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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025037433
(43)【公開日】2025-03-18
(54)【発明の名称】固体酸化物形燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04828 20160101AFI20250311BHJP
   H01M 8/04313 20160101ALI20250311BHJP
   H01M 8/04955 20160101ALI20250311BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20250311BHJP
   H01M 8/04228 20160101ALI20250311BHJP
   H01M 8/04303 20160101ALI20250311BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20250311BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20250311BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20250311BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20250311BHJP
【FI】
H01M8/04828
H01M8/04313
H01M8/04955
H01M8/04858
H01M8/04228
H01M8/04303
H01M8/04746
H01M8/0432
H01M8/00 Z
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023144365
(22)【出願日】2023-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】上野山 覚
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA07
5H127AB08
5H127AB23
5H127AC15
5H127BA02
5H127BA05
5H127BA13
5H127BA18
5H127BA33
5H127BA34
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB18
5H127BB19
5H127BB37
5H127DA11
5H127DB87
5H127DB92
5H127DB93
5H127DC46
5H127DC68
5H127DC87
5H127DC93
5H127EE02
5H127EE03
5H127GG04
5H127GG09
(57)【要約】
【課題】水蒸気改質に用いる水を十分に確保しつつ、電力需要の高まる時間帯に大きな電力を出力できる固体酸化物形燃料電池システムを提供する。
【解決手段】複数の燃料電池セル8から排出されるオフガスを燃焼する燃焼部11と、燃焼部11から排出される燃焼排ガスの熱を回収する熱回収装置Hと、熱回収装置Hで燃焼排ガス中から回収した回収水を貯える水タンク19とを備え、水タンク19に貯えられている水が改質部6での原燃料の水蒸気改質に用いられる固体酸化物形燃料電池システムSであって、運転制御部26は、電力系統での電力需要が高まることが予測されるという高需要条件、及び、電力系統での電力需要が高まる高需要時間帯に温度が高まることが予測されるという高温条件のうち、少なくとも高需要条件が満たされる場合、高需要時間帯よりも前の所定の事前時間帯の間、セルスタック9を水量増加モードで運転させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原燃料を水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質部と、前記改質部で生成された前記燃料ガスを用いて発電する固体酸化物形の燃料電池セルが複数積層されたセルスタックと、複数の前記燃料電池セルから排出されるオフガスを燃焼する燃焼部と、前記燃焼部から排出される燃焼排ガスの熱を回収する熱回収装置と、前記熱回収装置で前記燃焼排ガスを冷却することで当該燃焼排ガス中から回収した回収水を貯える水タンクと、運転を制御する運転制御部とを備え、前記水タンクに貯えられている水が、前記改質部での前記原燃料の水蒸気改質に用いられ、前記運転制御部は、前記水タンクに貯えられている水の量が所定の下限水量未満になった場合、前記セルスタックの発電運転を停止させる又は発電出力を抑制するように構成されている固体酸化物形燃料電池システムであって、
前記運転制御部は、電力系統での電力需要が高まることが予測されるという高需要条件、及び、前記電力系統での電力需要が高まる高需要時間帯に前記セルスタックが設置されている地域の温度が高まることが予測されるという高温条件のうち、少なくとも前記高需要条件が満たされる場合、前記高需要時間帯よりも前の所定の事前時間帯の間、前記セルスタックを、前記水タンクでの水量を増加させるための水量増加モードで運転させる固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項2】
前記運転制御部は、前記水量増加モードにおいて、前記セルスタックの出力電力を定格電力未満の所定電力にさせる請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項3】
前記所定電力は、前記セルスタックが出力できる最低出力電力である請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項4】
前記運転制御部は、
前記高需要条件及び前記高温条件が満たされる場合、前記事前時間帯の間、前記セルスタックを前記水量増加モードで運転させるように構成され、
前記高需要時間帯での予想最高気温が所定温度以上の場合に前記高温条件が満たされると判定する請求項1~3の何れか一項に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項5】
前記運転制御部は、
前記高需要条件及び前記高温条件が満たされる場合、前記事前時間帯の間、前記セルスタックを前記水量増加モードで運転させるように構成され、
前記高需要時間帯を含む日が、気温が高くなると予め定められた日に該当する場合に前記高温条件が満たされると判定する請求項1~3の何れか一項に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項6】
前記熱回収装置は、前記燃焼部から排出される前記燃焼排ガスが供給される熱交換部、及び、湯水を貯える貯湯タンクを有し、前記貯湯タンクの下部から取り出した湯水を前記熱交換部に供給し、前記熱交換部を流れた湯水を前記貯湯タンクの上部に戻す構成で湯水を循環させることで、前記熱交換部で回収した前記燃焼排ガスの熱を前記貯湯タンクで蓄えるように構成され、
前記貯湯タンクの上部には、前記貯湯タンクで貯えている湯水を外部に排出するための出湯路が接続され、前記貯湯タンクの下部には、前記貯湯タンクに水を供給するための給水路が接続され、前記給水路により前記貯湯タンクの内部の湯水に対して所定の給水圧が加わることで、前記出湯路へ前記貯湯タンクから湯水が排出されるのに対応して前記給水路から水が貯湯タンク内に供給されるように構成される請求項1~3の何れか一項に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項7】
前記貯湯タンクの下部から取り出して前記熱交換部に供給する湯水から熱を放出させる放熱運転を行うことができる放熱部を備え、
前記運転制御部は、前記水量増加モードにおいて、前記放熱部を前記放熱運転させる請求項6に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項8】
前記運転制御部は、前記水量増加モードにおいて、前記貯湯タンクから前記出湯路を介して設定量以上の湯水を排出させる請求項6に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特許第5438420号公報)には、供給される原燃料を水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質部と、改質部で生成された燃料ガスを用いて発電する固体酸化物形の燃料電池セルが複数積層されたセルスタックとを備える固体酸化物形燃料電池システムが記載されている。この固体酸化物形燃料電池システムでは、セルスタックから排出されるオフガスを燃焼させ、その燃焼排ガスを冷却することで水を凝縮させ、その凝縮水をタンクに回収している。そして、タンクに回収した水を、原燃料を水蒸気改質するために用いている。
【0003】
そのため、特許文献1に記載の固体酸化物形燃料電池システムでは、タンクの水位が高水位よりも低い水位であることが水位センサにより検知されるとき、電力負荷の大きさに拘わらず、セルスタックの出力を低い値に制限することを行っている。そして、セルスタックの出力が低くなると、例えば、水蒸気改質に要する単位時間当たりの改質用水の量が少なくなることで、タンクの水位が再び高水位以上に戻ることが期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5438420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固体酸化物形燃料電池システムでは、外気温が高いほど燃焼排ガスを冷却する能力が低下するため、外気温が高い時間帯でタンクの水位が低下する可能性が高くなる。そのため、特許文献1に記載の固体酸化物形燃料電池システムでは、例えば夏季の昼間の時間帯などでタンクの水位が低下して、燃料電池の出力が抑制又は停止される可能性が高くなる。
【0006】
尚、電力の使用率は夏季の昼間の時間帯などで高くなるため、電力価値はその時間帯で高くなると言える。そのため、特許文献1に記載の固体酸化物形燃料電池システムは、電力価値が高くなる時間帯で出力が抑制又は停止される可能性が高くなるため、固体酸化物形燃料電池システムを設置したことによる経済的メリットを十分に享受できない可能性が高くなる。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、水蒸気改質に用いる水を十分に確保しつつ、電力需要の高まる時間帯に大きな電力を出力できる固体酸化物形燃料電池システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る固体酸化物形燃料電池システムの特徴構成は、原燃料を水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質部と、前記改質部で生成された前記燃料ガスを用いて発電する固体酸化物形の燃料電池セルが複数積層されたセルスタックと、複数の前記燃料電池セルから排出されるオフガスを燃焼する燃焼部と、前記燃焼部から排出される燃焼排ガスの熱を回収する熱回収装置と、前記熱回収装置で前記燃焼排ガスを冷却することで当該燃焼排ガス中から回収した回収水を貯える水タンクと、運転を制御する運転制御部とを備え、前記水タンクに貯えられている水が、前記改質部での前記原燃料の水蒸気改質に用いられ、前記運転制御部は、前記水タンクに貯えられている水の量が所定の下限水量未満になった場合、前記セルスタックの発電運転を停止させる又は発電出力を抑制するように構成されている固体酸化物形燃料電池であって、
前記運転制御部は、電力系統での電力需要が高まることが予測されるという高需要条件、及び、前記電力系統での電力需要が高まる高需要時間帯に前記セルスタックが設置されている地域の温度が高まることが予測されるという高温条件のうち、少なくとも前記高需要条件が満たされる場合、前記高需要時間帯よりも前の所定の事前時間帯の間、前記セルスタックを、前記水タンクでの水量を増加させるための水量増加モードで運転させる点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、運転制御部は、少なくとも高需要条件が満たされる場合、高需要時間帯よりも前の所定の事前時間帯の間、セルスタックを、水タンクでの水量を増加させるための水量増加モードで運転させる。つまり、電力系統での電力需要が高まる高需要時間帯よりも前に、水タンクでの水量が増加させられる。その結果、高需要時間帯の間に水タンクに貯えられている水の量が所定の下限水量未満になることを避けることができ、高需要時間帯にセルスタックの発電運転が継続されることが期待される。
従って、水蒸気改質に用いる水を十分に確保しつつ、電力需要の高まる時間帯に大きな電力を出力できる固体酸化物形燃料電池システムを提供できる。
【0010】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池システムの別の特徴構成は、前記運転制御部は、前記水量増加モードにおいて、前記セルスタックの出力電力を定格電力未満の所定電力にさせる点にある。
ここで、前記所定電力は、前記セルスタックが出力できる最低出力電力であってもよい。
【0011】
上記特徴構成によれば、セルスタックの出力電力を定格電力未満の所定電力にさせることで、セルスタックの出力電力を定格電力にする場合と比べて、水蒸気改質に要する単位時間当たりの改質用水の量が少なくなる。その結果、単位時間当たりに燃焼排ガス中から回収する回収水の量の方が、水蒸気改質で用いられる単位時間当たりの改質用水の量よりも多くなることが期待され、水タンクに貯えられている水量が増加することが期待される。
【0012】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池システムの別の特徴構成は、前記運転制御部は、前記高需要条件及び前記高温条件が満たされる場合、前記事前時間帯の間、前記セルスタックを前記水量増加モードで運転させるように構成され、前記高需要時間帯での予想最高気温が所定温度以上の場合に前記高温条件が満たされると判定する点にある。
【0013】
固体酸化物形燃料電池システムでは、気温が高いほど燃焼排ガスを冷却する能力が低下するため、気温が高い時間帯で水タンクの水位が低下する可能性が高くなる。
そこで本特徴構成では、運転制御部は、高需要時間帯での予想最高気温が所定温度以上の場合に高温条件が満たされると判定し、電力系統での電力需要が高まる高需要時間帯よりも前に、セルスタックを水量増加モードで運転させる。その結果、高需要時間帯の間に水タンクに貯えられている水の量が所定の下限水量未満になることを避けて、高需要時間帯にセルスタックの発電運転が継続されることが期待される。
【0014】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池システムの別の特徴構成は、前記運転制御部は、前記高需要条件及び前記高温条件が満たされる場合、前記事前時間帯の間、前記セルスタックを前記水量増加モードで運転させるように構成され、前記高需要時間帯を含む日が、気温が高くなると予め定められた日に該当する場合に前記高温条件が満たされると判定する点にある。
【0015】
例えば夏期などでは、冬期、春期及び秋期などと比べて当然に気温が高くなる可能性が高いため、固体酸化物形燃料電池システムでは、燃焼排ガスを冷却する能力が低下する可能性が高くなる。つまり、夏期などを、気温が高くなる日であるとして予め定めことができ、その日を、水タンクの水位が低下する可能性が高くなる日として予め定めることができる。
そこで本特徴構成では、運転制御部は、高需要時間帯を含む日が、気温が高くなると予め定められた日に該当する場合に高温条件が満たされると判定し、電力系統での電力需要が高まる高需要時間帯よりも前に、セルスタックを水量増加モードで運転させる。その結果、高需要時間帯の間に水タンクに貯えられている水の量が所定の下限水量未満になることを避けて、高需要時間帯にセルスタックの発電運転が継続されることが期待される。
【0016】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池システムの別の特徴構成は、前記熱回収装置は、前記燃焼部から排出される前記燃焼排ガスが供給される熱交換部、及び、湯水を貯える貯湯タンクを有し、前記貯湯タンクの下部から取り出した湯水を前記熱交換部に供給し、前記熱交換部を流れた湯水を前記貯湯タンクの上部に戻す構成で湯水を循環させることで、前記熱交換部で回収した前記燃焼排ガスの熱を前記貯湯タンクで蓄えるように構成され、
前記貯湯タンクの上部には、前記貯湯タンクで貯えている湯水を外部に排出するための出湯路が接続され、前記貯湯タンクの下部には、前記貯湯タンクに水を供給するための給水路が接続され、前記給水路により前記貯湯タンクの内部の湯水に対して所定の給水圧が加わることで、前記出湯路へ前記貯湯タンクから湯水が排出されるのに対応して前記給水路から水が貯湯タンク内に供給されるように構成される点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、熱回収装置を用いて回収した熱を貯湯タンクで蓄え、その熱を出湯路から供給することができる。
【0018】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池システムの別の特徴構成は、前記貯湯タンクの下部から取り出して前記熱交換部に供給する湯水から熱を放出させる放熱運転を行うことができる放熱部を備え、
前記運転制御部は、前記水量増加モードにおいて、前記放熱部を前記放熱運転させる点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、放熱部を放熱運転させることで、熱交換部での燃焼排ガスからの放熱を促進することができる。その結果、熱交換部において燃焼排ガスの冷却を促進して、その燃焼排ガス中からの水の凝縮を促進できる。
【0020】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池システムの別の特徴構成は、前記運転制御部は、前記水量増加モードにおいて、前記貯湯タンクから前記出湯路を介して設定量以上の湯水を排出させる点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、貯湯タンクから出湯路を介して設定量以上の湯水を排出させることで、貯湯タンクの下部には給水路から水が供給され、その水が熱交換部に供給される。つまり、貯湯タンクに元から貯えられている比較的高温の湯水が熱交換部に供給されるのではなく、給水路から供給された比較的低温の水が熱交換部に供給されて、燃焼排ガスの冷却に利用される。その結果、熱交換部において燃焼排ガスの冷却を促進して、その燃焼排ガス中からの水の凝縮を促進できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】固体酸化物形燃料電池システムが設けられている施設を含むシステムの構成を示す図である。
図2】固体酸化物形燃料電池システムの構成を示す図である。
図3】固体酸化物形燃料電池システムの運転モード決定処理を説明するフローチャートである。
図4】高需要時間帯及び事前時間帯を模式的に描いた図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係る固体酸化物形燃料電池システムSについて説明する。図1は、固体酸化物形燃料電池システムSが設けられている施設Fを含むシステムの構成を示す図である。図2は、固体酸化物形燃料電池システムSの構成を示す図である。
【0024】
図1に示すように、住戸及び事業所などの施設Fに固体酸化物形燃料電池システムSが設けられている。施設Fには、電力系統に接続される電力線32が設けられる。電力線32には、電力消費装置L及び固体酸化物形燃料電池システムSが接続される。電力消費装置L及び固体酸化物形燃料電池システムSは、電力系統に連系される電力線32に接続されて、電力系統からの電力供給を受けることができる。また、固体酸化物形燃料電池システムSの発電電力を、電力線32を介して電力系統に供給することもできる。施設Fに設けられる固体酸化物形燃料電池システムS及びガス消費機器Gにはガス管33から例えば都市ガスなどの炭化水素を含むガスが供給される。ガス管33から供給される例えば都市ガスなどのガスは本発明の「原燃料」に相当し、以下の説明でも原燃料と記載することがある。
【0025】
固体酸化物形燃料電池システムSの通信部28は情報通信ネットワークNに接続されて、施設Fの外部の装置との間で情報通信を行うことができる。固体酸化物形燃料電池システムSは、例えば、気象に関する情報や電力系統における電力の需給状況に関する情報などを提供する情報提供サーバPとの間で情報通信を行うことができる。
【0026】
図2に示すように、固体酸化物形燃料電池システムSは、外側容器1の内部に各種部品を備えている。外側容器1の内部には、ホットモジュール31が設けられている。ホットモジュール31には、高温環境下で動作するセルスタック9等などの機器を収容する内側容器2が設けられる。具体的には、内側容器2の内部には、気化部5、改質部6、マニホールド7、セルスタック9などが設けられる。気化部5は、水タンク19から改質用水供給路L6を介して供給される改質用水を気化させて水蒸気を生成し、その水蒸気を改質部6に供給する。改質部6は、原燃料供給路L1を介して供給される炭化水素を含む原燃料(例えば都市ガスなど)を、気化部5で生成した水蒸気を用いて水蒸気改質して燃料ガスを生成する。つまり、水タンク19に貯えられている水が、改質部6での原燃料の水蒸気改質に用いられる。
【0027】
セルスタック9は、改質部6で生成された燃料ガスを用いて発電する固体酸化物形の燃料電池セル8が複数積層された構成になっている。例えば、改質部6で生成された燃料ガスは、燃料ガス供給路L3を通ってマニホールド7に至り、燃料ガスはマニホールド7で各燃料電池セル8に分配される。セルスタック9は、電力変換部18を介して電力線32に接続される。
【0028】
セルスタック9の上方の空間は、複数の燃料電池セル8から排出されるオフガスを燃焼する燃焼部11となる。この燃焼熱は、その上方の気化部5及び改質部6に伝達される。点火部10は、オフガスに点火させる。
【0029】
内側容器2の給気口12には空気供給路L2が接続され、内側容器2の内部に空気(酸素)が供給される。内側容器2の排気口13から、内側容器2の内部に存在するガスが内側容器2の外部に排出される。内側容器2の内部から排出される排ガスには、燃焼部11から排出される燃焼排ガスが含まれる。排気口13には、排ガスに含まれる水素、一酸化炭素などを、酸素を用いて触媒燃焼させる燃焼触媒部14が設けられている。
【0030】
固体酸化物形燃料電池システムSは、燃焼部11から排出される燃焼排ガスの熱を回収する熱回収装置Hを備える。具体的には、熱回収装置Hは、燃焼部11から排出される燃焼排ガスを含む、内側容器2から排出される排ガスが供給される熱交換部16、湯水を貯える貯湯タンク23、及び、熱交換部16と貯湯タンク23との間で湯水を循環させる湯水循環路L9を有し、貯湯タンク23の下部から取り出した湯水を熱交換部16に供給し、熱交換部16を流れた湯水を貯湯タンク23の上部に戻す構成で湯水を循環させることで、熱交換部16で回収した燃焼排ガスの熱を貯湯タンク23で蓄えるように構成される。
【0031】
燃焼触媒部14を通過した排ガスは、内側容器2の外部に排出されて排ガス流路L4を流れ、熱交換部16に供給される。熱交換部16では、排ガスと、湯水循環路L9を流れる排熱回収用熱媒としての湯水との熱交換、即ち、排ガスの冷却が行われ、排ガスに含まれていた水分が凝縮する。
【0032】
熱交換部16の下流側の排ガス流路L4には分岐部17が設けられて、排ガス流路L4から水回収路L5が分岐する。そして、排ガス中の気相成分は排ガス流路L4を通って外側容器1の外部に排出され、排ガス中の液相成分(凝縮水)は水回収路L5を通って水タンク19に至り、水タンク19で貯留される。つまり、水タンク19は、熱回収装置Hで燃焼排ガスを冷却することで燃焼排ガス中から回収した回収水を貯える。
【0033】
気化部5への原燃料の供給は原燃料供給路L1を介して行われる。図2に示す例では、原燃料供給路L1の途中には、原燃料供給部3及び脱硫部4が設けられる。原燃料供給部3は、原燃料供給路L1に所定の目標原燃料量の原燃料を流す。例えば、原燃料供給部3は、原燃料供給路L1を流れる原燃料の単位時間当たりの流量を測定する原燃料流量計3aと、原燃料流量計3aで測定される原燃料の単位時間当たりの流量が目標原燃料量になるように原燃料供給路L1に原燃料を流す原燃料ポンプ3bとを備える。そして、固体酸化物形燃料電池システムSの運転を制御する運転制御部26は、原燃料流量計3aで測定される原燃料の単位時間当たりの流量が目標原燃料量になるように原燃料ポンプ3bを動作させる。脱硫部4は、原燃料に含まれる硫黄化合物などを除去する。
【0034】
内側容器2の内部への空気の供給は、空気供給路L2を介して行われる。空気供給路L2の途中には空気供給部としての空気ポンプ22が設けられる。例えば、運転制御部26は、空気の単位時間当たりの流量が目標流量になるように空気ポンプ22を動作させる。
【0035】
水回収路L5を用いて回収した凝縮水は水タンク19に供給される。水タンク19には、水タンク19での貯留水の量を測定する水量測定部20が設けられる。水タンク19に貯えられている貯留水は改質用水供給路L6を介して気化部5に供給される。改質用水供給路L6の途中には改質用水供給部としての改質用水ポンプ21と、水検知センサ15とが設けられる。運転制御部26は、気化部5に供給される単位時間当たりの水量が目標流量になるように改質用水ポンプ21を動作させる。例えば、改質用水ポンプ21は、目標水量に応じて定まる目標出力で動作して改質用水供給路L6に所定の目標水量の改質用水を流す。
【0036】
水検知センサ15は、改質用水ポンプ21と気化部5との間の改質用水供給路L6に設けられ、気化部5に供給される改質用水の有無を測定する。
【0037】
上述したように、熱交換部16では、排ガスと、湯水循環路L9を流れる排熱回収用熱媒としての湯水との熱交換が行われる。湯水は、貯湯タンク23に貯えられており、湯水循環路L9を介して貯湯タンク23と熱交換部16との間を循環する。貯湯タンク23から熱交換部16へ至る間の湯水循環路L9の途中には、湯水ポンプ24と放熱部25と温度センサT2とが設けられている。放熱部25は、貯湯タンク23の下部から取り出して熱交換部16に供給する湯水から熱を放出させる放熱運転を行うことができる。例えば、放熱部25は、ファンなどを用いて実現できる。熱交換部16から貯湯タンク23へ至る間の湯水循環路L9の途中には、温度センサT1が設けられている。
【0038】
例えば、運転制御部26は、温度センサT2で測定される湯水の温度が所定の上限湯水温度未満になるように放熱部25の動作を制御する。また、運転制御部26は、温度センサT1で測定される湯水の温度が目標貯湯温度になるように湯水ポンプ24の動作を制御する。
【0039】
このような構成により、貯湯タンク23の下部から湯水循環路L9を介して熱交換部16に供給される湯水はその熱交換部16で加熱され、加熱後の湯水は湯水循環路L9を介して貯湯タンク23の上部に供給される。このようにして、貯湯タンク23の上部には相対的に高温の湯水が存在し、貯湯タンク23の下部には相対的に低温の湯水が存在するというように、貯湯タンク23に温度成層を形成する状態で湯水が貯湯、即ち、蓄熱される。
【0040】
貯湯タンク23の下部には、貯湯タンク23に水(上水)を供給するための給水路L7が接続され、貯湯タンク23の上部には、貯湯タンク23で貯えている湯水を外部に排出するための出湯路L8が接続される。給水圧が加わっている給水路L7により、貯湯タンク23の内部の湯水にも所定の給水圧が加わっている。このような構成により、貯湯タンク23では、例えば出湯路L8に接続される水栓(図示せず)が開かれることで出湯路L8へ貯湯タンク23から湯水が排出されるのに対応して、給水路L7から水が貯湯タンク23内に供給される。
【0041】
他にも、固体酸化物形燃料電池システムSは、運転制御部26と、固体酸化物形燃料電池システムSで取り扱われる情報を記憶する記憶部27と、通信部28とを備える。運転制御部26は、上述した点火部10、原燃料ポンプ3b、改質用水ポンプ21、空気ポンプ22、湯水ポンプ24、放熱部25、通信部28などの各種機器の動作を制御する。
【0042】
次に、水タンク19での水量を増加させるための水量増加モードについて説明する。
【0043】
固体酸化物形燃料電池システムSにおいて、運転制御部26は、水タンク19に貯えられている水の量が所定の下限水量未満になった場合、セルスタック9の発電運転を停止させる又は発電出力を所定の出力(例えばセルスタック9が出力できる最低出力電力など)に抑制する。そのため、固体酸化物形燃料電池システムSにおいて、水タンク19に貯えられている水の量が下限水量以上を維持するような運転が行われることが好ましい。特に、水蒸気改質に用いる水を十分に確保しつつ、電力系統で電力需要の高まる時間帯に大きな電力を出力できることが好ましい。
【0044】
そのため、本実施形態の固体酸化物形燃料電池システムSでは、運転制御部26は、電力系統での電力需要が高まることが予測されるという高需要条件、及び、電力系統での電力需要が高まる高需要時間帯にセルスタック9が設置されている地域の温度が高まることが予測されるという高温条件のうち、少なくとも高需要条件が満たされる場合、高需要時間帯よりも前の所定の事前時間帯の間、セルスタック9を、水タンク19での水量を増加させるための水量増加モードで運転させる。つまり、電力系統での電力需要が高まる高需要時間帯よりも前に、水タンク19での水量が増加させられる。その結果、高需要時間帯の間に水タンク19に貯えられている水の量が所定の下限水量未満になることを避けることができ、高需要時間帯にセルスタック9の発電運転が継続されることが期待される。
【0045】
図3は、固体酸化物形燃料電池システムSの運転モード決定処理を説明するフローチャートである。運転制御部26は、この運転モード決定処理を設定タイミング毎(例えば1時間毎など)に実行する。尚、図3に示すフローチャートでは、高需要条件及び高温条件の両方が満たされる場合にセルスタック9を水量増加モードで運転させる例を説明するが、高需要条件のみが満たされる場合にセルスタック9を水量増加モードで運転させてもよい。
【0046】
本実施形態では、情報提供サーバPは、将来の電力の予測使用率(=予測需要電力/予測供給可能電力)などの電力需要について情報を記憶しており、設定タイミングで、或いは、固体酸化物形燃料電池システムSからの情報送信要求に応じて、その電力需要についての情報を固体酸化物形燃料電池システムSに送信する。そして、運転制御部26は、電力の予測使用率が設定値(例えば85%など)以上になる場合に高需要条件が満たされると判定し、その電力の予測使用率が設定値以上になる時間帯を高需要時間帯と判定する。
【0047】
また、情報提供サーバPは、将来の予想気温についての情報を記憶しており、設定タイミングで、或いは、固体酸化物形燃料電池システムSからの情報送信要求に応じて、その予想気温についての情報を固体酸化物形燃料電池システムSに送信する。そして、運転制御部26は、高需要時間帯での予想最高気温が所定温度以上の場合に高温条件が満たされると判定する。
【0048】
ここで、固体酸化物形燃料電池システムSでは、気温が高いほど燃焼排ガスを冷却する能力が低下するため、気温が高い時間帯で水タンク19の水位が低下する可能性が高くなる。ところが本実施形態では、運転制御部26は、高需要時間帯での予想最高気温が所定温度以上の場合に高温条件が満たされると判定し、電力系統での電力需要が高まる高需要時間帯よりも前に、セルスタック9を水量増加モードで運転させようとしている。その結果、高需要時間帯の間に水タンク19に貯えられている水の量が所定の下限水量未満になることを避けて、高需要時間帯にセルスタック9の発電運転が継続されることが期待される。
【0049】
工程#10において運転制御部26は、将来の所定期間内(例えば将来の5時間内など)に高需要条件が満たされるか否かを判定する。固体酸化物形燃料電池システムSを水量増加モードで運転した場合、水タンク19の水量が一定以上増加するにはある程度の時間が必要であるため、高需要時間帯よりも所定期間だけ前から水量増加モードで固体酸化物形燃料電池システムSを運転することが好ましい。そのため、工程#10では、将来の所定期間内(例えば将来の5時間内など)に高需要条件が満たされるか否かを判定している。
【0050】
そして、運転制御部26は、将来の所定期間内に高需要条件が満たされると判定した場合(即ち、工程#10において「Yes」の場合)には工程#11に移行する。それに対して、運転制御部26は、将来の所定期間内に高需要条件が満たされないと判定した場合(即ち、工程#10において「No」の場合)には工程#13に移行し、固体酸化物形燃料電池システムSを通常モードで運転させる。例えば、通常モードは、定格出力で発電運転を行う動作モードや、発電出力を電力消費装置Lの消費電力に追従させる負荷追従モードなどであり、その内容は適宜設定できる。
【0051】
工程#11において運転制御部26は、高需要時間帯に高温条件が満たされるか否かを判定する。そして、運転制御部26は、高需要時間帯に高温条件が満たされると判定した場合には工程#12に移行し、高需要時間帯に高温条件が満たされないと判定した場合には工程#13に移行する。
【0052】
工程#12において運転制御部26は、高需要時間帯よりも前の所定の事前時間帯の間、セルスタック9を、水タンク19での水量を増加させるための水量増加モードで運転させる。図4は、高需要時間帯及び事前時間帯を模式的に描いた図である。この場合、運転制御部26は、現在(時刻7時)の段階で、将来の5時間内(所定期間内の一例)に含まれる時刻12時から時刻16時の間に高需要条件が満たされると判定し、その高需要時間帯(時刻12時~時刻16時)よりも前の例えば4時間の事前時間帯(時刻8時~時刻12時)にセルスタック9を水量増加モードで運転させる。
【0053】
具体的には、運転制御部26は、水量増加モードにおいて、セルスタック9の出力電力を定格電力未満の所定電力にさせる。例えば、その所定電力は、セルスタック9が出力できる最低出力電力である。このように、セルスタック9の出力電力を定格電力未満の所定電力にさせることで、セルスタック9の出力電力を定格電力にする場合と比べて、水蒸気改質に要する単位時間当たりの改質用水の量が少なくなる。その結果、単位時間当たりに燃焼排ガス中から回収する回収水の量の方が、水蒸気改質で用いられる単位時間当たりの改質用水の量よりも多くなることが期待され、水タンク19に貯えられている水量が増加することが期待される。
【0054】
<別実施形態>
上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池システムSの構成について具体例を挙げて説明したが、その構成は適宜変更可能である。
【0055】
上記実施形態において、運転制御部26は、高需要時間帯を含む日が、気温が高くなると予め定められた日に該当する場合に高温条件が満たされると判定してもよい。具体的に説明すると、夏期などでは、冬期、春期及び秋期などと比べて当然に気温が高くなる可能性が高いため、固体酸化物形燃料電池システムSでは、燃焼排ガスを冷却する能力が低下する可能性が高くなる。つまり、夏期などを、気温が高くなる日であるとして予め定めことができ、その日を、水タンク19の水位が低下する可能性が高くなる日として予め定めることができる。例えば、固体酸化物形燃料電池システムSの記憶部27には、気温が高くなると予め定められた日として、7月、8月及び9月が記憶されている。そして、運転制御部26は、高需要時間帯を含む日が、7月、8月及び9月の何れかの日に該当する場合には高温条件が満たされると判定できる。
【0056】
上記実施形態において、運転制御部26は、水量増加モードにおいて、放熱部25を放熱運転させてもよい。つまり、放熱部25を放熱運転させることで、熱交換部16での燃焼排ガスからの放熱を促進することができる。その結果、熱交換部16において燃焼排ガスの冷却を促進して、その燃焼排ガス中からの水の凝縮を促進できる。
【0057】
上記実施形態において、運転制御部26は、水量増加モードにおいて、貯湯タンク23から出湯路L8を介して設定量以上の湯水を排出させてもよい。貯湯タンク23から出湯路L8を介して設定量以上の湯水を排出させることで、貯湯タンク23の下部には給水路L7から水が供給され、その水が熱交換部16に供給される。つまり、貯湯タンク23に元から貯えられている比較的高温の湯水が熱交換部16に供給されるのではなく、給水路L7から供給された比較的低温の水が熱交換部16に供給されて、燃焼排ガスの冷却に利用される。その結果、熱交換部16において燃焼排ガスの冷却を促進して、その燃焼排ガス中からの水の凝縮を促進できる。
【0058】
上記実施形態では、具体的な数値例を挙げて本発明の固体酸化物形燃料電池システムSについて説明したが、それらの数値は例示目的で記載したものであり適宜変更可能である。
【0059】
上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、水蒸気改質に用いる水を十分に確保しつつ、電力需要の高まる時間帯に大きな電力を出力できる固体酸化物形燃料電池システムに利用できる。
【符号の説明】
【0061】
6 :改質部
8 :燃料電池セル
9 :セルスタック
11 :燃焼部
16 :熱交換部
19 :水タンク
23 :貯湯タンク
25 :放熱部
26 :運転制御部
H :熱回収装置
L7 :給水路
L8 :出湯路
S :固体酸化物形燃料電池システム
図1
図2
図3
図4