(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025037434
(43)【公開日】2025-03-18
(54)【発明の名称】架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体、並びに該架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を用いた緩衝材、及び輸送用容器
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20250311BHJP
B65D 81/107 20060101ALI20250311BHJP
B65D 81/127 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
C08J9/04 103
C08J9/04 CES
B65D81/107 A
B65D81/127 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023144369
(22)【出願日】2023-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】林 大蔵
【テーマコード(参考)】
3E066
4F074
【Fターム(参考)】
3E066CA01
3E066DA01
3E066LA19
3E066MA01
3E066MA03
4F074AA20
4F074AB03
4F074AB05
4F074AC21
4F074AD10
4F074AD13
4F074AD18
4F074AG07
4F074AG11
4F074AG20
4F074BA13
4F074BA28
4F074BB02
4F074CA23
4F074CA30
4F074DA02
4F074DA04
4F074DA08
4F074DA15
4F074DA24
4F074DA34
(57)【要約】
【課題】架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の物性を維持したまま適度な導電性を付与する技術を提供すること。
【解決手段】本技術では、ポリオレフィン系樹脂と、ドナーアクセプター型帯電防止剤と、を含有する、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を提供する。本技術に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の密度は、250kg/m3以下とすることができる。本技術に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は、緩衝材や輸送用容器に用いることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂と、
ドナーアクセプター型帯電防止剤と、を含有する、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項2】
密度が250kg/m3以下である、請求項1に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項3】
JIS K6767に準じた圧縮歪試験における圧縮永久歪が10%以下である、請求項1に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を用いた、緩衝材。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を用いた、輸送用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体に関する。より詳しくは、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体、並びに該架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を用いた緩衝材及び輸送用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
各種製品の輸送に用いられる輸送用容器には、製品同士の衝突や外部からの衝撃、振動から保護する目的で、製品形状に合わせた緩衝材が用いられる。緩衝材としては製品を傷つけないため適度な柔軟性を持ち、かつ支持力や加工性を確保するために適度な強固さを求められる。また、輸送時の負荷軽減、コスト削減等の観点からは、輸送用容器に用いられる緩衝材の密度は、小さいほど優位である。
【0003】
このような条件を満たす材料としては、樹脂発泡体が適当であるが、樹脂発泡体は通常絶縁体であり、摩擦などにより帯電しやすい。特に、電子部品や電子機器等の輸送においては、静電気による被害も考慮することが必要になる。そのため、樹脂発泡体を輸送用容器や緩衝材に用いる場合、除電の必要があり、特別な材料の選定もしくは追加の部材を用いる方法が作用されている。除電の方法としては、イオナイザや湿度制御等により外部より除電を行うことは可能であるが、これらの方法を輸送中に適用することは高コストとなり現実的ではない場合が多い。
【0004】
樹脂発泡体の帯電を防止する方法として、樹脂発泡体自体に適度な導電性を付与することが一般的な方法として知られている。帯電を防止するためには、適度な導電性が必要であるが、電気抵抗が低すぎても、即ち、導電性が高すぎても、外部からの放電を樹脂発泡体へ誘導してしまうといった問題が生じる。このような問題を解決するために、樹脂発泡体に適度な導電性を付与する方法として、樹脂発泡体に界面活性剤、導電性高分子、導電性フィラー等を添加する方法、樹脂発泡体の表面に導電性フィルムを貼付したり、樹脂発泡体の表面を導電性塗料でコーティングしたりする方法が用いられている。
【0005】
例えば、特許文献1には、メルトフローレート(MFR)が1~5g/10min、融点が150℃以上のポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、メルトフローレート(MFR)が1~15g/10min、融点が150℃以上の高分子型帯電防止剤を10~25重量部添加したポリプロピレン系樹脂組成物を押出発泡させて、密度が0.05~0.1g/cm3、厚みが0.5~2mm、厚み方向の気泡数が1~3個/mm、表面固有抵抗値が1×1013(Ω/□)未満に調整されたポリプロピレン系樹脂発泡シートとすることで、帯電防止性能に優れ、かつ、薄く、剛性のある、自動包装ラインに好適に利用できる発泡シートを得る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-191195号公報
【特許文献2】特開2023-33251号公報
【特許文献3】特開2020-158557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、持続可能な社会の形成に貢献するために、輸送用容器や緩衝材の使用可能回数を増やす技術が求められている。製品寿命を延ばす観点からは、ポリオレフィン系樹脂組成物を架橋及び発泡させた架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体が好適であるが、架橋ポリオレフィン系樹脂に導電性を付与する技術は未だ開発されていない。
【0008】
そこで、本技術では、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の物性を維持したまま適度で耐久性のある導電性を付与する技術を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決するために、樹脂発泡体の帯電を防止する種々の方法を架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体に試したところ、適度な導電性を得られなかったり、導電性を得られた場合であっても、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体に求められる物性が低下したりする等、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の物性を維持したまま適度な導電性を付与するのは非常に困難であった。
【0010】
具体的には、例えば、後述する実施例で示すように、帯電防止剤として界面活性剤や導電性高分子を用いた場合、一般的な量では架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体に導電性を付与することが困難であった。界面活性剤は、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の表面にブリードして、大気中の水分を誘引することで導電性を発揮するため、導電性の発現には大気中の水分が必須であり、環境依存性が高く、大気中の水分量によっては、安定した導電性を得ることができないといった問題があった。界面活性剤の添加量を増量することで、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体に導電性を付与することはできたが、界面活性剤を用いた場合は、使用環境(特に、高温条件や温度変化の激しい条件等)によっては、界面活性剤が製品の表面に移行(ブリードアウト)し、抜け出てしまうので、持続性のある導電性を得ることができなかった。
【0011】
また、導電性高分子についても、添加量を増量することで、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体に導電性を付与することはできたが、導電性高分子を増量した場合は、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体が柔らかくなりすぎたり、圧縮永久歪への影響があったりと、発泡による軽量性を維持したままで、求められる硬度を得ることが困難であり、硬度の割に重量の重い架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体となってしまった。
【0012】
その他、導電性フィラーを用いる方法では、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の導電性が高くなりすぎて、外部からの放電を製品へ誘導してしまい、導電性の制御が困難であった。また、フィラーの脱離による短絡等の恐れや、用いるフィラー(例えばカーボン)によっては黒色等の色に限られてしまい、視認性に影響が出る問題があった。更に、フィルムや塗料を用いた方法では、後加工が必要となりコストが向上したり、フィルムや塗料の剥がれ等の破損による機能不全のリスクがあったりと、問題が生じてしまった。
【0013】
このような状況の下、本発明者は、更なる鋭意研究を重ねた結果、帯電防止剤としてドナーアクセプター型帯電防止剤を用いることで、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の物性を維持したまま適度で耐久性のある導電性を付与することに成功した。なお、特許文献2及び3では、ポリオレフィン系樹脂発泡体にドナーアクセプター型帯電防止剤を用いる技術が開示されているが、いずれも架橋された発泡体ではなく、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体に求められる物性は備えられていないのが実情である。
【0014】
即ち、本技術では、まず、ポリオレフィン系樹脂と、
ドナーアクセプター型帯電防止剤と、を含有する、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を提供する。
本技術に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の密度は、250kg/m3以下とすることができる。
本技術に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体のJIS K6767に準じた圧縮歪試験における圧縮永久歪は、10%以下とすることができる。
【0015】
本技術では、次に、本技術に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を用いた、緩衝材、及び輸送用容器を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、いずれの実施形態も組み合わせることが可能である。また、これらにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0017】
1.架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体
本技術に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は、ポリオレフィン系樹脂と、ドナーアクセプター型帯電防止剤と、を含有する。即ち、本技術に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は、ポリオレフィン系樹脂と、ドナーアクセプター型帯電防止剤と、を含有する樹脂組成物の架橋発泡体である。また、本技術に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を製造するための樹脂組成物(以下、「前記樹脂組成物」ともいう)には、発泡剤、架橋剤、発泡助剤、滑剤、架橋促進剤、及びその他目的に応じて架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造に用いることが可能な各種成分を含有させることができる。以下、各成分について詳細に説明する。
【0018】
(1)ポリオレフィン系樹脂
本技術に係るポリオレフィン系樹脂発泡体に用いることができるポリオレフィン系樹脂は、オレフィン成分単位を主成分とする樹脂である。オレフィン成分単位を主成分とする樹脂とは、オレフィン成分単位が50質量%以上含まれる樹脂である。本技術において、樹脂中のオレフィン成分単位の含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、樹脂成分がポリオレフィン系樹脂のみから構成されていることが特に好ましい。
【0019】
本技術に用いることができるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン、ポリペンテン、及びオレフィン系モノマーと該オレフィン系モノマーと共重合し得るモノマーとの共重合体等が挙げられ、これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0020】
ポリエチレン系樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)等のエチレン単独重合体;エチレン-プロピレンランダム共重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体、エチレン-ブテンブロック共重合体、エチレン-ブテンランダム共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、及びエチレン-メチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。
【0021】
ポリプロピレン系樹脂としては、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、及びアタクチックポリプロピレン等のプロピレン単独重合体;プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン-ブテンブロック共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン三元共重合体、プロピレン-アクリル酸共重合体、及びプロピレン-無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0022】
この中でも、本技術では、ポリエチレン系樹脂を用いることが好ましく、ポリエチレン系樹脂の中でも、低密度ポリエチレン(LDPE)を用いることが好ましい。本技術では、樹脂成分中のポリエチレン系樹脂の含有量は、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上が更に好ましく、80%以上が特に好ましい。
【0023】
なお、本技術に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体には、ポリオレフィン系樹脂の他に、本技術の目的や作用効果を損なわない範囲で他の樹脂や、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマー等が含まれていてもよい。ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。熱硬化性エラストマーとしては、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPDM)等の合成ゴムや天然ゴムが挙げられる。
【0024】
(2)ドナーアクセプター型帯電防止剤
本技術に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体には、ドナーアクセプター型帯電防止剤を用いることを特徴とする。ドナーアクセプター型帯電防止剤は、比較的低添加量でも架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体に導電性を付与することができるため、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造時における樹脂溶融粘度・架橋反応・発泡反応に影響を与えることが少なく、その結果、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体に求められる物性を良好に維持することができる。また、ドナーアクセプター型帯電防止剤は、比較的添加量依存性が少ないため、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の導電性が高くなりすぎることがなく、外部からの放電の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体への誘導を防止することができる。
【0025】
更に、ドナーアクセプター型帯電防止剤は、(+)成分または、(-)の電荷が存在すると電荷移動遷移して、樹脂の表面及び内部で帯電荷を除電する作用がある。そのため、ドナー化合物からアクセプター化合物にプロトンが移動する遷移反応が生じる。その結果、樹脂発泡体の表面では帯電荷の中和消滅させることで除電し、表面以外の部分では、ドナー成分による正孔の輸送やアクセプター成分による電子の拡散が起こることで、帯電荷を除電することが可能になる。従って、ドナーアクセプター型帯電防止剤は、大気中の水分濃度によって導電性の発現に影響がなく、即ち、環境依存性がなく、また、界面活性剤のように導電性の発現で消費されることがないため、持続的に導電性が発現される。
【0026】
ドナー成分としては、例えば、有機ホウ素化合物が挙げられる。また、アクセプター成分としては、例えば、有機窒素化合物が挙げられる。より具体的なドナーアクセプター型帯電防止剤としては、例えば、下記の化学式(1)や化学式(2)で示される化合物が例示できる。
【0027】
【化1】
(R
1、及びR
2は、それぞれ独立して、炭素数1~24のアルキル基を表す。R
3、及びR
4は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。R
5は炭素数1~12のアルキレン基を表す。R
6は炭素数1~24のアルキル基を表す。)
【0028】
【化2】
(R
1、及びR
2は、それぞれ独立して、炭素数1~24のアルキル基を表す。R
3、及びR
4は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。R
5は炭素数1~12のアルキレン基を表す。R
6は炭素数1~24のアルキル基を表す。)
【0029】
本技術に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体に用いるドナーアクセプター型帯電防止剤の量は、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、前記樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対するドナーアクセプター型帯電防止剤の含有量の上限値は、例えば15質量部以下、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。前記樹脂組成物中のドナーアクセプター型帯電防止剤をこの範囲とすることにより、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の導電性が向上しすぎるのを防止し、また、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の密度が上がりすぎることや、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の硬度が低下しすぎることを防止することができる。
【0030】
本技術では、前記樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対するドナーアクセプター型帯電防止剤の含有量の下限値は、例えば、0.005質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.02質量部以上、更に好ましくは0.05質量部以上である。前記樹脂組成物中のドナーアクセプター型帯電防止剤の含有量をこの範囲とすることにより、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体に適度な導電性を付与することができ、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の帯電防止性能を向上させることができる。
【0031】
本技術において、ドナーアクセプター型帯電防止剤は、前述した樹脂成分にドナーアクセプター型帯電防止剤を分散させたマスターバッチとして用いることが好ましい。マスターバッチを用いることで、樹脂成分中への分散性を向上させることができる。
【0032】
(3)発泡剤
本技術に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を製造するための前記樹脂組成物には、発泡剤を含有させることができる。本技術に用いることができる発泡剤としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ポリオレフィン系樹脂発泡体に用いることができる発泡剤を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。
【0033】
本技術に用いることができる発泡剤としては、例えば、有機系又は無機系の熱分解型化学発泡剤を用いることができる。有機系発泡剤としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾジカルボン酸金属塩(アゾジカルボン酸バリウム等)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のアゾ化合物、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等のニトロソ化合物、ヒドラゾジカルボンアミド、4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエンスルホニルヒドラジド(TSH)等のヒドラジン誘導体、トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物等が挙げられる。無機系発泡剤としては、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、無水クエン酸モノソーダ等が挙げられる。
【0034】
この中でも、本技術では、発泡剤として有機系発泡剤を用いることが好ましく、有機系発泡剤の中でも、アゾジカルボンアミド(ADCA)を用いることが好ましい。
【0035】
本技術に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造に用いる発泡剤の量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、前記樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対する発泡剤の含有量としては、例えば、0.7質量部以上、好ましくは2.0質量部以上、より好ましくは4.0質量部以上である。前記樹脂組成物中の発泡剤の含有量をこの範囲とすることにより、発泡体製造時の発泡性を向上し、製造する発泡体の物性を向上させることができる。
【0036】
本技術では、前記樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対する発泡剤の含有量としては、例えば、25質量部以下、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。前記樹脂組成物中の発泡剤の含有量をこの範囲とすることにより、発泡過剰による形成不良を抑制することができ、また、コスト削減に貢献することもできる。
【0037】
本技術において、発泡剤は、前述した樹脂成分に発泡剤を分散させたマスターバッチとして用いることができる。発泡剤マスターバッチを用いることで、樹脂成分中への分散性を向上させることができる。
【0038】
(4)架橋剤
本技術に係るポリオレフィン系樹脂発泡体は、架橋発泡体である。本技術に係るポリオレフィン系樹脂発泡体の製造時に架橋を行うことにより、発泡前の前記組成物(混練物)の粘度を向上させて、発泡性を向上させることができる。また、製造された発泡体の物性を向上させることができる。
【0039】
本技術に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は、電離性放射線照射による架橋を行うこともできるが、架橋剤を用いて化学的に架橋することもできる。本技術に用いることができる架橋剤としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ポリオレフィン系樹脂発泡体に用いることができる架橋剤を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。
【0040】
本技術に用いることができる架橋剤としては、例えば、シラン基、過酸化物、水酸基、アミド基、エステル基等の化学構造を有する架橋剤が挙げられる。この中でも、本技術では、架橋剤として、有機過酸化物を用いることが好ましい。
【0041】
有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンおよびt-ジブチルヒドロペルオキシド等が挙げられる。この中でも、本技術では、架橋剤として、ジクミルパーオキサイドを用いることが好ましい。
【0042】
本技術に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造に用いる架橋剤の量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、前記樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対する架橋剤の含有量としては、例えば、0.2質量部以上、好ましくは0.4質量部以上、より好ましくは0.6質量部以上である。前記樹脂組成物中の架橋剤の含有量をこの範囲とすることにより、粘度を向上させて発泡性を向上させることができる。また、製造された発泡体の耐熱性や耐久性等の機械的特性を向上させることができる。
【0043】
本技術では、前記樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対する架橋剤の含有量としては、例えば、4.0質量部以下、好ましくは3.0質量部以下、より好ましくは2.0質量部以下である。前記樹脂組成物中の架橋剤の含有量をこの範囲とすることにより、発泡時に裂け等が生じることを防ぎ、成形性を向上させることができる。
【0044】
(5)発泡助剤
本技術に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を製造するための前記樹脂組成物には、発泡助剤を含有させることができる。本技術に用いることができる発泡助剤としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ポリオレフィン系樹脂発泡体に用いることができる発泡助剤を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。
【0045】
本技術に用いることができる発泡助剤としては、例えば、尿素等の尿素系助剤、金属酸化物、及び脂肪酸金属塩が挙げられる。金属酸化物としては、例えば、酸化亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、酸化鉛、二塩基性亜リン酸鉛、及び三塩基性硫酸鉛が挙げられる。脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、ステアリン酸マグネシウム、及びステアリン酸カルシウムが挙げられる。この中でも、本技術では、発泡助剤として尿素、及び/又は、酸化亜鉛を用いることが好ましい。
【0046】
本技術に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造に用いる発泡助剤の量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、前記樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対する発泡助剤の含有量としては、例えば、0.01質量部以上、好ましくは0.02質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上である。前記樹脂組成物中の発泡助剤の含有量をこの範囲とすることにより、発泡体製造時の発泡性を向上し、製造する発泡体の密度を低下させることができる。
【0047】
本技術では、前記樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対する発泡助剤の含有量としては、例えば、3.0質量部以下、好ましくは2.0質量部以下、より好ましくは1.0質量部以下である。前記樹脂組成物中の発泡助剤の含有量をこの範囲とすることにより、発泡過剰による形成不良を抑制することができ、また、コスト削減に貢献することもできる。
【0048】
(6)滑剤
本技術に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を製造するための前記樹脂組成物には、滑剤を含有させることができる。本技術に用いることができる滑剤としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ポリオレフィン系樹脂発泡体に用いることができる滑剤を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。本技術に用いることができる発泡助剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレングリコール、シリコーンオイル、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート等が挙げられる。
【0049】
本技術に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造に用いる滑剤の量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、前記樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対する滑剤の含有量としては、例えば、0.01質量部以上、好ましくは0.02質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上である。前記樹脂組成物中の滑剤の含有量をこの範囲とすることにより、発泡体製造時の作業性を向上することができる。
【0050】
本技術では、前記樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対する滑剤の含有量としては、例えば、3.0質量部以下、好ましくは2.0質量部以下、より好ましくは1.0質量部以下である。前記樹脂組成物中の滑剤の含有量をこの範囲とすることにより、形成不良を抑制することができ、また、コスト削減に貢献することもできる。
【0051】
(7)その他
本技術に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造には、本技術の目的や効果を損なわない限り、その他の成分として、ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造に用いることができる各種成分を、目的に応じて1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。
【0052】
本技術に係るポリオレフィン系樹脂発泡体の製造に用いることができる成分としては、例えば、架橋促進剤、無機充填剤、整泡剤、難燃剤、安定剤、可塑剤、着色剤、酸化防止剤、分散剤、紫外線吸収剤等を挙げることができる。
【0053】
(8)密度
本技術に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の密度は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の密度の下限値として、例えば10kg/m3以上、好ましくは20kg/m3以上、より好ましくは25kg/m3以上、更に好ましくは35kg/m3以上である。架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の密度の下限値をこの範囲にすることで、柔らかくなりすぎるのを防止し、適度な弾力性を付与することができる。
【0054】
本技術に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の密度の上限値は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができるが、例えば250kg/m3以下、好ましくは200kg/m3以下、より好ましくは150kg/m3以下、更に好ましくは100kg/m3以下、より更に好ましくは90kg/m3以下、特に好ましくは85kg/m3以下、より特に好ましくは80kg/m3以下である。架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の密度をこの範囲にすることで、柔軟性を損なわず(硬くなりすぎることを防止し)、クッション性を付与することできる。
【0055】
なお、本技術において、ポリオレフィン系樹脂発泡体の密度は、JIS K6767に基づく方法に準拠して測定した値である。
【0056】
(9)アスカーC硬度
本技術に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体のアスカーC硬度は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体のアスカーC硬度の下限値として、例えば10以上、好ましくは20以上、より好ましくは25以上、更に好ましくは35以上である。架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体のアスカーC硬度の下限値をこの範囲にすることで、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の耐久性を向上させることができる。
【0057】
本技術に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体のアスカーC硬度の上限値は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができるが、例えば80以下、好ましくは75以下、より好ましくは70以下、更に好ましくは60以下である。架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体のアスカーC硬度をこの範囲にすることで、硬くなりすぎることを防止し、適度な柔軟性を付与することできる。
【0058】
なお、本技術において、ポリオレフィン系樹脂発泡体のアスカーC硬度は、JIS K7312に基づく方法に準拠して測定した値である。
【0059】
(10)表面抵抗率
本技術に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の表面抵抗率は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の表面抵抗率の下限値として、例えば1×1010Ω/□以上、好ましくは1×1011Ω/□以上、より好ましくは1×1012Ω/□以上である。架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の表面抵抗率の下限値をこの範囲にすることで、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の帯電防止性能を向上させることができる。
【0060】
本技術に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の表面抵抗率の上限値は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができるが、例えば1×1016Ω/□以下、好ましくは1×1015Ω/□以下、より好ましくは1×1015Ω/□以下、更に好ましくは1×1014Ω/□以下である。架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の表面抵抗率をこの範囲にすることで、外部からの放電の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体への誘導を防止することができる。
【0061】
なお、本技術において、ポリオレフィン系樹脂発泡体の表面抵抗率は、JIS K6911に基づく方法に準拠して測定した値である。
【0062】
(11)圧縮永久歪
本技術に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の圧縮永久歪は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の圧縮永久歪の上限値は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができるが、例えば12%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは7%以下、更に好ましくは5%以下である。架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の圧縮永久歪をこの範囲にすることで、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の耐久性を向上させることができる。
【0063】
本技術に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の圧縮永久歪の下限値は特に限定されないが、例えば0.5%以上、1%以上等に設定することができる。
【0064】
なお、本技術において、ポリオレフィン系樹脂発泡体の圧縮永久歪は、JIS K6767に基づく方法に準拠して測定した値である。
【0065】
(12)ゲル分率
本技術に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体のゲル分率は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体のゲル分率の下限値は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができるが、例えば50%以上、好ましくは55%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上である。架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体のゲル分率をこの範囲にすることで、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の耐久性を向上させることができる。
【0066】
本技術に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体のゲル分率の上限値は特に限定されないが、例えば95%以下、90%以下等に設定することができる。
【0067】
なお、本技術において、ポリオレフィン系樹脂発泡体のゲル分率は、JIS K 6796/ISO-15875-2:2003に基づく方法に準拠して測定した値である。
【0068】
2.架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法
本技術に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は、その組成に特徴があって、その製造方法については、特に限定されない。例えば、ポリオレフィン系樹脂、及びドナーアクセプター型帯電防止剤に、架橋剤及び発泡剤を加え、さらに必要に応じて、その他の添加剤を任意に加えて混合し、その後、発泡成形する方法を採用することができる。好ましくは、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法は、以下の一段ブロック発泡法、二段ブロック発泡法、化学架橋を用いた長尺発泡法、電子線架橋を用いた長尺発泡法のいずれであってもよい。
【0069】
<一段ブロック発泡法>
一段ブロック発泡法は、例えば以下の工程(1)-(2)を備える。
(1)混練工程
ポリオレフィン系樹脂、ドナーアクセプター型帯電防止剤、発泡剤、架橋剤、及び適宜必要とされる発泡助剤、滑剤、その他の任意成分を、押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの混練装置によって発泡剤の分解温度以下の温度で溶融混練し、発泡性樹脂組成物を調製する。
(2)発泡工程
混練工程で得られた発泡性樹脂組成物を、金型内に充填して密封し、加圧した状態で、発泡剤及び架橋剤の分解温度以上の温度で、所定時間加熱することにより、発泡剤及び架橋剤の分解を進行させる。その後、金型を開いて除圧することにより、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を得る。
【0070】
<二段ブロック発泡法>
二段ブロック発泡法は、例えば以下の工程(1)-(3)を備える。
(1)混練工程
ポリオレフィン系樹脂、ドナーアクセプター型帯電防止剤、発泡剤、架橋剤、及び適宜必要とされる発泡助剤、滑剤、その他の任意成分を、押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの混練装置によって発泡剤の分解温度以下の温度で溶融混練し、発泡性樹脂組成物を調製する。
(2)一次発泡工程
混練工程で得られた発泡性樹脂組成物を、一次金型の成形空間に充填し、加圧下で加熱する。これにより発泡剤の一部、及び架橋剤の一部又は全部を分解させる。その後除圧し、発泡性樹脂組成物中間体(一次発泡体)を取り出す。加熱温度は、通常120-150℃、加熱時間は通常25-70分の範囲で決定される。
(3)二次発泡工程
一次発泡工程で得られた発泡性樹脂組成物中間体(一次発泡体)を、非密閉の二次金型の成形空間に配置し、常圧下で加熱して二次発泡させ、冷却した後に、二次金型から樹脂発泡体を取り出す。加熱温度は、通常140-180℃、加熱時間は通常25分-6時間の範囲で決定される。
【0071】
<三段ブロック発泡法>
三段ブロック発泡法は、例えば以下の工程(1)-(3)を備える。
(1)混練工程
ポリオレフィン系樹脂、ドナーアクセプター型帯電防止剤、発泡剤、架橋剤、及び適宜必要とされる発泡助剤、滑剤、その他の任意成分を、押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの混練装置によって発泡剤の分解温度以下の温度で溶融混練し、発泡性樹脂組成物を調製する。
(2)一次発泡工程
混練工程で得られた発泡性樹脂組成物を、一次金型の成形空間に充填し、加圧下で加熱する。これにより発泡剤の一部、及び架橋剤の一部又は全部を分解させる。その後除圧し、発泡性樹脂組成物中間体(一次発泡体)を取り出す。加熱温度は、通常120-150℃、加熱時間は通常25-70分の範囲で決定される。
(3)二次発泡工程
一次発泡工程で得られた発泡性樹脂組成物中間体(一次発泡体)を、二次金型の成形空間に充填し、加圧下で加熱する。これにより発泡剤の一部、及び架橋剤の一部又は全部を分解させる。その後除圧し、発泡性樹脂組成物中間体(二次発泡体)を取り出す。加熱温度は、通常120-150℃、加熱時間は通常25-70分の範囲で決定される。
(4)三次発泡工程
二次発泡工程で得られた発泡性樹脂組成物中間体(二次発泡体)を、非密閉の三次金型の成形空間に配置し、常圧下で加熱して三次発泡させた後、三次金型から樹脂発泡体を取り出す。或いは、二次発泡工程で得られた発泡性樹脂組成物中間体(二次発泡体)を、オーブン(恒温槽)に入れて低温(約90℃)の温風に24時間程度晒し、樹脂発泡体を得る。
【0072】
<化学架橋を用いた長尺発泡法>
長尺発泡法は、例えば以下の工程(1)-(2)を備える。
(1)混練工程
ポリオレフィン系樹脂、ドナーアクセプター型帯電防止剤、発泡剤、架橋剤、及び適宜必要とされる発泡助剤、滑剤、その他の任意成分を、単軸押出機、二軸押出機などで混練するとともにシート状に押出してシート等の所定形状の発泡性樹脂組成物(以下、母板という)を押出す。混練及び押出しは押出機により一括して行うことができる。
(2)発泡工程
混練工程で得られた母板を、オーブン等の加熱装置中に運搬しながら、120-250℃(発泡剤及び架橋剤の分解温度以上)にて5-20分間加熱して発泡させることにより樹脂発泡体を得る。なお、オーブン等の加熱装置と運搬装置とが一体となった装置を用いると、当該母板を連続して処理することができるため好ましい。
【0073】
<電子線架橋を用いた長尺発泡法>
電子線架橋を用いた長尺発泡法は、例えば以下の工程(1)-(3)を備える。
(1)混練工程
ポリオレフィン系樹脂、ドナーアクセプター型帯電防止剤、発泡剤、架橋剤、及び適宜必要とされる発泡助剤、滑剤、その他の任意成分を、単軸押出機、二軸押出機などで混練するとともに、シート状等の所定形状の樹脂組成物(以下、母板という)を押出す。混練及び押出しは押出機により一括して行うことができる。
(2)架橋工程
混練工程で得られた母板を架橋する。架橋方法としては、電子線、γ線等の電離放射線を照射する方法を用いることができ、電子線照射による架橋(電子線架橋)が好ましい。電子線架橋は、電子線照射機を用いて行うことができる。なお、必要に応じて、前述した有機過酸化物等の架橋剤を併用してもよい。
(3)発泡工程
架橋工程で得られた架橋済みの母板を、オーブン等の加熱装置中に運搬しながら、120-250℃(発泡剤の分解温度以上)にて5-20分間加熱して発泡させることにより樹脂発泡体を得る。なお、オーブン等の加熱装置と運搬装置とが一体となった装置を用いると、当該母板を連続して処理することができるため好ましい。
【0074】
以上説明した本技術に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法では、目的に応じて、その他の工程を行うことができる。例えば、架橋工程や発泡工程後に、冷却工程、熟成工程等を行うことができる。また、製造した発泡体を耳切りしたり、スライスしたりする成形工程等を行うことも可能である。
【0075】
3.架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の用途
本技術に係る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は、その品質の高さを利用して、あらゆる分野であらゆる用途に用いることができる。例えば、建築用緩衝材、建築用シール材、家電用シール材、梱包材、輸送用容器、車両用緩衝材、建築用内装材、車両用内装材、家電用緩衝材、配管断熱材、各種カバー、クッション材、玩具、雑貨、クリーナー、各種スポンジ、玩具、ビート板、浮き、スポーツ雑貨等に好適に用いることができる。本技術に係る架橋架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は、通函のような何度も繰り返し使用される耐久性が求められる輸送用容器や緩衝材、特に、、電子部品や電子機器等の輸送用いる輸送用容器や緩衝材に好適に用いることができる。
【実施例0076】
以下、実施例に基づいて本技術を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本技術の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0077】
<実験例1>
実験例1では、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を製造する場合に、帯電防止剤の違いによる効果の違いについて検証した。
【0078】
(1)原料
ポリオレフィン系樹脂1:低密度ポリエチレン(LDPE)(MFR:1.9g/10min、融点:110℃)
発泡剤マスターバッチ:アゾジカルボンアミド(ADCA)65%とポリオレフィン系樹脂2(低密度ポリエチレン(LDPE))35%のマスターバッチ
架橋剤:ジクミルパーオキサイド(DCP)
発泡助剤1:尿素
発泡助剤2:酸化亜鉛
滑剤:ステアリン酸
帯電防止剤1(帯電防止剤マスターバッチ1):大日精化工業株式会社製「SEIKAEARTH 1120 N」(ドナーアクセプター型帯電防止剤20%とポリオレフィン系樹脂2(低密度ポリエチレン(LDPE))80%のマスターバッチ)
帯電防止剤2(帯電防止剤マスターバッチ2):大日精化工業株式会社製非イオン性帯電防止剤「エレコンSS PE220」(界面活性剤20%とポリオレフィン系樹脂2(低密度ポリエチレン(LDPE))80%のマスターバッチ)
帯電防止剤3(導電性高分子):ポリオキシエチレン鎖を有するブロックと、ポリエステルから構成されるブロックと、からなるブロックコポリマー(株式会社ADEKA製「アデカスタブAS-301E」)
【0079】
(2)架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造
下記表1に示す各原料をニーダーにて混練した後、一次金型の成形空間に充填し、加圧下で加熱し、その後除圧して、一次発泡体を調製した。一次発泡体を、非密閉の二次金型の成形空間に配置し、常圧下で加熱して二次発泡させ、冷却することにより、各発泡体を製造した。
【0080】
(3)評価
製造した架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体について、下記の方法を用いて各物性の評価を行った。
【0081】
[密度]
JIS K6767に準拠して測定した。
【0082】
[アスカーC硬度]
JIS K7312に準拠して測定した。
【0083】
[表面抵抗率]
測定電圧:100Vにて、JIS K6911に準拠して測定した。使用機器は、株式会社エーディーシー製「デジタル超高抵抗/微少電流計5451 SAMPLE CHAMBER MODEL42」を用いた。
なお、湿熱サイクル後の表面抵抗率は、JIS C60068-2-38に準拠した24時間湿熱サイクル後に、JIS K6911に準拠して測定した値である。
【0084】
[圧縮永久歪]
JIS K6767に準拠して測定した。
【0085】
[ゲル分率]
JIS K 6796/ISO-15875-2:2003に準拠して測定した。
【0086】
【0087】
(5)考察
表1に示す通り、ドナーアクセプター型帯電防止剤を用いた架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は、適度な導電性を有しており、ドナーアクセプター型帯電防止剤の量を増量した場合であっても、密度、硬度、及び圧縮永久歪に影響がなく、従来からの架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体と同等の物性を維持していた。
【0088】
一方、帯電防止剤として界面活性剤を用いた比較例1、及び2は、導電性を得ることができなかった。比較例3~5に示すように、界面活性剤を増量することで、適度な導電性を得ることができたが、湿熱サイクル後の導電性は低下してしまった。これは、界面活性剤が消費されたためと考えられる。
【0089】
また、帯電防止剤として導電性高分子を用いた比較例6~8も、導電性を得ることができなかった。比較例9、及び10に示すように、導電性高分子を増量することで導電性を向上させることはできたが、硬度が低下する傾向にあり、ある程度の硬度が要求される用途には不向きであった。また、比較例9に示すように、導電性高分子を増量することで、圧縮永久歪に影響があった。