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  • -ポリマーの製造方法および製造装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025037779
(43)【公開日】2025-03-18
(54)【発明の名称】ポリマーの製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/06 20060101AFI20250311BHJP
   C08G 69/30 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
C08G69/06
C08G69/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024022553
(22)【出願日】2024-02-19
(31)【優先権主張番号】P 2023144837
(32)【優先日】2023-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】東恩納 光甫
(72)【発明者】
【氏名】中井 誠
(72)【発明者】
【氏名】土門 武徳
【テーマコード(参考)】
4J001
【Fターム(参考)】
4J001DA01
4J001DB03
4J001EA06
4J001EA07
4J001EA08
4J001EB08
4J001EB09
4J001EB37
4J001EC08
4J001EC09
4J001EE16D
4J001GA15
4J001GB02
4J001GB12
4J001GC00
4J001GC10
4J001JA01
(57)【要約】
【課題】簡便な温度制御に基づいて、反応容器内壁への付着を十分に防止することができる、ポリマーの製造方法を提供すること。
【解決手段】マイクロ波発生装置を備えた反応容器内で、反応容器内壁の温度を粉粒体原料の重合温度よりも低く保ちながら、粉粒体原料をマイクロ波で加熱し反応容器内壁の温度よりも高い温度で固相重合する、ポリマーの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波発生装置を備えた反応容器内で、反応容器内壁の温度を粉粒体原料の重合温度よりも低く保ちながら、粉粒体原料をマイクロ波で加熱し反応容器内壁の温度よりも高い温度で固相重合することを特徴とするポリマーの製造方法。
【請求項2】
ポリマーがポリアミドであることを特徴とする請求項1に記載のポリマーの製造方法。
【請求項3】
ポリマーがジカルボン酸とジアミンからなり、ジカルボン酸の50~100モル%がテレフタル酸であるポリアミドであることを特徴とする請求項2に記載のポリマーの製造方法。
【請求項4】
粉粒体原料の温度と、撹拌機の負荷との少なくともいずれかを検知しつつ、マイクロ波の出力および/または反応容器内壁の温度を変化させながら固相重合することを特徴とする請求項1に記載のポリマーの製造方法。
【請求項5】
粉粒体の縮合水の過剰な増大にともなう反応系の暴走を防止するために、粉粒体原料の温度と、撹拌機の負荷と、外への排出水量との少なくともいずれかを検知しつつ、マイクロ波出力および/または反応容器内壁の温度を変化させながら固相重合することを特徴とする請求項1に記載のポリマーの製造方法。
【請求項6】
ポリマーの製造装置であって、
前記製造装置は、マイクロ波発生装置を備えた反応容器を有し、
前記製造装置は、反応容器内壁の温度を粉粒体原料の重合温度よりも低く保ちながら、粉粒体原料をマイクロ波で加熱し反応容器内壁の温度よりも高い温度で固相重合するものであることを特徴とするポリマーの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリマーの製造方法および製造装置に関し、特に固相重合法によるポリマーの製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固相重合法は、ポリエステルや耐熱ポリアミドといったポリマーの製造において、工業的に広く利用されている。固相重合法としては、例えば、原料となる塩やプレポリマーの粉粒体を、生成するポリマーの融点以下の温度で加熱する方法が一般的である。加熱の方法は、高温の反応容器内壁からの伝熱によることがほとんどである(特許文献1)。固相重合法は、溶融重合法に比べて低温で生産が可能であるため、重合時のポリマーの熱劣化を防止することができる。また、固相重合法は、結晶化による反応活性点の非晶領域への濃縮により、生成ポリマーを高分子量化できるといった利点がある。
【0003】
しかし、固相重合法には、生産中の反応容器内壁へのポリマーの付着が起こりやすいという問題点がある。付着が生じると、反応容器から粉粒体原料への熱伝導が妨げられる。粉粒体は、液体に比べると、そもそも反応容器内壁からの伝熱効率が低いため、付着による伝熱量の減少は、ポリマーの生産性低下に直結する。また、生産を重ねるにつれて、付着量が増加すると、経時で重合条件が変動することになり、ポリマーの品質を低下させる。さらに、重合反応においては、一般に、粉粒体同士が強く固結しやすいため、付着物の除去は容易ではない。これらの理由により、付着の防止が、固相重合法によるポリマーの生産、開発における大きな課題となっている。
【0004】
反応容器内壁への粉粒体の付着は、以下の機構により発生する。反応容器内壁に接触した粉粒体原料は(この段階では付着の程度はさほど強くない)、接触面である反応容器内壁面が最も高温であるため、速やかに重合反応が進行する。そして、撹拌や重力による粒子の移動に対して重合反応に伴う粒子間の固結が優先する状況下で、付着が成長すると考えられる。
【0005】
これに対し、反応容器内壁の温度を重合温度以下にすることができれば、上記の機構による付着は発生しないと考えられる。しかし、反応容器内壁の温度を下げれば、当然のことながら、反応容器からの伝熱で粉粒体原料を重合に必要な温度に上げることはできない。
【0006】
そこで、特許文献2においては、粉粒体原料を、撹拌翼による撹拌に基づく撹拌熱で加熱する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-079203号公報
【特許文献2】WO2017/208857A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2の技術において規模を拡大してポリマーを製造する場合、反応系の途中で、粉粒体の形状変化などによる、摩擦熱の変化により、温度制御が困難となる場合があり、反応容器内壁の温度を上げる必要があり、結果的に反応容器内壁への粉粒体付着が増加することがあった。
【0009】
本発明は、上記のような問題に鑑み、反応容器内壁への付着の問題を根本的に解決して、多種類のポリマーに対して適用可能な、固相重合によるポリマーの製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【0010】
本発明は特に、簡便な温度制御に基づいて、反応容器内壁への付着を十分に防止することができる、ポリマーの製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、このような問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、不足の熱源供給として、マイクロ波の利用に着目した。本発明者らは、反応容器内壁の温度を重合温度よりも低く保ちながら、マイクロ波により粉粒体原料を加熱することにより上記目的が達成されることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
すなわち、本発明の要旨は、以下の通りである。
<1> マイクロ波発生装置を備えた反応容器内で、反応容器内壁の温度を粉粒体原料の重合温度よりも低く保ちながら、粉粒体原料をマイクロ波で加熱し反応容器内壁の温度よりも高い温度で固相重合することを特徴とするポリマーの製造方法。
<2> ポリマーがポリアミドであることを特徴とする<1>に記載のポリマーの製造方法。
<3> ポリマーがジカルボン酸とジアミンからなり、ジカルボン酸の50~100モル%がテレフタル酸であるポリアミドであることを特徴とする<2>に記載のポリマーの製造方法。
<4> 粉粒体原料の温度と、撹拌機の負荷との少なくともいずれかを検知しつつ、マイクロ波の出力および/または反応容器内壁の温度を変化させながら固相重合することを特徴とする<1>~<3>のいずれかに記載のポリマーの製造方法。
<5> 粉粒体の縮合水の過剰な増大にともなう反応系の暴走を防止するために、粉粒体原料の温度と、撹拌機の負荷と、外への排出水量との少なくともいずれかを検知しつつ、マイクロ波出力および/または反応容器内壁の温度を変化させながら固相重合することを特徴とする<1>~<3>のいずれかに記載のポリマーの製造方法。
<6> ポリマーの製造装置であって、
前記製造装置は、マイクロ波発生装置を備えた反応容器を有し、
前記製造装置は、反応容器内壁の温度を粉粒体原料の重合温度よりも低く保ちながら、粉粒体原料をマイクロ波で加熱し反応容器内壁の温度よりも高い温度で固相重合するものであることを特徴とするポリマーの製造装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によれば、反応容器内壁の温度を粉粒体原料の重合温度よりも低く保ちながら固相重合するため、粉粒体原料が反応容器内壁に接触しても重合反応が進行しにくく、このため粉粒体原料の反応容器内壁への付着を防止することができる。また、本発明の製造方法によれば、反応時間が短縮され、生産性が向上する。
【0014】
本発明の製造方法は、粉粒体原料をマイクロ波で加熱するため、撹拌熱を用いて、撹拌機の回転数を変化させながら温度を制御する手法とは異なり、反応途中における粉粒体物質の形状変化に伴う摩擦熱の変化によらず、温度制御を簡便に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明に係るポリマーの製造装置の一例の模式的構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に本発明に係るポリマーの製造方法の実施に有用なポリマーの製造装置の一例の模式的構造図を示す。本発明に係るポリマーの製造装置は、図1に示すように、マイクロ波発生装置1を備えた反応容器2を有している。このため、本発明に係るポリマーの製造方法および製造装置においては、反応容器2の内壁の温度を粉粒体原料10の重合温度よりも低く保ちながら、粉粒体原料10を、マイクロ波で加熱し反応容器2内壁の温度よりも高い温度で簡便に固相重合することができる。本発明において、固相重合とは、固相状態で重合反応が進行する重合方法のことであり、使用される原料だけでなく、生成するポリマーも固相状態のまま反応が進行する。固相重合は通常、熱に基づいて重合反応が進行する。
【0017】
マイクロ波発生装置1は、例えば、周波数300MHz~300GHz(特に900MHz~3GHz)のマイクロ波(電磁波)が発生する装置であれば特に限定されない。マイクロ波発生装置は、粉粒体の温度制御の観点から、出力を調節可能なものが好ましく使用される。例えば、約30kgの粉粒体(例えばポリアミド塩等の原料)を処理する場合、マイクロ波発生装置の出力は、例えば、0.1~10kW(特に0.5~3kW)の範囲で可変であることが好ましい。
【0018】
反応容器2には通常、撹拌機21および温度調節装置22も備わっている。撹拌機21は撹拌翼を有し、反応容器2内において粉粒体10(複数の原料)およびその温度分布を均一化できる程度の撹拌を行うことができる限り特に限定されない。例えば、撹拌機21における撹拌翼の回転数は10~70rpm(特に50~70rpm)であってよく、このような回転数は撹拌または撹拌翼による熱(すなわち撹拌熱)が実質的に発生しない回転数である。反応容器1の具体例としては、例えば、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、サイクロミックス、レーディゲミキサーといった装置が挙げられる。
【0019】
温度調節装置22は、反応容器2の内壁温度を調節するための装置である。温度調節装置22は、反応容器2内壁の温度調節の観点から、反応容器2の外側に装着されるジャケット式が好ましい。ジャケット式温度調節装置の具体例として、例えば、図1に示すように、オイル、スチームなどの熱媒体22を入口221から流入させつつ、出口222から流出させる熱媒体型、および電熱線などの発熱体を発熱させる発熱体型が挙げられる。反応容器2の内壁温度は、熱媒体22(または発熱体)の温度を調節することにより、制御することができる。
【0020】
ポリマーの製造装置は、凝縮器3をさらに有していてもよい。凝縮器3は、反応容器2内に投入された水および原料の縮合反応により生成された水を、冷却により、気体状態から液体状態に変換し、回収する装置である。冷却媒体は特に限定されず、例えば、室温(25℃)以下の流体(例えば、水、空気、窒素)であってもよい。凝縮器3は回収タンク30を有し、水の回収量を測定・観察できることが好ましい。
【0021】
粉粒体原料10は、モノマー、塩、プレポリマーなどのポリマーの原料であり、反応温度(つまり重合温度)において、固体の状態の粉粒体である。一方、固相重合で得られるポリマーも、反応温度(つまり重合温度)において、固体の粉粒体である。粉粒体原料は、1種の成分であってもよいし、または複数成分の混合物であってもよい。本発明において、粉粒体原料10は、少なくとも1種の原料が反応温度(つまり重合温度)において固体の状態であればよいが、反応容器内壁への付着をより一層十分に防止する観点から、全ての粉粒体原料10が反応温度(つまり重合温度)において固体の状態であることが好ましい。粉粒体の大きさに制限はないが、好ましくは平均粒径5mm以下であり、例えば1~1000μm、特に10~300μmであってもよい。平均粒径が5mmを超えても本発明は利用できるが、平均粒径5mm以上の粉粒体は、そもそも反応容器1に付着しにくい。粉粒体原料はペレットであってもよい。
【0022】
粉粒体原料は、複数成分であってもかまわない。粉粒体原料は、さらに、必要に応じ、末端封鎖剤、触媒、その他の添加剤を含んでもよく、混合成分等で、一部が液状となってもかまわない。
【0023】
ポリマーは、固相重合で製造され得るポリマーである限り、特に限定されず、例えば、縮合反応に基づく固相重合反応により製造され得るポリマーが好ましい。そのような好ましいポリマーとして、例えば、ポリアミド、ポリエステル等が挙げられる。ポリマーは、反応容器内壁への付着をより一層十分に防止する観点から、ポリアミドが好ましい。
【0024】
ポリマーとしてポリアミドを製造する場合、粉粒体原料として、具体的には、ポリアミド塩(ポリアミド66塩、ポリアミド10T塩)、ポリアミドオリゴマー(ポリアミド10Tオリゴマー、ポリアミド9Tオリゴマー、ポリアミド6Tオリゴマー)、および各ポリアミドの原料モノマー混合物(例えばジカルボン酸とジアミンとの混合物)等の粉粒体が挙げられる。原料が反応温度で固体であることを考えると、原料モノマーとしては、アミノカプロン酸、各種ポリアミド塩(ポリアミド66塩、ポリアミド1010塩、ポリアミド6T塩、ポリアミド9T塩、ポリアミド10T塩、ポリアミド12T塩等)の粉粒体が好ましい。ポリアミド塩とは、当該ポリアミドを構成するモノマー混合物としての塩のことであり、例えば、ジカルボン酸とジアミンとの塩が挙げられる。ポリアミドオリゴマーや低重合度体を粉粒体原料とすることも好ましい。この場合は、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10T、ポリアミド12T等を、粉粒体もしくはペレットの形態で用いる。
【0025】
ポリアミドの中でも、通常、固相重合で生産される、半芳香族ポリアミドに、本発明を好ましく適用することができる。ジカルボン酸とジアミンとからなるポリアミドで、ジカルボン酸の50~100モル%がテレフタル酸である半芳香族ポリアミドは、耐熱性や機械物性に優れた製品の原料となるため、さらに好ましい。
【0026】
ポリマーとしてポリエステルを製造する場合、粉粒体原料として、具体的には、ポリエステルの原料モノマー混合物(例えばテレフタル酸とエチレングリコールとの混合物)、オリゴマーおよび低重合度体等が挙げられる。ポリエステルの種類としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。
【0027】
本発明は、ポリアミド、ポリエステル、またはその他のポリマーいずれの場合においても、ホモポリマーでも、共重合体でも同様に適用可能である。
【0028】
本発明においては、反応容器2の内壁温度を粉粒体原料10の重合温度よりも低く保ちながら、粉粒体原料10をマイクロ波で加熱し反応容器2の内壁温度よりも高い温度で固相重合することが必要である。これにより、反応容器内壁への付着を十分に防止することができる。その際、粉粒体原料の温度と、撹拌機の負荷(撹拌動力値)との少なくともいずれかを検知しつつ、マイクロ波の出力および/または反応容器内壁の温度を変化させながら固相重合することが好ましい。粉粒体原料10を反応容器2の内壁温度以下の温度で固相重合すると、反応容器内壁への付着を十分に防止することができない。マイクロ波を照射しない場合、粉粒体原料10を反応容器2の内壁温度よりも高い温度で固相重合することができない。例えば、粉粒体原料の温度とともに、または粉粒体原料の温度の代わりに、撹拌機の負荷(撹拌動力値)を検知することにより、撹拌機の負荷(撹拌動力値)が所定の値を超えた場合、反応系の暴走による塊状物の形成が明らかとなる。この場合には、撹拌機の負荷が所定の値を超える前に、マイクロ波の出力を下げ、あるいは停止することで、粉粒体温度を重合温度以下にし、すばやく反応を停止させる。粉粒体温度が反応容器2の内壁温度以下となったら、マイクロ波の出力をゆっくりと元の出力値、あるいは元の出力値よりも低い出力値に上げて、反応を再開させる。そうすることで、塊状物形成をおこすことなく、粉粒体状態のまま反応を進めることができる。
【0029】
粉粒体原料10の重合温度(Ta(℃))と反応容器2の内壁温度(Tb(℃))との差(Ta-Tb)は、反応容器内壁への付着が防止される限り特に限定されず、例えば、1℃以上(特に1~100℃)であってもよい。当該差(Ta-Tb)は、反応容器内壁への付着をより一層十分に防止する観点から、好ましくは5℃以上(特に5~70℃)であり、より好ましくは8℃以上(特に8~40℃)であり、特に好ましくは10℃以上(特に10~30℃)であり、十分に好ましくは15℃以上(特に15~30℃)である。
【0030】
粉粒体原料10の重合温度(Ta)は、生成するポリマーの融点(Mp(℃))より低い温度であり、例えば、Mp-160~Mp-30(℃)であってもよく、反応容器内壁への付着をより一層十分に防止する観点から、より好ましくはMp-130~Mp-30(℃)、さらに好ましくはMp-100~Mp-35(℃)、特に好ましくはMp-80~Mp-40(℃)、十分に好ましくはMp-80~Mp-50(℃)、より十分に好ましくはMp-75~Mp-60(℃)である。具体的には、ポリマーがポリアミド(特にポリアミド10T)である場合、粉粒体原料10の重合温度(Ta)は150~280℃であってもよい。
【0031】
生成するポリマーの融点(Mp(℃))は、目的とするポリマーの融点のことであり、詳しくは目的とするポリマーを構成するモノマーを用いて十分に重合を行うことにより得られるポリマーの融点である。従って、本発明のポリマーの製造方法を実施するに際しては、まず、使用される原料としてのモノマー(モノマー塩またはプレポリマーであってもよい)のみを用いて十分に重合を行い、目的とするポリマーを得る。次いで、目的とするポリマーの融点を測定し、当該融点に基づいて、本発明における固相重合のための粉粒体原料10の重合温度および反応容器2の内壁温度を決定または設定すればよい。目的とするポリマーを得るための重合方法は、十分な重合がなされる限り特に限定されず、例えば、溶融重合法が使用されてもよい。溶融重合法とは、溶媒を用いることなく、加熱により重合を十分に行い、溶融状態でポリアミド樹脂を得る方法である。溶融重合法では、例えば、マイクロ波発生装置を有さない上記のジャケット式温度調節装置と同様の装置が使用されてもよい。溶融重合法における重合温度は、例えば、ポリアミド10Tの場合、230~250℃(特に250℃)であり、また例えば、ポリアミド6の場合、230~250℃(特に240℃)であり、また例えば、ポリアミド66の場合、250~290℃(特に280℃)であり、また例えば、ポリアミド12の場合、220~240℃(特に230℃)、また例えば、PETの場合、高真空下で270~290℃(特に280℃)である。当該溶融重合法における重合時間は、重合が十分に行われる時間であればよく、例えば、合計30kgの原料を用いる場合において、通常、0.5~2時間であってもよく、特に1時間である。
【0032】
粉粒体原料10の重合温度(Ta)は、反応容器2内における粉粒体原料10の温度のことであり、生産性や品質を考慮して、ポリマーの融点以下で、ポリマーに適した重合温度とすることが好ましい。粉粒体原料の温度は、マイクロ波出力値を変更することにより制御することができる。具体的に、マイクロ波の出力を上げると、反応容器内壁の温度を変化させることなく、粉粒体原料の温度を上昇させることができる。他方、マイクロ波の出力を下げると、反応容器内壁の温度を変化させることなく、粉粒体原料の温度を下降させることができる。粉粒体原料10の温度(特に重合温度)は、反応容器2の中間位置付近を接触型温度計T1で測定された温度であってもよい。
【0033】
反応容器2の内壁温度(Tb)は、重合がほとんど進行しない温度域(例えば、粉粒体原料10の重合温度(Ta)よりも低い温度)に設定することが好ましく、より好ましくは上記した差(Ta-Tb)が確保される温度であってもよい。反応容器内壁の温度は、重合できる程度で低くする方が、反応容器内壁への付着量が減少するので好ましい。ただし、反応容器内壁の温度が低すぎると、高い場合に比べて、粉粒体原料を重合するためにマイクロ波の出力値は大きくする必要がある。反応容器2の内壁温度は、温度調節装置の熱媒体または発熱体の温度を調節することにより、制御することができる。例えば、ジャケット式熱媒体型温度調節装置22においては、ジャケットの入口221に配置された接触型温度計T2で測定された熱媒体(例えば、オイル)の温度を反応容器2の内壁温度(Tb)として用いてもよい。
【0034】
粉粒体原料10の重合温度(Ta)および反応容器2の内壁温度(Tb)はそれぞれ独立に制御されてもよいし、両方同時に制御されてもよい。
【0035】
重合の進行につれて物質の状態が変わっていくため、撹拌機の負荷を検知することが好ましい。特に反応の進行が速すぎると、撹拌や重力による粒子の移動に対して重合反応に伴う粒子間の固結が優先する状況下で、付着が成長し撹拌機の負荷が大きくなる。そのため、撹拌機の負荷が急激に増大した際は、マイクロ波の出力値および/または反応容器内壁の温度を下げて、反応速度を低下させるとよい。
【0036】
本発明においては、上記したように粉粒体原料10の重合温度が反応容器2の内壁温度よりも高い温度勾配(以下、「特定の温度勾配」ということがある)を確保しつつ固相重合するに際して、固相重合反応が進行する全ての時間にわたって、当該温度勾配を継続して確保しなければならないというわけではない。固相重合を行うとき、特定の温度勾配をたとえ10分間だけ確保しても、確保しない場合と比較して、反応容器内壁への付着をより防止することができるためである。反応容器内壁への付着をより一層十分に防止する観点から、特定の温度勾配で固相重合を行う時間は、長いほど好ましく、より好ましくは0.5時間以上、さらに好ましくは1時間以上、特に好ましくは2時間以上、十分に好ましくは3時間以上、より十分に好ましくは4時間以上である。このとき、特定の温度勾配で固相重合を行う時間の上限値は特に限定されず、例えば、特定の温度勾配で固相重合を行う時間は8時間以下(特に6時間以下)であってもよい。特定の温度勾配で固相重合を行う時間は、実質的には、後述する固相重合工程の本重合段階および仕上重合段階において特定の温度勾配で固相重合を行う時間のことである。
【0037】
本発明においては、粉粒体温度が反応開始温度となるまでの準備工程、および固相重合が実質的に進行する固相重合工程を順に経由して、ポリアミドを製造する。この場合、固相重合工程における少なくとも一部の時間において、特定の温度勾配が確保されればよい。反応開始温度とは、重合反応が実質的に開始される温度のことであり、本発明においては、Mp-96(℃)を用いている。Mpは、上記した「生成するポリマーの融点」(すなわち「目的とするポリマーの融点」)Mp(℃)のことである。本明細書中、粉粒体温度が反応開始温度に到達した時間を反応開始時間と呼んでいる。
【0038】
固相重合工程は、マイクロ波による加熱を行う本重合段階を有し、当該本重合段階において、特定の温度勾配が確保される。本重合段階は通常、縮合水の排水がとまるまでの段階である。
【0039】
固相重合工程は、本重合段階に先立って、マイクロ波以外の加熱手段による加熱を行う初期重合段階を有していてもよいし、または有さなくてもよい。初期重合段階は、例えば、反応率が40~60%(特に45~55%)となるまで行われてもよい。反応率は、原料の全官能基数に対する、固相重合反応に供された官能基数の割合のことであり、末端反応率であってもよい。固相重合工程は、反応容器内壁への付着をより一層十分に防止する観点から、初期重合段階を有さないことが好ましい。
【0040】
固相重合工程において、本重合段階を実施した後は、固相重合反応をさらに進める仕上重合段階を実施してもよい。仕上重合段階は、本重合段階で縮合水の排水がとまった後に実施される段階である。仕上重合段階では、本重合段階での特定の温度勾配が確保されてもよいし、または確保されなくてもよい。
【0041】
仕上重合段階では、必要に応じて、本重合段階によるマイクロ波加熱での固相重合に引き続いて、一般的な伝熱による加熱でさらに重合を進めることも可能である。反応容器への付着が発生するのは重合反応の前半だけであり、その後半(特に仕上重合段階)において上記のように伝熱による加熱を行っても、付着は発生しない。従って、仕上重合段階では、上記した特定の温度勾配は確保されなくてもよい。
【0042】
本発明によれば、反応容器内壁からの伝熱のみで重合する場合に比べると、反応時間が短縮され、生産性が向上する。生産性向上の効果は、反応容器が大きくなるほど顕著となる。
本発明によれば、反応容器内壁からの伝熱および撹拌に基づく撹拌熱のみで重合する場合に比べると、生産性が向上する。生産性向上の効果は、反応容器が大きくなるほど、やはり顕著となる。
【0043】
ポリアミドのための縮合重合の系に本発明を適用すると、反応の進行に伴って粉粒体内部から水が発生する。重合時の雰囲気温度は100℃以上なので、水は水蒸気として系外に排出される。水は水蒸気となる前に、粉粒体内部に捕捉された状態を経ると考えられる。反応の進行にともなって粉粒体内部の水が増加するため、粉粒体のマイクロ波損失係数が増大する。すなわち粉粒体がマイクロ波を吸収しやすくなる。このため、マイクロ波の出力値が同じであっても、反応の進行にともなって発熱量が増大する。発熱量が増大すると重合反応がさらに加速し、反応が加速度的となり、反応系が暴走して制御困難となる場合がある。このような縮合水の過大な増大にともなう反応系の暴走を防止するには、粉粒体原料の温度と、撹拌機の負荷と、系外への排出水量との少なくともいずれかを検知しつつ、マイクロ波出力を変化させながら固相重合すればよい。
【0044】
具体的には、例えば、粉粒体原料の温度が急に上昇したり、かつ/またはマイクロ波の局所的な加熱したりして、撹拌や重力による粒子の移動に対して重合反応に伴う粒子間の固結が優先されることによる塊状物質が発生したりして、結果として撹拌機の負荷が急に上昇する場合、マイクロ波出力を低減して、反応に必要なエネルギー供給を低減することで、反応系の暴走を防止することができる。
【0045】
本発明の製造方法で得られたポリマーは、他の公知の方法で得たポリマーと全く同様に、溶融加工等の方法にて利用可能である。例えば、射出成形用途で利用することができる。その際には、必要に応じてフィラーや安定剤等の添加剤を加えることが好ましい。添加の方法は、ポリマー(特にポリアミド)の重合時に添加する方法、または得られたポリマー(特にポリアミド)に溶融混練する方法が挙げられる。添加剤としては、ガラス繊維や炭素繊維のような繊維状補強材や、タルク、膨潤性粘土鉱物、シリカ、アルミナ、ガラスビーズ、グラファイトのような充填材や、酸化チタン、カーボンブラックのような顔料等が挙げられる。そのほか、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤等の添加剤が挙げられる。また、射出成形のほかに、上記ポリマーを繊維やフィルムの原料とすることも可能である。
【0046】
射出成形品の用途として、自動車のトランスミッション周り、エンジン周り、ランプ周りで使用する自動車部品、事務機器等のための電気・電子部品が挙げられる。具体的には、自動車のトランスミッション周りとしては、シフトレバーやギアボックス等の台座に用いるベースプレート、エンジン周りとしては、シリンダーヘッドカバー、エンジンマウント、エアインテークマニホールド、スロットルボディ、エアインテークパイプ、ラジエータタンク、ラジエータサポート、ラジエータホース、ウォーターポンプインレット、ウォーターポンプアウトレット、サーモスタットハウジング、クーリングファン、ファンシュラウド、オイルパン、オイルフィルターハウジング、オイルフィルターキャップ、オイルレベルゲージ、タイミングベルトカバー、エンジンカバー等、ランプ周りとしては、ランプリフレクタ、ランプハウジング、ランプエクステンション、ランプソケット等が挙げられる。電気・電子部品としては、コネクタ、LEDリフレクタ、スイッチ、センサー、ソケット、コンデンサー、ジャック、ヒューズホルダー、リレー、コイルボビン、抵抗器、ICやLEDのハウジング等が挙げられる。フィルムとして、スピーカー振動板、フィルムコンデンサ、絶縁フィルム等が挙げられる。繊維として、エアーバッグ基布、耐熱フィルター等が挙げられる。
【実施例0047】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、ポリアミドの物性測定は以下の方法により行った。
【0048】
(1)末端反応率
ポリアミド樹脂を、高分解能核磁気共鳴装置(日本電子社製、「ECA500 NMR」)を用いてH-NMR分析し、未反応のカルボン酸末端とアミン末端のモル比を求め、カルボン酸末端基とアミン末端基の合計のうち、反応してアミド結合になった末端基の割合を計算した。分析条件は、以下の通りとした。
分解能:500MHz
溶媒:重水素化トリフルオロ酢酸
温度:30℃
【0049】
(2)缶壁付着量
重合終了後、リボンブレンダー型容器からポリアミドを払い出した後、缶壁に付着していたポリアミドを削り取り、缶壁付着量を求めた。
【0050】
(3)融点
ポリアミド樹脂10mgを、示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製、「DSC-7」)を用いて、常温から350℃まで20℃/分で昇温し、5分間保持した。その後、500℃/分で25℃まで降温し、25℃にて5分間保持した後、400℃まで20℃/分で昇温した。2回目の昇温時に得られた曲線の融解に由来するピークの頂点を、融点温度とした。
【0051】
参考例1(ポリアミド10T塩粉体の製造)
平均粒径80μmのテレフタル酸粉末183.68kgと、重合触媒としての次亜リン酸ナトリウム一水和物0.76kgとを、リボンブレンダー式の反応装置(容量600L)に供給し、窒素密閉下、回転数35rpmで撹拌しながら170℃に加熱した。その後、170℃を保ちながら、液注装置を用いて、110℃に加温したデカンジアミン198.89kgを、1.3kg/分の速度で、約2.5時間かけて連続的にテレフタル酸粉末に添加した。この間、反応物は粉体状態を保っていた。その後、末端封鎖剤としてのステアリン酸16.67kgを加えて、ポリアミド塩を得た。平均粒径は100μmであった。
【0052】
実施例1(準備工程+固相重合工程(初期重合段階、本重合段階および仕上重合段階))
本実施例において、図1に示すポリマーの製造装置を用いてポリアミドを製造した。詳しくは、以下の通りである。
・準備工程:
2.45GHzのマイクロ波発生装置1と凝縮器3を備えた容量50Lのリボンブレンダー型容器(反応容器2)に、窒素気流下、原料としての参考例1のポリアミド塩を30kgと水600g投入し、撹拌機21により回転数60rpmで撹拌しながら、反応容器を250℃に加熱した。詳しくは、その加熱過程において、反応容器温度が100℃を超えた時点から投入した水が凝縮器3より排出され、反応容器温度が250℃にするまでには、投入したすべての水の排出を回収タンク30の回収量により確認した。反応容器の温度が250℃に到達したとき、粉粒体温度は220℃であり、この時点を反応開始時間とした。反応に際して、粉粒体温度と、撹拌動力値と、系外への排出縮合水量とを観察した。粉粒体温度は、粉粒体原料10の温度(Ta)のことであり、リボンブレンダー型容器の中間位置付近を接触型温度計T1で測定された温度である。粉粒体温度は、反応容器2の直径をr(mm)としたとき、反応容器2の内壁からの距離x1(図1参照)が0.15×rであって、粉粒体表面からの深さy1(図1参照)が30mmのところでの粉粒体10の温度である。粉粒体表面とは、撹拌時における反応容器2内の粉粒体表面のことである。反応容器温度は反応容器2の内壁の温度(Tb)のことであり、反応容器2が有するジャケット式熱媒体型温度調節装置22において、入口221から流入される熱媒体(オイル)の温度により制御した。熱媒体(オイル)の温度は、ジャケット式温度調節装置22の入口221に配置された接触型温度計T2で測定した。
【0053】
・固相重合工程:
反応開始後、2時間にわたって、回転数60rpmで撹拌しながら、反応容器温度250℃を維持したところ、粉粒体温度は235℃となった(初期重合段階)。
反応開始2時間後、縮合水の排出量から反応率が50%に達したことを確認し、その後、反応容器温度を250℃に保ちながら、マイクロ波発生装置1により、1kWの出力でマイクロ波を照射した(本重合段階)。マイクロ波照射直前の粉粒体温度は235℃であった。詳しくは、マイクロ波照射直後から、粉粒体温度が上昇し、反応容器温度を超え、反応開始3時間後(すなわちマイクロ波照射開始1時間後)に、粉粒体温度は260℃に達し、その後、0.5時間にわたって、反応容器温度250℃および粉粒体温度260℃を維持した。
反応開始3.5時間後(すなわちマイクロ波照射開始1.5時間後)に、縮合水の排出が止まったことを確認し、その後、反応容器温度を250℃に保ち、マイクロ波出力値を0.9~1.2kWで調整し粉粒体温度を260℃に保ちながら、反応開始6時間後までマイクロ波を照射し続け、ポリアミドを得た(仕上重合段階)。マイクロ波の照射時間は合計4時間であった。
固相重合工程においては、回転数60rpmでの粉粒体の撹拌を継続した。粉粒体原料10の重合温度が反応容器2の内壁温度よりも高い温度勾配で固相重合を行った時間は3時間以上であった。
本実施例で得られたポリアミドの融点は316℃であり、ゲル等はなく均一に溶融でき、成形加工などの溶融加工に適したものであった。
【0054】
実施例2(準備工程+固相重合工程(本重合段階および仕上重合段階))
本実施例においても、図1に示すポリマーの製造装置を用いてポリアミドを製造した。詳しくは、以下の通りである。
・準備工程:
実施例1と同一のリボンブレンダー型容器(反応容器2)に、窒素気流下、原料としての参考例1のポリアミド塩を30kgと水600g投入し、撹拌機21により回転数60rpmで撹拌しながら、反応容器を220℃に加熱し、かつ2.0~2.7kWのマイクロ波を照射した。詳しくは、その加熱過程において、反応容器温度が100℃を超えた時点から投入した水が凝縮器3より排出され、反応容器温度が220℃に到達するまでに、投入したすべての水の排出を回収タンク30の回収量により確認した。さらにマイクロ波による加熱を進め、粉粒体温度が220℃に到達した時間を反応開始時間とした。この時の反応容器温度は220℃であった。反応に際して、粉粒体温度と、撹拌動力値と、系外への排出縮合水量とを観察した。反応容器温度および粉粒体温度はそれぞれ、実施例1における反応容器温度および粉粒体温度と同様である。
【0055】
・固相重合工程:
反応開始後も、回転数60rpmでの撹拌、反応容器の220℃への加熱およびマイクロ波の照射を継続することにより、粉粒体温度は上がり続け、反応容器の温度を超えた(本重合段階)。詳しくは、反応開始3.5時間後に、粉粒体温度は245℃に達した。
反応開始3.5時間後に、縮合水の排出が止まったことを確認し、その後、反応容器温度を220℃に保ち、マイクロ波出力値を2.5~2.7kWで調整し粉粒体温度を245℃に保ちながら、反応開始6時間後までマイクロ波を照射し続け、ポリアミドを得た(仕上重合段階)。反応開始時間以降のマイクロ波の照射時間は合計6時間であった。
固相重合工程においては、回転数60rpmでの粉粒体の撹拌を継続した。粉粒体原料10の重合温度が反応容器2の内壁温度よりも高い温度勾配で固相重合を行った時間は6時間であった。
本実施例で得られたポリアミドの融点は316℃であり、ゲル等はなく均一に溶融でき、成形加工などの溶融加工に適したものであった。
【0056】
比較例1(マイクロ波の照射なし)
マイクロ波の照射を行わなかったこと以外、実施例1と同様の方法により、ポリアミドを製造した。詳しくは、以下の通りである。
・準備工程:
実施例1と同一のリボンブレンダー型容器に、窒素気流下、原料としての参考例1のポリアミド塩を30kgと水600g投入し、回転数60rpmで撹拌しながら反応容器を250℃に加熱した。詳しくは、その加熱過程において、反応容器温度が100℃を超えた時点から投入した水が排出され、反応容器温度が250℃に到達するまでには、投入したすべての水の排出を確認した。反応容器の温度が250℃に到達したとき、粉粒体温度は220℃であり、この時点を反応開始時間とした。反応に際して、粉粒体温度と、撹拌動力値と、系外へ排出縮合水量とを観察した。
【0057】
・固相重合工程:
反応開始後も、回転数60rpmでの撹拌、および反応容器の250℃への加熱を継続した(本重合段階)。詳しくは、反応開始時間から4時間後までにおいて、粉粒体温度は235~240℃であった。
反応開始4時間後に、縮合水の排出が止まったことを確認し、その後、反応開始6時間後まで反応容器温度を250℃に保ちながら固相重合し、ポリアミドを得た(仕上重合段階)。反応開始4時間後から6時間後までにおいて、粉粒体温度は235~240℃であった。
固相重合工程においては、回転数60rpmでの粉粒体の撹拌を継続した。粉粒体原料10の重合温度が反応容器2の内壁温度よりも高い温度勾配で固相重合を行った時間は0時間であった。
本比較例で得られたポリアミドの融点は316℃であった。
重合終了後の反応容器内壁を観察すると、付着したポリマーで内壁が覆われていた。
【0058】
評価
実施例1、2および比較例1において、反応開始後から1時間ごとの末端反応率と、重合終了後の缶壁付着量を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
実施例1、2は、反応容器内壁の温度を粉粒体原料の重合温度よりも低く保ちながら、粉粒体原料をマイクロ波で加熱し反応容器内壁の温度よりも高い温度で固相重合したため、比較例1に対して、粉粒体原料の反応容器内壁への付着が少なかった。特に、実施例2は、実施例1よりも反応容器内壁の温度がより低かったため、粉粒体原料の反応容器内壁への付着量がより少なかった、
また、実施例1、2と比較例1の末端反応率を対比すると、反応開始後2時間後の末端反応率は、それぞれ58%、58%、52%と若干比較例1が低い程度であったが、反応開始後3時間後の末端反応率は、マイクロ波を用いない従来法の比較例1では80%であったのに対して、マイクロ波を用いた実施例1、2では98%、97%と、マイクロ波を用いることにより反応速度が速くなっていた。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の製造方法および製造装置は、あらゆる種類のポリマー(特に縮合反応に基づいて重合され得るポリマー)の製造に有用である。
図1