(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025038537
(43)【公開日】2025-03-19
(54)【発明の名称】患者症状収集・閲覧システム
(51)【国際特許分類】
G16H 80/00 20180101AFI20250312BHJP
【FI】
G16H80/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023145209
(22)【出願日】2023-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】307010166
【氏名又は名称】第一三共株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139066
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩行
(72)【発明者】
【氏名】西窪 祐一
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】患者の治療を支援する。
【解決手段】本開示の一態様に係る情報処理装置2は、患者の治療方針の決定に用いられる患者背景情報に基づいて、患者の疾患又は治療に関する第1質問を決定する決定部102と、患者の端末装置3aに対して、第1質問を送信する第1送信部104aと、患者の端末装置3aに対して入力された、第1質問に対する第1回答を取得する第1取得部106aと、第1回答に基づいて、患者の治療を支援するための支援情報を生成する生成部108と、医療従事者の端末装置3cにおいて支援情報が出力されるように制御する出力制御部110と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の治療方針の決定に用いられる患者背景情報に基づいて、前記患者の疾患又は治療に関する第1質問を決定する決定部と、
前記患者の端末装置に対して、前記第1質問を送信する第1送信部と、
前記患者の端末装置に対して入力された、前記第1質問に対する第1回答を取得する第1取得部と、
前記第1回答に基づいて、前記患者の治療を支援するための支援情報を生成する生成部と、
医療従事者の端末装置において前記支援情報が出力されるように制御する出力制御部と、
を備える、情報処理装置。
【請求項2】
前記患者は、がん、白血病、肉腫、骨髄腫、脳卒中、心筋梗塞、高血圧性疾患、糖尿病、肝硬変、慢性腎不全及びうつ病、統合失調症及び認知症の少なくともいずれかを含む慢性疾患を罹患している者である、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記患者は、がん患者である、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記医療従事者の端末装置から、前記支援情報の表示に関する要求を受信する受信部、をさらに備え、
前記出力制御部は、前記要求に基づいて、前記医療従事者の端末装置において前記支援情報が出力されるように制御する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記支援情報は、前記患者の、身体の状態と、精神の状態との関係に関する情報を含む、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記支援情報は、前記患者に対して行った治療の内容と、前記患者の身体の状態又は精神の状態との関係に関する情報を含む、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記患者背景情報は、前記患者の、がんのタイプ、がんのステージ、がんの症状、診断時の状況、身体の状態及び精神の状態の少なくともいずれかに関する疾患背景情報を含む、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記患者背景情報は、前記患者の、治療スケジュール、治療歴、補助治療歴、治療に関する価値観、治療上の関心又は悩みの少なくともいずれかに関する治療背景情報を含む、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記決定部は、他の患者に関連付けられた前記患者背景情報と、当該他の患者に有効であった質問との関係に関する複数の学習データを学習させた機械学習モデルにより、前記第1質問を決定する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記複数の学習データの少なくとも一部は、前記患者又は前記医療従事者により入力されたものである、請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記出力制御部は、前記医療従事者の端末装置として、第1医療従事者の端末装置と、前記第1医療従事者とは異なる診療科の第2医療従事者の端末装置とにおいて前記支援情報が出力されるように制御する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記患者の端末装置に対して、前記第1回答に基づいて生成された第2質問を送信する第2送信部と、
前記患者の端末装置に対して入力された、前記第2質問に対する第2回答を取得する第2取得部と、
をさらに備え、
前記生成部は、前記第2回答にさらに基づいて、前記支援情報を生成する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記第2質問は、大規模言語モデルを利用した自然言語処理によって生成される、請求項12に記載の情報処理装置。
【請求項14】
コンピュータを、
患者の疾患又は治療に関する第1質問を表示する表示手段であって、前記第1質問は、患者の治療方針の決定に用いられる患者背景情報に基づいて決定される、表示手段と、
前記第1質問に対する第1回答の入力を受け付ける受付手段と、
前記患者の治療を支援するための支援情報が医療従事者の端末装置において出力されるように制御する出力制御手段であって、前記支援情報は、前記第1回答に基づいて生成される、出力制御手段と、
として機能させる、プログラム。
【請求項15】
コンピュータに、
患者の治療方針の決定に用いられる患者背景情報に基づいて、前記患者の疾患又は治療に関する第1質問を決定するステップと、
前記患者の端末装置に対して、前記第1質問を送信するステップと、
前記患者の端末装置に対して入力された、前記第1質問に対する第1回答を取得するステップと、
前記第1回答に基づいて、前記患者の診察を支援するための支援情報を生成するステップと、
医療従事者の端末装置に対して前記支援情報を送信するステップと、
を実行させる、情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者症状収集・閲覧システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、患者の情報を収集する技術が知られている。例えば、特許文献1には、疾患状態に関する初期応答データからユーザーインターフェイスを受け取り、インターフェイスモデルを介してプロセス データの初期応答を受け取ることで、疾患に対する推奨する治療方法を提供する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国公開特許第2021-0272659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1によっては、患者の治療を十分に支援することができない。例えば、患者から情報を収集する手法することに関して、検討の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、患者の治療を支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る情報処理装置は、患者の治療方針の決定に用いられる患者背景情報に基づいて、患者の疾患又は治療に関する第1質問を決定する決定部と、患者の端末装置に対して、第1質問を送信する第1送信部と、患者の端末装置に対して入力された、第1質問に対する第1回答を取得する第1取得部と、第1回答に基づいて、患者の治療を支援するための支援情報を生成する生成部と、医療従事者の端末装置において支援情報が出力されるように制御する出力制御部と、を備える。
【0007】
本開示の他の一実施形態に係るプログラムは、コンピュータを、患者の疾患又は治療に関する第1質問を表示する表示手段であって、第1質問は、患者の治療方針の決定に用いられる患者背景情報に基づいて決定される、表示手段と、第1質問に対する第1回答の入力を受け付ける受付手段と、患者の治療を支援するための支援情報が医療従事者の端末装置において出力されるように制御する出力制御部であって、支援情報は、第1回答に基づいて生成される、出力制御手段と、として機能させる。
【0008】
本開示の他の一実施形態に係る情報処理方法は、コンピュータに、患者の治療方針の決定に用いられる患者背景情報に基づいて、患者の疾患又は治療に関する第1質問を決定するステップと、患者の端末装置に対して、第1質問を送信するステップと、患者の端末装置に対して入力された、第1質問に対する第1回答を取得するステップと、第1回答に基づいて、患者の診察を支援するための支援情報を生成するステップと、医療従事者の端末装置に対して支援情報を送信するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、患者の治療を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】第1実施形態に係るシステム1の動作を説明するためのシーケンス図である。
【
図3】患者用端末装置3aの表示画面例について説明するための図である。
【
図4】患者用端末装置3aの表示画面例について説明するための図である。
【
図5】医師用端末装置3cの表示画面例について説明するための図である。
【
図6】第2実施形態に係るシステム1の動作を説明するためのシーケンス図である。
【
図7】情報処理装置2のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照して、本開示の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0012】
本開示において、「部」や「手段」、「装置」、「システム」とは、単に物理的手段を意味するものではなく、その「部」や「手段」、「装置」、「システム」が有する機能をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つの「部」や「手段」、「装置」、「システム」が有する機能が2つ以上の物理的手段や装置、ソフトウェアにより実現されても、2つ以上の「部」や「手段」、「装置」、「システム」の機能が1つの物理的手段や装置、ソフトウェアにより実現されてもよい。
【0013】
<1.システム1の概要>
本開示に係るシステム1(以下、単に「システム1」と称する)の概要について説明する。システム1によれば、患者と医療従事者とのコミュニケーションを円滑化することができる。一実施形態において、患者は、慢性疾患を罹患している者である。
【0014】
慢性疾患は、一般的に、治療が長期間にわたる場合が多い。そのため、その治療にあたっては、患者と医療従事者とが適切にコミュニケーションを取りながら治療を進行させることが重要となる。しかしながら、患者が自らの症状や治療に関する事項を医療従事者に対して適切に伝えることは容易ではない場合がある。例えば、症状を言語化することが困難である場合や、センシティブな事項に関する疑問がある場合等には、患者と医療従事者との間で情報の伝達が不十分となることがあった。システム1の効果の一例は、このような課題を解決することである。
【0015】
本開示において、患者は、例えば、がん(肺がん、乳がん、胃がん、大腸がん、子宮がん及び卵巣がん等を含む)、白血病、肉腫、骨髄腫、脳卒中、心筋梗塞、高血圧性疾患、糖尿病、肝硬変、慢性腎不全及び精神疾患(うつ病、統合失調症及び認知症を含む)等の慢性疾患を罹患している者であるとする。以下の実施形態では、患者は、乳がんを罹患している者(以下、「がん患者」と称する)であるとして説明するが、本開示の適用範囲はこれに限定されない。
【0016】
また、本開示において、医療従事者は、医師、看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、臨床検査技師及びカウンセラー等を含む。以下の実施形態では、医療従事者は、医師であるとして説明するが、本開示の適用範囲はこれに限られない。
【0017】
本開示に係るシステム1に含まれる情報処理装置2の動作の一例について、簡易的に説明する。情報処理装置2は、まず、がん患者の疾患や治療等の情報に基づいて、がん患者に行うべき質問(例えば、自身の症状で気になっていることの有無を問う質問や、今後の治療方針で理解が不足していることの有無を問う質問等)を決定する。次に、がん患者からその質問に対する回答を収集する。次に、収集した回答に基づいて、支援情報を生成する。最後に、支援情報を複数の診療科の医師の端末装置3cに対して送信する。
【0018】
<2.システム1の機能構成>
図1を参照して、システム1の構成の一例について説明する。システム1は、情報処理装置2、患者用端末装置3a、家族用端末装置3b、内科医用端末装置3c1、精神科医用端末装置3c2及び通信ネットワーク5を含む。以下、内科医用端末装置3c1、精神科医用端末装置3c2を特に区別しないときは、これらをまとめて「医師用端末装置3c」と称する。また、以下、患者用端末装置3a、家族用端末装置3b及び医師用端末装置3cを特に区別しないときは、これらをまとめて「端末装置3」と称する。情報処理装置2及び端末装置3は、通信ネットワーク5を介して互いに通信可能に構成されている。以下では、各装置の詳細について説明する。
【0019】
[情報処理装置2]
情報処理装置2は、端末装置3をクライアント装置とするサーバ装置である。情報処理装置2は、典型的には、webサーバ装置である。
【0020】
情報処理装置2は、制御部10、記憶部14、ネットワークインタフェース部16及びバス18を含む。制御部10、記憶部14及びネットワークインタフェース部16は、バス18を介して互いに電気的に接続されている。
【0021】
―記憶部14―
記憶部14は、情報処理装置2が動作するために必要となる各種情報を記憶する。また、記憶部14は、後述する制御部10が実行する各種プログラムを記憶する。また、記憶部14は、少なくとも、疾患背景情報、治療背景情報、質問情報、回答情報を記憶する。これらの情報の少なくとも一部をまとめて、患者背景情報と称することができる。
【0022】
(疾患背景情報)
疾患背景情報は、がん患者の疾患の状態に関する情報である。疾患背景情報の一例は、がん患者の、診断から現在に至るまでの疾患の記録に関する情報である。疾患背景情報は、がん患者の、がんのタイプ、がんのステージ、診断時の状況、がんの症状、身体の状態及び精神の状態の少なくともいずれかに関する情報を含む。一実施形態において、身体の状態及び精神の状態に関する情報は、がん患者の主観に基づく情報である。
【0023】
本開示において、がんのタイプは、がんに関連するたんぱく質の種類、がんの腫瘍の形状及び成長パターン、及び、遺伝による影響の有無等に基づいて特定される。例えば、がんが乳がんである場合には、がんに関連するたんぱく質の種類に基づいて特定されるがんのタイプとして、ホルモン受容体陽性乳がん、HER2(human epidermal growth factor receptor 2)陽性乳がん及び三重陰性乳がん(いわゆるトリプルネガティブ)等がある。また、がんの腫瘍の形状及び成長パターンに基づいて特定されるがんのタイプとして、浸潤性乳管癌(IDC:invasive ductal carcinoma)、非浸潤性乳管癌(DCIS:ductal carcinoma in situ)、浸潤性小葉癌(ILC:invasive lobular carcinoma)、非浸潤性小葉癌(LCIS:lobular carcinoma in situ)及び乳頭癌等がある。がんのタイプは、がんの治療方針を決定するにあたって重要となる。
【0024】
本開示において、がんのステージは、がんが体内でどの程度広がっているか、及び、各部位においてどの程度進行しているかを評価するため指標を示す。一実施形態において、がんのステージは、「ステージ0」―「ステージ4」(又は、「ステージ1」―「ステージ4」)により表現される。この場合、「ステージ0」(又は、「ステージ1」)は他のステージと比較して最も軽度な状態を示し、「ステージ4」は他のステージと比較して最も重篤な状態を示す。また、一実施形態において、がんのステージは、TNM分類に基づいて決定される。この場合、がんのステージは、腫瘍の大きさ(T:Tumor)、リンパ節の転移(N:Node)及び他の臓器への転移(M:Metastasis)により決定される。
【0025】
本開示において、診断時の状況は、診断時において、がん患者が初発であるか再発であるかを示す。がん患者の初発であるか再発であるかによって、身体的又は精神的に必要となる支援は異なり得るため、がんの治療方針を決定するにあたって重要となる。
【0026】
本開示において、がんの症状は、がんが、がん患者の心身に与えている影響を示す。がんの症状には、例えば、体重減少、疲労、眠気、皮膚や眼の色の変化、痛み、食欲不振、吐き気、発熱、しこり、及び咳や息切れ等がある。
【0027】
本開示において、身体の状態は、例えば、がん患者の身体に関する主訴、がんによる身体的な影響の強度、及び、がんによる身体的な症状が出ている期間の長さ等に関する情報を含む。なお、がんによる身体的な影響の強度は、例えば、スケール評価及び点数等により表現される。
【0028】
本開示において、精神の状態は、例えば、がん患者の精神に関する主訴、精神的な落ち込み具合の強度、及び、精神的に落ち込んでいる期間の長さ等に関する情報を含む。なお、精神的な落ち込み具合の強度は、例えば、スケール評価及び点数等により表現される。
【0029】
また、精神の状態は、例えば、治療の先行きの不透明感による不安感、自身の生命が危機にさらされることによる抑うつ感、治療の副作用や経済的な問題によるストレス、一般社会から一時的に隔離されることによる孤独感、及び、治療の過程で失われた身体の機能や特徴の喪失による喪失感等により表現される。
【0030】
(治療背景情報)
治療背景情報は、がん患者の治療の状態に関する情報である。治療背景情報の一例は、がん患者の、診断から現在に至るまでの治療の記録に関する情報である。治療背景情報は、がん患者の、治療スケジュール、治療歴、補助治療歴治療に関する価値観(以下、単に「価値観」と称する)及び治療上の関心又は悩み等に関する情報を含む。
【0031】
治療スケジュールは、がん患者の治療の予定である。一実施形態において、治療スケジュールは、治療の内容と、その治療が行われる時点との組み合わせである。また、本開示において、治療は、がん患者の身体の状態又は精神の状態を改善し得る行為を含むものとする。治療は、例えば、手術(腫瘍の切除及び乳房再建等を含む)、入院、退院、通院、投薬、リハビリ、運動、療養、食事及びカウンセリング等である。
【0032】
本開示において、治療歴は、がん患者が過去に行った、がんの腫瘍を除去するため又は縮小させるための治療の履歴であるとする。このような治療の一例は、腫瘍の切除手術、化学療法、ホルモン療法、放射線治療、免疫療法、凍結療法及び焼灼療法等である。
【0033】
本開示において、補助治療歴は、がん患者の身体の状態又は精神の状態を改善し得る治療(ただし、がんの腫瘍を除去等する治療を除く)の履歴であるとする。このような治療は、例えば、乳房再建、運動療法、食事療法及びカウンセリング等を含む。
【0034】
本開示において、価値観は、がん患者がどのようにがんを治療したいかという意志に関する。価値観は、例えば、各治療方法(例えば、手術、投薬及び放射線等)のメリット及びデメリットに対する考え方、治療と日常生活とのバランスに対する考え方、許容可能な副作用や痛みに対する考え方、及び、治療にかけられる時間的又は金銭的なコストに対する考え方等である。がんが乳がんである場合には、価値観は、リスクを受容して乳房を可能な限り残すか、又は、乳房を比較的大きく切除してリスクを可能な限り排除するかという意向を含む。がんは、他の疾患と比較して治療に長期間を要し、がん患者に様々な負担を強いる。そのため、がんの治療方針を決定するにあたって、がん患者の価値観は重要である。
【0035】
(質問情報)
質問情報は、がん患者に対する質問に関する情報である。一実施形態において、がん患者に対する質問は、がん患者が有し得る疑問点に関する質問、がん患者の疾患に関する質問、がん患者の治療に関する質問、及び、がん患者の価値観に関する質問を含む。
【0036】
がん患者が有し得る疑問点に関する質問は、がん患者がどのようなことを知りたいかを把握するための質問ということもできる。がん患者が有し得る疑問点に関する質問の一例は、「吐き気の原因や対処法について医師から説明を受けたいか否か」、「治療方針に関して追加の説明を受けたいか否か」及び「治療に要する費用について相談したいか否か」等である。
【0037】
がん患者の疾患に関する質問は、例えば、がんのタイプに関する質問、がんのステージに関する質問、診断時の状況に関する質問、がんの症状に関する質問、身体の状態に関する質問、及び、精神の状態に関する質問等である。
【0038】
がん患者の治療に関する質問は、例えば、治療スケジュールの希望に関する質問、治療歴の有無に関する質問、補助治療歴の有無に関する質問、価値観に関する質問、及び、治療上の関心又は悩みに関する質問等である。
【0039】
がん患者の価値観に関する質問は、例えば、各治療方法に対する考え方に関する質問、治療と日常生活とのバランスに対する考え方に関する質問、受容可能な副作用や痛みに対する考え方に関する質問、及び、治療にかけられる時間的又は金銭的なコストに関する質問等である。
【0040】
(回答情報)
回答情報は、がん患者に対する質問の回答に関する情報である。一実施形態において、がん患者に対する質問の回答は、がん患者が有する疑問点、がん患者の疾患に関する回答、がん患者の治療に関する回答、及び、がん患者の価値観に関する回答を含む。この場合、また、がん患者の疾患に関する回答は、疾患背景情報としても扱われてもよい。また、がん患者の治療に関する回答は、治療背景情報としても扱われてもよい。また、がん患者の価値観に関する回答は、価値観情報としても扱われてよい。
【0041】
(がん患者に関するその他の情報)
記憶部14は、がん患者に関するその他の情報をさらに記憶する。がん患者に関するその他の情報は、例えば、がん患者の、年齢、家族構成、世帯所得、医療費、生活上の関心又は悩み、目標、性別等である。
【0042】
これらの情報も、治療を支援するために有用である場合がある。一般的に、がん患者の年齢が若いほどがんの進行が早いため、年齢に応じて手術の時期を決定することができる。また、家族構成によって、がん患者が選択し得る治療の方針に制限がある場合があると考えられる。また、がん患者の世帯所得によっては、高額な費用がかかる治療(例えば、公的医療保険の対象外となる先進医療等)を行うこと関して制限がある場合があると考えられる。
【0043】
―制御部10―
制御部10は、記憶部14に記憶された各種プログラムを実行することにより、受信部100、決定部102、送信部104、取得部106、生成部108及び出力制御部110として機能する。
【0044】
(受信部100)
受信部100は、各種情報を受信する。一実施形態において、受信部100は、医師用端末装置3cから、後述する支援情報の表示に関する要求を受信する。
【0045】
また、一実施形態において、受信部100は、患者背景情報(すなわち、疾患背景情報及び治療背景情報)を他の装置から受信する。他の装置は、例えば、端末装置3、電子カルテシステムに含まれる装置、及び、情報処理装置2に接続された記憶装置等である。一実施形態において、受信部100が受信した情報は、記憶部14に記憶され、制御部10において処理可能な状態になる。
【0046】
(決定部102)
決定部102は、患者背景情報に基づいて、患者の疾患又は治療に関する第1質問を決定する。一実施形態において、第1質問は、記憶部14が質問情報として記憶する複数の質問からの中から決定される。
【0047】
一実施形態において、決定部102は、ルールベースで第1質問を決定する。具体的には、決定部102は、複数の質問のそれぞれに関連付けられた条件を参照し、患者背景情報がいずれかの質問に関連付けられた条件を満たしている場合、その質問を第1質問として決定する。例えば、「腫瘍切除手術の流れについて知りたいですか?」という質問に対して、「腫瘍切除手術を1週間以内に行うがん患者であること」という条件が関連付けられている場合、決定部102は、がんの切除手術を1週間以内行う予定があるがん患者に対して、「腫瘍切除手術の流れについて知りたいですか?」という質問を第1質問として決定する。
【0048】
他の一実施形態において、決定部102は、質問の関連度を算出することにより第1質問を決定する。具体的には、決定部102は、がん患者の患者背景情報に対して、記憶部14に記憶された複数の質問のそれぞれとの関連度を算出し、関連度が高い質問を第1質問として決定する。
【0049】
「関連度が高い質問」は、複数の質問のうち、例えば、患者背景情報との関連度が上位の所定数の質問、患者背景情報との関連度が所定の閾値以上の質問、及び、患者背景情報との関連度が最も高い質問等である。
【0050】
一実施形態において、決定部102は、患者背景情報及び質問の特徴量に基づいて、関連度を算出する。具体的には、患者背景情報と、複数の質問に含まれる所定の質問との関連度は、患者背景情報に基づいて生成される第1特徴量と、この所定の質問に含まれるテキスト等に基づいて生成される第2特徴量とを比較することによって算出される。この場合、第1特徴量及び第2特徴量の類似度が高い質問に対して、高い関連度が算出される。
【0051】
他の一実施形態において、決定部102は、予め定義されたリストを参照することにより、患者背景情報及び質問の関連度を算出する。本開示におけるリストは、例えば、患者背景情報に含まれる項目が取り得る値のそれぞれに対して、質問の当該値に応じた関連度が関連付けられた情報である。すなわち、決定部102は、このリストを参照することにより、患者背景情報のいずれの項目がいずれの値であるかに基づいて、質問の関連度を算出することができる。
【0052】
なお、患者背景情報の項目は、患者背景情報に含まれる情報の属性ということもでき、例えば、「がんのタイプ」、「精神の状態」及び「家族構成」等である。これに対して、項目の値は、項目の具体的な設定値である。例えば、「がんのタイプ」という項目が取り得る値は、「ホルモン受容体陽性乳がん」、「HER2陽性乳がん」及び「三重陰性乳がん」等である。また、「精神の状態」という項目が取り得る値は、「不安感が強い」、「少しストレスを感じる」及び「安心感がある」等である。
【0053】
他の一実施形態において、決定部102は、機械学習により生成した学習モデルに基づいて第1質問を決定する。この学習モデルは、例えば、複数のがん患者のそれぞれの患者背景情報と、当該複数のがん患者のそれぞれに対して複数の質問をした場合における、各質問の効果との関係を学習することにより生成される。この学習モデルに対して患者背景情報を入力することで、当該患者背景情報が関連付けられたがん患者に対して効果的であると推定される質問を出力として得ることができる。なお、質問の効果は、例えば、がん患者と医療従事者との間の円滑なコミュニケーションに寄与した程度等により示されてよい。また、学習モデルに対して学習させる学習データの少なくとも一部は、医師又はがん患者がシステム1に対するフィードバックとして入力したものであってもよい。
【0054】
(送信部104)
送信部104は、患者用端末装置3aに対して、質問を送信する。一実施形態において、送信部104は、患者用端末装置3aに対して、第1質問を送信する第1送信部104aを含む。また、一実施形態において、送信部104は、患者の端末装置3aに対して、第1質問に対するがん患者の第1回答に基づいて生成された第2質問を送信する第2送信部104bを含む。第2質問は、例えば、がん患者が知りたいと思っていることを、第1質問よりもさらに深堀りするような質問である。一実施形態において、第2質問は、大規模言語モデルを利用した自然言語処理によって生成される。大規模言語モデルは、大量のテキストデータから学習し、自然言語処理タスクを実行するための人工知能モデルを含む。大規模言語モデルは、例えば、GPT-4、GPT-3、LaMDA(Language Model for Dialogue Applications)、PaLM(Pathways Language Model)及びBERT等を含む。
【0055】
(取得部106)
取得部106は、患者の端末装置3aに対して入力された、質問に対する回答を取得する。一実施形態において、取得部106は、患者の端末装置3aに対して入力された、第1質問に対する第1回答を取得する。また、一実施形態において、取得部106は、患者の端末装置3aに対して入力された、第2質問に対する第2回答を取得する。
【0056】
なお、本開示において、情報を取得することは、当該情報を制御部10において処理可能な状態にすることを含む。情報を取得することは、他の装置から通信ネットワーク5を介して当該情報を受信すること、及び、記憶部14から当該情報を読み出すことの少なくとも一方を含む。
【0057】
(生成部108)
生成部108は、取得部106が取得した回答に基づいて、がん患者の治療を支援するための支援情報を生成する。一実施形態において、生成部108は、第1回答及び第2回答に基づいて支援情報を生成する。支援情報は、例えば、がん患者が有する疑問点に関する情報を含む。
【0058】
一実施形態において、支援情報は、がん患者の、身体の状態と、精神の状態との関係に関する情報を含む。身体の状態と、精神の状態との関係に関する情報は、例えば、身体の状態(又は精神の状態)が改善又は悪化した場合において、精神の状態(又は身体の状態)がどのように変化したかを示す情報である。
【0059】
他の一実施形態において、支援情報は、がん患者に対して行った治療の内容と、がん患者の身体の状態又は精神の状態との関係に関する情報を含む。がん患者に対して行った治療の内容と、がん患者の身体の状態又は精神の状態との関係に関する情報は、例えば、がん患者に対して腫瘍切除手術を行った場合において、がん患者の身体の状態又は精神の状態がどのように変化したかを示す情報である。
【0060】
(出力制御部110)
出力制御部110は、生成部108が生成した支援情報が医師用端末装置3cにおいて出力されるように制御する。本開示において、出力制御部112は、支援情報が医師用端末装置3cにおいて表示されるように制御するものとして説明する。支援情報は、医師用端末装置3cにおいて、例えば、テーブル、グラフ(棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフ、帯グラフ、ヒストグラム、散布図、レーダーチャート及びバブルチャート等を含む)及びリスト等を含んで表示される。一実施形態において、医師用端末装置3cは、がん患者の主治医の端末装置である。
【0061】
一実施形態において、出力制御部110は、医師用端末装置3cとして、第1医療従事者の端末装置3c(例えば、内科医用端末装置3c1)と、第1医療従事者とは異なる診療科の第2医療従事者の端末装置3c(例えば、精神科医用端末装置3c2)とにおいて支援情報が表示されるように制御してよい。すなわち、出力制御部110は、支援情報を複数の診療科の医師に対して共有することができる。第2医療従事者は、がん患者がセカンドオピニオンを求める意志であってもよい。
【0062】
また、一実施形態において、出力制御部110は、受信部100が受信した、医師用端末装置3cからの要求に基づいて、医師用端末装置3cにおいて支援情報が表示されるように制御してよい。
【0063】
なお、本開示において、所定の情報が端末装置3において出力されるように制御することは、当該所定の情報を端末装置3に対して送信すること、及び、当該所定の情報を出力させるための制御信号を端末装置3に対して送信することの少なくとも一方を含む。
【0064】
―ネットワークインタフェース部16―
ネットワークインタフェース部16は、通信ネットワーク5を介した他の装置との通信
を実現する。通信は、例えば、TCP/IPプロトコルにより実現されるものであってよ
い。
【0065】
[端末装置3]
端末装置3は、ユーザが使用する装置である。ユーザは、例えば、がん患者、がん患者の家族及びがん患者を治療する医師等である。端末装置3は、例えば、スマートフォン、スマートウォッチ、タブレット端末及びパーソナルコンピュータ等の電子機器である。端末装置3は、webブラウザ又はアプリケーションソフトウェア等を機能させることができる。
【0066】
ユーザは、端末装置3が備える入力インタフェースにより、各種情報(例えば、患者背景情報)を入力することができる。各種情報の入力は、チャットボット形式で入力してもよいし、テキストボックスへの自由記述形式で入力してもよいし、チェックボックスの選択形式で入力してもよい。テキストボックスへの自由記述形式による入力である場合は、キーワードを抽出し、入力として受け付けるようにしてもよい。チェックボックスの選択形式による入力である場合は、所定の情報の各項目について、トピックス及び当該トピックスに紐づいてより詳細化したサブトピックスのチェックボックスを設けておき、ユーザによりチェックボックスにチェックが入ることにより各種情報の入力として受け付けるようにしてもよい。
【0067】
本開示では、患者用端末装置3aはスマートフォンであるとして説明する。がん患者は、患者用端末装置3aが備えるタッチパネルディスプレイに触れることによって、患者用端末装置3aを操作することができる。
【0068】
また、本開示では、医師用端末装置3cはパーソナルコンピュータであるとして説明する。医師は、医師用端末装置3cに接続されたマウス及びキーボードを使用することによって、医師用端末装置3cを操作することができる。
【0069】
<3.情報処理装置2の動作>
―第1実施形態―
図2―
図5を参照して、第1実施形態に係る情報処理装置2の動作の一例について説明する。
図2は、第1実施形態に係る情報処理装置2及び端末装置3の動作を説明するためのシーケンス図である。
【0070】
(S100:患者背景情報の送信)
まず、患者用端末装置3aは、情報処理装置2に対して、患者背景情報を送信する(S100)。これに対して、情報処理装置2は、患者用端末装置3aから患者背景情報を受信する。情報処理装置2がこのステップで受信する患者背景情報は、例えば、がん患者の主観的な身体の状態及び精神の状態に関する情報等である。
【0071】
(S102:患者背景情報の送信)
次に、内科医用端末装置3c1は、情報処理装置2に対して、患者背景情報を送信する(S102)。これに対して、情報処理装置2は、内科医用端末装置3c1から患者背景情報を受信する。情報処理装置2がこのステップで受信する患者背景情報は、例えば、がん患者の客観的な身体の状態及び精神の状態に関する情報等である。
【0072】
なお、この例では、患者背景情報には、がん患者に比較的強い吐き気が継続的に生じていること、不眠であること、及び、不安感があることに関する情報が含まれるものとして説明する。
【0073】
(S104:質問の決定)
次に、情報処理装置2は、S100及びS102において受信した患者背景情報に基づいて、第1質問を決定する(S104)。この例では、患者背景情報に基づいて、質問情報に含まれる複数の質問から、「吐き気に対する対処法を知りたいと思っているか否か」(がん患者が有し得る疑問点に関する質問の一例)、「不眠及び不安感の他にどのような症状があるか」(がん患者の疾患に関する質問の一例)、「心身の状態はどの程度よいか」(がん患者の疾患に関する質問の一例)を第1質問として決定するものとして説明する。
【0074】
(S106:第1質問の送信)
図2に戻り、次に、情報処理装置2は、S104において決定した第1質問を患者用端末装置3aに対して送信する(S106)。
【0075】
(S108:第1質問の表示)
次に、患者用端末装置3aは、S106において受信した第1質問を表示する(S108)。
【0076】
図3は、S108における患者用端末装置3aの表示画面例について説明するための図である。
図3の表示画面例では、タイトルd1、質問文d100、回答入力領域d10、質問文d200、回答入力領域d20、質問文d300、回答入力領域d30及び送信ボタンd40が表示されている。
【0077】
タイトルd1は、表示画面のタイトルを示す。
図3の表示画面例では、「質問一覧」と表示されている。
【0078】
質問文d100、質問文d200及び質問文d300は、第1質問の内容を示す。
図3の表示画面例では、質問文d100には、「詳細な説明がほしい症状はありますか?」と表示されている。また、質問文d200には「該当する症状はありますか?」と表示されている。また、質問文d300には「心身の状態はどうですか?」と表示されている。質問文d100、質問文d200及び質問文d300は、それぞれ、「吐き気に対する対処法を知りたいと思っているか否か」を把握するための質問、「不眠及び不安感の他にどのような症状があるか」を把握するための質問、及び、「心身の状態はどの程度よいか」を把握するための質問である。
【0079】
回答入力領域d10は、質問文d100(「詳細な説明がほしい症状はありますか?」)に対応する回答をがん患者が入力するための領域である。この例では、回答入力領域d10の回答欄d104―回答欄d110は、患者背景情報に基づいてデフォルトで入力されているものとする。
【0080】
回答入力領域d20は、質問文d200(「該当する症状はありますか?」)に対応する回答をがん患者が入力するための領域である。この例では、回答入力領域d20には、それぞれががんの症状に対応するタグd202―タグd212が表示されている。この例では、タグd202―タグd212のうち、タグd210(「#眠れない」)及びタグd212(「#不安」)が患者背景情報に基づいてデフォルトで選択されているものとする。
【0081】
回答入力領域d30は、質問文d300(「心身の状態はどうですか?」)に対応する回答をがん患者が入力するための領域である。この例では、回答入力領域d30のスライドバーd302及びスライドバーd304は、患者背景情報に基づいてデフォルトで入力されているものとする。
【0082】
送信ボタンd124は、がん患者が押下することにより、回答情報を情報処理装置2に対して送信することができるボタンである。
【0083】
(S110:第1回答の受付)
図2に戻り、次に、患者用端末装置3aは、S108において表示された第1質問に対する第1回答を受け付ける。
【0084】
図4は、S110における患者用端末装置3aの表示画面例について説明するための図である。
図4の表示画面例には、
図3の表示画面例と比較して、がん患者が入力した回答が反映されている。
【0085】
がん患者は、回答入力領域d10の回答欄d104―回答欄d110のいずれかを押下することで、患者背景情報に基づいて自動入力された入力値を、自由入力形式又は選択形式により変更することができる。この例では、がん患者は、回答入力領域d10の入力値を変更しないものとして説明する。
【0086】
また、がん患者は、回答入力領域d20のタグd202―タグd212のいずれかを押下することにより、押下されたタグの選択及び選択解除を行うことができる。この例では、がん患者は、タグd208を押下することによって、「#食欲不振」のタグを追加で選択するものとして説明する。
【0087】
また、がん患者は、回答入力領域d30のスライドバーd302に設けられたスライダーを押下及びスワイプすることにより、スライダーをスライドバーd302上で移動させることができる。スライダーがスライドバーd302の右端(すなわち、
図4において笑っている顔のマーク)に近いほど、がん患者は、自身の身体の状態がよいと考えていることを示している。一方で、スライダーがスライドバーd302の左端(すなわち、
図4において苦しんでいる顔のマーク)に近いほど、がん患者は、自身の身体の状態がよくないと考えていることを示している。
【0088】
また、がん患者は、回答入力領域d30のスライドバーd304に設けられたスライダーを押下及びスワイプすることにより、スライダーをスライドバーd304上で移動させることができる。スライダーがスライドバーd304の右端に近いほど、がん患者は、自身の精神の状態がよいと考えていることを示している。一方で、スライダーがスライドバーd304の左端に近いほど、がん患者は、自身の精神の状態がよくないと考えていることを示している。
【0089】
(S112:第1回答の送信)
図2に戻り、次に、患者用端末装置3aは、S110で受け付けた第1回答を情報処理装置2に対して送信する(S112)。
【0090】
(S114:支援情報の生成)
次に、情報処理装置2は、S112において受信した第1回答に基づいて支援情報を生成する(S114)。支援情報の表示例については、後述する。
【0091】
(S116:要求の送信)
次に、内科医用端末装置3c1は、内科医である医師の操作に応じて、情報処理装置2に対して、支援情報の表示に関する要求を送信する(S116)。要求は、例えば、HTTPリクエスト等である。
【0092】
(S118:支援情報の送信)
次に、情報処理装置2は、S116で受信した要求に応じて、内科医用端末装置3c1に対して支援情報を送信する(S118)。支援情報の送信は、例えば、HTTPレスポンス等により行われる。
【0093】
(S120:支援情報の表示)
次に、内科医用端末装置3c1は、S118で受信した支援情報を表示する。支援情報の表示例については、後述する。
【0094】
(S122:要求の送信)
次に、精神科医用端末装置3c2は、精神科医である医師の操作に応じて、情報処理装置2に対して、支援情報の表示に関する要求を送信する(S122)。
【0095】
(S124:支援情報の送信)
次に、情報処理装置2は、S122で受信した要求に応じて、精神科医用端末装置3c2に対して支援情報を送信する(S124)。
【0096】
(S126:支援情報の表示)
次に、精神科医用端末装置3c2は、S122で受信した支援情報を表示する(S126)。
【0097】
図5を参照して、S120及びS126における医師用端末装置3cの表示画面例について説明する。
図5の表示画面例には、タイトルd2、リスト表示領域d50及びグラフ表示領域d60が表示されている。
【0098】
タイトルd2は、表示画面のタイトルを示す。
図5の表示画面例では、「ダッシュボード」と表示されている。
【0099】
リスト表示領域d50には、項目d500、値d502、項目d504、値d506、項目d508及び値d510が表示されている。項目d500、項目d504及び項目d508は、支援情報の表示内容の種類に対応する。値d502、値d506及び値d510は、それぞれ、項目d500、項目d504及び項目d508に対して関連付けられた具体的な値である。
【0100】
具体的には、項目d500の「患者様のご質問事項」というテキストに対しては、値d502の「吐き気の対処法について知りたい」というテキストが関連付けて表示されている。これらは、
図4の回答入力領域d10の入力内容に基づいて生成された事項である。
【0101】
また、項目d504の「現在の症状」というテキストに対しては、値d506の「#不安 #眠れない #食欲不振」という複数のタグが関連付けて表示されている。これらは、
図4の回答入力領域d20の入力内容に基づいて生成された事項である。
【0102】
なお、値d506の「#食欲不振」というタグには「新たな症状があります」というテキストが注意書きとして関連付けて表示されている。これは、S110において、がん患者が「#食欲不振」のタグd208を追加で選択したことに対応する。より具体的には、S108において説明したように、第1質問の少なくとも一部は、患者背景情報に基づいてデフォルトで自動入力されていてもよい。これに対してがん患者が追加で入力を行った場合、当該入力により得られた情報は、自動入力することができなかった情報(すなわち、予め受信していた患者背景情報には含まれていなかった情報)である可能性が高い。このような情報は、支援情報として強調して表示されることが望ましい。
【0103】
また、項目d508の「特記事項」というテキストに対しては、値d510の「精神の状態が継続的に悪化しています」というテキストが関連付けて表示されている。これらは、
図4の回答入力領域d30の入力内容に基づいて生成された事項である。支援情報は、このように、複数の時点のそれぞれにおける回答の推移に基づいて生成されてもよい。
【0104】
グラフ表示領域d60には、凡例d600、グラフd602、治療歴d604及び治療歴d606が表示されている。
【0105】
凡例d600には、グラフd602の凡例が表示されている。凡例d600によると、グラフd602において、身体の状態の推移は四角のマーカーで、精神の状態の推移は丸のマーカーで、それぞれ表示されている。
【0106】
グラフd602は、複数の時点のそれぞれにおける身体の状態及び精神の状態の推移を示す折れ線グラフである。グラフd602は、がん患者の、身体の状態と、精神の状態との関係に関する情報の一例である。
【0107】
治療歴d604及び治療歴d606は、それぞれ、がん患者が「腫瘍切除手術」及び「投薬変更」を行った時点を示す。グラフd602及び治療歴d604によると、がん患者は「腫瘍切除手術」の直後は身体の状態が一時的に悪化したことを把握することができる。また、グラフd602及び治療歴d606によると、がん患者は「投薬種類変更」の後から精神の状態が継続的に悪化していることを把握することができる。すなわち、グラフd602、治療歴d604及び治療歴d606は、がん患者に対して行った治療の内容と、がん患者の身体の状態又は精神の状態との関係に関する情報の一例である。
【0108】
―第2実施形態―
図6を参照して、第2実施形態に係る情報処理装置2の動作の一例について説明する。
図6は、第2実施形態に係る情報処理装置2及び端末装置3の動作を説明するためのシーケンス図である。なお、
図6のS300―S310については、
図2を参照して説明したS100―S112と同様であるため、以下では説明を省略する。
【0109】
情報処理装置2は、S310において第1回答を受信した後、第2質問を生成する(S312)。一実施形態において、第2質問は、大規模言語モデルを利用した自然言語処理によって生成される。大規模言語モデルは、例えば、ChatGPT(登録商標)である。
【0110】
次に、情報処理装置2は、第2質問を患者用端末装置3aに対して送信する(S314)。
【0111】
次に、患者用端末装置3aは、第2質問を表示するとともにがん患者から第2質問に対する第2回答を受け付け(S316―S318)、第2回答を情報処理装置2に対して送信する(S320)。
【0112】
次に、情報処理装置2は、S3120において受信した第1回答及びS320において受信した第2回答の少なくとも一方に基づいて、支援情報を生成する(S322)。
【0113】
<4.情報処理装置2による効果>
以上のとおり、本開示の一態様に係る情報処理装置2は、患者の治療方針の決定に用いられる患者背景情報に基づいて、がん患者の疾患又は治療に関する第1質問を決定する決定部102と、患者の端末装置3aに対して、第1質問を送信する第1送信部104aと、患者の端末装置3aに対して入力された、第1質問に対する第1回答を取得する第1取得部106aと、第1回答に基づいて、患者の治療を支援するための支援情報を生成する生成部108と、医療従事者の端末装置3cにおいて支援情報が出力されるように制御する出力制御部110と、を備える。
【0114】
上述したとおり、疾患の治療にあたっては、患者と医療従事者とが適切にコミュニケーションを取りながら治療を進行させることが重要となるが、患者が自らの症状や治療に関する事項を医療従事者に対して適切に伝えることは容易ではない場合がある。
【0115】
これに対して、情報処理装置2によれば、患者と医療従事者とのコミュニケーションを支援することができる。具体的には、情報処理装置2は、患者背景情報に基づいて患者に対する適切な質問を決定し、当該質問に対する回答を患者から収集する。さらに、情報処理装置2は、収集した回答に基づいて支援情報を生成し、医療従事者に対して提示する。情報処理装置2は、患者と医療従事者との仲介をするということもできる。
【0116】
情報処理装置2によれば、患者としては、治療を進行させる上での不明点等を医療従事者に対して適宜伝達することができるようになる。また、医療従事者としては、ヒアリングの手間を省略し、患者に対して質の高い医療サービスを提供することができるようになる。
【0117】
一実施形態において、患者は、がん、白血病、肉腫、骨髄腫、脳卒中、心筋梗塞、高血圧性疾患、糖尿病、肝硬変、慢性腎不全及びうつ病、統合失調症及び認知症の少なくともいずれかを含む慢性疾患を罹患している者である。
【0118】
慢性疾患の治療は長期間にわたることが多いため、医療従事者及び患者が適切にコミュニケーションを取りながら治療を進行させることが重要となる。
【0119】
また、一実施形態において、患者は、がん患者である。
【0120】
慢性疾患の中でも、がんは身体的・精神的負荷が特に大きい疾患一つである。また、がんの治療は、採用し得る治療方針が多岐にわたる場合がある。このような前提のもとでは、医療従事者と患者とが適切にコミュニケーションをとる重要性が特に高い。
【0121】
また、一実施形態において、情報処理装置2は、医療従事者の端末装置3cから、支援情報の表示に関する要求を受信する受信部100、をさらに備え、出力制御部110は、要求に基づいて、医療従事者の端末装置3cにおいて支援情報が出力されるように制御する。
【0122】
医療従事者は、一般的には多忙であり、支援情報が医療従事者に対してプッシュ通知的に提示されることは望ましくない場合がある。この構成によれば、支援情報は医療従事者の要求に応じて提示されるため、医療従事者の業務を圧迫することなく、患者とのコミュニケーションを支援することができるようになる。
【0123】
また、一実施形態において、支援情報は、患者の、身体の状態と、精神の状態との関係に関する情報を含む。
【0124】
この構成によれば、身体の状態及び精神の状態のいずれかのみではなく、その両方に注目した医療サービスを提供することを支援することができる。
【0125】
また、一実施形態において、支援情報は、患者に対して行った治療の内容と、患者の身体の状態又は精神の状態との関係に関する情報を含む。
【0126】
この構成によれば、医療従事者は、治療が患者に対して及ぼした影響を高い精度で把握することができるようになる。例えば、医療従事者は、「投薬種類変更」という治療を行った後から患者の精神の状態が悪化していることを把握することができれば、投薬に係る薬剤の種類をもとに戻すことを検討することができる(
図5参照)。
【0127】
また、一実施形態において、患者背景情報は、患者の、がんのタイプ、がんのステージ、がんの症状、診断時の状況、身体の状態及び精神の状態の少なくともいずれかに関する疾患背景情報を含む。また、一実施形態において、患者背景情報は、患者の、治療スケジュール、治療歴、補助治療歴、治療に関する価値観、治療上の関心又は悩みの少なくともいずれかに関する治療背景情報を含む。
【0128】
これらの構成によれば、患者に対して適切な質問ができる可能性が高まる。具体的には、情報処理装置2は、疾患背景情報を用いることにより、患者の疾患の症状や原因等に焦点を当てた質問を第1質問として決定できるようになる。また、情報処理装置2は、治療背景情報を用いることにより、患者の治療の方針や効果等に焦点を当てた質問を第1質問として決定できるようになる。
【0129】
また、一実施形態において、決定部102は、他の患者に関連付けられた患者背景情報と、当該他の患者に有効であった質問との関係に関する複数の学習データを学習させた機械学習モデルにより、第1質問を決定する。また、一実施形態において、複数の学習データの少なくとも一部は、医療従事者により入力されたものである。
【0130】
この構成によれば、患者に対して適切な質問ができる可能性がさらに高まる。
【0131】
また、一実施形態において、出力制御部110は、医療従事者の端末装置3cとして、第1医療従事者の端末装置3cと、第1医療従事者とは異なる診療科の第2医療従事者の端末装置3cとにおいて支援情報が出力されるように制御する。
【0132】
患者は、複数の診療科にわたって疾患の治療を行う場合がある。例えば、患者ががん患者である場合には、外科、消化器科、内科及び精神科等の複数の診療科のそれぞれの医師による治療を行う場合がある。この構成によれば、複数の診療科の医師に対して支援情報を共有することができるようになる。その結果、患者が何度も同じ説明をする必要がなくなり、より質の高い医療サービスを提供することが可能になる。
【0133】
また、一実施形態において、情報処理装置2は、患者の端末装置3aに対して、第1回答に基づいて生成された第2質問を送信する第2送信部104bと、患者の端末装置3aに対して入力された、第2質問に対する第2回答を取得する第2取得部106bと、をさらに備えてよく、生成部108は、第2回答にさらに基づいて、支援情報を生成してよい。また、一実施形態において、第2質問は、大規模言語モデルを利用した自然言語処理によって生成されてよい。
【0134】
患者としては、知識不足等に起因して、1度の回答で十分な情報量を情報処理装置2に対して提供できない場合がある。この構成によれば、患者から双方向的に情報を引き出すことができるようになる。結果として、支援情報をさらに充実させることができる。
【0135】
以上のとおり説明した情報処理装置2の効果は一例にすぎず、本開示の適用範囲を限定するものではない。
【0136】
<5.ハードウェア構成>
図7を参照して、上述してきた情報処理装置2及び端末装置3をコンピュータ70により実現する場合のハードウェア構成の一例を説明する。なお、それぞれの装置の機能は、複数台の装置に分けて実現することもできる。
【0137】
図7に示すように、コンピュータ70は、プロセッサ700と、記憶装置702と、入力I/F704と、データI/F706と、通信I/F708、及び表示装置710を含む。
【0138】
プロセッサ700は、記憶装置702に記憶されているプログラムを実行することによりコンピュータ70における様々な処理を制御する。例えば、情報処理装置2及び端末装置3の制御部が備える各機能部等は、記憶装置702に記憶されたプログラムを、プロセッサ700が実行することにより実現可能である。
【0139】
記憶装置702は、例えばRAM(Random Access Memory)などの記憶媒体である。RAMは、プロセッサ700によって実行されるプログラムのプログラムコードや、プログラムの実行時に必要となるデータを一時的に記憶する。
【0140】
記憶装置702は、他にも、例えばハードディスクドライブ(HDD)やフラッシュメモリなどの不揮発性の記憶媒体である。記憶装置702は、オペレーティングシステムや、上記各構成を実現するための各種プログラムを記憶する。当該各種プログラムを格納した記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体(Non-transitory computer readable medium)であってもよい。この他、記憶装置702は、各種情報を登録するテーブルと、当該テーブルを管理するDBを記憶することも可能である。このようなプログラムやデータは、必要に応じて記憶装置702にロードされることにより、プロセッサ700から参照される。
【0141】
入力I/F704は、ユーザからの入力を受け付けるためのデバイスである。入力I/F704の具体例としては、カメラ、ボタン、マイク、キーボード、マウス、タッチパネル、各種センサ、ウェアラブル・デバイスなどが挙げられる。入力I/F704は、例えばUSB(Universal Serial Bus)などのインタフェースを介してコンピュータ70に接続されてもよい。
【0142】
データI/F706は、コンピュータ70の外部からデータを入力するためのデバイスである。データI/F706の具体例としては、各種記憶媒体に記憶されているデータを読み取るためのドライブ装置などがある。データI/F706は、コンピュータ70の外部に設けられることも考えられる。その場合、データI/F706は、例えばUSBなどのインタフェースを介してコンピュータ70へと接続される。
【0143】
通信I/F708は、コンピュータ70の外部の装置と有線または無線により、通信ネットワーク5を介したデータ通信を行うためのデバイスである。通信I/F708は、コンピュータ70の外部に設けられることも考えられる。その場合、通信I/F708は、例えばUSBなどのインタフェースを介してコンピュータ70に接続される。
【0144】
表示装置710は、各種情報を表示するためのデバイスである。表示装置710の具体例としては、例えば液晶ディスプレイや有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ、ウェアラブル・デバイスのディスプレイなどが挙げられる。表示装置710は、コンピュータ70の外部に設けられてもよい。その場合、表示装置710は、例えばディスプレイケーブルなどを介してコンピュータ70に接続される。また、入力I/F704としてタッチパネルが採用される場合には、表示装置710は、入力I/F704と一体化して構成することが可能である。
【0145】
また、上記実施形態で記載された情報処理装置2及び端末装置3が備える構成要素は、記憶装置702に格納されたプログラムがプロセッサ700によって実行されることで、定められた処理が他のハードウェアと協働して実現されるものとする。また、言い換えれば、これらの構成要素は、ソフトウェアまたはファームウェアとしても、それと対応するハードウェアとしても想定され、その双方の概念において、「機能」、「手段」、「部」、「処理回路」、「ユニット」、または「モジュール」などとも記載され、またそれぞれに読み替えることができる。
【0146】
<6.変形例>
上記実施形態では、支援情報は内科医用端末装置3c1及び精神科医用端末装置3c2に対して送信されるとして説明したが、医療従事者の診療科はこれに限られない。診療科は、例えば、小児科、皮膚科、外科、整形外科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、脳神経外科、放射線科、麻酔科及び形成外科等である。
【0147】
上記実施形態では、支援情報は、内科医用端末装置3c1及び精神科医用端末装置3c2のそれぞれに対して同様の形式で表示されるとして説明したが、これに限られない。情報処理装置2は、医師用端末装置3cに対応する診療科に応じて支援情報を変更する変更部をさらに備えてもよい。変更部は、例えば、内科医用端末装置3c1に対しては、身体の状態に関する情報を強調して表示されるように支援情報を変更してよい。また、変更部は、精神科医用端末装置3c2に対しては精神の状態に関する情報が強調して表示されるように支援情報を変更してよい。
【0148】
上記実施形態において、出力制御部112は、支援情報が端末装置3において表示されるように制御するものとして説明したが、これに限られない。出力制御部112は、支援情報が、例えば音声として端末装置3から出力されるように制御してもよい。
【0149】
上記実施形態においては、支援情報は医師用端末装置3cにおいて表示されるとして説明したが、これに限られない。支援情報は、情報処理装置2から患者用端末装置3a及び家族用端末装置3bに対して送信され、これらの端末装置3上で表示されてもよい。
【0150】
なお、この例では回答欄d104―回答欄d110のすべてが自動入力されている例について説明するが、回答欄の少なくとも一部は自動入力されなくてもよい。
【0151】
<7.その他の実施形態>
以下のような態様も、本開示の範囲に含まれる。
【0152】
[付記1]
本開示の一態様に係る情報処理装置2は、患者の治療方針の決定に用いられる患者背景情報に基づいて、がん患者の疾患又は治療に関する第1質問を決定する決定部102と、患者の端末装置3aに対して、第1質問を送信する第1送信部104aと、患者の端末装置3aに対して入力された、第1質問に対する第1回答を取得する第1取得部106aと、第1回答に基づいて、患者の治療を支援するための支援情報を生成する生成部108と、医療従事者の端末装置3cにおいて支援情報が出力されるように制御する出力制御部110と、を備える。
【0153】
[付記2]
付記1に記載の情報処理装置2において、患者は、がん、白血病、肉腫、骨髄腫、脳卒中、心筋梗塞、高血圧性疾患、糖尿病、肝硬変、慢性腎不全及びうつ病、統合失調症及び認知症の少なくともいずれかを含む慢性疾患を罹患している者であってよい。
【0154】
[付記3]
付記2に記載の情報処理装置2において、患者は、がん患者であってよい。
【0155】
[付記4]
付記1から付記3のいずれか一つに記載の情報処理装置2は、医療従事者の端末装置3cから、支援情報の表示に関する要求を受信する受信部100、をさらに備えてよく、出力制御部110は、要求に基づいて、医療従事者の端末装置3cにおいて支援情報が出力されるように制御してよい。
【0156】
[付記5]
付記1から付記4のいずれか一つに記載の情報処理装置2において、支援情報は、患者の、身体の状態と、精神の状態との関係に関する情報を含んでよい。
【0157】
[付記6]
付記1から付記5のいずれか一つに記載の情報処理装置2において、支援情報は、患者に対して行った治療の内容と、患者の身体の状態又は精神の状態との関係に関する情報を含んでよい。
【0158】
[付記7]
付記1から付記6のいずれか一つに記載の情報処理装置2において、患者背景情報は、患者の、がんのタイプ、がんのステージ、がんの症状、診断時の状況、身体の状態及び精神の状態の少なくともいずれかに関する疾患背景情報を含んでよい。
【0159】
[付記8]
付記1から付記7のいずれか一つに記載の情報処理装置2において、患者背景情報は、患者の、治療スケジュール、治療歴、補助治療歴、治療に関する価値観、治療上の関心又は悩みの少なくともいずれかに関する治療背景情報を含んでよい。
【0160】
[付記9]
付記1から付記8のいずれか一つに記載の情報処理装置2において、決定部102は、他の患者に関連付けられた患者背景情報と、当該他の患者に有効であった質問との関係に関する複数の学習データを学習させた機械学習モデルにより、第1質問を決定してよい。
【0161】
[付記10]
付記9に記載の情報処理装置2において、複数の学習データの少なくとも一部は、患者又は医療従事者により入力されたものである、請求項9に記載の情報処理装置2。
【0162】
[付記11]
付記1から付記10のいずれか一つに記載の情報処理装置2において、出力制御部110は、医療従事者の端末装置3cとして、第1医療従事者の端末装置3cと、第1医療従事者とは異なる診療科の第2医療従事者の端末装置3cとにおいて支援情報が出力されるように制御してよい。
【0163】
[付記12]
付記1から付記11のいずれか一つに記載の情報処理装置2は、患者の端末装置3aに対して、第1回答に基づいて生成された第2質問を送信する第2送信部104bと、患者の端末装置3aに対して入力された、第2質問に対する第2回答を取得する第2取得部106bと、をさらに備えてよく、生成部108は、第2回答にさらに基づいて、支援情報を生成してよい。
【0164】
[付記13]
付記12に記載の情報処理装置2において、第2質問は、大規模言語モデルを利用した自然言語処理によって生成されてよい。
【0165】
[付記14]
本開示の他の一態様に係るプログラムは、コンピュータ70を、患者の疾患又は治療に関する第1質問を表示する表示手段であって、第1質問は、患者の治療方針の決定に用いられる患者背景情報に基づいて決定される、表示手段と、第1質問に対する第1回答の入力を受け付ける受付手段と、患者の治療を支援するための支援情報が医療従事者の端末装置3cにおいて出力されるように制御する出力制御手段であって、支援情報は、第1回答に基づいて生成される、出力制御手段と、として機能させる。
【0166】
[付記15]
本開示の他の一態様に係る情報処理方法は、コンピュータ70に、患者の治療方針の決定に用いられる患者背景情報に基づいて、患者の疾患又は治療に関する第1質問を決定するステップと、患者の端末装置3aに対して、第1質問を送信するステップと、患者の端末装置3aに対して入力された、第1質問に対する第1回答を取得するステップと、第1回答に基づいて、患者の診察を支援するための支援情報を生成するステップと、医療従事者の端末装置3cに対して支援情報を送信するステップと、を実行させる。
【符号の説明】
【0167】
1…システム、2…情報処理装置、3…端末装置、10…制御部、70…コンピュータ、100…受信部、102…決定部、104…送信部、104a…第1送信部、104b…第2送信部、106…取得部、106a…第1取得部、106b…第2取得部、108…生成部、110…出力制御部、112…出力制御部