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特開2025-3752コンピュータプログラム、異常検知方法、異常検知装置、成形機システム及び学習モデル生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003752
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】コンピュータプログラム、異常検知方法、異常検知装置、成形機システム及び学習モデル生成方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20241226BHJP
【FI】
G01M99/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024190962
(22)【出願日】2024-10-30
(62)【分割の表示】P 2021009824の分割
【原出願日】2021-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】大下 武諒
(72)【発明者】
【氏名】風呂川 幹央
(72)【発明者】
【氏名】平野 峻之
(57)【要約】
【課題】産業機械の可動部に係る物理量の時系列データを画像で表した時系列データ画像に変換し、当該時系列データ画像に基づいて産業機械の異常を判定することができるコンピュータプログラムを提供する異常検知装置を提供する。
【解決手段】可動部を有する産業機械の異常を検出する処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、可動部の運動に係る物理量を検出するセンサから出力される時系列の物理量データを取得し、取得した時系列の物理量データを画像で表した時系列データ画像に変換し、正常な可動部に係る時系列データ画像の特徴を学習した学習モデルに、変換された時系列データ画像を入力することによって、時系列データ画像の特徴量を算出し、算出された特徴量に基づいて、産業機械の異常の有無を判定する処理をコンピュータに実行させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有する成形機の異常を検出する処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
前記回転軸の運動に係る物理量を検出するセンサから出力される時系列の物理量データであって、少なくとも前記回転軸のトルク及び変位を含む2つの数値それぞれの時間変化を示す時系列データを含む物理量データを取得し、
取得した時系列の前記物理量データに基づいて、交差するX軸方向及びY軸方向を座標軸として、時系列の各時点における前記2つの数値を描画してなる画像で表した時系列データ画像に変換し、
正常な前記回転軸に係る前記時系列データ画像の特徴を学習した学習モデルに、変換された前記時系列データ画像を入力することによって、前記時系列データ画像の特徴量を算出し、
算出された特徴量に基づいて、前記成形機の異常の有無を判定する
処理を前記コンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項2】
前記学習モデルは、機械学習により得られたモデルである
請求項1に記載のコンピュータプログラム。
【請求項3】
前記学習モデルは機械学習により得られた1クラス分類モデルである
請求項1又は請求項2に記載のコンピュータプログラム。
【請求項4】
前記物理量データは、第1の物理量を示す時系列データと、第2の物理量を示す時系列データとを含み、
前記時系列データ画像は、
前記第1の物理量を描画した第1画像と、前記第2の物理量を描画した第2画像とを一の画像に含む
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項5】
前記第1の物理量及び前記第2の物理量はそれぞれ2つの数値からなる2次元の物理量である
請求項4に記載のコンピュータプログラム。
【請求項6】
前記時系列データ画像は、
前記第1の物理量を描画した第1画像と、前記第2の物理量を描画した第2画像とを変形することなく一の画像に含む
請求項4又は請求項5に記載のコンピュータプログラム。
【請求項7】
前記物理量データは成形機の回転軸の回転速度、又は回転加速度を示す時系列データを含む
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項8】
前記回転軸は前記成形機のスクリュである
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項9】
前記回転軸は二軸混練押出機の第1スクリュ及び第2スクリュであり、前記物理量データは、第1スクリュの回転中心軸に交差する第1軸方向及び第2軸方向の変位を示す時系列データと、第1スクリュ及び第2スクリュのトルクを示す時系列データを含み、
前記時系列データ画像は、
交差する第1軸方向及び第2軸方向を座標軸として第1スクリュの変位を描画した第1画像と、交差する第3軸方向及び第4軸方向を座標軸として第1スクリュ及び第2スクリュのトルクを描画した第2画像とを一の画像に含む
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項10】
回転軸を有する成形機の異常を検出する異常検知方法であって、
前記回転軸の運動に係る物理量を検出するセンサから出力される時系列の物理量データであって、少なくとも前記回転軸のトルク及び変位を含む2つの数値それぞれの時間変化を示す時系列データを含む物理量データを取得し、
取得した時系列の前記物理量データに基づいて、交差するX軸方向及びY軸方向を座標軸として、時系列の各時点における前記2つの数値を描画してなる画像で表した時系列データ画像に変換し、
正常な前記回転軸に係る前記時系列データ画像の特徴を学習した学習モデルに、変換された前記時系列データ画像を入力することによって、前記時系列データ画像の特徴量を算出し、
算出された特徴量に基づいて、前記成形機の異常の有無を判定する
異常検知方法。
【請求項11】
回転軸を有する成形機の異常を検出する異常検知装置であって、
前記回転軸の運動に係る物理量を検出するセンサと、
該センサから出力される時系列の物理量データであって、少なくとも前記回転軸のトルク及び変位を含む2つの数値それぞれの時間変化を示す時系列データを含む物理量データを取得する取得部と、
該取得部にて取得した時系列の前記物理量データに基づいて、交差するX軸方向及びY軸方向を座標軸として、時系列の各時点における前記2つの数値を描画してなる画像で表した時系列データ画像に変換する変換部と、
正常な前記回転軸に係る前記時系列データ画像の特徴を学習した学習モデルに、変換された前記時系列データ画像を入力することによって、前記時系列データ画像の特徴量を算出する算出部と、
該算出部にて算出された特徴量に基づいて、前記成形機の異常の有無を判定する判定部と
を備える異常検知装置。
【請求項12】
請求項11に記載の異常検知装置と、
成形機と
を備え、
前記異常検知装置は、前記成形機の異常を検出するようにしてある
成形機システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動部を有する産業機械の異常を検知するコンピュータプログラム、異常検知方法、異常検知装置、成形機システム及び学習モデル生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、射出成形機の各可動部の振動を加速度センサにより監視し、成形工程の状態及び可動部の異常発生を検知する監視方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-50480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1には、加速度データのような時系列データの具体的な解析方法及び異常検知方法は開示されていない。可動部の振動波形は複雑であり射出成形機の異常を判定することは必ずしも容易ではない。
【0005】
本開示の目的は、産業機械の可動部に係る物理量の時系列データを画像で表した時系列データ画像に変換し、当該時系列データ画像に基づいて産業機械の異常を判定することができるコンピュータプログラム、異常検知方法、異常検知装置、成形機システム及び学習モデル生成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るコンピュータプログラムは、可動部を有する産業機械の異常を検出する処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、前記可動部の運動に係る物理量を検出するセンサから出力される時系列の物理量データを取得し、取得した時系列の前記物理量データを画像で表した時系列データ画像に変換し、正常な前記可動部に係る前記時系列データ画像の特徴を学習した学習モデルに、変換された前記時系列データ画像を入力することによって、前記時系列データ画像の特徴量を算出し、算出された特徴量に基づいて、前記産業機械の異常の有無を判定する処理を前記コンピュータに実行させる。
【0007】
本開示に係る異常検知方法は、可動部を有する産業機械の異常を検出する異常検知方法であって、前記可動部の運動に係る物理量を検出するセンサから出力される時系列の物理量データを取得し、取得した時系列の前記物理量データを画像で表した時系列データ画像に変換し、正常な前記可動部に係る前記時系列データ画像の特徴を学習した学習モデルに、変換された前記時系列データ画像を入力することによって、前記時系列データ画像の特徴量を算出し、算出された特徴量に基づいて、前記産業機械の異常の有無を判定する。
【0008】
本開示に係る異常検知装置は、前記異常検知装置と、成形機とを備え、前記異常検知装置は、前記成形機の異常を検出するようにしてある。
【0009】
本開示に係る異常検知装置は、可動部を有する産業機械の異常を検出する異常検知装置であって、前記可動部の運動に係る物理量を検出するセンサと、該センサから出力される時系列の物理量データを取得する取得部と、該取得部にて取得した時系列の前記物理量データを画像で表した時系列データ画像に変換する変換部と、正常な前記可動部に係る前記時系列データ画像の特徴を学習した学習モデルに、変換された前記時系列データ画像を入力することによって、前記時系列データ画像の特徴量を算出する算出部と、該算出部にて算出された特徴量に基づいて、前記産業機械の異常の有無を判定する判定部とを備える。
【0010】
本開示に係る学習モデル生成方法は、第1スクリュ及び第2スクリュを有する二軸混練押出機の異常を検知するための学習モデルの生成方法であって、正常動作時の前記二軸混練押出機の第1スクリュの回転中心軸に交差する第1軸方向及び第2軸方向の変位を示す時系列データと、正常動作時の前記二軸混練押出機の第2スクリュの回転中心軸に交差する第3軸方向及び第4軸方向の変位を示す時系列データとに基づいて、第1スクリュの回転中心軸に交差する第1軸方向及び第2軸方向の変位を描画した第1画像と、第2スクリュの回転中心軸に交差する第3軸方向及び第4軸方向の変位を描画した第2画像とを一の画像に含む複数の時系列データ画像を生成し、生成した前記複数の時系列データ画像と、任意の特徴を有する複数の参考画像とを含む学習用データセットに基づいて、第1スクリュ及び第2スクリュの回転中心軸の変位を描画した第1画像及び第2画像を含む時系列データ画像が入力された場合に前記二軸混練押出機の正常動作及び異常動作に応じた特徴量を出力する学習モデルを生成する処理をコンピュータが実行する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、産業機械の可動部に係る物理量の時系列データを画像で表した時系列データ画像に変換し、当該時系列データ画像に基づいて産業機械の異常を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る成形機システムの構成例を示すブロック図である。
図2】本実施形態に係る二軸混練押出機の構成例を示す模式図である。
図3】変位センサの取り付け位置を示す模式図である。
図4】本実施形態に係る異常検知装置の構成例を示すブロック図である。
図5】本実施形態に係る異常検知処理手順を示すフローチャートである。
図6】第1スクリュの変位を示す第1時系列データ画像である。
図7】第1及び第2スクリュの変位を示す時系列データ画像である。
図8】時系列データ画像の特徴量及び異常検知結果を示す概念図である。
図9】学習モデルの生成方法の概要を示す概念図である。
図10】学習フェーズにおける学習モデルを示す概念図である。
図11】テストフェーズにおける学習モデルを示す概念図である。
図12】時系列データ画像の特徴量を示す散布図である。
図13】学習モデルを用いた異常検知の評価結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係るコンピュータプログラム、異常検知方法、異常検知装置、成形機システム及び学習モデル生成方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、以下に記載する実施形態及び変形例の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0014】
図1は本実施形態に係る成形機システムの構成例を示すブロック図である。成形機システムは、二軸混練押出機1と、変位センサ2と、異常検知装置3とを備える。
【0015】
<二軸混練押出機1>
図2は本実施形態に係る二軸混練押出機1の構成例を示す模式図である。二軸混練押出機1は、樹脂原料が投入されるホッパ10aを有するシリンダ10と、第1スクリュ11と、第2スクリュ12とを備える。第1及び第2スクリュ11,12は、相互に噛み合わされた状態で略平行に配され、シリンダ10の孔内に回転可能に挿入されており、ホッパ10aに投入された樹脂原料を押出方向(図2中右方向)へ搬送し、溶融及び混練する。
第1スクリュ11は、複数種類のスクリュピースを組み合わせ、一体化することによって一本のスクリュとして構成されている。例えば、樹脂原料を順方向へ輸送するフライトスクリュ形状の順フライトピース、樹脂原料を逆方向へ輸送する逆フライトピース、樹脂原料を混練するニーディングピース等を、樹脂原料の特性に応じた順序及び位置に配して組み合わせることにより、第1スクリュ11が構成される。第2スクリュ12の構成も第1スクリュ11と同様である。
【0016】
また、二軸混練押出機1は、第1及び第2スクリュ11,12を回転させるための駆動力を出力するモータ13と、モータ13の駆動力を減速伝達する減速機14とを備える。第1及び第2スクリュ11,12の駆動軸11a,12aは減速機14の出力軸に接続されている。第1及び第2スクリュ11,12は、減速機14によって減速伝達されたモータ13の駆動力によって回転する。
【0017】
<変位センサ2>
変位センサ2は、回転する第1及び第2スクリュ11,12の回転中心軸の変位を検出するセンサである。変位センサ2は、好適には、減速機14と、シリンダ10との間の適宜箇所、具体的には、第1及び第2スクリュ11,12の駆動軸11a,12aの近傍に配するとよい。
第1及び第2スクリュ11,12は、産業機械が有する可動部の一例である。より具体的には、第1及び第2スクリュ11,12は、産業機械の一例である二軸混練押出機1が有する回転軸の一例である。
【0018】
図3は、変位センサ2の取り付け位置を示す模式図である。変位センサ2は、第1スクリュ11の回転中心軸に直交するX軸方向(第1方向)の変位を検出する第1変位センサ21と、第1スクリュ11の回転中心軸及び当該X軸に直交するY方向(第2軸方向)の変位を検出する第2変位センサ22とを備える。第1変位センサ21及び第2変位センサ22は、第1スクリュ11の駆動軸11aに対向するように配されている。X軸方向及びY軸方向は、例えば第1スクリュ11の回転中心軸に直交する水平方向及び鉛直方向である。
また、変位センサ2は、第2スクリュ12の回転中心軸に直交するX軸方向(第3方向)の変位を検出する第3変位センサ23と、第2スクリュ12の回転中心軸及び当該X軸に直交するY方向(第4軸方向)の変位を検出する第4変位センサ24とを備える。第3変位センサ23及び第4変位センサ24は、第2スクリュ12の駆動軸12aに対向するように配されている。X軸方向及びY軸方向は、例えば第2スクリュ12の回転中心軸に直交する水平方向及び鉛直方向である。
第1~4変位センサ21,22,23,24は、回転する第1及び第2スクリュ11,12の回転中心軸の変位を常時検出し、検出された変位を示す時系列の変位データ(物理量データ)を異常検知装置3へ出力する。以下、第1~4変位センサ21,22,23,24を総称して適宜、変位センサ2と呼ぶ。
なお、第1及び第2変位センサ21,22が出力する変位データは、本開示に係る第1の物理量を示す時系列データに対応し、当該変位データは2つの数値からなる2次元の物理量である。第3及び第4変位センサ23,24が出力する変位データは、本開示に係る第2の物理量を示す時系列データに対応し、当該変位データは2つの数値からなる2次元の物理量である。
【0019】
<異常検知装置3>
図4は、本実施形態に係る異常検知装置3の構成例を示すブロック図である。異常検知装置3は、コンピュータであり、処理部31、記憶部32、入力インタフェース33(入力I/F)及び出力インタフェース34(出力I/F)を備える。記憶部32、入力インタフェース33及び出力インタフェース34は処理部31に接続されている。
【0020】
処理部31は、CPU(Central Processing Unit)、マルチコアCPU、GPU(Graphics Processing Unit)、GPGPU(General-purpose computing on graphics processing units)、TPU(Tensor Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、NPU(Neural Processing Unit)等の演算処理回路、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の内部記憶装置、I/O端子等を有する。処理部31は、後述の記憶部32が記憶するコンピュータプログラムPを実行することにより、本実施形態に係る異常検知装置3として機能する。なお、異常検知装置3の各機能部は、ソフトウェア的に実現してもよいし、一部又は全部をハードウェア的に実現してもよい。
【0021】
記憶部32は、ハードディスク、EEPROM(Electrically Erasable Programmable
ROM)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部32は、本実施形態に係る異常検知方法をコンピュータに実施させるためのコンピュータプログラムPと、学習モデル35とを記憶している。学習モデル35は、第1及び第2スクリュ11,12の変位を検出して得られる時系列データを画像で表した後述の時系列データ画像が入力された場合、当該時系列データ画像の特徴を抽出し、抽出された特徴量を出力する畳み込みニューラルネットワークモデルである。学習モデル35は、CNN(Convolutional Neural Network)の特徴抽出層を有するモデル、例えば1クラス分類モデルである。学習モデル35の生成方法及び構成の詳細は後述する。
【0022】
本実施形態に係るコンピュータプログラムP及び学習モデル35は、記録媒体4にコンピュータ読み取り可能に記録されている態様でもよい。記憶部32は、図示しない読出装置によって記録媒体4から読み出されたコンピュータプログラムP及び学習モデル35を記憶する。記録媒体4はフラッシュメモリ等の半導体メモリである。また、記録媒体4はCD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、BD(Blu-ray(登録商標)Disc)等の光ディスクでもよい。更に、記録媒体4は、フレキシブルディスク、ハードディスク等の磁気ディスク、磁気光ディスク等であってもよい。更にまた、図示しない通信網に接続されている図示しない外部サーバから本実施形態に係るコンピュータプログラムP及び学習モデル35をダウンロードし、記憶部32に記憶させてもよい。
【0023】
入力インタフェース33には、第1~4変位センサ21,22,23,24が接続されており、第1~4変位センサ21,22,23,24から出力された時系列データである変位データが入力される。
【0024】
出力インタフェース34には表示部3aが接続されている。表示部3aは、二軸混練押出機1の異常の有無等を表示する。
【0025】
<異常検知処理>
図5は、本実施形態に係る異常検知処理手順を示すフローチャートである。処理部31は、変位センサ2から出力される時系列の変位データを取得する(ステップS11)。処理部31は、好ましくは第1及び第2スクリュ11,12が複数回、回転する時間にわたって変位データを取得するとよい。
【0026】
次いで、処理部31は、取得した変位データを、第1及び第2スクリュ11,12の回転中心軸の変位それぞれを画像で表した第1時系列データ画像(第1画像)及び第2時系列データ画像(第2画像)に変換する(ステップS12)。
【0027】
図6は、第1スクリュ11の変位を示す第1時系列データ画像である。第1時系列データ画像は略正方形の画像であり、当該画像のX軸及びY軸は、それぞれ図4に示すX軸方向(第1軸方向)及びY軸方向(第2軸方向)に対応し、X軸方向及びY軸方向の変位量が、X軸及びY軸の座標値として、プロットされる。第1時系列データ画像は、3回転分の変位をプロットしたものである。
【0028】
第2スクリュ12の変位を示す第2時系列データ画像も、第1時系列データ画像同様、略正方形の画像であり、当該画像のX軸及びY軸は、それぞれ図4同様、X軸方向(第3軸方向)及びY軸方向(第4軸方向)に対応し、X軸方向及びY軸方向の変位量が、X軸及びY軸の座標値として、プロットされている。
【0029】
次いで、処理部31は、第1時系列データ画像と、第2時系列データ画像とを1枚の時系列データ画像に合成する(ステップS13)。
【0030】
図7は、第1及び第2スクリュ11,12の変位を示す時系列データ画像である。合成された時系列データ画像は、第1時系列データ画像の2倍の大きさ(面積は4倍)を有する略正方形の画像である。時系列データ画像は、第1及び第2時系列データ画像の縦横比を変更することなく、元の画像が有する情報をそのまま包含する。具体的には、時系列データ画像は、図7中上側左右に並べ配した第1及び第2時系列データ画像と、時系列データ画像を略正方形にするために下側に配したブランク画像とを有する。なお、第1及び第2時系列データ画像及びブランク画像の配置方法は特に限定されるものではなく、第1及び第2時系列データ画像をそのまま含む限り、その配置方法は特に限定されるものではない。
【0031】
次いで、処理部31は、ステップS13で合成した時系列データ画像を学習モデル35に入力することによって、時系列データ画像の特徴量を算出する(ステップS14)。特徴量は、例えば複数次元のベクトル量、例えば数百~千程度の数値で表される。
【0032】
そして、処理部31は、ステップS14で算出した時系列データ画像の特徴量の外れ値スコアを算出する(ステップS15)。外れ値スコアは、正常な二軸混練押出機1の動作時に得られた時系列データ画像の特徴量(以下、サンプル特徴量と呼ぶ)に対する、ステップS14で算出された時系列データ画像の特徴量の外れ値の度合いを評価して数値化したものである。外れ値スコアは、例えばLOF(Local Outlier Factor)である。LOFは、異常検知対象である特徴量の局所密度ld(P)と、当該特徴量の近傍群(当該特徴量に対する最近傍のk個のサンプル特徴量)の局所密度平均<ld(Q)>との比<ld(Q)>/ld(P)で表すことができる。LOFが1より大きい程、外れ値としての度合いが大きくなる。なお、Pは異常検知対象である特徴量を示し、Qは上記サンプル特徴量を示している。
【0033】
そして、処理部31は、算出した外れ値スコアが所定の閾値以上であるか否かを判定することによって、二軸混練押出機1ないし第1及び第2スクリュ11,12が正常であるか否かを判定する(ステップS16)。外れ値スコアが上記のLOFである場合、閾値は1以上の値である。LOFが閾値以上である場合、処理部31は異常ありと判定し、LOFが閾値未満である場合、正常と判定する。
【0034】
なお、上述したLOFを用いた異常判定は一例でありk近傍法、SVMにより二軸混練押出機1が異常であるか否かを判定してもよい。また、ホテリング法により、異常検知対象の特徴量が、正常時のサンプル特徴量からかけ離れたものであるか否かを判定することにより、二軸混練押出機1が異常であるか否かを判定するように構成してもよい。
【0035】
図8は、時系列データ画像の特徴量及び異常検知結果を示す概念図である。図8は、時系列データ画像の高次元の特徴量を2次元の特徴量に次元削減して2次元平面にプロットしたものである。図8の横軸及び縦軸は、次元削減された時系列データ画像の第1特徴量及び第2特徴量を示している。なお、特徴量の次元圧縮は、例えばt-SNE等の次元削減アルゴリズムによって行うことができる。
図8に示すように学習モデル35は、当該学習モデル35から出力される正常時の特徴量の局所密度が高くなるように学習されている。
破線の円は閾値のイメージを示したものである。異常検知対象である時系列データ画像の特徴量(例えば、星型六角形プロット)と、正常時の時系列データ画像の特徴量群との統計距離が短く(局所密度が相対的に高く)、LOF値が小さい場合、二軸混練押出機1は正常な状態であると推定される。異常検知対象である時系列データ画像の特徴量(例えば、X印プロット)と、正常時の時系列データ画像の特徴量群との統計距離が長く(局所密度が相対的に低く)、LOF値が大きい場合、二軸混練押出機1は異常な状態であると推定される。
【0036】
二軸混練押出機1が正常であると判定した場合(ステップS16:YES)、処理部31は処理を終える。二軸混練押出機1が異常であると判定した場合(ステップS16:NO)、処理部31は、二軸混練押出機1に異常がある旨の警告を出力し(ステップS17)、処理を終える。例えば、処理部31は、二軸混練押出機1に異常があることを報知するための警告画面を表示部3aに表示させる。また、処理部31は、図8に示すように、評価対象である現在の時系列データ画像の特徴量と、正常時の時系列データの特徴量とを表した画像を表示部3aに表示させるように構成してもよい。具体的には、処理部31は、高次元の各特徴量を、t-SNE等の任意の次元削減アルゴリズムによって2次元に削減し、2次元で表現された各特徴量を2次元グラフにプロットすることにより、特徴量を表した画像を生成することができる。そして、処理部31は、当該画像のデータを表示部3aへ出力することにより、表示部3aに評価対象である現在の時系列データ画像の特徴量と、正常時の時系列データの特徴量とを表した画像を表示させることができる。
【0037】
<学習モデル生成方法>
図9は学習モデル35の生成方法の概要を示す概念図である。以下、異常検知装置3の処理部31が学習モデル35を機械学習させる例を説明する。
【0038】
まず1クラス分類モデルを生成するために必要な学習用データセットとして、二軸混練押出機1が正常に動作しているときに検出して得られた複数の時系列データ画像と、時系列データ画像と無関係な任意の複数の参考画像R0,R1,R2とを用意する。参考画像R0,R1,R2は、例えばImage Net等の学習用データセットから選択した複数クラスの画像データである。図9に示す例では、ラベル0、ラベル1、ラベル2が付された参考画像R0,R1,R2が用意されている。
【0039】
そして、画像の特徴を抽出する複数の畳み込み層及びプーリング層からなる特徴抽出層を有する学習モデル35に、正常動作時の時系列データ画像と、参考画像R0,R1,R2とを機械学習させる。具体的には処理部31は、各画像の特徴を判別することが可能な特徴量、つまり、図9右図に示すように時系列データ画像の特徴量の局所密度が高く、しかも参考画像R0,R1,R2の特徴量との識別性が高くなるような特徴量を出力するように、学習モデル35を学習させる。
以下、1クラス分類モデルの生成方法の詳細を説明する。
【0040】
図10は学習フェーズにおける学習モデル35を示す概念図である。まず、第1のニューラルネットワーク(リファレンスネットワーク)35aと、第2のニューラルネットワーク(セカンダリネットワーク)35aとを用意する。
【0041】
第1のニューラルネットワーク35aは、入力層、特徴抽出層及び分類層を有するCNNである。特徴抽出層は、複数の畳み込み層及びプーリング層の繰り返し構造を有する。分類層は、例えば一又は複数層の全結合層を有する。第1のニューラルネットワーク35aは、例えばImage Net等の学習用データセットを用いて予備学習されている。
第2のニューラルネットワーク35aは第1のニューラルネットワーク35aと同じネットワーク構成であり、特徴抽出層及び分類層を特徴付ける各種パラメータ(重み係数)も同じである。以下、第1及び第2のニューラルネットワーク35a,35aの学習フェーズにおいて、特徴抽出層及び分類層の各種パラメータは同じ値を共有する。
【0042】
そして、処理部31は、第1のニューラルネットワーク35aに参考画像R0を入力し、損失関数である記述的ロス(descriptiveness loss)を算出する。一方で、処理部31は、第2のニューラルネットワーク35aに正常時の時系列データ画像を入力し、損失関数であるコンパクトロス(compactness loss)を算出する。記述的ロスは、分類器の学習で一般的に使用される損失関数であり、例えば交差エントロピー誤差である。コンパクトロスは下記式(1)、(2)、(3)で表される。コンパクトロスは、バッチ内、つまり学習用データセットにおける第2のニューラルネットワーク35aの出力の分散に相当するような値である。
【0043】
【数1】
【0044】
そして、処理部31は記述的ロスと、コンパクトロスに基づくトータルロスを算出する。トータルロスは、例えば下記式(4)で表される。
【0045】
【数2】
【0046】
処理部31は、上記(4)で表されるトータルロスが小さくなるように誤差逆伝播法等を用いて第1及び第2のニューラルネットワーク35a,35aの各種パラメータの最適化を行うことにより、第1及び第2のニューラルネットワーク35a,35aを学習させる。なお、機械学習させる際、前段の各種パラメータを固定し、後段の複数層のパラメータを調整するとよい。
【0047】
このようにして学習された第1及び第2のニューラルネットワーク35a,35aの特徴抽出層から出力される特徴量は、図9に示すように、二軸混練押出機1が正常時に得られる時系列データ画像の特徴量の局所密度が高くなり、他の任意画像の特徴量との局所密度が低くなる。
【0048】
図11はテストフェーズにおける学習モデル35を示す概念図である。図11に示すように、本実施形態に係る学習モデル35は、上記のように学習した第2のニューラルネットワーク35aの入力層及び特徴抽出層を用いて構成することができる。従って、図10に示す分類層は、本実施形態に係る学習モデル35の必須の構成ではない。ただし、図10に示す第2のニューラルネットワーク35aをそのまま学習モデル35として利用し、特徴抽出層から出力される特徴量を用いることもできる。
なお、図11には、2つの学習モデル35を図示しているが、検出対象である時系列データ画像と、サンプルである正常時の時系列データ画像とが入力されている状態を概念的に示したものであり、2つのモデルが存在することを示すものではない。
【0049】
テストフェーズにおいては、処理部31は、正常時に得られる時系列データ画像をサンプルデータとして学習モデル35に入力することによって、正常時の時系列データ画像の特徴量を出力させる。一方、異常検知対象の時系列データ画像を学習モデル35に入力することによって、当該時系列データ画像の特徴量を出力させる。そして、処理部31は、サンプルデータの特徴量に対する、異常検知対象の特徴量の外れ値スコアを算出し、算出された外れ値スコアと閾値とを比較することによって、異常検知対象の時系列データ画像が異常であるか否か、つまり二軸混練押出機1が異常であるか否かを判別する。
【0050】
なお、図11では、サンプルデータを学習モデル35に入力して当該サンプルデータの特徴量を算出する例を示しているが、予め算出され複数のサンプルデータの特徴量を記憶部32に記憶しておき、異常検知処理においては、記憶部32が記憶するサンプルデータの特徴量を用いて外れ値スコアを算出してもよい。
【0051】
図12は時系列データ画像の特徴量を示す散布図である。図12は、図8同様、時系列データ画像の高次元の特徴量を2次元の特徴量に次元削減して2次元平面にプロットした散布図である。当該散布図には、学習用データである正常時な二軸混練押出機1の動作時に得られる時系列データ画像の特徴量Aと、テストデータである正常時の時系列データ画像の特徴量Bと、テストデータである異常時の時系列データ画像の特徴量Cとがプロットされている。図12から分かるように、テストデータ(正常)の特徴量Bは、学習用データの特徴量Aの近傍にあり、テストデータ(異常)の特徴量Cは、学習用データの特徴量Aから判別可能に離隔している。
【0052】
図13は学習モデル35を用いた異常検知の評価結果を示す図表である。
図13の表中「模擬異常」は異常の種類を示している。摩耗は、第1及び第2スクリュ11,12が摩耗した異常状態を示している。本実験においては、混練部手前のFF(順リードフルフライト)ピースと、混練部最初のFK(順ズラシニーディングディスク)の外径を小さくしたものを用いて摩耗状態を模擬的に再現し、第1及び第2スクリュ11,12の変位を検出して時系列データ画像を作成した。具体的には、スクリュ外径68.0mmが正常の場合において、外径63.0mmの上記各ピースを用いて、摩耗状態を模擬的に再現した。スクリュ不適合は、想定されている樹脂原料と異なる種類の樹脂原料を用いて二軸混練押出機1を動作させた異常状態を示している。本実験では、ポリプロピレン(PP)用の第1及び第2スクリュ11,12を用いてナイロン(PA)を樹脂原料として用いた異常状態を示している。
「正常データ」は、第1及び第2スクリュ11,12に摩耗がなく、適切な樹脂原料(PP)を用いて、回転数100rpm、200rpm、400rpmで第1及び第2スクリュ11,12を回転させた状態で得られた時系列データ画像を示している。
「異常データ」は、「摩耗」については上記の摩耗異常の状態で、適切な樹脂原料(PP)を用いて、回転数100rpm、200rpm、400rpmで第1及び第2スクリュ11,12を回転させた状態で得られた時系列データ画像を示している。「スクリュ不適合」については、第1及び第2スクリュ11,12に摩耗がなく、上記の不適な樹脂原料(PA)を用いて回転数100rpm、200rpm、400rpmで第1及び第2スクリュ11,12を回転させた状態で得られた時系列データ画像を示している。
【0053】
そして、図13の表にある正常データの一部を学習用データセットとして用いて学習モデル35を学習させ、残りの正常データと、異常データとの判別能をAUC(Area Under the Curve)で評価した。各正常データ及び異常データのAUCは0.96,1.00、0.99、1.00、1.00、0.94であり、高い判別能力を有することが確認できた。
【0054】
以上、本実施形態に係る異常検知装置3等によれば、二軸混練押出機1の第1及び第2スクリュ11,12の変位の時系列データを画像で表した時系列データ画像に変換し、当該時系列データ画像に基づいて二軸混練押出機1の異常を判定することができる。
【0055】
また、学習モデル35を1クラス分類モデルで構成することにより、異常時の二軸混練押出機1の時系列データ画像を用いることなく、正常な二軸混練押出機1の動作時に得られる時系列データ画像を用いて当該学習モデル35を機械学習させることができる。
【0056】
更に、第1及び第2スクリュ11,12軸それぞれのX軸方向及びY軸方向の変位の時系列変化を1枚の時系列データ画像で表現し、学習モデル35を用いて当該時系列データ画像の特徴量を算出することによって、二軸混練押出機1の第1及び第2スクリュ11,12の状態を精度よく表した特徴量を簡易に得ることができる。このようにして得られた特徴量を用いることにより、二軸混練押出機1の異常を精度良く検出することができる。
【0057】
更にまた、第1及び第2スクリュ11,12軸それぞれの変位を表した第1及び第2時系列データ画像を変形することなく包含する時系列データ画像を用いることにより、二軸混練押出機1の異常を精度よく検出することができる。
第1及び第2時系列データ画像を上下又は左右に引き延ばした画像を用いると、第1及び第2スクリュ11,12の特徴に影響し、異常検知精度が低下することが確認されている。
【0058】
なお、本実施形態では、第1及び第2スクリュ11,12の駆動軸11a,12aに変位センサ2を設ける例を説明したが、第1及び第2スクリュ11,12の異常を検知することができれば、他の部位に変位センサ2を設けてもよい。例えば、モータ13の出力軸に変位センサ2を設けてもよい。出力軸は、成形機が有する回転軸の一例である。
【0059】
また、本実施形態では、第1及び第2スクリュ11,12それぞれに変位センサ2を設ける例を説明したが、第1及び第2スクリュ11,12のいずれか一方に変位センサ2を設けて、異常検知を行うように構成してもよい。
【0060】
更に、本実施形態では、第1及び第2スクリュ11,12の回転中心軸の変位を検出する例を説明したが、第1及び第2スクリュ11,12に加わるトルク、回転速度、又は回転加速度等の物理量を検出し、当該物理量の時系列データを用いて、二軸混練押出機1を検知するように構成してもよい。なお、異なる種類の物理量を描画した複数の画像を含む時系列データ画像を用いて、二軸混練押出機1の異常を検知するように構成してもよい。例えば、第1及び第2スクリュ11,12の回転中心軸の変位を描画した第1時系列データ画像と、第1及び第2スクリュ11,12に加わるトルク又は回転加速度を描画した時系列データ画像とを含む時系列データ画像を用いて、二軸混練押出機1の異常を検知するように構成してもよい。
同様にして可動部における任意の物理量を検出して産業機械の異常を検知するように構成してもよい。
【0061】
更にまた、本実施形態では、第1スクリュ11の変位を2つの数値で示す2次元の第1時系列データ画像(第1画像)と、第2スクリュ12の変位を2つの数値で示す2次元の第2時系列データ画像(第2画像)とを含む時系列データ画像を用いる例を説明したが、4種類の2次元物理量データを描画した4枚の画像を合成した時系列データ画像を用いて、二軸混練押出機1の異常を検知するように構成してもよい。また、時系列データを描画した5枚以上の画像を含む時系列データ画像を用いて、二軸混練押出機1の異常を検知するように構成してもよい。
【0062】
更にまた、本実施形態では、時系列的に変化する物理量をそのまま描画してなる時系列データ画像を用いる例を説明したが、検出した時系列の物理量を周波数変換し、物理量の周波数スペクトルを描画した時系列データ画像を用いて二軸混練押出機1又は産業機械の異常を検知するように構成してもよい。
【0063】
更にまた、本実施形態では、二軸混練押出機1の第1及び第2スクリュ11,12の異常を検知する例を説明したが、異常検知装置3を用いて他の可動部、単軸押出機、射出成形機、その他の産業機械の可動部の異常を検知するように構成してもよい。この場合、学習モデル35は当該可動部の正常時の時系列データ画像を学習する。
産業機械の可動部の異常を検知する異常検知装置3においては、処理部31は、本実施形態と同様、2つの数値からなる2次元の第1の物理量を示す時系列データと、2つの数値からなる2次元の第2の物理量を示す時系列データとを取得し、取得した第1の時系列データを第1の物理量を描画した第1画像に変換し、取得した第2の時系列データを第2の物理量を描画した第2画像に変換し、変換した第1画像及び第2画像を一の画像に含む時系列データ画像を合成する。そして、処理部31は、合成した時系列データ画像を学習モデルに入力することによって、当該時系列データ画像の特徴量を算出し、正常時の時系列データ画像の特徴量に対する外れ値スコアを算出する。処理部31は、外れ値スコアと、所定の閾値とを比較することによって、産業機械の異常を検出することができる。
なお、3種類以上の物理量を描画した3枚以上の画像を含む時系列データ画像を用いて、産業機械の異常を検知するように構成してもよい。
産業機械の可動部の異常を検知するための学習モデル35の生成方法も実施形態と同様である。産業機械の正常動作時に生成した複数の時系列データ画像と、複数の参考画像を学習用データセットとして、図10に示す方法で1クラス分類モデルの学習モデルを機械学習させるとよい。
【0064】
更にまた、本実施形態では異常検知装置3の処理部31が学習モデル35を機械学習させる例を説明したが、外部の他のコンピュータ又はサーバを用いて学習モデル35を機械学習させてもよい。
【0065】
更にまた、学習モデル35の一例として1クラス分類モデルを説明したが、一般的なCNN、U-Net、RNN(Recurrent Neural Network)等のニューラルネットワーク、その他のSVM(Support Vector Machine)、ベイジアンネットワーク、又は回帰木等を用いてもよい。
【0066】
更にまた、複数の1クラス分類モデルである学習モデル35を用いて、典型的な異常時の時系列画像データを、その他の異常時の時系列データ画像と判別するように構成してもよい。例えば、異常検知装置3は、上記実施形態と同様、正常時の時系列データ画像を学習させた第1の学習モデルを備える。また、異常検知装置3は、正常時の時系列データ画像と、第1異常時の時系列データ画像とを学習させた第2の学習モデル35を備える。異常検知装置3は、第1の学習モデル35と、第2の学習モデル35を用いることにより、正常時の時系列データ画像と、第1異常時の時系列データ画像と、その他の異常時の時系列データ画像とを判別することが可能である。同様にして、異常検知装置3に3つ以上の学習モデル35を備えることにより、2つ以上の異常時の時系列データ画像を判別可能に構成することができる。また、機械学習された多クラス分類モデルを用いて、正常時の時系列画像データと、異常時の時系列画像データとを分類するように構成してもよい。
【0067】
更にまた、主にCNN、等のニューラルネットワークを用いて、機械学習する例を説明したが、学習済モデルの構成はCNN、RNN等に限るものではなく、CNN、RNN以外のニューラルネットワーク、SVM(Support Vector Machine)、ベイジアンネットワーク、又は、回帰木等で構成しても良い。
本開示の手段を付記する。
(付記1)
可動部を有する産業機械の異常を検出する処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
前記可動部の運動に係る物理量を検出するセンサから出力される時系列の物理量データを取得し、
取得した時系列の前記物理量データを画像で表した時系列データ画像に変換し、
正常な前記可動部に係る前記時系列データ画像の特徴を学習した学習モデルに、変換された前記時系列データ画像を入力することによって、前記時系列データ画像の特徴量を算出し、
算出された特徴量に基づいて、前記産業機械の異常の有無を判定する
処理を前記コンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
(付記2)
前記学習モデルは、機械学習により得られたモデルである
付記1に記載のコンピュータプログラム。
(付記3)
前記学習モデルは機械学習により得られた1クラス分類モデルである
付記1又は付記2に記載のコンピュータプログラム。
(付記4)
前記物理量データは、第1の物理量を示す時系列データと、第2の物理量を示す時系列データとを含み、
前記時系列データ画像は、
前記第1の物理量を描画した第1画像と、前記第2の物理量を描画した第2画像とを一の画像に含む
付記1から付記3のいずれか1つに記載のコンピュータプログラム。
(付記5)
前記第1の物理量及び前記第2の物理量はそれぞれ2つの数値からなる2次元の物理量である
付記4に記載のコンピュータプログラム。
(付記6)
前記可動部は成形機の回転軸であり、前記物理量データは成形機の回転軸の変位、トルク、回転速度、又は回転加速度を示す時系列データを含む
付記1から付記5のいずれか1つに記載のコンピュータプログラム。
(付記7)
前記可動部は成形機のスクリュであり、前記物理量データは成形機のスクリュの変位、トルク、回転速度、又は回転加速度を示す時系列データを含む
付記1から付記6のいずれか1つに記載のコンピュータプログラム。
(付記8)
前記可動部は二軸混練押出機の第1スクリュ及び第2スクリュであり、前記物理量データは、第1スクリュの回転中心軸に交差する第1軸方向及び第2軸方向の変位を示す時系列データと、第2スクリュの回転中心軸に交差する第3軸方向及び第4軸方向の変位を示す時系列データを含み、
前記時系列データ画像は、
交差する第1軸方向及び第2軸方向を座標軸として第1スクリュの変位を描画した第1画像と、交差する第3軸方向及び第4軸方向を座標軸として第2スクリュの変位を描画した第2画像とを一の画像に含む
付記1から付記3のいずれか1つに記載のコンピュータプログラム。
(付記9)
前記時系列データ画像は略正方形の画像であり、
前記第1画像及び第2画像と、該第1画像及び第2画像以外の部分を補うブランク画像とを含む
付記8に記載のコンピュータプログラム。
(付記10)
可動部を有する産業機械の異常を検出する異常検知方法であって、
前記可動部の運動に係る物理量を検出するセンサから出力される時系列の物理量データを取得し、
取得した時系列の前記物理量データを画像で表した時系列データ画像に変換し、
正常な前記可動部に係る前記時系列データ画像の特徴を学習した学習モデルに、変換された前記時系列データ画像を入力することによって、前記時系列データ画像の特徴量を算出し、
算出された特徴量に基づいて、前記産業機械の異常の有無を判定する
異常検知方法。
(付記11)
可動部を有する産業機械の異常を検出する異常検知装置であって、
前記可動部の運動に係る物理量を検出するセンサと、
該センサから出力される時系列の物理量データを取得する取得部と、
該取得部にて取得した時系列の前記物理量データを画像で表した時系列データ画像に変換する変換部と、
正常な前記可動部に係る前記時系列データ画像の特徴を学習した学習モデルに、変換された前記時系列データ画像を入力することによって、前記時系列データ画像の特徴量を算出する算出部と、
該算出部にて算出された特徴量に基づいて、前記産業機械の異常の有無を判定する判定部と
を備える異常検知装置。
(付記12)
付記11に記載の異常検知装置と、
成形機と
を備え、
前記異常検知装置は、前記成形機の異常を検出するようにしてある
成形機システム。
(付記13)
第1スクリュ及び第2スクリュを有する二軸混練押出機の異常を検知するための学習モデルの生成方法であって、
正常動作時の前記二軸混練押出機の第1スクリュの回転中心軸に交差する第1軸方向及び第2軸方向の変位を示す時系列データと、正常動作時の前記二軸混練押出機の第2スクリュの回転中心軸に交差する第3軸方向及び第4軸方向の変位を示す時系列データとに基づいて、第1スクリュの回転中心軸に交差する第1軸方向及び第2軸方向の変位を描画した第1画像と、第2スクリュの回転中心軸に交差する第3軸方向及び第4軸方向の変位を描画した第2画像とを一の画像に含む複数の時系列データ画像を生成し、
生成した前記複数の時系列データ画像と、任意の特徴を有する複数の参考画像とを含む学習用データセットに基づいて、第1スクリュ及び第2スクリュの回転中心軸の変位を描画した第1画像及び第2画像を含む時系列データ画像が入力された場合に前記二軸混練押出機の正常動作及び異常動作に応じた特徴量を出力する学習モデルを生成する
処理をコンピュータが実行する学習モデル生成方法。
【符号の説明】
【0068】
1 二軸混練押出機
2 変位センサ
3 異常検知装置
3a 表示部
4 記録媒体
10 シリンダ
10a ホッパ
11 第1スクリュ
11a 駆動軸
12 第2スクリュ
12a 駆動軸
13 モータ
14 減速機
21 第1変位センサ
22 第2変位センサ
23 第3変位センサ
24 第4変位センサ
31 処理部
32 記憶部
33 入力インタフェース
34 出力インタフェース
35 学習モデル
35a ニューラルネットワーク
P コンピュータプログラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13