(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025037430
(43)【公開日】2025-03-18
(54)【発明の名称】固体酸化物形燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04664 20160101AFI20250311BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20250311BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20250311BHJP
H01M 8/0444 20160101ALI20250311BHJP
H01M 8/04955 20160101ALI20250311BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20250311BHJP
【FI】
H01M8/04664
H01M8/04537
H01M8/0438
H01M8/0444
H01M8/04955
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023144362
(22)【出願日】2023-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】上野山 覚
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA07
5H127AB23
5H127BA02
5H127BA05
5H127BA13
5H127BA32
5H127BA33
5H127BA34
5H127BA37
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB17
5H127BB18
5H127BB19
5H127BB37
5H127DA12
5H127DB09
5H127DB53
5H127DB75
5H127DB76
5H127DB90
5H127EE02
5H127EE03
5H127GG04
5H127GG09
(57)【要約】
【課題】改質部において原燃料の改質が適切に行われているか否かを判定できる固体酸化物形燃料電池システムを提供する。
【解決手段】改質用水を気化させて水蒸気を生成する気化部5と、原燃料を気化部5で生成した水蒸気を用いて水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質部6と、改質部6で生成された燃料ガスを用いて発電する固体酸化物形の燃料電池セル8が複数積層されたセルスタック9とを備える固体酸化物形燃料電池システムであって、セルスタック9の発電電圧を測定する電圧測定部29を備え、運転制御部26は、電圧測定部29が所定の基準測定条件下で測定する発電電圧が基準発電電圧以上である場合、気化部5に供給される改質用水が目標水量よりも少ない水不足状態、及び、改質部6に供給される原燃料が目標原燃料量よりも少ない原燃料不足状態、の少なくとも一方が発生していると判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水タンクから改質用水供給路を介して供給される改質用水を気化させて水蒸気を生成する気化部と、前記改質用水供給路に所定の目標水量の前記改質用水を流す改質用水供給部と、原燃料供給路を介して供給される原燃料を、前記気化部で生成した水蒸気を用いて水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質部と、前記原燃料供給路に所定の目標原燃料量の前記原燃料を流す原燃料供給部と、前記改質部で生成された前記燃料ガスを用いて発電する固体酸化物形の燃料電池セルが複数積層されたセルスタックと、運転を制御する運転制御部とを備える固体酸化物形燃料電池システムであって、
前記セルスタックの発電電圧を測定する電圧測定部を備え、
前記運転制御部は、前記電圧測定部が所定の基準測定条件の下で測定する前記発電電圧が基準発電電圧以上である場合、前記気化部に供給される前記改質用水が前記目標水量よりも少ない水不足状態、及び、前記改質部に供給される前記原燃料が前記目標原燃料量よりも少ない原燃料不足状態、の少なくとも一方が発生していると判定する固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項2】
前記改質用水供給部は、前記目標水量に応じて定まる目標出力で動作して前記改質用水供給路に前記改質用水を流す改質用水ポンプを備え、
前記原燃料供給部は、前記原燃料供給路を流れる前記原燃料の単位時間当たりの流量を測定する原燃料流量計と、前記原燃料流量計で測定される前記原燃料の単位時間当たりの流量が前記目標原燃料量になるように前記原燃料供給路に前記原燃料を流す原燃料ポンプとを備え、
前記運転制御部は、前記電圧測定部が前記基準測定条件の下で測定する前記発電電圧が前記基準発電電圧以上であり、且つ、前記原燃料流量計で測定される前記原燃料の流量が前記目標原燃料量から所定範囲内にある場合、前記水不足状態が発生していると判定する請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項3】
前記運転制御部は、前記水不足状態が発生していると判定し、且つ、前記改質用水ポンプが前記目標出力で動作していると想定される場合、前記改質用水ポンプと前記気化部との間の前記改質用水供給路で前記改質用水が漏洩していることにより前記水不足状態が発生していると判定する請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項4】
前記改質用水ポンプと前記気化部との間の前記改質用水供給路に、前記気化部に供給される前記改質用水の有無を測定する水検知センサを備え、
前記運転制御部は、前記水不足状態が発生していると判定し、且つ、前記改質用水ポンプが前記目標出力で動作していると想定され、且つ、前記水検知センサが前記改質用水が有ると判定している場合、前記水検知センサと前記気化部との間の前記改質用水供給路で前記改質用水が漏洩していることにより前記水不足状態が発生していると判定する請求項3に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項5】
前記運転制御部は、前記改質用水が漏洩していることにより前記水不足状態が発生していると判定した場合、前記セルスタックの発電運転を停止させる請求項3又は4に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項6】
前記基準測定条件は、前記目標水量及び前記目標原燃料量が所定期間一定であることである請求項1~4の何れか一項に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項7】
前記基準発電電圧は経時的に低下する値に設定される請求項1~4の何れか一項に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特許第5438420号公報)には、供給される炭化水素を含む原燃料を水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質部と、改質部で生成された燃料ガスを用いて発電する固体酸化物形の燃料電池セルが複数積層されたセルスタックとを備える固体酸化物形燃料電池システムが記載されている。この固体酸化物形燃料電池システムでは、改質部に供給される原燃料の量と水蒸気の量とが目標量になるように、原燃料の供給量と水蒸気の供給量とが調節されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固体酸化物形燃料電池システムでは、改質部に供給される水蒸気が目標量に対して不足する、或いは、改質部に供給される原燃料が目標量に対して不足すると、原燃料の改質が不十分な状態で燃料電池セルのアノードに燃料が供給されることになる。そして、原燃料の改質が不十分な状態で動作すると、原燃料に含まれる炭化水素の分解が起こり、アノードにおいて炭素が析出しセルスタックが故障する可能性がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、改質部において原燃料の改質が適切に行われているか否かを判定できる固体酸化物形燃料電池システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る固体酸化物形燃料電池システムの特徴構成は、水タンクから改質用水供給路を介して供給される改質用水を気化させて水蒸気を生成する気化部と、前記改質用水供給路に所定の目標水量の前記改質用水を流す改質用水供給部と、原燃料供給路を介して供給される原燃料を、前記気化部で生成した水蒸気を用いて水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質部と、前記原燃料供給路に所定の目標原燃料量の前記原燃料を流す原燃料供給部と、前記改質部で生成された前記燃料ガスを用いて発電する固体酸化物形の燃料電池セルが複数積層されたセルスタックと、運転を制御する運転制御部とを備える固体酸化物形燃料電池システムであって、
前記セルスタックの発電電圧を測定する電圧測定部を備え、
前記運転制御部は、前記電圧測定部が所定の基準測定条件の下で測定する前記発電電圧が基準発電電圧以上である場合、前記気化部に供給される前記改質用水が前記目標水量よりも少ない水不足状態、及び、前記改質部に供給される前記原燃料が前記目標原燃料量よりも少ない原燃料不足状態、の少なくとも一方が発生していると判定する点にある。
【0007】
上記特徴構成によれば、運転制御部は、電圧測定部が測定する発電電圧が基準発電電圧以上である場合、気化部に供給される改質用水が目標水量よりも少ない水不足状態、及び、改質部に供給される原燃料が目標原燃料量よりも少ない原燃料不足状態、の少なくとも一方が発生していると判定できる。
従って、改質部において原燃料の改質が適切に行われているか否かを判定できる固体酸化物形燃料電池システムを提供できる。
【0008】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池システムの別の特徴構成は、前記改質用水供給部は、前記目標水量に応じて定まる目標出力で動作して前記改質用水供給路に前記改質用水を流す改質用水ポンプを備え、
前記原燃料供給部は、前記原燃料供給路を流れる前記原燃料の単位時間当たりの流量を測定する原燃料流量計と、前記原燃料流量計で測定される前記原燃料の単位時間当たりの流量が前記目標原燃料量になるように前記原燃料供給路に前記原燃料を流す原燃料ポンプとを備え、
前記運転制御部は、前記電圧測定部が前記基準測定条件の下で測定する前記発電電圧が前記基準発電電圧以上であり、且つ、前記原燃料流量計で測定される前記原燃料の流量が前記目標原燃料量から所定範囲内にある場合、前記水不足状態が発生していると判定する点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、原燃料流量計で測定される原燃料の流量が目標原燃料量から所定範囲内にある場合、即ち、原燃料不足状態が発生していない場合、水不足状態が発生していることにより、電圧測定部が測定する発電電圧が基準発電電圧以上になっていると判定できる。
【0010】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池システムの別の特徴構成は、前記運転制御部は、前記水不足状態が発生していると判定し、且つ、前記改質用水ポンプが前記目標出力で動作していると想定される場合、前記改質用水ポンプと前記気化部との間の前記改質用水供給路で前記改質用水が漏洩していることにより前記水不足状態が発生していると判定する点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、改質用水ポンプが目標出力で動作していると想定される場合、即ち、改質用水ポンプからは適正な量の改質用水が供給されている場合、改質用水ポンプと気化部との間の改質用水供給路で改質用水が漏洩していることにより水不足状態が発生していると判定できる。
【0012】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池システムの別の特徴構成は、前記改質用水ポンプと前記気化部との間の前記改質用水供給路に、前記気化部に供給される前記改質用水の有無を測定する水検知センサを備え、
前記運転制御部は、前記水不足状態が発生していると判定し、且つ、前記改質用水ポンプが前記目標出力で動作していると想定され、且つ、前記水検知センサが前記改質用水が有ると判定している場合、前記水検知センサと前記気化部との間の前記改質用水供給路で前記改質用水が漏洩していることにより前記水不足状態が発生していると判定する点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、改質用水ポンプが目標出力で動作していると想定され、且つ、水検知センサが改質用水が有ると判定している場合、即ち、改質用水ポンプからは適正な量の改質用水が供給され、且つ、水検知センサが設置されている部位には改質用水が供給されている場合、水検知センサと気化部との間の改質用水供給路で改質用水が漏洩していることにより水不足状態が発生していると判定できる。
【0014】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池システムの別の特徴構成は、前記運転制御部は、前記改質用水が漏洩していることにより前記水不足状態が発生していると判定した場合、前記セルスタックの発電運転を停止させる点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、改質用水が漏洩することで水不足状態が発生している可能性がある状態、即ち、セルスタックを正常に発電運転できない状態で、セルスタックの発電運転が継続されることを防止できる。
【0016】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池システムの別の特徴構成は、前記基準測定条件は、前記目標水量及び前記目標原燃料量が所定期間一定であることである点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、目標水量及び目標原燃料量が所定期間一定である場合、その間に電圧測定部で測定される電圧も安定するはずであり、そのような安定した状態にある発電電圧を基準発電電圧と比較することができる。
【0018】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池システムの別の特徴構成は、前記基準発電電圧は経時的に低下する値に設定される点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、経年劣化の進行に伴って発電電圧が低下することを考慮して、基準発電電圧を適切な値に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】固体酸化物形燃料電池システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係る固体酸化物形燃料電池システムについて説明する。
図1は、固体酸化物形燃料電池システムの構成を示す図である。固体酸化物形燃料電池システムは、外側容器1の内部に各種部品を備えている。
【0022】
外側容器1の内部には、ホットモジュール31が設けられている。ホットモジュール31には、高温環境下で動作するセルスタック9等などの機器を収容する内側容器2が設けられる。具体的には、内側容器2の内部には、気化部5、改質部6、マニホールド7、セルスタック9などが設けられる。気化部5は、水タンク19から改質用水供給路L6を介して供給される改質用水を気化させて水蒸気を生成し、その水蒸気を改質部6に供給する。改質部6は、原燃料供給路L1を介して供給される炭化水素を含む原燃料(例えば都市ガスなど)を、気化部5で生成した水蒸気を用いて水蒸気改質して燃料ガスを生成する。つまり、水タンク19に貯えられている水が、改質部6での原燃料の水蒸気改質に用いられる。
【0023】
セルスタック9は、改質部6で生成された燃料ガスを用いて発電する固体酸化物形の燃料電池セル8が複数積層された構成になっている。例えば、改質部6で生成された燃料ガスは、燃料ガス供給路L3を通ってマニホールド7に至り、燃料ガスはマニホールド7で各燃料電池セル8に分配される。
【0024】
セルスタック9の上方の空間は、複数の燃料電池セル8から排出されるオフガスを燃焼する燃焼部11となる。この燃焼熱は、その上方の気化部5及び改質部6に伝達される。点火部10は、オフガスに点火させる。
【0025】
内側容器2の給気口12には空気供給路L2が接続され、内側容器2の内部に空気(酸素)が供給される。内側容器2の排気口13から、内側容器2の内部に存在するガスが内側容器2の外部に排出される。内側容器2の内部から排出される排ガスには、燃焼部11から排出される燃焼排ガスが含まれる。排気口13には、排ガスに含まれる水素、一酸化炭素などを、酸素を用いて触媒燃焼させる燃焼触媒部14が設けられている。
【0026】
固体酸化物形燃料電池システムは、燃焼部11から排出される燃焼排ガスの熱を回収する熱回収装置Hを備える。具体的には、熱回収装置Hは、燃焼部11から排出される燃焼排ガスを含む、内側容器2から排出される排ガスが供給される熱交換部16、湯水を貯える貯湯タンク23、及び、熱交換部16と貯湯タンク23との間で湯水を循環させる湯水循環路L9を有し、貯湯タンク23の下部から取り出した湯水を熱交換部16に供給し、熱交換部16を流れた湯水を貯湯タンク23の上部に戻す構成で湯水を循環させることで、熱交換部16で回収した燃焼排ガスの熱を貯湯タンク23で蓄えるように構成される。
【0027】
燃焼触媒部14を通過した排ガスは、内側容器2の外部に排出されて排ガス流路L4を流れ、熱交換部16に供給される。熱交換部16では、排ガスと、湯水循環路L9を流れる排熱回収用熱媒としての湯水との熱交換、即ち、排ガスの冷却が行われ、排ガスに含まれていた水分が凝縮する。
【0028】
熱交換部16の下流側の排ガス流路L4には分岐部17が設けられて、排ガス流路L4から水回収路L5が分岐する。そして、排ガス中の気相成分は排ガス流路L4を通って外側容器1の外部に排出され、排ガス中の液相成分(凝縮水)は水回収路L5を通って水タンク19に至り、水タンク19で貯留される。つまり、水タンク19は、熱回収装置Hで燃焼排ガスを冷却することで燃焼排ガス中から回収した回収水を貯える。
【0029】
気化部5への原燃料の供給は原燃料供給路L1を介して行われる。
図1に示す例では、原燃料供給路L1の途中には、原燃料供給部3及び脱硫部4が設けられる。原燃料供給部3は、原燃料供給路L1に所定の目標原燃料量の原燃料を流す。例えば、原燃料供給部3は、原燃料供給路L1を流れる原燃料の単位時間当たりの流量を測定する原燃料流量計3aと、原燃料流量計3aで測定される原燃料の単位時間当たりの流量が目標原燃料量になるように原燃料供給路L1に原燃料を流す原燃料ポンプ3bとを備える。そして、固体酸化物形燃料電池システムの運転を制御する運転制御部26は、原燃料流量計3aで測定される原燃料の単位時間当たりの流量が目標原燃料量になるように原燃料ポンプ3bを動作させる。脱硫部4は、原燃料に含まれる硫黄化合物などを除去する。
【0030】
内側容器2の内部への空気の供給は、空気供給路L2を介して行われる。空気供給路L2の途中には空気供給部としての空気ポンプ22が設けられる。例えば、運転制御部26は、空気の単位時間当たりの流量が目標流量になるように空気ポンプ22を動作させる。
【0031】
水回収路L5を用いて回収した凝縮水は水タンク19に供給される。水タンク19には、水タンク19での貯留水の量を測定する水量測定部20が設けられる。水タンク19に貯えられている貯留水は改質用水供給路L6を介して気化部5に供給される。改質用水供給路L6の途中には改質用水供給部としての改質用水ポンプ21と、水検知センサ15とが設けられる。運転制御部26は、気化部5に供給される単位時間当たりの水量が目標流量になるように改質用水ポンプ21を動作させる。例えば、改質用水ポンプ21は、目標水量に応じて定まる目標出力で動作して改質用水供給路L6に所定の目標水量の改質用水を流す。
【0032】
水検知センサ15は、改質用水ポンプ21と気化部5との間の改質用水供給路L6に設けられ、気化部5に供給される改質用水の有無を測定する。
【0033】
上述したように、熱交換部16では、排ガスと、湯水循環路L9を流れる排熱回収用熱媒としての湯水との熱交換が行われる。湯水は、貯湯タンク23に貯えられており、湯水循環路L9を介して貯湯タンク23と熱交換部16との間を循環する。貯湯タンク23から熱交換部16へ至る間の湯水循環路L9の途中には、湯水ポンプ24と放熱部25と温度センサT2とが設けられている。放熱部25は、貯湯タンク23の下部から取り出して熱交換部16に供給する湯水から熱を放出させる放熱運転を行うことができる。例えば、放熱部25は、ファンなどを用いて実現できる。熱交換部16から貯湯タンク23へ至る間の湯水循環路L9の途中には、温度センサT1が設けられている。
【0034】
例えば、運転制御部26は、温度センサT2で測定される湯水の温度が所定の上限湯水温度未満になるように放熱部25の動作を制御する。また、運転制御部26は、温度センサT1で測定される湯水の温度が目標貯湯温度になるように湯水ポンプ24の動作を制御する。
【0035】
このような構成により、貯湯タンク23の下部から湯水循環路L9を介して熱交換部16に供給される湯水はその熱交換部16で加熱され、加熱後の湯水は湯水循環路L9を介して貯湯タンク23の上部に供給される。このようにして、貯湯タンク23の上部には相対的に高温の湯水が存在し、貯湯タンク23の下部には相対的に低温の湯水が存在するというように、貯湯タンク23に温度成層を形成する状態で湯水が貯湯、即ち、蓄熱される。
【0036】
貯湯タンク23の下部には、貯湯タンク23に水(上水)を供給するための給水路L7が接続され、貯湯タンク23の上部には、貯湯タンク23で貯えている湯水を外部に排出するための出湯路L8が接続される。給水圧が加わっている給水路L7により、貯湯タンク23の内部の湯水にも所定の給水圧が加わっている。このような構成により、貯湯タンク23では、例えば出湯路L8に接続される水栓(図示せず)が開かれることで出湯路L8へ貯湯タンク23から湯水が排出されるのに対応して、給水路L7から水が貯湯タンク23内に供給される。
【0037】
他にも、固体酸化物形燃料電池システムは、運転制御部26と、固体酸化物形燃料電池システムで取り扱われる情報を記憶する記憶部27と、セルスタック9の発電電圧を測定する電圧測定部29とを備える。運転制御部26は、上述した点火部10、原燃料ポンプ3b、改質用水ポンプ21、空気ポンプ22、湯水ポンプ24、放熱部25などの各種機器の動作を制御する。
【0038】
このような構成の固体酸化物形燃料電池システムでは、改質部6に供給される水蒸気が目標量に対して不足する、或いは、改質部6に供給される原燃料が目標量に対して不足すると、原燃料の改質が不十分な状態で燃料電池セル8のアノードに燃料が供給されることになる。そして、原燃料の改質が不十分な状態で動作すると、原燃料に含まれる炭化水素の分解が起こり、アノードにおいて炭素が析出し、セルスタック9が故障する可能性がある。そのため、改質部6において原燃料の改質が適切に行われているか否かを判定する必要がある。
【0039】
次に、改質部6において原燃料の改質が適切に行われているか否か、即ち、気化部5に供給される改質用水が目標水量よりも少ない水不足状態、及び、改質部6に供給される原燃料が目標原燃料量よりも少ない原燃料不足状態、の少なくとも一方が発生しているか否かを判定する処理について説明する。運転制御部26は、このような判定処理を所定のタイミングで行えばよい。例えば、運転制御部26は、このような判定処理を一定期間毎に行ってもよいし、或いは、固体酸化物形燃料電池システムを起動する毎などに行ってもよい。
【0040】
運転制御部26は、電圧測定部29が所定の基準測定条件の下で測定する発電電圧が基準発電電圧以上である場合、気化部5に供給される改質用水が目標水量よりも少ない水不足状態、及び、改質部6に供給される原燃料が目標原燃料量よりも少ない原燃料不足状態、の少なくとも一方が発生していると判定する。従って、改質部6において原燃料の改質が適切に行われているか否かを判定できる。
【0041】
尚、固体酸化物形燃料電池システムでは、発電状態(負荷変動)に応じて、気化部5に供給される改質用水の目標水量、及び、改質部6に供給される原燃料の目標原燃料量は変更され、それに応じてセルスタック9の発電電圧も変化する。そのため、上記基準測定条件は、目標水量及び目標原燃料量が例えば30分間などの所定期間一定であることである。つまり、目標水量及び目標原燃料量が所定期間一定である場合、その間に電圧測定部29で測定される電圧も安定するはずであり、そのような安定した状態にある発電電圧を基準発電電圧と比較することができる。
【0042】
そして、運転制御部26は、原燃料流量計3aで測定される原燃料の流量が目標原燃料量から所定範囲内にある場合、原燃料不足状態が発生していないと判定する。それに対して、運転制御部26は、原燃料流量計3aで測定される原燃料の流量が目標原燃料量よりも小さく、且つ、目標原燃料量から所定範囲内にない場合、原燃料不足状態が発生していると判定する。
【0043】
また、運転制御部26は、電圧測定部29が基準測定条件下で測定するセルスタック9の発電電圧が基準発電電圧以上であり、且つ、原燃料流量計3aで測定される原燃料の流量が目標原燃料量から所定範囲内にある場合、即ち、原燃料は改質部6に対して正常に供給されている場合、水不足状態が発生していると判定する。
【0044】
加えて、運転制御部26は、水不足状態が発生していると判定し、且つ、改質用水ポンプ21が目標出力で動作していると想定される場合、即ち、改質用水ポンプ21からは適正な量の改質用水が供給されている場合、改質用水ポンプ21と気化部5との間の改質用水供給路L6で改質用水が漏洩していることにより水不足状態が発生していると判定する。例えば、運転制御部26は、改質用水ポンプ21に与える指令値が目標出力である場合、改質用水ポンプ21の実際の出力が目標出力である場合に、改質用水ポンプ21が目標出力で動作していると判定できる。
【0045】
更に、運転制御部26は、水不足状態が発生していると判定し、且つ、改質用水ポンプ21が目標出力で動作していると想定され、且つ、水検知センサ15が改質用水が有ると判定している場合、水検知センサ15と気化部5との間の改質用水供給路L6で改質用水が漏洩していることにより水不足状態が発生していると判定する。
【0046】
そして、運転制御部26は、改質用水が漏洩していることにより水不足状態が発生していると判定した場合、セルスタック9の発電運転を停止させる。つまり、改質用水が漏洩することで水不足状態が発生している可能性がある状態、即ち、セルスタック9を正常に発電運転できない状態で、セルスタック9の発電運転が継続されることを防止できる。
【0047】
具体例を挙げると、以下に記載する動作例1(正常時)及び動作例2(改質用水の漏洩時)では、目標水量及び目標原燃料量は同じである。但し、動作例2では、実際に気化部5に供給される改質用水を目標水量よりも意図的に少なくした。そのため、動作例2の場合に改質部6に供給された水蒸気量は、動作例1の場合に改質部6に供給された水蒸気量よりも少なくなっている。そして、電圧測定部29で測定された発電電圧(ここでは開回路電圧(OCV))は、動作例2の方が、動作例1よりも高くなっている。このように、運転制御部26は、電圧測定部29が測定する発電電圧が基準発電電圧(例えば51V等)以上である場合、気化部5に供給される改質用水が目標水量よりも少ない水不足状態、及び、改質部6に供給される原燃料が目標原燃料量よりも少ない原燃料不足状態、の少なくとも一方が発生していると判定できる。
【0048】
・動作例1(正常時)
目標原燃料量は2.0L/minであり、目標水量は4mL/minであり、発電電圧は50Vである。
・動作例2(改質用水の漏洩時)
目標原燃料量は2.0L/minであり、目標水量は4mL/minであり、発電電圧は52Vである。
【0049】
<別実施形態>
上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池システムの構成について具体例を挙げて説明したが、その構成は適宜変更可能である。
【0050】
上記実施形態において、電圧測定部29がセルスタック9の開回路電圧を測定した場合を例示したが、電圧測定部29が測定する発電電圧は開回路電圧でなくてもよい。例えば、電圧測定部29は、例えば500W発電時の発電電圧などを測定してもよい。
【0051】
上記実施形態において、基準発電電圧の値は適宜設定可能である。例えば、基準発電電圧は一定の値でもよいし、例えば経時的に低下する値に設定されてもよい。つまり、経年劣化の進行に伴って発電電圧が低下することを考慮して、基準発電電圧を適切な値に設定できる。一例を挙げると、基準発電電圧V=V0×(1-0.01X)という値に設定してもよい。ここで、V0は初期基準発電電圧であり、Xは年である。つまり、この場合の基準発電電圧は、1年毎に1%ずつ低下する値に設定される。
【0052】
上記実施形態では、具体的な数値例を挙げて本発明の固体酸化物形燃料電池システムについて説明したが、それらの数値は例示目的で記載したものであり適宜変更可能である。
【0053】
上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、改質部において原燃料の改質が適切に行われているか否かを判定できる固体酸化物形燃料電池システムに利用できる。
【符号の説明】
【0055】
3a :原燃料流量計(原燃料供給部 3)
3b :原燃料ポンプ(原燃料供給部 3)
3b :原燃料ポンプ
5 :気化部
6 :改質部
8 :燃料電池セル
9 :セルスタック
15 :水検知センサ
19 :水タンク
21 :改質用水ポンプ(改質用水供給部)
26 :運転制御部
29 :電圧測定部
L1 :原燃料供給路
L6 :改質用水供給路