(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025037022
(43)【公開日】2025-03-17
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 19/10 20060101AFI20250310BHJP
【FI】
H02K19/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023143735
(22)【出願日】2023-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】523338495
【氏名又は名称】リーディングエッジ・モータ・デザイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001793
【氏名又は名称】弁理士法人パテントボックス
(72)【発明者】
【氏名】中桐 則昭
【テーマコード(参考)】
5H619
【Fターム(参考)】
5H619AA01
5H619BB01
5H619BB06
5H619BB15
5H619BB22
5H619BB24
5H619PP05
5H619PP13
(57)【要約】
【課題】装置を大型化することなく高出力を実現可能な回転電機を提供すること。
【解決手段】
回転電機(10)は、回転子(11)と、固定子(12)と、を備える。回転子(11)は、回転軸(C)を中心に回転可能に設けられ、複数の突極(SPn)それぞれが配置された複数の回転子コア(111n)を備える。固定子(12)は、回転子の周方向に設けられ、複数の巻線(Wn)それぞれが配置された複数の固定子コア(121n)を備える。各突極が配置された各回転子コアは回転子の複数の極を形成し、各巻線が配置された各固定子コアは固定子の複数の極を形成する。固定子の極数(Psn)と回転子の極数(Prn)との比率はPsn:Prn=4:3である。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機(10)であって、
回転軸(C)を中心に回転可能に設けられ、複数の突極(SPn)それぞれが配置された複数の回転子コア(111n)を備える回転子(11)と、
前記回転子の周方向に設けられ、複数の巻線(Wn)それぞれが配置された複数の固定子コア(121n)を備える固定子(12)と、を備え、
各突極が配置された各回転子コアは前記回転子の複数の極を形成し、各巻線が配置された各固定子コアは前記固定子の複数の極を形成し、
前記固定子の極数(Psn)と前記回転子の極数(Prn)との比率が、Psn:Prn=4:3となるように構成されている、回転電機。
【請求項2】
前記固定子の極数は8以上32以下、かつ、前記回転子の極数は6以上24以下の範囲となるように構成されている、請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記固定子は、前記各固定子コアを形成する第1の一対の環状構造部(12a,12b)を有し、
前記各固定子コアは、前記回転子に対する第1の一対の極対向面(12Sa,12Sb)を有するように構成されており、
前記回転子は、前記各回転子コアを形成する第2の一対の環状構造部(11a,11b)を有し、
前記各回転子コアは、前記固定子に対する第2の一対の極対向面(11Sa,11Sb)を有するように構成されている、請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記第1の一対の環状構造部は、第1環状構造部(12a)と第2環状構造部(12b)とを有し、
前記各固定子コアは、前記第1環状構造部が有する第1コア部(121a)と前記第2環状構造部が有する第2コア部(121b)とが回転軸方向(Y)に連結され一体形成されており、
前記各巻線は、前記回転軸方向における前記第1コア部と前記第2コア部との間の所定の位置に配置されており、
前記各固定子コアは、前記回転子に対する前記第1の一対の極対向面として、前記第1コア部が有する前記回転子への対向面である第1極対向面(12Sa)、及び、前記第2コア部が有する前記回転子への対向面である第2極対向面(12Sb)を有するように構成されている、請求項3に記載の回転電機。
【請求項5】
前記第2の一対の環状構造部は、第3環状構造部(11a)と第4環状構造部(11b)とを有し、
前記各回転子コアは、前記第3環状構造部が有する第3コア部(111a)と前記第4環状構造部が有する第4コア部(111b)とが回転軸方向(Y)に連結され一体形成されており、
前記各突極は、前記第3コア部及び前記第4コア部それぞれの所定の位置に配置されており、
前記各回転子コアは、前記固定子に対する前記第2の一対の極対向面として、前記第3コア部が有する前記固定子への対向面である第3極対向面(11Sa)、及び、前記第4コア部が有する前記固定子への対向面である第4極対向面(11Sb)を有するように構成されている、請求項3又は4に記載の回転電機。
【請求項6】
前記各巻線は、前記各固定子コアにおける回転軸方向(Y)の中央に位置するように配置されている、請求項1に記載の回転電機。
【請求項7】
前記固定子は、前記各固定子コアに配置される前記各巻線が、周方向(A)において、同じ向き接続され、前記各巻線に、4相の各相の電流が流れ励磁されると、磁界の向きが同じになるように構成されており、
4相のうちの2つの相の電流が同時に供給される2相同時励磁が実行されることにより、前記各固定子コアの極の性質が切り替わるように構成されている、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項8】
前記2相同励磁は、第1相の電流と第2相の電流とが同時に供給される第1同時励磁、前記第2相の電流と第3相の電流とが同時に供給される第2同時励磁、前記第3相の電流と第4相の電流とが同時に供給される第3同時励磁、及び、前記第4相の電流と前記第1相の電流とが同時に供給される第4同時励磁、を含み、
前記第1同時励磁、前記第2同時励磁、前記第3同時励磁、前記第4同時励磁の順に同時励磁が実行されることにより、前記各固定子コアの前記極の前記性質が切り替わるように構成されている、請求項7に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機(electric motor)に関する技術は、グリーンイノベーションに関する技術テーマの1つとして注目されている。現在では、トルクを発生させるための異なる特徴を有する複数種の回転電機が存在する。例えば回転子に強磁性体を用いるスイッチトリラクタンスモータがある(特許文献1参照)。そのため、社会に対する回転電機の適用範囲も広がり、様々な産業分野で活用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転電機では、トルクの増大(高出力の実現)が望まれる。トルクを増大する方法は、例えば固定子が有する極を増加させる方法(多極化方法)などが挙げられる。しかしながら、これまでの方法では、回転電機が大型化する可能性があり、トルクが増大できたとしても、回転電機の適用範囲が狭まり、改善の余地がある。回転電機を社会の様々な場面で活用することを考慮すると、回転電機を大型化することなく、トルクを増加できることが望まれている。
【0005】
本発明は、装置を大型化することなく高出力を実現可能な回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために以下の技術的手段を採用する。特許請求の範囲及びこの項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施の形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。よって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
本発明の一態様である回転電機(10)は、回転子(11)と、固定子(12)と、を備える。回転子(11)は、回転軸(C)を中心に回転可能に設けられ、複数の突極(SPn)それぞれが配置された複数の回転子コア(111n)を備える。固定子(12)は、回転子の周方向に設けられ、複数の巻線(Wn)それぞれが配置された複数の固定子コア(121n)を備える。各突極が配置された各回転子コアは回転子の複数の極を形成し、各巻線が配置された各固定子コアは固定子の複数の極を形成する。回転電機は、固定子の極数(Psn)と回転子の極数(Prn)との比率が、Psn:Prn=4:3となるように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、大型化することなく高出力を実現可能な回転電機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る回転電機の概略構成図である。
【
図2A】
図2Aは、第1実施形態に係る回転子と固定子との概略構成を示すA-A断面図である。
【
図2B】
図2Bは、第1実施形態に係る回転子と固定子との概略構成を示すB-B断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る固定子の第1極形成部が有する巻線部位の形状を示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る固定子の第1極形成部の形状を示す図である。
【
図5A】
図5Aは、第1実施形態に係る回転子と固定子との間に発生する磁路を示す図(その1)である。
【
図5B】
図5Bは、第1実施形態に係る回転子と固定子との間に発生する磁路を示す図(その2)である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る回転電機の制御システム(駆動回路)を示す図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る回転電機の制御例を示す図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る回転電機におけるトルクと電流の位相角との関係(トルクカーブ)を示す図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る回転電機の磁束分布を示す図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係る回転電機における固定子の極数と回転子の極数との関係を示す図である。
【
図11】
図11は、変形例に係る回転電機における回転子の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以降に、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態に係る回転電機10の概略構成図である。本実施形態に係る回転電機10は、回転速度が電圧と起電力とのバランスで決まる直流モータ(direct-current motor)である。直流モータは、直流電源から直流電流が入力されることで回転する電動機である。
図1に示すように、回転電機10は、主に、回転子(ロータ:rotor)11、固定子(ステータ:stator)12、出力シャフト13、及び収容ケース14で構成されている。回転子11は、永久磁石(permanent magnet)を有していない。回転子11は、強磁性の鉄芯のみで構成されている。よって、回転電機10は、界磁に磁石を設けず、リラクタンス(磁気抵抗)が異なる極形状とし、突極性によるトルクを得る構造のリラクタンスモータ(RM:reluctance motor)である。回転力は巻線によって生み出される磁界による吸引力で生み出される。よって、回転電機10は、スイッチトリラクタンスモータ(SRM:switched reluctance motor)に相当する。回転子11は、出力シャフト13に固定されている。回転子11は、回転駆動による回転力を、出力シャフト13を介して、駆動対象の負荷に出力する。固定子12は、回転子11を回転させる力を付与するため、回転子11の周方向に設けられている。固定子12は、複数の電気子巻線Wn(以降、便宜上「巻線Wn」という)を有している。複数の巻線Wnは、固定子12に所定の間隔で配置されている。固定子12は、ブラケット(bracket:非図示)を介して、収容ケース14に固定されている。出力シャフト13は、ベアリング(bearing:非図示)によって支持されている。ベアリングは、収容ケース14によって支持されている。この構成によれば、本実施形態に係る回転電機10では、固定子12の各巻線Wnに多相電流を流したとき(励磁したとき)、多相電流の周波数で決まる回転速度(すなわち同期速度)で回転する回転磁界が発生する。その結果、回転子11は、発生した回転磁界によって吸引され回転する。なお、
図1は、回転子11の回転軸Cの方向を参照符号Yで示し、当該回転軸Cに対する垂直方向を参照符号Zで示し、当該回転軸Cに対する水平方向を参照符号Xで示している。この三次元方向については、以降の説明においても同様の意味で用いられる。
【0012】
本発明は、従来の回転電機に対して、高い容積率を実現する構造及び制御方法を提案するものである。本発明で言う、高い容積率とは、従来の回転電機(比較対象)と同じ大きさであっても、比較対象よりも高出力を実現するという意味である。換言すると、回転電機を大型化することなく高出力を実現することができることを意味する。また、出力が同じであれば、回転電機を小型化することができることを意味する。回転電機の出力コストは、容積に比例するため、高い容積率の実現は、回転電機の出力コストを低減することにつながる。本発明者は、これらの点に鑑み、鋭意検討を行った。その結果、発明者は、上記点を実現する方法として、(i):固定子12の極数を増やすことなく最大トルクが発生するトルクポイント(以降、便宜上「最大トルクポイント」という)が従来構成より多くなる構成、(ii):トルクを生み出す固定子12の極対向面(回転子11に対する極対向面)の面積が従来構成より広くなる構成、(iii):励磁したときに発生する三次元磁路(特に横方向磁束:transverse flux)を活用する構成、及び、(iv):当該構成に基づく四相電流による制御を考案した。
【0013】
一般的に、固定子12の極数Psnと回転子11の極数Prnとの比率は3:2の関係を有している。これに対して、本発明では、固定子12の極数Psnと回転子11の極数Prnとの比率が4:3の関係を有する構成を採用し、固定子12の極数Psnを増やすことなく最大トルクポイントを従来構成の1.125倍となるようにしている。また、本発明では、回転子11において、トルクを生み出す固定子12の極対向面を2面有する構成を採用し、極対向面の面積を従来構成の2倍となるようにしている。さらに、本発明では、固定子12を励磁したときに、固定子12と回転子11との間に横方向磁束を用いた三次元磁路が発生する構成を採用している。さらに、本発明では、四相電流による制御を実施し、その中で、二相電流を同時励磁する特定の制御を実施する構成を採用し、入力を増大させている。この構成により、本発明では、従来よりも高い容積率を実現し、同じ大きさで高出力の回転電機(同じ出力で小型の回転電機)を提供する。
【0014】
(固定子と回転子)
図2A,2Bには、本実施形態に係る回転電機10の回転軸C(回転子11の回転軸C)に対する垂直方向Zの断面図が示されている。
図2Aは、本実施形態に係る回転子11と固定子12との概略構成を示すA-A断面図である。
図2Bは、本実施形態に係る回転子11と固定子12との概略構成を示すB-B断面図である。なお、
図2は、回転電機10の周方向を参照符号Aで示し、当該電機の径方向を参照符号Bで示している。周方向及び径方向については、以降の説明においても同様の意味で用いられる。
【0015】
図2A,2Bには、本実施形態の構成が有する特有の極数の比率(Psn:Prn=4:3(=2:1.5))を明示するため、回転子11の極数Prn:18に対して固定子12の極数Psn:24の例が示されている。
図2Bに示すように、固定子12は、各巻線Wnを配置するための所定の空間WS(以降、便宜上「コイルスペース」という)が設けられている複数(24個)の固定子コア121n(121
1-121
24)を有している。よって、各固定子コア121nは、第1極形成部に相当する。各固定子コア121nは、固定子12において周方向Aに所定の間隔で(所定の位置に)配置されている(環状形成されている)。極数が24個の場合、各固定子コア121n(固定子12の極)は、回転軸Cを基準とする中心角15°(=360°/24)の範囲に配置されている。本実施形態の構成では、固定子12の極数Psnは、所定の計算式1[360°/(固定子コア121nの中心角×1.5)]によって算出可能である。よって、各固定子コア121nの周方向Aの幅(固定子12の極幅)は、中心角10°(=360°/24/1.5)である。隣接する2つの固定子コア121n同士の周方向Aの間隔は、中心角5°(=15°-5°)となる。また、径方向Bにおける固定子12と回転子11との間には、固定子12が周囲に設けられた状態で回転子11が回転可能な隙間が設けられている。各固定子コア121nは、回転軸Cを基準に内側(回転子11側)から外側に向けて延在して形成されている。よって、各固定子コア121nの径方向Bの第1端は、回転電機10の外側に位置し、径方向Bの第2端は、回転子11に対する極対向面12Sに位置する。
【0016】
上述したように、各固定子コア121nには、コイルスペースWSに巻線Wnが配置されており、当該巻線Wnに電流が流れることで励磁される。その結果、各固定子コア121nは、所定の磁界を形成する。また、各固定子コア121nの巻線Wnには、四相電流の各相の直流電流が流れる。各巻線Wnには、4つごとに同じ相の直流電流が流れるように接続されている。四相電流の各相(90°ずつ位相がずれている4つの相)をI相、II相、III相、及びIV相とすると、各巻線Wnには、I相、II相、III相、IV相の各相が周方向Aに順に割り当てられている。
図2Aには、I相の直流電流が流れる各固定子コア121
I(n)、II相の直流電流が流れる各固定子コア121
II(n)、III相の直流電流が流れる各固定子コア121
III(n)、IV相の直流電流が流れる各固定子コア121
IV(n)、が、周方向Aに順に割り当てられた固定子12の一例が示されている。
【0017】
図2Bに示すように、固定子12は、第1環状構造部12aと第2環状構造部12bとを有している。ここで言う環状構造部11a,11bは、例えば平面形状かつ環状である、所定の厚さを有する鋼板などが一例として挙げられる。各固定子コア121nは、第1環状構造部12aが有する第1コア部121aと第2環状構造部12bが有する第2コア部121bとが連結部121cを介して回転軸方向Yに連結され一体形成されている。第1コア部121aと第2コア部121bとの間の空間が、巻線Wnが配置されるコイルスペースWSに相当する。換言すると、巻線Wnの導線は、連結部121cに巻き付けられる。これにより、巻線Wnは、固定子コア121nにおける回転軸方向Yの略中央に位置する。また、第1環状構造部12aが有する第1コア部121aは、所定の厚さを有する凸部122aを介して側板123aに固定されている。第2環状構造部12bが有する第2コア部121bは、所定の厚さを有する凸部122bを介して側板123bに固定されている。このように、固定子12は、第1の一対の環状構造部(ツインリング)を一体形成して構成されている。この構成によれば、各固定子コア121nは、回転子11に対する極対向面12Sとして、第1コア部121aが有する回転子11への対向面である第1極対向面12Sa、及び、第2コア部121bが有する回転子11への対向面である第2極対向面12Sbの、第1の一対の極対向面(2面)を有している。このように、本実施形態に係る回転電機10では、トルクを生み出す固定子12の極対向面12Sの面積が従来構成よりも広くなる(2倍となる)ように構成されている。
【0018】
図2Aに示すように、回転子11は、鋼板からなる強磁性の鉄芯を有し、当該鉄芯に複数の突極SPnを形成する(複数の突起が設けられた)複数(18個)の回転子コア111n(111
1-111
18)を有している。よって、各回転子コア111nは、第2極形成部に相当する。各回転子コア111nは、回転子11において周方向Aに所定の間隔で回転子本体11mbに配置されている(環状形成されている)。極数が18個の場合、各回転子コア111n(回転子11の極)は、回転軸Cを基準とする中心角20°(=360°/18)の範囲に配置されている。本実施形態の構成では、回転子11の極数Prnは、所定の計算式2[360°/(回転子コア111nの中心角×2)]によって算出可能である。よって、各回転子コア111nの周方向Aの幅(回転子11の極幅)は、中心角10°(=360°/18/2)である。隣接する2つの回転子コア111n同士の周方向Aの間隔は、中心角10°(=20°-10°)となる。換言すると、各突極SPnの周方向Aの幅(回転子11の極幅)は、中心角10°(=20°-10°)に相当する。また、各回転子コア111nは、回転軸Cを基準に外側(固定子12側)から内側に向けて延在して形成されている。よって、各回転子コア111nの径方向Bの第1端は、回転電機10の内側に位置し、径方向Bの第2端は、固定子12に対する極対向面11Sに位置する。
【0019】
図2Bに示すように、回転子11は、第3環状構造部11aと第4環状構造部11bとを有している。ここで言う環状構造部11a,11bは、例えば平面形状かつ環状である、所定の厚さを有する鋼板などが一例として挙げられる。各回転子コア111nは、第3環状構造部11aが有する第3コア部111aと第4環状構造部11bが有する第4コア部111bとが連結部111cを介して回転軸方向Yに連結され回転子本体11mbに一体形成されている。第3コア部111a及び第4コア部111bそれぞれが、突極SPnが形成される強磁性の部位を有している。換言すると、1つの回転子コア111nに、第1突極SPa及び第2突極SPbの2つの突極SPnが形成される。このように、回転子11は、第2の一対の環状構造部(ツインリング)を一体形成して構成されている。この構成によれば、各回転子コア111nは、固定子12に対する極対向面11Sとして、第3コア部111aが有する固定子12への対向面である第3極対向面11Sa、及び、第4コア部111bが有する固定子12への対向面である第4極対向面11Sbの、第2の一対の極対向面(2面)を有している。
【0020】
このように、本実施形態に係る回転電機10は、回転子コア111nの数に対して固定子コア112nの数が約1.33倍であり、固定子12の極数Psnと回転子11の極数Prnとが4:3(=2:1.5)の関係を有する構成となっている。この構成によれば、固定子12の極数Psnを増やすことなく最大トルクポイントが従来構成よりも多くなる。換言すると、本実施形態の構成では、固定子12の極数Psnを増やすことなく回転子11の極数Prnを増やし、最大トルクポイントを従来構成よりも多くした。例えば、固定子12の極数Psnが24個の場合、本実施形態の構成では、回転子11の極数Prnは18個であるのに対して、固定子12の極数Psnと回転子11の極数Prnとが3:2の関係を有する従来構成では、回転子11の極数Prnは16個である。換言すると、本実施形態の構成は、最大トルクポイントが従来構成よりも1.125倍(=18/16)に増加する。よって、本実施形態の構成は、従来構成より大きいトルクが得られる。
【0021】
また、本実施形態に係る回転電機10では、各固定子コア121nが、回転子11に対する2つの極対向面12S(第1極対向面12Sa及び第2極対向面12Sb)を有し、各回転子コア111nが、固定子12に対する2つの極対向面11S(第3極対向面11Sa及び第4極対向面11Sb)を有する構成となっている。この構成によれば、トルクを生み出す固定子12の極対向面12Sの面積は従来構成よりも広くなる。本実施形態の構成では、極対向面を2面有する。一方、従来構成では、極対向面は1面である。よって、本実施形態の構成は、従来構成より2倍のトルクが得られる。
【0022】
以上のように、本実施形態に係る回転電機10は、装置の大きさを維持したまま、トルクの増大を図ることができる。換言すると、同じ大きさの回転電機であれば、高い容積率を実現することができる。
【0023】
(極形成部)
図3は、本実施形態に係る固定子12の第1極形成部が有する巻線部位の形状を示す図である。上述したように、本実施形態に係る固定子12の第1極形成部は、各固定子コア121nである。各固定子コア121nは、各巻線Wnを配置する部位(巻線部位)を有しており、固定子コア121nの連結部121cが当該部位に相当する。巻線部位の垂直断面(回転軸Cに対する垂直断面)の形状は、矩形形状でなくてもよい。
図3に示すように、例えば台形形状であってもよい。台形形状の場合、巻線部位は、回転軸Cに近い辺の長さよりも遠い辺の長さが長い。換言すると、台形形状の巻線部位は、径方向Bに広がっている。
図4は、本実施形態に係る固定子12の第1極形成部の形状を示す図である。本実施形態に係る固定子コア121nは、回転子11に対する極対向面12Sが直線形状でなくてもよい。
図4に示すように、例えば円弧形状であってもよい。
【0024】
また、固定子12及び回転子11の各極形成部(第1及び第2極形成部)は、各固定子コア121n及び各固定子コア111nである。これらの部位は、例えば珪素鋼板だけでなく、珪素の含有有無に関係ない電磁鋼板を積層して構成してもよい。
【0025】
(コイルスペース)
コイルスペースWSは、所定の電流により必要な起磁力を確保できる巻線Wnを配置する空間として、各固定子コア121nに設けられている。コイルスペースWSを大きくする場合には、全体長の延長や容積の増大を抑制するという観点から、コイルスペースWSを、回転電機10の回転軸方向Yに沿って横長に設けることが好ましい。
【0026】
(横方向磁束を利用した三次元磁路)
図5A,
図5Bは、本実施形態に係る回転子11と固定子12との間に発生する磁路MPを示す図(その1とその2)である。
図5Aには、回転子11と固定子12との間に発生する磁路MPを回転電機10の回転軸Cに対する水平方向Xから見た場合の一例が示されている。
図5Bには、回転子11と固定子12との間に発生する磁路MPを回転電機10の回転軸方向Yから見た場合の一例が示されている。回転子11と固定子12とは、
図5A,
図5Bに示すような環状の三次元磁路MPが発生するように構成されている。このような三次元磁路MPを発生させるためには、まず、横方向磁束(回転軸方向磁束)の発生が必要となる。そこで、回転電機10では、固定子12に設置される各巻線Wnが、各固定子コア121nの回転軸方向Yにおいて略中央に位置するように構成されている。これにより、回転電機10では、固定子12の巻線Wnに電流が流れたときに、回転軸方向Yの磁束、すなわち横方向磁束が発生する。さらに、上記三次元磁路MPを発生させるためには、縦方向磁束と横方向磁束とを用いた環状磁路を形成する必要がある。そこで、回転電機10では、固定子12に設置される各巻線Wnが、回転子11に設置される2つの突極SPnの間に位置するように設けられ、かつ、固定子12の極と回転子11の極とが対向するように構成されている。これにより、回転電機10では、1つの回転子コア111nにおいて、2つの突極SPn(第1突極SPa及び第2突極SPb)の磁界の向き(S極とN極との位置)が逆になる。なお、
図5Bに示すように、固定子12では、各巻線Wnを同じ向きに接続する構成により、周方向Aにおいて、磁界の向きが同じである。このように、回転電機10では、固定子12で発生する磁界の向きが一定であることにより、磁界の向きの変化によるエネルギー損失(ヒステリシス損)が発生しない。
【0027】
本実施形態に係る回転電機10は、上記特徴を有する三次元磁路MPを形成し、四相電流による制御を実施することで、リラクタンストルクTrを制御する。さらに、回転電機10は、四相制御のうち、二相電流を同時励磁し入力を増大することで、さらなるトルクの増大を図ることができる。換言すると、同じ大きさの回転電機であれば、より高い容積率を実現することができる。なお、リラクタンストルクTrは、固定子12の回転磁界による極と回転子11の突極との吸引力だけによって発生するトルクである。
【0028】
(四相制御[二相電流の同時励磁制御])
本実施形態に係る回転電機10は、上記構成の制御手段として、四相制御(四相電流による制御)を採用している。
図6は、本実施形態に係る回転電機10の制御システム1(駆動回路)を示す図である。
図6に示すように、制御システム1は、主にスイッチング回路2、ゲートブリッジ回路3、及び電源4を備えている。スイッチング回路2は、例えば、8つのスイッチング素子Sn(S
1-S
8)と8つの循環ダイオードDn(D
1-D
8)とを有するブリッジ回路(インバータ)である。当該ブリッジ回路は、4つのハーフブリッジ回路により構成される。ハーフブリッジ回路は、1つのスイッチング素子Snと当該素子と逆並列に接続された1つの循環ダイオードDnとにより構成されるアームを2つ備える1つのレグで構成される。スイッチング回路2では、電源4が、各スイッチング素子Snのオン・オフの切替えにより、電流を流す巻線Wnが切り替えられる。ゲートブリッジ回路3は、スイッチング回路2の各スイッチング素子Snの駆動を制御する回路である。ゲートブリッジ回路3は、各スイッチング素子Snにオン又はオフの命令(制御信号)を送信することで当該素子の駆動を制御する。
【0029】
具体的には、スイッチング回路2は、ゲートブリッジ回路3から、スイッチング素子S1とS4に対してオン信号、スイッチング素子S2とS3に対してオフ信号が送信された場合、電源4→スイッチング素子S1→回転電機10→スイッチング素子S4→電源4の第1回路を形成する。スイッチング回路2は、ゲートブリッジ回路3から、スイッチング素子S2とS3に対してオン信号、スイッチング素子S1とS4に対してオフ信号が送信された場合、電源4→スイッチング素子S3→回転電機10→スイッチング素子S2→電源4の第2回路を形成する。スイッチング回路2は、ゲートブリッジ回路3から、スイッチング素子S5とS8に対してオン信号、スイッチング素子S6とS7に対してオフ信号が送信された場合、電源4→スイッチング素子S5→回転電機10→スイッチング素子S8→電源4の第3回路を形成する。スイッチング回路2は、ゲートブリッジ回路3から、スイッチング素子S6とS7に対してオン信号、スイッチング素子S5とS8に対してオフ信号が送信された場合、電源4→スイッチング素子S7→回転電機10→スイッチング素子S6→電源4の第4回路を形成する。形成された4つの回路には、所定の電圧が出力されれば、直流電流が流れる。このように、回転電機10では、各スイッチング素子Snを制御することで、4つの回路を形成し、四相電流を制御できる。
【0030】
また、回転電機10では、4つの回路のうち、2つの回路を用いて、二相電流の同時励磁を制御できる。具体的には、まず、回転電機10は、スイッチング回路2が第1回路を形成し、第1回路にI相の電流を流すことで、I相に割り当てられた各固定子コア121I(n)の各巻線Wnが励磁される。次に、回転電機10は、スイッチング回路2が第3回路を形成し、第3回路にII相の電流を流すことで、II相に割り当てられた各固定子コア121II(n)の各巻線Wnが励磁される。次に、回転電機10は、スイッチング回路2が第2回路を形成し、第2回路にIII相の電流を流すことで、III相に割り当てられた各固定子コア121III(n)の各巻線Wnが励磁される。次に、回転電機10は、スイッチング回路2が第4回路を形成し、第4回路にIV相の電流を流すことで、IV相に割り当てられた各固定子コア121IV(n)の各巻線Wnが励磁される。
【0031】
図7は、本実施形態に係る回転電機10の制御例を示す図である。本実施形態に係る回転電機10は、上記構成の制御システム1により四相制御される。さらに、二相同時励磁制御される。制御システム1は、スイッチング素子Snの切り替え制御によって、電源4から各固定子コア121nに流す四相の直流電流(I相,II相,III相,及びIV相の直流電流)の供給を所定の励磁区間(5°から10°の範囲)において制御する。
図7には、励磁区間(5°の範囲)の場合の出力電圧の制御波形が例示されている。回転電機10は、当該電機への入力そのものを増大する構成である。よって、回転電機10の励磁区間では、四相電流のうち、二相電流を同時励磁し、同時励磁を実施しないときの1の入力より大きいリラクタンストルクTr(吸引)が発生するように、各相の直流電流を供給するための出力電圧が制御される。ここで、上記リラクタンストルクTr(吸引)とは、固定子12の回転磁界による極と回転子11の突極との吸引を意味する。
【0032】
図8は、本実施形態に係る回転電機10におけるトルクと電流の位相角との関係(トルクカーブ)を示す図である。
図8に示すように、回転電機10は、二相電流が同時励磁されたことにより、同時励磁区間において、2つのリラクタンストルクTrが合成され合成トルクTが得られる。得られる合成トルクTは、同時励磁区間の略中央の位置で最大値となり、一般的なスイッチトリラクタンスモータの1.5倍となる。
【0033】
図7の説明に戻る。
図7に示す制御例では、所定の電圧が印加され、IV相→III相→II相→I相の順に各相の直流電流を流し励磁する一例が示されている。さらに、「IV相とIII相」→「III相とII相」→「II相とI相」→「I相とIV相」の順に同時励磁する一例が示されている。なお、以降では、便宜上、IV相とIII相との同時励磁を第1同時励磁、III相とII相との同時励磁を第2同時励磁、II相とI相との同時励磁を第3同時励磁、I相とIV相との同時励磁を第4同時励磁、という。
【0034】
制御システム1は、まず、第1同時励磁を実施する。具体的には、IV相が励磁中にIII相の励磁を開始する。これにより、IV相だけでなく、III相に対応する固定子コア121III(n)と回転子コア111nとの間には三次元磁路MP(磁束)が発生し、リラクタンストルクTrが発生する。その結果、回転子11は、回転子コア111nがIII相に対応する固定子コア121III(n)に吸引され、所定の角度(5°)、反時計回りの方向に回転する。
【0035】
図9は、第1実施形態に係る回転電機10の磁束分布を示す図である。
図9には、上記第1同時励磁を実施したときの磁束分布の一例が示されている。
図9に示すように、(1)に位置する回転子コア111
(1)の突極SP
(1)には、III相に対応する固定子コア121
III(n)から磁束MF
III(以降、便宜上「III相の磁束MF
III」という)が流れる。また、(1)に位置する回転子コア111nの突極SP
(1)には、IV相に対応する固定子コア121
IV(n)からも磁束MF
IV(以降、便宜上「IV相の磁束MF
IV」という)が流れる。回転子コア111
(1)の突極SP
(1)の極対向面11S
(1)は、その面積の半分がIII相対応する固定子コア121
III(n)の極対向面12S
IIIと面している。このため、III相の磁束MF
IIIは、IV相の磁束MF
IVよりも多く流れており、磁束密度が高く磁気抵抗が大きい。その結果、IV相の磁束MF
IVは、III相の磁束MF
IIIよりも磁束密度が低く磁気抵抗の小さい、(2)に位置する回転子コア111
(2)の突極SP
(2)に流れる。IV相の磁束MF
IVが(1)に位置する回転子コア111
(1)の突極SP
(1)に多く流れることによる逆トルクは発生しない。
【0036】
図7の説明に戻る。制御システム1は、次に、第2同時励磁を実施する。具体的には、III相が励磁中にII相の励磁を開始する。これにより、III相だけでなく、II相に対応する固定子コア121
II(n)と回転子コア111nとの間には三次元磁路MP(磁束)が発生し、リラクタンストルクTrが発生する。その結果、回転子11は、回転子コア111nがII相に対応する固定子コア121
II(n)に吸引され、所定の角度(5°)、反時計回りの方向に回転する。
【0037】
制御システム1は、次に、第3同時励磁を実施する。具体的には、II相が励磁中にI相の励磁を開始する。これにより、II相だけでなく、I相に対応する固定子コア121I(n)と回転子コア111nとの間には三次元磁路MP(磁束)が発生し、リラクタンストルクTrが発生する。その結果、回転子11は、回転子コア111nがI相に対応する固定子コア121I(n)に吸引され、所定の角度(5°)、反時計回りの方向に回転する。
【0038】
制御システム1は、次に、第4同時励磁を実施する。具体的には、I相が励磁中にIV相の励磁を開始する。これにより、I相だけでなく、IV相に対応する固定子コア121IV(n)と回転子コア111nとの間には三次元磁路MP(磁束)が発生し、リラクタンストルクTrが発生する。その結果、回転子11は、回転子コア111nがIV相に対応する固定子コア121IV(n)に吸引され、所定の角度(5°)、反時計回りの方向に回転する。
【0039】
このように、制御システム1は、四相のうち、周方向Aに隣接する二相に対応する各固定子コア121nを同時励磁する。さらに、制御システム1は、「IV相とIII相」→「III相とII相」→「II相とI相」→「I相とIV相」の順に同時励磁する。これにより、励磁した相に対応する固定子コア121nと回転子コア111nとの間には三次元磁路MP(磁束MF)が発生し、リラクタンストルクTrが発生する。このとき、同時励磁の各相に対応する2つの固定子コア121nと1つの回転子コア111nとの間に発生した2つの磁束MFは、固定子12の極対向面12Sと回転子11の極対向面11Sとの対向面積の違いから、磁束密度が異なる。より具体的には、励磁を開始した相に対応する固定子コア121nと回転子コア111nとの間に発生した磁束MFの磁束密度は、すでに励磁している相に対応する固定子コア121nと回転子コア111nとの間に発生した磁束MFの磁束密度よりも、密度が高い。磁束MFは、磁束密度が高く磁気抵抗が大きい固定子コア111nの突極SPnに流れにくい性質を有する。これにより、
図9に示すように、回転子11は、回転子コア111nが励磁した相に対応する固定子コア121nに吸引され、所定の角度、時計回り又は反時計回りの方向に回転する。
【0040】
以上のように、本実施形態の構成では、制御システム1が、四相電流のうち、二相電流を同時励磁し、同時励磁を実施しないときの1の入力より大きいリラクタンストルクTrが発生するように、回転電機10の各固定子コア121n(各巻線Wn)に供給する電流(各相の直流電流)を制御する。換言すると、制御システム1は、四相電流のうち、二相電流を同時励磁し、複数のリラクタンストルクTrによる合成トルクTが発生するように、回転電機10の各固定子コア121n(各巻線Wn)に供給する電流(各相の直流電流)を制御する。これにより、本実施形態の構成では、装置の大きさを維持したまま、トルクの増大を図ることができる。よって、本実施形態の構成では、従来よりも高い容積率を実現し、同じ大きさで高出力の回転電機(同じ出力で小型の回転電機)を提供することができる。
【0041】
さらに、本実施形態の構成によれば、回転電機10に対して二相電流の同時励磁制御を行う構成のため、単相電流の励磁制御に比べて、発生する磁束密度の変化(磁束MFの増減)が抑制される。一般的に、リラクタンスモータでは、磁束密度の変化はトルクの変動量(以降、便宜上「トルクリップル」という)に影響を及ぼす。トルクリップルは、回転時の振動や騒音の発生の原因とされている。この点に鑑みると、本実施形態の構成では、発生する磁束密度の変化(磁束MFの増減)が抑制されるため、トルクリップルを小さくでき、回転時の低振動・低騒音を実現できる。
【0042】
(適切な極数の関係性)
図10は、本実施形態に係る回転電機10における固定子12の極数Psnと回転子11の極数Prnとの関係を示す図である。上記実施形態では、本実施形態の構成が有する特有の極数の比率(Psn:Prn=4:3(=2:1.5))を明示するため、回転子11の極数Prn:18に対して固定子12の極数Psn:24の例を示したが、本発明の構成は、これに限定されない。
【0043】
図10には、固定子コア121n(固定子12の極)の中心角(°)、固定子12の極数Psn(個)、及び回転子11の極数Prn(個)の組み合わせと、所定の条件に従って実験した結果(シミュレーションによる良好性の判定結果)と、が示されている。なお、固定子コア121nの中心角(°)は、固定子コア121nの周方向Aの幅(固定子12の極幅)に相当する。また、上記条件の1つとして、回転子コア111nの中心角は固定子コア121nの中心角と同じとしている。固定子12の極数Psn(個)は、所定の計算式1[360°/(固定子コア121nの中心角×1.5)]により算出している。回転子11の極数Prn(個)は、所定の計算式2[360°/(回転子コア111nの中心角×2)]により算出している。
【0044】
図10の判定結果項目[#1]に示すように、本発明の効果を奏する構成として適切な極数の関係は、「回転子11の極数Prn:3Nに対して固定子12の極数Psn:4Nの関係で、かつ、整数Nは2以上である」こと分かった。回転子11の極数Prn:3に対して固定子12の極数Psn:4の関係を有する構成では、トルクバランスが悪く、本発明の効果を奏する構成として適切ではないことが分かった。また、
図10の判定結果項目[#2]に示すように、本発明を実現する構成として適切な極数の関係は、「回転子11の極数Prn:3Nに対して固定子12の極数Psn:4Nの関係で、かつ、整数Nは8以下である」こと分かった。固定子12の極数Psnが36個以上(整数Nが9以上)の構成では、構造上、コイルスペースWSの確保が困難である。そのため、本発明を実現する構成として適切ではないことが分かった。以上のように、本発明として適切な極数の関係は、「回転子11の極数Prn:3Nに対して固定子12の極数Psn:4Nの関係で、かつ、整数Nは2以上8以下である」という範囲が適切であることが分かった。換言すると、本発明の構成として、回転子11の極数Prnは6以上24以下、かつ、固定子12の極数Psnは8以上32以下の範囲が適切であることが分かった。
【0045】
<変形例>
図11は、変形例に係る回転電機10における回転子11の概略構成図である。
図11には、複数の突極SPnを有するダストコア型の回転子10の一例が示されている。上記実施形態に係る回転子10は、鉄芯に複数の突極SPnを形成する複数の回転子コア111nを有し、各回転子コア111nが、周方向Aに所定の間隔で回転子本体11mbに配置されている構成例を示したが、本発明の構成は、これに限定されない。本発明では、ダストコア型の回転子10を採用する構成であってもよい。ダストコア型の回転子10は、例えば電磁鋼板を積層して形成することができる。ダストコア型の回転子10を採用する構成では、構造的に高い強度や耐久性を実現することができる。
【0046】
本発明は、上記実施形態、変形例等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、実施形態、変形例に示される各構成は、それぞれ任意に組み合わせることができる。すなわち、本発明は、実施形態に準拠して記述されたが、本発明は、当該実施形態や構造等に限定されるものではないと理解される。本発明は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本発明の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0047】
1 制御システム;
10 回転電機;
11 回転子;
111n 回転子コア;
12 固定子;
121n 固定子コア;
SPn 突極;
Wn 巻線。