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特開2025-37863リアルタイムのフォトプレチスモグラフィデータにより推定血糖値を生成するシステム、方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025037863
(43)【公開日】2025-03-18
(54)【発明の名称】リアルタイムのフォトプレチスモグラフィデータにより推定血糖値を生成するシステム、方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1455 20060101AFI20250311BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
A61B5/1455
A61B5/11 200
【審査請求】有
【請求項の数】45
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024189835
(22)【出願日】2024-10-29
(62)【分割の表示】P 2023540079の分割
【原出願日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】63/132,233
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514169529
【氏名又は名称】ヴァレンセル,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Valencell, Inc.
【住所又は居所原語表記】Landmark Center 4601 Six Forks Road Suite 103 Raleigh, NC 27609, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(72)【発明者】
【氏名】ロカレ,ナミタ
(72)【発明者】
【氏名】タンク,トゥーシャー・ディリップ
(72)【発明者】
【氏名】ルブーフ,スティーヴン・フランシス
(72)【発明者】
【氏名】リッチェソン,キース
(57)【要約】      (修正有)
【課題】被検者の推定血糖値を生成する。
【解決手段】被検者に取り付けられた血糖値モニタリングデバイスによりリアルタイム測定血糖値を受け付けることと、リアルタイムの測定血糖値の受付けに応じて、モデルの血糖値推定精度を改善するようにモデルの1つ以上のパラメータをリアルタイムで更新する。この方法は、生成された推定血糖値が閾値を上回っているのか又は下回っているのかを検出することと、生成された推定血糖値が閾値を上回っているのか又は下回っているのかの判断に応じて、リアルタイムの測定血糖値を受け付けることと、その後、モデルの血糖値推定精度を改善するようにモデルのパラメータを更新することとを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の推定血糖値を生成する方法であって、少なくとも1つのプロセッサによって実
行されるステップとして、
前記被検者に装着されたPPGセンサからリアルタイムPPGデータを受け付けるステ
ップと、
前記リアルタイムPPGデータを用いて適応型予測モデルにより前記被検者の推定血糖
値を生成するステップと
を含む方法。
【請求項2】
血糖値モニタリングデバイスによる測定血糖値を受け付けるステップと、
前記測定血糖値が受け付けられると、前記適応型予測モデルの血糖値推定精度が向上す
るよう前記適応型予測モデルの1つ以上のパラメータをリアルタイムで更新するステップ

を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記測定血糖値がリアルタイム測定値であり、前記血糖値モニタリングデバイスが前記
被検者に装着されるものである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記被検者に装着されたモーションセンサから前記被検者の活動情報を受け付けるステ
ップと、
前記被検者の活動情報に応じて、血糖値モニタリングデバイスから測定血糖値を受け付
けるステップと、
前記測定血糖値が受け付けられると、前記適応型予測モデルの血糖値推定精度が向上す
るよう前記適応型予測モデルの1つ以上のパラメータをリアルタイムで更新するステップ

を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
生成された前記推定血糖値が閾値を上回っているか又は下回っているかを検出するステ
ップと、
生成された前記推定血糖値が前記閾値を上回っている又は下回っているとの判定がなさ
れると、血糖値モニタリングデバイスによる測定血糖値を受け付けるステップと、
前記適応型予測モデルの血糖値推定精度が向上するよう前記適応型予測モデルの1つ以
上のパラメータをリアルタイムで更新するステップと
を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
生成された前記推定血糖値が閾値を上回っている又は下回っているとのアラートをリモ
ートデバイスに送るステップを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記被検者に装着されるウェアラブルデバイスに
設けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ウェアラブルデバイスが、前記被検者の耳に、前記被検者の手足に、前記被検者に
付けられるパッチとして、又は前記被検者の指に装着される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ウェアラブルデバイスが前記PPGセンサを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記被検者に装着されるウェアラブルデバイスに
設けられ、前記ウェアラブルデバイスが、前記PPGセンサ及び前記血糖値モニタリング
デバイスを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記PPGセンサが撮像センサを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記適応型予測モデルが、回帰モデルと機械学習モデルと分類器モデルとのうちの1つ
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記推定血糖値の生成が現在の推定血糖値の生成を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記推定血糖値の生成が将来の推定血糖値の生成を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記現在の推定血糖値及び過去の推定血糖値を処理して将来の推定血糖値を予測するス
テップを更に含む請求項13に記載の方法。
【請求項16】
ウェアラブルデバイスであって、
PPGセンサと、
前記ウェアラブルデバイスを装着した被検者の推定血糖値を、前記PPGセンサからの
リアルタイムPPGデータを用いて適応型予測モデルにより生成する少なくとも1つのプ
ロセッサと
を備えるウェアラブルデバイス。
【請求項17】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
血糖値モニタリングデバイスから測定血糖値を受け付けるステップと、
前記測定血糖値が受け付けられると、前記適応型予測モデルの血糖値推定精度が向上す
るよう前記適応型予測モデルの1つ以上のパラメータをリアルタイムで更新するステップ

を更に行う、請求項16に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項18】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
血糖値モニタリングデバイスから測定血糖値を受け付けるステップと、
生成された前記推定血糖値が閾値を上回っている又は下回っているとの判定がなされる
と、前記適応型予測モデルの血糖値推定精度が向上するよう前記適応型予測モデルの1つ
以上のパラメータをリアルタイムで更新するステップと
を更に行う、請求項16に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項19】
前記少なくとも1つのプロセッサは、生成された前記推定血糖値が閾値を上回っている
又は下回っているとのアラートをリモートデバイスに送るステップを更に行う、請求項1
6に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項20】
前記ウェアラブルデバイスは、前記被検者の耳に、前記被検者の手足に、前記被検者に
取り付けられるパッチとして、又は前記被検者の指に装着される、請求項16に記載のウ
ェアラブルデバイス。
【請求項21】
前記PPGセンサが撮像センサを有する、請求項16に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項22】
前記適応型予測モデルが、回帰モデルと機械学習モデルと分類器モデルとのうちの1つ
を有する、請求項16に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項23】
適応型予測モデルの血糖値推定精度を向上させる方法であって、少なくとも1つのプロ
セッサによって実行されるステップとして、
a)被検者に装着されたPPGセンサからのリアルタイムPPGデータと、血糖値モニ
タリングデバイスからの測定血糖値とを受付期間内に受け付けるステップと、
b)受け付けられた前記PPGデータから特徴量を生成するステップと、
c)前記特徴量及び前記測定血糖値を記憶するステップと、
d)前記記憶された特徴量を前記記憶された測定血糖値とともに処理することにより前
記適応型予測モデルの1つ以上のパラメータをリアルタイムで更新するステップであって
、更新された前記1つ以上のパラメータが前記適応型予測モデルの血糖値推定精度を向上
させる、ステップと
を含む方法。
【請求項24】
後続の1つ以上の期間にわたりステップa)~d)を繰り返すステップを更に含む、請
求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記適応型予測モデルにより前記被検者の推定血糖値を生成するステップと、
生成された前記推定血糖値が閾値を上回っている又は下回っているかどうかを判定する
ステップと、
生成された前記推定血糖値が前記閾値を上回っている又は下回っているとの判定がなさ
れると、前記血糖値モニタリングデバイスによる別の測定血糖値を受け付けるステップと

前記適応型予測モデルの前記1つ以上のパラメータをリアルタイムで更新するステップ

を更に含む請求項23に記載の方法。
【請求項26】
受け付けられた前記PPGデータから特徴量を生成するステップは、スライディング時
間ウィンドウにより前記受付期間内に或る特徴量生成間隔にて特徴量を生成するステップ
を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記適応型予測モデルの前記1つ以上のパラメータを更新するステップは更に、
前記記憶された測定血糖値及び以前に記憶された測定血糖値を処理するステップと、
前記記憶された測定血糖値と前記以前に記憶された測定血糖値との間の補間を生成する
ステップと
を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記記憶された測定血糖値及び前記以前に記憶された測定血糖値を処理するステップは
更に、以前に記憶された複数の測定血糖値を処理するステップを含む、請求項27に記載
の方法。
【請求項29】
前記記憶された測定血糖値及び前記以前に記憶された測定血糖値を処理するステップは
更に、予想される測定血糖値の補間を生成するステップを含む、請求項28に記載の方法
【請求項30】
前記PPGセンサが撮像センサを有する、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記適応型予測モデルは、回帰モデルと機械学習モデルと分類器モデルとのうちの1つ
を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
前記特徴量及び前記測定血糖値がデータバッファに記憶される、請求項23に記載の方
法。
【請求項33】
前記データバッファがFIFO(先入れ先出し)バッファを有する、請求項32に記載
の方法。
【請求項34】
前記記憶された特徴量を前記記憶された測定血糖値とともに処理することは、前記記憶
された特徴量のうちの少なくとも1つの関数を処理することを含む、請求項23に記載の
方法。
【請求項35】
前記記憶された特徴量を前記記憶された測定血糖値とともに処理することは、前記記憶
された少なくとも1つの特徴量の時系列についての統計情報を計算することを含む、請求
項23に記載の方法。
【請求項36】
前記記憶された特徴量を前記記憶された測定血糖値とともに処理することは、前記記憶
された少なくとも1つの特徴量の複数の時系列についての統計情報を計算することを含む
、請求項23に記載の方法。
【請求項37】
前記記憶された特徴量を前記記憶された測定血糖値とともに処理することは、前記記憶
された少なくとも1つの特徴量の複数の時系列についての加重統計情報を計算することを
含む、請求項23に記載の方法。
【請求項38】
適応型予測モデルの血糖値推定精度を向上させるためのシステムであって、前記システ
ムは少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
被検者に装着されたPPGセンサからのリアルタイムPPGデータと、血糖値モニタリ
ングデバイスからの測定血糖値とを受付期間内に受け付けるステップと、
受け付けられた前記PPGデータから特徴量を生成するステップと、
前記特徴量及び前記測定血糖値を記憶するステップと、
前記記憶された特徴量を前記記憶された測定血糖値とともに処理することにより前記適
応型予測モデルの1つ以上のパラメータをリアルタイムで更新するステップであって、前
記更新された1つ以上のパラメータが前記適応型予測モデルの血糖値推定精度を向上させ
る、ステップと
を行う、
システム。
【請求項39】
前記少なくとも1つのプロセッサは更に、
前記適応型予測モデルにより推定血糖値を生成するステップと、
生成された前記推定血糖値が閾値を上回っている又は下回っているかどうかを判定する
ステップと、
生成された前記推定血糖値が前記閾値を上回っている又は下回っているとの判定がなさ
れると、前記適応型予測モデルの前記1つ以上のパラメータをリアルタイムで更新するス
テップと
を行う、請求項38に記載のシステム。
【請求項40】
前記少なくとも1つのプロセッサは更に、生成された前記推定血糖値が前記閾値を上回
っている又は下回っているとのアラートをリモートデバイスに送るステップを行う、請求
項39に記載のシステム。
【請求項41】
前記適応型予測モデルは、回帰モデルと機械学習モデルと分類器モデルとのうちの1つ
を含む、請求項38に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概してウェアラブルデバイスに関し、より具体的には、医療、健康及びフィッ
トネスの用途の生理学的モニタリングのためのウェアラブルバイオメトリックセンサ技術
に関する。
【0002】
[関連出願]
本出願は、2020年12月30日出願の米国仮特許出願第63/132,233号の
利益及び当該米国仮特許出願から生じた優先権を主張するものである。当該米国仮特許出
願の開示内容は、引用によりその全体が記載されているかのように本明細書の一部をなす
ものとする。
【背景技術】
【0003】
糖尿病管理の「究極の理想(holy grail)」には、エンドユーザにとって痛みが全く無
くほぼ不可視の、真に非侵襲性で連続的な血糖モニタリングソリューションが含まれる。
斯かる商用のソリューションを提供しようと多くの試みがなされているが、誰も成功して
いない。
【0004】
持続血糖モニタリングのソリューションについては、今日、Dexcom G6 CG
Mシステム(カリフォルニア州サンディエゴ所在のDexcom, Inc.社)等が市場において市
販されている。これらの従来のモニタリングシステムは、極微針(マイクロニードル)又
は侵襲性が最小限の他のモダリティにより体液(間質液等)のサンプルを定期的に採取し
、センサ信号から血糖値を推定する。しかし、それらのシステムは本質的に、侵襲性が最
小限であるにとどまり、通常は、その下の皮膚に攪乱を引き起こす。その上、間質液のグ
ルコース濃度は通常、血液のグルコース濃度よりも数分遅れて変化し、これにより、エン
ドユーザに対する緊急のフィードバックが遅れる場合がある。同じく重要なこととして、
従来のグルコースモニタリングシステムのフォームファクタは通常はパッチのフォームフ
ァクタであり、これにより、エンドユーザの多くが使いにくいと感じる場合がある。
【0005】
John Smithの非特許文献1に報告されているように、多くの研究者が、インスリン又は
グルコースを投与できるように十分な正確さで血糖値を非侵襲的に測定する非侵襲的方法
に関して努力している。しかし、その結果は商業的利用には適していない。この問題に対
する新規の手法が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「The Pursuit of Noninvasive Glucose: Hunting the Deceitful Turkey」
【発明の概要】
【0007】
この概要は、以下の詳細な説明において更に説明される概念の中から選択したものを簡
略化した形式で説明するために設けられていることが理解されるべきである。この概要は
、本開示の重要な特徴又は不可欠な特徴を特定することを意図するものではなく、本発明
の範囲を限定することを意図するものでもない。
【0008】
本発明のいくつかの実施の形態によれば、被検者の推定血糖値を生成する方法は、少な
くとも1つのプロセッサによって実行されるステップとして、被検者に取り付けられたP
PGセンサからリアルタイムPPGデータを受け付けるステップと、リアルタイムPPG
データを用いて適応型予測モデルにより被検者の推定血糖値を生成するステップとを含む
。例示的な適応型予測モデルは、回帰モデル、機械学習モデル、及び分類器モデルを含む
が、これらに限定されるものではない。推定血糖値を生成することは、現在の推定血糖値
を生成することを含むことができる。推定血糖値を生成することは、将来の推定血糖値を
生成することを含むことができる。いくつかの実施の形態において、現在の推定血糖値及
び過去の推定血糖値を処理して、将来の推定血糖値を予測することができる。
【0009】
本方法は、血糖値モニタリングデバイスから測定血糖値を受け付けることと、測定血糖
値の受付けに応じて、適応型予測モデルの血糖値推定精度が向上するよう適応型予測モデ
ルの1つ以上のパラメータをリアルタイムで更新することとを更に含むことができる。い
くつかの実施の形態において、測定血糖値はリアルタイム測定値である。
【0010】
本方法は、被検者に取り付けられたモーションセンサから被検者の活動情報を受け付け
ることと、被検者の活動情報に応じて血糖値モニタリングデバイスからリアルタイム測定
血糖値を受け付けることと、リアルタイム測定血糖値の受付けに応じて、適応型予測モデ
ルの血糖値推定精度が向上するよう適応型予測モデルの1つ以上のパラメータをリアルタ
イムで更新することとを更に含むことができる。
【0011】
本方法は、生成された推定血糖値が閾値を上回っているか又は下回っているかを検出す
ることを更に含むことができる。本方法は、生成された推定血糖値が閾値を上回っている
か又は下回っているかの判定に応じて、血糖値モニタリングデバイスによる測定血糖値を
受け付けることと、適応型予測モデルの血糖値推定精度がこうじょうするよう適応型予測
モデルの1つ以上のパラメータをリアルタイムで更新することとを更に含む。
【0012】
いくつかの実施の形態において、本方法は、生成された推定血糖値が閾値を上回ってい
る又は下回っているとのアラートをリモートデバイスに送ることを更に含む。
【0013】
いくつかの実施の形態において、少なくとも1つのプロセッサは、被検者に装着される
ウェアラブルデバイスに設けられる。ウェアラブルデバイスは、被検者の耳に、被検者の
手足に、被検者に取り付けられるパッチとして、又は被検者の指に装着されるように構成
することができる。
【0014】
いくつかの実施の形態において、ウェアラブルデバイスはPPGセンサを有する。
【0015】
いくつかの実施の形態において、少なくとも1つのプロセッサは、被検者に装着される
ウェアラブルデバイスに設けられ、ウェアラブルデバイスはPPGセンサ及び血糖値モニ
タリングデバイスを有する。
【0016】
いくつかの実施の形態において、PPGセンサは撮像センサである。
【0017】
本発明の他の実施の形態によれば、ウェアラブルデバイスが、PPGセンサと、ウェア
ラブルデバイスを装着している被検者の推定血糖値を、PPGセンサからのリアルタイム
PPGデータを用いて適応型予測モデルにより生成する少なくとも1つのプロセッサとを
備える。ウェアラブルデバイスは、被検者の耳に、被検者の手足に、被検者に取り付けら
れたパッチとして、又は被検者の指に装着されるように構成することができる。例示的な
適応型予測モデルは、回帰モデル、機械学習モデル、及び分類器モデルを含むことができ
るが、これらに限定されるものではない。
【0018】
少なくとも1つのプロセッサは、血糖値モニタリングデバイスから測定血糖値を受け付
けることと、リアルタイム測定血糖値の受付けに応じて、適応型予測モデルの血糖値推定
精度が向上するよう適応型予測モデルの1つ以上のパラメータをリアルタイムで更新する
こととを行うように構成することができる。少なくとも1つのプロセッサは、血糖値モニ
タリングデバイスから測定血糖値を受け付けることと、生成された推定血糖値が閾値を上
回っているか又は下回っているかの判定に応じて、適応型予測モデルの血糖値推定精度が
向上するよう適応型予測モデルの1つ以上のパラメータをリアルタイムで更新することと
を行うように構成することができる。少なくとも1つのプロセッサは、生成された推定血
糖値が閾値を上回っている又は下回っているとのアラートをリモートデバイスに送るよう
に構成することができる。
【0019】
いくつかの実施の形態において、PPGセンサは撮像センサである。
【0020】
本発明の他の実施の形態によれば、適応型予測モデル(例えば、回帰モデル、機械学習
モデル、分類器モデル等)の血糖値推定精度を向上させる方法は、少なくとも1つのプロ
セッサによって実行されるステップとして、a)被検者に取り付けられたPPGセンサか
らのリアルタイムPPGデータと、血糖値モニタリングからの測定血糖値とを受付期間内
に受け付けるステップと、b)受け付けられたPPGデータから特徴量を生成するステッ
プと、c)特徴量及び測定血糖値を記憶するステップと、d)記憶された特徴量を記憶さ
れた測定血糖値とともに処理することによって適応型予測モデルの1つ以上のパラメータ
をリアルタイムで更新するステップとを含み、更新された1つ以上のパラメータは適応型
予測モデルの血糖値推定精度を向上させる。特徴量及び血糖値測定値は、FIFO(先入
れ先出し(first-in-first-out))バッファ等のデータバッファに記憶することができる
が、他のタイプのデータバッファを利用することもできる。ステップa)~d)は、後続
の1つ以上の期間にわたって繰り返され、モデルの推定精度を向上させることができる。
【0021】
本方法は、適応型予測モデルにより被検者の推定血糖値を生成すること、その後、生成
された推定血糖値が閾値を上回っているか又は下回っているかを判定することを含むこと
ができる。生成された推定血糖値が閾値を上回っている又は下回っているとの判定に応じ
て、血糖値モニタリングデバイスにより別の測定血糖値が受け付けられ、適応型予測モデ
ルの1つ以上のパラメータはリアルタイムで更新される。
【0022】
いくつかの実施の形態において、受け付けられたPPGデータから特徴量を生成するこ
とは、スライディング時間ウィンドウにより受付期間内に或る特徴量生成間隔にて特徴量
を生成することを含む。いくつかの実施の形態において、適応型予測モデルの1つ以上の
パラメータを更新することは、記憶された測定血糖値及び以前に記憶された測定血糖値を
処理することと、記憶された測定血糖値と以前に記憶された測定血糖値との間の補間を生
成することとを更に含む。記憶された測定血糖値及び以前に記憶された測定血糖値を処理
することは、複数の以前に記憶された測定血糖値を処理することを含むことができる。記
憶された測定血糖値及び以前に記憶された測定血糖値を処理することは、予想される測定
血糖値の補間を生成することを含むことができる。
【0023】
いくつかの実施の形態において、PPGセンサは撮像センサである。
【0024】
いくつかの実施の形態において、記憶された特徴量を記憶された測定血糖値とともに処
理することは、記憶された少なくとも1つの特徴量の関数を処理することを含む。
【0025】
いくつかの実施の形態において、記憶された特徴量を記憶された測定血糖値とともに処
理することは、記憶された少なくとも1つの特徴量の時系列についての統計情報を計算す
ることを含む。いくつかの実施の形態において、記憶された特徴量を記憶された測定血糖
値とともに処理することは、記憶された少なくとも1つの特徴量の複数の時系列について
の統計情報を計算することを含む。
【0026】
いくつかの実施の形態において、記憶された特徴量を記憶された測定血糖値とともに処
理することは、記憶された少なくとも1つの特徴量の複数の時系列についての加重(重み
付き)統計情報を計算することを含む。
【0027】
本発明の他の実施の形態によれば、適応型予測モデル(例えば、回帰モデル、機械学習
モデル、分類器モデル等)の血糖値推定精度を向上させるためのシステムは、被検者に取
り付けられたPPGセンサからのリアルタイムPPGデータと、血糖値モニタリングデバ
イスからの測定血糖値とを受付期間内に受け付けることと、受け付けられたPPGデータ
から特徴量を生成することと、特徴量及び測定血糖値を記憶することと、記憶された特徴
量を記憶された測定血糖値とともに処理することによって適応型予測モデルの1つ以上の
パラメータをリアルタイムで更新することとを行う少なくとも1つのプロセッサを備え、
更新された1つ以上のパラメータは適応型予測モデルの血糖値推定精度を向上させる。
【0028】
いくつかの実施の形態において、少なくとも1つのプロセッサは、適応型予測モデルに
より推定血糖値を生成することと、生成された推定血糖値が閾値を上回っているか又は下
回っているかを判定することと、生成された推定血糖値が閾値を上回っている又は下回っ
ているとの判定に応じて、適応型予測モデルの1つ以上のパラメータをリアルタイムで更
新することとを更に行う。少なくとも1つのプロセッサは、生成された推定血糖値が閾値
を上回っている又は下回っているとのアラートをリモートデバイスに送るように構成する
ことができる。
【0029】
1つの実施の形態に関して説明される本発明の態様を別の実施の形態に組み込むことが
、それに関連して特に説明しないが、可能である。すなわち、全ての実施の形態及び/又
は任意の実施の形態の特徴を任意の方法で、及び/又は任意の組み合わせで組み合わせる
ことができる。出願人は、出願当初の任意の請求項を、他の任意の請求項に従属させ及び
/又は他の任意の請求項の任意の特徴を組み込むように、当初はそのように特許請求され
ていない場合であっても補正できる権利を含め、出願当初の任意の請求項を変更する権利
又はそれに従って任意の新しい請求項を出願する権利を保有する。本発明のこれらの目的
及び/又は態様並びに他の目的及び/又は態様について、以下に詳細に説明する。
【0030】
本明細書の一部をなす添付図面は、本発明の様々な実施形態を示している。これらの図
面及び説明はともに、本発明の実施形態を十分に説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明のいくつかの実施形態によるバイオメトリック推定を生成する計算システムを示す図である。
図2】本発明のいくつかの実施形態によるバイオメトリック推定を生成する方法のフローチャートである。
図3】本発明のいくつかの実施形態によるバイオメトリック推定を生成する方法のフローチャートである。
図4】本発明のいくつかの実施形態によるバイオメトリック推定を生成する方法のフローチャートである。
図5】本発明の実施形態に従って利用することができる非限定の例示的なウェアラブルデバイスを示す図である。
図6】本発明のいくつかの実施形態による、PPGデータ及びバイオメトリックデータの受付けに利用できる時間スライディングウィンドウを示す図である。
図7】本発明のいくつかの実施形態による、適応型予測モデルの1つ以上のパラメータを更新する動作を示すブロック図である。
図8】本発明のいくつかの実施形態による適応型予測モデルを示す図である。
図9】本発明のいくつかの実施形態による、バイオメトリック推定を生成する計算システムを示す図である。
図10】本発明のいくつかの実施形態による、バイオメトリック推定を生成する方法のフローチャートである。
図11】本発明のいくつかの実施形態による、適応型予測モデルの1つ以上のパラメータを更新する動作を示すブロック図である。
図12】本発明のいくつかの実施形態による、血圧計カフ及びPPGセンサを装着している被検者から収集され、リアルタイムBP測定データ及びリアルタイムPPG-BP推定を収集したものを示すデータプロットである。
図13】ある期間にわたる被検者の推定された血圧及び実際の血圧のグラフ出力であり、強化による経時的な血圧推定の改善を示すグラフの出力である。
図14】実際のBP測定に関する精度の観点からの、ボリュームクランプBP推定を本発明の実施形態によるPPG-BP推定値と比較した表を示す図である。
図15】本発明の様々な実施形態に従って使用することができる例示的なプロセッサ及びメモリの詳細を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書において使用される用語「被検者」は通常、本発明の明細書の文脈において人
間を指す。ただし、本発明の文脈において、被検者は、人間ではない生物の場合もある。
【0033】
用語「バイオメトリック」は一般に、被検者の生理学的(すなわち生物学的)情報を処
理することによって生成される当該被検者のメトリックを指す。バイオメトリックの非限
定的な例は、心拍数(HR:heart rate)、心拍変動(HRV:heart rate variability
)、RR間隔、呼吸数、体重、身長、性別、生理学的状態、総合的な健康状態、病状、傷
害状態、血圧、動脈壁硬化度、心血管フィットネス、VO2max、ガス交換解析メトリ
ック、血液検体レベル、体液代謝産物レベル等を含むことができる。
【0034】
本明細書において使用される用語「バイオメトリック」及び「生理学的メトリック」は
交換可能である。
【0035】
用語「リアルタイム」は、人間個人に実質的にリアルタイムに見える期間を要するプロ
セスを説明するために本明細書において使用される。したがって、用語「リアルタイム」
は、「準リアルタイム」又は「擬似リアルタイム」を意味するものと交換可能に使用され
る。すなわち、「リアルタイム」プロセスは、「瞬時プロセス」を指すことができるが、
(特定の使用事例の状況において)十分短い処理時間内に出力を生成するので、瞬時プロ
セスと(実質上)同等に役立つプロセスを指すこともできる。例えば、実際には、被検者
の血圧メトリックを生成するのに数秒又は数分を要するプロセスは、この使用事例が、血
圧の僅かな変化が重要でなく、平均される場合がある被検者の座位姿勢状態を伴う場合が
あるので、血圧が1秒ごとに変化している場合があっても、本明細書において使用される
ようにリアルタイムプロセスとみなすことができる。
【0036】
本明細書において使用される用語「呼吸数」及び「呼吸率」は交換可能である。
【0037】
本明細書において使用される用語「心拍数」及び「脈拍数」は交換可能である。
【0038】
本明細書において使用される用語「システム」は、共通の機能によって統一することが
できる物理要素及び/又は計算要素の集合体を指す。
【0039】
本明細書において使用される用語「モーションセンサ」は、(例えば被検者の)モーシ
ョン情報を検知するセンサを指す。モーションセンサの非限定的な例は、単軸慣性センサ
又は多軸慣性センサ(加速度計、ジャイロスコープ、MEMSモーションセンサ等)、光
散乱センサ、閉鎖チャネルセンサ等を含むことができる。
【0040】
本明細書において使用される用語「フォトプレチスモグラフィ」(PPG:photopleth
ysmography、光電脈波法)は、PPGセンサにより収集されるPPG波形から生理学的情
報を生成する方法を指す。
【0041】
本明細書において使用される用語「PPG波形」は、生理学的物質を通る光子束の時間
的変調から得られる生理学的波形データを指す。
【0042】
本明細書において使用される用語「PPGセンサ」は、光子を検知し、PPG波形デー
タを生成するセンサを指す。通常のPPGセンサは、光スペクトル(すなわち、約10n
m~103μmの電磁波長範囲、又は約300GHz~3000THzの範囲の電磁周波
数)における光子を検知する光センサを含むことができる。光センサの非限定的な例は、
無機光検出器及び/又は有機光検出器(光導電体、フォトダイオード、フォトトランジス
タ、フォトトランスデューサ等)、逆バイアス発光ダイオード(LED:light-emitting
diode)又は他の逆バイアス光エミッタ、撮像センサ、光検出器アレイ等を含むことがで
きる。加えて、通常のPPGセンサは、生理的経路を通る光子束を生成する光子(フォト
ニック)エミッタも備えることができる。ただし、場合によっては、周囲の光子又は別の
光源(PPGセンサの一部でない)からの光子を、光子を生成するのに使用することがで
きる。通常のPPGセンサは、無機発光ダイオード及び/又は有機発光ダイオード(LE
D)、レーザダイオード(LD:laser diode)、マイクロプラズマ源等の光エミッタで
ある光子エミッタを備えることができる。PPGセンサは、被検者活動データの生成及び
/又はPPG波形データ内のモーションアーティファクトを減衰するためのノイズ基準の
提供を目的としたモーションセンサも備えることができる。
【0043】
本明細書において使用される用語「センサ」、「検知素子」、及び「センサモジュール
」は交換可能であり、被検者の身体からの情報(例えば、生理学的情報、身体モーション
等)及び/又は被検者の近傍の環境情報等の情報を検知するのに利用することができるセ
ンサ素子又はセンサ素子群を指す。センサ/検知素子/センサモジュールは、次のもの、
すなわち、検出器素子、エミッタ素子、処理素子、光学部品又はオプトメカニクス、セン
サメカニクス、機械的支持部、サポート回路機構等のうちの1つ以上を備えることができ
る。単一のセンサ素子及びセンサ素子の集合体のいずれも、センサ、検知素子、又はセン
サモジュールとみなすことができる。センサ/検知素子/センサモジュールは、情報を検
知することと、その情報を処理して1つ以上のメトリックを得ることとの双方を行うよう
に構成することができる。
【0044】
本明細書において使用される用語「プロセッサ」は、局在及び/又は分散させることが
できる信号処理回路若しくはコンピューティングシステム、又は計算方法を広く指す。例
えば、局在信号処理回路は、ウェアラブルバイオメトリックモニタリングデバイス等の概
略的な箇所に局在された1つ以上の信号処理回路又は処理方法を含むことができる。その
ようなデバイスの例は、イヤピース、ヘッドピース、フィンガクリップ、トゥクリップ、
手足バンド(アームバンド又はレッグバンド等)、アンクルバンド、リストバンド、指(
例えば、手指又は足指)バンド、ノーズバンド、センサパッチ、ジュエリ、パッチ、アパ
レル(衣類)等を含むことができるが、これらに限定されるものではない。分散処理回路
の例は、「クラウド」、インターネット、リモートデータベース、リモートプロセッサコ
ンピュータ、互いに通信する複数のリモート処理回路若しくはコンピュータ等、又はこれ
らの要素のうちの1つ以上の間に分散された処理方法を含む。分散処理回路と局在処理回
路との間の相違は、分散処理回路が非局在要素を含むことができるのに対して、局在処理
回路は分散処理システムから独立して動作することができるということである。マイクロ
プロセッサ、マイクロコントローラ、又はデジタル信号処理回路は、局在システム及び/
又は分散システムにおいて見ることができる信号処理回路の少数の非限定的な例を表す。
【0045】
本明細書において使用される用語「モバイルアプリケーション」、「モバイルアプリ」
及び「アプリ」は交換可能であり、モバイルフォン、デジタルコンピュータ、スマートフ
ォン、データベース、クラウドサーバ、プロセッサ、ウェアラブルデバイス等のコンピュ
ーティング装置上で動作することができるソフトウェアプログラムを指す。
【0046】
本明細書において使用される用語「健康」は、有機体の生理学的状態又は有機体の生理
学的要素若しくは生理学的プロセスに関係するものとして広く解釈される。例えば、心血
管健康は、心血管システムの総合的状態を指すことができ、心血管健康評価は、血圧、V
2max、心臓効率、心拍数回復、動脈閉塞、不整脈、心房細動等の推定値を指すこと
ができる。「フィットネス」評価は、フィットネス評価が、人の健康が人の活動時のパフ
ォーマンスにどのように影響するのかを指す場合には、健康評価のサブセットである。例
えば、VO2maxテストは、人の死亡率の健康評価又は人の運動中の酸素の利用能力の
フィットネス評価を提供するのに使用することができる。
【0047】
本明細書において使用される用語「血圧」は、拡張期血圧、収縮期血圧、平均動脈圧、
脈圧等の人の血流に関連した圧力の測定値又は推定値を指す。血圧は、血管及び血流が存
在する身体上の任意の箇所(すなわち、上腕部、胸部、鎖骨下動脈、大腿部、脛骨部、撓
骨動脈、頸動脈等)を基準とすることができる。用語「血圧」は、本明細書の全体を通し
て「BP」と略記する。
【0048】
本明細書において使用されるように、いずれのデバイス又はシステムも、別のデバイス
又はシステムとの間に物理的接続がない限り、別のデバイス又はシステムに対してリモー
トであるとみなされる。明瞭にしておきたい点として、用語「リモート」は、リモートデ
バイスが無線デバイスであること又はリモートデバイスがこのリモートデバイスと通信す
るデバイスから長い距離にわたり離れていることを必ずしも意味するものではない。例え
ば、いくつかの場合には、2つのデバイスは、それらのデバイス間に物理的接続がある場
合であっても互いにリモートデバイスとみなされる場合がある。この場合に、用語「リモ
ート」は、或るデバイス又はシステムが別のデバイス若しくはシステムと別個のものであ
るか又はコア機能について別のデバイス若しくはシステムに実質的に依存していないこと
を指すように意図されている。例えば、ウェアラブルデバイスに有線接続されたコンピュ
ータは、これらの2つのデバイスが別個のものであり、及び/又は、コア機能について互
いに実質的に依存していないので、リモートデバイスとみなすことができる。
【0049】
本明細書において使用される用語「サンプリング周波数」、「信号解析周波数」、及び
「信号サンプリングレート」は交換可能であり、連続的なセンサ又は検知素子から取得さ
れる毎秒(又は他の時間単位で)のサンプル数(例えば、鼓膜温度センサにおけるサーモ
パイル出力のサンプリングレート又はPPGセンサからのPPG信号のサンプリングレー
ト)を指す。
【0050】
本明細書には「アルゴリズム」及び「回路」への言及があることに留意すべきである。
アルゴリズムは、記憶することができる逐次的なステップ及びロジックを有する命令セッ
ト等の計算命令セットを指すのに対して、回路は、デジタル領域、アナログ領域、及び/
又は量子領域においてそのようなロジック動作を実施することができる物理的な構成要素
及び/又はトレース(又はパス)を指す。これらの回路は、通常、電気回路を含むことが
できるが、代替として、光子、電磁気、磁気、音響、量子等である要素を含むこともでき
る。
【0051】
これらの制限に対処するために、本発明による方法及び装置は、血圧推定値(及び/又
はEEG推定値、呼吸メトリック推定値、コア体温推定値、推定血糖値等を含むがこれら
に限定されない他のバイオメトリック推定値)をリアルタイム適応型予測モデルにより、
連続して生成することを提供する。これらの方法及び装置は、被検者の連続的なPPG測
定値を、被検者の少なくとも1つのBP(又は他のバイオメトリック)測定値と組み合わ
せて利用し、その被検者の予測モデルをリアルタイムで更新する。この予測モデルは、そ
の被検者のBP(又は他のバイオメトリック)の推定において(更新前のものよりも)正
確である。本発明の方法は、PPGデータ及びBP(又は他のバイオメトリック)データ
を受け付け、このデータを処理して推定精度を改善するように構成される計算システムに
おいて実施することができる。すなわち、モデルは、BP推定値がPPG特徴量の関数と
なるよう、PPG入力特徴量の所与の組に対するBP推定値を生成できるように構成する
ことができる。モデルのパラメータは、(例えば、カフベースのBPモニタの)繰り返し
生じるBP測定値がモデルの誤差を改善できるように処理されるにつれ時間とともに更新
することができる。PPGセンサは、ウェアラブルとすることができ、したがって、被検
者の皮膚の近傍にある装置又は構成要素内に統合することができる。あるいは、PPGセ
ンサは、本明細書において後述するように、撮像センサ(例えば、カメラ)、リモートス
キャンセンサ(例えば、レーダ、ドップラ等)等のスタンドオフセンサとすることもでき
る。
【0052】
いくつかの場合には、計算システムは、図5に示すように、耳装着デバイス(例えば、
ヒアラブル/補聴器)10として、手足装着(例えば、リスト、アーム、レッグ)デバイ
ス12として、パッチ14として、又はフィンガクリップ16として装着することができ
る。あるいは、指装着デバイス(例えば、手指又は足指)、衣服等の他のフォームファク
タが、計算システムを有してもよい。
【0053】
バイオメトリック推定の(バイオメトリック測定を上回る)重要な利点は、推定が連続
的で無痛であり得るのに対して、バイオメトリック測定は離散的であり、測定(自動化さ
れたカフベースのBPモニタを用いた血圧測定又はフィンガプリック(指に刺すこと)に
よる血液サンプルを用いた血糖値測定など)が煩わしい場合があるということである。し
たがって、バイオメトリック推定の測定の鋭敏さが実際のバイオメトリック測定よりも劣
る場合があったとしても、(実際の測定値の間の)「十分に良好な」推定値を提供する能
力は、鋭敏さが潜在的に低いという不利な側面に勝ることができる。
【0054】
これらのウェアラブルPPGデバイス12~16は、血圧計カフ18(図5におけるP
PGイヤピース12を装着している被検者の腕に示されるもの等)等の血圧モニタリング
デバイスと通信(例えば、電気通信、光通信、又は無線通信)することができる。あるい
は、血圧モニタリングデバイスは別のデバイスとすることもできる。多くの更なる例のう
ちの一つが、スタンドオフデバイス、そのような電磁波長ドップラベースの検出システム
又は撮像システム(すなわち、カメラ)である。当業者に知られている多くのもの(超音
波、動脈ライン等)があるため、他の血圧モニタリングデバイスを使用することもできる
。別の実施形態において、PPG測定値及びBP測定値は、PPG読み取り値及びBP読
み取り値の双方を測定する同じデバイスから受け付けられる。そのようなデバイスの1つ
の特定の例は、統合されたPPGセンサを有するカフベースBPモニタを含む。
【0055】
適応プロセスと呼ばれる本発明のいくつかの実施形態において、カフベースのBPモニ
タ18又は他のBPモニタリングデバイスによる複数のBP測定値と、PPG測定値とが
ともに、BP推定の精度を改善できるように処理される。時系列として収集された複数の
BP測定値及びPPG測定値を処理する計算システム(例えば、符号100、図1)によ
り、モデルが被検者向けに自律的に最適化され更新されると(図6)、血圧測定デバイス
18(例えば、カフベースのBPモニタ)はもはや必要でない場合があり、連続的なPP
Gに基づくBP推定を、更新されたモデルによりリアルタイムで生成することができるよ
うになる。そのような場合、この適応期間は、場合によっては1日、1週間、1ヶ月、又
は1年のうちの数時間(図12に示すような)それぞれ新たなBP測定値を用いて再較正
することができる長期較正として振る舞うことができる。原理的には、人のPPGデータ
とそれらのBPとの間の関係が変化せず、PPGデータが身体の同じ箇所から同じ方法で
収集され、BP推定精度が所望の使用事例に十分なままである限り、その人に関し無期限
に単一の較正で十分なものとすることができる。
【0056】
あるいは、BP測定値を定期的に受付け及び処理することもできる。これを強化プロセ
ス(augmentation process)と呼ぶ。これにより、更新されたBP測定値(自動化された
カフベースのBPモニタから得られたもの等)に基づいて適応型予測モデルを経時的に連
続して強化することができる。この強化において、本発明の実施形態による適応型予測モ
デルの更新は、都度新たなBP測定更新値を用いて1時間に数回、連続して繰り返すこと
ができる。
【0057】
適応又は強化のいずれのモデル更新のトリガ(図6)も、様々な方法を通じて提供する
ことができる。自律的なトリガパラダイムの例は、1)設定されたタイミングプロトコル
に基づくトリガと、2)モーション検知又は活動状態モニタリングに基づくトリガと、3
)身体からのデバイスの取り外し、再装着、又は移動に基づくトリガと、4)生理学的状
態の識別に基づくトリガと、5)エラーの検出に基づくトリガとを含むことができるが、
これらに限定されるものではない。これらのパラダイムに基づくウェアラブルのトリガ処
理の例は、米国特許第9,538,921号に既に提示されている。この米国特許は、そ
の全体を引用することによって本明細書の一部をなすものとする。これらの自律的なトリ
ガは、計算システム100の内部で生成することもできるし、(外部デバイス又は図1
示すような外部命令データ等により)外部で生成することもできる。自律的トリガの重要
な利点は、バイオメトリック推定精度を引き続き維持しながらバイオメトリック測定(カ
フベースのBP測定等)を最小にすることができる場合に、大幅な節電を実現することが
できることである。その上、カフベースのBP測定等のいくつかのバイオメトリック測定
はユーザに負担になる可能性があり、したがって、バイオメトリック推定の精度を維持し
ながら測定の頻度を減らすことは、非常に有益である可能性がある。実際に、本発明者は
、ウェアラブルコンピュータの計算能力がそのような自律的トリガを決定及び実行するの
にかなり十分なものであることを見出している。
【0058】
所定のタイミングに基づくトリガは、固定されたパラメータ又はユーザ調整可能なパラ
メータとして設定することができる。このパラダイムは、被検者が(例えば、病院のベッ
ドにおいて)静止している病院の使用事例及び同様に非モバイルの使用事例において特に
役立つことができる。
【0059】
モーションに基づくトリガは、モーションセンサ(例えば、加速度計、撮像システム、
又は他のモーション検知デバイス若しくは構成要素)により閾値を上回るか又は下回る活
動を検知することによって達成することができる。このタイプのトリガは、バイオメトリ
ックの携帯式モニタリングに特に役立つことができる。モーション状態が、過度の活動が
発生したこと又は過度の活動の頻度が増加したことを示す場合には、より高頻度でモデル
更新を行うように計算システム100をトリガすることができるとともに、より高頻度で
測定を行うようにバイオメトリック測定デバイスをトリガすることができる。これは、推
定精度の維持を保証するのに役立つことができる。その一方で、モーション状態が、被検
者が休息していること又は過度の活動の頻度が十分に低いことを示す場合には、モデル更
新の頻度を低くするように計算システム100をトリガすることができるとともに、測定
頻度を低くするようにバイオメトリック測定デバイスをトリガすることができる。同様に
、このトリガは、モーション閾値とは異なり、活動状態に依存することができる。例えば
、自律的に判断される「ランニング」又は「歩行」の活動状態は、より高頻度のモデル更
新及びバイオメトリック測定をトリガすることができるのに対して、自律的に判断される
「休息」又は「着座」の活動状態は、より低頻度のモデル更新及びバイオメトリック測定
をトリガすることができる。加速度計データ又は撮像データにより活動状態を判断する方
法は、米国特許第10,610,158号にあるように当業者によく知られている。この
米国特許は、その全体を引用することによって本明細書の一部をなすものとする。
【0060】
本発明の実施形態によるウェアラブルデバイスが被検者から取り外され、その後、再装
着された場合、又は、このデバイスが被検者において動いた場合には、バイオメトリック
測定デバイス及び計算システムをそれぞれトリガして、別のバイオメトリック測定を行い
、バイオメトリック推定モデルを更新することができる。この自律的なトリガは、ウェア
ラブルデバイスが一時的に乱された場合又は身体から離れた場合に、バイオメトリック推
定精度を取り戻すのに役立つことができる。デバイスの取外し、移動、又は再装着の自律
的な判断は、PPGデータを処理して信号品質を求めることか、又は、ウェアラブルPP
Gデバイスが身体に沿って異なるようにして置かれたときに変化し得る他のバイオメトリ
ックパラメータを求めることによって行うことができる。ウェアラブルデバイスがどのよ
うに装着されているのかをPPG及びモーションの検知により自律的に求める方法は、例
えば、米国特許第9,794,653号、米国特許第10,003,882号、米国特許
第10,512,403号、及び米国特許第10,893,835号に既に記載されてい
る。これらの米国特許の内容は、それらの全体を引用することによって本明細書の一部を
なすものとする。
【0061】
生理学的状態の変化も、自律的に検出することができ、別のバイオメトリック測定のト
リガ及びバイオメトリック推定モデルの更新に使用することができる。例えば、PPGセ
ンサデータ(又は他のバイオメトリックデータ)を処理して、ストレス状態、心臓状態、
呼吸状態等の評価を生成することができ、この生理学的状態の更新は、別のBP測定の実
行及びモデルパラメータの更新の自律的なトリガとして用いることができる。1つの特定
の例として、PPGセンサ(又は他の適したバイオメトリックセンサ)からの心拍変動デ
ータを処理して、人のストレス状態が変化したこと(例えば、ストレスが著しく増加又は
減少したこと)を示すことができ、これは、自律的なトリガを提供することができる。別
の特定の例として、PPGセンサ(又は他の適したバイオメトリックセンサ)からのデー
タを処理して、被検者の呼吸情報(呼吸率、呼吸量、又は呼吸規則性(周期性)/不規則
性(非周期性)等)を生成することができ、これは、自律的なトリガを提供することがで
きる。例えば、呼吸率、呼吸量、又は呼吸規則性の大きな変化は、自律的なトリガを提供
することができる。これは、PPG情報と被検者血圧との間の伝達関数が呼吸動態に依存
し得るので、野外環境において本発明の精度に特に重要であり得る。ウェアラブルPPG
により生理学的状態の変化を自律的に判断する方法は、例えば、米国特許第8,157,
730号、米国特許第8,929,966号、米国特許第9,427,191号、米国特
許第10,413,250号、米国特許第10,893,835号、及び米国特許第11
,058,304号に既に記載されている。これらの米国特許の内容は、それらの全体を
引用することによって本明細書の一部をなすものとする。
【0062】
同様に、エラー(動作エラーコード等)が計算システムによって検出された場合には、
バイオメトリック測定及びモデル更新の自動トリガを開始することができる。これは、正
確なモニタリングが動作グリッチに対してロバストであることを保証するのに役立つこと
ができる。1つの特定の例として、計算システムが、PPG-BPモデルを供給するBP
モニタリングオートカフデバイスが膨張を停止したというエラーコードを受け付けた場合
には、これは、システムリセットと、その後に続く別のBP測定及び別のPPG-BPモ
デルの更新とをトリガすることができる。
【0063】
図12に、バイオメトリクス検査室において人間の被検者から収集されたリアルデータ
を利用する本発明の一実施形態の例を示す。人間の被検者は、自動化BPカフを(上腕動
脈に)装着しており、イヤPPGセンサ、アーム(例えば、上腕)PPGセンサ、及びリ
ストPPGセンサも装着する(ただし、簡略化のために図12にはイヤPPGデータしか
示されていない)。本発明をボリュームクランプ法と比較するために、被検者は、ボリュ
ームクランプデバイスも、BPカフが位置する腕の人差し指に装着することとした。測定
シーケンスには、被検者の休息期間と、その後に続く被検者の活動期間とが含まれること
とした。すなわち、被検者のBPを上げるために、BP測定及びPPG測定が進行中の間
、被検者には、自身の脚により、静止したバリアを数秒間押すように依頼した(アイソメ
トリックレッグプレス)。
【0064】
その後、BPを下げるために、被検者に、アイソメトリックレッグプレスを終えること
によりリラックスするように依頼した。カフベースのBPモニタによるBP測定値(太い
縦線Lとして示され、線Lの最も上の点は被検者の収縮期BPを表し、線Lの最も
下の点は被検者の拡張期BPを表す)が、(計算システムにより)60秒~90秒ごとに
受け付けられて処理された。ほぼ300秒の初期較正フェーズ中に、カフベースのBPモ
ニタからの複数の値が複数のPPG読取り値とともに処理されて、複数のPPG推定値(
カフベースのBPモニタの読み取り値と同じ表現形式で細い縦線Lとして示されている
)が生成された。ただし、これらの推定値は、適応型予測モデルのパラメータが、この較
正フェーズにてモデル精度を高めるように更新され、このモデル精度が較正フェーズの終
了までにカフベースのBPモニタのモデル精度と同等になるようにされたので、ユーザに
報告されなかった。
【0065】
較正フェーズに続き、連続的なBP推定値が、新たなBP測定のたびにモデルパラメー
タを更新することなく生成された。より正確に言えば、残りのカフベースのBPモニタ測
定値が、PPGモデル推定値とカフベースのBPモニタ測定値との間の優れたトラッキン
グを単に示すためにPPG推定とともに示される。図12に示すPPG推定値はイヤPP
Gセンサのみからのものであるが、同等の性能は、リスト用PPGセンサ及びアーム用P
PGセンサにより得られることが見出されていることに留意すべきである。ただし、リス
ト用PPGセンサ及びアーム用PPGセンサの場合、血圧計カフが膨張及び収縮するとき
、(リスト用センサ及び/又はアーム用センサが同じ腕にカフとして装着されるときに)
意味のあるPPG-BP推定がカフベースのBPモニタ測定期間中に実行可能でなくなる
ような、閉塞が血流に影響を与える可能性がある期間が存在する。
【0066】
図12のテストシーケンスが数人の被検者に対して繰り返された。カフベースのBPモ
ニタ測定と比較したときのPPG-BP推定(BP測定値推定、又はPPG-eBPとも
呼ぶ)及びボリュームクランプデバイスの性能を図14の表に示す。図14に示すように
、PPG-eBPの平均絶対差は、アイソメトリックレッグプレス期間中及び休息期間中
の双方において、ボリュームクランプの平均絶対差よりも普遍的に低い(良好である)。
各被検者について、5分及び10分の双方の較正期間が検査され、(図14から得ること
ができるように)PPG-BPモデルにおける僅かな改善がより長い較正期間の間、観察
されていることに留意すべきである。
【0067】
図13に、本発明の実施形態に基づき、PPGセンサを装着した被検者の、適応型予測
モデルによる経時的なBP推定値をプロット30により示す。被検者に付けられたモニタ
の実際の血圧測定値(読み取り値)を、データ点40により示す。BP推定の精度は、適
応型予測モデルがBP測定値40を用いて都度更新されるにつれて時間とともに向上する
。このことは図13に示されている。プロット30とデータ点40との間の差が経時的に
減少している。図13では、PPG-BP推定プロット30は、秒単位の推定頻度として
示している。ただし、推定頻度は、本発明では固定される必要はなく、このBP推定の分
解能は、使用事例(例えば、使用事例のBP推定精度又は分解能の要件)と、ベンチマー
クとなるBP測定デバイスの精度及び分解能と、適応型予測モデル用に選択された特徴量
生成頻度(図6)とに応じて、増減させることができる。例えば、BP測定デバイスが、
適応型予測PPG-BPモデルを十分にトレーニングするのに十分な精度及び分解能を有
する限り、推定されたBP脈波トレース(すなわち、1秒よりもはるかに小さな分解能を
有する完全な「心拍ごと(beat-to-beat)」のBP波形)を本発明において生成すること
ができる。
【0068】
本発明が、PPGベースのBP推定に限定されるものでなく、他のPPGベースのバイ
オメトリック推定に対しても適用することができることは強調されるべきである。その上
、BP測定以外の他の測定モダリティも、適応型予測モデルを更新するベンチマーク及び
基礎として使用することができる。そのようなバイオメトリック測定及びそれぞれのバイ
オメトリック推定の非限定的な例は、呼吸(呼吸作用)数、心拍数、認知負荷、意図(例
えば、精神行動又は身体行動を取る意図)、心拍出量、心肺機能、心臓の状態又は病状(
不整脈、心臓の早期収縮、心臓障害、心臓病、プラーク蓄積等)、ガス交換動態、血液検
体成分(例えば、血糖レベル、血中尿素レベル、ビリルビンレベル、コレステロールレベ
ル等)等の測定値及び推定値を含むことができる。他の測定・推定モダリティの追加の例
は、モニタリングECG、EEG、EMG、EOG、血流量、胸部インピーダンス、聴診
モニタリング、動脈ラインデータ、血液検査データ等を含む。特定の例として、活動中又
は睡眠中に被検者のEEG読み取り値をモニタリングして脳波パターンを検討することが
望ましい場合がある。ただし、EEGは、特に睡眠中、装着するのが不快であることで知
られ、PPG等のより快適な技術を用いて人のEEGをモニタリングすることがより望ま
しい。したがって、EEG電極のセットを使用して、適応型予測モデルに供給されるEE
G測定データを提供することができ、同時にPPG等の別のセンサモダリティをモニタリ
ングし、適応型予測モデルに供給して、(EEGデータを必要とせずに)PPGデータに
よりEEGを推定するモデルを作成することができる。すなわち、PPGモデルがEEG
データに適応すると、被検者のリアルタイムEEGの推定は、リアルタイムPPGデータ
のみを使用して始めることができる(すなわち、EEGの検知は必要でない)。
【0069】
<適応型予測モデルにより被検者のバイオメトリック推定を生成する方法>
図2に、計算システムにより行われるリアルタイム適応型予測モデルを用いて、本発明
のいくつかの実施形態による被検者のバイオメトリック推定を生成する方法を示す。この
方法は、被検者のPPG情報を測定するPPGセンサからリアルタイムPPGデータを受
付期間内に受け付けるステップと、被検者の血圧を測定する血圧モニタリングデバイスか
らリアルタイム血圧測定値を前記受付期間内に受け付けるステップとを含む(ブロック2
00)。受け付けられたPPGデータから特徴量が生成される(ブロック202)。生成
された特徴量及び血圧測定値はメモリに記憶される。更新の準備ができている場合には(
ブロック204)、記憶された特徴量及び記憶された血圧測定値を処理し、適応型予測モ
デルの推定誤差を低減する更新されたモデルパラメータを生成することによって、適応型
予測モデルをリアルタイムで更新することができる(ブロック206)。続いて、更新さ
れた適応型予測モデルにより被検者のバイオメトリック推定が生成される(ブロック20
8)。
【0070】
図3に、本発明の別の実施形態による被検者のバイオメトリック推定を生成する方法を
示す。計算システム(例えば、100、図1)は、被検者に取り付けられたPPGセンサ
(例えば、12~16、図5)からリアルタイムPPGデータを受け付ける(ブロック2
10)。計算システムは、PPGデータを使用して適応型予測モデルから被検者のバイオ
メトリック推定を生成する(ブロック212)。バイオメトリック推定の例は、被検者の
血圧推定であるが、後述するように、他の様々なバイオメトリックを推定することができ
る。被検者に取り付けられたモニタリングデバイス(例えば、血圧計カフ18、図5)に
よるバイオメトリックのリアルタイム測定値を計算システムが受け付けて(ブロック21
4)、計算システムは適応型予測モデルの1つ以上のパラメータを更新する(ブロック2
16)。例えば、リアルタイム血圧読み取り値が、血圧モニタリングデバイスにより被検
者から取得され、この読み取り値は、PPGデータを使用して適応型予測モデルにより行
われる血圧推定が実際の血圧読み取り値により近くなるよう適応型予測モデルを調整する
ために使用される。
【0071】
図3に示したステップは、図示した順序で行われなくてもよいことが理解される。例え
ば、リアルタイムのバイオメトリック測定値の収集(ブロック214)は、リアルタイム
のPPGデータ収集(ブロック210)の前に、又はこれと同時に行うことができる。
【0072】
図4に、本発明の別の実施形態による被検者のバイオメトリック推定を生成する方法を
示す。計算システム(例えば、100、図1)は、被検者に取り付けられたPPGセンサ
(例えば、12~16、図5)からリアルタイムPPGデータを受け付ける(ブロック2
20)。計算システムは、PPGデータを使用して適応型予測モデルから被検者のバイオ
メトリック推定を生成する(ブロック222)。バイオメトリック推定の例は、被検者の
血圧推定であるが、後述するように、他の様々なバイオメトリックを推定することができ
る。バイオメトリック推定値が閾値を上回っているのか又は下回っているのかの判定がな
される。(ブロック224)。例えば、健康な血圧範囲は、通常、収縮期血圧が120m
mHg未満であり、拡張期血圧が80mmHg未満であると考えられる。その一方で、被
検者の収縮期血圧が90mmHg未満に低下した場合、及び/又は、拡張期血圧が60m
mHg未満に低下した場合には、医療介入が必要な可能性がある。同様に、収縮期血圧が
130mmHgを上回った場合、及び/又は、拡張期血圧が90mmHgを上回った場合
にも、医療介入が必要な可能性がある。
【0073】
バイオメトリック推定値が、閾値を上回っている場合又は下回っている場合には(ブロ
ック224)、バイオメトリックのリアルタイム測定値を、被検者に取り付けられたバイ
オメトリックモニタリングデバイス(例えば、血圧計カフ18、図5)から計算システム
が受け付けて(ブロック226)、計算システムは、適応型予測モデルの1つ以上のパラ
メータを更新する(ブロック228)。例えば、リアルタイム血圧読み取り値が、血圧モ
ニタリングデバイスにより被検者から取得され、この読み取り値は、PPGデータを使用
して適応型予測モデルにより行われる血圧推定が実際の血圧読み取り値により近くなるよ
う適応型予測モデルを調整するために使用される。加えて、計算システムは、バイオメト
リック推定値が閾値を上回っているとのアラート又は下回っているとのアラートをリモー
トデバイスに送る(ブロック230)。
【0074】
留意すべきこととして、較正用のカフによる読み取り値が要求されて推定の精度を高め
るために用いられるにあたり、BP推定値が或る範囲の外にある必要はない。推定された
BPは、通常の範囲内のものであってよく、後続のカフ読み取り値は、精度を精密にする
ために引き続き使用することができる。適応型予測モデルは、BP値と閾値との比較とは
無関係に、単に、時間が設定されたカフベースの読み取り値に基づいて更新することがで
きる。同様に、適応型予測モデルは、検知された活動レベルの変化(例えば、加速度計に
より身体のモーションの変化を検知する)に起因して、又は他のセンサ読み取り値に起因
して更新される場合もある。
【0075】
リモートデバイスは、医療提供者のスマートフォン、医療施設内のナースステーション
、又は被検者の状態について医療従事者にアラートすることができる他の任意のデバイス
とすることができる。アラートは、血圧モニタリングデバイス(例えば、血圧計カフ18
図5)にも送ることができる。加えて、アラートは、血圧モニタリングデバイスによっ
て作成することもできる。
【0076】
ブロック224は「閾値」判定として示されているが、ブロック224は、モデル更新
が行われるべきと判定する条件付きロジックに置き換えることができることに留意すべき
である。例えば、ブロック224は、1つのバイオメトリック推定に基づく閾値ロジック
ではなく、(例えば、メモリに既に記憶されている)複数のバイオメトリック推定の閾値
処理パターンの存在を判定するロジックを含むことができる。1つの非限定的な例では、
このパターンは、連続して高い一連の(標準を上回る)BP推定又は連続して低い(標準
を下回る)BP推定を含むことができ、このパターンの判定によりモデルの更新をトリガ
することができる。別の非限定的な例では、このパターンは、標準を上回っているか又は
下回っていると判定される複数のバイオメトリック推定の平均を含むことができ、このパ
ターンが存在すると判定された場合に、モデルの更新をトリガすることができる。
【0077】
図2図4に示した方法は、図1に一例として示す計算システム100により行うこと
ができる。計算システム100は、
1)被検者のPPG情報を測定するPPGセンサからのPPGデータ(及び必要に応じ
て追加されるセンサデータ。これは例えば、モーションセンサ、環境センサなどの補助セ
ンサにより得られるモーションセンサデータ又は環境センサデータである。)と、被検者
の血圧を測定する血圧モニタリングデバイスからの血圧データとを受け付ける少なくとも
1つのデータバス102と、
2)受付期間内にPPGセンサからPPGデータを受け付け、前記受付期間内に(自動
型の血圧カフ、動脈経路の測定器などの)血圧モニタリングデバイスから血圧測定値を受
け付け、受け付けられたPPGデータから特徴量を生成し、この特徴量をメモリに記憶し
、血圧測定値をメモリに記憶し、記憶された特徴量及び記憶された血圧測定値を処理して
、適応型予測モデルの推定誤差が低減するよう更新されたモデルパラメータを生成するこ
とにより、適応型予測モデルの現在のパラメータを更新し、更新された適応型予測モデル
を実行することにより被検者のバイオメトリック推定を生成する計算回路及び命令104

を備えることができる。
【0078】
<PPGデータの受付け、BP測定値の受付け>
図2を再び参照する。適応型予測モデルの更新(ブロック206)は、PPG特徴量及
び少なくとも1つのBP測定値という少なくとも2つの入力を必要とする。これらのデー
タは「受付期間(receiving period)」にわたり受け付けることができる。受付期間とは
図1の計算システム100が少なくとも1つのPPG波形と、時間的に関係のある少な
くとも1つのBP測定値とを受け付ける期間のことである。受け付けられるPPGデータ
は、デジタル化されたデータとして受け付けることができる。このとき、図1の計算シス
テム100によって受け付けられる前に、PPGデータをデジタル処理により(例えば、
周波数「f」で)サンプリングする事前のデジタル処理ステップが必要となる場合があ
る。BPデータも同様にデジタルで受け付けることができる。このとき、同様に事前のデ
ジタル処理ステップが必要な場合がある。その一方で、カフベースのBP測定値の離散的
な性質に起因して、連続的なBP値をストリーミングするのではなく離散的なBP値を受
け付けることができる。PPGデータ及びBP測定値は時間的に関係している(時間が互
いに十分近い)必要があるが、これらの測定は、時間的に正確に一致している(真に同時
に行われる)必要はない。これは、BPが多くの状況において数秒の間に劇的に変化する
ことはなく、これらの数秒の間にいくつかのPPG波形を受け付けることができるからで
ある。その上、PPGデータは、連続して収集することができるのに対して、カフベース
のBP測定値は、測定間に60秒~90秒よりも多くの時間を必要とする場合があるため
、各PPGの波形を同時に生じるBP波形(又はBP測定値)と完全に合わせることは現
実的でない場合がある。通常の歩行可能な安静状態(ambulatory resting state)につい
て、約30秒以内のPPGデータとBP測定値との間の時間的な関係は、連続的なトラッ
キングに十分であることが示されている。このタイミングは、被検者の活動状態、被検者
の心拍出量の動態、又は被検者のBP変化若しくは他の生理学的変化の速度に影響を与え
得る他の要因に応じてより長い場合もあるし、より短い場合もある。このように時間的に
関係のあるPPGデータ及びBP測定データは、計算システムによりメモリ(メモリバッ
ファ等)に記憶することができる。
【0079】
<PPG特徴量の生成>
受け付けられたPPGデータは処理され、複数のリアルタイムPPG特徴量が生成され
る(ブロック202、図2)。これらの特徴量は互いに異なる計「n」個の特性である。
特徴量の例として、時間領域の特徴量又は変換に基づく特徴量が挙げられるが、これらに
限定されない。時間領域の特徴量の非限定的な例は、PPGの振幅、PPGの上側包絡線
及び/又は下側包絡線、収縮期ピーク分離及び拡張期ピーク分離及び/又は相対振幅、収
縮期ピークツートラフ(peak-to-trough)分離及び重拍切痕(dicrotic notch)ピークツ
ートラフ分離、PPG波形における重要な特徴量(ピーク又はトラフ等)の間の時間的な
分離等を含むことができる。同様に、PPGデータを処理して、導関数(例えば、1次導
関数、2次導関数、3次導関数等)又は積分を生成することができ、これらの導関数波形
及び/又は積分波形の時間領域特徴量を生成(すなわち、ピーク又はトラフの振幅、相対
振幅、上側包絡線及び/又は下側包絡線、時間的ピーク分離等の特徴量を生成)すること
ができる。変換に基づく特徴量は、スペクトル特徴量、ウェーブレット特徴量、ティーガ
・カイザ・エネルギー(KTE:Teager-Kaiser energy)演算子に基づく特徴量、チャー
プレット変換特徴量、ノイズレット変換特徴量、スペースオグラム(spaceogram)特徴量
、シェイプレット特徴量、導関数特徴量、積分特徴量、主成分分析(PCA:principle
component analysis)特徴量等を含むことができる。
【0080】
受け付けられたPPGデータから特徴量を生成することは、スライディング時間ウィン
ドウΔtによる受付期間内に特徴量生成間隔(時点)t=kにおいて特徴量を生成す
ることを含むことができる(図6)。特徴量は、計算システムによって任意の時点におい
て生成することができるが、意味のあるPPG特徴量-少なくとも1つの完全なPPG波
、及び好ましくは複数のPPG波形-を処理するには、十分なPPGデータがメモリに記
憶されていなければならない。例えば、特徴量は、長さがΔtである事前の時間帯(す
なわち、幅がΔtである時間ウィンドウ)にわたって収集されバッファリングされたデ
ジタル化PPGデータを処理することによって、特徴量生成ウィンドウ上でt=kにお
いて生成することができる。この特徴量生成ウィンドウは、FIFO(先入れ先出し)バ
ッファ等のスライディングウィンドウを含むことができる。FIFOバッファでは、PP
Gデータは、データの新たなサンプルを連続して取得するとともにデータの最も古いサン
プルを経時的に失いながら、このバッファに記憶される。特徴量生成プロセスは、時間領
域において又は記憶された時間領域データの変換により、このバッファリングされたPP
Gを処理することを含むことができる。上述したように、様々な異なる時間領域又は変換
ベースの処理方法を、PPG特徴量を生成するのに利用することができる。PPG特徴量
を生成する変換の非限定的な例は、スペクトル変換、ウェーブレット変換、ティーガ・カ
イザ・エネルギー演算子、チャープレット変換、ノイズレット変換、スペースオグラム、
シェイプレット、導関数、積分等を含むことができる。時間領域処理の非限定的な例は、
PPGの振幅、PPGの上側包絡線及び/又は下側包絡線、収縮期ピーク分離及び拡張期
ピーク分離、収縮期ピークツートラフ分離及び重拍切痕ピークツートラフ分離等を生成す
る処理ステップを含むことができる。利用可能な変換及び時間領域処理の非限定的な例は
、米国特許第10,856,813号及びPCT出願第US20/49229号に示され
ている。これらの特許及び出願は、それらの全体を引用することにより本明細書の一部を
なすものとする。
【0081】
BP推定値(又は他のバイオメトリック推定値)を生成する前に、PPG特徴量(特有
の特徴量)を積極的に正規化(例えば、加重)し、BP測定値(又は他のバイオメトリッ
ク測定値)を用いてPPGベースのBP推定(又は他のバイオメトリック推定)の滑らか
な時間的トラッキングの確保を助けることができることにも留意すべきである。1つの正
規化手法は、記憶された特徴量(例えば、メモリに記憶された以前のPPG特徴量)の統
計を処理し、これらの統計によって正規化することである。正規化は、複数の特徴量生成
時点にわたる履歴データを処理することによって、これらの履歴データの統計を生成し、
これらの統計を正規化することによって行うことができる。この正規化プロセスは、新た
な各特徴量の生成時点(例えば、図6及び図8のt=k)を用いて更新することができ
る。或いは、正規化は、各モデル更新(例えば、図6のt=u)を用いて行うことがで
きる。当業者に知られている非常に多くの正規化方法があり、いくつかの例は、zノーミ
ング(z-norming)、最小最大正規化、平均正規化等を含むことができる。1つの非限定
的な正規化方法は、プールされた統計にコクランの方程式を使用することである。コクラ
ンの方程式を各モデル更新とともに使用するために、過去の更新からの(例えば、t=u
j-1における)特徴量の統計を過去の更新に続く(例えば、t=uにおける)特徴量
の統計とともに処理(プール)することによって、各特有の特徴量の平均及び標準偏差を
正規化(加重)することができる。したがって、コクランの方程式によって生成されてプ
ールされた平均及び標準偏差は、特有の特徴量を正規化する基礎として利用することがで
きる。特定の非限定的な例として、zノーミング法を利用すると、特有の特徴量の値は、
コクランの方程式によって生成される平均及び標準偏差によって正規化することができ、
例えば、この平均及び標準偏差は、過去の更新からの(例えば、t=uj-1における)
特徴量の平均及び標準偏差を過去の更新に続く(例えば、t=uにおける)特徴量の平
均及び標準偏差とともに加重することによって生成される。
【0082】
前述の特徴量統計自体を、本発明の実施形態に従って、適応型予測モデルへの特徴量と
して使用することもできる。これは、(例えば、BP測定値に対するBP推定の)より滑
らかなトラッキングを提供するのに役立ち得る。
【0083】
特徴量生成の一部として(又はその前に)、受け付けられたセンサ情報(例えば、PP
Gセンサデータ)及び/又は受け付けられたバイオメトリック測定データ(例えば、BP
測定データ)の前処理が必要となる場合があることに留意すべきである。加えて、「不良
な」データを阻止するために受付けデータを修正すること、データの信頼性スコアを生成
すること、「良好な」データを識別すること、又は更に処理することになるデータを分類
することが重要な場合がある。PPGデータ(関連したモーションセンサデータを含む)
の様々な前処理方法が、これまでに公開され、当業者によく知られている。これらの前処
理方法には、米国特許第10,834,483号、米国特許第10,798,471号、
米国特許第10,631,740号、米国特許第10,542,893号、米国特許第1
0,512,403号、米国特許第10,448,840号、米国特許第9,993,2
04号、米国特許第10,413,250号、及びPCT出願第20/49229号が含
まれるが、これらに限定されるものではない。これらの米国特許及びPCT出願の全ては
、それらの全体を引用することによって本明細書の一部をなすものとする。被検者のモー
ションノイズを除去する受動的方法及び能動的方法の双方を使用することができる。その
上、最適な前処理は特徴量に依存する場合があることに留意すべきである。例えば、PP
Gデータに関して、スペクトル領域特徴量の場合に、特徴量生成前にPPG信号から「D
C成分」(例えば、非拍動成分)を除去又は減衰させることが望ましい場合がある。一方
、DC成分は、他の特徴量(時間領域特徴量等)にとっては重要な場合もあるし、DC成
分がそれ自体特徴量である場合もある。PPGセンサデータは(前述したように)被検者
モーションデータを含むことができ、このモーションデータは、光センサ読み取り値から
のモーションアーティファクトを削減するのに利用することができることにも留意すべき
である。モーションセンサは、PPGセンサに統合することもできるし、PPGセンサと
同じ場所に配置することもできる。モーションセンサデータも、特徴量として処理するこ
とができる。
【0084】
バイオメトリック測定データの前処理も役立つことができる。例えば、好ましい使用事
例では、BPカフからのBP測定値は、収縮期BP測定及び拡張期BP測定の離散的な値
を含むことができる。いくつかの使用事例では、このデータは、API(アプリケーショ
ンプログラミングインターフェース(application programming interface))又はアプ
リケーション特有のインターフェースを通じて計算システムに利用可能にすることができ
る。ただし、いくつかの使用事例では、図1の計算システムによって受け付けられるBP
測定データは、本発明を実行することができる前に処理を通じてBP測定値を抽出するこ
とが必要な場合があるデータストリーム(未処理のデータストリーム等)を含むことがで
きる。
【0085】
<モデルパラメータの更新>
図8に示すように、バイオメトリック推定(BE:biometric estimation)を生成する
適応型予測モデル300は、BE=f(F,S)という形を取ることができる。ただし、
Fは、時刻t=kでの、生成された「n」個の特性(正規化された特徴量など)の集合
であり、SはFに関する(複数の)統計量の集合である。関数f(F,S)は、バイオメ
トリック推定を上述の特徴量及び統計量と結び付ける伝達関数を含み得る。受け付けられ
た新たなBP測定値(又はバイオメトリック測定値)ごとに、新たな更新時点t=u
おいて(図7に示すように)適応型予測モデル300を都度更新することができる。モデ
ルの更新は、適応型予測モデル300の1つ以上のパラメータの更新を含む。
【0086】
使用されるモデルのタイプに応じて、モデルパラメータを変えることができる。例えば
、回帰モデルでは、モデルパラメータは、回帰モデルへの少なくとも1つの係数を含むこ
とができる。適した回帰モデルの非限定的な例は、線形モデル、SVM、ランダムフォレ
スト、ニューラルネットワーク、決定木、これらのモデルの組み合わせ等を含むことがで
きる。回帰モデル以外の他のタイプのモデルも利用することができ、非限定的な例として
、分類器を利用することもできるし、(畳込みニューラルネットワーク(CNN:convol
utional neural network)において利用することができるような)分類及び回帰の組み合
わせを利用することもできる。モデルの更新は、特有の特徴量(例えば、正規化された特
有の特徴量)及び記憶された血圧測定値を処理して、適応型予測モデル300の推定誤差
が低減するよう更新されたモデルパラメータの生成を含むことができる。例えば、回帰モ
デルを近時のBP測定値(又はバイオメトリック測定値)について解くことができ、その
後、モデル係数を更新することができる。代替的に又は追加的に、勾配ベースの最適化手
法(従来の勾配降下法、アダム(Adam)、モーメンタム(Momentum)、AdaGrad、
RMSProp、AMSgrad等)を使用して、新たな各BP測定値を用いてモデル係
数を更新することができる。
【0087】
適応型予測モデルをリアルタイムで更新することは、記憶された近時の血圧測定値(時
点t=uに関連したもの)と、記憶された以前の血圧測定値(時点t=uj-1に関連
したもの)との処理を含むことができる。1つの実施形態において、これは、記憶された
近時の血圧測定値と記憶された以前の血圧測定値(又は複数の記憶された以前の血圧測定
値)との間の補間等の、経時的に得られた血圧測定値の間の予想される血圧測定値の補間
(すなわち時間補間)を生成することを含むことができる。特定の例を図6に関してまと
めることができる。時点uに関連した血圧測定値と、時点u(この特定の場合ではu
)に関連した血圧測定値とをメモリに記憶し処理して、各特徴量生成間隔t=k等の
複数の特徴量生成間隔の予想される血圧測定値の補間を生成することができる。そのよう
な場合、適応型モデルの更新は、複数の間隔t=kにわたって各特徴量の集合及び補間
された各BP測定値に関するモデルパラメータの更新を含むことができる。したがって、
回帰モデルを最適化するための情報は、単に2つの血圧測定値よりも多く、これによって
、実際のBP測定値を用いたBP推定のトラッキングはより滑らかになる。
【0088】
<バイオメトリック(BP)推定の生成>
先にまとめたように、バイオメトリック推定を生成するために使用することのできる多
くのモデル構成が存在する。バイオメトリック推定を生成するために使用される機能の一
般的な表現形式を図8に示す。血圧推定の生成に関して説明してきた特定の場合について
、BP推定を生成するプロセスは、収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧、平均動脈圧、又は血
流に関連した別のタイプの圧力を生成することを含むことができる。その上、推定するこ
とができる血圧のタイプは、上腕、胸部、鎖骨下動脈、大腿部、脛骨部、撓骨動脈、頸動
脈、中心部(大動脈)、脳等(これらに限定されるものではない)の身体の実質的に任意
の箇所からのものとすることができる。これらの血圧推定のそれぞれは、上記で要約した
プロセスにより、図2図4の方法を使用して生成することができるが、被検者における
BP測定箇所は、所望のBP推定の箇所と一致しているのが理想である。すなわち、所望
のバイオメトリック推定が上腕動脈の収縮期推定及び拡張期推定を含む場合には、BP測
定値を提供するBPモニタリングデバイスは、(理想的には)上腕動脈から収縮期BP値
及び拡張期BP値の双方を測定することになる。
【0089】
<適応型予測モデルによりバイオメトリック推定を生成する計算システム>
図2図4の方法を実施するために、計算システム100を図1に示すように利用する
ことができる。適応型予測モデルにより被検者のバイオメトリック推定(この特定の場合
にはBP推定)を生成する計算システム100は、
1)被検者からPPG情報を測定するPPGセンサからのPPGデータと、被検者の血
圧を測定する血圧モニタリングデバイスからの血圧データとを受け付ける少なくとも1つ
のデータバス102と、
2)計算回路機構及び命令104であって、a)PPGセンサからPPGデータを受付
期間において受け付けることと、b)血圧モニタリングデバイスから血圧測定値を前記受
付期間内に受け付けることと、c)受け付けられたPPGデータから特徴量を生成するこ
とと、d)特徴量をメモリに記憶することと、e)血圧測定値をメモリに記憶することと
、f)記憶された特徴量及び記憶された血圧測定値を処理して、適応型予測モデルの推定
誤差が低減するよう更新されたモデルパラメータを生成することによって、適応型予測モ
デルの現在のパラメータを更新することと、g)更新された適応型予測モデルを実行する
ことによって被検者のバイオメトリック推定を生成することとを行う計算回路機構及び命
令104と
を備えることができる。
【0090】
計算システム100は、離散的な複数の構成要素、完全に統合されたシステム、又は双
方を組み合わせたものとして実施することができる。特定の例として、計算システム10
0は、完全に統合されたマイクロプロセッサを、図2図4の処理ステップを行う計算命
令とともに備えることができる。図15は、本発明の様々な実施形態に従って使用するこ
とのできる一例示のプロセッサP及びメモリMの詳細を示すブロック図である。プロセッ
サPは、アドレス・データバスBによりメモリMと通信する。プロセッサPは、例えば、
市販されているマイクロプロセッサ又はカスタムマイクロプロセッサとすることができる
。その上、プロセッサPは、複数のプロセッサを含むことができる。メモリMは、非一時
的コンピュータ可読記憶媒体とすることができ、本明細書において説明されるような図2
図4の方法を実施するために使用されるソフトウェア及びデータを含むメモリデバイス
の全階層を表すことができる。メモリMは、次のタイプのデバイス、すなわち、キャッシ
ュ、ROM、PROM、EPROM、EEPROM、フラッシュ、スタティックRAM(
SRAM:Static RAM)、及び/又はダイナミックRAM(DRAM:Dynamic RAM)を
含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0091】
メモリMは、コンピュータ可読プログラムコードPC及び/又はオペレーティングシス
テムOS等の様々なカテゴリのソフトウェア及びデータを保持することができる。オペレ
ーティングシステムOSは、プロセッサP、PPGセンサ(例えば、12~16、図5
、バイオメトリックモニタリングデバイス(例えば、BPカフ18、図5)の動作を制御
することができ、プロセッサPによる様々なプログラムの実行を調整することができる。
例えば、コンピュータ可読プログラムコードPCは、プロセッサPによって実行されると
図2図4のフローチャートに示す動作のうちの任意のものをプロセッサPに実行させ
ることができる。
【0092】
あるいは、計算システム100は、アナログプロセスを通じてステップを処理するアナ
ログ回路を備えることができる。別の例として、計算命令は、計算システム(プロセッサ
等)により実行されるソフトウェアライブラリとして実行することができる。別の例とし
て、計算システムは、ニューラル回路機構又は量子コンピューティングを備えることがで
きる。従来のプロセッサ、量子プロセッサ、又はニューラルプロセッサを利用することも
できるし、それぞれを組み合わせたものを利用することもできる。
【0093】
図1のシステム100を可能にする様々な構成要素が当業者によく知られている。本発
明者らは、図5に示すようにウェアラブルデバイス10~16と通信する商用のスマート
フォン20上でソフトウェアにより実行される計算命令(アルゴリズム)を利用して適し
たリアルタイム性能を達成することができることを、実験室での試験により実証してきた
ので、マイクロプロセッサにより図2図4の方法を実行するために必要とされる計算リ
ソースは、ウェアラブルシステム又はポータブルシステムにとって現実的である。
【0094】
システムは、外部システムからデータを受け付けるとともに外部システムにデータを送
るための、他のシステムと通信する入出力ライン(すなわち、ポート又はバス)を備える
ことができる。例えば、入出力ラインは、少なくとも1つの外部プロセッサ、外部計算シ
ステム、又は外部装置と通信することができる。1つの特定の実施形態において、生成さ
れるバイオメトリック推定をデジタル化することができ、デジタルバス106により外部
計算システムに利用可能にすることができる。別の実施形態において、入出力ラインは、
外部システムと無線で通信する1つ以上の送受信機と通信することができる。様々な電子
通信構成が当業者によく知られている。
【0095】
BP推定が図1の計算システムによって生成される場合に、外部システムによる使用の
ために、外部システムは、計算プロセスを変更する(すなわち、アルゴリズムを変更する
)情報を計算システムに送りたい場合がある。例えば、1つの実施形態において、リモー
トシステム(計算システムと有線通信又は無線通信する)が、BP測定値を図1の計算シ
ステムに供給するBPカフを備えることができる場合、生成されるBP推定は上腕BP推
定を含むことができる。BPカフは、BP測定間で計算システムによって生成されるPP
G-BP推定読み取り値を視認する視認画面も備えることができる。BPカフ上のインタ
ーフェースによりPPG処理レート(サンプリングレート、特徴量生成間隔、更新間隔等
)を変更することが望ましい場合があり、この情報は、その後、この所望の変更を実行す
る「外部命令データ」として図1の計算システムに供給することができる。代替的に又は
追加的に、計算システムは、センサ推定がモーションノイズに起因して不正確な可能性が
あるという警告又は他の有用な情報等の、外部システム(すなわち、BPカフ)に提供す
るフィードバックを有することができる。同様に、計算システム又は外部システムのいず
れも、BP測定及び/又はBP推定がいつ開始するかについての情報(例えば、BP測定
及び/又はBP推定の頻度)を提供することができる。
【0096】
外部システムデータの1つの形態は、被検者のメタデータを含むことができ、このメタ
データは、本発明の実施形態に従ってバイオメトリック推定を処理する際に役立つことが
できることに留意すべきである。すなわち、図1の計算システム100は、被検者の外部
メタデータ(すなわち、身長、体重、年齢、性別、薬の使用等)を受け付けて、このデー
タをメモリに記憶することができる。このメタデータは、図8の適応型モデル300への
特徴量として利用することができる。代替的に又は追加的に、この記憶されたメタデータ
は、被検者のプロファイルを作成するのに利用することができる。プロファイルは、被検
者向けに(すなわち、いくつかのバイオメトリック測定にわたって)最適化された適応型
モデルのパラメータを含むことができる。ユーザプロファイルの重要な利点は、ユーザプ
ロファイルが「コールドスタート」(すなわち、被検者が新たな推定・測定セッションを
開始すること)によって生じるモデル適応遅延を防止することができるということである
。言い換えれば、被検者に対して適応(較正)するために(図12に示すように)有限の
期間が必要となる場合があり、この較正フェーズは、被検者の以前のモデルパラメータが
メモリに記憶されている場合には短縮することができる。
【0097】
<他のバイオメトリック推定>
前述したように、図1のシステム及び図2図4の対応する方法(並びに図6図7
及び図8の補足例)は、BPの連続的な推定よりも広く適用することができる。様々な連
続的な生理学的推定を本発明の実施形態により実現することができる。すなわち、バイオ
メトリック推定値が生成されること、及び、バイオメトリック測定値が受け付けられるこ
と以外に、図1及び図2図4の本発明の他のコア要素が依然として有効なものとするこ
とができる。
【0098】
PPG情報は、血流に関する豊富な情報を含むので、血圧は、本発明の実施形態により
抽出することができる多くのリアルタイム血行動態パラメータのうちの1つにすぎない。
すなわち、動脈圧、平均動脈圧、収縮期圧力変動、脈圧変動、1回排出量変動、右動脈圧
、右心室圧、肺動脈圧、平均肺動脈圧、肺動脈楔入圧、左心房圧、心拍出量、心係数、1
回排出量、1回排出量係数、全身血管抵抗、全身血管抵抗係数、肺血管抵抗、肺血管抵抗
係数、1回仕事量係数、駆出率等(これらに限定されるものではない)の様々な血行動態
パラメータを本発明の実施形態により推定することができる。本発明の実施形態がこれら
のパラメータを推定する能力は、適切な測定デバイス次第である。例えば、本発明の実施
形態によりリアルタイム駆出率を正確に推定するには、心エコーモニタリングデバイス等
の正確なベンチマークデバイスから時間的に関係のある測定データを収集することが必要
とされる。
【0099】
単なる1つの例として、測定データは、EEG測定値を含むことができ、生成される関
連したバイオメトリック推定は、EEG評価の推定とすることができる。EEG評価の非
限定的な例は、覚醒度、支配パターン(例えば、アルファ、ベータ、シータ、又はデルタ
)、被検者の意図、異常性の識別、正常性の識別、脳障害、眠気、覚醒状態等を含むこと
ができる。この場合に、PPGセンサを処理することから生成される特有の特徴量のうち
の少なくともいくつかは、血圧の推定において使用されるものよりも大幅に大きな重み又
は小さな重みが与えられる。これは、EEGとPPGとの間の生理学的関係がBPとPP
Gとの生理学的関係とはかなり異なるからである。例えば、PPGピークロケーション(
心拍変動、収縮期ピーク及び拡張期ピークの時間ロケーション、並びに重拍切痕の時間ロ
ケーション等)における時間領域変動に関するPPG特徴量は、EEG特徴量とより密接
に関係付けることができる。
【0100】
別の例として、測定データがガス交換(呼吸)解析測定値を含む場合には、生成される
関連したバイオメトリック推定は、ガス交換解析測定値の推定を含むことができる。ガス
交換解析測定値の非限定的な例は、二酸化炭素、酸素、動静脈血酸素較差、運動時周期性
呼吸変動、呼気内の二酸化炭素又は酸素の割合、呼気量、代謝当量、最大換気量、酸素摂
取効率勾配、呼気終末二酸化炭素又は呼気終末酸素の分圧、二酸化炭素放出量、呼吸交換
率、分時換気量、死腔換気量、換気閾値、酸素又は二酸化炭素の換気当量、酸素摂取量等
を含むことができる。
【0101】
同様の例において、測定データが動脈血ガス測定値を含む場合には、生成される関連し
たバイオメトリック推定は、動脈血ガス測定値の推定を含むことができる。動脈血ガス測
定値の非限定的な例は、H+レベル又はpHレベル、総CO含有量、総O含有量、酸
素又は二酸化炭素の分圧、HCO (重炭酸塩)、SBC、塩基過剰、動脈酸素化、
静脈酸素化、酸素抽出等を含む。ガス交換解析推定又は動脈血ガス推定を生成する場合に
ついて、光の複数の波長の一組の特有の特徴量を生成するために、同時の多波長(MWL
:multiwavelength)データ(MWL PPGセンサからのPPGデータのストリーミン
グ等)を含むPPGデータを受け付けることが特に重要であり得る。これは、PPG特徴
量分布が、使用される光の波長に依存する場合があり、この分布が、モニタリングされて
いる呼吸ガスパラメータ又は血液ガスパラメータに応じて、時間において異なって変調す
る場合があるからである。単なる1つの例として、異なる波長の光のPPG信号の相対振
幅は、高レベルの血液酸素化に対して低レベルの血液酸素化では特有の方法で変調する。
【0102】
別の例では、図1及び図2図4の測定データが、深部体温測定値を含む場合には、生
成される関連したバイオメトリック推定は、深部体温の推定を含むことができる。PPG
情報、特に心拍数変化は深部体温と関係することが知られており(例えば、米国特許第1
0,206,627号参照。この米国特許は、その全体を引用することにより本明細書の
一部をなすものとする)、したがって、被検者のPPGデータを温度測定値とともにマッ
ピングする特有のPPG特徴量が存在する。日常生活の活動の全体にわたって深部体温を
連続して測定することは困難であるので、本明細書における本発明は、深部体温測定値に
よって以前に更新された適応型モデルに基づいてPPGデバイスから収集されたデータを
処理することにより、携帯式で深部体温を推定する有益な方法を可能にする。
【0103】
別の例では、図1及び図2図4の測定データが血糖レベルを含む場合には、生成され
る関連したバイオメトリック推定は、血糖値の推定を含むことができる。この使用事例で
は、被検者は、血糖値計(連続グルコースモニタ-CGM等)を装着し、又は自身の手指
を定期的に刺して一連の測定血糖値を生成することができる。これらのグルコース測定値
は、本発明の実施形態によれば、PPGデータのストリーミングとともに計算システム1
00(図1)によって受け付けられ、これらの組み合わされたデータを処理して、PPG
に基づきグルコース推定を生成することができる。引用によりその全体が本明細書の一部
をなすものとするPCT出願第20/49229号に要約されているように、血糖値の傾
向と関係するPPG特徴量が存在し、特に、多波長PPGデータ内に表される呼吸作用に
関する変化及び動脈コンプライアンスの変化に関連した特徴量が存在する。これらの特徴
量は、図8の特徴量の基礎を提供することができ、モデルパラメータを更新する統計量は
、これらの呼吸作用に関する特徴量又は動脈コンプライアンスに関する特徴量(又は他の
特徴量)の統計量とすることができる。複数のグルコース測定に続く較正フェーズが完了
し、適応型モデルが連続的なPPGベースのグルコース推定について安定化すると(すな
わち、モデル更新は必要とされない)、長期の継続時間にわたる侵襲的な(又は最小限に
侵襲的な)血糖値測定から被検者を解放することができる。追加のグルコース測定値が適
応型予測モデルに提供される前の長期の継続時間(数時間、数日、又は数週間等)によっ
て、この長期の継続時間中のPPGによるグルコース推定の精度は、CGM又はフィンガ
プリックによるグルコース測定によって提供されるものよりも低くなる場合がある。しか
し、無痛のPPGに基づくグルコース推定の利点は、多くの使用事例において低下した精
度に勝ることができる。例えば、PPG推定手法は(グルコース測定用に較正されると)
、血糖状態をより精密に確認するためにグルコース測定値を収集する(すなわち、血液サ
ンプル又は他の体液サンプルを採取する)ことを被検者に知らせることができるよう、血
糖レベルの急上昇又は急低下を予測又は推定することに特に役立つことができる。
【0104】
<撮像用途>
前述したように、図1及び図2図4のシステム及び方法において利用することができ
る1つのタイプのPPGセンサは、撮像センサを含むことができる。撮像センサは、ポー
タブルのもの、スタンドオフのもの(被検者から離れたもの又は被検者が装着しないもの
)、及び/又は被検者によって装着されるもの(米国特許第10,623,849号にお
いてデジタルカメラ用に記載されているもの。この米国特許はその全体を引用することに
よって本明細書の一部をなすものとする)とすることができる。様々な撮像センサが当業
者によく知られており、CCDイメージャ、CMOSイメージャ、NMOSイメージャ、
光検出器アレイ等を含むが、これらに限定されるものではない。現代のモバイルエレクト
ロニクスにおけるカメラのユビキタス性は、血圧測定値を生成する血圧モニタも装着して
いる被検者を撮像する様々なセットアップをもたらす。
【0105】
PPGセンサとして撮像センサを利用することによってもたらすことができる重要な利
点がある。複数の異なる身体箇所から(すなわち、身体の全体にわたるバイオメトリック
推定のマップを緻密に示す)データを同時に取得することができる。また、電磁エネルギ
ーの複数の波長における同時のデータ(光子が可視範囲であるか又はそれ以外であるかを
問わない)を取得することができる。例えば、本明細書において説明される本発明の実施
形態は、PPGセンサとしての撮像センサとともに利用されるとき、少なくとも1つの血
圧モニタによって提供される測定データを用いて、複数の身体箇所における被検者の血圧
を同時に連続して推定するのに使用することができる。1つの実施形態において、被検者
は、(例えば、上腕血圧計カフにより)血圧計カフを腕に装着している場合があり、この
測定データは、その後、図1及び図2図4のシステム及び方法に供給される。撮像デー
タ及びBP測定データを処理するとき、適応型予測モデル(例えば、300、図8)は、
複数の身体箇所の連続的なBPを同時に推定するように構成することができる。1つの例
示的な実施態様では、上腕動脈領域(BP測定値が収集される領域)から収集されるPP
Gデータを処理して、身体の当該領域におけるBPの推定を生成することができる。この
関係は、身体の様々な領域にわたる血圧を連続して推定することができるよう、撮像セン
サの視野内において他の身体領域に広げることができる。次に、複数の身体箇所のバイオ
メトリック推定値を更に処理して、被検者の総合的な血行動態評価を生成することができ
る。例えば、血圧の不規則性又は不均一性は、不十分な血流(すなわち、血管閉塞、出血
、血管の問題等)を示すことができる。その上、末端における血圧に対する心臓における
相対血圧(中央血圧)を処理して、血流又は他の心血管の問題に対する末梢抵抗を示すこ
とができる。加えて、中央血圧と抹消血圧との間の時間動態の評価を使用して、被検者の
脈波伝播時間(PTT:pulse transit time)及び脈波速度(PWV:pulse wave veloc
ity)を評価することができる。
【0106】
血圧測定デバイス自体を本発明におけるリモート撮像センサとすることができることに
も留意すべきである。そして、そのような場合、ウェアラブルPPGセンサの利点は、(
撮像センサにより収集された)ビデオにより取得されるBP測定値に従って(血圧推定に
より)血圧を受動的に評価する能力とすることができる。逆に、本発明における血圧測定
デバイス自体を、ウェアラブルPPGセンサ(すなわち、BPを測定又は推定するために
最適化されている)又は血圧計カフとすることができ、バイオメトリックセンサを撮像セ
ンサとすることができる。そのような場合、この手法の重要な利点は、血圧測定からの新
たなデータが適応型予測モデルを改善し続けるので、リモート撮像システムが被検者のB
P推定を連続して受動的に(被検者の振る舞いの変化を必要とすることなくバックグラウ
ンドにおいて)改善できることとすることができる。
【0107】
<PPGの代替的な形態>
本発明は、バイオメトリックセンサデータが、PPGセンサデータでなくむしろ、電磁
気、聴診、電気、磁気、機械、熱等であるセンサデータ等の異なるセンサモダリティ(又
はセンサ融合手法ではこれらのモダリティを組み合わせたもの)である場合にも適用可能
とすることができる。そのような場合に、より一般的な発明を図9図10及び図11
示す。本発明がこれらの他のセンサモダリティについて適切に機能するためには、被検者
のBPを正確に連続して推定することに関して、それらのセンサモダリティが、波形デー
タの連続的なストリームを可能にし、特徴量の統計の変化速度が、PPG波形データに関
連した変化速度に匹敵することが重要である。PPG波形と時間が一致する身体の聴診的
変動、機械的変動、及び熱的変動があるので、これらの特定のモダリティは、(上記のモ
ダリティのリストと比較して)本明細書における本発明により血圧を推定するのに最も適
したものとすることができる。
【0108】
<予測の定義>
場合によっては、適応型予測モデルによって生成される推定は、推定が真にリアルタイ
ムであるとモデルが予測するものの推定とすることができる。ただし、いくつかの場合に
は、適応型予測モデルによって生成される推定は、推定が近い将来のものであるとモデル
が予測するものの推定とすることもできる。これを達成する1つの方法は、現在のバイオ
メトリック推定とは対照的にリアルタイムデータのセットを所与とする(将来の時点につ
いての)将来のバイオメトリック推定を生成するように調整された適応型予測モデルによ
るものである。これを達成する別の方法は、上記で略述したような方法を使用するが、そ
の後に、過去及び現在のバイオメトリック推定の傾向が更に処理され、将来のバイオメト
リック推定の予測が生成されるような追加のレイヤをモデルに適用して、現在のバイオメ
トリック推定を生成するものとすることができる。他の手法も利用することができる。
【0109】
将来のバイオメトリック推定を予測することの重要な利点は、(現在のバイオメトリッ
ク推定とは対照的に)本発明の実施形態を装着している被検者が将来の望ましくないバイ
オメトリック値を防止するための予防対策を講じることができるように、これらの望まし
くない値が差し迫ったものであり得ることを被験者に通知できるということである。例え
ば、糖尿病を管理している被検者は、自身の血糖レベルが急に上昇、下降する可能性があ
ることを知り、インスリン、グルコースの予防投与量を摂取してこの負の転帰を防止する
ことを可能にすることで利益を得ることができる。同様に、高血圧を管理している被検者
は、自身の血圧が急に上昇、下降する可能性があることを知り、それに応じて薬で治療す
ることを可能にすることによって利益を得ることができる。
【0110】
例示の実施形態が、ブロック図及びフロー図を参照して本明細書において説明されてい
る。これらのブロック図及びフロー図のブロック、並びにこれらのブロック図及びフロー
図におけるブロックの組み合わせは、アナログ素子及び/又はデジタル素子を有する電気
回路等の1つ以上のコンピュータ回路によって実行されるコンピュータプログラム命令に
よって実施することができることが分かる。これらのコンピュータプログラム命令は、汎
用コンピュータ回路、専用コンピュータ回路、及び/又は他のプログラマブルデータ処理
回路のプロセッサ回路に提供されて、コンピュータ及び/又は他のプログラマブルデータ
処理装置のプロセッサにより実行される命令が、トランジスタ、メモリロケーションに記
憶された値、及びそのような回路機構内の他のハードウェア構成要素を変換及び制御し、
ブロック図及びフロー図において指定された機能/動作を実施し、それによって、ブロッ
ク図及びフロー図において指定された機能/動作を実施する手段(機能)及び/又は構造
を生み出すような機械を生成することができる。
【0111】
特定の方法で機能するようにコンピュータ又は他のプログラマブルデータ処理装置に指
示することができるこれらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータ可読媒体に記
憶された命令が、ブロック図及び/又はフロー図において指定された機能/動作を実施す
る命令を含む製造品を生成するように、有形のコンピュータ可読媒体に記憶することもで
きる。
【0112】
有形の非一時的コンピュータ可読媒体は、電子式、磁気式、光学式、電磁式、又は半導
体のデータ記憶システム、装置、又はデバイスを含むことができる。コンピュータ可読媒
体のより具体的な例として、次のもの、すなわち、ポータブルコンピュータディスケット
、ランダムアクセスメモリ(RAM:random access memory)回路、リードオンリメモリ
(ROM:read-only memory)回路、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EP
ROM又はフラッシュメモリ)回路、ポータブルコンパクトディスクリードオンリメモリ
(CD-ROM:compact disc read-only memory)、及びポータブルデジタルビデオデ
ィスクリードオンリメモリ(DVD/BlueRay)がある。
【0113】
コンピュータ又は他のプログラマブル装置上で実行される命令が、ブロック図及び/又
はフロー図において指定された機能/動作を実施するステップを提供するように、コンピ
ュータプログラム命令をコンピュータ及び/又は他のプログラマブルデータ処理装置上に
ロードして、一連の動作ステップをコンピュータ及び/又は他のプログラマブル装置上で
実行し、コンピュータ実施されるプロセスを生成することもできる。したがって、本発明
の実施形態は、「ロジック」、「回路機構」、「モジュール」、「エンジン」、又はそれ
らの変形形態と総称することができるハードウェア及び/又はデジタル信号プロセッサ等
のプロセッサ上で動作するソフトウェア(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロ
コード等を含む)で具現化することができる。
【0114】
ブロック図及びフロー図の所与のブロックの機能を複数のブロックに分離することがで
き、及び/又は、ブロック図及びフロー図の2つ以上のブロックの機能を少なくとも部分
的に統合することができることにも留意すべきである。最後に、図示されたブロックの間
に他のブロックを追加/挿入することができる。その上、図のうちのいくつかは、通信の
主要な方向を示す矢印を通信パスに含むが、通信は、図示した矢印と逆方向に行うことが
できることが理解されるべきである。
【0115】
上記は、本発明の例示であり、限定として解釈されるべきではない。本発明の幾つかの
例示的な実施形態について説明したが、本発明の教示及び利点から実質的に逸脱せずに、
多くの変更が例示的な実施形態において可能なことを当業者であれば容易に理解するであ
ろう。したがって、全てのそのような変更は、特許請求の範囲において定義される本発明
の範囲内に含まれることが意図される。本発明は、均等物を含む特許請求の範囲により定
められる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2024-12-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の推定血糖値を生成する方法であって、少なくとも1つのプロセッサによって実行されるステップとして、
前記被検者のメタデータを受け付けて記憶するステップと、
前記被検者に装着されたPPGセンサからリアルタイムPPGデータを受け付けるステップと、
前記リアルタイムPPGデータと前記被検者のメタデータとを用いて適応型予測モデルにより前記被検者の推定血糖値を生成するステップと
を含む方法。
【請求項2】
血糖値モニタリングデバイスによる測定血糖値を受け付けるステップと、
前記測定血糖値が受け付けられると、前記適応型予測モデルの血糖値推定精度が向上するよう前記適応型予測モデルの1つ以上のパラメータをリアルタイムで更新するステップと
を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記測定血糖値がリアルタイム測定値であり、前記血糖値モニタリングデバイスが前記被検者に装着されるものである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記被検者に装着されたモーションセンサから前記被検者の活動情報を受け付けるステップと、
前記被検者の活動情報に応じて、血糖値モニタリングデバイスから測定血糖値を受け付けるステップと、
前記測定血糖値が受け付けられると、前記適応型予測モデルの血糖値推定精度が向上するよう前記適応型予測モデルの1つ以上のパラメータをリアルタイムで更新するステップと
を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
生成された前記推定血糖値が閾値を上回っているか又は下回っているかを検出するステップと、
生成された前記推定血糖値が前記閾値を上回っている又は下回っているとの判定がなされると、血糖値モニタリングデバイスによる測定血糖値を受け付けるステップと、
前記適応型予測モデルの血糖値推定精度が向上するよう前記適応型予測モデルの1つ以上のパラメータをリアルタイムで更新するステップと
を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
生成された前記推定血糖値が閾値を上回っている又は下回っているとのアラートをリモートデバイスに送るステップを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記被検者に装着されるウェアラブルデバイスに設けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ウェアラブルデバイスが、前記被検者の耳に、前記被検者の手足に、前記被検者に付けられるパッチとして、又は前記被検者の指に装着される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ウェアラブルデバイスが前記PPGセンサを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記被検者に装着されるウェアラブルデバイスに設けられ、前記ウェアラブルデバイスが、前記PPGセンサ及び前記血糖値モニタリングデバイスを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記PPGセンサが撮像センサを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記適応型予測モデルが、回帰モデルと機械学習モデルと分類器モデルとのうちの1つを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記推定血糖値の生成が現在の推定血糖値の生成を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記推定血糖値の生成が将来の推定血糖値の生成を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記現在の推定血糖値及び過去の推定血糖値を処理して将来の推定血糖値を予測するステップを更に含む請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記被検者のメタデータが、前記被験者の身長と、前記被験者の体重と、前記被験者の年齢と、前記被験者の性別と、前記被験者の薬の使用状況とのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記被験者のメタデータを用いて、前記被験者のために最適化された前記適応型モデルのパラメータを含む前記被験者のプロファイルを作成するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項18】
ウェアラブルデバイスであって、
PPGセンサと、
前記被検者のメタデータを受け付けて記憶し、前記ウェアラブルデバイスを装着した被検者の推定血糖値を、前記PPGセンサからのリアルタイムPPGデータと前記被検者のメタデータとを用いて適応型予測モデルにより生成する少なくとも1つのプロセッサと
を備えるウェアラブルデバイス。
【請求項19】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
血糖値モニタリングデバイスから測定血糖値を受け付けるステップと、
前記測定血糖値が受け付けられると、前記適応型予測モデルの血糖値推定精度が向上するよう前記適応型予測モデルの1つ以上のパラメータをリアルタイムで更新するステップと
を更に行う、請求項18に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項20】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
血糖値モニタリングデバイスから測定血糖値を受け付けるステップと、
生成された前記推定血糖値が閾値を上回っている又は下回っているとの判定がなされると、前記適応型予測モデルの血糖値推定精度が向上するよう前記適応型予測モデルの1つ以上のパラメータをリアルタイムで更新するステップと
を更に行う、請求項18に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項21】
前記少なくとも1つのプロセッサは、生成された前記推定血糖値が閾値を上回っている又は下回っているとのアラートをリモートデバイスに送るステップを更に行う、請求項18に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項22】
前記ウェアラブルデバイスは、前記被検者の耳に、前記被検者の手足に、前記被検者に取り付けられるパッチとして、又は前記被検者の指に装着される、請求項18に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項23】
前記PPGセンサが撮像センサを有する、請求項18に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項24】
前記適応型予測モデルが、回帰モデルと機械学習モデルと分類器モデルとのうちの1つを有する、請求項18に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項25】
前記被検者のメタデータが、前記被験者の身長と、前記被験者の体重と、前記被験者の年齢と、前記被験者の性別と、前記被験者の薬の使用状況とのうちの1つ以上を含む、請求項18に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項26】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記被験者のメタデータを用いて、前記被験者のために最適化された前記適応型モデルのパラメータを含む前記被験者のプロファイルを作成するステップをも行う、請求項18に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項27】
適応型予測モデルの血糖値推定精度を向上させる方法であって、少なくとも1つのプロセッサによって実行されるステップとして、
a)被検者に装着されたPPGセンサからのリアルタイムPPGデータと、血糖値モニタリングデバイスからの測定血糖値とを受付期間内に受け付けるステップと、
b)受け付けられた前記リアルタイムPPGデータから、当該受け付けられたPPGデータに表れる呼吸関連の変化及び動脈コンプライアンスの変化に関する特徴量を含む特徴量を生成するステップと、
c)前記特徴量及び前記測定血糖値を記憶するステップと、
d)前記記憶された特徴量を前記記憶された測定血糖値とともに処理することにより前記適応型予測モデルの1つ以上のパラメータをリアルタイムで更新するステップであって、更新された前記1つ以上のパラメータが前記適応型予測モデルの血糖値推定精度を向上させる、ステップと
を含む方法。
【請求項28】
後続の1つ以上の期間にわたりステップa)~d)を繰り返すステップを更に含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記適応型予測モデルにより前記被検者の推定血糖値を生成するステップと、
生成された前記推定血糖値が閾値を上回っている又は下回っているかどうかを判定するステップと、
生成された前記推定血糖値が前記閾値を上回っている又は下回っているとの判定がなされると、前記血糖値モニタリングデバイスによる別の測定血糖値を受け付けるステップと、
前記適応型予測モデルの前記1つ以上のパラメータをリアルタイムで更新するステップと
を更に含む請求項27に記載の方法。
【請求項30】
受け付けられた前記PPGデータから特徴量を生成するステップは、スライディング時間ウィンドウにより前記受付期間内に或る特徴量生成間隔にて特徴量を生成するステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記適応型予測モデルの前記1つ以上のパラメータを更新するステップは更に、
前記記憶された測定血糖値及び以前に記憶された測定血糖値を処理するステップと、
前記記憶された測定血糖値と前記以前に記憶された測定血糖値との間の補間を生成するステップと
を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記記憶された測定血糖値及び前記以前に記憶された測定血糖値を処理するステップは更に、以前に記憶された複数の測定血糖値を処理するステップを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記記憶された測定血糖値及び前記以前に記憶された測定血糖値を処理するステップは更に、予想される測定血糖値の補間を生成するステップを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記PPGセンサが撮像センサを有する、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
前記適応型予測モデルは、回帰モデルと機械学習モデルと分類器モデルとのうちの1つを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
前記特徴量及び前記測定血糖値がデータバッファに記憶される、請求項27に記載の方法。
【請求項37】
前記データバッファがFIFO(先入れ先出し)バッファを有する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記記憶された特徴量を前記記憶された測定血糖値とともに処理することは、前記記憶された特徴量のうちの少なくとも1つの関数を処理することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項39】
前記記憶された特徴量を前記記憶された測定血糖値とともに処理することは、前記記憶された少なくとも1つの特徴量の時系列についての統計情報を計算することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項40】
前記記憶された特徴量を前記記憶された測定血糖値とともに処理することは、前記記憶された少なくとも1つの特徴量の複数の時系列についての統計情報を計算することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項41】
前記記憶された特徴量を前記記憶された測定血糖値とともに処理することは、前記記憶された少なくとも1つの特徴量の複数の時系列についての加重統計情報を計算することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項42】
適応型予測モデルの血糖値推定精度を向上させるためのシステムであって、前記システムは少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
被検者に装着されたPPGセンサからのリアルタイムPPGデータと、血糖値モニタリングデバイスからの測定血糖値とを受付期間内に受け付けるステップと、
受け付けられた前記リアルタイムPPGデータから、当該受け付けられたPPGデータに表れる呼吸関連の変化及び動脈コンプライアンスの変化に関する特徴量を含む特徴量を生成するステップと、
前記特徴量及び前記測定血糖値を記憶するステップと、
前記記憶された特徴量を前記記憶された測定血糖値とともに処理することにより前記適応型予測モデルの1つ以上のパラメータをリアルタイムで更新するステップであって、前記更新された1つ以上のパラメータが前記適応型予測モデルの血糖値推定精度を向上させる、ステップと
を行う、
システム。
【請求項43】
前記少なくとも1つのプロセッサは更に、
前記適応型予測モデルにより推定血糖値を生成するステップと、
生成された前記推定血糖値が閾値を上回っている又は下回っているかどうかを判定するステップと、
生成された前記推定血糖値が前記閾値を上回っている又は下回っているとの判定がなされると、前記適応型予測モデルの前記1つ以上のパラメータをリアルタイムで更新するステップと
を行う、請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
前記少なくとも1つのプロセッサは更に、生成された前記推定血糖値が前記閾値を上回っている又は下回っているとのアラートをリモートデバイスに送るステップを行う、請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
前記適応型予測モデルは、回帰モデルと機械学習モデルと分類器モデルとのうちの1つを含む、請求項42に記載のシステム。
【外国語明細書】