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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025037634
(43)【公開日】2025-03-18
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/01 20060101AFI20250311BHJP
   G03G 15/08 20060101ALI20250311BHJP
   G03G 15/02 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
G03G15/01 113
G03G15/08 321C
G03G15/02 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023144684
(22)【出願日】2023-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 雅之
【テーマコード(参考)】
2H077
2H200
2H300
【Fターム(参考)】
2H077AC04
2H077AD06
2H077BA03
2H077BA07
2H077DA02
2H077DA05
2H077DA31
2H077DA63
2H077DB08
2H077DB12
2H077DB14
2H077EA03
2H077GA13
2H200FA18
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA34
2H200GA53
2H200GA54
2H200GA56
2H200GA57
2H200HA03
2H200HA29
2H200HB12
2H200HB22
2H200HB48
2H200JC03
2H200NA02
2H200NA13
2H200PB20
2H200PB39
2H300EB07
2H300EB12
2H300EC05
2H300EF03
2H300EF08
2H300EG02
2H300EG05
2H300EH11
2H300EJ09
2H300EJ24
2H300EJ25
2H300EJ34
2H300EJ35
2H300FF05
2H300GG11
2H300GG46
2H300PP02
2H300PP12
2H300QQ10
2H300RR50
(57)【要約】
【課題】現像電源から共通の現像バイアスが供給される安価な構成でありながら、画像現像手段ごとに形成される各トナー像の濃度のばらつきを低減することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】制御部は、プロセス条件調整処理の実行時に、各画像現像手段に、基準濃度に対応する印刷画像信号に基づいて、複数の異なる電圧値と複数の異なるディザ値との組み合わせに対応する複数のテスト用トナー像を含むトナーパッチ群を形成させ、濃度センサで検出した複数のテスト用トナー像のそれぞれの濃度に基づいて、画像形成処理の実行時の電圧値及びディザ処理部が各画像現像手段に適用すべきディザ値を決定するように構成されている。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体及び前記像担持体上にトナー像を現像する現像手段をそれぞれ含む複数の画像現像手段と、
前記各像担持体のそれぞれに現像された前記各トナー像が転写される転写部材を含む転写手段と、
前記各現像手段に対して共通の現像バイアスを供給する現像電源と、が備えられた画像形成装置であって、
前記各画像現像手段を制御して任意の印刷画像信号に基づいた前記トナー像を形成する画像形成処理を実行可能、かつ、前記現像電源を制御して前記現像バイアスの電圧値を調整するプロセス条件調整処理を実行可能に構成された制御部と、
前記画像現像手段ごとに、所定の諧調性を有するような複数の異なるディザ値で画像処理を実行可能なディザ処理部と、
前記転写部材に転写された前記各トナー像の濃度を検出する濃度センサと、がさらに備えられ、
前記制御部は、前記プロセス条件調整処理の実行時に、
前記各画像現像手段に、基準濃度に対応する印刷画像信号に基づいて、複数の異なる前記電圧値と複数の異なる前記ディザ値との組み合わせに対応する複数のテスト用トナー像を含むトナーパッチ群を形成させ、前記濃度センサで検出した前記複数のテスト用トナー像のそれぞれの濃度に基づいて、前記画像形成処理の実行時の前記電圧値及び前記ディザ処理部が前記各画像現像手段に適用すべき前記ディザ値を決定するように構成されている、ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ディザ処理部は、前記テスト用トナー像を所定の最大ディザ値から所定の最小ディザ値までの範囲に属する複数のディザ値で画像処理を行うように構成され、
前記制御部は、前記プロセス条件調整処理の実行時に、前記最大ディザ値に対応する前記トナーパッチ群において、前記濃度センサによって検出された前記テスト用トナー像の濃度が所定の目標濃度範囲内に収まる前記電圧値と前記ディザ値との組み合わせを選出し、
前記選出された組み合わせのうち前記テスト用トナー像の濃度が最も低く検出された画像現像手段の前記濃度が前記目標濃度範囲内となる電圧値がある場合には、当該電圧値のうち絶対値が最も小さいものを前記画像形成処理の実行時の電圧値として決定し、かつ、
前記決定した電圧値との組み合わせに対応する各ディザ値のうち、形成された前記テスト用トナー像の濃度が前記目標濃度範囲内において最も高かったものを前記画像形成処理の実行時のディザ値として決定するように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記トナー像を構成するトナーは非磁性であり、前記現像手段には磁性のキャリアが含まれており、
前記制御部は、前記決定した電圧値との組み合わせに対応する最小ディザ値であっても、形成された前記テスト用トナー像の濃度が前記目標濃度範囲を超える画像現像手段については、
当該画像現像手段に対して所定時間に亘り前記トナー像のべた吐きをさせた後に、再び前記プロセス条件調整処理を実行するように構成されている、ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記各画像現像手段は前記各像担持体に露光する露光手段をそれぞれ備え、
前記制御部は、前記決定した電圧値との組み合わせに対応する最小ディザ値であっても、形成された前記テスト用トナー像の濃度が前記目標濃度範囲を超える画像現像手段については、
当該画像現像手段に備えられた前記露光手段の前記像担持体への露光光量を低減させた後に、再び前記プロセス条件調整処理を実行するように構成されている、ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記選出された組み合わせのうち前記テスト用トナー像の濃度が最も低く検出された画像現像手段の前記濃度が最大ディザ値であっても前記目標濃度範囲を下回る画像現像手段については、
当該画像現像手段に対してトナーの補給がされた後に、再び前記プロセス条件調整処理を実行するように構成されている、ことを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、像担持体及び前記像担持体上にトナー像を現像する現像手段をそれぞれ含む複数の画像現像手段と、前記各像担持体のそれぞれに現像された前記各トナー像が転写される転写部材を含む転写手段と、前記各現像手段に対して共通の現像バイアスを供給する現像電源と、が備えられた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、帯電装置や現像装置の現像電源を共通化した構成において高濃度部の画像濃度制御手段を備えた画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-163502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
当該画像形成装置においては、現像電源から、4色すべてのトナー像の濃度が目標濃度範囲内となる共通の現像バイアスの電圧値を得られることが前提となっている。しかし、各現像手段の周囲の環境の温度、湿度や各トナーの残量、帯電性などに起因して各トナーの現像性が異なるため、現像電源から共通の現像バイアスが供給される構成では、4色すべてのトナー像の濃度が目標濃度範囲内とならない(所望の濃度よりも濃すぎたり、薄すぎたりする)場合がある。
【0005】
本開示は、上述の問題に鑑みなされたものであり、現像電源から共通の現像バイアスが供給される安価な構成でありながら、画像現像手段ごとに形成される各トナー像の濃度のばらつきを低減することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するための、本開示に係る画像形成装置は、像担持体及び前記像担持体上にトナー像を現像する現像手段をそれぞれ含む複数の画像現像手段と、前記各像担持体のそれぞれに現像された前記各トナー像が転写される転写部材を含む転写手段と、前記各現像手段に対して共通の現像バイアスを供給する現像電源と、が備えられた画像形成装置であって、前記各画像現像手段を制御して任意の印刷画像信号に基づいた前記トナー像を形成する画像形成処理を実行可能、かつ、前記現像電源を制御して前記現像バイアスの電圧値を調整するプロセス条件調整処理を実行可能に構成された制御部と、前記画像現像手段ごとに、所定の諧調性を有するような複数の異なるディザ値で画像処理を実行可能なディザ処理部と、前記転写部材に転写された前記各トナー像の濃度を検出する濃度センサと、がさらに備えられ、前記制御部は、前記プロセス条件調整処理の実行時に、前記各画像現像手段に、基準濃度に対応する印刷画像信号に基づいて、複数の異なる前記電圧値と複数の異なる前記ディザ値との組み合わせに対応する複数のテスト用トナー像を含むトナーパッチ群を形成させ、前記濃度センサで検出した前記複数のテスト用トナー像のそれぞれの濃度に基づいて、前記画像形成処理の実行時の前記電圧値及び前記ディザ処理部が前記各画像現像手段に適用すべき前記ディザ値を決定するように構成されている、ことを特徴とする。
【0007】
上述の構成によると、各現像手段の周囲の環境の温度、湿度や各トナーの残量、帯電性などに起因して各トナーの現像性にばらつきが生じても、画像形成処理の際に適用するディザ値を画像現像手段ごとに個別に調整することで、現像電源から共通の現像バイアスが供給される安価な構成でありながら、画像現像手段ごとに形成される各トナー像の濃度のばらつきを低減することができる。
【0008】
本開示に係る画像形成装置において、前記ディザ処理部は、前記テスト用トナー像を所定の最大ディザ値から所定の最小ディザ値までの範囲に属する複数のディザ値で画像処理を行うように構成され、前記制御部は、前記プロセス条件調整処理の実行時に、前記最大ディザ値に対応する前記トナーパッチ群において、前記濃度センサによって検出された前記テスト用トナー像の濃度が所定の目標濃度範囲内に収まる前記電圧値と前記ディザ値との組み合わせを選出し、前記選出された組み合わせのうち前記テスト用トナー像の濃度が最も低く検出された画像現像手段の前記濃度が前記目標濃度範囲内となる電圧値がある場合には、当該電圧値のうち絶対値が最も小さいものを前記画像形成処理の実行時の電圧値として決定し、かつ、前記決定した電圧値との組み合わせに対応する各ディザ値のうち、形成された前記テスト用トナー像の濃度が前記目標濃度範囲内において最も高かったものを前記画像形成処理の実行時のディザ値として決定するように構成されている、ことを特徴としてもよい。
【0009】
上述の構成によると、テスト用トナー像の濃度が最も低く検出された画像現像手段であっても目標濃度を満足する電圧値を各画像現像手段に対する共通の現像バイアスとして設定し、各画像現像手段においてはディザ値を個別で調整することによって、すべての画像現像手段で適切な濃度によりトナー像を現像することができるようになる。なお、所定の最大ディザ値とは、テスト用トナー像を構成する領域の全域に対してトナー像を現像させるディザ値であり、所定の最小ディザ値とは、ジャギーを認識させない程度においてテスト用トナー像を構成する領域のうち所定の領域を除いた領域にトナー像を現像させるディザ値をいう。
【0010】
本開示に係る画像形成装置において、前記トナー像を構成するトナーは非磁性であり、前記現像手段には磁性のキャリアが含まれており、前記制御部は、前記決定した電圧値との組み合わせに対応する最小ディザ値であっても、形成された前記テスト用トナー像の濃度が前記目標濃度範囲を超える画像現像手段については、当該画像現像手段に対して所定時間に亘り前記トナー像のべた吐きをさせた後に、再び前記プロセス条件調整処理を実行するように構成されている、ことを特徴としてもよい。
【0011】
現像手段の内部のトナーの濃度が高いときは、キャリアとの摩擦機会が十分に得られため、トナーが所定の帯電量が得られないことがあり、得られるトナー像の濃度が高くなりすぎることがある。このような画像現像手段に対しては、上述のように、トナーをべた吐きさせることにより、現像手段の内部のトナーの量が減り、現像手段の内部のトナーのキャリアとの摩擦機会が十分に得られることで、トナーは所定の帯電量が得られるので、結果としてトナー像の濃度を下げることができる。
【0012】
本開示に係る画像形成装置において、前記各画像現像手段は前記各像担持体に露光する露光手段をそれぞれ備え、前記制御部は、前記決定した電圧値との組み合わせに対応する最小ディザ値であっても、形成された前記テスト用トナー像の濃度が前記目標濃度範囲を超える画像現像手段については、当該画像現像手段に備えられた前記露光手段の前記像担持体への露光光量を低減させた後に、再び前記プロセス条件調整処理を実行するように構成されている、ことを特徴としてもよい。
【0013】
得られるトナー像の濃度が高くなりすぎる画像形成装置に対しては、上述のように、露光光量を低減させることにより、像担持体の静電潜像の部分と現像ローラとの電位差が小さくなり、当該静電潜像の部分に付着するトナーの量が減るため、結果としてトナー像の濃度を下げることができる。
【0014】
本開示に係る画像形成装置において、前記制御部は、前記選出された組み合わせのうち前記テスト用トナー像の濃度が最も低く検出された画像現像手段の前記濃度が最大ディザ値であっても前記目標濃度範囲を下回る画像現像手段については、当該画像現像手段に対してトナーの補給がされた後に、再び前記プロセス条件調整処理を実行するように構成されている、ことを特徴としてもよい。
【0015】
テスト用トナー像の濃度が足りていない画像現像手段においてはトナーが不足していることが考えられる。上述の構成により、トナーが不足していると考えられる画像現像手段にトナーの補給がされ、トナーが十分に存在する状態で電圧値及びディザ値を決定することができるようになる。なお、トナーの補給は、自動で行われる構成であってもよいし、手動で行われる構成であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本開示の画像形成装置は、現像電源から共通の現像バイアスが供給される安価な構成でありながら、画像現像手段ごとに形成される各トナー像の濃度のばらつきを低減することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示に係るカラー画像形成装置の概略構成を示す説明図である。
図2図1に示すカラー画像形成装置における内部の説明図である。
図3】制御部の説明図である。
図4】中間転写ベルトに形成されたトナーパッチ群の説明図である。
図5】ディザ値の説明図である。
図6】ブラックのトナーに係るトナーパッチ群における電圧値とディザ値の説明図である。
図7】各色のトナーパッチ群におけるトナー像の濃度の説明図である。
図8図7に示す各トナー像の濃度を表したグラフである。
図9】各色のトナーパッチ群におけるトナー像の濃度の説明図である。
図10図9に示す各トナー像の濃度を表したグラフである。
図11】各色のトナーパッチ群におけるトナー像の濃度の説明図である。
図12図11に示す各トナー像の濃度を表したグラフである。
図13】プロセス条件調整処理に係るフローチャートである。
図14】プロセス条件調整処理に係るフローチャートである。
図15】プロセス条件調整処理に係るフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施形態1]
以下、本開示に係るタンデム型のカラー画像形成装置の実施形態について説明する。図1及び図2に示すように、カラー画像形成装置1は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色トナー像を形成する4つの画像現像装置2(2K、2C、2M、2Y)、現像電源3(図2参照)、転写装置4、定着装置5、給紙装置6、搬送装置7、排紙トレイ8及び当該カラー画像形成装置1を制御する制御部9(図3参照)などを備えている。画像現像装置2K、2C、2M、2Yの、K、C、M、Yの文字は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)に対応する各画像現像装置を区別するために用い、区別が必要のないときは省略することがある。以下各部の構成において同じ。Pは印刷用紙である。当該カラー画像形成装置1が請求項における「画像形成装置」であり、画像現像装置2K、2C、2M、2Yが請求項における「画像現像手段」である。
【0019】
各画像現像装置2K、2C、2M、2Yは、基本的に同様の構成であるため、ブラック(K)のトナー像を形成する画像現像装置2Kについて説明する。図2に示すように、当該画像現像装置2Kは、感光体ドラム20K、感光体ドラム20Kを帯電させる帯電器21K、帯電された感光体ドラム20Kを露光する露光装置22Kと、露光された感光体ドラム20K上にトナー像を現像する現像装置23Kと、感光体ドラム20Kの表面をクリーニングするクリーナ装置(図示せず)を含んでいる。当該感光体ドラム20Kが請求項における「像担持体」であり、露光装置22Kが請求項における「露光手段」である。
【0020】
感光体ドラム20Kは、接地された導電性の円筒部材と、当該円筒部材の外側に形成された感光層とを含む。当該感光層は、暗いところでは絶縁性を有し、光が照射されると照射された領域が導電性に変化する光導電体から構成されている。感光体ドラムは、図示しない駆動源によって所定の方向に回転される。
【0021】
帯電器21Kは、導電性の軸部と、当該軸部の外側に形成された導電性の弾性層とを有する帯電ローラを含む。当該帯電ローラは、前記導電性の弾性層の表面が、感光体ドラム20Kの表面に接するように配置され、感光体ドラム20Kが回転すると連れ回りするように軸支される。前記導電性の軸部には、図示しない電源が接続されており、当該電源から所定の電圧もしくは電流の供給を受けて感光体ドラム20Kの表面を所定の電位(例えば、-600V程度)に帯電させる。
【0022】
露光装置22Kは発光部(例えばレーザーダイオード)を有し、印刷用画像データに基づいて、感光体ドラム20Kの表面(感光層)を露光する。当該発光部からの照射光によって露光された領域である露光領域は、抵抗値が下がって表面電位が低下し、印刷用画像データに応じた静電潜像が形成される。当該露光領域の表面電位は、露光されなかったその他の領域である非露光領域よりも接地電位に近い(例えば-100V程度)。なお、本開示の露光装置22は、各色に対応する複数の発光部を備え、各発光部から照射される光ビームをそれぞれの感光体ドラム20K、20C、20M、20Yの長手方向に走査する走査型の露光装置である。
【0023】
現像装置23Kは、現像槽231K、攪拌部材232K、トナー供給部材233K、現像ローラ234K等を有している。当該現像装置23Kが請求項における「現像手段」である。
【0024】
現像槽231Kは現像剤が貯留される容器である。現像剤は、非磁性のトナーと磁性のキャリアとを含んでいる。なお、トナーの粒子径は5~10μm程度であり、キャリアの粒子径は40μm程度である。トナーとキャリアの混合比率は例えば1:9程度である。
【0025】
攪拌部材232Kは、駆動装置11(図3参照)からの回転力を受けて回転し、現像槽231Kに貯留されている現像剤を攪拌する。攪拌部材232Kによる攪拌によって、現像剤に含まれるトナーとキャリアとの間に摩擦が生じ、トナーはマイナスに帯電し、キャリアはプラスに帯電する。攪拌部材232Kは、トナー供給部材233Kの近傍に配置されており現像剤を攪拌しつつトナー供給部材233Kに搬送する。トナー供給部材233Kは、駆動装置11からの回転力を受けて回転し、攪拌部材232Kから搬送されてきた現像剤を、磁性を有する現像ローラ234Kの表面に供給する。
【0026】
現像ローラ234Kは、駆動装置11からの回転力を受けて回転する導電性のスリーブと、当該スリーブの内側に回転しないように固定された複数の磁石とを有する。攪拌部材232Kから搬送されてきた現像剤に含まれるキャリアは、複数の磁石が発生する磁力によって非導電性のスリーブの表面に周囲のトナーごと引き寄せられて担持される。現像ローラ234Kの表面、つまりスリーブの表面に担持された現像剤は、スリーブの回転によって感光体ドラム20Kとの対向部に搬送される。スリーブには、所定の電圧である現像バイアスDVが現像電源3から印加されており、当該対向部において、現像バイアスDVと静電潜像(露光領域)との電位差によって、トナーのみが現像ローラ234Kから感光体ドラム20Kに移動(現像)され感光体ドラム20K上にトナー像が形成される。
【0027】
現像電源3は、画像現像装置2K、2C、2M、2Yの各現像装置23K、23C、23M、23Yに含まれる現像ローラ234K、234C、234M、234Yに対して所定の電圧である現像バイアスDVを供給する。現像電源3は、現像ローラ234K、234C、234M、234Yに対して同じ電圧である現像バイアスDVを供給する。現像ローラ234K、234C、234M、234Yに対して異なる電圧値を供給せず同じ電圧値を供給する構成にすることによって、使用するトランスの数を減らすことができるので電源コストを下げることができる。なお、現像バイアスDVとして設定される共通の電圧値は、詳しくは後述するが、制御部9によるプロセス条件調整処理によって設定される。
【0028】
転写装置4は、一次転写ローラ41K、41C、41M、41Y、中間転写ベルト42、駆動ローラ43、従動ローラ44及び二次転写ローラ45などを有している。当該中間転写ベルト42が請求項における「転写部材」である。一次転写ローラ41K、41C、41M、41Yや二次転写ローラ45には、所定の転写電圧が印加されている。
【0029】
中間転写ベルト42は、駆動ローラ43及び従動ローラ44に張架されており、駆動装置11から回転力を受けて駆動ローラ43が回転することによって回転する。一次転写ローラ41K、41C、41M、41Yは、中間転写ベルト42の内側で、各画像現像装置2K、2C、2M、2Yの感光体ドラム20K、20C、20M、20Yとそれぞれに対向する位置に配置され、中間転写ベルト42をそれぞれ対応する感光体ドラム20K、20C、20M、20Yに当接させる。二次転写ローラ45は、駆動ローラ43と対向する位置で中間転写ベルト42の表面と当接するように配置され、中間転写ベルト42が回転すると一緒に回転する。各現像装置23K、23C、23M、23Yで現像され、各感光体ドラム20K、20C、20M、20Y上に形成された各トナー像は、各一次転写ローラ41K、41C、41M、41Yによって順次中間転写ベルト42に中間(一次)転写される。そして中間転写ベルト42上に中間転写された各トナー像は、二次転写ローラ45との当接部に送られ、当該当接部に送られてくる印刷用紙Pに転写(二次転写)される。
【0030】
定着装置5は、加熱源が内蔵された加熱ローラと加圧ローラとで印刷用紙Pを挟み込み、印刷用紙Pに転写されたトナー像を加熱しながら圧送することにより、トナー像を印刷用紙Pに定着させる。給紙装置6は印刷用紙Pを積載するトレイを有している。搬送装置7は印刷用紙Pの搬送経路と、当該搬送経路に沿って備えられた搬送ローラ等を有している。排紙トレイ8は、画像が印刷された印刷用紙Pが載置されるトレイである。
【0031】
図示しないクリーナ装置は、中間転写ベルト42に転写しきれずに感光体ドラム20Kに残留したトナーを掻き取るクリーニングブレードや、感光体ドラム20Kの表面を除電し、形成された静電潜像を消去する除電装置を有している。これにより感光体ドラム20Kは次の印刷の準備が可能となる。なお、前記クリーニングブレードによって掻き取られたトナーは図示しない廃トナーボックスに回収される。
【0032】
なお、中間転写ベルト42の移動方向(回転方向)において、最も二次転写ローラ45に近いブラック用の一次転写ローラ41Kと、二次転写ローラ45の間には、中間転写ベルト42に転写された各トナー像の濃度を検出する画像センサ10(図2参照)が備えられている。画像センサ10は発光部と受光部とを有し、前記発光部から中間転写ベルト42に向けて光を発光し、中間転写ベルト42から反射された光を前記受光部で受光する反射型の光センサから構成されている。当該受光部で受光された光の強度信号は制御部9に入力されるようになっている。詳しくは後述するが、本開示の画像形成装置では、画像センサ10は、各現像装置23K、23C、23M、23Yで現像し中間転写ベルト42上に中間転写された各トナー像の濃度を検出し、得られた検出結果に基づいて、各現像装置23K、23C、23M、23Yに供給する共通の現像バイアスDVなどの現像条件を設定するために設けられる。
【0033】
図3は、制御部9を示すブロック図である。制御部9は、演算処理部91と、記憶部92と、ディザ処理部93と、入力部94と、出力部95とを有しており、これらは図示しないバス線により相互に接続されている。
【0034】
演算処理部91は、CPU(Central Processing Unit)を含み、記憶部92は、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)等の不揮発性メモリを含む。演算処理部91は、記憶部92に格納されている制御プログラムを読みだして各機能を実行する。
【0035】
ディザ処理部93は、各画像現像装置2K、2C、2M、2Yごとに、所定の諧調性を有するような複数の異なるディザ値DTで画像処理を実行する。ディザ処理部93が請求項における「ディザ処理部」である。ディザ処理については、後で詳しく説明する。
【0036】
入力部94には、画像センサ10が通信可能に接続されており、出力部95には、画像現像装置2K、2C、2M、2Y、現像電源3、転写装置4、定着装置5、給紙装置6、搬送装置7、駆動装置11等が通信可能に接続されている。
【0037】
制御部9は、用紙に転写するトナー像の濃度(および諧調性)が経時変化によって変化しないようにするために、カラー画像形成装置1に対して所定のタイミング(例えば感光体上にトナー像を1000回現像する)ごとにプロセス条件調整処理を実行するように構成されている。
【0038】
以下、プロセス条件調整処理について説明する。制御部9は、図4に示すように、プロセス条件調整処理の実行時に、画像濃度測定用のトナー像(パッチ画像)を複数形成する。ここで、画像濃度測定用のトナー像は、現像バイアス条件と露光条件のひとつであるディザ値を変化させて形成される。つまり制御部9は、電圧が異なる複数の現像バイアスDVと複数の異なるディザ値DTとを組み合わせて形成した複数のテスト用トナー像T(TK、TC、TM、TY)を含むトナーパッチ群Gを形成し、それぞれの濃度を画像センサ10で検出する。なお、図4の矢印は中間転写ベルト42の移動方向を示す。
【0039】
ここで、トナーパッチ群Gを構成するテスト用トナー像Tの数は、トナーの色数、現像バイアスDVの設定数、ディザ値DTの設定数によって決まる。本実施形態においては、トナーの色数が4つであり、現像バイアスDVの設定数が3つであり、ディザ値DTの設定数が3つである。つまり、トナーパッチ群Gは36(=4×3×3)のテスト用トナー像Tから構成される。
【0040】
テスト用トナー画像の形成時おいて設定される現像バイアスDVの値について説明する。本実施形態では現像バイアスDVの値は3つ設定されており、それぞれの値つまり電圧値DV1、DV2、DV3は、順に-450V、-420V、-400Vである。前述したように露光装置22によって露光された感光体ドラム20の表面の電位は、-100V程度であるため、露光された感光体ドラム20の表面電位と現像バイアスDVとの差が電圧値DV3、電圧値DV2、電圧値DV1の順で大きくなる。そのため、現像されるトナー量も、電圧値DV3、電圧値DV2、電圧値DV1の順で多くなり、濃度も濃くなる。
【0041】
この現像バイアスDVの値として設定される電圧値DV1、DV2、DV3の値は、予め実験等の結果に基づいて決められている。より詳しくは、各現像装置23K、23C、23M、23Yの周囲の環境の温度、湿度や各トナーの残量、各感光体ドラム20K、20C、20M、20Yの累積回転数などに応じて定められたテーブルが、記憶部92に記憶されている。そのため、制御部9は、プロセス条件調整処理実行時において記憶部92を参照することで現像バイアスDVの値を設定することができる。
【0042】
次に、テスト用トナー画像の形成時おいて設定されるディザ値DTについて説明する。ディザ値DTとは、本実施形態では、図5に示すように、例えば縦29ドット×横29ドット=840マスのうちいずれにトナーを付着させるかによって決まる0~840の範囲の値である。ここで、ドットとは、当該カラー画像形成装置1によってトナーの付着を制御可能な所定単位であり、1ドットは露光装置22から照射される光ビームの径を指す。本実施形態の画像形成装置1の1ドットは42μm径となる(解像度600DPI)。それゆえ、ディザ値DTは、42μm×29ドット=1.22mm角の範囲にある840のマスに対して、露光するマスの数を意味する。
【0043】
例えば、ディザ値DTの値が840であるときは840マスのうち840マス、つまり100%のマスが全て露光され。このときのディザ値DTの値である840がディザ値DTの最大値となる。ディザ値DTの値が740であるときは840マスのうち740マス、つまり約88%のマスが露光される。同様に、ディザ値DTの値が640であるときは840マスのうち640マス、つまり約76%のマスが露光される。
【0044】
上述した露光されたマスには、トナーが現像されるため、ディザ値が大きいほど画像の濃度は濃くなる。しかし、現像バイアスDVの値とトナーの帯電量の関係によっては、露光されたマスに供給されるトナーの量が多くなり、感光体ドラム20の表面に付着したトナーが露光されたマスからはみ出して露光していないマスの面積が小さくなり、より小さいディザ値の場合であっても、トナー像の濃度が濃くなる場合がある。本実施形態では、この特性を利用して、それぞれ共通の現像バイアスDVが供給される4つの現像装置23K、23C、23M、23Y内のトナーの帯電量がバラついても、現像される各色のトナー像の濃度や階調性を同じにすることができる。
【0045】
制御部9は、プロセス条件調整処理の実行時において、ディザ値DTの値を3つ変更してテスト用トナー像Tを形成する。ここで変更されるディザ値DTの値であるDT1、DT2、DT3は、順に840、740、640である。なお、ディザ値DTの値が630あたりを下回ると、つまり露光されるマスの数が840マスの約75%を下回ると、形成されたトナー像にジャギーが目立ち、いわゆるべた画像(所定の領域内が一様濃度となるようにトナーで塗りつぶした画像)とは認識されなくなることが、実験により認されている(=濃度ムラがある画像となる)。そのため、本実施形態においては、プロセス条件調整処理実行時において適用するディザ値の下限値を640としている。なお、ディザ法では、例えば濃度が濃くなるに従ってどのマスから露光していくか順番が予め決められている。本実施形態では、露光されるマスが、図5中の符号、0、1、2、3・・・840の順で増えるように順番が決められているが、順番などのパターンについては公知のディザパターンが用いられる。
【0046】
図6は、テスト用トナー像Tの形成条件をブラック(K)のトナーを例に説明したものである。一番左が、テスト用トナー像Tにおけるトナーパッチ番号で、中央が適用する現像バイアスDVの条件3種(DV1、DV2、DV3)、一番右が適用するディザ値DTの条件3種(DT1、DT2、DT3)である。ここで、DV1、DV2、DV3、DT1、DT2、DT3の値は前述したとおりである。このような現像バイアスDVとディザ値DTの条件を組み合わせた9つのトナーパッチを色ごとに形成する。
【0047】
ここで図4に戻って説明する。図4には、現像バイアスDVが電圧値DV1(=-450V)であるときに、ディザ値DTの値がDT1(=840)、DT2(=740)、DT3(=640)で形成した各色のテスト用トナー像T(TK、TC、TM、TY)が示されている。
【0048】
詳しくは、右から、現像バイアスDVが電圧値DV1(=-450V)であるときに、ディザ値DTの値がDT1(=840)で形成したブラック(K)のテスト用トナー像TK11、シアン(C)のテスト用トナー像TC11、マゼンタ(M)のテスト用トナー像TM11、イエロー(Y)のテスト用トナー像TY11、続いて、ディザ値DTの値がDT2(=740)で形成したブラック(K)のテスト用トナー像TK12、シアン(C)のテスト用トナー像TC12、マゼンタ(M)のテスト用トナー像TM12、イエロー(Y)のテスト用トナー像TY12、そして、ディザ値DTの値がDT3(=640)で形成したブラック(K)のテスト用トナー像TK13、シアン(C)のテスト用トナー像TC13、マゼンタ(M)のテスト用トナー像TM13、イエロー(Y)のテスト用トナー像TY13が示されている。
【0049】
なお、図4には、現像バイアスDVが電圧値DV1の時に、ディザ値DTの値がDT1、DT2、DT3で形成した、テスト用トナー像TK、TC、TM、TYが12個のみが描かれているが、現像バイアスDVが電圧値DV2、DV3のそれぞれの時についてもテスト用トナー像TK、TC、TM、TYが順次形成される。したがって、トナーパッチ群Gは、現像バイアスDVがさらに電圧値DV2(=-420V)であるときに、ディザ値DTの値がDT1(=840)、DT2(=740)、DT3(=640)で形成した各色のテスト用トナー像TK、TC、TM、TYと、現像バイアスDVが電圧値DV3(=-400V)であるときに、ディザ値DTの値がDT1(=840)、DT2(=740)、DT3(=640)で形成した各色のテスト用トナー像TK、TC、TM、TYも含んでいる。
【0050】
次に形成されたテスト用トナー像T(パッチ画像)の濃度検出について説明する。テスト用トナー像Tの濃度は、前述した画像センサ10によって検出される。画像センサ10は、光源と受光部とを有する光センサである。画像センサ10は、中間転写ベルト42に転写されたテスト用トナー像Tに対して光源から光を照射し、受光部が検出する照射した照射光の反射光量に基づいて、テスト用トナー像Tの濃度IDを検出する。ここで濃度IDは、反射率(つまり反射光強度/入射光強度)の逆数の常用対数で求められるものであり、濃度が濃くなるほど値が大きくなる。より具体的には、べた画像の濃度IDは、1.3~1.7程度であり、濃度が薄くなるにしたがって濃度IDの値は0に近づく。なお、本実施形態の画像センサ10の照射光はφ1mmの照射範囲を有するため、テスト用トナー像Tの濃度IDを正確に測定するためには、テスト用トナー像Tの大きさをφ1mmより大きくなるように形成する必要がある。本実施形態では、テスト用トナー像Tは、例えば、感光体ドラム20の周方向に10mm、感光体ドラム20の周方向と交差する方向、つまり長手方向に10mmとなる正方形形状を有するパッチ画像で形成されている。
【0051】
制御部9は、上記トナーパッチ群Gに含まれるすべてのテスト用トナー像Tの濃度を画像センサ10で検出し、これらの検出結果に基づいて、画像形成処理の実行時に印加する現像バイアスDV及び画像現像装置2K、2C、2M、2Y毎に適用するディザ値DTを決定する。より詳しくは、各色のべた画像(所定の領域内が一様濃度となるようにトナーで塗りつぶした画像)の濃度が基準濃度を満足するように、現像バイアスDV及び画像現像装置2K、2C、2M、2Y毎に適用するディザ値DTを決定する。
【0052】
ここで、基準濃度とは、べた画像が満足すべき画像の濃度IDを規定したものであり、下限値と上限値が設けられる。本実施形態では、下限値は1.3、上限値は1.5に設定されている。検出された濃度IDの値が、下限値を下回ると画像の濃度が薄い(不足)と判断され、上限値を超えると画像が濃すぎる(過剰)と判断される。つまり基準濃度は、下限値と上限値で決められた適正な範囲を目標濃度範囲として規定されている。
【0053】
制御部9は、テスト用トナー像Tの濃度の検出結果において、所定の目標濃度範囲内に収まる現像バイアスDVとディザ値DTとの組み合わせを選出する。
【0054】
まず、制御部9は、ディザ値DTの値がDT1、つまり最大値である840で作成したテスト用トナー像Tのうち、検出された濃度IDの値が基準濃度の下限値を上回り、かつ現像バイアスDVの絶対値が最も低い現像バイアスDVの値を求める。そして求まった現像バイアスDVの値を、画像形成処理の実行時における現像バイアスDVの値として設定(決定)する。
【0055】
そして、制御部9は、求まった現像バイアスDVの値で形成したテスト用トナー像Tの検出濃度を参照し、それぞれの色に対して基準濃度の下限値を下回るディザ値DTの条件(ディザ値DTの値)を見つける。そして、見つかったディザ値DTの値を、画像形成処理の実行時に適用するディザ値の最大値として設定する。
【0056】
上述した制御部9による処理について、図7及び図8を用いて説明する。図7及び図8には、あるプロセス条件調整処理時において形成したテスト用トナー像TK、TC、TM、TYの形成条件と検出された濃度値がトナーの色ごとに示されている。図7から、例えば、ブラック(K)のトナーであれば、現像バイアスDVの値がDV2でディザ値DTの値がDT2での条件で形成されたテスト用トナー像TKの検出された濃度値は1.3であり、目標濃度範囲(1.3~1.5)内であることが分かる。一方、マゼンタ(M)のトナーであれば、現像バイアスDVの値がDV2でディザ値DTの値がDT2での条件で形成されたテスト用トナー像TMの検出された濃度値は1.2であり、目標濃度範囲(1.3~1.5)を下回ることがわかる。
【0057】
制御部9は、画像形成処理の実行時に印加する現像バイアスVDを以下の順で設定する。まずディザ値DTの値がDT1、つまりディザ値DTが最大値である840で作成したテスト用トナー像Tのうち、検出された濃度IDの値が基準濃度の下限値を上回る現像バイアスDVの値を色ごとに確認する。例えば、ブラックトナーの場合、検出された濃度が、目標濃度の下限値以上となる現像バイアスDVの値は、DV1、DV2、DV3である。ここで、現像バイアスDVの値であるDV1、DV2、DV3は、順に-450V、-420V、-400Vである。この値は前述した値と同じであるので、以後具体的な電圧は示さず符号で説明する。またシアントナーの場合とイエロートナーの場合も、検出された濃度が目標濃度の下限値以上となる現像バイアスDVの値は、DV1、DV2、DV3となる。一方、マゼンタトナーの場合は、検出された濃度が目標濃度の下限値以上となる現像バイアスDVの値は、DV1、DV2となる。つまり、基準濃度の下限値を満足させるために必要な現像バイアスDVの値がDV2(-420V)となり、他のトナーのDV3(-400V)よりも電圧値(絶対値)を大きくする必要がある。このように確認することで、マゼンタトナーと対応する画像現像装置2Mがもっとも濃度が出にくいユニットであることが特定(確認)できる。また、最も濃度の出にくいユニットである画像現像装置2Mであっても、現像バイアスDVの値をDT2に設定することで、目標濃度の下限値を満足させるトナー像を形成できることがわかる。
【0058】
そこで、制御部9は、画像形成処理の実行時に各画像現像装置2K、2C、2M、2Yに印加する現像バイアスDVの電圧値を、絶対値が最も小さいDT2に設定する。
【0059】
次に、画像形成処理の実行時に印加する現像バイアスDVの値をDV2にすると、イエロートナーの場合(ディザ値DTの値がDT1の場合)は、検出される濃度IDの値が1.6となり目標濃度の上限値1.5を超えることがわかる。(イエロートナーの画像現像装置2Yは、他のユニットに比べて濃度が出やすいことがわかる。)そのため、制御部9は、現像バイアスDVの値がDV2の条件で形成したテスト用トナー像Tの検出濃度を確認し、検出濃度が目標濃度の上限値以下となるディザ値DTの値をトナーの色ごとに求める。例えばイエロートナーの場合は、ディザ値DTの値がDT2の時、濃度が目標値の上限値と同じ値になることがわかる。そこで、制御部9は、画像形成処理の実行時にイエロートナーの画像現像装置2Yに適用するディザ値DTの最大値をDT2の値となるように設定する。なお、ブラックトナー、シアントナー、マゼンタトナーと対応する画像現像装置2K、2C、2Mに対して設定するディザ値DTの値は、DT1とする。これは、現像バイアスDVの値がDV2、ディザ値DTの値がDT2の場合の濃度が、濃度が目標濃度範囲内に入っているからである。
【0060】
以上のようにして、画像形成処理の実行時に各画像現像装置2K、2C、2M、2Yに供給する現像バイアスDVの値および各画像現像装置2K、2C、2M、2Yに適用する個々のディザ値DT(の最大値)が設定される。
【0061】
現像装置23K、23C、23M、23Yの周囲の環境の温度、湿度や各トナーの残量などに起因して各トナーの現像性にばらつきが生じても、以上で説明したように現像バイアスDVの値および適用するディザ値DT(の最大値)の値を設定することで、用紙に転写されるトナー像の濃度および階調性が色によってばらつかないようにすることができる。つまり、現像電源3から共通の現像バイアスが供給される安価な構成でありながら、画像現像装置2K、2C、2M、2Yごとに形成される各トナー像の濃度のばらつきが低減された状態で印刷することが可能となる。
【0062】
なお、制御部9は、図9及び図10に示すように、決定した電圧値DV2との組み合わせに対応する最小ディザ値DT3であっても、形成されたテスト用トナー像TYの濃度が目標濃度範囲(1.3~1.5)を超える画像現像装置2Yについては、現像装置23Yでベタ画像(トナー像)を所定時間に亘り感光体ドラム20Yに形成し、感光体ドラム20Yに形成したベタ画像(トナー像)を中間転写ベルト42には転写させずに、感光体ドラム20Y上の付着物(トナー像)を除去する図示しない清掃部材を有する清掃装置まで送って除去する処理であるトナー像のべた吐きをさせた後に、再びプロセス条件調整処理を実行するように構成されている。
【0063】
各現像装置23K、23C、23M、23Yにおいては、内部のトナーの濃度が高いとキャリアとの摩擦機会が十分に得られため、トナーは所定の帯電量が得られないことがある。このようなときは、得られるトナー像の濃度が高くなるので、上述のように、トナーをべた吐きさせることにより、対応する現像装置23K、23C、23M、23Yの内部のトナーの量が減らすことができる。これにより、現像装置23K、23C、23M、23Yの内部のトナーのキャリアとの摩擦機会が十分に得られトナーは所定の帯電量が得られ、結果としてトナー像の濃度を下げることができる。それから、再びプロセス条件調整処理を実行することで、例えば図9及び図10において、それぞれ矢印の右側に示すように、画像現像装置2Yにおいても適切な電圧値DV2、ディザ値DT3が決定される。
【0064】
さらに、制御部9は、図11及び図12に示すように、選出された組み合わせのうちテスト用トナー像TMの濃度が最も低く検出された画像現像装置2Mの濃度が最大ディザ値DT1であっても目標濃度範囲(1.3~1.5)を下回るであるため、当該画像現像装置2Mに対してトナーの補給を促すように構成されている。そして、トナーの補給がされた後に、再びプロセス条件調整処理を実行することで、例えば図9及び図10において、それぞれ矢印の右側に示すように、画像現像装置2Mにおいても適切な電圧値DV3、ディザ値DT1が決定される。
【0065】
上述のように構成された制御部9のプロセス条件調整処理をフローチャートに基づいて説明する。
【0066】
図13に示すように、制御部9は、ステップS1で、中間転写ベルト42に転写されたテスト用トナー像TK、TC、TM、TYの濃度IDの値を画像センサ10で検出し、記憶部92に記憶する。
【0067】
制御部9は、ステップS2で、ディザ値DTの値がDT1で形成されたテスト用トナー像Tの濃度が目標値の下限値“ID lower thresh“以上となる現像バイアスDV(=DVB “DVB_K_IDlow” “DVB_C_IDlow” “DVB_M_IDlow” “DVB_Y_IDlow”)の下限値をそれぞれの色に対して求める。図8の例で説明すると、ブラックの現像バイアスDVの下限値“DVB_K_IDlow”はDV3、シアンの現像バイアスDVの下限値“DVB_C_IDlow”は、DV3、マゼンタの現像バイアスDVの下限値“DVB_M_IDlow”は、DV2、イエローの現像バイアスDVの下限値“DVB_Y_IDlow”は、DV3となる。つまり、ディザ値DTの値がDT1で形成されたテスト用トナー像Tの濃度は、現像バイアスDVの値をDV2以上にすることですべての色に対して目標濃度の下限値を超える濃度にすることができることがわかる。
【0068】
次にステップ3において制御部9は、ステップS2で得られた各色に対する現像バイアスDVの値(“DVB_K_IDlow” “DVB_C_IDlow” “DVB_M_IDlow” “DVB_Y_IDlow”)が現像バイアスDVの最大値であるDV1以下であるかを確認する。つまり、現像バイアスDVの値が最大値であるDV1であっても、目標濃度の下限値に到達しないかどうかを確認する。
【0069】
ステップS3において制御部9は、ステップS2で得られた各色に対する現像バイアスDVの値(“DVB_K_IDlow” “DVB_C_IDlow” “DVB_M_IDlow” “DVB_Y_IDlow”)がすべてDV1以下であれば(S3でY)ステップS4に進み、現像バイアスDVの値がDV1であっても目標濃度の下限値に到達しない色がある場合(S3でN)は、処理Aに進む。ステップ4において、ステップS2で得られた各色に対する現像バイアスDV(“DVB_K_IDlow” “DVB_C_IDlow” “DVB_M_IDlow” “DVB_Y_IDlow”)の中で絶対値が最も小さいものを画像形成時に使用する現像バイアスDV(=DVB_MIN_IDlow)として決定する。
【0070】
その後、ステップS5において、制御部9は、ステップS2で得られた各色に対する現像バイアスDVの中で絶対値が最も小さいバイアス条件(=DVB_MIN_IDlow)において最も小さいディザ値DTの値“DITHlower thresh”で形成されたテスト用トナー像Tの濃度を確認し、それぞれ“ID_K_Dlt”、“ID_C_Dlt”、“ID_M_Dlt”、“ID_Y_Dlt”として記憶部92に記憶する。図8の例で説明すると、現像バイアスDVの値がDV2、ディザ値DTの値がDT3の条件で形成されたテスト用トナー像Tの濃度となり、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの順に、1.2、1.3、1.1、1.4となる。
【0071】
制御部9は、ステップS6において求められた“ID_K_Dlt”、“ID_C_Dlt”、“ID_M_Dlt”、“ID_Y_Dlt”の全てが目標濃度の上限値(ID upper thresh)1.5以下であることを確認すると(S6でY)ステップ7に進み、1つでも目標濃度の上限値を超えている場合は、処理Bに進む。そして、ステップS7では、各色に対して濃度が最大値1.5に最も近づくディザ値DT“ID_K_Dlt”、“ID_C_Dlt”、“ID_M_Dlt”、“ID_Y_Dlt”を求める。
【0072】
そして、ステップS8において、ステップS6で各色に対して求められたディザ値DTの値“ID_K_Dlt”、“ID_C_Dlt”、“ID_M_Dlt”、“ID_Y_Dlt”の値を画像形成時に各色に対して適用するディザ値DTの値である“DT_K_IDup“、“DT_C_IDup“、“DT_M_IDup“、“DT_Y_IDup“に設定する。図8の例で説明すると、“DT_K_IDup“、“DT_C_IDup“、“DT_M_IDup“、“DT_Y_IDup“の順に、840、840、840、740となる。ここで、画像形成時に印加する現像バイアスDVの値は、ステップS4で求めた“DVB=DVB_MIN_IDlow”の値、図8で説明するとDV2(=-420V)に設定される。以上のように現像バイアスDVと各色に適用するディザ値DTを個別に設定することで、各色のベタ画像の濃度を所定の範囲内(濃度ID1.3~1.5内)することができる。つまり濃度のばらつきを許容範囲内に制御することができる。
【0073】
なお、図13のステップS3で条件を満たさない画像現像装置2K、2C、2M、2Yがあれば(S3でN)、処理Aに進む。図14に示される処理AのステップS9において、目標濃度の下限値1.3を下回る画像現像装置を特定する。そして次のステップS10において、特定された画像現像装置に対して、トナーの補給を行った後に、図13のステップS1に戻る。目標濃度の下限値1.3を下回る画像現像装置の現像装置23は、トナーの量が適正値よりも減少していることが多い。そのため、対象となる現像装置23に対してトナー補給を行うことで、必要な濃度を達成できるようになる。
【0074】
また、13のステップS6で条件を満たさない画像現像装置2K、2C、2M、2Yがあれば(S6でN)、処理Bに進む。図15に示されるステップS11において、目標濃度の上限値1.5を上回る画像現像装置を特定する。そして次のステップS12において、特定された画像現像装置に対して、感光体ドラム20の周方向に所定の長さを有する、例えば長さ100mmのベタ画像を1回ないしは複数回現像させ、現像したトナー像を中間転写ベルト42には中間転写させずにクリーナ装置で回収する、所謂ベタ吐きを実行する。ステップS12の実行後は、図13のステップS1に戻る。目標濃度の上限値1.5を超える画像現像装置の現像装置23は、トナーの量が適正値より増加し、キャリアとの摩擦頻度が低下することによってトナーの帯電量が適正値より低下していることが多い、そこでベタ吐きを実行することで、対象となる現像装置23内のトナーを強制的に消費して減少させる。これによりキャリアに対するトナー一つあたりの摩擦頻度が増加してトナーの帯電量を適正値にすることができ、濃度が目標濃度の上限値を超えることを防止できるようになる。
【0075】
[実施形態2]
上述した実施形態においては、制御部9はトナーのべた吐きをさせることによりトナーの帯電量を調整したが、このような構成に限らない。例えば図9及び図10に示す例では、最小ディザ値DT3であっても、画像現像装置2Yで形成されたテスト用トナー像Tの濃度は目標濃度上限値1.5を超えるが、画像現像装置2Yに対応する露光装置22Yの感光体ドラム20Yへの露光光量を低減させてもよい。この露光光量の低減は、露光装置22の発光部の光強度を小さくすることで実現できる。これは、感光体ドラム20Yの露光された領域の表面電位が、例えば-100Vから-150Vになり、現像ローラ234Yに印加される現像バイアスDVとの差が小さくなって、露光された領域に付着するトナーの量が減るため、結果としてトナー像の濃度を下げることができる。このように対応する露光装置22の発光部の光量を調整してから、再びプロセス条件調整処理を実行することで、画像現像装置2Yにおいても適切な電圧値DV2、ディザ値DT3を設定してもよい。
【0076】
上述した各実施形態においては、各感光体ドラム20K、20C、20M、20Yの表面を-600Vの電位に帯電させたが、この数値は例示である。また、3つの電圧値DV1、DV2、DV3、順番に-450V、-420V、-400Vの現像バイアスDVを各現像ローラ234K、234C、234M、234Yに印加したが、この数値も例示である。これらの電位や現像バイアスの値は、各現像装置23K、23C、23M、23Yの周囲の環境の温度、湿度や各トナーの残量、帯電性などに応じて可変的に定められるものであってよい。いずれにせよ、感光体ドラム20K、20C、20M、20Yと、現像ローラ234K、234C、234M、234Yとの間に100Vから200V程度の電位差がつくように設定されることが好ましい。
【0077】
上述したいずれかの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用でき、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本開示の実施形態はこれに限定されず、本開示の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本開示は、タンデム型のカラー画像形成装置として、複写機、複合機、プリンタ、ファクシミリ装置等に利用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 :カラー画像形成装置
2 :画像現像装置(画像現像手段)
20 :感光体ドラム(像担持体)
21 :帯電器
22 :露光装置(露光手段)
23 :現像装置
231 :現像槽
232 :攪拌部材
233 :トナー供給部材
234 :現像ローラ
3 :現像電源
4 :転写装置(転写手段)
41 :一次転写ローラ
42 :中間転写ベルト
43 :駆動ローラ
44 :従動ローラ
45 :二次転写ローラ
9 :制御部
10 :画像センサ
91 :演算処理部
92 :記憶部
93 :ディザ処理部
94 :入力部
95 :出力部
DT :ディザ値
DT1 :ディザ値
DT2 :ディザ値
DT3 :ディザ値
DV :電圧値
DV1 :電圧値
DV2 :電圧値
DV3 :電圧値
G :トナーパッチ群
P :印刷用紙
T :テスト用トナー像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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