(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025037286
(43)【公開日】2025-03-18
(54)【発明の名称】油劣化防止材及びそれを用いたフライヤー
(51)【国際特許分類】
A47J 37/12 20060101AFI20250311BHJP
【FI】
A47J37/12 321
A47J37/12 391
A47J37/12 351
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023144095
(22)【出願日】2023-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】523340236
【氏名又は名称】株式会社プロティアン・K
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】是永 龍之
(72)【発明者】
【氏名】安高 亮介
【テーマコード(参考)】
4B059
【Fターム(参考)】
4B059AA01
4B059AA02
4B059AB01
4B059AB02
4B059BB20
4B059BF10
(57)【要約】
【課題】食材を揚げた油の劣化を抑制出来る油劣化防止材と、その油劣化防止材を用いたフライヤーの提供。
【解決手段】本発明の油劣化防止材(1)は、蛍光X線分析により包含する元素を金属又は酸化物として測定すると、酸化鉄(Fe2O3)を30~40質量%、酸化トリウム(ThO2)を15~25質量%、酸化マグネシウム(MgO)を5~15質量%、酸化アルミニウム(Al2O3)を4~8質量%、酸化チタン(TiO2)を3~7質量%、酸化ジルコニウム(ZrO2:ジルコニア)を1~2質量%包含する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄、トリウム、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウムを含み、
蛍光X線分析により包含する元素を金属又は酸化物として測定すると、
酸化鉄を30~40質量%、
酸化トリウムを15~25質量%、
酸化マグネシウムを5~15質量%、
酸化アルミニウムを4~8質量%、
酸化チタンを3~7質量%、
酸化ジルコニウムを1~2質量%
を包含することを特徴とする油劣化防止材。
【請求項2】
マンガン、ニオブ、ウラン、カルシウム、鉛、リン、ハフニウム、ルビジウム、錫、銅、ガリウムを含み、
蛍光X線分析により包含する元素を金属又は酸化物として測定すると、
酸化マンガン、五酸化ニオブ、八酸化三ウラン、酸化カルシウム、一酸化鉛、五酸化二リン、酸化ハフニウム、酸化ルビジウム、酸化錫、酸化銅、酸化ガリウムの各々を0~1.0質量%未満包含している請求項1の油劣化防止材。
【請求項3】
請求項1、2の何れかの油劣化防止材を焼結した焼結体を油槽内に配置したことを特徴とするフライヤー。
【請求項4】
前記焼結体は球状に形成されており、球状に形成された焼結体は多数の開口部を有する材料から成る中空体の内部空間に配置されており、内部空間に焼結体を配置した中空体は油槽内に浸漬可能である請求項3のフライヤー。
【請求項5】
請求項1、2の何れかの油劣化防止材を金属板に溶射して表層部を被覆した金属板を油槽内に配置したことを特徴とするフライヤー。
【請求項6】
請求項1、2の何れかの油劣化防止材を加熱して溶融し或いは半溶融状態とせしめ、
溶融し或いは半溶融状態とせしめた前記油劣化防止材を溶射するべき溶射対象物に噴射して、金属板表層部に衝突させ、
前記金属板表層部に前記油劣化防止材を積層させて付着させることを特徴とする油劣化防止材を溶射する方法。
【請求項7】
本体の表面に請求項1、2の何れかの油劣化防止材が被覆されており、さらに、フッ素樹脂が被覆されていることを特徴とするフライパン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食材を油で揚げる調理(フライ)に際して、油の劣化を防止することが出来る油劣化防止材と、調理食材を油で揚げるフライヤーであって前記油劣化防止材を用いたフライヤーに関する。
【背景技術】
【0002】
フライヤーは、大別すると、次の2通りに分類される。一つ目のタイプは、食材を油槽内に連続的に投入して、油で揚げられた(フライされた)食材を連続して排出するタイプである(例えば特許文献1参照)。そして二つ目のタイプは、フライするべき食材を入れた揚げ籠を食材ごと油槽内に浸漬して、食材が揚がった(フライされた)ならば揚げ籠を油槽から取り出すタイプである(例えば特許文献2参照)。
一つ目のタイプは食品加工工場の様な大規模施設で使用される事例が多く、二つ目のタイプはコンビニオンスストアや、いわゆる「ファストフード」の小売店舗で多く見受けられる。
【0003】
何れのタイプであっても、食材を揚げていくと、油が劣化するという問題がある。劣化した油で揚げた食品は、味や風味が落ちることに加えて、当該食品を摂取したユーザーの健康に悪影響を与えてしまう恐れが存在する。
そのため、フライヤーで使用する油が劣化すると、劣化した油を廃棄して、劣化していない新しい油をフライヤーに供給している。
しかし、昨今の社会情勢に起因して油の単価が高騰し、劣化した油を廃棄して新しい油をフライヤーに供給することのコストも急騰しており、フライヤーを使用する事業者に深刻な問題をもたらしている。
【0004】
係る問題に対処するためには、油の劣化を抑制することが最も直接的な解決方法である。しかし、フライヤーで食品を揚げることにより油が劣化することは避けられない現象であり、上述した問題の有効な解決策は未だに提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-296417号公報
【特許文献2】特公昭49-16623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、食材を揚げても油の劣化を抑制することが出来る油劣化防止材と、その油劣化防止材を用いたフライヤーの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、フライヤーの改善について研究を続行している際に、所定の組成を有する混合物を油槽に配置すると、油の劣化が抑制されることを見出した。
本発明の油劣化防止材(1)は係る知見に基づいて提案されたものであり、
鉄、トリウム、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウムを含み、
蛍光X線分析により包含する元素を金属又は酸化物として測定すると、
酸化鉄(Fe2O3)を30~40質量%、
酸化トリウム(ThO2)を15~25質量%、
酸化マグネシウム(MgO)を5~15質量%、
酸化アルミニウム(Al2O3)を4~8質量%、
酸化チタン(TiO2)を3~7質量%、
酸化ジルコニウム(ZrO2:ジルコニア)を1~2質量%、
包含することを特徴としている。
【0008】
本発明の油劣化防止材(1)は、
マンガン、ニオブ、ウラン、カルシウム、鉛、リン、ハフニウム、ルビジウム、錫、銅、ガリウムを含み、
蛍光X線分析により包含する元素を金属又は酸化物として測定すると、
酸化マンガン(MnO)、五酸化ニオブ(Nb2O5)、八酸化三ウラン(U3O8)、酸化カルシウム(CaO)、一酸化鉛(PbO)、五酸化二リン(P2O5)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ルビジウム(Rb2O)、酸化銅(CuO)、酸化ガリウム(Ga2O3)の各々を0~1.0質量%包含しているのが好ましい。
換言すれば、本発明の油劣化防止材(1)は、
蛍光X線分析により包含する元素を金属又は酸化物として測定すると、
酸化マンガン(MnO)、五酸化ニオブ(Nb2O5)、八酸化三ウラン(U3O8)、酸化カルシウム(CaO)、一酸化鉛(PbO)、五酸化二リン(P2O5)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ルビジウム(Rb2O)、酸化銅(CuO)、酸化ガリウム(Ga2O3)の何れかを包含しないか、或いは、1.0質量%以下だけ包含しているのが好ましい。
【0009】
本発明のフライヤー(10-1)は、
上述した油劣化防止材(1:請求項1、2の何れかの油劣化防止材)を焼結した焼結体(1A)を油槽(2)内に配置したことを特徴としている。
ここで、前記焼結体(1A)は球状に形成されており、球状に形成された焼結体(1A)は多数の開口部(3A)を有する材料(例えば、網状の部材或いはパンチングメタル)から成る中空体(3)の内部空間に配置されており、内部空間に焼結体(1A)を配置した中空体(3)は油槽(2)内に浸漬可能であるのが好ましい。
【0010】
また本発明のフライヤー(10-2)は、
上述した油劣化防止材(1:請求項1、2の何れかの油劣化防止材)を金属板(4)に溶射して表層部を被覆した金属板(1B:表層部を油劣化防止材1で被覆した金属板)を油槽(2)内に配置したことを特徴としている。
ここで、本発明の油劣化防止材(1)を(溶射対象物に:例えば金属板4に)溶射する方法は、
上述した油劣化防止材(1:請求項1、2の何れかの油劣化防止材)を加熱して溶融し或いは半溶融状態とせしめ、
溶融し或いは半溶融状態とせしめた前記油劣化防止材(1)を溶射するべき溶射対象物(例えば金属板4)に噴射して、金属板表層部に衝突させ、
前記金属板表層部に前記油劣化防止材(1)を積層させて付着させる(ことで表層部を油劣化防止材1で被覆した金属板1Bを作成する)ことを特徴としている。
これに加えて、本発明のフライパンは、本体の表面(少なくとも、食材と接触する側の表面)には上述した油劣化防止材(請求項1、2の何れかの油劣化防止材)が被覆されており、さらに、フッ素樹脂(フッ化炭素樹脂)が被覆されていることを特徴としている。ここで、前記フッ素樹脂(フッ化炭素樹脂)としては、例えば、テトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標):PTFE)を選択することが出来る。
【発明の効果】
【0011】
食用油を含む油の分子は、化学的に安定な状態を保つため、分子間力(ファンデルワールス力)によって互いに引き付けられている。食材を揚げた油では、加熱されること、不純物が混じること、金属に触れることにより急速に酸化し、老化する。そして、揚げ物に使用した油(揚げ油)は、急速に酸化する条件を全て含んでいる。酸化した油は、色が変わり臭いが出てくるのに加えて、塊状になった大きな分子になるために粘度が増加する。
発明者の研究によれば、本発明の油劣化防止材(1)は、この塊状になった分子をバラバラに分散させる能力を持っており、当該分散した油分子では表面張力が減少し、乱雑さが増した状態となる。換言すれば、本発明の油劣化防止材(1)は、イオンやその他の力により油を含む流体の分子に働きかけ、当該流体の分子をバラバラに分散させる作用を奏する。そして、分散した(バラバラになった)分子は個別に動き回り、自由度が増加しているため、油の粘性が減少し、粘りが無い(いわゆるサラサラな)状態を保つことが出来る。その結果、本発明の油劣化防止材(1)を用いれば、揚げ物における油の抜けが良くなり、粘度が高い油が揚げ物の表面に付着することも防止して、食感を良くすることが出来る。
【0012】
ここで、本発明の油劣化防止材(1)は放射性を有する物質が包含されており、当該物質による微小な放射線により、劣化して複数の分子同士が引き付け合って塊状になった油分子は分散され(バラバラにされ)、粘りが無い状態となり、以て、油分子は個別に動き回り、自由度が増加した状態になると推定される。
それと共に、本発明の油劣化防止材(1)から(例えば油槽2内に設置すれば、油槽2内の油に対して)マイナスイオンが供給され、当該マイナスイオンによる還元作用により油の酸化(劣化)が抑制されるものと推定される。或いは、本発明の油劣化防止材は、前記放射性物質を包含する材料(励起材)を包含すると共に、上述した組成を具備することにより自発分極している極性材料としての結晶構造を形成している。そのため、放射性物質からの放射線により自発分極した結晶粒子の電解に乱れが生じ、マイナスイオンを発生するものと推定される。
発明者の研究によれば、本発明の油劣化防止材(1)におけるマイナスイオンの発生量は、1000個/cm3~10000個/cm3程度であると推定される。係るマイナスイオン発生量に対応する放射線量は極めて低く、ラジウム温泉と同程度であり、人体に悪影響を与えることはない。
また、本発明の油劣化防止材(1)によれば、油の酸化を抑制するために外部から電力を供給する必要が無い。本発明の油劣化防止材(1)によれば、外部から電力供給をしなくても、励起材から放射線が生じなくなるまでの期間、劣化して複数の分子同士が引き付け合って塊状になった油分子に対してマイナスイオンが作用し続けることが出来る。
そして本発明の油劣化防止材(1)によれば、その構成材料が金属と無機物であるため、ゴム材や樹脂等の有機材料を包含する材料に比較して、耐候性、耐熱性、耐食性に優れており、半永久的に使用できる。
【0013】
本発明のフライヤー(10-1、10-2)によれば、上述した油劣化防止材(1:請求項1、2の何れかの油劣化防止材)を焼結した焼結体(1A)を油槽(2)内に配置するか、或いは、上述した油劣化防止材(1:請求項1、2の何れかの油劣化防止材)を金属板(4)に溶射して表層部を被覆した金属板(1B:表層部を油劣化防止材1で被覆した金属板)を油槽(2)内に配置することにより、本発明の油劣化防止材(1)の上述した作用効果を奏することが出来る。
そして、本発明のフライヤー(10-1、10-2)によれば、前記焼結体(1A)或いは前記金属板(1B)は、油槽(2)に配置するだけで良いので、フライヤー(10-1、10-2)の油槽(2)のサイズに対応して自由に形状を設計する事が可能である。また本発明のフライヤー(10-1、10-2)で用いられる前記油劣化防止材(1:請求項1、2の何れかの油劣化防止材)は電力を外部から供給しなくても油の劣化防止効果を発揮することが出来るので、スペース的にフライヤー設置可能であれば、設置場所の条件(電源コンセントの位置等)とは無関係に、自由に設置することが出来る。
【0014】
本発明のフライヤー(10-1)において、前記油劣化防止材(1:請求項1、2の何れかの油劣化防止材)を焼結した焼結体(1A)を油槽(2)内に配置しており、前記焼結体(1A)は球状に形成されており、球状に形成された焼結体(1A)は多数の開口部を有する材料(例えば、網状の部材或いはパンチングメタル)から成る中空体(3)の内部空間に配置されており、内部空間に焼結体(1A)を配置した中空体(3)は油槽(2)内に配置されていれば、製造コストを低く抑えることが可能である。
【0015】
本発明の油劣化防止材(1)を(溶射対象物に:例えば金属母材4に)溶射する方法は、前記油劣化防止材(1)を加熱して溶融し或いは半溶融状態とせしめ、溶融し或いは半溶融状態とせしめた前記油劣化防止材(1)を溶射するべき溶射対象物(例えば金属板4)に噴射して、金属板表層部に衝突させ、前記金属板表層部に前記油劣化防止材(1)を積層させて付着させる(ことで表層部を油劣化防止材1で被覆した金属板1Bを作成する)ので、金属(SUS、アルミ等の食品分野で使用可能な材質)の薄板を含む母材に対して、無機粉体である本発明の油劣化防止材(1)を溶融状態或いは半溶融状態(溶融に近い状態)で噴射して、前記金属母材板に所望の厚みの積層被覆層(被膜)を形成することが出来て、例えば、20μm単位での成膜が可能である。その様な薄膜(20μm単位)を形成することにより、本発明の油劣化防止材(1)の劣化抑制防止作用を好適に且つ容易に制御することが可能になる。
また、本発明の油劣化防止材(1)を溶融状態或いは半溶融状態(溶融に近い状態)で噴射して、溶射することが出来る。溶射によれば1m2程度の面積に被覆させることが可能であり、広範囲(面積)に亘って油の劣化抑制効果が要求される場合においても、油劣化防止材(1)を確実に金属母材(4)の表層部に被覆することが出来る。或いは、本発明の油劣化防止材(1)を確実に金属母材(4)の表層部の所望の面積に被覆されることが出来るので、油劣化防止材(1)を被覆させた同一サイズの金属母材(1B:表層部を油劣化防止材1で被覆した金属母材)を複数製造して、当該複数の金属母材(1B)を整列して油槽内に配置させて、或いは浴槽内に本発明の油劣化防止材(1)を被覆させた同一サイズの金属母材を敷き詰めて、油劣化の抑制作用を十分に発揮させることが出来る。
また、金属板(4)に本発明の油劣化防止材(1)を溶射すれば、所望のサイズに成形できる為、狭い隙間等に設置することが出来る。そのため、設置場所に制約を受けにくい。
【0016】
さらに本発明の油劣化防止材(1)を予めニアネットシェープ形状に加工すれば、任意の形状での成形が可能となる。
それに加えて、本発明の油劣化防止材(1)を溶融に近い状態にして溶射することが出来るので、溶出や粉塵が無く、不純物の混入に敏感な食品業界での用途が開ける。
これに加えて、本発明のフライパンは、本体の表面(少なくとも、食材と接触する側の表面)には上述した油劣化防止材(請求項1、2の何れかの油劣化防止材)が被覆されており、さらに、フッ素樹脂(フッ化炭素樹脂)が被覆されているので、油を用いた各種調理法で調理した場合に、調理された食物、特に油で揚げた食物や油を敷いて焼いた食物、炒めた食物は、その食感が極めて良好になることが、発明者の実験で確認されている。
上述したのと同様に、油劣化防止材の作用に起因すると推定される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】連続的に食材を下流側に移送されるタイプのフライヤーの概要を示す説明図である。
【
図2】バッチ式に食材を揚げていくタイプのフライヤーの概要を示す説明図である。
【
図3】実験例1で油劣化防止材の投入の有無による酸化値(AV値)の比較結果を示すグラフである。
【
図4】第1実施形態で油劣化防止材を焼結した焼結体の一例を示す説明図である。
【
図5】第2実施形態で油劣化防止材を金属板に噴射して表層部に油劣化防止材を積層させた金属板を示す説明図である。
【
図6】第2実施形態で金属板に油劣化防止材を溶射する態様を示す説明図である。
【
図7】本発明に係るフライパンとその本体の断面構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1及び
図2は、本発明に係る油劣化防止材1を用いたフライヤーを示す。
ここで、フライヤーについては、
図1で示す様に、食材を油槽内に連続して投入して油で揚げられた食品を連続して排出するタイプ(フライヤー10A)と、
図2で示す様に、揚げるべき食材を入れた揚げ籠を食材ごと油槽内に浸漬して食材が揚がった際に揚げ籠を油槽から取り出すタイプ(フライヤー10B)の2種類に大別される。
図1で示すタイプのフライヤー10Aでは、食材11Aを油で揚げる調理工程に際して、油槽2内に設けたパドリングコンベア15及び搬送コンベア16によって、入口側13から搬入された食材11Aを、油槽2を介して出口側17に連続的に移送している。
図示の実施形態において、油劣化防止材1をどの様な形態でフライヤー内部に配置するかについて、油劣化防止材1を(例えば)球状に焼結した焼結体1Aを油槽2内に配置したフライヤーを符号10-1で示し、油劣化防止材1を溶射して表層部を油劣化防止材1で被覆した金属板1Bを油槽2内に配置したフライヤーを符号10-2で示す。
ただし、フライヤーが図面化された
図1、
図2に示すフライヤー10A、10Bについては、油劣化防止材を焼結体1Aとして配置する場合と、金属板1Bとして配置する場合の双方が可能である。そのため、
図1、
図2では符号10-1、10-2は使用していない。
【0019】
図1において、フライヤー10Aは、油12を収容する油槽2と、油槽2の入口側13(上流側)における搬送コンベア14と、食材11Aを油槽2内の下流側に搬送するパドリングコンベア15及びベルトタイプの搬送コンベア16と、フライされた食品11Bを油槽2の出口側17(下流側)に搬出する搬出コンベア18とを備えている。
油槽2内の油12により、調理(フライ)対象の食材11A(例えば、ポテトチップの食材であるスライスされたジャガイモ)は揚げられる(フライされる)。搬送コンベア14は、油槽2の入口側13(上流側)において、食材11Aを油槽2内に搬入する。油槽2内に搬入されフライされている食材11Aは、パドリングコンベア15及びベルトタイプの搬送コンベア16により、油槽2内の下流側に搬送される。搬出コンベア18は、フライされた食品11Bを油槽2の出口側17(下流側)に搬出する。
フライされた食品11Bは完成品搬送コンベア19により搬出される。
油槽2内の油12の油面レベルは図示しない制御装置により所定範囲内に調整されており、油12の温度も、食材11Aの種類に応じて図示しない制御装置により所定範囲内に調整されている。油槽2の上方には、油槽2全体を覆うフード20、フライ中に発生する水蒸気、油煙等を吸収するためのスタック21が配置されている。
パドリングコンベア15は、油面に浮いた状態でフライされている食材11Aを油12内で拡散せしめて、相互に重ならない様にせしめる機能を有すると共に、食材11Aを下流側に向かって移動させる機能をも有している。
パドリングコンベア15の下流側にはベルトタイプの搬送コンベア16が配置され、ベルトタイプの搬送コンベア16におけるコンベアベルト16Aは、油面よりも下側のおけるコンベア搬送部が上流側から下流側に向かって移動する様に配置されており、食材11Aを油面より下方に位置させて油12の中に浸漬させ、食材11A全体が均一に油12内を移動して、均一に揚げられる(フライされる)様にせしめる機能を有している。
【0020】
図1のフライヤー10Aにおいて、食材11Aは搬送コンベア14により入口側13から油槽2内に連続的に搬入され、油槽2の油でフライされつつ、パドリングコンベア15、ベルトタイプの搬送コンベア16により油槽2内を上流から下流に進行し、その間に油12によって揚げられる(フライされる)。フライされた食品11Bは搬出コンベア18により油槽2の出口側17に連続的に搬出される。
フライヤー10Aの油槽2の油中には、実施形態に係る油劣化防止材1が配置されている。後述する様に、油劣化防止材1は所定の組成物を特定の組成で含有する混合物であり、フライヤー10内に配置する際は、油劣化防止材1を例えば球状の焼結体1Aとして配置する。或いは、油劣化防止材1を溶射して表層部を油劣化防止材1で被覆した金属板1Bを作成し、その様な金属板1Bを油槽2内に配置する。
図1では油劣化防止材1(1A或いは1B)の図示は省略されている。
【0021】
図2は、油で揚げて調理するべき食材11Aをバスケット22に充填し、そのバスケット22を油槽2内の加熱した油12内に浸漬して、バッチ式に食材11Aを揚げていくタイプのフライヤー10Bを示している。
図2において、フライヤー10Bは、ケーシング23と、調理(フライ)対象の食品素材11Aを揚げる(フライする)油12を収容する油槽2と、油槽2内に配置され調理に際に食材11Aを入れる網目構造のバスケット22を備えている。油槽2は、フライヤー10Bのケーシング23内に配置されている。
バスケット22は支持部材24に取り付けられており、支持部材24は昇降装置25により上下方向(矢印A方向)に昇降可能に構成されている。したがって、バスケット22を、油槽2の上方の位置まで上昇させた状態で、食材11Aをバスケット22内に投入し、食材11Aが投入されたバスケット22を下降させて油槽2内に浸漬させれば、食材11Aを調理する(フライする)ことが出来る。
油槽2の上面の開口部には蓋26が設けられ、当該開口部は蓋26により開閉される。調理前にバスケット22に食材11Aを投入する際には、バスケット22を油槽2の上方に上昇させて、蓋26を開放する。そして、食材11Aを投入したバスケット22を油槽2内の油12に浸漬して調理する時には蓋26は閉鎖される。
図2は、バスケット22を油12に浸漬して調理している状態を示しており、蓋26は閉鎖している。ただし、バスケット22を油12に浸漬する際に、蓋26を開放したまま調理する場合も存在する。
油槽2内の油12の油面レベルは、図示しない制御装置により所定範囲内に調整されており、油12の温度も、食品素材11Aの種類に応じて図示しない制御装置により所定範囲内となる様、調整されている。
【0022】
図2のフライヤー10Bでは、上述した様に、昇降装置25により油槽2の上方の位置に上昇させたバスケット22内に所定量の食品素材11Aを入れ、その後バスケット22を下降して油12内に浸漬させ、食材11Aを調理(フライ)する。調理が為されて食材11Aが揚がった(フライされた)ならば、バスケット22を油槽2上方の位置まで上昇して、調理された食材11Aをバスケット22内から取り出す。係る動作を繰り返すことにより、バッチ式に食材11Aを調理する。
ここで、フライヤー10Bの油槽2の油中には、
図1におけるフライヤー10Aの場合と同様に、実施形態に係る油劣化防止材1が配置されている。
図1で述べたのと同様に、油劣化防止材1は所定の組成物を含有する混合物であり、油劣化防止材1を例えば球状に焼結した焼結体1A、或いは、油劣化防止材1を溶射して表層部を油劣化防止材1で被覆した金属板1Bを、油槽2内に配置している。ただし、
図2では油劣化防止材1(1A、1B)の図示は省略されている。
【0023】
上述した様に、
図1、
図2で示すフライヤー10A、10Bにおける油槽2には、それぞれ、実施形態に係る油劣化防止材1が配置されている。
実施形態に係る油劣化防止材1は、鉄(Fe)、トリウム(Th)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)を含有しており、各々の元素の含有量は、蛍光X線分析により元素を金属又は酸化物として測定すると、
酸化鉄(Fe2O3)を30~40質量%、
酸化トリウム(ThO2)を15~25質量%、
酸化マグネシウム(MgO)を5~15質量%、
酸化アルミニウム(Al2O3)を4~8質量%、
酸化チタン(TiO2)を3~7質量%、
酸化ジルコニウム(ZrO2:ジルコニア)を1~2質量%包含している。
ここで、上述した質量%は、蛍光X線分析により金属又は酸化物として測定された全ての材料の総和を100%とした場合の相対的な数値である。
【0024】
実施形態に係る油劣化防止材1の組成を下表1で示す。
表1
【0025】
後述する実験例1及び実験例2とは異なる発明者の実験によれば、蛍光X線分析により包含する元素を金属又は酸化物として測定したときに酸化鉄(Fe2O3)が30質量%よりも少ないと、油の劣化を抑制する作用効果が有意に低減した。鉄(Fe)の含有量が少ないと、自発分極している極性材料としての結晶構造(蛍石構造、ペロブスカイト構造)を形成することが出来ず、自然分極する程度の強誘電体が生成されないので、マイナスイオン発生量が必要量より少なくなったことに起因するものと推定する。
一方、蛍光X線分析により包含する元素を金属又は酸化物として測定したときに酸化鉄(Fe2O3)が40質量%よりも多いと、それ以上多くしても油の劣化を抑制する作用効果は変化しなかった。鉄の含有量が多く、自発分極している極性材料としての結晶構造(蛍石構造、ペロブスカイト構造)が十分に形成され、自然分極する程度の強誘電体が十分に生成されるので、油劣化抑制に必要なマイナスイオン量が確保できたためと推定する。
係る理由により、鉄の含有量は、蛍光X線分析により包含する元素を金属又は酸化物として測定したときに酸化鉄含有量が全体の30~40質量%となる様に決定した。
【0026】
後述する実験例1及び実験例2とは異なる発明者の実験によれば、蛍光X線分析により包含する元素を金属又は酸化物として測定したときに酸化トリウム(ThO2)が15質量%よりも少ないと、油劣化を抑制する性能が低くなった。酸化トリウムが15質量%よりも少ないと放射線量が少なくなり、マイナスイオン発生量が減少することに起因すると推測される。
また、蛍光X線分析により包含する元素を金属又は酸化物として測定したときに酸化トリウム含有量を25質量%よりも多くすると、油劣化を抑制する性能に変化が見られなかった。放射線量が十分確保され、油劣化を抑制するのに必要なマイナスイオンが十分に生成されたためであると推定される。
そのため、トリウム含有量は、蛍光X線分析により包含する元素を金属又は酸化物として測定したときの酸化トリウム含有量が全体の15~25質量%となる様に決定した。
【0027】
後述する実験例1及び実験例2とは異なる発明者の実験によれば、マグネシウムの含有量は、蛍光X線分析により包含する元素を金属又は酸化物として測定したときに酸化マグネシウム(MgO)が5質量%よりも少ない場合も、油の劣化を抑制する作用効果が有意に低減した。マグネシウム(Mg)の含有量が少ない場合も、自発分極している極性材料としての結晶構造(蛍石構造、ペロブスカイト構造)を形成することが出来ず、自然分極する程度の強誘電体が生成されないので、マイナスイオン発生量が必要量よりも少なくなるためと推定する。
一方、蛍光X線分析により包含する元素を金属又は酸化物として測定したときに酸化マグネシウム(MgO)が15質量%よりも多いと、それ以上多くしても油の劣化を抑制する作用効果は変化しなかった。マグネシウム含有量が多いと、自発分極している極性材料としての結晶構造(蛍石構造、ペロブスカイト構造)が十分に形成され、自然分極する程度の強誘電体が十分に生成され、油劣化抑制に必要なマイナスイオン量が確保できるためと推定される。
係る理由により、マグネシウムの含有量は、蛍光X線分析により包含する元素を金属又は酸化物として測定したときの酸化マグネシウム含有量が、全体の5~15質量%となる様に決定した。
【0028】
後述する実験例1及び実験例2とは異なる発明者の実験によれば、アルミニウムの含有量は、蛍光X線分析により包含する元素を金属又は酸化物として測定したときに酸化アルミニウム(Al2O3)が4質量%よりも少ないと、油の劣化を抑制する作用効果が有意に低減した。アルミニウム(Al)の含有量が少ない場合も、自発分極している極性材料としての結晶構造(蛍石構造、ペロブスカイト構造)を形成することが出来ず、自然分極する程度の強誘電体が生成されないので、マイナスイオン発生量が必要量よりも少なくなるためと推定する。
一方、蛍光X線分析により包含する元素を金属又は酸化物として測定したときに酸化アルミニウム(Al2O3)が8質量%よりも多いと、それ以上多くしても油の劣化を抑制する作用効果は変化しなかった。アルミニウム含有量が多く、自発分極している極性材料としての結晶構造(蛍石構造、ペロブスカイト構造)が十分に形成され、自然分極する程度の強誘電体が十分に生成され、油劣化抑制に必要なマイナスイオン量が確保できたことによるものと推定する。
係る理由により、アルミニウムの含有量は、蛍光X線分析により包含する元素を金属又は酸化物として測定したときに、酸化アルミニウム含有量が全体の4~8質量%となる様に設定した。
【0029】
後述する実験例1及び実験例2とは異なる発明者の実験によれば、チタン(Ti)の含有量は、蛍光X線分析により包含する元素を金属又は酸化物として測定したときに酸化チタン(TiO2)が3質量%よりも少ないと、油の劣化を抑制する作用効果が有意に低減した。上述した他の元素の場合と同様に、自発分極している極性材料としての結晶構造を形成することが出来ず、自然分極する程度の強誘電体が生成されなかったことに起因すると推定される。
一方、チタン(Ti)の含有量は、蛍光X線分析により包含する元素を金属又は酸化物として測定したときに酸化チタン(TiO2)が7質量%よりも多いと、それ以上多くしても油の劣化を抑制する作用効果は変化しなかった。上述した他の元素と同様に、自発分極している極性材料としての結晶構造が十分に形成され、自然分極する程度の強誘電体が十分に生成され、油劣化抑制に必要なマイナスイオン量が確保できたことによるものと推定する。
そのため、チタンの含有量は、蛍光X線分析により包含する元素を金属又は酸化物として測定したときに、酸化チタン含有量が全体の3~7質量%となる様に設定した。
【0030】
後述する実験例1及び実験例2とは異なる発明者の実験によれば、ジルコニウム(Zr)の含有量は、蛍光X線分析により包含する元素を金属又は酸化物として測定したときに酸化ジルコニウム(ZrO2)が1質量%よりも少ないと、油の劣化を抑制する作用効果が有意に低減した。上述した他の元素の場合と同様に、自発分極している極性材料としての結晶構造を形成することが出来ず、自然分極する程度の強誘電体が生成されなかったことに起因すると推定される。
一方、ジルコニウム(Zr)の含有量が、蛍光X線分析により包含する元素を金属又は酸化物として測定したときに酸化ジルコニウム(ZrO2)が2質量%よりも多いと、それ以上多くしても油の劣化を抑制する作用効果は変化しなかった。上述した他の元素と同様に、自発分極している極性材料としての結晶構造が十分に形成され、油劣化抑制に必要なマイナスイオン量が十分に確保できたことによるものと推定する。
そのため、ジルコニウムの含有量は、蛍光X線分析により包含する元素を金属又は酸化物として測定したときに、酸化ジルコニウム(ZrO2)含有量が全体の1~2質量%となる様に設定した。
【0031】
後述する実験例1及び実験例2とは異なる発明者の別の実験によれば、カリウム(K)の含有量は、蛍光X線分析により包含する元素を金属又は酸化物として測定したときに酸化カリウム(K2O)が1~4質量%だけ包含させると、油劣化の抑制作用が向上した。
カリウム(K)の含有量が、蛍光X線分析により包含する元素を金属又は酸化物として測定したときに酸化カリウム(K2O)が1質量%よりも少ないと、自発分極している極性材料としての結晶構造を形成することが出来ず、自然分極する程度の強誘電体が生成されなかったと推定される。
一方、カリウム(K)の含有量が、蛍光X線分析により包含する元素を金属又は酸化物として測定したときに酸化カリウム(K2O)が4質量%よりも多いと、油の劣化を抑制する作用効果は変化しなかったのは、自然分極する程度の強誘電体が十分に生成され、油劣化抑制に必要なマイナスイオン量が確保できたことによるものと推定する。
【0032】
後述する実験例1及び実験例2とは異なる発明者の実験によれば、上述した油劣化防止材に対して、マンガン(Mn)、ニオブ(Nb)、カルシウム(Ca)、鉛(Pb)、リン(P)、ハフニウム(Hf)、ルビジウム(Rb)、銅(Cu)、ガリウム(Ga)の各々を含有しない場合には、含有する場合に比較して、油劣化の抑制作用が低くなることが分かった。
一方、マンガン(Mn)、ニオブ(Nb)、カルシウム(Ca)、鉛(Pb)、リン(P)、ハフニウム(Hf)、ルビジウム(Rb)、銅(Cu)、ガリウム(Ga)を包含し、添加し、蛍光X線分析により包含する元素を金属又は酸化物として測定したときに酸化マンガン(MnO)、五酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化カルシウム(CaO)、一酸化鉛(PbO)、五酸化二リン(P2O5)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ルビジウム(Rb2O)、酸化銅(CuO)、酸化ガリウム(Ga2O3)の各々について、含有量が1.0質量%を超えた場合には、油劣化の抑制作用が変化しないことが分かった。
そのため、マンガン(Mn)、ニオブ(Nb)、カルシウム(Ca)、鉛(Pb)、リン(P)、ハフニウム(Hf)、ルビジウム(Rb)、銅(Cu)、ガリウム(Ga)の含有量は、蛍光X線分析により包含する元素を金属又は酸化物として測定したときに、酸化マンガン、五酸化ニオブ、酸化カルシウム、一酸化鉛、五酸化二リン、酸化ハフニウム、酸化ルビジウム、酸化銅、酸化ガリウムの含有量が全体の1.0質量%以下となる様に決定した。
【0033】
後述する実験例1及び実験例2とは異なる発明者の実験では、ウラン(U)を包含していない場合には、含有する場合に比較して、油劣化を抑制する性能が低くなった。ウラン(U)を包含していない場合に放射線量が少なくなり、マイナスイオン発生量が減少することに起因すると推測される。
また、蛍光X線分析により包含する元素を金属又は酸化物として測定したときに八酸化三ウラン(U3O8)の含有量が1.0質量%を超えた場合には、それ以上含有量を多くしても、油劣化を抑制する性能に変化が見られなかった。放射線量が十分に確保されたため、油劣化を抑制するのに必要なマイナスイオンも十分に生成されたためであると推定される。
そのため、ウランの含有量は、蛍光X線分析により包含する元素を金属又は酸化物として測定したときに八酸化三ウラン(U3O8)が1.0質量%以下となる様に決定した。
【0034】
係る組成(マンガン等を添加した組成)を下表2で示す。
表2
【0035】
発明者が別途行った実験によれば、ホウ素(B)、フッ素(F)を微量包含した場合には、油劣化を抑制する性能が有意に向上した。ホウ素(B)、フッ素(F)を包含すると、自発分極している極性材料としての結晶構造(蛍石構造、ペロブスカイト構造)が効率的に形成され、自然分極する程度の強誘電体の生成量が増加し、マイナスイオン発生量が増加するためであると推定する。
同様に、以下の実験例とは別に発明者が行った他の実験では、リチウム(Li)、イットリウム(Y)を微量包含した試料でも、油劣化を抑制する性能は向上した。リチウム(Li)、イットリウム(Y)を包含した場合も、自発分極している極性材料としての結晶構造(蛍石構造、ペロブスカイト構造)が効率的に形成され、自然分極する程度の強誘電体の生成量が増加し、マイナスイオン発生量が増加するためであると推定する。
【0036】
[実験例1]
ここで、発明者が行った油劣化の抑制作用に関する実験について説明する。
実験例1で用いた油劣化防止材の組成は、鉄(Fe)、トリウム(Th)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)を含有しており、各々の元素の含有量は、蛍光X線分析により元素を金属又は酸化物として測定すると、
酸化鉄(Fe2O3)を35質量%、
酸化トリウム(ThO2)を20質量%、
酸化マグネシウム(MgO)を10質量%、
酸化アルミニウム(Al2O3)を6質量%、
酸化チタン(TiO2)を5質量%、
酸化ジルコニウム(ZrO2:ジルコニア)を1.5質量%
包含している。
【0037】
【0038】
発明者による実験例1の実験方法及び実験結果を以下に説明する。
実験例1の実験目的に関して、表3に示す組成の油劣化防止材をフライヤーの油の中に投入した場合及び投入しなかった場合において、油の酸化度AV値の経時変化を比較し、油劣化防止材による劣化防止効果を検証した。ここでAV値は、揚げた食材から出る水分や空気中の水分によって油が加水分解を起こすと、上昇する数値であり、フライ油の管理に用いられる指標である。
油劣化防止材は金属板に溶射して溶射膜厚20μm、サイズ100×100×3mmの溶射板として使用、天ぷら油は市販品を1000ml、食材(揚げ物)は市販の冷凍加工品のメンチカツを使用した。
フライヤーは電気式の市販品であり、定格容量1L(油)、消費電力1000Wを使用し、天ぷら用温度計は220℃対応の市販品、酸化値(AV値)測定器は市販品(株式会社アタゴ社製の使用品名DOM24)であり、AV値は1/100まで測定可能である。
【0039】
実験手順については以下の(1)~(14)の通りである。
(1) フライヤーに天ぷら油1000mlを投入する。
(2) 先ずブランクテストとして、油劣化防止材の投入無しの条件下において、以下の手順で作業を実行する。
(3) 油温度が室温時に酸化度測定器(市販品のDOM24)を用いて、酸化度AVを測定する。
(4) フライヤーに通電過熱を行い、所望設定温度160℃に到達させ、当該温度を維持する。
(5) 食材(メンチカツ)5枚を順次投入し、揚げ作業を行う。その際、油温度160℃を極力保持しつつ、順次投入する。
(6) 揚げ作業が終了したら速やかに電源を切る。揚げ時間は5分間とする。
(7) 毎日同様の工程を繰り返し、酸化度測定器による酸化度測定値が目標値に到達するまで継続する。
(8) 酸化度測定値が目標数値に到達した時点で、作業を終了する。目標数値は法で定められた限界基準値2.5であるが、本実験では安全性、作業環境から2.0を採用した。
(9) 実験期間の中で12日毎に、油の?過による天カスの除去と油槽の清掃を行うと共に、油の減量を補うために新油150mlを追加する。
(10) 実験の中で、揚げた食材の油の含有状態(油のキレの良さ)、表面の色、食感を目視等で確認する。天ぷら油の色の変化及び臭い等も目視にて確認する。
(11) 次に、油劣化防止材の溶射板1枚をフライヤーの油槽底部に設置した場合についての検証を実施する。
(12) フライヤーの清掃と共に、新しい油を1000mlフライヤーに投入する。
(13) 以降、項目(3)~(10)までと同様の作業を繰り返し、比較データを収集する。
(14) 油槽の清掃、油の追加等は、対照区(ブランク)テストと同じタイミング、同じ手法で行い、両方の実験において極力条件を揃える。
【0040】
実験例1の結果を以下に説明する。油劣化防止材(の溶射板)を投入した場合の揚げ作業時の目視、食感等を比較した結果、油劣化防止材を接しないかった場合(油劣化防止材無しの場合)に比較して、揚げた後のメンチカツ内に含まれる油量が明らかに少なく、カラッとした出来上がりであった。また、油の臭いも圧倒的に少なく、さらに油の消費量も少なかった。これらの現象は、油劣化防止材の作用により油分子が微細化され、油の抜けが良いことに起因すると考えられる。
実験例1における酸化値(AV値)の比較結果を
図3に示す。
図3で、縦軸はAV値、横軸は実験日数である。また、油劣化防止材が有の場合を実線、油劣化防止材が無しの場合を破線で示し、それぞれの近似直線を一点鎖線で表示する。
実験日数12日、23日、36日にそれぞれ油槽清掃、?過、追湯(150ml)を行うと(
図3には明示しない)、AV値は一時的に改善(AV値が低下する)される。
図3の比較結果から、油劣化防止材を設置した場合は、油劣化防止材を設置していない場合(油劣化防止材無しの場合)に比較して、酸化値(AV値)が低いことが明らかである。そして、実験日数を重ねても酸化値(AV値)が上がり難いことも明白である。
油劣化防止材を油槽内に設置し、油槽内の天ぷら油にマイナスイオンが供給されることにより、還元反応が起こっているものと推定される。
【0041】
[実験例2]
実験例2では、実験例1で用いられた油劣化防止材とは異なる組成の油劣化防止材を用いて、実験例1と同様な実験を行った。
実験例2で用いた油劣化防止材は、鉄(Fe)、トリウム(Th)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、マンガン(Mn)、ニオブ(Nb)、ウラン(U)、カルシウム(Ca)、鉛(Pb)、リン(P)、ハフニウム(Hf)、ルビジウム(Rb)、銅(Cu)、ガリウム(Ga)を含有しており、各々の元素の含有量は、蛍光X線分析により元素を金属又は酸化物として測定すると、
酸化鉄(Fe2O3)を35質量%、
酸化トリウム(ThO2)を20質量%、
酸化マグネシウム(MgO)を10質量%、
酸化アルミニウム(Al2O3)を6質量%、
酸化チタン(TiO2)を5質量%、
ジルコニア(ZrO2)を1.5質量%、
酸化マンガン(MnO)、五酸化ニオブ(Nb2O5)、八酸化三ウラン(U3O8)、酸化カルシウム(CaO)、一酸化鉛(PbO)、五酸化二リン(P2O5)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ルビジウム(Rb2O)、酸化銅(CuO)、酸化ガリウム(Ga2O3)の各々を0.5質量%だけ包含している。
【0042】
実験例2で用いられた油劣化防止材の組成を下表4で示す。
表4
【0043】
実験例2における実験装置、実験手順等については、実験例1と同様である。
図表では示されていないが、実験例2では、実験例1に比較して、油劣化抑制効果が向上した。実験例1よりも酸化値(AV値)が低く、且つ、日数が経過しても酸化値(AV値)が上昇し難かった。これは、マンガン(Mn)、ニオブ(Nb)、ウラン(U)、カルシウム(Ca)、鉛(Pb)、リン(P)、ハフニウム(Hf)、ルビジウム(Rb)、銅(Cu)、ガリウム(Ga)を包含することにより、マイナスイオン生成量がぞうかしたためと推定する。
【0044】
実施形態に係る油劣化防止材1は、イオンやその他の力により油を含む流体の分子に働きかけ、酸化して塊状になった大きな油の分子をバラバラに分散させる作用を奏する。そして、分散した(バラバラになった)分子は個別に動き回り、自由度が増加するため、油の粘性が減少し、粘りが無い(いわゆる「サラサラ」な)状態を保つことが出来る。その結果、実施形態に係る油劣化防止材1を用いれば、揚げ物における油の抜けが良くなり、粘度が高い油が揚げ物の表面に付着することも防止して、食感を良くすることが出来たと推定する。
また、実施形態に係る油劣化防止材1は放射性を有する物質が包含されており、当該物質による微小な放射線により、劣化して複数の分子同士が引き付け合って塊状になった油分子は分散され(バラバラにされ)、粘りが無い状態となり、以て、油分子は個別に動き回り、自由度が増加した状態になると推定される。
それと共に、実施形態に係る油劣化防止材1から(例えば油劣化防止材1を油槽2内に配置すれば、油槽2内の油に対して)マイナスイオンが供給され、当該マイナスイオンによる還元作用により油の酸化(劣化)が抑制されるものと推定される。或いは、実施形態に係る油劣化防止材1は、放射性物質を包含する材料(励起材)を包含すると共に、上述した組成を具備することにより自発分極している極性材料として結晶構造を形成している。そのため、放射性物質からの放射線により自発分極した結晶粒子の電解に乱れが生じ、マイナスイオンを発生するものと推定される。
発明者の研究によれば、当該マイナスイオンの発生量は例えば1000個/cm3~10000個/cm3であり、それに対応する放射線量は極めて低くラジウム温泉と同程度であり、人体に悪影響を与えることはない。
また、実施形態に係る油劣化防止材1によれば、油の酸化を抑制するために外部から電力を供給する必要が無い。外部から電力供給をしなくても、励起材から放射線が生じなくなるまでの期間においては、劣化して複数の分子同士が引き付け合って塊状になった油分子に対してマイナスイオンが作用し続ける。
そして実施形態に係る油劣化防止材1では組成物が金属と無機物であるため、ゴム材や樹脂等の有機材料を包含する材料に比較して、耐候性、耐熱性、耐食性に優れており、半永久的に使用することができる。
【0045】
本発明の第1実施形態では、油劣化防止材1を中空球状に焼結している。ここで油劣化防止材1の組成は、表1で示す組成であっても良いし、表2で示す組成であっても良い。
図1において、上述した様に、フライヤー10A(連続的に食材11Aを入口側13から出口側17に移送されるタイプのフライヤー)の油槽2の油12中には、実施形態に係る油劣化防止材1を配置している。第1実施形態では、油劣化防止材1は焼結した焼結体1Aとして、油槽2内に配置されている。
焼結体1Aは、油劣化防止材1の成分粉体を造粒した後、プレス成型され、大気雰囲気下で所望の温度で焼成し焼き固めることにより製造されている。
図4には、第1実施形態に係る油劣化防止材1の一例が示される。
図4において、油劣化防止材1は、球状に形成された焼結体1Aを複数個有しており、当該複数個の球状の焼結体1Aを、多数の開口部3Aを有する中空体3(例えば、網状の部材或いはパンチングメタル)の内部空間に収容して、構成されている。そして、内部空間に複数の焼結体1Aを収容した中空体3は、フライヤー10Aの油槽2(
図1参照)内に浸漬して設置(配置)されている。
図2で上述したフライヤー10B(バッチ式に食材11Aを揚げていくタイプのフライヤー)においても、
図4に示す第1実施形態に係る油劣化防止材1を設置することが出来る。すなわち、多数の開口部を有する中空体3の内部空間に複数個の球状の焼結体1Aを収容し、焼結体1Aを収容した中空体3をフライヤー10Bの油槽2(
図2)内に浸漬して配置する。
焼結体1Aを収容した中空体3を油槽2内に設置したフライヤー10A、10Bは、第1実施形態に係るフライヤー10-1である。
【0046】
次に本発明の第2実施形態について説明する。
第2実施形態では、上述した表1或いは表2で示す油劣化防止材1を加熱して溶融し或いは半溶融状態とせしめ、溶融し或いは半溶融状態とせしめた油劣化防止材1を溶射するべき溶射対象物(例えば金属板)に噴射して、金属板表層部に衝突させ、前記金属板表層部に前記油劣化防止材を積層させて付着させている。
図5には、第2実施形態に係る油劣化防止材1の一例が示される。溶射対象物である金属板4の表層部に油劣化防止材1を噴射し、積層して、表層部を油劣化防止材1で被覆した金属板1Bを構成している。係る金属板1B(第2実施形態における油劣化防止材1)はフライヤー10の油槽2内に浸漬して配置される。金属板4に油劣化防止材1を噴射(溶射)する態様については、
図6を参照して後述する。
第2実施形態における油劣化防止材1である表層部を油劣化防止材1で被覆した金属板1Bは、
図1に示すフライヤー10A(連続的に食材11Aを入口側13から出口側17に移送されるタイプのフライヤー)及び
図2に示すフライヤー10B(バッチ式に食材11Aを揚げていくタイプのフライヤー)の何れにおいても、油槽2内に浸漬して配置することが出来る。そして
図1のフライヤー10A及び
図2のフライヤー10Bの何れにおいても、油劣化防止の効果を発揮する。
溶融し或いは半溶融状態とせしめた油劣化防止材1を噴射して表層部に油劣化防止材1を積層させた金属板1Bを油槽2内に配置した
図1のフライヤー10A、
図2のフライヤー10Bは、第2実施形態に係るフライヤー10-2である。
【0047】
上述した様に、フライヤー10-1(油劣化防止材1を焼結した球状の焼結体1Aを油槽2内に配置したフライヤー)、10-2(表層部を油劣化防止材1で被覆した金属板1Bを油槽2内に配置したフライヤー)によれば、油劣化防止材1(請求項1、2の何れかの油劣化防止材)を油槽2内に配置して、油劣化防止材1の上述した作用効果により、油の劣化を防止或いは抑制することが出来る。
そして、油槽内に焼結体1A或いは金属板1Bの何れかを配置するだけで良いので、フライヤー10-1、10-2の油槽2のサイズについて制限が無く、対応することができる。そして、油劣化防止材1は電力を外部から供給しなくても油の劣化防止効果を発揮することが出来るので、フライヤー設置可能なスペースがあれば、電源設備の有無とは無関係に適用することが出来て、汎用性が高い。
【0048】
第2実施形態における溶射について、
図6を参照して説明する。
「溶射」は、何らかの熱エネルギー源により、皮膜を構成する材料(油劣化防止材1を構成する無機粉体)を加熱溶融し或いは半溶融状態にすると同時に、運動エネルギーを付与して高速で飛行する溶滴1H(飛行溶滴)を作り出し(
図6(1)参照)、これを次々と溶射対象物の基材表面(第2実施形態の金属板4の表面)に噴射、衝突させ(
図6(2)参照)、金属板4の表層部に積層させて皮膜を付着形成する(
図6(3)参照)表面被覆プロセスである。すなわち、第2実施形態における溶射は、以下の(1)~(3)のプロセスを有し、以下のプロセス(1)~(3)は、それぞれ、
図6(1)~(3)で模式的に示されている。
(1) 熱源による溶射材料(油劣化防止材1を構成する無機粉体)の加熱と加速。
(2) 溶滴の基材(第2実施形態の金属板4)への衝突、偏平化・凝固。
(3) 偏平化した粒子の積層。
【0049】
図6(1)で示すプロセス(1)の溶射材料の加熱と加速過程では、飛行溶滴1Hに最適の温度、速度を与える溶射パラメータ(温度、速度、粒径、融点、比熱、熱伝導率、その他)を選択することにより、所望の皮膜を得ることが出来る。
図6(1)では飛行溶滴1Hに必要な熱エネルギー、運動エネルギーが、矢印Eで示されている。
図6(2)で示すプロセス(2)における溶滴の基材への衝突、偏平化・凝固過程では、高温・高速となった飛行溶滴1Hが基材4(金属板4)に衝突し、運動エネルギーと熱エネルギーを基材4に放出しながら、溶滴が偏平化(矢印F)しつつ凝固する。
図6(2)では、基材4上で偏平化した粒子が符号1Pで示されている。
図6(3)で示すプロセス(3)では、偏平化した粒子1Pの積層過程が示されている。溶滴が基材4に衝突して偏平化しながら凝固し、次々と粒子1P(スプラット)が積層して、且つ相互に密着して皮膜が形成される。
図6(3)では粒子1P(スプラット)の積層状態が示されており、当該粒子1Pを積層した状態の金属板4が、表層部を油劣化防止材1で被覆した金属板1Bである。
【0050】
第2実施形態では、
図6を参照して説明した方法で、表層部を油劣化防止材1で被覆した金属板1Bを作成する。そのため、金属(SUS、アルミ等の食品分野で使用可能な材質)の薄板を含む母材に対して、無機粉体である油劣化防止材1を溶融状態或いは半溶融状態(溶融に近い状態)で噴射して、金属母材板に所望の厚みの積層被覆層(被膜)を形成することが出来る。そのため、例えば、20μm単位での成膜が可能である。その様な薄膜(厚さ20μm単位の被膜)を形成することにより、油劣化防止材1の劣化抑制防止作用が確実に発揮される。
また第2実施形態では、油劣化防止材1を溶融状態或いは半溶融状態(溶融に近い状態)で噴射して、溶射することが出来るが、その際、1m
2程度の面積に被覆させることが可能であり、広範囲(面積)に亘って油の劣化抑制効果を発揮する装置が要求される場合においても、油劣化防止材1を1m
2程度の面積を有する金属母材4の表層部に被覆することにより、当該要求に応えることが出来る。
或いは、油劣化防止材1を確実に金属母材4の表層部の所望の面積に被覆されることが出来るので、油劣化防止材1を被覆させた同一サイズの金属母材1Bを複数製造して、当該複数の金属母材1Bを整列して油槽内に配置させ、或いは油槽内に油劣化防止材1を被覆させた同一サイズの金属母材を敷き詰めて、油劣化の抑制作用を発揮させることが出来る。
さらに第2実施形態において、所望のサイズの金属板4に油劣化防止材1を溶射することにより(油劣化防止材1を所望のサイズに)成形できるので、狭い隙間等であっても設置が可能であり、設置場所に制約を受け難い。それに加えて、第2実施形態に係る油劣化防止材1を予めニアネットシェープ形状に加工された金属材料に溶射することにすれば、ニアネットシェープ形状に成形することが出来る。すなわち、任意の形状での成形が可能となる。
そして、第2実施形態に係る油劣化防止材1では、溶融に近い状態にして溶射するので、加工に際して溶出や粉塵が無く、不純物の混入に敏感な食品業界でも適用することが出来る。
【0051】
本発明を適用したフライパンの実施形態を示す
図7において、全体を符号50で示すフライパンの本体部52は、例えば、鉄、アルミニウム、チタン等の金属材料製である。本体部52の断面が、
図7において符号Sで示す領域で示されており、本体52を構成する金属材料の表面側(図示しない食物と接触して加熱する側の表面:
図7の領域Sでは上側)には、
図1~
図6を参照して説明した油劣化防止材1が溶射により被覆されており、油劣化防止材1の表面側にはフッ素樹脂56(フッ化炭素樹脂:例えば、テトラフルオロエチレン:PTFE)が被覆されている。
発明者の実験では、油劣化防止材1が被覆されることにより、
図7で示すフライパン50で調理した食物は極めて良好な食感を持つことが分かった。さらに発明者の実験では、油劣化防止材1の表面側にフッ素樹脂56を被覆することにより、油劣化防止材1を被覆したフライパン50の耐熱性、耐久性が共に向上することが確認された。
なお、
図7において、符号58はフライパンの柄を示す。
【0052】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【符号の説明】
【0053】
1・・・油劣化防止材
1A・・・焼結体
1B・・・表層部を油劣化防止材で被覆した金属板
2・・・油槽
3・・・中空体
3A・・・開口部
4・・・金属板
10、10A、10B、10-1、10-2・・・フライヤー