IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社吉田機工岡山の特許一覧

特開2025-38514海用量水標及びその製造方法並びに海用量水標の設置方法
<>
  • 特開-海用量水標及びその製造方法並びに海用量水標の設置方法 図1
  • 特開-海用量水標及びその製造方法並びに海用量水標の設置方法 図2
  • 特開-海用量水標及びその製造方法並びに海用量水標の設置方法 図3
  • 特開-海用量水標及びその製造方法並びに海用量水標の設置方法 図4
  • 特開-海用量水標及びその製造方法並びに海用量水標の設置方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025038514
(43)【公開日】2025-03-19
(54)【発明の名称】海用量水標及びその製造方法並びに海用量水標の設置方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 13/00 20060101AFI20250312BHJP
   E02B 1/00 20060101ALI20250312BHJP
【FI】
G01C13/00 D
E02B1/00 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023145163
(22)【出願日】2023-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】521200897
【氏名又は名称】株式会社吉田機工岡山
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【弁理士】
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(72)【発明者】
【氏名】吉田 敏明
(72)【発明者】
【氏名】小林 久範
(57)【要約】
【課題】
海水域又は汽水域への設置に適した海用量水標を提供する。
【解決手段】
海水域又は汽水域に設置するための海用量水標1において、基板11と、基板11のオモテ側に設けられた水位目盛12と、水位目盛12のオモテ側を覆う保護層13とを備えるとともに、設置時に鉛直方向上側に配される部分を、保護層13のオモテ側にフッ素系樹脂層14aが設けられたフッ素領域1aとする一方、設置時に鉛直方向下側に配される部分を、保護層13のオモテ側かつ最表層にシリコン系樹脂層14bが設けられたシリコン領域1bとした。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水域又は汽水域に設置するための海用量水標であって、
基板と、
基板のオモテ側に設けられた水位目盛と、
水位目盛のオモテ側を覆う保護層と
を備え、
設置時に鉛直方向上側に配される部分が、保護層のオモテ側にフッ素系樹脂層が設けられたフッ素領域とされ、
設置時に鉛直方向下側に配される部分が、保護層のオモテ側かつ最表層にシリコン系樹脂層が設けられたシリコン領域とされた
海用量水標。
【請求項2】
基板と水位目盛と保護層とを備えた目盛板を上下方向に複数枚並べて形成され、
設置時に鉛直方向上側に配される目盛板が、保護層のオモテ側にフッ素系樹脂層が設けられたフッ素目盛板とされ、
設置時に鉛直方向下側に配される目盛板が、保護層のオモテ側かつ最表層にシリコン系樹脂層が設けられたシリコン目盛板とされた
請求項1記載の海用量水標。
【請求項3】
目盛板の端部に、
基板及び保護層の端面を覆う端面被覆部と、
端面被覆部に連続して設けられ、保護層のオモテ側を覆うオモテ側被覆部と
を有する端部処理テープが貼られた
請求項2記載の海用量水標。
【請求項4】
フッ素目盛板においては、端部処理テープのオモテ側被覆部が、フッ素系樹脂層よりもオモテ側に配されているのに対し、
シリコン目盛板においては、端部処理テープのオモテ側被覆部が、シリコン系樹脂層よりもウラ側に配されている
請求項3記載の海用量水標。
【請求項5】
請求項1~4いずれか記載の海用量水標の製造方法。
【請求項6】
海用量水標を海水域又は汽水域に設置するための海用量水標の設置方法であって、
基板と、
基板のオモテ側に設けられた水位目盛と、
水位目盛のオモテ側を覆う保護層と
を備え、
設置時に鉛直方向上側に配される部分が、保護層のオモテ側にフッ素系樹脂層が設けられたフッ素領域とされ、
設置時に鉛直方向下側に配される部分が、保護層のオモテ側かつ最表層にシリコン系樹脂層が設けられたシリコン領域とされた
海用量水標を、
フッ素領域が飛沫帯に重なり、シリコン領域が干満帯に重なる状態で設置する
海用量水標の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海用量水標及びその製造方法に関する。本発明はまた、海用量水標の設置方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
河川等の水域には、水位を目視等により測るための量水標が設けられることがある。このような量水標としては、例えば、特許文献1の図1に記載の量水標が挙げられる。同文献の量水標は、同図に示されるように、橋脚50の鉛直な固定面51に固定された状態で設置されており、固定面51に対して上下方向に並べた複数枚の目盛板10を備えている。この目盛版10のオモテ面に記された目盛を読み取ることで、河川の水位を確認することができるようになっている。
【0003】
量水標としては、スチール製やステンレス製の基板に目盛を塗装しただけのものも流通している。しかし、基板に目盛を塗装しただけの量水標は、目盛が剥がれたり退色したりして経年劣化しやすく、短い期間で交換せざるを得ないという問題を有していた。この点、特許文献1に記載の量水標における目盛板10は、同文献の図6等に示されるように、基板10cと、基板10cのオモテ面に貼り付けられた目盛表示シート10aと、目盛表示シート10aのオモテ面を覆って目盛表示シート10aを保護する保護フィルム10bとを備えている。この保護フィルム10bを備えていることにより、同文献の量水標では、耐用年数を高めることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3165949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、津波に対する防災意識が高まっている。このため、本発明者らは、海水域や汽水域における水位の測定にもニーズが生まれているものと考えた。しかし、特許文献1に記載の量水標を含め、従来の量水標は、河川やダム等の淡水域に設置されることを想定して製造されたものであるため、海水域や汽水域への設置には適していないと思われた。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、海水域又は汽水域への設置に適した海用量水標を提供するものである。また、この海用量水標の製造方法と、この海用量水標の設置方法を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、
海水域又は汽水域に設置するための海用量水標であって、
基板と、
基板のオモテ側に設けられた水位目盛と、
水位目盛のオモテ側を覆う保護層と
を備え、
設置時に鉛直方向上側に配される部分が、保護層のオモテ側にフッ素系樹脂層が設けられたフッ素領域とされ、
設置時に鉛直方向下側に配される部分が、保護層のオモテ側かつ最表層にシリコン系樹脂層が設けられたシリコン領域とされた
海用量水標
を提供することによって解決される。
【0008】
この海用量水標は、
海用量水標を海水域又は汽水域に設置するための海用量水標の設置方法であって、
基板と、
基板のオモテ側に設けられた水位目盛と、
水位目盛のオモテ側を覆う保護層と
を備え、
設置時に鉛直方向上側に配される部分が、保護層のオモテ側にフッ素系樹脂層が設けられたフッ素領域とされ、
設置時に鉛直方向下側に配される部分が、保護層のオモテ側かつ最表層にシリコン系樹脂層が設けられたシリコン領域とされた
海用量水標を、
フッ素領域が飛沫帯に重なり、シリコン領域が干満帯(干満帯が存在しない水域では、海中部における上部分。以下同様。)に重なる状態で設置する
海用量水標の設置方法
により設置することができる。
【0009】
本明細書における「上」「下」という語は、別段の記載がある場合を除き、「鉛直方向上」「鉛直方向下」を意味するものとする。以下においては、「海水域又は汽水域」を単に「海水域等」と表現することがあり、「海水又は汽水」を単に「海水等」と表現することがある。
【0010】
本発明に係る海用量水標は、海水域等での使用に適したものとなっている。具体的には、海水域等の強い紫外線に対する耐候性と、海水域等における海洋生物付着に対する防汚性とを兼ね備えており、海水域等に設置した場合にも高い耐久性を発揮できるものとなっている。以下、その理由を、図1を参照しながら説明する。
【0011】
海水域等に設置される構造物は、一般に、鉛直方向の位置によって晒される環境が異なる。すなわち、図1に示すように、構造物の環境は、上から、大気部、飛沫帯、干満帯(干満がある水域の場合)、海中部及び海底土中部に区分される。大気部は、海水等の飛沫が殆ど届かない部分である。大気部に配された構造物は、略常時大気に晒される。飛沫帯は、大気部の直下から満潮位(干満がない水域では、海中部の直上)までの部分である。飛沫帯に配された構造物は、海水等に浸漬されることは殆どないが、海水等の飛沫を頻繁に浴びる。干満帯は、満潮位と干潮位との間の部分である。海水等の水面Wは、通常、この干満帯内に位置する。干満帯に配された構造物は、潮の満ち引きによって、海水等への浸漬と大気への露出とを繰り返す。海中部は、干潮位の直下(干満がない水域では、飛沫帯の直下)から海底までの部分である。海中部に配された構造物は、略常時海水等に浸漬される。海底土中部は、海底よりも下側の海中土壌中の部分である。海底土中部に配された構造物は、常時海水等に浸漬される。
【0012】
これらの環境区分のうち、大気部及び飛沫帯では、構造物が長時間強い紫外線に晒されることが多い。強い紫外線によって量水標の水位目盛や保護層がダメージを受けると、水位目盛が劣化してしまい、目盛を正確に読み取りにくくなるおそれがある。一方、干満帯では、構造物が定期的に海水等に浸漬されるため、紫外線によるダメージは限定的であるが、構造物に海洋生物が付着しやすくなっている。量水標における水位目盛が設けられている面(オモテ面)に海洋生物が付着してしまうと、水位目盛が隠れてしまい読み取りづらくなる。特に、海水域等には、牡蠣やフジツボ等の固着性の海洋生物も多く生息しているところ、これらの生物が量水標に固着してしまうと、量水標を傷つけずに除去することは不可能であるため、量水標を短期間で交換せざるを得なくなるおそれがある。
【0013】
この点、本発明に係る海用量水標においては、上述したように、設置時に上側に配される部分を、フッ素系樹脂層を有するフッ素領域としている。フッ素系樹脂層は、紫外線等に対する耐候性に優れているため、このフッ素領域が飛沫帯に重なる状態で海用量水標を設置することにより、海用量水標における飛沫帯や大気部に配された部分が紫外線によるダメージを受けにくくすることができる。
【0014】
ただし、例えば海用量水標全体をフッ素領域とする等、干満帯にもフッ素領域が重なるようにした場合には、干満帯における海洋生物の付着を十分に防止できないおそれがある。このため、本発明に係る海用量水標では、設置時に下側に配される部分を、シリコン系樹脂層を有するシリコン領域としている。シリコン系樹脂層は、生物付着を防止する防汚性に優れているため、シリコン領域が干満帯に重なる状態で海用量水標を設置することにより、海用量水標のオモテ面に海洋生物が付着しにくくすることができる。
【0015】
ところで、生物付着を防止することだけを考えると、例えば海用量水標全体をシリコン領域としてもよいようにも思われる。しかし、シリコン系樹脂層はフッ素系樹脂層よりも対紫外線に劣るため、海用量水標全体をシリコン領域とした場合には、海用量水標における飛沫帯の高い位置や大気部に重なる部分でシリコン系樹脂層や保護層や水位目盛が紫外線ダメージを受けて劣化してしまい、海用量水標の耐久性を高めにくくなるおそれがある。
【0016】
以上のことから、本発明に係る海用量水標においては、設置時に上側となる部分にフッ素領域を設けており、設置時に下側となる部分にシリコン領域を設けている。これにより、海水域等に設置した場合における海用量水標の耐候性と防汚性とを共に高めることができ、結果として海用量水標の耐久性を高めることができる。
【0017】
本発明に係る海用量水標は、1枚の連続した構造体として形成することもできる。ただし、この場合には、1枚の基板上にフッ素領域とシリコン領域とが共存するようになるため、基板上でフッ素系樹脂層とシリコン系樹脂層とを切り変える必要があり、海用量水標の製造に手間がかかるおそれがある。また、運搬時や保管時に海用量水標が嵩張るおそれもある。このため、本発明に係る海用量水標を、基板と水位目盛と保護層とを備えた目盛板を上下方向に複数枚並べて形成するとともに、設置時に鉛直方向上側に配される目盛板を、保護層のオモテ側にフッ素系樹脂層が設けられたフッ素目盛板とし、設置時に鉛直方向下側に配される目盛板を、保護層のオモテ側かつ最表層にシリコン系樹脂層が設けられたシリコン目盛板とすることが好ましい。これにより、フッ素領域とシリコン領域とを、別々の目盛板に設ける(1枚の目盛板上に、フッ素領域とシリコン領域とが共存しないようにする)ことができる。したがって、基板上でフッ素系樹脂層とシリコン系樹脂層とを切り変える必要がなく、海用量水標の製造工程をシンプルにすることができる。
【0018】
ただし、目盛板を上下方向に複数枚並べることによって海用量水標を形成すると、飛沫帯や干満帯や海中部に目盛板の上端部や下端部が配されるようになり、当該端部において基板と保護層との間に固着性海洋生物の幼生や海水等が侵入しやすくなるおそれがある。基板と保護層との間に固着性海洋生物の幼生や海水等が侵入すると、保護層が剥がれやすくなり、海用量水標の耐久性を高めにくくなるおそれがある。このため、本発明に係る海用量水標においては、目盛板の端部に、基板及び保護層の端面を覆う端面被覆部と、端面被覆部に連続して設けられ、保護層のオモテ側を覆うオモテ側被覆部とを有する端部処理テープを貼ることが好ましい。これにより、基板と保護層との間に固着性海洋生物の幼生や海水等が侵入しにくくすることができ、海用量水標の耐久性をより高めることができる。
【0019】
上記の端部処理テープを設ける場合、フッ素目盛板においては、端部処理テープのオモテ側被覆部を、フッ素系樹脂層よりもオモテ側に配することが好ましい。これにより、海水等の浸入をよりしっかりと防ぐことができる。一方、シリコン目盛板においては、端部処理テープのオモテ側被覆部を、シリコン系樹脂層よりもウラ側に配することが好ましい。これにより、シリコン目盛板の端部も含めた全域において、シリコン系樹脂層が最表層を為すようにすることができ、海洋生物の付着をよりしっかりと防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によって、海水域又は汽水域への設置に適した海用量水標を提供することが可能になる。また、この海用量水標の製造方法と、この海用量水標の設置方法を提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】海用量水標を海水域に設置した状態を示す図である。
図2図1の海用量水標におけるα部を抜き出して拡大した図である。
図3図1の海用量水標におけるα部を、海用量水標の左右方向中心を通る鉛直面で切断して示した断面図である。
図4図1の海用量水標を水平面で切断して示した断面図である。
図5図3におけるβ部を抜き出して拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の好適な実施形態について、図面を用いてより具体的に説明する。以下においては、海用量水標を海水域に設置する場合を例に挙げて説明するが、海用量水標の設置場所は、海水域に限定されず、汽水域であってもよい。後掲の図1~5においては、x軸、y軸及びz軸を表示しており、これらの軸は異なる図面間でも一致させている。ただし、これらの軸により海用量水標を設置する向きが限定されるものではない。
【0023】
1.海用量水標及びその設置方法
図1は、海用量水標1を海水域に設置した状態を示す図である。図2は、図1の海用量水標1におけるα部を抜き出して拡大した図である。図3は、図1の海用量水標1におけるα部を、海用量水標1の左右方向中心を通る鉛直面で切断して示した断面図である。図4は、図1の海用量水標1を水平面で切断して示した断面図である。図5は、図3におけるβ部を抜き出して拡大した図である。
【0024】
本実施形態の海用量水標1は、図1に示すように、海水域や汽水域における設置対象物90(例えば、岸壁等)の被設置面91に取り付けて、その水域の水位を測るためのものである。水位の測定は、水面Wが海用量水標1の上下方向におけるどの位置に重なるかを、目視やカメラ撮影等で観測することによって行われる。
【0025】
本実施形態の海用量水標1は、図3の拡大部分に示すように、基板11と、基板11のオモテ側に設けられた水位目盛12と、水位目盛12のオモテ側を覆う保護層13とを備えている。水位目盛12は、図2等にも示すように、目盛や数字を表示するためのものである。保護層13(図3)は、水位目盛12を覆って保護するためのものであり、透明な素材で形成されている。なお、本明細書における「透明」とは、可視光透過率が75%以上であることを意味するものとする。
【0026】
この海用量水標1は、構成が異なる2つの領域を有している。すなわち、海用量水標1の上側部分は、保護層13のオモテ側を覆うフッ素系樹脂層14aが設けられたフッ素領域1aとなっており、海用量水標1の下側部分は、保護層13のオモテ側を覆うシリコン系樹脂層14bが設けられたシリコン領域1bとなっている。フッ素系樹脂層14a及びシリコン系樹脂層14bは、それぞれ、フッ素領域1a及びシリコン領域1bにおける最表層を為している。
【0027】
この海用量水標1を海水域等に設置する際には、図2及び図3に示すように、設置水域における飛沫帯にフッ素領域1aが重なり、設置水域における干満帯(干満帯が存在せず、飛沫帯の直下が海中部である水域に設置する場合には、海中部における上部分。以下同様。)にシリコン領域1bが重なる状態で設置する。これにより、既に述べたように、海水域等における強い紫外線に対する耐候性と、海洋生物の付着に対する防汚性とを共に実現することができ、海用量水標1の耐久性を高めることができる。
【0028】
このとき、フッ素領域1aは、飛沫帯全体に重なっている必要はなく、少なくとも一部に重なっていればよい。一方、シリコン領域1bは、干満帯全体に重なっていることが好ましい。これにより、海洋生物の付着をよりしっかりと防ぐことができる。本実施形態の海用量水標1は、フッ素領域1aとシリコン領域1bとの2つの領域を有しているが、海用量水標1は、最表層を為す層の構成が互いに異なる3つ以上の領域を有していてもよい。
【0029】
フッ素領域1aとシリコン領域1bとは離れていてもよいが、本実施形態の海用量水標1においては、図3に示すように、フッ素領域1aの直下にシリコン領域1bを配している。すなわち、フッ素領域1aとシリコン領域1bとで、水位目盛12の目盛表示が連続するようにしている。フッ素領域1aとシリコン領域1bの境界1cは、飛沫帯と干満帯の境界と略一致させるか、飛沫帯と干満帯の境界よりも高い位置に配することが好ましい。すなわち、シリコン領域1bは飛沫帯の下側部分に重なってもよいが、フッ素領域1aは干満帯に重ならないようにすることが好ましい。というのも、干満帯の上側部分は、海洋生物が非常に付着しやすい部分であるため、この部分にフッ素領域1aが重なってしまうと、フッ素領域1aに海洋生物が激しく付着するおそれがあるのに対し、飛沫帯の下側部分は、海水等の飛沫が多く飛散する部分であるため、この部分にシリコン領域1bが重なったとしても、シリコン領域1bが受ける紫外線量は限定的であると考えられるからである。
【0030】
とはいえ、飛沫帯における高い位置にまでシリコン領域1bが重なるようにすると、シリコン領域1bの上部分に当たる海水等の飛沫が少なくなりすぎてしまい、その部分のシリコン系樹脂層14bが強い紫外線を受けて劣化しやすくなるおそれがある。このため、フッ素領域1aとシリコン領域1bの境界1cと、飛沫帯と干満帯との境界との距離H図3)は、100cm以下であることが好ましく、80cm以下であることがより好ましく、50cm以下であることがさらに好ましい。距離Hの下限は、特に限定されないが、通常0cm以上とされる。
【0031】
海用量水標1は、1枚の連続した構造体とすることもできる。ただし、その場合には、1枚の基板11上にフッ素領域1aとシリコン領域1bとが共存することになるため、既に述べたように、海用量水標1の製造に手間がかかるおそれがある。また、海用量水標1が嵩張るおそれもある。このため、本実施形態においては、図3に示すように、基板11と水位目盛12と保護層13とを備えた目盛板10を上下方向に複数枚並べることによって、海用量水標1を形成している。そして、複数の目盛板10のうち、設置時に上側に配される目盛板10として、保護層13のオモテ側にフッ素系樹脂層14aを有するフッ素目盛板10aを用いており、設置時に下側に配される目盛板10として、保護層13のオモテ側にシリコン系樹脂層14bを有するシリコン目盛板10bを用いている。本実施形態におけるフッ素目盛板10aでは、その略全域にフッ素系樹脂層14aが設けられている(その略全域がフッ素領域1aとなっている)。また、本実施形態におけるシリコン目盛板10bでは、その略全域にシリコン系樹脂層14bが設けられている(その略全域がシリコン領域1bとなっている)。
【0032】
これにより、フッ素領域1aとシリコン領域1bとが、それぞれ、フッ素目盛板10aとシリコン目盛板10bとに独立して設けられるようになる(フッ素領域1aとシリコン領域1bとが1枚の基板11上に共存することがなくなる)ため、海用量水標1の製造の手間を軽減することができる。また、運搬時や収納時に海用量水標1をコンパクトな状態とすることもできる。さらに、設置後の海用量水標1におけるいくつかの目盛板10が破損等した場合には、その目盛板10だけを交換すればよくなるため、コスト削減や資源節約にもなる。複数の目盛板10は、単に上下方向に並べた状態で設置することもできるし、連結部材(図示省略)を用いて互いに連結した状態で設置することもできる。
【0033】
ただし、海用量水標1を複数の目盛板10で形成すると、図3に示すように、飛沫帯や干満帯や海中部に、目盛板10の上端部や下端部が配されるようになり、当該端部が海水等の飛沫に触れたり、海水等に浸漬されたりするようになる。そして、当該端部における基板11と保護層13との間に、例えば牡蠣等の固着性海洋生物の幼生が侵入し、そこで定着して成長した場合には、当該生物の成長に伴って保護層13が基板11から大きく剥がされてしまうおそれがある。また、基板11と保護層13との間に単に海水等が浸入しただけでも、保護層13が基板11から剥がれやすくなり、海用量水標1の耐久性を高めにくくなるおそれがある。
【0034】
このため、本実施形態においては、図5に示すように、目盛板10の端部に、基板11と保護層13との間に海水等が浸入することを防ぐための端部処理テープ15を貼っている。この端部処理テープ15は、基板11及び保護層13の端面を覆う端面被覆部15aと、端面被覆部15aのオモテ側端部に連続して設けられ、保護層13のオモテ側を覆うオモテ側被覆部15bと、端面被覆部15aのウラ側端部に連続して設けられ、保護層13のウラ側を覆うウラ側被覆部15cとを有している。これにより、基板11と保護層13との間に固着性海洋生物の幼生や海水等が侵入しにくくすることができる。
【0035】
本実施形態におけるフッ素目盛板10aにおいては、図5に示すように、端部処理テープ15のオモテ側被覆部15aが、フッ素系樹脂層14aよりもオモテ側に配されている。すなわち、フッ素目盛板10aの端部においては、オモテ側被覆部15aが最表層を為している。これに対し、シリコン目盛板10bにおいては、端部処理テープ15のオモテ側被覆部15aが、シリコン系樹脂層14bよりもウラ側に配されている。すなわち、シリコン目盛板10bにおいては、端部も含めた全域で、シリコン系樹脂層14bが最表層を為している。というのも、シリコン目盛板10bは海洋生物の付着が起こりやすい干満帯に重なって配されるものであるところ、シリコン目盛板10bの最表層を端部処理テープ15が為す部分があると、その部分に海洋生物が付着してしまい、海用量水標1の耐久性を高めにくくなるおそれがあるからである。加えて、シリコン系樹脂層14bは極めて高い防汚性を有しているため、シリコン系樹脂層14bのオモテ面にオモテ側被覆部15aを貼り付けようとすると、オモテ側被覆部15aが剥がれやすくなり、水等の侵入を防止しにくくなるおそれもある。
【0036】
海用量水標1やこれを形成する目盛板10は、凹凸の無い略平板状とすることもできる。ただし、その場合には、海用量水標1や目盛板10の強度を高めにくいおそれがある。このため、本実施形態においては、図4に示すように、海用量水標1(及び目盛板10)を、被設置面91(図1)に対して固定される左右一対の側縁部Pと、被設置面91から手前側に離れた位置で被設置面91に対して略平行に支持される中央部Pと、左右一対の側縁部Pと中央部Pとをそれぞれに接続する左右一対の傾斜壁部Pとを有する断面ハット状に形成している。これにより、海用量水標1や目盛板10の強度を高めることができる。また、海用量水標1のオモテ側のあらゆる方向から水位目盛12を読み取りやすくしながらも、段差部分(傾斜壁部P)に漂流物等が引っ掛かりにくくすることもできる。
【0037】
基板11のウラ側には、図3図4に示すように、被設置面91(図1)に対する海用量水標1(目盛板10)の密着性を高めるための緩衝用部材16が取り付けられている。緩衝用部材16の形状は、特に限定されないが、本実施形態においては、上下方向に延在する帯状(棒状)としている。緩衝用部材16は、通常、弾性素材で形成される。弾性素材としては、発泡体を用いることも無発泡体を用いることもできる。本実施形態においては、緩衝用部材16をクロロプレンゴムで形成している。
【0038】
海用量水標1の設置場所は、海水域又は汽水域であれば特に限定されない。海用量水標1の設置場所としては、例えば、海岸(干潟等を含む)、河口、汽水湖、汽水ダム等が挙げられる。また、設置対象物90も、固定構造物であれば、その種類を限定されない。設置対象物90としては、例えば、海水域等における水門、樋門、岸壁、堤防、護岸、防波堤、消波堤、離岸堤、突堤、橋脚、その他海水等の水位変動に追随しない固定構造物が挙げられる。設置対象物90における被設置面91は、略鉛直な面だけでなく、鉛直方向に対して傾斜した面であってもよい。
【0039】
2.海用量水標の製造方法
本実施形態の海用量水標1(図3)は、フッ素目盛板10aとシリコン目盛板10bとをそれぞれ必要枚数だけ製造し、これらを組み合わせることによって製造することができる。
【0040】
2.1 フッ素目盛板の製造方法
フッ素目盛板10aは、目盛形成工程と、保護層形成工程と、フッ素系樹脂層形成工程と、端部テープ処理工程とを経ることにより製造することができる。
【0041】
2.1.1 目盛形成工程
目盛形成工程は、基板11(図3)のオモテ側に水位目盛12を形成する工程である。水位目盛12は、例えば、基板11に直接塗装や印刷等を施すことによって形成することもできる。ただし、この場合には、塗装に手間がかかるおそれや、特殊な印刷機が必要になるおそれがある。このため、本実施形態においては、水位目盛12を、オモテ側にインクジェット印刷が施された水位目盛用シートによって形成している。すなわち、まず、白紙状態の水位目盛用シート12のオモテ面にインクジェット印刷を施す。水位目盛用シート12のウラ面には、目盛用粘着剤層(図示省略)が設けられており、この目盛用粘着剤層は、印刷時においては剥離シート(図示省略)で覆われた状態となっている。印刷後の水位目盛用シート12から剥離シートを剥がし、露出した目盛用粘着剤層を基板11のオモテ面に貼り付ける。これにより、基板11に水位目盛12が積層され、目盛形成工程が完了する。
【0042】
基板11は、板状(より具体的には、図4に示すように、断面ハット状の板状)の部材であり、通常、金属又は樹脂で形成される。金属としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、銅合金、ニッケル合金等を採用することができる。樹脂としては、例えば、ABS樹脂、硬質塩化ビニル樹脂等が挙げられる。本実施形態においては、基板11を、ステンレス鋼のなかでも耐腐食性に優れたSUS316で形成している。フッ素目盛板10aの基板11と、シリコン目盛板10bの基板11とは、構成が異なっていてもよいが、通常同じとされる。
【0043】
水位目盛用シート12は、可撓性でインクジェット印刷可能なものであればその素材を限定されないが、塩化ビニル樹脂製とすることが耐塩性の観点から好ましい。本実施形態においては、水位目盛用シート12として、再起反射性を有する塩化ビニルシートを採用している。これにより、広い角度範囲において目盛を視認しやすくすることができる。水位目盛用シート12の厚みも限定されないが、ウラ面の目盛用粘着剤層(図示省略)を含めて0.1mm~0.5mm程度であることが好ましく、0.15mm~0.25mm程度であることがより好ましい。
【0044】
2.1.2 保護層形成工程
保護層形成工程は、水位目盛12のオモテ側に保護層13を形成する工程である。保護層13は、塗布等で形成することもできる。ただし、この場合には、保護層の厚みを均一に形成しにくいおそれがある。このため、本実施形態においては、予めシート状に形成された保護シート(図示省略)を、そのウラ面に設けられた保護層用粘着剤層(図示省略)で水位目盛12のオモテ面に貼り付けることによって、水位目盛12に保護層13を積層するようにしている。
【0045】
保護層13(保護シート)は、通常、透明な樹脂で形成される。本実施形態における保護層13は、透明な塩化ビニル樹脂で形成されている。保護層用粘着剤層(図示省略)を構成する粘着剤は、透明なものであれば限定されないが、アクリル系粘着剤を採用することが好ましい。保護層13の厚みも限定されないが、保護層用粘着剤層(図示省略)を含めて0.01mm~0.1mm程度であることが好ましく、0.03mm~0.08mm程度であることがより好ましい。
【0046】
2.1.3 フッ素系樹脂層形成工程
フッ素系樹脂層形成工程は、保護層13のオモテ側にフッ素系樹脂層14aを形成する工程である。フッ素系樹脂層14aは、保護層13と別々に形成してもよいが、その場合には、手間がかかるおそれがある。また、フッ素系樹脂層14aを均一に形成することが難しいおそれもある。このため、本実施形態におけるフッ素目盛板10aの製造方法においては、上記の保護層形成工程で用いる保護シート(図示省略)として、保護層13のオモテ側にフッ素系樹脂層14aが予め積層されたフッ素系ラミネートフィルム(図示省略)を用いている。これにより、フッ素系ラミネートフィルムを貼るという作業だけで、保護層13とフッ素系樹脂層14aとを同時に形成することができる(保護層形成工程とフッ素系樹脂層形成工程とを同時に行うことができる)ため、手間を省くことができる。
【0047】
フッ素系樹脂層14aを形成するフッ素系樹脂は、透明なものであれば、その具体的な種類を限定されない。フッ素系樹脂層14aは、保護層13のオモテ面に対して、架橋、スパッタリング、塗布等によって固定されていることが好ましい。これにより、フッ素系樹脂層14aが保護層13から剥がれにくくすることができ、海用量水標1の耐候性や耐久性をより高めやすくなる。
【0048】
2.1.4 端部テープ処理工程
端部テープ処理工程は、フッ素系樹脂層形成工程完了後のフッ素目盛板10a(図5)の端部に端部処理テープ15を貼る工程である。端部処理テープ15の貼付け面には、テープ用粘着剤層(図示省略)が設けられている。このテープ用粘着剤層によって、端部処理テープ15の幅方向中間部分(端面被覆部15a)を基板11、水位目盛用シート12、保護層13及びフッ素系樹脂層14aの端面に貼り、幅方向オモテ側(オモテ側被覆部15b)をフッ素系樹脂層14aのオモテ面に貼り、幅方向ウラ側(ウラ側被覆部15c)を基板11のウラ面に貼る。これにより、基板11と水位目盛用シート12との間や、水位目盛用シート12と保護層13との間等に、固着性海洋生物の幼生や海水等が浸入することを防ぐことができる。
【0049】
本実施形態においては、目盛板10の上端部及び下端部のみに端部処理テープ15を貼っている。一方、目盛板10の左右端部は、保護層13を基板11のウラ側まで巻き付けることによって端部処理を行っている。すなわち、保護層13を形成する保護シート(図示省略)の左右幅を、目盛板10の左右幅よりも大きくしておき、保護シート(図示省略)のうち左右に余った部分を基板11のウラ側に折り返すようにしている。ただし、別の実施形態においては、目盛板10の左右端部の処理にも端部処理テープ15を用いることができる。端部処理テープ15は、複数の目盛板10の上下端部のうち、飛沫帯に重なる端部及び干満帯に重なる端部に貼ることが好ましい。本実施形態においては、複数の目盛板10の上下端部全てに端部処理テープ15を貼っている。
【0050】
端部処理テープ15における、オモテ側被覆部15bの幅H図5)は、特に限定されない。ただし、オモテ側被覆部15bの幅Hが小さすぎると、オモテ側被覆部15bが剥がれやすくなるおそれがある。このため、オモテ側被覆部15bの幅Hは、5mm以上であることが好ましく、8mm以上であることがより好ましく、10mm以上であることがさらに好ましい。幅Hの上限値は、特に限定されないが、通常20mm以下とされる。
【0051】
端部処理テープ15における、ウラ側被覆部15cの幅H図5)も、特に限定されない。ウラ側被覆部15cの幅Hとしては、オモテ側被覆部15bの幅Hについて述べたものと同様の構成を採用することができる。
【0052】
端部処理テープ15は、通常、透明な樹脂製テープとされる。端部処理テープ15の素材は、水を通さないものであれば、特に限定されない。ただし、本実施形態における目盛板10は、図4に示すように、断面ハット状(平板状ではなく凹凸のある形状)に形成されており、その上端縁や下端縁の形状も段差を有するハット状であるところ、硬い(伸びにくい)素材で形成された端部処理テープ15を採用した場合には、上端縁や下端縁の段差に端部処理テープ15が沿うことができず、当該段差部において目盛板10と端部処理テープ15との間に隙間ができてしまうおそれがある。このため、端部処理テープ15の素材としては、柔軟性(延伸性)を有する透明な樹脂素材を採用することが好ましい。このような素材としては、例えば、軟質塩化ビニル樹脂や軟質ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。本実施形態においては、耐塩害性の観点から、軟質塩化ビニル樹脂製の端部処理テープ15を採用している。
【0053】
端部処理テープ15の厚みも特に限定されないが、端部処理テープ15が厚すぎると、オモテ側被覆部15bやウラ側被覆部15cが剥がれやすくなるおそれや、目盛板10における上端縁や下端縁の段差に端部処理テープ15が追随できないおそれがあり、端部処理テープ15が薄すぎると、端部処理テープ15が破損しやすくなるおそれがある。このため、端部処理テープ15の厚みは、テープ用粘着剤層(図示省略)を含めて、0.02mm~0.15mm程度であることが好ましく、0.05mm~0.1mm程度であることがより好ましい。端部テープ処理工程が完了すると、フッ素目盛板10aの製造が完了する。
【0054】
2.2 シリコン目盛板の製造方法
シリコン目盛板10b(図3)は、目盛形成工程と、保護層形成工程と、端部テープ処理工程と、シリコン系樹脂層形成工程とを経ることにより製造することができる。このうち、目盛形成工程及び保護層形成工程は、それぞれ、「2.1 フッ素目盛板の製造方法」における「2.1.1 目盛形成工程」及び「2.1.2 保護層形成工程」と同様の手順で行うことができるため、説明を割愛する。
【0055】
なお、フッ素目盛板10aにおける水位目盛12と、シリコン目盛板10bにおける水位目盛12とは、構成が異なっていてもよいが、通常同じとされる。また、フッ素目盛板10aにおける保護層13と、シリコン目盛板10bにおける保護層13とは、構成が同じであっても、異なっていてもよい。ただし、「2.1 フッ素目盛板の製造方法」における「2.1.2 保護層形成工程」では、保護シート(図示省略)として、保護層13のオモテ側にフッ素系樹脂層14aが予め積層されたフッ素系ラミネートフィルム(図示省略)を用いていたのに対して、「2.2 シリコン目盛板の製造方法」における保護層形成工程では、保護シートとして、保護層13のオモテ側に何も積層されていないものを採用する。というのも、本実施形態におけるシリコン系樹脂層14bは、後述するように、塗布により形成されるものであるところ、保護シートとしてフッ素系ラミネートフィルムを用いてしまうと、フッ素系樹脂層14aによってシリコン系樹脂層14bを形成するシリコン塗料が弾かれてしまい、フッ素系樹脂層14aをうまく形成することができないからである。
【0056】
2.2.1 端部テープ処理工程
シリコン目盛板10bの製造方法においては、シリコン系樹脂層形成工程よりも先に(保護層形成工程が完了した段階で)端部テープ処理工程を行う。すなわち、図5に示すように、端部処理テープ15の幅方向中間部分(端面被覆部15a)を基板11、水位目盛用シート12及び保護層13の端面に貼り、幅方向オモテ側(オモテ側被覆部15b)を保護層13のオモテ面に貼り、幅方向ウラ側(ウラ側被覆部15c)を基板11のウラ面に貼る。これ以外の構成については、「2.1 フッ素目盛板の製造方法」における「2.1.4 端部テープ処理工程」で述べたものと同様の構成を採用することができる。フッ素目盛板10aにおける端部処理テープ15と、シリコン目盛板10bにおける端部処理テープ15とは、異なる種類のテープであってもよいが、通常同じ種類のテープとされる。
【0057】
2.2.2 シリコン系樹脂層形成工程
シリコン系樹脂層形成工程は、保護層13のオモテ側にシリコン系樹脂層14bを形成する工程である。シリコン目盛板10bの製造方法においては、端部テープ処理工程の後にシリコン系樹脂層形成工程を行う。これによって、図5に示すように、端部処理テープ15のオモテ側被覆部15bをシリコン系樹脂層14bで覆って、オモテ側被覆部15bがシリコン目盛板10bのオモテ側最表層に出ないようにすることができる。
【0058】
シリコン系樹脂層14bは、例えば、予めシート状に形成されたものを、保護層13及び端部処理テープ15のオモテ側被覆部15bのオモテ側に、粘着剤層等を介して積層することもできるが、本実施形態においては、シリコン塗料を塗布することにより形成している。より具体的には、まず、保護層13及びオモテ側被覆部15b(図5)のオモテ側にプライマーを塗布することによってプライマー層14bを形成し、続いてプライマー層14bのオモテ側にシリコン塗料を塗布することによってシリコン系樹脂層14bを形成している。換言すると、本実施形態におけるシリコン系樹脂層14bは、プライマー層14bを介して保護層13及びオモテ側被覆部15bのオモテ側に積層されている。これにより、シリコン系樹脂層14bを、保護層13から剥がれにくくすることができる。
【0059】
プライマー層14bの形成に用いるプライマーとしては、少なくとも乾燥後に透明であるものを用いる(すなわち、形成後のプライマー層14bは透明である。)。プライマーは、シリコン塗料のプライマーとして使用可能なものであればその種類を特に限定されない。プライマーとしては、例えば、ウォッシュプライマー(短曝用エッチングプライマー)等を用いることができる。
【0060】
シリコン系樹脂層14bの形成に用いるシリコン塗料は、少なくとも乾燥後に透明であるものを用いる(すなわち、形成後のシリコン系樹脂層14bは透明である。)。シリコン塗料は、硬化して塗膜を形成できるものであればその具体的な種類を特に限定されない。シリコン塗料としては、2液型のものを用いることもできるが、本実施形態においては、湿式硬化タイプの1液型シリコン塗料を用いている。シリコン系樹脂層14bの形成が完了すると、シリコン目盛板10bの製造が完了する。
【符号の説明】
【0061】
1 海用量水標
1a フッ素領域
1b シリコン領域
10 目盛板
10a フッ素目盛板
10b シリコン目盛板
11 基板
12 水位目盛(水位目盛用シート)
13 保護層
14a フッ素系樹脂層
14b シリコン系樹脂層
14b プライマー層
15 端部処理テープ
15a 端面被覆部
15b オモテ側被覆部
15c ウラ側被覆部
16 緩衝用部材
90 設置対象物
91 被設置面
中央部
側縁部
傾斜壁部
W 水面
図1
図2
図3
図4
図5