(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025038560
(43)【公開日】2025-03-19
(54)【発明の名称】ガラス板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 17/06 20060101AFI20250312BHJP
C03C 3/091 20060101ALI20250312BHJP
【FI】
C03B17/06
C03C3/091
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023145250
(22)【出願日】2023-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】澤里 拡志
(72)【発明者】
【氏名】玉村 周作
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA01
4G062BB01
4G062DA06
4G062DB04
4G062DC02
4G062DC03
4G062DD01
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4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM23
4G062NN29
(57)【要約】
【課題】成形体に供給された溶融ガラスの温度管理を適切に行う。
【解決手段】ガラス板Gの製造方法は、成形工程S1において、成形炉2の側壁部2aに設けられたヒータ16によって、成形体3の両側面10を流下する溶融ガラスGmを加熱する。成形体3の下端部3aのうち成形体3の幅方向端部3b,3cに対応する位置における成形炉2の側壁部2の温度をT
RE(℃)とした場合に、ガラス板Gの液相温度T
L(℃)との差T
RE-T
L(℃)が15℃以上75℃以下である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーバーフローダウンドロー法により、成形炉内に配置された成形体の溝部から溢れ出た溶融ガラスを前記成形体の両側面に沿って流下させた後、前記溶融ガラスを前記成形体の下端部で融合させてガラスリボンを成形する成形工程を備えるガラス板の製造方法であって、
前記成形工程では、前記成形炉の側壁部に設けられたヒータによって、前記成形体の前記両側面を流下する前記溶融ガラスを加熱し、
前記成形体の前記下端部のうち前記成形体の幅方向端部に対応する位置における前記成形炉の前記側壁部の温度をTRE(℃)とした場合に、前記ガラス板の液相温度TL(℃)との差TRE-TL(℃)が15℃以上75℃以下であることを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項2】
前記成形体の前記下端部のうち前記幅方向端部に対応する位置における前記側壁部の温度は、前記成形体の前記下端部のうち幅方向中間部に対応する位置における前記側壁部の温度より高いことを特徴とする請求項1に記載のガラス板の製造方法。
【請求項3】
前記成形体の前記下端部のうち前記幅方向端部に対応する位置における前記側壁部の温度と、前記成形体の前記下端部のうち前記幅方向中間部に対応する位置における前記側壁部の温度との温度差は、10℃以上50℃以下であることを特徴とする請求項2に記載のガラス板の製造方法。
【請求項4】
前記ガラス板は、酸化物換算の質量%で、SiO2 50~70%、Al2O3 10~25%、B2O3 0.1~5%、MgO+CaO+SrO+BaO 10~30%を含有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項5】
前記成形体の前記下端部のうち前記幅方向端部に対応する位置における前記側壁部の温度は、1200℃以上1350℃以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項6】
前記成形体の前記下端部と前記側壁部との距離は、100mm以上250mm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項7】
前記ガラスリボンの幅方向の端部を搬送ローラで挟持した状態で、前記ガラスリボンを下方へ搬送する搬送工程を備え、
前記搬送ローラは、前記ガラスリボンの前記幅方向の一端部側と他端部側とで独立して配置されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項8】
矩形状のガラス板であって、
歪が0.8nm以下であり、
全体偏肉が12μm以下であり、
反りが55μm以下であり、
板引き方向に沿う辺において、前記板引き方向の1000mmの範囲において皺による突起部の数が1以下であることを特徴とするガラス板。
【請求項9】
前記ガラス板の各辺の長さは、1000mm以上3500mm以下であることを特徴とする請求項8に記載のガラス板。
【請求項10】
前記ガラス板の板厚は、0.3mm以上1.0mm以下であることを特徴とする請求項8又は9に記載のガラス板。
【請求項11】
前記ガラス板の液相温度は、1100℃以上1400℃以下であることを特徴とする請求項8又は9に記載のガラス板。
【請求項12】
前記ガラス板は、酸化物換算の質量%で、SiO2 50~70%、Al2O3 10~25%、B2O3 0.1~5%、MgO+CaO+SrO+BaO 10~30%を含有することを特徴とする請求項8又は9に記載のガラス板。
【請求項13】
前記ガラス板は、有機樹脂基板を搬送するためのキャリアガラスであることを特徴とする請求項8又は9に記載のガラス板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板として有機樹脂基板を用いて、可撓性を有する有機ELディスプレイを作製することが注目されている。しかし、有機樹脂基板は、可撓性を有するため、半導体膜を直接成膜することが困難である。そこで、キャリアガラス上に有機樹脂層を積層させた状態で、有機樹脂層上に半導体膜を成膜する工程が必要になる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
キャリアガラスに使用されるガラス板は、例えばオーバーフローダウンドロー法によって成形される。オーバーフローダウンドロー法は、断面が略くさび形の成形体の上部に設けられたオーバーフロー溝に溶融ガラスを流し込み、このオーバーフロー溝から両側に溢れ出た溶融ガラスを成形体の両側の側面に沿って流下させながら、成形体の下端部で融合一体化し、ガラスリボンを連続成形するというものである(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/199059号
【特許文献2】特開2021-195294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のキャリアガラスに用いられるガラス板については、以下の特性が要求される。
(1)有機樹脂層上に形成される素子のピッチずれを抑制するために、ガラス板の歪が小さいこと、
(2)ガラス板の表面に有機樹脂を塗布して成膜する際の成膜ムラを抑制するために、ガラス板の反りが小さいこと、
(3)有機樹脂層の厚さを均一にするために、ガラス板に係る全体の偏肉が小さいこと。
【0006】
上記の特性を満たすガラス板を製造するには、成形体によって成形される溶融ガラスの温度管理を適切に行う必要がある。
【0007】
本発明は、成形体に供給された溶融ガラスの温度管理を適切に行うことを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明は上記の課題を解決するためのものであり、オーバーフローダウンドロー法により、成形炉内に配置された成形体の溝部から溢れ出た溶融ガラスを前記成形体の両側面に沿って流下させた後、前記溶融ガラスを前記成形体の下端部で融合させてガラスリボンを成形する成形工程を備えるガラス板の製造方法であって、前記成形工程では、前記成形炉の側壁部に設けられたヒータによって、前記成形体の前記両側面を流下する前記溶融ガラスを加熱し、前記成形体の前記下端部のうち前記成形体の幅方向端部に対応する位置における前記成形炉の前記側壁部の温度をTRE(℃)とした場合に、ガラス板の液相温度TL(℃)との差TRE-TL(℃)が15℃以上75℃以下であることを特徴とする。
【0009】
本発明では、成形体に供給された溶融ガラスを成形炉の側壁部に設けられたヒータによって加熱する。加えて、成形体の側面を流下する溶融ガラスの温度を直接的に測定することが困難なことから、ヒータが設けられた側壁部の温度を測定することで、溶融ガラスの温度を管理することができる。さらに、成形炉の側壁部において成形体の下端部のうち幅方向端部に対応する位置における温度をTRE(℃)とした場合にガラス板の液相温度TL(℃)との差TRE-TL(℃)を15℃以上75℃以下とすることで、成形体により成形されるガラスリボンの歪、反り及び偏肉を可及的に小さくするように、溶融ガラスの温度管理を適切に行うことが可能となる。
【0010】
(2) 上記(1)に記載のガラス板の製造方法において、前記成形体の前記下端部のうち前記幅方向端部に対応する位置における前記側壁部の温度は、前記成形体の前記下端部のうち幅方向中間部に対応する位置における前記側壁部の温度より高くてもよい。
【0011】
成形体の側面を流下する溶融ガラスは、成形体の下端部のうち幅方向中間部の位置において温度が高く、成形体の下端部のうち幅方向両端部の位置において温度が低くなる傾向にある。このような温度差が生じると、成形されるガラスリボンの歪が増大するおそれがある。本発明では、成形体の下端部のうち幅方向端部に対応する位置における成形炉の側壁部の温度を、成形体の下端部のうち幅方向中間部に対応する位置における側壁部の温度よりも高く設定することで、ガラスリボンの歪の増大を防止することが可能となる。
【0012】
(3) 上記(2)に記載のガラス板の製造方法において、前記成形体の前記下端部のうち前記幅方向端部に対応する位置における前記側壁部の温度と、前記成形体の前記下端部のうち前記幅方向中間部に対応する位置における前記側壁部の温度との温度差は、10℃以上50℃以下であってもよい。
【0013】
(4) 上記(1)から(3)のいずれかに記載のガラス板の製造方法において、前記ガラス板は、酸化物換算の質量%で、SiO2 50~70%、Al2O3 10~25%、B2O3 0.1~5%、MgO+CaO+SrO+BaO 10~30%を含有してもよい。
【0014】
(5) 上記(1)から(4)のいずれかに記載のガラス板の製造方法において、前記成形体の前記下端部のうち前記幅方向端部に対応する位置における前記側壁部の温度は、1200℃以上1350℃以下であってもよい。
【0015】
成形体の下端部の温度が高い場合、ガラス板の反りが悪化する場合がある、また、成形体の下端部の温度が低い場合、ガラス板に失透が発生する場合がある。成形体の下端部のうち幅方向端部に対応する位置における側壁部の温度を1200℃以上1350℃以下とすることにより、これらの不具合の発生を抑制することができる。
【0016】
(6) 上記(1)から(5)のいずれかに記載のガラス板の製造方法において、前記成形体の前記下端部と前記側壁部との距離は、100mm以上250mm以下であってもよい。
【0017】
かかる構成によれば、ヒータ及び成形炉の側壁部によって成形体の下端部を流れる溶融ガラスを好適に加熱することができる。
【0018】
(7) 上記(1)から(6)のいずれかに記載のガラス板の製造方法において、前記ガラスリボンの幅方向の端部を搬送ローラで挟持した状態で、前記ガラスリボンを下方へ搬送する搬送工程を備え、前記搬送ローラは、前記ガラスリボンの前記幅方向の一端部側と他端部側とで独立して配置されてもよい。
【0019】
搬送工程により下方へ搬送されるガラスリボンは、所定の温度勾配を有する徐冷炉の内部を通過することで、徐冷される。搬送ローラをガラスリボンの幅方向の一端部側と他端部側とで独立して配置することで、徐冷炉内部を正確に温度調整することができ、ガラスリボンの歪や偏肉を低減することができる。
【0020】
(8) 本発明は上記の課題を解決するためのものであり、矩形状のガラス板であって、歪が0.8nm以下であり、全体偏肉が12μm以下であり、反りが55μm以下であり、板引き方向に沿う辺において、前記板引き方向の1000mmの範囲において皺による突起部の数が1以下であることを特徴とする。
【0021】
かかる構成によれば、歪、全体偏肉、反り及び皺による突起部の数が上記の範囲であることで、ガラス板は、可撓性を有する有機ELデバイスの製造に適したものになる。
【0022】
(9) 上記(8)に記載の前記ガラス板の各辺の長さは、1000mm以上3500mm以下であってもよい。
【0023】
(10) 上記(8)又は(9)に記載の前記ガラス板の板厚は、0.3mm以上1.0mm以下であってもよい。
【0024】
(11) 上記(8)から(10)のいずれかに記載の前記ガラス板の液相温度は、1100℃以上1400℃以下であってもよい。
【0025】
液相温度が1400℃以下であれば、オーバーフローダウンドロー法によりガラスを成形する際に、失透結晶が析出しにくくなり、生産性を向上することができる。
【0026】
(12) 上記(8)から(11)のいずれかに記載の前記ガラス板は、酸化物換算の質量%で、SiO2 50~70%、Al2O3 10~25%、B2O3 0.1~5%、MgO+CaO+SrO+BaO 10~30%を含有してもよい。
【0027】
かかる構成によれば、熱収縮率が小さく、しかも耐失透性や溶融性が高いガラス板を得ることができ、キャリアガラスとして好適に用いることができる。
【0028】
(13) 上記(8)から(12)のいずれかに記載の前記ガラス板は、有機樹脂基板を搬送するためのキャリアガラスであってもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、成形体に供給された溶融ガラスの温度管理を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図5】ガラス板の製造方法を示すフローチャートである。
【
図10】成形されたガラスリボンの状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
図1乃至
図11は、本発明に係るガラス板及びその製造方法の一実施形態を示す。
【0032】
図1乃至
図3に示すように、本方法に使用されるガラス板の製造装置1は、成形炉2と、徐冷炉4と、冷却室5と、切断室6とを備える。成形炉2と徐冷炉4との間、徐冷炉4と冷却室5との間、及び冷却室5と切断室6との間は、それぞれガラスリボンGrが通過する開口部(例えばスリット)を有する仕切り部材(例えば建物の床面)F1,F2,F3によって仕切られている。
【0033】
成形炉2は、オーバーフローダウンドロー法によって溶融ガラスGmからガラスリボンGrを成形するための装置である。成形炉2内には、溶融ガラスGmからガラスリボンGrを成形する成形体3と、成形体3で成形されたガラスリボンGrの幅方向Xの両端部を冷却する第一搬送ローラ7とが配置されている。成形体3及び第一搬送ローラ7は、その周囲を成形炉2の炉壁によって囲まれている。成形炉2の炉壁は、側壁部2aと、天井部2bとを含む。
【0034】
成形体3は、成形されるガラスリボンGrの幅方向Xに沿って長尺な耐火物により形成されている。耐火物としては、例えば、ジルコン、ジルコニア、アルミナ、マグネシア、ゼノタイム等が挙げられる。
【0035】
成形体3の頂部には、幅方向Xに沿って形成されたオーバーフロー溝(溝部)8が設けられている。幅方向Xにおけるオーバーフロー溝8の一端側には、供給パイプ9が接続されている。この供給パイプ9を通じてオーバーフロー溝8内に溶融ガラスGmが供給される。
【0036】
成形体3は、オーバーフロー溝8から溢れ出た溶融ガラスGmを流下させる一対の側面10を有する。成形体3の側面10はそれぞれ、鉛直方向に沿った平面状をなす垂直面部11と、垂直面部11の下方に連なり、鉛直方向に対して傾斜した平面状をなす傾斜面部12とを備える。
【0037】
各垂直面部11は、互いに平行な平面である。各傾斜面部12は、下方に向かうにつれて互いに近づくように傾斜した平面である。すなわち、成形体3は、各傾斜面部12が形成されることで下方に向かって先細りする楔状をなし、各傾斜面部12が交わる角部が成形体3の下端部3aを形成している。なお、垂直面部11は、傾斜面や曲面等に形状を変更してもよいし、省略してもよい。
【0038】
成形体3の幅方向Xにおける端部には、溶融ガラスGmの流れを規制するガイド部3b,3cが設けられている。溶融ガラスGmは、このガイド部3b,3cによって規制されることで、一定の幅寸法を維持した状態で、成形体3の側面10を伝って流れる。
【0039】
第一搬送ローラ7は、成形体3の下方において、ガラスリボンGrの幅方向Xの各端部を挟持するローラ対として構成される。第一搬送ローラ7は、片持ちタイプのローラ(セパレートローラ)であり、ガラスリボンGrの幅方向Xの各端部を独立して挟持するように、ガラスリボンGrの一端部側と他端部側とに配置されている。第一搬送ローラ7は、その内部に流体が循環する構造を有しており、常時冷却されている。第一搬送ローラ7は、冷却ローラやエッジローラとも称される。
【0040】
図3に示すように、側壁部2aの外面には、成形体3の側部上部を加熱する第一側部ヒータ15と、成形体3の側部下部を加熱する第二側部ヒータ16と、成形体3の頂部を加熱する天井ヒータ17とが設けられている。
【0041】
第一側部ヒータ15は、成形炉2の側壁部2aの上部外面に配置されている。第二側部ヒータ16は、成形炉2の側壁部2aの下部外面に配置されている。天井ヒータ17は、成形炉2の天井部2bの外面に配置されている。
【0042】
図4に示すように、第一側部ヒータ15は、幅方向Xに沿って直線状に配置された複数のヒータ15a~15gを含む。また、第二側部ヒータ16は、幅方向Xに沿って直線状に配置されたヒータ16a~16gを含む。各ヒータ15a~15g,16a~16gは、例えばパネルヒータにより構成されるが、この構成に限定されない。
【0043】
図3及び
図4に示すように、側壁部2aの外面には、第一側部ヒータ15に対応する位置の側壁部2aの温度を測定する第一側部温度計18と、第二側部ヒータ16に対応する位置の側壁部2aの温度を測定する第二側部温度計19と、天井ヒータ17に対応する位置の天井部2bの温度を測定する天井温度計20とが設けられている。各温度計18~20は、例えば熱電対により構成されるが、この構成に限定されない。
【0044】
図3に示すように、成形炉2の側壁部2aは、第一側部温度計18が設けられている位置において、成形体3の側面10に対して水平方向に距離D1で離れている。この距離D1は、30mm以上100mm以下であることが好ましい。
【0045】
成形炉2の側壁部2aは、第二側部温度計19が設けられている位置において、成形体3の下端部3aに対して水平方向に距離D2で離れている。この距離D2は、100mm以上250mm以下であることが好ましい。
【0046】
図4に示すように、第一側部温度計18は、第一側部ヒータ15における複数のヒータ15a~15gに対応するように、複数の温度計18a~18gを含む。各温度計18a~18gは、対応するヒータ15a~15gの中心部に形成された挿通孔に挿通され、側壁部2aに接触している。これにより、各温度計18a~18gは、その位置で側壁部2aの温度を測定することができる。
【0047】
図4に示すように、第二側部温度計19は、第二側部ヒータ16における複数のヒータ16a~16gに対応するように、複数の温度計19a~19gを含む。各温度計19a~19gは、対応するヒータ16a~16gの中心部に形成された挿通孔に挿通され、側壁部2aに接触している。これにより、各温度計19a~19gは、成形体3の下端部3aに対応する位置で側壁部2aの温度を測定することができる。
【0048】
徐冷炉4は、ガラスリボンGrの反り及び歪を低減するための領域である。徐冷炉4の内部空間は、下方に向かって所定の温度勾配を有している。徐冷炉4の内部空間の温度勾配は、例えば、徐冷炉4の内壁に配置されたヒータ等の加熱装置により調整できる。
【0049】
徐冷炉4内には、第二搬送ローラ13が配置されている。第二搬送ローラ13は、アニーラローラとも称される。第二搬送ローラ13は、片持ちタイプのローラ(セパレートローラ)であり、ガラスリボンGrの幅方向Xの各端部を独立して挟持するように、ガラスリボンGrの一端部側と他端部側とに配置されている。第二搬送ローラ13は、上下方向に複数段設けられている。
【0050】
第二搬送ローラ13は、ガラスリボンGrの幅方向の両端部を挟持し、ガラスリボンGrに適度な張力を付与しながら、ガラスリボンGrを搬送して降下させる。以下、ガラスリボンGrの長手方向を板引き方向Aという。
【0051】
冷却室5は、ガラスリボンGrを室温付近まで冷却するための領域である。冷却室5は、常温の外部雰囲気に開放されており、ヒータ等の加熱装置は配置されていない。
【0052】
冷却室5内には、第三搬送ローラ14が配置されている。第三搬送ローラ14は、片持ちタイプのローラ(セパレートローラ)であり、ガラスリボンGrの幅方向Xの各端部を独立して挟持するように、ガラスリボンGrの一端部側と他端部側とに配置されている。第三搬送ローラ14は、上下方向に複数段設けられている。
【0053】
なお、本実施形態では、製造装置1で得られたガラスリボンGrの幅方向Xの両端部は、成形過程の収縮等の影響により、幅方向Xの中央部に比べて厚みが大きい耳部(不要部)を含む。
【0054】
切断室6は、ガラスリボンGrを所定の大きさに切断し、ガラス物品としてのガラス板Gを得るための領域である。切断室6内には、ガラスリボンGrを切断する切断装置(図示省略)が配置されている。切断装置によるガラスリボンGrの切断方法は、ガラスリボンGrにスクライブ線を形成した後に、スクライブ線に沿って折り割るスクライブ切断であるが、これに限定されない。切断装置の切断方法は、例えばレーザ割断やレーザ溶断等であってもよい。
【0055】
以下、上記構成の製造装置1を使用してガラス板Gを製造する方法について説明する。
図5に示すように、本方法は、成形工程S1と、徐冷工程S2と、冷却工程S3と、第一切断工程S4と、第二切断工程S5と、検査工程S6とを備える。
【0056】
成形工程S1では、オーバーフローダウンドロー法により、溶融ガラスGmからガラスリボンGrを形成する。具体的には、成形炉2において、成形体3のオーバーフロー溝8に溶融ガラスGmを供給し、オーバーフロー溝8から両側面10に溢れ出た溶融ガラスGmを、それぞれの垂直面部11及び傾斜面部12に沿って流下させて下端部3aで再び合流させる。これにより、溶融ガラスGmから帯状のガラスリボンGrを連続成形する。
【0057】
成形工程S1において、成形体3は、炉壁に設けられたヒータ15,16,17によって加熱される。すなわち、成形工程S1では、天井ヒータ17によって成形体3のオーバーフロー溝8に供給された溶融ガラスGmを加熱する。さらに、第一側部ヒータ15によって成形体3の上部(垂直面部11)を流れる溶融ガラスGmを加熱する。そして、第二側部ヒータ16によって成形体3の下部(傾斜面部12)を流れる溶融ガラスGmを加熱する。
【0058】
成形工程S1では、第一側部ヒータ15及び第二側部ヒータ16が配置された炉壁の側壁部2aの温度が第一側部温度計18及び第二側部温度計19によって測定される。また、天井ヒータ17が配置された炉壁の天井部2bの温度が天井温度計20によって測定される。
【0059】
第一側部ヒータ15は、第一側部温度計18による側壁部2aの測定温度が1280℃以上1320℃以下となるように、その出力が調整される。第二側部ヒータ16は、第二側部温度計19による側壁部2aの測定温度をTR(℃)とした場合に、ガラス板Gの液相温度TL(℃)との差TR-TL(℃)が-5℃以上75℃以下、好ましくは5℃以上60℃以下となるように、その出力が調整される。換言すると、成形体3の下端部3aに対応する位置における側壁部2aの温度が上記の温度範囲となるように、第二側部ヒータ16の出力が調整される。第二側部温度計19による側壁部2aの測定温度をTR(℃)は、好ましくは1200℃以上1350℃以下である。天井ヒータ17は、天井温度計20による天井部2bの測定温度が1280℃以上1340℃以下となるように、その出力が調整される。
【0060】
上記のような温度調整により、成形体3のオーバーフロー溝8に供給された溶融ガラスGmの温度が天井ヒータ17によって好適に維持される。また、成形体3の上部を流れる溶融ガラスGmの温度が第一側部ヒータ15によって好適に維持される。さらに、成形体3の下部を流れる溶融ガラスGmの温度が第二側部ヒータ16によって好適に維持される。
【0061】
第一側部ヒータ15において、幅方向Xに沿って一列に配置された複数のヒータ15a~15gのうち、幅方向Xの端部に位置するヒータ15a,15gによって加熱される側壁部2aの部分の温度は、幅方向Xの中間部に位置するヒータ15dによって加熱される側壁部2aの部分の温度よりも高い。換言すると、成形体3の上部において幅方向Xの端部(ガイド部3b,3c)に対応する位置における側壁部2aの温度は、成形体3の上部において幅方向Xの中間部3d(
図4参照)に対応する位置における側壁部2aの温度より高い。その温度差は、10℃以上100℃以下であることが好ましい。
【0062】
第二側部ヒータ16において、幅方向Xに沿って一列に配置された複数のヒータ16a~16gのうち、幅方向Xの端部に位置するヒータ16a,16gによって加熱される側壁部2aの部分の温度は、幅方向Xの中間部に位置するヒータ16dによって加熱される側壁部2aの部分の温度よりも高い。換言すると、成形体3の下端部3aにおいて幅方向Xの端部(ガイド部3b,3c)に対応する位置における側壁部2aの温度は、成形体3の下端部3aにおいて幅方向Xの中間部3dに対応する位置における側壁部2aの温度より高い。その温度差は、10℃以上50℃以下であることが好ましい。
【0063】
成形工程S1において、溶融ガラスGmが成形体3のオーバーフロー溝8から溢れ出てから成形体3の下端部3aに到達するまでにかかる時間は、例えば500秒以上1500秒以下であり、好ましくは800秒以上1200秒以下である。
【0064】
徐冷工程S2では、徐冷炉4において、ガラスリボンGrの幅方向Xの端部を第二搬送ローラ13で挟持した状態で、ガラスリボンGrを下方へと搬送する(搬送工程)。ガラスリボンGrは、徐冷炉4内を下方に搬送されることで、徐冷される。
【0065】
その後の冷却工程S3では、冷却室5において、徐冷工程S2を経たガラスリボンGrの幅方向Xの端部を第三搬送ローラ14で挟持した状態で、ガラスリボンGrを下方へと搬送する(搬送工程)。ガラスリボンGrは、冷却室5内を下方に搬送されることで、室温付近まで冷却される。
【0066】
第一切断工程S4では、切断室6において、冷却工程S3で冷却されたガラスリボンGrを所定長さ毎に幅方向Xに切断してガラス板Gを得る。その後の第二切断工程S5では、ガラス板Gの幅方向Xの両端部の耳部(不要部)をスクライブ切断等の手段により切断して除去する。
【0067】
検査工程S6では、検査装置21によってガラス板Gの形状等を検査し、その良否を判定する。検査装置21による検査項目は、例えば、ガラス板Gの反り、偏肉、歪などが挙げられる。
【0068】
検査工程S6では、
図6に示す検査装置21を使用してガラス板Gの反り及び板厚(偏肉)を検査する。検査装置21は、ガラス板Gを載置する定盤22と、ガラス板Gの反り及び板厚を測定するための測定装置23と、を備える。
【0069】
ガラス板Gは、定盤22の上面22aに載置される。測定装置23は、例えば移動可能なレーザ変位計により構成されるが、この構成に限定されない。測定装置23は、定盤22の上方に配置されている。定盤22の上面には、幅0.5~3mmの溝が形成されていても良い。
【0070】
図6に示すように、測定装置23は、ガラス板Gの上方を所定の方向に沿って移動しつつ、レーザ光Lをガラス板Gの上面に照射する。測定装置23は、ガラス板Gの上面から反射したレーザ光を受光することにより、測定装置23からガラス板Gの上面までの距離を測定する。測定装置23は、ガラス板Gに対して設定された複数の測定点に対し、この測定を行う。これにより、各測定点における測定値の差をガラス板Gの反り量として算出することができる。
【0071】
以下、ガラス板Gの板厚(偏肉)を測定する場合について説明する。検査装置21は、
図6に示すように、ガラス板Gを定盤22の上面22aに載置した状態においてガラス板Gの板厚を測定する。具体的には、検査装置21は、測定装置23を移動させながら、隣り合う定盤22の間の位置において、ガラス板Gの板厚を測定する。測定装置23は、移動しながらガラス板Gの上面と下面の双方にレーザ光Lを照射する。測定装置23は、上面から反射したレーザ光と下面から反射したレーザ光とを受光し、その光路長の差をガラス板Gの板厚として測定することができる。測定された板厚の最大値と最小値との差を算出することで、ガラス板Gの偏肉の程度を確認することができる。
【0072】
図7に示すように、検査装置24は、定盤25からガラス板Gを浮上させ、その反りを測定する。定盤25の上面25aには流体(例えば気体)を噴出させる複数の噴出孔が形成されている。
図7に示すように、検査装置24は、定盤25の噴出孔から流体を噴出させ、ガラス板Gを定盤25の上方に浮上させる。この浮上状態において、測定装置26は、
図6の例と同様に、測定装置26とガラス板Gの上面との距離を測定する。
【0073】
ガラス板Gの歪を測定する場合には、例えば光ヘテロダイン法による共通光路干渉計とフーリエ解析法を利用して、ガラス板Gの複屈折量を測定する複屈折測定装置が好適に使用される。この複屈折測定装置は、ガラス板Gの歪等の特性を評価するために、レタデーション(Retardation:複屈折による位相差)の大きさ及びレタデーションの方位角を測定することができる。この測定装置は、このレタデーションの大きさ及びレタデーションの方位角に基づいて、ガラス板Gの歪等を算出することができる。なお、レタデーションが大きい程、歪等が大きいことを意味する。ガラス板Gの歪を測定する際は、ガラス板Gを定盤上に載置した状態で測定が行われる。
【0074】
検査工程S6では、上記のように測定されたガラス板Gの測定値に基づいて、ガラス板Gの良否の判定が行われる(評価工程)。この評価工程では、測定値と、所定の基準値(閾値)とを比較する。ガラス板Gの測定値が基準値の範囲内にある場合、そのガラス板Gは「良」と判定される。ガラス板Gの測定値が基準値の範囲を超えている場合、そのガラス板Gは「不良」と判定される。
【0075】
図8及び
図9は、本方法により製造されたガラス板Gを示す。
図8に示すように、本方法により製造されるガラス板Gは、矩形状に構成される。ガラス板Gの一辺の長さは、1000mm以上3500mm以下であることが好ましい。ガラス板Gの板厚tは、0.3mm以上1.0mm以下であることが好ましい。
【0076】
ガラス板Gは、第一辺Gaと、第一辺Gaと交差する(例えば直角を為す)第二辺Gb及び第三辺Gcと、第一辺Gaと対向する第四辺Gdとを含む。第一辺Gaと第四辺Gdとは、板引き方向Aに沿う辺である。第二辺Gbと第三辺Gcとは、板引き方向に直交する方向、すなわちガラスリボンGrの幅方向Xに沿う辺である。
【0077】
ガラス板Gの板引き方向Aは、例えば、暗室でガラス板Gの角度を調整しながら光源(例えばキセノンライト)から光を照射し、その透過光をスクリーンに投影することで、筋状の縞模様として観測できる。従って、成形後のガラス板Gの状態であっても、成形時の板引き方向Aを特定できる。
【0078】
ガラス板Gの歪は、0.3nm以上1.5nm以下であることが好ましい。ガラス板Gの歪を測定する際は、前述の複屈折測定装置を用いて100mmピッチの測定点で測定を行い、得られたレタデーションの大きさの最大値をガラス板Gの歪とする。ガラス板Gの歪を0.3nm以上1.5nm以下とすることで、有機樹脂基板を搬送するためのキャリアガラスとしてガラス板Gを用いた場合に、有機樹脂層上に形成される素子のピッチずれを抑制することができる。
【0079】
ガラス板Gの反りは、20μm以上100μm以下であることが好ましい。ガラス板Gの反りを測定する際は、前述の検査装置21を用いて、50mmピッチの測定点で測定を行い、得られた反り量の最大値をガラス板Gの反りとする。ガラス板Gの反りを20μm以上100μm以下とすることで、有機樹脂基板を搬送するためのキャリアガラスとしてガラス板Gを用いた場合に、ガラス板Gの表面に有機樹脂を塗布して成膜する際の成膜ムラを抑制することができる。
【0080】
ガラス板Gの全体の偏肉は、1μm以上30μm以下であることが好ましい。ガラス板Gの全体の偏肉を測定する際は、前述の検査装置21を用いて、10mmピッチの測定点で測定を行い、板厚の最大値と最小値との差をガラス板Gの偏肉とする。ガラス板Gの全体の偏肉は、1μm以上30μm以下とすることで、有機樹脂基板を搬送するためのキャリアガラスとしてガラス板Gを用いた場合に、有機樹脂層の厚さを均一にすることができる。
【0081】
ガラス板Gの液相温度は、1100℃以上1400℃以下であることが好ましい。「液相温度」は、標準篩30メッシュ(篩目開き500μm)を通過し、50メッシュ(篩目開き300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れて、温度勾配炉中に24時間保持して、結晶(初相)の析出する温度を測定した値とする。
【0082】
ガラス板Gは、酸化物換算の質量%で、SiO2 50~70%、Al2O3 10~25%、B2O3 0.1~5%、MgO+CaO+SrO+BaO 10~30%を含有することが好ましい。
【0083】
図9に示すように、ガラス板Gは、その表面に樹脂層Rが形成されたものであってもよい。この樹脂層Rは、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミドからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。樹脂層Rは、樹脂材料をガラス板Gの表面に塗布又はコーティングすることにより形成される。
【0084】
以上説明した本実施形態に係るガラス板Gの製造方法によれば、成形体3の下端部3aに対応する位置における成形炉2の側壁部2aの温度を1200℃以上1350℃以下とすることで、製造されるガラス板Gの反り、偏肉及び歪を可及的に小さくするとともに、ガラス板Gの失透を防止することができる。
【0085】
本発明者らは、成形炉2の側壁部2aの温度が1350℃を超える場合に、ガラスリボンGr(ガラス板G)に以下のような欠陥が形成されることを確認している。すなわち、
図10及び
図11に示すように、成形体3によって成形されたガラスリボンGrの一部に、皺による複数の突起部Pが形成される。この突起部Pは、溶融ガラスGmが高温で
あるために、成形後のガラスリボンGrの一部が搬送ローラ7,13,14による搬送速度を上回る速度で下方に移動することにより生じるものと考えられる。
【0086】
本実施形態によれば、成形工程S1において成形炉2の側壁部2aの温度を上記の温度範囲となるように制御することで、ガラス板Gに複数の突起部Pが発生することを防止することが可能となった。
【0087】
製造されたガラス板Gにおいては、板引き方向Aに沿う第一辺Ga又は第四辺Gdにおいて、長さ1000mmの範囲内で上記の突起部Pの数が1以下であることが好ましい。突起部Pは、ガラス板Gの表面からの高さH(
図11参照)が5μm以上80μm以下であり、板引き方向Aにおける長さD3(
図11参照)が50mm以上500mm以下である。突起部Pの大きさ及び数は、
図7に例示した測定方法により測定することができる。
【0088】
本方法によって製造されたガラス板Gは、例えば可撓性を有する有機ELディスプレイ等のデバイスを製造する際のキャリアガラスとして好適に使用される。
【0089】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0090】
上記の実施形態では、ガラスリボンGrから切り出されたガラス板Gを例示したが、これに限らず、本発明に係るガラス板は、例えばガラスリボンGrをロール状に巻き取ったガラスロール等を含む。
【実施例0091】
本発明者らは、本発明のガラス板の製造方法の効果を確認するための比較試験を実施した。この試験では、実施例1に係るガラス板、及び比較例1、2に係るガラス板を製造し、各例に係るガラス板の反り、歪、偏肉を測定するとともに、失透の有無、突起部Pの数を確認した。実施例1、及び比較例1、2に係るガラス板は、成形体の下端部に対応する位置における成形炉の側壁部の温度条件のみ変更したものであり、その他の製造条件及びガラス組成は同じである。なお、表1では、成形体の下端部のうち成形体の幅方向の端部に対応する位置における成形炉の側壁部の温度をT
RE(℃)とし、成形体の下端部のうち成形体の幅方向の中央部に対応する位置における成形炉の側壁部の温度をT
RC(℃)としている。
【表1】
【0092】
上記の表1によれば、実施例1に係るガラス板は、成形体の下端部のうち成形体の幅方向端部に対応する位置における成形炉の側壁部の温度TRE(℃)が、液相温度TL(℃)と比べて40℃高い条件で製造されたため、反り、歪、及び偏肉を小さくすることができた。また、実施例1の温度条件では、成形体の下端部のうち幅方向端部に対応する位置における側壁部の温度TRE(℃)が1200℃以上1350℃以下となっているため、ガラス板に失透が発生せず、突起部Pも発生していない。
【0093】
比較例1に係るガラス板は、成形体の下端部のうち成形体の幅方向端部に対応する位置における成形炉の側壁部の温度TRE(℃)が、液相温度TL(℃)と比べて35℃低い条件で製造されたため、反り、及び偏肉が大きくなっている。また、比較例1の温度条件では、成形体の下端部のうち幅方向端部に対応する位置における側壁部の温度TRE(℃)が1200℃未満となっているため、ガラス板に失透が発生している。
【0094】
比較例2に係るガラス板は、成形体の下端部のうち成形体の幅方向端部に対応する位置における成形炉の側壁部の温度TRE(℃)が、液相温度TL(℃)と比べて135℃高い条件で製造されたため、反り、及び歪が大きくなっている。また、また、比較例2の温度条件では、成形体の下端部のうち幅方向端部に対応する位置における側壁部の温度TRE(℃)が1350℃超の条件で製造されたため、突起部Pの数が2となっている。
第一側部ヒータ15は、第一側部温度計18による側壁部2aの測定温度が1280℃以上1320℃以下となるように、その出力が調整される。第二側部ヒータ16は、第二側部温度計19による側壁部2aの測定温度をTR(℃)とした場合に、ガラス板Gの液相温度TL(℃)との差TR-TL(℃)が-5℃以上75℃以下、好ましくは5℃以上60℃以下となるように、その出力が調整される。換言すると、成形体3の下端部3aに対応する位置における側壁部2aの温度が上記の温度範囲となるように、第二側部ヒータ16の出力が調整される。第二側部温度計19による側壁部2aの測定温度T
R(℃)は、好ましくは1200℃以上1350℃以下である。天井ヒータ17は、天井温度計20による天井部2bの測定温度が1280℃以上1340℃以下となるように、その出力が調整される。