(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025038590
(43)【公開日】2025-03-19
(54)【発明の名称】情報処理システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20250312BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20250312BHJP
【FI】
G06Q50/10
G03G21/00 388
G03G21/00 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023145307
(22)【出願日】2023-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐原 しのぶ
【テーマコード(参考)】
2H270
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
2H270KA60
2H270KA69
2H270LA60
2H270LA98
2H270LA99
2H270LD05
2H270LD08
2H270NB02
2H270NB09
2H270NC06
2H270QB01
2H270RA03
2H270RA10
2H270RB04
2H270ZC03
2H270ZC04
2H270ZC05
2H270ZC08
5L049CC11
5L050CC11
(57)【要約】
【課題】対象製品が発生する電気ノイズの周波数スペクトラム波形が設定された判定範囲内に収まるか否かに基づき当該対象製品が純正品であるのか否かを判定する際に、対象製品の環境状態が変化した場合でも純正品を非純正品であると誤判定してしまうことを防ぐ。
【解決手段】制御装置12は、取得した周波数スペクトラム波形に対して予め設定されたマージン値を加算又は減算して上下限データを生成して環境状態を示す情報と対応させて環境テーブルとして記憶する。制御装置12は、取得した周波数スペクトラム波形が判定範囲に収まらないと判定した場合でも、取得した周波数スペクトラム波形がデータ記憶部13に記憶されている環境テーブルにおけるいずれかの上下限データの判定範囲に収まる場合には、判定対象のトナーカートリッジ20を純正品であると判定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
対象製品に装着された記憶部を動作させた際に発生する電気的ノイズを示す周波数スペクトラム波形が、設定された判定範囲に収まるか否かにより当該対象製品が純正品であるか否かを判定し、
現在装着されている対象製品が純正品であることが確認された後に、再度当該対象製品の周波数スペクトラム波形と現在の環境状態を示す情報を取得し、
取得した周波数スペクトラム波形に対して予め設定された余裕値を加算又は減算することにより周波数毎の上限値と下限値とからなる判定範囲の情報を生成して前記環境状態を示す情報と対応させてメモリに記憶させ、
現在装着されている対象製品が純正品であるか否かを判定しようとする際に、対象製品から周波数スペクトラム波形を取得するとともに、当該対象製品の現在の環境状態の情報を取得し、
取得した環境状態の情報に対応する判定範囲の情報を前記メモリから読み出し、
読み出した判定範囲の情報を用いて、前記対象製品が純正品であるか否かを判定し、
取得した周波数スペクトラム波形が判定範囲に収まらないと判定した場合でも、取得した周波数スペクトラム波形が前記メモリに記憶されているいずれかの判定範囲に収まる場合には、当該対象製品を純正品であると判定する、
情報処理システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、対象製品から取得された周波数スペクトラム波形における複数の周波数ポイントのうち当該周波数スペクトラム波形の信号強度が判定範囲に収まらない周波数ポイントの数が、予め設定された閾値未満の場合には、前記対象製品は純正品であると判定する、
請求項1記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記プロセッサは、対象製品から取得された周波数スペクトラム波形における複数の周波数ポイントのうち当該周波数スペクトラム波形の信号強度が判定範囲に収まらない周波数ポイントの数が、予め設定された閾値以上の場合には、前記対象製品は非純正品であると判定する、
請求項2記載の情報処理システム。
【請求項4】
記録媒体上に画像を出力する画像出力部をさらに備え、
前記対象製品が記録媒体上に画像を出力するための画形材料が充填されたカートリッジ部品であり、
前記環境状態を示す情報が、前記カートリッジ部品が搭載される装置の温度情報及び当該カートリッジ部品の使用開始後に前記画像出力部から出された記録媒体の枚数である出力枚数情報のうちのいずれか一方又は両方であり、
前記プロセッサは、温度、出力枚数、又は温度と出力枚数との組み合わせ毎に、前記判定範囲の情報を生成してメモリに記憶させる、
請求項1記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記プロセッサは、カートリッジ部品から取得した周波数スペクトラム波形が現在の環境状態に対応した判定範囲に収まらないと判定した場合でも、取得した周波数スペクトラム波形が前記メモリに記憶されている判定範囲のうち出力枚数のみが異なる判定範囲に収まる場合には、当該カートリッジ部品を純正品であると判定する、
請求項4記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記プロセッサは、取得した周波数スペクトラム波形が前記メモリに記憶されている判定範囲のうち出力枚数のみが異なる判定範囲に収まる場合には、当該判定範囲を現在の出力枚数に対応した判定範囲として前記メモリに記憶させる、
請求項5記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記対象製品に装着される記憶部が強誘電体メモリであり、純正品の対象製品には、同一の製造プロセスにより製造された強誘電体メモリが装着される請求項1記載の情報処理システム。
【請求項8】
対象製品に装着された記憶部を動作させた際に発生する電気的ノイズを示す周波数スペクトラム波形が、設定された判定範囲に収まるか否かにより当該対象製品が純正品であるか否かを判定するステップと、
現在装着されている対象製品が純正品であることが確認された後に、再度当該対象製品の周波数スペクトラム波形と現在の環境状態を示す情報を取得するステップと、
取得した周波数スペクトラム波形に対して予め設定された余裕値を加算又は減算することにより周波数毎の上限値と下限値とからなる判定範囲の情報を生成して前記環境状態を示す情報と対応させてメモリに記憶させるステップと、
現在装着されている対象製品が純正品であるか否かを判定しようとする際に、対象製品から周波数スペクトラム波形を取得するとともに、当該対象製品の現在の環境状態の情報を取得するステップと、
取得した環境状態の情報に対応する判定範囲の情報を前記メモリから読み出すステップと、
読み出した判定範囲の情報を用いて、前記対象製品が純正品であるか否かを判定するステップと、
取得した周波数スペクトラム波形が判定範囲に収まらないと判定した場合でも、取得した周波数スペクトラム波形が前記メモリに記憶されているいずれかの判定範囲に収まる場合には、当該対象製品を純正品であると判定するステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、サブシステムが有する認証チップの識別情報生成回路が、システム本体に接続したサブシステムが発生する電気的ノイズとシステム本体が発生する電気的ノイズとの両方をカップラで受信し、受信した電気的ノイズからその周波数スペクトラムを取得し、取得された周波数スペクトラムに基づいて、サブシステムの認証のための識別情報を生成することで、サブシステム単独での識別情報の取得や読み出しを行えないようにし、耐タンパ性を向上させるようにした情報生成回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、対象製品が発生する電気ノイズの周波数スペクトラム波形が設定された判定範囲内に収まるか否かに基づき当該対象製品が純正品であるのか否かを判定する際に、対象製品の環境状態が変化した場合でも純正品を非純正品であると誤判定してしまうことを防ぐことが可能な情報システム及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1態様の情報処理システムは、プロセッサを備え、前記プロセッサは、
対象製品に装着された記憶部を動作させた際に発生する電気的ノイズを示す周波数スペクトラム波形が、設定された判定範囲に収まるか否かにより当該対象製品が純正品であるか否かを判定し、
現在装着されている対象製品が純正品であることが確認された後に、再度当該対象製品の周波数スペクトラム波形と現在の環境状態を示す情報を取得し、
取得した周波数スペクトラム波形に対して予め設定された余裕値を加算又は減算することにより周波数毎の上限値と下限値とからなる判定範囲の情報を生成して前記環境状態を示す情報と対応させてメモリに記憶させ、
現在装着されている対象製品が純正品であるか否かを判定しようとする際に、対象製品から周波数スペクトラム波形を取得するとともに、当該対象製品の現在の環境状態の情報を取得し、
取得した環境状態の情報に対応する判定範囲の情報を前記メモリから読み出し、
読み出した判定範囲の情報を用いて、前記対象製品が純正品であるか否かを判定し、
取得した周波数スペクトラム波形が判定範囲に収まらないと判定した場合でも、取得した周波数スペクトラム波形が前記メモリに記憶されているいずれかの判定範囲に収まる場合には、当該対象製品を純正品であると判定する。
【0006】
第2態様の情報処理システムは、第1態様の情報処理システムにおいて、
前記プロセッサは、対象製品から取得された周波数スペクトラム波形における複数の周波数ポイントのうち当該周波数スペクトラム波形の信号強度が判定範囲に収まらない周波数ポイントの数が、予め設定された閾値未満の場合には、前記対象製品は純正品であると判定する。
【0007】
第3態様の情報処理システムは、第2態様の情報処理システムにおいて、
前記プロセッサは、対象製品から取得された周波数スペクトラム波形における複数の周波数ポイントのうち当該周波数スペクトラム波形の信号強度が判定範囲に収まらない周波数ポイントの数が、予め設定された閾値以上の場合には、前記対象製品は非純正品であると判定する。
【0008】
第4態様の情報処理システムは、第1態様の情報処理システムにおいて、
記録媒体上に画像を出力する画像出力部をさらに備え、
前記対象製品が記録媒体上に画像を出力するための画形材料が充填されたカートリッジ部品であり、
前記環境状態を示す情報が、前記カートリッジ部品が搭載される装置の温度情報及び当該カートリッジ部品の使用開始後に前記画像出力部から出された記録媒体の枚数である出力枚数情報のうちのいずれか一方又は両方であり、
前記プロセッサは、温度、出力枚数、又は温度と出力枚数との組み合わせ毎に、前記判定範囲の情報を生成してメモリに記憶させる。
【0009】
第5態様の情報処理システムは、第4態様の情報処理システムにおいて、
前記プロセッサは、カートリッジ部品から取得した周波数スペクトラム波形が現在の環境状態に対応した判定範囲に収まらないと判定した場合でも、取得した周波数スペクトラム波形が前記メモリに記憶されている判定範囲のうち出力枚数のみが異なる判定範囲に収まる場合には、当該カートリッジ部品を純正品であると判定する。
【0010】
第6態様の情報処理システムは、第5態様の情報処理システムにおいて、
前記プロセッサは、取得した周波数スペクトラム波形が前記メモリに記憶されている判定範囲のうち出力枚数のみが異なる判定範囲に収まる場合には、当該判定範囲を現在の出力枚数に対応した判定範囲として前記メモリに記憶させる。
【0011】
第7態様の情報処理システムは、第1態様の情報処理システムにおいて、
前記対象製品に装着される記憶部が強誘電体メモリであり、純正品の対象製品には、同一の製造プロセスにより製造された強誘電体メモリが装着される。
【0012】
第8態様のプログラムは、対象製品に装着された記憶部を動作させた際に発生する電気的ノイズを示す周波数スペクトラム波形が、設定された判定範囲に収まるか否かにより当該対象製品が純正品であるか否かを判定するステップと、
現在装着されている対象製品が純正品であることが確認された後に、再度当該対象製品の周波数スペクトラム波形と現在の環境状態を示す情報を取得するステップと、
取得した周波数スペクトラム波形に対して予め設定された余裕値を加算又は減算することにより周波数毎の上限値と下限値とからなる判定範囲の情報を生成して前記環境状態を示す情報と対応させてメモリに記憶させるステップと、
現在装着されている対象製品が純正品であるか否かを判定しようとする際に、対象製品から周波数スペクトラム波形を取得するとともに、当該対象製品の現在の環境状態の情報を取得するステップと、
取得した環境状態の情報に対応する判定範囲の情報を前記メモリから読み出すステップと、
読み出した判定範囲の情報を用いて、前記対象製品が純正品であるか否かを判定するステップと、
取得した周波数スペクトラム波形が判定範囲に収まらないと判定した場合でも、取得した周波数スペクトラム波形が前記メモリに記憶されているいずれかの判定範囲に収まる場合には、当該対象製品を純正品であると判定するステップと、
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0013】
第1態様の情報処理システムによれば、対象製品が発生する電気ノイズの周波数スペクトラム波形が設定された判定範囲内に収まるか否かに基づき当該対象製品が純正品であるのか否かを判定する際に、対象製品の環境状態が変化した場合でも純正品を非純正品であると誤判定してしまうことを防ぐことが可能となる。
【0014】
第2態様の情報処理システムによれば、周波数スペクトラム波形の全ての周波数ポイントが判定範囲に収まらない場合でも、対象製品を純正品であると判定することが可能となる。
【0015】
第3態様の情報処理システムによれば、周波数スペクトラム波形が判定範囲に収まらない場合には、対象製品を非純正品であると判定することが可能となる。
【0016】
第4態様の情報処理システムによれば、カートリッジ部品の現在おかれている温度環境、出力枚数、又は温度と出力枚数との組み合わせに対応した判定範囲を用いて、判定対象のカートリッジ部品が純正品であるか否かを判定することが可能となる。
【0017】
第5態様の情報処理システムによれば、出力枚数に基づく画形材料のカートリッジ部品の接続端子への付着状態が変化した場合でも、現在装着されているカートリッジ部品を非純正品と誤判定することを防ぐことができる。
【0018】
第6態様の情報処理システムによれば、出力枚数に基づく画形材料のカートリッジ部品の接続端子への付着状態が変化した場合には、メモリに記憶されている判定範囲を現在の状態に対応したものに更新することができる。
【0019】
第7態様の情報処理システムによれば、対象製品に装着された強誘電体メモリが発生する電気ノイズの周波数スペクトラム波形が設定された判定範囲内に収まるか否かに基づき当該対象製品が純正品であるのか否かを判定することができる。
【0020】
第8態様のプログラムによれば、対象製品が発生する電気ノイズの周波数スペクトラム波形が設定された判定範囲内に収まるか否かに基づき当該対象製品が純正品であるのか否かを判定する際に、対象製品の環境状態が変化した場合でも純正品を非純正品であると誤判定してしまうことを防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本開示の一実施形態の画像形成装置の構成を示す図である。
【
図2】本開示の一実施形態の画像形成装置本体10における制御装置12のハードウェア構成を示す図である。
【
図3】スペクトラム変換部33により取得される周波数スペクトラム波形の一例を示す図である。
【
図4】周波数スペクトラム波形のある特定の周波数毎にそれぞれ上限値及び下限値を設定した認証用判定データの一例を示す図である。
【
図5】初期値として認証用判定データを登録する際の理論値方式と自動調整方式を説明するための図である。
【
図6】認証用判定データの初期値の登録処理を説明するためのフローチャートである。
【
図7】印刷枚数の増加による周波数スペクトラム波形の変化例を示す図である。
【
図8】データ記憶部13に記憶させる環境テーブル例を示す図である。
【
図9】
図8に示すような環境テーブルを用いて、トナーカートリッジ20の認証処理を行う際の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図10】環境テーブルに新たな上下限データを格納する際の処理を説明するためのフローチャートである。
【
図11】周波数スペクトラム波形の測定データの変化の傾向を用いた処理を説明するためのフローチャートである。
【
図12】波形乖離ポイント数を予測する際の様子を説明するための図である。
【
図13】警告フラグをオンにしたことにより、ユーザに行う警告通知画面の一例を示す図である。
【
図14】警告フラグを用いたCRUMの接続確認処理を説明するためのフローチャートである。
【
図15】接触エラー処理の際にユーザ行う通知画面例を示す図である。
【
図16】周波数スペクトラム波形の測定データのある1つの周波数ポイントの値がトナー除去により変化する様子を示す図である。
【
図17】トナー除去による周波数スペクトラム波形の変化例を示す図である。
【
図18】トナー除去による周波数スペクトラム波形の急激な変化に対応した認証時の処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
図1は本開示の一実施形態の画像形成装置の構成を示す図である。
【0024】
本開示の一実施形態の画像形成装置は、
図1に示されるように、画像形成装置本体10と、トナーカートリッジ20とから構成されている。
【0025】
本実施形態の画像形成装置は、例えば、印刷機能、スキャン機能、コピー機能、ファクシミリ機能等の複数の機能を有するいわゆる複合機と呼ばれる装置である。本実施形態の画像形成装置は、画像形成装置本体10にトナーカートリッジ20が装着されると、トナーカートリッジ20から供給されるトナーを用いて印刷用紙等の記録媒体上に画像を出力するように構成されている。
【0026】
ここで、トナーカートリッジは、画像形成装置を製造した製造者により製造及び販売されて市場に提供される。画像形成装置を利用するユーザは、消耗品であるトナーの残量がなくなった場合には、トナーカートリッジを購入して差し替えることにより印刷を継続することができる。
【0027】
しかし、トナーカートリッジのようなカートリッジ部品には、純正品以外にも非純正品である互換品が存在する。ここで、純正品とは、画像形成装置の製造者が製造又は販売する製品を意味する。また、非純正品、つまり純正品ではない互換品とは、画像形成装置の製造者以外の者が製造又は販売する製品であって、画像形成装置の製造者が推奨又は使用を許容していない製品を意味する。
【0028】
そこで、本実施形態の画像形成装置では、カートリッジ部品であるトナーカートリッジ20が交換された場合に、交換されたトナーカートリッジ20を対象製品として、純正品であるのか非純正品であるのかを判定する。
【0029】
そして、トナーカートリッジ20には、純正品であるのか否かを判定するための不揮発性メモリであるCRUM(Customer Replaceable Unit Memory)21が設けられている。
【0030】
このCRUM21に例えばある特定のコード情報を記憶させておき、画像形成装置本体10にトナーカートリッジ20が装着された際にこのコード情報が記憶されているか否かを判定することにより、装着されたトナーカートリッジ20が純正品であることを判定することができる。しかし、このコード情報が第三者に漏洩してしまうと非純正品にコード情報を記憶するようなことも可能となってしまう。
【0031】
そこで、本実施形態では、対象製品であるトナーカートリッジ20に装着された記憶部であるCRUM21を動作させた際に発生する電気的ノイズを示す周波数スペクトラム波形が、設定された判定範囲に収まるか否かにより装着されたトナーカートリッジ20が純正品であるか否かを判定する。
【0032】
ここで、トナーカートリッジ20に装着されるCRUM21はFeRAM(Ferroelectric RAM:強誘電体メモリ)等の不揮発性メモリにより構成され、純正品のトナーカートリッジ20には、同一の製造プロセスにより製造された強誘電体メモリがCRUM21として装着される。
【0033】
そして、画像形成装置本体10は、表示部11と、制御装置12と、データ記憶部13と、通信IF(インタフェース)14と、不揮発性メモリ15と、画像出力部16と、温度センサ17と、ノイズ判定回路30とを備えている。
【0034】
制御装置12は通信インタフェース14を介してCRUM21内のデータを読み出したり、CRUM21に対してデータを書き込んだりすることが可能となっている。制御装置12は、画像出力部16において印刷した印刷枚数、つまり出力枚数の情報をCRUM21に書き込む。
【0035】
次に、本実施形態の画像形成装置本体10における制御装置12のハードウェア構成を
図2に示す。
【0036】
制御装置12は、
図2に示されるように、CPU41、ROM42、RAM43、外部の装置等との間でデータの送信及び受信を行う通信インタフェース(IFと略す。)44を有する。これらの構成要素は、制御バス45を介して互いに接続されている。
【0037】
CPU41は、ROM42に記憶された制御プログラムを実行することにより所定の処理を実行して、画像形成装置の動作を制御するプロセッサである。RAM43は、データの作業領域として一時的にデータ及びプログラムを記憶する。なお、本実施形態では、CPU41は、ROM42内に格納された制御プログラムを読み出して実行するものとして説明したが、これに限定されるものではない。この制御プログラムをコンピュータ読取可能な記録媒体に記録した形態で提供してもよい。例えば、このプログラムをCD(Compact Disc)-ROM及びDVD(Digital Versatile Disc)-ROM等の光ディスクに記録した形態、若しくはUSB(Universal Serial Bus)メモリ及びメモリカード等の半導体メモリに記録した形態で提供してもよい。また、この制御プログラムを、通信インタフェース14に接続された通信回線を介して外部装置から取得するようにしてもよい。
【0038】
なお、画像形成装置がカラー印刷を行う場合には、トナーカートリッジは、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)という色毎にそれぞれ設けられるが、本実施形態において説明を簡単にするため1つのトナーカートリッジ20のみを用いて説明を行う。
【0039】
表示部11は、制御装置12により制御されて、ユーザに対して各種情報を表示する。データ記憶部13は、制御装置12により制御されて、各種データを記憶する。また、画像出力部16は、制御装置12による制御に基づいて、印刷用紙等の記録媒体上に画像を出力する。なお、トナーカートリッジ20は、画像出力部16において記録媒体上に画像を出力するための画形材料であるトナーが充填されたカートリッジ部品である。温度センサ17は、画像形成装置内部の温度を検出する。
【0040】
そして、ノイズ判定回路30は、記憶部であるCRUM21を動作させた際に発生する電気ノイズに基づいて、このCRUM21が備えられたトナーカートリッジ20が純正品であるのか非純正品であるのかを判定して、その判定結果を制御装置12に送信するように構成されている。
【0041】
制御装置12は、ノイズ判定回路30からの判定結果により装着されたトナーカートリッジ20が純正品であるとされた場合には、そのトナーカートリッジ20により供給されたトナーを用いて画像出力部16による印刷処理を実行する。そして、装着されたトナーカートリッジ20が非純正品であるとの判定結果をノイズ判定回路30から受け取った場合には、表示部11等を介して、ユーザに装着されたトナーカートリッジ20が非純正品である旨を通知する等の処理を実行する。
【0042】
次に、ノイズ判定回路30の動作について説明する。
図1に示すように、ノイズ判定回路30は、アンプ31と、ADC(Analog Digital Converter:A/D変換器)32と、スペクトラム変換部33と、判定部34とから構成されている。
【0043】
アンプ31は、通信インタフェース14が受信したCRUM21からの電気ノイズを増幅する。ADC32は、アンプ31により増幅された電気ノイズをデジタルデータに変換する。スペクトラム変換部33は、ADC32により変換されたデジタルデータに対して、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)処理を実行することにより、時間領域から周波数領域への変換を行って周波数スペクトラム波形を取得する。
【0044】
ここで、不揮発性メモリ15は、制御装置12によって事前に認証用判定データが格納される。この認証用判定データとは、取得された周波数スペクトラム波形が純正品のトナーカートリッジ20のものであると判定するための、周波数毎の上限値と下限値とからなる判定範囲の情報である。
【0045】
スペクトラム変換部33により取得される周波数スペクトラム波形の一例を
図3に示す。
【0046】
本実施形態において用いるスペクトラム認証では、FeRAMにより構成されたCRUM21に対するアクセス時の電圧変化である電気的ノイズの周波数特性を用いて対象製品が純正品であるか否かの判定を行う。そして、この電気的ノイズの周波数特性は、FeRAMを製造する際に使用した半導体製造装置、及び製造方法に依存する。そのため、ある特定工場において同一の製造プロセスにより製造されたFeRAMにより発生する電気的ノイズに基づいて得られた周波数スペクトラム波形どうしは一致する。しかし、他の工場において異なる製造プログラム製造プロセスにより製造されたFeRAMにより発生する電気的ノイズに基づいて得られた周波数スペクトラム波形とは異なるものとなる。
【0047】
そのため、純正品のトナーカートリッジには、ある特定工場において同一の製造プロセスにより製造されたFeRAMをCRUMとして搭載することにより、周波数スペクトラム波形を用いて装着されたトナーカートリッジが純正品であるのか非純正品であるのかを判定することができる。
【0048】
しかし、ある特定工場において同一の製造プロセスにより製造されたFeRAMにより発生する電気的ノイズに基づいて得られた周波数スペクトラム波形どうしであっても個体差等により完全一致するわけではない。そのため、
図3に示すように、純正品のCRUMから取得した周波数スペクトラム波形の電気ノイズの信号強度の値に対して、上限値及び下限値をそれぞれ設定して、この上限値及び下限値により規定される判定範囲を認証用判定データとして設定する。
【0049】
具体的には、
図4に示すように、周波数スペクトラム波形のある特定の周波数毎にそれぞれ上限値及び下限値を設定したものが認証用判定データとなっている。なお、
図3、
図4では、説明を簡単にするために周波数スペクトラム波形における周波数ポイントの数を16として説明するが、実際には周波数ポイントの数は130のようにもっと多くの周波数ポイントを用いて判定するようにしてもよい。
【0050】
そして、ノイズ判定回路30の判定部34は、スペクトラム変換部33から取得されたCRUM21の電気的ノイズを示す周波数スペクトラム波形が、不揮発性メモリ15に格納されている認証用判定データにより設定された判定範囲に収まるか否かにより、判定対象のトナーカートリッジ20が純正品であるのか否かを判定する。
【0051】
なお、判定部34は、判定対象の周波数スペクトラム波形の全ての周波数ポイントの信号強度が判定範囲に収まった場合にのみ、判定対象のトナーカートリッジ20が純正品であると判定しなくてもよい。判定部34は、判定対象の周波数ポイントのうち、所定の割合以上の周波数ポイントの信号強度が判定範囲に収まっていれば、そのトナーカートリッジ20は純正品であると判定してもよい。例えば、判定部34は、16の周波数ポイントのうち、12以上の周波数ポイントが判定範囲内に収まっていればそのトナーカートリッジ20は純正品であると判定してもよい。
【0052】
[認証用判定データの初期値の設定(1回目)]
ここで、このようなスペクトラム認証を行う場合、画像形成装置には初期値として認証用判定データを登録しておく必要がある。
【0053】
そして、生産ライン等において初期値として認証用判定データを登録する方式には、
図5に示すように、理論値方式と自動調整方式という2つの方式が存在する。理論値方式とは、画像形成装置それぞれの個体差は考慮せず共通の認証用判定データを登録する方式である。また、自動調整方式とは、画像形成装置それぞれの個体差に合わせた認証用判定データを登録する方式である。
【0054】
理論値方式では、
図5に示すように、予め設定された上下限データを認証用判定データとして不揮発性メモリ15に登録する。また、自動調整方式では、生産ライン等において、純正品のトナーカートリッジを装着した状態で周波数スペクトラム波形を取得して、その周波数スペクトラム波形の各周波数ポイントの信号強度を測定データとする。そして、この測定データに対して予め設定された余裕値であるマージン値を加算又は減算することにより周波数毎の上限値と下限値とからなる上下限データを生成して、認証用判定データとして不揮発性メモリ15に登録する。
【0055】
このような認証用判定データの初期値の登録処理について
図6のフローチャートを参照して説明する。
【0056】
まず、制御装置12は、ステップS101において、書き換え方式として理論値方式が設定されているのか自動調整方式が設定されているのかを判定する。なお、選択方式として理論値方式を設定するのか自動調整方式を設定するのかについては、生産ラインにおいてその画像形成装置の仕向け先及び機種毎に設定する。
【0057】
ステップS101において書き換え方式として自動調整方式が設定されていると判定された場合、制御装置12は、ステップS102において、スペクトラム変換部33から、CRUM21の電気的ノイズをサンプリングした周波数スペクトラム波形データを取得する。
【0058】
次に、制御装置12は、ステップS103において、取得した周波数スペクトラム波形データにマージン値を加算又は減算することにより上下限データを生成する。
【0059】
そして、制御装置12は、ステップS104において、生成した上下限データを認証用判定データとして不揮発性メモリ15に登録する。
【0060】
なお、ステップS101において書き換え方式として理論値方式が設定されていると判定された場合、制御装置12は、ステップS105において、予め設定されている上下限データを認証用判定データとして不揮発性メモリ15に登録する。
【0061】
ここで、理論値方式では、装置の個体差を考慮しないため、判定範囲は広く設定される。そのため、理論値方式では、多少周波数スペクトラム波形にイレギュラーな値が発生したとしても純正品であると判定できるというメリットがある。しかし、逆に理論値方式では、非純正品を純正品と誤判定してしまう可能性があるというデメリットが存在する。
【0062】
また、自動調整方式は、実際に測定された測定データに基づいて認証用判定データを設定するため判定範囲を狭く設定することができる。そのため、自動調整方式では、非純正品を純正品と誤判定する可能性を低くすることができるというメリットを有する。ただし、自動調整方式では、判定範囲を狭く設定していることにより、急激な環境の変化に対応することができず、純正品を非純正品であると誤判定してしまう可能性があるというデメリットを有している。
【0063】
[認証用判定データの書き換え(2回目以降)]
実際に画像形成装置が使用される実環境下においては、上述したような方法により登録された認証用判定データの初期値により装着されたトナーカートリッジ20が純正品であるのか非純正品であるのかを判定する認証処理が実行される。しかし、装着されたトナーカートリッジ20が純正品である認定された場合であっても、その後に機内温度が変化したり、トナーカートリッジ20と画像形成装置本体10とを電気的に接続している接続端子の状態が変化したりした場合、取得される周波数スペクトラム波形が変化して非純正品であると判定されるような場合が発生し得る。特に、画像形成装置において印刷処理が繰り返されると装置内で発生するトナー粉塵により、トナーカートリッジ20と画像形成装置本体10とを電気的に接続している接続端子にトナーが付着すると、トナーカートリッジ20と画像形成装置本体10との間の電気的接続状態が変化する。
【0064】
このような印刷枚数の増加による周波数スペクトラム波形の変化例を
図7に示す。
【0065】
図7を参照すると、印刷枚数が0枚の場合の周波数スペクトラム波形に対して、印刷枚数が5000枚の場合の周波数スペクトラム波形が変化しているのが分かる。そして、印刷枚数が0枚の場合の周波数スペクトラム波形に基づいて設定された判定範囲では、印刷枚数が5000枚の場合の周波数スペクトラム波形を判定した場合、4つの周波数ポイントにおいて信号強度が下限値を下回ってしまっているのがわかる。そして、判定範囲を外れる周波数ポイントの数がある閾値を超えると、装着されたトナーカートリッジ20は非純正品であると誤判定されてしまうことになる。
【0066】
そこで、本実施形態の画像形成装置では、下記において説明するような処理を行うことにより、対象製品であるトナーカートリッジ20の環境状態が変化した場合でも純正品を非純正品であると誤判定してしまうことを防ぐようにしている。
【0067】
本実施形態における制御装置12は、現在装着されているトナーカートリッジ20が純正品であることが確認された後に、再度そのトナーカートリッジ20の周波数スペクトラム波形と現在の環境状態を示す情報を取得する。
【0068】
次に、制御装置12は、取得した周波数スペクトラム波形に対して予め設定されたマージン値を加算又は減算することにより周波数毎の上限値と下限値とからなる判定範囲の情報である上下限データを生成して環境状態を示す情報と対応させてデータ記憶部13に環境テーブルとして記憶させる。
【0069】
そして、制御装置12は、現在装着されているトナーカートリッジ20が純正品であるか否かを判定しようとする認証処理の際に、トナーカートリッジ20の現在の環境状態の情報を取得する。
【0070】
制御装置12は、取得した環境状態の情報に対応する上下限データをデータ記憶部13から読み出す。そして、制御装置12は、読み出した上下限データを用いて、トナーカートリッジ20が純正品であるか否かを判定する。
【0071】
なお、制御装置12は、認証処理の際に、純正品であるか否かを判定しようとするトナーカートリッジ20から取得された周波数スペクトラム波形における複数の周波数ポイントのうち周波数スペクトラム波形の信号強度が判定範囲に収まらない周波数ポイントの数を算出する。
【0072】
そして、制御装置12は、トナーカートリッジ20から取得された周波数スペクトラム波形における複数の周波数ポイントのうち周波数スペクトラム波形の信号強度が判定範囲に収まらない周波数ポイントの数が、予め設定された閾値以上の場合には、トナーカートリッジ20は純正品ではないと判定する。
【0073】
ここで、環境状態を示す情報とは、例えば、トナーカートリッジ20が搭載される画像形成装置の温度情報を含む。この場合、制御装置12は、トナーカートリッジ20の現在の温度状態の情報を取得し、取得した温度状態の情報に対応する上下限データをデータ記憶部13から読み出す。そして、制御装置12は、読み出した上下限データを認証用判定データとして不揮発性メモリ15に登録することにより、読み出した上下限データを用いて、トナーカートリッジ20が純正品であるか否かを判定する。
【0074】
また、環境状態を示す情報としては、カートリッジ部品であるトナーカートリッジ20が搭載される画像形成装置の温度情報及びトナーカートリッジ20の使用開始後に画像出力部16から出された記録媒体の枚数である印刷枚数情報のうちのいずれか一方又は両方としてもよい。そして、制御装置12は、温度、印刷枚数、又は温度と印刷枚数との組み合わせ毎に、上下限データを生成してデータ記憶部13に記憶させる。
【0075】
このようにしてデータ記憶部13に記憶させる環境テーブル例を
図8に示す。
【0076】
図8に示した環境テーブル例では、温度と印刷枚数との組み合わせ毎に、上限値と下限値とからなる上下限データと、電気的ノイズから得られた周波数スペクトラム波形における周波数ポイント毎の信号強度のデータである測定データとが格納されている。
【0077】
図8を参照すると、0~10℃、11~20℃、21~30℃という温度範囲と、0~4999枚、5000~9999枚、10000枚~という印刷枚数の範囲毎に、それぞれ、測定データ、上限値、下限値のデータが格納されているのが分かる。
【0078】
次に、
図8に示すような環境テーブルを用いて、トナーカートリッジ20の認証処理を行う際の動作について
図9のフローチャートを参照して説明する。
【0079】
先ず、制御装置12は、ステップS201において、現在の温度と印刷枚数の情報を取得する。具体的には、制御装置12は、温度センサ17から現在の装置内の温度情報を取得する。また、制御装置12は、トナーカートリッジ20が交換された後の印刷枚数の情報をデータ記憶部13に記憶して管理しており、この印刷枚数の情報をデータ記憶部13から取得する。
【0080】
次に、制御装置12は、ステップS202において、現在の温度と印刷枚数の情報に基づいて環境テーブルを検索して、現在の温度と印刷枚数に該当する上下限データを取得する。例えば、現在の温度が16℃であり、印刷枚数が3000枚の場合には、制御装置12は、
図8に示した環境テーブルにおける温度が11~12℃、印刷枚数が0~4999枚に該当する上限値のデータと下限値のデータとを上下限データとして取得する。
【0081】
そして、制御装置12は、ステップS203において、取得した上下限データにより不揮発性メモリ15内の認証用判定データを書き換える。
【0082】
すると、判定部34は、ステップS204において、書き換えらえた認証用データに基づいて、スペクトラム変換部33から取得した周波数スペクトラム波形の認証処理を行い、その認証結果を制御装置12に送信する。
【0083】
制御装置12は、ステップS205において、判定部34からの認証結果が認証成功であるか否かを判定する。
【0084】
ステップS205において判定部34からの認証結果が認証成功であった場合、制御装置12は、ステップS206において、装着されているトナーカートリッジ20は純正品であると判定する。
【0085】
また、ステップS205において判定部34からの認証結果が認証失敗であった場合、制御装置12は、ステップS207において、装着されているトナーカートリッジ20は非純正品であると判定する。
【0086】
なお、
図8に示した環境テーブルには、最初から温度と印刷枚数の組み合わせに対応した全ての上下限データ等が格納されているわけではない。制御装置12は、印刷枚数の増加と、温度変化に伴って取得した周波数スペクトラム波形データに基づいて、環境テーブルに新たな上下限データを格納していく。
【0087】
このようにして、制御装置12が環境テーブルに新たな上下限データを格納する際の処理について
図10のフローチャートを参照して説明する。
【0088】
先ず、制御装置12は、ステップS301において、現在の温度と印刷枚数の情報を取得する。
【0089】
次に、制御装置12は、ステップS302において、スペクトラム変換部33から、CRUM21の電気的ノイズをサンプリングした周波数スペクトラム波形データを取得する。
【0090】
そして、制御装置12は、ステップS303において、取得した周波数スペクトラム波形データにマージン値を加算又は減算することにより上下限データを生成する。
【0091】
最後に、制御装置12は、ステップS304において、取得した周波数スペクトラム波形データと、生成した上下限データを、温度情報と印刷枚数情報に対応させてデータ記憶部13内の環境テーブルに格納する。
【0092】
このようにして画像形成装置が実際の使用場所に設置された後に様々な温度環境の下で使用されることにより環境テーブルには、温度と印刷枚数の組み合わせ毎のデータが格納されていくことになる。
【0093】
[印刷枚数の増加に伴う周波数スペクトラム波形の変化の傾向を用いた処理]
上述した周波数スペクトラム波形は、印刷枚数の増加に伴いトナーカートリッジ20と画像形成装置本体10との間を接続している接続端子付近にトナー粉塵が付着することにより、変化する場合がある。例えば、
図7に示した周波数スペクトラム波形例では、印刷枚数が0枚から5000枚に増加することにより全体的に信号強度が低下しているのが分かる。
【0094】
そのため、このような印刷枚数の増加に伴う周波数スペクトラム波形の変化の傾向を把握することにより、把握した変化の傾向を用いて下記のような処理を行うことができる。
【0095】
例えば、制御装置12は、トナーカートリッジ20から取得された周波数スペクトラム波形の信号強度が上下限データの判定範囲に収まらない周波数ポイントの数が印刷枚数の増加に伴い増加しており、このまま印刷枚数が増加した場合には判定範囲に収まらない周波数ポイントの数が予め設定された閾値を超えることが予測される場合には、現在装着されているトナーカートリッジ20を非純正品と誤判定する可能性がある旨の警告をユーザに対して行う。
【0096】
また、制御装置12は、このまま印刷枚数が増加した場合には判定範囲に収まらない周波数ポイントの数が予め設定された閾値を超えることが予測される場合には、トナーカートリッジ20の接続端子周辺に付着した画形材料であるトナーを除去することをユーザに依頼する通知を合わせて行うようにしてもよい。
【0097】
次に、このような周波数スペクトラム波形の測定データの変化の傾向を用いた処理について
図11のフローチャートを参照して説明する。
【0098】
まず、制御装置12は、ステップS401において、現在の温度と印刷枚数の情報を取得する。
【0099】
次に、制御装置12は、ステップS402において、環境テーブルを参照して、同一温度範囲で印刷枚数が異なるデータが存在するか否かを判定する。ステップS402において、同一温度範囲で印刷枚数が異なるデータが存在しないと判定した場合、制御装置12は、処理を終了する。
【0100】
そして、ステップS402において、同一温度範囲で印刷枚数が異なるデータが存在すると判定した場合、制御装置12は、ステップS403において、ある印刷枚数の測定データを他の印刷枚数の上下限データと比較した場合の波形乖離ポイント数をカウントする。ここで、波形乖離ポイントとは、上下限データの範囲内に収まらない周波数ポイントの数を意味する。
【0101】
さらに、制御装置12は、ステップS404において、さらに印刷枚数が増加した場合の波形乖離ポイント数を予測する。
【0102】
そして、制御装置12は、ステップS405において、予測した波形乖離ポイント数が予め設定されている閾値を超えるか否かを判定する。
【0103】
ステップS405において予測した波形乖離ポイント数が予め設定されている閾値を超えると判定した場合、制御装置12は、ステップS406において、警告フラグをオンとする。
【0104】
また、ステップS405において予測した波形乖離ポイント数が予め設定されている閾値を超えないと判定した場合、制御装置12は、処理を終了する。
【0105】
上記で説明した波形乖離ポイント数を予測する際の様子について
図12を参照して説明する。
【0106】
上述したように、制御装置12は、トナーカートリッジ20から取得された周波数スペクトラム波形の信号強度が判定範囲に収まらない周波数ポイントの数である波形乖離ポイント数が印刷枚数の増加に伴い増加しており、このまま波形乖離ポイント数が予め設定された閾値を超えることが予測される場合には、端子異常フラグである警告フラグをオン状態とする。
【0107】
例えば、
図12に示すように、印刷枚数が0枚で温度範囲が11~20℃の場合の測定データを、印刷枚数が0~4999枚で、温度範囲が11~20℃の場合の上下限データと比較した際の波形乖離ポイント数が0であったとする。
【0108】
そして、印刷枚数が0枚で温度範囲が11~20℃の場合の測定データを、印刷枚数が5000~9999枚で、温度範囲が11~20℃の場合の上下限データと比較した際の波形乖離ポイント数が4であったとする。
【0109】
すると、制御装置12は、印刷枚数の増加に応じて波形乖離ポイント数が増加しているという傾向から、このまま印刷枚数が10000枚を超えると波形乖離ポイント数が8になると予測する。そして、予め設定されている波形乖離ポイント数の閾値が6であったとする。つまり、予測した将来の波形乖離ポイント数である8は、閾値6を超えているため、制御装置12は、警告フラグをオンとする。
【0110】
そして、制御装置12は、警告フラグをオンにしたことにより、現在装着されているトナーカートリッジ20を非純正品と誤判定する可能性がある旨と、トナーカートリッジ20の接続端子周辺に付着したトナーを除去することをユーザに依頼する旨の通知を行う。具体的には、制御装置12は、表示部11に
図13に示すような文字を表示することにより通知を行う。
【0111】
図13は、警告フラグをオンにしたことにより、ユーザに行う警告通知画面の一例を示す図である。
図13を参照すると、「このままだと現在使用しているトナーカートリッジを非純正品であると誤判定する可能性があります。トナーカートリッジと本体との接続端子周辺に付着しているトナーを除去してください。」という文字が表示され、印刷枚数の増加に伴い誤判定する可能性をユーザに通知し、トナーの除去をユーザに依頼しているのが分かる。
【0112】
そして、上記で説明した警告フラグを用いることにより、制御装置12は、装着されたトナーカートリッジ20との間の接続が確認できない場合でも、その原因がCRUM21自体の異常なのか、接続端子にトナーが付着したことによる接触不良なのかを区別することができる。
【0113】
具体的には、制御装置12は、トナーカートリッジ20に装着されたCRUM21との間の接続状態を確認し、CRUM21との間の接続が確認できない場合、警告フラグがオン状態の場合には、接続端子にトナーが付着したことによる接触不良である可能性が高いと判定する。そして、この場合には制御装置12は、トナーカートリッジ20の接続端子周辺に付着したトナーを除去することをユーザに依頼する通知を行う。
【0114】
また、制御装置12は、CRUM21との間の接続が確認できない場合であって、警告フラグがオフ状態の場合には、CRUM21の故障、又はCRUM21がトナーカートリッジ20に未装着である旨の通知を行う。
【0115】
このような警告フラグを用いたCRUMの接続確認処理について
図14のフローチャートを参照して説明する。
【0116】
制御装置12は、トナーカートリッジ20の装着を検出した場合、ステップS501において、通信IF14経由にてCRUM21との間で接続確認を行う。
【0117】
そして、制御装置12は、ステップS502において、CRUM21との間の接続が成功したか否かを判定する。
【0118】
ステップS502においてCRUM21との間の接続が成功したと判定した場合、制御装置12は、ステップS503において、CRUM21の認証処理を実行する。このステップS503において行うCRUM21の認証処理は、
図9のフローチャートにおいて示した処理であるためその詳細については省略する。
【0119】
そして、ステップS502においてCRUM21との間の接続が成功しなかったと判定した場合、制御装置12は、ステップS504において、警告フラグがオン状態であるか否かを判定する。
【0120】
ステップS504において警告フラグがオン状態ではない、つまりオフ状態であると判定した場合、制御装置12は、ステップS504において、未装着エラー処理を実行する。ここで、未装着エラー処理とは、CRUM21が故障している、又はCRUM21がトナーカートリッジ20に未装着である旨をユーザに通知する処理を意味する。
【0121】
そして、ステップS504において警告フラグがオン状態であると判定した場合、制御装置12は、ステップS505において、接触エラー処理を実行する。ここで、接触エラー処理とは、接続端子にトナーが付着したことによる接触不良が発生している旨をユーザに通知する処理を意味する。
【0122】
この接触エラー処理の際にユーザ行う通知画面例を
図15に示す。
図15を参照すると、「トナーカートリッジを認識することができません。トナーカートリッジと本体との接続端子周辺に付着しているトナーを除去してください。」という文字が表示され、接続端子にトナーが付着したことによる接触不良が発生している旨をユーザに通知して、接続端子付近に付着しているトナーの除去をユーザに依頼しているのが分かる。
【0123】
[トナー除去による周波数スペクトラム波形の急激な変化に対する対処]
上記で説明したような通知により、ユーザに接続端子付近に付着しているトナーの除去を依頼して、ユーザが接続端子付近に付着しているトナーを除去した場合、得られる周波数スペクトラム波形が急激に変化する可能性がある。また、上記のような通知を行わない場合でも、ユーザがトナーカートリッジ20を画像形成装置本体10から一旦取り出して再度画像形成装置本体10に装着したような場合、接続端子付近に付着していたトナーが意図せず除去されて接続状態が変化するような場合もある。
【0124】
例えば、周波数スペクトラム波形の測定データのある1つの周波数ポイントの値がトナー除去により変化する様子を
図16に示す。
【0125】
図16を参照すると、ある周波数ポイントの信号強度が、印刷枚数が0枚、5000枚、10000枚と増加することにより徐々に減少しているのが分かる。この場合でも、上限値及び下限値が印刷枚数の増加に伴い変化することにより判定範囲内に収まっている。しかし、何等かの理由によりトナーカートリッジ20と画像形成装置本体10とを接続している接続端子付近に付着しているトナーが除去されると、この周波数ポイントにおける信号強度は、印刷枚数が0枚時点の値に戻ってしまうことになる。すると、印刷枚数が10000枚であるにもかかわらずこの周波数ポイントにおける信号強度は突然に印刷枚数が0枚時点のものとなり、上限値を超えてしまい判定範囲外となってしまう。すると、トナーカートリッジ20は純正品であるにもかかわらず非純正品であると誤判定される恐れがある。
【0126】
実際には1つの周波数ポイントの信号強度のみが上下限の範囲外となっただけでは誤判定とはならない場合もあるが、複数の周波数ポイントにおいて信号強度が上下限の範囲外となると誤判定が発生する可能性が高くなる。
【0127】
このような周波数スペクトラム波形の変化例を
図17に示す。
図17を参照すると、印刷枚数が0枚の場合の周波数スペクトラム波形が
図17(A)に示され、印刷枚数が5000枚の場合の周波数スペクトラム波形が
図17(B)に示され、印刷枚数が10000枚の場合の周波数スペクトラム波形が
図17(C)に示されている。そして、
図17(A)、
図17(B)、
図17(C)を参照すると、印刷枚数の増加に伴い、ある1つの周波数ポイントの信号強度が徐々に増加し、別の1つの周波数ポイントの信号強度が徐々に減少しているのが分かる。
【0128】
そして、印刷枚数が10000枚の状態で何等かの理由によりトナーカートリッジ20と画像形成装置本体10とを接続している接続端子付近に付着しているトナーが除去されたものとする。すると、周波数スペクトラム波形が
図17(C)の状態からいきなり
図17(D)の状態に急激に変化する。この
図17(D)に示す周波数スペクトラム波形は、印刷枚数が0枚時点における
図17(A)の周波数スペクトラム波形とほぼ同じような状態となっている。
【0129】
このように印刷枚数に応じて判定範囲を変化させる場合、接続端子付近に付着しているトナーの状態が急に変化すると却って純正品を非純正品であると誤判定してしまう可能性がある。そこで、本実施形態では、下記のような処理を行うことにより、対象製品であるトナーカートリッジ20の環境状態が変化した場合でも純正品を非純正品であると誤判定してしまうことを防ぐようにしている。
【0130】
制御装置12は、取得した周波数スペクトラム波形が判定範囲に収まらないと判定した場合でも、取得した周波数スペクトラム波形がデータ記憶部13に記憶されている環境テーブルにおけるいずれかの上下限データの判定範囲に収まる場合には、判定対象のトナーカートリッジ20を純正品であると判定する。
【0131】
具体的には、制御装置12は、トナーカートリッジ20から取得した周波数スペクトラム波形が現在の環境状態に対応した判定範囲に収まらないと判定した場合でも、取得した周波数スペクトラム波形がデータ記憶部13に記憶されている環境テーブルにおける上下限データの判定範囲のうち印刷枚数のみが異なる判定範囲に収まる場合には、そのトナーカートリッジ20を純正品であると判定する。
【0132】
そして、制御装置12は、取得した周波数スペクトラム波形がデータ記憶部13に記憶されている上下限データの判定範囲のうち印刷枚数のみが異なる判定範囲に収まる場合には、その上下限データを現在の印刷枚数に対応した上下限データとしてデータ記憶部13内の環境テーブルに記憶させる。
【0133】
上記で説明したような、トナー除去による周波数スペクトラム波形の急激な変化に対応した認証時の処理について
図18のフローチャートを参照して説明する。
【0134】
なお、
図18のフローチャートは、
図9に示したフローチャートに対して、ステップS601~S603の処理を追加した点のみを異なっているため、この処理のみについて説明する。
【0135】
ステップS205において判定部34からの認証結果が認証失敗であった場合、制御装置12は、ステップS601において、環境テーブルの中から今回の周波数スペクトラム波形データと近似する測定データを検索する。
【0136】
そして、制御装置12は、ステップS602において、環境データの中に今回の周波数スペクトラム波形データと近似する測定データがあるか否かを判定する。
【0137】
ステップS602において、環境データの中に今回の周波数スペクトラム波形データと近似する測定データがあると判定した場合、制御装置12は、ステップS603において、近似する測定データの上下限データを取得して、ステップS203に進む。
【0138】
ステップS203では、制御装置12は、取得した上下限データにより不揮発性メモリ15内の認証用判定データを書き換える。
【0139】
つまり、今回のスペクトラム波形データと近似する測定データに基づく上下限データを認証用判定データとして、認証処理が再実行されることになる。そして、この認証処理において今回のスペクトラム波形が判定範囲内に収まると判定された場合には、そのトナーカートリッジ20は純正品であると判定されることになる。
【0140】
なお、ステップS602において、環境データの中に今回の周波数スペクトラム波形データと近似する測定データはないと判定した場合、制御装置12は、ステップS207において、装着されているトナーカートリッジ20は非純正品であると判定する。
【0141】
上記各実施形態において、プロセッサとは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス等)を含むものである。
【0142】
また上記各実施形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサの各動作の順序は上記各実施形態において記載した順序のみに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0143】
本実施形態における「システム」とは、複数の装置によって構成されたもの及び単一の装置によって構成されたものの両方を含む。
【0144】
[変形例]
上記実施形態では、画像形成装置本体に装着されるトナーカートリッジが、純正品であるか否かを判定する対象製品である場合を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、様々な情報処理装置又は情報処理システムに装着される対象製品が純正品であるか否かを判定する場合でも本開示を同様に適用することができるものである。
【0145】
[付記]
以下に、本開示の好ましい形態について付記する。
【0146】
(((1)))
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
対象製品に装着された記憶部を動作させた際に発生する電気的ノイズを示す周波数スペクトラム波形が、設定された判定範囲に収まるか否かにより当該対象製品が純正品であるか否かを判定し、
現在装着されている対象製品が純正品であることが確認された後に、再度当該対象製品の周波数スペクトラム波形と現在の環境状態を示す情報を取得し、
取得した周波数スペクトラム波形に対して予め設定された余裕値を加算又は減算することにより周波数毎の上限値と下限値とからなる判定範囲の情報を生成して前記環境状態を示す情報と対応させてメモリに記憶させ、
現在装着されている対象製品が純正品であるか否かを判定しようとする際に、対象製品から周波数スペクトラム波形を取得するとともに、当該対象製品の現在の環境状態の情報を取得し、
取得した環境状態の情報に対応する判定範囲の情報を前記メモリから読み出し、
読み出した判定範囲の情報を用いて、前記対象製品が純正品であるか否かを判定し、
取得した周波数スペクトラム波形が判定範囲に収まらないと判定した場合でも、取得した周波数スペクトラム波形が前記メモリに記憶されているいずれかの判定範囲に収まる場合には、当該対象製品を純正品であると判定する、
情報処理システム。
【0147】
(((2)))
前記プロセッサは、対象製品から取得された周波数スペクトラム波形における複数の周波数ポイントのうち当該周波数スペクトラム波形の信号強度が判定範囲に収まらない周波数ポイントの数が、予め設定された閾値未満の場合には、前記対象製品は純正品であると判定する、
(((1)))に記載の情報処理システム。
【0148】
(((3)))
前記プロセッサは、対象製品から取得された周波数スペクトラム波形における複数の周波数ポイントのうち当該周波数スペクトラム波形の信号強度が判定範囲に収まらない周波数ポイントの数が、予め設定された閾値以上の場合には、前記対象製品は非純正品であると判定する、
(((2)))に記載の情報処理システム。
【0149】
(((4)))
記録媒体上に画像を出力する画像出力部をさらに備え、
前記対象製品が記録媒体上に画像を出力するための画形材料が充填されたカートリッジ部品であり、
前記環境状態を示す情報が、前記カートリッジ部品が搭載される装置の温度情報及び当該カートリッジ部品の使用開始後に前記画像出力部から出された記録媒体の枚数である出力枚数情報のうちのいずれか一方又は両方であり、
前記プロセッサは、温度、出力枚数、又は温度と出力枚数との組み合わせ毎に、前記判定範囲の情報を生成してメモリに記憶させる、
(((1)))又は(((2)))に記載の情報処理システム。
【0150】
(((5)))
前記プロセッサは、カートリッジ部品から取得した周波数スペクトラム波形が現在の環境状態に対応した判定範囲に収まらないと判定した場合でも、取得した周波数スペクトラム波形が前記メモリに記憶されている判定範囲のうち出力枚数のみが異なる判定範囲に収まる場合には、当該カートリッジ部品を純正品であると判定する、
(((4)))に記載の情報処理システム。
【0151】
(((6)))
前記プロセッサは、取得した周波数スペクトラム波形が前記メモリに記憶されている判定範囲のうち出力枚数のみが異なる判定範囲に収まる場合には、当該判定範囲を現在の出力枚数に対応した判定範囲として前記メモリに記憶させる、
(((5)))に記載の情報処理システム。
【0152】
(((7)))
前記対象製品に装着される記憶部が強誘電体メモリであり、純正品の対象製品には、同一の製造プロセスにより製造された強誘電体メモリが装着される(((1)))から(((6)))のいずれか1つに記載の情報処理システム。
【0153】
(((8)))
対象製品に装着された記憶部を動作させた際に発生する電気的ノイズを示す周波数スペクトラム波形が、設定された判定範囲に収まるか否かにより当該対象製品が純正品であるか否かを判定するステップと、
現在装着されている対象製品が純正品であることが確認された後に、再度当該対象製品の周波数スペクトラム波形と現在の環境状態を示す情報を取得するステップと、
取得した周波数スペクトラム波形に対して予め設定された余裕値を加算又は減算することにより周波数毎の上限値と下限値とからなる判定範囲の情報を生成して前記環境状態を示す情報と対応させてメモリに記憶させるステップと、
現在装着されている対象製品が純正品であるか否かを判定しようとする際に、対象製品から周波数スペクトラム波形を取得するとともに、当該対象製品の現在の環境状態の情報を取得するステップと、
取得した環境状態の情報に対応する判定範囲の情報を前記メモリから読み出すステップと、
読み出した判定範囲の情報を用いて、前記対象製品が純正品であるか否かを判定するステップと、
取得した周波数スペクトラム波形が判定範囲に収まらないと判定した場合でも、取得した周波数スペクトラム波形が前記メモリに記憶されているいずれかの判定範囲に収まる場合には、当該対象製品を純正品であると判定するステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【0154】
以下に、付記の構成による効果について記載する。
【0155】
(((1)))の情報処理システムによれば、対象製品が発生する電気ノイズの周波数スペクトラム波形が設定された判定範囲内に収まるか否かに基づき当該対象製品が純正品であるのか否かを判定する際に、対象製品の環境状態が変化した場合でも純正品を非純正品であると誤判定してしまうことを防ぐことが可能となる。
【0156】
(((2)))の情報処理システムによれば、周波数スペクトラム波形の全ての周波数ポイントが判定範囲に収まらない場合でも、対象製品を純正品であると判定することが可能となる。
【0157】
(((3)))の情報処理システムによれば、周波数スペクトラム波形が判定範囲に収まらない場合には、対象製品を非純正品であると判定することが可能となる。
【0158】
(((4)))の情報処理システムによれば、カートリッジ部品の現在おかれている温度環境、出力枚数、又は温度と出力枚数との組み合わせに対応した判定範囲を用いて、判定対象のカートリッジ部品が純正品であるか否かを判定することが可能となる。
【0159】
(((5)))の情報処理システムによれば、出力枚数に基づく画形材料のカートリッジ部品の接続端子への付着状態が変化した場合でも、現在装着されているカートリッジ部品を非純正品と誤判定することを防ぐことができる。
【0160】
(((6)))の情報処理システムによれば、出力枚数に基づく画形材料のカートリッジ部品の接続端子への付着状態が変化した場合には、メモリに記憶されている判定範囲を現在の状態に対応したものに更新することができる。
【0161】
(((7)))の情報処理システムによれば、対象製品に装着された強誘電体メモリが発生する電気ノイズの周波数スペクトラム波形が設定された判定範囲内に収まるか否かに基づき当該対象製品が純正品であるのか否かを判定することができる。
【0162】
(((8)))のプログラムによれば、対象製品が発生する電気ノイズの周波数スペクトラム波形が設定された判定範囲内に収まるか否かに基づき当該対象製品が純正品であるのか否かを判定する際に、対象製品の環境状態が変化した場合でも純正品を非純正品であると誤判定してしまうことを防ぐことが可能となる。
【符号の説明】
【0163】
10 画像形成装置本体
11 表示部
12 制御装置
13 データ記憶部
14 通信IF(インタフェース)
15 不揮発性メモリ
16 画像出力部
17 温度センサ
20 トナーカートリッジ
21 CRUM
30 ノイズ判定回路
31 アンプ
32 ADC(A/D変換器)
33 スペクトラム変換部
34 判定部
41 CPU
42 ROM
43 RAM
44 通信IF(インタフェース)