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  • 特開-放射線防護服 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025037746
(43)【公開日】2025-03-18
(54)【発明の名称】放射線防護服
(51)【国際特許分類】
   G21F 3/02 20060101AFI20250311BHJP
【FI】
G21F3/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023144872
(22)【出願日】2023-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】511051661
【氏名又は名称】株式会社メディカルリーダース
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】和田 太児
(57)【要約】
【課題】作業者が容易に洗濯することができ、短時間で着脱可能な防護服を提供する。
【解決手段】
本発明は、着用者の放射線の被ばくを防護する放射線防護ジャケット1であって、前記放射線防護ジャケット1の表地11と裏地12とにより構成され、かつ、前記表地11と前記裏地12とが内部空間30を設けるように構成されたアウター部10と前記内部空間30に配置され、かつ、放射線遮蔽板を有するインナー部20と、前記アウター部10と前記インナー部20のそれぞれに配置された連結部105、205と、を備え、前記連結部105、205において前記アウター部10と前記インナー部20とが着脱可能に連結されることを特徴とする放射線防護ジャケット1を提供するものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の放射線の被ばくを防護する放射線防護ジャケットであって、
前記放射線防護ジャケットの表地と裏地とにより構成され、かつ、前記表地と前記裏地とが内部空間を設けるように構成されたアウター部と、
前記内部空間に配置され、かつ、放射線遮蔽板を有するインナー部と、
前記アウター部と前記インナー部のそれぞれに配置された連結部と、
を備え、
前記連結部において前記アウター部と前記インナー部とが着脱可能に連結されることを特徴とする放射線防護ジャケット。
【請求項2】
前記連結部が面ファスナであることを特徴とする請求項1に記載の放射線防護ジャケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療現場および原子力発電所などの放射性物質存在下で作業員が使用する放射線防護服に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、医療現場及び原子力発電所などの放射性物質存在下では、放射線遮蔽素材を内皮層に積層された放射線防護服について開示されていた。
【0003】
例えば、特許文献1には、散乱エックス線及び電子線を遮蔽する内皮層と、内皮層に積層された、ガンマ線を遮蔽する中皮層と、中皮層に積層された、中性子線を遮蔽する上皮層とを備える放射線遮蔽素材を用いて、着用者の体表面を覆うように形成された放射線防護服であって、着用者の甲状腺周りの放射線遮蔽素材は、上皮層上に中性子線を遮蔽する第二の上皮層を積層する放射線防護服について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-076694
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている防護服は作業者の全身を覆う生地などの内皮層に比重の重い放射線遮蔽素材が用いられており、当該防護服を長時間着用した場合、防護服内が蒸れてしまい、作業員などの作業効率が低下及び悪臭の原因となっていた。放射線遮蔽素材を含む防護服は洗濯することが困難であり、当該防護服は使用後に交換する必要があり、洗濯可能な防護服が求められていた。また、特に医療現場では、従来タイプの全身を覆うタイプの防護服では利便性に乏しく、作業者が短時間で着脱可能な防護服が求められていた。
【0006】
そこで、本発明の目的は、作業者が容易に洗濯することができ、短時間で着脱可能な防護ジャケットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するため、本発明者は鋭意研究を重ねた結果、着用者の放射線の被ばくを防護する放射線防護ジャケットであって、前記放射線防護ジャケットの表地と裏地とにより構成され、かつ、前記表地と前記裏地とが内部空間を設けるように構成されたアウター部と前記内部空間に配置され、かつ、放射線遮蔽板を有するインナー部と、前記アウター部と前記インナー部のそれぞれに配置された連結部と、を備え、前記連結部において前記アウター部と前記インナー部とが着脱可能に連結されることを特徴とする放射線防護ジャケットを見出し、本発明に至った。
【0008】
本発明の放射線防護ジャケットによれば、連結部でアウター部とインナー部とが着脱可能に連結されるので、着用者は、放射線防護ジャケットの使用後にアウター部を取り外し洗濯することができる。
【0009】
本発明の放射線防護ジャケットは、前記連結部が面ファスナであることを特徴とする放射線防護ジャケットとすることもできる。
【0010】
本発明の放射線防護ジャケットによれば、前記連結部が面ファスナとすることができるので、着用者は、より簡便に放射線防護ジャケットの使用後にアウター部を取り外し洗濯することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、作業者が容易に洗濯することができ、短時間で着脱可能な防護ジャケットを提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態の正面図である。
図2】本発明の一実施形態の正面図である。
図3】本発明の一実施形態の正面図である。
図4】本発明の一実施形態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明の技術的思想を具現化するための例示であって、本発明はこの例に限られない。また、上記の実施形態で説明する構成及び処理機能は取捨選択して任意に組み合わせることは可能であり、本発明の技術特定思想及び教示に基づいて、当業者が改変形態を採り得ることは自明である。
【0014】
本明細書において使用する「外」、「内」、「前」、「後」「上」、「下」、「右」、「左」の用語は、いずれも防護服を着用した着用者から見た方向を意味する。すなわち、着用者の身体の中心を基準とした場合に、「外」は、外部空間側を意味し、「内」は、着用者側を意味し、「前」は着用者の腹側を意味し、「内」は着用者の背中側を意味し、「上」は、着用者の頭部側を意味し、「下」は、着用者の足部側を意味し、「右」は、着用者の右腕部側を意味し、「左」は、着用者の左腕部側を意味する。
【0015】
図1は、着用者が放射線防護ジャケット1を着用したときの態様を示している。
【0016】
図1に示すように、放射線防護ジャケット1は、表地11が外側に位置するように構成されている。放射線防護ジャケット1は、着用時に右端と左端が重なるような前開き構成をとる。放射線防護ジャケット1において、ベルト101は着用者の腹部付近に配置されており、着用者の腹囲に応じて長さを変化させられるように構成されている。着用時にはベルト101は装着される。
【0017】
本発明の放射線防護ジャケットの変形例として、ベルト101に代えて、放射線防護ジャケットの左端と右端をボタン又はファスナによって、留めるように構成されていてもよい。また、本実施形態のように前開き構成ではなく、中央部に穴が設けられ着用者が当該穴から頭を出して着用し、身体の上半身を覆うポンチョ型のような構成をとることもできる。
【0018】
図2は、着用者の身体に対して内側から見た放射線防護ジャケット1を示す図である。
【0019】
図2に示すように、放射線防護ジャケット1は、裏地12において一対のファスナ102、103と開口部104と面ファスナ105aとを備えている。
【0020】
放射線防護ジャケット1の左右において一対のファスナ102、103は上下方向に延在している。一対のファスナ102、103の下端部において開口部104が設けられている。開口部104の上部に面ファスナ105aが設けられている。着用時には、面ファスナ105aと表地11の内側の下端部に設けられた面ファスナ105bとが接着し、開口部104が閉じるように構成されている。
【0021】
図3は、面ファスナ105aから面ファスナ105bを剥がし、開口部104から一対のファスナ102、103を開いた際の放射線防護ジャケット1の態様を示す図である。
【0022】
図3に示すように、放射線防護ジャケット1は、表地11と裏地12とで構成されているアウター部10とインナー部20とアウター部10の表地11と裏地12で画定された内部空間30を有しており、内部空間30にインナー部20が配置されている。
【0023】
図4はアウター部10の裏地12の内側の左端とインナー部20の左端を示す図である。
【0024】
図3及び図4に示すように、裏地12の内側の左端には、3か所、面ファスナ106が上下方向に配置されている。また、インナー部20の左端も面ファスナ206に対応するように、3か所、面ファスナ206が上下方向に配置されている。着用時にはそれぞれの面ファスナ106と面ファスナ206が接着することで、内部空間30にインナー部20が配置されている。同様の構成は裏地12の内側の右端にも有しており、地12の内側の両端によって、インナー部20は固定されている。
【0025】
このような放射線防護ジャケット1は、面ファスナ106、206によりアウター部
10とインナー部20とが着脱可能に構成されているので、汚れやすいアウター部10のみを洗濯することができる。
【0026】
本発明の放射線防護ジャケットの変形例として、前記アウター部と前記インナー部の配置された連結部(面ファスナ106、206)はアウター部とインナー部が着脱可能であれば他の公知の方法をとってもよい。例えば、面ファスナに代えて、ボタン又はファスナによって留めるように構成されていてもよい。
【0027】
本発明のアウター部は、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド繊維、ポリイミド繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維などの合成繊維、綿、麻等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、アセテート繊維等の半合成繊維、などで構成することができ、特に本発明の放射線防護ジャケットは蒸れ易いので、ポリエステル繊維及びポリアミド繊維を含むことが好適に使用される。
【0028】
インナー部20には、放射線遮蔽板(図示せず)が設けられている。放射線遮蔽板は遮蔽材として、α線、β線、γ線の遮蔽能の高い単体または化合物の微粒子を、熱可塑性樹脂に分散することにより形成される。
【0029】
遮蔽材としては、鉛、アンチモニ、ビスマス、タングステン等の重金属が挙げられる。また、これらの遮蔽材は、一種のみで使用することも可能であり、またこれらの混合物を使用することも可能である。中でも、放射線遮蔽板は放射線防護ジャケットの一部を構成するものであるから、鉛及び鉛の化合物に比べて軽量であるアンチモニ、ビスマス及びタングステンを好適に使用することができる。
【0030】
本発明の実施形態で使用されている放射線遮蔽板は、2つの減衰要素であるアンチモンおよびタングステンの混合物である。一般的に放射線遮蔽板に使用される鉛ビニルは、アンチモンおよびタングステンの混合物と比較すると32%質量が大きい。
【0031】
(K-Edge技術)
アンチモンは、鉛のKエッジウィンドウ(35~88keV)以下の光子スペクトルを効率的に減衰させる。タングステンは高エネルギー放射線(>69keV)を効率的に減衰させる。従って、アンチモンおよびタングステンの混合物を使用することで、広範囲の光子スペクトルを減衰させる放射線遮蔽板を提供することができる。
【0032】
熱可塑性樹脂としては、強度に優れた樹脂の好ましく使用することができ、ゴム、エラストマー等が好適に使用できる。例えば、ゴムとしては、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム等が例示でき、中でもクロロプレンゴムがより好適である。エラストマーとしては、ポリエステル系、ポリオレフィン系、シリコーン系の熱可塑性エラストマーが例示できる。
【0033】
本発明の実施形態で使用される放射線遮蔽板において、微粉末化しカプセル化したアンチモンおよびタングステンの混合物は、ダウ・デュポン社製の熱可塑性エラストマーのマトリックス内に均一に分散されて、支持されている。
【0034】
本発明の放射線遮蔽板はインナー部を構成する部材として利用されるので、着用者の動きに応じて変形する柔軟性が求められる。また、本発明のインナー部は繰り返し使用されるので、強靭性、耐久性、耐クラック性が求められる。遮蔽材が、熱可塑性エラストマーのマトリックス内で均一に分散されて支持されるような構成を取ることにより、強靭性、柔軟性、耐久性、耐クラック性のバランスが取れた放射線遮蔽板を提供することができる。
【0035】
放射線遮蔽板のX線透過率は20%以下に抑えられているため、本発明の放射線防護ジャケットの素材として有用である。本発明では、放射線遮蔽板のX線透過率は低い程よく、例えば10%以下が好ましく、より好ましくは5%以下である。
【0036】
(環境への負荷の考慮)
本発明の実施形態の放射線遮蔽板は、遮蔽材に鉛を使用しておらず、熱可塑性樹脂においても架橋構造及び熱可塑性樹脂の硬化加工をしていないので、熱処理により再加工をすることができるなど、リサイクル加工をすることが可能である。更に、非危険物、非毒性廃棄物として容易に処分することができる。
【符号の説明】
【0037】
1:放射線防護ジャケット
10:アウター部
20:インナー部
30:内部空間
11:表地
12:裏地
102、103:ファスナ
104:開口部
105a、105b、106、206:面ファスナ








図1
図2
図3
図4