144】
以下、実施例により発明の実施形態を詳細に説明するが、発明の実施形態は、これら実施例に限定されるものではない。以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0145】
[フェライト粒子の作製]
<フェライト粒子(1)の作製>
Fe1318部と、Mn(OH)587部と、Mg(OH)96部とを混合し、温度900℃且つ4時間の仮焼成を行った。水中に、仮焼成品と、ポリビニルアルコール6.6部と、分散剤としてのポリカルボン酸0.5部と、メディア径1mmのジルコニアビーズとを投入し、サンドミルで粉砕及び混合し、分散液を得た。分散液中の粒子の体積平均粒径は1.5μmであった。
分散液を原料にしてスプレードライヤーで造粒及び乾燥させ、体積平均粒径37μmの粒状物を得た。次に、酸素分圧1%の酸素窒素混合雰囲気のもと、電気炉を用いて温度1450℃且つ4時間で本焼成を行い、次いで、大気中で温度900℃且つ3時間の加熱を行い、焼成粒子を得た。焼成粒子を解砕及び分級し、個数平均粒径31μmのフェライト粒子(1)を得た。
【0146】
[キャリア(1)の作製]
<樹脂液の作製>
・樹脂(1):シクロヘキシルメタクリレート重合体(重量平均分子量:35万)15.4部
・樹脂(2):2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート重合体(重量平均分子量:30万)0.39部
・窒素含有樹脂粒子:メラミン樹脂粒子(エポスターS(日本触媒社製))3.0部
・カーボンブラック粒子(1):カーボンブラック(DBP吸油量:174ml/100g、pH:8.5、個数平均一次粒径:30nm、BET比表面積:254m/g、比重:1.8、キャボット製、品名:VXC72)2.24部
・無機粒子(1):シリカ(個数平均一次粒径:7nm、比重:2.2、ヘキサメチルジシラザンにより表面処理されたフュームドシリカ粒子、トクヤマ製、品名:HM30S)7.0部
・溶剤:トルエン300部
【0147】
上記の材料とガラスビーズ(直径1mm、トルエンと同量)とをサンドミルに投入し、回転速度190rpmで30分間撹拌し、樹脂液(1)を得た。
【0148】
<キャリアの作製>
フェライト粒子(1)1000部と樹脂液(1)180部とを真空脱気型ニーダーに入れ、75℃、-20kPa(ゲージ圧)で2時間撹拌し、その後85℃まで昇温し、真空度-90kPa(ゲージ圧)にてトルエンを留去することにより、フェライト粒子に樹脂が被覆されたキャリアを形成した。引き続き、エルボジェットにて微粉及び粗粉を取り除くことでキャリア(1)を得た。得られたキャリア(1)の樹脂被覆層は、カーボンブラック粒子の凝集体が分散した海島構造であることが、前述の方法により確認された。
【0149】
[キャリア(2)の作製]
<樹脂液の作製>
カーボンブラック粒子(1)に代えてカーボンブラック粒子(2)(DBP吸油量:100ml/100g、個数平均一次粒径:10nm、BET比表面積:500m/g、比重:1.8、キャボット製、品名:VXC72)を2.24部添加し、無機粒子(1)に代えて無機粒子(2)(個数平均一次粒径:1nm、比重:2.2、ヘキサメチルジシラザンにより表面処理されたフュームドシリカ粒子、トクヤマ製、品名:HM30S)を2.4部添加した以外は、樹脂液(1)と同様にして樹脂液(2)を得た。
【0150】
<キャリアの作製>
樹脂液(1)の代わりに樹脂液(2)を用いた以外は、キャリア(1)と同様にして、キャリア(2)を得た。得られたキャリア(2)の樹脂被覆層は、カーボンブラック粒子の凝集体が分散した海島構造であることが、前述の方法により確認された。
【0151】
[キャリア(3)の作製]
<樹脂液の作製>
カーボンブラック粒子(1)に代えてカーボンブラック粒子(3)(DBP吸油量:400ml/100g、個数平均一次粒径:100nm、BET比表面積:50m/g、比重:1.8、キャボット製、品名:VXC72)を2.24部添加し、無機粒子(1)に代えて無機粒子(3)(個数平均一次粒径:80nm、比重:2.2、ヘキサメチルジシラザンにより表面処理されたフュームドシリカ粒子、トクヤマ製、品名:HM30S)を14.2部添加した以外は、樹脂液(1)と同様にして樹脂液(3)を得た。
【0152】
<キャリアの作製>
樹脂液(1)の代わりに樹脂液(3)を用いた以外は、キャリア(1)と同様にして、キャリア(3)を得た。得られたキャリア(3)の樹脂被覆層は、カーボンブラック粒子の凝集体が分散した海島構造であることが、前述の方法により確認された。
【0153】
[キャリア(4)の作製]
<樹脂液の作製>
カーボンブラック粒子(1)の添加量を5.0部とした以外は、樹脂液(1)と同様にして樹脂液(4)を得た。
【0154】
<キャリアの作製>
樹脂液(1)の代わりに樹脂液(4)を用い、かつ、撹拌時の条件を75℃、-20kPaで90分とした以外は、キャリア(1)と同様にして、キャリア(4)を得た。得られたキャリア(4)の樹脂被覆層は、カーボンブラック粒子の凝集体が分散した海島構造であることが、前述の方法により確認された。
【0155】
[キャリア(5)の作製]
<樹脂液の作製>
カーボンブラック粒子(1)に代えてカーボンブラック粒子(5)(DBP吸油量:200ml/100g、個数平均一次粒径:50nm、BET比表面積:200m/g、比重:1.8、キャボット製、品名:VXC72)を2.24部添加し、無機粒子(1)に代えて無機粒子(5)(個数平均一次粒径:15nm、比重:2.2、ヘキサメチルジシラザンにより表面処理されたフュームドシリカ粒子、トクヤマ製、品名:HM30S)を5.3部添加した以外は、樹脂液(1)と同様にして樹脂液(5)を得た。
【0156】
<キャリアの作製>
樹脂液(1)の代わりに樹脂液(5)を用いた以外は、キャリア(1)と同様にして、キャリア(5)を得た。得られたキャリア(5)の樹脂被覆層は、カーボンブラック粒子の凝集体が分散した海島構造であることが、前述の方法により確認された。
【0157】
[キャリア(6)の作製]
<樹脂液の作製>
カーボンブラック粒子(1)に代えてカーボンブラック粒子(6)(DBP吸油量:300ml/100g、個数平均一次粒径:50nm、BET比表面積:200m/g、比重:1.8、キャボット製、品名:VXC72)を2.24部添加し、無機粒子(1)に代えて無機粒子(5)(個数平均一次粒径:15nm、比重:2.2、ヘキサメチルジシラザンにより表面処理されたフュームドシリカ粒子、トクヤマ製、品名:HM30S)を5.3部添加した以外は、樹脂液(1)と同様にして樹脂液(6)を得た。
【0158】
<キャリアの作製>
樹脂液(1)の代わりに樹脂液(6)を用いた以外は、キャリア(1)と同様にして、キャリア(6)を得た。得られたキャリア(6)の樹脂被覆層は、カーボンブラック粒子の凝集体が分散した海島構造であることが、前述の方法により確認された。
【0159】
[キャリア(7)の作製]
<樹脂液の作製>
無機粒子(1)の添加量を1.1部に変更した以外は、樹脂液(1)と同様にして樹脂液(7)を得た。
【0160】
<キャリアの作製>
樹脂液(1)の代わりに樹脂液(7)を用いた以外は、キャリア(1)と同様にして、キャリア(7)を得た。得られたキャリア(7)の樹脂被覆層は、カーボンブラック粒子の凝集体が分散した海島構造であることが、前述の方法により確認された。
【0161】
[キャリア(8)の作製]
<樹脂液の作製>
カーボンブラック粒子(1)に代えてカーボンブラック粒子(5)(DBP吸油量:200ml/100g、個数平均一次粒径:50nm、BET比表面積:200m/g、比重:1.8、キャボット製、品名:VXC72)を2.24部添加し、無機粒子(1)に代えて無機粒子(3)(個数平均一次粒径:80nm、比重:2.2、ヘキサメチルジシラザンにより表面処理されたフュームドシリカ粒子、トクヤマ製、品名:HM30S)を7部添加した以外は、樹脂液(1)と同様にして樹脂液(8)を得た。
【0162】
<キャリアの作製>
樹脂液(1)の代わりに樹脂液(8)を用いた以外は、キャリア(1)と同様にして、キャリア(8)を得た。得られたキャリア(8)の樹脂被覆層は、カーボンブラック粒子の凝集体が分散した海島構造であることが、前述の方法により確認された。
【0163】
[キャリア(9)の作製]
真空脱気型ニーダーに入れる樹脂液(1)の量を減らした以外は、キャリア(1)と同様にして、キャリア(9)を得た。得られたキャリア(9)の樹脂被覆層は、カーボンブラック粒子の凝集体が分散した海島構造であることが、前述の方法により確認された。
【0164】
[キャリア(10)の作製]
真空脱気型ニーダーに入れる樹脂液(1)の量を増やした以外は、キャリア(1)と同様にして、キャリア(10)を得た。得られたキャリア(10)の樹脂被覆層は、カーボンブラック粒子の凝集体が分散した海島構造であることが、前述の方法により確認された。
【0165】
[キャリア(11)の作製]
<樹脂液の作製>
無機粒子(1)の添加量を3.0部に変更した以外は、樹脂液(1)と同様にして樹脂液(11)を得た。
【0166】
<キャリアの作製>
樹脂液(1)の代わりに樹脂液(11)を用い、かつ、真空脱気型ニーダーで65℃、-20kPaで70分撹拌し、その後75℃まで昇温し、真空度-80kPaでトルエンを留去した以外は、キャリア(1)と同様にして、キャリア(11)を得た。得られたキャリア(11)の樹脂被覆層は、カーボンブラック粒子の凝集体が分散した海島構造であることが、前述の方法により確認された。
【0167】
[キャリア(12)の作製]
真空脱気型ニーダーに入れる樹脂液(1)の量を減らした以外は、キャリア(1)と同様にして、キャリア(12)を得た。得られたキャリア(12)の樹脂被覆層は、カーボンブラック粒子の凝集体が分散した海島構造であることが、前述の方法により確認された。
【0168】
[キャリア(13)の作製]
真空脱気型ニーダーに入れる樹脂液(1)の量を増やした以外は、キャリア(1)と同様にして、キャリア(13)を得た。得られたキャリア(13)の樹脂被覆層は、カーボンブラック粒子の凝集体が分散した海島構造であることが、前述の方法により確認された。
【0169】
[キャリア(14)の作製]
<樹脂液の作製>
無機粒子(1)を添加しない以外は、樹脂液(1)と同様にして樹脂液(14)を得た。
【0170】
<キャリアの作製>
樹脂液(1)の代わりに樹脂液(14)を用い、かつ、真空脱気型ニーダーで95℃、-20kPaで180分撹拌し、その後の真空度を-99kPaとした以外は、キャリア(1)と同様にして、キャリア(14)を得た。得られたキャリア(14)の樹脂被覆層は、カーボンブラック粒子の凝集体が分散した海島構造であることが、前述の方法により確認された。
【0171】
[キャリア(15)の作製]
真空脱気型ニーダーで60℃、-20kPaで1時間撹拌し、その後70℃まで昇温し、真空度-75kPaでトルエンを留去した以外は、キャリア(1)と同様にして、キャリア(15)を得た。得られたキャリア(15)の樹脂被覆層は、カーボンブラック粒子の凝集体が二次凝集したストラクチャーが存在することが、前述の方法により確認された。
【0172】
[キャリア(16)の作製]
<樹脂液の作製>
カーボンブラック粒子(1)の添加量を4.0部とした以外は、樹脂液(1)と同様にして樹脂液(16)を得た。
【0173】
<キャリアの作製>
樹脂液(1)の代わりに樹脂液(16)を用い、かつ、真空脱気型ニーダーで70℃、-20kPaで1.5時間撹拌し、その後80℃まで昇温し、真空度-85kPaでトルエンを留去以外は、キャリア(1)と同様にして、キャリア(16)を得た。得られたキャリア(16)の樹脂被覆層は、カーボンブラック粒子の凝集体が分散した海島構造であることが、前述の方法により確認された。
【0174】
[キャリア(17)の作製]
<樹脂液の作製>
無機粒子(1)を添加しない以外は、樹脂液(1)と同様にして樹脂液(17)を得た。
【0175】
<キャリアの作製>
樹脂液(1)の代わりに樹脂液(17)を用いた以外は、キャリア(1)と同様にして、キャリア(17)を得た。得られたキャリア(17)の樹脂被覆層は、カーボンブラック粒子の凝集体が二次凝集したストラクチャーが存在することが、前述の方法により確認された。
【0176】
[キャリア(18)の作製]
<樹脂液の作製>
無機粒子(1)の添加量を15部に変更した以外は、樹脂液(1)と同様にして樹脂液(18)を得た。
【0177】
<キャリアの作製>
樹脂液(1)の代わりに樹脂液(18)を用い、かつ、撹拌時の条件を90℃、-20kPaで150分とし、乾燥時の条件を100℃、-99kPaとした以外は、キャリア(1)と同様にして、キャリア(18)を得た。得られたキャリア(18)の樹脂被覆層には、カーボンブラック粒子の凝集体が分散した海島構造及びカーボンブラック粒子の凝集体が二次凝集したストラクチャーのいずれも存在しないことが、前述の方法により確認された。
【0178】
得られたキャリアにおける、樹脂被覆層の平均厚さ(表中の「平均厚さ」)、カーボンブラック粒子の凝集体の個数平均円相当径(表中の「凝集体平均径」)、特定凝集体割合(表中の「特定割合」)、樹脂被覆層の面積全体に対する下記式(2)を満たす凝集体の合計面積の割合(表中の「式(2)割合」)、及び一辺が2μmの正方形内に存在する特定凝集体の断面の数(表中の「特定数」)を前述の方法により求めた結果を表1に示す。
【0179】
[現像剤の作製]
得られたキャリア(1)~(18)のいずれかと後述する方法により得られたトナーとを、キャリア:トナー=100:10(質量比)の混合比でVブレンダーに入れ20分間撹拌し、それぞれ、現像剤(1)~(18)を得た。
【0180】
[評価]
<細線再現性の評価>
画像形成装置(DocuCentre Color 400の改造機)に現像剤を仕込み、温度30℃/相対湿度88%の環境下で12時間放置した。放置後、A4サイズの紙1000枚に連続で画像形成を行った。画像は、紙の縦方向の上部に20cm×25cmの濃度100%画像を形成し、その下部にAからZまでのローマ字をMSゴシック/14ポイント/半角にて形成した。1000枚中最後の10枚の文字の状態を目視で確認し、下記のとおり分類した。結果を表1(表中の「細線再現性」)に示す。
A:最後の10枚のうち、線の太り、つぶれ、及びぼやけが1枚も認められない。
B:最後の10枚のうち、2~3枚程度線の太り、つぶれ、又はぼやけが僅かに認められるが、細線が確認できる。
C:最後の10枚のうち、2~3枚程度線の太り、つぶれ、又はぼやけが認められるが軽微であり、実用に差支えない。
D:最後の10枚のうち、線の太り、つぶれ、又はぼやけが認められ、細線に欠落が見られるチャートが少なくとも2枚ある。
E:最後の10枚のうち、線の太り、つぶれ、又はぼやけが認められ、細線に欠落が見られるチャートが3枚ある。
F:最後の10枚のうち、線の太り、つぶれ、又はぼやけが認められ、細線に欠落が見られるチャートが4枚以上ある。
【0181】
<スタベーション(白抜け)の評価>
画像形成装置(DocuCentre Color 400の改造機)に現像剤を仕込み、10℃/RH15%の環境下3日間放置し、画像密度1%の画像をA4用紙に100枚出力した後、ハーフトーン画像にベタ画像を組み合わせた評価チャートを10枚出力し、ベタ画像後端部の白抜け度合いを目視にて確認した。評価基準は以下の通りである。結果を表1(表中の「白抜け」)に示す。
A:白抜けはほぼ見られない
B:軽微な白抜けが見られる(後端部が白く靄がかかって見える)
C:白抜けが確認できる(白抜け幅≦1mm)
D:顕著な白抜けが確認できる(白抜け幅>1mm)
【0182】
【表1】
【0183】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、画像形成装置を高温高湿下で長期間静置した後に駆動させて形成された画像における細線再現性の向上と、低温低湿下で連続形成された高密度画像における画像端の白抜けの抑制と、が両立されていることがわかる。
【0184】
[トナーの作製]
上記現像剤の作製に用いたトナーは、下記方法により得られたものである。
【0185】
<樹脂粒子分散液(1)の調製>
・エチレングリコール(富士フイルム和光純薬(株)) 37部
・ネオペンチルグリコール(富士フイルム和光純薬(株)) 65部
・1,9-ノナンジオール(富士フイルム和光純薬(株)) 32部
・テレフタル酸(富士フイルム和光純薬(株)) 96部
上記の材料をフラスコに仕込み、1時間かけて温度200℃まで上げ、反応系内が均一に撹拌されていることを確認したのち、ジブチル錫オキサイドを1.2部投入した。生成する水を留去しながら6時間かけて240℃まで温度を上げ、240℃で4時間撹拌を継続し、ポリエステル樹脂(酸価9.4mgKOH/g、重量平均分子量13,000、ガラス転移温度62℃)を得た。このポリエステル樹脂を溶融状態のまま、乳化分散機(キャビトロンCD1010、ユーロテック社)に毎分100gの速度で移送した。別途、試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈した0.37%濃度の希アンモニア水をタンクに入れ、熱交換器で120℃に加熱しながら毎分0.1リットルの速度でポリエステル樹脂と同時に乳化分散機に移送した。乳化分散機を回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cmの条件で運転し、体積平均粒径160nm、固形分30%の樹脂粒子分散液(1)を得た。
【0186】
<樹脂粒子分散液(2)の調製>
・デカン二酸(東京化成工業(株)) 81部
・ヘキサンジオール(富士フイルム和光純薬(株)) 47部
上記の材料をフラスコに仕込み、1時間かけて温度160℃まで上げ、反応系内が均一に撹拌されていることを確認したのち、ジブチル錫オキサイドを0.03部投入した。生成する水を留去しながら6時間かけて200℃まで温度を上げ、200℃で4時間撹拌を継続した。次いで、反応液を冷却し、固液分離を行い、固形物を温度40℃/減圧下で乾燥し、ポリエステル樹脂(C1)(融点64℃、重量平均分子量15,000)を得た。
【0187】
・ポリエステル樹脂(C1) 50部
・アニオン性界面活性剤(ネオゲンSC、第一工業製薬(株)) 2部
・イオン交換水 200部
上記の材料を120℃に加熱して、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50、IKA社(株))で十分に分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理した。体積平均粒径が180nmになったところで回収し、固形分20%の樹脂粒子分散液(2)を得た。
【0188】
<着色剤粒子分散液(1)の調製>
・シアン顔料(PigmentBlue15:3、大日精化工業(株)) 10部
・アニオン性界面活性剤(ネオゲンSC、第一工業製薬(株)) 2部
・イオン交換水 80部
上記の材料を混合し、高圧衝撃式分散機(アルティマイザーHJP30006、スギノマシン社)により1時間分散し、体積平均粒径180nm、固形分20%の着色剤粒子分散液(1)を得た。
【0189】
<離型剤粒子分散液(1)の調製>
・パラフィンワックス(HNP-9、日本精蝋(株)) 50部
・アニオン性界面活性剤(ネオゲンSC、第一工業製薬(株)) 2部
・イオン交換水 200部
上記の材料を120℃に加熱して、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50、IKA社)で十分に分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理した。体積平均粒径が200nmになったところで回収し、固形分20%の離型剤粒子分散液(1)を得た。
【0190】
<トナー粒子の作製>
・樹脂粒子分散液(1) 150部
・樹脂粒子分散液(2) 50部
・着色剤粒子分散液(1) 25部
・離型剤粒子分散液(1) 35部
・ポリ塩化アルミニウム 0.4部
・イオン交換水 100部
上記の材料を丸型ステンレス製フラスコに投入し、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50、IKA社)を用いて十分に混合分散した後、フラスコ内を撹拌しながら加熱用オイルバスで48℃まで加熱した。反応系内を48℃で60分間保持した後、樹脂粒子分散液(1)を緩やかに70部追加した。次いで、0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを8.0に調整し、フラスコを密閉し撹拌軸のシールを磁力シールし、撹拌を継続しながら90℃まで加熱して30分間保持した。次いで、降温速度5℃/分で冷却し、固液分離し、イオン交換水で十分に洗浄した。次いで、固液分離し、30℃のイオン交換水に再分散し、回転速度300rpmで15分間撹拌し洗浄した。この洗浄操作をさらに6回繰り返し、濾液のpHが7.54、電気伝導度が6.5μS/cmとなったところで固液分離し、真空乾燥を24時間継続して、体積平均粒径5.7μmのトナー粒子(1)を得た。
【0191】
<トナー粒子の外添>
上記のトナー粒子(1)100部と、疎水性シリカ(日本アエロジル社製RY50)0.7部とをヘンシェルミキサーで混合し、トナーを得た。
【0192】
本実施形態には、下記の態様が含まれる。
(((1)))
芯材と、
前記芯材を被覆し、樹脂とカーボンブラック粒子とを含有する樹脂被覆層と、
を有し、
前記樹脂被覆層は、前記カーボンブラック粒子の凝集体の円相当径をAμmとし前記樹脂被覆層の平均厚さをBμmとしたときに下記式(1)を満たす前記凝集体を含み、
前記樹脂被覆層の断面において、前記樹脂被覆層の面積全体に対する下記式(1)を満たす前記凝集体の合計面積の割合が10%以上50%以下である、静電荷像現像用キャリア。
式(1):0.2×B≦A≦0.8×B
(((2)))
前記樹脂被覆層は、前記カーボンブラック粒子以外の無機粒子をさらに含有する、(((1)))に記載の静電荷像現像用キャリア。
(((3)))
前記無機粒子の個数平均一次粒径は、前記カーボンブラック粒子の個数平均一次粒径よりも小さい、(((2)))に記載の静電荷像現像用キャリア。
(((4)))
前記樹脂被覆層の断面のうち、一辺が2μmの正方形内に存在する前記式(1)を満たす凝集体の断面の数が、2個以上10個以下である、(((1)))~(((3)))のいずれか1つ請求項1に記載の静電荷像現像用キャリア。
(((5)))
前記樹脂被覆層の平均厚さは、0.3μm以上3μm以下である、(((1)))~(((4)))のいずれか1つに記載の静電荷像現像用キャリア。
(((6)))
前記樹脂被覆層の平均厚さは、0.4μm以上2μm以下である、(((5)))に記載の静電荷像現像用キャリア。
(((7)))
静電荷像現像用トナーと、
(((1)))~(((6)))のいずれか1つに記載の静電荷像現像用キャリアと、
を含む、静電荷像現像剤。
(((8)))
(((7)))に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像装置を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
(((9)))
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成装置と、
(((7)))に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像装置と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着装置と、
を備える画像形成装置。
(((10)))
像保持体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
(((7)))に記載の静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、
を有する画像形成方法。
【0193】
(((1)))に係る発明によれば、式(1)を満たす凝集体の合計面積の割合が10%未満又は50%超えの場合に比べ、画像形成装置を高温高湿下で長期間静置した後に駆動させて形成された画像における細線再現性の向上と、低温低湿下で連続形成された高密度画像における画像端の白抜けの抑制と、を両立する静電荷像現像用キャリアが提供される。
(((2)))に係る発明によれば、樹脂被覆層がカーボンブラック粒子以外の無機粒子を含有しない場合に比べ、画像形成装置を高温高湿下で長期間静置した後に駆動させて形成された画像における細線再現性の向上と、低温低湿下で連続形成された高密度画像における画像端の白抜けの抑制と、を両立する静電荷像現像用キャリアが提供される。
(((3)))に係る発明によれば、無機粒子の個数平均一次粒径がカーボンブラック粒子の個数平均一次粒径以上である場合に比べ、画像形成装置を高温高湿下で長期間静置した後に駆動させて形成された画像における細線再現性の向上と、低温低湿下で連続形成された高密度画像における画像端の白抜けの抑制と、を両立する静電荷像現像用キャリアが提供される。
(((4)))に係る発明によれば、一辺が2μmの正方形内に存在する式(1)を満たす凝集体の断面の数が2個未満又は10個超えである場合に比べ、画像形成装置を高温高湿下で長期間静置した後に駆動させて形成された画像における細線再現性の向上と、低温低湿下で連続形成された高密度画像における画像端の白抜けの抑制と、を両立する静電荷像現像用キャリアが提供される。
(((5)))に係る発明によれば、樹脂被覆層の平均厚さが0.3μm未満又は3μm超えである場合に比べ、画像形成装置を高温高湿下で長期間静置した後に駆動させて形成された画像における細線再現性の向上と、低温低湿下で連続形成された高密度画像における画像端の白抜けの抑制と、を両立する静電荷像現像用キャリアが提供される。
(((6)))に係る発明によれば、樹脂被覆層の平均厚さが0.4μm未満又は2μm超えである場合に比べ、画像形成装置を高温高湿下で長期間静置した後に駆動させて形成された画像における細線再現性の向上と、低温低湿下で連続形成された高密度画像における画像端の白抜けの抑制と、を両立する静電荷像現像用キャリアが提供される。
(((7)))、(((8)))、(((9)))、又は(((10)))に係る発明によれば、式(1)を満たす凝集体の合計面積の割合が10%未満又は50%超えである静電荷像現像用キャリアを適用した場合に比べ、画像形成装置を高温高湿下で長期間静置した後に駆動させて形成された画像における細線再現性の向上と、低温低湿下で連続形成された高密度画像における画像端の白抜けの抑制と、を両立する静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置、又は画像形成方法が提供される。
【符号の説明】
【0194】
1Y、1M、1C、1K 感光体(像保持体の一例)
2Y、2M、2C、2K 帯電ロール(帯電装置の一例)
3 露光装置(静電荷像形成装置の一例)
3Y、3M、3C、3K レーザ光線
4Y、4M、4C、4K 現像装置
5Y、5M、5C、5K 一次転写ロール(一次転写装置の一例)
6Y、6M、6C、6K 感光体クリーニング装置(クリーニング装置の一例)
8Y、8M、8C、8K トナーカートリッジ
10Y、10M、10C、10K 画像形成ユニット
20 中間転写ベルト(中間転写体の一例)
22 駆動ロール
24 支持ロール
26 二次転写ロール(二次転写装置の一例)
28 定着装置
30 中間転写体クリーニング装置
P 記録紙(記録媒体の一例)
107 感光体(像保持体の一例)
108 帯電ロール(帯電装置の一例)
109 露光装置(静電荷像形成装置の一例)
111 現像装置
112 転写装置
113 感光体クリーニング装置(クリーニング装置の一例)
115 定着装置
116 取り付けレール
117 筐体
118 露光のための開口部
200 プロセスカートリッジ
300 記録紙(記録媒体の一例)
図1
図2